楓「私は一体何者なのか」 (9)

私の名前は――(まあ、覚えてもらう必要もないんですが)

日下部若葉、二十歳。

すこぉーし身長は低いですけど、平穏に暮らすごくごく平凡な大学生でした。

その日、あの奇妙な女性と出会うまでは……

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THE IDLE M@STER CINDERELLA GIRLS

crossing over to

JOJOLION

若葉「友紀ちゃんおそいなぁ~。自分から誘っておいてなんなのよぉ~」

震災で大きく傷付いた私達の街――S市杜王町ですが、なんとか復興は進み

以前と全く同じとまでは行きませんが、停電や断水に悩むことはなくなっていました。

元々海抜も高く、そこそこ内陸部(3kmだったかしら)ですので

家屋の倒壊、死者、行方不明者は沿岸部に比べて全然マシなものです。

とまあ、ここまでは前置き。

現在最も問題視されているのが、震災直後隆起してきた壁

――私達は壁の目と呼んでいる――の存在です。

その名の通り穴がぼこぼこと開いた壁の目は、杜王町と海の間を南北に10km以上の長さで出現しました。

高さは1m~3m、幅は5~8m。

高いところで15mにも達する壁は海からくる何かを守るように、逆に電気やガスを拒否するようにそびえ立っています。

研究者はやれ活断層だ地殻変動だといいますが、この穴ぼこだらけの奇妙な地形は地層とは言い難く

壁の目と表現するしかないでしょう。

若葉「都市伝説とか言っちゃってぇ~、ここ都市じゃないし」

幼なじみの姫川友紀ちゃんが仕入れてきた怪しい噂いわく

『壁の目に食われると超能力が目覚める』

若葉「だいたい壁の目に食われるってなんですか。目が何を食べるんですか、食べるなら口でしょうに」

今思うと、その日の私はどこかおかしかったように思います。

まるで傷口から入った熱病にうかされているかのような。

友紀ちゃんに待たされたイライラもピークに達し、近くの壁を蹴り飛ばしたその時でした。

??「あぁ……ぅ…………ぁ……」

若葉「……人ォ!?」

崩れた壁の根元(?)から女の人が顔を出したのです。

若葉「あの、貴女……その、なんていいますか、大丈夫……なわけないですよねェ~」

どこからどう見ても異常事態です

わざわざ壁の目に穴をほって砂風呂をする物好きがいなければの話ですが……

若葉「そんな人いるわけ無いでしょ!……もしもし、えっと、救急かな……はい、女性が怪我をしています。土の中に埋まってるんですよ!」

若葉「場所は壁の目と恋人岬のところです……名前ェ? 知らないですよ……ああ私のか。日下部若葉です……」

若葉「ふう、実際に救急車呼ぶなんて初めてです……」

??「ねえ貴女、クサカベワカバというのかしら……その、名前……」

若葉「え、ああ、はい。まあ、そうですけども……」

??「じゃあ私は一体誰なんでしょうか。私はここで何をしている?」

これが、私と彼女の出会い。

そして私達の街、杜王町を舞台にした物語の始まりでした。

←――To Be Continued

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