暁「私はレディになれたかしら……」(23)


響「暁、そろそろ行こう」

暁「わかってるわ、そんなに焦ったらだめよ」

私の言葉を彼女は優しい口調で嗜める。

響「だって今日は久しぶりに四人で食事をするんだ、焦りもするさ」

暁「そうねぇ、いつぶりかしら……」

すらりとした蒼い髪を結いながら昔を懐かしむ彼女の顔は笑顔が溢れていた。

暁「さ、準備できたわ。行きましょうか」

響「ああ、じゃあ行こうか」

1です

~喫茶店~


チリーンチリーン


雷「あ、暁よ。おーい、こっちこっち」

電「私達のほうが早かったのです」

暁「あら、先を越されちゃったみたいね」

響「だから早く行こうと言ったじゃないか」

暁「それでも約束の30分前なんだけどねぇ」

彼女は困ったように笑う。まさか自分たちより先に来てるとは思わなかったのだろう。それだけ雷と電も待ちわびてたということだ。


雷「それにしても久しぶりね、一ヶ月振りくらいかしら」

電「二ヶ月振りなのです」

響「あっという間に日々が過ぎいくからね」

雷「子供の相手してると疲れるわー。凄くやり甲斐はあるんだけどね」

電「昔の私達を見ているようで楽しいのです」

雷と電は今は幼稚園の先生をしている。元々母性オーラが溢れていた雷には天職といえるだろう。


暁「私達の花屋も少しは安定してきたのよ。固定客も増えてきたわ」

雷「良かったじゃない!最初は赤字で潰れるかもしれないって言ってたのに」

響「あの時期は流石に笑えなかったね」

雷「でもしょうがないわよ、だって港町に花屋なんて聞いたことないし」

私と暁は港町の小さな花屋を経営している。はじめは殆ど客が来なかったが秘境の花屋という噂が立って今は固定客や旅行客のお陰で安定している。


雷「二人も幼稚園の先生になればずっと一緒にいられたのに」

電「こればっかりはしょうがないのです」

響「そうだよ、ここに頑固な人が一人いるからね」

暁「もう、皆して。だって司令官が帰ってきた時に誰もいなかったら司令官が悲しむでしょう?」

雷「暁……」



10年前、司令官はある海域に出撃してそのまま姿を消した。司令官が行方不明になってからは長門さんがずっと指揮をとっていたがそのまま終戦を迎え私達は解体され普通の少女に戻った。

「あの時の暁は泣いて酷かった」

「それは皆同じじゃない」

「それでも暁ちゃんが一番泣いてたのです」

「そうだったかしら?」

「あれから暁変わったもんね」

「なのです」

「そうかしら?何も変わってないと思うけど」

暁はあの日を境に少しずつ変わっていった。誰にも涙を見せなくなったし、雰囲気も大人びていていった。そしてなによりつくり笑顔が上手くなった。

段々変わっていく暁を、私はただ側で見ている事しかできなかった。辛い感情や泣きたい感情を圧し殺して笑う暁見る度に心が痛んだ。

名前付け忘れてた

10年前、司令官はある海域に出撃してそのまま姿を消した。司令官が行方不明になってからは長門さんがずっと指揮をとっていたがそのまま終戦を迎え私達は解体され普通の少女に戻った。

響「あの時の暁は泣いて酷かった」

暁「それは皆同じじゃない」

電「それでも暁ちゃんが一番泣いてたのです」

暁「そうだったかしら?」

雷「あれから暁変わったもんね」

電「なのです」

暁「そうかしら?何も変わってないと思うけど」

暁はあの日を境に少しずつ変わっていった。誰にも涙を見せなくなったし、雰囲気も大人びていていった。そしてなによりつくり笑顔が上手くなった。

段々変わっていく暁を、私はただ側で見ている事しかできなかった。辛い感情や泣きたい感情を圧し殺して笑う暁見る度に心が痛んだ。


雷「そうだ、あなた達も一回幼稚園に来なさいよ。子供たち可愛いわよ

電「そうなのです。二人共子供が大好きなのは知ってるのです」

暁「でも用事も無いのに部外者が行くのはだめよ」

響「幼稚園に花を植に来たという用事ならどうだい?」

雷「そ、それよ!そのついでに一緒に遊ぶといいわ!」

電「もちろん花壇の予算雷ちゃんの給料から引いておくのです」

雷「電ぁ!?」

暁「そうね、それならいいわ。来週行こうかしら」

響「決まりだね。来週が楽しみだ」

~幼稚園~

雷「はーい皆ー。今日はお花屋さんの二人が来てくれましたー」


幼稚園児「「「「わーい」」」」

女の子「お姉ちゃん遊んで!」

暁「わかったわ。こっちにおいで」ポンポン

女の子「わーいお膝の上だー」

暁「それで何して遊ぶ?」

女の子「お姉ちゃんの話が聞きたい!」

暁「私の話?うーん、じゃあ私知ってるすっごいカッコイイ人のお話しをしてあげる。その人はね……」

雷「ほんと暁は司令官の事になるとわかりやすいわね」

電「なのです」

響「ああ……」

口では淡々と話しているがここ最近見た中で一番の笑顔だ。あんな暁を見たのはいつぶりだろう、昔はいつも見ていた筈なのに

暫く更新してなくてすまぬ


女の子「その人とっても凄いね!」

暁「ええ、だって私の尊敬する人ですもの。でもあの人いつも私を子供扱いするのよ」

女の子「お姉ちゃんを子供扱い?変なのー。だってお姉ちゃんとっても大人っぽいのに」

暁「そうかしら」

女の子「うん、まるでレディみたい!」


ありがとね、と言って暁は優しく微笑んだ。でもその微笑みからは喜びは感じられなくて。暁、君は確かに綺麗になったさ。振る舞いも大人になったし雰囲気も落ち着いた。


女の子「私もお姉ちゃんみたいな綺麗なレディになりたいなぁ」

暁「なれるわ、いつかきっとね」


でも、本当にこれが君の目指した姿なのかい?必死で寂しさを笑顔で誤魔化して、張り裂けそうな思いを胸に秘め続け苦しむ姿が本当に君の目指した姿なのかい?


響「暁、そろそろ帰ろう」

暁「え?でもまだ花植えが終わってないじゃない」

響「もう終わらせたさ。君が喋るのに夢中になってる内にね」

暁「そう、ごめんなさい」


そう言って彼女は申し訳なさそうに私に謝った。いいんだ、久しぶりに君の楽しそうな顔を見ることができたから。


雷「もう行っちゃうのね」

電「もう少しゆっくりしてってもいいんですよ?」

響「私はもう少し居てもいいと思うんだけどね隣の人が、ね」

暁「そんなに長くいる訳にもいかないわ。迷惑になっちゃうもの」

雷「相変わらずねぇ」

暁「それに今日は響に全部やらせちゃったから晩御飯は私が作るわ」

響「それは楽しみだね」

電「二人供仲良しですね」

雷「それは私達もじゃない」


暁「よかったら今度は私達の花屋に来て、サービスするわ」

雷「ええ、今度行かせてもらうわ」

暁「じゃあね」

そう言って彼女は歩きだした。その後ろ姿はとても儚くて、今にも壊れてしまいそうな、そんな背中だった


響「じゃあ私も行くよ」

雷「ちょっと待って」

響「なんだい?」

雷「……頑張ってね」

響「ああ、花屋が潰れないように頑張るよ」


雷が言っている事の意味はわかっていた。でも敢えて気づかない振りをする。だって頑張るのは私じゃないから


暁「響ー?どうしたの?」

響「ごめんごめん、今行くよ」

電「……」

雷「……」

電「暁ちゃん、とっても辛そうなのです」

雷「何言ってんのよ……一番辛いのは響よ」

電「……そうですね」

雷「なんでかしらね、あんなに近くにいるのに二人の距離がずっとずっと遠いのは」


暁「買い物してたら暗くなっちゃったわね」

響「ああ」

暁「それにしても遠いわねぇ。やっぱり車とか買うべきかしら」

響「そうだね、そうすればもっと雷や電に会える回数が増える」


港で過ごす私達は街までの移動手段は主にバスを使う。でもバスは一日に数本しか出ないのが欠点だ。


暁「でも偶にはこうして歩くのもいいものね」

響「星が綺麗だしね」


空を見上げると一面に広がる星。一つ一つが小さいながらに輝いていて、大きな光になっている。


暁「綺麗ねぇ」

響「暁、そういえばいつもより量が多いけど何を買ったんだい?」

暁「これは司令官の分よ。帰って来た時にお腹が空いてたら可哀想じゃない」


ああ、私達はいつまでこんな事を続けるんだろう。いつまで幻想を追いかけ続けるんだろう。もうこんな事は辞めるべきだ、終わらせるべきなんだ。でも


響「暁」

暁「ん?なあに?」


司令官の話をする時の彼女の笑顔は本物で、その笑顔を見る度に私は何も言えなくなるんだ。


響「……いや、なんでもないよ」


現実を見てくれと言いたいのに、司令官はもう帰って来ないんだと言いたいのに、何も言葉にできないんだ。


暁「響?どうして泣いてるの?」

響「え……?」


気づけば私の頬を涙が伝っていた。


暁「大丈夫、どこかぶつけたの?」

響「いや、大丈夫さ」

暁「本当に?」

響「ああ。目にゴミが入っただけさ」


暁に心配かけまいと涙を腕で拭っても、次から次へと溢れ出てくる。

響「あれ、おかしいな」

響「なんでもない……なんでもないんだ……」


一度溢れると止まらない。いくら腕で拭っても、両手で顔を押さえても、涙は流れ続ける。



不意に私の身体は温もりに包まれた。


暁「もう大丈夫よ」

響「あか……つき……?」

暁「辛い時は、私が抱き締めてあげるから」


その言葉が、温もりが、今の私にはとても苦しくて、もう何も我慢できなくて。


響「うう……」

暁「響が泣くなんて珍しいわね、雷と電に会ったのが効いたのかしら」

響「……暁のせいさ」


暁が笑うから私は泣くんだ。君が心を隠すから、私は代わりに表に出すんだ。


暁「そう、ごめんなさい」


司令官がいなくなってからの10年は、暁を強くし、私を弱くした。
もうあの頃には戻れないとわかっていても、四人で笑い合う日は来ないとわかっていても、忘れる事ができなかった。


きっと暁が司令官の幻想を追いかけるのと同じように私は君の幻想を追いかけているんだ


――――遠き日の君の無邪気な姿を

終わり。地の文はやっぱり難しい。

これを書き終える間に金剛姉妹が仲悪い話とか金剛姉妹姉妹がアルバイトする話とか金剛姉妹がケッコンカッコカリする話とか司令官がとっても過保護な話とか書いてた。

暇だったら読んで欲しい。ついでにコテは見なかった事にしてくれ

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