魔王「…なんだ…この澄み切った清らかな空気は…?」
魔王「私が封印されている間に、世界は平和になってしまった
のか…?」
魔王「…人間が支配する平和な世界など断じて許せん!」
魔王「この私が世界を再び魔族の物へと変えてくれるわッ!」
登場人物
魔王…年齢???性別男
魔族の王。数百年前、勇者に封印された。戦闘能力は並の魔物とは比較にならない程
高い。魔法が得意。他にもどんな物からでも魔族を生み出す能力を持っている。
平和な世界を終わらせるべく、再び魔王軍を率い世界征服に乗り出す。
魔王「…しかし、私一人ではとても太刀打ち出来ないだろうし…魔王軍は跡形も無く消えてるし…。」
魔王「仕方ない。一から魔王軍を築くとしよう。急がば回れだ。」
魔王「とりあえず、魔物を生み出すとしよう。
魔王が近くの木に触れ魔力を込めると、黒い煙があたりを包みその中から緑色の髪をした少女が現れた。
魔王「…これまた随分と可愛らしい魔物が生まれたな。」
魔王「よかったな、お前が魔王軍最初の兵だ。」
エルフ「…?貴方は……?」
魔王「私は魔王。魔族の王だ。世界を再び支配する為に、お前には魔王軍に入ってもらう。」
エルフ「魔王…?魔王軍?…良くわからないけど、とりあえずその魔王軍とかいうのに
に入ればいいんですね。」
魔王「そうだ。お前が最初の魔王軍の兵だ。」
木のエルフ「…他には誰もいないんですか?」
魔王「今は私とお前だけだが、いずれは世界を支配する程の軍になるのだ!」
木のエルフ「世界を支配…ですか。大変そうですね。」
魔王「そうだ。だからとにかく今は仲間が欲しいのだ。どんどん増やしていくぞ。」
木のエルフ「増やすって…どうやるんですか?」
魔王「魔族がいれば誘えばいいだけだが、今のところ見てないからな。ほぼ絶滅したのだろう。」
魔王「なので、お前と同じように一から作るのだ。」
木のエルフ「作るって…どうやってですか?」
魔王「まぁ、そこで見ていろ。」
魔王が近くの水たまりに手を入れ魔力を込めると、黒いが吹き出し青い体のゼリーの
ような魔物が現れた。
魔王「見よ、スライムだ。」
木のエルフ「…凄い…!本当に魔物が生まれた!」
魔王「まぁ、魔王の力だ。この調子でどんどん増やすぞ!」
木のエルフ「ええ。頑張りましょう!」
ー数時間後ー
魔王「エルフ族が三人、ゴーレムが2体、スライムが5匹アンデッドが2人か。後、旧魔王軍の生き残りの
ドワーフが3人。」
魔王「結構集まったな。」
土のエルフ「そうですね。これだけいれば、人間の村一つくらいなら征服出来そうですね。」
魔王「…いや、それをするのはまだ先だ。」
火のエルフ「…?そうなんですか?」
魔王「…魔王軍の復活を世界に知らしめるには、まだ早い。」
魔王「魔王軍が復活したとなれば、世界中から軍体や、勇者と呼ばれる戦士たちがが送られてくるだろう。」
魔王「だが、今の魔王軍には世界と戦える程の力は無い。」
木のエルフ「そうですね。しかし、そうなると拠点となる場所が欲しいですね。」
火のエルフ「そうだね。野宿って訳にもいかないしね。」
魔王「そうだな。その案には賛成だ。…問題はその拠点をどこに築くかだな。」
水のエルフ「そうですね。確かにどこに築くかは一番の問題ですね。」
魔王「…まず、ここがどこであるかすらわからないからな。」
魔王「ドワーフ達は、ここがどこかは知っているよな?詳しく教えてくれると助かるのだが。」
ドワーフⅠ「はい。魔王様、この地図を見てください。」
魔王「おお、地図を持っていたのか。これは助かる。」
ドワーフⅢ「今、私達がいる場所はここ、帰らずの森と呼ばれる場所です。」
魔王「…帰らずの森?随分と不吉な名前だな。」
ドワーフⅡ「見ての通り、ここはとても濃い霧が一年中かかっていて、一度道に迷うと家に帰るのは
容易ではないんですよ。」
ドワーフⅠ「ですので、帰らずの森と呼ばれているんですよ。」
魔王「…なるほど。そうだったのか。」
魔王「だが、ここなら身を隠すのにもってこいだな。」
ドワーフⅢ「ええ。ですので私達ドワーフはこの森に身を隠し、魔王様の復活を待っていたんですよ。」
魔王「…そうだったのか。今まで肩身の狭い思いをさせてすまない。」
ドワーフⅢ「…え!?あ…いや、そういう意味で言ったのではなくて…。」
魔王「…だが安心しろ。その時代はもう終わったのだ。」
魔王「これより魔族は、世界の王の一族となるのだ。そして今まで我々に刃向かった、愚かな人間
達を滅ぼすのだ。」
水のエルフ「そうですね。頑張りましょう!」
ボーンナイト「では、拠点となる場所を探しましょう。ドワーフさんは何かいい場所を知っていませんか?」
ドワーフⅠ「そうですね…では、この森の奥にあると言われる、霧の迷宮はいかがでしょうか?」
魔王「霧の迷宮か……ん?ちょっと待て、あると言われる、だと?」
魔王「行った事は無いのか?」
ドワーフⅡ「ええ。まだ誰も…。」
ドワーフⅢ「そのような洞窟がある、という噂しかなくて…。今まで行って帰って来た者はいないようです。」
魔王「そうなのか…行って帰って来た者は、か。」
デュラハン「…ふむ、なかなか面白そうではないか。」
ドワーフⅠ「人間の名のある探検家も霧の迷宮を探しに行ったそうですが、そのまま帰って来なかった
そうです。」
ドワーフ「それ以来、霧の迷宮には誰も近づかなくなったので、いまだに存在するのかさえわからない
ままなんです。」
デュラハン「…なるほど、曰く付きの迷宮か…魔王軍の拠点とするににはこれ以上ないと言う位の
場所ではないか。」
水のエルフ「しかし、どうやって探すんですか?名のある探検家ですら、発見できたかどうか
わからないんですよね?」
スライム・青「それじゃ手分けして探す?その方が効率的だと思うよ。」
スライム・緑「そうだね!僕も賛成!」
ゴーレムⅡ「…。」
ゴーレムⅡはスライム・青の案に反対だ、と言いたいようだ。
魔王「…待て、ここは帰らずの森だぞ?バラバラに行動するのはあまり得策ではないと思うのだが。」
ボーンナイト「そうですね。では、全員で探すとしましょう。」
デュラハン「…なかなか面白い事になってきたじゃないか。」
木のエルフ「では、どこから探しますか?」
魔王「そうだな…現在地がどこら辺かわかるか?」
ドワーフⅠ「そうですね。今は水の流れる音が近くでしているので、多分この辺かなと。」
魔王「なるほど。では、手始めにこの川の上流に向かってみるとしよう。」
ー数日後 濃霧の湖ー
魔王軍新メンバー 獣族2人
魔王「…これはまた随分と大きな湖だな。」
狼男「そうだな。水も澄んでいる。」
ドワーフⅡ「綺麗ですね…こんな場所があるなんて知りませんでした。
魔王「やはりここにはまだ人間の手が届いていないようだな。」
魔王(…ここにくる途中、幻術系の魔法がいくつか仕掛けてあったような気がしたが…
あれは一体何だったんだ?かなり高レベルのものだったが…。)
魔王(まぁ気にしないでおくとしよう。今は霧の迷宮を探すのが先だ。幻術魔法の事を
調べるのはその後でも遅くはないだろう。)
水のエルフ「少し湖の回りを見て回りましょうか。何かあるかもしれませんし。」
魔王「そうだな。そうするとしよう。」
ー数分後ー
人狼「…魔王殿、あそこに何かあるぞ。」
魔王「ん?どれだ?」
人狼の視線の先には、小さな洞窟があった。
魔王「…洞窟か、行ってみよう。」
ー霧の迷宮 入り口ー
魔王「…ほう…ここが噂に聞く霧の迷宮なのか?」
ボーンナイト「どうやらそのようですね。」
デュラハン「へぇ…迷宮っていうからもっと恐ろしげなもんだとばかり思っていたんだがな。
随分と綺麗じゃないか。…この扉や石像もちゃんと手入れされてるし。」
ゴーレムⅠ「…。」
ゴーレムは、もしかしたら誰か住んでいるのでは?…と言いたいようだ。
魔王「…そうだな。やはりここは綺麗すぎる。長い間誰も近づいていないなら、もっと風化しているはずだ。」
火のエルフ「では、何者かがこの洞窟に住んでいると…?」
魔王「流石にそこまではわからんが、まぁちょっと待っててくれ。」
魔王(…さっきの幻術の結界の事もあるし、やはり少し調べてみるか。)
魔王が目を瞑り、ゆっくりと開くと右眼が赤い光を放ち始めた。
魔王(…やはり、魔力によって風化が抑えられているようだな。なにか強力な魔力がこの辺り
一帯を包んでいるようだ。)
魔王(先程の幻術の結界を張り巡らせたのも、多分同じ術者だろう。…誰も霧の迷宮にたどり着けない
のも、この魔法のせいだろう。)
魔王(…これは厄介だな。相手は相当な腕を持った魔導士だろう。もし、相手が人間ならば戦いは避けられん。
せっかくここまで集めたメンバーも全滅は必死だ。)
魔王(しかし、もし魔族であった場合はこの上ない戦力だ。ここまでの腕の魔導士はそうはいない。)
魔王(…さて、どうしたものだろう…?)
デュラハン「…何かわかったのか?」
魔王「…ああ、大体の事はわかった。」
スライム・黄「それで、一体何がわかったの?ねぇ教えて!教えて!」
魔王「まぁ待て、そう焦るな。」
魔王「こに霧の迷宮には、相当の腕のある魔術師がいることがわかった。」
魔王「この石像や扉が風化していないのは、その魔術師の魔力によるものだとわかった。」
土のエルフ「魔力で風化を止められるんですか?」
魔王「ある程度以上の魔力があれば不可能ではない。…ただ、その域に達するのはごく一部だがな。」
魔王「…兎に角、ここにはとても強い魔導士がいるのは確実だ。それと戦う事になれば、まだレベルの
低いお前たちが全滅することは確実だ。」
魔王「…よって、お前たちにはここに残っていてもらう。ここから先は私一人で十分だ。」
ドワーフⅢ「なっ…!?」
魔王「それでは行ってくるとしよう。」
ボーンナイト「まっ…魔王様、いくら何でも危険過ぎやしませんか?」
火のエルフ「そうですよ、手強い相手がいるとわかっていながら一人でいかれるなど。」
魔王「私を誰だと思っているんだ?魔族の王、魔王だぞ?恐れるものなど何も無い。」
デュラハン「だが、一人は流石に危険すぎる。我々もレベルが低いとはいえ、盾ぐらいにはなれるはずだ。」
魔王「私はお前たちを盾にする気など微塵もない。だからここで待っていてくれ。」
木のエルフ「お断りします。」
魔王「…。」
土のエルフ「…私達は魔王様がいなければ、生まれてくることすら出来なかったんです。」
水のエルフ「今更死など恐れはしません。どうか連れて行ってください。お願いします。」
魔王「…わかった。ついてきていい。だが、危険を感じたらすぐに下がってくれ。」
トロル「ああ、わかった。」
デュラハン「主に守られなければならないというのは、騎士道にはんするような気がするが…
主がそう言うのだから、仕方ないな。」
魔王「…それでは、行くとしよう。」
ー霧の迷宮ー
魔王「…やはり中は綺麗なんだな。」
人狼「律儀に通路にはろうそくで火まで灯されてるしな。やはり、誰かいるようだな。」
魔王「そうだな。…何があるかわからないから、気をつけていくぞ。」
スライム・紫「わかったわかった♪」
火のエルフ「…あっ、危ないッ!」
スライム・紫が一歩踏み出した途端、スライム・紫のいる床に、赤い魔方陣が現れた。火のエルフは
とっさにスライム・紫を突き飛ばし、魔方陣から遠ざけた。すると間もなく、その魔方陣から真紅の
灼熱の炎が吹き出した。
火のエルフ「だっ大丈夫!?」
スライム・紫「…う、うん……。」
デュラハン「一瞬の事で何が起きたのかさっぱりわからなかったのだが…なにがあったんだ…?」
魔王「…魔術トラップか…厄介だな…。」
ドワーフⅡ「魔術トラップ?…ってなんですか?」
魔王「特定の条件が揃った時のみ発動する、設置型の魔法の事だ。主に罠として使われる。」
魔王「相当のレベルがなければ使う事は出来ない魔法だから、あまり見る事はないだろう。」
ボーンナイト「そんなのがあるんですね。初めて見ました。」
魔王「どうやら、その魔術トラップがここには山ほど仕掛けてあるらしい。」
デュラハン「…そうなのか。だとするとうかつに動けないな。」
魔王「どこに仕掛けてあるのか調べるから、その場から動かずじっとしていてくれ。」
魔王「2メートル30センチ先に、氷の魔術トラップが1つ、そこから75センチ右に雷の魔方陣が2つに…
後、5メートル40センチ先にも風の魔術トラップが2つ…」
火のエルフ「…凄い数ですね。この通路だけでもそんなにあるんですか。」
魔王「一応この通路にあるトラップの位置は全て把握した。私の後をゆっくりついてきてくれ。」
魔王「私の通る場所にはトラップは無いはずだから安心してくれ。」
スライム・青「わかった!」
魔王「それでは行くとしよう。」
ー10分後ー
魔王「…二股にわかれているな。」
デュラハン「迷宮と言われるくらいだからな。この程度は当然だろう。」
魔王「そうだな。…さて、どちらから行く?」
トロル「…ダンジョン攻略と言えば、左の壁をつたって歩くのが普通でしょ。」
ゴーレムⅠ「…。」
ゴーレムⅠはその案に賛成だ…と言っているようだ、
魔王「なら、最初は左の道を行くとしよ…「待て!」
???「…お前たち…侵入者だな…?」
魔王がゆっくりと後ろを振り返ると、真紅の髪を腰までのばした、一人の女が立っていた。
腰には自分の背よりも長い黒い剣を持っており、全身の傷は歴戦の戦士であることを物語っていた。
魔王(…もう発見されたか。マズいな…ここは罠だらけの通路、相手がこの魔法の術者なら、全ての
位置を完全に把握している上、自分が踏んでも効果はない。)
魔王(ここで戦うのは非常に不利だ…かといって逃げる訳にもいかない…どうする?)
???「よくここまでたどり着いたものだ。ここに人が来るのは何十年ぶりだろうか?」
???「…貴様…何者だ…?」
???「ここに来るまでにいくつもの幻術魔法が仕掛けてあったはずだ。」
???「それがあったにも関わらず、ここまでたどり着いたのだから、さぞ名のある戦士なのだろう。」
???「その名前聞かせてはくれないかな…?」
魔王「…聞いてどうする?」
???「これから剣を交える相手の名くらい知ってもよいだろう。」
魔王「…戦いは避けられない、という事か?」
???「そうだな。ここを知られた以上、生かして帰す訳にはいかないからな。」
魔王「…一つだけ質問してもいいだろうか?答えてくれれば名を名乗ろう。」
???「…これから死にゆく相手に何を聞かせても問題あるまい。いいだろう。その質問とやらに
答えてやる。」
魔王「幻術魔法を仕掛けたのはお前か?それとも別の誰かが仕掛けたのか?」
???「…私はあまり魔術に興味はないのでな。剣と己れの体一つで戦うのが面白いのだよ。」
???「幻術魔法も魔術の罠も迷宮の風化を抑えているのも私では無い。私にはあれほどの大魔術は
使えん。…どうだ?満足したか?」
魔王「ああ、その答えで満足だ。」
???「…では、約束通り名を名乗ってもらおう。」
魔王「…私は魔王。魔族の王だ。」
???「…ッ!?魔王…だと!?」
???「…嘘をつくな!魔王様はとうの昔に死んだわッ」
魔王(魔王様?どういう事だ…?)
???「魔王様の名をかたるふとどき者め!我が名は龍騎士。貴様を我が剣の錆にしてくれる!」
魔王「龍騎士?…魔族だったのか!?」
龍騎士「そうだ。ここは遙か昔、この世界を支配した魔族の一族である、ドラゴンの国だ。」
魔王「ドラゴンの国…だと?」
龍騎士「…魔王様がこの世を去ってから、我等魔族は人間達によって殺されてゆき、残った者はこうして
山の奥になど身を隠し、ひっそりと暮らしているのだ。」
龍騎士「…その生活さえも貴様等人間は許さないと言うのか!?」
魔王「待て!私は人間ではない。本当に魔族なのだ!…見ろ、この魔物達が見えないのか!」
龍騎士「うるさいッ!魔族の癖に人間の味方になろうとは…いい度胸じゃないか。貴様等全員まとめて
殺してやる!」
龍騎士「貴様等は絶対に生きて帰さん!興味本位でここに来てしまった事を後悔しながら
地獄に落ちろ!」
魔王(…どうやらこれ以上話しても無駄なようだな…私が本当の魔王だと証明する術もないし…)
魔王(だがそれだけ尊敬されていたのかと思うと悪い気もしないが、今はそれよりもこの場をなんとか
切り抜ける方が先決だ。)
魔王(相手は幻術魔法を使った魔導士ではないらしいが、龍族だ。龍は戦闘に長けた魔族の中でも
最も優れた一族。その上、この龍騎士は相当のレベルのようだ。)
魔王(…普通に戦えば負けることはないだろうが、ここは敵陣のど真ん中だ。どこにどんな罠が仕掛けられて
いるかわからない。)
魔王(それに仲間を守りながらとなると、かなり厳しい戦いになるな…かといって、逃げたとしても
間違えなくすぐに追いつかれるだろう。)
魔王(さぁ…どうする?)
龍騎士「…覚悟はいいな…?魔王様の名をかたった罪は万死に値する!死ねッ!」
魔王「…仕方ない…しばらくそこでじっとしていてくれ。」
龍騎士「…自らが危機に瀕しているというのに、他人の心配とは余裕だな。」
魔王「余裕なんて全くないんだがな。お前と戦えば、今後に差し障るかもしれないしな。」
龍騎士「…ふっ…何を言いだすのかと思えば今後だと?貴様に今後はおろか明日すらない!」
龍騎士「覚悟しろッ!」
魔王「…すまんが、しばらくここで大人しくしていてくれ。拘束魔法!」
龍騎士「なっ…!?」
魔王が何か唱えると、龍騎士の足元に魔方陣が現れ、そこから淡い光を放つ輪が3つ現れた。
光の輪はゆっくりと龍騎士の足と腕を締め上げ、龍騎士の体の自由を奪った。
龍騎士「…くっ…卑怯者め!このような魔法で私を退けたつもりか?」
魔王「…いや、すぐにその拘束魔法も破壊されるだろうな。…なので、私はその間に先に進ませて
もらうとするよ。」
魔王「お前とは戦いたくないんでね。それじゃまたな。」
龍騎士「…私一人を倒しただけで先に進めると思うなよ?すぐに別のやつがくる。貴様の魔力も無限では
あるまい。…その戦い方が何時まで出来るかな…?」
魔王「まぁ魔力の量に関しては心配いらん。多分この世界でもっとも多くの魔力を持っているだろうからな。」
龍騎士「…大した自信だな。」
魔王「魔王、だからな。……それじゃ行くとしよう。」
龍騎士「魔王…ね。」
ー数時間後ー
魔王「ドラゴンとの連戦か…流石につかれるな。」
水のエルフ「大丈夫ですか?回復の魔法をかけましょうか?」
魔王「いや、大丈夫だ。…にしても、ここはどこなんだろうな?」
デュラハン「もう何時間も歩き回ってるっていうのに、何にもないな。」
魔王「まぁ迷宮だからな。そうそうは目的地には辿りつけないだろう。」
トロル「…にしても、さっきから同じとこばっか通ってるような気がするんだが…。」
ボーンナイト「トロルさん、貴方もですか?」
トロル「おお、お前もか!どうやら俺の気のせいではなかったみたいだな。」
人狼「…ずっと同じ景色だったから気づかなかったぜ。よくわかったな。」
トロル「まぁ何となくだ。魔王さんはどう思う?」
魔王「そうだな。確かにそうかもしれん。…だが、かと言って何か不自然なところがあった訳でもないしな…。」
スライム・赤「隠し通路があるんじゃないかな?探してみようよ!」
魔王「隠し通路か…そうだな。さがしてみるとしよう。」
魔王がゆっくりと目を瞑ると、魔王のの右眼が再び光を放ち始めた
魔王「…ふむ、ここにはないようだな。」
デュラハン「…それ前にも聞こうと思っていたんだが、何を見ているんだ?」
デュラハン「右眼が光ってる時だけ、何か違うものを見ているようだが…?」
魔王「ああ、これか。これは普段目に見えない物を見えるようにする力だ。」
木のエルフ「かわった魔法があるんですね。」
魔王「正確には魔法ではないんだが、まぁ似たような物だと思って間違いない。」
トロル「…それで、見えないものが見えるようになるって具体的にどんなものが見えるんだ?」
魔王「…口で説明するのは難しいのだが、私の右眼は幻術魔法などの視覚的な妨害を一切受け付けないのだ。」
魔王「他にも壁の向こう側を見ることなども可能だ。どこに隠れていても、私には見えないものはない。」
魔王「もちろん、いくつかの制約はあるがな。」
ボーンナイト「…凄い能力ですね。流石は魔王様です。」
魔王「別にそこまで凄くもないと思うがな。」
水のエルフ「そんな事ないですよ。こうして隠し通路を探すのにも役に立っている訳ですし。」
魔王「まぁそうだな。……ん?」
デュラハン「…?どうしたんだ?魔王よ。」
人狼「なにかあったのか?」
魔王「…どうやらここに隠し通路があるらしい。」
ドワーフⅢ「本当ですか!?」
魔王「ああ、だがここは何かを動かさないと開かない仕組みのようだ。」
デュラハン「…何かとは?」
魔王「そこまではわからん。だが、どこかにこの扉を開く為のスイッチがあるはずだ。」
魔王「それを見つけない事には先には進めないだろう。」
トロル「…別にこの壁くらい壊しちゃえばいいんじゃない?壁一枚くらい壊したって問題ないだろ。」
魔王「…いや、やめといた方がいいだろう。」
トロル「?…なんで?」
魔王「よく考えてみろ。ここは敵地のど真ん中だぞ?ここで大きな魔法を使ったらどこにいるのか
気づかれてしまうだろう。」
魔王「今までは一人ずつだったからいいが、集団で襲ってきたら一溜まりもないぞ?」
木のエルフ「そうですね。壁を壊すのはやめておきましょう。」
トロル「…魔王様がそう言うなら仕方ねェ…。」
魔王「それでは、探すとしよう。」
ー30分後ー
デュラハン「…にしても、見つからんな。どこにあるんだ?そのスイッチとやらわ。」
土のエルフ「そう簡単には見つけられないでしょう。なんせ隠し扉なわけですから。」
ドワーフⅠ「魔王様のさっきの眼の力でスイッチは探せないんですか?」
魔王「…まぁ無理だろう。」
デュラハン「…?何故なんだ?」
魔王「こういう隠し扉のスイッチというものは、スイッチ自体隠されてない場合が多いのだ。」
トロル「…?どういう事?」
魔王「スイッチは普通のレンガと同じ色をしていて、パッと見はどこにあるのかわからない、というような
感じだ。…つまり、スイッチ自体は視界に入っているが、それをスイッチだと認識出来ていないのだ。」
魔王「そういうものに対しては、私の瞳の力は効果が無いのだ」
人狼「…何となくは理解できた。ようはスイッチ自体はそこにあるんだが、スイッチには見えない、と言う事
だな。そして、その手のものには魔王の瞳のは効かないんだな。」
魔王「そういうことだ。すまないが自力で探してくれ。」
スライム・黄「わかった!僕頑張るよ!」
ー2時間後ー
デュラハン「…ん?なんだこれは?」
デュラハンが巨大な龍の像の後ろにある小さなボタンを押すと、龍の像の足元に階段が現れた。
デュラハン「…隠し階段か。ここは魔王も見つけていなかったようだな。中に入ってみるか。」
ー石像の隠し部屋ー
デュラハン「…中は結構広いんだな。」
デュラハン「…ん?何だ…これは…?」
隠し部屋にはレバーが一つあるだけで、他には何もなかった。
デュラハン「…動かしてみるか。」
デュラハンが力一杯レバーを引くと、どこからともなくゴゴゴゴ…という大きな音がした。
デュラハン「これで隠し扉は開いたのか?見に行ってみるとするか。」
ー霧の迷宮 無限の通路ー
魔王「おお、デュラハンか。見ろ、隠し扉が開いたぞ。」
デュラハン「どうやらそのようだな。やはり、あのレバーがこの扉を開く為のスイッチだったようだな。」
魔王「やはりお前がやってくれたのか。流石だ。」
デュラハン「いや偶然見つけただけだ。…それじゃ、先に進もうぜ。」
魔王「ああ。そうだな。…そろそろ最下層についてくれると有難いのだがな。」
トロル「隠し扉まであったんだ。もうついてもおかしくはないと思うぜ。」
火のエルフ「そうですね。後もう一息です。頑張りましょう!」
ー数時間後ー
魔王「…どうやらもうすぐ最深部につくだろうという予想は、完全にはずれていたらしいな。」
人狼「そのようだな。…それにしても、随分と長いんだな。迷宮と呼ばれるだけはあるな。」
魔王「隠し扉以外にも、めちゃくちゃに絡まった毛糸のように不規則に中に浮かぶ階段や、無数の扉が
並ぶ部屋、異常に罠の多い広い通路なんかもあったな。」
土のエルフ「そうですね。…大変ですが、頑張って行きましょう。」
デュラハン「………。」
トロル「どうしたんだ?デュラハン。さっきから何か考え事をしているようだが…?」
デュラハン「…罠の多い通路を通ってから、敵と全く出会わなくなった。」
木のエルフ「…そう言われればそうですね。先程から敵の気配を全く感じませんね。」
デュラハン「おかしいと思わないか?…少しずつではあるが、確実に前に進んでいるはずなんだぜ?」
デュラハン「それなのにもかかわらず、敵が出てこなくなるなんて…普通に考えておかしいだろう。」
魔王「確かにそうだな。…先程から一切敵に出会ってないな。」
人狼「…あまり考えたくはないが、これはもしかすると相手の罠にかかっているのかもしれんな。」
魔王「…そうかもな。…だが、そうだとしても今から引き返す訳にもいかんだろう。」
魔王「気にせず進むしよう。」
ドワーフⅠ「そうですね。敵が出てこないのは、こちらにとってはむしろ好都合です。頑張って先に進み
ましょう!」
デュラハン「…そうだな。変な事を言って不安を煽ってしまい、申し訳ない。」
魔王「いや、デュラハンの言っていることが間違っているとは限らない。」
魔王「敵が出てくるか出てこないかに限らず、細心の注意をはらって進むとしよう。」
ー霧の迷宮 大広間ー
魔王「凄い広さだな…私の住んでいた魔王城も、ここまで広い部屋はほとんどなかったぞ。」
スライム・赤「凄いね!広いね!」
人狼「…ん?彼処に一際大きな扉が見えるが…。」
人狼が指差す方向には、今まで見たことがないほどの大きさの頑丈そうな扉があった。
魔王「…随分と頑丈そうな扉だな。これなら大魔術を防ぐ事も出来そうだな。」
トロル「…ここに来てこの大きさの扉って事は…いよいよ最下層なのか?」
デュラハン「そうだといいな。…魔王、さぁいこうか」
魔王「…ああ、わかった。みんな、いくぞ!」
魔王はゆっくりと扉を開き、中へと入っていった。
水のエルフ「…真っ暗…ですね。」
木のエルフ「何も見えませんね…なにかあるのでしょうか?」
人狼「…気をつけろ…何か、何かとても嫌な予感がする。」
トロル「…奇遇だな。…俺もだぜ…!」
トロルがそう言った次の瞬間、真っ暗な部屋に一斉に明かりが灯った。
今日はこれくらいで終わります。また時間があったら書きますね。読んでくれてありがとう。
ー龍の地下帝国ー
魔王「…やはり、罠だったか・」
デュラハン「…どうやら…そのようだな。」
魔王達の目の前には、武装した数十人の龍の戦士達の姿があった。
龍騎士「…フフッ…罠と知っていてここまで来るとは…馬鹿などと言う言葉では語れないほど
愚かだな。偽りの魔王よ。」
トロル「お前はさっきの!」
火のエルフ「こちらの動き全て筒抜け、という事ですか…。」
龍騎士「貴様達がここに向かっていることは知っていたのでな。先回りさせてもらったよ。」
龍騎士「…さて、無意味な雑談はこれにて終了だ。……ここまで来た、と言う事は覚悟は出来て
いるんだろうな…?」
魔王「…出来れば戦いたくはなかったが…どうやらそれは叶わぬ夢のようだな。」
龍騎士「…それでは遠慮なくいかせてもらうぞ…!行けッ!」
ー30分後ー
龍騎士「…くっ……つ…強い…!」
デュラハン「…はぁはぁ、くっ…終わった…のか?」
魔王「みんな無事か?」
火のエルフ「…ええ……なん…とか…。」
トロル「…魔王さん…やっぱあんた強い…な。見直したぜ…。」
龍騎士「…この数相手に一人で勝つとは…貴様、本当に魔王…なのか…?」
魔王「…そうだと何度も言っただろう。私が魔王だと。」
龍騎士「…そう…だったのか…。…ご無礼を…お許し……。」
龍騎士は気を失ったようだ。
魔王「…これで先に進めるぞ。後もう少しだ。頑張って先に進むぞ。」
ドワーフⅡ「…それにしても凄いところですね…ここ。」
デュラハン「そうだな。…まさか地下にこんな大きな城があるとはな…。」
魔王「まさに地下帝国と言う感じだな。…やはり、魔王軍の拠点はここにするとしよう。」
土のエルフ「そうですね。ここならそう簡単に人間に発見される事もなさそうですし、
魔王軍の拠点には相応しい場所ですね。」
スライム・赤「そうだね!そうと決まったら、ここの王様と話をつけちゃおうよ!」
スライム・緑「魔王様が復活したって聞いたら、ここの王様もきっと喜ぶよ!」
デュラハン「…そう簡単に行けばよいのだがな。」
人狼「…そうだな。さっきの龍騎士の件もあるし、魔王が魔王であると信じてもらえる可能性は
かなり低い。…最悪、戦う事になるかもな。」
魔王「そうだな。…まぁ、心配するな。私は魔王だ。相手が誰であろうと負けはせん。」
デュラハン「…そうだったな。…余計な心配だったな。」
魔王「…いや、気にするな。」
魔王「…個人的にはここの主が誰であるかというよりも幻術魔法の術者が誰であるかの方が
気になるんだがな。」
木のエルフ「…?どういう事ですか?」
ボーンナイト「…幻術魔法?確かさっきもそのような事を言っておられましたが…。」
魔王「……いや、気にするな。何でもない。」
木のエルフ「…わかりました。魔王様も何か深い考えがあっての事でしょう。」
スライム・緑「えー。なんでぇ?気になるじゃんー?トロルもそう思うでしょー?」
トロル「あ?俺?…まぁ気にならないと言えば、嘘にはなるが…だがしかし…。」
水のエルフ「ちょっと、トロルさんまで!」
魔王「…わかったわかった。ちゃんと話すから。」
スライム・黄「やったー!」
土のエルフ「…まったくもう。なんでそんなに魔王様を困らせるんですか…。」
ー数分後ー
魔王は霧の迷宮に向かう途中で、強力な幻術魔王が仕掛けてあった事を話した。
デュラハン「…なるほどな。そういう事か。」
魔王「…ああ、それで重要なのはここからだ。」
魔王「先程の戦いを見てわかったかもしれないが、龍族は基本的に魔法は使わない、
というか使えないのだ。」
魔王「当然、この迷宮そのものの風化を防いだり、広範囲にわたる幻覚魔法の使用など、
常識的に考えてまずありえない。」
魔王「…まぁ例外的に使えるやつもいるが、これほどの大魔術は使えるとは思えない。」
トロル「…なるほどな。…なら、龍族以外の何かがいる可能性が高いって事か。」
魔王「そういうことだ。龍の国の王は龍族だろう。…よって、龍の王以外にも強力な敵がいる可能性が
ある、という事だ。」
ボーンナイト「…なるほど。ここ一帯を幻覚魔法で覆い、なおかつ迷宮の風化を防ぐ事の出来る程の
大魔導士、ですか。」
トロル「…そんな奴本当にいるのかよ…?もしいたら、魔王様クラスじゃないのか?」
魔王「そうだな。私と同等でなければ不可能だろう。」
デュラハン「…迷宮の風化と幻術魔法の術者が別という可能性はないのか?」
魔王「…そこまではわからん。…だが、ここから先は今まで以上に危険だ。」
魔王「すまないが、ここで待っていてくれ。」
火のエルフ「…わかりました。私達がついていっても足手まといになるだけですしね。」
ゴーレムⅡ「…。」
ゴーレムⅡは頑張れ…と言っているようだ。
魔王「…ありがとう。それでは行ってくる。」
魔王が先に進もうと城に向かって一歩踏み出したその時、どこからともなく女の声が聞こえた。
???「…これ以上は進ませませんよ。侵入者さん。」
魔王「…何者だ?」
人狼「…どこに隠れている…?出てこい。」
???「…何者か、ですか?…それはこちらの台詞でしょう。」
再び女の声が聞こえたかと思うと、魔王たちの目の前に一人の人間が現れた。顔はフード
を深くかぶっており、こちらから伺うことは出来ず、なんとも言えない雰囲気をまとっていた。
???「…初めまして。侵入者さん。私は龍の王に仕える側近、と申します。」
人狼「…気をつけろ、尋常じゃない魔力を感じるぞ。」
スライム・青「こっ…怖いよう…。」
魔王「…側近だと?」
側近「…ええ、仕える主はとうの昔にいなくなってしまわれましたが、私が側近であることにかわりは
ありません。」
魔王「ふっ…そうか。生きていたのか。側近よ。」
トロル「!?」
ドワーフⅢ「どっ…どういう事ですか…?」
側近「……おや?どこかで聞いたことのある声ですね。…貴方は一体…?」
魔王「私は魔王。数百年の封印を解き、再び現世に蘇った。」
側近「…!?」
側近「…本当に魔王…様……なんですか…?」
魔王「そうだ。久しいな側近よ。」
デュラハン「知り合いだったのか?」
魔王「ああ、そうだ。まぁ昔の知り合いだ。」
側近「…本当に魔王様なんですか?」
魔王「そうだと言っているだろう。…あいにく私が魔王であると証明出来るものは、なにも持ち合わせて
いないんだ。」
魔王「すまないが、今は通してくれないか?」
側近「…いいでしょう。信じます。…ですが、もしも貴方が偽者だと判明した場合、その場で殺します
からね?いいですか?」
魔王「ああ、わかった。信じてくれてありがとう。」
側近「…いえ。お連れ様もご一緒についてきてください。」
なんか失敗した感がハンパじゃないな…ストーリーが全然進まず申し訳ない。
続きはまた明日書きます。
ー龍の地下帝国 龍王の城ー
人狼「…やはり龍の王と言うだけあって、立派な城に住んでいるんだな。」
ドワーフⅠ「そうですね。…あの、魔王様一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
魔王「ん?なんだ?」
ドワーフⅠ「ここの城の主も魔王様の知り合いの方なんですか?」
魔王「さぁな。私の部下にも龍王と言うのはいたが、同一人物かどうかまではな。」
ドワーフⅠ「そうでしたか。ありがとうございます。」
魔王「側近よ。龍王はやはり魔王軍四天王の龍王なのか?」
側近「ええ、そうですよ。龍王様は旧魔王軍の生き残りの一人です。」
魔王「そうだったのか。他の四天王はどうなったんだ?…他にも生きているやつはいるのか?」
側近「…そこまでは。獣王様と妖精王様は、魔王様が封印される前から既に姿をお見かけしませんで
したし、不死王様は魔王城崩壊の時にはぐれてしまい、それ以来…。」
魔王「…なるほど。そうだったのか、ありがとう。」
側近「いえ。……到着しました。ここが龍王様のお部屋です。」
ー龍の地下帝国 龍王の城 玉座の間ー
側近「…失礼します。側近です。」
龍王「…側近か。…随分とたくさんの客人を連れてきたようだが…。」
そこには白髪の杖をついた一人の老人の姿があった。しかし、その容姿とは打って変わって
目は輝きを放っており、年齢を重ねた者のみが得られる、威厳のようなものを纏っていた。
側近「…魔王を名乗る男と、その男の手下の魔族です。」
龍王「…ほう…魔王か。その名を聞くのは何百年ぶりだろうな…。」
魔王「久しいな、龍王よ。お前の顔を見ることなど、二度と無いと思っていたのだがな…。」
龍王「…私もだよ魔王。その声といい、姿といいまさしく魔王だ。…まぁ威厳に欠けるのは相変わらず
のようだがな…。」
魔王「魔王である私に、躊躇いも無く皮肉を言うところも変わらんな。…まぁそんな事はいいだろう。」
魔王「…随分と簡単に信じるんだな。私が魔王であると。」
魔王「側近のやつはいまだに半信半疑といったような感じだというのに…。」
龍王「…ここまでたどり着いた時点で、人間で無いことを証明しているようなものだ。」
龍王「仮に偽者であったとしても、魔王になるつもりがあるのなら、ついて行っても思っている。」
魔王「…随分と薄っぺらい忠誠心なんだな。こんなやつを四天王にしていたのか、私は。」
龍王「冗談に決まっているだろう。…長年の付き合いがあったのだ。貴方が本物の魔王で
あることぐらい、私にはわかる。」
魔王「そうか。私を信じてくれるのだな。助かるよ。…側近、これで私が魔王であると信じてくれたかな?」
側近「はい。疑ってしまい申し訳ありませんでした。」
龍王「…いや側近が疑うのも仕方ないというものだろう。…本当なら魔王が復活するのは
もう百年先の話のはずだったのだからな。」
龍王「想像以上に魔王の魔力が強すぎて、封印が解けるのが早まったのだろう。」
魔王「…なるほど。そういう事だったのか。」
龍王「…それで、一つ質問してもいいかな?魔王よ。」
魔王「ん?別にいいが。」
龍王「単刀直入に聞こう。ここには何をしにきたのだ?」
魔王「魔王軍を再び作る為、に決まっているだろう?」
龍王「…ほぅ…魔王軍を再建するとな…?」
魔王「当然だ。魔王として生まれた以上、やることは常に一つだ。」
魔王「…当然元四天王であるお前には協力してもらう。」
龍王「拒否権はなさそうだな。」
魔王「当たり前だ。私を誰だと思っているんだ?」
龍王「ふふふっ…それでこそ、我等が魔王よ…!」
ーキャラクター紹介ー
魔王…年齢??? 性別男 レベル???
世界を再び征服すべく、動き出した魔族の王。魔王の力を使い、魔王軍の再建を企てている。
旧魔王軍四天王の龍王とその手下、そして魔王の側近を再び仲間に加える事に成功した。
側近…年齢??? 性別女 レベル???
魔王の側近にして魔王軍の実質的な司令官をつとめていた女の魔族。魔王に限りなく近い
存在で、権力だけでなく純粋な力においても旧四天王を上回る程の強さをほこっている。
ちなみに、霧の迷宮を包んでいた幻術魔法などの術者は彼女。だが、自ら戦う事はほとんどなく
あくまで魔王の側近として働いている。魔王封印後は、龍王とともに魔王の復活を待っていた。
龍王…年齢??? 性別男 レベル???
龍の地下帝国の支配者にして、旧魔王軍四天王の一人。普段は老人の姿をしているが、
戦闘の時は巨大な龍に変身する。魔王封印後は側近とともに地下の迷宮を作り、
魔王の復活を待っていた。
ー魔王軍構成ー
魔王…1 その他幹部…2 妖精族…4 不死族…2 獣族…6 龍族…35
魔王軍平均レベル…32
ーその他サブキャラクター紹介ー
龍騎士…年齢246 性別女 レベル63
龍の国の騎士団長をしている女のドラゴン。龍王と側近を除けば最強。普段は霧の迷宮の
警備を主にしている。人間の事は快く思っていないようだ。
ー翌日ー
側近「…お目覚ですか?魔王様。」
魔王「…側近か。」
側近「朝食の用意が出来ましたが、どうされますか?」
魔王「ああ、今行く。」
側近「承知しました。それと、龍王様が魔王様に話したい事があるので、自分の部屋に
朝食後来てくださいと…。」
魔王「わかった。後で行くと龍王に伝えてくれ。」
側近「かしこまりました。」
側近「
ー30分後 龍王の部屋ー
魔王「待たせてすまない。」
龍王「いや、こちらこそ朝早くから呼び出して申し訳ない。」
魔王「それで、なんのようだ?龍王よ。」
龍王「何って…今後の事に決まっているだろう。魔王軍を再建するんだろう?そんな大きな仕事
予定もたてずにする訳にはいかんだろう。」
魔王「そうだな。破壊も最も得意とする龍王にしては珍しく、建設的な意見だな。」
龍王「…破壊が得意って…そのように見られていたのか…私は。」
魔王「冗談だ。…それでどうする?」
龍王「…そうだな。やはりもう少し軍の増強が必要だな。」
龍王「少数精鋭は嫌いじゃないが、人間と全面戦争するには少なすぎるな。」
魔王「そうだな。だが数は私の力を使えばいくらでも増やせるし、そこまで難しい問題ではないな。」
龍王「そうだったな。お前は無限に魔物を生み出せるんだったな。」
龍王「昔は何とも思わなかったが、よくよく考えてみたら恐ろしい能力だな。」
魔王「魔王だからな。そのくらいは出きるさ。」
龍王「数の問題はいいとして、後は兵一人一人の強さだな。」
魔王「そうだな。やはり数が多いだけではダメだ。魔王軍の名に相応しい強さを兼ね備えて
もらわないとな。」
龍王「幸いここは必要以上に広く作ってあるからな。戦闘の訓練くらいなら問題なく出来る。」
魔王「そうか。なら兵の訓練も問題なさそうだな。」
龍王「まぁ後は食料とかの問題は、森で集めればいいし特に問題はないな。」
魔王「…予想以上に事がうまく進むな。まぁ嬉しい限りなのだが。」
龍王「500年以上封印されていたやつが何を言う。お前ほど運の無い男もそうはいないぞ。」
魔王「ふふふっ…そうだったな。」
龍王「まぁ、そうと決まれば早速実行だ。とりあえず、一ヶ月程今決まった事をやってみるとしよう。」
龍王「それで成果が出ればそのまま続け、出なければ予定を見直す、これでいいか?」
魔王「ああ、そうしよう。」
龍王「…魔王軍再建か…面白い事になってきたではないか。老人の暇つぶしには持って来いだな。」
魔王「老人か…不老の時の中で生きているくせによく言う。」
龍王「ふっ…気にするな。」
魔王「さて…何から魔物を生み出すかな?」
側近「そうですね…とりあえず、魔法を使用できる者がもう少しいたほうがよいのでは?」
魔王「そうだな。…おっと、その前に少しやってみたい事があるのをすっかり忘れていた。」
側近「やりたいこと…ですか?」
魔王「ああ、少し待っていてくれ。」
魔王は迷宮の壁に手を当てると、全身の魔力を壁に込めた。
側近「まっ…魔王様!?一体何をされるおつもりなんですか!?」
魔王「まぁ見ていろ。すぐにわかるさ。」
しばらくすると、地面大きなから音が聞こえはじめ、その直後魔王の手から黒い煙が吹き出し、
あたり一面を包んだ。
側近「げほっ、げほ…一体…何が…?」
魔王「…うーむ…失敗だったか?」
側近「魔王様、一体何をされたのですか?」
魔王「…いや、普段魔物を作り出す要領で、迷宮そのものを魔物に出来ないかと思って、
やってみたのだが…どうやらそこまでは出来ないようだな。」
側近「迷宮を魔物化って…なんて無茶を…。」
魔王「まぁ物は試しというやつだ。気にするな。」
ー10分後ー
側近「…あら?」
魔王「どうかしたのか?」
側近「…あ、いえ。何でもありません。」
魔王「…そうか。ならいいのだが。」
ー30分後ー
魔王「…側近よ。まだつかんのか?」
側近「………。」
魔王「…。」
ー1時間後ー
側近「…おかしい。やはりおかしい。」
魔王「はぁはぁ…いつになったらつくのだ…?側近よ…?」
側近「申し訳ありません。…道に迷いました。」
魔王「なっ…!?」
側近「…迷宮の構造が完全に変わってます。」
魔王「そんな馬鹿な…!?」
側近「…ええ、ですが本当ならここが地下帝国への入り口のはずなのですが…。」
魔王「行き止まりではないか!」
側近「ええ。ですから、迷宮の構造が変わっています。」
魔王「お前が単に道に迷っただけではないのか?」
側近「…私はここにもう500年近く住んでいます。今更道に迷うことはないかと。」
魔王「…だが、迷宮の構造がかわるなどありえないだろう。なぜ、そのような事が…?」
側近「少し考える時間をください。なんとかしてみせます。」
魔王「ああ、頼んだ。」
ー5分後ー
側近「…原因が何となくわかりました。」
魔王「おお!本当か!それで、原因というのはなんだ?」
側近「…いえ、まだはっきりとはわかりませんが、少し試したい事があります。」
魔王「試したい事…?」
魔王がそう言った次の瞬間、側近は火属性の魔法を、迷宮の壁に向かってはなった。
側近の魔法はレンガを焦がし、少しだけ壁を壊した。
魔王「なっ…いきなり何を?」
側近「…少し見ていてください。」
そう言うと側近は今度は焦げた壁に向かって、回復の魔法をはなった。淡い緑の光が焦げた壁
を包むと、瞬く間にこわれた壁が修復した。
魔王「…回復魔法で壁が元通りになるとは…側近、凄いな。」
側近「いえ、そうではなくて。…壁が元通りになったのは、私の魔術の力ではありません。」
魔王「そうなのか。…だが、回復魔法の効果があるのは生きている者に限られていたはず…。」
側近「ええ。生きているものにしか効果はありません。」
魔王「…まさか。」
側近「多分そうでしょう。」
魔王「…だが、さっきのアレは失敗したはず…?」
側近「それは我々が失敗したと思い込んでいただけで、成功していたのかもしれませんよ?」
魔王「…だが迷宮そのものが魔物になるなど…。」
側近「…そうなるようにした貴方自身が疑ってどうするんですか…。」
魔王「わかった。では仮にこの迷宮が魔物になっていたとして、どうやって帰るのだ?」
側近「…そうですね。迷宮に頼み、地下帝国入り口まで通してもらうか、迷宮を倒し元の姿に
戻すか、この二つしかないかと。」
魔王「…仕方ない。迷宮のやつに頼んで通してもらうか…。」
側近「そうですね、そうしましょう。」
ー数時間後ー
魔王「…はぁ…疲れた。」
側近「お疲れさまです。魔王様。」
魔王「全く…なんで迷宮の出口に案内してもらう為だけに、何時間も説得しなければならんのだ。」
側近「…あまり魔王様の事を迷宮は信頼していないようですね。」
魔王「つい先日ここに来たばかりだからな…それも仕方あるまい。」
魔王「まぁいずれは信じてもらえるようになるはずだ。それまで根気よく待つとしよう。」
側近「そうですね。」
魔王「それでは魔物を作りに行くとしよう。」
ー夜ー
魔王「…今日の成果は、死霊の戦士2人に、地獄の大樹1体、それとフェアリーナイトが3人か。」
魔王「まずまず、といったところか。」
側近「そうですね。この調子でどんどん増やしていきましょう。」
側近「魔王軍の復活も、そう遠くはないと思いますよ。」
魔王軍兵数…54 平均レベル…28
ー1週間後 帰らずの森ー
魔王「…ここにある物から作れる魔物は一通り作った感じだな。」
側近「そうですね。後は数を増やすだけですね。」
魔王「…それもよいのだが…それだと少し兵の種類が偏るような気がするのだが…。」
側近「確かにそうですね。魔族の武器の一つである、魔術を使える兵もまだ少ないですし…。」
魔王「やはり、少し違う物から魔族を作ってみるとしよう。」
側近「…違う物…ですか?」
魔王「ああ。まだ試した事の無い物も色々あるからな。一旦地下帝国に帰るとしよう。」
側近「わかりました。」
ー龍王の城 玉座の間ー
龍王「…ん?何の用だ魔王よ。」
魔王「少し頼みがあって来たのだが。」
龍王「ふむ…頼みか。それでどんな頼みなんだ?」
魔王「何か珍しい物はないか?私でも見たことのないような。珍しい物だ。」
龍王「珍しい物、か。まぁ無いことは無いが、何に使うのだ?」
魔王「魔物を生み出す為だ。」
龍王「…魔物を生み出すのに、何故珍しい物が必要なのだ?」
魔王「まぁ理由を説明すると少し長くなるのだが、いいか?」
龍王「私は基本的に暇だからな。何時間だって付き合ってやる。」
ー数十分後ー
龍王「なるほど。そういう理由か。わかったついてこい。」
魔王「物分かりがよくて助かる。」
龍王「お前の考えていることなど理解したくはないのだがな。」
ー龍王の城 宝物庫ー
龍王「…ここなら一つや二つ、お前の見たこともないような物くらいあるだろう。」
魔王「相変わらず趣味の悪い物集めているな…。」
龍王「…いくら魔王とはいえ、私の趣味までとやかく言われる筋合いはないな。」
魔王「別にとやかく言うつもりはこれっぽっちもない。ただ単に思ったことを言ったまでだ。」
龍王「そうかい。…それで何かめぼしい物はあったか?」
魔王「そうだな。とりあえずこの宝石類と、魔導書を使わせてもらうとしよう。」
龍王「…随分と沢山持って行くんだな。まぁいいが。」
ー龍王の城 龍王の部屋ー
龍王「それで、これらから魔物を生み出すのか?」
魔王「ああ。…私も色々試してみたのだが、宝石類はやってみたことがない事に気がついたのでな。」
龍王「宝石か…どんなのが出てくるのだろうな。」
魔王「それはやってみてのお楽しみ、というやつだろう。」
龍王「そうだな。それでは早速やってみてくれ。」
魔王「ああ、わかった。…では、とりあえずこの真紅の宝石から試してみるとしよう。」
龍王「ルビーか。どんな魔物が生まれてくるのだろうな。……そうだ。良い事を思いついたぞ、魔王よ。」
魔王「ん?なんだ?」
龍王「そのルビーからどんな魔物が生まれてくるのか、賭けないか?」
魔王「…ほぅ…面白そうじゃないか。いいだろう。何を賭ける?」
龍王「そうだな。…もし私が賭けに勝ったら、側近は私の物だ。お前が勝ったら、龍騎士はやろう。
どうだ?いい賭けだろう?」
魔王「なかなか面白いが、却下だ。側近はやらん。」
龍王「…ふん。面白くない奴め。」
魔王「それでは、始めるぞ。」
魔王は大きなルビーに魔力を込めた。煙が部屋を包み、なかから血のような赤い瞳の
巨大な鳥が現れた。
魔王「…ほぅ、これはなかなか強そうではないか。」
龍王「あのルビーは惜しかったが…まぁそれ相応の魔物が生まれたようだな。」
魔王「そのようだな。…お前、名は何という?」
朱雀「私は朱雀。炎を司る鳥です。」
魔王「朱雀、か。私は魔王。全ての魔族を統べる者だ。よろしく。」
朱雀「こちらこそ宜しくお願いします。」
龍王「なかなか幸先いいじゃないか。あんなのが沢山生まれてくるのかと思うと、身震いが止まらんわい。」
魔王「そうだな。朱雀か。結構強そうだったな。レベルを上げれば四天王クラスにはなれるかもしれん。」
龍王「四天王だと?ふっ…あんな若造が四天王になど…。」
魔王「何をそんなに意地を張っているのだ、龍王よ。」
龍王「意地など張っておらん。ただ事実を述べただけだ。」
魔王「ふふふっ…そうだな。」
ー数時間後ー
魔王「ふぅ…流石に疲れたな。」
龍王「お疲れさん。なかなか面白い物を見せてもらったぞ。これで少しは魔王軍って感じになってきたな。」
魔王「そうだな。玄武に朱雀、白虎に青龍、麒麟。後、他にも色々あったな。」
龍王「どれもなかなか強そうだったじゃないか。この調子で明日も頼むぞ。」
魔王「別にお前に頼まれずともやるわい。」
龍王「そうか。それはよかった。」
魔王軍兵数…94 平均レベル…22
ー一ヶ月後ー
龍王「…一ヶ月か。」
魔王「そうだな。まさか一月でここまで魔王軍が大きくなるとはな。」
龍王「お陰であんなにガラガラだった地下帝国は満員だ。」
魔王「ふふふっ…これで第一段階はクリアされたな。」
龍王「そうだな。…さて、そろそろ魔王軍らしい活動をしようじゃないか。」
魔王「まだだ。もう少し待て。」
龍王「ほぅ…まだ何かするのかね?」
魔王「ああ、当然だ。…魔王軍の復活を世に知らしめるには、それなりの余興と言う物が必要だろう?」
龍王「余興…か。ふふふっ…やはり魔王は一味違うな。」
龍王「それで、どうするつもりなんだ?」
魔王「やはり、大々的な宣戦布告は必要だろう。」
魔王「魔王軍が復活した事を伝えた上で、跡形もなく相手を叩き潰す。」
龍王「…奇襲ではなく、あくまでフェアな戦いで相手を倒すと?」
魔王「そういうことだ。自信に満ちた奴ほど、簡単に折れる物は無い。」
魔王「今の人間は、魔物など恐るるに足らぬ存在だと思っている事だろう。」
龍王「その常識を覆す事によって、より一層の恐怖を与えると?」
魔王「ああ、そうだ。…どうだ?楽しみになって来ただろう?」
龍王「ふふふっ…そうだな。楽しみだよ。」
魔王「…だが、やはりその前に今の人間達がどうなっているのか、知る必要があるな。」
龍王「そうだな。…やはり余興はその時代にあったものをしなければならないからな。」
魔王「そういうことだ。それに、私が封印される前と今では、国や街の場所が変わっている
可能性もあるしな。」
龍王「ああ、その可能性は高い。…そう言えば、私もかれこれ300年はここから出ていないな。」
魔王「…暇じゃないのか?」
龍王「別に何とも思わなかったな。私はこの世の娯楽の限りを尽くしたからな。今更外に出よう
が出まいが、暇であることにはかわらんからな。」
魔王「…いいご身分だこと。」
龍王「…まぁそんな事はどうでもいいだろう。」
魔王「そうだな。…やはり、情報収集は不可欠だな。」
龍王「ああ。それで、情報収集には誰が行くのだ?」
魔王「…やはり人間に近い姿をしている者が行くのが最も簡単だな。」
龍王「そうだな。万が一、何かの拍子に変化の魔法が解けたら、大変な事になるからな。」
魔王「そうなると、やはり龍族が最も相応しいか。」
龍王「ああ。…しかし、龍族はいかんせん血の気が多い。売られた喧嘩は必ず買うからな。」
龍王「情報収集という隠密の活動にはあまり向かないと思うが。」
魔王「…なるほど。そうなると…私かお前、そして側近という事になるが…。」
魔王「どうする?」
龍王「私なら行ってもよいが。…どうせ暇だった事だしな。」
魔王「…しかし、お前はこの国の王だぞ?国を離れるのはあまり良いことではないと思うのだが。」
龍王「今の王はお前だろう。私はもう王ではない。」
魔王「しかし…。」
側近「…私が行きましょう。」
龍王「…聞いていたのか側近よ。」
側近「盗み聞きするつもりはなかったのですが。」
魔王「よいよい。気にするな。…しかし本当にいいのか?」
側近「ええ。情報収集は得意ですし、問題ありませんよ。」
龍王「…そうか。わかった。では、頼んだぞ側近よ。」
側近「はっ!」
ー魔王軍構成ー
魔王1 幹部2 妖精族127 不死族87 獣族154 龍族42
平均レベル…27 兵総数…413
今日はこのくらいで終わります。また時間があったら書きますね。ここまで読んでくれてありがとう。
ー帰らずの森 霧の迷宮入り口ー
側近(…ああは言ったものの、私もかれこれ200年は森から出ていませんでしたし…。)
側近(昔の街が今でもあるのか少しあやしいですね…。)
側近(まぁ悩んでいても仕方ありません。とりあえず、ここから最も近い赤の街に行ってみると
しましょう。)
ー火の国領 赤の街ー
側近「……なんなですか…これは…?」
側近の知っていた赤の街はそこにはなかった。赤の街は瓦礫と死体があるだけで、建物は
全て焼け、何も残っていなかった。
側近(…どうやら我々の知らないところで、何か起こっているようですね。)
側近(…ここには誰もいないようですし、次の街に行ってみるとしましょう。)
ー火の国領 紅の街ー
側近「…どうやらこの街はまだ平和なようですね。」
側近「さて、情報収集を始めましょう…か……。」
町人Ⅰ「おっ、綺麗なねーちゃん発見ー!ねぇねぇよかったら俺と一緒に遊ばない?」
側近(…どの時代においても、こういう男はいるんですね…。)
町人Ⅱ「ねぇ~いいじゃんいいじゃん。ちょっとだけだからさー。ねぇ?」
側近(…とっとと追っ払って……いや待て、私の目的は情報収集だ。この男達だって、
この世界で生きている以上、ある程度の知識は持っているだろう。)
側近(…嫌だが、こいつらにしばらく付き合って、この世界の情報を集まるとしよう。)
側近「…わかりました。…私は旅人で、この街には今着いたばかりなんです。ですので、
この街の案内をお願い出来ますか?」
町人Ⅱ「オッケーオッケー!そうと決まれば早速案内してあげますよ!」
町人Ⅰ「ねぇねぇ!オススメの料理屋知ってるんだけど、後で一緒にいかない?」
側近「…ええ。お願いします。」
側近(…とりあえず、適当に話をあわせてこの世界の状態を聞き出すか。)
町人Ⅰ「それでさぁ、君ってどこの街から来たの?」
側近「赤の街です。」
町人Ⅱ「あ…そうだったんだ…ごめんね。」
側近「…いえ。」
町人Ⅰ「そ…それじゃ買い物にでも行こうか!せっかくこの街に来たんだし、買い物しなきゃ損だよ!」
町人Ⅱ「そうそう!とりあえずあの店行かない?君に似合う服がきっとあると思うんだ!ね?」
側近(…なかなかこれはこれで情報を聞き出すのは難しそうですね…。しかし、諦めるわけには
いきませんし、根気よくやるとしましょう。)
ー夜ー
側近「…今日は一日ありがとう御座いました。お二人のお陰で買い物も出来ましたし、本当に
ありがとう。」
町人Ⅰ「そんな事ないっすよ!綺麗な女の子がいたら助けてあげるのは常識じゃないですか!」
町人Ⅱ「そうそう!お前もたまには良い事言うな!」
側近「…それでは私はこのへんで失礼します。」
町人Ⅰ「えー…帰っちゃうの~?」
町人Ⅱ「いいじゃんいいじゃん!もう少し遊ぼうよ~。」
側近「申し訳ありません。明日も用事があるので、今日は早めに寝ないと…。」
町人Ⅱ「だったら家に泊まりにこない?ここから近いしさー。ね?」
側近「…しかし、流石に知り合ったばかりの方に泊めて頂くというのは、迷惑になりかねませんので、
今日のところは帰りますね。」
町人Ⅰ「…ちっ…はぁ…わかったわかった。また明日な。」
町人Ⅱ「またね~バイバイ!」
側近「はい。それでは。」
ー紅の街 宿ー
側近「ふぅ…やはり、人間というのは醜い生き物ですね。あれほど欲望を丸出しにしている男も
久しぶりに見た気がします。」
側近「外見だけでものを判断しようなど…愚の骨頂です。」
側近「まぁ我慢したかいあって、いくつか情報も手に入りましたし、よしとしましょう。」
側近「さて…今日集まった情報を整理しますか。」
~人間世界の現状~
魔王封印後、今度は人間同士の争いが勃発。勇者とその仲間もその戦いに加わり戦争は激化。
200年程前に全世界を巻き込んだ大規模な戦争は終結、しかしつい最近、火の国と水の国の
間で、小規模な争いが起きるようになり、ついに火の国の一部である赤の街が水の国の攻撃に
より壊滅。報復するために火の国は兵を募り、全面戦争に向け準備を進めている。
側近「…まぁこんなところですかね。」
側近(…あの頃は魔族が全人類の敵だとまで言って、ほぼ全ての人間が団結し魔族に挑んで
いたというのに、魔族が滅んだら今度は同族で殺し合いですか…。)
側近「…やはり人間は愚かで醜いですね。」
側近(明日ももう少し情報を集めてみましょうか。それと魔王様と龍王様へのお土産も忘れては
いけませんね。)
側近「明日も忙しくなりそうですね。早めに寝るとしましょうか。」
ー翌日ー
側近「…さて、今日も情報収集とお土産を買いに行きますか。」
側近「今日は昨日行けなかった、市場の方を中心に回ってみるとしましょう。」
ー火の国 市場ー
側近「…やはりここは人が多いですね…。」
側近「時代は変わっても人の集まる場所は変わらないんですね。」
道具屋「おっと!そこの美人さん!何か買っていっておくれよ!」
側近「…私ですか?」
道具屋「そうそう、貴方だよ!貴方以外に誰がいるってんだ!」
側近「どのような物を売っていらっしゃるんですか?」
道具屋「んー…そうだね…最近入った流行りの物と言えば、やっぱりこれしかないだろう!」
側近「…それは一体…?」
道具屋「これはチェスって言ってね。この駒を動かして勝敗を決めるゲームなんだ。」
側近「チェス…ですか。」
道具屋「そうそう。これが結構面白くてね。火の国の王様もこれにハマって大変だって話さ!」
側近(…一国の王が嗜む遊びですか。これなら魔王様のお気に召すかもしれませんね。)
側近「…わかりました。それではそれを一つください。」
道具屋「まいどありッ!チェスのルールについては、この紙に書いてあるから家に帰ったら読んでくれ!、
側近「わかりました。…それと、買い物ついでに少し聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」
道具屋「美人さんの頼みとあっちゃ、断る理由じゃねぇな。ほれ、何でも聞いてやるから話してみな!」
すみません。今日はこれで終わります。明日から少し用事で出かけるので、次の更新が数日後に
なると思います。本当に申し訳ない。
側近「…有り難う御座います。…では、率直にお聞きします。今回の戦争の原因は何なんですか?」
道具屋の主人は少し悩むような仕草を見せた後、ゆっくりと話はじめた。
道具屋「…そうだな。まぁ簡単に言えば、お互いが気にくわなかったんだろう。」
側近「気にくわなかった…ですか?」
道具屋「ああ。…見ての通り、この国は科学と呼ばれる特殊な技術をもって発展してきた。」
道具屋「一方の水の国の方は魔法の力で国を大きくしてきた。…それがお互いに気に入らなかった
んだろうな。」
側近「…。」
道具屋「…事の発端は些細な事だった。街を荒らしていた魔族を追っていた火の国の兵士が、
許可無く国境を越えて水の国に入ったんだ。」
側近「…それだけ…なんですか?」
道具屋「ああそうだ。…結局のとこ、戦争の理由なんてどうでもよかったんだろ。」
道具屋「ただ単に相手を殴る理由が欲しかった。…それだけだよ。」
側近「…そう…なんですか。」
道具屋「それだけ相手の事が気にくわなかったって事だろう。」
道具屋「魔族との戦争の次は同族で殺し合い…か。」
道具屋「本当の平和とやらはいつになったらくるんだろうかね…?」
側近「そうですね…。」
道具屋「おっと…途中から愚痴になってしまっていたな。すまない。」
側近「いえいえ、こちらこそ仕事の途中でながながと時間を使わせてしまいご迷惑おかけしました。」
道具屋「いいんだよ。あんたみたいな美人さんと話す機会なんてそうそうはないからな。」
側近「有り難う御座います。…それでは失礼します。」
道具屋「おうよ!また来てくれよッ!」
ーーーーー
ーーー
ー
側近「…さて、情報も集まりましたし魔王様へのお土産も買いましたし、そろそろ戻るとしましょうか。」
側近「人間同士が戦争をしていたのは予想外でしたが…お互いに殺し合って消耗してくれるので
あれば、こちらとしては好都合ですね。」
側近「その上人間達の現在の戦力、兵器といった物を知る格好の機会です。」
側近「…魔族による世界の支配は想像以上に容易いかもしれませんね…ふふふ。」
側近は瞬間移動魔法を唱えた。
ー龍の地下帝国 龍王の城ー
側近「…ただいま戻りました。」
龍王「おお、帰ってきたか。」
魔王「ご苦労だった。…して、人間達の様子はどうだった?」
側近は魔王と龍王に人間世界で起きている事を伝えた。
支援有り難う御座います。今日はこれで終わります。明日からまた更新するので、読んでくれると
嬉しいです。
魔王「…なるほど。人間同士で戦争…か。」
龍王「ほぅ…魔族討伐の次は共食いか?」
魔王「流石に食べはしないと思うが……まぁそうだな。」
龍王「まぁ何にせよ、これで今後の予定変更はせざるおえなくなったな。…魔王よ、それでお前はどうする
つもりなんだ?」
魔王「…そう言われてもな。そんなすぐには結論は出せんぞ。」
龍王「そうだな。まだ時間はある。ゆっくり考えてくれ。」
魔王「ああ。…それで、参考の為にもよければお前たち二人の意見も聞きたいのだが。
聞かせてもらえないか?」
龍王「…そうだな。私個人の意見を述べるとするなら、やはりここは人間達が共倒れになるのを
まってから、攻撃をしかけた方が確実だろう。」
側近「私も龍王様と同じで、人間達の戦力が衰えてか攻撃を仕掛けるのが無難かと。」
側近「それに現在の人間達の武器や兵器といった、戦争に使用する武具の種類なども
調べる事が可能ですし、やはり後少し待つべきだと思います。」
魔王「…わかった。やはり今はまだその時ではないという事か。…意見を聞かせてくれて
ありがとう。参考にさせてもらうよ。」
龍王「まぁ時間ならまだある。当面の魔王軍の方針がこれで決まるのだ。焦らず、ゆっくり考えてくれ。」
魔王「あるがとう。…それで、側近よ。頼んでおいたお土産はどうなったのだ?」
龍王「…。」
側近「…大丈夫ですよ。ちゃんと買ってきてありますからね。」
魔王「おお!流石は側近。わかっているじゃないか!」
龍王「いつもすまないな。迷惑ばっかりかけて。」
側近「いえ、そんな事はありませんよ。」
魔王「…して側近よ。これは一体?」
側近「今人間達の間で流行しているというチェスという遊びだそうです。」
龍王「チェスというのか。それでどのようにして使うのだ?」
側近「簡単に説明しますと、この駒を動かして自分のキングを守りながら相手のキングをとる
ゲームだそうです。」
魔王「ほぅ…なかなか面白そうだな。」
側近「駒の動かし方や細かいルールなどについてはこの紙に書いてあるので、わからなく
なったら読んでくださいね。。」
ー数日後ー
龍王「…これでチェックメイト、だな。」
魔王「…。」
龍王「どうやらお前はこういう類の勝負は苦手なようだな。」
魔王「納得がいかん。なぜこいつのような何も考えてないような奴に負けねばならんのだ。」
龍王「お前は深読みしすぎなんだよ、魔王。」
魔王「…何も考えていない、というところには反論しないんだな。」
龍王「まぁ実際考えてないからな。直感でやってるだけだし。」
魔王「…だとしたら、お前の直感は神がかっているものがあるな。」
龍王「ありがとう。…それで魔王よ。これからどうするつもりなんだ?お前の事し、もう何かしらの
結論が出ているのだろう?」
魔王「…流石は龍王だな。付き合いが長いだけはある。…お前の言う通り、もう結論は出ているよ。」
龍王「…ほぅ。ならば聞かせてもらおうではないか。その結論を。」
魔王「…お前たち二人の出した意見と同じだ。」
魔王「火の国、水の国どちらが勝つかはわからないが、この二つの国の間で起きている戦争が終結
するまで、待つ。」
龍王「そうか。…まぁ妥当な判断だな。」
魔王「ん?何か不満でもあるのか?」
龍王「いや、ないぞ。お前の石橋を叩いて渡る性格は嫌いじゃない。…ただ、そのかわりに少し
派手さに欠けるなと思ってな。」
魔王「自分で言っておいたくせにそれを否定するなよ。…だがまぁ確かにお前の言う通りかもな。」
魔王「エンターテナーとしての素質が無いことは自覚している。」
側近「魔王様はエンターテナーではなく魔王なんですから、無理に派手にする必要はないと思いますよ。」
魔王「そうだな。…人間達の様子には細心の注意をはらって監視し、奴等の戦争が終結するまでは
今まで通りに生活するとしよう。」
龍王「そうだな。…して、その監視は誰が行うのだ?」
魔王「む?…そこまでは考えていなかったな。」
龍王「…そうか。では私かお前かのどちらかになるのだが。」
側近「私もいますよ?」
龍王「いやいや、お前は人間の街に行ったばかりではないか。流石に連続で行かせては迷惑だろう、」
側近「ご心配有り難う御座います。ですが私は平気ですので、監視のお役目は私にお任せください。」
龍王「だが…。」
魔王「…そこまで側近が心配ならお前が行けばいい話だろう。」
龍王「…ふむ。確かにそうだな。なるほど。そうするとしよう。」
側近「ですが…。」
魔王「本人が行きたいと言っているのだ。任せてやろうではないか。」
側近「…わかりました。」
龍王「ふふふっ…それでは早速行くとしよう。」
なんかあんまり更新出来なかった…。申し訳ない。
後、龍の地下帝国なんだから龍王じゃなくて龍帝にすべきだったか…?
なにはともあれ、読んでくれてありがとう。おやすみなさい
ー火の国ー
龍王「…人間の街に来るのも随分と久しぶりだな。」
龍王「それにしても、この騒がしさはいつの時代もかわらんようだな。」
龍王「まぁぼちぼち調べるとしよう。」
ー火の国 城下町ー
武器屋「鋼の剣大量入荷したから、安くするので買って行っておくれ!」
防具屋「騎士の鎧後わずか!もう売り切れちゃうよ!」
雑貨屋「薬草と毒消し草の入った医療セットはいかが?魔法なんて使わなくても
大丈夫!さぁ安いよ安いよ~!」
龍王「…騒がしいな。全く。…それにしても武器屋や防具屋が儲かってるところを見ると、
戦争があるというのは本当のようだな。」
龍王「まぁ適当に兵士を捕まえて情報を吐かせるか。」
ー火の国 城下町 路地裏ー
火の国兵士「ぐおっ…。貴様……なにを…!」
龍王「…いいから質問に答えろよ。この国の武器と戦力を。」
火の国兵士「俺はただの兵士だぞ…?知ってる事なんてほとんどないっての…。ぐっ!」
龍王「言葉遣いには気をつけな。…って私が言えることでもないか。」
龍王「…まぁいい。質問を変えよう。この国は科学という魔術とはまた違う、特殊な技術が発達してるらしいな。」
龍王「それは一体どのようなものなんだ?」
火の国兵士「…俺にもよくわからん。科学者と呼ばれる一部の人間だけが使うことができるもの
らしいからな。」
火の国兵士「…なんにせよ、俺たちみたいな戦うことが専門の兵士には関係ない話だ。」
火の国兵士「そんなに科学について知りたかったら、図書館にでも行って調べてみるんだな。」
ー夜ー
龍王「…あれから兵士を何人か捕まえて情報を吐かせようとしたが、ほとんどの人間は
この国の科学というものをを知らないようだな。」
龍王「…科学技術に関しての情報統制は相当だな。」
龍王「やはり科学者とやらに一度あってみる必要があるのか…?」
龍王「…まぁ開戦すればそれも全てわかる事だ。いちいち調べるのも面倒だし、
適当にやるとするかな。」
ー翌日 城下町 宿屋ー
龍王「…今日は朝からやけに騒がしいな。何かあったのか…?」
宿屋の主人「何って、水の国が攻めてきたんですよ!」
龍王「水の国が…?火の国からじゃないのか?」
宿屋の主人「ええ、そうなんですよ!水の国の奴等、いきなり奇襲をかけてきたんですよ!」
龍王「…奇襲か。予想以上の早さで事が進んでいくな。」
宿屋の主人「いつここまで攻めてくるかわかりません!早くお逃げください!」
龍王「ああ、わかった。…お前は逃げなくていいのか?」
宿屋の主人「…ええ、ご心配なく。必要な荷物をまとめたら私も逃げますので。」
龍王「そうか。気をつけろよ。」
宿屋の主人「はい!」
ー火の国 城下町ー
龍王「…城の方で火の手があがっているな。もうはじまったか。」
龍王「それにしても、まさか奇襲を仕掛けてくるとはな…。」
龍王「予想とは違った方向で物事が進んでいくな。…まぁこれはこれで面白いからいいがな。」
龍王「…さて、火の城の方に向かってみるかな。」
ー同日 龍王の城ー
側近「魔王様。」
魔王「…ん?どうした側近よ?」
側近「先程人間の国に偵察に向かっていた兵から報告があったのですが、地の国に『魔王』が
現れたそうです。」
魔王「『魔王』…?」
側近「ええ。素性はわかりませんが、自らを『魔王』と名乗る男が現れ、地の国の街を襲っている
そうです。」
魔王「…ふむ。私の他にも『魔王』を名乗る者がいたとはな。」
側近「どうしますか?魔王様がお望みであれば、今すぐにでも消しにいきますが。」
魔王「いや、好きにさせておけ。『魔王』などと名乗れば各国の勇者がそいつを殺しに行くだろう。」
魔王「勇者は強い。相当の実力がなければ太刀打ち出来まい。」
魔王「まぁ丁度暇だったところだ。その『魔王』とやらがどこまでやるのか見ようじゃないか。」
側近「承知致しました。」
魔王「…それにしても自ら『魔王』を名乗るとは…。一体何者なんだ?『魔王』を名乗れば勇者や
色々な国の軍が送られて来ることはわかっているだろうに。」
魔王「それとも、世界を相手に戦う事が出来る程の力の持ち主、ということなのか?」
側近「それはないでしょう。どういう意図かはわかりかねますが、自らを『魔王』と名乗り
罪を犯す者は何時の時代でもいますし、今回もその程度のものかと。」
魔王「ふむ。今までも私以外に『魔王』を名乗る者はいたのか。」
側近「ええ。魔王様が伝説の勇者に封印されてから、お目覚めになるまでの間にも5人ほど
魔王』を名乗る者が現れました。」
側近「そのうち三人は勇者に殺され、一人は軍にもう一人は何者かによって暗殺されました。」
魔王「そうだったのか。いやはや。やはり魔王という者は人間に敗れる運命にあるものなのかね?」
側近「わかりません。…ですが、この世に『魔王』を名乗ってよいのは貴方だけです。」
側近「そして魔王としての器を持っているのも貴方だけだと、そう信じていますよ。」
魔王「ふふふっ、ありがとう。…それじゃ、その『魔王』とやらについて少し調べてみるとしようか。」
側近「畏まりました。」
魔王「ああ、そうだ。側近、お前はその『魔王』について何か知っている事はないのか?」
側近「部下の報告によりますと魔王と名乗る男は地の国の黒の街というところに度々現れているようです。」
側近「現れる時間は決まって夜で、数人の仲間を引き連れ物を盗むなどの行為を働いているようです。」
魔王「物を盗むだけなのか…?」
側近「そのようですね。抵抗した相手に暴力をふるう事はあるようですが、基本は何もしないようですよ。」
魔王「ふむ。…随分と変わっているんだな。」
側近「そうですね。人間の考える事はいまいち分かりませんね。」
魔王「となると…ますますその魔王の素性が気になるな…。」
魔王「地の国の偵察の兵を増やしておけ。その『魔王』そ素性を全力で調べ上げるのだ。」
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