くるみ「パパの・・・車・・・」 (48)


めぐねえ車「ぶーん」

ゆき「次の角を右に曲がってー」

くるみ「曲がってー」

ゆき「そこから真っ直ぐ行ってー」

くるみ「行って―」

ゆき「大きな道に出るまで直進だよー」

くるみ「おーう」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1443073657


みーくん「先輩、道間違ってたりしてないですか」

ゆき「みーくんは心配性だなぁ、私がミスするわけないじゃん」

りーさん「行き止まりに突っ込んだのはミスじゃないのかしら」

みーくん「お陰で車を何度も擦りましたね、運転手の技量もありますけど」

ゆき「うっ」

くるみ「うっ」

ゆき「だ、だからそれは反省してるよ!」

みーくん「反省してもらわないと困ります」

りーさん「学校に戻ったらめぐねえに謝らないとねぇ」ハァ

みーくん「・・・」

ゆき「え、あ、そ、そうだね」アセアセ

くるみ「・・・」


くるみ「話戻すけど、本当にこの道で合ってんのか?」

ゆき「み、道的には合ってると思うよ」

ゆき「左側に清水寺っていうお寺があるはずだけど・・・」

くるみ「あー、あるな、今回はちゃんと道」ハッ


めぐねえ車「キキーッ!」

ゆき「うわっと!」

りーさん「どうしたのくるみ!?」

くるみ「・・・」

みーくん「先輩・・・?」

くるみ「車、だ」

みーくん「え?」

くるみ「パパの・・・車・・・」


ゆき「くるみちゃんの、お父さんの?」

くるみ「ああ、ナンバーも同じだ、間違いない」

りーさん「くるみ・・・」

みーくん「この周辺には、そんなにいませんけど」

みーくん(一本道だから、囲まれると、少し)


くるみ「・・・」

くるみ「ごめん」

くるみ「少しだけ、見てきていいか?」

くるみ「やばくなったら、どっか行ってていいから」

くるみ「10分だけで、いいから」


りーさん「・・・分かったわ」

りーさん「せっかくご家族の人が待っててくれてるかもしれないのに」

りーさん「10分なんてそんな殺生なこと言わないわ」

くるみ「りーさん・・・」

りーさん「でも、危なくなったらすぐに帰ってきてね」

くるみ「う、ん」


ゆき「・・・」

ゆき「くるみちゃん、私も行っていいかな」

くるみ「ダメだ、あんな狭い敷地じゃ二人の方が危ない」

ゆき「が、学園生活部の心得で」

みーくん「ゆき先輩、くるみ先輩の意見に賛成です」

りーさん「そうね、ゆきちゃんは私達と一緒に待ちましょう」

りーさん(話が話だけに、余計にね)


ゆき「くるみちゃん・・・」

くるみ「ごめんなゆき、そう言うことだから」

くるみ「それじゃあ、三人共、留守番頼むぜ」

くるみ「何かあったら、すぐに逃げてくれていいから」

りーさん「・・・分かったわ」


くるみ「それじゃあちょっくら」

ゆき「くるみちゃん!」

くるみ「ゆき・・・?」

ゆき「お願い、私も行かせて」

みーくん「で、ですからそれは」


ゆき「嫌な予感がするの」

ゆき「もう、そんなのは嫌なの」

ゆき「お願い、くるみちゃん」

りーさん「ゆきちゃん・・・」


くるみ「・・・分かった、ゆきも一緒に行くか」

くるみ「でも、絶対に無理すんなよ」

ゆき「うん、しないよ」

みーくん「先輩、絶対に帰ってきてくださいね」

りーさん「二人とも、待ってるわよ」

ゆき「うん、ありがとうね、りーさん、みーくん」

ゆき「それじゃあ、行ってきます」


ゆき「みーくんのお父さんは、なんでここに来たの?」

くるみ「・・・私が生まれる前に、ママが流産してな」

くるみ「それがずっと心残りで、この寺に供養に来てるらしい」

ゆき「・・・そっか」

ミスった

ゆき「くるみちゃんのお父さんは、なんでここに来たの?」

くるみ「・・・私が生まれる前に、ママが流産してな」

くるみ「それがずっと心残りで、この寺に供養に来てるらしい」

ゆき「・・・そっか」


くるみ「・・・あの日」

くるみ「ママは仕事してなかったから、多分家にいて」

くるみ「前帰った時、寝室に血が付いてたから、きっと」

ゆき「・・・」


くるみ「でも、パパは仕事してたから、逃げて」

くるみ「それで、多分、あそこに逃げ込んだんだと思う」

くるみ「家に着くまでの道は、きっと、通れなかったから」

ゆき「それで、このお寺に来たんだね」


くるみ「私も何回か来たことあるんだけど」

くるみ「住職さんが、小さな私を撫でてくれてたの覚えてる」

くるみ「住職さん、良い人、だったんだ」

ゾンビ住職「アアァ」

くるみ「ごめんな、住職さん、ごめんな」ザシュッ


ゆき「くるみ、ちゃん」

くるみ「大丈夫だよ、私は」

くるみ「さ、中にいこーぜ」


ゆき「中、狭いね」

くるみ「ここに来るようなゾンビはそういないはずだから、出くわしても数は知れてるはずだ」

くるみ「私に任せろ、ゆきは絶対に離れんなよ」

ゆき「う、ん」


くるみ「多分、ここの部屋だ」

ゆき「資料部屋?」

くるみ「うん、私も入ったことあるからな」

くるみ「中は狭いし、数人しか入れないようなとこだけど」

くるみ「でも、もし、逃げれてるなら、ここだ」


ゆき「中、大丈夫かな」

くるみ「もしダメなら、私達の話し声に反応してるさ」

くるみ「もし外から来て籠城しても、換気窓があるからそこから逃げれる」


ゆき「・・・」

くるみ「・・・」

くるみ「空けるぞ」

ギギイッ バタン


目瞑りくるみ「っ」ギュッ

目瞑りくるみ(頼む、パパ、生きててくれ)

目瞑りくるみ(頼む!)パチッ

くるみ「っ!パパ!」パァッ

くるみ「ぁ」


くるみパパ「」プラーン


くるみ「」

ゆき「きゃああああああああああ!」


ゆき「や、あ、あああ、ああ、あ」

ゾンビ「アアアァァァ」

ゆき「ひっ!」

バタン


ゾンビ「アアァァ」

扉「ガンガンガン」

ゆき「や、や、や、いや、たす、たすけて」ブルブル

ゆき「くるみちゃん!早く逃げない、と・・・」

ゆき「くるみちゃん・・・?」


くるみ「嘘だ、ウソだ、違う、夢だ、だって、こんな」ブツブツ

くるみ「パパが、こんな、こんなわけが、パパ、ぱぱ」ブツブツ

ゆき「くるみちゃん!」

くるみ「ウソだあああああああああああああああああああああ!」

くるみ「うわあああああああああああああああああああああああ!」


ゆき「くるみちゃん!しっかりして!」

くるみ「こんな!そんな!認めない!違う!違うううううううううう!」

ゆき「くるみちゃん!」

扉「メキメキ」

ゆき「ひっ!くるみちゃん!早く逃げないとドアが壊れちゃう!」


くるみ「うわあああああああああああ!」

くるみ「ああああああああああああああ、あっ」プツッ

ゆき「くるみちゃん!?」

扉「メキメキ」

ゆき「っ!もう、私が担ぐしか!」

ゆき「んしょ!早く、早くしないと!」


扉「メキメキ」

ゆき「お願い!後ちょっとだから!もって!」

ゆき(くるみちゃんのお父さん、力を貸してください・・・っ)

ゆき「うああああ!」

ゆき「!よし!」


扉「バキッ」

ゾンビ「アアアァァァ」

ゆき「はっ、はっ、はっ」タッ

ゆき(くるみちゃんのお父さん、ありがとうございます)


バタッ ユキチャン! クルミ!? ハヤク! ハヤクダシテ! ワ、ワカッタワ! ブウゥン・・・


私達はなんとか、その場を逃げ切りました。
でも、くるみちゃんはあの日以来、ずっと塞ぎ込んだままです。
あの気丈なくるみちゃんが、一日を泣いて、俯いて、呟いて暮らしています。
そんな生活に、りーさんにもおかしな言動が見え隠れし始めた三日目の朝のこと。
くるみちゃんは、何の音もなく、気付けば車からいなくなっていました。


遂にりーさんも近くの小学校に行ったまま帰ってこなくなって、運転する人のいなくなった車に、あれが近付いてきます。
私の腕の中でみーくんは、ロープを首に巻き付けて、嬉しそうに涙を流したまま、眠るように旅立ちました。
みーくんを人間のまま旅立たせた張本人である私は、せめてもの償いに、その頭を優しく撫でてあげます。


学園生活部の日々を思い出します。
願うならば、このままあの世で、またみんなで会いたいです。
それでもやっぱり、誰かに生き残ってほしいなと思います。
だから私は、願うように、呟きました。

「くるみちゃん、元気にしてるかなぁ」

そして、車のドアが、割れました。


くるみ「パパ!パパ!」

くるみ「やっと会えた!やっぱり死んでなかった!」

くるみ「う、うぅ、嬉しい、良かった」グスッ

くるみ「パパ、みんなで家に帰ろう」

くるみ「みんなで楽しく過ごそう」


くるみ「えへっ、これからが楽しみだね!」」

くるみ「さあ、パパ、帰ろう!」

ゾンビくるみパパ「アアアアアアァァァァ」

くるみ「ねぇ、パパ!」



終わり

今夜最終話を迎えるアニメもバッドエンドを迎えてほしいっすね

りーさん「今から行ったって!どうせ!助かるわけないじゃない!」
前書いた同じような作品です、バッドエンドが大好きな方はどうぞ、それでは今夜楽しみましょう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年01月03日 (火) 23:00:43   ID: 9zPhmja7

私は、ハッピーエンドがいいな

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom