ツバサ「ガンプラバトル東京冬季大会に出撃よ!」 (147)

――時は西暦20XX年。
 この時代の人々は、うねりにうねる2つの流行の波に乗り、熱中していた。

 誰しも一度は憧れるであろうスターダム。その足掛かりを己が手で掴めるチャンスをぐっと身近に引き寄せた夢の舞台――スクールアイドル。

 かつての少年が夢見たロマン。それを現実のものとし、自らの相棒こそが最強であると証明するために研鑽を積み重ねる勇士の戦場――ガンプラバトル。

 中高生らを筆頭に老若男女問わず盛り上がりを見せる2つのムーブメントは既に青春の華として、第2第3の甲子園とも言えるほどの立場に登り詰めている。


 そして、その双方にて栄光を掴まんとする者あり。
 東京は秋葉原、UTX学院高校のスクールアイドル――A-RISE。
 スクールアイドル全国大会「ラブライブ」の初代王者として栄冠を賜りし彼女らは、何を思って異なる戦場へと足を踏み入れるのだろうか……


 新たなる挑戦が、始まる。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439552340

――1月某日、UTX学園高校カフェ

ツバサ「ガンプラバトル東京冬季大会に出撃よ!」

英玲奈「……どういう風の吹き回しだ?」

あんじゅ「ずいぶんと突飛な話じゃない」

ツバサ「最終予選で敗退した私たちは、あとはもう卒業とプロデビューを待つだけ。高校生活の締めがそんなんじゃ味気ないでしょ?」

英玲奈「まぁ、それはそうだが」

ツバサ「で、どうなの?」

英玲奈「異論は無い。万事了解だ」

あんじゅ「私も。ようやく表立ってガンプラバトルができるのね♪」

ツバサ「ずっとアイドルに専念してきて、本気でできなかったガンプラバトル。ついに我が愛機を白日の下に舞わせることができようとは……!」

ツバサ「……それに、μ'sに負けた悔しさをぶつけることだって、これで!」

英玲奈「やけに荒ぶってるな」

あんじゅ「目の前の目標に燃えるのはいつものことでしょ」

英玲奈「それで、出るからにはもちろん優勝を狙うのだろう?」

ツバサ「それはもちろん」

あんじゅ「でも今年の東京には、全国制覇を成し遂げたニューレジェンドがいる……」

英玲奈「聖鳳学園――トライファイターズ。ガンプラ学園の連覇記録を破ってみせたチームか……」

ツバサ「だとしても、臆することは無意味よ。戦いに必要なのは――」

あんじゅ「己の勝利を」

英玲奈「信じる心」

ツバサ「一応、公開プロフィールにガノタであることは明記してるけど、世間の認識はアイドル。余所の土俵に殴り込みをかけようってんだから、威勢よく行かないとね」

英玲奈「ならばさっそく、取り掛かるとしよう」

あんじゅ「そうね」

ツバサ「そう、特訓よ!」

――数日後、音ノ木坂学院

花陽「今日もアイドル情報をチェックしなきゃ♪」カタカタ

花陽「♪~」ススー、カチカチ

花陽「……ん?」

花陽「んん!?」

ガチャ

にこ「あら、花陽だけなのね」

花陽「…………」ブルブル

にこ「ど、どうしたのよ……」

花陽「た、大変……大変ですっ!」

「「「「「A-RISEがガンプラバトル!?」」」」」

花陽「はい、公式ブログに、来週の大会に出るとの告知が……」

凛「ホントに書いてあるにゃ」

海未「ですが、どうしてそんな事を今更……」

にこ「A-RISEの3人がガンダムオタクだというのは周知の事実だったわ。きっと私たちに負けて暇になったから、好きなことをして楽しもうってんでしょうね」

希「けど、アイドルがいきなりガンプラバトルに参加するのってどうなん? 硬派なファンはそういうの嫌うと思うんやけど」

花陽「それについては話に上がったとしてもすぐに沈静化するでしょう。これを見てください」スッ

真姫「これは……」

穂乃果「うわぁ、すごい!」

花陽「英玲奈さんの部屋の棚です。こっちはあんじゅさん」

ことり「ガンダムのグッズが所せましと……」

にこ「A-RISEが1年だった頃にブログに上げられた画像よ。見ての通り、かなりコアなガンダムオタクってわけ」

絵里「なるほど、これを見せれば「にわかではない」と受け入れてくれる、ってわけね」

花陽「けど、A-RISEも一般的な認識はアイドル。ちゃんと情報収集をしてないライトなファンは、ガンダムファンだと知って面食らうことになるでしょう」

穂乃果「それで、やっぱり観戦に行くんでしょ?」

ことり「でも、その日は練習が……」

にこ「にこは見に行くわよ!」

花陽「わ、私も、A-RISEが出るなら……」

真姫「どうすんの、参謀殿?」

海未「ん……この際ですから、予定は変更しましょう」

絵里「まぁ、こういうこともたまには、ね」

凛「やったにゃ!」

希「ふふ、楽しみやね」

――東京冬季大会当日、大会会場

ツバサ「ふふ……待ちに待ったというのよ、この日をね!」

英玲奈「あまりはしゃぐな、みっともない」

あんじゅ「あ、見て、成練高専よ」

英玲奈「情報戦と連携に長けた“戦場の支配者”か。だが、どうするかな。我々の情報は雀の涙ほどだ」

ツバサ「でも夏の大会で、想定外の事態に弱いということは露呈している。何かカバーはしてくるでしょうね」

――ザワワッ!

英玲奈「む、このどよめき、強者が来たか」

あんじゅ「あれは……東東京地区代表になった鴎第三中のMSGね」

ツバサ「全国では大阪代表にこっぴどくやられてたけど、地形を問わず堅実に攻めてくる実力は侮れるレベルではないわ」

英玲奈「それに続くは聖オデッサ。どうやら聖鳳と切磋琢磨して実力を上げたようだが、果たして……」

??「あー、失礼。A-RISEの御三方でいらっしゃる?」

ツバサ「あなたは……迅速のスレッガー!」

スガ「おや、ご存知とは、嬉しいねぇ」

英玲奈「強豪の情報収集を怠るほど、この大会を侮ってはいない」

スガ「ほう、やっぱりその心意気、本気ってわけだね」

あんじゅ「それで、何かご用?」

スガ「いやぁ、お恥ずかしながら俺、君たちのファンなんだよねぇ。サインくれる?」つ色紙

ツバサ「なんだ、そんなこと」スラスラ

あんじゅ「てっきり宣戦布告に来たのかと思っちゃった」スラスラ

英玲奈「だが、相手がファンであっても容赦はしない。全力でやらせてもらう」スラスラ

スガ「臨むところだって。サインありがとうね」ヒョイ

??「スガぁ! 何やってんの!」

スガ「あらら」

??「1人でどっか行ったと思ったら、こんなところに!」

???「単独行動をするなら、せめて一声かけろ」

英玲奈「ふふ……揃ったな、Gマスター……」

スガ「ほらほら、見てよヨミちゃん、スドウちゃん、A-RISEだぜ、A-RISE」

ツバサ「…………」ジー

ヨミ「…………」ジー

あんじゅ「前から思ってたけど、やっぱり似てるわよね、この2人」

スドウ「まるで姉妹のようだな」

スガ「同い年だけどね」

ツバサ「はじめまして、ね。当たったらいい勝負をしましょう」スッ

ヨミ「フッ、アイドルに負ける私らじゃないっての」ガシッ

ゴゴゴゴゴゴゴ

英玲奈「お互い、気合は十分といったところか」

スドウ「こちらも、クイーン・オブ・スクールアイドルの実力とやら、お手並み拝見とさせてもらおう」

あんじゅ「こっちの2人も性格が似てるわね」

スガ「残る俺たちも、何か似てるとこあるかな?」

ヤス「飄々としたつかみどころのない性格は似てますね」

スガ「あら、ヤス、いたのか」

ヤス「いたのか、じゃないですよ! みんなして僕を置き去りにして!」

スガ「ははは、スマンスマン」

ピンポンパンポン

アナウンス『ご連絡を申し上げます。開会式が始まりますので、出場選手の皆様はアリーナに集合してください。繰り返します……』

ツバサ「時間ね。行くわよ」

スドウ「総員、第2種警戒態勢へ移行だ。気を引き締めろ!」

ゾロゾロ







シーン


……バタバタバタ

セカイ「うわぁ! もう誰もいねぇ!」

ユウマ「お前のせいでいつもいつも遅れて、どれだけ迷惑をかければ気が済む!」

フミナ「いいからさっさとアリーナに急ぐ! 早く!」

――アリーナ

ザワザワザワ……

アナウンス「只今より、ガンプラバトル東京冬季大会を開催いたします」

アナウンス「まず最初に、特別ゲストの3代目メイジン・カワグチより挨拶をいただきます」

タツヤ「紹介に預かった、メイジン・カワグチだ。選手諸君は、今日という日を待ちに待ったことだろう。そう、己が努力、己が研鑽を成果に残す、この日を!」

タツヤ「諸君、全力を出し切れ! メーターを振り切れ! 真正面からぶつかれ!」

タツヤ「何もかもかなぐり捨てて戦う姿は実に美しいものだ。そのような戦いを、私は欲している!」

タツヤ「さぁ見せてくれ! 諸君らの愛を! ガンプラを愛する心を! 愛機の強さを証明する情熱を!」

タツヤ「全てのバトルが実りのあるものであるよう、切望する。以上ッ!」

……………………

アナウンス「あ、ありがとうございました……」

タツヤ「礼には及ばん」フンス

アナウンス「なお、今大会で上位に入賞した東西4チームずつには、次年度地区予選トーナメントのシード権が獲得されます」

アナウンス「それでは、トーナメント組み合わせの発表です」

バァン!
http://i.imgur.com/R1jcxyr.jpg

ツバサ「――初戦が成練高専!」

あんじゅ「そして2回戦にはたぶんオデッサが上がってくる」

英玲奈「準決勝まで行けばおそらくは聖鳳だ」

ツバサ「鳴り物入りの私たちに課せられた試練、ってわけね。臨むところよ……!」

アナウンス「それでは、開会式を終了いたします。1回戦第1試合は10分後に開始しますので、該当選手は準備をお願いします」

――観客席

ガヤガヤ

穂乃果「ねぇ、A-RISEと当たる成練高専ってどんなチーム?」

ユウマ「夏に僕らと戦ったチームだよ。高度な連携と戦術で戦場を支配する強豪だ」

穂乃果「へぇ……ってうわぁ!」

海未「誰ですか!」

穂乃果「ユ、ユウくん!?」

ユウマ「姿が見えたから来てみたものの、驚きすぎでしょ、穂乃果ちゃん」

セカイ「お前がいきなり現れるからだろ」

ユウマ「失礼。コウサカ・ユウマと申します。お見知りおきを」メガネクイッ

ことり「高坂って……穂乃果ちゃんの……」

穂乃果「うん、いとこだよ」

穂乃果「そういえばすっかり忘れてたよ、ユウくんがガンプラバトルやってたこと」

ユウマ「これでも全国制覇したのに、おじさんから何も聞いてなかったのか?」

穂乃果「えへへ、こっちはこっちでスクールアイドルに夢中になってたから……」

穂乃果「あ、紹介するね、我らがμ'sのメンバーだよ!」

ユウマ「じゃあこっちも、トライファイターズのメンバーを」

セカイ「どうも、カミキ・セカイです!」

フミナ「ホシノ・フミナです」

にこ「!」ガタッ

真姫「何、どうしたの」

にこ「」ズカズカズカ

にこ「」ズズイッ

フミナ「あの……何か……?」

にこ「アンタ、中3?」

フミナ「はい……」

にこ「……世の中って不公平ね。そう思うでしょ?」

フミナ「はぁ……」

セカイ「いったいどういう意味です?」

ユウマ「バカ! 察せ!」

セカイ「?」

セカイ「……お、ギャン子とシモンたちが出てきたぞ」

ユウマ「そうか、2チームとも第1試合か」

フミナ「フェイスは勝ち進めば準決勝でGマスターと当たる。なかなか読みが難しいトーナメントになりそうね」

――第1試合終了

ツバサ「順当にオデッサが上がったわね」

あんじゅ「機体の挙動が夏とは段違い。成長してるわ」

英玲奈「それでこそ戦い甲斐があるというもの。成練とて、倒させてもらう」

ツバサ「さぁ、我らA-RISE、公式大会初陣よ!」

あんじゅ「彼らが戦場を支配するというなら、私たちは戦場を魅了しましょう」

英玲奈「よし、行くぞ」

アナウンス『只今より、1回戦第2試合を開始します』

 私立UTX学院高校  V   都立成練高等専門学校
     A-RISE       S        SRSC

『GUNPLA-BATTLE combat mode start-up』

『Model damage level set to B』

『Please set your GP-BASE』

『Beginning Plavsky-Particle dispersal』

『Field four “mountain”』

『Please set your GUNPLA』

『Battle start!』

ツバサ「フリーダムライザー、綺羅ツバサ、出るわ!」

あんじゅ「モンテーロ・ツインブラスト、優木あんじゅ、スクランブル!」

英玲奈「ザレクト、統堂英玲奈、発進する!」

フリーダムライザー FREEDOM RISER
http://i.imgur.com/OfC6OOw.jpg
型式番号:ZGMF-X20A-RISE
頭頂高:18.88m 重量:76.8t

武装
バルカン×2
ユーディキウムビームライフル
ツインビームクロー
カリドゥス複相ビーム砲
ビームシールド×2

 綺羅ツバサの機体。改造素体はストライクフリーダム。
 自身の名と共通する部分があるキラ・ヤマトとフリーダムであるが、ツバサ自身は彼を悪と認識しており、その嫌悪感を普遍化するために禍々しくカラーリングを変えた。
 本体はストライクフリ-ダムを黒と紫に塗り、腰のレールガンはオミットしてガイアのロングサイドアーマーに付け替えている。
 翼はフリーダムのものからバラエーナをオミットして装着。黄金のメタリック塗装を施して自らの名を体現した。
 全身には細かなパネルラインが彫られており、赤でスミ入れすることで際立たせている。
 携行武装にはプロヴィデンスの大型ライフルと2本のサーベルを並列発振するオリジナルのビームクローを選択。
 関節部に高反応素材の使用やリモーションコートを施し駆動出力を格段に向上させており、金属パーツ使用による剛性とも相まって、肉弾格闘でも非常に優秀なスペックを発揮する万能機。

モンテーロ・ツインブラスト MONTERO TWIN BLAST
http://i.imgur.com/UzFBJwg.jpg
型式番号:MSAM-YM03/TB
頭頂高:18.5m 重量:46.6t

武装
バルカン×4
ビームブラスターソード×2
ビームピストル×2
ミサイル×6
ワイヤーフック

 優木あんじゅの機体。改造素体はモンテーロ。
 肩部シールドウイングがAGE-2ダブルバレットのバインダーを改造した大型ビーム砲兼ビームサーベルに換装されており、高い攻撃能力を得た。
 バインダーの開放型ショートバレルはビームの収束率の調整に従い展開・収縮され、破壊力と射程のバランスを振り分けられる。
 減少した分のスラスターは腰背部にブーストポッドを装備することでカバーし、装甲形状を空力に秀でた流線型に変えて機動力を高めつつ、エレガントなシルエットを構築している。
 他の2機とは違い各部関節のトルクは低いが、反応速度は随一で即応性が高い。
 携行装備は中~近距離戦でのフェイルセーフの目的が強いビームピストル。

ザレクト ZARECT
http://i.imgur.com/P0IKnne.jpg
型式番号:xvt-dgc
頭頂高:20.3m 重量:73.5t

武装
ビームバルカン/ビームサーベル×2
ビームバスター
ザレクトキャノン×2
ザレクトブレード×2
ザレクトビット

 統堂英玲奈の機体。改造素体はギラーガ。
 英玲奈は石垣純哉のファンであり、これまでも彼のデザインした機体のみを愛機としてきた。
 本機は「デシル・ガレットが惑星間大戦終盤まで生き残っていたら」という構想のもとに製作された、クロノスの後継機でありギラーガの姉妹機という設定。
 砲撃に特化したが故に取り回しが悪化したクロノスから武装構成を改善し、腕部に近接戦闘用の実体剣“ザレクトブレード”が装備され、各部関節も柔軟性に優れた格闘戦用の高トルク仕様にチューン。可動を妨げぬよう、背部の“ザレクトキャノン”は展開式に改良されている。
 さらにXトランスミッターによる胞子ビット制御能力も付与したことにより、高い広範囲殲滅力を発揮できる凶悪な仕上がりとなった。

 立体映像のカタパルトから飛び出した先は、茶褐色の岩肌を晒した山岳地帯であった。
 すぐさま通信状態を確認し、回線を開く。

英玲奈「流石にまだジャミングはされていないか」

ツバサ「でもこのフィールドなら、すぐに隠密行動に入って地ならしをするでしょうよ」

あんじゅ「なら、阻止しないとね」

英玲奈「手始めに、藪をつつくとしよう」

 ザレクトが断崖の上へと登り、睥睨する。
 岩山は都合悪く複雑に入り組んでおり、MSを隠せる場所はいくらでもありそうだった。
 だが、下準備のために装備を展開できるだけのスペースがある場所は限られる。
 英玲奈は条件を入力し、砲戦重視のザレクトは優れたセンサー能力でその場所をピックアップする。

英玲奈「隠れ蓑に最適なポイントは……4か所か」

あんじゅ「座標を1つ転送して。こっちも爆撃するわ」

英玲奈「了解だ。ここを頼む」

あんじゅ「オッケー、行くわよ……」

英玲奈「Fire!」

 ザレクトの胸と肩、3門の砲がビームを放ち、モンテーロTBのミサイルが飛翔する。
 それぞれの攻撃は絞った4つのポイントに次々と着弾。大きな爆炎を咲かせた。
 そしてその中の1つから、急いで飛び出してくる3つの影。

英玲奈「出た! J44!」

ツバサ「待ってましたッ!」

 勢いよく飛び立つFライザー。翼を広げたハイマットモードで、一気に標的へと距離を詰める。

ツバサ「敵機種特定! ユニコーンの分担特化型よ!」

 ライフルで牽制射をしつつ、カメラが捉えた敵機のデータを後続の僚機に送るツバサ。
 今回SRSCが駆るガンプラは、ユニコーンガンダムを白兵、砲撃、電子戦に特化させた『ユニコーンガンダムSR』であった。

 反撃にビームマグナムが撃たれ、Fライザーは急降下してやり過ごす。アレを喰らえば、いくらなんでも重傷以上は免れない。
 そのまま地面スレスレを滑るように進んだFライザーの正面から、白兵仕様――SR1が突っ込んでくる。

ツバサ「要はやらせないってわけ!」

 布陣の中心となる電子戦機の保護のために出てきたことを察したツバサは、ライフルをマウントして左腕部ビームクローを発振した。
 UC-SR1もビームトンファーを展開して――激突。ビームの刃が密着してスパークを迸らせる。

イシバシ「なんという展開の早さだ! 褒めてやるッ!」

ツバサ「わざわざ待つ義理は無いから!」

 駆動出力の差は歴然だった。Fライザーがビームクローを強く振り抜くと、UC-SR1はいとも簡単に弾き飛ばされて、岩肌に背中から突っ込んだ。

イシバシ「なんだと!?」

ツバサ「足止めなんて、通用しないわ!」

 2機の頭上をモンテーロTBとザレクトがフライパスしていく。

あんじゅ「追撃は請け負うわ!」

英玲奈「そちらは任せる!」

イシバシ「お前が攻撃役と見せかけて、デコイだったってわけか!」

ツバサ「そっちだってデコイ役でしょう!」

 UC-SR1はスラスターを一気に噴射して復帰。そのまま頭部バルカンとビームガトリングを撃ちつつ後退する。

イシバシ「プラン変更! このままではやられる!」

オカモト『だったら短期決戦しか無いだろ!』

イシバシ「こうも早く使うことになるとは!」

 敵機の装甲分割部から赤い光が漏れ出し、そして展開――しようとしたその時。

ツバサ「生憎ね」

 Fライザーが腹部のビーム砲で偏差射撃をし、UC-SR1を粉砕せしめた。

 入り組んだ谷間に逃げ込んでいたSR2とSR3は、リーダーの撃墜によって一気に浮足立つこととなった。

ニシカワ「イシバシがやられた!?」

オカモト「こんなに早く……規格外だぞ!」

あんじゅ「――みいつけた♪」

英玲奈「逃げ場は無い」

 背後と崖の上に佇立するモンテーロTBとザレクト。寄り添った2機に向けて得物を構える。

ニシカワ「そう簡単にはやられるものか!」

 SR3の手を引き、SR2が大ジャンプをした。そしてデストロイモードへ移行。

ニシカワ「フルバーストだ!」

 ユニコーンSR2搭載された全ての火器が乱射される。恐るべき量のビームと砲弾とミサイルがあんじゅと英玲奈に降り注ぐ。
 爆発、爆発、爆発。
 その凄まじい破壊力の衝撃で、周囲の崖が次々と崩落していく。
 これで2機も生き埋め……

ニシカワ「ふっ、やったね……」

 と、思ったことだろう。

オカモト「――反応顕在!」

ニシカワ「何!?」

 盛大な黒煙が瞬時に吹き払われる。
 その中心には、黄色に光る胞子ビットの防護壁に包まれたザレクトとモンテーロTBの姿が、無傷で存在していた。

あんじゅ「なかなかの判断だったわね」

英玲奈「だが、我々の反応速度はそれを上回っていたということだ」

 ザレクトのキャノンとモンテーロTBのブラスターが上を向く。
 その砲口の先には、急なジャンプをして身動きの取れないユニコーンSR2とSR3。

英玲奈「惜しかったな」

 放たれたビームは頭上で対象を貫き、飾り気のない花火となった。

『Battle ended』

\ウワアアアアア!/

セカイ「すげぇ……あの成練高専をあんな簡単に倒しやがった」

ユウマ「機体性能が違いすぎる。それを有用に駆使した速攻……」

フミナ「迅速かつ確固たる判断力が無ければできない戦法ね」

セカイ「ギャン子は2回戦であの人たちと戦うのか……」

ユウマ「これはどっちが上がってくるか分からんぞ……」

カオルコ「あらユウマくん、先見の明が無いのね」

フミナ「ギャン子!」

カオルコ「勝ってトライファイターズと戦うのはこのわたくし、サザキ・カオルコが率いる北宋の壺に決まっているじゃない!」

セカイ「へっ、その意気だぜギャン子!」

フミナ「だけど、心して掛かりなさいよ。あの強さはおそらく全国でも上位に食い込んでくる」

カオルコ「もちろん、気の抜けた戦いをする気なんて、微塵もあるものですか!」

ツバサ「まずは手堅く1勝ね」

英玲奈「だが囮役の出るタイミングと進退の判断は見事なものだった。初期行動がもっと早く、個々の腕が高ければあっという間に制圧されていただろう」

あんじゅ「また来年度の課題ができたってわけね」

穂乃果「A-RISEの皆さんっ!」ヒョコッ

ツバサ「あら、お揃いで」

あんじゅ「まさか応援に来てくれたの?」

絵里「ええ、ブログを見て、出場する、って書いてあったから」

花陽「あの、すごかったです! 次の試合も頑張って下さい!」

あんじゅ「ふふ、ありがと」

英玲奈「機体の調整があるのでな、失礼」

ツバサ「――あ、そうだ」クルッ

穂乃果「?」

ツバサ「この大会、ラブライブの代わりってわけじゃないけど、私たちは優勝を狙うわ」

英玲奈「だから君たちにも、ラブライブで優勝を狙ってほしい」

あんじゅ「お互い、好きなことで頑張りましょ」

ツバサ「それじゃ」

スタスタスタ……

にこ「言ってくれるわね。俄然やる気が出てきたってものよ」

海未「これは負けられませんね、お互い」

穂乃果「……私たち、勝ったんだよね、あの人たちに」

ことり「うん」

穂乃果「それなのに、やっぱり少し気圧されちゃうよ。すごいね」

にこ「それはそうよ。なんてったって、彼女たちはA-RISE。スクールアイドルの先頭を走り続けてきた存在」

絵里「やはり、それだけのものは持ってるのよ」

――第3試合

フミナ「陣形を崩して! 一気に決めるわよ!」

ユウマ「退路は断たせてもらう! やれ、セカイ!」

セカイ「うおおおおッ! 鳳凰覇王拳ッ!!」

\ワアアアアアア!/

スドウ「カミキの奴は名人杯でお披露目した機体を引っ提げてきたか」

ヤス「対してコウカサ・ユウマは全国大会で使ったライトニングフルバーニアン」

ヨミ「たぶんライトニングZは観賞用の側面が強くて、ライトニングほどバトルで性能を発揮できないと見たわ」

スガ「しかしカミキの機体はトライバーニングの方が性能は上。やっぱ自分で作ったガンプラで戦いたいんだよなぁ」

スドウ「どのような機体で来ようとも、夏のリベンジは果たさせてもらうぞ、トライファイターズ……!」

――第4試合

スドウ「遮蔽物があったとしても、一掃する!」

ヨミ「更地にしてやるわ!」

スガ「はっはっは、撃ち漏らしたのは任せなって!」

\ワアアアアアア!/

英玲奈「宮里も手堅く1勝だ」

あんじゅ「サカシタさんのヴィクトリーはデスティニーシルエットに換装したのね」

ツバサ「スドウくんの百万式もデルタプラス、デルタカイのパーツが移殖されてアップデートされてる」

あんじゅ「操縦技術の方もかなり上がってるわね」

英玲奈「夏から更に伸びるとは、驚嘆に値する」

ツバサ「おそらくBブロックから決勝に上がってくるでしょうね」

あんじゅ「でも常冬も侮れない。機体性能が夏とはまるで違う」

――2回戦第1試合

ユウマ「さて、ギャン子はああ言ってはいたが正直なところ、勝利は非常に怪しいぞ……」

フミナ「セカイくんはどう見る?」

セカイ「もちろんギャン子たちの方を応援しますけど、勝負は勝負。強い方が勝つ。それだけです」

ユウマ「お前にしては冷淡な意見だな」

セカイ「戦いとは時として非情である、って師匠が言ってたんだ」

ユウマ「ふむ……話を聞く限り、人格者でありリアリストなようだな」

セカイ「心の芯がしっかりした人さ」

フミナ「さぁ、選手が出てきたわ」

セカイ「お、そういやシモンも第1試合か」

ツバサ「分かってはいると思うけど、次は1回戦のようにはいかないわよ」

英玲奈「無論だ。小手先だけの戦術が通用する相手でもない」

あんじゅ「つまりはガチンコ、ってわけね」

ツバサ「ここで純粋な実力を発揮できなければ、優勝なんて夢のまた夢」

英玲奈「それは願い下げだ」

あんじゅ「同じく」

ツバサ「なら、することはひとつ。そして次に進むのよ」

『GUNPLA-BATTLE combat mode start-up!』

 私立UTX学院高校 V  聖オデッサ女子学園
     A-RISE      S     北宋の壺

 かくしてA-RISEの第2戦は幕を開けた。
 フィールドは地上1万km上空の低軌道オービタルリングに設置された自由電子レーザー砲“メメントモリ”周辺宙域だ。砲台周囲にはバイカル級航宙巡洋艦が数隻、オブジェクトとして配置されている。

ツバサ「各機、推力全開! 砲台の南側から速攻をかけるわ!」

 ハイマットモードに移行すると共に下されたツバサの指示に従い、英玲奈とあんじゅも機体を加速させた。

英玲奈「……捉えた。向こうも早期の会敵を望んでいる様子だ!」

 このまま行けばぶつかるルートで、オデッサの3機も猛進してきている。

英玲奈「あんじゅ、やれ!」

あんじゅ「任せて!」

 英玲奈が位置データをあんじゅに転送。それを頼りに、モンテーロTBの名を表す2機の大型ビームブラスターが前方を向き、その砲身を長射程砲撃形態へと変える。

あんじゅ「行っけぇ!」

 撃ち出され、猛烈に迸る2筋の粒子は、1隻のバイカル級をかすめてフィールドを貫いた。
 その先で、スラスターの噴射光が3方向に分かれる。

英玲奈「散開したか」

ツバサ「なら蹂躙する!」

 A-RISEの3機は下方へ回避した光を追い、スラスターを再噴射した。
 相手方が分かれたのなら、1機を総攻撃して各個撃破するのが定石となる。

あんじゅ「いや、違う!」

 そこで、あんじゅが異変に気付く。だがその時には既に、スルーした2機から大量のミサイルが発射されていた。

ツバサ「狙われた機体がデコイってわけ!」

英玲奈「ビット展開!」

 ザレクトのXトランスミッターから無数の小光球が放出され、迫り来るミサイル群へと散らばった。
 撃墜されたミサイルが爆発の連鎖を繋ぎ、重なり合った大きな爆炎をフィールド上に咲かせる。

ツバサ「誰かを放っておけるほどの余裕は無いってことでしょ!」

英玲奈「お前は頭を狩れ!」

あんじゅ「私はライジングを!」

 素早い判断で散開する3機。
 結局は個の戦いをするハメになるのか。
 まさか、そうさせられている?
――冗談ではない。

ツバサ「この私たちを踊らせようなんてマネは、きちんとリクエストを送ってからに!」

 そう文句を言ったのは、スクールアイドルとしての矜持からか。

カオルコ「ここはステージではなくってよ!」

 通信圏内へと入って、ようやく言葉を交わせることができる。
 サザキ・カオルコとRギャギャ。
 東京地区では指折りの女傑!

ツバサ「見ればわかることを!」

 互いに抜刀。そして剣戟。
 ビームの刃が接触する度にスパークと火花が弾け、機体を照らす。

カオルコ「あの悪名高きHGストフリをここまでのものにするなんて、能力は本物!」

ツバサ「アレをそのまま出せるほど恥知らずじゃないわ!」

 たとえ大柄な機体が相手でも、Fライザーのパワーは桁が違う。
 ツインビームソードを弾き押され、たまらず後退するRギャギャ。

カオルコ「なんて出力!」

 英玲奈の相手はシグレ・マヒルとノーベルMガンダム。
 先程の爆撃はギャンのシールドを追加装備したが故のものだった。

英玲奈「個々の戦いに引き込んだからには、これに勝算があると自信を持つか!」

 ノーベルMはシールドを捨て、ザレクトキャノンの連射を右へ左と流れるような動作で回避し、接近。ヒートナギナタの一閃を見舞う。
 ザレクトは左腕のブレードを展開してそれを受け止める。

マヒル「勝てない戦法を取るわけが!」

英玲奈「ならば楽しませてくれるのだな!」

 右腕のブレードを展開し、刺突を繰り出す。

マヒル「くっ!」

 ノーベルMは即座に後退するが、刃は脇腹をかすめた。
 追撃防止のバルカンを乱射しつつ距離を取り、ビームボウによる射撃に切り替える。

英玲奈「そちらから近づいておきながら尻込みとは、冗談だろう!」

 ザレクトは重装甲に物を言わせ、電磁シールドでビームを弾きながら敵機へと迫った。

 あんじゅのモンテーロTBはデコイを務めたライジングKガンダム――サノ・ケイコが駆るガンプラへと砲撃しつつ迫る。
 すると向こうは追加装備のシールドから大量のミサイルを斉射してくる。

あんじゅ「このくらいなら……」

 まずは4門のバルカンと2丁のビームピストルを乱射して数を減らす。しかし距離が詰まりつつあるこの状態では全てを撃ち落とす前にミサイルが到達する。
 ならばどうするか。
 飛び込むしかない。
 ミサイル群のわずかな間隙を縫うようにすり抜け回避するその流麗な動きは、肩部バインダーを用いたAMBACを緻密に操作するあんじゅの操縦技術と、それにタイムラグなく追従するモンテーロTBの優秀な駆動系があってこそのものだ。
 こうして全てのミサイルをやり過ごしたモンテーロTBは、それらがターンして再追尾してこないよう、ビームブラスターを照射して一掃した。

あんじゅ「で、ここに来るんでしょ?」

 ビームピストルを背面撃ち。すると、背後で爆発が花咲く。

ケイコ「なっ……!」

 今のはミサイルを片付ける隙を突いて放たれたビームアローを撃ち落としたことによって生じた爆発だった。

カオルコ「だとしても、この盾は簡単に破れるものではなくてよ!」

 2基のシールドを前面に出して突撃してくるRギャギャ。
 その高い推力を上乗せして繰り出された体当たりをモロに喰らい、Fライザーは弾き飛ばされる。

ツバサ「あのサザキ・ススムが作った金属成形のスペシャル!」

カオルコ「そう、我らサザキ兄妹に伝わるギャン魂の神髄!」

 シールド外縁部にビームカッターが出力され、高速回転。接続アームが伸びて、襲い掛かる。

ツバサ「――なら!」

 Rギャギャの懐に飛び込むFライザー。そしてビームクローを振り上げ、右肩側のシールドアームを切り飛ばす。

カオルコ「――!」

ツバサ「ここを狙えばいいってね!」

 右手でそれを掴み取り、そのまま叩き付ける。
 金属製故に、その打撃は強力!

カオルコ「ぐうっ……わたくしの盾を奪うなんて、なんたる侮辱!」

 体勢を崩しつつもガトリングを乱射するRギャギャ。
 しかしそれも、スペシャルな盾で防いでみせる。

ツバサ「挑発するようなマネは不本意だけど、勝利を得るためには!」

 追撃を振り切って逃走したノーベルMは1隻のバイカル級の元へと辿り着いた。

英玲奈「何か企んでいるな」

 警戒。追い詰められた獲物は何をするか分かったものではない。
 すると、バイカル級の武装が起動して、レーザー砲がこちらを向き、ミサイルランチャーのハッチが開いたではないか。

英玲奈「オブジェクトの操作機能だと!?」

 通常、フィールド上の物体は遮蔽物としての機能しか持たない可干渉プラフスキー粒子の塊だ。
 しかし艦艇や要塞などの武装は、特殊な粒子変容工作を施すことで直接操作が可能になる。
 使用機会が極端に少なく武装スロットも圧迫するため、よほどの物好きしか搭載しない機能なのだが、よもやあの機体がそれをしようとは。

マヒル「ステージに恵まれましたわ!」

英玲奈「やってくれるな……!」

あんじゅ「お見通しよ!」

 バインダーからビームソードを発振し、詰め寄るモンテーロTB。

ケイコ「スプレッドアロー!」

 そこに、まるで猫騙しのように放たれる拡散矢のシャワー。

あんじゅ「くっ……!」

 豆鉄砲でも一度に大量に被弾すれば思わず怯んでしまう。
 すると眼前には、右手を緑色に光らせたライジングKの姿が。

ケイコ「必殺、ラァァイジングゥ……ッ、フィンッガァァァァァァァァァッ!!」

あんじゅ「――ッ!」

 すぐさまビームソードを差し向けるが、やはりパワーが足りない。数瞬の拮抗の後、右肩のバインダーが吹き飛ばされる。

あんじゅ「よくもぉっ!」

 バインダーの爆発を陰に、モンテーロTBが瞬時にライジングKの背後へと回る。

ケイコ「この瞬発力――!」

 驚嘆を言わせる間も与えず、ビームソードが敵機を両断せしめた。

カオルコ「ケイコ!?」

 機体の反応が1つ消失した。あんじゅが勝ったのだ。

ツバサ「このまま私も決めさせてもらうわ!」

 Fライザーは奪った盾でめちゃくちゃに殴りつける。
 それを防ぐのは同じ盾。金属同士がぶつかる高い音が、何度も何度も響き渡る。

カオルコ「そう簡単に……させてなるものですか!」

ツバサ「――!」

 不意に来た。Rギャギャがビームサーベルを投擲したのだ。
 それはFライザーの右肘に突き刺さり、吹き飛ばす。

ツバサ「やっぱり張り合いのある相手はいいわね!」

 反撃の腹部ビーム砲がRギャギャの左脇腹をえぐり取り、爆発の衝撃で左脚も脱落させる。

カオルコ「わたくしも、ここまで戦える相手に新しく出会えるなんて!」

英玲奈「あんじゅが戦果を挙げたというなら、私も続かねばならん!」

マヒル「させませんわ! ここで負ければ、後が無くなる! なんとしてでもッ!」

 バイカル級からの攻撃が激しさを増す。
 その声音には鬼気迫るものがあった。

英玲奈「生憎だが、このザレクトの殲滅力はレギルスに比肩する!」

 レーザーとミサイルの猛攻を凌ぎつつも、英玲奈は確実に粒子チャージを進めていた。
 そしてそれが規定値に達した時。

英玲奈「エクステンダービット!」

 放出されたビットがザレクトの前面に5重の光輪を形作り、そこに粒子膜を張る。
 イオリ・セイが考案したプラフスキーパワーゲート。それを砲撃強化能力に特化させた仕様である。

英玲奈「沈め!」

 攻撃のわずかな隙を狙い、ザレクトの全火砲が最大出力で放たれる。
 ビームは粒子膜を突き抜ける度に出力を増し、バイカル級を丸ごと飲み込むほどの太さとなって、全てを流れの中にかき消した。

マヒル「カオルコ様、申し訳ありません……ッ!」

 英玲奈はビームの大河の中に、敵機撃墜の証たる爆発を確認した。

カオルコ「マヒルまで……ッ!」

ツバサ「もうあなただけよ」

カオルコ「フッ、上等じゃない。単機であなた方を殲滅して差し上げるわ!」

ツバサ「その気迫、いいわ!」

 2機は最大加速でその場から飛び立ち、何度も、何度も何度もぶつかり合い、剣を交えながら、戦場を縦横無尽に駆けていく。

カオルコ「そう、勝つ! 勝つのよ!」

 接触の度にどこかのパーツがこぼれ落ち、擦過傷が刻まれ、フレームが軋む。

カオルコ「勝って、セカイくんと戦うのよぉっ!」

 そして2機は、メメントモリの外壁部へと激突した。
 すさまじい衝撃波はバトルシステムの外までも伝播し空気をビリビリと震わせる。
 そうしてできた直径数十メートルのクレーターの中心では……

ツバサ「……悪いわね」

 FライザーのビームクローがRギャギャの胸部を串刺しにしていた。

『Battle ended』

カオルコ「そんな……また……」

ツバサ「ありがとう。伝わったわ、あなたの情熱」

カオルコ「悔しいわ。ことごとく機会を奪われる……」

ツバサ「あなたたちにはまだチャンスがある。許される限り立ち上がればいい」

カオルコ「……そうね。くじけてばかりじゃ、いつまでたっても追いつけない」

ツバサ「オープンクラスに上がったら、また戦いましょう」スッ

カオルコ「ええ、次こそは」ガシッ

穂乃果「こうしてちゃんと見ると、すごいね、ガンプラバトルって」

にこ「バトル中のツバサたちの顔、見た? ライブの時と同じ」

花陽「うん、すっごく楽しそうだった」

絵里「同じくらい好きなのね。アイドルもガンプラも」

海未「彼女たちが強いのは、現状の地位に甘んじることなく、常に挑戦者であろうとしているからなのでしょうね」

希「だからどこまでも高く飛べる。そんな気持ちを持ってれば、限界なんて無いんよ」

凛「凛たちも、あんなふうになれるかな?」

ことり「なれるよ! だから最終予選だって勝てたんだもん!」

真姫「謙遜するのもほどほどに、自信だって持たなきゃ強者とは言えないわ」

ユウマ「オデッサは負けてしまったか……」

フミナ「A-RISE……正直ここまでやるとは思ってなかったわ」

ユウマ「残念だな、セカイ。ギャン子との再戦を楽しみにしていたというのに」

セカイ「いや、あいつらとはきっと再戦できるさ。今の戦いは無意味な敗北じゃなかった。ここからもっと強くなって、俺たちをビックリさせてくれるはずだ」

フミナ「セカイくん……」

……バタバタバタ

ラル「どこまで進んでいる!?」

ミライ「遅れてゴメン!」

ユウマ「大尉、ミライさん!」

フミナ「2回戦の第1試合が終わったところです」

ミライ「はい、お弁当。これ作ってたから遅くなっちゃって」

セカイ「お、やったぜ! ありがとねーちゃん!」

ラル「さて、どこが勝ち残って……何!? 成練とオデッサが下されたというのか!?」

ミライ「倒したのはUTX……UTXって、あのUTX?」

フミナ「はい。しかも出てきたのはA-RISEの3人です」

ラル「クイーン・オブ・スクールアイドルがか! 彼女らがガノタとは知っていたが、よもやこのような番狂わせを……」

セカイ「せっかく来てくれたところで悪いんですけど、俺たちもう試合が……」

ラル「おお、そうか。相手はどこかね?」

ユウマ「八万寺高です」

フミナ「これまでの試合は録画してありますから、気になったのがあったら見てください」

セカイ「それじゃ行ってきます!」

アナウンス『お待たせいたしました。只今より2回戦第2試合を開始します。第1ステージは、私立聖鳳学園……』

にこ「ちょっと飲み物買ってくるわ」ガタッ

穂乃果「いってらっしゃい」

スタスタスタ……

にこ「ふう、世の中よくわからないわね。ハリウッド女優のミホシも昔はガンプラアイドルで売ってたっていうし……」

にこ「A-RISEも世界レベルのスターになるのかしら……?」

――ドカッ!

にこ「痛っ!」ドサッ

ミライ「あ、ごめんなさいっ、大丈夫?」

にこ「平気よ……って、アンタまさか、モデルのカミキ・ミライ!?」

ミライ「そういうあなたはスクールアイドルの……」

にこ「……へぇ、弟がね」チャリンチャリン

ミライ「にこさんはA-RISEの応援ですか?」

にこ「そんなところね」ガタン

ミライ「そう言えば、ラブライブの本選に出場するんですよね。がんばってください!」

にこ「プロの世界にいる人間からそう言われたんじゃ、プレッシャーね」

ミライ「あ、ごめんなさいっ、でも、応援しますから」

にこ「……にしても、アンタくらいの逸材ならアイドルやってもよかったのに、なんでモデルを選んだのよ」

ミライ「スカウトだったんですよ。それに、アイドルやるにしても私、歌があんまり得意じゃなくて……」

にこ「ああ、そう。まぁ、何をやるかは個人の自由だからね」

ミライ「にこさんはどうしてアイドルを……?」

にこ「…………」

ミライ「?」

にこ「……そろそろ、戻る頃合いね。失礼」

ミライ「え、あ、はい。それじゃあ……」

スタスタスタ……

穂乃果「お帰り、にこちゃん」

にこ「モデルのカミキ・ミライがいたわ」

花陽「ええっ!? どこに!?」

にこ「自販機のところでバッタリよ。今もそこらへんにいるんじゃない?」

花陽「ふわぁぁぁぁ、探してこようかなぁ……」

真姫「そういえば、今戦ってる聖鳳のカミキ・セカイって彼女の弟だったわよね。雑誌で言ってたわ」

希「高2でエリチより背ぇ高いんやろ? まさにモデルになるために生まれてきたような人間やな」

凛「そういえば絵里ちゃん、スカウトされてたよね? 秋のイベントの時」

絵里「ああ、アレね。ちょっとしつこかったわ……」

ラル「ほう、あの動き、カミキバーニングは更なるチューンを施したようだな」

ミライ「戻りました」

ラル「おお、すまんな。使いっ走りのようなマネをさせて」

ミライ「いえ、それでどうですか、試合の様子は」

ラル「ユウマくんが既に1機を撃破した。セカイくんもじきに……よし、撃破した」

ミライ「このままスムーズに行けるでしょうか?」

ラル「分からんな。宮里も夏から信じられんほど強くなっている。ほら、第3ステージはもう試合終了してしまった」

ミライ「夏のリベンジ、というわけですね」

ラル「だが、先の問題は準決勝で当たるであろうA-RISEだ。まだ録画を見てないからはっきりとは言えんが、今のオデッサを下したとあらば、セカイくんたちでも苦戦は免れんよ」

――2回戦終了

セカイ「ふう……」

スガ「よう、順調そうだな、トライファイターズ」

フミナ「Gマスター……そちらも随分と腕を上げたようで」

スドウ「今回は引退試合、そしてリベンジをさせてもらいに来たからな」

ユウマ「そうか、3人とも3年で……」

ヨミ「ヤスのために地ならしはしておかないとね」

スガ「そうだぜ。最後くらい錦を飾らないと、悔いが残るってモンさ」

セカイ「だからと言って、手加減はしないぜ!」

スドウ「当然だ。全力のお前たちを倒してこそ、意味がある」

スガ「だが、俺たちより先にA-RISEを倒さないとなぁ。強いぜ? 彼女ら」

ヨミ「ま、どっちが決勝に上がってきても、優勝するのは私らよ!」

ユウマ「そちらこそ、準決勝に来るであろう常冬は強いですよ」

スドウ「それは楽しみにさせてもらおう……では失礼」

ヨミ「じゃあね♪」

スガ「勝っても負けても楽しいバトルをしようぜ」

セカイ「おうよ!」

フミナ「当たり前だけど、燃えてるわね、みんな」

ユウマ「勝ちを望まない脆弱なファイターは、ここにはいないよ」

セカイ「そうそう、気持ちが負けてちゃ絶対に勝ちなんて取れないんだからよ!」

アナウンス『3回戦準々決勝は午後1時30分より開始いたします』

ツバサ「さて、お昼ね」

英玲奈「近くに飲食店はあったか」

あんじゅ「今探してる」

「失礼」

英玲奈「なっ!」

あんじゅ「あなたは……!」

ツバサ「メイジン・カワグチ・ザ・サード!」

タツヤ「突然すまない。驚かせてしまったな」

ツバサ「いったいどのようなご用で?」

タツヤ「いや、よもや君たちのようなファイターが埋もれていたとは、興味が沸いてな」

英玲奈「恐縮です」

タツヤ「君たちが下した相手の実力は知っている。彼らを初出場の立場で勝利しようとは、称賛に値する戦いぶりだ」

あんじゅ「そこまで言ってもらえるとは、光栄ですね」

タツヤ「これまでナリを潜めていたのは、やはりスクールアイドルで多忙だったからかね?」

ツバサ「はい。芸能科の生徒という立場上、時間はそちらに優先的に割いていましたし、けどやはりガンプラはどこまで行っても趣味の領域でありたかった」

タツヤ「ふむ、あくまで脇道であるべきだと?」

英玲奈「相互の関係です。本筋を脇道が癒し、脇道が本筋にも反映される」

タツヤ「なるほど、それ故の本気か」

あんじゅ「大抵の人は、あなたのように好きなこと一辺倒でいられませんから」

タツヤ「フフ、だから私は感謝している。今の私の立場と、そのために関わってくれた全てのものに」

タツヤ「少しだけだが、話せてよかった。それでは、健闘を祈る。失礼」

ツバサ「やはりすさまじい人ね」

英玲奈「殿堂入りも頷けるというものだ」

あんじゅ「一度戦ってみたいものだわ」

ツバサ「……さて、ごはんごはん」

あんじゅ「あ、ここなんてどう?」

英玲奈「私はどこでも構わんが」

ツバサ「よし、ここにしましょ」

シモン「悪いな、チーム丸ごとごちそうになっちまって」

セカイ「遠慮する仲じゃねえだろ」

ラル「フェイスの面々も、実に良く成長しているな」

フミナ「操縦だけじゃない。マモルくんのガンプラも」

マモル「えへへ……///」

ユウマ「その歳でバランスの取れたカスタムプランが練れるのもすごい。やっぱり才能あるよ」

マモル「タテオくんと一緒にガンプラ作ってたら、いろいろ覚えちゃったんです」

ラル「それで、どう見るかね。この大会の行方を」

ミライ「フェイスが次に当たるリヴァイアサンは夏大会のベスト4だったわね」

セカイ「ああ、あのでっかい龍のヤツか」

ゴロウ「あのチームになら、勝算はあります」

フミナ「確かに、今のフェイスなら苦労はしなそうだけど……」

コウジ「でも、次の準決勝は宮里が出てくる」

ユウマ「そうだ。彼らこそ今大会最大の壁となるだろう」

シモン「勝つとするなら、さっさとインファイトに持ち込んで速攻をかけるべきか」

ラル「そうだな。彼らの機体は主武装が大振りで、密接した相手には使いにくい」

ユウマ「重要なのは機動性と運動性か……」

マモル「よぉし、ごはん食べたら急いでチューンしなくちゃ!」

ラル「そして我々だが、やはり準決勝のA-RISEが関門となるか」

フミナ「今まで燻っていたのがもったいない強さですもんね」

セカイ「あの人たちは全国で戦ってきた奴らと同じ、ずっと苛酷な状況に身を置いてきた目をしてる。ああいうのは、本当に強いぞ」

ユウマ「弱肉強食は、スクールアイドルも同じということか……」

ラル「ふむ、君たちが彼女らをそう評価するならば、よもや戦術などはさして重要にならんだろう」

ラル「――楽しんだ方が勝つ、ということだ」

セカイ「よォし、やってやる……勝ってみせるさ!」

 そして、昼食後の準々決勝。
 A-RISE、トライファイターズ、Gマスター、フェイスの4チームはこれを突破し、ついにベスト4が出揃うこととなる。

 Aブロック準決勝。

 先の夏、己が戦場で頂点に立った者たちの戦いの火蓋が、切って落とされる。


 私立UTX学院高校  V     私立聖鳳学園
     A-RISE       S   トライファイターズ

『Battle start!』

セカイ「トライファイターズ、行っくぜええええええ!!」

ツバサ「A-RISE、ステージオン!」

 戦場は月面裏側。
 中央のダイダロス基地にはレクイエムが口を開け、見上げれば機動要塞メサイアが浮かぶ、C.E.73年のそこだった。

ユウマ「索敵を開始する」

 まずトライファイターズは、長距離射撃を得意とするライトニングが状況確認を担う。

フミナ「どう? 察知できた?」

ユウマ「……いた。だがこの反応は――」

セカイ「なんだよ」

ユウマ「――! 総員、飛べェッ!」

 2人はその怒声に、反射的に従った。ただ事ではないと感じ取ったからだ。
 直後、今いた灰色の崖に黄金の濁流が押し寄せた。
 その出力はトライファイターズの予想をはるかに上回るものであり、被弾こそしなかったものの、超加速粒子の衝撃波によって操縦反応速度低下という重すぎる足枷を嵌められた。

セカイ「先制攻撃!?」

フミナ「開幕からこの出力なんて!」

 過ぎ去ったビームは大地をえぐり取る形で、その航跡をくっきりと残していた。

英玲奈「ファーストシュート終了。すまんが温存させてもらうぞ」

ツバサ「了解。行くわよあんじゅ!」

あんじゅ「オッケー」

 A-RISEの初撃は、ザレクトのエクステンダービットで全機分の砲撃を増幅させたものであった。
 膨大な超高速プラフスキー粒子の奔流は粒子変容によって周囲の粒子運動値を奪い取り、当たらずとも相手の動きを鈍らせることが可能だ。
 これはかつてガンダムエクシアダークマターが使ったブライニクルブレイドのフリーズ効果を応用したものである。
 結果、トライファイターズの機体はアンフのような鈍重さに苦しむ成果を挙げたのだが、ザレクトは使い切ったプラフスキー粒子のチャージに入ることになる。

 先行するFライザーとモンテーロTB。
 一気にダイダロス基地をフライパスして、索敵範囲内にトライファイターズの3機を収める。

ツバサ「エンゲージ!」

あんじゅ「この程度で落ちないでよっ!」

 モンテーロTBのブラスターが斉射される

ユウマ「やはり電撃作戦で来たか!」

セカイ「クソッ、体が重い!」

 攻撃の余波で動きの鈍ったトライファイターズには、敵機の襲来があまりに早く感じられた。

ユウマ「攻撃来る!」

フミナ「なら、ガードビット!」

 スターウイニングから分離した2基のビットが、3機の前にファンネルバリアを展開した。
 その障壁にビームは阻まれ、霧散する。

ユウマ「だがこのままクロスコンバットに持ち込まれたら、反応できないぞ!」

フミナ「これで回復できるかもしれない」

 フミナはそう言って、残る大型ビットも分離した。

セカイ「そうか!」

フミナ「プラフスキーパワーゲート!」

 円陣を組んだ4基のスターファンネルが相互間に粒子膜の門を開き、その輪に3機のガンプラをくぐらせた。

ユウマ「粒子エネルギー値、上昇……成功だよフミちゃん!」

 ディスチャージスピードモード。それがフミナの考えた回復手段であった。
 低下したプラフスキー粒子の運動エネルギーを強制加速させることで、レスポンスを通常の値にまで押し上げたのだ。

ツバサ「やはりそう簡単にはね!」

 ライフルで牽制射をしつつ有視界距離にまで来たFライザー。
 その後ろにモンテーロTBが続く。

セカイ「手間をかけさせて!」

 カミキバーニングのクリアパーツが青から緋色へと燃え上がる。
 アシムレイトが発動した証拠だ。

セカイ「次元覇王流、疾風突きッ!」

 炎に変容した粒子を噴き上げ、カミキバーニングの拳がFライザーに襲い掛かる。

ツバサ「威力は脅威……でもねっ!」

 身を沈め、一撃を頭上へとやり過ごすFライザー。
 そしてそのバネで、ハイキック。

セカイ「なんの!」

 足刀は掲げられた左腕に受け止められる。

ツバサ「フッ」

セカイ「!?」

 その反動で横へとステップを踏むFライザー。
 するとカミキバーニングの眼前には、ビームブラスターに光を灯したモンテーロTBが。

フミナ「させない!」

 ビームが放たれようとした直前、モンテーロTBにスターウイニングが躍りかかった。

あんじゅ「ならあなたを」

 妨げられた砲撃は果たして、それをした相手にされることとなった。

フミナ「シールド!」

 割って入るガードビット。だがこの砲撃は短射程高威力調整のものであり、受け止めたシールド部分が吹き飛ぶ。

ユウマ「フミちゃん!」

ツバサ「させない!」

 ライトニングがフォローのためビームキャノンを撃とうとするが、そこにFライザーの腹部ビーム砲が襲い掛かり、左舷の砲身を破壊する。

ラル「初手を取られたというのか!」

ミライ「あのガンプラの動き、まるで踊っているよう……」

スガ「そりゃそうだぜ。なんてったってA-RISEよ? あの子ら」

ラル「スガ・アキラ……」

スガ「2対3でこの翻弄され様……ひょっとしたらひょっとするかもよ、大尉殿?」

ラル「むぅぅ……」

ミライ「みんな……」

セカイ「アンタらは2人に傷を負わせた!」

あんじゅ「それがバトルというものでしょう」

 カミキバーニングの連撃をひらりひらりと躱すモンテーロTB。蝶のような不規則なマニューバはどうにも捉えられず、突き出される拳も、振り抜かれる脚も、空しく空間を裂くばかりである。

ユウマ「下がれセカイ! 打開策なら出してみせるぞ!」

セカイ「任せる!」

 大きくバックジャンプして退くカミキバーニング。すると、それと入れ替わるようにしてやってきたのは、ミサイルの嵐だった。

あんじゅ「そんな手には!」

 バインダーがビームソードを伸ばす。それを前面へと移動させ、高速回転。
 ビームソードは巨大なビームシールドへと機能を変え、触れたミサイルを片っ端から砕いていく。

ユウマ「F91や∀でよくある手だが、ビームソードでやられたとあっては!」

あんじゅ「圧倒させてもらうわよ!」

 そのまま前に出るモンテーロTB。
 その姿には異様な威圧感があり、思わずユウマはたじろぐ。

セカイ「なら俺が突き崩す!」

 そこに出るはカミキバーニング。右腕には機体と同じほどの巨大な炎を纏っている。

セカイ「神樹頑駄無模型(カミキガンプラ)流、鳳凰覇王拳ッッ!」

 渾身の一撃と共に炎は鳥の形となり、嘶きを響かせて羽ばたく。

あんじゅ「バードストライクは重大事故にもなりうるのよ!」

 火の鳥と真正面からぶつかり合ったモンテーロTB。拮抗する両者。

あんじゅ「――! この負荷は……っ!」

 その力比べを制したのは、鳳凰であった。
 大きく弾き飛ばされ、体勢を崩すモンテーロTB。

セカイ「どうだよ!」

ユウマ「よくやったセカイ! これで墜ちろッ!」

 そこに、ライトニングがコネクテッド・ハイ・ビームライフルで狙撃を敢行した。
 しかし、そのビームは別方向から飛来したもう1筋のビームによって相殺されてしまった。

ユウマ「なんだと!?」

あんじゅ「……ありがと」

英玲奈「ザレクト、戦列に合流する」

ツバサ「来たのね!」

フミナ「復帰された!?」

 Fライザーとスターウイニングがもつれ合うように剣戟を展開していると、ザレクトの第2撃が来る。
 トライファイターズの機体を正確に狙い、ビームバスターとザレクトキャノンを斉射したのだ。

フミナ「くうっ……!」

 回避行動を取る3機。
 だがそこへ、体勢を立て直したモンテーロTBの追撃が容赦なく浴びせられる。

セカイ「くそォ!」

ユウマ「なんという波状攻撃だ!」

フミナ「ここは一旦退いて陣形を立て直す!」

英玲奈「させるものか!」

 だが、A-RISEがそれを許すとは誰も思うまい。
 追撃にFライザーも加わり、その激しさは勢いを増す。

セカイ「弾丸破岩拳!」

 カミキバーニングは両の拳を打ち付け合い、そこから発生させた衝撃波で、ビームの雨を一時的に掻き消した。

フミナ「今のうちに!」

 再度の追撃防止に射撃をしつつ、トライファイターズはメサイアに向かった。

シモン「どうしちまったんだ。圧倒されてるじゃねえか……」

カオルコ「……戦ったから分かるわ。彼女たちには、普通のファイターと決定的に違うものがある」

シモン「ギャン子……なんなんだよ、それは」

カオルコ「駆動系の機微、攻撃のリズム、マニューバの軌道……どれも一般的なファイターとは、微妙だけど確実にズレてるのよ」

シモン「それだけであんなにも差が出るっていうのかよ」

カオルコ「人のバイオリズムというものはね、無意識なものなの。今まで相手にしてきたファイターは皆ガノタや武術家で、ある種共通のバイオリズムで動いていたから対応にも順応できた」

カオルコ「でも彼女たちは違う。その波長は今まで体感したことの無い独特のもので、相手は無自覚の違和感を覚えながら戦うことになるのよ」

シモン「それはまさか……あいつらがスクールアイドルで、俺たちとはまったく毛色の違う経験をしてきたからだってのか!?」

カオルコ「おそらくはね」

タツヤ「それは私にも経験がある」

シモン「メ、メイジン……!」

カオルコ「それはいったい……」

タツヤ「8年ほど前のことだったか。元ダンサーのファイターと戦ったことがあってな。そのとき私も、大いに手を焼いたものだ」

カオルコ「8年前って……世界大会に初出場した、第6回大会の年ではありませんか」

タツヤ「ああ、彼との戦いを経たからこそ、私はそのステージへと昇ることができた」

カオルコ「それで、突破口はあるんですか?」

タツヤ「それはどうだろうな。かつて私と戦った男は驚異的な才能こそあったものの、ガンプラに対する意識がまるで無かった。しかし彼女らはどうだ。実にバトルを楽しんでいるではないか」

カオルコ「じゃあ、どうすれば……」

シモン「楽しめばいいじゃねえか」

カオルコ「えっ?」

シモン「さっきラルさんが言ってたぜ。楽しんだ方が勝つ、ってな」

タツヤ「ほう、流石はラル大尉。本質を見極めておられる……」

タツヤ「そうとも、機体性能や技量が拮抗しているならば、より楽しく、より熱く燃え上がった者こそ、勝者たりえるのだ!」

タツヤ「盛り上がれ、ボルテージ!! 燃え上がれ、ガンプラァァァァァァァッッ!!!!」

 要塞内に入られたとなると、対応が難しい。
 突入すれば待ち伏せの不意打ちを喰らうかもしれないし、かといってつついて出てくるほど脆い藪ではない。

ツバサ「どうにかしていぶり出したいところだけど」

英玲奈「だが要塞に大打撃を与えられるエクステンダービットを使えばまた戦力をロスする」

あんじゅ「なら、突入しか無いでしょ」

英玲奈「やはりそうなるか……よし、ビットを先行させてデコイにする。リ・エンゲージし次第、あんじゅはビームシールドで突撃してくれ」

あんじゅ「了解よ」

ツバサ「それじゃ、突入!」

 メサイアのメインドックを目指し、A-RISEの3機は飛び立つ。

 要塞内の通路は艦船用ドックと直結しているために、広大だった。
 事実、原典でもミーティアユニットが大暴れしてフルバーストをブッ放せるくらいの余裕がある。

ツバサ「敵機は?」

英玲奈「反応は無い。このエリアにはいないようだな」

あんじゅ「なら、あそこなんじゃない?」

ツバサ「……ああ、なるほど」

英玲奈「そうだな。アレがあるなら同様の場所があるはずだ」

あんじゅ「直通の道はこっちよ」

 やや狭い、MS2機で塞がるような薄暗い通路。その先に、潜伏場所であろうポイントが存在している。

英玲奈「さて、引っかかってくれるか……」

 先行させたビームの光球をいたずらにちらつかせ、待ち伏せ攻撃を促す。

英玲奈「――!」

 すると、だ。

 ビットが位置していたやや前方。そこの天井に備えられた人間用の連絡通路から落ちてきた一筋のビームが床に着弾し、通路を爆炎と黒煙で包み込んだ。

ツバサ「あんじゅ!」

あんじゅ「一気に突っ切るわ!」

 ビームシールドを前面に掲げたモンテーロTBをフォワードに、3機は竿の陣で一気に残りの道を駆け抜けた。
 そして、目的の場所へと辿り着く。
 ガンマ線レーザー砲『ネオ・ジェネシス』の砲身内部。核爆発を起こしガンマ線を抽出するための、砲の心臓部だ。

セカイ「疾風突きィッ!!」

 抽出ホールに入るな否や、飛び込んできたカミキバーニング。
 燃え盛る拳が渦を巻くビームシールドと押し合い、激しくスパークを散らす。

あんじゅ「またしても……っ!」

セカイ「でりゃああああああッ!!」

 爆発。
 カミキバーニング、右腕損失。
 モンテーロTB。両舷バインダーの発振部損傷。

ツバサ「よくもあんじゅを!」

 前に出るFライザー。

フミナ「セカイくん!」

 フォローに入るスターウイニング。ハイパービームキャノンの砲撃が、Fライザーの右腕をライフルごと吹き飛ばした。
 それでもFライザーの勢いは止まらず、ビームクローをカミキバーニングに振り下ろす。

ツバサ「てやあっ!」

セカイ「こんのォッ!」

 すんでのところで抜刀。炎を纏った刀が、猛々しい長爪を受け止める。

ツバサ「それでもねっ!」

 すると、ビーム刃に接触した部分の炎が消え、金属質の刀身が露わとなる。

セカイ「コイツは、この剣は!」

ツバサ「粒子変容サーベル!」

 剥き身となった刀は3つに分断され、その延長線上にいたカミキバーニングも、同じ結果を受け入れざるを得なかった。

セカイ「ぐわああああああッッ!!」

 全国王者の一角、ここで墜つ。

フミナ「そんな!」

英玲奈「私も続かせてもらうぞ!」

 狼狽したスターウイニングに、ザレクトがブレードを振り下ろす。

フミナ「そんなこと……っ、誰がっ!」

 メガブレードで受けつつ、分離したガンビットから砲撃。
 一旦退くザレクト。
 そこへ。

ユウマ「これ以上はやらせない!」

 潜伏していたライトニングが合流し、ミサイルを放出した。

英玲奈「悪いというのだ! 往生際がなぁ!」

 ビットを縦横無尽に走らせ網を張り、ミサイルを撃墜するザレクト。
 その隙にスターウイニングは、四肢を分離し、スターファンネルで延長して再結合。大きなヘルメットを脱ぎ、リアルモードへと変身を遂げた。

フミナ「ウイニング……ソォォォォォッドッ!!」

 接続・連動するサブジェネレーターから供給される膨大なプラフスキー粒子は、両腕部から発振されるスターエフェクトをこれでもかと肥大させ、超大型ビームサーベルとなった。

英玲奈「こけおどしではない! ならば受けて立つまで!」

 対するザレクトも、Xトランスミッターを完全開放。ビットに使用していた粒子をブレードへと纏わせ、相手と同等の大きさを誇るビームサーベルを形作る。

フミナ「はああああああああああっ!!!!」

英玲奈「つぇあああああああああっ!!!!」

 4本の巨大な光剣が、ホールの内壁を切り裂きながら激しくぶつかり合う。

 その猛烈な剣戟を避けつつ、ライトニングはFライザーとモンテーロTBと交戦する。

ユウマ「ここでやられる僕ではない! 意地があるんだよ!」

ツバサ「当たり前のことを言う!」

 ライトニングはライフルとキャノンのチャージラグを埋めるようにシールドのビームバルカンと頭部バルカンを乱射して敵機の接近を防いでいるのはいいが、相手は2機だ。
 この閉鎖空間ではフルバーニアンの高推力も存分に活かすことができず、翻弄されるのは必然と言えた。

あんじゅ「ならこれで!」

 モンテーロTBが機能停止したバインダーをパージし、ライトニングに向けて射出した。

ユウマ「質量弾など!」

 迎撃。バルカン怒涛の弾幕が、バインダーを蜂の巣にして爆発させる。

ユウマ「しまっ――」

 だがそれがあんじゅの狙いであった。ライトニングの視界を黒煙が覆い、敵機を見失ってしまう。

あんじゅ「そこでしょ!」

 ビームピストルによる正確な射撃が、ライトニングの武装を次々に破壊していく。頭部、ライフル、BWSのキャノンとミサイル。ご丁寧にサイドアーマー裏のサーベルまでも。

ユウマ「くううっ……!」

 そして、背後から迫る黄金の翼。
 正面には漆黒の猛禽。

ツバサ「これでっ!」

あんじゅ「墜とす!」

ユウマ「ただでは……墜ちるかァァァァーッ!!」

 BWSと分離。本体は前方の敵機へ、支援機は後方の敵機へとそれぞれ突っ込み、激突。
 そのままスラスターを全開にし、押しやっていく。

あんじゅ「この子、もうヤケクソ!」

ツバサ「カミカゼとはねっ!」

 2機は内壁へと叩き付けられ、直後に発動したライトニングの自爆によって撃墜された。

英玲奈「ツバサ、あんじゅ!」

フミナ「これで一騎打ち!」

英玲奈「ならば尚更負けるわけにはっ!」

フミナ「こっちのセリフッ!」

 縦横無尽に振り回される巨大サーベルがホール内を蹂躙する。
 もはや先程までの整然さは見る影もない。

英玲奈「渡してなるものか!」

フミナ「譲れないのよ!」

 やがてその勝負に終焉の兆しが現れる。

――ピシッ

 亀裂の入る音。

英玲奈「これが最後となるが故にっ!」

フミナ「この『ウイニング』の名にかけてっ!」

 通算61度目の接触。
 そこで、ついに耐久限界を迎える。
 スターウイニングの右腕が。

フミナ「――なっ……!」

 ただでさえ負荷の大きいリアルモードを酷使し、格闘用の高トルクチューンの駆動系を持つ機体と渡り合うには、耐久力が足りなかったのだ。
 砕ける肘関節。霧散・消失するスターエフェクト。

英玲奈「諸行無常……!」

 ザレクトはスターウイニングをX字に斬り伏せた。

『Battle ended』

\ワアアアアアアアア!!/

ラル「うむぅ……なんという」

ミライ「残念ね……」

スガ「僅差だったな。いやぁ、いい試合だった」

スドウ「ここにいたのか」

スガ「ん、ああ、スドウちゃん、ヨミちゃん」

ヨミ「これでリベンジの機会は失われちゃったわけだけど」

スガ「構いやしないよ。優勝すりゃおんなじさ」

スドウ「この試合が終わったということはそろそろ出番だ。備えるぞ」

スガ「はいよ。そいじゃあな、大尉殿。あいつらを労ってあげてくれよ」

ラル「ああ、健闘を」

スドウ「失礼」

セカイ「くっそぉ……真っ先にやられちまうなんて、情けねぇなぁ……」

フミナ「ごめんね、ユウくんがせっかく1対1に持ち込んでくれたのに……」

ユウマ「いいさ。これで全員、今後の課題が見えたってわけだ」

英玲奈「トライファイターズ、感謝しよう。よもやここまでの戦いができようとは、満足だ」

フミナ「こちらこそ。やっぱり簡単にはいかないものですよね、何事も」

ユウマ「いずれはリベンジの機会をいただきたい」

あんじゅ「そうね。今度は一騎打ちでやってみましょう」

セカイ「よし、次は絶対に勝ってみせるぜ!」

ツバサ「ふふ、その時を楽しみに待っているわ」

――バタバタバタバタ

タツヤ「?」

アラン「……ま、間に合ったか!?」

タツヤ「アラン、なぜここに?」

アラン「A-RISEのバトルを見るために決まっているだろ!」

タツヤ「そうか、そういえば君はアイドル好きだったな。だが生憎、名勝負はたった今終わったところだ」

アラン「ア、A-RISE対トライファイターズだと……!? な、なんてすさまじいカードを見逃してしまったんだ、僕は……!」

タツヤ「何、まだ決勝が残っている。バトルライブラリもいつだって見れるではないか」

アラン「くそぉ……アドウが武装を壊さなければ、こんなことには……!」

タツヤ「……さて、セミファイナル・セカンドか」

アナウンス『続きまして、Bブロック準決勝を開始いたします』

シモン「よし、行くぞお前ら! 勝って、決勝でカミキたちの敵討ちといこうじゃねぇか!」

ゴロウ「はい!」

コウジ「やってやりましょう、シモンさん!」


スドウ「ここまで来たからには、もはや道は1つだ。激戦は必至だろうが、突破してみせるぞ!」

ヨミ「フッ、臨むところよ」

スガ「よっしゃ、行こうぜ!」


区立常冬中学  V   宮里学院高校
   フェイス      S    Gマスター

『Battle start!』

シモン「イズナ・シモン、デスティニーマキシマム、ボックス!」

ゴロウ「マスダ・ゴロウ、パワードレッド、ボックス!」

コウジ「タニオカ・コウジ、ストライクE、ボックス!」

スドウ「スドウ・シュンスケ、メガプラス、出撃する!」

ヨミ「サカシタ・ヨミ、アメジストヴィクトリーD、行くわよ!」

スガ「スガ・アキラ、ガンダムレオパルド・ダ・ヴィンチ、出るよ!」

デスティニーマキシマム DESTINY MAXIMUM
http://i.imgur.com/nQbOfw7.jpg
型式番号:ZGMF-X42S/B
頭頂高:18.1m 重量:70.66t

武装
ビームグローブ/ビームシールド×2
頭部バルカン×2

 イズナ・マモルがサザキ・タテオとの切磋琢磨の末に完成させた、シモン専用のカスタムモデル。
 シモンの要望で不要な武装は極限まで取り払い、ボクシングでの戦闘スタイルに特化させた改造がされており、動きをほぼ完全にトレースできるまでの完成度を誇る。
 手甲部ビームシールドはマニピュレーターをシールドエネルギーで覆うビームグローブに機能拡張され、パンチ力だけならビルドバーニングに比肩するほど高い。エネルギーを殴り飛ばす「ビームインパクト」も使用可能。
 運動性能の強化もされており、足は小回りを利かせるために接地面積を減らし、ウイングスラスターは小型化。一度の噴射量が多く、鋭角で機敏なマニューバができるようになっている。


アストレイ パワードレッドフレーム フライトユニット装備型
スペキュラムストライクE
 マスダ・ゴロウとタニオカ・コウジの使用ガンプラ。特別な改造はされていないが、丁寧な基本工作と塗装によって堅実な仕上がりとなっている。

百万十 メガプラス MEGA PLUS
http://i.imgur.com/AJQyPaR.jpg
型式番号:MSN-001M+
頭頂高:19.9m 重量:83.6t

武装
ビームライフル×2
メガビームソード×2
頭部バルカン×2
メガライドランチャー

 百万式をスドウが独自にカスタムした機体。
 部分的にデルタプラスやデルタカイのパーツがベースに使われており、シンプルだったシルエットはより鋭角的になりヒロイックさを増している。
 本体は機動力強化の他、ビルドバーニングを殴った際に自壊した点を教訓に駆動系の耐久性強化もされている。
 ライフルは取り回しに優れたジェガンのショートタイプを2挺装備。
 ビームソードはマスラオのハワードをベースに使い、更に切断力を強化。
 マルチレンジに対応できる汎用性をそのままに基本性能を底上げした結果、操作性も高く継戦能力も平均的なバランスの取れた機体となった。


アメジストヴィクトリーガンダムD
 デスティニーシルエットに換装したアメジストVガンダム。V2のように光の翼を攻撃・防御に使える。
 ビームブーメランは膝にマウントラッチを増設して装備。

 フィールドは市街地。
 規格的に入り組んだこの戦場で、両チームはどう動くか。

ゴロウ「シモンさん、戦術通り、早く格闘戦に持ち込みましょう」

シモン「迂闊に動くな。下手に姿を晒せば狙い撃ちにされるぞ」

コウジ「ならどうするんです?」

シモン「分散して建物の陰に隠れながら近づき、強襲する。相手のセンサー能力を侮るなよ」

ゴロウ「わかりました」

コウジ「進行ルートを算出しました。データ送ります」

シモン「よし、行くぞ」

 ボクサー特有の軽やかかつ鋭い足取りで、フェイスの3機は進んでいく。

 対してGマスター。

スドウ「邪魔な建物を焼き払うには、まだ粒子量が足りんな」

ヨミ「敵はどう来ると思う?」

スガ「インファイトに持ちかけてくるだろうが、正面切って突っ込んでくるほどバカじゃないでしょ」

スドウ「ならばいぶり出す」

スガ「よっしゃ、俺の出番ね!」

 レオパルド・ダ・ヴィンチはフル装備状態だ。その中距離火力は随一。
 両脚に装備されたミサイルポッドがハッチを開く。

スガ「さぁ、出てこいよ、ステゴロチーム!」

 放たれる10発のミサイル。そしてポッドは180度回転し、逆側のハッチからも同数のミサイルを再度発射する。
 そうして広範囲に散らばったミサイルは地表ヘと着弾し、建造物や街路を打ち砕く。
 しかし、20発中3発だけが、地表へと到達する前に空中で爆発したのだ。
 否、機関砲により撃ち落とされたのだ。
 現に、空へと昇る弾丸の光を、3人は見逃していない。

スガ「いたぜ!」

ヨミ「ポイント特定!」

スドウ「各機散開! ミドルコンバットで攻撃しろ!」

シモン「クソッ、そう簡単にいかねぇか!」

ゴロウ「来ますよ!」

シモン「ならカチ合うだけだろ!」

コウジ「はいッ!」

 黒煙の立ち上る街に、戦士たちは飛び上がった。
 各機、対峙する相手を眼中に据える。

スガ「ストライクEにスペキュラムストライカーとは、コアなチョイスしてくれるじゃないの!」

コウジ「元ガンプラ学園の……でも負けるわけには!」


ゴロウ「このパワー、打ち砕けるものなら!」

スドウ「ご要望とあらばそうさせてもらうぞ!」


ヨミ「僥倖ってヤツね。デスティニーが相手なんて」

シモン「同じ光の翼を持つ機体か……面白ぇ!」

スガ「そらァ! お得意のインファイトはさせないってね!」

 レオパルドDVのハイパービームガトリングから撃ち出される猛烈な弾幕に、ストライクEは攻めあぐねている。

コウジ「なんて制圧力……!」

 わずかな間隙にビームライフルを応射できるのは手練れの証左ではあるのだが、レオパルドDVは重火力にもかかわらず機動性も高い。
 実際、ストライクEは何発もビームをかすっているが、レオパルドDVは的確に攻撃を避けている。

コウジ「だとしても、ここで弱気になってちゃ!」

 意を決し、ストライクEは前に出る。

スガ「被弾覚悟か! 無茶しやがる!」

 スペキュラムストライカーは高推力を誇るエールストライカーの改良型だ。その突破力は、たとえ子供が作ったものでも侮れない。
 ライフルをマウントし、下腕で顔を覆うボクサースタイルでビームの雨を受けつつ、ストライクEはレオパルドDVへと迫る。

コウジ「うおおおお!」

ゴロウ「でやああああッ!」

 パワードレッドが、ビルの屋上にあった貯水槽を殴り飛ばす。
 円柱をした構造体は打撃点からひしゃげ、中の水を滴らせながらメガプラスへと向かう。

スドウ「選択ミスだな!」

 即座にビームライフルで撃ち落とす。内部の水は急激に熱せられたために水蒸気爆発を起こし、破裂する。

ゴロウ「だったら!」

 ビルに渾身の右ストレートを見舞うパワードレッド。
 その一撃でビルは粉砕され、大量の鉄筋とコンクリートの瓦礫が織り成す屑山と化した。

スドウ「それを殴るというのだろう!」

 しかしその戦法は、推測に易すぎた。
 メガプラスが前傾姿勢になると、背負った巨砲には既に光が溢れている。

スドウ「消し飛ぶがいい!」

 メガライドランチャーから粒子の塊が吐き出される。

 アメジストVDのテレスコピックバレル延伸式ビーム砲から放たれたビームがマンションを数棟まとめて焼き払った。

シモン「やはりマモルの作ったのとは威力が違うか!」

ヨミ「年季が違うっていうのよ!」

 ガントレットから撃ち出したビームインパクトも、ビームシールドで弾かれる。

シモン「また距離が遠い。もっと近づかないと……!」

ヨミ「させるわけないでしょ!」

 一歩前へと踏み出したところに、ビームブーメランが襲い掛かる。

シモン「このッ!」

 タイミングを合わせ、ビームナックルで殴り落とす。
 だが次の瞬間、ビームの奔流が眼前に。

シモン「ぐおおッ!」

 即座にビームグローブをシールドモードにして最大展開。

ヨミ「反応速度は流石ね……だけどっ!」

 ビームのパワーが強まる。
 その威力に押され、デスティニーマキシマムはじりじりと後退させられていく。
 やがて照射の限界時間が来るが、その時には既に、機体はビルの中腹に押しやられていた。

コウジ「うおおおおッ!」

 レオパルドDVへ肉薄を果たしたストライクEが拳を繰り出す。
 左ジャブ、左ジャブ、右ストレート。

スガ「でもなぁ!」

コウジ「なにィッ!?」

 受け止められた拳。
 イノセ・ジュンヤやカミキ・セカイら、凄腕の格闘家とのバトルを経験しているスガにとっては、たとえボクサーのパンチであっても見切ることはできた。

スガ「伊達じゃないのよね!」

 そのまま腕を取り、捻り上げるレオパルドDV。
 密着状態でバルカンを乱射すれば、ストライクEの頭部が蜂の巣となる。

コウジ「こっちだって!」

 空いた左手で腰部にマウントしていたビームピストルを取り、撃つ。

スガ「――っとぉ!」

 右舷のハイパービームガトリングに被弾。すかさずパージするが、爆風に煽られた2機は墜落し、公園の噴水を押し潰した。

ゴロウ「レッド・フレイム!」

 押し寄せるプラフスキー粒子の濁流に、パワードレッドは渾身の殴打で迎え撃った。
 強力な格闘攻撃は機体周囲の粒子帯を変容させ、様々な効果を及ぼすことはかつての戦いから周知のものとなっている。
 レッド・フレイムも例外ではなく、その拳は粒子変容によってビームの流れを散らすことに成功していた。

ゴロウ「くッ……このォ……ッ!」

 しかしその抵抗は激しく、機体状態を示すパネルの右腕部分は真っ赤に染まりアラートを鳴らしていた。
 後方に逸れたビームが街並みを瓦礫へと崩していく。
 やがて、数秒間の照射が終わる。
 しかし、耐え抜いたゴロウに安堵は訪れなかった。

ゴロウ「ほ、本体がいない!?」

 そこにいたのは、赤熱した砲身にスパークを散らしたメガライドランチャーだけであったのだ。

スドウ「悪いな」

 背後からの声に振り向く間もなく、パワードレッドは真っ二つに両断された。

ヨミ「トドメぇっ!」

 放たれるビームライフル。このままでは直撃コースだ。

シモン「やられるかよ!」

 右翼スラスターを噴射。デスティニーマキシマムは大きく左へと跳ね、ビームはビルへ突き刺さる。

シモン「勝負はこっからだぜ!」

 方向転換し、一気に距離を詰める。

ヨミ「いいじゃない……クロスコンバットでも!」

 バルカンを撃ちつつ、エクスカリバーを抜刀するアメジストVD。
 デスティニーマキシマムは弾丸の嵐を左右のステップで振り切りつつ、ビームグローブに粒子をチャージする。

シモン「オラアアッ!!」

ヨミ「このおおっ!!」

 閃光と共に激突する拳と剣。その力は互角。
 その衝撃波に歩道のコンクリートタイルはめくれ上がり、あらゆる窓ガラスが粉微塵に砕け割れる。

 レオパルドDVとストライクEは墜落のどさくさで、体勢の上下が逆になっていた。つまり、レオパルドDVにストライクEが馬乗りになっている状態だった。

スガ「ッ……これじゃ身動きが……ッ!」

コウジ「これは、チャンスだ!」

 マウントポジションで、一方的に殴りつけるストライクE。
 そのすさまじいラッシュに、レオパルドDVの頭部周辺装甲が歪んでいく。

コウジ「このまま決めてやる!」

 大きく振りかぶるストライクE。

スガ「さァせるかってのォ!」

 拘束を免れている脚部。そのミサイルポッドがハッチを開く。そこから2発だけではあるが、ミサイルがその姿を現し、飛び出す。
 時間経過による粒子リチャージで再装填されたのだ。

コウジ「――ッ!? う、嘘だろおッ!?」

 発射されたミサイルはストライクEの背中に直撃し、上半身を丸ごと吹き飛ばした。

 剣と拳の応酬は続いていた。
 ぶつかり合う度に周囲の景観は荒れていき、街は廃墟の群体へと変わっていく。

シモン「粘り強い……いいタフネスだッ!」

ヨミ「そっちこそ、随分としつこい!」

 もはや何度目かわからぬ激突。
 じりじりと拮抗するエクスカリバーとビームグローブ。

シモン「でもこれじゃ、埒が明かねぇ!」

 そこで唐突に放たれた頭部バルカン。

ヨミ「なっ……!?」

 アメジストVDはたまらず後退する――が、

シモン「取ったぜ!」

 デスティニーマキシマムのビームを纏ったマニピュレーターが、エクスカリバーの刀身を掴んだのだ。
 そのまま力任せに握り潰し、破壊する。

シモン「リーチの長さが仇になったな!」

ヨミ「それがなんだってのよ!」

 しかし、アメジストVDは怯むどころか、そのままビームシールドを張って体当たりをしてきたではないか。
 デスティニーマキシマムはヴォワチュール・リュミエール光波スラスターの推力に押しやられ、ショッピングモールの壁に背中から叩き付けられる。

シモン「ぐおおッ!」

ヨミ「これで!」

 失ったエクスカリバーの代わりに、ビームサーベルを握って突き立てようとするアメジストVD。
 その姿を見たシモンは反射的に左翼スラスターを噴射させ、右方向へと転がるように回避する。

シモン「まだやられるわけには!」

 手を地に付け制動をかけ、一気に噴射をして殴りかかるデスティニーマキシマム。

ヨミ「往生際が悪すぎでしょ!」

 両腕部にビームシールドを展開し、受け止める。

シモン「簡単に諦めることと、潔いってのは違うだろッ!」

 上昇する駆動出力。その爆発的パワーはビームシールドを突き破り、アメジストVDの肘から下を粉砕する。

ヨミ「そんな……っ!」

 吹き飛ばされたアメジストVDはビームシールドからのエネルギー逆流により駆動系に異常をきたし、機能を停止した。

シモン「あと2機――」

 だが次の瞬間。
 遥か高空から落ちてきたビームの巨塊に、デスティニーマキシマムは押し潰された。

スドウ「……これで決勝進出だ」

 それは、上空で粒子チャージを済ませたメガプラスによる対地砲狙撃であった。

『Battle ended』

シモン「恐れ入ったぜ。流石は前年度チャンピオンだ」

スガ「いやぁ、こっちも思わぬ手傷を負わされちまった。こりゃ、来年からの活躍が楽しみだな」

コウジ「元ガンプラ学園の人にそう言われると、自信が持てます」

ゴロウ「けど、残念だな。今度はトライファイターズときちんとした試合をしたかったのに……」

スドウ「何、君たちはまだ来年以降のチャンスがある。どうしてもと言うなら、練習試合やフリーバトルという手もな」

スガ「……ん、どしたのヨミちゃん」

ヨミ「……私だけ撃墜された」

スガ「おいおい、これから決勝だってのにふてくされて貰っちゃ困るぜ?」

ヨミ「当たり前よ。この鬱憤は、あのデコチビを叩いて晴らさせて貰うわ」

――観客席

セカイ「残念だったな、シモンたち」

ユウマ「だが、伸び代はかなりある。これからますます脅威になってくるだろう」

フミナ「さて、いよいよ次は決勝戦ね」

ラル「見たところ、両者共に実力は拮抗している。機体性能も、操縦技術も、ガンプラへの想いも、全てな」

タツヤ「……これは面白くなりそうですな、大尉」

ラル「む、ユウキくん……と、アラン・アダムスか」

アラン「どうも、ラル大尉」

ユウマ「ガンプラ学園の監督がなぜ!?」

アラン「A-RISEが参戦すると聞いて飛んできたのさ」

フミナ「まさかアラン監督、スクールアイドル好きなんですか?」

アラン「察しの通り。あと、スレッガーの成長も気になるかな」

セカイ「そういえば、キジマ兄妹はその後どうですか?」

アラン「相変わらずルーカス・ネメシスと切磋琢磨の毎日さ。ウィルフリッドは卒業式のため、2月末に一時帰国してくる予定だ」

セカイ「よっし、じゃあそん時にまたバトルするぜ!」

ラル「しかしどうだね、大会の様子は」

タツヤ「去年と比べても、全体的にレベルが上がっていますね。全国区でも通用しそうなファイターがグンと増えた」

アラン「ああ、それも、夏大会で君たち――トライファイターズと戦ったチームを中心にね」

セカイ「俺たちと戦ったチームが?」

ラル「ふむ、やはりそう見えるかね」

フミナ「ラルさんは気付いてたんですか?」

ラル「ああ、ふと気付いた時にデータも取った」

ラル「特に動きの目立った北宋の壺、フェイス、Gマスターの、今年度の戦績を折れ線グラフにしたものだ」

セカイ「みんな予選で戦ったチームだ」

ユウマ「確かに、8月以降からグンと伸びている」

タツヤ「折れた骨はより強固になり復活する。新鋭の君たちに負けたという悔しさが、彼らをより一層成長させたのだよ」

アラン「ダークホースには、言わばカンフル剤の役目を果たす場合がある。今回がそれってことさ」

フミナ「私たちがみんなを強くした……」

セカイ「こりゃ、次の地区予選は相当ヤバいことになりそうだな」

アラン「東京地区だけではないさ。我々ガンプラ学園も、シアを中心とした新チームの熟成に取り掛かっている。王座奪還を目指してね」

タツヤ「私は嬉しいのだよ、諸君。この、全体が切磋琢磨していく様子の、なんと美しいことか!」

アラン「おいおい、あまり騒ぐな……ん、あれはもしや……!」

タツヤ「どうした」

アラン「μ'sがいた! ちょっと席を外すぞ!」ダッ

穂乃果「もう決勝戦かぁ」

花陽「相手の宮里学院は前年度の西東京地区チャンピオンとのことです」

にこ「まさしく強豪ってわけね」

アラン「……あー、失礼。μ'sの皆さんでいらっしゃる?」

にこ「にこっ!?」

凛「が、外人さんにゃ……!」

絵里「ええ、そうですけど……」

アラン「ああ、そうか、よかった。やはり僕の目に狂いは無かったか」

海未「それで、何かご用件でしょうか……?」

アラン「おっと失礼。このしがないスクールアイドルファンに、サインをしてはもらえないだろうか」

絵里「そのくらいなら、喜んで」

カキカキ スラスラ

アラン「君たちもしかして、A-RISEの応援に来たのかい?」

穂乃果「そうですよ」

アラン「だが君たち、ガンダムやガンプラの知識は……」

海未「……お察しの通り、ほぼ皆無です」

アラン「フフフ、そういうことなら、僕が解説してあげようじゃないか!」

真姫「なんか図々しくない、この人」ヒソヒソ

にこ「そうだけど、ファンなんだからそういうこと言っちゃダメよ」ヒソヒソ

凛「あ、選手入場にゃ」

希「あの宮里の女の子、ツバサちゃんに似とるな」

スガ「――ん?」

スドウ「どうした?」

スガ「おーい、アラン監督じゃないさ! 見に来たのかい!?」

アラン「ああ、だがお前じゃない! A-RISEをな!」

スガ「って、そこにいるのはμ'sか! サインもらっといてくれよ!」

アラン「わかったから、試合に集中しろ!」

スガ「はいはい、じゃあ頼むぜ!」

ヨミ「あの人、ガンプラ学園の監督よね」

スガ「そうだよ。同じドルオタだったから仲良かったんだぜ」

スドウ「ガンプラ塾3期生筆頭ビルダーにして元PPSEの技術主任が、そんな趣味を持っていたとはな……」

アラン「ということで済まないが、もう1枚頼めるかい?」

ことり「あっ、はい」カキカキ

穂乃果「知り合いなんですか、あの宮里の選手と」

アラン「春までは僕のチームにいたんだ。転校してこっちに来たわけ」

凛「そういえば今、監督って……」

アラン「ああ、静岡の私立ガンプラ学園の監督をしているんだ」

絵里「ガ、ガンプラ学園……?」

花陽「聞いたことがあります。ガンプラバトル選手権に勝つためだけに創立された学校がある、って」

にこ「なんつー金の掛かった……」

希「それくらいガンプラ業界が広いって証拠や」

アナウンス『長らくお待たせいたしました。只今より、ガンプラバトル東京冬季大会、決勝戦を開始いたします』

穂乃果「あっ、始まるよ」

アナウンス『Aブロック代表、東東京地区、UTX学院高校、A-RISE』

\ワアアアアアアアアアアアアアア!!!!/

アナウンス『Bブロック代表、西東京地区、宮里学院高校、Gマスター』

\ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!/

              FINAL

 私立UTX学院高校 V   宮里学院高校
     A-RISE      S   Gマスター


『GUNPLA-BATTLE combat mode start-up』

『Model damage level set to B』

『Please set your GP-BASE』

『Beginning Plavsky-Particle dispersal』

『Field one “space”』

『Please set your GUNPLA』

『Battle start!』

ツバサ「フリーダムライザー、綺羅ツバサ、出るわ!」

スドウ「スドウ・シュンスケ、メガプラス、出撃する!」

あんじゅ「モンテーロ・ツインブラスト、優木あんじゅ、スクランブル!」

ヨミ「サカシタ・ヨミ、アメジストヴィクトリーD、行くわよ!」

英玲奈「ザレクト、統堂英玲奈、発進する!」

スガ「スガ・アキラ、ガンダムレオパルド・ダ・ヴィンチ、出るよ!」

 数ある宇宙ステージの中で、最終決戦の舞台に選ばれたのはアクシズだった。
 超大型アステロイドに4発の核パルス推進装置を設けた姿が特徴的な、アムロとシャアの最後の戦場。
 この戦いのステージとしては申し分なし!

ツバサ「先制攻撃に警戒して。メガランチャーの射程は脅威よ」

英玲奈「ならばビットで威嚇する」

 ザレクトのXトランスミッターかた無数の光球が放出され、アクシズ全体に広がるように散らばっていく。
 ヴェイガン製MSの胞子ビットは1つでも並のライフル1発分の破壊力は持っている。
 それが群がったとあれば、岩の表面には破壊の跡として爆発が次々と花を咲かせるのは当然。

あんじゅ「ブラスターは長射程モードで待機。センサーリンク良好」

 そして十数秒ほど経過したところで、英玲奈が異変を察知する。

英玲奈「W41ポイントでビットが破壊された。いぶり出せ!」

あんじゅ「よーし、行っけえ!」

 モンテーロTBのビームブラスターが、アクシズの左舷上面の斜面に向けて砲狙撃を敢行した。

スガ「ビットを全体にバラ撒けるとは、なんつー粒子量と制御力だよ!」

スドウ「居場所が割れたとなれば、狙撃されるぞ――ほら来た!」

ヨミ「回避行動!」

 Gマスターの3機が飛び立ったところに、モンテーロTBが放った2発のビームが突き刺さる。間一髪だ。

スドウ「応射は俺が引き受ける。牽制しつつミドルコンバットへ移行しろ」

 メガライドランチャーがメガフライヤーに変形し、メガプラスを牽引しつつ砲の粒子チャージを進める。

スガ「よっし、進軍だぁ!」

ヨミ「射程に入り次第、こっちも撃つわ」

 アメジストVDとレオパルドDVも、それぞれの最大射程を誇る火器をスタンバイさせ、センサーモニターに敵機のアイコンが表示されるのを今か今かと待つ。

 スドウ「チャージ完了。メガランチャー発射!」

 巨大な砲門から極太の光河が怒涛の勢いで放出される。

 反撃の光は索敵範囲外からでもじゅうぶんに目視できるほど眩しく、そして恐怖を感じられた。

英玲奈「散開だ!」

ツバサ「やはり危険ね」

 凄まじい量の粒子が通り過ぎる。その余波でビリビリとフィールドが震え、それがアームレイカーにも伝わってくる。

あんじゅ「射出点は分かれば、もう一撃!」

 再度ブラスターを発射するモンテーロTB。
 だがそうしているうちに、通常索敵範囲内に敵チームが入り込んでくる。
 すなわち、撃ち合いが激化するということだ。

ツバサ「飛び込むわ。援護よろしくっ!」

 カリドゥスを撃ち、ハイマットモードに移行して先行するFライザー。

あんじゅ「あの子ったら!」

英玲奈「だがそういう奴だ……っ!」

 砲撃を自慢の高機動で掻い潜り、有視界戦域にまで到達したFライザーは、ライフルとバルカンで牽制しつつ、着実に距離を詰めていく。

 ヨミ「来たわねチビスケ!」

 ツバサ「機体はそっちのが小さいでしょう!」

 ビームスマートガンをビームシールドで受け、続けて来たビームブーメランもビームクローで破壊する。

ヨミ「包囲して撃破よ!」

スドウ「そう簡単にはさせてくれん!」

 既に戦域にはザレクトが散布したビットが飛び回っていた。
 まるでまとわりつく羽虫のように、Gマスターの機体を翻弄する。

スガ「俺が出元を黙らせる!」

ツバサ「その機体で接近戦をする気?」

 レオパルドDVは格闘装備を持たない純然たる砲撃型だ。いくら武術の心得があるファイターだとしても、クロスレンジへの備えが万全な機体相手にそれは無謀というものだ。
――いや、彼は元ガンプラ学園。どのようなことがあろうと、驚くべきことではない。

 エクスカリバーを振るい、躍りかかってくるアメジストVD。
 ビームクローをそれに叩き付けるFライザー。

ツバサ「そっちも粒子変容ビーム……!」

ヨミ「じゃなきゃマトモに競り合えないでしょうが……っ!」

 バチバチと火花を散らし、ぶつかり合うビームの刃。
 すると後方からのアラート。

ツバサ「挟撃ごとき!」

ヨミ「何よ!」

 駆動出力を上げてエクスカリバーを強引に弾き、アメジストVDを蹴り飛ばす。
 そして瞬時に回頭し、カリドゥスを発射。

スドウ「言ってくれたな!」

 メガプラスが手にしたビームソードで、ビームを両断していく。
 そこにダメ押しのライフルを撃ち込むが、それももう片方のソードで切り払われる。

ツバサ「流石にやる!」

ヨミ「褒める余裕なんて!」

 復帰したアメジストVDが背後から強襲。

ツバサ「甘いのよ!」

 しかし、そこにビームが飛び込んでくる。この色はザレクトの砲撃か。
 たまらずアメジクトVDは後退し、ビーム砲を展開して応射に切り替える。
 砲撃はメガプラスにも飛来し、回避行動に移させる。

スドウ「この状況でなんて正確な……!」

ヨミ「スガは何やってんのよ!」

スガ「すまん、ダメだった」

英玲奈「合流だ」

あんじゅ「追撃追撃」

 姿を見せたレオパルドDVはライフルの副砲身を破壊され、モンテーロTBもピストルを片方失っていた。

スガ「だが、混戦なら俺も大得意よ!」

 僚機を下がらせ、両手に構えたハイパービームガトリングと両肩の連装ビーム砲から猛烈にビームをバラ撒くレオパルドDV。
 凄まじい弾幕に、飛び回っていたビットも次々と撃ち落とされていく。

英玲奈「だがこの手には高出力ビームが有効打!」

 胸部と両肩、3門のビーム砲を同調させ、MS数機は楽に飲み込むほどのビームを撃ち出すザレクト。その光柱はまっすぐレオパルドDVへと突き進む。

ヨミ「そうはさせないってね!」

 すると、レオパルドDVの背後に貼り付いたアメジストVDが、光の翼で2機を包み込んだ。
 ザレクトのビームはそれに阻まれ、閃光と共に拡散していく。

ツバサ「アレはV2の!」

あんじゅ「そのためのデスティニーシルエットだというの!?」

スドウ「御名答だ!」

 その更に背後から、メガプラスが躍り出る。

英玲奈「不意を突いたつもりか!」

 即座に反応したザレクト。右手にブレードを展開し、ビームソードとぶつけ合う。

あんじゅ「混戦を制すには!」

 素早くメガプラスの背後に回り、ビームソードを発振するモンテーロTB。

ヨミ「それもお見通し!」

 割り込んできたアメジストVDのエクスカリバーに、ビームソードが弾かれる。
 しかし、その直上ではFライザーがライフルで狙いを定めていた。

スガ「やらせねぇっての!」

 そこへミサイルを撃ち込むレオパルドDV。

ツバサ「これじゃあ埒が明かない!」

 その間もメガプラスとザレクトは剣戟の応酬を繰り広げ、幾筋かの裂傷を互いに刻んでいた。

英玲奈「このザレクトとパワーでやり合うとは!」

スドウ「夏の教訓から、強度と駆動系には力を入れている!」

 これだけの衝突をしようとも、互いの腕部関節には疲労した様子は一切見られない。
 このまま続けても、致命傷を与えられぬまま消耗していくだけだ。
 ならば……。

英玲奈「だが、そろそろいい加減にしてもらおうか!」

 組み合いの最中、ザレクトは右肩のキャノンをメガプラスに向けた。
 それを察知し、即座に飛び退く。

スドウ「いい引き際だ!」

 メガプラスはライフルに持ち替え、そこを狙っていたツバサに牽制射を浴びせる。
 そして、さらに伸びる追撃の手。ビームサーベルを握ったアメジストVDがFライザーの直下から迫る。

ヨミ「墜ちろっていうのよ!」

ツバサ「冗談!」

 Fライザーもビームクローを振り抜き、2機は交錯した。
 互いに右翼の端を切り飛ばされ、破片が小爆発を生む。

スガ「悪いが本気だよォ!」

 迫り来る6発のミサイル。
 しかし、横合いから飛び込んだモンテーロTBがローリングビームシールドで粉砕する。
 そしてザレクトがレオパルドDVの背後に回る。

英玲奈「こちらもな!」

 掌部ビームバルカンの乱射。それにより、右舷ハイパービームガトリングの接続アームが破壊される。

スガ「くっそお!」

スドウ「やってくれたな!」

 メガプラスの頭部バルカンとライフル2挺による弾幕。
 ザレクトは腕部の電磁フィールドで防御姿勢を取るが、1射が左舷ザレクトキャノンを捉える。

英玲奈「強制排除!」

 英玲奈は咄嗟に砲身のみをパージした。Xトランスミッターがある基部までの誘爆を防ぐためだ。

 そこにビームシールドを張ったモンテーロTBが割り入ってくる。

あんじゅ「追撃防止よ」

ヨミ「しゃらくさい!」

 その9時方向から狙い澄ますは、アメジストVDのビームスマートガン。
 モンテーロTBはすかさず、左腕のワイヤーフックを射出した。

ヨミ「なっ!」

 ワイヤーはビームスマートガンに巻き付き、奪い取る。
 モンテーロTBはそれを、喪失していたビームピストルの代わりに左手へと収める。

あんじゅ「プレゼントありがと」

ヨミ「このっ、泥棒!」

 テレスコピックバレル延伸式ビーム砲塔を展開するアメジストVD。
 その横合いから飛びかかるはFライザー。

ツバサ「うりゃあ!」

 Fライザーはユーディキウムビームライフルの銃身を把持し、それでデスティニーシルエットの砲身を殴りつけた。
 射撃装備とはたいてい、本体に比べてデリケートな造りをしている。そのようなもので殴打しよう、されようものなら、瓦解するのは当然。

 そしてアメジストVDが破損したのは運悪く固定装備だ。その後には誘爆を防ぐためにパージという手間が発生する。
 それを見越して、ツバサはすぐに捨てられる携行装備であるライフルで殴りつけたのだ。
 既に至近距離。ビームクローの間合いにはじゅうぶん入っている。
 だが、それを突き立てようとした瞬間、Fライザーを強い衝撃が襲う。
 アメジストVDは砲身をパージせず、急加速して体当たりを仕掛けてきたのだ。

ヨミ「やってくれるじゃないの!」

ツバサ「でもこれで射撃装備は潰したわ」

 自慢の高駆動力で、アメジストVDを振り払うFライザー。
 いまだ壊れた砲身が顕在ということは、運よく誘爆はしなかったと見える。もしかしたらあらかじめセーフティを組み込んでいたのかもしれない。

ツバサ「撃ち落とす!」

 Fライザーが腹部ビーム砲を照射する。
 アメジストVDはビームシールドで受け止めるが、その威力に後退させられていく。

スガ「させるかよ!」

 後方から攻撃してくるレオパルドDV。
 Fライザーはビームの照射を中断し、上昇してそのままアクシズへと向かう。

英玲奈「ツバサが移動した。我々も続くぞ」

あんじゅ「はいはい」

 モンテーロTBはビームブラスターを広域短射程の拡散モードで発射し、対峙していたメガプラスへの猫騙しとした。

スドウ「くっ、目くらましとは……!」

ヨミ「追うわよ!」

穂乃果「すごい……目が追いつかないよ……」

絵里「一瞬でも気を抜けばやられる、そんな緊迫した空気を、こんなにも持続させるなんて……」

海未「おそらく、要される判断力と即応性はパフォーマンス以上……!」

希「武道をやってる海未ちゃんがそう言うんなら、相当のモンやな」

アラン「そう、モビルスーツによる高機動戦はコンマ2ケタ秒単位の精密さと大胆さが求められる。瞬間の駆け引きはあらゆる競技よりもハードでエキサイティングなものだ」

にこ「あんな凄いパフォーマンスができるわけだわ。こんなことやってたんじゃね……」

花陽「やっぱりすごいよ、A-RISEって」

ことり「知らなかったのが惜しいくらい、すごい」

真姫「これが、世界を席巻するムーブメント……」

凛「これが、ガンプラバトル……!」

 アクシズに取り付いたA-RISEの3機は、上面中央部から少し外れた、モウサを連結していた鉄骨材の残骸の中に陣取り、対空監視に目を光らせていた。

英玲奈「反応消失……追ってきてはいないのか」

あんじゅ「何か企んでるわね」

ツバサ「だったら、アレが来るでしょうよ」

英玲奈「そうだな……いつでも動ける準備はしておけ」

 フィールドは不気味なほどに静まりかえっていた。
 しかし、この静寂が1秒後に保たれている保障などどこにもありはしない。

――アラート。

ツバサ「何か来る」

 接近警報が知らせたそれはアクシズの前方仰角60度ほどから飛来し、少し離れた場所――中央の突起の根元にストンと突き刺さった。

英玲奈「あれは……」

 カメラの倍率を上げ、拡大すると、それはアメジストVDのビームブーメランであることがわかった。

あんじゅ「ブーメラン?」

ツバサ「――いや、マズイ! すぐに離脱する!」

 異変に真っ先に気付いたのはツバサだった。
 すると、ブーメランが来たのと同方向から、猛烈な光の奔流が押し寄せてくるのが確認できた。

英玲奈「そうか、遠隔センサーか!」

 その場から全力で飛び立ちつつ、ブーメランの仕掛けを理解した。
 あのブーメランにはセンサーが括り付けられており、それがこちらの居場所を知らせ、メガランチャーで狙撃したというわけだ。

あんじゅ「危なかった……」

 メガライドランチャーの砲撃はアクシズ表面の砲台や鉄骨を瞬時にかき消し、そのまま岩肌を削り、穿ち、破壊していく。
 特殊工作も使わず、単機でこれだけの破壊力を生み出すとは、流石は心形流の作品。戦慄すら覚える技術力だ。

 たっぷり十数秒の照射が終了すれば、その光景は圧巻だった。
 ビームは触れたもの全てを消滅させ、アクシズは全体の3割ほどを大きくえぐられて、凄惨な姿となっていた。

ツバサ「みんな無事?」

英玲奈「私はなんとも」

あんじゅ「私はブースターをやられたわ」

 モンテーロTBは左舷のブーストポッドを失っていた。衝撃波で噴き上がった岩の破片が直撃したのだ。

英玲奈「まったく、やってくれる!」

 ザレクトのXトランスミッターが発光し、ビットを放出。プラフスキーパワーゲートを形成する。

あんじゅ「お返しよ!」

 3機による斉射がゲートを突き抜け、増幅され、再び宇宙を光の大河が突き抜けた。

スドウ「応射が来るぞ!」

スガ「アレを避けたってのか!」

ヨミ「ブーメランが無駄になっちゃったじゃない!」

 A-RISEのエクステンデッド・シュートは、余波にプラフスキー粒子の運動エネルギーを低下させるフリーズ能力を持つ。
 そのことをトライファイターズとの戦いを見て知っていたGマスターの3人はすぐにその場から離脱しようとするが、メガプラスだけは粒子を撃ち尽くしたメガライドランチャーは重荷になっている様子だった。

ヨミ「スドウ、早く!」

スドウ「遺棄するしかないか……!」

 やむなくランチャーをパージするメガプラスだが、大型バーニアを失ったことによる推力の低下は否めない。
 なんとか余波の影響圏外へと逃れた3機は、アクシズへと接近。

スガ「ほぉら、出てこいよ!」

 レオパルドDVは残りのミサイルを広範囲へと発射し、A-RISEの出方を探る。

ツバサ「ミサイル……少なくともレオパルドは顕在!」

あんじゅ「しぶといわね」

英玲奈「迎撃する」

 迫り来るミサイルをバルカンで片付け、予測された射出点に向けてビームを照射する。
 すると、着弾したと思われる閃光が目視できた。

ツバサ「アレは防がれたわね」

英玲奈「ヴィクトリーも顕在だな」

あんじゅ「牽制を続けるわ」

 ビーム砲を撃つ続け、弾幕を張るA-RISE。
 やがて索敵圏内に3つの反応が現れる。

スガ「そっちもみんな生きてるじゃないの!」

ツバサ「当然よ!」

あんじゅ「そろそろ幕を引かせてもらうわ!」

 モンテーロTBがビームスマートガンを撃ちつつ、両肩部バインダーにビームソードを発振する。
 そこに飛び込んできたのはメガプラス。射撃をビームソードで切り払いつつ、正面から突撃する。

スドウ「それはこちらの役目だ!」

 メガライドランチャーは失ったが、むしろ身軽になった分、運動性は上がっている。
 振り回される大型ビームソードをひらりひらりと躱し、肉薄。ビームスマートガンを両断する。

英玲奈「やらせはせん!」

 直上からの強襲をかけるザレクト。振り下ろしたブレードが肩から胸までを大きく切り裂くが、そこで刃が止まってしまう。

スドウ「このッ……!」

 メガプラスの放ったカウンターの一突きが、ザレクトの胸部を貫く。

英玲奈「これで、逃げられんぞ!」

 ビームバスターを臨界させ、一気に解放するザレクト。
 組み合った2機はその光芒に呑まれ、爆発の炎に燃え上がった。

あんじゅ「英玲奈!」

ヨミ「スドウ!」

スガ「相討ちとはなァ!」

 モンテーロTBにビームキャノンを連射するレオパルドDV。
 わずかな動揺が崇り、右肩のバインダーに被弾する。

ツバサ「あんじゅ!」

 そこへカリドゥスを見舞うFライザー。
 ビームはレオパルドDVの左肩を貫き、ガトリングも巻き添えにする。

スガ「ぬおおっ!」

あんじゅ「決めてあげるわ!」

 そこにミサイルを撃ち込むモンテーロTB。
 だが、割り込んできたアメジストVDのミノフスキードライブに防がれる。

ヨミ「させないっていうのよ!」

ツバサ「邪魔をしないで!」

 アメジストVDに猛烈な体当たりを浴びせ、その場から攫っていくFライザー。

スガ「ここまで来たからには、勝たなくちゃねぇ!」

あんじゅ「今度こそ、決めるわ!」

 バーニアを全開にし、ぶつかりそうな勢いで交錯する2機。
 レオパルドDVは連装ビームキャノンを、モンテーロTBはビームブラスターを撃ち、それぞれ撃ち合った火器を破壊する。
 続いてビームライフルとビームピストルを撃ち、これも同じ結果となる。
 これで通常の射撃兵器は全て使えなくなった。
 ならば。

スガ「うおおおおおおおおッ!!」

あんじゅ「てやあああああああっ!!」

 正面から衝突し、破片を散らす2機。
 その密接した状態で乱射するは、双方4門ずつ持ったバルカン。
 弾丸の嵐により、装甲には小さな弾痕が無数に穿たれていく。
 数秒間の連射を続け、同時に弾切れ。空撃ちの音が虚しく鳴る。
 そして、一瞬だけ訪れた静寂の後、2機は限界を迎えた証として、爆炎を花咲かせた。

ヨミ「スガぁ!」

ツバサ「これで残るは私たちだけね!」

 取っ組み合い、殴り合いながら、アクシズ表面を滑っていくFライザーとアメジストVD。

ヨミ「そう」

ツバサ「勝つのは」

「「私よ!」」

 円錐状の突起の中腹へと突っ込む2機。
 運悪く背中から押さえつけられる形となったのはアメジストVDであり、Fライザーは好機とばかりに執拗に殴打を連発する。

ヨミ「ええい、やめろぉっ!」

 腕部に内蔵していたビームサーベルをそのまま射出するアメジストVD。
 Fライザーは咄嗟に飛び退いてやり過ごすが、拘束を解くことになってしまった。
 岩肌から背を離したアメジストVDはウイングスラスターを酷く損傷し、エクスカリバーも歪んでいた。度重なる殴撃のダメージで左腕も機能を停止している。

ツバサ「おどかしたつもり!?」

 再度Fライザーが突っ込む。左手にビームクローを光らせて。

ヨミ「バカ言うな!」

 アメジストVDは右手でエクスカリバーのグリップを握り、刀身を折りながら抜刀した。
 折れたエクスカリバーは高出力ビームサーベルとなってビームクローを弾き、軌道を逸らせる。

ツバサ「くっ……!」

 後退するFライザー。
 アメジストVDは左腕とシルエットをパージしつつ飛び上がり、Fライザーに追いすがる。

ヨミ「ここに来て怖気づいたとか言うんじゃないわよ!」

ツバサ「攻めるばかりが戦いと思ってるの!?」

 背を取ったアメジストVDに対し、背面飛行に移ってカリドゥスを浴びせるFライザー。

ヨミ「常に攻勢であればね!」

 砲撃を回避し、更に距離を詰めるアメジストVD。

ツバサ(シルエットを失いながらも、ハイマットに追従するこの推力は……!)

 それはヨミの意地に反応したプラフスキー粒子が高エネルギー状態に躍起しているが故のことであるが、プラフスキー粒子、ひいてはアリスタについて知らぬ者ならば理解できぬのは仕方のないことだ。
 しかし理解はできなくとも、その意地はツバサも確かに感じ取っている。
 ならば、これ以上のドッグファイトは無意味!

ツバサ「道理だけど、賢くはないわね!」

 急速反転し、真正面からぶつかり合う。
 接触するビーム刃の閃光が2機を照らし、迸るスパークが装甲表面に走る。

ヨミ「バカにしてんのっ!?」

 パワーは互角。互いに弾かれ合い、もう1度ぶつけ合う。

ツバサ「どうかしら……ねっ!」

 左腕部の駆動出力を最大にまで上昇させ、相手を振り払うFライザー。
 吹き飛ばされたアメジストVDはアクシズ表面に着地する。

 そこへ追撃を仕掛けるFライザー。猛烈な急降下で串刺しにするつもりだ。
 それを紙一重で躱し、カウンターを見舞うアメジストVD。その一閃は右腕と右翼を一挙に切り飛ばす。

ツバサ「このぉっ!」

 怒りの反撃にカリドゥスが撃ち出され、アメジストVDは右脚を腰から失い、吹き飛んで岩肌を転がる。

ヨミ「出力低下……? こんなところで、嘘でしょ……っ!」

 大きな傷を負い、這いつくばったアメジストVDに、Fライザーが歩み寄る。

ツバサ「決着の時が来たようね……」

 ビームクローを光らせ、黄金の方翼を広げたその姿は、神々しくもあり、禍々しくもあった。

ツバサ「――いただく!」

ヨミ「――やらせない!」

 ビームクローの切先が、アメジストVDの頭部をえぐっていた。
 しかし、Fライザーの腹部には、最後の力を振り絞って投擲されたエクスカリバーが、深々と突き刺さっていた。

ツバサ「……残念ね」

 Fライザーが崩れ落ち、砂埃を上げる。

ヨミ「フッ、どうよ……」


『――Battle ended』

――会場エントランス

ザワザワ……ガヤガヤ……

穂乃果「――ツバサさん!」

ツバサ「あら」

穂乃果「お疲れさまでした!」

ツバサ「ふふ、ありがと。優勝は逃しちゃったけど」

穂乃果「いえ、もう、ホント、感動しちゃいましたよ! 今日はじめてガンプラバトル見たんですけど、まさかこんなすごいことやってたなんて!」

ツバサ「そう、良かったわ。観客のみんなが楽しめたようで」

英玲奈「ガンプラバトルもスクールアイドルも同じだ。当事者だけでなく、見ている者も楽しめなければ、本物とは言えん」

あんじゅ「あなたたちも頑張ってね、ラブライブ本戦」

穂乃果「はい! 今日、皆さんの戦いを見れたおかげで、俄然やる気が出てきましたよ!」

ツバサ「なら、この大会に出た甲斐もあったものだわ」

タツヤ「失礼」

ツバサ「メイジン・カワグチ……」

穂乃果「あっ、ゲストの人……」

タツヤ「準優勝おめでとう。今大会、近年稀に見るハイレベルな戦いが見れた。私からも礼を言う」

ツバサ「恐縮です」

タツヤ「何度も言うが、本当に惜しいと思っているよ。君たちが現役でU-19に参戦していれば、ガンプラバトルとスクールアイドルの架け橋として、業界もより一層の賑わいを見せていたことだろうに」

ツバサ「中途半端なマネはできませんから。どちらに対しても失礼です」

タツヤ「ああ、ifの話をしても仕方がない……で、君たちはこれからどうする? よもやその実力を持ちながら、無下にするほど無粋ではないだろう」

英玲奈「我々は高校卒業後、プロのアーティストとしてデビューする予定です」

あんじゅ「そして、趣味の領域でオープンクラスにも参加しますよ」

タツヤ「……そうか。それならよかった。君たちにとって、やはり本文はアイドルなのだな……」

ツバサ「はい。どちらも大好きですけど、やっぱり私たちは、一番私たちらしくあれる場所で生きていきたい」

タツヤ「……そうか、ならば燃え上がってくれ。己が信じた道で、極限まで」

ツバサ「言われるまでもなく」

タツヤ「フッ……いい目だ。では改めて賛辞と礼を言おう。失礼」

穂乃果「…………」

ツバサ「あら、圧倒されちゃった?」

穂乃果「なんか、すごいですね。あんな人と対等に話して……」

あんじゅ「けど面白い人でしょう?」

穂乃果「はい、なんか、言葉遣いとか、英玲奈さんみたいで」

英玲奈「私か?」

あんじゅ「ああ、言われてみれば」

英玲奈「冗談だろ」


……………………
…………
……


――3月初旬某日

英玲奈「ラブライブの第3回大会のプロジェクトが進行中だと?」

あんじゅ「ええ、しかも次の本戦会場はアキバドームが検討されてるわ」

ツバサ「桁違いのキャパシティになるじゃない。そこまでの集客が見込めるの?」

あんじゅ「そのために、スクールアイドルの更なる発展のために、運営はμ'sに協力を要請したそうよ」

英玲奈「ほう……」

ツバサ「それは聞き捨てならない話ね。いったい何をしようというの?」

あんじゅ「ニューヨークでの公演を全国ネットで生中継……」

英玲奈「…………」

ツバサ「……その振興計画、私たちも乗っかるわよ」

「「ハァ!?」」



『Continued to The School Idol Movie』


おしまい

一度書きながらラ!板に上げてたんだが、結局サボってたら落ちちまって、書き上げてからこっちに上げた

今回は1年前に書いたSSのパラレルでトライ編ということで
ツバサの機体は前作からの流用で、英玲奈の機体はAGE放送中に描いた妄想MSVの流用
あんじゅとシモンとスドウの機体は新作

書きながら描くと疲れる
でも楽しい

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