加蓮「『あなたが付き合ってくれるなら……』」 (626)

※モバマスSS ……たぶん……
複数P世界、安価スレ
エロ・鬼畜は安価下
誤字脱字・駄文・亀注意
オリジナル設定注意
長期戦注意

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亜季「『皆の者、私に付き合え!』」
亜季「『皆の者、私に付き合え!」 - SSまとめ速報
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保奈美「『私に付き合いたくないの?』」
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沙紀「『僕は付き合うのはごめんですな』」
沙紀「『僕は付き合うのはごめんですな』」 - SSまとめ速報
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美玲「コイツらに付き合ってる場合じゃないぞッ!」
美玲「コイツらに付き合ってる場合じゃないぞッ!」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442822174/)


の続きです
中盤の100-4-1作目
3部で中間地点ですから…………
奈緒、メタスラ3のファイナルミッション並みの中間地点の模様………

1864年 南軍司令部



亜季「……シャーマンがジョージアに再び進入して来たか……恐らく目的はアトランタ・テネシーと西部を結ぶ鉄道の破壊と見て間違い無いだろう………」

亜季「……そうなれば我が軍の補給路は断たれ、完全に分断される。……それだけは避けねば…………いや、避けられるのか…………?」

亜季「……ジョー将軍が幾ら奮闘してくれているとは言え、この兵力差では………だと言うのに、我々は一兵の増援すらも送ってやる事は出来ない……」

亜季「………ジャクスンに続いて…………ジャクスン……お前さえ居てくれたなら…………………」

亜季「………何故…傷の具合がそれほどまでに悪いと教えてくれなかったんだ………!………私が、余計な事で頭を悩まさないように、か?………っ………………」

亜季「………どうして……私を置いて逝ってしまったんだ………!」

亜季「……………………………」

亜季「……ジョージア………南軍の兵站や工場が集中しているジョージアを……シャーマンがどうするつもりは目に見えている…………全てを灰燼と為す……それがシャーマンの…グラントのやり方だ………」

亜季「…………私は……故郷と人々の未来を守るために軍人になったはずだ………しかし、結果はどうだ!……数多くの都市は焦土と化し……ジョージアにまで、その手は伸びようとしている………………」ギリ……

亜季「………そして、私は多くの人々を死地に追い込み、今からもそうしようとしている………ああ……どうして死ぬのが私では無いんだ………!」

亜季「……………教えてくれ、ジャクスン………私は……どうすれば良いんだ…………?」

亜季「………………………………」

亜季「…………………っ……………」

ピティパット叔母の家



清良「幾らジョージア州に北軍が侵入して来たからといって、何も心配する事はありませんぞ!」

瑛梨華「まぁ……そ、そうなんですか……?」

清良「ええ!何故ならあの辺りではもう三年も戦いが続いておりますが、一度たりとも突破をされた事は無い!しかも、迎え撃つはリー将軍に次ぐ名将ジョー・ジョンストン将軍!」

保奈美「ジョンストン将軍と言うのはどんな人なんです?」

清良「有能な将軍ですな。名誉ある戦死を遂げた、『ストーンウォール』ジャクスン将軍には流石に及ばないが……彼もまた鉄壁将軍と呼んで差し支えは無いでしょうて。」

沙紀「鉄壁将軍…鉄壁将軍……成る程、成る程。」

清良「………何か…?」

沙紀「いえいえ、ウェードに言い聞かせていたのですよ。おー、よしよし。」ナデナデ

仁奈(ウェード)「くー…くー…」スヤスヤ

保奈美(…この人見知りする赤ん坊は何だってバトラーにだけこんなに懐いているのかしら……?……バトラーだってやたらとこの赤ん坊を可愛がっているように見えるし………(…仁奈ちゃん……演技派ね………))

沙紀「私の事はお気になさらず、どうぞお続けください。」

清良「…………うむ……」

清良「ゴホン……つまりどういう事かと言うと、アトランタに北軍の連中が攻め入って来るというような事はまずありえない、と言う事ですな。」

加蓮「………良かった……今北軍が攻めてきたらと思うと……怖くて怖くて……………」サスサス…

朋「大丈夫よ、大丈夫。この人がこう言ってるんだもの。……大丈夫よ……」

加蓮「そうですよね……ミード先生が仰ることに間違いがあるはずがありませんもの……」

沙紀「…………………」ナデナデ

仁奈「くー……くー…………」

清良「ウィルクス大尉もすぐに帰ってきますわい。彼は北軍にやられるような男ではないですよ。」

加蓮「……ありがとうございます……………」

清良「彼に元気な赤ん坊を見せてやりましょう。ささ、体を大事にして今日はもう横になっていなさい。」

瑛梨華「では、私が…………」

清良「ふむ、お頼みしましたぞ。」

加蓮「…ありがとう、叔母さん……では…………」

瑛梨華「ゆっくり歩くんですよ…」

保奈美「………………………………」

〜〜〜


清良「……ウィルクス夫人には本来出産は危険すぎるのだが…………皆さん、では南軍の勝利を願って……」

沙紀「……ミード博士、少しお尋ねしたい事があるのですが、構いませんかね?」

清良「…………何だね…?」

沙紀「どこかで小耳に挟んだのですが、シャーマン軍はシェリダン軍が合流して今や十万を超える大軍になったそうではないですか?」

清良「……それがどうしたと言うのです……?」

沙紀「>>11

沙紀「本気で勝てるとお思いですか?」

清良「あなたは我が軍が負けるとでも思っているのかね?」

沙紀「一介の山師に過ぎない私には判断を付けかねますので、こうしてあなたにお伺いしているのです。」

保奈美(また始まった……)

沙紀「アトランタを代表する知識人であられるミード博士がそう仰られる理由を私にも教えていただけませんかねぇ?」

清良「……………………………」

沙紀「…………………………」

清良「……よろしいでしょう。まず第一に我が軍の兵士は忠国の有志ばかりです。」

沙紀「成る程。ジョンストン将軍麾下の兵力はこの前の勝利に勇気付けられて帰って来られた脱走兵諸君を入れても4万人足らずですが、愛国心があれば二倍以上の兵力差なんぞ些細な物かもしれませんねぇ。」

朋「む……失礼だけど、南軍に脱走兵なんか1人もいないわよ。」

沙紀「これはこれは失礼しました。脱走兵ではなく、休暇からうっかり原隊に復帰し忘れていたり、負傷から回復したにも関わらず耕作に励んでいたりする勇士たち、と言うべきでしたな。すみません。」

朋「……………っ………!」

保奈美(…ふふっ…………)

清良「………あんたがどの様なつもりで言っているかは知らんが、あんたの言う通り戦力差は問題ではならんですよ。南軍の1人は北軍の12人以上に匹敵しますからな。」

沙紀「弾薬と、靴と、食料さえあればそうかもしれませんね。」

清良「我が軍は今までだって靴や食料も無くたって立派に勝ってきたではありませんか!今度だってまた勝つに決まっている。」

沙紀「あなたが兵士だとして、靴と食料無しで戦いたいと思いますか?」

清良「…………ジョンストン将軍が破れるなんて事はない。ジョージアの入り口の峻険な山脈が北軍を絶対に通しません!テルモビレのように!」

沙紀「私の記憶によるとテルモビレでは最後の一兵まで全滅したように覚えているんですがねぇ。合っていますか、先生?」

保奈美(…テルモビレ…………?)

清良「……君は私を侮辱しようとしているのかね?!」

沙紀「とんでもない、私はただご教示を願っているだけですよ。古代史にはあまり詳しくない物でしてねぇ。」

清良「……………っ……………!」

沙紀「…………………ふふっ……」

清良「…ありえない話だが、ええ、全くありえない話だが……我が軍は北軍どもをジョージアに入れるぐらいなら最後の一兵まで喜んで死ぬでしょう!」

沙紀「人命を救うのが職業のお医者様らしい素晴らしいお言葉ですな。郷土を守るためなら若者たちに命を投げだせと仰る。」

清良「………あんたは………」

沙紀「まあまあ、そう大声を出されないでください。ウェード君が起きてしまうではありませんか。」ナデナデ

仁奈「くー……くー………」

清良「…………っ………!」

沙紀「いやはや詰まらない事をお聞きしました。ミード博士の仰る通り、南軍の勝利は確実のようです。」ニコ

保奈美「……………」フイッ…!

北軍 ジョージア攻撃軍前線司令部



志希「困ったねぇ〜、シャーマン。キミの部隊は山岳地帯を未だに突破できてない。この前も、いった〜い反撃を食らっちゃったんだって?」

晶葉(シャーマン将軍)「フン、あいつらは所詮データ収集用の捨て駒に過ぎん。」

志希「あらら、そ〜なの?」

晶葉「彼らの尊い犠牲のおかげで、私の南部攻略用の機械人形の開発が進むんだ。彼らも本望だろう。」

志希「にゃっはっは〜!そんな事言って、自分が研究用のデータが欲しかっただけじゃないの?」

晶葉「ふふっ……どうだかな。」

志希「で、実際のトコロどーするの?これ以上攻略が遅れたらグラント将軍に怒られちゃうよ?」

晶葉「それは困る。…だが、グラント様からお叱りを受けるつもりはないから安心しろ。見ろ、これが次の作戦の予定だ。」

志希「……どれどれ。………ほうほう…ここから15マイル南下したトコロに鉄道破壊用の自爆式機械人形の部隊を送り込むと。」

晶葉「クックック……奴らはこれを阻止せんわけにはいくまい。そして、その為には現在の陣地を放棄して後退する必要がある。…これを続けたらどうなるかな?」

志希「うっわぁ〜、インケンな作戦。」

晶葉「>>20

しかもこれは呼気や体温といった生体反応を感知して自動的に殺傷を行う……

晶葉「しかもこれは呼気や体温といった生体反応を感知して自動的に殺傷を行う……」

志希「つまり〜?」

晶葉「…こいつらが通った後には正しく草の根の一本すら残らんと言うわけだよ。クックック……中々の力作なんだぞ?」

志希「シャーマンは殲滅が好きだよね〜。グラント将軍の命令でもあるし、それが正しいやり方なんだけどさ〜………」

晶葉「不満があるのか…?」

志希「うーん……見境なく殺傷しちゃのはちょ〜っと…………」

晶葉「実験用の捕虜が手に入らくて困る……か?」

志希「そ〜そ〜。最近また数が少なくなって来ちゃっててさぁ……」

晶葉「結構な数の捕虜がいたはずだが?」

志希「南部ったら最近体力のない子どもやお年寄りまで兵隊に送ってくるから……使い物にならなくなるのが早くなって来ちゃってるんだよ……はぁ……もっと手を抜いとけば良かった…………」

晶葉「そんな事を言うとグラント様に怒られるぞ。」

志希「だってぇ〜………………」

晶葉「……安心しろ。グラント様からお前と協力して事に当たれとのご命令があった段階で機械人形に特別な細工を施しておいた。……ここの空洞の部分が何を意味するか、お前なら分かるだろう?」スッ

志希「ふむふむ…………コンビネーション、って事かにゃ〜ん?」

晶葉「ジョージアには人間がたくさん居る。……どうだ、まだ何か不満があるか?」

志希「ないよ〜。そ〜ゆ〜事なら大歓迎♪……偶には戦場で実験結果を確かめるのも悪くないかもね〜。」

晶葉「決まりだな。……さあ、北部の神聖な大義の為の戦いを始めようじゃないか。ククク……」

志希「北部の神聖な大義の為にね〜♪」

アトランタ 大通り



保奈美「………………」トボトボ……

「もう病院にもどこにも負傷兵を寝かせておく場所はないぞ!どこももう満杯だ!」

「そんな事を言われたって…!さっきの汽車でまた傷病兵が運ばれてきたんだぞ!」

保奈美(……また……………)トボトボ……

「薬が足りない!クソッ……!全員側からバタバタ死んでいく!」

「た、助けてくれ!機械人形に殺される!嫌だ、死にたくない!」

保奈美「…………………」トボトボ……

保奈美(何が鉄壁将軍よ……ジョージア州に北軍を八十八マイルも入れておいて…………)トボトボ……

「シェリダンの奴の新兵器のせいだ!奴は……民間人にも見境なしだ…!アイツは悪魔だ……!」

「俺の部隊は奴の兵器にやられた!…全員が……あいつらの家族には……とても説明が出来ないような死に様で………」

保奈美(………大義の為の戦争だなんて………結果がこれじゃない………)
トボトボ……

「もう戦争なんて嫌だ!金持ち連中が勝手に始めた事じゃないか!」

「しっ!滅多な事を言うもんじゃない………!」

保奈美「…………………………」
トボトボ……

ガタッ…ガタッ…ガタッ…ガタッ…ガタ

沙紀「おや、お嬢さん。病院はよろしいのですかな?」

保奈美「……今病院から逃げ出してきたところよ!私絞首刑にされたって病院には帰らないわ!あんな……腐臭と……苦痛と……怨嗟と……死に満ちた場所になんて……!」

沙紀「ずいぶんとご苦労されていらっしゃるようですな。どうどう。」

馬車馬「ブルルル…………」

保奈美「ええ、もう今日だって死ぬほど働かされたわ!私が起こした戦争じゃないって言うのに!」

沙紀「ほほう、『我らが光栄ある大義名分』に対する反逆者か!」

保奈美「>>28

からかわないでちょうだい!

保奈美「からかわないでちょうだい!」

沙紀「からかってなどいませんよ。心からの尊敬を込めて申しているのです。」

保奈美「尊敬……あなたが言うと全部が皮肉にしか聞こえないわ!」

沙紀「僕にはそのつもりは全くないのですがな。」

保奈美「嘘おっしゃい!」

沙紀「……僕はよほど信用がないようだ。」

保奈美「……っ……!当たり前じゃない。」

保奈美「……あなたと話していると…何だか全てが馬鹿馬鹿しく思えてくるわ……相手をするだけ無駄ね。」

沙紀「それは良かった。あなたは僕と話している間は看護の疲れやら戦争の恐怖まで馬鹿馬鹿しく思ってくださるのですから。」

保奈美「…………………………」

沙紀「ところで、僕から一つご提案があるのですが……聞いていただけますかな?」

保奈美「………………………………」

沙紀「………………」ニヤニヤ

保奈美「………………………………」

バトラーの馬車 車内


ガタッ…ガタッ…ガタッ…ガタッ…

沙紀「まさか、本当にドライブにご同行していただけるとは思いませんでしたよ。」

保奈美「白々しいわよ。私があなたからのドライブの誘いには必ず乗るって事ぐらい、分かっていたんでしょう?」

沙紀「さあ?ただ僕のような売国奴のペテン師と二人でドライブをする勇気のあるお嬢さんはそうは居ないだろうとは思っていました。」

保奈美「フン…あなたなんかちっとも怖くないもの。それよりもメリウェザーのばあさんに見られたりしないかの方がずっと怖いわ。」

沙紀「ふふっ……そうですか。では、少しスピードを上げる事にしましょう。えいっ!」バチィィィン!

馬車馬「ヒヒィィィン……!!」

沙紀「それでどうですかな?あなたの仰るところの悪魔とドライブをする気分は?」

保奈美「病院に居る時よりずっとマシね。……はぁ……私…病院はつくづく嫌になったわ…………」

沙紀「悪魔をも恐れないご婦人が恐れられる病院……それはきっとさぞかし恐ろしい場所に違いありませんな。」

保奈美「恐ろしい場所なんてものじゃないわ!あそこは地獄よ…!毎日毎日傷病兵が運ばれてきて……みんなジョンストン将軍が悪いのよ!将軍さえジョージアの入り口のドルトンで敵をくいとめてくれたら…………」

沙紀「ジョンストン将軍は今でも頑張ってると思いますがね。もし、将軍がドルトンの死守にこだわっていたらシャーマン軍に木っ端微塵にされてしまっていたでしょいう。そうなったなら鉄道だって奪われてしまう。ジョンストンが必死になって戦っているのは鉄道のためなんですからね。」

保奈美「ああ、それは……どっちにしたって将軍が良くないのよ。だって、なんの対策も出来てないんですもの!」

保奈美「あんな将軍なんか、私は免職させた方がいいと思うわ!あんなに退却ばっかりして……どうして踏みとどまって戦ってくれないのかしら。

沙紀「ははん、あんたも世間なみに、不可能な事が出来ないからと言って将軍を免職させようと騒ぎたてる連中のお仲間ですね。」

保奈美「だって、現にジョンストン将軍は退却を繰り返してばかりじゃない。」

沙紀「……ジョンストン将軍はドルトンの勝利の際は救世主キリストだった。ところが、わずか6週間後の現在、ケネソウ山にまで退却した今では裏切り者のユダだ。しかも彼がまた20マイルも進軍すればキリストに帰るんだから世話はない。」

保奈美「……………っ…………」

沙紀「良いですか?敵将シャーマンは、ジョンストンの2倍の兵力を持っているんですよ。つまり、敵は我が軍の一人に対して二人失ってよいという事になります。ところがジョンストンには一兵だってないがしろに出来ないのです。」

沙紀「そこで、彼は援軍を求める事にしたのですが誰に援軍を求めたと思います?……ジョー・ブラウン州知事の子飼い兵にですよ。」

保奈美「あら、では国民軍は本当に召集されるの?郷土防衛軍も?……私はまだそんな事は聞いてないんだけど………あなたはどうして知っているの?」

沙紀「噂ですよ。しかし、さぞかし肝を潰したでしょうなぁ。知事が州を守るためとヴァージニアに兵を送るのを拒否したぐらいですから、実際には出征するような事にはならないだろう、と油断していたのですから。」

保奈美「まあ、笑っているのね、酷い人!郷土防衛軍のうちの老人や少年の事を考えたりしないの?」

沙紀「僕が言っているのは綺麗な軍服を着て剣をガチャつかせたがっている勇敢な青年たちの事ですよ。」

保奈美「>>37

無理は通すものです……

お休みなさい

やっぱり舞台サイドは安価なしで進行した方がいいんじゃなかろうか

こればっかりはなあ…ぶっちゃけ読んでない人もいるでしょうし
アイドルものが読みたいのであってここまでのものは望んでないって人もいると思われ安価下

>>36
安価無しだと現在丸写しになってしまうので…………申し訳ありません……

>>37
過去にライブシーンを省略してしまった事があったので、その反省を元にしたつもりでした……
>>1の構成力ではこれが限界なのです………………
お目を汚すだけかとは思われますが…………最後までお付き合いいただければ、誠に有難く思います…………




病院が長引きました…………
再開します

保奈美「そう……あなたの言うことはやっぱり分からないわ。」

沙紀「では分かりやすく言い直して差し上げましょう。今一番肝を冷やしているのは、戦場には出ない癖に地図を広げて盛んに戦術論とやらを説いていらっしゃった方々だろう、と言う事が言いたいのです。」

保奈美「それは郷土防衛軍の男たちの事を言っているの…?」

沙紀「ええ、彼らときたらまるで将軍気取りだったではありませんか。」

保奈美「…………あの人たちは国を守る為の議論をしていたのよ。」

沙紀「ハッ!国を守りたいんだったら、銃を持って前線に馳せ参じれば済んだ話でしょう。」

保奈美「………………………………」

保奈美「…そうやって故郷のために戦おうとしている人たちを馬鹿にして楽しい?」

沙紀「では訊きますがねぇ、あんたは国民軍や郷土防衛軍の連中を小指の爪の先ほどでも誇りに思った事はありますかね?」

保奈美「……………………」

沙紀「ふふっ…くどいようですが、僕に反論する為に自分が何とも思っておられない立場に立たれるのはやめた方がいい。疲れるだけですよ?」

保奈美「…………………………」

沙紀「ま、あんたのそう言う負けず嫌いなところは僕は嫌いではありませんが。」

保奈美「……どうもありがとう……!」

沙紀「こちらこそどういたしまして。」

保奈美「……あなたと来たら南部の全ての人間たちを馬鹿にするか軽蔑するかしているのね。」

沙紀「いやいや、僕にだって南部で尊敬できる人間はいますよ。例えば、リー将軍であり、ジョンストン将軍ですね。」

保奈美「ふん、リー将軍やジョンストン将軍のどこが偉大だって言うのよ?戦いには負け続けて……」

沙紀「彼らは敗北の何倍もの勝利を収めてきて、あなたはその度に戦勝パーティーに参加していたと言うのに、少し旗色が悪くなったらそんな事はすっかり忘れてしまったらしい。」

保奈美「…………………」

沙紀「はははは、そう睨まないでくださいよ。美しいお顔が台無しですよ?」

保奈美「ふん……軍人なんてあなたが特に馬鹿にしているものの一つの癖に、また心にもない事を言って……今も散々国民軍と郷土防衛軍を馬鹿にしてたところじゃない。」

沙紀「僕が馬鹿馬鹿しいと言っているのは戦争そのものであり、戦争で死ぬ事だけですよ。前線で戦っている軍人を馬鹿にした事などありましたかな?」

保奈美「そんな事幾らでも…………………………」

沙紀「一定の敬意は払い続けて来たつもりなんですがねぇ。」

保奈美「………………………………」

沙紀「彼らのほとんどは勇士ですよ。何せ、大義の為に戦っているからではありませんからねぇ。戦争がどんな物か分かった上で戦っているから勇士なのですよ。」

保奈美「何を……?!(……あら…?これと似たような言葉をどこかで………………?)」

〜〜〜

加蓮「アシュレは勇士です!でも……それは大義の為に戦っているからではありません……!戦争がどんな物か分かった上で戦っているから勇士なんです!」

〜〜〜

保奈美「…………!!」

沙紀「……どうかしましたか?」

保奈美「いえ…………(…バトラーがメラニーと同じ事を…………いえ、それがどうしたと言うわけじゃないけど………………)」

沙紀「リー将軍は大した人物ですよ。最初から負けると分かっていて戦うなんて、並大抵の人間には出来る事ではないですからね。」

保奈美「リー将軍が最初から南部の敗北を……?!そんな訳は…………」

沙紀「いいえ、リー将軍ほどの聡明な人物に北部との国力や兵力の圧倒的な差が分からなかったはずはない。彼は戦争など絶対に始めたくは無かったでしょうな。」

保奈美「…なら…………」

沙紀「なら何故南軍の将として戦って来たのか?…簡単ですよ、国と民を守るため。軍人に他にどの様な仕事があると言うのです?」

保奈美「………………………………」

沙紀「言うは易く行うは難し、ですがね。」

保奈美「…分かっていたなら……」

沙紀「無理でしたね。そう言う一握りの人間以外は皆戦争を始めたがっていたのですから。数の力には勝てませんよ。」

保奈美「せ、戦争の事について考えるのは軍人の仕事でしょう…!」

沙紀「ほら、あんただってそう言う。誰も彼も自分の責任なんてちっとも省みない。そして、全て軍人なんかの所為にする。ジョンストンにしているようにね。」

保奈美「………っ………………」

沙紀「大衆は責任は絶対に取らない癖に、一人前に勝利は要求する。フン、烏滸がましいとは思いませんかね。僕はですね、そう言う安全な銃後から声高に叫ぶ様な連中が何より大嫌いなんだ。」

保奈美「………………………………」

沙紀「>>49

色々と言われて大変だけど、自分は最後まで応援するよ。

……フン、何も言い返せませんか。

まあ、いいでしょう。あなたも所詮はつまらない人間に過ぎないということですからね。別段責めはしませんよ。

沙紀「まあ、いいでしょう。あなたも所詮はつまらない人間に過ぎないということですからね。別段責めはしませんよ。」

保奈美「…っ……ご自分は高尚な人間だとでも言うつもり?」

沙紀「まさか、僕だってつまらん人間ですよ。人間なんて皆つまらん存在なのです。だから、下手に高尚ぶったりするのを見ていると滑稽以外の何者にも見えないのです。」

保奈美「すぐにそうやって難しそうな話をして私を煙に巻こうとする………」

沙紀「別段難しい話をしているつもりはありませんよ。難しく感じるのは、お嬢さん、あんたが可愛らしいおばかさんだからだ。」

保奈美「む………………」

沙紀「僕がどうして危険を冒してまでこの街に止まっているのか教えて差し上げましょうか、お嬢さん?」

保奈美「興味も無いし、聞きたくもないわ!」

沙紀「まあまあ、そう仰らないでくださいよ。興味は無くとも疑念はあるのではないですか?」

保奈美「……どうして、とっととアトランタを出て行かないのかと怪しくは思っているわ。」

沙紀「ふふっ……結構。ならば、お嬢さん、あなたの悩み事を胸の内から一つ取り除いて差し上げましょう。」

保奈美「………………………………」

沙紀「一つは、この街に居ると今まで高尚ぶっていた連中が段々と余裕を失っていく過程を観察出来て非常に愉快だからですな。」

保奈美「……私が知っている中で最低最悪の趣味だわ。」

沙紀「お褒めに与かり誠に光栄の至りですな。ふふふ……あなたは私を軽蔑なされますか?」

保奈美「何を今さら。軽蔑なんてとっくにしてるわ。」

沙紀「にも関わらずあなたはその相手と楽しいドライブをされている。結構、結構。実を捨て利を取るのは大事な事です。」

保奈美「一つ、と言う事は二つ目より後もあるんでしょう?早く話しなさい。」

沙紀「そう急かさないでくださいよ。のんびりと行きましょう……ふふふ………………」

保奈美「……何がそんなに面白くて堪らないの?」

沙紀「あなたを怒らせてその様子を眺める事が、ですかねぇ。紳士や淑女の化けの皮は剥いでやるぐらいには痛快です。」

保奈美「………………馬車を……」

沙紀「ストップ、ストップ。今あなたに降りられては話し相手が居なくなって困ります。」

保奈美「人から口をきいてもらえないあなたが悪いのよ。自業自得ね。」

沙紀「否定はしませんよ。ふふふ…………」

沙紀「もう一つの理由も教えて差し上げますから。まあ、それまで聞いていってはいただけませんかな?」

保奈美「…………………………」

沙紀「沈黙は肯定と捉えさせていただきますよ。もう一つの理由は…………と、その前にあなたはアトランタの周囲には去年の内に塹壕が掘られていた事をご存知でしたかな?」

保奈美「…………えっ……?」

沙紀「やはりご存知なかったか。良いですか、何にも知らないお嬢さん。アトランタの周辺には既に塹壕が掘ってあるのです。ところがですね、最近になってその外側にまた新しい塹壕が掘り始められているのです。」

保奈美「……何のために…………?」

沙紀「あなたは他人に聞いていてばかりでいけない。少しは自分で考える癖をつけたほうが良いですよ。さて、これは何を意味するでしょうか?ふふふ…………」

保奈美「………………………………」

沙紀「ヒントをあげましょう。塹壕と言うのは包囲攻撃された時の事を想定して掘っておくのです。」

保奈美「………近いうちに……アトランタが……包囲攻撃される…………?」

沙紀「やれば出来るではありませんか。」

保奈美「包囲攻撃!ああ……私を早く家に帰してちょうだい!うちへ……タラへ帰るわ!」

沙紀「どこか悪いのですか?」

保奈美「包囲攻撃の事をお父さんから話に聞いた事があるの!お父さんの時代だか、お祖父さんの時代だったかは忘れたけど……クロムウェルがアイルランドを占領したときのドローエダの包囲攻撃では……それはもう……みんな飢えて街の中で死んでいったって!」

沙紀「やはりあなたはおばかなお嬢さんだったようだ。ドローエタの包囲は17世紀の出来事で、あんたのお父さんなんか生まれているはずはないですよ。」

保奈美「そんなのどうだっていいわ!ああ、包囲攻撃!とにかく恐ろくてたまらない!」

沙紀「はははははは!これは貴重なチャンスだと思うのですがねぇ。考えてもみなさい、書物でしか知らなかった包囲された街という奴をこの目で見る事ができるのですよ?」

保奈美「あなただって飢え死にしてしまうのよ!」

沙紀「そうなる前に包囲軍の話の分かる友人に金貨を渡して一緒にランチでも楽しませてもらいますよ。ほら、何事も経験です。経験は我々の精神を豊かにしてくれる。」

保奈美「私の精神は十分豊かよ!」

沙紀「それはあなたが一番よく分かってらっしゃると思われますがね。」

沙紀「ランチのメニューは何が良いですか?ロブスターなんて如何です?」

保奈美「よくお喋りが続くわね!」

沙紀「ははははは!まあ、そう怖がる必要はありませんよ。本当に危険になった時は僕があなたを助け出しますから。僕がこの街にいるもう一つの理由はそれなのです。」

保奈美「……は?」

沙紀「窮地の女性を助け出した経験はまだない物でして。これは全くの初めての経験になるでしょうね。」

保奈美「>>59

本気で言っているの?

保奈美「本気で言っているの?」

沙紀「本気でなければ今頃僕はリッチモンドで料理に舌鼓をうっていますよ。あそこは金さえ払えば美味いものが幾らでもありますから。」

保奈美「…………………………」

沙紀「信じていただけませんか?」

保奈美「それ以前の問題よ。あなたの真意を探っているの。」

沙紀「女性に信用していただけないというのは実に悲しい物です。」

保奈美「よく言うわ……」

沙紀「どうすれば信用していただけます?誓いのキスでもすればよろしいですか?」

保奈美「…………っ……!」

沙紀「おや、よくよく思い出してみれば過去にあなたにはキスをした事がありましたねぇ。」

保奈美「……ええ!たくさんの人が居る前で無理矢理唇を奪われたわ!」

沙紀「良いではありませんか。奪われたからと言って減る物では無いのですから。」

保奈美「茶化さないで!あなたのそう言うところが本当に憎らしいわ!」

沙紀「ははん……あなたはキスをされた相手がアシュレ・ウィルクスでは無かった事がよほどショックだったと思える。」

保奈美(…………アシュレ……!)ズキ

沙紀「……フン…僕はあの時あなたの頭の中からアシュレ・ウィルクスの事がすっかり消え去ってしまえばいいと思って事に及んだと言うのに。」

保奈美(…私の中からアシュレを……?!この男は…………)

沙紀「あんたを自由にしてやりたかったのに……あの残酷な男からね!」

保奈美「…………っ……!アシュレの事をあなたがそんな風に言わないで!」

沙紀「…………………………」

保奈美「あなたはどうして事あるごとにアシュレを侮辱するのよ?!」

沙紀「決まっているではないですか。あの男が卑怯者だからですよ。あの男はあんたの告白に何と言って答えました?拒絶すらしないで逃げただけではありませんか。」

保奈美「違う!」

沙紀「違いません。彼はあんたにハッキリと愛情は無いと言ってやるべきだった!なのに、何です?あんたには愛情はあるが、結婚は出来ないと言ったのですよ。これより残酷な答えがありますか。」

保奈美「…………っ…………!」

沙紀「しかもそれだけでは飽き足らず、あなたの前で夫人との様子まで見せつけると言う徹底ぶりだ。」

保奈美「うるさい!……馬車から降ろして!降ろしてくれなければ飛び降りるわよ!」

沙紀「…………止まれ。」

馬車馬「ヒヒーン……!」ガタ

沙紀「……お手を…………」

保奈美「余計なお世話よ!もう二度とあなたなんかと口は聞きたくないわ!」

沙紀「…………………………」

保奈美「……さようなら!」

沙紀「……………さようなら、スカーレット…」

アトランタ近郊 ケネソウ山山中



あやめ(南軍将校)「ジョンストン将軍……シャーマンの部隊がまたしても鉄道を狙って進軍を開始しました。」

仁美(ジョンストン将軍)「…場所は?」

あやめ「我々の陣地の22マイル後方です。」

仁美「……………………………」

あやめ「…如何なされますか……?」

仁美「……陣を畳んで後方へと退却する。準備を急がせろ。」

あやめ「……しかし………………」

仁美「分かっておる。お前はこれ以上後退すれば北軍の大砲がアトランタに届く。そう言いたいのであろう?」

あやめ「………………………………」

仁美「>>67

安価把握

一時中断します

>>39
アイドルを扱う以上ライブシーンは省略アカンとは思うが、こういうのはアニメでいう劇中劇(省略してしかり)なんだよなあ…
某軽音部アニメでもここまできっちりとは描いてないし(この意見には個人の主観がおおいに含まれております)

>>48
ありがとうございます…
色々と言っていただけるという事は、それだけ>>1が色々な点を反省出来るという事です
故に、大変ありがたい事です
一つも無駄にしないようにしていく釣りもりです

>>69
ライブシーンを>>1が文章で表現しようとすると、歌詞コピペになってしまうので……ご了承ください…………



再開します

仁美「気持ちは分かる。だが、同じく討ち死にするならせめて、愛する家族や恋人と共にに……」

あやめ「…………………………」

仁美「いや……少年や老人まで戦に駆り出している将の吐ける台詞では無かったな。……忘れろ。」

あやめ「………………………………」

仁美「俺に死に様を望める権利は無い。………戦場で散ってこその、もののふだという事を忘れていたよ。情けない上官で済まんな……」

あやめ「……いえ…………………」

仁美「……………………………」

あやめ「……わたくしの失言でした。我々が現在死守している西部大西洋鉄道が破壊されれば、南部全体が兵糧攻めに遭う事となります。……例えアトランタに砲撃が及ぼうと…………」

仁美「如何ともし難かったなんて事は無い……そうならないように戦うのが俺たちの務めだったのだからな……」

あやめ「………あなたの指揮でなければ既に我々は全滅していました。この一帯も落ちていた事でしょう。」

仁美「それがどうした……軍人は結果が全てよ。俺たちは退却に次ぐ退却だ。」

あやめ「………………………………」

仁美「……デーヴィス大統領は何と言ってきている。」

あやめ「……諸君らの奮闘に期待する、と。」

仁美「フッ……大統領閣下は我々に槍すら与えずに戦ってみせろと申すか。大した軍略家だ……」

あやめ「…………………………」

仁美「…死地か…………お前は………………」

あやめ「帰るべき故郷は既にありませぬ。」

仁美「……そうか………」

あやめ「お供致します。」

仁美「…………悪いな。」

仁美「………ジャクスン将軍……俺ももうすぐお前のところに行くようだ…待っていてくれ。そしてリー将軍…………貴殿の元の将として戦えた事は俺の誇りでござった。」

あやめ「…………………………」

仁美「……俺の槍を持て参れ!明日からは俺も出陣する!一兵たりとも犬死させてたまるものかよ!」

あやめ「…………はい……」

仁美「…………嫌われ者は大人しく消えるとしよう。」

あやめ「………………………………」

アトランタ



「ジョンストンは何をやっているんだ?!あの臆病者め!」

「もうシャーマンはアトランタの目と鼻の先にまでやって来ているじゃないか!」

「我々に退却しない将軍を!戦ってくれる指揮官を!」

保奈美「…………………………」

保奈美(…………北軍が…シャーマンがもう目の前にまで迫ってきている…!)

保奈美(…シャーマンに占拠されてしまったら……この街はどうなってしまうのかしら…………?……考えたくもない…………!)

保奈美「………………………………」

ゾロゾロゾロゾロ……

保奈美(今通り過ぎた隊列も……少年と老人ばかり……………こんな人たちまで駆り出さなきゃいけないなんて…………)

未央「あー、あー、ゴホンゴホン。もしもし、そこのあなた。」

保奈美「…………あっ……はい………………!……ウィルクスのおじさま…………?!」

未央「ほっほっほっほ!やはりスカーレットじゃったか。アトランタなら、もしやと思っていたんじゃよ。」

保奈美「………どうしてここに……?!」

未央「この服装を見て分からんかね?……今から戦場に向かうのじゃよ。」

保奈美「………………!」

ネリー「ブルル…………!」

未央「これこれネリー。久々にスカーレットに会えたからと言って興奮してはいかんよ。」

保奈美「ネリーまで……!(…ネリーはタールトン夫人が自分の子供のように可愛がっている馬じゃない…!それが…………!)」

未央「わしは歩いて行軍するには老ぼれじゃからな。……ダールトン夫人がネリーを貸してくれたのじゃ。ネリーに何かあってはダールトン夫人に合わす顔がないでの、冷や冷やじゃ。」

ネリー「ブルルルル……!」

保奈美「…………っ……!行ってはいけないわおじさま!おじさまはもう70に近いし…………アシュレよりもっともっと戦争が嫌いじゃない……!」

未央「>>80

未央「どこの世界に好き好んで戦争に行く輩がいるものか。……しかし、わしらのような平民にはこの状況をどうすることもできないのじゃ。わかっておくれ……」

保奈美「……おじ様が戦場に出られては、誰がトゥエルヴ・オークスを管理するのですか?!」

未央「それについては心配要らんよ……あなたのお父さんがタラと一緒に世話をしてくれる事になっておる。」

保奈美「………………………………」

未央「ジェラルドは戦場にはまだ行かなくて良い事になっとる。安心するといい。」

保奈美「………………おじ様……」

未央「何一つ恥じる事はないぞ。誰かが食べ物を作っていなければ、みんな飢えてしまうのじゃから。」

保奈美「…………あの…………」

未央「……あんたのお父さんが戦場に行かんでよくなったのは馬のおかげなんじゃよ………本当に馬と言うのは賢い生き物じゃ。」ナデナデ……

ネリー「ブルル…………!」

未央「実に面白い話なんじゃが………また帰ってくるまで話すのは楽しみにとっておくわい。老ぼれにも楽しみは必要じゃからな。」

保奈美「……………っ……………」

未央「……帰ってきたらゆっくり話してあげよう。」

保奈美「………………………………」

未央「……ハネーたちはメーコンのバア家に預けてきた。ハネーの事は気に食わんかもしれんが………大目に見てやってくれ。」

保奈美「………………………………」

未央「ああ、そうじゃ!メラニーはどうしとるかな?」

保奈美「……何も変わりはありませんわ…………」

未央「……そうか…………初孫の顔が見られたらと思ったんじゃが……………おっと、あまり隊列から遅れてはいかん。もうわしは行くとするよ。」

保奈美「………!待って、おじ様!」

保奈美「……本当に……帰って来なさるおつもりがあるのですか……?」

未央「……………………………」

保奈美「…………アシュレも……おじ様と同じ目をして…………」

未央「……ネリーは夫人の最後の馬なんじゃ。……それを失うような真似はせんよ。」

保奈美「…………………っ…………」

未央「…………さようなら、スカーレット。」

〜〜〜


保奈美(……とてつもなく嫌な予感がする…………あの目…………あの言葉は………………)

保奈美(……優しいウィルクスのおじさま…………戦争は………アシュレだけじゃ飽き足らず…………)

保奈美(…………!違う……!アシュレは……アシュレは…………!)

保奈美(………………………………)

保奈美(ああ……神様……どうか、ウィルクスのおじさまと……アシュレを連れて行かないでください…………)

保奈美(…………………………)

保奈美(…お願いします…………)

1864年 7月
北軍 ジョージア攻撃軍前線司令部




志希「ねーねー、シャーマン。またまたま〜た進軍が遅れてるんだってぇ〜?」

晶葉「…うるさい。お前はアトランタへの砲撃に専念しておけ。」

志希「ん〜、ちょ〜っとイラついてるみたいだね〜?にゃはは、ジョンストンったら頑張るねぇ〜♪」

晶葉「……チッ、確かに奴の手腕を認めん訳にはいかん。私の自慢の機械人形部隊も幾つか潰されたよ。」

志希「……本気出してあげよっか〜?」

晶葉「いい!……奴の最後の悪足掻きもどうせもう終わりだ。奴にはもう兵力を補充する術は残されていない。」

志希「ふ〜ん、アタシこの状況飽きてきちゃったんだけどにゃ〜。グラント将軍も多分同じ気持ちだと思うよ?あ〜あ、飽きたにゃ〜!」

晶葉「………ならこれを見ろ。」

志希「はにゃ?」

晶葉「……進軍が遅れているといっても既にアトランタまでは残すところ6マイルに過ぎん。もう小競り合いは終いだ。一気に終わらせる。」

志希「…………はぁはぁ………にゃるほどにゃるほど……」

晶葉「まだ何か文句があるか?」

志希「>>89

>>1です

誠に申し訳ございませんが疲労がピークのため力尽きます…………

明日ガンバリマス……

本当にすみません……

んーん、別に~。使うんでしょ?例の『バグ』っていうの

朝起きて時計を見たら13時半でした……
杏かよ………


再開します

志希「ん〜ん、別に~。使うんでしょ?例の『バグ』っていうの。」

晶葉「クックック……まあな。今までてこずらせてもらった礼はしなくてはならないだろう?」

志希「にゃはは〜、それで『バグ』を投入しちゃうんだ〜?」

晶葉「悪いか?」

志希「べっつに〜♪アトランタが一気に寂しくなっちゃうな〜って思っただけ。」

晶葉「……フン、私に楯突いたんだ。これぐらいの報いは受けて当然だろ。

晶葉「こいつは素晴らしいぞ?対象が如何なる場所に隠れていようが、必ず見つけ出して最も最適な選択をする。一匹たりとも逃がさん。

志希「む〜!そしたら捕虜取れないじゃ〜ん!実験で〜き〜な〜い!」

晶葉「……不満はないんじゃなかったのか……?」

志希「にゃはは〜、もし作戦に一枚噛ませてもらえるなら不満はないかにゃ〜?こ〜んなエグい作戦、見てるだけって言うのはね〜?」

晶葉「………フッ……いいだろう。」

志希「やった〜、ジェノサイド♪」

ピティパット叔母の家


ドゴォォォン!

瑛梨華「ひぃぃぃぃ……!ま、また大砲が………!」

保奈美「…音が遠いわ。弾が落ちた場所はここからかなり距離があるから大丈夫よ。」

瑛梨華「で、でも…………」

ドゴォォォン!

瑛梨華「ひぃぃぃぃ…!つ、次にここに落ちて来ないとは限らないじゃありませんくぁー!」

保奈美(…チッ……人がただでさえ苛立っている時に……さらに苛つかせないでほしいんだけど……!)

瑛梨華「あうあうあうあう………も、もうアトランタにいるなんて恐ろしいです…!私たちも避難しましょう……?私はメーコンのバア夫人を頼るつもりですから……」

保奈美「………メラニーを置いてはいけないわ。」

加蓮「……!」

保奈美「ミード博士がメラニーは絶対に動かしちゃならないって言ったのを忘れたの?私は一緒に残るわ。(フン……カビの生えたメーコンに行くぐらいなら砲弾の方がまだマシよ。)」

加蓮「……………………」

瑛梨華「あ、あう………そ、それは知ってますけど……………」

保奈美「…………………………」

瑛梨華「で、で、でも………アトランタからテネシーへ続く線路はもうシャーマンに取られてしまって……め、メーコンとサヴァナに続く線路にしか残っていないような状況ですし………」

保奈美「それが?」

瑛梨華「あ、ええっと………め、メラニーも……少しぐらいなら………」

保奈美「ピティパット叔母さん、あなたは絶対安静の意味が分かっていないんですか?汽車に乗せるなんてもっての他に決まっているじゃない。」

瑛梨華「あ………… うう…………」

保奈美「メーコンに行くなら一人で行ってください。」

瑛梨華「…す、すみません………うう………ぐすっ……ぐすっ………」

〜〜〜


保奈美「……ふん……(馬鹿な老人………)」

加蓮「……スカーレット。」

保奈美「……何?」

加蓮「……ありがとう………」

保奈美「………?」

加蓮「…あなたは…私と居てくれるなんて………ありがとう………とっても心強いわ……」

保奈美(……別にあなたのためじゃないわ!)

加蓮「>>99

あなたが本当に素敵な人だと私は知ってるからね

加蓮「あなたが本当に素敵な人だと…私は知ってるからね…」

保奈美(………っ………!)

加蓮「…私ね……今から産まれてくる赤ちゃんに……あなたみたいに育ってほしいって思ってるのよ………?」

保奈美(……何を言っているのかしら……この女は……?私にどれだけ憎まれているか気付いていないの……?)

加蓮「……さっきね……私を置いていけないって言ってくれたとき………とっても嬉しかった…………」

保奈美(…この女は……馬鹿なの……?)

加蓮「…ピティ叔母さんの事を悪く思わないであげてね………叔母さんは神経が繊細なだけだから………」

保奈美「…………………………」

加蓮「…あなたみたいな何でもできる人から見たら……我慢出来ない事もあるのかもしれないけど…………ね?」

保奈美「…………………………」

加蓮「…スカーレット……?」

保奈美「……聞いているわ。」

加蓮「……あ………うん……」

保奈美(信じられない…!メラニーの目には自分以外は全員聖人にでも見えているのかしら……?!)

加蓮「…………ねえ、スカーレット……私ね……スカーレットが私の姉妹でいてくれて………本当に良かったと思っているの……」

保奈美(私は……!ああ、お前なんか嫌いだと怒鳴りつけてやりたい!…でも………)

加蓮「…アシュレがあなたを信頼する気持ちが……よく分かるわ……」

保奈美(そう……!アシュレ……!私はアシュレと約束してしまった……!)

加蓮「…アシュレも言い残して行ったわ………あなたに頼んでおくから安心だって…………」

保奈美(…………っ………!)

加蓮「……不安な事だらけだけど………あなたが居てくれれば大丈夫………そんな気がするの……」

保奈美「……………………………」

加蓮「……私……頑張るから………その………よろしく、ね…?」

保奈美「………え、ええ…………」

加蓮「……ありがとう……あなたって本当に勇ましい女性だわ………」

保奈美「…………………………」

加蓮「………っ……ゴホゴホッ……!…………負けない…………」

保奈美「……………………………」

〜〜〜


ドゴォォォン! ドゴォォォン!

保奈美(……不思議ね。最初はあんなに恐ろしかった砲撃も、何とも感じなくなってきたわ……)

仁奈「ママ……怖いよ……」ギュッ……

保奈美(……鬱陶しい子どもには未だに慣れないけど。)

仁奈「大砲の弾は落っこちてこないかな………?」

保奈美「……っ……落っこちてこないからあっちに行ってなさい!(……仁奈ちゃん………本当に演技派だわ……恐ろしい子………)」

仁奈「ほんとにほんとに大丈夫…?」

保奈美「……大丈夫だって言ってるでしょっ!静かにしておきなさい!」

仁奈「ひうっ……!」ビクッ!

保奈美(ああ……何だって子どもが居るのかしら…?!このチビが怯えてるのを見ると………私まで………!)

仁奈「………………………」

保奈美(そうだ…!ウェードだけでも汽車でアトランタへ送ってしまいましょう。お母さんからもしきりに帰ってくるように催促が来てる事だし………)

仁奈「……ママ…………?」

保奈美(………いや…それは出来ない!最近は線路の近くまで北軍が出るようになったらしいし………北軍は女子供には恐ろしい事をするって………)

仁奈「…………マーマー………?」

保奈美(………一応は……私の子どもなわけだし…………ああ……!子どもなんていなければ良かったのに……!)

保奈美(……こんな時に誰か一人でも…………)

ガチャ……

保奈美「?!」

仁奈「………!」トタトタトタトタ…!

保奈美「……だ、誰……?!」

沙紀「こんにちは。訪ねてきたのが僕でさそがしがっかりした事でしょう?」

仁奈「バトラーおじさん……!」

沙紀「よしよし、いい子にしてたかい?」ナデナデ

保奈美「……ノックぐらいするのがマナーじゃないの…?」

沙紀「したんですがね、大砲の音に紛れて聞こえなかったのでしょう。」

保奈美「…………………………」

沙紀「よっと。」ヒョイ

仁奈「……………ん……」

沙紀「……………………」ナデナデ

保奈美「………………………」

沙紀「この家にはあなたとウェード坊やしか、いらっしゃられないのですかな?」

保奈美「……ピティパット叔母さんはこの前ピーターを連れてメーコンへ行ってしまったわ。…メラニーは奥の部屋よ。」

沙紀「成る程。実質何かが出来るのはあなた一人、と言う訳ですね。」

保奈美「……私に現状を思い知らせに来たの……?」

沙紀「……いいえ。もっと大事な用があって来ました。…落ち着いて聞いてくれますか?」

保奈美「………何よ……?」

沙紀「………ジョン・ウィルクス氏が戦死なされました。」

保奈美「………………えっ…?」

沙紀「あの方と同じ部隊に居た方からあなたにお伝えするように頼まれたのです。……勇敢な男だったそうです。」

保奈美「………………嘘……」

沙紀「……遺品を預かって来ております。金時計とジョン・ウィルクス夫人の肖像画です。」

保奈美(……間違いない………どっちもおじさまが片時も……手放さなかった………………)ヘタ………

沙紀「>>110

沙紀「お気持ちは察します。……しかし、あなたはこうなることが分かっていたはずです。」

保奈美「………………………」

仁奈「………マ………」

沙紀「…………」ギュ……

仁奈「………………………」

保奈美「………ウィルクスの……おじさまが……………」

沙紀「…………………………」

保奈美「……分かっていたなら……どうすれば良かったって…………言うのよ………?」

沙紀「………………………」

保奈美「無理にでも…引きとめればよかったっていうの?!」

沙紀「……あなたに引き止める事など出来なかったでしょうな。」

保奈美「………っ………!」

沙紀「……そのような事は、誰にも出来ませんでしたよ。」

保奈美「………………………」

沙紀「……仕方がなかったのです。」

保奈美「……仕方がなかったって何よ?!……あの人は……戦争なんかで死んではならなかったのよ……!生きていて……孫が大きくなるのを見て……平和に寝台の上で死ななきゃいけなかった……!」

沙紀「………………………………」

保奈美「……あの人は……南北分離も信じないで……戦争を人一倍憎んでいたのに……………どうして………!」

沙紀「それが戦争と言う物なのです。…その様な方から真っ先にお亡くなりになられてしまうのですよ。」

保奈美「…………っ……………」

沙紀「………南部の人間が少しでもウィルクス氏の仰る事に耳を傾けていれば、戦争なんかきっと起きなかったでしょうね。」

保奈美「…………………………」

沙紀「失ってはいけない人物を失った……それに関しては同感です。」

沙紀「………僕はウェードを連れて散歩をして来ます。…構わないね?」

仁奈「………………」コク…

保奈美「………バトラー…………あなた………」

沙紀「………少しの間だけでも好きにするといい。」

スタスタスタスタ……ガチャ バタン

保奈美「…………………………」

保奈美「…………うう…………ぐすっ…………ううう…………うあああああああん……!」

公演会場二階 関係者席



P「上手いな…………流石の演技だ…………あれでまだ16か…………」

美玲「…………………………」

P「…まだまだこれからとかチートだろ…………なあ、美玲もそう思わな…………」

美玲「……………………」ギュッ……

P「ん、どうした?」

美玲「…………戦争って………怖いんだな………………」

P「………………………………」

美玲「………………………………」

美玲「…………一人で残されたら…………悲しいぞ………………」

P「………………………………」

美玲「…………………………」

P「……………………」ギュッ……

美玲「…………P………………」

P「……ほなみんの演技が上手すぎて感情移入しちまったか?………美玲は優しいな。」

美玲「>>119

↑周子がすっと入ってきて物悲しそうな顔でPに対して首を横にふる

美玲「ウチの里は今でこそ平和だけど…………昔は他の里としょっちゅう争ってたみたいで…………もしまたあんな感じで戦いが始まったらって思ったら…………」ジワ……

P「………………………………」

美玲「………怖いぞ………」ギュ……

P「……………………美玲…………」

美玲「………………………………」

P「………………………………」

美玲「……………………」ギュゥゥゥ……

P「…………あれは芝居だから、実際には………………」

周子「……………………」スッ……

P「………………………………」

周子「……………………」フルフル……

P「………………………………」

周子「………………………………」

P「………………(そうか………………本当に……怖いんだな…………)」

美玲「………………………………」

P「……大丈夫だ。…そんな事には絶対にならないよ。…長老さんがいる限り大丈夫だってのは、美玲が一番良く知っているだろ。」

美玲「……………でも…………」

P「……それに俺たちだっている。…信じろ、俺は美玲が悲しむような状況は絶対に作らないし、そんな状況を作ろうとする奴が居たらぶっ飛ばす。」

美玲「………………………………」

P「……今だってこうやって、色々な人たちや、人じゃない者たちが一緒に劇を見ているだろ?」

周子「………………………………」

P「……皆こうやって仲良く出来てるんだ。……大丈夫だよ。だから悲しそうな顔をするな……美玲が悲しいと俺も悲しい……」

美玲「…………P………」

P「……………………」ギュ……

美玲「…………うん…………」

P「……一緒だ。」

美玲「…………うん……………」

P「…………………………」チラ

P「…………………………………」

P「…………(……ありがとな。)」

舞台裏



周子「…………………………」

周子P「…………どうしたんだ、真面目な顔して?何か悪い物でも食べたか?」

周子「………………………………」

周子P「…………おい?」

周子「…………おなかすいたーん。」

周子P「……心配して損した。……まったく…………真面目な顔をされると不安になるじゃないか………」

周子「心配してくれたの……?」

周子P「当たり前だろ。」

周子「………………………………」

周子P「…どうしたんだ、今度は…?」

周子「お昼はきつねそばとたぬきそばのどっちがいいかなーって。どっちがいいと思う?」

周子P「今日は蕎麦の気分なのか……はぁ……どっちも食べさせてやる。それでいいんだろ?」

周子「太っ腹ー♪アンニュイしゅーこちゃんも偶にはやってみるもんだねー。」

周子P「…………まったく……よくまあ動き回ってすぐに食べられるもんだ……」

周子(……………………………………)

周子P「ほら、さっさと行くぞ。」

周子「…………うん…」

7月の終わり アトランタ



保奈美「…………………………」

『ジェラルド・オハラより』

保奈美「……すぅ……はぁ…………すぅ……はぁ………………」ビリッ

保奈美「……どうか悪い事が書いてありませんように……」ペラッ……

保奈美「…………………………」

保奈美「…………良かった…………タラにまでは北軍は来なかったのたのね………………」

保奈美「…………………………」

しかし一つ屋根の下に戦争へのトラウマ持ちやら軍オタやら色々共存してるのも凄いけど
じゃあなんでこういう劇にほぼ全員出してしまったのか…とも言いたくなる
リアルだと過呼吸とか普通になるしねえ(その手のトラウマ持ってるお年寄り身近にいた感)

舞台に参加してるトラウマ持ちはほとんどいないだから……

保奈美「……『我が勇敢なる南部同盟の兵士たちは…………』」

保奈美「…………………………」
ペラッ…… ペラッ……

保奈美「………3枚目までこの調子……お父さんは相変わらずみたいね……良かった………………ん?……キャリーンが腸チフスに…………?!」

保奈美「……『…そこまで悪くはないけど、母さんは毎日教会へ通って良くなるようにお祈りをしてる。できれば
スカーレットもお祈りをしてほしい。』………………」

保奈美「…………お祈りなんかいくら捧げたって……………」

保奈美「>>132

……ピニャコラドール……

>>129
中々理解されないのですが……純粋なミリオタ≠戦争好きなのです
説明しづらいのですが……
特撮オタが劇中で被害が出るのを好んでいる訳ではない……のような物でしょうか………
むしろ兵器の性能なんかが分かってる分……………(一ミリオタの私感)

>>130
人選も中々>>1のない頭を頭を悩ませております…



一時中断します

このSSを読んでつまらないと感じらられた方は原作及び、映画をどうぞ
100倍面白いです(ステマ)


再開します


保奈美「……ピニャコラドール…!」

保奈美「………あなたはこの状況をどう考えているの?!ねえ、あなたに深い祈りを捧げていたキャリーンを腸チフスだなんて恐ろしい病気にするのがあなたの意思なの?!」

保奈美「聞いているんでしょう……答えなさい!どうせ近くで私を嘲笑っているんでしょう?隠れていないで姿を見せなさい!」

保奈美「どうしたのよ、私が怖いの?それともまさか神様ともあろうものが、北軍から逃げたとでも言うの?!」

保奈美「………………………………」

保奈美「……まさか………これも私への罰だと言うの……?」

保奈美「……答えなさいよ!どうして今日に限って姿を見せないの?!」

保奈美「………………………………」

保奈美「…………ああ……そう言う事…………みんなを連れて行ったのもあなたなのね……?!」

保奈美「……分かった……分かったわ……!……いいわ……私はあなたなんかに負けない!神様だとか運命だなんて………そんな物には負けない!」

保奈美「私は……私の力だけであなたに勝ってみせる!私に取り憑いた事を後悔させてやるわ、必ず!」

保奈美「……人間を………舐めないで………!」

保奈美「…ペンは……インクは貴重品だけど………そんな事構うものですか!」キュポン……

保奈美「『お父さんへ………メラニーのお産が済んだらすぐそちらへ向かいます………』」カリカリカリカリ……

保奈美「だからそれまでキャリーンの容態に気を付けて、お母さんを…………チッ…インクが足りない!」

保奈美「……っ………『キャリーンは必ず助かります。キャリーンみたいな良い子が神様に連れて行かれるだなんて、そんな馬鹿げた話があるはずがないからです。』」

保奈美「………運命なんかに負けてたまるものか……!」

〜〜〜


音葉「……スカーレットの中て何かが変わった日……しかし、それは南部全体にこれから起こる変化に比べれば……ほんの些細な変化に過ぎなかったのかもしれません……」

音葉「……スカーレットがこうしている間にも、南軍は次々と敗北し……街は負傷兵で溢れかえっていきました………」

音葉「………そこには既に……かつての優雅な……自信に満ちた……明るいアトランタの姿は失われていました………」

音葉「………破滅へのプレリュードは奏でられていました………ただ、誰もそれが聞こえない振りをしていただけで……………」

音葉「……どのような曲にも………必ず終わりがあります………」

音葉「……………………………」

8月の終わり



保奈美「……最近砲声が聞こえない………何故?…北軍は何を考えているの……?」

保奈美「……南軍が北軍を押し返した………?……そうかもしれない……なら、砲声が聞こえないのも………」

保奈美「…………………………」

保奈美「………情報が絶対的に足りない!新聞社は紙もインクも人でもないせいで新聞を出せない!電報だって入ったという事はさっぱり聞かない……!」

保奈美「…北軍も南軍もどこにいるの……?!……一体今はどうなっているの……?」

保奈美「……郵便……郵便………せめてタラの様子が知りたい……可哀想なキャリーン……今はどうして………」

カタン……

保奈美「……!郵便……!」
タタタタタタタ…!

保奈美「……手紙……誰から……?!
……ジェラルド・オハラ………お父さんからだわ…!」ガシッ!ビリッ!

保奈美「……内容は……内容は何て…………」

保奈美「………………………」

保奈美「………『愛する娘スカーレット……大変な事になってしまった……とうとう……お母さんとスエレンまで腸チフス……に…………』………」

保奈美「……………………………」

保奈美「>>145

私はともかく私の家族さえも……これが神の仕打ちだと言うのなら、神などいらないわ!!

保奈美「私はともかく私の家族さえも……これが神の仕打ちだと言うのなら、神などいらないわ!!」

保奈美「そうよ……神なんて要らない!不要よ!どうして助けてもくれない連中に頭を下げないといけないのかしら?!頼れるのは……目に見えて実在する力だけだわ!」

保奈美「……ああ……何と言う事かしら……?!お母さんが……何があってもみんなの支えでいてくれたお母さんまで………!」

保奈美「…ピニャコラドール……!あんたを呪ってやる!お母さんはあれだけあんたを熱心に拝んでだって言うのに!」

保奈美「……祈りだなんて捧げるだけ無駄だわ……!金貨の方がどれだけ私たちを助けてくれる事かしら……!」

保奈美「……ある意味バトラーの言っていた事は正しかったのかもしれないわね……認めたくないけど………」

保奈美「どうして私は包囲攻撃が始まってすぐの時に、何週間も無駄にしてタラへ帰らなかったんだろう…!」

保奈美「タラへ帰れてさえいれば、みんなの面倒を見てやる事だって出来たのに…!あの頃ならまだ安全に帰る事が出来たのに……!」

保奈美「………メラニーのせいだわ…!メラニーが私なんかを頼るから………!どうしてメーコンに行ってしまわなかったの……血も繋がっていない私に縋り付いたの……?」

保奈美「呪わしい!全てが呪わしいわ!」

保奈美「………っ………く………はぁ………はぁ……………」

保奈美「………何なのよ……もう…………」

保奈美「……この状況がピニャコラドール……あんたの思惑通りなら……メラニーはきっと死んでしまう……!」

保奈美「…………メラニーが死んでしまったら……メラニーが死んでしまったら………!アシュレとの約束は…………」

保奈美「……そんな事はさせるもんか……!お前が決めた事の全てに逆らってやる!」

保奈美「………………………………」

保奈美「何でも自分の思い通りになると思わないことね!」

保奈美「……ふぅ………私はもう……神様の決めた道徳なんか知らないわ……!」

9月1日 朝 メラニーの部屋


ドゴォォォン!

保奈美(……また大砲の音が聞こえ出した………)

加蓮「…………ねえ………」

保奈美「……何?」

加蓮「……あの大砲の音……ジョーンズボロの……タラの方角から聞こえてこない………?」

ドゴォォォン!

保奈美「…………気のせいよ。」

加蓮「………そう…………」

保奈美「…………………………」

加蓮「………先週お母様の事を聞いた時……私さえいなければ、あなたは飛んで帰りたかったでしょうね………」

保奈美「……そうね。」

加蓮「………ごめんなさい……」

保奈美「…………………………」

加蓮「……スカーレット。あなたは私にとても親切にしてくれるのね……本当のお姉さんだって、こんなに優しく、勇敢にはできないと思うわ………私……あなたをとっても愛してるわ………」

保奈美「……?!(私を愛しているだって……?!)」

加蓮「……あなたに会えて……良かった……………」

保奈美「きゅ、急に何を………?!」

加蓮「……寝ながら考えたの……ねぇ……私が死ぬような事があったら……私の子どもを引き取ってくれる……?」

保奈美「…………………………」

加蓮「……引き取ってくれる……?」

保奈美「…………っ………!馬鹿な事を言うもんじゃないわ!…最初のお産の時は誰だってそんな事を考えるのよ。」

加蓮「………………………………」

保奈美「……しっかりして。」

加蓮「…しっかりしてる……する事がないから、やけに考え事に集中できるの。………死ぬのは怖くないわ……ただ……子どもを残していく事が心配なの………」

保奈美「縁起でもないことを言わないで!……悪い事ばかり起こっているのに……この上あなたまで…………」

加蓮「ごめんなさい………でも約束して……?……生まれるのは今日だと思うの………」

保奈美「……………っ……………」

加蓮「………あなたに育ててほしいの……」

保奈美(……わざわざ……あなたを憎んでいる私に預けようとしなくても…………)

加蓮「>>154

あなただから頼みたいのよ……

加蓮「あなただから頼みたいのよ……」

保奈美「………何で…?」

加蓮「…………だめ…かしら……?」

保奈美「…………………………」

加蓮「…………お願い………」

保奈美「…………っ………分かったわよ………」

加蓮「………ありがとう……」

保奈美「……………………………」

加蓮「………男の子だったらアシュレ………女の子だったら……あなたみたいな………」

保奈美「…止めて。……私は、あなたが思っているほどの人間じゃないわ。」

加蓮「……ううん………あなたは…………っ………………!」

保奈美「……メラニー?!」

加蓮「…………っ………今朝から……痛むの………」

保奈美「どうして……それを早く言ってくれなかったのよ?!……今すぐミード先生を……」

加蓮「……だめよ……まだ呼んでは……!ミード先生は今はとても忙しいんですもの……」

加蓮「……病院にもどこにも…先生を必要としていること方々がいっぱいいるわ………その方々たちに…………」

保奈美「あなただって同じぐらい医師を必要としているじゃない!すぐに今に先生を………」

加蓮「お願いだから呼ばないで……私のお産は1日ぐらいかかってしまいそうだから…………直前まで………ね………?」

保奈美「……………っ………分かったよ……………」

加蓮「……………………………」

保奈美「…………あなたは馬鹿よ………」

アトランタより6マイル 北軍陣地



晶葉「ふむ…………砲撃は順調のようだな。」

志希「もう抵抗できる力は残って無いとは思ったんだけど、一応、ね?」

晶葉「賢い判断だ。私の大事な『バグ』がつまらん反撃で失われて、データが取れんような事があっては困るからな。」

志希「…そろそろシャーマンの自信作が動いてるところが見たいんだけどな〜?」

晶葉「フッ……では望みを叶えてやろう。………今夜、作戦を実行に移す。」

志希「待ってました〜♪」

晶葉「……『ラフレシア』の調整も完了した事だしな。」

ラフレシア「…………………」

晶葉「ククク………誰の良心も痛めることのない、良い作戦だ。機械による、無作為の粛正…………お前にもしっかり働いてもらうぞ?」

志希「アタシの良心が痛んじゃうとか考えないの〜?」

晶葉「お前に良心などあるものか。」

志希「そ〜でっした〜♪」

晶葉「……ククククク………今日はいい日だ……」

メラニーの部屋



保奈美「………………………」

加蓮「…………っ……………」

保奈美「……メラニー?」

加蓮「……平気よ……ふふっ………思ってたより大した事なかったわ……」

保奈美(……そんなつまらない嘘を吐かないでよ……いっそ乱暴に泣き叫んでくれた方がずっとマシだわ……)

加蓮「……………っ………うっ…………」

保奈美「>>162

加蓮Pはどんな気持ちで見てるのか……

いっそ私が取り出してあげようか……

メラニー!(思わず駆け寄る)
……私は……何を……

>>161
それは後日談にて…………



保奈美「メラニー!」バッ

保奈美「………私は…………何を……………」

加蓮「………どうしたの………?」

保奈美「…………っ………あなたを死なせはしないわ……!」

加蓮「…………………………………」

保奈美(……メラニーは確かに憎い相手で……呪わしい相手だけど…………でも………!)

加蓮「………スカーレット……?」

保奈美「……いい?私が居ない間、しっかりしておくのよ?(……メラニーを死なせてはいけない……!)」

加蓮「………何を………?」

保奈美「もう我慢がならない!ミード先生を呼んでくるわ。きっと今は停車場で傷病兵の治療にあたられているはず。」

加蓮「だめよ…!…先生を呼ぶにはまだ…………!」

保奈美「うるさい!あなたが苦しんでいるのを見ているのは……辛いのよ!」

加蓮「………………………………」

保奈美「傷病兵だってあなただって、今にも死にそうな事に変わりはないでしょ!」

加蓮「………あ……その……………」

保奈美「ミード先生だってあなたを見殺しにするような事はないでしょう。いいえ、必ず助けてくださるわ!……他人にばかり気を使うのはあなたの悪い癖よ……!」

加蓮「…………………………」

保奈美「アシュレと約束したんだもの、あなたの面倒を見るって!いいから黙って寝ておきなさい!」

加蓮「……………………………」

保奈美「……………………………」

大通り



保奈美(どうして私がメラニーなんかのために………)タッタッタッタッタ…!

「退却だ!退却だ!もう全部お終いなんだ!」

「痛い………誰か………水を……………」

「……ジョーンズボロでも負けてしまったそうだ………もう…………」

保奈美(……ジョーンズボロで………っ………今はそんな事より………!)
タッタッタッタッタ…!

「ああ………帰りたい…………」

「……北軍が来る………!」

保奈美「………………っ………」
タッタッタッタッタ…!

停車場



保奈美「はぁ……はぁ……はぁ………着いた………」

「……もう駄目だ………………」

「……守れなかったんたなら………何のために………………」

保奈美「……通りよりさらに……傷病兵でいっぱい………っ…………」

「先生………俺は………………」

清良「弱気になっちゃいかん!……気を強く持つんだ!」

保奈美「………!居た………先生………!」

清良「……っ……!うるさい!今話かけるな!」

保奈美「?!」

清良「どうせ赤ん坊の事だろう?!わしはそんな事に構ってる暇なんぞ一秒たりともないのだ!そんなのは自分たちで勝手にやってくれ!」

保奈美「…………………………」

清良「…………っ………すまん…………あんたに怒鳴り散らしたところでどうにもなりゃせんと言うのに…………」

保奈美「………い、いえ…………」

清良「……みんな死んでいくのだ……みんな、みんな……わしにはそれをどうする事もできない………!」

保奈美「………………………」

清良「薬が無いんだ……治療どころか……………痛みを和らげてやる事すら………………」

保奈美「………先生………」

清良「北軍の連中め!全員地獄に落ちろ!ああ………どうすればいいんだ………!」

保奈美「……………………………」

清良「……赤ん坊の事は待っていてくれ。……ここが片付き次第行く……」

「……どうせ助からないんだ……赤ん坊の方に………」

清良「馬鹿を言うな!」

保奈美「……………………………」

清良「>>172

3部は色々描写が………

一時中断します

目の前で尽きようとする命を放っておけるわけがないだろう……!

ビルギットだけを[ピーーー]機械かよ……


再開します

清良「目の前で尽きようとする命を放っておけるわけがないだろう……!」

「……いいんです……先生はもう十分……………」

清良「南部同盟のために戦った勇士たちを……こんなところで死なせてたまるか…!あんたらはここで死んではいかん!」

「………………………………」

清良「……薬どころか包帯すらない……!だが……それでも諦める訳にはいかんのだ!わしは医者なんだ!」

保奈美「…………………………」

清良「……奥さん……あんたには申し訳ないとは思うが………やはり行けそうにはない。わしは1人でも多く、故郷に返してやらなければいかん……」

保奈美「…………………………」

清良「……わしが今何をしたところで無駄なのかもしれん……だが、みすみす見殺しにする事だけはどうしてもできんのだ………」

「助けて、先生!赤い花の…赤い花の化け物が………!!」

清良「落ち着け、あんたには田舎に家族がおるのだろ!くっ……鎮静剤があれば……クロロフォルムが欲しい!」

保奈美(………先生………全身傷病兵の血で真っ赤になって…………)

清良「…ああ……キニーネが……モルヒネがあれば……!」

保奈美「……先生。」

清良「何だ?!」

保奈美「……赤ちゃんは私が取り上げます。」

清良「実にありがたい、そうしてくれ!赤ん坊を取り上げるなんて大した事ではない……そこ、傷口を縛る紐を持ってこい!」

保奈美「………………………………」

清良「北軍の悪魔どもめ!!」

ピティパット叔母の家


ガチャ…バタン

保奈美「……っ…………はぁ…………はぁ………………っはぁ…………」
ヨロッ……

保奈美「………先生は来れない…!…私が……私が赤ちゃんを取り上げないと……!……出来るのかしら……いえ、やるのよ!」

保奈美「……必要な物は……?!私のお産の時は………確か……お湯と…タオルと……麻糸とハサミ!」

保奈美「………………………………」

保奈美「…………やってやる!……負けてたまるものか……!」

保奈美「……私は負けるのが……大嫌いなのよ!」

メラニーの寝室



保奈美「…………………………」

加蓮「…………っ…………っ………………はぁ……………………はぁ………………」

保奈美「…………ごめんなさい……」

加蓮「……いいのよ…………先生は来られなくて…………当然だもの…………あなたが取り上げてくれるなら…………心配は…………っ…………!」

保奈美「メラニー!」

加蓮「………平気よ………それよりウェードちゃんは…………?」

保奈美「他人の心配をしてる場合じゃないでしょ!」

加蓮「……あなたの……大切な子どもに………何かあったら………」

保奈美「……っ……ウェードには台所でとうもろこしのお粥を食べさせているわ!」

加蓮「………そう……安心したわ………いざとなったら………走れるわね……」

保奈美「……………は?」

加蓮「………北軍が……もうすぐそこまで来ているんでしょう……?」

保奈美「……そんな事は………」

加蓮「………北軍が来たら……私の事は置いて………逃げて………赤ちゃんには……かわいそうだけど………」

保奈美「……冗談じゃないわ!私……北軍なんかちっとも怖くない!」

加蓮「>>181

あなたには生きてほしいの……

加蓮「あなたには生きてほしいの…………」

保奈美「私は死なないわよ、あなただって。」

加蓮「……私のせいであなたが………って考えたら………もう…………」

保奈美「……余計な事を考えないの!……考えれば考えただけ…辛くなるだけよ……」

加蓮「………大好きなスカーレットに………生きてほしいの…………」

保奈美「………っ……!私の話を聞いてる?」

加蓮「……あなたは死んだらいけないわ………あなたが死んだら…ウェードちゃんやあなたの家族は………」

保奈美「メラニー!」

加蓮「…………………………」

保奈美「いい加減にして!次にそんな事を言ったら…………承知しないわよ!」

加蓮「……………………………」

保奈美「……私を見くびらないで!…あなたを置いて逃げるほど臆病じゃないわ!」

加蓮「………………ごめんなさい…」

保奈美「……………ふん……」

保奈美(…置いて逃げようと思った事は数え切れないほどある……でも…それをメラニーに言葉を出して言われるのは………!)

加蓮「……………………………」

保奈美「……それに……そんな事をしたら私の負けになってしまうわ!」

加蓮「………………負け……?」

保奈美「……何でもない。さあ、そんな気弱な考え方をしていたら、無事な物も無事じゃ済まないわ。生きて、アシュレに赤ちゃんと会う事だけを考えていなさい。」

加蓮「…………あなた…………っ…………ありがとう……………」

保奈美(……私は……何を言っているのよ………………?もう…分からないわ…………)

〜〜〜

オギャア…オギャア…オギャア…!

保奈美「………………………」

オギャア…オギャア…オギャア…!

保奈美「……………はは………ははは…………はははははは………」

加蓮「………………………………」

保奈美「……………生きてるじゃない………」

加蓮「………みたいね……………」

保奈美「………散々怖がらせておいて…………何よ………」

加蓮「……………ふふっ………ごめん………」

保奈美「…………馬鹿ねえ…………」

加蓮「………そうね…………ねえ…赤ちゃんは………?」

保奈美「……偶々居てくれた産婆さんが下で産湯につけてくれてるわ。」

加蓮「………そう………赤ちゃんも…無事なのね…………疲れた………少し眠ってもいい………?」

保奈美「…………勝手にしなさい。」

加蓮「…………本当にありがとう……スカーレット…………」

保奈美「…………………………」

ピティパット叔母の家 表 ポーチ



保奈美「………済んだ……済んだ……済んだ………無事に済んだ…………ああ………!私は忌々しい悩み事から解放されたんだ………!」

保奈美「……っ………ふぅ………いつも生温かい嫌な風でさえ……心地が良いわ………」

保奈美「……………………………」

保奈美「……酷く疲れてしまったわ………ああ………あのままだったら、メラニーだけじゃなくて……私まで一緒に死んでしまうところだったわ…………」

保奈美「……何にせよ…もう終わった!私は運命に勝った!見ている?ピニャコラドール!あなたの目論見は早速ご破算よ!ふふ……あはは……あははははは………!………はぁ…………」

保奈美「………メラニーの元に戻らないと……………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………もうしばらくだけ……風に当たっていても……誰も私を責めはしないわよね………?……そうよ、誰が私を責めらると言うの?!」

保奈美「………あの悪夢みたいな部屋には戻りたくないわ………疲れた………………」

保奈美「………………………………」

保奈美「…今は……一体何時なのかしら…………?…街が……やけに静かね………………」

保奈美「……………………………」

保奈美「>>190

まさか……!
(外に出る)

保奈美「まさか……!」バッ!

保奈美「……おかしい……静か過ぎる……………退却中の軍隊がまだ残っているはずなのに………」

保奈美「………………………」

保奈美「……様子を見に行った方が………いや……とてつもなく恐ろしい事が起きている気がする………行かない方が…………」

保奈美「……………っ……!ここで考えてたって始まらないわ…!何が起きているのかはっきりさせないと………」

保奈美「…………………………」

通り


保奈美「………やっぱり静か過ぎる…………誰か、誰かいないの?!」

保奈美「…………………………」

保奈美「……私がメラニーに付いている間にみんな、私たちを置いて避難してしまった……?」

保奈美「………いえ……そんな事はありえない……すっかり人が…………」

キィィィィィィ……!

保奈美「?!………な、何の音………?」

キィィィィィィ…………

キィィィィィィィィィィィィ……

保奈美「……こっちに近付いて………?」

沙紀「伏せろ!!」

保奈美「えっ…………?!」

沙紀「死にたくなかったら伏せろと言ったんだ!早く!」

保奈美「えっ……あっ………?」サッ!

バグ「……」キィィィィィィィン……!!

保奈美「?!」

沙紀「間一髪か!」ダーン!ダーン!ダーン!

バグ「」ドォォォォォン!

保奈美「……………………………」

沙紀「……あんたの上半身はまだ下半身とくっついているようですな。……安心しましたよ。」

保奈美「………い、今のは……?」

沙紀「僕が50ヤード離れた場所から10セント銀貨に穴を空けられると言うお話。信じていただけましたな?」

保奈美「…………………………」

沙紀「……シャーマンの奴の新しい機械人形ですよ。…奴め……戦争ではなく実験をしているつもりなのか?!」

保奈美「………………………」

沙紀「……立てますか、スカーレット?」

保奈美「あ……ああ…………」

沙紀「……手をお貸ししてあげます。死にたくなかったら立つんだ。」スッ

保奈美「…………」ガシ……

沙紀「あんたが生に執着している人間で良かった!」グッ…!

保奈美「………………………」

沙紀「……我らが麗しきアトランタは今日をもってお終いですよ。」

保奈美「…………あなた…………どうして……?」

沙紀「本当に危険になった時は、僕があんたを助けると約束したではありませんか。」

保奈美「…………………あっ………」

沙紀「忘れられるとは心外ですな。」

保奈美「……………私………」

沙紀「………………」ギュッ

保奈美「!」

沙紀「………………………」

保奈美「………………………」ギュッ…

沙紀「…僕があんたを助けます。馬と馬車だって軍に徴用された分を軍からかっぱらってきました。……おかげさまで味方から撃たれましたよ。」

保奈美「……………………………」

沙紀「>>198

早くメラニーと彼女の子供を連れてきなさい。あれはすぐに来ます

沙紀「…早くメラニーと彼女の子供を連れてきなさい。あれはすぐに来ます。」

保奈美「…………えっと…………」

沙紀「噂が伝わるのは案外早いのですよ。もう生まれたのでしょう?」

保奈美「…………………え、ええ……」

沙紀「………本当に間一髪だ………身籠っている人間を何マイルもの間、馬車に乗せる訳にはいきませんからね。」

保奈美「……………………………」

沙紀「………運はこちらにまだ残っているようです。」

保奈美「…………バトラー……」

沙紀「………何です?」

保奈美「………あ、あのね……………め、メラニーは……今体力を使い果たして寝ていて……とてもじゃないけれど………連れてだなんて来れないわ…………」

沙紀「………僕も少し平常心を失っていたようですな。よくよく考えずともそうに決まっている。」

保奈美「……だから………その…………………」

沙紀「分かっていますよ……今から迎えに行きましょう。僕は落ち着きます、だからあなたも落ち着きなさい、スカーレット。」

保奈美「………………………………………………」

沙紀「………よし、あんたは強い人だ。」

保奈美「…………め、メラニーは……………」

沙紀「………行ってみなきゃしょうがないじゃないですか。」

保奈美「…………………………」

沙紀「残りのお喋りは馬車での愉快な逃避行の最中にしましょう。……大丈夫です。」

保奈美「…………………………」

沙紀「……行きますよ。」

メラニーの寝室



沙紀「メラニーさん!」バーン!

加蓮「……………バトラー船長……?」

沙紀「……無事の様ですね。……あれは活発な人間から襲っていたように見えた………逆に幸いしたか……」

加蓮「………あの……………」

沙紀「……………………………」

加蓮「…………逃げ出さなければいけなくなったのですね………?」

沙紀「…………はい…」

加蓮「………………………」

沙紀「……赤ちゃんは………成る程、あなたに似て賢そうな子だ。………私の首に手が掛けられますか?」

加蓮「……あの………スカーレットは…………」

沙紀「ウェードを連れて荷造りをしています。一緒ですよ。」

加蓮「……………ありがとうございます……スカーレットたちを…………………」

沙紀「……………………………」

加蓮「……あなたも………とても……勇敢で優しいのですね………」

沙紀(………あなたほどじゃありませんよ…)

ピティパット叔母の家の前



沙紀「スカーレット、荷造りは終わりましたか?」

保奈美「……終わってなんかいないけど………いいわ……」

沙紀「……そうですか。…ウェード、振り落とされないようにするんだぞ?」

仁奈「…………」コク……

沙紀「ミセス・ウィルクス。……揺れますが許してください。」

加蓮「………大丈夫です。」

沙紀「……………………………」

保奈美「……どこへ逃げるの…?」

沙紀「さあ……まだ具体的には決めておりませんな。取り敢えずアトランタを出んことには………」

保奈美「タラへ……!タラへ行きましょう………!」

沙紀「タラだけはお止めなさい!あそこまでの道のりには北軍だけでなく、我らが南軍の落伍兵と脱走兵がわんさか出る。見つかったら最後ですよ。」

保奈美「私は家へ帰りたいの……!お母さんの元へ帰って……それで……それで……!」

沙紀「タラはもうとっくに焼き払われているはずです。あなたをタラへなんかやる訳にはいかん!」

保奈美「……うるさい!タラにさえ行けば……全部が何とかなるわ!」

沙紀「……………………………」

保奈美「>>208

バグってあの外見でどんな原理で動いているんですかね………………ミノ粉……?


一時中断します

お父さん……お父さんが生きているかさえ確認できればいいのよ……!

再開します

保奈美「お父さん……お父さんが生きているかさえ確認できればいいのよ……!」

沙紀「確認するためにあなたが死んでしまったら元も子もないではないですか。」

保奈美「あなたが私たちが死なないようにそこまで連れて行ってよ!行きなさい!」

沙紀「無茶を言うものではありません。僕を何だと思っているのです?」

保奈美「金さえあれば何でも出来ると言っていたじゃない?!もし会ったら買収でもすればいいでしょう!」

沙紀「そんな真似をしたら僕らはそのまま身ぐるみ剥がされて、埋められてしまうでしょうな。第一機械人形相手には無理です。」

保奈美「……………っ…………!」

沙紀「………あなたの望みを叶えてやりたいのは山々ですがね………」

保奈美「………お願い…………タラへ…………帰してよ……」ポロポロ……

沙紀「………泣いたっていけませんよ……僕は………………」

保奈美「じゃあいい!私だけでも歩いて帰るわ!止めるんじゃないわよ?止めたら……許さないから……!」
ポロポロ……

沙紀「……………困ったお人だ……」

保奈美「………家へ…………帰る………………」ポロポロ……

沙紀「………泣くのはやめなさい。あんたは強い子だ……家へ連れて行ってあげますよ。だから、泣くんじゃない……」ギュッ…

保奈美「…うう………ううう…………」ポロポロ……

沙紀「…………………」チラッ

加蓮「…………………」コク……

沙紀「……出来る限りはやってみましょう……責任は持てませんがね。何があっても知りませんよ?」

保奈美「……………………」コク……
ポロポロ……

沙紀「……………………………」

バトラーの馬車 車内


ガタガタガタガタ……!

保奈美「ねえ、もっと速度は出せないの?!」

沙紀「先程まで僕に取りすがって泣きじゃくっていた娘さんの仰る台詞だとは思えませんな。」

保奈美「バトラー…!」

沙紀「急いでいますよ。一番急いでこれなのです。」

保奈美「………っ…………!」

沙紀「僕をせっつく暇があったら、周りを見てくれませんか?いつ、どこから、あれが襲ってくるやら分からん状況なのです。」

保奈美「…………………………」

沙紀「ああ、そうそう。これを持っていてくださいませんか?」スチャ…

ピストル「…」

沙紀「無理だとは思いますが、あの空飛ぶノコギリの刃と刃の間を狙ってください。それ以外は全部弾かれます。」

保奈美「…私にピストルを持てと言うのね……?」

沙紀「持っていないよりは持っている方がマシでしょう。日頃の行いが良ければもしかしたら当たるかもしれませんよ?」

保奈美「……………………………」

沙紀「今の内にお祈りをしておくと良いかも…………」

保奈美「…ピストルなら私だって持ってるわ!」

沙紀「持ってる?どこで手に入れたのです?」

保奈美「……チャールズのよ。」

沙紀「ハッ、スカーレット。あんたは気にもかけていなかった男の魂に助けを乞おうとしてらっしゃるのか?」

保奈美「……っ……!…今はそんな事を言っている場合ではないでしょ!」

沙紀「あんたの心の内を占有している男は何一つしちゃくれていないのに、哀れなチャールズ君は死してなお、あなたを守ろうとしている……」

保奈美「レット・バトラー!」

沙紀「………………………………」

保奈美「無駄口を叩いている暇があったらどうしてもっと急いでくれないの?!」

沙紀「だから最大限急いでいると言ったではありませんか。」

保奈美「……もっと急いで……………!」

沙紀「……………あんたは僕の事は気にも止めてはくれんのですね?」

保奈美「急いでったら!」

沙紀「>>218

沙紀「………………ならばせいぜい舌を噛まないように気をつけるんですな。」

保奈美「分かってるわよ!」

沙紀「………………………………」

保奈美(バトラーはこんな時までふざけて……!きっとこの状況だって面白がっているに違いないわ!)

沙紀「……いつだって自分の思い通りに物事が進んだなんて考えん事です。」

保奈美「はぁ?」

沙紀「………………フン……」

保奈美「……何が言いたいのか分からないのは相変わらずとして、あなたの舌はいつだってよく動くのね!」

沙紀「あなたほどじゃありませんよ。ウィルクス夫人をご覧なさい。静かにお祈りをしてらっしゃるではありませんか。」

保奈美「…………」チラ

加蓮「…………」ブツブツブツブツ……

沙紀「あれぐらいの信仰心を持たれてはいかがです?」

保奈美「私は神様だなんて微塵も信じていないわ!」

沙紀「それはそれは………失礼しました。」

保奈美「神に祈ったって今まで何にもなりゃしなかったわ!そんな物を信じられる訳がないでしょう!」

沙紀「神罰はちっとも怖くない。しかし、北軍は恐ろしい、と言うのですね?」

保奈美「……ええ、そうよ!何か文句があって?」

沙紀「……目に見える物しか信用されないのなら、それを徹底してしまえばいいのに。そう思っただけですよ。」

保奈美「……だから何を………?!」

沙紀「瓦礫で道が悪くなっています。舌を噛み切りたくなかったら黙っておられのが非常にお勧めですよ。」

保奈美「………………っ…………」

沙紀「…………はいや!」

〜〜〜


沙紀「…………ふっ!」グイッ…!

馬車馬「ブル……ブルル………」
ガタ……ガタタ……

沙紀「………………………………」

保奈美「まあ!どうしていきなり馬を止めるの?!」

沙紀「……向こうを見なさい。退却していく最後の部隊です。」

「……うう……………」

沙紀「輝かしき大義のために戦った軍隊の退却する最後の部隊を見たと言ってお孫さんたちに聞かせる日も来ようと言うものです。」

保奈美「…………っ……!バトラー……!」

沙紀「……最後列の少年。彼は歳はまだまだ16にも行かないぐらいぐらいですかね。…背格好なんかあなたとそう変わりませんよ。」

保奈美「兵隊の観察なんか……!ああ……道の両側の家が燃えているわ!」

沙紀「…………………………………」

保奈美「バトラー…!バトラー…!」

沙紀「……………………」パァン!

馬車馬「ヒヒーン……!」
ガタッ…!ガタガタガタガタ……!

保奈美(……何がしたいのよ…?!この男は…………?!)

沙紀「………………………………」

夜 アトランタの外れ



沙紀「……お待たせしました。やっとアトランタを出ましたよ。」

保奈美「急いで!止めないで!」

沙紀「あんたはそれしか頭にないのですか……?……スカーレット…あんたはいつまでこんな馬鹿げた事を続けるつもりなのです……?」

保奈美「続けるって?!」

沙紀「まだタラまで抜けていくつもりかと言っているのです。南軍と北軍がこことの間に立ちふさがっていると言うのに。」

保奈美「(今になって何を……?!)ええ、行きたいわ。早く連れて行ってちょうだい!」

沙紀「まあ、待ちなさい。僕の知っている道は戦火で破壊されてしまっているようです。…あなたのここからどうタラへ行けば良いか知っているのですか?」

保奈美「知っているわ!本街道から外れたところに荷馬車道があるの。そこを通って行けば着けるわ。」

沙紀「よろしい。あなたは無事にタラへ辿り着けそうだ。北軍はまだここまでは来ていないでしょうから、軍隊に馬を取られさえしなければ、あなたは無事にタラへ行けるでしょう。」

保奈美「……私が……?……私ですって……?」

沙紀「そう、『あなたが』ですよ。僕はここでお別れです。」

保奈美「……は?何を……?!じゃあ、あなたは一体どこへ……?!」

沙紀「軍隊に着いて行きます。勇敢なる兵士たちに加わるんですよ。」

保奈美「馬鹿な冗談を言わないでちょうだい!さあ、早く行きましょう!」

沙紀「ところがこれが冗談でない。…………僕は本気なのですよ。」

保奈美「死にに行くの?あなたが?……嘘を言わないで!戦争や戦争で死ぬ事をあれだけ罵倒していたじゃない!」

沙紀「僕の勇敢なる犠牲的な精神を理解していただけないとは残念ですな。あなたに愛国心と輝かしき大義への愛はないのですか?」

保奈美「…………どうかしてしまったの……?!」

沙紀「ふふっ……はははははは……確かに僕はどうにかしてしまったのかもしれない………全く僕らしくない………!」

保奈美「ねえ、冗談なんでしょう?私たちを置いて行ったりなんかしないわよね?!」

沙紀「>>228

……ならば言わせてもらおう。あなたは神を捨てたのではない。すがる対象を神から私に乗り変えただけだ。
選びなさい。何者をも頼らず、何者にもすがらずに生きていくか。そちらのメアリーのように、人間とは何者かに頼らねば生きていけないのだと自覚し、その上で己のなすべきことをやっていくのかをね。

沙紀「ならば言わせてもらおう。あなたは神を捨てたのではない。すがる対象を神から私に乗り変えただけだ。」

保奈美「何を…………?!」

沙紀「選びなさい。何者をも頼らず、何者にもすがらずに生きていくか。そちらのメラニーさんのように、人間とは何者かに頼らねば生きていけないのだと自覚し、その上で己のなすべきことをやっていくのかをね。」

保奈美「…………………………」

沙紀「僕のような無頼漢にすがっている時点で大失敗ですよ。……今だって僕はあんたを置いて行こうとしているではないですか、まだこんな男を頼みの綱と?」

保奈美「………っ………………!……だからって…………!」

沙紀「………行かなければならないのですよ。はははは…………本当に…………何をいまさら…………」

保奈美「そんな訳の分からない理屈で私たちを!こんな暗闇の中に!置き去りにしようと言うのに?!」

沙紀「…許してくれ、とも分かってくれ、とも言うつもりはありません……僕だってよく分からないのですから…………南部人特有の感傷癖が顔を出したのかもしれませんね……………………」

保奈美「………あなた……………!」

沙紀「驚きですよ……自分の中にこんなドン・キホーテ的な物があっただなんて…………我が勇敢なるリー将軍は……ああ……そんな事はどうだっていい。僕は戦争に行くのです!」

保奈美「……………………………」

沙紀「……あんたならきっと……何にも縋らない生き方が出来るかもしれない…………」

保奈美「…………っ!置いてかないで!私たち……ひとりぼっちでか弱い…………」

沙紀「か弱いものですか。あんたみたいに利己的で決意が固い人間が弱いものか!もし、あんたを捕らえた北軍がいるなら、そいつがいい面の皮ですよ。」

保奈美「…………っ…………っ…………………………」

沙紀「……………………」スタッ………

沙紀「馬と馬車はせめてもの手向けに差し上げます。……強く生きてくださいよ。」

沙紀「……ねえ、スカーレット。これから戦場に行く男に何か言ってくれませんか……?」

保奈美「………っ……!……人でなし!……下劣、卑怯、汚らわしい!」

沙紀「……ふふっ……ふふふふふふ………それではまだ足りなくはありませんか?」

保奈美「……好きにして!行きたいなら今すぐ行って!そして、大砲の弾にでも当たって木っ端微塵になればいいんだわ!」

沙紀「ふふふ………いいでしょう。…その時は南北戦争の英霊を祀る祭壇からあなたを見下ろします。」

保奈美「……早く行って!」

沙紀「……人を急かすのがよほどお好きと見える。」

保奈美「………………………」

沙紀「……急かされなくとも行きますよ。……さようなら、スカーレット、強い人。」ザッ……ザッ……

保奈美「………っ………(…憎らしすぎて言葉が出てこない……!)」

沙紀「……………………………」
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……

保奈美「………………………」

ザッ………ザッ………ザッ…………………ザッ……………………………

保奈美「……………………………」

保奈美「………行ってしまった…………あれ程南部を憎んでいたバトラーが………何故………?」

保奈美「…………………………………」

舞台裏




沙紀「………ふぅ………これでしばらく出番なしかぁ………………疲れたっす………………」

沙紀「……あの口調疲れるっす……………うあー………もーダメっす…………」パタ………

沙紀「……バトラーは屈折しすぎなんすよ………もっとまっすぐできないのかな……?…………できないんだろうなぁ…………」

沙紀「…………………………」

ヒュッ…

沙紀「わわっ?」パシ

塗料の缶「スカーレット(2)」

沙紀「…………塗料の缶………?」

沙紀P「………お疲れ……喉が渇いているだろう………満たされなければならない………」

沙紀「……………………」

沙紀P「…………?………それは……君の色では……なかったかな……?」

沙紀「………いや……その……アーティスティックな差し入れで嬉しいけど………塗料じゃちょっと…………」

沙紀P「…………………すまない………それは間違いだ………」

沙紀「…………………あっ………そうなんすか……?」

沙紀P「………ああ…………」

〜〜〜


沙紀「………ん…………」
ゴク……ゴク……ゴク………

いちごバーニャカウダオレ「………」

沙紀「………っはぁ……!生き返るっす!」

沙紀P「…………ふふっ………そうかい………」

沙紀「…えへへへ………ちょっとお行儀悪かった……かな……?」

沙紀P「……君は何をしていたって可愛いんだ………気にする事はないさ……」

沙紀「……………もう……」///

沙紀P「>>238

すみません……

寝落ちしま………

ふふふ……
ところで……覗き見とは感心しないな、Q君?
(一触即発めいた雰囲気)

再開します

沙紀P「………ふふふ…… ところで……覗き見とは感心しないな…………Q君? 」

Q「あれ、バレてた?お兄さんやるね。」

沙紀P「………どうも………」

Q「………………………………」

沙紀P「…………………………」

沙紀「えっと…………」

沙紀P「……………………」 ギュッ

沙紀「はわっ?!」///

沙紀P「………………………」

沙紀「……………」///ドキドキドキドキ…

沙紀P「…………渡さない…………」

Q「……あ、そう………それは困るんだけどなぁ…………」

沙紀「…………あ、あの……」
ドキドキドキドキ…

沙紀P「……………………」

沙紀「………………………………」

Q「渡してくれたって構わないでしょ?減る物じゃないんだし……頼むよ。」

沙紀P「………断る。」

Q「……………………………」

沙紀「………あなたは誰っすか…?」

Q「俺?俺は…………」

沙紀P「…………………」ギュッ

沙紀「……………やっぱ聞かなくていいっす。」

Q「……それって…………?」

沙紀「……今のやり取り……沙紀Pさんの態度……合わせて考えれば聞くまでもないっす……」

Q「……なぁんだ、そう言う事かぁ…………だったらさ………」

沙紀「……あなた、あんまり褒められた人間じゃないみたいっすね。」

Q「………………え……?」

沙紀「………………………………」

Q「いや………俺はただサインを………………」

沙紀P「………………………………」

沙紀「…………………………」

Q「…………あー……………………」

〜〜〜


沙紀「ご、ごめんなさい!あんまり褒められたような人間じゃないみたいとか言っちゃって!」

Q「いやいや、いいって。俺も紛らわしい行動しちゃったし。お相子ってところでしょ。」

沙紀「うう………紛らわしいと言えば沙紀Pさんっすよ!沙紀Pさんが思わせ振りなオーラを出すから……しかも、きゅ、急に抱き寄せたりなんかして………………」///

沙紀P「…………沙紀ちゃんの……切り取れた美しさを味わう時間を…………渡したくなかった………………」

沙紀「もう!」///

沙紀P「…………せっかく……沙紀ちゃんと……俺だけの世界…………だったのに……………」

沙紀「>>246

(けど、このQって人……こうしてニコニコ笑って親しげにしてるのに、目だけは全然笑ってない。まるで漫画に出てくる、腹に一物抱えた奴みたいに……)

沙紀(……けど、このQって人……こうやってニコニコ笑って親しげにしてるのに、目だけは全然笑ってないっす……まるで漫画に出てくる、腹に一物抱えた奴みたいに…………)

Q「ん?俺の顔に何か着いてる?」

沙紀「……あ、いや……………」

Q「……………………………………」

沙紀「…………………………」

Q「ま、俺わりとイケメンな方だからね。 注目されるのも仕方ないかな!」

沙紀P「……………………………」

Q「見物料は沙紀ちゃんのサインでいーよ?」

沙紀「……あ、ごめんなさい…」スッ

Q「サンキュー!やっほー、俺前々から沙紀ちゃんのファンだったんだよ!直筆サインだ!あははは!」

沙紀(…うーん……………でも危険な感じがするような……しないような……こうして見てたらただの明るい人だし………………)

Q「ありがと、沙紀ちゃん!大事にするよ!」

沙紀「どもっす!(……気のせい……かな…………?)」

Q「あははははは!やーりぃ!」

沙紀「………………………………」

沙紀P「………………」ポン……

沙紀「………………!」

沙紀P「……………………」フルフル……

沙紀「…………………………」

Q「む、まーた沙紀ちゃんと仲よさそうにして。羨ましいなぁ……どうやったら俺も沙紀ちゃんみたいな子と仲良くなれるんです?」

沙紀P「……………本当の自分の色を…………隠さない事だ……」

Q「…………本当の自分の色……ねぇ…………………」

沙紀P「……………………」

Q「…成る程ね、参考になったよ。ありがと、沙紀Pサン。」

沙紀P「………………………………」

Q「……邪魔者は消えた方がよさそうだね。」スクッ

沙紀「…………………………」

Q「……あ、最後に一つだけ聞いておきたいんだけどさ……担当の子ってやっぱり自分で見つけるの?」

沙紀P「………見つかる時は見つかる………見つからない時は見つからない……………そう言う物さ…………」

Q「…………巡り合わせ次第って事か………にーさんのプロダクションってユニークな方針なんだね。」

沙紀P「………………………」

Q「……貴重な休憩時間を邪魔して悪かったね。……じゃ。」スタスタスタスタ…

沙紀P「………俺からも最後に一つ………構わないかな……?」

Q「ん、何?」ピタ…

沙紀P「………日本は平和な国だ………そう言うものは不要だ………舞台裏にまで持ち込まない方がいい。」

Q「……何の事を………?」

沙紀P「……画家は対象の観察も得意なのさ………」

Q「…………………………………」

沙紀P「……………………………」

沙紀P「…………右胸の物は………護身のためかな………?………いずれにせよ………気を楽にしたまえ……」

Q「…………ひゅー………沙紀ちゃん…君のプロデューサーさんは大した人だよ、本当。」

沙紀「……………………………」

沙紀P「………心配いらないよ……沙紀ちゃん………彼は………悪い人間ではない………ただ………………」

沙紀「…………………………」

Q「>>254

……じゃ、俺からも忠告。日本は平和な国なんかじゃないよ……上辺だけさ。
(そう……俺がわざわざ日本に来たのも“マッハ”になったのも、ただプロデューサーとして仕事するためだけじゃない。
『天の姫』……神を気取った化け物ども……そいつらをバカみたいに崇める連中……あいつの仇……俺が全員……この手で……)

安価把握

ただの単車野郎だと思っていたら……

病院につき無念の一時中断……

今思えば>>246は「まるでバトラーそのものじゃないっすか……」の方がよかったかもしれない

>>256
バトラーと言うのはそう言う男なんですよね……哀しい憎悪と自嘲の………



再開します

Q「……じゃ、俺からも忠告。日本は平和な国なんかじゃないよ……上辺だけさ。 」

沙紀P「………………………」

Q(そう……俺がわざわざ日本に来たのも“マッハ”になったのも、ただプロデューサーとして仕事するためだけじゃない………)

沙紀「………その目で何を見てきたっすか……?」

Q「………色々さ。」

沙紀「…………色々…………」

Q「……ああ、色々見てきたんだ。何せ俺は世界中を走って来た。」

沙紀「……………………………」

Q「なーんてね、あはは……!駄目だ、シリアスな雰囲気は俺には似合わねえや!これからお世話になるってのに威かしちゃってごめんね?」

沙紀P「………別に構わないさ……」

Q「あははははは!じゃ、今度こそ改めていなくなるよ!」スタスタスタスタ……

沙紀「………………………」

Q「沙紀ちゃん、また会おうぜ!」
スタスタスタスタ……

沙紀「………あ、うん………」

Q(…………『天の姫』……神を気取った化け物ども……そいつらをバカみたいに崇める連中……あいつの仇……俺が全員……この手で……)
スタスタスタスタ……

〜〜〜


沙紀「…………沙紀Pさん……」

沙紀P「………悪い人間でらない………悪い人間ではね…………何かあったのだろうが…………」

沙紀「……何かって………?」

沙紀P「………本人が話したがらない事は………聞くものじゃない………踏み入ってはいけない………」

沙紀「…………………………」

沙紀P「…………………………」

沙紀「……まっすぐって……難しいんすね………」

沙紀P「……………………」ギュッ…

沙紀「………………………」

朝 古い小屋の中


チュン……チュンチュン………

保奈美「…………んう……」パチ……

保奈美「………うう………」ムクリ……

保奈美「………体中が痛い………窮屈な格好で寝たせいかしら………?……窮屈な格好で………?」

保奈美「………ここはどこで………一体何が………」ガタ……

馬車の板敷「…………」

保奈美「………………ああ………」

加蓮・仁奈「…………………」

保奈美「………全部思い出せた……………」

保奈美「……昨日……バトラー………名前を呼ぶのも汚らわしい……!…に置き去りにされたあと………北軍から隠れるために………ハッ…!」サッ!サッ!

保奈美「………っ……北軍の兵士はいない……!………助かった……………」

保奈美「…………はぁ……………」

保奈美「………昨夜は……何度も兵隊たちの足音や……砲車を引っ張る音が聞こえたけど…………ここはとうとう……見つからなかったみたいね………」

保奈美「……轍にはまり込んだ馬車を必死に押し上げたのも………全部が全部悪い夢だったようだわ…………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………夢だったら……いいのに……………………」

加蓮「……スカーレット………水を飲ましてもらえないかしら………?」

保奈美「……水なんかないわ。」

加蓮「…………………………」

保奈美「……メラニー……?……………ああ………また眠ってしまった……だけね…………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………私も酷く……喉が渇いたわ……………」キョロ……キョロ……

保奈美「…………この林……見覚えがあるような…………そうだわ……ここはマロリー農場の前庭じゃない…………農場まで行けば…………井戸が……………」ヨロ……

保奈美「……み、水……………」ヨタ……ヨタ……

農場焼け跡 廃墟



保奈美「……………………」ヘタ……

保奈美「………っ………………はぁ………………何て……こと…………………」

保奈美「………北軍が略奪をしたあと………火をつけて行ったのね……………………」

黒焦げになった土台石「…………」

保奈美「………タラも……こんな風に………焼け落ちて死んだみたいに………………」

保奈美「………………………」

保奈美「そんな事を考えてはいけない!」

保奈美「>>267

今は生きることだけを考えるのよ……石にかじりつき泥水をすすってでもね……

保奈美「今は生きることだけを考えるのよ……石にかじりつき泥水をすすってでもね……」

保奈美「そうよ………生きて……帰らなくちゃいけないんだから…!タラに帰りさえすれば……お母さんがきっと全てを何とかしてくれるわ………」

保奈美「………座りこんでいたら……それだけ帰るのが遅くなってしまう………」ユラ………

保奈美「……井戸は枯れてはいないはず………水は濁って腐ってしまっているかもしれないけど………水は水……飲めば喉を潤せる………」ユラ…ユラ…

保奈美「……水汲みだなんてした事はないけど……奴隷たちがしているのは見ていたから大丈夫………」

保奈美「……………死んでたまるものか………!」

古い小屋の中



保奈美「……………………………」

腐ったりんご「………………」

保奈美「…………」ガシ!ガブリ!

保奈美「……っ!……………腐っている………いえ………そんな事は今はどうだっていい……とにかく食べ物なんだから………」

保奈美「……すぅ…………はぁぁ……………」

保奈美「…………………………」
ガブリ!ガブリ!ガブリ!ガブリ!

保奈美「………っはぁ………っはぁ…………………」

保奈美「…………………」キッ!

水の入ったバケツ「…………」

保奈美「………っ…」ガシ!グイッ!

保奈美「……………ぐ………う………………っはぁ……………はぁ…………はぁ……………」

保奈美「……北軍も井戸に毒を投げ込んでいくまではしな…………毒が入っていたらどうなって……………」

保奈美「………っ!……ここまで来て毒なんかで死ぬものか!毒だって飲み干してやるわ!」

保奈美「……そのためだったら腐ったりんごだって食べるし、馬みたいにバケツから水だって飲むわ!」

保奈美「…………ああ……そうだ。馬に水を…………」

仁奈「……ママ…」

保奈美「何よ?」

仁奈「……このりんご……腐って………………」

保奈美「知っているわよ!農園の地面から拾ってきたんだから当たり前でしょ!黙って食べなさい!」

仁奈「ひうっ………!」ビクッ……!

保奈美「……私は疲れているんだから、口を閉じでいなさい!頭が痛くなるわ!」

仁奈「…………………………」

保奈美「……その目は何?ねぇ……私を困らせて楽しい?」

仁奈「あう………うう……………」

保奈美「置いていかれたくなかったら静かに………」

加蓮「……落ち着いて…………スカーレット………」

仁奈「メラニーおばさん……!」
トテトテトテトテトテトテ……!

加蓮「……よしよし………あなたのお母さんは………少し疲れているだけなのや………」

仁奈「……ぐすっ………ぐすっ…………」

保奈美「…………………………」

加蓮「………………………」

保奈美「………起きてたの?」

加蓮「……今……目が覚めたの……………」

保奈美「……そう………………」

仁奈「………ぐすっ…………ぐすっ……………………」

保奈美「………………………………」

加蓮「………………無理は……しないでね…………?」

保奈美「…………無理をしないとどうしようもないでしょう。」

加蓮「>>275

無理ばかりしていたら人間らしい心を失うだけだわ……

加蓮「無理ばかりしていたら……人間らしい心を失うだけだわ……」

保奈美「………っ…………!」

加蓮「……それは……あなたが……辛いわ………………」

保奈美「……同情してもらわなくて結構よ!…具合が悪いなら…余計な気は回しさないで。」

加蓮「…………………………………」

保奈美「……私が頑張らなければ、誰がこの状況を何とかできるの?!」

加蓮「………………それは…………」

保奈美「……人間らしさを失う?そんな事よりも今は生きる事が最優先じゃないの?人間らしさだとかを気にしていたら餓死してしまうわ!」

加蓮「…………………………」

保奈美「人間らしさがどうこう言うのだったら、私たちを置いていったあの悪魔みたいな男に言いなさいよ!」

加蓮「…………バトラー船長だって…………………」

保奈美「バトラーが?!」

加蓮「…………………………いえ………………」

保奈美「…………………………」

加蓮「……………私ね…………あなたの事が………………」

保奈美「いいって言ってるでしょう!…………もういい、私は馬に水をあげてくるから。」スク
スタスタスタスタ……

加蓮「………………………………」

仁奈「…………ぐすっ……………怖いよ……………………」

加蓮「……………………」ナデナデ……

仁奈「…………ぐすっ………………」

加蓮「…………かわいそうなスカーレット………………」

数日後 馬車車内


ガタ……ガタ……ガタ……ガタ……

保奈美「……………………………」

加蓮「…………………………」

保奈美(……これで何日目…………?…………一週間から先はちゃんと数えていないから分からないわ……)

ガタ……ガタ……ガタ……ガタ……

保奈美(……分かったところで、どうという事にもなりはしないけど…………
なら考えるだけ無駄ね…………)

保奈美(早くタラへ…………タラへつけさえすれば…………!)

保奈美(……道端に転がっているのは……死体と……死んだ馬や驢馬だけ……!人の声も何も聞こえやしない…………!)

保奈美(……この辺りがまるで……恐ろしい亡霊たちに支配されてしまったようだわ……!)

保奈美(亡霊が私たちを見ている!)

保奈美(……今すぐこんな事を全て投げ出して、お母さんの胸の中に飛び込めたら!……お母さんはいつだって何とかしてくれたわ……)

保奈美(メラニーと赤ん坊だって死なせはしないだろう……!きっと、落ち着いて『静かになさい』と言って、悪い物を追い払ってくれるに違いない!)

保奈美(……そしたら……そしたらもう何も怖いものはなくなるわ…………)

保奈美(……でも、お母さんは病気で死にかけているのかもしれない!)

保奈美「…………………………」

保奈美「………急がないと……」パァン!

加蓮「………………………………」

保奈美(……家に着けば……お母さんは優しく出迎えてくれる……!…お父さんは文句を言いながら、何とかする方法を教えてくれる!……ええ、そうよ!そうであるはずよ!)

保奈美(タラ……緑の綺麗な私の生まれた場所!タラはどんな時も私に優しかった……)

保奈美「>>283

保奈美(きっと……いえ、絶対に私たちを優しく出迎えてくれるに違いないわ……!)

保奈美(……そうに……決まっている……!)

加蓮「……ねえ、スカーレット………馬を少し休ませた方が………」

保奈美(タラ……タラ……!美しいタラ………!)

加蓮「……スカーレット…………」

保奈美(悪い事ばかりだけど……タラにさえ帰れれば……!……帰ったらまず、服装を見たマミーに叱られるかしら………?)

加蓮「…………………………」

保奈美(……ここまで来たらあと1マイルだ……!そこにタラの農園がある……!)

保奈美(……………)チラ……

廃墟「………………………」

保奈美(……焼け跡…………タラは…………いいえ、例えどんな風になっていたとしてもタラはタラなのよ!私の……帰るべき場所なのよ……!)

仁奈「……お腹すいた…………」

加蓮「……よしよし………もうすぐの我慢だから……ね……?」

保奈美(この馬は何故もっと早く走れないのかしら?!)

加蓮「……………………………」

保奈美「タラ……!待っていて……みんな……!」

加蓮「……スカー………(……やめておきましょう………)」

仁奈「……タラって何……?……『ホクグン』みたいに……怖いもの……?」

加蓮「……怖いものじゃないわ………大丈夫よ………ウェード………」

仁奈「…………………………」

保奈美「………家へ………帰れる……!」

加蓮「……………………………」

タラ農場




保奈美「………はぁ…………はぁ………はぁ…………はぁ…………タラ…………!」

保奈美「……タラは焼けていない……!……ああ………ちゃんと無事だった……!」

保奈美「………………!」

保奈美「………玄関に誰かいる……!あの陰は……………っ…………!」
ヨロッ……タッタッタッタッタ…!

保奈美「……お父さん……!」
タッタッタッタッタ…!

保奈美「はぁ……はぁ……はぁ………はぁ………………!」タッタッタッタッタ…!

玄関



友紀「…………………」ボー………

保奈美「はぁ………はぁ………はぁ………………!」ザッザッザッ………

友紀「……………?」ボー………

保奈美「……お父さん?……私よ……スカーレットよ。……帰ってきたわ!」

友紀「……スカーレット………………スカーレット…………!スカーレット……なの…………?」

保奈美「ええ、そうよ!」

友紀「…………スカーレットぉ………よく……帰ってきてくれたね………………」

保奈美「……っ…………ええ………………」

友紀「…………あの馬車は………?」

保奈美「ウェードとメラニーと、メラニーの赤ちゃんが乗っているわ!えっと…メラニーはとっても具合が悪いの!」

友紀「………メラニーが…………それはいけないね………マミーたちに声をかけないと………………」

保奈美(ああ、これで重荷から解放された!)

友紀「………………………………」

保奈美「お母さんにも声をかけないと!お母さんならこんな時に全部を上手くしてくれるわ!」

友紀「…………あっ………………そ、それは……………………」

保奈美「……お母さんがどうかしたの………?」

友紀「………………………………」

保奈美「…………………………」

友紀「…………お母さんは………………お母さんは………………」

保奈美「…………ねぇ…………」

友紀「……お母さんは…………昨日…………病気で………………死んじゃった………………」

保奈美「…………………………」

友紀「>>292

すみません……

寝落ちしま…………

で、でも、これ見てよ!北軍の機械人形の回路を参考に作ったんだ。
すごいよ、これを馬車に取り付ければ、馬車の性能は数倍に跳ね上がる。これを持っていって、そしてすぐ取り付けて試してみてよ!
(見るからにおかしな目つきでガラクタを渡してくる)

酸素欠乏症に…………


再開します

友紀「で、でも…北軍の機械人形の回路を参考に作ったんだ。 すごいよ、これを馬車に取り付ければ、馬車の性能は数倍に跳ね上がる。これを持っていって、そしてすぐ取り付けて試してみてよ! 」

保奈美「お、お父さん……?!」

友紀「さあ、今すぐ試してみてよ!さあ、さあ!早く動くところが見てみたいんだよ!どうしたの、固まっちゃって?」

保奈美「………………………………」

友紀「……ははー、この回路の出来を疑っているんだね?ふふふ……確かに見た目はちょーっと古臭く見えるかもしれないけど、取り付けさえすれば何と5倍のエネルギーゲインを…………」

保奈美「…………どう……しちゃったの…………?」

友紀「………?」

保奈美「……今は……お母さんの話をするべきじゃないの……?」

友紀「…………………………」

保奈美「……それがどうして……そんな訳の分からない機械の話に…………」

友紀「…あ、あはは……やだな、そんなの決まってるじゃん………………何で………?」

保奈美「……………………」ゾッ………

友紀「えっと……あれ……?あたしは今…………お母さんが…………お母さんが…………………」

保奈美「……っ…!しっかりして!」

友紀「………あ……そうだね…しっかりしないと…………」

保奈美「(お母さんの事について……お父さんに聞いたら駄目な気がする………)……取り敢えず、まずは何よりもメラニーたちを寝かせてあげて。」

友紀「あ………そ、そっか……メラニーたちを寝かせてあげないと…………そうだよ…………」

保奈美(……疲れていて頭が回らないんだわ………ええ…………)

友紀「………どうすればいいの………?」

保奈美「……マミーたちを呼んで手伝ってもらうんでしょ!」

友紀「……ああ……そっか…………そうすればいいんだ…………」

保奈美「…………………………」

タラ農園 エレンの事務室



保奈美「…………………………」

保奈美「………この部屋に……お母さんはいない………1日たりともこの部屋で帳簿をつけるのを欠かさなかったお母さんが…………………」

保奈美「……と言うことは…………本当に……………………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………お母さん…………」

保奈美「………………………」

保奈美「………疲労と空腹で頭がさっぱり働かないわ…………全部あとから考えましょう……」

保奈美「………………………」

ガラクタ「…………………」

保奈美「……お父さんはこれを北軍の機械人形を参考にして作ったって言ってたけど…………………………」

ガラクタ「…………………」

保奈美「……ちゃんとした機械なんてアトランタオでいくつか見ただけだけど…………それでも分かるわ……これは明らかに……………………」

ガラクタ「…………………」

保奈美「…………………………」

保奈美「…………どう…………しちゃったのよ…………」

保奈美「……マミー。…そこにいるんでしょう、出てきなさい。」

菜々「………………」スッ…

保奈美「……えっと……こんなに暗いと気が滅入るから、燈火をつけてちょうだい……」

菜々「…無理です。ろうそくはみんな持って行かれてしまいました。ですから、燈火なんてつけられませんよ。」

保奈美「………………………………」

菜々「1本だけある事にはありますが、それはキャリーン様とスエレン様の看護に使う物です。ここで使うなんてできませんよ。」

保奈美「……持って行かれたって……誰に………」

菜々「北軍の連中以外に誰が居るものですかね。」

保奈美「……北軍…………………」

菜々「食べ物も何もかも奴らに持って行かれてしまいました……菜園も荒らされました。……何も残っていませんよ。…黒人だって連れて行かれたり、逃げたりして、私を入れても3人しかいません。」

保奈美「……………………………」

菜々「>>302

病人が2人、旦那様はもう手遅れ、生活に必要なものもろくに手に入らない!ただでさえ手一杯なのに、乳飲み子と病人をまた増やして!
あんたなんかいても邪魔なだけです!早くどこへなりとも消えてください!

菜々「病人が2人、旦那様はもう手遅れ、生活に必要なものもろくに手に入らない!ただでさえ手一杯なのに、乳飲み子と病人をまた増やして! あんたなんかいても邪魔なだけです!早くどこへなりとも消えてください!」

保奈美「……っ?!」ビクッ!

菜々「…………………………」

保奈美「……………………………」

菜々「………ゴホン。……今のは言葉が過ぎました。許してください。」

保奈美「……………え、ええ………」

菜々「…スカーレット嬢様だって命からがら帰ってきたんでしょうし……今の言い方はありませんね……」

保奈美「…………………………」

菜々「……歳ですね……私がしっかりしなくてはいけないのに………こんな失態……エレン様に合わす顔がない………」

保奈美「…………ごめんなさい……」

菜々「……いいえ………老ぼれの言う事なんて気にしちゃいけません…………ただね、こっちにも余裕なんてちっともないって事を分かってください……………」

保奈美「…………………………」

菜々「…………すみません………スカーレット嬢様はオハラ家のお人です…………出て行けなんて………この場で私を追い出すなりなんなりしてください…………」

保奈美「……あなたも気にしないで…………私があなただったら……同じ事を言うだろうから……」

菜々「…………乳飲み子には牛乳を飲ませましょう。森に追い込んでおいたんで、乳牛が一頭だけ残っています………メラニー様は…………」

保奈美「私があなたと一緒に面倒を見るわ。……それなら何とかなる…?」

菜々「…………分かりません……」

保奈美「………………………………」

菜々「……長く生きてきましたが……こんな事は初めてですから………ああ………エレン様さえいらしてくだされば………………」

保奈美「…それを考えるのは止めましょう………」

菜々「……………はい……」

保奈美「……… お母さんには遠く及ばないけど……私も頑張るから…………その…………せめて………………」

菜々「……………………………」

保奈美「…………………………」

菜々「………何もない、と言いましたが………実は床下にお芋と……ぶどう酒を少しだけ隠してあります………今夜はそれを食べましょう。」

保奈美「……マミー………あなたが居てくれて…………本当に助かったわ………」

菜々「………よしてください………何にもできちゃいません………食べ物だって少ししか隠せませんでした…………」

保奈美「………いいえ……あなたが私が居ない間……どれだけ働いてくれていたかが簡単に想像できるわ………残ってくれてありがとう……」

菜々「………ご主人様をお支えするのは当たり前じゃないですか………私には残らなかった連中の方が理解できませんよ。………ずっとここで暮らしてきたんです………」

保奈美「…………………………」

菜々「……お芋と酒樽を掘り返して来ますね。……スカーレット嬢様は…………」

保奈美「……私も手伝うわ。レディはそんな事はしちゃいけないだなんて言わないわよね………?」

菜々「………………すみません……」

保奈美「…………いいのよ……」

食堂



保奈美「………お父さん……お父さんも食べなくてはだめよ……?」

友紀「………お腹空かない…………」

保奈美「…………………………」

友紀「……………………………」

保奈美「………そう………(…お父さん………かなり…痩せたわね………)」

友紀「…………ぶどう酒ちょうだい……」

保奈美「………そこの樽から柄杓で汲んで飲んで。」

友紀「………………分かった…」

保奈美「…………どうして奴らは……タラを焼いていかなかったんでしょうね……?」

友紀「それは………奴らがこの屋敷を本部に使ったからだよ。」

保奈美「北軍がこの家を………?!(…タラが……北軍に………汚された………!)」

友紀「そうなんだよ、スカーレット……奴らがここに来る前にね、川向こうから煙が上がるのが見えた。……ハネーたちはメーコンに避難しているから心配は要らなかった……でもね……あたしたちはメーコンに行くわけにいかなかった………」

保奈美「………………………」

友紀「…病気のスエレンとキャリーン………それからお母さんは………動かすことができなかったからね……」

友紀「北軍は鉄道を使えなくするためにジョーンズボロに攻めてきたんだよ……何千っていう大砲と馬と……機械人形が来た…………あたしは玄関でそいつらに会ってやったんだよ!」

保奈美「まぁ………………(……何て勇敢なの行いなのかしら…………軍隊に……1人で向かい合うなんて……)」

友紀「奴らが屋敷を焼き払うから退けって言った。でも、あたしは焼くならあたしごと焼けって言ってやった!離れるなんてできなかったよ……家族を置いてだなんて………………」

保奈美「……それから…………?」

友紀「うちには病人がいる、動かせば死んじゃう、お前たちがそのつもりなら、あたし1人だけでも相手になってやるぞ……って言ってやった!タラだけは絶対にに守りたかった…………」

保奈美「………………………………」

友紀「>>312

友紀「……あれ?大きな星が点いたり消えたりしてる。あはは、大きい!ホームランボールかな? いや、違う……違うな。ホームランボールも打つからな……」

保奈美「……っ…………」

友紀「……暑っ苦しいなぁ……この部屋…………出口はどこかな…………?
ねぇ…………この部屋から出してよ…………」

保奈美「お父さん……!お父さん……!」

友紀「……あたしは……タラを……家族を守ったんだ………北軍に勝ったんだよ……!……あは……あはは……!やっぱり北軍なんて大した事ないじゃん………………!」

保奈美「……………………………」

友紀「……あははは!やった!お父さんは勝ったぞー!」

保奈美(………………お父さんは……タラと家族を守った…………その結果が……………………)

友紀「あははははは!はは……あは…………はぁ…………はぁ……!あははははは……!」

保奈美「……………………」チラ……

菜々「………………」フルフル……

保奈美「………………っ……」

友紀「南部同盟、バンザァァァァァイ!」

〜〜〜



菜々「…旦那様は…北軍の連中に命より大事なタラを蹂躙されたんです……納屋を、厩舎を、垣根まで…全部壊されて薪にされました……牛も豚も鶏も……全部取られました…………」

保奈美「………………………………」

菜々「家具も陶器も……銀器は咄嗟に井戸に投げ込んで置いたので無事でしたが…………………………」

保奈美「………………そう…………」

菜々「……それに加えて…………」

保奈美「止めて、言わわないで。」

菜々「………すみません…………」

保奈美「………………」グビッ…!

保奈美「…………っはぁ…!」

菜々「…ぶどう酒をそう一気に飲んだら酔っ払ってしまいますよ。」

保奈美「酔っ払う…?…私は酔いたいのよ!酔ってみんな忘れてしまいたい!」

菜々「………………………………」

保奈美「だいたい……こんな物で私が酔っ払うと思うの?私はこの辺りで一番の酒豪のお父さんの娘よ?」

菜々「……………………………」

保奈美「……っ……!」グビグビ…!

菜々「…………もう1つだけ…どうしても言わなければならない事があるんですが…………」

保奈美「……何…?」

菜々「………………………………」

保奈美「…………何なのよ……?!」

菜々「………言うかどうか悩みましたが……言ってしまいます。…………うちにあった綿花は……北軍に全部焼かれてしまいました……」

保奈美「…………………………全部…………?」

菜々「……ええ……全部です…………『ジョージア一の祝い火だ。』とか何とか言って………………」

保奈美「……三年間蓄えていた………15万ドルの綿花が…………全部………?」

菜々「………………はい……」

保奈美「…………………………」

菜々「………辺りは真昼間みたいに明るくなりましたよ…………」

保奈美「………どうして…………わざわざそんな事を…………?」

菜々「………………………………」

保奈美「>>320

どうしてそんなことを聞かせたのよ!どうして……!!

保奈美「どうしてそんなことを聞かせたのよ!どうして……!!」

菜々「……黙っていようかとも思いましたがね……隠していたってどうにもならない事じゃないですか…………」

保奈美「話されたってどうにもならないわよ!」

菜々「……………………………」

保奈美「……聞きたくなかったわ、そんな事!……ああ、もう!」グビッ…!

保奈美「……悪い事ばかり私にみんな教えてくるわ!悪い事ばっかりよ!」

保奈美「……北部の人間はみんな悪魔だわ!兵隊だけじゃ飽き足らず、私たちまで飢え死にさせようって言うのね!」

菜々「………南部から人っ子1人居なくさせるつもりかもしれませんね…………」

保奈美「そうに決まっているわ!…奴らの思惑通りになんかなるものですか!ああ……北部の連中が憎い!」

菜々「憎いのはみんな一緒ですよ…………」

保奈美「…………っ………………」

菜々「………………………………」

保奈美「………………………………」

保奈美「…マミー!……生きるわよ!何としてでも生き延びるのよ!何をしてでも!」

菜々「………………………………」

保奈美(神にだって負けなかった!…北軍なんかには負けない!今度もまた勝ってみせる!)

菜々「………話してすみませんでした……」

保奈美「いいえ、むしろありがたかったわ!おかげで心置きなく北部を憎める!」

菜々「………………………………」

保奈美「…死んでなんかやらないわよ!」

保奈美(この世界から安心できる場所は永遠に姿を消してしまった……逃げられない袋小路に閉じ込められてしまった……!)

保奈美(……この状況を打開するにはどうしたらいい……?!)

保奈美(……………………………………)

保奈美(………まずは食べ物を手に入れないと…………何かまだ残っているものがないか確認しよう!……すべては空腹でなくなってからよ!)

保奈美(…お父さんは無一文からこの農場を作った……なら、私にだってそれができるはず!)

保奈美(やるのよ、スカーレット・オハラ!)

翌朝 食堂



保奈美(……体中が痛い……足の肉刺だって潰れて………生皮が剥けている…………)

保奈美(……喉が焼けるように乾く…………頭が痛い…………吐き気も…………これが二日酔い…………)

保奈美(………………………………)

保奈美(だから何よ……?!私は……今日から生きるために働かなければいけないのよ!)

友紀「……………スカーレット…」

保奈美「……何?悪いけど、芋以外は無いわよ?」

友紀「……そ、そうじゃなくて………お母さんが来るまでご飯を食べるのは待った方が……」

保奈美「………?!」

友紀「……遅いなぁ……お母さん……何してるんだろ……?」

保奈美「…………………………」

菜々「…………………………」

友紀「ねえ、お母さんが何してるか誰か知らない?」

保奈美(……お父さんは……もう駄目だ…………)

菜々「>>328

安価把握

ジェラルドが深刻な事に………

一時中断します

みんなそれぞれ演じながら複雑な思いを抱えてるんだろうな……

再開します

菜々「旦那様……奥様はここにおられますよ。」スッ……

バット「…………………」

友紀「ん……?」

菜々「…………………………」

友紀「…………………………」

菜々「……ですから、ここにおられるじゃないですか。」

友紀「………あ、そうそう!そだね!なぁんだ、ここに居たんだぁ…!あはははは!遅いから心配したじゃん!」

保奈美「…………………………」

友紀「あははははは!ほら、お母さんが居なきゃ始まらないんだから!……スエレンとキャリーンの様子はどう?」

バット「…………………」

友紀「……そっかー……早く良くなるといいね……家族はみんな揃ってるのが一番だもん……ね、スカーレット?」

保奈美「……え、ええ………(…………………………………)」

友紀「大丈夫だよ、お母さん。お母さんが看病してるんだから、すぐに良くなるよ。」

菜々「………………………………」

友紀「飲む?元気が出るよ……?………あははは、自分でも飲み過ぎがどうかぐらい分かるよ!」

保奈美(…………見えて……いるの……………?)ゾッ………

友紀「お母さんだって偶にはパーっと飲んで………ごめんごめん!」

バット「…………………………」

保奈美「……………っ………」ガタッ…!

友紀「……どしたの?」

保奈美「……ご馳走様!」

友紀「……………………………」

保奈美「………………………」
スタスタスタスタスタ……!

菜々「…………………………」

玄関



保奈美「……体を動かしている方がマシだわ……何かしていないと耐えられない……!」

古い日よけ帽子「…………」

保奈美「………働こう…」パシ

保奈美「…………………ほんの少し前までは緑色の羽根飾りとレースの付いた綺麗な帽子をかぶってたっていうのに……………」

保奈美「………………………」

保奈美「……今はあんな物は遠い別世界の物にさえ感じる………」

保奈美「……何が夢で……何が現実なのかしら…………少なくとも……この背骨を貫くみたいな痛みは現実ね………」

保奈美「……過ぎ去った日の事を考えちゃいけない!じゃないと……過去に捕まってお父さ………っ……!」

大きな籠「…………」

保奈美「……考えない……!必要な事は考える事じゃない!」ガシッ!

保奈美「動く事!明日の食べる物を得る事!生きる事だけを考えるべきなのよ!」スクッ!

保奈美「……考えるのは考える余裕が出来てからよ…!」スタスタスタスタ…!

保奈美「……っ………まずは…綿花畑を見に行こう……」スタスタスタスタ…!

荒涼とした綿花畑



保奈美「昨日マミーから聞いた通りね……滅茶苦茶に荒らされてしまっている…!これじゃあ収穫なんて望めやしないわ……」

保奈美「………っ!…北軍めッ!1人残らず地獄に落ちてしまえッ!」

保奈美「…はぁ……はぁ…………ああ……いけない……!こんな言葉使いをしてはお母さんに……………」

保奈美「………………そうだ………お母さんは…………もう……………」

保奈美「……………………………」

保奈美「……何なのよ、もう!私が何をしたって言うのよ!……私は何もしちゃいないじゃない!理不尽よ!不公平よ!」

保奈美「……川向こうの小さな綿花畑は無事らしいわね………小さすぎて北軍の目に止まらなかったって言ってたかしら………?」

保奈美「…確かに……あんな綿花畑目に止まりゃしないわ。荒らす方が手間よ。たかだか3梱ぐらいしか収穫できないもの……」

保奈美「……ああ……困った………3梱じゃ政府に納める税金にも足らない…!」

保奈美「…………………………」

保奈美「……まあ……いいわ、そんな事は考えなくて。税金なんか私の仕事じゃないわ。男の人がやるべき仕事よ。」

保奈美「>>340

それよりも今は、とにかく食べ物を作らないと……!棉花は今はいいわ……

>>330
その辺りも合わせて………




保奈美「それよりも今は、とにかく食べ物を作らないと……!綿花は今はいいわ……」

保奈美「……食べ物を作る……よく考えたら……私、食べ物の作り方だなんて何一つ知りやしないじゃない……」

保奈美「知っている事と言ったら……男の人にいかに自分をレディに見せるやり方……とか……ダンスの踊り方……とか……面白くもない話をさも、感心しているかのように聞く方法ぐらいじゃない……………」

保奈美「………………………」

保奈美「……私が今までやって来ていた事は………何だったのかしら……………こうなってしまえば……何一つ役に立たないじゃない……………」

保奈美「…………綿花の摘み方だって、少ししかわからない………」

保奈美「……綿花のおかげで暮らせてきたのに、綿花の摘み方もロクにしらない、そんな話があるでしょうか!」

保奈美「……いや、実際に私は知らない……誰が知っている……?…お父さん………は抜きにして……おか…………も…………………」

保奈美「スエレンやキャリーンだってもちろん知らないでしょう!タールトン家の四姉妹や、フォンティン家の娘たちだって………そもそもジョージアに綿花の摘み方を知っている娘がいるの………?」

保奈美「………いいえ、きっと誰も知りやしないでしょう………マナーや礼儀作法だけをしっかり覚えろと教えられてきたのだから……」.

保奈美「……マナーに礼儀作法……食べる物さえない時に、なんて無意味な響きだろう!」

保奈美「………私たちが窮屈な思いをしながら、必死に覚えてきた事は何だったの………?」

保奈美「…………駄目だ……!立ち止まっていると考え事ばかりが首をもたげてくる………」

保奈美「……昔は考えこむことなんてなかったのに………ここに来て……………………」

保奈美「……ああ……!だから、考え事をしてはいけないのよ!……なにか恐ろしいものに引き込まれてしまいそうになる………!」

保奈美「………考えるな……考えるな…………!私は頭を抱えるためにここに居るんじゃない!」

保奈美「………はぁ………はぁ………………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………向こうを探しに行こう………」

廃墟



保奈美「……ここの菜園には何か残っているかしら……?」

保奈美「……社交界の花形だった私が……今や飢えをしのぐために他人の菜園を彷徨って歩いている………」

保奈美「………ふふっ…………あはは…………笑えるわね…………あははははは………………………はぁ…………………」

保奈美「……………食べられる物を探さないと…………」ザッザッザッ…カツン…

保奈美「……?」

煤けた土台石「……………………」

保奈美「……………………………」

保奈美「………土台石だげ………建物がの立っていた場所に…………っ………!」サッ…サッ…

保奈美「……大きな煙突が二本………あの煙突には見覚えがある……!あれは……………………」

保奈美「………あまりにも変わりすぎていて気付かなかった………ここは………トウェルヴ・オークスだ……!」

保奈美「………ああ………ここは…私がパーティーに出たり、お喋りをしていた場所だ!…………この木は………そうだ……私はこの木の下でチャールズから結婚を申し込まれたんだ…………」

保奈美「………間違いなく…ここはトウェルヴ・オークスなんだ………ああ………何という事なの………」

保奈美「………ここが……あの美しい……ウィルクス家の……屋敷の跡だなんて…………」

保奈美「………おお、アシュレ!いっそ、あなたに死んでもらいたい!この有様をあなたが見なければならないと思うと………」

保奈美「………何かが終わってしまった………何かがこの灰の中に埋もれて死んでしまった…………」

保奈美「……ここにはもう……何も残されちゃいない………………」

保奈美「……………………………」

保奈美「ああ、もう何も考えないようにしよう!これ以上考えていてはどうかしてしまう………!」フラッ………

保奈美「……………………」フラフラ…

菜園



保奈美「………ここも荒らされていて何も……………」

萎びた大根「…………」

保奈美「…………!」ガシッ!ガリッ…!

保奈美「……っ………苦い………………」ガリガリガリガリ…!

保奈美「………っはぁ…………………っはぁ……………………」

保奈美「…………………………」

保奈美「……………惨め……ね………………」

保奈美「>>379

安価ミスです………すみません……

再安価
>>353

保奈美「…結局、食事のマナーも披露宴やパーティーでのマナーも全て役に立ちはしない!真に教えられるべき作物の作り方や綿花の捕り方を知らないから今、こんなにも苦労している……!」

保奈美「…今までやって来た事は無駄だったのよ、無駄!……それこそ、奴隷たちが知っているような事の一つでも知っていれば………!」

保奈美「……やってられないわ……!」ゴロ……

保奈美「……教えてもらえていたのが、食べ物の作り方だったらどんなに良かったかしら!……そしたら飢えずに済んだのに……!」

保奈美「…………空腹だわ……生きているうちにこんな事になるだなんて………………」

保奈美「…………起き上がるのも辛い……………………」

保奈美「……どうして誰も……食べ物の手に入れ方を教えてくれなかったのよ……………………」

保奈美「…………………………」

保奈美「……食べ物を手に入れる………食べ物なんて幾らでも無限にあるものだと思っていたわ………………あの時残したり、捨ててしまった食べ物の少しでもあれば………………………」

保奈美「……馬鹿だったわ………生きるって言うのは結局……食べる事だって言うのを忘れていたのよ………」

保奈美「…………ああ…………お腹が空いた……………」

保奈美「……怒りをぶつける気力も起きやしない……………………」

保奈美「……疲れた………このまま…………土になってしまうのも………悪くないかも…………」

保奈美「…………………………」

「諦めるぴにゃか?……こんなどこかで終わられたら張り合いがないぴにゃが………まあ、これはこれで楽でいいぴにゃ。」

保奈美「………………………………」

「スカーレット・オハラ。この地に眠る。お墓にはどんな感動的な言葉を掘るぴにゃ?……もっともお墓を立ててくれる人がいれば、だけど。」

保奈美「…………うるさい……静かにして…………」

「……久しぶりだって言うのに、冷たい態度ぴにゃね。ぴにゃっ、ぴにゃっ、ぴにゃっ、ぴにゃっ!」

保奈美「………………………………」

「キミはここで自分勝手にも楽になろうとしている。キミらしいぴにゃね。キミは自分の事以外考えていない。」

保奈美「……っ…………!……私がこうして食べ物を探しているのは……誰のためだと思っているのよ……?みんなのためじゃない!」

「じゃあ、キミが食べ物を持って帰らなかったらどうなるか分かっているぴにゃね。その上でキミは楽になろうとしている。」

保奈美「……家に残った奴隷たちが何とかしてくれ…………はっ……!」ムクリ……!

保奈美「……奴隷たちの……長屋………!」ヨロッ……タタタタタタタ……

「………………………………………」

タラの屋敷 台所



保奈美「………………………」

大鍋「…………」グツグツ…

菜々「……かぶにキャベツ……五色豆にさやえんどう………どこから見つけて来たんです…?」

保奈美「……奴隷たちが自分たちで食べるために育てていた野菜をとってきたの。」

菜々「……なるほど……主人を捨てて逃げ出すような不義理な奴らも食べ物は持って逃げれなかったという事ですか………フン、いい気味ですね。」

保奈美「……そのおかげで野菜が手に入ったんだから、感謝していない事もないわ。」

菜々「………ま、そうですね。」

保奈美「……ごった煮を作っているの。……肉は入っていないけど、今までに比べたらご馳走だわ。」

菜々「調味料も何もなかったと思いますけど?」

保奈美「豚の脂で味を付けてあるわ。燈火には松の根っこを使ったの。」

菜々「まぁ……!豚の脂だなんて、あなた方の食べるようなものじゃありませんよ……?!」

保奈美「そんな事どうだっていいわ。食べ物は何だって貴重なんだから。」

菜々「……………………………」

保奈美「白人は豚の脂を食べないって言うルールのために、味なしの料理を食べるのはごめんよ。」

菜々「……ルールは守らないと………」

保奈美「飢え死にするのがマナーなの?」

菜々「…………………………」

保奈美「分かったのよ。ルールや行儀作法なんて意味がないって。そんな事より、うちの人たちにひもじい思いをさせない方が遥かに意味があるわ。」

菜々「………ですがねぇ…………」

保奈美「………………………」

菜々「>>362

……わかりました、そこまで言うなら私は何も言いません
(ナナも終戦直後はこんな生活してたっけなぁ……思い出したくなかったなぁ……)

安価把握

…菜々さんすみません………

お休みなさい

再開します

菜々「……わかりました、そこまで言うなら私は何も言いません。(ナナも終戦直後はこんな生活してたっけなぁ……思い出したくなかったなぁ……)」

保奈美「そう。」

菜々「……スカーレット嬢様に従いましょう。何せ、あなたはエレン様の娘なんですから。(……何にもなくて……ただ…思い出だけがあって…………)」

保奈美「………………………………」

菜々「………まさか、こんな事になる日が来るなんて………………」

保奈美「…………フン…」

菜々(…………ううん……これでいいの……どんなに辛い事や苦しい事でも覚えておく………………)

保奈美「………愚痴を言ってたって、何にもなりゃしないわよ?」

菜々「……愚痴の一つや二つ、溢さずにはいられませんよ…(……忘れちゃだめ………そんな時代にだって生きていた人たちが居たんだから………)」

保奈美「…ハァ………あ、そう。」

菜々「……………………(……私は……ナナは忘れませんよ、誰の事も…それがナナの役目。あの人との約束だから……………)」

保奈美「…………(さすがは生ける伝説……演技に熱が………いや…これは……………………)」

菜々(……いけないな…演技の最中に他の事を考えちゃ……)スタスタスタスタ……

保奈美「…どこへ行くの?」

菜々「決まっているじゃありませんか、お皿とスプーンを取りに行くんですよ。」スタスタスタスタ……

保奈美「あっ…………」

菜々「手づかみで食べるのはマナー以前に熱くて仕方がないでしょうよ。それじゃあ、行ってきますね。」
スタスタスタスタ……

保奈美「……………………………」

数日後 事務室



保奈美(……菜々さん…………いえ…舞台の上にいる以上……縁起に集中しないと…)

保奈美「…………はぁ…………背骨が痛い………1日だけでも休みが欲しい………………」

保奈美「……そうもいかないわよね…………今日も何とかして食べ物を手に入れなくちゃ……この前のごった煮はもうなくなってしまったし…………」

保奈美「………お腹が空いたわ……………」

保奈美「……………………………」

保奈美「……もう何年も空腹の心配だけをしている気がするわ……実際にはまだ一ヶ月も経っていないのに……」

保奈美「………こんなことをするために生まれてきたんじゃないのに………………」

保奈美「……どこか別の世界では、パーティーに参加して、楽しくダンスを踊ったり、ふざけながら歌を歌っている人たちがいるに違いない………私が…少し前までそうしていたみたいに………」

保奈美「……そして、どこかでは野戦病院で人が死んでいっている………どこかでは軍隊が惨めに退却している……………そして…また、どこかでは、丸々太った馬に乗った北軍に溢れている……………!」

保奈美「……タラからずっと離れたところには戦争と世界がある……!……だけど、それは今は関係のない事だわ………!」

保奈美「…5、6マイルしか離れていない隣の農場まで行く気力すら湧かないもの…………ここは無人島のような気さえする………赤い地面と木に囲まれた無人島………」

保奈美「……無人島に漂着した男の話があったような………確か……ロビンソン……ロビンソン………………………」

保奈美「………っ………そんな事を思い出したって…………………」

保奈美「……………………」

コンコン…

保奈美「……マミー……?」

菜々「はい、私ですよ。スカーレット嬢様、ご飯の時間ですから食堂に来てください。」

保奈美「……今日も芋とピーナッツ……それとミルク……?」

菜々「他にないんですから。」

保奈美「……………今行くわ……」

保奈美「………………………………」

保奈美「…………はぁ………………」

食堂



仁奈「ママ……ウェードお芋きらい…………」

友紀「今日もお芋かぁ……スカーレット…他のないの……?」

保奈美「……っ………!あのねぇ……………」

加蓮「落ち着いて……スカーレット………ゴホッ…ゴホッ………」

保奈美「………………………」

加蓮「……悪気はないのよ…………ね?……私は……ひもじくないから………ゴホッ………私の分を……」

保奈美「…あなただって食べなきゃ死んでしまうわよ……」

加蓮「>>373

↑うっ……ゴホッ……!(容態が急変)

加蓮「いいのよスカーレット……もう長くないって……自分でもわかるから……」

保奈美「馬鹿言わないで!」

加蓮「……よく考えた結果よ…………長くない人間に食べさせても…………意味がないでしょう……?」

保奈美「食べなさい!食べて……あなたは生きなきゃならない!あなたが死んだらアシュレは………!」

加蓮「………アシュレは………悲しんでくれるでしょうね………」

保奈美「なら………!」

加蓮「……このままだと……共倒れになってしまうわ………私が…………」

保奈美「メラニー!次に同じ事を言ったら口に無理やり芋を詰め込むわよ!」

加蓮「……ありがとう………だけど…………」

保奈美「うるさい!そんな風に考えてるから、良くなるものもよくならないのよ!」

加蓮「……………………………」

保奈美「死んだりしたら……許さないわ……!(…メラニーが死んだら、アシュレとの約束が……………私は本当にそれだけの理由で必死になっているの………?)」

加蓮「……………………………」

保奈美「……………っ……………」

加蓮「………ごめんなさい……………そうね………スカーレットがそれだけ言ってくれるなら………!……うっ………ゴホッ…………!」ガタン…!

保奈美「……?!ちょっと………!」

加蓮「……ゴホッ……ゴホゴホッ………っ……く…………!」

保奈美「………っ……!マミー!メラニーを寝室まで運ぶのを手伝って!」

菜々「分かりました。………これだけ具合の悪いメラニー様は愚痴一つこぼさないって言うのに、大した農場主様ですね。」

友紀「………あう………………」

菜々「……しっかりしてください、メラニー様。薬を飲ませてあげますからね。」

加蓮「………っ………ごめんなさい………ゴホッ……ゴホッ………」

保奈美「………………………」

寝室



加蓮「………っはぁ………っはぁ…………うっ…………ゲホッ…………………はぁ…………」

保奈美「……落ち着いた?」

加蓮「………ええ……………私って……あなたに迷惑をかけてばっかりね………」

保奈美「…………別に。」

加蓮「………………優しいのね………」

保奈美「……………………………」

加蓮「……甘えっぱなしだわ………あなたにはやる事が山のようにあるって言うのに……………」

保奈美「……病人を働かせるほどじゃないわ。(……本当はメラニーだけじゃなくて……スエレンやキャリーンにも働いてほしいぐらいだけど……)」

加蓮「……嘘ね……とっても疲れた顔をしているもの………」

保奈美「………!(…見透かされた…………?!)」

加蓮「……寝てなんかいられないわ……………私も………………」

保奈美「………っ……!病人は寝てなさい!倒れられたら余計な手間が増えるだけじゃないの!そう思うんだったら早く良くなりなさい!」

加蓮「………………………」

保奈美「…あなたは馬鹿なの……?…自分の事はいっつも二の次、三の次にして………訳が分からないわ……」

加蓮「………ふふっ………確かに…馬鹿なのかもしれないわ………」

保奈美「……………っ……」

加蓮「……他の人が苦しんでいるのが…………見ていられないの…………………」

保奈美「…………………………」

加蓮「……私が苦しいのは……辛くないの…………痛いのは体だけで……心は痛くないもの………」

保奈美「………心…………」

加蓮「………こんな状況で……何を言ってるのかしら……って思うでしょ…………?」

保奈美「……………ええ……」

加蓮「…………………………」

保奈美「………………………」

加蓮「………自分の無力が恨めしいわ…………あなたを助けられる力がほしい…………」

保奈美「……ウェードの相手をしてくれているでしょう……それでいいわよ。」

加蓮「……病人には他にする事がないのよ………それは好きでやっているの………」

保奈美「>>382

保奈美「……………………」

加蓮「………もし……役に立てているなら………嬉しいわ………」

保奈美「………………(……私はこんなに荒んでしまっているのに……メラニーは…………………)」

加蓮「……ゴホッ……ゴホッ………ごめんなさい………」

保奈美「……………(……何がこの女………いや…メラニーをそうさせるのだろう………?)」

加蓮「…………………………」

保奈美(………分からない……………)

加蓮「………なぁに……?」

保奈美「………いえ……その………マミーがあなたに飲ませた粉薬とやらが効いているのかが気になって……………」

加蓮「……粉薬って言うのは………そんなにすぐに……効き目が出るものじゃないわ………」

保奈美「………そ、そう……………」

加蓮「……でも……マミーが作ってくれた薬だもの………効き目がないはずがないわ………」

保奈美「……………………………」

加蓮「……マミーに知らない事は……ないもの………」

保奈美「……他人を信用できるのね………」

加蓮「………?」

保奈美「…何でもないわ。……はぁ………あなたは……………いえ……………働いてくるわ……」

加蓮「……………気をつけて…」

保奈美「……ええ………(…メラニーは……私にない何かを持っているのかもしれない………)

加蓮「………………………………」

保奈美(……少し…………見直さなければいけない………)

加蓮「……………スカーレット。」

保奈美「いいから寝ておきなさい。」

加蓮「………そうじゃくて…………私…………あなたが一番大変な時は…必ず力になるから。」

保奈美「…………………………」

加蓮「…………何だってしてみせる………」

保奈美「……また馬鹿な事を………いえ…ありがとう………」

加蓮「………………………」

保奈美「…………………………」

数日後



保奈美「メラニーの具合が自力で起きられるぐらいにはやっとよくなってきた………」

保奈美「……これはいい事ね。…もうすぐ働き手がもう1人増える。…そうなればどれだけ楽になる事か…」

保奈美「…………逆に悪い事は…………お父さんが良くなる兆しがちっともない事。……1日中ぼーっとしてるだけ……………」

保奈美「…………………お父さんの中ではもう……お母さんがいなくなった時に………終わってしまったのね……………」

保奈美「…………もう1つの悪い事。…スエレンはわがままを言うばかり、キャリーンは泣いてばかりで役立たずって事。……メラニーはどちらでもないのに……」

保奈美「…………………………」

保奈美「…………今日はどこに食べ物を探しに行こうかしら……?……近くはあらかた探し終えてしまったし………」

保奈美「……食べ物を買いに行けたら………どこへ……?…南部はもうどこも焼け野原だって言うのに……しかもお金もない。」

保奈美「………ふふっ……ない事はないんだったわ……金庫に残っていた3千ドルの南部同盟紙幣。……何も印刷されていなかったら、メモ翌用紙にでもできたのに。」

保奈美「……1食分ぐらいにはなるかしら……?いえ、無理ね。私だってこんな紙切れと食べ物を交換するだなんて真っ平だもの。紙切れは食べられないわ。」

保奈美「……お金も政府への信用がなくなってしまえば何の意味もなくなるのね………」

保奈美「>>390

保奈美「信用……もし、私がバトラーのことをもっと信用してたら……」

保奈美「…………………………」

保奈美「……フン……あんな男。信用するに値しないわ。こんな風に考えてしまわなきゃいけないなんて……私も疲れているわね。」

保奈美「あのゴロツキの無頼漢の、人をいつもせせら嗤っていた男に、どうやって信頼を寄せろっていうの?」

保奈美「不愉快だわ!あの男はまだ私の考えに影響を与えている!忌々しい!」

保奈美「……戦場で死んでしまっている事を心から願うわ。」

保奈美「……人の死を願うだなんて考えた事もなかったわ。バトラーが初めてよ。憎いわ……私にこんな生活を強いたあの男が…!」

保奈美「食べ物が無いのも何もかもがバトラーのせいよ!タラがこうなっているのを知っていたなら、言ってくれればよかったじゃない!」

保奈美「…あの男はわざとそれを………それを……………」

〜〜〜

「タラはもうとっくに焼き払われているはずです。あなたをタラへなんかやる訳にはいかん!」

〜〜〜

保奈美「………………………」

保奈美「…………言っていたわ……それを聞かなかったのは……私………?」

保奈美「…………………………」

保奈美「………違う…私は悪くない…!悪いのは全部バトラーなのよ!……そ、そうよ……バトラーには強引に私を引き止める事だってできたじゃない!」

保奈美「それをしなかったのは……ええ……あの男が悪いんだわ……!……全部バトラーのせいよ!」

保奈美「………………っ…………」

保奈美「………ああ……もう…………!…あの夜の馬車馬の蹄の音が聞こえてくるようだわ……」

カツン………カツン………カツン……

保奈美「………………………」

カツン………カツン………カツン……

保奈美「………気のせいじゃない……!」

保奈美「……馬に乗った誰かがタラに近づいてきている………誰が?…タールトン家の人間……?フォンティン家の人間……?……いや……この辺りにいる馬はバトラーが残していったあの馬だけ………」

保奈美「……近所の人間じゃない……だとするなら………南軍の兵士…?……いや……ここから南軍の兵士はみんな退却していった。……なら…残っているのは…………」

保奈美「…………………………」

保奈美「……北軍……北軍の悪魔だ………うるさいからと言って、女子供を銃剣で突き、家に火を放つ北軍が…………!」

保奈美「……どうすればいいの………えっと………ああ………逃げ出してしまおうかしら……!」

保奈美「……恐ろしい……助けてくれる男の人は誰もいない………ああ…………どうすれば………?!」

保奈美「……何故今になって………ああ……そうだわ……掠奪に来たんだ……!私たちからまだ奪い足りないって言うの……?!」

保奈美「……終わりよ………食べ物も全部奪われてしまうに違いない……それどころか私たちが………」

保奈美「……呪わしい北軍!私がバトラーぐらいの無法者だったら奴らに弾丸をプレゼントしてやるのに!」

保奈美「…………………あっ……」

保奈美「…………アトランタから持って来た荷物の中に……チャールズのピストルがあるじゃない。」

保奈美「……………………………」

保奈美「………ピストルが手元にある………撃ち方はバトラーから習った………だから、どうしろって………?」

保奈美「…………………………」

保奈美「……憎んでも憎み切れない北軍……………お父さんは北軍に立ち向かってタラを守った……そして、私はお父さんの娘………私が逃げ出していい理由があるだろうか……?」

保奈美「……何故北軍の思うままに蹂躙されなくてはならないの……?!………させない……これ以上やらせはしない………!………私はタラを守る………!憎き北軍の鼻面を殴ってやる!」

保奈美「こんな状況で何が悪い事で、何がいい事なのかしら?!……そうよ……私には復讐できる力がある……!」

保奈美「>>399

削るか悩みましたが、大事なシーンだと思ったので………

一時中断します




安価とは関係ないけどそろそろまた舞台裏パートが欲しい

>>399
合間合間で入れていきます


再開します

保奈美「このピストルで北軍の悪魔を貫ければ……!」

保奈美「………迷っている暇なんかありはしない……生か死か、それだけよ……!むざむざとやられてなるものか……!」

保奈美「北軍に私の知り合いはことごとく奪われた………お母さんだって北軍のせいで死んだようなものよ!………仇を……討つのよ…………」

保奈美「……ピストルは箪笥の一番上の引き出しに入っている………それを取ったらまずは隠れよう……相手が何人か分からないうちは危険だわ……」

保奈美「………ふふっ……変に頭が冴えてきたわ………」

保奈美「…………………………」

台所



保奈美「…………………………」

ガタン……ギシ…ギシ…ギシ…

保奈美「………っ………(広間に……いる………)」

ギシ…ギシ…ギシ…

保奈美「……っ…………っ………」

ギシ…ギシ……………

「誰もいないようだな。好都合だ、早速仕事に取り掛からせてもらうとしよう。」

ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…

保奈美「………………っはぁ………………はぁ……………」

ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…

保奈美「………………っ………!(…汚い足で歩き回るな……北軍め!)」

「さてと、ここに住んでいた南部人は親切にも俺のためにどこにお宝を残していってくれたのかな?」

ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…

保奈美「………っく……!(……まだだ……まだ我慢するのよ……スカーレット………)」

「…………ここだな。」

ガタン……ガサッ…ガサガサガサガサッ…!

保奈美「…………ふぅ………はぁ……………………すぅ………………はぁ…………………」

「………………ほほう……中々上物があるじゃないか。」

ガサガサガサガサガサガサ…

保奈美(…近くに仲間がいる様子はない………箪笥を漁るのに夢中になっている今なら………)チャキ……

ピストル「……」

保奈美「………………すぅ……………………………」

保奈美「………っ……!」ダンッ!

「む?!」

保奈美「動くな!」ジャキ!

「…………!」

保奈美「……っはぁ………動いたら……撃つわよ!」

「…………その声は……若い女か。……驚いて損をしたぜ。お嬢さん、そんな物を持ち出したらお母さんに怒られるんじゃないかね?」スクッ

保奈美「動くなって言ってるのが聞こえないの?!」ジャキ!

「クックック………腰が引けてるぞ?無茶をするのは感心しないなぁ。」

保奈美「…………っ……!撃つわよ!」

「お嬢さんに俺が撃てるのかね?」

保奈美「……撃てるわ!…それよりも…その汚い手で持っている針箱を離しなさい!…それは、お母さんの物よ!あなたが触っていいものじゃない!」

「へぇ、そのお母さんとやらは今どこにいるんだね?」

保奈美「お前らに殺された!」ジャキ!

「……クックック……なぁるほど…………」

保奈美「何がおかしい?!」

「いや、それなら寂しい思いをしなくて済むと思ったのさ、お嬢さん。」
ジャキ

保奈美「………っ…?!」

「間違ってぶっ放されでもしたら敵わないんでね。悪いとは思うが、我慢してくれ。」

保奈美「…………っ………っ………………」

「ハハハハハハ!人に銃を向けるのは大丈夫だが、向けられるのは慣れていないかね?……よし、実演をしてあげよう。……これが相手に狙いを定めると言うことだ。」ジャキ

保奈美「…………あ…………」

「そして、引き金を引く。簡単だろ?お母さんにも教えてあげるといい。」

保奈美「………………(……手が動かない………………)」

「…………じゃあな、お嬢さ……」

加蓮「はああああああ……!!」ブンッ!

「うおっ?!」バッ……!

保奈美「?!」

加蓮「はぁ……っはぁ……はぁ……はぁ………………」

サーベル「……」

「まだ居たのか……?!この…………!」ジャキ

加蓮「スカーレット!!」

保奈美「………………!…くっ…………!」ジャキ

「しまっ………………?!」

ダーン!

「……………………………」

ドサッ……

保奈美「…………はぁ…………はぁ………………やっ……た………?」

「……………………………………」

保奈美「…………やった……のね………………」

加蓮「………………危なかったわね…………」

保奈美「…………メラニー……」

加蓮「……言ったでしょ……?……一番……大変な時は……必ず力になるって………………あなた……とっても勇敢だったわ………スカーレット…!」

保奈美「………………………………」

加蓮「>>410

↑(北軍兵役の黒井元社長は……うん、大丈夫だよね)

保奈美「でもまだ安心してはいけない。残りの仲間がいるかもしれないから気をつけて行かないと……(北軍兵役の黒井元社長は……うん、大丈夫だよね……?)」

黒井「…………(…やり切ったぞ…!)」

加蓮「……大丈夫……こいつに仲間はいないわ……脱走兵よ…」

保奈美「…どうして分かるの……?」


加蓮「…蹄の音が聞こえたから………2階から……隠れて観察をしていたの…………」

保奈美「…………………………」

加蓮「………やってやったわね…………」

保奈美(……そうだわ……そこまで頭が回らなかった………観察をすべきだった………)

加蓮「……はぁ………はぁ…………………っはぁ…………」

保奈美(……病気で弱っているはずのに…………重いサーベルを持って助けに来てくれた………どれだけの勇気があれば………………)

加蓮「………私はあなたを……誇りに思うわ………」

保奈美(………!…メラニーも私と同じ事を考えたんだ……!…私と同じように……………!)ツカツカツカツカ……

保奈美「………ありがとう…」ギュッ…

加蓮「……………いいえ……」

保奈美(メラニーの事は憎い……ただ、それはそれとして……メラニーは私の味方なんだ……!)

加蓮「…………………」ギュッ…

保奈美「………あなたが助けてくれなければ………私……………」

加蓮「………私だけでも無理だった………私たち2人の………ゴホッ…ゴホッ……!」

保奈美「…また無茶をして……!」

加蓮「…………ごめんなさい……」

保奈美「……………馬鹿ねぇ………」

加蓮「……………………………」

保奈美(……誰も頼りにならない中で、メラニーだけはなんと頼りになる事だろう……!……メラニーは私の気持ちを理解してくれている………!)

加蓮「………まだやる事は残っているわよ、スカーレット。……早く死体を埋めてしまわないと。」

保奈美「……そうね………でも、死体を隠せるだけ地面を掘るのは……」

加蓮「ぶどう酒の樽が埋まっていた場所に埋めればいいわ。あそこは土が柔らかくなってるから。」

保奈美「………………………」

加蓮「2人で引きずって行って埋めましょう。」

黒井「」

保奈美「…あなた……すごいわ………でも、引きずっていくのは私1人でいいわ。あなたは早く寝台に戻りなさい。……今にも死んでしまいそうじゃない。」

加蓮「あなたってとても親切なのね…………あなたが1人で引きずって行けるなら……私はみんなが帰って来る前にここを掃除しておくわ……それから…………」

保奈美「……それから………?」

加蓮「…この男の背・を調べてみるのはいけないと思う…?何か食べ物が入っているかもしれないわ。」

黒井「」

保奈美「…!(どうして気付かなかったのかしら?!)いけないなんて思わないわ!あなたは背・を調べて、私はポケットを調べるわ。」

加蓮「分かったわ。」

保奈美「…………………」ゴソゴソ……

保奈美「…………!コーヒーの包み……!軍用ビスケットも……!……それから、真珠に宝石に金の装飾品に銀器……!」

加蓮「泥棒をして回っていたのね。…みんな盗んできたものよ。」

保奈美「もちろんよ!こいつは私たちからも盗もうと思ってやってきたんだわ。」

加蓮「……あなたの勇敢な決断のおかげで………みんなを飢え死にさせずに済んだわ………」

保奈美「……あなたも勇敢だったじゃない……ああ、これで食べ物が買える……!」

加蓮「………見て、スカーレット……背・にはお金がどっさり入った紙入れが………!」

保奈美「幾ら入ってる?!」

加蓮「北部連邦政府紙幣がぎっしりと……十ドル金貨が一個と、五ドル金貨が二個……!」

保奈美「それだけあればしばらく食べるのには困らないわ……!」

加蓮「…………スカーレット……」

保奈美「……ええ……私たちは共犯者よ……」

黒井「」

舞台裏



黒井「……ふぅ………我ながらパーフェクトな死んだふりだったな!フハハハハハ!さて、血糊を拭かなくては………」

「タオル……どうぞ………」スゥ………

黒井「うむ、ありがたく使わせてもらおう!中々気がきくではない………か…………あれ……今私はタオルを誰から………」キョロキョロ……

黒井「……………………………」

小梅「……こ、ここ…だよ………?」

黒井「ぬわおうっ?!」ビクゥッ!

小梅「……あ……驚かせて、ごめんなさい………」

黒井「>>421

ハハハ、気にすることはないさ。こちらこそ驚かせてしまって悪かったかな?(ナデナデ)

黒井「ハハハ、気にすることはないさ。こちらこそ驚かせてしまって悪かったかな?」ナデナデ

小梅「…………う、ううん………」

黒井「タオルの差し入れ感謝するぞ、いやぁ、実にありがたい!」ナデナデ

小梅「…………えへ……どういたしまして、って……言ってる……」

黒井「そうか、どういたしましてと……!…………ん……?」

小梅「?」

黒井「………いや……何かが引っかかったが……気のせいだな!」

黒井「……まあ、とにかく感謝するぞ!ありがたく使わせてもらうとしよう!」

小梅「………血糊……乾くと取れにくいから…………」

黒井「ウィ。知っているさ。散々私に死んだふりを誰かさんが熱心にレクチャーしてくれた者がいるからなぁ。」

小梅「……………えへ……」///

黒井「この歳になってから、新しく何かを学ぶと言うのは新鮮だったぞ、小梅。」

小梅「……気合い……入っちゃって…………素質……あったから…………」///

黒井「……死体の真似の素質があると言うのは……微妙だな…………」

小梅「…えっ……?び、微妙…じゃないよ…………?……し、死体ごっことか……ゾンビごっことか……できる…よ?」

黒井「う、ウィ………」

小梅「……楽しく……なかった………?」

黒井「……いや、楽しかったぞ!帝王たるもの、楽しむ事においても頂点に立たなければならないのだ。死体ごっこについても例外ではない!」
ナデナデ

小梅「…………そ、そう………良かった……えへ…………」///

黒井(小梅が喜ぶなら、それで構わないか……)ナデナデ

小梅「………あっ………さっきのも……いい死体……だったよ……!」///

黒井「ウィ、当然だ。私を誰だと思っている?」

小梅「そ、そうだね………!…幸子ちゃんにも…見せてあげたかったなぁ…………」

黒井「幸子は今どこに居るのだったかな……?」

小梅「………アフリカ………?」

黒井「…………大変そうだな…」

小梅「幸子ちゃんだから……大丈夫……だよ……?」

アフリカ テニスコート



現地の人「パプペパパピ!プペーラパヒプペーポ!(さすがは幸子だ!次もこの調子で頼むぜ!)」

幸子「パパピピポピーパ、パピナッチョイ!(カワイイボクにお任せですよ、フフーン!)」

現地の人「パ〜ピプペポォ!パピパポペーパ!(言ってくれるじゃねえか!やっぱり最高だぜ、お前!)」

幸子「ポピパペパ、プピペーパ!(当然ですよ!ま、見ててください!)」

幸子(舞台は見に行けませんでしたが、海外ロケも大切な仕事ですからね!第一、ボクが居たら会場の注目を全部集めちゃいますから!)

幸子「………………………………」

幸子(………最近どこに行っても会話が成立するようになってきましたね………………)

舞台裏



黒井「………ふぅ………」ゴシゴシ…!

小梅「……………………」ジー……

黒井「………………」ゴシゴシ…

小梅「………………………」ジー……

黒井「……………な、何だ…?」

小梅「あ……あう…………え、えと…………血糊落とすの…………やっぱり………もったいないかな………………って……………」

黒井「………………」

小梅「>>429

後ろの子も……そう……言ってる……よ……?

安価把握

1日60レスぐらいを目標にしたいです…

一時中断します

過ぎ去りし日の体力が欲しいです……

お待たせしました

再開します

小梅「後ろの子も……そう……言ってる……よ……?」

黒井「………う、後ろの子……?」

小梅「……うん……後ろに……いる、よ……?……似合ってるのに…もったいない……って………」

黒井「………………」チラ

黒井(……誰も……居ないのだが………………)

小梅「…………黒井さん……?」

黒井「う、ウィ……聞いているぞ……?」

小梅「……その子……黒井さんのこと………気に入っちゃったって………」

黒井「その子とは……あの子か……?」

小梅「…………?あの子は……あの子だよ…………?」

黒井「………………………………」

小梅「………………………………」

黒井「ハハ……ハハハ……それは…嬉しいな……うん……」

小梅「………!ほ、ホント……?」///

黒井「ウィ……!(…深く考えるのは止めておくとしよう……)」

小梅「…………良かった……ね……」

小梅「…………うん………………うん………………えへ………………」

黒井「………………………………」

小梅「…………えっ…………あ、あの……一緒に……記念撮影……したいって……いい、かな……?」

黒井「……しゃ、写真を撮る程度、私が拒むわけはあるまい。むしろ、私を幾らでも撮るといい!」

小梅「……あ、ありがとう……!……黒井さん……優しいな…………」

黒井「…………私だからな。」

黒井「………………………………」

黒井(……記念写真を見る勇気が……どうも出そうにない………………)

11月 タラ農園 台所



保奈美「………………」

フライパン「…………」ジュージュー

保奈美「朝食にハムのソテーがつけられるようになるだなんて、ちょっと前までは考えられなかったわ。」

菜々「全くその通りですよ。今じゃ、りんごやお芋に加えてハムのソテーや鶏卵のフライ、この前の祭日には鶏の炙り肉まで食べられましたからね。」

保奈美「フォンティン家のおばあさまには感謝してもしきれないぐらいだわ。」

菜々「ですねぇ……どんな物でも半分私たちに分け与えてくださったんですから。」

保奈美「ええ…………必ずご恩返しはしないと………………」

数日前 フォンティン家の屋敷



保奈美「…………と言うわけなんです、フォンティンのおばあさま。」

泰葉(老フォンティン夫人)「…………なるほど。そういう事でしたか。」

保奈美「ええ…………」

泰葉「……あなたたちはずっとタラへ居たんですね。タラの様子を見に行くべきでした…すみません、私たちもやらなければならない事が数え切れないほどあったもので。」

保奈美「いいえ……おばあさまたちが無事だっただけで十分です…!」

泰葉「ありがとうございます。…ここは通りからずっと外れていますからね…北軍の魔の手から逃れられたんですよ。」

泰葉「……お互いの無事を喜ぶのは後にしましょう。まずは、現状を整理するのが一番です。……あなたの受けた被害を教えてもらえますか……?」

保奈美「……とにかく食べ物を持って行かれました……それから、綿花を残らず……価格にして15万ドルの……」

泰葉「………家を焼かれなかっただけマシだと考えなければいけませんよ、スカーレット。綿花は畑に育ちますが、家は畑に育ちませんから。」

保奈美「……………………………」

泰葉「…綿花はまた摘めば良いんです。摘み取りにはかかりましたか?」

保奈美「…はい。今で4梱収穫しました。」

泰葉「……あなたは偉いですね。うちの女性はみんな、綿花の摘み取りなんて奴隷の仕事だと言ってやらないのに。」

保奈美「作物や綿花を摘むのはいやらしい事ではありません……生きる上で大事な事です。」

泰葉「その通りです。生き残れるかどうかなんて時に、仕事を選べるような余裕はないんですよ。若い女性にはそれが分からないようです。…もちろん、あなたは違いますが。」

保奈美「…………………………」

泰葉「私が若い頃は苦労の時代でした。ここまでではありませんでしたが、似たような状況は幾らでもありましたよ。」

保奈美「…………………………」

泰葉「>>442

泰葉「今は奴隷も貴族も関係ない。とにかく、技術を習得しなければ生活できません。」

保奈美「貴族?…貴族が何か私たちに関係ありますの?」

泰葉「私たちの生活は全く中世の貴族のような物だったんですよ。奴隷に労働を任せて、自分たちは遊び呆けていた。その結果、綿花の摘み方を知っている若い女性は1人もいなくなってしまった。」

保奈美「……………………」

泰葉「私ぐらいの年代の者は、みんな畑の耕し方から何まで知っていたんですがね。………皆にも教えておくべきでした。」

保奈美「……どうせ……誰も聞き耳を持たなかったと思いますわ…」

泰葉「でしょうね。私もそう思います。」

泰葉「実際に飢えてみなければ、飢えるという事がいかに辛い事か分かりませんから。あなただってそうだったでしょう?」

保奈美「………………はい……」

泰葉「……そのまま知らないで済めばよかったんですがね。知ってしまった以上は仕方がありません。若者は私たち年寄りなんかよりずっとお腹が減る事でしょう?」

保奈美「…………………………」

泰葉「…………荷馬車はありますか?」

保奈美「…………ありますけど…」

泰葉「そうですか。でしたら、私の家にある食べ物は何でも半分差し上げますから、乗せて持って帰ってください。」

保奈美「……?!……そ、そんなの恐縮すぎます!私………………」

泰葉「食べ物を得るためには働かなければいけません。しかし、働くには何かをお腹に入れなければなりません。」

保奈美「…いけません……!…北軍に奪われてしまったと言っても……お芋やりんごがありますし…………」

泰葉「芋やりんごだけ食べていて、しっかり働けるものですか。若者には栄養が必要です。……鶏でもハムでも何でも持っていってもらって構いません。」

保奈美「……おばあさま……!」

泰葉「経験を積んだ人間の言う事は聞くものですよ。私にはあなたに分からない事が、たくさん分かるのですから。」

保奈美「………………………………」

泰葉「近所の人を助けるのは当たり前の事です。」

保奈美「………ありがとうございます……だったら、代金を支払わせてください。お金なら手元に…………」

泰葉「結構です。」

保奈美「………それでは私の気がすみません。」

泰葉「……そう思うのなら、なるべく早く技術を習得してください。どうしても代金を支払いたいんでしたら、来年タラ農場が復興した時にとれた品物でください。」

保奈美「……………………分かりました。……ありがとうございます………………」フカブカ…

泰葉「………………………………」

保奈美「…………………」

泰葉「………エレンの事は……非常に残念に思います……あんな立派な女性はそうはいなかったのに…………お父さんについては………………」

保奈美「……大丈夫です。……たまに、母が居ない事を思い出して…不意に重い足取りで墓地に行って………………涙で顔中を濡らして帰って来る時以外は………………」

泰葉「……………言い方は悪いですが……あなたのお父さんは、夢の中にいた方が幸せなのかもしれませんね…」

保奈美「………はい………その方が…………見ていて……まだ……………………」

泰葉「……………………………」

保奈美「…………父は……母と今でも幸せに暮らしている…………それでいいんです…………」

泰葉「………強いですね、あなたは。……あなたのような女性はそういませんよ。」

保奈美「………………………………」

泰葉「私には何も出来ませんが……せめて、話を聞いて差し上げるぐらいはします。身内には話せないことも多いでしょう。」

保奈美「…………ありがとう……ございます……………」

泰葉「……負けてはいけませんよ。」

保奈美「…………はい……」

タラ農園 台所




保奈美(………早く技術を習得しなければならないわね……)

菜々「……しかし、よくフォンティン農園まで行けたものですねぇ…………行くまでに北軍が出るかも分からないのに………………」

保奈美「……ああ……その気になれば、人間には何だって出来ると分かったから……かしら。(…人を撃つのに比べたら、勇気が要ることなんてないわ。)」

菜々「………?」

保奈美「……何でもないわ。とにかく、行動しなければ、何も良くなりはしないもの。」

菜々「…………………………」

保奈美「>>451

それにこんな時だからこそ、自分の身は自分で守らないと……
(それにしても泰葉ちゃんはさすが、堂の入った老婆っぷりだったわ。『自分は全く普通で何の特殊能力も持ってないし隠してもいない生身の人間なのに、子役時代から芸能界にいるってだけで何百年も生きてるかのように勘違いされる』って愚痴られた時は同情したけど……実際そう錯覚させるのは才能よね……)

保奈美「それにこんな時だからこそ、自分の身は自分で守らないと……
(それにしても泰葉ちゃんはさすが、堂の入った老婆っぷりだったわ。『自分は全く普通で何の特殊能力も持ってないし隠してもいない生身の人間なのに、子役時代から芸能界にいるってだけで何百年も生きてるかのように勘違いされる』って愚痴られた時は同情したけど……実際そう錯覚させるのは才能よ…………)」

菜々「………それは……この前聞こえたピストルの音と何か関係があるんですか……?(…………泰葉ちゃん……恐ろしい子…………あれだけの説得力のある演技はナナにもそう出来るものじゃないのに………10年したらどうなっているやら………………)」

保奈美「…………気になる…?」

菜々「…………………………」

保奈美「……………………………」

菜々「……そう言う事ですか……大体の察しはつきましたよ。」

保奈美「…………私を責める?」

菜々「さて、何の話か私には見当がつきかねますね。」

保奈美「…………………………」

菜々「集中した方がいいですよ、ハムを焦がしたら勿体無いですから。」

保奈美「……………冷静なのね。」

菜々「歳をとると、感情の波が緩やかになってくるんですよ。この話はお終い、それじゃいけませんか?」

保奈美「…………………………」

菜々「………………………………」

保奈美「…あなたの口の固さを信用するわ。あなたが秘密を誰かに喋り散らしたりしているのは見たことがないもの。」

菜々「ありがとうございます。…秘密は誰にも言わないから秘密と言うんですよ。」

保奈美「……ハネーに話した秘密は半日後にはこの辺りの全員が知っていたけどね。」

菜々「それに関しては何とも言いかねますね。さ、早いとこ朝食を食べて働きに出ましょう。」

保奈美「ええ……そうしましょう。」

菜々(……………………まだ16歳かぁ………………信じられませんね………………)

昼間 綿花畑



保奈美(…………今日も暑いわね…………)

保奈美(……でもこの暑さも少しずつだけど慣れてきたわ……それよりも、1日中屈んでいなきゃいけないせいで背中が痛むほうがずっと気になるわ……)

保奈美(………メラニーは自分から手伝ってくれたけど……一時間働いて一週間寝込むようじゃね………)

保奈美(……熱心だし、摘み方も上手くて言うことはなかったんだけど。)

保奈美(………まあ、メラニーには内働きの方をしてもらうから問題ないわ。)

保奈美(…外働きは……………)

麗奈「…………………………」

保奈美「……………………」

保奈美「……何をしているの?」

麗奈「……やってられないわ、こんな事ッ!アタシはもう綿花摘みなんかしないわよッ!」

保奈美「文句を言っている暇があったら少しでも摘みなさい。」

麗奈「うっさいッ!アンタに仕切られのは不愉快だわッ!……こんな事は奴隷のやる事でしょう?!」

保奈美「奴隷はもういないんだから、私たちがやるしかないじゃない。そんな事も分からないの?」

麗奈「……ッ……!あーあ、お母さんが居たら絶対にこんな事を…………」

保奈美「黙りなさい。次にお母さんの事を言ったら打つわよ。」

保奈美「…………ッ…………」

>>456訂正



保奈美「……何をしているの?」

麗奈「……やってられないわ、こんな事ッ!アタシはもう綿花摘みなんかしないわよッ!」

保奈美「文句を言っている暇があったら少しでも摘みなさい。」

麗奈「うっさいッ!アンタに仕切られのは不愉快だわッ!……こんな事は奴隷のやる事でしょう?!」

保奈美「奴隷はもういないんだから、私たちがやるしかないじゃない。そんな事も分からないの?」

麗奈「……ッ……!あーあ、お母さんが居たら絶対にこんな事を…………」

保奈美「黙りなさい。次にお母さんの事を言ったら打つわよ。」

麗奈「…………ッ…………」

保奈美「そもそもお母さんは奴隷なんかより、ずっと一生懸命働いていたわ。」

麗奈「……もしこんな事が友達や……ケネディなんかの耳に入ったら…………」

保奈美「何をいまさら上品ぶってんのよ。上品ぶるあいてなんか誰もいやしないわ。さあ、働きなさい。」

麗奈「…畑仕事なんてお母さんもさせなかったわよッ!……お父さんに言いつけてやるわッ!お父さんなら………」

保奈美「黙りなさい!お父さんに心配をかけたら承知しないわよ!」

聖「…………あ、あの………………」

保奈美「………あら、キャリーン…」

聖「……私がお手伝い、するから…………スエレンはまだ……体がよくなってないの…………」

麗奈「…………………………」

保奈美「……今日のお祈りはもう終わったの?」

聖「……はい……朝の、お祈りは……終わりました…………午後のお祈りまでは……まだ、時間があるから………」

保奈美(……1日中数珠をまさぐって、お祈りを捧げていてよく飽きないわね。……祈りなんて捧げるだけ無駄なのに……)

聖「………お祈り………ちゃんと…届いてる、かな……………」

保奈美「………それだけ熱心に拝んでいて、届いていないはずはないわ。」

聖「>>501

何回か言われてるけどこうも進みが遅い誰も安価取らないとなると原作丸写しでも安価無しでも一向に構わないよって

盛大に安価ミスをしていました……

再安価
>>463

>>460
亀進行は>>1の特徴の一つ…という事で
すみません…………


求)体力の回復方法


遅くなりました

再開します

聖「……そう、ですよね……きっと届いてる、スエレンももうじき良くなるのね…………」

麗奈「…………………………」

保奈美「ありがとう、かわいいキャリーン。」チラ

麗奈「………………ふ、フン……」

聖「……みんな、大変だから………お祈りをするの………私たちを…守ってくれますように……って……」

保奈美「……そう。(拝む時間で手伝ってくれたら……と、思うんだけど……………)」

聖「………………………………」

保奈美(…でも………………)

聖「それに……お母さんや……みんなのこと………ちゃんと祈って…あげないと……………………」

保奈美(……キャリーンは細い神経を、数珠を鳴らすことで守っているみたいだもの…………止めろとは言えないわ。)

聖「………………お母さん………」

保奈美(…キャリーンまでお父さんみたいになられちゃかなわないわ………)

聖「…………私たちを…守ってください………………」

保奈美「…………………………」

聖「……スエレン……あなたは戻って横になっていて………私が…頑張るから………」

麗奈「……アンタだって病み上がりでじゃない…!綿花を摘んだりしたら死んじゃっても知らないわよッ?」

聖「……大丈夫………神様が守ってくださるから………」

麗奈「……アンタ……アタシよりも………」

保奈美「自分よりも具合が悪い妹は進んで手伝おうとしてくれているのに、自分は文句を垂れているだけ?この事に関しては恥とは思わないのね。」

麗奈「……………ッ…………!」

保奈美「結構な淑女だこと。近所中の噂になるでしょうね。ケネディさんだって素晴らしい娘だと思われるに違いないわ。」

麗奈「……ッ………分かった!分かったわよ!手伝ってやればいいんでしょッ!」

保奈美「ええ、そうん。」

麗奈「チィッ……!いつか必ず痛い目を見せてやるから感謝なさいッ!」

保奈美「はいはい。やれるものならやってみなさい。」

聖「………けんか……したら…………」

保奈美「喧嘩じゃないわよ。ただお願いしただけ。ねえ、スエレン。」

麗奈「ぐぬぬぬぬ…………そうよッ!」

聖「…………………………」

保奈美「ほら、スエレンもそう言っているでしょう。」

聖「………………は、はい………」

麗奈「…………………………」

保奈美「何?」

麗奈「……何でもないわよッ!」

保奈美「あ、そう。(……これでスエレンも半日は真面目に働くでしょう。……こうでも言わなきゃ本当に働かないんだから……)」

保奈美(……どう思われたところで知ったことじゃないわ。)

夕方 倉庫



保奈美「今日の収穫はこれだけ……と。」ドサッ…!

綿花「………………」

保奈美「……大した量じゃないけど、それでも私が汗水を垂らして収穫したこの綿花には、幾らかの価値がある。」

保奈美「幾らかの価値があれば、幾らかのお金と引き換えられる。幾らかのお金があれば、北軍の兵士から奪ったお金を必要な時までとっておける。」

保奈美「…………そうだ……!北部のお金は新しい奴隷を買うのに使おう!今はどこも売ってくれないだろうけど……戦争さえ終われば……」

保奈美「春にはきっと戦争も終わっているに違いないわ!…永久に続く戦争なんてありはしないんだもの。」

保奈美「>>473

……奴隷……?ふふっ……この期に及んでまだ信用もできない誰かに仕事を任せようだなんて、私もバカね……

保奈美「……奴隷……?ふふっ……この期に及んでまだ信用もできない誰かに仕事を任せようだなんて、私もバカね……」

保奈美「…奴隷なんて北軍に怯えてみんなにげてしまったじゃない。残ってくれたのはマミーぐらい…」

保奈美「昔は、ただ口うるさいだけの年寄りだと思っていたけど………今ではマミーは信用に値する数少ない人間の1人と分かったわ。」

保奈美「文句は言うし、考え方は古いけど、それでも私たちを助けてくれている。」

保奈美「……奴隷がみんなマミーぐらいの律義者だったらこんなに苦労はせずに済んだのに!ああ、肝心な時に役に立たないんだから!」

保奈美「……マミーの事は大事にしよう……あれは価値に見合うだけのものだわ……」

保奈美「マミーを除けば信用できるのは私だけ。それ以外は誰も彼も役に立たず。」

保奈美「最後に頼れるのは結局自分自身ね。………………いえ、メラニーも………………」

保奈美「……………ここでメラニーの名前が出てくるなんて……あの女は私からアシュレを奪った女なのに……………………」

保奈美「…………………………」

保奈美「…………でも、この前は私を助けてくれた……働くのだって体力が追いついてないだけで…誰よりも熱心だし…………絶えず私の事を気遣ってくれている…………」

保奈美「………………………………」

保奈美「………好き嫌いは別にして……信用には足るわね……」

保奈美「……この際個人的な感情は抜きに………する事は出来ないけど…………メラニーは信用していい人間なのは確かだわ。」

保奈美「…………認めたくないけど……」

保奈美「………………………………」

保奈美「………癪だわ……あんな……………あんな……………」

保奈美「…………あれ…私はメラニーの何をそんなに憎んでいるの…?……取るに足らない女の癖にアシュレを……………………」

保奈美「…………取るに足らない事はないわ……メラニーみたいな女は…他に知らないもの……」

保奈美「…………………………」

保奈美「……私は疲れてバカになっているんだわ…そうに違いない…!……そうよ…メラニーの事は………」

保奈美「…………………………」

保奈美「……っ……今日は綿花の量を確認して夕飯を食べたら、ぶどう酒を飲んですぐに寝ましょう…最近ちゃんと眠れていなかったのだから今日ぐらい早く寝たっていいわよね…」

保奈美「マミーはぶどう酒を飲むのを許してくれるかしら…?…許してくれなくていいわ、どうせ飲むから。飲まなきゃやってられるもんですか!」

保奈美「…………………………」

保奈美「……何だか気分が悪いわ…………」

冬 寝室



加蓮「……寒くなってきたわね…」

保奈美「冬だもの。寒いに決まっているでしょう。」

加蓮「ふふっ………そうね…………ゴホッ…ゴホッ……」

保奈美「………毛布をしっかり被りなさい。」

加蓮「ゴホッ……ごめんなさい……布はとっても貴重なのに………それを…………」

保奈美「あんまり口を開いてはだめよ。冬の冷たい空気を吸い込んでしまうから。」

加蓮「………………ありがとう……」

保奈美「…………何でお礼を言うのよ。」

加蓮「……私を気遣ってくれているのが…………分かるからよ…………」

保奈美「フン……このぐらいでお礼を言わなきゃならないんだったら、私なんか他の事を話す暇がないぐらいよ。」

加蓮「………………………………」

保奈美「あなたには早く治ってもらって早く働いてほしい。それだけよ。……妹たちはもう良くなったって言うのに…………あなたと来たらまだ息も絶え絶えなんですもの。」

加蓮「……ごめんなさい…………」

保奈美「お礼を言ったり謝ったり、忙しい女ね。……せわしないったらありゃしないわ。」

保奈美「…………良くなる事だけに気を回しなさい。そんなだからいつまでたっても臥せたままなのよ。」

加蓮「………………………………」

保奈美「ああ、霜が降りて来る前に摘み取りは終えたから。それも心配しなくていいわよ。」

加蓮「…………………………」

保奈美「…………………………」

加蓮「…………スカーレット。」

保奈美「……ん?」

加蓮「>>482

加蓮「ありがとう。」

保奈美「……お礼は要らないって言ったでしょ。」

加蓮「それでも言わずにはいられないわ………あなたには助けられてばかりだもの……」

保奈美「…………そんな事はないわよ……」ボソ…

加蓮「…………?」

保奈美「……何でもないわ。」

加蓮「……………………………」

保奈美「何でもないって言ったら、何でもないのよ。(………………………)」

加蓮「………………………」

保奈美「ほら、りんごを向いてきてあげたから食べなさい。食べなきゃ体力がつかないわよ?」

加蓮「…………そうね…」

保奈美「ちゃんと食べるのよ?もうあなたが遠慮しないといけないほど、食べ物がないわけじゃないんだから。言い訳は無しよ。」

加蓮「……………………………」

保奈美「…………………………」

加蓮「………一つもらうわ。」

保奈美「……そう。」

加蓮「………ねえ……私があなたにしてあげられる事って……何かある?」

保奈美「………は?」

加蓮「……私にできる事があったら……何でも言って。……少しでも……あなたの恩に報いたいの。」

保奈美「別に……………いえ…じゃあ1つだけお願いするわ。」

加蓮「言って。」

保奈美「……何があっても私の味方でいてくれない…?」

加蓮「…………そんな事…当たり前じゃない。…私はいつだってあなたの味方よ。」

保奈美「………約束して…くれない?あなたが約束してくれたら……私、心強いわ。」

加蓮「………………分かったわ、約束する。」

保奈美「…………ありがとう……」

加蓮「…………いいえ…」

保奈美「………働きに行ってくるわ。りんごはここに置いていくから。」

加蓮「……………ええ……」

保奈美「…………………………」

クリスマス 事務室



保奈美「……今日はクリスマス……か。……去年のクリスマスも大概だったけど、今年はもっとね……」

保奈美「……物もなければ、人もいないわ。……はぁ…………」

保奈美「…………………………」

ドンドンドンドン!

保奈美「?!」

ドンドンドンドン!

「ごめんください!」

保奈美「…………………………」

ドンドンドンドン!

「いないんですか?オハラさん!」

保奈美「…………あら……この声は…………」

ドンドンドンドン!

「………………い、居ないのかな……?お、おーい!…………外に馬も牛もいたからと思ったんだけど………………」

保奈美「………フランク・ケネディ…?」

「…………ひょっとして……家畜だけを残して……………………」

保奈美「…………………………」

広間



愛海(フランク・ケネディ)「……居るなら居るって言ってほしいよ……タラまで誰も居なくなったかと思いましたよ…………」

保奈美「すみません……色々あったものですから…………兵站部のお仕事ですか?」

愛海「まぁ……そうなんですけど……………何も持っていくつもりはありませんよ。………近くまで来たから…………ちょっと……ね……」

保奈美「…………そうですか…」

愛海「…………ここもだいぶ寂しくなっちゃったみたいだね………」

保奈美「>>491

そんなに物欲しそうな顔で見ないでくださいな。こちらも食べていくので精一杯なんですからね。

安価把握

一時中断します

再開します

保奈美「…そんなに物欲しそうな顔で見ないでくださいな。こちらも食べていくので精一杯なんですからね。」

愛海「ち、違いますよ…?!そりゃあ……お腹が空いてないと強がるつもりはありませんけど…………誇りは捨てちゃいません!」

保奈美「…そうなんですか?」

愛海「ええ……胃が寂しいんじゃありません。……誰も居なくなってしまった事が寂しいんです。」

保奈美「………………………………」

愛海「戦争が始まる前までは、ここには綺麗なお嬢さんたちがたくさんいましたからねぇ……おのれ北軍!」

保奈美(……どうにか食べ物を与えずにすむ方法はないかしら……外には部下を待たせてあるみたいだし…………)

愛海「私に一体これから先どうやって生きろと言うんでしょうか!私の生涯の楽しみは奪われてしまった!」

保奈美「…若い女性ぐらい、兵站部としてあちこち回っていれば見る機会ぐらい………………」

愛海「ジョージアのどこいってもいないんだよっ!みーんな、どっかに行っちゃった!どこもかしこも廃墟だらけなんだよっ!」クワッ!

保奈美「……!」ビクッ!

愛海「我らが美しき霊峰は永久に失われてしまった!私の心のオアシス!故郷!生きがい!……守りたかったもの!それらはすべて無くなってしまった!」

愛海「お腹が空くのは辛いよ!お腹に隙間風が差し込むみたいで……でも、もっと辛いのは心に隙間風が差し込む事なんですよっ!」

保奈美「…………あ、あの……」

愛海「私の愛する山々を育んでいた大地は枯れ果て死んでしまった!私はそれを見るのが何より辛いんだよ…………焼けた屋敷…荒れ果てた綿花畑、何もいない家畜小屋!これを見ると…………もう…………」

保奈美「…………あ…………」

愛海「私の好きだったらジョージアを返してよ!ジョージアの人たちは何も悪い事はしてないじゃん!」

保奈美「…………………………」

愛海「もう二度とあの豊穣の大地は帰ってこない!……はぁ……はぁ…………全部失われてしまった!全部、全部、全部!」

保奈美「…………………………」

愛海「……はぁ……はぁ…………ごめんなさい…………少し……取り乱してしまいました…………」

保奈美「い、いえ………………」

愛海「……タラに来たら…張り詰めていた何かの堰が切れちゃって……………………………」

保奈美「………………………………」

愛海「……タラが無事でいてくれて…………ホントに嬉しい…………あの……私……もう行きますから…………」

保奈美「えっ……?」

愛海「………本当はスエレンに会いたいし………お話して行きたいけど…………あんまり居たら迷惑だろうし……前線に帰りたくなくなっちゃいますから………」

保奈美「…………………………」

愛海「部下を待たしても悪いし…………その……………ありがとうございました……」

保奈美「………(…食べ物は渡さずに済んだみたい……だけど………)」

愛海「……………………………」

保奈美「……………………………」

愛海「…………迷惑をかけました………それじゃ………」

加蓮「待ってください!」

保奈美「……?!」

愛海「………!……メラニーさん……?」

加蓮「はぁ……はぁ………もし…良かったらなんですが………今夜はうちに泊まっていかれませんか……?……お夕飯も少しでよろしければお出しします……!」

愛海「………えっ……と…………」

加蓮「…せっかく来てくださったのに……はぁ……はぁ………追い返すような真似はできません……!」

愛海「…………………………」

加蓮「そうよね、スカーレット?」

保奈美「……え、ええ…………(…………気圧されて思わず返事をしてしまったわ……)」

加蓮「ケネディさんも部下の皆さんも………お疲れでしょう……?……一晩だけでも……労わせてください……」

愛海「…………………………」

加蓮「…………………………………」

〜〜〜


菜々「干しりんごのシチューぐらいしか出せませんけど……」ゴト……

愛海「………………………」

干しりんごのシチュー「…………」

愛海「………………いいの……?」

加蓮「…困った時はお互い様です………気にしないでください。」

愛海「…………………………」

保奈美(貴重な食料が…………)

愛海「>>503

愛海「ありがとう……!ありがとう……!」 ボロボロ…

加蓮「まぁ………泣かれないでください、ケネディさん……!」

愛海「ぐすっ………だって……人の温かみに触れたのが……久しぶりで…………本当…………胸がいっぱいで………………」ボロボロ…

加蓮「………大変だったんですね………」

愛海「…………そりゃあ……もう………ありがとう……メラニーさん……」ボロボロ…

加蓮「……お礼なら……私でなく、スカーレットに言ってください………今食べる物があるのは………スカーレットのおかげなんです……」

愛海「……ああ……ありがとうございます……スカーレットさん……!ぐすっ…………」ボロボロ…

保奈美「…………い、いえ………」

愛海「……ぐすっ…………ぐすっ………………私は一生あなたたちの恩を忘れません……部下たちだってそうでしょう…………」ボロボロ…

保奈美「…………そんな…………」

愛海「人は温もりがなくては生きていけないんですね…………やっぱり…………ここに来てみてよかった……………………」

保奈美「…………………………」

愛海「……我らが南部の聳え立つ山脈のごとき精神はまだ残っていた……!それが嬉しくて………………ぐすっ…………うう…………」ボロボロ…

菜々「……そう泣くものではありませんよ……」

愛海「分かってるよ………でも………………………」ボロボロ…

麗奈「フランク・ケネディ!」

愛海「……?!」ボロボロ…

麗奈「…………………………」
ツカツカツカツカ…!

愛海「……ああ………………」

麗奈「…………………………」ツカツカツカツカ…!

愛海「……スエレ…………!」

麗奈「フンッ!」パァァァァン!

愛海「…………え……?
あ、あの………………」ヒリヒリ……

麗奈「生きていたならどうして手紙の一つもよこさないのよッ!ホント……使えないわねッ!……どんだけ心配したと思ったのよ、バカッ!」

愛海「……………………」

麗奈「……どっかの戦場で………とっくにくたばってるかと思ったじゃない……………………」ウルウル……

愛海「………ごめんね……手紙を出そうにも紙がなくて…………」

麗奈「言い訳なんか聞きたくないわよッ!バーカバーカッ!普段なら絶対に許さないけど…………今日だけちゃんとアタシの前に姿を現した事で……許してやるわッ!」ウルウル…

愛海「…………………」ウルウル…

加蓮「……………良かったわねぇ…………」ウルウル…

保奈美「……………………………」

愛海「……ごめんね、スエレン!」
ウルウル…

麗奈「…………バカァ……」ウルウル…

〜〜〜



愛海「…………本当に…ありがとうございました………………その…………」

保奈美「良くってよ、ケネディさん。スエレンは生き返ったみたいになったし、キャリーンも戦死した知り合いと同じ部隊にいた人と話せるって言って…生気が戻りましたから。」

愛海「………………………………」

保奈美「………みんなが、めいめいにやる事をやっています。……それで、私だけへのお話とは何でしょうか……?」

愛海「………………………………」

保奈美「…………………………」

愛海「……今日再開して……思ったんです……………やはり私はスエレンの事を愛しているって……」

保奈美「まぁ……(あの愚痴と利己心しかないスエレンの事を……物好きもいるものね…)」

愛海「……この気持ちは無かった事にしようと思っていたんですけど…………その………………気が変わってしまいました…………」

保奈美「……それで…………?」

愛海「……スカーレットさんのお許しを得られたら、スエレンにこの気持ちを伝えようかな……と思いまして………………」

保奈美「……そうですか…………(私の許可なんか要らないから、さっさと引き取ってくれないかしら……)」

愛海「あっ…………でも…その………………止めとこうかなぁ……とも思うんです……」

保奈美「……何故ですの…?」

愛海「……私は今、一文無しだからです……戦争前にそれなりにあった資産は軍に入る前に全部南部同盟公債に変えちゃいましたから………公債の価値がどうなっているかはあなたもご存じの通りです……」

保奈美「……………………」

愛海「……無一文の人間が……求婚するなんて………………」

保奈美「>>536

愛はお金で買うものではありません。もちろん、生活をする上ではお金は必要ですが、ただ愛するだけならお金の心配をする必要はないと思います。

保奈美「……それは私が決めることじゃありません。あなたとスエレンの事はあなたとスエレンに任せますよ。
(それにしても……こんなに真面目に仕事をする愛海ちゃんは初めて見るわ。獄中の愛海Pさんにも見せてあげたいって張り切ってたけど……)」

愛海「………それって……(……ちゃんと無実を証明してみせるからね……!………ぐすっ………………)」

保奈美「…無一文だろうと、私は構いませんわ。大切なのは愛じゃないでしょうか…?」

愛海「……………………………」

保奈美「あなたがスエレンを想ってくださると言うのなら、私にはお止めする理由など何一つありません。」

愛海「………スカーレットさん…」

保奈美「…父もあなたの事を大変気に入っていて、食卓ではいつもスエレンに、いつあなたと結婚するのか聞いていました。」

愛海「本当ですか……?!」

保奈美「(…………)ええ、本当です。」

愛海「………………………!」

保奈美「我が家には、誰1人あなたに反対する人間などいません。……スエレンの気持ちは知りませんが……それは私が聞くことではないでしょう。」

愛海「……………………」

保奈美「……今夜聞いてみますか?スエレンをあなたのところへよこしましょう。」

愛海「………!!スカーレットさん、あなたはとても……親切な方です……!」

保奈美「いいえ、当然の事を言っているまでです。(ケネディがスエレンを引き取ってくれれば、食べさせなければならない口が一つ減るもの。)」

愛海「…ああ………!タラの全ての人に感謝するよ…!…厚意に甘えさせてもらうね……!ああ……スエレン………!」

保奈美「(思いがけずうるさいのを押し付ける事が出来たわ。)そうですね……広間の隅でお待ちください。」

愛海「うん……!うん……!」

保奈美「…………………………」

愛海「スカーレットさんは本当に優しい人だよっ!」

翌年 4月 綿花畑



保奈美「はぁ……………」

加蓮「…大丈夫……?…疲れたなら休んでていいわよ………?」

保奈美「いえ……大丈夫よ……(……あの時はせっかくスエレンを押し付けられると思ったのに………何が『ケネディったら、自分に十分な資産ができたら結婚するって約束してくれたの!』よ!)」

加蓮「……本当に………?…日差しが強いから、無理はしないでね…」

保奈美「ええ。…ありがとう。(…メラニーが働けるぐらいには回復してくれたのは嬉しいけど…………はぁ………これでスエレンさえ居なければ………)」

加蓮「…そう…良かった…………」

保奈美「あなたこそ無理をするんじゃないわよ。…良くなったとはいえ、元々体が弱いんだから。」

加蓮「…種蒔きに、柵の修理に、家畜の世話に、やる事はたくさんあるんでしょう………?…最近気分がいいの……手伝わせてちょうだい。」

保奈美「……分かったわ。……くれぐれも無理をしないこと。いいわね?」

加蓮「ええ……無理はしないわ。」

保奈美「………あなた、最近日焼けしてきたわね?」

加蓮「あなたもね、スカーレット。」

保奈美・加蓮「……………………」

保奈美「ふふふっ………(まあ、全部が思い通りになるものじゃないわよね…………)」

加蓮「ふふっ………ふふふふ…………」

保奈美「出来ることから一つずつやっていきましょう………メラニー。」

加蓮「………ええ。……さて、…お昼までに……………」

フラフラフラフラ………バタッ……

加蓮「………!……ねえ、今あそこに倒れた人って…………」

保奈美「…………あれは………!」

食堂




有香「すみませんでした……!…何とかここまでは帰ってはこれたものの………最後で気が緩んでしまって………」

保奈美「いいえ、無事に帰ってきてくれただけで十分よ!…急にどうして帰ってこられたの…?」

有香「……それが………………」

保奈美「それが………?」

有香「………敗残部隊を率いていたジョンストン将軍が、投降したからです………」

加蓮「…………………!」

保奈美「………?」

有香「…………つまり…戦争が終わったからです……南部の負けで……」

保奈美「戦争が終わった……!(やった……!これでもう北軍に怯える必要は無くなった!安心して暮らせる!)」

加蓮「………南部が………負けてしまった…………」

有香「……北軍め!一対一なら負けなかったのに…!……あっ、…すみません……まだ戦争の気分が抜けきっていなくて…………」

保奈美「全然気にしないわ。それよりも、喉が渇いているんじゃない?」

加蓮「………負けた…………南部が…………南部が……………あの………その………詳しく教えてもらえませんか……?!」

有香「>>553

すみません……寝落ちします………

長期戦も明日で一区切りの予定です……

お休みなさい

北軍の戦力……いいえ、文明力は南部を遥かに上回っていました……。
機械人形やノコギリのついた円盤(バグ)だけでなく……機械人形を乗せた巨大な車輪や死体を操る金属、こちらの動きを先読みする機械、月から落ちる雷、鉄だけを腐らせる蝶、遺伝子操作兵士、超能力の養成、機械仕掛けの鳥や馬、いつまでも食べ物の鮮度を保つ袋、中に入れただけで食べ物が温まる箱……。
これからはそういった技術が南部にどんどん流入されて、いろいろな物が鋼鉄の静寂に覆われるそうですよ……

毎度のことと言えば毎度のことだがいくらなんでも無茶苦茶すぎだろ
こういうのは再安価でいいんじゃないのかな

>>554
美味しいから大丈夫です



再開します

有香「…北軍の戦力……いいえ、文明力は南部を遥かに上回っていました……」

加蓮「………………………………」

有香「機械人形やノコギリのついた円盤だけでなく……機械人形を乗せた巨大な車輪や死体を操る金属、こちらの動きを先読みする機械、月から落ちる雷、鉄だけを腐らせる蝶、遺伝子操作兵士、超能力の養成、機械仕掛けの鳥や馬、いつまでも食べ物の鮮度を保つ袋、中に入れただけで食べ物が温まる箱…………思い出せるだけでまだあります……!」

保奈美「その話って全部本当なの……?」

有香「押忍……!……信じられないとは思いますが……全て実際に見聞きした物です……………これからはそういった技術が南部にどんどん流入されて、いろいろな物が鋼鉄の静寂に覆われるそうです……」

保奈美「…………………………」

有香「…………疲れました…」

保奈美「……はい、水。」スッ

有香「…ありがとうございます……!」ガシ

有香「……ん………」ゴクゴクゴクゴク…

保奈美「……………………」

有香「……っはぁ……!……はぁ………それで…どこまで話しましたっけ…………?」

保奈美「…北軍の文明力がどれだけ高かったか……と言うところまでよ。」

有香「ああ……そうでしたね……そこまで話をしたんでした………」

有香「………はぁ………私たちはそんな相手に、独立戦争当時の銃で立ち向かわなければならなかったんです………いえ……武器を持っていられたのはまだいい方で…………」

加蓮「……………………」スクッ…

有香「メラニーさん……?」

加蓮「…………すみません………少し……席を外させてください…………」フラッ……フラフラフラ………

保奈美(……メラニーは今の話に相当ショックを受けたみたいね。部屋に篭って泣くつもりなんだわ……)

加蓮「………………………」
フラフラフラ……

保奈美(あくまで他人の前で涙を見せたりはしない………か………)

………………バタン…

保奈美「…………………………」

有香「…………すみません…!考え足らずでした……敗戦の話だなんて、女性に聞かせる物じゃありませでしたね………………」

保奈美「事実から耳を塞いでいたって、その事実が無くなる訳じゃないわ。」

有香「………………………………」

保奈美(…メラニーをどこかに行かせてから話を…………いえ、いつ知るかの問題でしかないんだったら、早いほうがよかったでしょう。)」

有香「………メラニーさんは大丈夫でしょうか…………?」

保奈美「…………大丈夫よ。(…少しの間寝込みはするかもしれないけど…………必ず起き上がるわ……そう言う人だもの。)」

有香「………………………………」

保奈美「……続きを話してくれる?」

有香「えっ………?」

保奈美「色々と訳があって今は私がここの主人だから、世間の様子を知っておく必要があるのよ。ここには私しか居ないから。」

有香「…………あなたは強いですね…」

保奈美「………………………………」

有香「……知っている事を全てお話ししましょう。」

保奈美「…………ありがとう。」

〜〜〜


有香「…………という訳です。」

保奈美「…………………………」

有香「………………………………」

保奈美「……北軍の追撃の前に南軍は打ち破られた。…死傷者は数え切れない…………」

有香「……ジョンストン将軍がいてくださらなければ、全滅していてもおかしくありませんでした…………ジョンストン将軍は偉大な将軍です……」

保奈美「……………………………」

有香「……ジョンストン将軍が粘って、何とか対等な講和に持ち込んでくれたおかげで…私は帰って来れたんですから……」

保奈美「………どうやったら、恐ろしい北軍相手に講和なんか………」

有香「ジョンストン将軍が自ら先頭に立って鬼神のように戦われたんです。……その結果、北軍の議会が勝敗が決まった戦いで犠牲を出すのは無意味だ、と判断してくれたんです。」

保奈美「…………………………」

有香「……………スカーレットさん…お願いがあります。」

保奈美「……何…?」

有香「……これからタラには故郷に帰るまでの一晩の宿を求めて、たくさんの敗残兵が来ます。…その人たちに宿を貸してあげてはくれませんか?」

保奈美「………………………………」

有香「……顔も知らない戦友たちを………助けてやってほしいんです………お願いします………」

保奈美「………………………………」

寝室



加蓮「…………あの人は…?」

保奈美「自分の家の様子を見に行ったわ………」

加蓮「………………そう……」

保奈美「…………………………」

加蓮「……………負けて……しまったのね………………」

保奈美「…………ええ。」

加蓮「>>565

巨大な車輪→タイヤ兵器
死体を操る金属→DG細胞
こちらの動きを先読みする機械→ゼロシステムかモビルドール
月から落ちる雷→サテライトキャノン
鉄だけを腐らせる蝶→月光蝶
遺伝子操作兵士→コーディネイター
超能力の養成→超兵かXラウンダー?

南北戦争の時代かと思ったら文明埋葬後の超未来だったってオチかな

そうだわ……!アシュレやバトラー船長は無事なのかしら!?あんなとんでもないものと戦って……

>>564
超未来…………なるほど………
……3部まではそれなりに原作に忠実にしてきましたが………………



加蓮「そうだわ……!アシュレやバトラー船長は無事なのかしら!?あんなとんでもないものと戦って……」

保奈美「…………分からないわ…」

加蓮「…………………っ…………!」

保奈美「……分からないわよ……そんな事………あの人だって、自分が帰ってくるだけで必死だったらしいし……他の人の事までは分からないって…………」

加蓮「………………………………」

保奈美「……………………………」

加蓮「……じゃ……じゃあ…………!」

保奈美「その先は言ったらいけない!」

加蓮「…………!」

保奈美「……そんな事は言ってはいけないし…考えるのもいけない事よ…!」

加蓮「……分かっているけど……恐ろしくて………たまらなくて……」

保奈美「しっかりなさい!メラニー・ウィルクス!弱気になるのは勝手だけど…………あなたが信じなくて、誰が信じるのよ!」

加蓮「………………っ…………」

保奈美「アシュレは北軍になんかやられないわ!…………バトラーだって………抜け目のないあの男の事だから、上手くやってるわよ…………」

加蓮「………………………………」

保奈美「……信じるしかないでしょうよ…………無事に帰ってくるのを………………」

加蓮「……………あなたの言う通りだわ…………ごめんなさい…………私…………しっかりしなきゃ………」

保奈美「…………………………」

加蓮「……私が……私たちが信じなくてどうするのよ…………本当に……………………」

保奈美「…………そうよ…」

加蓮「…………私は信じる……………スカーレット……またあなたに助けられたわ。」

保奈美「……ショックで寝込まれたら、堪らないだけよ。」

加蓮「………………そう……」

保奈美「…………………………」

加蓮「よし…!泣くのはここまでにするわ。………泣いている暇なんて無いんだから!」

保奈美「……………………(……立ち直るとは思っていたけど……………)」

加蓮「戦争が終わったと言うことは、敗残兵の人たちが帰ってくると言う事だわ。……タラにも大勢やってくるはず。………ねえ、スカーレット…

保奈美「…その人たちに宿と食事を提供してあげればいいんでしょう?」

加蓮「まあ……!あなたも同じことを考えてくれていたのね…………!」

保奈美「……ええ……(……私は一体……自分から何を言い出しているんだろうか……)」

加蓮「……あなたは……素晴らしいわ…………他に……言いようが思いつかない………」

保奈美「…言い過ぎよ……………」

加蓮「…そんな事はないわ………ああ………早速用意にかかりましょう……寝る場所と食べる物を準備しないと…」

保奈美「……そうね……兵隊さんたちを出来る限りもてなしてあげましょう。」

加蓮「ええ………!」

保奈美(……………最近の私は……どうにかしてしまっているわ…………)

保奈美「………………………」

6月 広間



加蓮「大丈夫ですか…?今食べ物を持ってきますから……」

「……ありがとうございます………こんなにも親切にしていただいて……」

加蓮「…私の夫もどこかで同じようにしてもらっているはずです。……だから、気にしないでください……」

「……………………ありがとうございます…………っ……………」

加蓮「……大変でしたね…………」

「………はい……………」

加蓮「……………………………」

保奈美「…………………」

「………必ずこのご恩は……………」

保奈美「結構です。お礼が欲しくてやっているわけじゃありませんから。……家はどこにあるんですか?」

「……………フロリダです………」

保奈美「ならもうしばらく歩かないといけませんね。……ここでしっかり休んで体力をつけていってください。」

「………………………………」

保奈美「>>574

↑(そうだわ……以前アシュレも機械人形の研究をしていたと……!もしかして……アシュレの渡したあの鍵も……!?)

保奈美(機械文明か……)

「…………はぁ………せめて我々にも機械人形があったら……………」

保奈美「………機械人形が………?」

「ええ……機械を馬鹿になんかするもんじゃありませんでした………僕らはそれに………惨敗したんですから…………」

「………………………………」

「……南部にも……機械人形を作れるだけの人間が居たら…………」

保奈美「……南部には…………………。……!」

「…………いえ……仮定なんぞ無意味ですね………」

保奈美「…………………………」

保奈美(そうだわ……以前アシュレも機械人形の研究をしていたと……!もしかして……アシュレが私に渡したあの鍵も……!?)

保奈美(……メラニーに渡してほしいと言われて………何となく渡しそびれてしまったあの鍵…………)

保奈美(………機械人形の仕組みは全く分からないけど………あの鍵は何か機械人形に関係しているものに違いないわ……なぜかと聞かれても……答える事は出来ないけど…………)

保奈美(……だとしたら………どうすればいいの………?…アシュレはメラニーにこれをどうして欲しかったんだろう……………)

保奈美(………………………………)

保奈美(…………アシュレ……)

菜々「スカーレット嬢様。」

保奈美(……アシュレの事よ………何か感がえが………)

菜々「……スカーレット嬢様。」

保奈美(……分からない………それこそ……もし機械人形を動かす鍵なんかだったとしたら………)

菜々「スカーレット嬢様!」

保奈美「ひうっ?!」ビクッ…!

菜々「……何をぼーっとしてるんです?そんな暇はちっとも無いって言うのに。」

保奈美「……………マミー……」

>>577訂正



菜々「スカーレット嬢様。」

保奈美(……アシュレの事よ………何か考えが………)

菜々「……スカーレット嬢様。」

保奈美(……分からない………それこそ……もし機械人形を動かす鍵なんかだったとしたら………)

菜々「スカーレット嬢様!」

保奈美「ひうっ?!」ビクッ…!

菜々「……何をぼーっとしてるんです?そんな暇はちっとも無いって言うのに。」

保奈美「……………マミー……」

菜々「腸の薬が必要だと言われましたから煎薬をつくってきましたよ。……苦いだろうけど、我慢して飲んでください。」

「…………は、はい………」

菜々「ここにいる人たちは全員腸をやられてるんですから、全員に飲ませてやらないといけません。さあ、手伝ってください。」

保奈美「……え、ええ……………」

菜々「全くもう………考え事は余裕のあるときにお願いします。」

保奈美(………そうね………今は難しい考え事より目の前の傷病兵の人たちの事を………………)

菜々「返事。」

保奈美「……あ……はい…!」

夜 事務室



保奈美「ふぅ………今日も疲れたわね………」

加蓮「……ええ…………でも、とても有意義な1日だったわ………」

保奈美「………兵隊さんたちは…?」

加蓮「もうみんな寝てしまわれたわ……疲れがたまってらしたのね……」

保奈美「…そう………」

加蓮「……………はぁ…………」

保奈美「………………………」

保奈美「(……ここには私とメラニーしかいない………鍵の事を切り出すなら今しか…………)…ね、ねえ………」

加蓮「……なぁに?」

保奈美「………えっと………………」

加蓮「…………?」

保奈美「……………きゃ、キャリーンはどうしている……かしら……?」

加蓮「………キャリーンなら…あの少年兵……ウィルに付きっ切りで、看病をしているところだと思うわ。」

保奈美「そ、そう…………(……………何故だか切り出すのを躊躇ってしまった………)」

加蓮「…………急にどうしたの…?」

保奈美「ええっと………ウィルの体調は良くなったかと思って………ほら、ずっと伏せっているじゃない?」

加蓮「今朝歩けるようになったって言って、みんなでお祝いしたじゃない。忘れてしまったの?」

保奈美「まさか……その……ぶり返したりしていないか不安になったのよ……」

加蓮「ウィルが自分で、もう平気って言ってたわ。油断は出来ないけど……たぶん、大丈夫よ。そんな気がする。」

保奈美「……そう……それは良かったわ……」

加蓮「>>584

加蓮「………ねえ、本当に大丈夫なの?何か隠してない?」

保奈美「……何も隠してなんか居ないわ。」

加蓮「………………………………」

保奈美「…………………………」

加蓮「……あなたは……隠れて無理をするタイプだから………心配なのよ……………」

保奈美「……大丈夫よ。」

加蓮「……………………………」

保奈美「……(……相変わらず妙に鋭いんだから………)」

加蓮「…………スカーレ……」

保奈美「…私があなたに嘘をつくと思う?」

加蓮「…………それは………」

保奈美「私を信用して、メラニー。あなたに隠し事なんかしないわ。」

加蓮「…………………………」

保奈美「心配してくれるのは嬉しいけど……気を揉みすぎては疲れてしまうわよ?」

加蓮「……………………………」

保奈美「……じゃあ、私はウィルの様子を見てくるから。」スクッ…

加蓮「……………待って。」

保奈美「…………ん?」

加蓮「………えっと……………その………………」

保奈美「互いに知らない事なんてないでしょ?私はあなたの事は全て知っているし、あなたは私の事を全て知っている。」

加蓮「………………………………」

保奈美「お休みなさい、メラニー。」スタスタスタスタ……

加蓮「………ええ…お休みなさい…」

保奈美(…我ながら図太くなったものだわ。)スタスタスタスタ……

寝室



輝子(ウィル・ベンティン)「……………」モクモク

輝子「………ここをこうして………こうすると……………」モクモク

保奈美「今は何を作っているの、ウィル?」

輝子「……ウェードのおもちゃを…」
モクモク

保奈美「…ふぅん……………」

輝子「……………………」モクモク

保奈美「……………………」

輝子「………………ん?…………あっ……!す、スカーレットさん……」

保奈美「…こんばんは。」

輝子「……す、すみません……ホント……集中すると周りが見えなくて…………」

保奈美「気にしないで。…それよりも今日もまた私たちのための物を……昨日も籠を編んでくれたばかりなのに、悪いわね。」

輝子「…手先の器用さを役立てようと思ったら、これぐらいしか…………微力ですみません…………」

保奈美「いいえ、私たちの誰にも出来ないことだから、とってもありがたいわ。……ありがとう、ウィル。」

輝子「……どうも………………」

保奈美「………………………………」

保奈美「キャリーンは?」

輝子「……………」スッ

聖「……………………」スヤスヤ…

輝子「……あんまり騒いだら……い、いけませんよー…………」

聖「……………神様………」スヤスヤ…

保奈美(呆れた……夢の中でまで祈ってる……)

輝子「……静かにお願いします………ね……?」

保奈美「…………ええ。」

輝子「>>592

↑保奈美「あら……それなら話が早いわね。ここじゃよくないわ……外で話しましょう」

安価把握

次の投下で3部完結まで行きます

一時中断します

荒らしに負けるな、病気に負けるな。

>>594
ありがとうございます……
行動不能(物理)の時以外は、原則として何があろうと投下させていただきます
それが>>1に出来るせめての出来ることなので………



再開します

輝子「と、ところで……わざわざ訪ねてきたということは、何か用があって……?」

保奈美「あら……それなら話が早いわね。ここじゃよくないわ……外で話しましょう。」

輝子「……ここでできないような話…なんですか……?」

保奈美「別に、ここでしてもそこまで困らないんだけど………キャリーンを起こしたくはないでしょ?」

聖「……みんな………ちゃんと……天国に…………」スヤスヤ…

輝子「…………………………」

保奈美「そんなに長い話じゃないわ。…体はまだキツイとは思うけど、付き合ってもらえる?」

輝子「……大事な話……なんです……ね……?」

保奈美「まあ……それなりにね。」

輝子「………分かりました…」ノソ…

保奈美「……ありがとう。着いてきて。」スタスタスタスタスタ……

輝子「……………はい………」
スタスタスタスタスタ……

聖「…………………」スヤスヤ…

屋敷 裏庭



保奈美「……ここなら誰も来ないし、話には丁度良いでしょう。……それでね、話って言うのは…………」

輝子「す、すみませんでした………い、今すぐ……出て行きます…から…………」

保奈美「……えっ……?」

輝子「病気が治ったのに……そ、その……いつまでも居座られたら迷惑ですよね…………ちゃんと……もう消えます……から………………」

保奈美「ち、違う違う!私はあなたには出て行って欲しいだなんて一度も考えた事はないわ!」

輝子「…えっ…………?」

保奈美「むしろ逆よ、ウィル、お願い!出来ればこのまま私たちと居てもらえないかしら…?」

輝子「……えっ…………えっと……………?」

保奈美「その話をしようと思って、ここまで着いてきてもらったの……マミーやスエレンはあなたがどこの家柄かも分からないって言って、あまり良く思ってないみたいだから………聞かれるのは………………と思って……」

輝子「……………………………」

保奈美「あなたが居てくれたら……これから先にどれだけ助かる事かしら。」

輝子「……わ、私……そこまで言ってもらえるほど……何も…………」

保奈美「いいえ、あなたは農業に関する事だったら何でも的確なアドバイスをくれるし、家具や柵の修繕までしてくれる。子守りだってよくやってくれるじゃない。」

輝子「そんな……お、お世話になってるからには……当たり前です……」

保奈美「当たり前の事が出来る人間がどれだけ居て?……ねえ、ウィル。お願いよ……」

輝子「………………………………」

保奈美「………………ね?」

輝子「………い、居て…………いいんですか……?」

保奈美「ええ。」

輝子「…わ、私………ボッチで……帰る場所が…ないですから………ほ、本当に居ていいんだったら……すごく………う、嬉しいんですけど…………」

保奈美「ずっと居てくれていいわ。ここをあなたの居場所にすれば良い。」

輝子「……………スカーレット…さん……………」

保奈美「……それで……居てくれる……?」

輝子「………………………」

保奈美「…………………………」

9月



輝子「きょ、今日は…街でいい布地が手に入りましたよー………」

布束「……………」

保奈美「まぁ………!」

輝子「そ、それと……野菜の種と…小麦粉も安かった…から………あの…………」

保奈美「すごいわ、ウィル!1ブッシェルの作物をこんな品物に変えてくるなんて……!」

輝子「………た、大した事じゃ……ないです………」

保奈美「いいえ、大した物よ!こんなに上手く取り引き出来る人間はあなた以外いないわ!ねえ、メラニー。」

加蓮「ええ……ウィル…あなたが居てくれてよかったわ……!」

輝子「………………あ、ありがとう……ございます………」

保奈美「まだ何かウィルについて文句がある、マミー?」

菜々「文句も何もありませんよ。…この方は神様からのプレゼントじゃないんでしょうかね。」

輝子「…………お、大袈裟…じゃない……でしょうか………?」

保奈美「>>605

貴方は自分を過少評価しすぎよ

保奈美「あなたは自分を過少評価しすぎよ。」

加蓮「そうそう……もっと自信を持って大丈夫よ?」

輝子「……いえ……私なんかとても………………」

保奈美「…あなたはここの屋敷の住人なんだから、自信を持ってもらわないと困るわ。タラの住人の1人としてね。」

輝子「………………!」

菜々「まあ、あなたがそう自分を卑下なさってばかりいると、うちの品位まで低く見られてしまいますからね。」

保奈美「…マミーの言っている事は…つまり……自分の能力は自分が認めてやれ……って言う事でしょう?」

菜々「全然違います。」

保奈美「……………………」

菜々「出来ることを出来ないように振舞われても、こちらとしては損なだけだと言っているんです。」

輝子「…………あ……すみま…………」

菜々「そうやってすぐ謝るのもやめていただきたいんですがね。そう頭ばかり下げる作法が…………」

加蓮「マミー…………」

菜々「…………フン…」

加蓮「……マミーはあなたを評価しているからこそ、こう言っているの。…………ね?」

菜々「…………評価もしていない人間の事になんか口出しはしませんよ。」

輝子「…………………………」

加蓮「……あなたは大した人間よ…………それを誇ってください…」

輝子「………………私……大した人間…………」

加蓮「……ええ…………」

輝子「………………………………」

保奈美「…………ええっと……だから………………」

輝子「……私……が、頑張って……自信持ってみます…!……その……し、信頼に…答えられるように……!」

加蓮「ふふっ………ありがとう……」

保奈美「………む……………」

輝子「…い、いえ………………」

菜々「ここで謙遜しちゃ意味ないじゃないですか。」

輝子「…………あっ……つ、次から……気をつけます……」

加蓮「……………ふふ………………」

事務室



加蓮「……ウィルがここに残ってくれたおかげで……ずいぶんと楽になったわね………そう思わない……?」

保奈美「………そうね…」

加蓮「……スカーレット……?」

保奈美「………私の台詞をメラニーに私が話す事を取られた…」

加蓮「……ああ………ごめんなさい。」

保奈美「…許して欲しかったら、帳簿をつけるのを手伝いなさい。」

加蓮「ふふっ……はいはい。」

保奈美「………………………」

>>611訂正


事務室



加蓮「……ウィルがここに残ってくれたおかげで……ずいぶんと楽になったわね………そう思わない……?」

保奈美「………そうね…」

加蓮「……スカーレット……?」

保奈美「………メラニーに私が話す事を取られた…」

加蓮「……ああ………ごめんなさい。」

保奈美「…許して欲しかったら、帳簿をつけるのを手伝いなさい。」

加蓮「ふふっ……はいはい。」

保奈美「………………………」

加蓮「……最初から帳簿は2人で付ける決まりだったでしょう…?」

保奈美「そうだったかしら?」

加蓮「そうよ。…もう、スカーレットったらおどけちゃって………」

保奈美「…おどけられるぐらいに余裕が出てきたのよ。……食べ物には困らなくて良くなったし…………何というか……未来に希望が持ててきたの。」

加蓮「……希望…………」

保奈美「……ええ……これから全部が良くなって行くって言うね。」

加蓮「>>615

そうね……今後は鶏や豚も飼ってお肉を採って、野菜もトマトやズッキーニを栽培して……ああ、夢がどんどん広がるわ……!

加蓮「そうね……今後は鶏や豚も飼ってお肉を採って、野菜もトマトやズッキーニを栽培して……ああ、夢がどんどん広がるわ……!」

保奈美「いいわね……!豚小屋はこの前ウィルが修理してくれたから、いつでも豚を入れられるわ…!」

加蓮「…昔のタラの賑やかさが戻っていくみたいね……」

保奈美「ええ……戦争なんかが起きる前と同じぐらい……いえ、もっと豊かにしてみせましょう!」

加蓮「……はぁ…………私何だか涙が出てきたわ……」

保奈美「まだ泣くには早いわよ?」

加蓮「……分かってるけど……ふふっ…………」

保奈美(……無理もないか…………私たちは……一番苦しい時を乗り越えてここまで来たんだから………………)

加蓮「……スカーレット…………ここまで……大変だったわねぇ…………」

保奈美「…大変なんてものじゃなかったわよ…………何回も死ぬかと思ったわ。」

加蓮「私だって……」

保奈美「あなたの場合は洒落にならないでしょうが。」ペチン

加蓮「いたっ。」

保奈美「……もう………………」

加蓮「ふふ………ちょっとふざけて言ってみただけじゃない?」

保奈美「言っていい冗談と悪い冗談があるわ。」

保奈美・加蓮「……………………」

加蓮「……私……あなたに会えて本当に良かったって思ってるわ……生きているうちに……またこんな幸せが来るなんて……」

保奈美「来たんじゃないわ。…呼び寄せたのよ。」

加蓮「……かもしれないわね……あなたが言うとそうかもしれない…って思えるの……」

保奈美「実際にそうなんですもの。」

加蓮「ふふ………スカーレットったら……………………」

保奈美「…野菜畑には何を作付けしましょうか…?」

加蓮「そうねぇ……アシュレの好物の………………あっ………………」

保奈美「……………………」

加蓮「……大丈夫よ。……私はアシュレの事を信じているから。」

保奈美「…………そう……」

加蓮「…私たちのすべき事は、アシュレが帰ってきて驚くぐらいに農場を発展させる事。…そうでしょう?」

保奈美「…………そうよ…帰ってきたアシュレにご馳走を食べさせてあげないといけないものね。(……………)」

加蓮「……アシュレは帰ってくる……今こうしている間にも………。…………!」

保奈美「……メラニー…?」

加蓮「……………」ガタッ!

保奈美「………ね、ねえ……」

加蓮「……帰ってきた……!」


保奈美「……帰って………?…まさか………!」ガタッ!

加蓮「…………っ……!」
ヨロッ……タタタタタタタ…!

農場 入り口



加蓮「はぁ……はぁ………はぁ………はぁ…………!」

保奈美「…メラニー……あなたが言っているのってまさか………」

輝子「……あ……丁度良いところに………そ、そこに兵隊さんがいるんですけど…………」

櫂「…………………………」

保奈美「……アシュ……」

加蓮「…………アシュレ!」ダキッ!

櫂「………………」ガシッ

保奈美「……………………」

加蓮「…………アシュレ…!アシュレ……!」ギュッ……

櫂「………………………」ギュッ……

輝子「……お、お知り合いの方……ですか………?」

保奈美「……知り合いだなんて……そんなものじゃないわ……この人こそが……アシュレ・ウィルクスなのよ…………」

加蓮「……………………お帰りなさい………………」

櫂「…………ただいま…」




4部に続く

一先ず皆様のおかげで第3部を無事に完結させられたことに、深く感謝させていただきます……

これで全体の5分の3が終わった事になります……折り返しは過ぎました……
……長々と申し訳ありませんでした……

…どうやらこの『風と共に去りぬ』は何かが違うようです……
明らかなオーバーテクノロジーの存在が何を意味するのか…………
ぜひ無茶振りをお願いします

全くショートなストーリーではありませんが……最後までお付き合いいただけるのであれば、>>1にはそれに勝る幸いはありません……


………最大の敵は>>1の体力の無さです……………………

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