恭介「なあ、このパンの袋を挟むアレを有効活用する方法を考えてくれ」理樹「えっ?」 (37)

理樹部屋

理樹(夜、いつものように5人で遊んでいると、突然恭介が立ち上がった)

恭介「これな」

理樹(そう言ってポケットから大量に取り出したのはまさしくパンの袋を挟むアレだった)

真人「その前に質問させてくれ。なんでそんなにパンの袋を挟むアレを持ってんだ?」

理樹(と、もっともな質問をぶつける真人)

恭介「ああ。購買部の人に何か面白い物はないかと聞いたところ、これをタダで貰ったわけだ」

恭介「しかし貰っておいてなんだが、俺もこいつをかなり持て余している…だからこうやって案を練っているんだ」

理樹「いや、普通に捨てたら?」

恭介「なんかもったいなくね?逆にパンの袋を挟むアレがこんな大量に揃う機会なんてそうそうねえよ」

謙吾「それを持ってるお前もお前だがな…ちなみに正式名称はバッグ・クロージャーらしい」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444395488

案1 パンの袋を挟むアレで【将棋】


理樹(パンの袋を挟むアレにマジックで駒の名前を書いた。ポピュラーな将棋なら案外アリなんじゃないか?)

恭介「こいつならどうだ!……っと」メクリ

スッ

謙吾「ふっ…掛かったな!……くっ」メクリ

スッ

理樹(謙吾が突然、飛車を手に取った)

理樹「なるほど!陽動振り飛車か!」

恭介「くっ…だがこれなら……ってやり辛いわ!薄過ぎてめくりづれえっ!」

理樹「失敗か…」

案2 パンの袋を挟むアレで【プロポーズ】



真人「そうだ、これ指輪に使えるんじゃねえか!?」

理樹「指輪?」







次の日

教室

真人「じゃ、行ってくるぜ」

理樹「どうなっても知らないからね?」

真人「大丈夫だって!いざって時は『ドッキリでしたー!』って理樹が後ろから言ってくれりゃ…」

理樹「騙せると思ってたんだ…」

理樹(真人は西園さんと喋っている葉留佳さんに声をかけた)

真人「おい三枝、ちょっといいか?」

葉留佳「はいはい、なんですカ?真人君」

真人「これを受けっとてくれ…」

葉留佳「これってまさか…!」

西園「プロポーズ……ですか?」

理樹(真人は膝をついていかにもな箱を葉留佳さんの前に差し出した)

真人「さ、箱を開けてくれよ」

葉留佳「う、うん…」

理樹(どうやらあまりの急展開に頭がついて行ってないらしい)

カパッ

葉留佳「…………」

理樹(箱の中身はパンの袋を挟むアレだった。指輪に見立てたつもりなんだろう)

真人「これが…俺の気持ちだ。受け取ってくれ!」

スッ

理樹(受け取った!?)

葉留佳「おりゃ!」

グニッ

理樹(と、思ったら真人の太い指に無理やり挟んだ)

真人「イッテェェエエエ!!」

葉留佳「絶対に入らんでしょうがそんなもん!」

恭介「これも失敗か…」

ダメだ無理やり立ててみたが何も思いつかん
すまん、やっぱりこれは無かったことにしてくれ!
これはもう依頼に出す

マジで言ってるか!?
よし、分かった。ならもうどうなっても知らねえぞ!次は安価で…と言いたいが人がいるかどうかも分からねえから適当に案を出してくれれば次々と採用していくぜ!よろしく頼んだ!

http://i.imgur.com/7YVriRw.jpg
ちなみに参考画像

案3 パンの袋を挟むアレで【家を建てる】

理樹部屋

鈴「家を作ろう」

真人「は?家?」

恭介「おいおい、いくら俺でもそんな大量のパンの袋を挟むアレは持ってきてねえよ!」

鈴「お前たちは物凄い勘違いをしている」

理樹(首をチリンと横に振った。そして僕のベッドに我が物顔で寝ている猫に指をさす)

理樹「なるほど、鈴らしい考えだ」




1時間後

ペタペタ

真人「…………」

ペタペタ

謙吾「…………」

ペタペタ

恭介「…………」

理樹(僕らは一心不乱に……いや、心を無にして作業をこなしていた)

理樹(何故ならば無にしなければ、パンの袋を挟むアレをひたすら繋ぎあわせて長方形の板を作るという行為に疑問を持ってしまうからだった)

ペタペタ

理樹「………よし、出来た!」

真人「こっちも粗方完成したぜ…」

恭介「ていうか鈴!お前が言い出しっぺなんだからお前も手伝えよっ!」

鈴「あたしもちゃんと内装を作ったぞ!」



理樹(そうして僕らは板を張り合わせてキャットハウスを作った。これは数ある僕らのミッションの中でもなかなかシュールな部類に入るだろう)

恭介「よし、何はともあれ完成だ!」

ムクリ

猫「ナーオ」

ピョンッ

理樹(恭介の言葉を理解したのか猫が起きて早速、不細工な家の前に立った)

10分後



謙吾「ほーら!家の中にはお菓子もあるぞー!」

猫「………」プイッ

謙吾「くっ……」

真人「せっかく作ってやったのになんだよその態度はっ!」

理樹(あっさりそっぽを向かれた。しかしそれでは数時間かけた意味がないと4人で必死の誘惑を試みたがやはり気に入らなかったらしい)

恭介「これもダメか…」

案4 パンの袋を挟むアレで【ロボ作り】

カチャカチャ

恭介「ふんふんふーん…♪」

真人「へへっ…」

理樹(みんな穴に別のアレを挟んだり器用に仕上げていく。これも家作りの賜物だろうか)

恭介「出来た!」

理樹(恭介が完成させたのは赤青黄白と明るい感じのロボだった。何気にクオリティが高い)

恭介「どうだ見ろ理樹!ちゃんと武器も作ってあるんだ…その名もツインバスターライフル」

謙吾「か、かっこいい……!それ俺にくれ!」

恭介「ダメだ。こいつは俺が丹精込めて作った奴なんだぞ!渡すくらいならこいつを自爆させる」

理樹「言ってることが完全に子供だ…」

真人「ふっ…俺も出来たぜ」

理樹(真人も自慢げに僕らに見せてきた。真人のロボは全身赤一色だった)

理樹「うわぁ、なんか真人っぽい」

真人「だろ?これちゃんとこの通り変形も出来るんだ!」

理樹「それは凄いね」

理樹(やっぱりロボットは男のロマンだ。無駄に凝ってしまう)

恭介「甘いな真人少年」

真人「は?」

恭介「ガシャーン」

理樹(恭介が自分のロボットを体を捻るように回転させた。すると……)

恭介「俺も変形出来るぜ!その名もネオバードモード」

真人「なにぃ!?」

真人「ならこっちはスピーカーつけて爆音でイケてる音楽鳴らせる機能付きだぜ!」

恭介「それなら俺はパイロットの能力を底上げする機能、通称ゼロシステムを搭載だ!」

真人「さっきからズルいぞ恭介!カッコイイ言葉ばっかり使いやがって!」

恭介「これでどちらが一番カッコイイかは一目瞭然だよな?」

理樹「いや僕の方を見ないでよ…」

謙吾「ううむ…真っ赤で前衛的な機能を持った真人のロボも捨てがたいな……」

真人「な、ならこっちだってロボの名前を凄えかっこよくしてやるぜ!えーっとだな…ファイアー…」

鈴「さっきからうっさいわボケ!」

ゲシッ ゲシッ

真人「あ、ああーー!!俺のロボがぁぁーー!!!」

恭介「うぉぉおお!!ぜ、ゼロォー!!」

理樹(鈴の蹴りで部屋の隅へ飛ばされたロボ達とそれを追いかける高校生の2人。その光景はかなりシュールだった)

理樹「まあ、楽しめるのは男の子だけだからこれもあんまり使えないかな…」

案5 パンの袋を挟むアレで【仕分け】

寮長室

理樹(各々パンの袋を挟むアレの使い道は宿題として常にポケットへ忍ばせておくことになった)

理樹(そして委員会の仕事でさっそくその有用性を見つけることができた)

カタカタ

佳奈多「えーっと…」ブチッ

ポッド「シュゥ……」

佳奈多「あっ!」

理樹「どうしたの?」

佳奈多「しまったわ…またコンセントの抜き間違いでお湯のポットの方を抜いちゃったの。タコ足にしてしまうとどうしてもね…」

理樹「うーん……あっ」

佳奈多「?」

理樹(さっそくパンの袋を挟むアレを取り出してボールペンを取り出し『ポット』と書いた)

理樹「これをコンセントに挟めば……ほらっ」

佳奈多「なるほど。これならどれがどのコンセントか分かりやすくなるわね。たまには頭が冴えるじゃない」

理樹「えへへ…この調子で書いていこうか!」

佳奈多「挟むところを間違えないでよ?」

最終案 パンの袋を挟むアレで【強く生きる】


理樹「………」

鈴「………恭介…」

恭介「行ってくれ理樹…鈴を連れて……校門から出られる…」

理樹「校門…」

恭介「そうだ、もう振り返るな。校門を駆け抜けろ!もう迷うな!!とっとと行けぇぇぇえええええ!!!!」




…………………………

……………



理樹(う……酷いガソリンの臭いがする…)

理樹「う、うう……」

理樹(そうだ…僕らはバスの事故に巻き込まれて…)

鈴「理樹…そこにいるのか…!」

理樹「鈴!」

パチパチ……

理樹(状況は最悪だった。あちこちに立つ火柱。僕と鈴以外は全員気を失っていたのでそれがいつ何処かに引火して爆発するか分からない)

鈴「どうする…!?」

理樹「と、とりあえず助けないと……!鈴、担架代わりに出来そうな物を散乱してるカバンの中から探してくれない!?Tシャツなんかをありったけ!」

鈴「分かった!」

理樹(僕も丈夫な木の枝を見つけるとあらゆるカバンを漁った。すると一つだけカバンから溢れる小さく奇妙な形をしたものが目に止まった)

理樹「あ、あれは…」

理樹(パンの袋を挟むアレだ!)





タッタッタッ


鈴「…す、すまん理樹!どれも破れてて使い物になりそうなのは…」

理樹「大丈夫さ!」

鈴「……!?」

理樹(鈴は僕が手にしているものを見て驚いた)

鈴「なんだそれはっ!?」

理樹「見ての通りパンの袋を挟むアレさ!」

理樹(僕はパンの袋を挟むアレを無数に織り込んで柔軟性のある板にしたものを2本の木の枝に巻いた。パンの袋を挟むアレ特有の引っ掛けのお陰で端っこも止めることが可能だ)

理樹「さあこれを担架にしてみんなをバスから逃がそう」

鈴「わ、わかった!」

……………………………

……………





理樹「よし…これで最後だ…!」

鈴「み、見ろ理樹!」

理樹「どうしたの!?」

理樹「…………はっ!」


恭介「…………」


理樹(なんということだ。あの恭介が何故か後ろの方でバスに背を預けるように倒れていた)

理樹「まずい、意識がないらしい!」

理樹(それに腹部にも血が……)

鈴「助けよう!」






恭介「……………」

理樹「恭介!待ってて、今すぐ起こして……いや…」

理樹(物事は急ぎの用こそ冷静に…恭介が倒れているところをよく見てみた)

鈴「よし、手を貸せ理樹!」

理樹「待って鈴!恭介の背中をよく見てみるんだ!」

鈴「っ!?」

理樹(恭介はタオルのようなものをクッションにしてガソリンの補給部分を抑えていた。なるほど、ここからどかすとガソリンが流れ出て火に引火して………)

鈴「どうすればいい…!」

理樹「僕に任せて!」

理樹(僕はポケットのパンの袋を挟むアレを取り出した)



鈴・理樹「せーのっ」

ガバッ

理樹「今だ!」

理樹(2人で恭介を起こすと素早くパンの袋を挟むアレを隙間なくねじ込み、ことなきを得た)

理樹「よし、行こう鈴!」

鈴「ああ!」






……………………………………………………………



………………………………………



…………

学校

理樹(季節は夏の終わり。ちょうど夏休みが終わった頃だった)

理樹(バスの事故で死者は奇跡的にゼロ。よく助かったものだ)

ガヤガヤ

真人「いやぁ、それにしても理樹と鈴のお陰でこんなに早く退院出来たぜ!」

来ヶ谷「うむ。君らがその場にあったもので素早く対処していなければ退院が伸びるかそれともここにいることすら…」

理樹「感謝ならパンの袋を挟むアレにしてよ。出血を止める布を留めていたのもパンの袋を挟むアレだし骨折した足を固定したのもパンの袋を挟むアレなんだから」

謙吾「だが、リトルバスターズが揃うにはまだあと1人来ていないな」

葉留佳「そーっすねー!でもきっとすぐ来ますヨ!」


「俺を呼んだかい?」


理樹(窓の方から声がした)

ブラーン

恭介「どうやら良いタイミングだったらしいな」

「「「恭介(さん)!!」」

理樹(恭介はパンの袋を挟むアレを何個も繋ぎあわせたロープにぶら下がって降りてきた)

理樹「退院おめでとう!それにしても凄いや恭介はっ。もうそんな風にパンの袋を挟むアレを操ってるんだね!」

恭介「ああ。こいつはもう俺にとって手足のようなもんさ」

クド「考えてみると感慨深いですね…これまで私たちは名前も定かでないものに物凄く世話になったというのに誰もそのパンの袋を挟むアレの名前を知らないんですから」

謙吾「ああ、正式名称なら…」

理樹(と、謙吾が教えようとしたところで恭介が止めた)

恭介「ふっ…いいんじゃねえか?別にパンの袋を挟むアレのままで」

クド「ですが…!」

恭介「俺たちにとってもはやこれはもう家族のようなものなんだ。だからこそ、そんな慣れ親しんだ名称で呼び続けることがヤツに友情を示すことになる」

西園「深い……ですね」

理樹「パンの袋を挟むアレは最高だね!」

理樹(この言葉にその場にいた誰もが頷いた)

恭介「ああ。パンの袋を挟むアレは最高だ!いやっほーーう!パンの袋を挟むアレ最高ゥ!」


「「「パンの袋を挟むアレ最高!パンの袋を挟むアレ最高!パンの袋を挟むアレ最高!!」」」


~ミッションコンプリート~






終わり

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