左右田「俺だけがいねー街」 (24)


「このSSはダンガンロンパのメンバーで「僕だけがいない街」シリーズのパロディをしてみたものです」

「主人公は一本に絞り「左右田」のみ」

「原作・ダンガンロンパではありえない展開が起こりまくり」

「特に、ダンガンロンパシリーズのとある「最重要パーツ」を、今作を書くにあたり、消しました」

「一ヶ月に一回更新があれば良い方(最低でも一話ずつ投稿したい為)」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436693544



ああ?またかよ……。良いけどさ、別に話して聞かせるようなもんなんかじゃねーぞ?
……何でって?そりゃお前クソなげーわ荒唐無稽だわ、おまけに上手く話せる自信ねーわ……だぁああもう、分かったよ!話しゃ良いんだろ話しゃ!!



……んじゃ、お決まりの前口上から始めるとすっか。










日本の東京にある、私立希望ヶ峰学園って知ってるか?



……そうそうそれだよ。その分野や業界において、大人達顔負けのすげー技術を持っている高校生達を世界中から選別して入学させる……そんな超法的な学校だ。
ここを卒業する事さえ出来れば「人生の成功を約束される」と世界中の人々に言わしめる、まさに希望の象徴みてーなとこ。

んで……正確には「本科」っつーんだけど。そこに入学した奴はみんな「超高校級」って呼ばれんだよ。例を挙げるなら「超高校級の武闘家」とか「超高校級の探偵」とかな。そんな感じ。
……そいつらもう「大人顔負け」どころじゃねーんだわ。それぞれの分野において、って括りは付くけど、みんな……それこそマジもんの化け物みてーなヤベー奴らしかいねーんだよ。……なんでんな事知ってるかって?そりゃあオマエ……





オレもそこの生徒だったからだよ。希望ヶ峰学園77期生「超高校級のメカニック」左右田和一ってな。



希望ヶ峰学園を卒業したオレは、アメリカにある化学工業研究室、つーとこにスゲー高い金でスカウトされて専業のメカニックをしてたんだ。けどよ、ここだけの話「化学工業」なーんてとんでもねー嘘っぱちな訳。
そこで造ってたのは「異常事態が起きた際の暴徒鎮圧用安全装置」……回りくどい言い方してるけど、ようは他国とドンパチする事になっちまった時の為の最新鋭兵器だわな。超特大のレールカノンとか、一台ありゃ小国くらいならよゆーで滅ぼせるアームズフォートとか……他にもヤベーのがぞろぞろ。

そんなもん造ったのは誰だって?オレ以外いねーだろ普通に考えて。おまけに専務まで任されてたんだから当然だろうが。
……逆らわなかったのかって?そりゃあ正直良い気はしなかったさ。どんなに言葉で取り繕ったって、人殺しの道具だからな。んなもん出来るなら造りたかねぇよ。

……けどよ、冷静に考えてみろって。アメリカの、それも暗部って呼べるぐれーヤベー研究室だぞ?逆らったりなんかしたら間違いなく人知れず殺されちまうっつーの!……それにそんときゃそんなもん無くても逆らう気なんて無かったからな。色々あってさ。



んで、ここまでは前座も前座。序章にすら入ってねぇ、ただのキャラ紹介みてーなもん。




……あの日襲いかかってきた「あれ」多分それが、全ての始まりだ。



確かオレが29歳の誕生日を迎える一ヶ月半前だから……五月の半ばだな。
仕事の気晴らしになれば、と街に自作のバイクで出かけたオレは旧友、とも呼べるやつに偶然再会したんだ。

街でオレを見つけたそいつは一方的に、捲し立てるように話しかけてきやがったあげく、オレの服をグイグイと引っ張って近くの喫茶店に強引に連れ込みやがったのさ。


「いやー、本当に久しぶりっすねー……何年ぶり?えっと……前の同窓会は和一ちゃん参加してなかったっすから……それこそ希望ヶ峰学園を卒業して以来っすか」

「ああ、そうだな……」

「唯吹、いま全世界ツアーで世界各国回ってるんす。今は丁度オフ。あ、和一ちゃんは今何してるんすか?って言うかあれ?確か和一ちゃんって超乗り物酔い体質なはずじゃ……なんでバイク乗ってんすか?」

「……アメリカのとある会社に雇われて、そこで働いてる。乗り物酔いは治ったよ、治した」

「ふーん……なんだろう。和一ちゃん、以前のモブモブしてた頃とは違って、どこかダンディーな大人の雰囲気が出てきた感じがするっす……歳っすかね?」

「……あ、そう」

「……あ、そう言えばありえねー髪の色は変えてなくても髪型は変えたんすね。短髪になってたから印象変わってビックリっす。もし色まで別のに変えられてたら気づかなかったかもしんねーすねぇ……」

「……そう言うお前は少っっっしも変わってねぇのな」

「そりゃー唯吹はどっかのアイドルみたいに路線変更なんてチャチな事しないっすよ!あ、さやかちゃんの事じゃねえっすよ?」

かつてクラスメイトだったその女の名前は澪田唯吹。希望ヶ峰学園77期生「超高校級の軽音部」だった女だ。

特徴?あり過ぎて上手く言えねーが、まずなんといってもその髪だな。

黒にベージュ、青に白……信じられるか?髪をベージュ一色に染めてたオレが言える事じゃねえだろうけどさ。これが人間の髪の色かよ!ってツッコミたくなる位ド派手な色してやがんだぜこいつ。おまけに頭の上に乗っかってる二本の角!!自前の髪を編んであんな「二本の角(ヘアースタイル)」を作ってるらしいけど、それにしたってチョイスがありえねーだろ……ふつーにストレートにしときゃあまだ色々何とかなりそうなのに。
おまけに耳につけてるトゲトゲのピアス。なんだよあれ……あんな凶器にもなりそうなピアス何処に売ってんだよ……。


「……うがー!!」

と、突然澪田の奴が怪獣みてーな声を上げてテーブル席から立ち上がった。オレは思わずビビって目を見開いちまう。おいやめろ!周りの奴らもなんだなんだと野次馬根性全開でこっち見てんだろーが!!


「な、なんだよ。急に大声出すんじゃねーよ……」

「和一ちゃん!今の和一ちゃんは達してるっすか!?」

突然訳分かんねーことをほざきやがった。


「主語、述語、5W1Hはしっかり守り、分かりやすく説明しましょう。自分の中では常識的な事でも、相手にとっては未知の言語や単語である場合があります。何も知らない子供に物事を説明するつもりで話すと良いでしょう」

「そんなヤホーのQ&Aのコーナーでベストアンサーに選ばれてそうなテンプレ回答はいらねーっす!ぷんすか!!」

おいおい……口には出して言わねーけどよ……


「昔の和一ちゃんなら唯吹を見た瞬間「おま、何で十三年前とほとんど変わんねー格好してんだよ!!」とか!「三十路(アラサー)目前の女が語尾に「ぷんすか」付けてんじゃねーよ!歳考えろ!!」とか!!「そもそもお前あの呪われそうな歌で全世界ツアーなんてよく出来たな!?」とか!!!デリカシー全く無しのキレの良いツッコミを見せてくれた筈っす!!」

ちょっ、おまっ!こいつ、折角人が気を使って避けてた地雷をみずから踏みに行きやがった!!……ああ。今思い出したけど、そういえばこいつは昔からこんなぶっ飛んだ性格してたような……つーか自覚してんならどっか変えようぜ!?まずはその髪型から!!

心の中だけで、そうツッコむ。もう高校時代みてーに若さに任せて言葉を撃ちまくる気力なんて無かったからな。それでも、せめてなにか一言ぐらいは言ってやろうと口を開いた時だった。






「今の和一ちゃんの顔が!唯吹には見えねーっす!!」







その言霊は、オレの中にあった「何か」に深く突き刺さった。
顔が見えないとは、当然言葉通りの意味じゃねえ。かつて、希望ヶ峰学園の心理学の授業で奇怪な言動を取りまくる先生が言っていた、そいつの表情や行動にうっすらと浮かび上がる「希望」が見えない。つー意味だ。



「……うるせーな」

悪態を付いてギロリ、と澪田の奴を睨む。澪田は少しだけビクッ、と体を震わせたけど、すぐにそのバラ色の瞳で睨み返してきた。





「……変わったんだよ、オレは……変わるもんだろ、人は……」





オレはそう言うと、テーブルに置かれていたレシートを握りつぶすように掴んで、レジへと向かった。
自信、誇り、向上心……
その時、既にオレの中には無くなっていた「希望」を持った眼で睨みつけてくる澪田から、一刻も早く逃げたかった。

澪田の奴は慌てて俺を追いかけてこようとしたけど、頼んだアイスコーヒーをまだ一口も飲んでない事に気づくと大慌てで席に戻り、それを一気に飲み干そうとしている。
――澪田が追いかけて来る前にバイクに乗っちまえばこっちのもんだ。レジで会計を済ませたオレは外の駐車場に止めてあったバイクに跨り、エンジンをかけて店を後にする。


横断歩道を渡ろうとする小学生
出店でハンバーガーを買う家族連れ
路上で泣き出した赤子をあやす母親
クリーニング店から出てきたサラリーマン
何台も何台も過ぎ去っていく車やトラック

色んな光景がオレの視界の端を横切っていって……






どくん





と、心臓の鼓動みたいな音がした。

気が付くとオレは「バイクに跨って喫茶店の駐車場を出る所だった」






「……?」

信号の色が変わったのを確認して駐車場を出ると「横断歩道を渡ろうとする小学生」が視界を横切る。


「……!」

出店でハンバーガーを買う家族連れ
路上で泣き出した赤子をあやす母親
クリーニング店から出てきたサラリーマン
何台も何台も過ぎ去っていく車やトラック

そう、オレが確かに「一度見た光景」が再びオレの視界を横切って行く。

……その時には、もう確信してたよ「あれ」が来た、ってな。


横断歩道を渡ろうとする小学生
出店でハンバーガーを買う家族連れ
路上で泣き出した赤子をあやす母親
クリーニング店から出てきたサラリーマン
何台も何台も過ぎ去っていく車やトラック






どくん






再び心臓の鼓動のような音がした時、オレは再び「バイクに跨って喫茶店の駐車場を出る所だった」

正直関わりたくねーよ……関わんねーで知らん顔してたいよ……けど。オレがやんなきゃ「これ」は永遠に終わんねぇんだ。
だから探す。違和感を。気になる場所を、人を、見逃している物事を拾い出す


「あ」

それに気づいたのは、確か三回目の「上映」の時だ。



見つけた……!









どくん






「こんにちは」

オレは大急ぎでバイクから降りると、横断歩道を渡ろうとしていた小学生に声を掛けた。


「……?」
「あのさ、本当にわりーんだけど。今日だけ向こうにある……一歩先の横断歩道渡ってくんねぇ?」

訳の分からねぇ奇妙な注文を、その子は首をかしげながらも了承してくれた。あとは……


「あいつだ」

エンジンを全開にすると、違和感があった場所まで一気にバイクをかっ飛ばす。感じた違和感……引越し用の大型トラックと交差したタイミングでハンドルを大きく切って、方向を180度変えた。オレはトラックと並走するようにバイクを走らせながら、ボタン式のクラクションを何度も鳴らしまくってやる。


「おい止まりやがれそこのトラック!!」

そのトラックの挙動は、今考えてみれば明らかにおかしかった。スピードじゃねぇ。その進路方向が、少しずつだけど確実に車用の白線からズレてたんだ。


「おい運転手……っ!?」

窓から運転席を除いたオレはマジで焦った……なにせその大型トラックを運転してる中年のおっちゃんが、白目剥いたあげく泡まで吹いてやがったからだ。

その時、オレの脳内はこの暴走トラックを強制的に止める手段を幾つか導き出していた。けど、どれもこれも現実的なもんじゃねぇうえ、下手すりゃ被害が拡大するような物ばかりだったから、結局何も出来ねぇ。

やがて、そのトラックは俺の予想通りに少しずつ人が沢山いる路上へと突っ込んで行く。
そのあまりの非日常的な光景に、周囲にいた奴らは口をポカンと開けてこっちの方を見てやがった。


「おーい!!畜生止まれ!止まりやがれ!!」

並走しながら運転席のドアを何度か殴りつけるけど、それでも反応はねぇ。



ああ……畜生。やっぱり関わるんじゃなかったぜ。



中学、高校、そして社会人……



他人になんか関わって、良い事なんてあったか!?



だけど……



だけど……!!





「おい!!運転手……!!」


溜めに溜めた大声を口から吐き出そうとした、その瞬間






ドッシァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!という金属を粉々にするような轟音が炸裂した。






対向車線から来た別の車に思いっきり激突したのだという事を、オレは宙に舞いながら悟った。






――オレは、小さい頃テレビで見ていた戦隊物のヒーローに頭を撫でられていた。
――オレは、幼い頃に家を出ていったオヤジの姿を追っていた。


――っておい何だ何だこの光景……?見た事あるようなもんばっかだけど……


――オレは、たった一人で俺の事を育ててくれた母親に甘えていた。
――オレは、対車線上から来た車に吹っ飛ばされた


ああ、そうか……「走馬灯」ってやつか……


――オレは、学生時代の友人達と一緒にファストフード店で駄弁っていた
――オレは、澪田の奴にジーッと睨みつけられていた


じゃあオレ、死ぬのか……?死んじまったのか……?……ほらな、やっぱり他人なんかと関わるとロクな事がねぇ


――オレは、毎日(いつも)の様に機械の整備をしていた
――オレは、一人ぼっちで雪の積もった道路を歩いていた


「人助け」なんてオレのガラじゃねぇって分かってたのに……でも……別に良いか……どうせ、周りの奴らみたいに他人と上手くやってけるとは思えねえし……


――オレは、公園で一人の少女の姿を見た


生きてた所で……って、あれ?


――その少女は、オレに向かって何か語りかけて来ていた


こいつ……なんて言って





「あ、目が覚めたっす」

左右田シリアスは好きなので期待



オレはハッ、と意識を取り戻した。最初は陽の光に目が眩んだんだけど、暫くすりゃあ慣れてくる。
真っ白で清潔なカーテンを皮切りに、量産製のタンスと小物入れ、オレの鼻やら頭やらに取り付けられた精密機械、花瓶に活けられた花束なんかを認識した脳が、今いる場所を「病院」だと認識するのにそう時間は掛からなかった。どうやら今の今までベッドで寝ていたらしい。

――んで、だ。それはともかく……


「おっす!和一ちゃん。あれから二日も経ったっすよー?」

「……澪田」

何で澪田のやろーがここにいやがる……お前全世界ツアーって奴の真っ最中だったんじゃねーのか!?


「自分が誰かー、とか。なんでこんな所にいるのかー、とか分かるっすか?分かんねーなら唯吹がこのロックな音楽で思い出させてあげ」

「左右田和一29歳。職業メカニック。暴走トラックを追いかけて事故った」

超早口で求める答えを言ってやる。この馬鹿……ここをどこだと思ってんだ!?病院でテメーのあの呪われそうな歌なんて流したら入院してる人達の寿命がリアルで縮まっちまうわ!!


「むぅ……ちょっとしたジョークじゃねぇっすかぁ……」

澪田はぷくーっ!とその頬を膨らませる。……だからお前自分の歳考えろって、来年は三十だぞオレら。イタイとか思わねーの?


「脳に異常がなければ二~三日で退院出来るって蜜柑ちゃんが言ってたっすよー。いやー、大した事無くて良かったっすねー」

「そうか……そりゃ重厚……」



――って、ん?ちょっと待て「蜜柑」ちゃん……?おいどっかで聞いた事あんぞ。



「ほんと、何で唯吹が伝える役やってるんすかね?」

「おいちょっと待てコラ!!お前「蜜柑ちゃん」ってまさか……!」

「ほい、和一ちゃんも知ってる元「超高校級の保健委員」罪木蜜柑ちゃんっすよー!」

おいおい、なんだなんだ?澪田だけじゃなく罪木の奴まで……。続けざまに元クラスメイトに出くわしやがるが一体どうなってんだ?
――つーか、あれ?あいつこの街の病院で働いてたのか。全然知らなか


「まぁ蜜柑ちゃんは仕事でこの街に来てただけみたいっすから、和一ちゃんの介護を最後に別の病院に急行しちゃったっすけど。せっかく再会できたんすから、もう少しプライベートな話をしたかったんすけどね……」

「あ、そう……」

「唯吹以外だーれもお見舞いに来てないってのも悲惨っすねぇ。流石に連絡取った方が良いっしょ?和一ちゃんの会社とか、アメリカでの友達とか。彼女……は、いなさそうっすね」

やっかましいわ!そういうお前は彼氏いんのかよ!!いや確かに彼女なんて出来た試しねーけど!!
オレはイラッとしながら「連絡取りたい奴なんていねーし、会社の方は多分この状況把握してんだろうから良いよ。わざわざ知らせたい奴なんていねぇ」と吐き捨てるように言ってやる。
すると何をどうしたいのか、澪田の奴は寝ているオレの体の上で羽虫でも追っ払うかのように、両手をわちゃわちゃと動かし始めた。


「バサーっ!バサーっ!」

「……な、なにしてんだお前?」

「なんつーか体全体を霧で覆ってるみたいっすから。和一ちゃん昔っから他人に心開かなかったっすもんね。……ソニアちゃん以外」

「うっせえな……」

ソニアさん……ソニア・ネヴァーマインド……か。まぁ確かにあの頃のオレが自分から積極的に関わろうとした人なんて「あいつ」とソニアさん。んでもって……
……あれ?もう一人、かなり仲が良かった奴がいた気がしたんだけど……ダメだ、思い出せねぇ。おっかしいな。


「でもでも~。少し見直したっす。唯吹から和一ちゃんへの好感度ちょい↑」

「……何の事だ?」

「またまた~。ヒーローは語らない、って奴っすか?子供を助けたじゃないっすか。唯吹はちゃーんと見てたっすよ?あのトラックの運転手ちゃん、運転中に心臓発作起こして死んでたらしいっす。ホント、よく気づいたっすねぇ。和一ちゃんってそんなに観察力ある人でしたっけ?」

「……たまたまだよ。別にほめられるような事じゃねーだろ」

「気づいてしまう」から、仕方なくやってるだけだしな……



「トラックはあのあと倉庫に突っ込んで、死傷者は運転手ちゃんと和一ちゃんだけっしたよ。あと和一ちゃんの上司だーって男の人が来て「事後処理」と破損したバイクの回収とパーツの調達。事故に巻き込んだ車とその運転手への賠償金はこちらで何とかするから、しっかり療浄して早く現場に戻って来い。って言ってたっす」

死傷者ってお前……いや間違ってねぇけどさ。


「あ、ちょっと笑ったっす」

「……ほんと、お前は変わんねぇんだな」

「むぅ……そんなに変わってねぇっすかね?ちょーっとは大人びた雰囲気が出てきたと思ってるんすけど」

「いーや変わってない。身長も頭も、ついでに胸も変わってない」

「ちょっ!ヒドっ!!」

「特にその能天気なテンション!病院の個室で高校時代同級生だった男と女が二人っきりだぞ?妙な空気になってお互いに気まずくなりーの、場を何とか持たせようとしてつまんねー質問しちまうまでがテンプレだろ。お前はあれだな。所属事務所と仲が最悪なライバル事務所のアイドルが出てるライブに「テンションあがったんでゲスト参加しまーす!」って言って勝手にステージに上がっちまうような奴だな。しかも思いっきりシリアスな曲がテーマのライブなのに激しいヘビメタを披露しちまうっていうな」

何年経っても変わらない澪田に影響されたのか、なんだか少しだけ学生時代に戻ったみたいな気になって、マシンガンのように澪田にツッコミまくる。そう言えば昔は「超高校級のツッコミ」なんてあだ名つけられてたっけ。


「ぬ、ぬぉおおおおおおおおお……か、和一ちゃんが昔と同等のツッコミを取り戻してくれたことは嬉しいっすけど、まさかセレスちゃんのスキル「毒舌」まで付加されていたなんて……つーか和一ちゃん唯吹の事情に詳しいっすねぇ?なんで唯吹がライブに乱入したこと知ってんすか?もしかしてファンになってたとか!!」

「おいまて、マテ、待て!!オマエまじか!!?マジでライブに乱入なんてやってやがったのか!!?ただの冗談が当たっちまったよ!どんだけ常識知らずなんだよ!!」

はぁはぁ、と全力で短距離走をした後みたいに呼吸をした。一気に喋りすぎて喉が渇いたけど、今のオレはまともな水分補給なんて出来る状態じゃない
元凶である澪田は「え~。だってライブに乱入って唯吹の夢だったんすよー。和一ちゃんに話して無かったっすかね?」と不満そうに唇を3の字に尖らせてやがる。


「そもそも「夢」なら他人に簡単に話そうとしてんじゃねーよ……「実現しなかったらどうしよう」とか思わねーの?」

「うーん。難しい問題っすねぇ……。でも唯吹は思わねっす」

予想はしてたよ、お前はそんな奴だもんな……


「ある意味「言葉」でご飯食ってる唯吹だから分かるんすけどね和一ちゃん、言葉って凄い力があるんすよ。何気ない一言で人に希望を持たせたり、逆に絶望に陥れたり……。だから」






「希望を持ってその夢を言葉にし続ければ、いつか本当になる気がするっす」






事実、唯吹は全世界ライブ出来るようになったっすしねー。とドヤ顔をしている澪田をよそに、オレは懐かしさに襲われていた。
澪田の言ったそれによく似た言葉を、むかし誰かに言われたような気がしたからだ。

そんで、オレはまた思い出した。澪田の奴は実はかなりシッカリしていて、子供っぽいどころか、大人びた雰囲気を漂わせていた。って事を。


「そんじゃ、唯吹そろそろ行くっす。バンドの練習もあるし、打ち合わせもしなくちゃいけねーっすから。……唯吹がいなくなっても、泣いちゃダメっすよ?アンコールは受け付けられねえっす!」

「しねぇからとっとと行け」

「むぅ……やっぱりツッコミが雑に……あ、そうそう!忘れてたっす!!明日お母さんが来るそうっすよー?輝々ちゃんじゃねえっすけど、この際だからキチンと恩返しするっす。あと、心配させてごめん。はしっかりと言ってくださいねー。バイバーイ!」

「……やっと帰りやがったか」

病室から出て行った澪田を確認し、オレは溜息と一緒にそう呟いた。
お袋の奴ワザワザ来んのかよ……ウゼェ……。あのお節介やろーが来るのかと思うと気が滅入りそうになる。
つーかめちゃくちゃ頭疲れた……原因は十中八九澪田のヤローだな……眠い……





その後、オレは暫くの間この日見た夢を見続ける事になる。夢の内容は以下の通り。





高校時代、仲間といっしょにファーストフード店で駄弁った後の帰り道。





みんなと別れて一人で寮に向かうオレの視線が捕らえたのは





粉雪が舞う公園で、一人佇む少女の姿だった。





夢から覚めた後、その少女とあの時少しだけ話したのを思い出した。
これは夢じゃねぇ。昔オレがこの目で確かに見た光景だ。





あの少女の名前は「     」

確か……あの後間もなく――






「死んだんだった」









無関係にしか思えねぇバラバラな出来事も、実際は全て連鎖の中の出来事なのだと後に知る事になる。





「事故」はその始まりだった。





思い出す事が出来ない少女の「言葉」を





再び「彼女自身」の口から聞く事になるとは





その時はまだ、知る由も無かった。









Chapter1―走馬灯―clear




少女の名前が「     」なのは単純に誰にするかまだ決まってないからです。本人降臨はないのでご安心を

元ネタ知らないけど面白そう
期待

元ネタ知らないけど期待

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