・銃皇無尽のファフニールⅨのネタバレあり
・現在の戦いの話が終わった後を想定して書いてます
・前スレがありますが、話のつながりは無いのでここからでも平気です
・色々とオリジナル要素があります。ご了承ください
・Ⅹ発売前に紫音、イリス編を書き終わったらアリエラ編は次スレで進行します
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前スレ
【ファフニール】シャルロット「人型ドラゴンとつがいの"D"の精神的変化」
【ファフニール】シャルロット「人型ドラゴンとつがいの"D"の精神的変化」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436547859/)
シャルロット「人型ドラゴンとつがいの"D"の精神的変化」2
シャルロット「人型ドラゴンとつがいの"D"の精神的変化」2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438500131/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440851611
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キャライメージ
・前スレメインヒロイン
物部深月
http://i.imgur.com/koHwfXL.jpg
レン・ミヤザワ
http://i.imgur.com/n4Xv0E5.jpg
キーリ・スルト・ムスペルヘイム
http://i.imgur.com/S5NATtQ.jpg
フィリル・クレスト
http://i.imgur.com/58u469g.jpg
リーザ・ハイウォーカー
http://i.imgur.com/bBicabd.jpg
ティア・ライトニング
http://i.imgur.com/drDkh6O.jpg
・その他レギュラー
物部悠
http://imgur.com/2ueiimT.jpg
シャルロット・B・ロード(金髪)
マイカ・スチュアート(メイド)
http://imgur.com/t5bTvEk.png
今回は紫音編から先に書きます
書き溜めあまりしてないのでのんびりお待ちください
※ここのオリジナル設定ですが、紫音が作中で成長すると会話に影響が発生します
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キャライメージ
紫音・ツヴァイ・篠宮
http://i.imgur.com/dI5djqv.jpg
ジャンヌ・オルテンシア
http://i.imgur.com/Yl41g37.jpg
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ある日の夜
ジャンヌと紫音の部屋
ジャンヌ「……」チラッ
紫音「……」スースー
ジャンヌ(ツヴァイの変化か……いったいこの子はどんな風に成長していくんだろう)
ジャンヌ(オレはツヴァイの顔を見ながら、学園長の話を思い出した――)
――――――――――
回想
学園長室
悠「つがいになった"D"たちの変化の調査……ですか?」
シャルロット「うむ、そうだ。物部悠、そなたは前例が無いことをしてくれたから今後何が起こるか予想することが出来ない」
シャルロット「そのため、そなた達には彼女達と普段通り接触しつつ、何か小さいことでも変化があったら私に報告して欲しい」
悠「確かに、俺たちが気づかない間に取り返しのつかないことになっていたら、対処のしようがないですからね」
ジャンヌ「えっと……隊長が呼ばれるのは分かりますが、どうしてオレも?」
シャルロット「そなたはクラーケン・ツヴァイ……今は紫音・ツヴァイ・篠宮だったか。とにかく彼女と最も身近な関係だ。物部悠たちが学校に通っている間でも一緒にいられるから観察することはいくらでも可能であろう?」
ジャンヌ「ま、まあ確かにそうですけど……」
シャルロット「だから、そなたに頼むのが適切だと判断したのだ」
ジャンヌ「そうですか……」
シャルロット「それに、ドラゴンとして生まれ……人間として形質を変えられた彼女は特例中の特例だ。今はよくても、今後どうなるか想像がつかぬ。今は人間よりでも、成長したらドラゴンとしての一面が強く出て人としての面を失うかもしれん」
ジャンヌ「……ツヴァイは、オレがちゃんと人として育てあげます。もし正気を失いそうになっても、オレが止めて見せます!」
悠「ジャンヌ……」
シャルロット「なら、引き受けてもらえるか?」
ジャンヌ「はい、オレに任せてください!」
シャルロット「いい返事だ。私のほうからもサポートはするが、頼んだぞ」
ジャンヌ「はい!」
悠「俺からも、可能な限りサポートはするぞ、ジャンヌ」
ジャンヌ「隊長がいれば百人力です。一緒に頑張りましょう!」ニコッ
悠「ああ、もちろんだ」ニコッ
――――――――――
現在
ジャンヌ(――あの時はついああ言ったけど、オレは隊長達と違ってつがいのこととかしっかり理解しているわけじゃないから今度訊かないと……)
紫音「んっ……ママ? まだオきてたの?」キョトン
ジャンヌ「ちょっと考え事をしていてね。オレも今から寝るよ」ナデナデ
紫音「んっ……」ウツラウツラ
ジャンヌ(この子のために、オレが出来ることを探さないと……)
とりあえず今はここまでです
書き溜めてからまた続きを書いてきます
――――――――――
次の日の昼
ジャンヌと紫音の部屋
ジャンヌ「で、ここはこうしてこうすると……」
紫音「これをこうして……これでいいの?」
ジャンヌ「そうそう。で、ここはな――」
―――――
数時間後
紫音「……おもしろい」ペラッ
ジャンヌ(ツヴァイは知識を蓄えるために色々なことをしている。今はこうして子供でも読める絵本を読んで楽しんでいた。絵本を読むためには字が理解できないといけないので最初はオレが読み聞かせながら読んでいたけど、今はひらがなくらいならすらすらと読める)
ジャンヌ(こうして少しずつ勉強を教えるのはいいけど、オレはあまり教えるのは得意じゃないから大変だ。こういう時は隊長に連絡して……)ピッピッ
Prrrrrrr
悠『ジャンヌか、何か用か?』
ジャンヌ「隊長、誰か勉強を教えるのが得意な人はいませんか?」
悠『居なくは無いが……何かあったのか?』
ジャンヌ「はい、ここ最近ツヴァイに勉強を教えているのですが……オレには少し向いてなくて誰か代わりにしてもらえたらと思いまして」
悠『そうか、ならこっちで何人かに声をかけて頼んでみる』
ジャンヌ「ありがとうございます!」
悠『紫音に色々と教えてあげたい気持ちはよく分かるからな。これくらい大したことじゃないさ』
紫音「パパと、おハナシしてるの?」ジーッ
ジャンヌ「うん、そうだよ」
悠『お、紫音か。楽しんでるか?』
紫音「うん……パパはいつ、アいにキてくれるの?」
悠『今すぐには難しいけど、休みになったら会いに行くよ』
紫音「ワかった。マってる」コクッ
悠『ああ。ところで最近、ママと勉強しているらしいじゃないか』
紫音「うん。イロイロなコトをシるコトはタノしいから……」
悠『勉強熱心なんだな。偉いぞ』
紫音「ありがとう……パパ」ニコッ
悠『どういたしまして。そうだ、もし出来たら今度、勉強を教えてくれる人を連れてくるからその人にも教えてもらうといいぞ』
紫音「オシえてくれるヒトは、パパじゃない……の?」
悠『ああ、俺じゃない誰かだ。楽しみにしていてくれ』
紫音「うん」
ジャンヌ「連絡、待ってますね」
悠『ああ。それと、俺と話したくなったら夜中や午前中じゃなければいつでも構わないからな』
ジャンヌ「はい、分かりました」
紫音「また、おハナシしようね……パパ」
悠『楽しみにしてるぞ』
――――――――――
次の日の放課後
深月の宿舎 悠の部屋
紫音「……」キョロキョロ
ジャンヌ「ここが、隊長の部屋……」
悠「あまり物がないから、殺風景だろ?」
ジャンヌ「そんなことはないですよ、オレ達の部屋よりはごちゃごちゃしてませんし……」
悠「やっぱり紫音が色々と出しっぱなしにしていたりするのか?」
ジャンヌ「はい……そんなところです」
ガチャ
深月「お待たせしました」カチャカチャ
リーザ「お茶の準備をして遅くなりましたわ」カチャカチャ
悠「お疲れ、深月、リーザ」
リーザ「礼には及びませんわ」
深月「では、早速始めましょうか。その前にまず、今まで勉強した部分を把握したいのでそちらを教えてください」
ジャンヌ「分かった。えっとこの教科書のここからここまでを――」ピッピッ
深月「思ったよりは進んでいるみたいですね」ブツブツ
リーザ「ええ……ここから先は基礎が出来ていればきっと出来る範囲ですわね」ブツブツ
ジャンヌ「ど、どうだ? 何とかなりそうか?」
深月「大丈夫だと思いますよ。でも、言葉の理解度はまだ足りないようなので、今日はこちらを行っておきましょう。」
リーザ「言葉を覚えることは大切ですわね。わたくしも協力しますわ」
紫音「……よろしく、ミツキ、リーザ」
深月「はい」ニコッ
リーザ「ええ」ニコッ
――――――――――
数日後
ジャンヌと紫音の部屋
紫音「……カッコイイ」ペラッペラッ
ジャンヌ「そのマンガ、面白いか?」
紫音「……うん、面白い」
ジャンヌ「よかったな。フィリルが貸してくれて」
紫音「うん……」
ジャンヌ(二人の教え方がうまい事もあって、ツヴァイは着実に言葉を覚えていった。絵本からマンガに読むものを変えてみたところ、オレに聞く回数も減ったしとても楽しそうだ)
紫音「……そろそろ学校が終わる時間だから、準備をしないと」パタン
ジャンヌ「もうそんな時間か、オレも準備をするかな」
ジャンヌ(ツヴァイの成長をこうして見守るのが、今のオレの何よりの楽しみだ。きっと子供を育てる親は今のオレみたいな楽しみがあるんだろうな……)
――――――――――
夜
シャルロット『ふむ、中々の成長の早さだな』
ジャンヌ「はい、オレもツヴァイの理解力の高さには驚かされます。深月達の教え方のうまさもあると思います。他にも――」
シャルロット『あー、とりあえず彼女の成長についてはもう十分だ。それより様子がおかしいかったり、いつもと少し違うだったり、そういった変化は見られたか?』
ジャンヌ「いえ……今のところはないですね」
シャルロット『そうか。では引き続き、観察して何かあれば報告を頼むぞ』
ジャンヌ「はい、分かりました」
シャルロット『では、失礼する。しっかり寝るのだぞ』プツッ
ジャンヌ「……」チラッ
紫音「……」スースー
ジャンヌ(……こんな可愛らしい寝顔を見せるこの子が、そんなことをするとは思えないけどな。いい子に育ってくれよ、ツヴァイ)
今日はここまで
なるべく日を空けずに投下できるよう努めます
ちょっと今書いてる部分がうまく纏まらなくて時間が掛かってます
もう少しお待ちください
お待たせしました
少しだけ投下します
――――――――――
休日
地下演習場
アリエラ「それじゃあ三回落としたら罰ゲーム、ビーチバレー(屋内)を始めるよ! 渡す相手の名前を宣言しながらトスをあげてね! 準備はいいかな?」
深月「いつでもいいですよ」
リーザ「もちろんですわ」
ティア「準備オーケーなの!」
紫音「……」コクッ
アリエラ「じゃあボクから行くよ。ティア!」ポーン
ティア「リーザ!」ポーン
リーザ「紫音さん」ポーン
紫音「……ミツキ」ポーン
深月「えっと、アリエラさん」ポーン
アリエラ「深月……と思わせてリーザ!」ポーン
リーザ「えっ、ちょ、ちょっと……」
ポーン ポンポン
アリエラ「リーザが落としたからこれでペナルティ1だね」ニコッ
リーザ「今のはズルイですわ! ミツキさんに回したと思っていたのに!」プンスカ
紫音「……アリエラ、頭いいかも」ボソッ
ワーワーキャーキャー
悠「皆楽しそうだな」
ジャンヌ「はい。ところで休みなのにここを借りて良かったんでしょうか?」
悠「大丈夫だ。深月も篠宮先生も許可してるし、紫音がこうして遊ぶためには外だと誰かに見られるから仕方がない。それに」チラッ
遥(紫音が皆と仲良く楽しく遊んでいて、本当に良かった……)ホッ
ジャンヌ「……先生もツヴァイを見るためにわざわざ来てたんですね」
悠「ああ。妹の遺した娘のようなものだからな、普通のことなんじゃないか?」
ジャンヌ「確かに、何となく分かる気はしますけど……」チラッ
遥(ふふふ、本当に可愛いなあ)パシャパシャ
ジャンヌ「アレはちょっと……親バカだと思います」
悠「……だな」
ティア「ユウー! ユウも一緒に遊ぶのー!」ブンブン
紫音「……ママも、遊ぶ?」
悠「そうだな、俺も参加するかな」
ジャンヌ「よし、気合入れていくか!」
深月「二人には特別ルールを用意しておりますが――」
悠「やめろ! 理不尽なルールはもうやりたくない!」
ジャンヌ「?」
ジャンヌ(この後、特別ルールにより理不尽な屋内ビーチボールが始まって、オレと隊長は縦横無尽にボールを追い回すことになった……何でオレも巻き込まれたんだ)
――――――――――
ジャンヌ(平日は勉強を中心に、休日はこうして屋内で遊べる球技などを中心に遊び、隊長と友人達に囲まれて人間としての生き方を学んでいった)
ジャンヌ(でも、ツヴァイが幸せそうな様子を見て、オレは安心しきっていた……与えられた任務を忘れていたことにより、ある変化を見落としていたことを――)
今日はここまで
投下遅くなってごめんなさい
この後は結構書けてるので明日中に紫音編完結目指します
集合時間を一時間ほど間違えられて暇ができました
やっと書き上がりましたので朝ですが投下します
――――――――――
ある日
ジャンヌと紫音の部屋
紫音「ママが居ないと、この部屋もサビしい……」
紫音「フィリルから借りた、このマンガでも読もう」パラッ
数時間後
紫音「……面白かった。十五冊もあったけど、すらすら読めた」
紫音「このマンガには、興味深いことが書いてあった」
紫音「コイというものは、特別な人に対してイダく感情……ワタシがパパを特別な人と思った感情と……似てる」
紫音「でも、ママはパパに対して特別な何かを感じても、それは親代わりの者へイダく感情だって……ワタシに説明した」
紫音「このマンガと、ママ。どっちの話が、本当のこと?」
紫音「……」
ガチャ バタン
ジャンヌ「ただいま、ツヴァイ」
紫音「……おかえり、ママ」
ジャンヌ「ツヴァイ、何か少し元気がないみたいだけど、寂しかったか?」
紫音「……うん」
ジャンヌ「そうか……ごめんな、寂しい思いをさせて」ナデナデ
紫音「ううん……今日はパパ達は授業があるし、ママもお仕事があったから、仕方がないと、思う」
ジャンヌ「ツヴァイはいい子だなー。でも、次からはマイカさんに頼んで面倒見てもらえるようになったから、一人ぼっちで待たせることはなくなるから心配しないでくれ」ニコッ
紫音「うん、分かった」
紫音(ワタシは、ママにウソをついた。本当はコイというものとママが教えてくれたことについてナヤんでいただけなのに……)
紫音(でも、ママの言っていることがウソだと思いたくはなかったから、聞くことが出来なかった)
紫音(パパなら、この感情について……教えてくれるかな?)
――――――――――
数日後の休日
深月の宿舎 深月の部屋
イリス「やったぁ! あたしが一位だね!」ニコッ
深月「イリスさんが気づいたら腕を上げていましたね……次は一位を取ります」グヌヌ
レン「たまたまイリスがいいアイテムを拾えたから勝てただけ……なかったら、わたしが勝ってた」ムスッ
ティア「ティアも次は絶対勝つの!」
ワイワイガヤガヤ
悠「皆ゲームに熱中して、楽しそうだな」
ジャンヌ「そうですね。オレが参加すると皆やりたがらないですけど……」
悠「そういえばこの前イリスから聞いたな。俺はまだ見たことが無いから一度くらい見てみたいな」
ジャンヌ「じゃ、じゃあ後で別なゲームで対戦でもしますか?」
悠「ああ、受けてたつぞ」
ジャンヌ「隊長との対戦、楽しみにしてます!」キラキラ
紫音(……ママと楽しそうに話してるけど、聞くなら今が良さそう)
紫音「パパ」
悠「ん、紫音か。何か用か?」
紫音「うん。パパに相談があって……」
悠「それは、俺以外は聞かないほうがいいのか?」
紫音「……うん」コクッ
ジャンヌ(オレには聞かれたくない相談? でも今まで悩みを抱えているようには見えなかったぞ?)
悠「分かった。俺は紫音と別室にいるから。皆にもそう伝えてくれ」
ジャンヌ「は、はい。分かりました……」
悠「じゃ、こっちについて来てくれ」
紫音「うん、分かった……」
ジャンヌ(……二人には悪いけど、オレもあとをつけさせてもらいます)
充電が切れそうなのでまた後で投下します
――――――――――
悠の部屋
悠「ここでなら多分、誰にも聞かれることはないだろう。椅子がこれしかないから、ベッドにでも座って話そうか」ポスッ
紫音「うん」ポスッ
悠「それで、俺に相談したいことはなんだ?」
紫音「えっと……ワタシがパパにイダいてる、この感情について、聞きたい」
悠「……続けてくれ」
紫音「うん。ママはこの感情を親代わりの者へイダく感情だって、教えてくれた」
紫音「でも、この前フィリルに借りたマンガで……この感情に似ている物をコイと言うことを、知った」
悠「……そこで、俺にどっちが正しいのかを確かめたいから、二人きりで話しをしたいと言ったのか」
紫音「うん」コクッ
悠「……ここ数週間で、あの頃会った時からとても成長したんだな」ナデナデ
紫音「そう……かな?」
悠「ああ。こんなに早く、気づくとは思わなかった……だから、紫音にきちんと教えよう」
紫音「……」
――――――――――
―――――
―――
残りは夜に投下します
では、終わりまで投下します
悠「とまあ、俺の理解している範囲での説明だったが、理解できたか?」
紫音「うん……」
パパからの話を聞いて、コイについて、ママがワタシに隠していた理由……それぞれの理解が出来た
でも、ワタシがパパにコイをしてはいけない理由はよく分からない
だから、パパに聞いてみることにした
紫音「パパ……どうしてワタシがパパにコイすることは、ダメなの?」
悠「……それは、さっきも言った通り紫音にはまだ早いって――」
紫音「どうして早いって、決めつけるの? ワタシはママやパパ、その他のミンナと違って小さいけど……パパに対してコイしているのは、本当のこと」
ワタシがパパの言葉を遮って意見すると、パパは言葉を詰まらせる
悠「そうだな……」
少し考えてから、また話し始めた
悠「……人間はな、年をとることに考えや感じ方が変わっていくんだ。今、紫音が抱いている俺を好きだという気持ちは、深月やイリスが思っている俺を好きだという気持ちと同じようで違うんだ」
紫音「同じようで……チガう?」
悠「ああ、そうだ。人間は丁度ティアくらいの年齢になると、思春期っていう子供から大人に変化していく時期があるんだ」
悠「身体的な変化が起こって、女性は女性らしく、男性は男性らしく明確な変化をする。これと同じ時期に、精神的な面も必ず変化するんだ」
紫音「精神的な……変化?」
悠「精神的な変化っていうのは、例えばこうして異性に身体を触られた時の反応だな」
そう言って、パパはワタシの頭を優しく撫でる。ワタシは心地よさで自然と笑みを浮かべた
悠「と、今こうして撫でて見たが、恥ずかしいとかそう言った感情はなかっただろう?」
紫音「うん」
悠「もし、全く同じことをイリスやママにしてみたとしよう。そうすると多分ほぼ確実に恥ずかしがって驚くはずだ」
紫音「……そうなの?」
ワタシが問うと、パパはああと返事を返す
紫音「それは、人間としては当たり前のこと、なの?」
悠「人によって個人差はあるけれど、多分そうだと思うぞ」
紫音「……そう」
悠「それで、さっき言った同じようで違うというのは、異性に対する認識が思春期を迎える前と迎えてからでは大きく違うんだ」
悠「前者では好きな異性と一緒にいると安心するだとか、楽しいだとか、そういう事が主らしい。つまり、異性という見方はあまりしていないケースが多いとされているらしい」
紫音「説明が少しアイマイだね」
悠「あまり詳しくないからな。続きを話すぞ?」
ワタシが頷くと、パパは説明を続けた
悠「で、対して後者の場合だと、その好きな人のことをふとした時に考えたり、妙に目で追ったり、とにかく意識してしまうんだ」
悠「そして意識していることに気づいて恥ずかしくなったり、悶々としたり……まあ、色々あるがこんなものか」
悠「この段階だと好きな人と結ばれたいだとか……俺達だとキーリや深月、イリス辺りが俺とつがいになりたいと思うのと近いかもしれない」
紫音「……でも、もうつがいになってるんじゃないの?」
ワタシが指摘すると、パパは苦笑しながら「まあ、そうなんだけどな」と言って、話を続ける
悠「でも、確かにいつも遊んだりしてくれる皆は俺のつがいだ。でも、つがいとしての行動は起こしていない……これには理由があるんだ」
紫音「……それは、何?」
悠「簡単なことさ……俺が彼女達の中から選んでないから、誰も俺に対して行動を起こせないんだ」
悠「ドラゴンは自分が見初めた”D”に触れることで強制的につがいにするが、人間の場合はどちらかがつがいになりたいと言って、それで相手が承諾をする……合意があって初めて関係が成立するんだ」
紫音「……例えてもらうと、分かりやすい」
悠「そうか、厳密に言うとまた違いがあるけど……伝わっていればいいか」
……ワタシは、パパの話を頭の中で整理して、自分にはまだ早いということが分かった
ドラゴンとして生まれた自分は、まだまだ人間そのものの理解が足りないし、過ごした年月の差がある
だから、他のつがいになった皆と同列に立てないという事はよく分かった
紫音「……思春期は、後どれくらいしたら、ワタシにも来るかな?」
悠「そうだな……十年くらいはかかると思うぞ? 個人差はあるが」
十年……そう聞いて、人間の成長はとても時間がかかるということに驚いた。その間に気づいたらもうパパは選んでしまっているかもしれない
いや、多分選ぶだろう
ワタシはその土俵にすら立てないまま、終わることを悔しいと思った
でも、今ここで諦めるという考えはなかった
ワタシのこの気持ちはイリス達とはまた違うのかもしれないけど、パパのことを好きであることに変わりは無いから……今しかない
そう思ったワタシは、意を決して動き出した
紫音「……それでもね、パパのつがいとして、選ばれたい」
悠「紫音……でも、俺はまだ決めかねて――」
紫音「選ばれない可能性が高いなら……ワタシには……こうするしか、ない!」
この時、ワタシの身体に変化が起きた。髪の色が銀色になり、意のままに操れることが確認できた
これなら、逃がさないことが可能だと直感で理解した
悠「し、紫音……その姿は……」
紫音「……」
ワタシは答えずに髪を操る
パパ素早い身のこなしで避けようとしたけど、ワタシの方が早く動いていたために捕らえることは容易かった
パパの四肢にに髪を絡みつかせる。間違っても傷を負わせないように慎重に、素早く
悠「くっ……紫音、やめろ!」
パパは振りほどこうともがくけど、この拘束はよほどのことが無い限り外れない。ワタシはそのまま押し倒して顔を近づける
紫音「ワタシは……パパのつがいにエラばれたい……どうしても」
ワタシは更に顔を近づけて……キスをしようとした
その時……ドアが開く音がした
――――――――――
オレはあとをつけてこっそりと盗み聞きをしていたが、部屋の中で激しい物音が聞こえるとすぐにドアを開けて部屋に入った
そこでオレはツヴァイが隊長にキスしようと顔を近づいている光景が見えた
ジャンヌ「ツヴァイ……」
紫音「ママ……」
突然の乱入に、ツヴァイが困惑しているのが見て取れた
オレはあくまで怒らず、冷静にツヴァイに問いかける
ジャンヌ「ツヴァイ……どうして、こんなことをしているんだ?」
紫音「それは……つがいとして、パパとのコドモがホしい……から」
おおむね、予想通りの答えだった。だけど、この子にはまだ早すぎる
ジャンヌ「……ダメだ、まだツヴァイには早すぎる」
紫音「ドラゴンでも”D”でもないママがキめられるコトじゃ……ない」
ジャンヌ「……でも、パパは無理矢理することを望んではいないだろ?」
紫音「……」
ツヴァイもそれは理解しているようで、指摘をされると黙りこんだ
悠「ママの言うとおりだ。俺はこんな形は認めたくない」
悠「これ以上、紫音がつがいであることに執着するのなら、俺も黙ってはいられないし、今の保護されている状況もひっくり返されるかもしれない。紫音を危険に晒すことはしたくないんだ」
紫音「……そうなると、パパもアブないコトになる?」
悠「ああ、きっとそうなる。ママも巻き込まれるかもしれない……だから、な?」
紫音「……」
隊長の説得に、ツヴァイは身体を起こして考え始める。しばらくすると、髪による拘束を解き、銀色に変色していた髪は紫色へと戻った
悠「良かった……ちゃんと考え直してくれて」
紫音「……パパとママがみんなと仲良く出来なくなるのは……イヤ。だから、ガマンする」
ジャンヌ「ツヴァイ……」
紫音「でも……一つだけ、パパにワガママを聞いてほしい」
悠「ん? なんだ」
紫音「…………キス、したい」
悠「なっ……」
ジャンヌ「」
オレは大声で叫びそうになるのを堪えた
隊長は赤面してオレの方にアイコンタクトを送ってくる。どうやらすべきか否か悩んでいるようだ
普通ならオレはここでダメだと言うべきだけれど……ツヴァイが瞳を潤ませているのを見てしまい、なかなか言い出せる雰囲気ではなくなっていた
ジャンヌ「…………オレは知らなかったことにするから、後は隊長がするかしないか、決めてください」
悠「ジャンヌ……」
ジャンヌ「もちろん、それ以上の事はダメですよ! ツヴァイもそれ以上のワガママはしちゃダメだからな!」
紫音「うん……分かってる」
ジャンヌ「じゃ、じゃあオレは部屋の外にいますから……早いところ決めてください」
オレは足早に部屋を飛び出した。この後どうなったかは、見なくても容易に想像が出来た
――――――――――
紫音「……それで、してくれるの?」
俺は、瞳を潤ませて見つめてくる紫音を見て、断れるわけがなかった。だが、そこから躊躇って踏み出せずにいる
悠「…………もし、したらちゃんと我慢できるのか?」
紫音「うん……絶対、ガマンする」
悠「そうか……なら、まずは身体を起こしたいからどいてくれ」
紫音「分かった……」
紫音が横に避け、俺は身体を起こした。そして膝の上に向き合うように紫音を座らせた
悠「…………目を、閉じてくれないか」
紫音「うん」
紫音が目を閉じると、俺は抱き寄せて高さを合わせる。そして、顔をゆっくりと近づけて――
――キスを交わした
紫音「……」
悠「……」
数十秒ほど唇を重ねてから、ゆっくりと離れる。紫音は目を開けてうっとりとしていた
紫音「これが、幸せな気持ち……かな?」
紫音の瞳から、一筋の涙が零れ落ちる。でも、そこに悲哀さはなく、喜びに満ちていた
悠「ああ、きっと……そうだと思う」
俺は、紫音の頭を優しく撫でながら、答えた
――――――――――
翌日
学園長室
シャルロット「……まったく、気をつけろと念押しをして置いたというのに。彼女が問題を起こしてしまった以上、そなたらには罰を与えねばならん」ハァ
ジャンヌ「……すいません、オレがしっかり見ていなかったばっかりに」
悠「俺も、何があるか分からないのに不用意に紫音と二人きりになって……すいません」
シャルロット「まあ、しっかり教育をして……ちゃんと止められたのはそなたらの働きがあってのことだ。そこの評価を差し引きして、罰を軽くしようではないか」ニコッ
悠「本当ですか?」
シャルロット「二言はないぞ」
悠「あ、ありがとうございます」
ジャンヌ「良かった……」ホッ
シャルロット「た・だ・し……物部悠にはまた夜中に私と夜通しで付き合ってもらうぞ」
悠「うっ……またですか」
シャルロット「ふふふ、楽しみにしておくのだぞ」
シャルロット「そして、ジャンヌ・オルテンシアには……マイカが特注で用意したメイド服を着て、働いてもらうとしようか」ニヤリ
ジャンヌ「な、ななななな……お、オレにメイド服なんて似合いませんよ!」カァァ
シャルロット「何を言う、そなたは男装に慣れているからそう思うだけで、素晴らしい素体を持っておるのだぞ?」
ジャンヌ「で、でも……」
マイカ「諦めて、現実を受け入れましょう」ポン
ジャンヌ「……た、隊長」ウルウル
悠「……学園長、俺はもう用がない、ですよね?」
シャルロット「うむ、特にない」
ジャンヌ「たいちょおおおおおおおおお!!」
悠「……諦めてくれ、俺には無理だ」スタスタ
その後、ジャンヌがメイド服を来た画像をシャルから見せられ、不覚にも少しいいと思ってしまった
紫音編 終わり
本編はここで終わりです
おまけを書こうか悩んでいるのですが、書いたほうがいいでしょうか?
――――――――――
シャルロット「人になったドラゴン……今回はどんなことが起こるかと思えばドラゴンの時の力を使用できるようになったということくらいか」
シャルロット「でも、しっかり学ばせれば十分な戦力になるだろう。コントロールはあの二人に任せる他無いが、新種のドラゴンが現れた時にでも活躍してもらおうか」
シャルロット「……無垢な彼女なら、私が多少好き勝手してもきっと疑問に思いながらも乗ってくれるのではないか? これは是非試してみないと――」
マイカ「シャルロット様」ニコッ
シャルロット「……冗談だ」
今回は紫音がちゃんと活躍していないこともあり、大苦戦してました
よしいけると思っていた約2週間前の自分にちゃんと練り直せと言いたいです
地の文入った辺りから色々変な部分があると思いますが、悠が何とか諦めて貰おうと少し焦りながら言い逃れしようとしている状態だと思って再度読めばいいかと思われます
ここら辺はちゃんと調べているわけではないので……
地の文を使ったのは単純にいつか長編書きたいのと、こういうシーンはこっち使ったほうが映えるかなと思って使っています
おかげでここを書ききるのにも数日かかりましたが
長くなりましたが、紫音編についてはこれくらいにしときます
イリス編については、今回の反省を活かして、ちゃんと練って書くことにします
数週間はかかると思ってください
シルバーウィーク辺りに、これとは関係ないファフニールのSSを投下予定です
勘のいい人は、すぐ分かると思います
では、ここまで読んでくださり、ありがとうございました
紫音の台詞周りについて補足忘れてたので追記
紫音の使う漢字は「小学校で習う漢字 チェックツール」というもので小学六年生までに使用している漢字かどうかを確認して書いています
そうでないものは原作通り片仮名です
ただし、地の文に関しては読みやすさ重視で無視しています
途中、片仮名に戻っているのはドラゴンの姿に一時的に戻っている間だけで、そういう演出を込めてあのような形にしました
紫音()みたいな書き方は適さないと思ってのことです
以上、補足でした
>>64について訂正
>シルバーウィーク辺りに、これとは関係ないファフニールのSSを投下予定です
日にち間違えた、シルバーウィークではなく今週末です
まだこっちは待っててください
代わりにこっちでも
アリエラ「赤いリボンのおまじない」【銃ファフ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443279611/)
イリス編はもうちょい待っててください
と、生存報告だけ
遅くなりましたが、投下します
後、酉を変えます
・キャライメージ
イリス・フレイア
http://i.imgur.com/FGWgOLP.jpg
――――――――――
ねえ、モノノベ
なんで、何も答えてくれないの?
モノノベが……どんどん遠くへ行っちゃう
待って、待ってよ!
何で……追いかけてるのに追いつけないの!?
モノノベが……見えなくなっちゃった
えっ……何で……あなたはあたし達が倒したはずじゃ
こ、こっちに来ないで!
はあっ、はあっ……な、何で逃げられない、の……
――我は、蒼き竜に顕現を妨げられた
やめて……来ないで……
――貴様に代わり、その身体を使い……蒼き竜を討ち滅ぼさん!
いやあああああああああああああああ!
――――――――――
夜中
イリスの部屋
ガバッ
イリス「はあっ……はあっ……」
イリス「い、今の夢は一体……」
イリス「……あの戦いの時、確かにモノノベに”人間”に戻してもらえたはずなのに、何でバジリスクがあたしの夢に出てきたの?」
イリス「……怖いよ、モノノベ」
――――――――――
今日はここまで
明日にまた少し投下する予定です
朝
ブリュンヒルデ教室
悠(そろそろHRが始まるのに、イリスがまだ来ないな)
タタタタタ ウィィン
イリス「ま、間に合った-!」
悠「おはよう、イリス。今日もギリギリだったな」
イリス「おはよう、モノノベ。また寝坊しちゃって……」
悠「寝坊か……なるべく早く寝るようにしたほうがいいんじゃないか?」
深月「兄さんも、もう少し自分で起きられるようになって欲しいのですが……」
悠「うっ……さ、最近は前よりは起きられているだろ?」
深月「回数は減りましたが、なるべくなら起こすことがないようにして欲しいです。兄さんが寝坊すると、私も遅刻する可能性がありますから」
イリス「あはは……」
キーンコーンカーンコーン
遥「席につけ、HRを始めるぞ」
イリス(……昨日の夢のこと、言ったほうがいいのかな?)
―――
――
-
放課後
悠「久々の授業で疲れたな」
イリス「体育で身体を動かしたから、あたしも疲れちゃったよ」
深月「二人とも、今日は早めに寝て、身体を休めてください。私は生徒会があるのでお先に失礼します」
悠「ああ。生徒会、頑張れよ」
イリス「ミツキちゃん、またねー!」
悠「……じゃあ、俺達も帰るか」
イリス「えっと……その前に、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど、いいかな?」
悠「構わないが……どうした?」
イリス「えっとね……昨日夢に見たことなんだけど――」
悠「……妙な夢だな。どうやら俺に対して恨みがあるようだな」
イリス「紫音ちゃんとの戦闘でバジリスクになりそうだったあたしを、モノノベが救ってくれたからかな?」
悠「そうかもしれないな。でも、イリスの夢に出てきたのは何故だろうな」
イリス「わからない……でも、ただの悪夢って感じじゃないと思うの」
悠「……とりあえず様子を見よう。今日も同じような夢を見た場合は、学園長やヴリトラに相談したほうがいいだろうが、偶然の可能性もあるからな」
イリス「うん。怖いけど……早とちりで迷惑をかけるのも良くないから、モノノベの言うとおりにするよ」
悠「またつらい思いをさせてしまうかもしれないのに……これくらいのことしか出来なくて、すまない」
イリス「ううん。真剣に考えてくれて、あたしは嬉しいよ」
悠「イリス……」
イリス「……そろそろ、あたし達も帰ろう?」
悠「そうだな。途中まで送っていくよ」
イリス「ありがとう、モノノベ」
――――――――――
今日はここまでです
今後は七体のドラゴン倒しながら更新できたらします
30日になるまでには完結させる予定です
では投下していきますね
その前にちょっとだけ足りてない部分を追加する
>>75の次にこれ追加で
――――――――――
ニブルによるミッドガルへの侵攻が収束し、死者を出すことなくニブルを追い払うことが出来た
その日からしばらくの間、ニブルからの攻撃で壊れていた学園を学園長が様々な方面から手配して修復をさせ、一週間前にやっと学校が再開した
ブリュンヒルデ教室では、長い間戦い詰めだった反動か……今までどおりの日常に戻れたことを喜んでいた。まだまだ問題はあるが、今後ゆっくりと学園長が解決策を考えていくようなので、しばらくは任せてのんびり過ごすことにしていた
あんな事が起きるとは、この時は誰も思ってもいなかった……
――――――――――
その日の夜
――我の力を完全に受け継ぎし者よ
――蒼き竜を討つため、我の復活のために……
――我にその身を捧げよ!
えっ? な、なんでドラゴンの姿からあたしの姿に? 前の夢の時も……
――貴様の身体に我の意志が浸透しているからだ
――蒼き竜のつがいになったせいで時間はかかるが、もう少しで我の物となるだろう……
そ、そんな……
――さあ、本来なら起こりえた運命を受け入れて、忌々しい蒼き竜を討ち倒そうではないか!
い、嫌! モノノベはあたしの大好きな人だから、そんなことは絶対にさせない!
――我をまだ拒絶するか……なら、侵蝕を早めるだけだ
嫌……こ、来ないで……
――我を……運命を……受け入れろ!
いやあぁぁぁぁ!
ガバッ
イリス「はあっ……はあっ……」
イリス「ま、またバジリスクが夢に出るなんて……今度はあたしの姿になっていたのは、ただの夢とは思えないよ」
イリス「……もしモノノベが居なかったら、リヴァイアサンのつがいにされていたかもしれない 」
イリス「この前の紫音ちゃんとの戦いでも、モノノベがつがいにしてくれなかったら、バジリスクになっていたかもしれない」
イリス「……バジリスクが言っていた運命って、あたしがドラゴンのつがいになることを言いたいのかな?」
イリス「……嫌だよ。このままバジリスクに乗っ取られたくないよ……」
イリス「ぐすっ……モノノベェ……」
――――――――――
次の日
イリス(あたしは昨日の出来事をモノノベに伝え、放課後に二人で学園長に相談しに行くことに決めた)
イリス(本当なら、ドラゴン関係で詳しいヴリトラちゃんや、全知回路(アカシックレコード)の権能を持つティアちゃんに聞くほうがいいのかもしれない)
イリス(でも、ヴリトラちゃんは滅多なことでは口を開いてくれないから、完全に手詰まりになった時にしようとモノノベと二人で考えて、今は聞かないことにした)
イリス(ティアちゃんに対しては、あまり不安にさせたくないとあたしが思ったから。なるべくなら皆に知られないまま解決できればいいと思ったんだ)
―――
――
―
学園長室
シャルロット「夢でバジリスクがそんな事を言っておったのか」
イリス「はい。ただの夢とは思えなくて……」
シャルロット「ふむ……確かに、ただの夢で片付けるわけにはいかない気がするな」
悠「それは、どうしてですか?」
シャルロット「理由は……そなた達の報告から立てた仮説に過ぎんが、話すとしよう」
シャルロット「イリス・フレイア。そなたは『第五権能(コード・フユンフ)――終末時間(カタストロフ)』を完全に継承し、上位元素を変換せずとも終末時間を使うことが出来る」
シャルロット「これは物部悠から一度聞き、ニブルによる学園襲撃が終わった後にヴリトラから聞いたことで分かったことだ」
シャルロット「そして、一度その権能による身体の進化で、そなたは『レッド・ドラゴン――赤のバジリスク』のように終末時間を使うドラゴンになるはずだった」
シャルロット「しかし、物部悠がそなたを見初め、つがいにしたことでドラゴン化が阻止され、人型のドラゴンという特殊な存在になったわけだが……」
イリス「え、えっと……」オロオロ
悠「イリス、大丈夫か?」
イリス「だ、大丈夫……」
シャルロット「……続けるぞ」
シャルロット「今回で物部悠により人の姿を保ったまま、ドラゴンのつがいになったそなた達は、私でもこれからどうなるのかは分からない」
シャルロット「ドラゴンの姿になってしまうかもしれないし、このまま人間の姿を保ち続けるかもしれない」
シャルロット「さらに言えば、成人になるか妊娠するかで消えるはずの能力が条件を満たしていても残り続けるかもしれない」
悠「……今のイリス達は、学園長でも予想出来ないということですね?」
シャルロット「まあな。しかし、今の時点であれこれ考えていても仕方がないことだな」
イリス「……」
イリス(モノノベのおかげで今があるのに、ドラゴンの姿になっちゃったら嫌だな……)
悠「……」
シャルロット「……さて、長々と話してしまったが、ここからが重要な話だ」
シャルロット「私は、つがいになった”D”だったそなたや、それ以外の乙女達がこれから何かしらの変化が起こるのではないかと考えている」
イリス「あたしに……変化?」
シャルロット「うむ。例えば……『ある日、突然身体能力が飛躍的に良くなった』とか、『身長が急に伸びた』と言った身体的な変化が一つ」
シャルロット「もう一つは……『以前はどうしても素直になれずに何を言われても心にもないことを言ってしまったが、最近は素直に話を聞き、素直に話せるようになった』とか、『物部悠が他の異性と仲良くしていても気にならなかったのに、最近はどうしても許せず嫉妬してしまう』と言った精神的な変化だ」
悠「何で最後に俺が出てくるんですか……」
シャルロット「わかりやすいと思ってな。他意はないぞ?」ニヤッ
イリス(学園長が楽しそう……)
シャルロット「でだ……物部悠のつがいになったことで食い止めていた本来の正当な進化を阻まれたため、何かしらの影響が出ていると思われる」
シャルロット「物部悠のつがいとして器であるそなたを留めようとしている何かしらの力と、第五権能の器を変化させている何らかの力がぶつかり合っているのかもしれん」
悠「もしかして……今のイリスが悪夢を見るのは――」
シャルロット「……器を留める力が押し負けていて、度々バジリスクの姿で夢に現れ、イリス・フレイアに語りかけているのかもしれんな」
イリス「そ、そんな……」
悠「……」
シャルロット「……一応、詳しいヴリトラにも聞いてみるとしよう。彼奴は私より詳しいからな」
イリス「は、はい……」
―――
――
―
本日はここまで
理由付けで悩んでやっと少しだけ投下出来た次第です
ところでナナドラの世界でDの少女達が戦うのも面白いと思ったけどどうすればミッドガルからノーデンスに転送させられそうですかね
今日も少しだけ投下します
ヴリトラ「まさかそのような事が起ころうとは……」
シャルロット「……そなたに聞きたい。イリス・フレイアのドラゴン化を止める方法はあるか?」
ヴリトラ「その者に今起こっている進化を食い止めることは……残念だが、不可能だ」
イリス「そ、そんな……」
悠(……やっぱりか)
シャルロット「……」
ヴリトラ「まあ、我からすれば今更であり、どうでもいいことだな」
シャルロット「そなた……よくも本人の前でそんなことが言えるな?」ギリッ
ヴリトラ「事実を言ったまでだ。それに……我は食い止める方法はないと言ったはずだ。そうだろう?」チラッ
悠「……」
シャルロット「……本当なのか? 物部悠」
悠「……はい。どうしても伝えられなくて……俺がつがいにしたから大丈夫だと思っていたので、今まで黙っていました」
シャルロット「……そうか」
イリス「……」
悠「イリス……ごめんな」
イリス「ううん……モノノベは悪くないよ。あたしを二回も助けてくれて……嬉しかったよ」
イリス「……もし、あたしがドラゴンになっちゃったら……迷わずに……ころ、し……」
悠「それ以上は……言わなくていい」ギュッ
イリス「……モノ、ノベェ……」ギュッ
ヴリトラ(……本当に、打つ手はないのか? 見たところこの者の身体に変化が見られないが……)
ヴリトラ「……泣いているところ悪いが、終末時間を継承した汝に聞きたいことがある」
イリス「ぐすっ……何?」
ヴリトラ「汝は、その夢を見始めてから身体に異変が起きたことはあるか?」
イリス「……ない……よ」
ヴリトラ「そうか……本来なら、ドラゴン化の前に必ず何かしらの変化があるはずなのだが……」
悠「言われてみれば……あの時と違って、イリスの身体に赤い鱗が全くないな……」
ヴリトラ「……賭けにはなるが、一つだけ方法を思いついた」
イリス・悠「「!!」」
シャルロット「……話してくれ」
ヴリトラ「良かろう。ただ、ここに居ない一人の協力が不可欠だ。勿論、汝らにも協力してもらうぞ」
悠「俺と学園長も必要なのか」
ヴリトラ「ああ。その方法なのだが――」
――――――――――
今日はここまで
やっと書きたいところまで進んだので今週中にケリつけられるかもしれません
次回の更新をお待ち下さい
続きを書きます
極東の七柱区読む隙がない
その日の夜
イリス「……」
あたしは、またいつもの夢を見た。でも、今までと違って夢の中という感じがしない
???「いつもと違う事にでも気づいたか?」
声が聞こえると、目の前にあたしと同じ姿をした人が突然現れる
イリス「あなたは……」
???「何度も貴様の夢に出た者だ。そして、これから貴様に代わり、この肉体を支配する存在でもある」
イリス「……」
???「いつものように、泣き喚かないのか? 我にとって変わられようというのに」
イリス「だって……これは本来は止めることが出来ない事なんだよね? なら、あたしがワガママを言ったってしょうがないから……」
???「ほう、やっと我を受け入れる気になったか」
イリス「うん……でもその前に一つ……聞いてもいいかな?」
???「構わん」
イリス「あたしがあなたに意識を乗っ取られた場合、今ここにいるあたしはどうなるの?」
???「教えてやろう……ドラゴン化した人間の意思は、権能の意思……我に喰われ侵食される」
イリス「 そ、そんな……あたしはやっぱり助からないの 」
あたしはどうしようもない絶望を感じて、その場にへたりこんだ。それを見るもう一人のあたしは、ため息をつきながら「本来ならばな……」と、付け加える
???「貴様は運がいい。蒼き竜に守られている今は、我に喰われないのだからな」
イリス「モノノベが……あたしを護ってくれているの?」
???「そうだ。例えば……」
もう一人のあたしは、物質変換で長い棒を生成した
???「貴様をこれで攻撃すると……」
突然、長い棒をあたしの顔に向けて振り下ろしてくる
イリス「きゃあっ!」
キィィィィィン
長い棒が当たる直前で蒼い障壁があたしを包み、そこで止まる
イリス「……い、一体何が起こってるの?」
???「これが、蒼き竜のつがいとなった貴様を守る障壁だ。つがいである限り、我は貴様を喰らい竜へとなれないということだ」
イリス「そ、そうなんだ……つまり、あなたがモノノベを殺そうとしている理由って……」
???「その忌々しい障壁を打ち破るためだ。奴を殺せば、きっとその護りは消えるだろう……きっとな」
もう一人のあたしは、決意を固めた表情をしていた
イリス「……でも、どうやって一時的にあたしの体を使って行動するつもりなの?」
あたしが彼女に問いかけると、突然指を指し――
???「貴様が知る必要は無い……眠れ」
イリス「え……あ、れ……」
――その言葉と共に、あたしの意識は途絶えた
――――――――――
今日はここまで
何度も予定日通りじゃなかったけど明日は投下出来ると思う
(今コレ見てくれてる人ってどれくらいいるんだろう)
今日も投下
夜
医務室
イリス?「……ここは、どこだ?」
目を覚ましてすぐ、あたりを見回してみる。詳しくは分からないが、機会で何かを計測しているのは分かる
イリス?「……どうやら、しっかりとこの身体を使うことはできるようだな」
起き上がり、腕や足が動くか試す。問題なし
イリス?「……さて、これくらいにして早く見つけなければな」
部屋を出て、とりあえず外を目指して歩く。建物内は暗いが、明かりが必要な暗さではない
しばらく歩き、外へ出ようとしたその時、背後から声がした
???「汝の探し物は蒼き竜か?」
イリス?「……誰だ?」
後ろを振り向くが、人影は見えない
ヴリトラ「我はヴリトラだ」
イリス?「なぜ貴様がここにいる」
ヴリトラ「そんなことはどうでも良い。今は蒼き竜の居場所の方が優先ではないのか?」
イリス?「……そうだな。早く居場所を我に教えろ」
ヴリトラ「この建物を出ると木々の生い茂った道があり、そこをずっと先に進めば砂浜のある海辺に出る。砂浜のどこかで、蒼き竜が汝の事を待っているぞ」
待っている? まさかヴリトラは蒼き竜と何かつながりがあるのか?
ヴリトラにそれを聞いても、答えようとはしなかった
イリス?「……まあいい、奴を打ち倒してこの身体を貰うことが最善だからな」
その場を立ち去り、砂浜へと向かった
――――――――――
今日はここまで
眠くて仕方ないから明日書き切れたらいいなと思いながら寝る
こんばんは
終わりまで一気に投下します
ヴリトラ「第五権能が目覚め、汝の元へ向かっているぞ」
灰から借りた端末を用いて、物部悠と連絡を取る
悠「分かった。俺も迎え撃つ心構えはしておく」
ヴリトラ「……我の手を煩わせるような醜態を晒すでないぞ」
悠「分かってる。俺一人で何とかしてやるさ」
通信を切り、我は空を眺める
ヴリトラ「さて……どちらの竜が勝つのか、楽しみだな」
心を踊らせながら、ゆっくりと砂浜へと向かった
――――――――――
海辺の砂浜
案内してもらった通りに歩くと、砂浜に到着することが出来た
イリス?「ここに蒼き竜がいるのだったな」
砂浜を歩いて目視で探す。しばらく歩いていると砂浜で突っ立っている人間を見つけた
???「待っていたぞ。イリス……いや、バジリスク」
イリス?「貴様は……ヴリトラの言う蒼き竜か」
悠「ああ、俺は物部悠……イリスをつがいにしたその蒼き竜だ」
第五権能「そうか……我は第五権能(コード・フユンフ)、バジリスクという古い器ではもうない」
悠「……イリスという器がいるからか」
第五権能「そうだ。だが、この器は我の思い通りに出来ないからな……我の進化のために……貴様を消し去る!」
悠「俺はお前に負けない……イリスを返してもらうぞ!」
今ここに、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた
――――――――――
悠「――AT・ネルガル」
俺は架空武装ではなく、使い慣れた非殺傷兵器を生成し、右手に構える。あくまでこちらの目的は極力傷つけずに捕らえることだから、これで気絶させるのが最良だと判断した
そして、俺は 自分の意識の底にある”悪竜(ファフニール)”を呼び起こす。終末時間を使うであろう第五権能に挑むためには欠くことはできない
第五権能「そのような旧時代の兵器で、我に勝つつもりか」
悠「ああ、俺は本気でお前に勝つ」
顔を顰める第五権能に、俺は真剣に応える
第五権能「そうか……なら、我は貴様をこれで消し去って見せようではないか――終末の杖(ケリユケイオン・カタストロフ)!」
第五権能は意識を集中させ、物質変換を行う。その見た目は、イリスが使う架空武装そのものだった
第五権能「……ふむ、この娘の記憶を探って再現してみたが悪くない」
悠「……準備は出来たようだな。行くぞ!」
俺は第五権能に向かって弾丸を射出する。当たればひとたまりもないが……
第五権能「……聖銀よ、成れ」
第五権能は即座にミスリルの防壁を生成し、弾丸を防ぐ
イリスと違って、防壁を張れるのか……なら一気に近づいてしまえばいい
俺は、第五権能に向かって駆け出す。それを見た第五権能はすぐさま上位元素を複数使い、俺の進行上に配置する
第五権能「聖銀よ、爆ぜろ」
複数のミスリル銀を生成して即座に爆発させる。俺は後方に退避し、何とか攻撃を回避する
爆発により煙が立ち込める中、俺は架空武装・ジークフリートを生成して構える
第五権能?「――滅せよ、終末の光!」
悠「斥力弾(アンチ・グラビティ)!」
第五権能の赤い閃光を、斥力場で軌道を逸らして回避する。もし架空武装を予め生成していなかったら、間に合わなかったかもしれない
第五権能「それは四番目(フィーア)の……やはり一筋縄ではいかないようだな」
悠「イリスを取り戻すまで、俺は絶対に負けられないからな……行くぞ!」
閃光の照射が終わると、俺はまた第五権能に向かって駆け出す。目で追えないくらいの速さで背後を取り、そのまま突撃する
目と鼻の先まで追い詰めたその時、俺の目の前に上位元素が複数配置される
第五権能「無駄だ」
先程よりも早く、ミスリル銀が生成され、その場で爆発する
悠「ぐああああああっ!」
爆発に巻き込まれた俺は、後方へ吹き飛ばされて背中から砂浜に倒れる
俺の予想以上に、上位元素を使いこなして戦っている。それに、俺の動きに合わせて正確に……まるであの時の戦いのように”予知”しているようだった
悠「ぐっ……」
爆発をもろに受けたせいか、全身がとても痛い。あの爆発で生きているのが奇跡と言えるほどだ。そんな俺に対して、第五権能は容赦なく追撃を加えていく
第五権能「動かねば、死ぬぞ?」
上位元素をまた俺の周囲に配置し、爆発させようとする。俺は痛む身体に鞭打ち、転がって爆発する前に回避をした
第五権能「くくくっ……見るからに情けない姿だな!」
またも上位元素を配置し、爆ぜろ爆ぜろと何度も爆発を起こして俺をいたぶる。俺は何度か避けられずに爆発を受け、砂浜に倒れ伏す
第五権能「あはははは! 蒼き竜よ、貴様は前の器を倒した時は他の者と群れていたな! それが一人では我に傷一つもつけずにこのザマだ! 情けないとは思わないのか!?」
悠「くっ……まだ、俺は……」
指先を動かし、落としてしまったジークフリートを掴む。震える手で銃口を向けるが、狙いがつけられない
第五権能「最後の足掻きか。だが、その厄介な物は使わせん」
第五権能はジークフリートを持った左手を蹴飛ばして、俺の頭を足で踏みつける
悠「がっ……」
第五権能「これで完全に打つ手なしだな……これで終わりだ、蒼き竜!」
第五権能は、杖を構えて終末時間の準備を行っていた。俺は身体が動かせず回避を取れない
このまま俺は……死ぬのか? 俺が死んだら……イリスが
俺は、あの時ドラゴン化しそうになったイリスを思い出した。人を捨ててまで、紫音を殺そうとしていたあの姿を
……動け、動け……動けっ!
そう念じても、俺の身体は動かない。上位元素もまともに生成が出来ない
第五権能「――滅せよ、終末のひか――な、なんだ!?」
照射寸前で、第五権能に向かって黒い弾丸が飛んで来る
第五権能「聖銀よ、成れ!」
慌ててミスリル銀の防壁で身を守る。しかし、依然として弾丸は俺を避けながら降り注いでいる
第五権能「ちっ……ここは下がるか」
防壁を維持したまま後ずさり、俺から離れる。それを見計らって、人影が俺の元へと降りてくる
第五権能「なっ……何故貴様が邪魔をする!」
悠「……ヴリトラか?」
ヴリトラ「ああ。不甲斐ない汝の加勢に来たぞ」
ヴリトラはそう言って俺の身体の傷口に手を触れ、生体変換で俺の傷を修復する
第五権能「貴様……余計なことをするな!」
第五権能は構えて終末時間の準備を行う。それを見たヴリトラは上位元素を生成し、すかさず黒い弾丸を無数に撃ち続ける
ヴリトラ「邪魔だ。しばらく黙っていろ」
攻撃を続けながらも、俺の治療にも専念する。生成量がダントツで高いヴリトラにこそ出来る事だろう
しばらくすると、弾丸の生成を止める。同時に俺の身体の傷はすべて無くなり、痛みも癒えて立ち上がれるようになった
悠「助かった、ありがとう」
ヴリトラ「ふん、そう簡単に死なれては困るからな」
ヴリトラはそっぽを向く。相変わらず素直じゃないなと思い、すぐ目の前の第五権能に意識を集中させる
第五権能「おのれ……七番目(ズィーベン)までも蒼き竜に加担するとは……」
苛立ちを見せ、複数の上位元素をやたらめったら配置し始める。冷静さを欠いているようだった
ヴリトラ「我が加勢しただけであの様子か……五番目(フユンフ)は血の気が多いようだな」
悠「だが、その方が俺達にとってはやりやすいけどな」
ヴリトラ「まったくだな」
第五権能「ごちゃごちゃとうるさい!」
第五権能はまた俺達の周りにミスリル銀を生成して爆発させる。ヴリトラがすぐさま包み込むように防壁を張り防いだ
ヴリトラ「どうした、さっきから単調で面白みに欠けるぞ?」
第五権能「っ……そうか、面白みがないなら、面白いものを見せてやろう」
第五権能は意識を集中させ、架空武装を変質させる。俺はその様子を見て直感で何をするか理解した
まさか、あれを使うつもりか?
俺は、ジークフリートを生成し直して構える。ヴリトラは興味深く、その変質を見守っていた
第五権能「これが我の真の力だ―― 双翼の杖――終末の瞳(ケリユケイオン・カタストロフ・サードアイ)!」
第五権能は、イリスが紫音との戦いで使った、第三の眼(サードアイ)の力を使える架空武装を今ここで再現して見せた
悠「あれは……撃たせたらまずい」
ヴリトラ「ふむ……汝の上位元素だけではきっと防ぎきれんだろうな」
さっき一度、斥力弾を撃ったせいで俺の上位元素の残りは少ない。二発分を一発に纏めて撃ち込んでも足りない……ならば
悠「……ヴリトラ、俺に力を貸してくれ。そうすれば、きっと第三の眼からの攻撃も防げる斥力弾を使えるはずだ」
ヴリトラ「言われなくとも、汝に貸し与えてやろう。我もまだ災厄と戦うまでは死ねんからな……行くぞ」
ヴリトラは俺の手を取り、一気に膨大な上位元素を送り込む
な、なんだこの量は!? レンでも比較に出来ない生成量だ
俺は上位元素をコントロールすることに集中し、ジークフリートを徐々に肥大化させる。心の乱れを減らして、架空武装が壊れないよう、細心の注意を払いながら
第五権能「消え失せろ……二体の竜よ――殲滅せよ、終末の光!!」
悠「斥力弾(アンチ・グラビティ)!!」
ほぼ同時に、攻撃を放つ。斥力場が攻撃を上空へ逸らして到達を防ぐ
第五権能「おおおおおおおおおっ!!」
自身の全力を出し、閃光を照射しつづける。斥力弾が少し押され、徐々にこちらに近づいてくる
悠「なっ……押し出されているのか!?」
ヴリトラ「くっ……まだ足りぬというのか」
閃光が斥力弾を更に押し込み、遂には俺達のすぐ前まで迫ってきた。斥力場で逸らしてはいるが、このままでは斥力場で俺達が危うい
高密度の生成を行った為か、体に力が入らず足が動かせないでいる
第五権能「あははははっ! そのまま無様に消えて無くなれぇ!!」
ヴリトラ「万事休すか……」
悠「ごめんな……イリス……」
俺達は死を覚悟する。近づいてくる斥力場にやられると
しかし、その瞬間に赤い閃光が止まり斥力弾もゆっくりと消滅した。驚いて前を見ると、疲れきってへたりこんだ第五権能の姿が見える
第五権能「何故だ……あと少しで……」
ヴリトラ「……出番だ、頼む」
疲れきっている第五権能をよそに、ヴリトラが合図をすると、第五権能を植物の蔦が拘束する
第五権能「なっ……この植物はまさか――」
ヴリトラ「ご苦労だったな、ティア・ライトニング・ユグドラシル」
ティアが森の中から姿を現す
ティア「……こうなるまで待っているのは、とても辛かったの。ユウがボロボロにされても、助けに行けなかったから」
悠「ごめんな、心配させて」
抱きついてきたティアの頭を、俺は優しく撫でる
ティア「本当に……死ななくてよかったの……」
ヴリトラは俺達の事を気にせず、第五権能に話し掛ける
ヴリトラ「どうだ? お得意の力が使えなくて辛いであろう?」
第五権能「くっ……上位元素を使えなくなるとは厄介だ。だが何故、最初からこうしなかった」
ヴリトラ「それについて説明する義理は持ち合わせていない」
第五権能「何だと!?」
ぎゃあぎゃあと第五権能が騒ぎ出す。先程までの誇り高そうな態度とは一変して子供っぽく見えた
悠「……とりあえず、眠らせて運ぶほうが良さそうだな」
ヴリトラ「全くだな」
ヴリトラが催眠効果のあるガスを生成して第五権能を眠らせる
ヴリトラ「……これで騒がしくないな。では、次の段階に進むとしよう」
???「待て、私が来る前に勝手に進めようとするのではない」
森の中から学園長が姿を現す。少し呼吸が乱れているのは、走って来たからだろう
ヴリトラ「そう言えば忘れていたな。我と物部悠が苦労してここまで何とかしたのだから、しっかり済ませろ」
シャルロット「分かっておる。ティア・ライトニングが集中できるよう、私も全力を尽くそう」
学園長が膝をついて意識を集中させる。ティアも学園長に倣い膝をついて――
ティア「では……行ってくるの!」
ティアはイリスの意識の奥底まで、突入して行った
――――――――――
次の日
医務室
あれ? ここはどこ……?
辺りを見回してみると、医務室であることが分かった
イリス「……あたし、戻って……これた、の?」
実感できないでいると、扉が開いて、誰かが入ってくる
悠「もう起きてたか……イリス……だよな?」
イリス「うん……あたし……だよ」
悠「そうか……良かった」
悠は安心してほっと胸を撫で下ろす
イリス「……これは、夢じゃないよね?」
悠「ああ、ちゃんと現実だ」
イリス「……まだ信じ切れないけど、良かったよ……」
イリスは安心したのか、気の抜けた表情をする
悠「……ただ、一つだけイリスには残念と思える事があるんだ」
イリス「えっ……」
悠「実はな――」
―――
――
―
学園長室
第五権能「……どうして俺はこの小娘の許可がないとまともに動けなくなってしまったんだ」
第五権能は手首に絡まったユグドラシルの蔓を外そうとするが、がっちり絡まっていて外せない。暴走することを見越してティアが用意しておいたのだ
悠「本当なら、お前を消すのが目的だったんだけどな」
ティア「それが出来なかったから、イリスがバジリスクを抑えつけられるようにティアがしたの!」
シャルロット「そなたが激しく抵抗するのも見越して、予めイリス・フレイアを”支配”して二人がかりで行ったが、骨が折れたぞ」
第五権能「くっ……灰までが俺の邪魔をしやがって、おかげでこのザマだ! 俺はこんな小さな身体に収まるようなものじゃないんだよ! 後バジリスクじゃねえ!」
シャルロット「バジリスク……そなた、昨日戦っていた時とまるで別人だな。主に話し方が」
悠「ああ、なんというか……ジャンヌより男っぽいな。バジリスクはこういうキャラだったのか」
ティア「イリスの姿をしているんだから、女の子っぽく喋らなきゃダメなの! それと、ヴリトラはヴリトラって呼んでるからバジリスクもバジリスクでいいの!」
バジリスク「馬鹿にしやがって、この小娘から解放されたらお前ら全員風化させてやる!」
バジリスクは俺達にあたり散らすが、イリスの姿に男口調がミスマッチなので怖くない
ヴリトラ「まあ落ち着け、人の身体と言うのも慣れれば悪くはない。それに、ここには二番目(トゥーエ)の権能を受け継ぎし者と汝、六番目(ゼクス)の複合竜種(ハイブリットドラゴン)に我と八番目(アハト)が揃っているのだから、退屈はしないぞ?」
バジリスク「……ここは我々ドラゴンを迎撃するための島ではなかったのか? 何故これだけの抗体竜種(カウンタードラゴン)が揃っているのだ」
ヴリトラ「色々とあったのだ。それより、汝も我らの会談に参加して欲しい」
バジリスク「会談? まさか奴がそろそろ……」
ヴリトラ「ああ。ナインス・ドラゴンがそろそろ動き出そうとしている。今現在は九番目(ノイン)を探している最中であるが、汝の力も借りたいと思っている。どうだ?」
バジリスクは黙りこんで考える
バジリスク「……仕方ない、あの災厄が動き出したらこの世界がもろとも終わっちゃうからな」
ヴリトラ「そうか……助かるぞ」
ティア「これで、残っているドラゴンで同盟が出来たの! これからよろしくなの!」
バジリスク「あ、ああ……」
はしゃぐティアと戸惑うバジリスクをよそに、学園長はヴリトラに小声で話す
シャルロット「それで……九番目が誰か、候補はどれくらい絞れているのだ?」
ヴリトラ「……三人だ」
シャルロット「なるほど、確かそなたは、物部悠一人では満たないと話したな?」
ヴリトラ「ああ。もしかしたら今回の抗体竜種は、一人であるとは限らないかもしれないな」
シャルロット「ほう、まさか二人で一体だというのか?」
ヴリトラ「……確実とは言い切れないが、そんなところだ」
シャルロット「……」
九番目が一人ではない、か。もし、友の竜としての覚醒が必然だったなら……いや、必然であって欲しいところだな
学園長は、微笑ましい光景を見ながら、そんなことを思った
――――――――――
夜
イリスの部屋
Prrrr
悠『イリスか、どうした?』
イリス「えっと……あたしがバジリスクちゃんをコントロール出来るようになったのは分かったけど、寝ている間のことはまだ詳しく聞いてなかったから、知りたいなって」
悠『分かった。まず俺とバジリスクが戦うことになってな――』
モノノベが話してくれたことは、あたしの戦い方を利用して徹底的にモノノベを傷めつけ、殺す寸前まで追い詰めていたこと
それをヴリトラちゃんが助けて、二人で第三の眼の終末時間を食い止めたこと
その後ティアちゃんがバジリスクを捕らえて意識の奥深くまで入ってあたしの意思を復活させて、バジリスクに制限を課したこと
イリス「モノノベが生きてて、本当に良かった……」
悠『俺は、イリスの意思が残っていて良かったと思ってる。もしバジリスクに完全に侵食されていたら、殺すしか無かったかもしれない……』
イリス「……でも、あたしはモノノベを信じていたから、皆を信じていたから……きっとこうして今もお話が出来ると思うの」
悠『イリス……信じてくれて、ありがとう』
イリス「あとね……今度は絶対、一人で無茶しないでね? ヴリトラちゃんがいなかったら……モノノベが死んだかもしれないって聞いて、いなくなるのが怖いって思ったから……」
悠『……ああ、約束する』
イリス「絶対、破っちゃダメだよ?」
悠『もちろん、守るさ』
イリス「ありがとう、モノノベ……そろそろ眠たくなっちゃったから、切るね?」
悠『ああ、おやすみ……イリス』
イリス「おやすみ、モノノベ」ピッ
イリス「……今日からはもう、あんな悪夢は見ないよね?」
イリス「……寝るのが少し怖くなっちゃってるみたい。でも、学校もあるから寝ないと……」
イリス「……バジリスクちゃんと、仲良くやっていけるかな? そもそも、お話出来るのか分からないけど……明日試してみよう」
ベッドに入ると、すぐに心地よい眠気がする
イリス「……おやすみなさい」
自分以外いない部屋で呟いて、眠りについた
イリス編 終わり
締めの学園長は明日書くから待っててください
本編は終わりですが、おまけはないです
では、おやすみなさい
シャルロット「権能を完全に継承した”D”……その運命を二度も打ち破るとはな」
シャルロット「しかし、結局のところバジリスクがまたこうして現れる事が出来た理由はわからずじまいだったな」
シャルロット「そこで仮説を考えてみたぞ、聞かせてやろう」
シャルロット「バジリスクが干渉出来るようになったのは何度か出ているつがいとしての本能の性質を何かしらの形で得たのだろう」
シャルロット「 これにより、本来は干渉できないはずだったバジリスクは少しずつ干渉出来るようになり、意識を眠らせることも出来た……こんなところだ 」
シャルロット「ただ、所詮は仮説に過ぎない。あとはそなたが好きなように考えてくれ」
シャルロット「今回も興味深い物が見られた。最後のつがいである彼女はどのような変化を見せるのだろうか、楽しみだ」
シャルロット「私がこうして締めをするのも最後か……名残惜しくもあるな」
シャルロット「では、私はこれにて失礼する。また会おう」
シャルロット「人型ドラゴンとつがいの"D"の精神的変化」3 終わり
これにてⅨまでの内容で書けるキャラは全員書けました
アリエラはⅩを読み終えてからスレを立てて書きますのでお待ちください
では、また次スレでお会いしましょう
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