姉妹百合
たぶん短い
AM2:00
家
妹「……ただいまー」
バタン
妹「おかえりー……ってね」
ガタン
妹「ん? まだ、誰か起きてる?」
トタトタ
妹「……お母さん?」
ガチャ
リビング
妹「……」
姉「おはろ」
妹「なにしてんの」
姉「帰り待ってた……っく」
プシュ
妹「それ、4本目?」
姉「うむ」
妹「肝臓壊すよ」
姉「ビール4本くらいで壊れる肝臓ならいらないわ」
妹「いやいや」
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姉「ほら、飲みましょう、そうしましょう」
グイ
妹「いや、眠いから。もう寝る」
姉「え」
ギュー
妹「ちょ、引っ張んないでよ。私、まだ高校生だから」
姉「かわんないですって」
妹「4歳はでかいって。それに、私ビール嫌い」
姉「わかってないんだから、妹ちゃんは」
妹「わからんでいいし」
姉「冷たい……やっぱり男ができると違う」
妹「できてないよ」
姉「うそだー。今までデートだったんでしょ」
妹「違うって。てかもう眠いから寝る」
トタトタ
姉「妹ちゃーん……くーんくーん」
トタトタ――ピタ
妹「お姉ちゃんてお酒入るとほんとメンドクサイ女だよね」
姉「かまってよー」
妹「バイトで疲れてるんだから、勘弁してよ」
姉「姉を放って、一人だけ寝るなんてずるい!」
妹「声が、でかい」
姉「ごめーんごめーん」
妹「なにこのうざい生き物」
リアル眠いのでねます
続きは今日夕がたか夜に
姉「うざくないよ!」
妹「はいはい」
トタトタ
妹「お姉ちゃん、早く寝なよ」
姉「はいはーい! はーい!はい!」
妹「しー! それと、ベタなツッコミはいれんから」
姉「お姉ちゃん、シュン……だよ」
妹「勝手にへこんでください」
ガチャ
バタン
妹「今日はまたやけに絡んで来るな? ……元々か」
妹「風呂入って、寝よう……ふわあ」
トタトタ
AM8:00
玄関先
母「お父さんいってらっしゃーい」
父「……」コクリ
母「ふふ……」フリフリ
ドタドタ
妹「やばい、寝過ごした」
母「お姉ちゃんに送ってもらったら?」
妹「……うーん」
母「お姉ちゃーん?」
妹「あ」
「なにー」
母「妹ちゃん学校まで送ってくれる? 大学お隣だし」
姉「えー! 送る送る! 喜んで送るわ!」
妹「い、いやチャリでマッハゴーゴーしたらなんとか……」
姉「怪我したらどうするの!」
母「いいじゃない。ちょっと前まで一緒に登校してたじゃないの」
妹「そうだっけー」
姉「一緒に手を握り合って登校してたわね」
妹「そ、そうだっけ?」
母「じゃあ、お姉ちゃん後はよろしくね」
姉「妹ちゃん、準備できてる? 行ける?」
妹「あ、待ってッ。カバン持ってくるからッ」
トタタタ
車内
姉「ねえねえ」
妹「なに」
姉「お姉ちゃんも、高校行っていい?」
妹「え、だめ」
姉「けちんぼ」
妹「私が許可しても、警備員さんが通してくれないと思うけど」
姉「そのときは、ちぎっては投げちぎっては投げて……」
妹「……そのときは、私に話しかけてこないでね」
姉「あーん、ひどい……」
妹「さっさと妹離れしてよね。そんなんで私に彼氏できたらどうすんの」
姉「……そいつを殺して、私も死ぬしかないんじゃないかな」
妹「できても、絶対報告しないでおくわ」
姉「甘いなあ」
妹「どういうこと」
姉「妹ちゃんスメル以外が、妹ちゃんから香ってきたら一発でわかっちゃうんだなこれが」
妹「そんなことされたらもう家に帰らないと思うよ」
姉「や、やだ! 臭わないようにするから、帰ってきてッ!」
妹「はいはい」
姉「ねえねえ、昨日さ本当にデートじゃなかったのよね」
妹「しつこいなあ。バイトに行こうがデートに行こうが私の勝手じゃんか」
姉「そんなことないわ!」
妹「ええッ」
姉「姉である以上、私には妹ちゃんの不純異性交遊を取り締まる責任があるもん」
妹「未成年とかは関係ないんだね」
姉「そうよ。妹ちゃんが私の妹ちゃんである限り」
妹「じゃあ、さっさと結婚して苗字変えるしかないね」
姉「……何言ってるの。結婚したって私の大事で大好きな妹なのは変わらないのよ?」クル
妹「な、なにさ急に真面目な顔で……」
姉「いっつも真面目なんだけどなあ」
妹「からかってないで、運転の方真面目にしてよ」
姉「姉の車はいつも安全運転で運行してるわよー」
妹「ほんとに、もうッ」
姉「……」
AM13:00
大学 海洋生物系研究室にて
昼休み
姉「でね、デートじゃなかったの!」
後輩「いちいち干渉してるんですか」
姉「してないもん!」
後輩「嘘ですね。そんなことより、次の学会発表アメリカでやるんですからよそ見してる場合じゃないですよ。早く機械温めて来てください」
姉「もうやってきたわよ」
後輩「じゃあ、冷凍庫のイルカを……」
姉「それももうやったわよ」
後輩「……はあ。じゃあ、私やることあるので放っておいてください」
姉「くすん」
姉「……くすんくすん」
後輩「やることないなら……」
キイ
後輩「いつもの所から高校の教室見えるんですよね。双眼鏡借りときましたから勝手に一人で行って来てください」
スッ
姉「……後輩ちゃん!気が利く!大好き!」
ギュウッ
後輩「や、やめてください! 教授に誤解される!」
姉「教授さっき出たばっかりだから大丈夫よー。それより、後輩ちゃんなんだか胸大きくなってない?」
後輩「そんなわけ……」
モミュ
後輩「ひ……た、助けて教授ッ」
姉「人を強姦魔みたいに言わないで欲しいわね」
モミュモミュ
後輩「ひい……ッア……やめい!!」
ゴスッ
姉「いたい! 先輩を殴るなんて……妹に殴られたことないのに」
後輩「それは奇跡ですね……良かったですね……はあ、さっさと出て行ってください」
姉「どいひ……」
5階テラス
カンカンカン
姉「涼しいー」
教授「……スー」
姉「あれ、教授こんな所にいたんですか」
教授「ああ……」
姉「タバコ、この間止めるって言ってませんでしたっけ?」
教授「口で交わした約束なんぞ忘れたわ」
姉「女性なんだから、気を付けてくださいね」
教授「お前こそ、こんな所でまさかふかしに来たのか」
姉「いやだわ。そんなことありませんよ。今日の工程が終わったので休憩に来たんです」
教授「大方、後輩に絡んで追い出されたんだろ」
姉「えへへ、ばれました?」
教授「お前が私の研究室に移動してきてから、後輩のストレスと研究のスピードが著しいのでな」
姉「教授、相変わらず後輩のバイタル測ってるんですか?」
教授「悪いか」
姉「後輩の許可まだ取ってないんですよ。軽く犯罪ですよ?」
教授「お前も知ってるから共犯な」
姉「もおー……後輩じゃなかったら大変なことになりますよ」
教授「後輩なら大丈夫だろ」
姉「信頼してますねー。お熱いなあ」
教授「で、そういうお前さんは、ここから何を見に来たんだ」
姉「なんだ、知ってるんですか」
教授「まあね」
姉「じゃあ、教授も共犯だわ」
ギュッ
教授「お互い学会前に当人達に捕まらんようにな」
ワシワシ
姉「えへへ……ですね」
教授「ゆっくりしていけ。私は次の授業があるのでな」
姉「ああ、応用数学の授業、毎回テストするの止めてくれって友達が言ってましたよ」
教授「そうか……」
姉「あ、嬉しそう」
教授「そいつは、真面目な奴だな」
姉「ええ」
教授「そういう奴は好きだ」
姉「私もです」
教授「じゃあな」
姉「……」
コトン
クルクル
姉「……妹ちゃんの席は……あ、いたいたッ……やーん、ちょっと眠たそうッ。可愛い!可愛い!可愛い!」
姉「あ、先生が気づいちゃった……や、やだやだ起こさないであげてえッ」
姉「来てるよッ、妹ちゃん起きてッ、いや、起きないでッ!」
バタバタ
姉「あ……あー! 妹ちゃんの頭を殴るなんてッ……許せないッ……この怒りの思念が届きますように」ウヌヌ
数十分後
姉「……あ、授業終わっちゃった」
姉「あれ、何あの子ちょっと茶髪過ぎないッ……チャラい……ちょ、なに妹ちゃんの肩に触ってるのッ……怒るよッお姉ちゃん怒るよッ」
姉「もどかしいッ……私の手がもっと長ければッ……教授作ってくれないかしら……義手」
姉「あ、柱に隠れちゃったッ……やだッ、待って待ってッ」
姉「……もお、出て来てくれないのッ?」
姉「……ん?」
スイッ
姉「屋上に誰か……」
クルクル
姉「……逢引きかしら」
姉「イケメンと教師……やあね、淫行教師だわ。あんな所でまぐわっちゃって」
姉「あ、それより妹ちゃん……」
姉「えへへ……出てきた出てきた……む」
姉「茶髪いいからどきなさいって言ってるでしょ。女だからって容赦しないわよ」
ダンッ
高校
妹の教室
茶髪「……ひい」ブル
妹「どうしたの?」
茶髪「今、なにやら寒気が」
妹「風邪かな」
ピトッ
茶髪「いや、熱はないと思うけど。ありがと」
妹「うん、なんだろ」
茶髪「……ひ、また」ブル
妹「うん?」
屋上
姉「……かはッ」
姉「き、今日はこれ以上は危険だわ。自分を見失いそう……」
姉「双眼鏡返して来ようっと」
姉「……ばいばい、妹ちゃん」
カンカンカン
研究棟2階
廊下
学生「あ、こんにちわー」
姉「こんにちわ」ペコ
「わー、私初めて挨拶しちゃった」
「えー、私もすれば良かったッ」
「髪すっごく綺麗。てか、美人だよね……」
姉「あ、ねえ」
学生「は、はい」
姉「……あなた確か」
眼鏡「ちょっと、気安く話しかけないでくださる?」
姉「あら、眼鏡さん」
眼鏡「あら、これはこれはトップエリートしか集うことのできないバイオ研を抜けて、海洋研に移った姉さんじゃありませんこと」
姉「やっぱり、眼鏡さんの所の子だったのね」ニコ
学生「は、はい」テレ
眼鏡「……」イラッ
姉「順調かしら?」
眼鏡「ご心配なく。あなたの抜けた穴なんて、始めからなかったようなものですから」
姉「そうなの? なら、良かったわ。ふふ、私てっきり眼鏡さんが落ち込んでいるかと思っていたから」
眼鏡「は、はい? どうしてそうなりますのッ」
姉「何も相談しなかったからよ。ごめんなさい」
眼鏡「あ、あなたの考えてることなんて相談されたって理解できなかったに違いありませんッ」
姉「……そうかもねえ」
眼鏡「さ、学生のみなさんッ、変態研究室で培養されたウイルスに侵される前にここを離れますよッ」
学生「あ」ペコ
姉「……」ニコ
眼鏡「敵に塩を送るような真似はやめなさいッ」
学生「す、すみません」
バタバタ
姉「じゃあねー」フリフリ
いったんここまで
また夜に
PM3:00
バイオ研
眼鏡「全く動じてないのが腹立ちますわねえッ」ギリッ
学生「あの、もともとここにいらっしゃった方なんですか」
眼鏡「そうですわ……」
学生「そんな方がなぜ」
眼鏡「大方、ここのレベルについていけなくなったんでしょう。よくある話です」
学生「……そうなんですか」
学生(学力に問題があるとは思えない……ここの体制が嫌だったんじゃないかなあ。もしかしたら)
眼鏡「何か仰いました?」
学生「あ、いえッ」
学生(眼鏡先輩、目の敵って言うよりは……自由にされてるあの方に嫉妬してるというか失望してるというか……)
眼鏡「あの女のことは忘れてしまいなさい」
学生「……もしかして、眼鏡先輩って……」
眼鏡「かあ!」
ガバッ
学生「ん!?」
眼鏡「いいですか?! 私は決して、あの女に負けたなどと思っていませんから!」
学生(思ってるんだ……)くす
眼鏡「なーにーをー、笑ってるんですの!!」
ぐにい!
学生(好きだったのかな)
学生「眼鏡先輩、姉さんのこと好きだったんですか」
眼鏡「な! あなた、そうやって何でも口に出す癖治してくださる!?」
学生「え、図星なんですか!?」
眼鏡「そんなこと言ってないですわ!!」
学生「女の人同士の恋愛って初めて見ました!」
眼鏡「だーかーらー、違う言うとりますやろ!? うちと、あの女は犬猿の仲。そんな甘ったるい感情ありまへん!」
学生「むきになって方言使い始めちゃった所を見ると、ますます怪しいですね!」
眼鏡「このー……ッ!」
学生「きゃー!」
ワーワー!
他の生徒「楽しそうっすね……」
PM5:00
海洋研
ガチャ
後輩「お疲れ様でーす」
姉「ありがとうね、後輩。しっかり拝んで愛でてきたわ……でへへ」
後輩「いいえ。お役に立てて嬉しいです」
姉「あれ、今日のゼミは?」
後輩「教授が、姉さんに任せたって授業終わってすぐに海洋先端技術センターに」
姉「……もお。本当に自由なんだから」
後輩「バイオ研は、何もかも時間がきっちりして綿密なスケジュール管理がされてたんでしたよね」
姉「そうね。懐かしいわ」
後輩「よくそんなところで1年も耐えられましたね」
姉「正直、決められたことをするのは苦痛だったけれど、隣の席にね、そのスケジュールをいつもいつも頑張ってこなしてる頑張り屋さんがいたの」
後輩「へえ」
姉「その子を見てるのが面白かったから1年は耐えれたのね、きっと」
後輩「なんだか、不憫な扱いを知らぬ所で受けてたその人に同情します」
姉「えー?」
後輩「それより、もう時間ですからゼミしましょうよ」
姉「ええ、そうね。じゃあ、論文の和訳見せてもらえる? それと向こうの部屋に、パワーポイント用意できてるかしら?」
後輩「はい」
姉「オーケー。ええと、コククジラの繁殖地として知られるカリフォルニア半島の――」
PM7:00
姉「はい、お疲れ様。次は、来週ね。明日の予定は、夕方からバンドウイルカの解剖よ。忘れないようにね」
後輩「……」
姉「どうしたの?」
後輩「バンドウ君を殺すんですね」
姉「もう死んで冷凍保存されてるけどね」
後輩「めっちゃ楽しみです」
姉「もう、他の人に聞かれたらどうするの! だから、ここが変態研なんて言われちゃうのよ?」
後輩「え?」
姉「……」
後輩「そんなことを言うなら、姉先輩と教授だって、この間静岡県の東部でイルカ食べたって言ってたじゃないですか」
姉「私は、食べてないわよ。教授が食べてたの」
後輩「全く、イルカの有機水銀類の蓄積率知ってるくせに……教授は……」
姉「じゃあ、今度はあなたが一緒に静岡に行って、イシイルカを調べるついでに食べてきたらいいんじゃないかしら?」
後輩「食べませんよ。あんなに愛らしいのに。可愛そうじゃないですか」
姉「欧米か」
後輩「古いですね」
姉(やっぱり不思議な子ねえ)
後輩「それに、イルカは酸化も早いし、血管の走り方も独特なので寄生虫も多いんですよ。教授がお腹壊さなかったのは奇跡です」
姉「よく焼いたら大丈夫よ。皮下脂肪がざっと25mmくらいあったから、脂っぽい鳥皮だと思ったら。私も運転手じゃなければビールと一緒に」
後輩「まあ、二人でよろしくしてきてください」
姉「あらあ? 教授と一緒に行けなかったの怒ってる?」
後輩「違います」
姉「早く、歳取りなさいね。来年は楽しみにしているわ」
後輩「ええ……」
今日はここまで
姉妹百合だけ書こうとしたのに……広げ過ぎた
なっつんss希望の人もし見てたら、ちょっと待って欲しいのん
PM7:00
高校の正門
姉「妹ちゃーん!」
妹「あ、お姉ちゃん」
姉「今から帰るんでしょ? 一緒に帰ろう」
妹「なんで今から帰るの知ってるの?」
姉「お姉ちゃんパワーよ」
妹「なにそれ」
姉「妹ちゃんのことなら、なんでもまるっとお見通し」
妹「こわッ」
姉「怖くない怖くない。ほら、行こ」
スッ
妹「ちょ、止めてよ。手繋ぐなんて恥ずかしい」キョロ
姉「えー……ぶー」
妹「先、車乗るよ」
テクテク
姉「やーんッ……妹ちゃん、待ってってばー」
タタタッ
姉「捕まえたッ」
ぎゅッ
姉「えっへへ」
妹「ちょッ……あ」ビク
姉「なに?」
ピアス「あれ、妹ってお姉さんいたんだ」
妹「ピアス君……」ドキ
姉(あれ……屋上で見たイケメンだわ)
妹「お姉ちゃん、手離して」
パッ
姉「あら」
ピアス「お姉さん美人っすね」
姉「ありがとう。君もイケメンだね」
ピアス「そんなことないっすよ」ポリポリ
姉(……まさか屋上であんなことする子には見えないわね)
姉「……ん?」
妹「……」カア
姉「……」
ピアス「妹、じゃあな」
ポンッ
妹「うん……」
姉(何かしらこの反応は)
眠いのでここまで
姉「あの、妹ちゃん?」
妹「なに」
姉(……気のせいか)
妹「……なによ」
姉(なわけないわああああ!? 明らかなメスの顔をしてたッ……)
姉「い、妹ちゃん? か、彼とはどういう関係なんですか?」
妹「なんで敬語? ただのクラスメイトだけど」
姉(クラスメイトに頬を赤らめたりしないッ……から!)
妹「まさか、お姉ちゃん……ピアス君に嫉妬してるんじゃ」
姉「まさかも何もその通りよ!? あんなイケメンのどこがいいの?! 背が高くて、ちょっとやんちゃそうで、茶髪で、ピアスで、女慣れしてそうなだけじゃん!!」
妹「叫ばないでよッ。うるさい!」
姉「お姉ちゃんは認めないからねッ。排除……してやるわ」
妹「そんなことしたら、お姉ちゃんと絶対口聞かないから」
姉「……え」
妹「帰るよ」
テクテク
姉「ま、待って! それだけじゃないのッ。あの子、ここの先生と昼に屋上でエッチしてたのよ!!」
妹「……お姉ちゃん」
ピタ
姉「……あ」
妹「……さいってい!!!」ウルッ
ダダダダッ
姉「……あ、待って!!」
PM9:00
姉の部屋
姉「……」
ゴロゴロ
姉「……」
ゴロゴロ
姉「……」
ピッ
『では、県内の明日の天気予報です――』
ピッ
姉「……」
ゴロゴロ―――ドゴンッ
姉「いッ……」
コンコン
姉「は、はい」
ガバッ
カチャッ
父「……」
姉「……お父さん」
父「……」パクパク
スススッ
姉「あ、うん、大丈夫。妹も大丈夫よ、お父さん」
スススッ
父「……」パクパク
スススッ
姉「小さい頃から見てる私が言うんだから」
父「……ッ」パクパク
姉「なんでお父さんが謝るのよ……あの子が家族に相談しないのなんて昔からでしょ」
姉(今回は、私のせいなんですけどね……はあ、言う順番を間違えちゃったわ)
父「……」パクパク
スススッ
姉「引きこもっちゃったのはね、私の責任だから……何とかするからね」
スススッ
父「……」パクパク
スススッ
姉「謝るのは私の方よ。だって、お父さんと話す時に、全部私が通訳しちゃったせいで……あの子、自分で手話勉強するタイミング無くしちゃったんだもん」
スススッ
父「……」パクパク
スススッ
姉「あの子だけ、家族の会話に入れない時がある……話したい気持ちもあるだろうし、それに反抗しちゃう気難しい時期でもあるし……」
スススッ
父「……」パク
ススッ
姉「え、お母さんみたい? ええ、お母さんよりもお父さんよりも妹のこと愛してるわ」
スススッ
次の日――
AM8:00
キッチン
カチャカチャ
母「お父さん……はい」ニコ
父「……」コクッ
妹「……ねえ」
母「なあに?」
妹「なんで私の前では、手使わないの」
母「そんなことないわよ?」
妹「使ってるかもしんないけど、明らかにお姉ちゃんといる時より少ないし、簡単なのばっかりじゃん」
姉「い、妹ちゃん?」
母「それは、妹ちゃんにも分かりやすく……」
妹「どうせ、私が全然手話覚えてないから、頭悪いから……気を遣ってんでしょ?」
父「……」パクパク
妹「なに? 何言ってるのかわかんない……」
父「……」パクパク
スススッ
母「そうね、お父さんの言う通りだわ」
スススッ
姉「妹ちゃんは、これからゆっくり覚えていけばいいんだよってお父さんが……あ」
妹「……お姉ちゃんが、いっつもそうやって私の事助けるから……ただでさえ物覚えが悪いのに……」
ガタッ
母「無理に覚えなくてもいいのよ……? できることから始めましょう?」
妹「別に……いいよ。高校出たら、働くし……結婚したら、覚えなくてもいいでしょ……私、普通の人と結婚するからさ」
姉「……妹ちゃん!」
ガタッ
パンッ!!
妹「つッ……」
姉「はッ……」
妹「……ッ」
ガチャンッ
タタタタッ
姉「妹ちゃん!!」
父「……」パクパク
スススッ
姉「ごめんなさい……」
母「大丈夫」
ポンッ
姉「……お母さん」
母「言葉でさえ伝わらないことばかりだけどね……」
姉「そうね……」
母「ね、みんなで水族館に行った日の事覚えてる? 二人が小学生の時」
姉「なんとなく……」
母「イルカのショーを見た折にね、妹ちゃん凄く興奮してた。イルカが好きなのもあったけど……あの子ね、イルカと会話するスタッフさんを一生懸命見ててね、言葉じゃなくても伝わるんだねって……言って、スタッフの物真似ばかりしてた」
姉「そう言えば……言ってったけ」
母「そしたら、お姉ちゃんが、じゃあ私はイルカの言葉を勉強して妹ちゃんに教えてあげるねって……」
姉「うん……言った言った。やっぱり、私……妹ちゃんの邪魔、しちゃってたんだ」
母「そうじゃないのよ。だって、二人とも相手に伝えるために何をすればいいかちゃんと分かってた……」
姉「お母さん……」
母「だから、大丈夫ッ……って、お父さん! 時間!」
ビシッ
父「!?」ワタワタ
母「お弁当持って、あ、ネクタイネクタイ!」
父「……!」
姉「私取ってくるわッ」
AM10:00
高校
妹「……」
茶髪「ご機嫌斜めじゃん」
妹「まあね」
茶髪「また、お姉さん?」
妹「それもあるけど……色々」
茶髪「ふーん。じゃあさ、今日放課後カラオケ行かない? ピアス君も誘うからさ」
妹「……」
茶髪「あと、大学の先輩も誘ってさ、スカッとしよ?」
妹「うん、ありがと。行く」
茶髪「そうこなくちゃ」
妹「歌って……歌いまくってやる……!」
茶髪「その意気その意気!」
キーンコーンカーンコーン
茶髪「あ、やば」
タタタッ
妹(……イライラしてもしょうがないのに)
妹(どうしようもないじゃない。誰も言わなかった。覚えなさいなんて……。だから、覚えなかった。誰か、一度でも言いから私に言ってくれれば……)
妹(こんなにも関心のない状態じゃなかった……)
妹(……うわ、言い訳じゃん)
妹(なんで、私こんなんなの……)
妹(今さら……誰に聞けばいいの)
妹(どうやって、聞けばいいの……)
ガタンッ
PM2:00
海洋研実験室
ウウ――
アア――
ギエピイ――
後輩「おだまりください。なんですか、ギエピイって」
姉「ウ……」
後輩「妹さんとケンカしたのは分かりましたから」
姉「それだけじゃないのお……」
後輩「はあ」
姉「ここで言うことでもないんだけど……うん」
後輩「何かできることありますか?」
姉「ないのお……」
後輩「なら、バンドウ君の体重計っていってください。あと何頭いると思ってるんですか」
姉「力が出ない……」
後輩「なんのために小型フォークリフト借りたと……」
姉「はい……」
後輩「教授が戻る前に全部やっつけちゃいたいんですから」
姉「はい……」
後輩(調子狂いますね……まったく)
PM5:00
ガチャ
教授「あー、諸君ご苦労様」
後輩「教授……ッ」
姉(あー、後輩のお尻に尻尾が見える)
教授「よしよし、いい子にしていたか」
ナデナデ
後輩「ちょっと、やめてください」
姉「……」ボケー
教授「どうしたんだ、いつもの元気がないが」
後輩「ああ、かくかくしかじかで」
教授「ふむ。そんな時こそ、屋上で遠くから花を愛でてみれば、また違ったフォーカスとなるのでは?」
姉「……後輩、私の代わりに」ボケー
後輩「……私は、覗き見の趣味はありません」
教授「それなら、ここは一つ私が」
後輩「いえ、私がいきます」スパッ
教授「うん? そうか」
姉「……」ふにゃ
後輩「先輩がメンダコみたいに……」
屋上
カンカンカン
後輩「……先輩の妹を覗き見か……」
スッ
後輩「罪悪感しかない」
後輩「教室……もう残っている生徒がいない。これは、もしや帰ったのでは」
キョロキョロ
後輩「……正門かな」
スッ
後輩「あ、ビンゴ」
後輩「4人……彼氏かな?」
後輩「この事実を知ったら、先輩、吐血しかねないなあ」
後輩「……あれ、一人はバイオ研の人だ。ああいうエリートも高校生に手出しちゃったりするんだ」
後輩「……これは、先輩死ねるだろうなあ」
後輩「どこ行くんだろ」
カンカンカン
後輩「……あ」
眼鏡「……あら」
学生「こんにちは」
後輩「どうも」
眼鏡「今日は、姉はどこにいるのかしら?」
後輩「妹さんとケンカして、実験室で轟沈中です」
眼鏡「ぷぷッ……」ぷるぷる
学生「先輩、顔が歪んで……」
後輩「あ、そう言えばバイオ研のロンゲさん、今日はどこに行ったかご存知ですか?」
学生「ロンゲ先輩ですか?」
後輩「姉先輩の妹さんと先ほど仲良く出かけられたので」
眼鏡「え? 今日は、彼女とカラオケに行くって……え、今聞き捨てならない言葉が聞こえてきたような」
眠すぎるので、また明日くらにいに
後輩「カラオケに行かれたんですか……」
眼鏡「妹って、高校生のよね?」
後輩「はい」
学生「ロンゲ先輩、まさかそんな年下が好みだったとは。研究室にこんないい女が二人もいるのに」
眼鏡「……そうね、許せないわ」
学生「え」
眼鏡「よりにもよってあの女の妹ですって。別にあの男に全く興味はないけど、あの女と同じ匂いをぷんぷんさせて来られるのは勘弁願いたいわね」
後輩「あの、頭の方は大丈夫ですか?」
学生「あ、こんなこと言ってますけど、姉先輩に近づく人に嫉妬してるだけなので気にしないでください」
後輩「へえ」
眼鏡「ちょっと、聞き捨てなりまへんなあ……?」
ガシッ
学生「い、いたいッ……顎がつぶれますッ」
後輩(……やっぱどこの研究室も変な人ばかりだな)
眼鏡「ごほんッ……で、あの女はこの事を存じてまして?」
後輩「いえ、今から報告しに行く所でして」
眼鏡「学生、あの女の狂気過ぎる姉妹愛の成れの果てを拝みにいきますわよ」
学生「どういうことですか?」
眼鏡「行けば分かりますの。そして、幻滅なさるでしょう。なおかつ、私があの女に恋慕してるという誤解も解けるはずです」
後輩「……え、来るんですか」
後輩(めんどくさいなあ……)
眼鏡「あなた、今、めんどくさそうなお顔をされませんでした?」
後輩「そんなことないですよ」
学生「私、海洋研って初めていきます」
後輩「イルカばかりの生臭い所ですよ」
海洋研実験室
ガチャ
後輩「お疲れ様です」
姉「……」ボケー
眼鏡「あら、抜け殻みたいなものが……」
学生「どうされたんでしょうか……」
後輩「先輩、妹さんなんですけど、お友達とイケメンな男子生徒とバイオ研のロンゲ先輩と一緒にカラオケ行ったそうですよ」
姉「……」ビクッ
眼鏡「うちのバイオ研の生徒にちょっかい出さないようにしてくださる?」
姉「眼鏡……さん」ウルッ
ガバッ
眼鏡「きゃあ!?」
ギュウッ
姉「……私、ダメだわ……何にも手がつかない」
眼鏡「ふ、ふん……いい気味ですの」
姉「妹を心から愛してるの……それだけじゃ、だめなのかしら……」ボソリ
後輩「……」
学生「……」
後輩(すっごいこと言ったなあ)
眼鏡「……」
今日はここまでまた明日
姉「妹ちゃん……ううッ……」
ぎゅうッ
眼鏡「お、おやめなさい! 骨がッ折れるッ」
ギリギリ
学生「シスコンだったんですね」
後輩(シスコンというか……それ以上イッちゃってるというか……)
後輩「先輩、あの、さっきの聞いてましたか?」
姉「……え?」
パッ
眼鏡「あうん……ッ」
ドサッ
姉「あ、ごめんなさいね」
後輩「だから、妹さんが茶髪のお友達と、イケメンと、ロンゲ先輩とでカラオケに言ったって話ですよ。せっかく人がリークしてきた情報スルーしないでください」
姉「……はい?」
ガシッ
眼鏡「なぜ、私の肩をつかみまッ?!」
ユサユサッ!
姉「どういうことッ!? なんで、ロンゲ君と!?」
眼鏡「わ、わたくしが知るわけッ!?」
ユサユサッ
学生「ロンゲ先輩は、彼女とカラオケに行くって言ってましたよ」
後輩「たぶん、茶髪のお友達が彼女なのではないでしょうか」
姉「妹ちゃんが危ない!」
ユサユサッ
眼鏡「ただ遊びに行っただけですわッ」
姉「行くわよッ。後輩」
後輩「へ」
ガシッ
後輩「え」
ズルズルッ
姉「男と遊ぶなんて耐えられない」
眼鏡「あなた、自分で言ってることの意味分かってますの? 実の妹ですわよね? しかも、女性」
姉「それが何かしら」
眼鏡「あなたのその歪んだ愛が、あなたの妹を傷つけ、彼女の将来を奪ってしまうのですね、きっと。彼女には選択させないのです?」
姉「妹ちゃんは……まだ、子どもだもの」
眼鏡「高校生ですわよ。正気?」
姉「正気じゃなかったら、妹を愛してはいけないのかしら?」
眼鏡「あなたって……出会ったときから変わりませんわね」
姉「……ごめんなさいね」
眼鏡「……」
学生(何……この空気)
姉「……後輩もごめんなさい。私、自分の都合ばかりで……周りのことまた見てなかったわ」
後輩「気にしないでください」
姉「ありがとう」
ナデナデ
後輩「で、行くんですか? 行かないんですか?」
姉「行きます」
後輩「ええ」
タタタタッ
ガチャ
バタン
眼鏡「……」
学生(やっぱり、眼鏡先輩って……)
眼鏡「……うッ……」ウル
学生「せ、先輩ッ」ワタワタ
眼鏡「悔しいッ……絶対、あの女をぎゃふんと言わせてやる……」
学生「……それは、難しそうですね」
PM6:00
カラオケボックス
ロンゲ「……次、曲はいってんよ」
茶髪「あ、私です! 先輩、一緒に歌いましょうよッ」
ロンゲ「えッ、声高すぎだぞこれ」
茶髪「裏声聞きたい」
ロンゲ「しゃーないなあ」
イチャイチャ
妹「……」ゴクゴク
ピアス「お酒、飲めるんだ」
妹「バカにしないでよ……飲めるもんこれくらい」ゴクゴク
ピアス「はは……」
妹「なに、笑ってるのさ」
ピアス「や、顔、真っ赤だから……ここから出る時どうしようって」
妹「あ……」ぺた
ピアス「熱い?」
妹「熱い……」
ピアス「おしぼりどうぞ」
妹「あり……がと」
ピアス「ね……」ヒソ
妹「?」
ピアス「耳、小さくて可愛いね」
サワサワ
妹「……ッ」ドキ
ピアス「ピアスとかつけないの?」
妹「痛そうだし……」
ピアス「俺さ、彼女には絶対お揃いのピアスして欲しいんだよね……」ニコ
妹「……私、彼女じゃないもん。み、耳触らないでよ……」ドキドキ
ピアス「あ、ごめんごめん」
パッ
妹「……ちょっと、トイレ行ってくる」
スクッ
ヨタ――
妹「きゃ……」
ガシッ
ピアス「危ないなあ。一緒に行くよ」
妹「いいって……」
ピアス「ふらふらじゃん。危ないって」
グイッ
妹「……あ」
トイレ前
ピアス「ここで待ってるから」
妹「うん……」
テクテク
妹(中に入ってくるかと思った……)
フラッ
妹「わ……」
妹(お酒って、こんな感じなんだ……なんか、いらいらとかお姉ちゃんのこととかどうでも良くなってきた……あと、寒い)
妹「……」
ゴソゴソ
妹「耳、触られちゃった……びっくりした」
ユラユラ
妹(頭の中、お酒でたぷたぷしてる……)
妹(こんなのばれたら、お姉ちゃんどう思うんだろ……)
チクッ
妹「……いたい」
妹「ほっぺた……いたい」
妹(叩かれたのも、そう言えば初めてだ……)
スリッ
妹(お姉ちゃんも、怒ったりするんだ……)
妹(私のせいだけど……)
ガチャ
妹「お待たせ……」
ピアス「ん」
妹「行こ……」
ピアス「……」
グイ
ギュッ
妹「や……」
ピアス「ここ終わったら、二人でどっか行こ」ヒソ
妹「……でも」ドキドキ
ピアス「いいじゃん、ね」
妹(……いいかな。いいのかな)
ピアス「それとも……俺じゃいや?」
妹「そうじゃ……ないけど」
ピアス「じゃ、決まりッ」
妹「……あ」
PM8:30
カラオケルーム
プルルル
ガチャ
ロンゲ「みんな、延長する?」
ピアス「俺はもういいですよ」
茶髪「起きて、妹……」
ユサユサ
茶髪「延長する?」
妹「むにゃ……私、もういい……」フラ
茶髪「……大丈夫?」
妹「……ン」
ロンゲ「じゃ、お開きにしますか。ラーメンか何か食って帰るか? それぐらいなら奢るぞ」
茶髪「え、ほんと?」
ロンゲ「しゃーなしやで」
茶髪「ケーキ食べたいです」
ロンゲ「却下」
茶髪「えー」
妹「……」
妹(あれ、もう……8時過ぎたの……私、寝てたのか……)
ゴソゴソ
PM9:00
繁華街
茶髪「じゃあね、妹」
ロンゲ「ちゃんと送ってやれよ、ピアス君」
ピアス「はい」
妹「……」
妹(あれ……どういう流れで、今、二人きりになっちゃったんだっけ……)
ピアス「手、貸して」
妹「?」
スッ
ピアス「素直で可愛い」
ぎゅッ
ピアス「もっとこっち寄りなよ。ふらふらじゃん」
テクテク
妹「こっち、家と反対……帰る」
ピアス「だめ」
妹「……や」
ピアス「この後、付き合うって言ったっしょ?」
妹(言ったっけ……言ってない……忘れた……頭がふわふわする)
ピアス「今、家の人と気まずいって言ってたじゃん。帰ってどうすんのさ」
妹「……あ」
妹(そうだ……私、みんなに酷いこと言って……)
妹「帰れない……」
ピアス「だろ」
妹「私、どうしたらいいの……かな」
ピアス「そういう面倒なこと忘れてさ、今日は楽しもう?」
妹「……」
ピアス「……ちッ」
妹「え」
ピアス「あ、そうだ……海、行かない?」
妹「海……」
ピアス「好き?」
妹「うん……」
ピアス「近くに水族館あるでしょ?」
妹「あったね……」
ピアス「俺の親戚あそこで働いてて、こっそり夜忍び込ませてもらったことがあるんだ」
妹「そうなんだ……」
ピアス「興味ある? 夜の水族館」
妹「ある」
ピアス「ノリいいじゃん。ちょっと連絡するから待ってな」
ピアス「あ、もしもしおじさん? あのさ――」
妹(水族館か……そう言えば、昔家族で行ったっけ……)
妹(あの頃は……何にも意識してなかったな)
妹(お父さんの耳が聞こえないことだって、何の後ろめたさもなかった……恥ずかしいって、思ったのは中学生の時で……)
妹(授業参観に来たお父さんは上手く喋れなくて……休み時間にお姉ちゃんが来てくれて手話で話してたっけ……)
妹(それで、みんなに変な目で見られたんだよ……)
妹(……けど、一番嫌だったのは、自分だけお父さんと喋れなくて……なのに、お姉ちゃんはいつも楽しそうにお喋りしてたこと)
妹(そう思っちゃだめって、意識しだしたのは高校生くらいからだっけ……)
妹(家族から離れようと思い始めたのもそれくらいから……)
妹(お姉ちゃんが、やたらかまってくれるようになったのも……)
ピアス「来ていいってさ」
妹「あ、うん……ありがとう」
ぷるるる――
妹「……?」
ピアス「誰?」
妹「お姉ちゃん……」
ピアス「ああ、出なくていいっしょ」
妹「……何件かかかってる」
ピッ
妹「もしもし」
ピアス「おいおい」
姉『妹ちゃん、今、どこ!? 何してるの!?』
妹「……うるさい。もう、かけてこないでよ。電池もったない」
ピアス「あははッ」
姉『知らないわ、そんなことッ……どこにいるか聞いてるのッ。誰といるの?!』
『ちょ、先輩……そんな頭ごなしに言ったらダメですよ』
妹「……?」
妹(誰……)
姉『で、でも後輩……』
『まずは、謝らないと』
姉『そ、そうよね……』
妹「……」
妹「私、彼氏とイルカ見に行くから邪魔しないで」
プチッ
ピアス「ふー、かっこいいッ」
PM9:30
繁華街
姉「……」
後輩「イルカ?」
姉「妹ちゃんの頭がついにおかしく……」
後輩「イルカがいる所って、センターと研究棟以外にありましたっけ……え、ホエールウォッチング的な?」
姉「海……自殺……水死体」
後輩「そこまで思いつめてるんですか?」
姉「もしかしたら、海の藻屑になって……嫌な事全部忘れたいって意味なんじゃ……ないかしら」
後輩「まさか……まさかですよ?」
姉「うちの子は繊細なのよッ。急がないとッ」
タタタタッ
後輩「ま、待ってくださいッ」
後輩(こんな、大事になるなんて……教授に連絡しておこ)
海辺
ザザーン
ザクッ
姉「妹ちゃーん!」
後輩「……いませんね」
姉「あっちの海岸にいるのかもッ」
ザッザッザッ――ガッ
姉「きゃッ」
ドサッ
後輩「先輩!」
姉「……」ムク
後輩「うわ、砂だらけ……」
パンパンッ
後輩「大丈夫ですか?」
姉「うん……」
後輩「ちょっと、冷静になって考えましょうよ。闇雲に探したって見つかるものも見つかりませんよ」
姉「はい……」
後輩(……めっちゃへこんでるなあ)
ストッ
後輩「妹さん、イルカ好きなんですか?」
姉「聞いたことないけど……小学生の頃は好きだったのかも」
後輩「イルカみたいに、反響定位できたらラクなんですけどね」
姉「ちょっとやってみるわ」
後輩「は?」
姉「えい!」
後輩「超音波出るんですか?」
姉「……」
後輩「あ、すいません」
姉「携帯なんて、光通信なんて、拒否されたらおしまいなのよ……」
後輩「その点では、エコーは受け取る側の意思は関係ありませんもんね」
姉「ね、後輩」
後輩「はい」
姉「ロンゲ先輩の彼女を人質にとるってのはどうかしら」
後輩「いやいや」
姉「で、妹ちゃんを引きずり出して……」
ザザッ
教授「お前たち、何をしているんだ」
後輩「……教授?」
姉「なんでここに……」
教授「なんでって、後輩が事件かもって言うから来たんだぞ」
後輩「私、場所伝えましたっけ?」
教授「いや」
姉「あ」
教授「後輩の声が聞こえた気がした」
後輩「……そ、そうですか」カア
姉(バイタル計に、GPSを仕込んでたのね……この女やりおる)
姉「きょうじゅうう……」ウル
教授「どうした?」
後輩「教授、この辺りでイルカが見える所ってどこかありますか?」
教授「イルカ? なんだ、お前たちこの辺ではイルカが出没しないことぐらい知っているだろう」
姉「ですよねー」
教授「いるとしたら、水族館くらいだろ」
後輩「そうなりますよね」
姉「水族館……」
後輩「さすがに、お手上げですね……」
姉「ううん……まだよ」
後輩「でも」
姉「水族館にいるかも」
後輩「もう閉まってますよ」
姉「そうだけど」
教授「外が公園にもなっているから、デートスポットではあるがな」
姉「行きますッ。早くしないと妹ちゃんが……」
タタタッ
後輩「先輩!」
教授「ふむ……」
水族館
噴水公園前
姉「……あれ」
ガシャン
教授「ただ、公園も8時には閉園するのだ」
後輩「人影も見えませんね」
姉「……そんな」
ドサッ
後輩「先輩……」
姉「妹ちゃん……妹ちゃん……」ポロポロ
後輩「……」
教授「お前ら、ちょっとついてきなさいな」
姉「……?」ポロポロ
教授「いいものを見せてやろう」
テクテクテク
後輩「あ、ちょ」
タタタッ
姉「……」ゴシ
ヨロ
ピッ
シュン――
教授「こっちだ」
後輩「その、カードキーどうしたんですか?」
教授「盗んだ」
後輩「やっぱり」
教授「そこは、肯定する所じゃないぞ。違う違う、センターとこの水族館は提携しているんだ。そこの副長の私がカードキーを持っていてもおかしくはないだろう」
姉「……」
教授「おい、しっかりせんか」
バンッ
姉「あいたッ」
教授「早くエレベーターに乗れ」
姉「ええ」
ピッ
教授「ドルフィン・セラピーってあるだろう。まあ、リラックスしていけ」
ウイーン
姉(イルカの超音波より、妹ちゃんの声を聞いたほうがよっぽど……)
教授「ここだ……」
後輩「うわあ……」
姉「あ……」
教授「どうだ。今年の冬にはできるプランだが、今月中には30部屋程にしきって宿泊できるようにする予定だ。もちろん、女性限定だがな」
後輩「天井は全面アクリルガラスで、継ぎ目がない分、開放感がすごいですね……」
教授「だろう? 沖縄には負けんよ……できたら、一緒に行こうか」
後輩「……はい」
教授「ここのメインは2頭のイルカだ。姉妹同士だが、たまに喧嘩もする。まあ、どちらにせよ一般人にはじゃれあっているようにしか見えないがね。腹に、斑点がある方が記憶力が優れている。斑点のない奴はジャンプ力がある。母親はイル、姉がカル、妹がフィンだ」
後輩「トリトンですね」
教授「館長の趣味だな」
教授「両親とは引き離されてしまったが、その分互いに強い絆で結ばれている」
姉「美しいですね……音もなく、ただ水中を泳ぐ姿は」
教授「……そうだ。言葉にせずとも寄り添いあえる彼らは美しい」
姉「でも、知ってほしい分かりたい……」
教授「みな、同じだよ。お前の妹だってそうだ」
姉「教授……」
教授「受け止めてあげなさい。妹を信じて、多くを語らぬことだ。そうすれば、お前の前でだけ見せたい表情があるはずだ」
後輩「……」
カタンッ
ガチャッ
教授「ん?」
ピアス「あれ……」
妹「……」
教授「誰だ」
ちょっとここまで
続きは夕がたくらい
姉「妹ちゃん……?」
妹「お姉ちゃん……」
教授「君たちどこから入って来たんだ」
ピアス「あ、一応ここの人に許可とってますよ」
ピラッ
ピアス「親戚がここの従業員なんっすよ」
教授「ああ、そうなのかい」
ピアス「誰もいないと思ってたんで、俺らすぐ出ますね」
妹「……」
ピアス「行こうぜ」
妹「うん」
姉「妹ちゃん……」
ピアス「ほら、早く」
妹「……ッお姉ちゃんは」
姉「……」グッ
妹「本当に、私の事好きなの? だったら、邪魔しないでよ」クルッ
姉「……好きかって聞かれたら、そんなこたないのよ」
妹(……あ、私ついにお姉ちゃんに見放されたんだ)
妹(しょうがないよね)
妹「なにそれ」
姉「妹ちゃん、私が家族の繋がりを守るために、好きって言ってると思ってるでしょ」
妹「それ以外に何があるの」
妹(何を言おうとしてるの、お姉ちゃん)
姉「私はね、お母さんにもお父さんにも、そこのイケメン君にもあなたを渡したくないの。だから、これはね……好きなんて綺麗なものじゃないのよ」
ピアス「おい、お前の姉貴頭おかしいんじゃないか? 普通じゃないぜ」
妹「お姉ちゃん、冗談が過ぎるよ……ピアス君のこともそうだけど」
ピアス「なに?」
妹「屋上で先生とエッチしてたって……」
ピアス「……」
妹「嘘だよね……」
ピアス「当たり前じゃん」キョロ
妹「嘘じゃないんだ……」
ピアス「は? 嘘じゃないって言ってるだろ?」
姉「うちの妹はね、小さい頃から人の癖や、表情を読むのが上手いのよ? 知らなかった?」
ピアス「じゃあ、嘘を隠してるって空気に合わせてくれればいいのにさ」
妹「ピアス君……」
ピアス「俺のこと酷いって思う? でも、俺には先生とのことをわざわざ話す義務はない。お前が、聞かなかっただけだ。俺は、ヤれれば誰でもいいんだよ。誰も教えてくれなかったのか? 俺がそういう人間だって」
日本語へたくそですまん
解説付き
妹「(お姉ちゃんの言っていることは)嘘だよね……」
ピアス「(姉の言っていることが嘘なのは)当たり前じゃん」キョロ
妹「(目線が泳いで、ピアスが嘘をついていることが分かり、姉の言っていることは)嘘じゃないんだ……」
ピアス「は? 嘘じゃないって言ってるだろ?」
姉「うちの妹はね、小さい頃から人の癖や、表情を読むのが上手いのよ? 知らなかった?」
間違えた
解説ver2
妹「(お姉ちゃんの言っていることは)嘘だよね……」
ピアス「(姉の言っていることが嘘なのは)当たり前じゃん」キョロ
妹「(目線が泳いで、ピアスが嘘をついていることが分かり、姉の言っていることは)嘘じゃないんだ……」
ピアス「は? 嘘だつってるだろ?」
姉「うちの妹はね、小さい頃から人の癖や、表情を読むのが上手いのよ? 知らなかった?」
後輩「どっちが頭おかしいのでしょうか」
教授「そもそも基準はどこだろうね」
姉「教授……ハンマー持ってないかしら? いつも頭蓋骨を粉砕するときに使う」
教授「あいにく、持ち歩いてないんだ」
姉「そうですか」
グッ
教授「……」
妹「最低……」
ピアス「自分のことは棚上げか? どうせ、家に帰った所で誰もお前に期待してないんだろ? じゃ、せめて俺の期待に応えてくれよ」
妹「そうだね……」
姉「……ッ」
ガシッ
教授「受け止めなさい。彼女の言葉を」
姉「……すーはー」
姉「はい……」
ピアス「キモイ姉と、理解できない父親と、その親父にべったりの過保護の母親……家に帰ったってろくなことないんだろ。俺のところに来いよ。迷うことがあるのかよ」
妹「……ッ」
ピアス「お前が言ったんだぞ。妹。言ってないなんて言わせないぜ」
姉「……妹ちゃん」
妹「そうだよ……全部本当だよ。私は、あの家を……」
姉「ごめんなさい」
妹「え」
姉「ごめんね、こんな気持ち悪いお姉ちゃんで」
妹「……あ」
姉「私、お姉ちゃんだから、妹ちゃんに頼りたくなかった。妹ちゃんにどんなことでも頼って欲しかった。でも、それが負担になってたんだよね……ごめんなさい」
妹「……」
姉「妹ちゃんが感じてる事、私は全然理解できてなかった。それが分かったよ……」
姉「……」
ザッ
後輩「……?」
ドサッ
姉「……ごめんなさい!」
ゴンッ
ピアス「土下座……って……腹いてえ……ははッ」
妹「……じゃあ、止めてよ。もう、私に……私に同情しないで! 研究室もいきなり変わって……イルカの話しばっかりし始めて……私に合わせないでいいのに!」
姉「……えっと」
妹「帰りが遅い時もずっと起きてるの止めてよ! 風邪引いたときに、一緒に大学休むのも……全部全部、もう終わりにして……」
姉「嫌だったよね……うん、止めるよ」
妹「嫌じゃなかった!」
姉「え」
妹「嬉しかった! だから、お姉ちゃんに申し訳なかったのッ。喜んでる自分が情けなくて、甘えそうになる自分が許せなかったのッ……だから、だからね、もう止めてッ」
姉「え、いや」
ムクッ
妹「……ちょ」
姉「じゃあ、止めないわ。ね、妹ちゃん、私のやってること冗談じゃないって分かってて……言ってるのよね」
妹「……ッ」カア
プイッ
姉「こっち向きなさい」
妹「……ッ」
姉「確かに、普通の家族を演じようと無理してしまった部分もあるわ。でも、それは全部おしまいにする。私もね、小さい頃お父さんのことで悔しい想い、悲しい想いをしたの。だから、妹ちゃんにそういう想いをさせたくなかった。でも、もう、妹ちゃん小さい頃と違うのね」
コツコツ
妹「な、なに。来ないでよ」
姉「今度は、私個人として、本気でいくわ」
妹「う……」
ピアス「……あーあ、姉妹丼したかったのになあ」
姉「……」
妹「……」
姉「あ、こんな所にいい消火器が」
教授「あ、待て待て。それを何に使うつもりだね」
妹「……」
ガタッ
後輩「妹さん、その看板を何に使うつもりなんですか?」
ピアス「ん?」
ヒュッ
おわり
読んでくれてありがと
とりあえずおしまい
あんまりイチャイチャさせれなかった
亀更新ですが、ちょっとだけ続けます
―――
――
後輩「じゃ、この少年送っていきますね」
ピアス「……殺されるかと思った」ガクガク
教授「姉」
姉「はい……」
教授「鍵、渡しておく」
ヒョイッ
パシッ
姉「……いいんですか」
教授「もう少し、二人で見ていくといい……ほら、行くぞ」
パンッ
ピアス「叩くなッ……ってーな」
ガチャッ
ピアス「いもうとー」
妹「……なに」
ピアス「お前さお酒飲まない方がいいぜ……あははッ」フリフリ
妹「ばッ……」
バタンッ
>>83
分かっててネタを言ってるから大丈夫だよ
姉「そう言えば……」クンクン
妹「……離れて」
ドンッ
姉「……」
妹「怒れば」
姉「えー、私の誘いには乗ってくれなかったのに! お姉ちゃん、ショック!」
妹「……え」
姉「……えへへ」ニコ
妹「むかつく顔……」スリスリ
姉「どうしたの? 寒い?」
妹「お酒飲んでから、寒気が」
姉「……」
姉(急性アルコール中毒の初期症状じゃない……あのピアス殺す)
妹「酎ハイ1缶の半分くらいしか飲んでないのに」
姉「弱いんだね。ここは空調が低めに設定してあるから、私たちも外出ようか」
>>91
へへ
妹「もう少し、いてもいい……?」
姉「……いいよ」
妹「……」ブル
姉「肝臓の辺りを温めるといいって言うけど」
妹「肝臓? どこらへん?」
姉「右胸の下よ」
妹「……」
ペタ
姉「……」
ガシッ
姉「手、冷たッ」
妹「お姉ちゃん、なんでそんなに暖かいの」
姉「これは、あれだわ。妹ちゃんを温めるためだわ、きっと」
妹「ばか……」
姉「どれ、ちょっくら」
妹「いいよ、やめて」
パシッ
妹「イルカ見よ?」
グイッ
トテトテ
姉「ええ……」
妹「おっきい……」
カル「……」クリン
フィン「……」クリン
スイー
妹「……」
トテトテ
姉「……」
妹「イルカってさ、性欲強いよね」
姉「唐突にどうしたの……」
妹「……」チラ
姉「なによお」
妹「ううん……」
姉「ちなみに、そこの二匹は姉妹だからね」
妹「そうなんだ」クルン
スイー
妹「……」ジ
妹(寄り添って、泳いでる……お互いしか見てないみたい)
妹「お姉ちゃん……」
姉「はい!」
妹「……なんで、そんな返事」
姉「だって、妹ちゃんと二人きりで……」
妹「緊張してるの?」
姉「ええ……ッ」
妹「いつものことなのに」
姉「雰囲気のせいだわ」
妹「ふーん……」
姉「あ、ここね、もうすぐ30部屋くらい仕切りができて、泊まり込みで鑑賞できるようになるんだって」
妹「そうなんだ、凄い」
姉「楽しそうよね」
妹「……いつできるの」
姉「今月中にはできるらしいけど、予約自体は冬になるって」
妹「お姉ちゃん、行くの?」
姉「もちろん」
妹「……一緒に」
姉「……うん」
妹「ううん、なんでもない」
姉「なら、私が言うね……教授に値切らせるから、妹ちゃんも一緒にいこう。安くなるよ」
妹「安くなるの?」
姉「安くさせるわ。お姉ちゃんの手腕をおなめでないよ」
妹「じゃ……行く」
姉「約束よ」ニコ
妹「うん」
おまけおわり
今度こそおしまいです。
ありがとうございました。
乙
この姉妹でもっと進展したのも読んでみたい
のんのん待ってた人
あんまギャグとかほのぼのは得意じゃないんですが良ければ
たぶん唐突に百合ったりエロったりします
なっつんびより - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442411881/)
なっつんびより
>>99
お泊りアクアリウム無言のイチャラブ編、書いてもいいのよ
夜更けの影送りも待っとるで
>>103
頑張ります
プロットみたいなのはできたから
後はゴーストライター欲しい……
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません