不良女「…………」男「ごめんなさい」 (70)

男(思っても見ない不運。いや、幸運というべきか)

男(目の前に広がるスカイブルーのパンツ)

不良女「おい」

男「…………」

不良女「おい」

男「えっ?なんです」

不良女「そろそろ顔をどけてくれないか。その……いつまでもこのままでは困る」

男「…………」

不良女「…………」

男「あ、はい」ムクッ

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男「ご、ごめんなさい。オレ、前をよく見てなくて」

不良女「気にするな。それよりも……」

キーンコーンカーンコーン

男「あ」

不良女「行かなくていいのか」

男「はい。先輩も早く」

不良女「わたしはいい。じゃあな」スタスタ

男(行っちゃった……)

男(なんというか女子なのにかっこいい人だなぁ。スカイブルーのパンツ、脳内に焼きつけておこう)

男「あ、早く行かないと」

男「おはよ」

男友「うっす。数学のプリントやったか?」

男「やってない。写させてくれ」

男友「えへへ、俺も同じこと考えてた。以心伝心だね。てへっ☆」

男「きもい死ね」

男友「あひん」

ガラララッ

担任「立ってるやつは席につけー。遅刻にするぞー」

男友「またあとでな男」

男「おう」

担任「では、早速だが出欠をとる。よばれたら返事をするように……」

ガシャーン!!

担任「はぁ……またあいつらか」

担任「今日のホームルームは中止だ。一限目の授業の用意をしておくように」

ガラララ……ピシャンッ

<はやく見に行こうぜ。

<今日はだれに懸ける?俺はいつもどおり『鬼夜叉』だな。

男友「始まったようだな」

男「だいじょうぶなのか?担任、木刀かついでいったけど」

男友「そうか、男は始めて見るんだったな。うちの名物行事『決闘』を」

男「『決闘』?」

男友「俺の話を聞くより実際に見た方が早い。行ってみようぜ」

男「あ、ああ」

リーゼント「『鬼夜叉』あぁぁあああッ!!隠れてないでさっさと出てこいやああああ!!ブルったかあああぁぁぁ!!」

不良女「そんなに叫ぶな暑苦しい。わたしはここにいる」

リーゼント「『鬼夜叉』ああああぁぁぁああ!!ここで会ったが百年目えええぇぇぇ!!ダチの仇はとらせてもらうぅぅぅ!!」

不良女「失せろ。怪我をしたくなければな」

リーゼント「なにをおおおぉぉぉぉぉぉ!!ぶち殺すぞコラあああぁぁぁあ!!」ブンブン!

男(あそこにいるのはさっきの人!)

男「た、大変だ!早くとめないと!」

男友「やめとけって」ガシッ

男「で、でもっ!」

男友「いいからよく見とけって、な?」

不良女「大した用ではないようだからわたしは戻る。じゃあな」

リーゼント「ビビったのか?」ニヤ

不良女「」ピクッ

リーゼント「ビビったんなら正直に言えよ。今なら三回回ってワンって言ったら許してやるよ」

リーゼント「負け犬にはお似合いの姿だろ?」

不良女「」プツンッ!

不良女「負け犬、だと……?」ピクピク

リーゼント「ああ、そうだとも。売られたケンカを買わないやつを負け犬と呼んでなにが悪い」

不良女「もう一度言ってみろ」

リーゼント「何度でも言ってやるよ。この負け犬が!」

不良女「貴様ああぁぁあああ!後悔するなよっ!」

リーゼント「それは……こっちのセリフだコラああぁぁぁあああああ!!」ブンブン!

男友「あいつ、終わったな」

男「え?」

男友「骨折はまず確定として、下手したら病院送りかも」

男「だ、だったら!」

男友「だから落ち着けってば。それよりもほら、そろそろ始まるぞ」

リーゼント「念のため聞いておくが素手でいいのか。武器くらい貸してやるぜ」

不良女「貴様ごときを葬るのにそんなものは必要ない」

リーゼント「ぶ、ぶぶぶぶぶぶぶぶっころおおおおぉぉぉぉおおすッ!!」ブンッ!!

ドカッ!!

男「あ、あああああ……」

男友「…………」

リーゼント「ひひひひひひ……あはははははははははっ!」

不良女「…………」

リーゼント「あははははははは!ひひゃはははは……」ユラリ

リーゼント「……ごふっ」ドサッ

不良女「安心しろ。加減はしておいた」

男「…………」

男「……え?」

とりあえずここまで

不良女「…………」

男「…………」

男(あの人が『鬼夜叉』)

リーゼント「」ピクピク

男(あの大男を素手で倒すなんて。しかも一撃で)

不良女「…………」スタスタ

男「あっ」

担任「こらー教室にもどれー!見せ物じゃないんだぞー!」

男友「行こうぜ」

男「…………」

担任「であるからしてー」

男「…………」ボーッ

男(『鬼夜叉』先輩。あのときはそんなに怖い人には見えなかったけど)

男(気のせいだったのかな)

担任「ここテストに出るからなー。よく聞いとけよー」ドンドン

男(いけねっ。集中しないと)カキカキ

ガヤガヤワーワー

<食堂行こうよ

<今日は購買でいいや

男友「これから食堂に行くけど男も一緒に来るか?」

男「わりぃ、今日弁当だから」

男友「りょーかい。んじゃまたあとでな」

男「おう」

男(どうせなら人がいない静かな場所で食べようかな)

男(天気がいいし屋上でも行ってみるか)

『関係者意外立ち入り禁止!』

男(なんで手書き?字間違ってるし)

男「…………」キョロキョロ

男「誰もいない。入っちゃえ」

ギイイイイイィィィ……

男「んー風がきもちいー!」

不良女「もう戻ったのか。ずいぶん早かったな」クル

男「…………」

不良女「…………」

男「え?え?えええええっ!」

男(『鬼夜叉』先輩がなんでここに?)

不良女「たしかおまえは朝わたしにぶつかった……」

男「一年B組の男です」

不良女「そうか男」チラッ

男「ひっ!」

男(こ、殺されるっ!?)

不良女「間に合ったか?」

男「ど、どうかお命だけはっ!」

不良女「?」

不良女「なにを言ってる」

男「……え?」

不良女「遅刻はしなかったかと聞いたんだ」

男「はあ、なんとか」

不良女「そうか」

男「…………」

男(なんなんだ?)


不良女「どうして屋上に来た?立ち入り禁止の看板を立てて置いたはずだが」

男「えっと、ここで昼飯を食べようかと」

不良女「ここがわたしの『シマ』だということを知らなかったのか?」

男「『シマ』?オレ、最近転校してきたばっかりでそういうことはあんまり……」

不良女「そうか」

不良女「…………」

不良女「いいか男、今日のことは忘れろ。そして明日からはもうここには来るな」

男「え?」

不良女「わたしに関わるとろくな目に合わない」

不良女「さもないとおまえ自身後悔することになる。わかったな?」

男「…………」

男(いきなりそんなこと言われても)

ギイイイイィィィィ……

女友「姉御ー!頼まれたいちごミルク買ってきやしたー!」

男「…………」

不良女「…………」

女友「…………」

男「あ、ども」


女友「てんめえええぇぇぇ!!」グイッ!

男「あぎっ!」

女友「いっつもいっつもしつこいんだよ!毎日毎日ゴキブリのようにわいて出てきやがって!」

男「ひ、ひとちがいですよぉ……」

女友「うっせえ!しらばっくれんなっ!姉御はなぁ、てめぇらのようなザコをいちいち相手にするほど暇なお方じゃねえんだよ!」

男「ぐ、ぐるじい……はなして」

不良女「女友、放してやれ」

女友「でも姉御!」

不良女「そいつはいつもの連中とは違う。放してやれ」

女友「…………」

女友「ちぇっ」パッ

男「げほっ、げほっ、げほっ!」

女友「ふん、男子のくせに情けないやつ」

男「あ、あんたがやったんだろ!あんたが!」

女友「…………」ジーッ

女友「へぇ~」

男「なんだよ」

女友「体はもやしみたいだけど、なかなかいい顔つきしてるじゃねえか。気に入ったぜ」

女友「おい、名前は?」

男「え?」

女友「おまえ、名前はなんていうんだ?」

今日はここまで

男「男だ」

女友「へぇ~男か。男らしくていい名前だな」

男「別に普通だろ」

女友「よし決めた!見込みもありそうだし、おまえうちの『愚連隊』に入れ!」

男「ぐ、ぐれ……?」

女友「ねぇ、姉御も賛成でしょ?」

不良女「少し頭を冷やせ女友。嬉しいのはわかるが、一人で突っ走るのはおまえの悪いクセだ」

男「…………」

不良女「見ろ。男も困っている」

不良女「本人の意志もちゃんと尊重すべきだ。無理強いはよくない」

女友「ごめんなさい……姉御」シュン

女友「気を取り直してまずは自己紹介からだな。アタシの名前は女友。『鬼夜叉愚連隊』のNo.2だ」

女友「通り名は『鬼夜叉の右腕』だ。へへん、かっこいいだろ?」

男「かっこいいんじゃね?よくわかんねーけど」

女友「んだとこらああああぁぁぁぁあああ!!」

男(うるせぇ……)

男「それより続きは?」

女友「てめえのせいで中断したんだろが!今度余計な茶々入れたら腹パンすっからな!」

男「はいはい」

女友「そしてこちらにいらっしゃるのが、『鬼夜叉愚連隊』のNo.1にして学園最強の呼び声が高いお方」

不良女「…………」ドォーンッ!!

女友「『鬼夜叉』こと……不良女の姉御だ!」

男「…………」

女友「へへ、驚きのあまり声も出てこねえようだな」

男「え?終わり?他のメンバーは?」

女友「いねえよ。『鬼夜叉愚連隊』は姉御とアタシの二人だけだ」

女友「何回か他のメンバーを誘おうしたこともあったんだぜ?だけど毎回こっちが話しかける前に逃げられるんだ」

女友「ったく、失礼なやつらだよな」

男(そりゃ制服に『喧嘩上等』の刺繍してたら誰だって逃げるわ)

女友「うちの姉御って有名だろ?だから度胸試しでザコどもが毎日うちの『シマ』を荒らしにやってくるんだよ」

女友「ほんとにゴキブリのようにわいて出てくるんだぜ?だから二人じゃとても対処しきれなくてな」

ガシッ!

女友「だがそこに男、おまえがやって来たってわけだ!頼む!『鬼夜叉愚連隊』のNo.3になってくれ!」

男「断る」

女友「」ガクッ!

女友「て、てめえっ!そういう大事なことはよく考えてから返事するのが筋ってもんだろ!」

男「考えるまでもない。無理なものは無理だ」

女友「なんでだよ!」

男「大体オレはケンカもそんなに強くないし、ましてや不良相手に勝てる自信なんてない」

女友「心配すんな!これから鍛えていけばいい」

男「そういう問題じゃないんだよ。それに不良ってガラでもないしな」

女友「うううう……」

女友「姉御!姉御はなんとも思わないのかよ!」

不良女「たしかにだれかに手を貸してもらいたいのも事実だ」

不良女「だがこれは男が自分で決めたことだ。わたしたちに口出しする資格はない」

女友「…………」

女友「ぐす……」

男(ぐす……?)

女友「な、なんだよ。えっく……二人で、アタシを除け者にしてさ。ひっく……えぐ」ポロポロ

男「除け者って。なにも泣くことないじゃん」

女友「うっせーバカ!死ね!」ドゴオッ

男「はぐぅッ!?」

女友「うわあああああああん」ダダダダッ

ギイイイイィィィィ……バタンッ!!

男「お……おおおお……」

男(女友のやつ、本気で殴りやがって。効いたぜチクショウ)

不良女「立てるか?」

男「ありがとうございます……いてて」ヨロヨロ…

不良女「すまない、迷惑をかけたな。女友も悪いやつではないんだが」

男「いいんです。怒らせたオレが悪いですから」

不良女「気にするな。男はなにも悪くない。おまえは正しい選択をしたよ」

不良女「一度不良になると普通の学生生活を送ることは困難になる。わたしもそのことで今までたくさん辛い思いをしてきた」

不良女「わたしと同じような思いをする人間はもう二度と作り出したくない。だから……」

キーンコーンカーンコーン

不良女「すまん、湿っぽい話をしてしまったようだ。忘れてくれ」

男「『鬼夜叉』先輩……」

不良女「早く行った方がいい。授業に遅れるのはよくない。おまえは普通の学生なんだから」

男「はい」

不良「元気でな」

男「『鬼夜叉』先輩も」

不良「ああ」

ギイイイイィィィィ……

男「普通か……」

男(普通ってなんなんだろな)

とりあえずここまで

――掃除時間・ゴミ捨て場――

リーゼントA「す、すみません親分!」

親分リーゼント「すみませんで済むかバカヤロおおおおぉぉぉぉおおおお!!」ドゴオッ!!

リーゼントA「ぺがふっ!」ドサッ

親分リーゼント「今月に入って何人仲間がやられたと思ってやがる!今朝のを合わせて8人だぞ!8人!悔しくねえのかてめえらは!」

リーゼントB「もちろん悔しいっすよ。でも相手が『鬼夜叉』じゃどうにも……」

親分リーゼント「てめえそれでもリーゼントかコノヤロおおおぉぉぉおおおおお!!」バキャアッ!!

リーゼントB「ぽぴっ!」ドサッ

親分リーゼント「できることをやるのは当たり前だ!できないことをどうにかしてみせるのが腕の見せどころだろうが!ああんッ!?」

リーゼントC「親分にはなにか考えがおありで?」

親分リーゼント「安心しな。ちゃんと手は考えてある」

親分リーゼント「『鬼夜叉』はあれでも情に厚いやつだと聞く。そこをちょっくら利用してやるのさ」

下級生A「あのー」

リーゼントC「なんだてめえ!ここがオレたち『狸亥蝉兎』の『シマ』だってことがわかってんのか!」

下級生A「そ、その、ぼくはゴミを捨てにきただけで……」

リーゼントC「うるせえ!ブン殴ってやる!」

親分リーゼント「待ちな」

親分リーゼント「おい、そこの1年。放課後までちょっとツラ貸せや」

下級生A「ひっ!」ビクッ!

親分リーゼント「だいじょ~ぶ。たっぷりかわいがってやるからよぉ~」ニコォー

キーンコーンカーンコーン

不良女「もう放課後か。早いものだな」

ギイイイイイィィィィィ……バタンッ!!

女友「ぜえはあぜえはあ……!」

不良女「女友じゃないか。もう機嫌は直ったのか?」

女友「んなことはどうでもいいんだよっ!それよりこれを!」

不良女「なんだこれは?」ピラッ

不良女「…………」

『鬼夜叉』に告ぐ。今日の放課後ゴミ捨て場まで来い。
今までの借りを返してやる。
しっぽを巻いて逃げてもいいぞ。
なんの罪もない下級生を見殺しにできるならな。
             
             『狸亥蝉兎』より

不良女「…………」クシャッ!

不良女「卑怯な真似を……!」

女友「まさか姉御、行くつもりか?」

不良女「決まっている」

ガシッ!

不良女「放せ」

女友「なんでだよ!なんでそんな見え透いたワナに乗るんだよ!それこそやつらの思うツボじゃねえか!」

不良女「弱い者を助ける。それがわたしの信条だからだ」

女友「ならアタシも行く!」

不良女「駄目だ」

女友「でもっ!」

不良女「駄目だっ!」

女友「!!」ビクッ!

不良女「今度の相手は今までのザコたちとは違う。中途半端な実力では怪我をするだけだ」

女友「姉御……姉御にとってアタシはなんなのさ。ただの足手まといかよ」

不良女「大切な仲間だ」

女友「だったらもっと頼ってくれてもいいじゃねえかっ!」

不良女「大切だからこそ傷つけたくない」

不良女「傷つくのは、わたし一人で十分だ」

女友「…………」

不良女「じゃあな」クルッ

ギイイイイイィィィィ……

女友「なんでだよ……」ポロ

女友「なんで、もっと自分のこと、大切にできねえんだよ……!」ポロポロ

男友「今日は久しぶりにゲーセン行こうぜ。日々の修行の成果を見せてやるぜ」

男「こりないやつだな、おまえも」

男友「ふん、せいぜいイキがってろ。あとで吠え面をかかせてやんよ」

男「はいはい……って、おわっ」

ドンッ!

女友「…………」

男「女友?」

女友「…………」

男「おまえ、泣いてるのか?」

女友「…………」

男「おいおい、黙ってちゃなんにもわかんないだろ」

女友「ぐしっ……」ウルウル

ギュウウウウウウウッ

男「え?え?なんなの?」

女友「おとこ……」ポロ

女友「おどごおおおぉぉぉ」ポロポロ

男「どうしよう」

男友「オレに聞かれても」

女友「ひっく、ひっく……」ポロポロ

男「…………」ゴソゴソ

男「ほら、ハンカチ。とりあえず涙ふきなよ」

女友「んっく……ありがと」

今日はここまで

すみません遅くなりました
続きは明日の夜に投下します

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