側近「さすが魔王様、慧眼であらせられます」

魔王「よし……我こそはと思う武士はおるか」

火の四天王「あー……私は新兵の訓練が」ﾁﾗｯ

水の四天王「最近、人間の漁師どもがわが庭先を荒らすので、その取締りに忙しく……」ﾁﾗｯ

土の四天王「暑い、湿気、肉、腐る」

風の四天王「私人間の真似事きらーい！」



魔王「……」ｲﾗｲﾗ

側近「貴様らそれでも四天王か！」

風の四天王「じゃあ側近ちゃんいけばー？」

土の四天王「側近、つよい、俺たち４人、束になっても、かなわない」

水の四天王「私のように行動制限もございませんし……」

火の四天王「おお、新兵への訓示にもなりましょうぞ！」

側近「お前ら……」

魔王「……」ｲﾗｲﾗｲﾗｲﾗ

側近「私は魔王様を補佐し、この魔王城を管理運営するのが役目だ！」

側近「なぜ忌々しい人間の領土に足を踏み入れる必要があるのだ！俺はやらん、絶対にやらんぞ！」

魔王「……」

火水風土「「「「……」」」」ﾒｸﾊﾞｾ



火の四天王「あー、そう、そうですか。なら不肖、この火の四天王が……」ﾋｮｲ

水の四天王「確かに。人間の王を討ち取るのにわざわざ側近殿の手をわずらわせるわけにはいきませぬ」ﾋｮｲ

土の四天王「俺、毒、畑、撒く……兵糧攻め」ﾋｮｲ

風の四天王「はいはいはーい！私一番槍もーらい！魔王様、後でほめてねー！」



側近「……」

火の四天王「私が」

水の四天王「私が」

土の四天王「俺が」

風の四天王「私が！」

側近「……」ｳｽﾞｳｽﾞ

火の四天王「私が」

水の四天王「いやいや私が」

土の四天王「いや、俺が」

風の四天王「はいはいはーい！私、私いきまーす！」

側近「じゃ、じゃあ私が……」



火水風土「「「「どーぞどーぞ！！」」」」



つづかない

魔王「そうか側近よ……お前の自主性を買おう」

側近「ま、魔王様お待ちください！」

魔王「して、勇者的な者として……何から始めればよいのだ？」



火の四天王「おい、水の、何すればいいんだ？」ﾋｿﾋｿ

水の四天王「……さぁ、わたくしが人間について興味があるのは男性同士の友情だけですし？」ﾋｿﾋｿ

土の四天王「確か、王様、勇者に、授ける……し、しね？しめ？いめ……？」ﾋｿﾋｿ

風の四天王「もしかして、使命？」ﾋｿﾋｿ

土の四天王「そう、それ」ﾋｿﾋｿ



火の四天王「まずは魔族の勇者たる側近殿に、魔王様から直々に使命を与える儀式が必要かと」

側近「き、貴様ら共謀して私を魔王様から遠ざける気か！」

水の四天王「まぁ、そのようなお戯れを」

水の四天王「我らが望むはとこしえの闇夜。そのために協力できることは、何でも行いますわ」

魔王「具体的な儀式を調べよ、まもなく夜明け、次の日の入りと同時に行う、よいな」

火水土風「「「「ははっ！！！！」」」」

側近「……」ｷﾞﾘｯ



火の四天王「で、どうしますかね、儀式」

水の四天王「っていうか魔王様も大概、丸投げよねぇ」

土の四天王「こういう、時、風の、お前の、あれ、手下、頭いい、むかつく奴」

風の四天王「ああ、物知りフクロウのこと？分かった、聞いてみる」

────魔王城図書館



物知りフクロウ「なるほど、勇者の旅立ちの儀式についてですな……ええと」ﾊﾞｯｻﾊﾞｯｻ

風の四天王「なんか知ってる？」

物知りフクロウ「まずは仲間のための支度金、武器防具、それにありがたいお言葉ですな。元をたどるとこれは……」

風の四天王（……）

物知りフクロウ「古の神、オーディーンの伝記においてもこれらの事が触れられており……」ｳﾝﾀﾗｶﾝﾀﾗ

風の四天王（……いつもの事だけどー）

物知りフクロウ「４つのもの、すなわち新しいもの、古いもの、青いもの、借りたもの」ｳﾝﾀﾗｶﾝﾀﾗ...

風の四天王（話長いんだよねー）

物知りフクロウ「主様？」

風の四天王「あ、うん、大体分かった！ありがとう！」

物知りフクロウ「わが知識、いつでもお役立てくださいませ」ﾍﾟｺﾘ

水の四天王「風ちゃん、何か儀式について分かった？」

火の四天王「何か我らでできることがありそうか？」

土の四天王「やぐら、立てるか？力仕事、得意」

風の四天王「ちょ、ちょっと３人とも待ってよ、えーっと」



風の四天王「えーっと……」



火の四天王「おい大丈夫か？」

風の四天王「だ、大丈夫大丈夫。まずは、魔王様から側近へ贈り物をするの！準備金とか、あと、えーっと……おでん！」

水の四天王「おでん？あの、冬にみんなで食べる、あれ？」

風の四天王「そ、そうそれ！それをね、えーっと……４つの……」

土の四天王「つまり、おれたち、四天王、力、あわせる」

風の四天王「そうそれ！！そこ大事！！」

火の四天王「……なるほど、では早速準備に取り掛かろうか」

ネタが思いつくところまで行く

────そして太陽が沈み……



魔王「よくぞ参った、勇者的な者、側近よ」

側近「は」

魔王「ここより最も離れた人間界の城、はじまりの国の王を倒してみせよ」

側近「魔王様の御心のままに。必ずや、この世界をとこしえの闇夜に包んでみせましょう」

魔王「勇者的な者が旅立つに際し、僅かながら支度させたものがある……準備はよいな、四天王よ」

火水風土「「「「ははっ！！」」」」



ｸﾞﾂｸﾞﾂｸﾞﾂｸﾞﾂ...



側近「ま、魔王様これは？」

魔王「あつあつのおでんだ」

側近「……え、ええと……」

側近「おい四天王ども！今度は何をたくらんでおるのだ！？」ﾋｿﾋｿ

火の四天王「我らも願いは魔王様、そして側近殿ど同じ。この世界をとこしえの闇夜に包む、そのための儀式です」ｼﾚｯ

側近「ぐっ……」

水の四天王「それとも……魔王様から賜るおでんを……要らぬ、と？」ｼﾚｯ

側近「きさまら……後で絶対覚えておけ……」

魔王「四天王よ、して……これはどのようなものか、我にも説明せよ」

火の四天王「御意。我が領地、魔界火山の奥底で煮えたぎるマグマを用い」

水の四天王「私の忠実なる僕、巨大魚ダンダーンのすり身と」

土の四天王「俺、育てた、マンドラゴラ、捕まえた、獣のスジ肉……」

風の四天王「はいはーい！後はウインナーとかトマトとか、色々煮込んだあっつあつのおでんだよ！」



魔王「さぁ、受け取るがいい、勇者的な者、側近よ」ｼｬｷﾝ

側近「なぜかっこいい効果音とともに菜箸を取り出すのです魔王様！？」

魔王「側近よ……」

側近「い、いや、これから運動するので、おなかに物を入れるはちょっと……」

魔王「側近よ……儀式における手順の重要性、知らぬ貴様ではあるまい……」

側近「ぐ、ぬぬ……」

魔王「して、最初の品は……？」

火の四天王「やはり王道はしゅんでる大根ですかな」

水の四天王「ちくわも捨てがたいですわね」

土の四天王「コンニャク……」

風の四天王「うーん……ガンモドキ！」

魔王「ふは、ふはははは！！！四天王よ……だから貴様らは四人がかりで側近に敗れるのだ……」

魔王「勇気ある者、と書いて勇者……そうだな、勇者的な者、側近よ」

側近「そ、その通りでございます、魔王様」

魔王「ならば最初はこれしかあるまい……」ﾁｬﾎﾟﾝ

火の四天王「ま、まさか……」

水の四天王「魔王様それは……それだけはなりませぬ」

土の四天王「だめ、それ、だめ、側近、危険」

風の四天王「冗談ですよね魔王様？！」



魔王「ゆで卵だ」ﾇｯ

側近「……」ｷﾞﾘｯ

魔王「さぁ、口を開けるがよい」ｽﾞｲｯ