ライラ「ライク、お慕い、ウヒッブカ」 (33)




モバマス・ライラのSSです。




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親愛なるプロデューサー殿。

あなたは誰か愛しい方相手に、

ひざまずいたことはありますか。



ないですか。

えっ、普通はないですか。

そうでしたか。

それは失礼しました。

いえ、なんでもありません。



プロデューサー殿。

好きとは奥深いものですね。



ライラさんは、イイ女になれるでしょうか?





裕子「ム、ムム…」

柚「…」

茜「…」



裕子「ハーッ!!!!!」パキッ

柚「…これはなかなかいいんじゃない?」

裕子「ですよね! きれいに半分! やった!」

茜「やりましたね! 板チョコ真っ二つ!」

柚「最初からタテに切れ目入ってるのに、無視してヨコに真っ二つっていうね」

裕子「サイキックパワーです!!」キラーン

柚「わー!」パチパチ

茜「ふー!」パチパチ

裕子「ではこの割った半分はプロデューサーにあげてきます!」

柚「行ってくるべき!」

茜「行ってらっしゃい!」

裕子「はい! サイキックぅ〜テレポート!」ダッ



バタン



柚「アタシらはこっちの特大せんべいでも食べてよっか」

茜「それも割りますか!? 半分こしますか?」

柚「さいきっくぅ〜丸かじり!」ガブー

茜「あっずるい! 私も食べます!」



キャッキャ ワイワイ





心「(若いって…まぶしいねぇ…)」グデー

比奈「(はぁとさんなら混ざっても違和感ないスよ)」

心「(お酒残っててしんどいから無理)」

比奈「(昨日どんだけ飲んだんスか)」





ガチャ



ライラ「お疲れ様ですー」ペコリ

比奈「お、ライラちゃん。お疲れ様っス」

心「(おつかれスウィーティー…)」

比奈「声小っちゃ!」



みなさんこんにちは。

ライラさんですよー。

今日もいい天気でございますねー。



気がつけば夏まっさかりです。

暑いですねー。

でも日本の季節の移り変わりは好きですよー。

夏はアイスも、よりおいしい季節ですしねー。



ライラ「…」キョロキョロ



プロデューサー殿はおでかけのようですねー。

お話もしたかったですが…あ、でも、

ちょうどいいかもしれませんです。



比奈「どうかしたっスか?」

ライラ「あ、えー、ヒナさん、お忙しいですか?」

比奈「いや、大丈夫でスけど」

ライラ「あー、では少し相談に乗ってもらってよろしいですか?」

比奈「え、ま、まあアタシでよければ」

ライラ「嬉しいですー。ありがとうございますです」ニコ

比奈「え、はは…」



心「(Zzz…)」





比奈「…つまり、プロデューサーにプレゼントをしたいと?」

ライラ「そういうことです。お誕生日にいろいろ頂いたお返しとか、日頃の感謝とか、そういうのです」

比奈「えっと…ライラちゃんの誕生日って5月…でしたよね? なぜ今?」

ライラ「いろいろお祝いして頂いて、嬉しかったんですが、そのお返しを何もしていないままでー」

比奈「無理にする必要はないと思うっスけど…」

ライラ「最近知ったんですが、結構みなさんそういうのはお返しをしているみたいです。ライラさん何にもしていませんでしたのでー」

比奈「(…アタシもしてない)」

ライラ「日頃のお礼もありますですよ。で、さっそくプロデューサー殿に直接相談したんですが、アイドル活動を頑張ってくれればいいよとおっしゃって」

比奈「まあ、あの人ならそう言うでしょうね」

ライラ「アキハさんに相談したら『何か作るなら任せろ!』と言ってくださいましたが」

比奈「晶葉ちゃんに直接何か作ってもらうのは…違う感じがするっスね」

ライラ「はい。あと、フゴフゴさんは『あたしならやっぱりパンをプレゼントします!』って」

比奈「まあそうでしょうね」

ライラ「自分の一番好きなものを、というのはわかるのですが、ライラさんにはフゴフゴさんのパンみたいなものがありませんので…」

比奈「アイスとか?」

ライラ「それは思ったんですが、いつもアイスの話はしていますし、ときどきプロデューサー殿が買ってくださったりもしていてー」

比奈「あー、普段もアイスのやり取りはあるから、たまには違う物も考えてみたいと」

ライラ「はい」

比奈「うーん…難しいもんっスね、そう考えると」

ライラ「ヒナさんならマンガを描いてプレゼントしますですか?」

比奈「いや、それはちょっと…」



このあとも、ヒナさんは一緒にいろいろ考えてくださいました。

そう、プロデューサー殿はライラさんのお誕生日に、

プレゼントをくださったり、ご飯に連れて行ってくださったりしたのです。

ライラさんはそのお返しがしたいのですよー。

日頃の感謝の気持ちも込めて、ですねー。





ライラ「プレゼントってステキですけど、難しいですねー。自分の好きな物をさしあげるのも、相手の好きな物をさしあげるのも、どっちの例もありますけど、プロデューサー殿はどちらがいいのでしょうかね?」

比奈「そりゃ好物とかわかればそれもいいっスけど、アタシは残念ながらプロデューサーの好物を知らないっスね…。まあプロデューサーなら、アタシたちらしい物をあげても十分喜びそうではあるっスけどね。う〜ん」

ライラ「えへへ、でも考えるのも楽しいですね」

比奈「…ライラちゃんはいい子っスねー」



ヒナさんは同じCoチームなので、同じプロデューサー殿が担当なのです。

わたくしたちのプロデューサー殿は、

たくさんのアイドルの担当をしていて

とてもお忙しそうですが、

いつもみんなを気づかってくれる、優しい方です。



ライラさんのことも、

仕事に疲れていないかとか、

他のアイドルと仲良くできているかとか、

私生活で悩み事がないかとか、

いろいろ気にかけてくださいます。

こういうの、まごころと言うのでしたっけ。

ライラさん、まごころ、とても嬉しいのですよー。

だからプロデューサー殿のことは大好きですし、

何かお礼をしたいと思っているのですよー。



思い立ったが吉日。

アキハさんに教えていただいた言葉です。

何かしたいことが思いついたら、

日取りを待っていないで、その日にやりましょう。



今日を大切にする、ステキな言葉だと思います。





比奈「何か栄養のある食べ物とか、元気になるものをあげるのもいいかもしれないっスね。日頃から働きまくってるプロデューサーには、身体を気づかってほしいところもあるし…」

ライラ「えっと…スタドリとか」

比奈「食べ物ね、食べ物。それにスタドリはたぶん、ふだんから飲みまくってるからダメっス」

ライラ「あー」

比奈「あの人ホント、ドリンク中毒じゃないかってくらい飲んでますからね。ちょっと心配っスよね」

ライラ「ふふ、そうでしたか」



ヒナさんは、いつも事務所の一角で、

アンズさんとのんびりくつろいだり、

マンガを描いたりしていらっしゃいます。

ふだんは控えめな方ですが、

実は結構いろんなことに積極的で、

優しくて、とても美人さんなのを、

ライラさんは知ってます。



何度かおしゃべりをした時に、

アイドルが楽しくなってきたし、

プロデューサー殿に感謝しているんだということを

おっしゃっていました。

でもヒミツだそうです。

照れ屋さんですね。

きっとプロデューサー殿のことも大好きなんだと思います。


絵を描きながら、時々「フヘヘ」って笑っています。

きっと楽しいんだと思います。

笑顔なのはステキなことですねー。





ヒナさんもアイデアをいくつか挙げてくださいましたが、

決定まではいきませんでした。

難しいですねー。

でも今日は、ヒナさんとおしゃべりできたので、

ライラさん結構楽しかったです。

よかったです。



ライラ「ありがとうございましたー。また一緒におしゃべりしましょう」

比奈「ええ、いいっスよ。プレゼント決まったら、アタシにも教えてほしいっス」

ライラ「はいです。それでは失礼します」ペコリ

比奈「お疲れ様っス」



バタン





比奈「ピュアっスねぇ…」

心「行ったか」ムクリ

比奈「うわっ! 起きたんスか」

心「ちょっと前にね。あーやっと疲れが抜けてきたかな…」

比奈「話に混ざってくれてもよかったのに。乙女な話ならはぁとさん得意でしょ」

心「えー? はぁとわかんなーい☆」

比奈「…そっスか」

心「だってお前先輩がいたら話全部こっちに振るだろ?」

比奈「まあ、それはあるかも」

心「今みたいに全力で受けとめたり考えたりするのも大事なことだぞ☆」

比奈「…」

心「比奈も立派なアイドルなんだし、年頃の乙女だろうがよ。脇役気取ってないで、前出ろ前」

比奈「うへぇ…」ポリポリ



心「そういえば今更だけど、アプリコット杏は今日どうしたよ」

比奈「杏ちゃんなら夕方まで帰って来ないっスよ。日中ずっと収録あるって言ってましたから」

心「なんだそうか。じゃあまだここで休んでても文句言われないな」ボスッ

比奈「今日はどうしたんスか、はぁとさんこそ」

心「いや、ふだんの杏の起きなさを見てるとさ…なんかこのソファーがすっごい柔らかいんじゃないかって思えて」

比奈「あー、ちょっとわかるっス」

心「な。だからいないタイミングで占領してやろうと」

比奈「で、心地はどうっスか」

心「…まあ、フツーだな」

比奈「でしょうね」





P「お、ライラお疲れ様」

ライラ「お疲れ様ですー」ペコリ



プロデューサー殿です。

今日も外回りお疲れ様ですね。

プレゼント…うーん。



じーっ



P「うん、どうした?」

ライラ「なんでもないです」ニパッ

P「…ライラは相変わらず、綺麗な瞳をしているなぁ」

ライラ「えへへ、ありがとうございますー」

P「よしよし」ナデナデ



スキンシップも、嬉しいです。

でもプロデューサー殿。

ライラさんだって、ちょっとドキドキするんですよ?



…なんちゃって。





帰り道、少しだけ回り道をして、いつもの公園にやってきましたです。



公園の隅にあるベンチは、ライラさんのお気に入りです。

ここにいるといろんな方とお話しする機会があります。

実はプロデューサー殿にはじめて声を掛けて頂いたのも、この公園でした。



季節の変化もよくわかりますので、

ライラさんはこの公園が大好きです。

あいにく、今日はあまり人がいらっしゃいませんねー。



サァッ…



少し風が出てきました。気持ちいいです。

…と。



「はっ…はっ…」タッタッタッ



あのジョギングしている、キレイなお姉さんは…





ライラ「あのー、ミナミさん?」

美波「えっ? あら、ライラちゃん。こんにちは」

ライラ「こんにちは、お疲れ様です」ペコリ

美波「お仕事終わり?」

ライラ「はいです。あ、つい声をかけてしまいましたです。自主トレ中ですか?」

美波「ううん、気にしないで。今日は時間があったから、ちょっとね」



ベンチで一緒に休憩することになりました。

ドリンクを飲んでいるミナミさんは、なんだかとっても色っぽいです。

人気アイドルとして、たくさんの男性を虜にしていると評判のミナミさん。

すごいですね。

でもこうして見ると、ライラさん女の子ですが、

そのステキさは、なんとなくわかる気がします。



ライラ「ミナミさん魅力的ですねー」

美波「えっ、あはは、ありがとう」



しばらくいろんなお話をいたしましたです。

最近あったこと。

レッスンの話。

ライブの話。

プロデューサー殿の話。



七夕にみなさんで短冊を書いてから1ヶ月半も経つのですねー。

ミナミさんは、いろいろなチャレンジをしていきたいと書いたそうです。



美波「毎日がチャレンジと発見の繰り返し、かな。ふふっ」



カッコイイですねー。

ライラさんも、ダンスレッスンとか、もっと頑張らないといけませんですねー。





美波「七夕の短冊、ライラちゃんはパパとママのことを書いたのね」

ライラ「はい。ライラさんちょっと事情があって、いきなり勝手にこちらに来てしまいましたのでー」

美波「大変なのね…。あ、気にしていたことだったらごめんなさい」

ライラ「いえいえ大丈夫ですよ。それにライラさん、今毎日がとても楽しいですし」



お金は少ないですが、ステキなもの、大切なものは、ここにたくさんあります。



美波「…強いのね、ライラちゃんは。相談ならいつでも乗るからね?」

ライラ「ありがとうございますですー」

美波「プロデューサーさんとは、故郷の話をしたりするの?」

ライラ「んー、聞かれた時にはきちんとお答えしていますです。でも最近は、プロデューサー殿もあまり質問してきませんですねー」

美波「そっか」

ライラ「ライラさんもプロデューサー殿とお話しするなら、最近発見したこととか、今思っていることとか、気になっていることの方がいいなーと思いますので」

美波「ふふっ、楽しいこと多いのね」

ライラ「はい。故郷のお話でも別に構いませんですが、今の毎日のことの方が楽しいですので。それに故郷のお話にはプロデューサー殿もいませんし」

美波「…ライラちゃんは本当にプロデューサーさんのことを慕っているのね」

ライラ「はいですー。お慕いして…、あ」

美波「?」



そうだ、気になっていたことがあったのです。

思い出しました。



ライラ「…ミナミさん、『好き』とか『お慕いしています』というのはあまり言わない方がよいのでしょうか?」

美波「えっ。…あ、えーと」



最近ちょっと、気になっていることです。



ライラ「そういう言葉には、もっと深いイミというか、そういうイミもあると聞きました。ライラさん、プロデューサー殿のことは好きですが…その、そういう恋愛のコトは、まだよくわかりませんのでー」モジモジ

美波「(あらかわいい)」

ライラ「ただ、好き以外の、よい言葉も知りませんので…」モジモジ





親愛と恋愛は違うのだそうです。

たしか、恋と愛もちょっと違うんです。

アキハさんが教えてくれました。

日本語もまだまだ難しいことがたくさんありますですねー。

私はまだ、『好き』をきちんと知りません。



美波「ふふっ」ナデナデ

ライラ「…ミナミさん?」

美波「ライラちゃん、毎日が楽しいのね」

ライラ「はいです」

美波「…そうね。好きとかそういう言葉は、使ってはダメということはないわ。むやみに使いすぎるのはよくないけど」
 
ライラ「そうなんですか?」

美波「ええ。日頃の感謝とか恩返しの意味でだって、とても素敵な表現よ」



そういうものでしょうか。それならよいのですが…。



美波「この先、ライラちゃん自身がもしその表現に抵抗を感じるようになったら、使う言葉も自然に変わってくるはずだから」

ライラ「抵抗…ですか?」

美波「そう。たとえば、もっともっと好きの気持ちが大きくなって、恋愛を意識したら…とか。もちろん違う場合だってそう。きっといろんなことをキッカケにして、感じ方は少しずつ変わっていくわ」

ライラ「………そうですか。わかりました。えへへ」



ミナミさんはとても大人っぽくて、色っぽくて、

いろいろ頼りになるお姉さんな人です。

本当に。






美波「あと、あまり今に捉われすぎないでね」

ライラ「…といいますと?」

美波「ライラちゃんは、将来の夢とかある?」

ライラ「えっと…今あるお仕事を頑張って、みなさんとの楽しい生活がこれからも続けばいいなと思っています」

美波「うんうん素敵ね。でもそれだけじゃなくて、もっといろいろ広げてほしいな」

ライラ「もっとですか?」

美波「挑戦してみたいこととか、なりたい自分像とか。仕事でも、プライベートなことでも」



ムム。何がありますかねー。



美波「ライラちゃんも何年かして、大きな仕事に取り組んでいるかもしれない。何かの専門家になっているかもしれない」

ライラ「おお、ステキですね」

美波「さっきの好きの話だってそう。大好きなプロデューサーさん。本当にプロデューサーさんに恋して、異性として大好きになっているかもしれない。それとも他に素敵な出会いがあるかもしれない。それはわからないわ」

ライラ「あー、そうですねー」

美波「だから、今答えがわからないなら、無理に答えなんて出さなくてもいいの。でも、興味を持っていろいろ調べたり、自分に合ったものを探したり、いつかやってみたいことに向けて準備をしたり。それってとても大事なことなのよ」

ライラ「…なるほど」



ミナミさんはおそらく、前も見なくてはいけないよとおっしゃっているのですね。

心当たりがちょっとあります。





今も毎日の生活の中に、小さな発見や感動がたくさんあって。

ライラさんはそれだけでとっても楽しいと思っています。

けれど、もっと夢を見たり、こだわりを持ったりする方が世の中にはたくさんいらっしゃって。

どちらがよいとかではなく。

たぶん、そうしたことでこそ見えてくる世界もあるのだと思います。



そして、それは決して険しいだけではなくて、です。

同じCoのチームでも、

リンさんやカエデさん、レーコさんやアイさん、ミナミさんなど、

自分らしさを持って、いろんな形で活躍されている方はたくさん知っています。



みなさん優しくて。

ライラさん、そんな毎日が大好きですが、

それに甘えてばかりは、ダメですね。



ライラ「むーん」

美波「今を大切にする気持ちは、ライラちゃんも私も同じ。でも積み重ねないと見えない景色や感動もあると思うから、少しずつ、探していこうね」ナデナデ

ライラ「…はいです。ありがとうございます」ペカー



いろんな方から教えて頂けることがあって。

ライラさん幸せ者ですねー。





美波「ふふっ、ライラちゃんかわいい。プロデューサーさんがかわいがりたくなるのもわかるわ」

ライラ「ありがとうございます。プロデューサー殿はわたくしたちひとりひとりを気づかってくださいますね。優しいですねー」

美波「そうね。…まあ私の場合その…やや露出多めの服ばかりチョイスされている気がするのは、ちょっと気になるけど…」

ライラ「ミナミさん色っぽいですからねー」

美波「え、あはは、ありがとう」



ミナミさんはスタイルよくて、お肌つるつるで、とてもキレイです。



美波「…ライラちゃんも、私くらいの歳になったらそう言われるかもしれないわよ?」

ライラ「そうでしょうか? …うまく言えませんが、ミナミさんの色っぽさは独特な気がします」

美波「ありがとう。でもわからないわよ? あなたは“ライラ”ちゃん、なんだし」

ライラ「………おー、ひょっとして名前のことですか?」

美波「ええ」

ライラ「おおう、とても嬉しいです。ミナミさんは物知りでいらっしゃいますですねー」

美波「そう? ふふっ、興味があったから知ってるだけよ?」



なんでしょう。

うまく言えませんが、とっても嬉しいですね。



ライラ「でもお相手の男性がマジュヌーンになってしまっては、ちょっと困りますねー」

美波「プロデューサーさんが魅了されて悩まされるくらい、素敵なライラちゃんになるのは大事なことかもしれないわよ?」



ワイワイ





杏「…へえ、ライラがそんな話をね」グデー

比奈「ええ、カワイイっスね」

杏「まあ、ライラは比奈と違ってヒネてないからねー」

比奈「杏ちゃんがそれ言うんスか…」

杏「ドバイ出身の家出少女で、プロデューサーに声かけられてアイドルになって、とっても素直でかわいい子で、と」

比奈「いろいろおとぎ話みたいっスね」

杏「そうだね。そういえばあっちの古いお話にライラって出てくるのあったなぁ、たしか」

比奈「へーそうなんスか。どんな話なんスか?」

杏「ん? えーっと…。ねえ文香ー、文香ー」



文香「…はい。どうかしましたか」パタン トコトコ

杏「『ライラとマジュヌーン』ってどこの話だっけ。ペルシアとかそのへん?」

文香「えっと…はい、ペルシアの詩人ニザーミーの綴ったものが有名ですから、概ねそれで間違っていないかと」

杏「だってさ。まあつまりそういう、アラブ世界の古いお話があってね」

比奈「ライラって子が出てくるんスか」

杏「そうそう。美少女ライラに恋した男性が想いのあまり狂っちゃう話だね」

文香「もう少し言うと、両想いにも関わらず、男性のその狂気ゆえに二人は結ばれることが許されず、男性は荒野を彷徨い、女性は別の方と結ばれるも苦悩し続けるという、愛の深さゆえに辛い運命に翻弄されるお話です」

比奈「何やらすごそうな話っスね」

杏「まあ男がそんな恋しちゃうくらい見目麗しい、素敵ないい女にだって、ひょっとしたらなるかもねーってね。そのへんはライラ次第でもあるけどさ」





杏「文香ありがとねー、助かる。読書中邪魔してごめんね」

文香「いえ…こうしてお話しするのも楽しいですし、遠慮なく言って頂ければ」ワクワク

杏「(実は結構こういう話をしゃべりたいのかな、文香も)」



比奈「文香ちゃんはその…そういう物語のような恋をしたいとか、そういうの思ったことはあるっスか?」

文香「えっ…いえ、あまり自分のこととして考えたりは…」

比奈「あっごめんなさい、別にちょっとした好奇心で聞いただけなんで…ハイ」アハハ

杏「どしたの比奈、暑さで頭わいたの」

比奈「ヒデェ言い草っスね、アタシもいちおう乙女っスよ」

杏「ほう」

比奈「………いえ、えー、…なんでもないっス」

杏「何で自分で言ってテレんのさ…」

文香「…ただ、愛に溺れると書いて溺愛と読みますし、古今東西そういうお話は少なくありませんし、喜悲劇どうあれ、素敵なお話も多くあると思います…よ?」

比奈「へー、そうなんスね」

文香「わ、私もそういうお話はお話としてばかりで、現実には疎いもので、詳しくは…調べて頂くしかありませんが…」メソラシー

杏「(かわいい)」

比奈「(かわいい)」





美波さんと別れ、ふたたびの帰り道。

とても楽しい時間を過ごせました。

今日も幸せです。



夕暮れの街もキレイですね。



夢とか目標とか、好きとかって、難しいですね。

これからも迷ったり悩んだり、まだまだしそうです。

でもちょっとだけ、わかりました。

答えはひとつじゃなくて。

迷っていることも楽しさで。

あせらずゆっくり、でも進まないと、ですね。



あと、ライラさんはやっぱり、プロデューサー殿も、事務所のみなさんも、大好きです。





♪〜♪〜

ガチャ



麻理菜「お疲れさまー…って何この激しい曲」

心「ぜーっ、ぜーっ…あ、お疲れー」

麻理菜「居残り練習? 頑張ってるわね」

心「あ”ー………ゲホッ、(スーッ) やだーマリナル☆ひみつの特訓なんだから見ちゃらめぇ☆」

麻理菜「サッと出せないキャラってどうなのよ」

心「見たらわかるっしょ! 今しんどいの! いっぱいいっぱいなの! 夢も希望もいっぱいなの!」

麻理菜「何それ、ちょっと素敵」

「「アハハハハ」」



麻理菜「…ご飯行くけどどう?」

心「行くぅ☆ ちょっとだけ待って、ストレッチするから」

麻理菜「はいはい。 …ところでBGMこれ『いとしのレイラ』よね? 急にどうしたのこんなカッコイイ洋楽」

心「ん? いや、Coチームにライラちゃんっているじゃん」

麻理菜「うん」

心「今日その子が別の子に相談してるのがちょっと聞こえてさ」ノビー

麻理菜「うん」

心「なんかいろいろ頑張ってんなーと思ってね。だから今日はなんとなくこの曲☆」

麻理菜「何それ。…ライラならぬレイラ、みたいな?」

心「おんなじっしょ。どっちも L-A-Y-L-A だぜ?」

麻理菜「…あ、そっか」

心「ね☆」



心「ライラちゃん、いい子だね。いずれあの子がたくさんの男を虜にする日も来るかもね」グイグイ

麻理菜「ふふっ。その時は男たちがライラちゃんに『ひざまずく』のかしら」

心「また粋な言い方しちゃって」

麻理菜「はぁとこそ。いつもはコメディキャラばっかりのくせしちゃって」

心「やだー☆ 何言ってんのぶっ飛ばすぞ☆」



<♪ Layla, you got me on my knees
 (レイラ、俺はこうして君にひざまずいた)
<♪ Layla, I’m begging darling please
 (レイラ、どうかお願いだ)
<♪ Layla, darling won’t you ease my worried mind?
 (レイラ、俺の不安な心を癒してくれないか)





翌日。

今日はプロデューサー殿もお時間ありそうとのことで。

プレゼント、準備オッケーです。



…えーっとですね。

…ムム、今更ですがちょっとハズかしいですねー。

…でも、思ったことがたくさんありまして。



ライラ「プロデューサー殿」

P「ん、どうした?」



思い立ったが吉日。

まいりましょー。



ライラ「見てください。ちょっとお高いカップアイスを買ってきたですー」

P「お、今日は何かいいことあったのか?」

ライラ「2つ買いましたですよー」

P「2つ?」

ライラ「一緒に食べませんか?」

P「俺にもくれるのか?」

ライラ「そうです。ずいぶん遅くなってしまいましたが、お誕生にお祝いを頂いたお礼です。あと、日頃の感謝の気持ちと、あとは…えと、いろんな気持ちのぶんです」

P「…お、おう。でもいいのか? ちょっといいアイスなんだろ?」

ライラ「もちろんでございますですよー」ニコッ

P「………そうか。じゃあ休憩にして、そっちで一緒に食べようか」

ライラ「はい!」パアア





プレゼントはヒナさんにもミナミさんにもいろいろ考えてもらいましたが、

結局、やっぱりアイスになってしまいましたです。

でもこれ、ちょっとお高いめなんですよー。

いつもとちょっとだけ、違うんですよー。



いつもアイスでごめんなさいです。

でもたぶんこれが、今いちばん、一緒に笑顔になれるものだということを、

ライラさんは知っていますから。



P「おいしいな」

ライラ「はい♪」





杏「レッスン疲れたー」

比奈「最近トレーナーさん厳しいっスよね」

杏「ホントだよ…早くソファーで寝たい…」グデー

比奈「まだ廊下っスよ、グデらないで歩いた歩いた」



モグモグ…



杏「お、みちるじゃん、お疲れ」

比奈「お疲れ様っス」

みちる「あ、お疲れ様です!」モグモグ

杏「今日はもう帰り?」

みちる「フゴ…いえ、ただ今はちょっと、席を外した方がいいかなーと思いまして」テレテレ

比奈「え」

杏「…そっかー」

みちる「はい」

杏「…しょうがないなー。隣の部屋空いてたっけ? そっちでコーヒーでも飲んでようか」

比奈「………杏ちゃんも、たまには粋っスね」

杏「…そんなもんじゃないよ、別に。みちる、杏たちもパンもらえるかな」

みちる「もちろんです!」





ライラさん、特別大きな信仰を持ってはいませんが、

信じたいこと、大切にしたいことはたくさんできました。

それを少しずつでも、刻んでおきたいと思っています。



人は嬉しい思い出を形に残す工夫をしますです。

わたくしライラさんは、プロデューサー殿にアイドルのお誘いを頂いたとき、

…いえ、正しくはその直前、わたくしがライラと申しますですと名乗ったときに、

ライラさんか、いい名前だね、と。

「ライラさん」と笑顔で呼んでくださったことが、とても印象深くて。

あの瞬間から、わたくしの毎日は少しずつ変わって。

アイドルへの道を拓いてくださったこと、

とても嬉しくて、とても感謝しているのです。



いろんなことのはじまりとして。

ステキな思い出として。

だからわたくしは自分でも「ライラさん」と名乗るのですよー。

えへへ。

今はプロデューサー殿「ライラ」とだけ呼びますですが、

だからこそ、ちょっとした、でも大切な思い出でございます。





いつか故郷のパパとママにもゆっくりお話ししたいですね。

わたくし、日本でこんなにステキな出会いがあって。

こんなにステキな毎日を送れておりますよーと。

プロデューサー殿にも、アイドルのみなさんにも、

パパとママにも感謝さまさまなのですよーと。



すりすり

P「どうした?」

ライラ「えへへ、ちょっとハズかしいですね。でも、今日はちょっと、すみませんです」

P「…甘えんぼうなときもあるんだな。『ライラさん』にも」ナデナデ



えへへ。





ライラ「プロデューサー殿」

P「うん?」

ライラ「ライラさん、立派なアイドルになりますね」

P「…お、うん」

ライラ「それはそうと」

P「?」

ライラ「プロデューサー殿は、恋に溺れて街をさまよった経験はおありですか?」

P「へっ!? …いや、ないけど」

ライラ「そうですかー。では、どなたかにひざまずいたことはありますか?」

P「!!?? …ないけどさ、えっと、どうしたのライラ」



< ヒソヒソ
< Pサンソウイウシュミナノカシラ



ライラ「ないですか。えっと、普通はないですか。そうですよね」

P「ねえちょっと」

ライラ「えへへ、大丈夫ですよー」ニコリ





たくさんのアイドルをプロデュースされていて、

ステキな女性が身近にたくさんいらっしゃる、

それがプロデューサー殿です。

でもそんなプロデューサー殿のような男性を虜にするような、

そんなステキなわたくしに、

そんなステキなライラさんに、

いつかなれたら。

それはとってもステキなことではないでしょうかー。

まあ、恋の狂気はダメでしょうけれど…。



でも親愛なるプロデューサー殿に、

いつかステキな女性として見て頂けたら、嬉しいですねー。

少しずつ、頑張ります。



「ウヒッブカ、プロデューサー殿!」



これからも、よろしくお願いします!





おまけ



杏「ひざまずく、ねぇ…」



ガチャ



時子「この豚ァ!」ビシッ

PaP「&%$#!」バタンドタン



バタン



杏「あっちの部屋にしようか」

比奈「それがいいっス」

みちる「ですね」



比奈「…ひざまずいてたっスね」

杏「あれも愛、かなぁ」



みちる「あっユッコちゃん、お疲れ様です!」

裕子「あ、お疲れ様でーす」ムムーン

杏「………ユッコは時子のアレ、止めないの?」

裕子「時子さんですか? …ああ、たぶんもうすぐ終わる頃ですよ。このあとレッスンですし!」

杏「………そっか」

比奈「慣れって怖いっスね」

みちる「ですね」





以上です。

過去作に

みちる「もぐもぐの向こうの恋心」
裕子「Pから始まる夢物語」
飛鳥「青春と乖離せし己が心の果てに」
晶葉「世界はそれを、愛と呼ぶんだ」
トレーナー「もっともっと、好きにまっすぐ」
輝子「今日、私は少し、恋を知る」
あい「恋より先の、もっと先の」

があります。

少し感じが違う作品かもしれませんが、
よろしければどうぞ。

失礼致しました。


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