朝潮さんと不知火さん (38)
朝潮と不知火。艦これ真面目コンビの交換日記
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不知火さんへ
『えーっと初めまして でいいのでしょうか。私は朝潮型駆逐艦一番艦、朝潮と申します。今日は本当にお疲れ様でした。私は交換日記をつけさせて頂くのは初めてですが、不知火さんのご厚意に応えられるよう精一杯書かせて頂きます。どうかこれから仲良くして頂けると嬉しいです』
朝潮さんへ
『こちらこそ初めまして。陽炎型駆逐艦二番艦、不知火です。ご厚意だなんて堅く受け取らなくて良いのですよ?私もあまりこうした日記のやり取りは慣れていないのだけれど、これからよろしくお願いしますね。それよりも貴方怪我の方は大丈夫ですか?いくら入渠で治るからといって空きが出るまで放置してはダメです。この後様子見に参りますね』
不知火さんへ
『昨日はお見舞いの程ありがとうございました。こんな私を一生懸命手当までして下さって、なんだか申し訳ないような情けないような。まだまだ自分は未熟なんだと思い知らされました。いつか貴方に恩返しできたらって思います。ところで不知火さんって凄く器用な方なんですね。タコさん型の林檎って初めて見ました。あれってどうやって作ったのでしょうか?よろしければ今度教えてもらえないでしょうか?』
朝潮さんへ
『え?タコ!?……あれはうさg……いえそうですね。自分でも見事なタコ林檎だと自負しております。作り方はえーっと、そう、提督から教わったものなのですが今一つマスターしきれていない身ですので、タコさん林檎についてはまた今度という事でお願いします。本当です。慣れない手つきで林檎を向いて兎からタコになったわけではありません。恩返しなんて考えないで結構です。今は早く元気になる事だけ考えて下さい。どうかお大事に』
不知火さんへ
『不知火さんのお陰で無事回復いたしました。今日から現場復帰です。とはいえいきなり前線に出るわけにはいかないという事で、今日は神通先輩からご指導を受けました。未熟な自分にあれだけ真摯に接して下さる先輩には本当に頭が上がりません。そういえば神通先輩から伝言なのですが、「最近不知火とも訓練していなかった。明日の17:00に演習場へ来るように」だそうです。あの神通さんからも期待されてるなんて、不知火さんは優しいばかりでなく凄く強い方なんですね!』
朝潮さんへ
『無事復帰おめでとうございます。復帰したその日に神通さんと訓練なんて、目を見張る根性だと思います。こちらこそ朝潮さんには頭が上がりません。本当に頭と右腕が上がりません。助けて下さい』
………
……
…
不知火さんへ
『今日は私にとって記念すべき日になりました!聞いてください!今日なんと!なんと私の姉妹艦である荒潮が海域から発見されたんです!久々にお互いの顔を見て思わず二人とも泣いてしまいました。日々訓練で鍛え上げたと思ってたのですが、精神面も自分はまだまだです。でも今日だけは妹に甘えて二人でゆっくり過ごしたいと思います。明日不知火さんに妹を紹介させて下さい』
朝潮さんへ
『姉妹艦との再会。おめでとうございます。私達艦娘にとって、姉妹の存在は血の通った人間のそれよりも自由で、そしてより掛け替えのないものなのだと考えます。私にも姉の陽炎と妹の黒潮が鎮守府にいますが、二人とも大事な無二の姉妹であり、頼もしい戦友でもあります。どうか姉妹と過ごす時間を大切になさって下さい。はい、明日が凄く楽しみですね』
不知火さんへ
『まずは不知火さん、違うんです。誤解だと思うので聞いてください。今朝不知火さんが部屋で見た光景はその、そういう意味のアレではなくて、朝潮自身そのような趣味はないと言いますか。荒潮と久々会ってはしゃいでしまったのか、二人でお酒を……大した量ではないのですが頂きまして、たしか隼鷹さんから貰ったのですが、凄く暑くなってしまい。とにかく服を着ないで抱き合ってたのはそういう事情があっての事という事でえと……ごめんなさい、大声あげて部屋を飛び出してしまって……。まさか不知火さんの部屋にまで押し入ってたなんて……なんてお詫びすれば』
朝潮さんへ
『大丈夫ですよ朝潮さん。私達は艦娘。明日をも知れぬ命です。そういう思い出も時には大事です。確かに真夜中に酔ったお二人が入ってきたときは驚きましたが、時には酒で身をさらけ出すのも軍人の常ですから。酒瓶から調べたですが、お二人が受け取ったお酒は元々提督が大事に保管していたのにいつの間にか無くなってた蒸留酒だと判明しましたので、隼鷹さんは提督の元に突き出しておきました。それからお二人が部屋に置き忘れてました服ですが、汗と皺でヨレヨレになっておりましたので私が洗濯しておきました。後で部屋まで届けますね』
不知火さんへ
『うぅ……すみません。何やら陽炎さんや黒潮さんも私達を介抱して下さってたようで、本当にご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありませんでした……。神通さんからは「このタイミングで敵襲があったらどうするつもりだ」とコッテリ怒られてしまいました。本当にその通りだと思います。2度とこんな醜態をさらさないと約束いたします。後、私達の服とか下着まで洗って下さって、もう私は艦娘である前に女としてどうしたらいいのか……』
朝潮ちゃんへ
『気にしないでいいよぉ~。あ、どうしても気になるなら不知火の下着とか洗ってあげたらどうかな?持ってくよ?ついでに私と黒潮のもお願いできると助かるかななんて(笑)』
朝潮さんへ
『上に書いてある事は気にしないで下さい。始末しておきましたので』
朝潮はんへ
『不知火姉はんと仲良くしてくれてあんがとぉなぁ~。困った時はお互い様。姉妹共々よろしゅうな♪』
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……
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朝潮さんへ
『昼間の朝潮さんの対応は本当に見事でした。艤装無しとはいえ、この鎮守府内での駆逐艦二強である夕立さんと時雨さんの喧嘩をたった一人で組み伏せるなんて並の艦娘に出来る事ではありません。那智さんや武蔵さんも貴方の事を褒めていましたよ。あれはひょっとしてプロレス技か何かでしょうか?是非今度ご指導ご鞭撻願いたいものです。元から二人とも良い子ですので素直に反省しており、規定以上の厳罰も特に必要なさそうです。ところでその当事者二人から事情を聴きました所、提督との外出デートを二人とも○月△日と同じ日にセッティングされていた事が発覚しまして、口論の末喧嘩になったのだそうです。全くあの方の人たらしには困ったものです』
不知火さんへ
『え?私も司令官との外出をその日に……少し確認してきます』
朝潮さんへ
『今朝の騒ぎは凄かったですね。流石の私も驚きを隠せませんでした。コンクリートの壁に人間が刺さる光景なんて初めて見ましたよ。あの技は私も知ってます。ジャイアントスイングって言うのでしょうか。提督への忠心極まった貴方と提督のあの性分から察するに、真面目な話をしてる最中にセクハラでもされたのが原因でしょう。これで少しは提督も身の振り方を改めてくれれば良いのですが。この時期反省室は冷えると思いますので、後で毛布を持っていきますね。ちなみに先に反省室にいる白露型二人に事の顛末を話しましたら随分とご満悦でした』
不知火さんへ
『うぅぅ……まさか自分が提督に対してあんな事をしでかすなんて思ってもいませんでした……。お尻を触られた途端に身体が勝手に……。加賀秘書官の恩情あって軽い刑罰で済みましたが。貸してくださった毛布、柔らかくてとても暖かかったです。先程時雨さんと夕立さんに会ったのですが、お礼を兼ねて今晩夕食をご一緒するお誘いを受けました。不知火さんも是非にとの事です。いかがでしょうか?』
朝潮さんへ
『昨日のお夕食、とても楽しかったですね。まさか酔った長門さんが乱入してくるとは思いませんでしたが、一番絡まれてた朝潮さんは大丈夫でしたでしょうか?「この子は大きくなったら私の後を背負って立つ子なんだ」と言われてましたね。戦艦長門にそこまで言わしめる朝潮さんは流石だと思います。長門さん曰く、将来私は加賀さん、時雨さんは扶桑さん、夕立は金剛さんの様な女性になるとの事ですが実際どうなんでしょう。朝潮さんは長門さんのような隠れロリコンにはならないでしょうし、私は加賀さんの様なツンデレではありませんし、夕立さんは金剛さんのように優雅にはならないと思いますが。時雨さんについては彼女としては本望なのかもしれませんね。ではまた』
………
……
…
不知火さんへ
『本日の支援艦隊任務、大変お疲れさまでした。不知火さんの作戦と射撃は正確かつトリッキーで朝潮には勉強になる事ばかりです。結果的に敵を叩くばかりでなく、敵艦隊の陣形を乱し本隊へのダメージを軽減させる事で敵を各個撃破、海域突破を完遂できましたね。ところで不知火さんには夢はありますか?補給してる最中に聞いたのですが、隼鷹さんは将来豪華客船として世界を巡りたいというご自分の夢を話してくださいました。私はというと、戦いが終わった後の事は余り考えたことがなくて、これといった夢というものがありません。不知火さんにはどんな夢がありますか?』
朝潮さんへ
『夢、ですか?そうですね。私も普段考えないようにしているのですが、艦娘の経歴で職を探すとなると貿易会社所属の海洋警備会社とかに就職とか考えております。提督からは海上保安庁の勤務も勧められましたが、終戦後になってまで国の機関で働くのは余り考えていないので。出来ればお金を貯めたら大学へ通って、海洋生物学を学んでみたいですね。なんだかんだで海に惹かれてる身なので』
『不知火はやっぱ堅いなぁ~。私は美容師!独立して店開いたらサービスするよ~』by陽炎
『ウチは旅行いってみたいと思ってるんよぉ。海はその頃多分飽きてるやろうから飛行機で!まずはヨーロッパ一周!あ、でもその前に大阪もええなー』by黒潮
『私は教師、かな。地理とか社会とかの』by初風
『ゆきかぜはですね!ふらいとあてんだんとになりたいです!』by雪風
『アスリート。目指すは陸上スプリンター』by天津風
『んー、ペットのお医者さんになりたい!』by時津風
『大坂で店開くのがうちの野望じゃけ。黒潮姉はん、一緒にどぉじゃ?日の本一のお好み焼き屋!』by浦風
『給料は使ってないから勝手に溜まってるしな。余生は定食屋でも開いて過ごすとしよう。日々働くのお父さん達の英気を養うのだ』by磯風
『他の夢じゃ、ダメでしょうか磯風姉さん?私は……そうですね。幼稚園の先生とか、やってみたいです』by浜風
『宇宙飛行士!』(シドニアの騎士読みながら)by谷風
『自分も余り将来の事は……でも人の役に立てる仕事がしたいですね。お金を貯めたら薬学の道へ進んでみたいと思ってます』by野分
『やっぱダンスかな~。戦争が終わって海外行けるようになったらアメリカへ留学したいです!』by舞風
『漫画家ー!!……も捨てがたいけど、今ある世界中の風景をあたしの絵で残しておきたいって思ってんだよね。なんかカッコいいですよね!孤高の旅人風景画家!!』by秋雲
『貴方達……これ私と朝潮さんの交換ノートなのだけれど……』by不知火
『雪風からノート渡されたから僕も書いていいのかな?僕は、建築士になりたいかな。変……かな?元艦娘の一級建築士。温かい家を作りたいな』
『じゃあ夕立はー!時雨と結婚してお嫁さんになるー!!』
………
……
…
~現在~
朝潮「ふふふッ」ペラッ
荒潮「あらあら~随分懐かしいの読んでるわね~」
朝潮「うん……大事な思い出だから」
荒潮「それにしても不知火さんって近寄りがたいイメージだったけど、姉さんどうやって仲良くなったの?」
朝潮「んー……ナイショ」
荒潮「えぇ~~!?ちょっと~気になるでしょぉ~?」
………
……
…
~7年前・別鎮守府にて~
不知火「ハァ……ハァ……提督は生存不明……ここももうダメね……生きてる人はいる……?」
朝潮「……うぅ」
不知火「……まだ息があるわね。あなた、立てる?」
朝潮「て……敵、は……」
不知火「大体は引いたみたいだけど……軽巡2隻に駆逐4隻いるわね。逃げ切るだけならまだ……」
朝潮「私は……いい」
不知火「何言ってるの。ここにいれば死ぬわよあなた」ガシッ
朝潮「もう燃料も……弾薬も……ないの。だから貴方だけで……。的になるだけなら私でも……」
不知火「……貴方、名前は?」
朝潮「あ、さ……しお」
不知火(朝潮……霰と霞の姉か)
朝潮「姉妹も友達も皆沈んじゃった。行くところなんてもうないんです……。足を引っ張るくらいならここで」
不知火「……」ガチャガチャ キューーーーー
朝潮「な、なにを」
不知火「よかった。型が違うから上手く入るか不安だったから。半分だけど、私の分の燃料と弾薬入れました」
朝潮「そんな……無理です……もう」
不知火「これであなたと私は姉妹ですよ。少なくとも今この場ではたった二人の肉親。大丈夫です。きっと助かります」
朝潮「……」
不知火「しっかりなさい。霰と霞。戦友の身内を見捨てたとあっては私は軍人の恥を被る事になります」
朝潮「……ひどい妹ですね」ガシッ
不知火「私は小破で貴方は中破。敵旗艦はエリート級の軽巡。私が横っ腹に魚雷を当てた後は全速力で駆け抜きましょう。上手くいけば別の鎮守府に辿り付けるはずです」
朝潮「……私は敵艦の目を潰します。大丈夫です。折角下さった弾は無駄にしません」
不知火「生き残りましょう」ギュッ
朝潮「……はい」ギュッ
………
……
…
朝潮「」パタン
荒潮「朝潮姉さん?そろそろ大学でしょ?」
朝潮「あ、もうそんな時間?」
荒潮「あと講義の前に不知火さんと会うんでしょう~」
朝潮「そうだった!!」
荒潮「怖いわよ~約束の時間すっぽかしちゃったら~。今や泣く子も黙る海のボディーガードですもの」
ピンポーン
朝潮「あ」
荒潮「あらあら~お迎えが来たみたいね♪」
ガチャ
不知火「おはよう。朝潮」
朝潮「おはようございます!不知火!」
終戦。
艦娘達が軍務を解かれて早数年。
彼女らの夢の航路はまだまだ続く。
取り敢えずここで終わり
このSSまとめへのコメント
面白かったで!!
またこの二人メイン(+真面目そうな磯波辺り加えて)で書いて欲しい