理樹「リトルアフターズ!」 (43)

ガチャッ

理樹「よいしょっと…」

理樹(今日は仕事の帰りに電気屋さんへ寄って、注文していた扇風機を取りに行った)

理樹(奮発して羽根がない面白そうなのを買ったせいで今月の食費はかなり抑えなければならない)




……………………

ブーン

理樹「お、おお…」

理樹(これは凄くテンションが上がる…)

ピンポーン

理樹(新感覚を楽しんでいたところにチャイムが鳴った)

理樹「……?」

理樹(小窓を覗き込むと隣のおばさんだった。両手には鍋を持っている)

理樹「うわ、悪いなあ…」


ガチャッ

理樹(とぼけた顔を作ってからドアノブを開けた)

「こんばんわ直枝君。ごめんねぇこんな時間に」

理樹「いえいえ。どうかされましたか?」

「ええ、実は晩ご飯作り過ぎちゃったから直枝君食べるかしらと思って」

理樹「ええ!いいんですか?」

「いいのよっ。どうせ余らせちゃうし」

理樹「すいません、ありがとうございます!」

理樹(本当にこの人の隣に部屋を借りててよかった…)

「ところで聞いてくれない?この間、斎藤さんの息子さんが野球部辞めちゃったんですって…」

理樹「へえ、それはそれは」

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……………………

理樹「美味しいな…これで2日はおでん三昧かな」

ピッ

『逆転スリーラン!今シーズンの第一号はバース!』

理樹(テレビをつけると、さっきのおばさんの話の続きと言わんかのように野球中継が流れていた)

理樹(野球か……)

恭介『ミッションスタートだ!』

理樹「……みんな元気かな」

理樹(リトルバスターズは僕の青春そのものだった。彼らに会わなかった人生なんて考えられない)

理樹(あの、両親を亡くして一番辛かった日々。毎日ふさぎ込んでいた日々。そんな僕の前に、四人のヒーローが現れて、僕に手を差しのばしてくれたんだ)

理樹(学校へ入って新しい仲間も増えて…それが、ただただ楽しくて…)

理樹(思い出を楽しんでいると、ふつふつともう一度みんなと会いたい気持ちが込み上がってきた)

理樹(卒業して5年が経った。そのまま散り散りになってからメンバーとはあまり会っていない。あの10人全員でもう一度再会すればきっと楽しいに違いないぞ!)

理樹(思いつくが早いか携帯を取り出すと早速全員のメールアドレスを探し出した)

理樹「誰も変わってないといいな…」

理樹(それは連絡先が、という意味だけではなかった)

理樹(連絡先はちゃんと全員分あった。そして胸を弾ませながら今週の日曜日に遊べないかどうか一斉送信で聞いた)

……………………



ピロン

理樹「おっ」

理樹(ドキドキしながら携帯を開く。最初の宛先は…)

理樹「恭介かっ」

理樹(一番乗りはだいたい予想通りだった。しかしその返答だけは僕の予想を大きく覆した)

恭介《すまない。誘ってくれるのは凄く嬉しいんだが来週はそこまで余裕はない。少しは自由に出来る時間もあるが、遊ぶとなると時間はほとんどないんだ》

理樹(ショックだった。恭介は必ず来るという根拠のない自信があっただけに落胆は大きい)

理樹(誰しも忙しい時はあるにせよ、あのいつも面白い遊びばかり考えていた恭介が行けないなんて…)

ピロン

理樹(そうこうしていると次のメールが届いた。謙吾だった)

謙吾《遊びの招待に感謝する。しかし悪いが、俺はどうも行けそうにない。というのも俺の立場上、休日は道場の子供たちを見ておかないといけないのでな。平日なら行けないことはないが、今回は見送らせてくれ》

理樹「そんな…」

理樹(恭介に続いて謙吾まで…)

ピロン

理樹「……小毬さんか」

小毬《メールありがとう(^^)!でもごめんなさい、今ちょうど忙しい時期で行けないのです…凄く行きたいのに本当にごめんね(T_T)私のことは気にせず他のみんなと楽しんでください!》

理樹(なんで、どうして…)

理樹(あれから鈴以外のみんなの返事が届いた。結果は全員同じ)

理樹「は、はは…」

理樹(みんなから申し訳なさそうに断られてバカみたいだな。おかしくって乾いた笑いしか出てこない)

理樹(誰もかれもしょうがない理由があった。社会人ってこうも自由がなかったか?)

理樹(そりゃ、いきなり誘ったし全員の予定が合うとは思ってなかったけど…)

ピロン

理樹(鈴からだ)


鈴《いいぞ(∵)》


理樹「!」

理樹(その3文字と無愛想な顔文字に救われた気がした。だけど恭介のことだからとわざと意地悪して結局みんな来るという都合のいいイタズラも期待してあったので、それが無いと分かって少し落胆した)

理樹「結局鈴だけか……」

理樹「寝よう…おやすみ」

真人『おう!おやすみっ』

理樹(独りきりの深夜がセンチにさせるのか、幼馴染みの元気な声が恋しくなって少し息が詰まった)

土曜日

ジリリリリ

理樹「ううん……」

ピッ

理樹(最悪の目覚めから起き上がった。隣には開かれたままの型落ちケータイが転がっている)

理樹「ふぁぁあ……」

理樹(それなりに仲のいい仕事仲間は居ても休日は家に引きこもりっぱなしな事が多い)

理樹(出かけるとすれば買い物に街のデパートへ行くか、近くのネットカフェで時間を潰すかだ。周りがやたらと騒がしかったあの頃が恋しい)

理樹「ご飯は…おでんがあるか」

理樹(まだまだ日曜日の夜まで保つはずだ。録り貯めていた映画もあるし今日はずっと寝て疲れを癒そう)

……………………





TV『~~~~~』

理樹「…………」

理樹(今日も無駄に時間を潰したな…面白くない休日だ)

TV『私は12歳の時に持った友人にまさる友人をその後持ったことはない。誰でもそうなのではないだろうか』


『強敵があらわれたんだ!きみの力がひつようなんだ!』


理樹(僕がみんなと最初に出会ったのはいつだったか…)

理樹(…………………。)


理樹(…………。)


理樹(…。)

…………………



コンコンッ

理樹「………んん…」

理樹(ノックの音で目覚めた。そうか、昨日テレビ点けたまま寝ちゃったんだな)

コンコンコンッ

理樹「…は、はい、今行きますっ」

理樹(冴えろ頭!このアパートを借りてから来客なんて滅多に来ないぞ!)

コンコンコンコンコンコンッ

理樹(大家さんか?特に変な事はしてないけど…それとも隣の人がそろそろ鍋を返せとでも…)

理樹「うーん?」

理樹(小窓を除いた)

理樹「…………!?」

鈴『お前の家は本当にここなのかー?はよ開けろっ!』

理樹(鈴!?鈴だって!?)

理樹(鈴がいた。大人になってますます女の子らしくなっていたがほぼ間違いない。あの髪飾りもまだ健在らしい)

理樹(しかし感動を覚えている暇はなかった。急いで携帯を確認する。もう昼の12時だった。そして朝からこんなメールも届いていた)

鈴《それじゃあ昼に行くからな》

理樹(しまった…ちょっとまずいなこれは…)

理樹「鈴、聞こえるー?」

鈴『うん』

理樹「3…いや、5分だけ待っててくれない!?ちょっと立て込んでるんだ!」

鈴『しょーがないな…』

理樹(というか部屋にあがる前提だったのか…とにかくミッションスタートだ僕!台所は隠せばなんとかなる。布団は1分で仕舞って、居間のお菓子のゴミとゲームは2分ほど。そしてあとは着替えを1分で済ませればまだ誤魔化し切れるぞ!)

バタバタッガッシャーンッ

………………………


ガチャ

理樹「はぁ…はぁ……お、お待たせ」

鈴「おお。何やってたんださっきから」

理樹「いや、まあ…」




居間




鈴「そうか…あたし達だけか」

理樹「うん。みんな忙しいって」

鈴「うーん…アンニュイだな。凄くアンニュイだ」

理樹「それ意味分かって言ってる?」

理樹(鈴は相変わらずのようでほっとした)

鈴「………すんすん」

鈴(鈴が台所の方に鼻を向けた)

理樹「どうしたの?」

鈴「いや、なんか凄くおでんの匂いがしたんだ。あと、それとは全く関係ないがもうすぐお昼の時間だな」

理樹「……….えっと…おでんあるけど食べる……?」

パクパク

鈴「美味しいなっ。料理が出来る男は良いお嫁さんになれるぞ」

理樹「一つのセリフでもう矛盾してるよ。あとこれ僕が作ったんじゃないからさ…」

理樹(鈴は現在、大学へ進み、実家でのんびり過ごしているらしい。ちゃんとそっちでも友達がいるようで恭介は凄く安心していたのを思い出した)

理樹「そういえば鈴はもう大学は今年で卒業だよね?」

鈴「そーだな」

理樹「この先どうするか決めてるの?」

鈴「うーん…まあ適当に恭介みたく就活して適当に働くだろうな」

理樹「恭介も就活は適当じゃなかったと思うけどね…」

鈴「それか誰かの居候になるのもいいな。一生働かずに済む………おっ」

理樹「いやいやいや…『あ、こんなところに丁度居候させてくれそうな奴がいた』って顔で見ないでよ…」

鈴「ダメなのか?」

理樹「いや、ほらさ、仮にも異性の2人が同棲ってなんだか、いかがわしい関係みたいじゃない」

鈴「じゃあ結婚するか?」

理樹「じゃあって何さ!?」




理樹(すっかり鍋は空になった。ちょうど飽きてきたところだし別にいいか)

理樹「ふわあぁ…ご飯食べたら眠くなってきちゃった…」

鈴「食べてすぐ寝たら牛になるぞっ」

理樹「うん…そうだね……」

理樹(強烈だけど心地良い眠気が僕を襲う。そのうち相槌も曖昧になっていった)

鈴「本当に寝るのか?」

理樹「うん…」

理樹(静かな空間。窓から射す陽射しが僕の背中を優しく撫でた)

鈴「まったく…しょうがない奴だな」

理樹(瞼を閉じると甘い香りが鼻をくすぐった。鈴が近くに寄ってきたんだろう)

鈴「お前は本当に昔から変わらん」

理樹(今度は鈴に髪を撫でられる)

理樹「それは鈴も……だよ…」

理樹(それが僕が寝る前、最後に覚えていた言葉だった)

…………………
………



恭介『よし、りき。さっそくお前には第一のしれいを……しれい?いや、なんか悪役っぽいな…そうだ、ミッションだ!』

理樹『ミッション?』

恭介『ああ。お前にはミッションを与える』

理樹『ぼくそんなの出来ないと思うけど』

恭介『いや、出来なきゃリトルバスターズにいれてやれねえんだ。これは入団テストだからな』

理樹『テスト?』

真人『なに、ピンチになったら俺がたすけてやるよ!』

謙吾『…それじゃあテストじゃないだろ』

恭介『ほら始めるぞ!いいか?あそこにいる飼い犬がいるだろ…?』

理樹『うん…』



………
………………




理樹「………はっ…」

ジャーッ

理樹「………」

理樹(カチャカチャと食器がぶつかる音で目が覚めた)

鈴「ねこねこうたうー…」

理樹「…夢か」

理樹(鈴だ。一瞬状況が把握出来なかった。そうだ、鈴は僕のうちに遊びに来て、それで…今は何故かお皿を洗ってくれている)

鈴「今日はー雨のうち晴れ…♪」

理樹(鈴なりの一飯の恩義という奴だろうか)

理樹「………」

理樹(なんか、こんな光景をどこかで見たことがある気がする…ずっと昔に……)

理樹「おはよう」

鈴「おお、起きたか。ちょっと待ってろ、もうちょっとで全部終わるからなっ」

理樹「ありがとう。僕も手伝うよ」

鈴「ん…」

理樹(瞼を擦って立ち上がると、肩を並べてスポンジを取った)

……………………


夕方

ボーン

理樹(鳩の声が鳴った。そこで部屋がもう薄暗くなったことに気付く)

鈴「もうこんな時間か。晩御飯もあるから今日はここまでだな」

理樹(まだ一緒に遊んでいたいな)

理樹「そっか、送って行くよ」

鈴「悪いな」




河原

理樹(2人で歩いていると学生の頃、猫のペットフードを買い出しに行った事を思い出す)

理樹「そういえば今は鈴の家に猫何匹いるの?」

鈴「もう1匹しかいないな。恭介が拾ってこないから増えないんだ」

理樹「そっか。恭介も一人暮らしだもんね」

理樹「……………」

鈴「…………」

理樹「あのさ」

鈴「?」

理樹「今日は楽しかったね」

鈴「そうだなっ」

理樹(よかった。退屈させなくて)

鈴「でもみんな来ないのは寂しかったな。みんな忙しいんだな」

理樹「うん…きっと用事がたまたま重なっただけだよ……」

鈴「……理樹?」

理樹「いや、もう集まる事なんてないかもしれないね」

理樹(思えば卒業してからもう会ってない人だっている。それなのに本気で全員集まると思ってたのか僕は。そんなのもう不可能に近いのに)

理樹「リトルバスターズは、僕の大好きなリトルバスターズは知らない間に散りじりになってしまった」

理樹「いろんな馬鹿をやってきたみんなはもう居ないかもしれない」

理樹(来ないことに非難している訳ではない。むしろそうなってしまうのは社会に出たら誰だってそうなってしまうものだ)

理樹(型破りで輝いていたあの日の恭介達がそのまま僕の目の前に現れてくれることはもうないんだと思うと)

鈴「理樹…」

理樹「あっ!いや、ごめん変なこと言っちゃって!」

鈴「変じゃない。なんとなく分かるぞ。今理樹が言ったこと」

理樹(今日の僕のような少年の心はいつか消え失せて、他の大人と同じように外で遊ぶなんて思いつかなくなるかもしれない)

理樹(いつか『ずっとこんな日が続けばいいのに』と思ってた時があった。なんでもない楽しかった日常はもう戻ってこないんだ)

理樹(型はもう破れない。社会に入ってしまうと共に大人と正反対のような存在だったリトルバスターズは永遠に戻ってこれない気がした)




……………………




ジリリリリリリ

ピッ

理樹「……また来てしまった…土曜日」

理樹(学生の頃は休みの日が来ることを苦痛に感じるなんて夢にも思わなかっただろうな)

理樹(外に出れば家族連れやカップルがいる。昔は恭介達がいたから良かったけど今は本当に孤独だ)

理樹(それを嫌でも再確認させられる休日は出来れば来てほしくない。それか友達が欲しい)

理樹「…今日はあっちへ行こうかな」

理樹(普段は行かない学生の時によくお世話になっていた街に向かうことにした。誰か知り合いに会わないかな)



理樹(買い物は済ませた。お昼は適当にファーストフードで済ませよう)

………………………


バーガーショップ

店員「いらっしゃいませー」

理樹(珍しく空いてるな…ありがたい)

理樹「どれにしようか……」

「レギュラーバーガー、ピクルス抜き、トマト抜き、ケチャップ増量」

理樹「えっ!?」

理樹(なんだ今の注文は…トマトを抜くのにケチャップ増量だって!?)

店員「レギュラーバーガー、ピクルス抜き、トマト抜き、ケチャップ増量一つー!」

理樹(しかも店員さんは慣れた感じで後ろにオーダーを回す)

理樹「………っ」

理樹(何気ない風を装ってその注文した人の顔を確認してみる)

「なに、貴方なの?」

理樹「どわあっ!」

理樹(振り返った瞬間、二つの意味で度肝を抜かれた。一つ目はその人が僕の行動を読んでいたかのように接近して目を合わせてきたことと、もう一つは…)

佳奈多「久しぶりね。直枝理樹」

理樹「ふ、二木さん…お久しぶり…」

テーブル

理樹「二木さんって凄い注文の仕方するんだね」

佳奈多「ふん。ここに来るといつもあなたみたいに顔を確認してくる輩がいるのよ。まさか直枝がこんなところに来るとは思わなかったけどね」

理樹(ハンバーガーのはみ出たお肉達を丁寧に直しながら言った)

理樹「いや、僕としては君がこんなところへ来る方が予想外なんだけど」

理樹(それにしてもびっくりしたな。髪型もポニーテールにしてるから一瞬誰だか分からなかった…いや、むしろこの5年で変わらない方が不自然か)

佳奈多「こんなところへ来て悪かったわね。どんな所なら自然に見えるのかしら?」

理樹「中身は相変わらずか」

佳奈多「……どういう意味かしら」

理樹(しまった!つい口に出してしまった!)

………………



佳奈多「…であの時女装してたんですって?あとでクドリャフカから聞いたけど」

理樹「いや、まあ…あはは」

佳奈多「ふむ。全然変わってないから今でも分からないかもしれないわね。あなたナヨナヨしてるし」

理樹「酷いな、そういう二木さんだって変わってないじゃないか。今日は1人?」

佳奈多「…どういう意味よ」

理樹(意地悪を言ってみよう)

理樹「いやぁ、こんな年頃の人なら彼氏の1人や2人連れててもおかしくないよな~と思ったんだけど。もしかして外で待ってるの?あっ、それなら僕といるところ見つかったらややこしいよね。ごめんごめん、もう僕行くよ」

佳奈多「それあなたも同じ事言えるわよね?」

理樹(ぐうの音も出ない)

佳奈多「……それにしても懐かしいわね。高校以来の再会は。あんなに劇的なことがあったのにもう忘れかけていたわ」

理樹「案外そんなものなのかもしれないね…今でもうまくいってるの?」

佳奈多「ええ、心配いらないわ。葉留佳もあんな問題児だったけど今はいくらか大人しくなってるし」

理樹「よく考えるといつも二木さんには迷惑だったんだろうね僕達…」

佳奈多「そうでもないわ。あれでも楽しんでたほうよ」

理樹(どこに目線を向ける訳でもなく呟いた)

理樹「そっか」

理樹(…………)

理樹「二木さん」

佳奈多「なに?」

理樹「僕、先週にリトルバスターズのみんなで集まろうって言ったんだ」

理樹(言葉で上手く言い表せなかったモヤモヤを誰かに聞いてもらいたかった)

佳奈多「そ…」

理樹(全てを聞いた二木さんはそう返してきた)

理樹「えっ、それだけ?」

佳奈多「いえ…誰も似たようなことを体験するのかって思ってね」

理樹「というと、二木さんも?」

佳奈多「悲しいわよね。信じてた人に裏切られた気分になるわ」

佳奈多「でも大人になると言うことは後ろを振り返ってしまうということ。あの頃の『後のことを考えない』ってのはもう出来ないのよ」

理樹「………」

佳奈多「そうね…私もクドリャフカとはたまに日を合わせては会う日を作ってるけどそういうんじゃないのよね」

理樹(そう、そうなんだ。そういうんじゃない。もっと気軽に…もっと近くにいるようなあの感覚がたまらなく恋しいんだ)

佳奈多「しょうがないけどそれは諦めなさい。奇跡が起きない限り、あの日曜に友達の家にチャイムを鳴らす日常は戻ってこないのよ」

理樹「時でも戻さない限りね」

佳奈多「でも、そう悲観することはないわ。確かにこれまでの関係が脆く崩れていくのは止められない」

佳奈多「だけどこれからの生活だって良いことはある。学生の頃とは一味違う本気の恋愛だったり、仕事や趣味を通じて友人が出来ると、それは生涯ずっと付き合っていくことになるかもしれない」

理樹「僕の友達は今でも生涯の仲間だと信じてるよ」

佳奈多「そう。それならいいわね」

理樹(あえて否定はしないでくれた)







…………………

アパート

ガチャ

理樹「ただいま…」

理樹(これからか…果たしてこれから恭介達と同じくらい最高の友達が作れるかどうか…)

佳奈多『一応これメアド。暇だったら話し相手くらいにはなってあげるわ。寂しがり屋さん』

理樹(…本当に出てくれるのか疑問だ)

理樹「…今日はカップラーメンでいっか…」

理樹(とても料理をする気分じゃない。今週は3連休だしもうダラダラ寝てようか)

理樹「はあ…」

ピンポーン

理樹「誰だこんな夜中に…」

理樹(今月は来客が多いな…)




スッ

理樹(小窓を覗いた)

理樹「…………はあ?」

理樹(小窓にはプラカードを持った人(足しか見えない)が立っていた。そしてそこに書いてあるメッセージは)

理樹「『開けてみろ』?」

理樹(よく聞くと数人の人がコソコソと話し合っているのが聞こえる)

理樹「まさかな…」

理樹(こんなの夢みたいだ。本当にドアを開けて不審者だったら僕は馬鹿だ。…でもこういうことをする人達といえば僕は地球上で10人しか知らない)

理樹「ふ、ふふ…」

理樹(ドアを勢いよく開けた)

グイッ



「「「理樹くん!遊びましょ!」」」



理樹「まったく…とりあえずあがりなよ、みんな」

理樹(最初に飛んできたのは葉留佳さんだった)

葉留佳「ひゃっほーい!理樹くんの家一番乗りー!」

謙吾「相変わらず騒がしい女だ…」

真人「まったくだぜ!」

来ヶ谷「君が言えることではないがね」

クド「わふー!リキ、ろんぐたいむのーしー!なのですーっ!」

西園「なかなか味のある部屋に住んでいますね」

小毬「理樹くん。この間は行けなくてごめんね~」

鈴「ふん…」

理樹「これは…いったい…!みんな…あははっ」

理樹(言葉にならない。奇跡とはこういうことを言うのか!)

恭介「理樹。どうだ、全員集合した感想は?」

理樹「夢みたいだよ…まさか恭介がみんなを?」

恭介「いや、違うよなみんな!」

理樹(恭介がみんなに呼びかけた)

真人「へっへっへ…」

鈴「………」

理樹(全員の視線が鈴に集中した)

理樹「…り、鈴なの?」

恭介「今日な、鈴がメールでこう送ってきたんだ。『なんでみんな来ないんじゃΣ(∵)りきがすごい落ち込んでたぞ!リーダー命令を無視するのか!』ってな」

理樹「へえ……」

鈴「ゆーな!恥ずかしいわっ!」

来ヶ谷「その言葉に私達は昔を思い出したんだ。リトルバスターズがどれだけ素晴らしいチームだったかを」

真人「そこでみんな無理してこの3連休の予定を空っぽにしたんだ。謙吾なんか今頃誘拐届け出されてんじゃねえか?」

理樹「そんな…みんな僕のために?」

恭介「理樹はリーダーだからな。それに気付くのに少し手間取ったが、もう大丈夫だ。この休みは思っ切り遊ぼうぜ!」

理樹(そういうとみんなテーブルを囲って荷物を取り出した)

葉留佳「じゃじゃーん!やっぱり大人数で食べるといえば鍋っしょー!」

小毬「理樹くんがまだご飯食べてないようで良かったよ~」

理樹(小毬さんと来ヶ谷さんが手際よく鍋の用意をしていく)

恭介「さあみんな手伝え!」

…………………

………



理樹(僕の殺風景なお茶の間はあっという間に賑やかになった)

真人「なぁ、もう待てねえよぉ!」

来ヶ谷「うむ。そろそろ開けてもいい頃合いだろう。美魚くん」

西園「はい」

理樹(満を持してミトンで鍋の蓋を掴んだ

カパッ

「「「おおーーっ」」」

理樹(一気に部屋の中にいい匂いが広がった。口の中にヨダレが溜まる)

真人「よっしゃあ!」

理樹(箸を鍋に突っ込んだ真人を謙吾が、これまた箸で止めた)

謙吾「待て。その前に言うことがあるだろう?」

真人「おっと、そうだったな。それじゃあ…」

「「「いただきますっ!」」」

理樹(懐かしい。何もかもがあの頃と一緒だ)

葉留佳「ほーらクド公!5年振りに回れ回れ~!」

クルクルクル

クド「わふーーー!?」

恭介「へえ、辛いけど美味いなこれ!」

来ヶ谷「ああ。こっちはキムチ鍋だ。そしてそっちが…」

トントンッ

理樹「うん?」

鈴「理樹。明日は遠くの方まで行って海に行くんだ。色々あるからどこ回るか一緒に決めよう」

理樹「あっ!……ここって…」

鈴「ああ。私達が2回目に行った修学旅行の所だ。恭介が決めたんだ」

理樹(きっと僕がそこを気に入っていたのを覚えていてくれたんだろう。流石は恭介といったところか)

ポロポロ

理樹「あれ…ははっ……グスッ」

鈴「?」

理樹(どうしたものか涙が溢れてきた。何もこんな時に泣かなくていいのに)

理樹「ごめん…ちょっと……しばらくおさまりそうにない」

理樹(目の前の鈴以外には出来るだけ気付かれないよう肩で泣いた。すると鈴はこう言った)

鈴「やれやれだな。理樹は相変わらず泣き虫だ」

鈴「昔とまったく変わってない」

終わり

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