冬馬「うー?」 (46)


冬馬「・・・」

冬馬「・・・」キョロキョロ


どこだ?


冬馬「う?」


俺の部屋じゃないみたいだ


冬馬「・・・」


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冬馬「・・・」


体中がヒリヒリする


冬馬「うぅぅ…」


日焼けでもしたような…。いや、それよりもっと痛い


冬馬「…?」


何があったんだ?


冬馬「うー?」


夜なのだろうか、とても暗い


冬馬「うぅ…」


外に出てみるか。何か分かるかもしれない


冬馬「・・・」スッ…

ガクッ!

冬馬「!?」

ドサッ!

冬馬「ぅあ・・・!」


ベッドから降りようとしたら倒れちまった


冬馬「・・・」


動かない


冬馬「・・・うー」


足の感覚がない。まるで棒だ


冬馬「う…うぁ…」ガサゴソ

ガシッ

冬馬「あぅ!」


つかめる棒のようなものが近くに合った。動かせるみたいだな


冬馬「うっ…うう…」ヨロヨロ


棒が支えてくれたおかげでなんとか立つことができた


これを杖代わりにしよう


冬馬「・・・」ガラガラ…ガラ…


暗すぎて前がよく見えねぇ。おまけにすげぇ眠い


冬馬「・・・」さわさわ


何かスイッチはあるか?


さわさわ・・・


カチッ

冬馬「・・・!」

パッ!!!

冬馬「うぅぁ…!」クラッ…


眩しい。こんなに光が眩しいと思ったことはアリーナでライブをしたとき以来だ


冬馬「うぅ…」


明るくなったおかげでやっと今いるところが分かった

病室ということはここは病院だ。俺は入院をしていたみたいだ

そして今俺が持っているこの杖の正体は点滴みたいだ

だが何で俺は病院にいる?どこか具合でも悪い所があったのか?


冬馬「・・・」


・・・とりあえずナースコールを押そう。誰かにこの状況を何とかしてもらわねえと


グラッ

冬馬「…!?」

ガッシャン!!!

冬馬「あぅ!」


倒れてしまった


冬馬「うぅ…」


動かない


冬馬「・・・」


立てない


冬馬「ぁぅ…」


寒い

眠い

辛い


冬馬「う…」


眠い


冬馬「ぅぅ…ぅ…」


眠い


冬馬「ぅぅ…」


眠い


冬馬「…Zzz」


冬馬『…』


熱い


冬馬『うぅ…』


熱い


冬馬『ぅあ…』


熱い


冬馬『あぁ…うぁあ!!!』


熱い!!!


冬馬「うあぁ!!!」ガバッ!

医者「ようやくお目覚めになりましたか」

冬馬「ぁぁ…あう?」ハァ…ハァ…

医者「すごいうなされていましたよ。何か悪い夢でも見ていたのですね」

冬馬「う?」

医者「あなたがベッド以外のところで寝ている姿を見たのはほぼ一ヶ月ぶりですね」


医者?


冬馬「…?」

医者「何があったのかご存知ないようですね。無理もありません。もう一ヶ月近く前のことなので」

冬馬「…うー?」

医者「…ああ、やはり失っていましたか。予感はしていたのですが、はぁ…弱りました」

冬馬「…?」


失ったって?俺、何かなくしたのか?


医者「とりあえず彼の友人と関係者をここに呼んできてください」

医者「目が覚めたのでこれからについて話をする必要があります」

医者「ここにやってきたら私に伝えてきてください。それまで私は彼の様子をしばらくみます」

看護師「かしこまりました」


医者「…冬馬さん、私の話していることが分かるなら首を縦に2回降ってください」

冬馬「う?」


首を縦に?こうか?


冬馬「・・・」ブンブン

医者「意志の伝達に関しては異常がないようですね」

医者「慌ててはいないということは話している自覚はあるということですね。わかりました」

冬馬「うー?」


何を自覚しているって?話している?


医者「さて、何があったのか単刀直入に言いましょう」

冬馬「うー?」

医者「一ヶ月前、あなたは自宅で火災が起こり、それに巻き込まれて入院をしていたのです」

冬馬「う!?」


火災!?


医者「あの夜あなたの家、つまりマンションの一室で火のトラブルで火災が起きてしまい」

医者「その時マンション全体に火がまわって全焼してしまったんです」

冬馬「・・・」

医者「信じられないようですが本当の話です。現にあなたはここに入院しています」

医者「救急隊は運良くマンション内全員を救助することに成功しました」


医者「しかし死者をなくすことはできても重軽傷者をなくすことは阻止できませんでした…」

医者「そしてその重軽傷者の中にはあなたも含まれていました」

冬馬「う?」

医者「救助隊曰くまわりが炎の海の中、床の上で倒れていたところを見つけました」

医者「逃げようとしたら気を失ったみたいでしたけど。見つかって本当によかった」

冬馬「うー…」


火事?よく覚えてないが、確かにそんなことがなかったら病室にいるわけないな


医者「それで、君がすぐに運ばれたのだが…。君かなりの火傷と心肺停止の状態が起きてしまい」

医者「数回に渡る治療の末昏睡状態ですが一命をとりとめることに成功した」

医者「いつ起きるかわかりませんでしたが、とにかく無事に目を覚ましてほっとしました」

冬馬「うー…」


そんなに眠っていたのか。全く実感がなかったぜ


医者「しかし一体どうしたらいいものか…。この状態なら治療をするだけで元に戻るが…」

医者「一度話す必要が…」ガラガラ

看護師「ドクター、彼の付き添いの方達が訪れました」

医者「そうですか。それでは冬馬さん、話の続きは後ほど」

冬馬「う…?」


冬馬「・・・」


火事があったといってたな


冬馬「・・・」


見るかぎり多少の包帯は巻いてあるな。火傷したのか


冬馬「・・・」さわさわ


顔には包帯はないようだ。あぶねぇ、あったら一大事だ


冬馬「うー…」


にしても俺の部屋燃えちまったのか…。俺の宝物とか全部なくなったのか?


冬馬「・・・」


ガラガラ!

冬馬「?」

翔太「冬馬君!」

北斗「やあ、冬馬」

冬馬「…?」


翔太か?


翔太「…やっと目が覚めたんだね」

冬馬「うぁ?」

北斗「この一ヶ月ずっとお前のことを考えていたんだ。目が覚めて本当によかった…」

冬馬「うー?」


翔太に北斗か。すまない、心配かけさせちまった

だがもう目が覚めたから安心してくれ。早いうちに退院してやるからよ!


冬馬「あう!」

翔太「冬馬君?」

冬馬「う?」

北斗「冬馬、今何といったんだ?」

冬馬「う?」


何って、早いうちに退院してやるって言ったぞ?


北斗「なあ、俺の名は天ヶ瀬冬馬って言ってみろ」

冬馬「う?」


突然何を言っているんだ?


冬馬「うあ…あうぁ、うぅ…」


俺の名は天ヶ瀬冬馬だ、これでいいか?


冬馬「うう?」

翔太「やっぱり会話にならないね」

北斗「参ったな…。先生が言うには本人は話している自覚はあるけど」

冬馬「う?」


俺の言葉が通じてない?


翔太「一体どうするの?」

北斗「どうすると言われても、ここで治療を続けるしかない」

北斗「俺にできることは辛いけど見てるだけだからね」

翔太「そんな…力になれないなんて…」

北斗「だがこのまま冬馬とまともに話すことができないのは困るな」

北斗「ちょうどここに紙とペンがある。冬馬、何か書いてみてくれ」

冬馬「う?」


何で俺の言葉がわからないんだ?どうなっているんだ?

仕方ねえ、とりあえず書いてやるか。このまま何も伝わらないよりはましだ


冬馬「うーあーあー」ゴリゴリゴリ

北斗「っ…」

翔太「これって…」

冬馬「あう!」


ほら、これでわかるか?俺は大丈夫だって書いてやったぜ


翔太「…の」

冬馬「?」

翔太「…ふざけてるの、ねぇ!」

冬馬「うっ!?」ビクッ!

北斗「翔太…冬馬は俺たちと違っておふざけが嫌いな男だ。そもそも今こんな状況でふざける余裕はないはずだ」

北斗「ないはずなんだ!だのになんだこれは!落書きじゃないか!」

冬馬「うぁ?」


落書き?俺は絵を描いた覚えはないぞ?


北斗「っ…。何か他に方法は…」ガラガラ

医者「二人共、面会の途中悪いのですが少し話をしたいのです」

医者「あなた方のプロデューサーとともに今後のことを少し」

北斗「…わかりました。今行きます」

翔太「それじゃあ冬馬君。また後でね」

冬馬「あぅ!」


状況がわからねぇ。何がどうなっているんだ?

まるで日本語だけで外人と話しているような感覚だ。会話が成り立たねぇ…


冬馬「・・・」


とりあえず一度今までのことを整理しよう

まず俺の言っていることは北斗たちには伝わらなかった

字を書いても全くわからなかったみたいだしなぁ…

一体どうしたらいいんだ…。何か簡単に会話ができる方法はないか?


冬馬「うぅ・・・」クラッ


まずい、眠くなってきた…。一ヶ月寝まくってもまだ寝足りないのか。欲張りだな、俺って


冬馬「・・・」


仕方ねぇ、北斗たちが来るまで寝るか


冬馬「ZZz…」


冬馬『・・・』


何だ?


冬馬『うぅ…』


何なんだ?体が熱い?


冬馬『うぁ…』


熱い…熱い!


冬馬『あぁ…!』


熱い!!!

冬馬「がああああああああああああ!!!!!」ガバッ!

翔太「うわっ!」ビクッ!

冬馬「ああ…あああっ…」


何だったんだ今のは。体全体が焼けるようだった…


北斗「やっと目が覚めたのか!」

冬馬「ああっ…あぅ?」

北斗「覚えてないのか?ずっとうなされてたんだ」

翔太「何度呼んでも起きなかったからびっくりしたよ」

冬馬「うっ…?」


翔太「冬馬君、冬馬君は今後どうしたい?」

冬馬「う?」


今後?


北斗「ここにしばらくいるか。退院するかだ」

冬馬「・・・」

北斗「退院するとわざわざ通院して検査とか治療を受ける必要がある」

北斗「だがお前の性格上ここにいるのはいやだろ?狭いし不便だからな」

冬馬「・・・」


北斗「家のことなら心配ないさ。ちゃんと用意してあるから」

翔太「といっても事務所の寮だけどね。でも暮らすには申し分ないと思うよ」

冬馬「うー」

翔太「…北斗くん」

北斗「ああ、ほら冬馬。これで返事を聞かせてくれ」つ携帯

冬馬「う?」

北斗「これなら通じるはずだ。ただボタンを押すだけだからな」

冬馬「・・・」

ポチポチポチポチポチ

翔太「・・・」

医者『脳に酸素が行き渡らなかったせいでちょっとした言語障害生じています』

医者『その他にも色々症状が見受けられます。先ほど北斗さんの言うこととこれらを当てはめて推測すると』

医者『彼は私たちと違う世界を見ているような感覚に陥っているううです』

北斗『彼にとっては文字であるあの絵もその感覚のせいですか?』

医者『おそらくそうでしょう。彼にとってはまるで言葉もわからない状態で外国に来たような感じでしょう』

北斗『どうりでまともに話が通じないわけだ』

医者『もちろんそれに対する効果的な治療法も存在します』

P『そうですか。それで治るんですね?』

医者『ええ。おそらく、しかし少し時間がかかります』

医者『治療をする際、入院するか通院するか相談しておいてください』

翔太『相談って一体どうしたら…』

北斗『会話もダメ、筆談もダメならこれを使えばいい』

翔太『携帯?』

北斗『ああ、ただ押すだけだから会話も簡単。きっと通じるはずだ』

翔太『そっか!それなら大丈夫だね!』


翔太「・・・」

冬馬「あう!」

『寮でいい。こんなところは真っ平ごめんだ』

北斗「よし」

翔太「やっと通じた…。僕もう疲れた…」

北斗「こんなことで一々疲れるな。これからもっと大変になる」

翔太「まあ仕方ないね。だけどやること全部やり終わったらやった分思いっきり寝るからね」

北斗「ああ、いいよ」

冬馬「あぅ!」


北斗「だけど冬馬、まだ今すぐ退院できるというわけじゃない」

北斗「手続きとか検査とかいろいろあるからね、まだしばらくかかるよ」

北斗「いつ退院できるのか。もうすぐ知らされると思うからそれまで待ってて欲しい」

北斗「いいかい?」

冬馬「・・・」ポチポチ

冬馬「あう!」

『わかった、それまで我慢する』

北斗「よし」

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315P「…それではこれが冬馬さんの携帯です」

315P「といっても電話は使えません。病院内なので」

冬馬「うう…」

315P「それにしても無事で本当によかった。一ヶ月ずっと心配していました」

315P「後はさっさと治療をしてよくなるだけです」

315P「早く元気になって前のようなフィジカルな冬馬さんに戻ってください」

315P「退院してもサポートはしつづけます。プロデューサーなので」

冬馬「・・・」

『迷惑はかけたくないが状況が状況だ。よろしく頼むぜプロデューサー』

315P「ええ」

北斗「プロデューサー、そろそろ」

315P「わかりました。それでは冬馬さん、また後で」

北斗「それじゃあな、冬馬」

翔太「早く元気になってね!」

冬馬「あう!」


冬馬「・・・」


どうやら俺が眠っちまっている間にたくさん迷惑かけたようだな

誰かに迷惑をかけることはすげぇ嫌いだってのに…ったく

…仕方ねぇ、今の俺じゃ何もできねぇ

すまねぇが元に戻るまで世話になるぜ、三人とも


冬馬「・・・ぅぁ」


そろそろ暗くなってきたな

寝るか。寝て体力つけるか

さて、お休み

冬馬「ZZz・・・」


やめろ…消えろ…


冬馬「うぁあ…!」


なぜだ…なぜ消えない!


冬馬「ああ…!」


消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろォ!!!


冬馬「ぁああああァ!!!!!」

冬馬「ああああああ!!!!!」ガバッ!

冬馬「・・・」


また同じ夢を見たのか


冬馬「・・・」


あれは何だ?真っ赤な世界がただ広がってるだけだった

一体俺は何にうなされてたんだ?


冬馬「あぅ…」


にしてもこれじゃあまともに寝ることすらできねぇ

…が、今は維持でも寝ることが大事だ。何が悪夢だ!そんなものに負ける俺じゃねえ!


冬馬「あぅ!」


よし、もう一度寝るぞ。今度はいい夢であってくれよな


冬馬「あう!」

続く

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