女「もう線香花火かあ」 (27)

男「もうちょっと買ってこようか?」

女「ん、いいよ。やろ、線香花火」

男「うん」

女「……あっ」

男「消えたね」

女「暗いねえ」

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男「……」

女「ね、早く点けて」

男「ちょっと待ってて、ライターが……」

女「……ないの?」

男「あった。ん……よし、ついたぞ」

女「ありがと」

男「……あ」

女「……落ちちゃった」

男「はい、次の」

女「あと何本?」

男「ええとね、6本」

女「あと3回か」

男「そうだな」

女「そだ、ね。勝負しようよ」

男「勝負?」

女「どっちが長いことできるかって」

男「ああ、あれね」

女「うん、あれ。三回勝負だし、丁度いいでしょ」

男「オッケ、いいよ」

女「それでね。負けた人は勝った人の言う事をきくの」

男「なんでも?」

女「そ、なんでも」

男「のった」

女「じゃ、はじめね」

男「はい、これ」

女「ちょっと待って、自分で選ぶから」

男「はいはい」

女「うー……これ!」

男「んじゃ、これ」

女「じゃ、いくよ」

男「せーの」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「…あ」

女「やった」

男「まだ二回あるから」

女「あと一回で決まるから安心してよ」

男「どこから出てくるんだよ、その自信」

女「ここからー」

男「大してないくせに……っ痛」

女「成長期だもん」

男「そですか」

女「成長期だもん」

男「……」

女「じゃ、二回目ー」

男「また選ぶか?」

女「うん、ちょっと待っててね」

男「……なあ、お前が勝ったらなににするんだ?」

女「……え? ああ、ひみつー」

男「なんだよ」

女「そういうあんたは?」

男「んーそうだなあ……」

女「あ、えっちなこと考えてるー」

男「ばっきゃろ」

女「痛っ、ひどくない?」

男「んだな、夏の宿題自力でやってもらおっか」

女「えー、幼馴染じゃん。そこは協力しようよ」

男「写してるとこしか見たことねえよ」

女「ばれたか」

男「ちょっとは頑張れよ。志望校、おんなじとこにすんだろ?」

女「……ナゼソレヲシッテイル」

男「おばさんから聞いた」

女「裏切り者め……」

男「今のまんまじゃキツイと思う」

女「しってるよ。ちぇっ」

男「ちっとは頑張れよ、見てやっから」

女「えらそーな」

男「期末」

女「……さー、二本目行くぜえ」

男「はいはい」

女「よっ……」

男「……」

女「あ」

男「はやっ」

女「ちょ、ノーカンノーカン」

男「はい、一勝一敗」

女「最後の一本かあ」

男「はやいもんだったな」

女「今度はもうちょっとおおきな袋買おうよ」

男「来年もやんの?」

女「やるよ。毎年恒例じゃん」

男「まあ、なあ」

女「ちっちゃい頃からずっと、さ」

男「花火大会な」

女「大会って規模じゃないけどね」

男「おまえが呼び始めたんだろ」

女「そだっけ?」

男「うん」

女「……もう、終わっちゃうね」

男「ああ」

女「中学校、もっとあればいいのに」

男「そっち?」

女「うん」

男「まだあんだろ。夏休みだって」

女「それはそうだけど、ちがくて……」

男「なんだよなー、ったく」

女「わっ、ちょっとわしゃわしゃしないでよー」

男「うっせ、うっせ」

女「ばーか」

男「ばかっていったほうがばかー」

女「……ぷっ」

男「く、くくっ」

女「あははっ、なにそれなつい」

男「小学校以来だわ」

女「いやいや、この前も言ってたって」

男「んだっけ?」

女「そういうとこ変わんないんだから」

男「おまえもな」

女「そうだねえ」

男「ああ」

女「ほんと、かわんないね」

男「うん」

女「ずっとこのまま?」

男「たぶんな」

女「進歩ないねー」

男「そうでもないって」

女「どこが?」

男「身長とか」

女「胸とか」

男「……」

女「黙んなバカ」

男「痛っ」

女「じゃ、決着つけよっか」

男「おし」

女「蝋燭もそろそろヤバメだしね」

男「言うこと、なんでも、だよな?」


女「うん、わたしが勝つけど」

男「ぬかせ」

女「ちょうだい」

男「どっち?」

女「……こっち」

男「ほれ」

女「うん」

男「せーの」

女「せっ」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「あ」

女「……」

男「……」

女「……ふぅ」

男「負けたかー」

女「……」

男「んで、なにしたらいい?」

女「……」

男「……どうした? 勝ったぞ、おまえ」

女「う、うん……かっちゃった、ね」

男「なんだよ」

女「うー……」

男「……」

女「……えーい、度胸っ!」

男「おわっ」

女「命令! ちょっと動くなよ!」

男「おっ、おう!」

女「……」

男「ちょ、近っ…」

女「んー」

男「む……」

女「……」

男「……」

女「……どう、かな?」

男「どうって、おまえ、今……」

女「……なんだよー、いーじゃんしてみたかったんだから」

男「え? あ、おう」

女「それともなにか? 不満なんか?」

男「いやっ、そんなことはなくてっ」

女「昔はよくちゅっちゅしてたろー」

男「昔ってそんな」

女「勝ったんだからいーでしょー!?」

男「文句はねえけど、こういうのって順番があんだろ!」

女「順番ってなによう!」

男「告白だよ好きだ!」

女「わたしだって好きだもん!」

男「しってたよバーカ!」

女「じゃあもっと早く告ってよ!」

男「恥ずいんだよバーカ!」

女「うわ顔真っ赤」

男「てめえもだよレッド!」

女「っ……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……ふぃー」

男「はぁ……」

女「じゃ、そういうことで」

男「うん。やっぱあんま変わんねえな」


女「……帰ろっか」

男「んだな」

女「はい、ゴミ」

男「おう」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「ね、もっぺんしてみる?」

男「我慢しないぞ?」

女「……えっち」

男「ばーか」

女「んっ……」

男「……」

女「……」

おわり

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