八幡と小町 (28)
小町「それじゃあ修学旅行で三日ほど留守にするけど、お兄ちゃん頑張ってね」
八幡「夕飯ぐらい頑張るほどのことでもないだろ、だから頑張らない」
小町「お兄ちゃんが頑張る時はいつか来るのかな?…でもたった1人で食べるごはんってとっても寂しいんだよ?
小町はよく経験したから分かるもん」
八幡「俺は学校ではいつも1人で食ってるが、全く寂しくないぞ。
むしろ俺の人生の中では心休まる時間に分類されるまである」
小町「お兄ちゃんの人生ってある意味サバンナよりも過酷だよね…。でも夕飯で1人の時はなかったよね?
小町とずっと一緒だったから。あっ今の小町的にポイント高い。さらに別れの場面ということでポイント2倍!」
八幡「唐突にスーパーの売り文句を思い出してしまった。もちろん他意はない」
小町「あー、いま一番気にしてること言った…流石ごみぃちゃん」
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八幡「気にしてたのかよ」
小町「別にぃ」プィ
八幡「そうか」
小町「…」
八幡「…」
小町「…………………………」(無言の威圧)
八幡「分かった、悪かった。世界一嬉しいよ」
小町「…うん」ギュッ
八幡「うっ…抱きつくな、暑いだろ」
三十分後
小町「それでは行ってきまーす」
八幡「怪我に気をつけて、楽しんで来い」
小町「ばいばい、お兄ちゃん」
八幡「じゃあな」
小町(最近お兄ちゃんとの絡みがドライなんだよね…これが自立なのかな。嬉しいような、寂しいような複雑な気分だなぁ…)
八幡(最近の小町は甘えることが多いんだよな…無視するととすぐ拗ねるし心配だ。
もし俺が居なくなったらどうするんだ?)
一日目 夕がた
雪ノ下「…」ペラッ
八幡「…」ペラッ
八幡(由比ヶ浜が来るまでのこの時間帯は、ひどく静かだ。
そして、俺はこの時間が嫌いではない)
雪ノ下「…」ペラッ
八幡(そういえば雪ノ下は雪ノ下陽乃の妹にあたるのか。
甘えていた時期もあったと雪ノ下さんは言っていたけれど
実際はどうなのだろう)
雪ノ下「…」ペラッ
八幡(迂闊に聞くと地雷を踏んでしまいそうだが、今の小町との関係はあまり良くないからな。
ここはユキペディアさんに聞いてみよう)
雪ノ下「…」ペラッ
八幡(しかし、相変わらず話しかけづらい。かれこれ半年以上同じ部活で活動しているはずだが、
俺と雪ノ下の間には、マリアナ海溝よりも深い溝が依然として存在する)
雪ノ下「比企谷君」
八幡「…なんだ」
雪ノ下「人の顔を伺うのは貴方の得意とするところでしょうけど
今、私にそれをする必要はないわ」
八幡(…なん…だと…)
雪ノ下「小町さんから聞いたのだけれど、この三日間小町さんは修学旅行へ行くそうね」
八幡「お、おう。確かにそうだが、なぜ今それを?」
雪ノ下「小町さんからメールが来たのよ。
『その間兄がひどく寂しい思いをすると思うので
少しだけでも話してかけてあげてくれると小町は嬉しいです』と電話でお願いされたわ」
八幡(これはまずい…小町の想いが思った以上に重いことに気付いた瞬間であった)
雪ノ下「だから、修学旅行の間だけ、貴方の話し相手になるわ」
そういうと、雪ノ下は本を生徒鞄にしまい、俺に向き直った。しか彼女の頬は赤く染まっている。
ひょっとすると、恥ずかしいのだろうか?
だとして言われている俺も相当に恥ずかしいので、処置に困り果てた。
そのうち、雪ノ下が長机の上に視線を泳がせ始めると、俺もそれに倣う。
雪ノ下「…」
八幡「…」
数十分後
由比ヶ浜「やっはろーってどうしたの二人とも?」
雪ノ下「い、いえなんでもないわ」
八幡「ああ」
由比ヶ浜「?」
八幡(やはりコミュ症どうしだと、どうにもならん…。むしろいつもより相談しづらい位だ。
ここは由比ヶ浜を頼ろう)
まちがい
雪ノ下にきたのはメールではなく電話でした
小町かわいい
八幡「由比ヶ浜、…………それと雪ノ下」
由比ヶ浜「ほぇ?」
雪ノ下「…」ムッ
八幡「その…妹のことで、相談したいことがあるんだ。
でも、これが奉仕部の活動から離れていることは分かってる。
だから…なんというか…とも…違う。知り合いとして、聞いて、ほしい」
由比ヶ浜「…」
雪ノ下「…」
八幡「…」
由比ヶ浜「…うん、聞いてあげる。ヒッキ―が誰かを頼るなんて初めてだし」
八幡「…そうか、ありが」
由比ヶ浜「でも、今ヒッキーにかなりむかついてるからね」。
八幡「…」
由比ヶ浜「ヒッキーには」
それから由比ヶ浜は教室の窓から夕日を眺め、たそがれ始めた。
俺はその横顔を見て、不用意に頼んだことを後悔した。
雪ノ下「…私は断らせてもらうわ」
由比ヶ浜「ゆきのん…?」
雪ノ下「そもそも私はそういうことに関しては不得手よ。
だから由比ヶ浜さんに相談するのは得策ね、比企谷君」
八幡「…それは」
雪ノ下「失礼するわ」ガラガラ、ピシャ
由比ヶ浜「追いかけないの?」
八幡「…」
由比ヶ浜「…そっか」
由比ヶ浜はそれ以上何も言わなかった。
それでも、彼女の表情からはありありと失望の念がうかがえた。
それは、俺のこの憎たらしい態度に対してか
それとも、俺にとっての三人の関係を知ってか
あるいはその両方だ。
そして、俺は彼女の失望を否定できない。
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続けぇ