秋津洲「ありがとう大艇ちゃん」
秋津洲「何か欲しい物はない?(裏声)」
秋津洲「え? もしかしてプレゼント?」
秋津洲「もー! 私は大艇ちゃんがいればそれで満足だよー!」
秋津洲「優しいなぁ大艇ちゃんはー!」
秋津洲「えへへ……」
秋津洲「…………」
秋津洲「はぁ……」
秋津洲「友達が欲しいかも……」
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秋津洲「別に……みんなと仲が悪いわけじゃないんだよ? 廊下で逢えば笑顔で挨拶してくれるし、編成が一緒になればちょこっと話もするし……」
秋津洲「ただ、こう……何の気なしに部屋に遊びに行ったりできる相手がいないというか……」
秋津洲「胸を張って友達だって言える相手が欲しいかも、って……どう思う? 大艇ちゃん……」
夕張「ねぇ」
秋津洲「私は秋津洲ちゃんの親友だよ!(裏声)」
夕張「ねぇってば」
秋津洲「ありがとう大艇ちゃん……」
夕張「それ、作業中の私の隣でやる必要ある?」
秋津洲「…………」
秋津洲「夕張ちゃん、ここ暑いかも」
夕張「工廠だから当たり前でしょ」
秋津洲「なんかピリピリしてるかも」
夕張「機材の調子が悪くて」
秋津洲「暇かも」
夕張「じゃあメンテ手伝ってよ」
秋津洲「イヤ」
夕張「…………」
秋津洲「ちょっと外出て休憩しよ? アイス買ってくるから」
秋津洲「こんなところにずっと引きこもってたら蒸しメロンになっちゃうかも」
夕張「…………」
…………………
夕張「友達いないの?」
秋津洲「い、いるよ!」
夕張「じゃあさっきのお人形劇はなんだったの……」
秋津洲「大艇ちゃんをお人形扱いなんてホント失礼かも!」
夕張「じゃあさっきのおままごとはなんだったの」
秋津洲「…………」
秋津洲「友達いないかも」
夕張「このアイス美味しいね」
秋津洲「自分から振ったんだから聞いて」
夕張「それを何で私のところに言いに来たの?」
秋津洲「理由は三つくらいあるかも」
夕張「何?」
秋津洲「んーとね。一つ目は、バリちゃんも友達いなさそ……」
夕張「私、仕事に戻るね」スタスタ
秋津洲「ごめんなさいごめんなさい! 違うかも! 誤解を招く表現があったことを深くお詫び申し上げるかも!」ガシッ
夕張「誤解も何もストレートに失礼な表現だったよ」
夕張「私は友達たくさんいるもん。五月雨ちゃんとか第八艦隊のみんなとか」
秋津洲「あのね、二つ目の理由がその第八艦隊なの」
夕張「?」
秋津洲「私、そもそも顔見知りが他の子に比べて少ない……かも」
夕張「そうなの?」
秋津洲「陽炎ちゃんとか伊良湖さんとか、萩風ちゃんはいないみたいだし……後は第八艦隊のみんなくらいしか」
秋津洲「初めて逢う子よりはお話しやすいかもと思って」
夕張「え? 私たちここが初めましてじゃなかったっけ?」
秋津洲「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
夕張「…………」
秋津洲「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
秋津洲「……えぇぇぇぇ」
夕張「長いよ」
秋津洲「私、みんなに敵と間違えられかけたかも! ホント怖かったかも!」
夕張「そんなこともあったね」
秋津洲「かるぅい……」
秋津洲「まあ、私もみんなのこと敵だと思ってたからおあいこなんだけど……とにかく、初めましてじゃないかも! バッチリ逢ってるかも!」
秋津洲「あっ! 『私たち、前世で逢ってるんだよ?』ってちょっとロマンチックかも……運命的な恋が芽生えちゃうかも……えへ」
夕張「私、仕事に戻るね」スタスタ
秋津洲「ごめんなさいごめんなさい! 小粋なジョークも許さないとか厳しすぎるかも!」
夕張「そもそもさ……秋津洲ちゃん、ここ数日間私のとこに来ては無言で隣に座ってるだけだったじゃない」
夕張「正直何したいのかわかんなくて怖かったよ」
秋津洲「声くらいかけて欲しかったかも」
夕張「こっちの台詞だよ」
夕張「ようやく口開いたかと思ったら大艇ちゃんごっこだったし」
秋津洲「おかげで今和やかにお話できてるかも!」
夕張「和やか……?」
秋津洲「首傾げないで欲しいかも」
夕張「……それで、三つ目の理由は?」
秋津洲「メロンちゃん、いつも変な機械作ってて怖いって評判じゃない?」
夕張「とりあえず私の呼び方統一しない?」
夕張「っていうかそんな評判なんだ私……」
秋津洲「友達作りに便利な機械を作って欲しいかも」
夕張「そんな都合の良い機械があったら驚きだよ」
秋津洲「ないの? みんなとコミュニケーション取りやすくなる、こう……仲良し度を測る装置みたいなのとか」
夕張「……………」
秋津洲「ひっ……ゆ、夕張ちゃん、顔怖いかも……」
夕張「ないよ、そんなもの」
秋津洲「そ、そう……ごめんなさい」
夕張「機械で友達を作ろうなんて甘いよ」
秋津洲「まあ……そうかも」
夕張「第八艦隊なら古鷹さんとこ行けば? 顔見知りだし、優しくしてくれるでしょ」
秋津洲「実は古鷹さんのお部屋にお呼ばれしたことがあったの。演習で一緒になって、その後に」
夕張「へぇ。どうだった?」
秋津洲「とっても良くしてくれたよ。すっごく楽しそうに話してくれて、優しいし可愛い人だなって」
秋津洲「それで思ったの」
夕張「?」
秋津洲「100パーセントの善意は時に弱者を深く傷つける凶器になり得るかも」
夕張「…………」
秋津洲「…………」
夕張「めんどくさいね……秋津洲ちゃんって……」
秋津洲「自分でもそう思うかも」
秋津洲「多分私がポツンと一人でいたから声をかけてくれたんだと思うけど……あれだけ良くしてもらうと、こう……申し訳なくなるというか居たたまれなくなるというか」
夕張「古鷹さんは見返り求めてそういうことする人じゃないよ」
秋津洲「そうかもだけど……卑しい打算が脳裏をよぎるのをどうにかしたいかも」
夕張「めんどくさいね……秋津洲ちゃんって……」
秋津洲「二回も言わないで欲しいかも」
夕張「要するに古鷹さんは理想の友達タイプじゃないってことでしょ?」
秋津洲「そ、そういうわけじゃなくて……」
夕張「理想は誰と誰みたいな関係なの?」
秋津洲「うーん……二航戦の二人とか、陽炎ちゃんと不知火ちゃんみたいな」
夕張「あのさぁ」
夕張「ああいう関係ってね、長い時間一緒にいたからこそなんだって。急に欲しがったって無理だよ」
秋津洲「うぐ……」
夕張「逆に言えば、時間をかければ古鷹さんとだってそういう仲になれるかもしれないし」
秋津洲「うーん……友達って誕生日プレゼントに欲しがる物じゃなかったかも……」
夕張「え? 誕生日なの?」
秋津洲「もー! さっきの私の一人芝居聞いてたんでしょ!?」
夕張「自分で一人芝居って言っちゃったね」
秋津洲「正確には進水記念日かも!」
夕張「へー、そっかそっか進水記念日かぁ」
夕張「じゃあ……」スッ
秋津洲(えっ! も、もしかして何かお祝いを……? 素知らぬ振りしてちゃんと知っててくれたのかも!?)
秋津洲「」ソワソワ
夕張「仕事に戻るね」スタスタ
秋津洲「待ちなよ」グイッ
夕張「何よもう……スカート引っ張らないでよ」
秋津洲「せめて『おめでとう』くらい言っても罰は当たらないかも」
夕張「おめでとう」
秋津洲「真顔で言われても……」
夕張「もう……注文が多いなぁ」
秋津洲「もっと言うならプレゼントが欲しいかも」
夕張「じゃあ」スッ
秋津洲「言っておくけどその食べ終わったアイスの棒をプレゼントと言い張らないで欲しいかも! 当たりじゃないのは見えてたかも!」
夕張「えぇ……」
秋津洲「ホントにそれ渡すつもりだったの!?」
夕張「うーん……他にあげられるようなもの持ってないよ」
秋津洲「アイスの棒が唯一って」
秋津洲「えっと……じゃあね……と、友達……」
夕張「言っておくけど、友達を作る機械なんてホントに無いからね。みんな勘違いしてるけど、私は万能メカニックじゃないの」
秋津洲「そうじゃなくて……」
秋津洲「と、友達に……なって欲しいかも……なんて……」
夕張「……」
夕張「ん?」
秋津洲「『ん?』って……」
夕張「私が秋津洲ちゃんと友達になることがプレゼントってこと?」
秋津洲「だ、ダメ?」
夕張「ダメなことはないけど……」
秋津洲「けど?」
夕張「さっき自分で言ってたでしょ? 友達ってそういう風になるものじゃないと思うな」
秋津洲「マジ説教は凹むかも」
秋津洲「でも、そうかも……変なこと言ってごめんなさい……」
夕張「いや、うん……」
秋津洲「…………」
夕張「……まあ、あれね」
夕張「暇だったらいつでもここ来てよ」
秋津洲「え?」
夕張「工廠だけどここはほとんど私のスペースと化してるし、そっちの個室は冷房利くから私の寝室になってるし」
夕張「たまに雑務手伝ってくれたら嬉しいから」
秋津洲「ほ、ホント!?」
秋津洲「じゃあお布団持ってくるね! 荷物も持ってこないと!」
夕張「え?」
秋津洲「大丈夫! 私荷物少ないから! 大艇ちゃんがちょっとスペース取るかもしれないけど、抱き枕だと思って三人で川の字に寝よう!」
夕張「なんで相部屋する話になってるの?」
秋津洲「じゃあ、今日からよろしくね夕張ちゃん! また後で!」ダッ
夕張「いや、ちょっと……」
秋津洲(大艇ちゃん! 遂に話しかけられたよ! やっとお話できたよ!)
秋津洲(私、もう一人ぼっちじゃないかも! もう一人の夜に枕を濡らさずに済むかも!)
秋津洲(友達ができたよ! やったね大艇ちゃん!)
………………………
提督「機材の調整終わったか?」
夕張「全然」
提督「全然て」
夕張「ごめんなさい。ちょっと不測の事態が」
提督「また変なもの作ってたんじゃないだろうな……」
夕張「変なもの……うーん……」
提督「図星か。お前『できましたよ提督!』って頼んでもいない謎機械作って持ってくるのやめてくれよ」
夕張「今回はそんなんじゃなくてですね……」
夕張「うーんと……えっと……」
提督「?」
夕張「できましたよ提督……友達が」
続くかも?
続かないかも?
わからないかも
おやすみかも
…………………
秋津洲「ここが夕張ちゃんの住処ね」
夕張「2人で使うには狭いと思うんだけどなぁ」
秋津洲「確かに狭いかも」
夕張「まあ、適当に荷物置いて良いよ」
秋津洲「けっこう散らかってるかも」
夕張「基本ここでは寝るだけなんだもん。別に良いでしょ」
秋津洲「その割に急いで片づけた感がそこかしこに漂ってるね」
夕張「……目ざといなぁ」
秋津洲「夕張ちゃんの万年床にだーいぶ」バッ
夕張「ちゃんと毎日干してるよ」
秋津洲「夕張ちゃんの匂いがするかも」
夕張「すごいね。ほとんど初対面なのにぐいぐい来るね」
秋津洲「だから初対面じゃないってー」
夕張「会話したのは今日が初めてでしょ」
秋津洲「まあね……」
夕張「そういえば、今まではどこで寝てたの?」
夕張「うち、艦種ごとに寮室振り分けられるじゃない? 千歳さんたちは最初から空母寮だったし、水母の寮室なんてないでしょ?」
夕張「特務艦のみんなもそれぞれ別の寮に入ってるし」
秋津洲「私も空母寮だったよ」
夕張「へー」
秋津洲「ただ、寝心地はあんまり良くなかったかも。床はひんやりして気持ちいいんだけど、何せ硬くて」
秋津洲「身動きひとつ取らずに、夜中お手洗いに行く空母のみんなを見守るのが日課だったかも」
夕張「ちょっと待って」
夕張「もしかしてだけど、廊下で寝てたりしないよね?」
秋津洲「廊下だけど?」
夕張「…………」
夕張「何それ……提督に文句言った方がいいよ。なんなら一緒に行くよ?」
秋津洲「あ、違うよ。提督はちゃんと私の部屋も用意してくれたんだけど」
秋津洲「空いてるのが個室だけだったから……」
夕張「個室じゃダメなの?」
秋津洲「あのね。自分で言うのもなんだけど……私あんまりみんなの役に立ててないかも」
秋津洲「航空偵察は何故か毎回敵陣に突っ込むはめになるし、実践演習じゃ申し訳程度に対潜警戒するだけだし」
秋津洲「秋津洲流戦闘航海術なんて得意げに語ってたけど、この身体じゃ何の役にも立たないかも」
秋津洲「脚も遅いし、燃費もあんまり良くないから遠征も不向きだし……できること少なすぎるかも」
夕張「うん」
秋津洲「お世辞でも良いから『そんなことないよ』って言って欲しかったかも」
夕張「そんなに深刻に考えなくてもいいと思うけど。秋津洲ちゃんにしかできないこともきっとあるよ」
秋津洲「そうだと良いけど……現状、私みたいなのが個室使うのは申し訳なくなるというか、居たたまれなくなるというか」
夕張「居たたまれなくなるの好きだね、秋津洲ちゃん」
秋津洲「好きで負い目感じてるわけじゃないかも」
夕張「だからって廊下で寝ることないでしょ。空母のみんなも驚くと思うけど……何にも言われなかったの?」
秋津洲「ちゃんと迷彩塗装で内装と同化してたよ。気分はカメレオンだったかも」
秋津洲「お布団引くとバレちゃうから、廊下の隅で縮こまってたの」
夕張「何その悲しい努力」
秋津洲「秋津洲流迷彩塗装術に死角無しかも」
夕張「誰にもバレなかったってことでしょ? 確かに、ある意味すごい才能だと思うよ」
秋津洲「あんまり褒められてる気はしないのはなんでだろ」
夕張「褒めてないからね」
秋津洲「ともかく、夕張ちゃんのおかげで冷たい廊下ともおさらばかも!」
夕張「私以外にも相手はいたと思うけどなぁ。そもそも私は相部屋をちゃんと許可した覚えはないし」
秋津洲「ダメなの?」
夕張「ダメってことはないけど……」
秋津洲「そういえば、夕張ちゃんは何で軽巡寮じゃないの?」
夕張「軽巡寮にも自分の部屋はあるよ。ここは誰も使ってなかったから自分のナワバリにしてるだけで」
秋津洲「ナワバリってすごいね。ゴリラみたいだね」
夕張「その喩えはどうなの」
夕張「……まあ、寮室の方は長いこと使ってないから空き部屋みたいなものね。使わない荷物は置きっぱなしだけど」
秋津洲「埃まみれになってそうだね」
夕張「五月雨ちゃんが定期的に掃除してくれてるから平気」
秋津洲「通い妻みたいかも」
夕張「五月雨ちゃんは良い奥さんになるよ、うん」
秋津洲「夕張ちゃんはダメ亭主かも」
夕張「…………」
夕張「……そろそろ寝ようか」
秋津洲「えー、もうちょっとお話したいかも」
夕張「明日もたくさんやることあるの。明日こそ手伝ってもらうからね」
秋津洲「んー……まあ、友達の頼みなら断れないかも! 友達だもんね! えへ!」
夕張「おやすみ」
秋津洲「…………」
一旦ここまでかも
おやすみかも
明日は月曜日、みんなお仕事がんばるかも
このSSまとめへのコメント
友達…
好感度…
うっ(´∩ω∩`)