女「首吊りの表現をするときに」(13)

男「はい?」

女「喉仏より下に縄があるのは不自然よね」

女「それでは、血管が上手く締まらないし」

女「何より、そこで縄が止まること自体が不自然だわ」

女「人は自分が想像できる範囲でしか、想像を広げられないわ」

男「はい?」

女「だから、その人が語る言葉を良く吟味することよ」

女「その複雑さ、深さ、精密さはその人自身を表すわ」

女「一見とぼけたように見えても、そうではないと気づくはずよ」

女「とりわけ、その人が物語を記したり語るなら耳を傾けるべきだわ」

女「そこで描かれる登場人物は、作者の想像の範囲を表すわ」

女「私は、泣いている時の人が一番美しいと思うわ」

男「はい?」

女「みじめで、情けなくて、取り乱していて」

女「それなのに冷静で、取り繕っていて、同情を買うようで」

女「そうした強かさが感じられるから、泣いている姿が好きよ」

女「特に、自分が泣かせようと思って泣かせた人の姿は」

女「言葉は充分複雑だけれど」

男「はい?」

女「事実の持つ多義性に比べれば未発達と言っても良いわ」

女「事実は1人だけのものじゃない」

女「知られ語られることによって付与された分だけ、増えていくものよ」

女「フェルトセンスとは良く言ったものだわ」

女「未分化状態からの帰納には最大の注意が必要だわ」

男「はい?」

女「つまり、日常で行われていることから法則や技法を編み出す時よ」

女「そこにある集合から目的物を抜き出す時」

女「それを成り立たせているものは想像以上に大きいわ」

女「ただし、個人差という誤魔化しに陥るのも考え物ね」

女「人は爆発物のようであるとも言えるわ」

男「はい?」

女「刺激に対して生活体は反応する」

女「その過程すべてを行動と言うなら、ある瞬間の行動は100万を超すかもしれない」

女「セットとしての行動は常に生じ続けている」

女「その中枢である生活体、人間は刺激という火種で燃え上がる爆発物と言っても良いわね」

数分後
まどか「ほむらちゃん、なんでこんなこと?」

ほむら「あなたには関係ないわ」ファサッ

両津「いちいち、ムカつく奴だ」ボカッ

ほむら「・・・え?(殴られた、なにこの人)」

ほむら「うう、きょ、今日はこの辺でいいわ」ファサッ

両津「このガキー!!まてー」

ほむら「!!(なんで追いかけてくるの)」カチッ(時間をとめた音)」

女「人は象徴性の悪魔に魅入られて、それを捨てることができない」

男「はい?」

女「”悪魔というのも適切ではないかもしれない”」

女「先に言った多義性の話に帰結されるわ」

女「個人の持つ事実を損なわないように表現するためには、何もかもが足りないわ」

女「だからこそ、象徴性という足りなさを以って足りんとするのよ」

女「人が生きる場所に、人以外が入り込む隙間なんて無いわ」

男「はい?」

女「あなたに不可思議と感じさせているのは、他ならぬあなた自身よ」

女「因ありて果は成りて、果は成りて因となる、そうだと思うわ」

女「それとも、それこそがそう思わされてるのかしらね」

女「双論は互いを消すが、互いを生むのね」

女「代替が出来ないものは存在しない」

男「はい?」

女「代替をしないものが存在するだけよ」

女「”出来るけどしたくない”という思いがそれを阻む」

女「それこそが”代替できない”の事実よ」

女「……尻尾を咥えることにも飽きたわね」

女「人の掴み所とはなにかしらね」

男「はい?」

女「一貫性のことなのかしら、法則性かしら」

女「簡潔で、予測ができて、安定していて」

女「そういう評価を行動様式に付けることが出来た時、掴み所は現れる」

女「手の象徴は制御だと思うわ」

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