頻繁に見る夢がある…
少女が歌っている。
黒い巨大な生き物が叫んで、終わった世界に一人でいる。
彼女がドヴァキンと言う度、俺は呼ばれている気がした。
「小僧、自分の食い扶持くらいは稼げるようにはなってきたじゃないか」
「…………」
渡された麻袋には少しの金が入っている。
スリで稼いだ金の、俺の取り分だ。
「で、だ。小僧、お前に任せたい仕事がある」
上司にあたる、…のか? 仕事をくれる男は、そう言った。
農園の一部を焼く仕事。
今までの単調な仕事じゃない、
「お前もそろそろこういった仕事に手を出してもいいころだろう」
上司…ブリニョルフは言った。
~
俺は盗賊を稼業にしている。
盗賊が集まってできた組織…ギルド。そのアジトから素早く出る。
盗賊だという事が、バレないにこしたことは無いからだ。
アジトの入り口から出た俺の姿を見た者はいない。
目的地へ向かった。
~
盗賊が農園を襲う理由は単なる脅しだ。
農園とある契約をして利益を出している我がギルドにとっては…
今回の裏切りは許せるものではない。
(……警備の数が普通じゃない)
農園の主も、報復を予知しての行動らしい。
農園はハチミツを作っている、今回は蜂の巣を焼き払う事で報復を示す。
『可能なら金庫から金も奪ってこい』
ブリニョルフの指示だ。
忍び込もうとするところに正面から入る馬鹿はいない。
農園を囲む湖の中を進み、下水道から侵入する。
(武器が錆びないか心配だ)
鉄のダガーが俺の武器だが、錆止めなどの加工はしていない。
水気はとっておく。
下水はどうやらドブネズミの巣窟のようだ。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません