男「かけ?」幽霊「かけ!」(81)


男「くくく、これでいいはず……」

幽霊「あんたが、私を呼んだのね」

男「さっそく来ましたね、悪霊が」


幽霊「オカルトに首突っ込むなんて、火傷じゃすまないわよ」

男「くくく、突っ込みたいのは首じゃないんですがね……」

幽霊「? まぁいいわ。覚悟はあるのね」

男「えぇ、命をかけますよ」


幽霊「言ったわね……」ゴゴゴ

男「む、これは……」

幽霊「強烈な呪いをかけたわ」

男「ほう……。と、言いますと?」


幽霊「一週間後に死ぬ呪い」

男「……なるほどなるほど。くくく」

幽霊「なにがおかしいのよ!」

男「いえね、僕はアンフェアが嫌いなんですよ」


幽霊「だから?」

男「あなたが僕に呪いをかけたというのなら、僕もかけなければ気が済みません」

幽霊「ま、まさかあんた、呪術の心得が?」

男「誰が、呪いをかけるといいました?」


幽霊「……じゃあ、いったい何をかけるっていうの!」

男「……それは」

幽霊「……」ゴクッ

男「『精子』です」


幽霊「……はっ?」

男「おや、聞こえませんでしたか?」

幽霊「私をあまり怒らせない方がいいわよ」

男「くくく、こわいこわい」


幽霊「今すぐあんたを呪い殺すことだってできるんだから!」

男「……正に、生死を賭けた戦いというわけですね。実に面白い」ユラユラ

幽霊「ちょっ、動くな!」

男「くくく……」ユラユラ


幽霊「ちっ、口で制止しても無駄なようね……」

男「さぁ、ズボンに手をかけましたよ。止めてご覧なさい」

幽霊「言われなくても! ……金縛り!」ビビ

男「ぐっ、ぬ……」ガチガチ


幽霊「ぐぅ、な、なんて強い力!」ハァハァ

男「ぎ、ぎ……はあっー!」バチィーン

幽霊「破られた!? う、ウソでしょ……?」

男「くくく。どうやら、僕を静止させるには至らなかったようですね」


幽霊「……仕方ない。こうなったら、今すぐ呪いで――!」

男「ふん!」ガバッ

幽霊「って、ちょちょ! いきなり脱ぐんじゃないわよバカ!」カーッ

男「くくく……」ボッキーン


幽霊「……」チラ

男「どうです? 僕の息子は」

幽霊「……あんたには、羞恥心が欠けているようね」

男「よろしい。口の減らない、気の強い女性は好きですよ」シュッシュ


幽霊「ちょ、だから何してんのよ!」

男「見てわかりませんか? ん?」

幽霊「み、見てって……」チラッチラ

男「くくく。精子をかけるためには、マスをかかなければいけませんからね」シュッシュ


幽霊「こいつ、……殺してやる!」

男「お待ちなさいよ」シュッシュ

幽霊「……なんで、なんで呪いが効かないの!?」

男「当然でしょう。僕は今、まさに命の源を出そうとしているのですよ?」シュッシュ


幽霊「せ、生命エネルギーが呪いを打ち消したというの?」

男「一時しのぎにしか過ぎませんが、まぁ十分ですね」シュッシュ
幽霊「に、逃げなきゃ!」ダッ

男「おや、追いかけっこですか? くくく、何かとかけるのがお好きなようで」シュッシュ


幽霊「なんで追ってくんのよ、その格好でー!」

男「僕も駆けるの、好きでしてね」シュッシュ

幽霊「右手を止めろ!」ハァハァ

男「あぁ、尿道に誘導されていますよ! 精液が!」シュッシュ


幽霊「実況すんなー!」ハァハァ

男「女性と追いかけっこ……。こんな青春を送りたかった」シュッシュ

幽霊「精子かけたいだけでしょあんたは!」ゲホッゲホッ

男「いいえ、この思いは誠実です。清純そうなあなたの黒髪にかけたい」シュッシュ


幽霊「いやっ、来ないで!」

男「ダメです、イきます!」シュッシュ

幽霊「いや、いやぁ!」

男「あぁあぁぁっ!」ドピュルルル


幽霊「きゃああぁ!」ベチョ

男「うっ、うっうっ」ドピュッシー

幽霊「あ、あぁぁ……」ベチョベチョ

男「……ふぅ」


幽霊「……あ、あんた最低」ジワ

男「……」

幽霊「ぜったい、ぜったい殺してやる! ……うぅ、ぐす」ポロポロ

男「僕は遅漏ですが、それは早計ですね」


幽霊「なにがよっ!」グス

男「ご覧なさい、あなたのその、まだ成熟しきってない身体を」

幽霊「うるさい! ……って、あれ?」

男「まるで、生者のそれでしょう?」


幽霊「え、いやまるでっていうか、これって……」

男「僕の精子、つまり命の欠片が、あなたに残されていた生命エネルギーと反応したのですか?」

幽霊「いや、聞かれても」

男「恐らくはそういうことなのでしょう」


幽霊「私、生き返ったってわけ? あんた、……初めから私のために?」

男「あなたと性交するために、なんとしても成功させなければと」

幽霊「……ばか」ギュッ

男「おやおや」


幽霊「……命をかけるって、そういうことだったのね」

男「僕の命の欠片は、あなたとともにあります。一生ね」

幽霊「胸きゅん……」

男「月が見ています。続きは帰ってからにしましょう」


幽霊「あ、待って。その前に……」

男「?」

幽霊(願いをかけるわ。夜空をかける流れ星に)

幽霊(魔法をかけたような、素敵な奇跡をくれたあんたと)

幽霊(ずっと一緒にいられますように……)


男「……終わりましたか?」

幽霊「えぇ。行くわよ!」

男「おやおや、くくく」



警察「すみません、ここらで裸の男がいたと通報をうけたのですが……」

男「!」

警察「むっ、まさかお前……」

男「ちょっ」


幽霊「えっ!」

警察「あやしいぞ! 署まできてもらう!」ガシ

男「ま、まってください! 助けてー……」ズルズル

幽霊「……はぁ。ちゃんと説明しといてあげるわよ」


男「た、頼みまーす!」ズルズル

幽霊「あんたが手錠かけられたら、私が困るもん。……ね?」




おま

りさんこいつです


男「ふぅ。ひどい目にあいましたね」

幽霊「結局、私が説明するまでもなく解放されたわね」

男「顔パスならぬ、名前パスですね」

幽霊「……あんた、いったい何者なの?」

男「名家の跡取り息子ですよ」

幽霊「すごいの?」

男「数百年前から、ここらの土地は僕の一族の所有物でした」


幽霊「……」

男「地元の人間では知らない人はいませんね」

幽霊「なんであんたみたいな変態が……」

男「むっ、今なんと?」

幽霊「変態」

男「あなたに対してはね」

幽霊「嬉しくないわよ!」


男「……」

幽霊「な、なに?」

男「……透けていますよ」

幽霊「! 見るな変態!」ブン

男「ごはっ」ゴツン

幽霊「まったく……。って、あ」

男「……身体、透けています」


幽霊「……ご、ごめん」

男「いいえ。さっそくやりましょうか」

幽霊「えー……」

男「露骨に嫌そうな顔をしますね」

幽霊「他に方法はないの?」

男「生き血でも代用は可能です。効果は薄いですが」

幽霊「……それは、やだ」


男「では我慢してください。かけるだけですから」

幽霊「生者の体を維持するためと言っても、……難儀だわ」ハァ

男「僕も辛いです」シュッシュ

幽霊「だらしない顔して言うな、バカ!」

男「あ、できれば目をそらさないでもらいたい」シュッシュ

幽霊「見れるわけないでしょ、このクズ!」

男「あ、言葉責めいい!」シュッシュ


幽霊「あ、あんたなんて精子バンクになっちゃえー!」

男「あ、あふん!」ビュッシャー

幽霊「きゃあ」ベチョベチョ

男「……ふぅ。精子バンクとは、言い得て妙ですね」

幽霊「か、身体が戻った。一安心ね」ホゥ

男「精子バンク、ですか」

幽霊「ティッシュティッシュ……」


男「あなたにとって僕は、その程度なのかもしれませんね」

幽霊「これ、くさいっ!」

男「……」ガックリ

幽霊「地肌に直接じゃないと効果がないっていうのが、ねぇ」

男「経口摂取がオススメです」キリッ

幽霊「すすめんな」

男「……」ショボーン


幽霊「……生きれば生きるほど、生命エネルギーが失われていく」

男「……」

幽霊「誰かの精液や血液がなければ、私はすぐに消えちゃうわ」

男「消えるわけではありません。ちゃんと存在します」

幽霊「悪霊として、でしょ?」

男「……」

幽霊「今までにいったい、何人殺してきたのかしらね」


男「何も覚えていないのですか?」

幽霊「ずっと前から漂っていたわ。憎しみを放ちながら、人を殺してた。それだけは覚えてる」

男「それは、つらかったでしょう」

幽霊「……あんたみたいなやつもいたのかもね。私が殺した人間の中には」

男「安心なさいよ」

幽霊「えっ?」

男「何度だって、僕が救ってあげます」キリッ


幽霊「……」

男「もう二度とつらい思いはさせません」キリッ

幽霊「……ねぇ」

男「なんだい?」キリッ

幽霊「いい加減パンツはけ、包茎ヤロー!」

男「仮性です!」

幽霊「知るか!」


幽霊「ただいまー」

男「お帰りなさい。どうでした?」

幽霊「んー、言われたとおり買ってきたわよ」

男「ふむ、確かに。……しかし不思議ですね」

幽霊「なにが?」

男「あなたは多少偏りがあるものの、今の時代の一般常識を理解しています」


幽霊「なに言ってんのよ、当然でしょ」フフーン

男「……ふむ」

幽霊「どうかした?」

男「いいえ、何でも」

幽霊「それじゃあ、夕飯作るわよ」

男「お願いしますね」


幽霊「ったく、私は家政婦じゃないんだからね」

男「エプロン、似合ってますよ。まるで新妻ですね」

幽霊「ふん! こんな精液まみれの身体、誰ももらってくれないわよ」

男「くくく、知らないんですか?」

幽霊「なにを?」

男「花嫁のドレスは、純白と決まっているんですよ」


幽霊「……」

男「……」キリッ

幽霊「いや、うん。かっこよくないわそれ」

男「……そうですか」ショボーン

幽霊「……バーカ」タッタッタ

男「おやおや」


男(……恐らくは、僕の精子に含まれている情報)

男(それが生命エネルギーとともに、彼女の中に入っているのでしょうね)

男(だとしたら、……いずれは)

幽霊「うあっちぃぃぃ!」

男「……くくく、やはり料理はまだ難しいようですね」

幽霊「もうっ、ほんと難儀しちゃうわ!」プンプン


男「火傷しました?」

幽霊「ううん、ちょっと熱かっただけ」

男「舐めましょう」

幽霊「いらないわよ!」

男「火傷をなめないでください!」

幽霊「だから火傷じゃないって!」


男「火傷です!」

幽霊「焼け石に水ね……」

男「ぇろ」ペロペロ

幽霊「ひゃあっ」

男「ぇろろーん」ペロペロペロ

幽霊「……バーカ」ハァ


男「ふぅ、応急処置完了ですね。念のため冷やしておきなさいよ」

幽霊「はいはい。料理の邪魔だからあっち言ってなさい」

男「指を切らないように、注意してくださいね」

幽霊「そこまでドジじゃないわよ」

男「……やはり、代わりましょうか」

幽霊「いいってば。家においてもらってるんだから、これくらいしたいの」


男「……お願いします」

幽霊「うん!」

幽霊(ケガをしたら、治療にエネルギーを使ってしまうから、ね)

幽霊(霊になっても、あんたがいればすぐ蘇られるわけだけど)

幽霊(過保護。……でも、悪くないわ)

幽霊「ふふ、お腹すかして待ってなさい!」


男「買い物に行ってきたいと思います」

幽霊「行けばいいじゃん」ボリボリ

男「くくく、つれないですね。さすがツンデレ」

幽霊「うっさい。なに、一緒に行ってほしいの?」

男「デートと洒落込みませんか?」

幽霊「やだ。めんどくさい」ボリボリ


男「……もういいもん!」プピーン

幽霊「うわ、きも」

男「誰が来ても出なくていいですからね」

幽霊「わかってるわよ。私は子どもか」バリボリ

男「いいえ、貧乳は正義です」

幽霊「会話してよ。そして死ね」


男「では、行ってきます」

幽霊「らっしゃい」

男「……」ガチャ

幽霊「……せんべいうまー」バリボリ

幽霊「真っ昼間からテレビみながらせんべいを貪る私」

幽霊「……掃除でもしますか」ハァ


男「ただいま帰りました」ガチャ

幽霊「なさい」

男「……ちゃんと言いなさいよ」

幽霊「ねぇ、部屋を見て」

男「……?」

幽霊「き、気づかない?」

男「綺麗になっています」

幽霊「つまり?」


男「あなたが掃除してくれたんですね」

幽霊「もう一声!」

男「それじゃあ次はこっちの掃除をお願いします」ポロン

幽霊「……」ゴゴゴゴ

男「お、お待ちなさいよ。洗剤を置いてください」ガクガク

幽霊「……ほんっとスケベね。むしろスケベストね」

男「最上級ですか……。誇らしいです」

幽霊「懲りないわね、あんた」


男「こってますよ。揉んでくれませんか?」ボロン

幽霊「どこをよ!」

男「肩ですよ」

幽霊「じゃあしまいなさいよ、それ!」

男「くくく、失礼。ドラ息子でしてね」

幽霊「室内なんだからニット帽とりなさい、ドラ息子」

男「仮性です!」

幽霊「かわいそう……。皮だけに」ププ


男「いいんです。皮を舌で剥かれるのは包茎男子にのみ許されたロマンですから」

幽霊「おぇぇぇ……」

男「ちゃんと洗いますよ」

幽霊「そういう問題じゃないわよ!」

男「くくく、僕のマツタケは初物ですよ?」

幽霊「臭いもすごそうね」

男「えぇ、芳ばしい匂いです」

幽霊「じゃあさっそく焼きましょうか!」


男「お、お待ちなさいよ……」

幽霊「もうっ!」プンプン

男「あ、そうでした。……これどうぞ」ガサガサ

幽霊「ん? ……これって」

男「プレゼントです」

幽霊「な、なんで……」

男「部屋、まるであなたのように綺麗になっていますね」

幽霊「……」ドキドキ


男「ありがとうございます。嬉しいです」ニカッ

幽霊「どきゅん……」

男「さぁ、あけてご覧なさい」

幽霊「う、うん」ビリビリ

男「どうです? 度は入ってないですよ」

幽霊「……これ、伊達メガネ?」

男「はい。実際にかけてもらって選びたかったのですが」

幽霊「あ、ありがと。……ん、似合う?」カチャ


男「うっぷす! やー!」

幽霊「わっつ!?」

男「とても似合っています。素晴らしい」

幽霊「えへへ……」テレテレ

男「メガネの女神ですね」

幽霊「さっぶぅ……」ブルブル

男「……まぁ、いいでしょう。それでは今日の分、イきましょう」

幽霊「……は?」


男「言ったはずです。僕はアンフェアが好きじゃない」

幽霊「だからなによ」

男「あなたが顔にメガネをかけるならば、僕は精液をかけるまでです」シュッシュ

幽霊「ちょ、ちょっと待ちなさい! 新品を汚すつもり!?」

男「そのつもりで買ってきました」シュッシュ

幽霊「こいつ最低だ」ガクーン

男「あなたの前髪から、メガネを伝って唇まで」シュッシュ

幽霊「もう好きにして……」


男「さぁ、かけますよ!」シュッシュ

幽霊「ん……」

男「念願の顔射! 念顔射!」ドビュドビュ

幽霊「……」ベチャァ

男「第二波!」ドビューン

幽霊「!?」ベチャベチャァ

男「……ふぅ。さぁ、顔をあげて?」


幽霊「急にかっこつけんな、バカ」ネトォ

男「おぅ、薄幸の美少女ならぬ、白濁の美少女!」

幽霊「だまれ」フキフキ

男「むっ、……失礼」

幽霊「どうしたの?」

男「いえ、あなたの顔を見たせいで、このとおり」エッフェル!


幽霊「……元気ね、あんた」

男「くくく、それだけが取り柄でして。では抜いてきますね」

幽霊「はいはい。私は夕飯作っとくわ」

男「よろしくお願いします」スタスタ

幽霊「……なんであいつ、必要最低限な分しかかけないんだろ」

幽霊「……私、別にイヤじゃないのにな」

男『念願の顔射!』

幽霊「……やっぱねーわ」オェェ


幽霊「お客さんがくる?」

男「えぇ。とは言っても、僕の姉ですが」

幽霊「確かお姉さんは実家暮らしだったっけ」

男「ここから徒歩10分くらいのところにあります」

幽霊「あんたも実家に住めばいいのに……」

男「社会勉強みたいなものですよ」

幽霊「金持ちの考えることはよくわかんないわ」

男「一般人のそれと変わりませんよ。多少、選択肢が増えているだけです」


幽霊「ふーん……。ところで、私は?」

男「どうしました?」

幽霊「いや、どこにいればいいの?」

男「あぁ、ここにいてくれて構いませんよ。姉は知っていますから」

幽霊「……よく信じたわね、こんな馬鹿げた話」

男「馬鹿ですからね、僕の姉は」

幽霊「てか、どこまで話してるわけ?」

男「全てです」


幽霊「……全て?」

男「はい。僕たちの情熱的な行為も、もちろん」

幽霊「一方的でしょ!」カー

男「おやおや、顔が真っ赤です。体は正直ですね」

幽霊「怒ってるだけよ、バカ!」

男「まぁ、そういうことですから何も心配はいりません」

幽霊「……別に心配なんてしてないわよ」

男「姉はバカですが、僕にとって最も信頼できる人間ですから」


姉「おっすおっす」

男「姉、お久しぶりです。」

姉「あー、敬語弟サイコー」

男「どうぞあがってください」

姉「おっけーぃ。カギはしめとくね」ガチャ

男「なぜ?」

姉「期待するっしょ?」


男「そこまでガキじゃありませんよ」

姉「背伸びしなくてもいいのよ?」

男「等身大です」

姉「ほっほーん。ところで例の娘は?」

男「こちらです」

幽霊「ど、どうも……」ペコリ

姉「……」


男「……」

幽霊「……?」

姉「……不合格!」

幽霊「なにが!?」

姉「じょーだんよ」

男「姉、あなたは……」

姉「わーかってるってば。こんな口きけた義理じゃないもんね」


幽霊「えっ?」

姉「いーえ、何でも。弟がお世話になってるようね」

幽霊「そんな、お世話だなんて。私のほうこそ……」

男「くくく、いつになく謙虚ですね」

姉「今日はまだなの?」

幽霊「ま、毎日やってるわけじゃありませんから!」

姉「あーら、それは意外ね」


男「どうやら、一度にストックできる量は限りがあるようです」

姉「ふむ?」

幽霊「生命活動を行うとエネルギーは減少しますけど」

男「生き物にはそれを生み出す機能があります」

姉「それが、元幽霊のこの娘にはないってこと?」

男「そういう見解です」

姉「ふーん。へんなの」


幽霊「ぐっ……」

姉「それって、私の体液でも効果あんの?」

男「経血なら、あるいは」

幽霊「ちょっ」

姉「残念。今日はその日じゃなかった」ガックシ

幽霊「よかった……」ホッ

男「彼女で遊ばないでくださいよ」


姉「あらら、独占欲強いなー」

男「本当に無礼ですね、あなたは」

幽霊「?」

姉「わーかってるって」

幽霊「お、お姉さんは何しに来たんですか?」

姉「私? 今日は夜ご飯を作ってやりに来たのよー」

幽霊「夜ご飯? わざわざ?」


男「たまに来るんですよ。一人暮らしだと食生活が心配だとかで」

姉「いい女でしょ?」

幽霊「は、はぁ」

姉「ちなみに、材料が一人分足りなかったりして」

男「……なぜですか」

幽霊「わ、私買いに行きますよ!」

姉「ダメよ、ダメダメ。男」


男「……」

姉「行ってらっしゃーい」

男「……なぜ僕が」

姉「ほら、幽霊ちゃんも!」

幽霊「えっ! ……い、行ってらっしゃい」

男「……よろしい。行きましょう」

姉「都合のいい男ね」


男「お嫌いですか?」

姉「好きよ。出来がいいからねー」

幽霊「……」

男「……行ってきます」

姉「行ってらっさい」フリフリ

幽霊「……らっしゃい」フリフリ

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