狐面「生贄は、お前だ」 少女「やだ」 (54)

…昔昔。或る所に、美しいお山があったそうな。

お山には、神様がいたそうな。

神様は、人間と仲が良かったそうな。

そして山の麓にある村の人々は、その神様をたいそう尊敬し、崇めていたそうな。

神様は気まぐれだったが気前はよく、人間たちにも良くしてやっていたそうな。

…しかし、ある時

ある村人が、神様を怒らせてしまったそうな。

怒った神様は、たちまち村に天災を降りかからせたそうな。

豊かだった田は枯れ、水はなくなり、夏は嵐、冬は雪。

村人はたいそう苦しんだそうな。

神様は、それから、自分の怒りが収まるまで村に呪いをかけつづけたそうな。

村はなんとか持ちこたえたが、たくさんの人が死に、また以前の豊かさを取り戻すには長い長い時間がかかったそうな。



…神様は、それきり村人の前に姿を現すことはなかったそうな。

祖母「…おしまい」

少女「…」

祖母「少女もね、この村で暮らすのなら神様を怒らせてはいけないよ」

少女「ばあちゃん」

祖母「うん?」

少女「その話、何万回も聞いた」

祖母「あら。でもお前は物分りが悪いから、何度も言い聞かせないと」

少女「だからって毎回毎回、家を出る前に聞かされちゃたまんないよ!!」

祖母「もう恒例行事だからいいじゃないの」

少女「…だいたい、何時頃の話かもわかんないし。ただの伝説じゃないの」

祖母「なんだって!…お前、畏れおおいことを。神様が聞いていたらどうすんだい」

少女「うわ怖。じゃあ、私呪われちゃうの」

祖母「少女っ」

少女「いってきまーす」

祖母「待ちなさい!お山の方向に謝ってから行きなさい!」

少女「やだ」タタタ

祖母「少女おおおおおおおおおっ!」

少女「おはようございますっ」

「おー、少女ちゃん。おはよー」

「早いねー」

少女「どうも!」

「おーい、少女ー」

少女「…お。おはよー!少年!」

少年「おっす。なんでお前、そんな髪の毛ぐちゃぐちゃなの」

少女「走ってきた!」

少年「…何でだよ」

少女「ばあちゃんがさ、更年期なんだよねー」ケラケラ

少年(…また何か勘に触ること言って怒らせたんだな)

少女「早く行こう、少年っ。漁始まっちゃうよ!」

少年「おー。いや、走らなくていい。歩け」

少女「はーい」

少年「忙しいやつ…」

=港

少女「おはようございますっ」

老人「お、来たなガキども。今日も馬鹿みてぇに早いな」

少女「走ってきた!」

少年「ぜぇ、はぁ…。お前よく…あの坂を止まりもせず…」

老人「女に置いてかれるたぁ、お前も情けないな」

少年「うるさいな!俺は自己抑制が効いてんだよ、そこの猿と違って!」

少女「はぁっ?猿ぅ?私のこと!?」

少年「他に誰がいんだよ」

少女「この野郎…」

老人「やーめんか!お前ら!さっさと漁の手伝いせんか!」

少女「…う。あとで覚えてなさいよ」

少年「受けてたつよ、猿」

老人「少年っ。やめんかって」バシ

少年「あだ!?」

少女「あはは!だっさ!」ケラケラ

ミュー… ミュー…

少女「海鳥がいっぱい。今日は大量なのかな」

少年「夜明け前に船がでたからな。今日は良い海の凪ぎ具合だし、そうかもな」

少女「あー…。私、今日は鯛が食べたい気分だ」

少年「シャレたつもりだろうがな。面白くないぞ。早く手動かせ」

少女「馬鹿」

少年「るせー。その言葉、そっくりそのままお前に返すわ」

少女「…もう無視するから」

少年「勝手にしろ」

少女「…」モクモク

少年「…」モクモク

「船が帰ってきたぞー!」

少女「あ、来た!行こう、少年っ」バッ

少年「早っ。お前、さっきの宣言から5秒経ってないぞ」

少女「早く早く」グイ

少年「ちょ、分かった。引っ張るなよ!」

少女「お帰りなさい、どうだったの?」

網本「おう、大量大量!早くシメてくれよ」ドサ

少年「うお、すっげえ」

少女「鯛は?鯛ある!?」

網本「あるある。しっかり働いてくれたら、ちゃんと分けてやるよ」

少女「やる!」バッ

少年「どっちが早く終わらせられるか、勝負するか?」

少女「お、いいのそんなこと言って。何か賭ける?」

少年「負けたほうが、今日の分け前を半分勝ったほうにやる、ってのはどうだ」

少女「いいよ!絶対私が勝つし」

少年「ほーう。じゃ、始め!」

少女「よっしゃ!」


老人「…ほっほ」

網本「仲が良いことですな、あの二人は」

老人「歳が近いもの同士だからなぁ。まるで兄妹じゃな」

網本「この村で最年少といったら、あの二人ですからね」

老人「まっこと、良い子らに育ったもんよ」ケラケラ

少女「ふんふーん」

少年「…」チラ

少女「…何」

少年「いや。…お前、今いくつだったっけ」

少女「17。何、そんなことも忘れたの?」

少年「そういう意味じゃなくてな。…うーんと」

少年「…お前、そろそろ…あれしなくていいのか」

少女「あれ?」

少年「ああ。…巫女の儀式だよ」

少女「え、何で?」

少年「だってそうだろ。ここの村の女は、大体16,7で神社の巫女になるじゃないか」

少年「まぁ…。最後に巫女になったのなんて、5年前の網本の娘さんくらいだけど」

少女「あー、だったね。今のところ、あの姉ちゃんが一人で巫女やってんだっけ」

少年「そうそう。でも、今年の秋に嫁入りすんだろ。巫女なんて続けられないぜ」

少女「えー、それじゃあお祭りとか神事ができないじゃん。どうすんの」

少年「話の流れを掴めよ馬鹿!お前がなんだろうが!」

少女「えっ!!?」

少年「あ!?何でそこ驚くんだ!?」

少女「何で私が巫女なんかしなきゃいけないのよ」

少年「お前以外に誰がやんだ?」

少女「…んー」

少年「村には今んとこ、巫女にふさわしい年齢の女がお前しかいないんだぞ」

少女「あ、待って。家の向いに、妊婦がいるよ」

少年「生まれてくる子どもに託そうとしてんじゃねえ!大体男かもしんないだろ!」

少女「えええ、やりたくないよ。やらなきゃ駄目?」

少年「駄目だろうなぁ」

少女「嫌だな…。私、ここでずっと働いてたい」

少年「…。けど、巫女やってたほうが嫁の貰い手もあんだぞ」

少女「いらないよ、そんなのー」ケラケラ

少年「お前なぁ、この歳まで漁港で男と並んで、魚シメてる女も珍しいんだぞ」

少女「そうなの?」

少年「そーだ。普通この歳になったら、髪も結って化粧して、嫁修行するもんなんだ」

少女「あはは、面倒くさい」

少年「やばいなお前…。本当に猿なんじゃ」

少女「はい、終わった」ポン

少年「げ」

少女「鯛よこせ」

少年「うわぁああああぁあああ!?」

少女「ふふ」

老人「お、終わったか。早いのー」

少女「長老長老、今日は私が勝ったよ」

少年「くそっ…無駄話しなきゃよかった」

少女「そうそう。少年ったら、私に巫女になれ巫女になれうるさくって」

老人「む。なんじゃ少年、少女がそろそろ神社に入ること知っておったのか?」

少女「は」

少年「え」

老人「いやワシも、そろそろかなーって思ってたんじゃ」

少女「…」

少年「お、俺を見るな。俺を」

少女「えーと、やだ」

老人「やだとか無しじゃ。決定事項」

少女「えええええええええええええ!?」

網本「すまんな。神社に空きを作るわけにはいかないんだ。神様がお怒りになる」

少女「で、でも!私は」

老人「まあまあ、まだ猶予はあるから」

少女「猶予じゃなくて取り消しが欲しい!」

老人「だから無理じゃーて」

ガララッ

少女「ば、ばーちゃんばーちゃん!」

祖母「おや。もう仕事終わったのかい?」

少女「あ、そうなんだー。私ね、少年に勝ったから鯛ぶん取ってきた」

祖母「まあ立派な…。じゃ今日は鯛飯にでもしようかねえ」

少女「うん!やったー!」

少女「…じゃなくて、ばあちゃあああん!」ガシッ

祖母「なんだい」

少女「わ、私っ。巫女に!巫女にならなきゃいけないんだって!」

祖母「ああ」

少女「ああ、って。…え、何でそんな冷静?」

祖母「だあって、あんた。そりゃあそうでしょうよ。村で巫女になれそうな女の子はあんただけなんだから」

祖母「…いや、逆にあんた、気づいてなかったのかい?」

少女「…」

少女「なかった…」

祖母「馬鹿ねぇ」

少女「おばあちゃんー!どうしよ、私あんなおしとやかにしなきゃいけないの!?」

祖母「この村に生まれた以上、運命よ」

少女「えぇー!」

少女「でも、私が仕事しなきゃばあちゃんが食っていけないじゃない」

祖母「馬鹿にすんじゃないよ。私も機織で十分食べていけるわ」

少女「でも、でもー」

祖母「うるさい子だね!でもも何もないわ!」

少女「できないよー!」

祖母「だーいじょうぶ。この村の女全員が経験することなんだから」

少女「え、ばーちゃんも?やってたの?」

祖母「そらそうよ。じいちゃんと結婚するまでやってたわ」

少女「…」

祖母「…何で含み笑いする?」

少女「あ、いや。ふふ、何でもない」

祖母「ったく…。私もね、そろそろあんたには女らしくして欲しいの」

少女「女らしくって言われてもなぁ」

祖母「…そろそろ化粧の一つも覚えなさい!」

少女「漁港で働くのに化粧は必要ないもん」

祖母「…」ハァ

祖母「良い機会だわ、これは。あんたの神様への信仰心と乙女の作法を学ぶ」

少女「か、勘弁して!」

少女「私まだ船にも乗せてもらってないんだよー!ねぇ、もう少し待って」

祖母「だめ!大体、女が船に乗るなんて聞いたことありません」

少女「私は漁師になりたいの!」

祖母「いーえ、だめです。あんたがすべきことは、まず巫女になること」

祖母「そんで時期が来たら結婚すること。以上」

少女「殺生すぎる!私の夢は?」

祖母「だから、考え直しなさいって何回も…」

ガラッ

老人「邪魔するぞー」

少女「あ、長老、なんとか言ってよー!」

老人「まーた喧嘩しとんのか。なんじゃ?」

少女「…あ、長老は敵だった」

老人「はあ?」

少女「私の味方なんて、いないのね…」

祖母「そうよ。諦めなさい」

老人「ふむ。まあ、喚いてもいずれ巫女にはならんとな」

少女「うー…」

老人「少女、まあ、申し訳ない。しかし村のためと思って来てはくれぬか」

少女「何処に」

老人「神社じゃ。神主と巫女が待っておる」

少女「…」

祖母「少女」

少女「…うん。分かった。行く」

老人「良い子じゃ。さ、おいで」

少女「ばーちゃん…」

祖母「何?」

少女「鯛飯…。今日きっといっぱい食べるから、多めに作っておいて…」

祖母「はいはい、分かりましたよ」クス

少女「はぁ…」シュン

=神社

巫女「少女ちゃん!」

少女「あ、お姉ちゃん!こんばんはーっ」ギュ

巫女「あはは。いらっしゃい」

神主「うん。良く来たね少女。さ、入って」

少女「はい。お邪魔します」

カララ

老人「ふむ。じゃあ少女、わしの隣に座りなさい。これから真剣な話をするのでな」

少女「…」ゴク

少女「う、うん」スト

神主「さて…。まず、知っての通り巫女はそろそろ隣村に嫁に行きます」

巫女「…」ペコ

神主「できればこの週のうちに巫女の任を解き、花嫁としての準備をさせたいのです」

少女「う、うん…」

神主「残念なことに村は最近あまり子に恵まれない。だから、適任は君しかいない」

少女「…」コク

巫女「お願い、少女ちゃん。…勝手だよね、けど」

少女「…」ギュ

少女「そんなことないよ!お姉ちゃん、結婚おめでとう!あとは私に任せて!」

巫女「少女ちゃん…」

神主「…優しい子ですね」ボソ

老人「ああ。なんだかんだ言って、責任感のある娘なのじゃよ」

少女「でも、私にできるのかなあ」

神主「うん、全く問題はないよ。巫女さんだって、始めは…」

巫女「神主さん」

神主「…と、とにかく大丈夫!ただ、一人で巫女をやるんだから、少し忙しいのは覚悟してほしいな」

少女「うん。私、忙しくても平気だよ」

神主「そうか。じゃあ、いいんだね」

少女「うん。なる。私、頑張るよ」ニコ

巫女「少女ちゃん…。ありがとう」

少女「ふふ、巫女ちゃんの結婚式も私がやるんだもんね。楽しみ」

老人「順応能力高いのー…。さっきまであんなに嫌がってたのに」

少女「だってさ、私がやんなきゃ。しょうがないね」

老人「うむ。肝の据わった子じゃ。恩に着るぞ」

少女「…安心してね!私、しっかりやるから」

老人「それでは、神主。あとは頼んだぞ」

神主「ええ」

巫女「少女ちゃん、いらっしゃい」

少女「?…これから何かするの?」

神主「この土地に伝わる神様と、巫女の話をするんだ。必要なことだよ」

少女「…その話、長い?」

神主「…しょーじょちゃーん」

少女「う、はい。ちゃんと聞きます。正座して」チョコン

巫女「では、まずこれを」スル

少女「…ん。お姉ちゃんがいつも髪につけてた鈴?」

巫女「そう。お山の神様から賜った鈴よ」

少女「そ、そうなの!?」

神主「けど、よく聞いてごらん。…この鈴、鳴らないだろう」

少女「…うん、それいつも思ってた。中の玉が入ってないの?」

神主「そう。これは、音無しの鈴。神様がまだ人と仲の良かった昔は、ちゃんと音が鳴ったんだ」

少女「そうなの?」

神主「ああ。神社の巫女で一番株の古い女性は、これを髪に付けていた。その音には、神様を癒す効果があったんだ」

巫女「大層美しい音色だったそうよ。小さいけど、心が洗い流されるようだったんですって」

神主「けど、君も知っているだろう。ある事件で…神様は山に身を隠し、鈴はいきなり鳴らなくなった」

神主「音を鳴らす要となる神聖な玉を、神様が抜いてしまったんだ」

少女「…知らなかった」

少女「でも、どうして音が鳴らなくなった今もつけているの?」

神主「それは、そうだな。…まあ慣習と、これ以上神様のお怒りに触れないように、かな」

神主「そう、怒りだ。ここから本題の神様の話に入っていく。いいかい?」

少女「うん」

神主「私達の村の神様は、名前こそ伝えられていないが大きな力を持った神様だ」

神主「深い山の人目につかない社に住み、元は人間との交わりも多かったそうだよ」

神主「神様のご加護のお陰で、村は豊かだった。農耕で栄えていたみたいだね」

少女「…今は違うね」

神主「そう。今は違う。村人が神様にひどい無礼を働いたせいで、神様はお怒りになった」

神主「村は大きな被害を受けた。この土地を捨ててどこかに流れようとする考えさえあった」

神主「これがだいたい、今から数百年前のお話なんだ」

少女「ふぅん…正確な年は分からないの?」

神主「呪いは書物にまで及んだんだ。神様に関する記録はほとんど火災でなくなった。人々は災いを恐れ、伝承を慎んだ」

神主「だから伝えられている話は、これだけなんだ。神様を敬え、失礼をしてはいけない。気を損ねたら、災いがおこる」

少女「…」

神主「神社と巫女は、いわば神様のご機嫌を損ねないようお世話をする役目を持ってるんだ」

少女「そうなんだ…」

神主「それと、もう一つ。大事な話がある」

少女「う、うん」

神主「…生贄の話だ」

巫女「…」

少女「い、いけにえ?!」

神主「ああ。これはきちんと伝えられている話なんだけれど」

神主「私の5代目前の神主の時期に、神様が生贄を要求してきたらしいんだ」

少女「…」

神主「村が小康を保ち、気が緩んでいたのを見咎めたのかもしれない。贄は、神社の巫女だった」

少女「え、えっ…」

神主「生贄をもらった途端、村は漁業で栄えるようになった」

神主「未だに意図は分からない。彼女がどこへ行ったのかも…。けど、そういうことがあった」

少女「…」

巫女「固まってる」

神主「ああ、でも。ちゃんと気をひきしめていればきっと問題はないよ」

少女「こ、怖くなってきた」

神主「大丈夫。君なら立派な巫女になれるさ」

巫女「私ができる限りあなたに巫女としての作法を教えるわ」

神主「勿論私もね。君は頭の良い子だから、すぐ覚えて慣れるよ」

少女「そ、そうだといいけど」

神主「さ、じゃあ明日から神社においで。仕事はいっぱいある」

少女「…はい」コク

巫女「一緒に頑張りましょうね。お祭りも近いんだし」

少女「あ、そうだった…。うう。できるかなあ」

神主「自信を持って!ね」

少女「は、はい…」

……


少女「ってわけで、明日から巫女修行なんだって」モグモグ

祖母「そう。引き受けてくれたのね」

少女「うん。…まあ、しゃあないし」モグモグ

少女「ん。おかわり!」

祖母「巫女はそんなにご飯をがっつきません。だめ」

少女「…断ればよかった…」

……


祖母「…うんうん、髪をきちんと伸ばしていたのが幸いだったわね。見栄えがいいわ」

巫女「少女ちゃんの髪は綺麗ですね。何も特別なことはしてないのに」

少女「…あー、…くすぐったい」

巫女「もう少し我慢。はい、目をつむって」

少女「ふふ、なに、これ。あはは」

巫女「動いたらだめよ。紅も取れるから、喋らないで」

少女「う…」ジッ

祖母「はい、できましたよ。…うん。様になっているじゃない」

少女「…そうかな」クル

巫女「あら。もとから可愛いお顔が、もっと美人さんになったわ」

少女「…」カァ

少女「ぜ、全然。そんなこと、ないよ」

巫女「ふふ。これで所作を身に着けたら、きっと近年で一番の巫女さんになるわ」

少女「…」モジ

祖母「それじゃあ、しっかりね。粗相するんじゃないよ」

少女「は、はい。いってきます」ペコ

巫女「お預かりしますわね」

少女「…歩きにくい。髪の毛も、なんか違和感がすごい」モゾ

巫女「これから毎日、こうやって結うの。服も巫女のものを着るのよ」

少女「んー…。走り回れないのが残念」

巫女「少女ちゃんらしいわ」

「…おーい!」

少女「!」ビク

巫女「あら、少年君」

少年「はぁ、はぁ…。おはよう、巫女さん」ペコ

少女「…」ササッ

巫女「ど、どうして私の陰に隠れるのかしら」

少年「…お、お前。今日から巫女修行なんだろ」

少女「…うん」

少年「…」

少年「ま、あ。一緒に仕事できないのは寂しいけどよ。上手くやれよ」

少女「…分かってるよ」

少年「…おい、何で隠れる」

少女「…」ササ

巫女「いいじゃない、少女ちゃん。恥ずかしがらずに見せてあげれば」

少女「だって少年、絶対からかうもん」

少年「いいじゃねーか、減るもんじゃ無し」ズイ

少女「う、うわ。やめて。来ないで」

少年「…」

少女「う…」

少年「…あ…。え、っと」

少年「……」

少女「な、何よ」

少年「馬子にも衣装って、このことなんだな」

少女「ほら!!やっぱり!ほらぁ!!」

巫女「ま、まあまあ」

少女「も、もう知らない!こっちだって恥ずかしいのに!馬鹿!」

巫女「少女ちゃん、ちょっと。何処行くの」

少女「さ、先に行ってる!ばいばい!」スタスタ

少年「…」

巫女「もう。素直じゃないのね」

少年「な、何が。…別に、俺は」

カララ

巫女「神主さん、少女ちゃんをお連れしましたよ」

神主「おお、待ってました」

少女「…」

神主「…」パチクリ

神主「…いやあ、女の子って変わるもんですね。すごいなー」

少女「神主さんまで!?」

神主「あ、ごめんごめん」

少女「くぅ…」

巫女「神主さん。冗談はよして、巫女の儀式をしてください」

神主「ああ、分かった。少女ちゃん、そこに座って」

少女「はい」

神主「今から正式に新しい巫女の儀式を執り行います。いいですね」

少女「はい」

……


神主「……。それでは、旧い巫女から鈴を受け取り、髪につけなさい」

巫女「どうぞ、少女ちゃん」

少女「…」コロ

少女「こう、ですか?」

巫女「うん。完璧よ」ニコ

神主「それでは、神様の祠にお神酒を持ってご挨拶しに行こう」

少女(終わってなかったんだ…。足痺れちゃった)

少女「神主さん」

神主「うん?」

少女「神様の祠、ってどこにあるんですか?」

神主「ああ、巫女、神主、村長以外は立ち入り禁止の聖域にあるんだ」

少女「せいいき…うわっ」ガッ

巫女「危ない。お神酒、零しちゃだめよ」

少女「やっぱこの服、動きづらい…」

神主「気をつけてね。苔で滑るから」

少女「は、はーい…」ヨロ


神主「…ついた。ここだ」

少女「うわ、…すごい。大きな杉…」

神主「ここの祠は、もとは神様の住む場所へと繋がっていたそうだよ」

神主「さ、祠までは君一人でお神酒を運ぶんだ。振り返らず、まっすぐに行くんだよ」

巫女「祠にお神酒を置いたら、お辞儀をして戻ってくるのよ」

少女「分かった。…行ってきます」ザリ

少女「…」ソォ

少女(祠は…杉の木を大きく回って、裏の窪みにあるんだよね)

少女(零さないように、そっと行こう…)

少女「…」ジリジリ

少女(うー、なんで杯に注いだ状態で運ぶんだろう。不便なのに)

…ザワ

少女「…」

少女(雰囲気が、…違う)

少女(なんだろう。凄く綺麗で、空気も澄んでるところなのに)

少女(…音だ。音が、全然ないんだ。生き物がいる気配すらない)

少女(…ここが、聖域。神様のいらっしゃる、場所なんだ)

少女「…」ザリ

少女(…神様は、私の事を今見ているんだろうか)

少女(…緊張する)

…ほら

…ん。ああ

…いるね

…ああ、いる

…何年ぶりだろうか

……5年、ではないかな

…へえ。もうそんなに経ったかい

…ああ

…なんだか、活発そうな子だね

……。

…そう嫌そうな顔をするなよ。どうだい、あの子は

…知らん

…ふうん。…そうだ、少し脅かしてみようか

…やめておけ

…面白そうだ。な、少しだけ

…私はやらない

…そう?じゃあ、僕が行く

…勝手にしなよ

少女「…ん」ピタ

少女「あれが、祠、かな?」

少女(えーっと、台の上に置けばいいんだよね。よし)

コト

少女「…」

少女(そんで、お辞儀、だっけ)ペコ

少女(…私が新しい巫女になりました、少女です。よろしくお願いします)

少女(…)



少女(よし。これで…)スッ




「…ん、なんだ。案外小柄なんだね」


少女「…」


「こんにちは、巫女」



少女「」

少女「…き」

「おっ」

少女「きゃぁあぁああああああああああっ!!」ドサ

…ガシャン!

「あーあー、酒が」

少女「ひ、っ…!」

「…うふふ、白のやつ怒るぞ。しーらね」

少女「な、だ、れ…」

…じょ、…少女…?

少女「!みこ、さ…」バッ

どこにいるの…しょう、じょ…

少女「巫女さん、こ、ここです!変なのが、祠に…!」

少女「こ、ここにっ…!」バッ





少女「…え…?」


少女「いな、…い…?」

少女「…っ、な、なんで。どうして…」

少女「…」

少女「…っ」ゾワ

少女「…っ、お姉ちゃぁあん!神主さぁああん!」ダッ

…じょ。  …返事を …

少女「ここです!私は、ここ…!」



少女「え、…えっ…?」ピタ

少女「なに。これ…」

少女(…何で、鳥居が。さっきまで、こんなの無かった、のに)

少女「…っ」バッ

少女「…!」

少女「……え」



少女(杉が…無い…?)

少女「…な、に」

少女「…ここ、何処…?」

…生贄に出された巫女がどうなったか、知りたいのかい?

巫女はね、花嫁が着る綺麗な白無垢に身を包んでね

輿に乗せられて、山の奥にまで運ばれて

杉の木の祠に、置き去りにされたそうだよ


輿を担いだ男が、帰りにそっと振り返ってみると

今さっき置いた巫女は、いなくなっていたそうだよ

そう、まるで、煙のように

いなくなっていたそうだよ

少年「…」

老人「おう、少女がいないと仕事も手につかんか」

少年「そんなんじゃないよ!やってるだろ!?」

老人「そうかねー。手を止めてはぼんやりしてるようだが」

少年「ぐ。…いや、そんなことは」

老人「綺麗だったのー、少女の奴は。まるでどこぞのお姫様みたいだった」

少年「…ふ、ふん」

老人「まあ、会えなくなるわけじゃないのでの。今までどおり仲良くやればいいさ」

老人「さ、そろそろお昼にするぞ」

少年「ん。待って、今網を片付け…」

ザワ

少年「る…」

少年「…」

少年「…」バッ

老人「うん?どうかしたか?」

少年「……」




少年「…少、女…?」

老人「ん?少女?どこじゃ?」

少年「…違う。なんか、今」

老人「少女なら今、神様にお神酒を捧げている最中だと思うが…。ここにはおらんぞ」

老人「まさか恋しくて幻でも見たのか。あっはっは」

少年「そうじゃない!…なんか、胸がむかむかした。嫌な気分が、する」

老人「少年よぉ。それは俗に言う…」

「村長ーーーっ!!」

老人「ん。おお、網本。どうかしたか、血相変えて」

網本「はぁ、はぁ…。大変だ。少女が…少女ちゃんが…」

少年「…!」

網本「…消えた…!」

老人「ふぁ!!?」

少年「ど、どういうこと!?」

網本「分かんねぇんだ、それが!聖域の祠に行ったっきり、いなくなっちまったそうだ!」

老人「ま、待て待てい。あの子のことじゃ、ふざけて遊んで…」

網本「な訳ないでしょう!神主さんと家の娘が血眼で捜してるのに、どこにもいねえんだ!」

網本「…そんで、これが。祠の前に…」

老人「…!音無しの、鈴…」

少年「な、んで。これだけ落ちてるんだよ…」

網本「分からん。けど、…もしかしたら、あの子は」

老人「…」

網本「村長、まさかあの子は」

老人「村中の男を集めろ!今すぐにだ!女と子どもは家から出すな!」

網本「はい!」

老人「少年、お前も男どもに声をかけて来い!全員を神社に集めるんじゃ!」

少年「わ、分かった」

老人「むぅ…」

少年「なあ、村長…これって…」

老人「…今は。今はなんとも言えぬ。しかし」

老人「…ああ、神よ。…どうか、…どうか穏便に…」

少年「…」

少女「…」ザリ

少女(…ち、ちょっと待ってよ。何で?)

少女「…おねえちゃん…。神主さん…っ」



少女「…」ギュ

少女(まさか、これ)

少女「……」ブンブン

少女(き、きっと夢中で走ってきたから…。道を外れてしまったんだ。きっと、そうだ)

少女(…山を降りれば、とりあえず村のどこかには着く、よね)

少女「…」スタスタ

少女(…うん。…大丈夫、落ち着いて。…大丈夫)

少女(…)

カツ

少女「…いや、絶対おかしいよ!階段なんてありっこないもん!」ヘタ

少女「何ここ!もうやだぁあ!帰りたいよぉ!」



「んー、ちょっと無理かもしれないね」

少女「…ひぃ!?」ズザッ

「やあ」

少女「な、な。あんた、何っ…」

少女(…さっき祠の上に乗ってた、変な奴だ…!)

少女(…子ども?…変な着物。昔の人みたい。…それに何で、鬼のお面なんか被ってるんだろう)

鬼面「ふんふん」ジロジロ

少女「あ、あなた。…村の子ども?あのね、あそこは聖域で…」

少女「い、いや。いいや。この際。…ね、道に迷ったみたいなの。ここ、どこ?」

鬼面「…うんー?君、鈴はどうしたのさ」

少女「…え?」

鬼面「お酒は零すわ鈴はなくすわ、本当に巫女なの?呆れるなあ」

少女「あ、ないっ。なんでっ」バッ

鬼面「コケたときに落としたのだろ。愚図だなあ」

少女「…っ。探しに、行かなきゃ」

鬼面「ほおー。でも、無理だね」

少女「あなたが道を教えてくれたら、帰れるの。お願い」

鬼面「道も何もないさ。今君がいるのは、元の場所と違うんだから」


少女「…うん?」

少女「…ごめん、何?意味が分からないんだけど」

鬼面「杉の木、なくなってたろ」

少女「…」コク

鬼面「鳥居も、見たことないのが建ってたろ」

少女「……」コク

鬼面「こんな階段、周りにあったか?」

少女「………」ブンブン

鬼面「そういうことだ」

少女「…」

少女「ああ」ポン

少女「分かった。ここ、隣の村か。そうだよ、だって家の村には子どもいないもん」

鬼面「…」

少女「あ、あのね。私山のふもとの村から来たんだけど。帰り道を」

鬼面「ここは、神の住む場所なのさ」

少女「…」

鬼面「分かるか?早熟な巫女さん」

少女「…ええー、と」




少女「…え?」

鬼面「君は神隠しにあったんだよ。白の勘に触っちまった」

少女「…かみかくし?」

鬼面「そうだ。白は礼儀のない女が特に嫌いだからなあ。残念だね」

少女「…」

鬼面「…」

少女「じゃあ、…あなたは」

鬼面「神」

少女「…」

鬼面「…」

少女「ご、ごめんなさいっ!」ズザッ

鬼面「おっ」

少女「わ、私、私まさか失礼なことをしてしまったんでしょうか!?どうか、お怒りを鎮めてください!」

鬼面「いや、僕に言われてもな」

少女「お願いです、どうか村だけは!村に呪いはかけないでください!殺すなら私だけに!」

鬼面「待って、待ってごめん。嘘なんだ、顔あげてくれ」

少女「お気に障ったのなら私が命をかけて償いますから!どうか!」

鬼面「ひぃ…参ったな」

鬼面「巫女。巫女さーん、ちょっと黙っておくれよ」

少女「はい!……」

鬼面「僕ちょっと君に嘘をついてしまったんだ。誤解がある」

少女「…」ガタガタ

鬼面「そんなに怖がらないで。いいかい、まず、僕は神様だけど、ここの主神じゃあないんだ」

少女「……」ガタガタ

鬼面「君がこっちの世界に来てしまったのは、んーと、僕の手違いなんだよ。実は」ポリ

少女「え?」

鬼面「いやぁ、新入りの巫女が入ったからちょこっとからかってやろうと思ったのさ」

鬼面「そしたら君、いきなりものすごく暴れだすんだもの」

鬼面「驚いて、急いでこっちの世界に戻ってきたんだ。そしたら、君も巻き込んじゃった」

少女「…」

鬼面「けど謝りはしないよ。お酒を零したそっちも悪いし。あれ、すごく力のあるものだから」

鬼面「多分、白…主神はこのことを知らないよ。怒ってもないはずだ」

少女「…」

少女「え、…じゃあ」

鬼面「村は大丈夫なはずさ」

少女「…よか、った…」ヘナ

少女「…」

少女「…じゃあ帰っても、いいですか」

鬼面「君…なんか変わってるなあ。本当に巫女?」

少女「はい。あ、でも…。まだ何も教えてもらってないです」

鬼面「いや、そういう意味じゃあなくて。…物怖じしない子だな」

鬼面「普通恐怖で言葉なんか交わせないでしょ。…うーん、変り種すぎる」ブツブツ

少女「…?」

少女「…えっと、大変失礼いたしました。これからも精進して神事を執り行っていきます」ペコ

少女「…ですから」

鬼面「あ、無理。僕は無理。返せない」

少女「え?」

鬼面「僕じゃ、人間を送り返せないんだよ」

少女「…」

鬼面「自分が行き来するのは簡単なんだけれどね」

少女「…」

鬼面「うわ、…そんな顔をしないでよ。参ったな」

少女「…私」

鬼面「分かってるってば、一人だけの巫女だもの。返さなくちゃまずいもんなあ」

鬼面「おいで。白のところへ行こう。機嫌がよければ返してくれるよ。…多分」

少女「え、…多分?」

鬼面「いいから、立て!さっさとしろ!」

少女「は、はいっ」スク

鬼面「ついといで」ピョン

スタ

少女「…!」

鬼面「ほら、早く早く」

少女(…今、一瞬消えたよね?…あんな下まで、どうやって)

鬼面「巫ー女ぉー!」

少女「は、はいっ。ただいまっ」ダッ

……


少女「…あ、の」

鬼面「うんー?」

少女「神様。…と、お呼びしてもいいんでしょうか」

鬼面「ああ、鬼でいいよ。ほら、お面が赤鬼だろ。気に入ってるんだ、これ」クル

少女「おに!?い、いや。神様をそんな」

鬼面「…いや、神様って言葉は白に使うべきだ。僕はただの古物なだけだし」

少女「…け、ど」

鬼面「なんだい。…君は巫女のくせに神の言うことが聞けないの」

少女「わ、分かりました。…ええと、鬼…様?」

鬼面「あはは、なんだいそりゃ。変なの」クスクス

少女「う…」

鬼面「君、やっぱ変だ。こんな巫女見たことない」

少女「そう、ですか…」

鬼面「まあ、彼女たちに直接会ったことも話したことも、ないけど」

少女(…そうだ。神様は、私達に怒ってるんだ。…にしても、なんでこんな友好的なの)

少女(本当に、ただの子どもみたいに見える、けど)

鬼面「…ん、そろそろ着くよ。ほら」

少女「…あ」

少女(…大きな家。網本さんや村長さんのよりずっと大きい)

鬼面「あー、うーんと、君、門で待っていてくれる?」

少女「は、はい」

鬼面「僕が一人で話をつけてくるから。絶対入らないでよ。いいね?」

少女「…」コクコク

鬼面「屋敷の中を覗くのもだめ。縁側でお昼ねしてるかもしんないし」

少女「…(昼寝?)」コクコク

鬼面「じゃ、行ってくる」ピョン

フゥ

少女「!え、また消え…」

少女「…」

少女(あ、頭が痛い。帰りたい。ついでに巫女もやめてしまいたい)ブルッ

少女「…」

少女「…」

少女(…に、しても)

少女(なんか、普通の村、ってかんじだ)

少女(…家はこの一軒だけで、人っ子一人いないこと以外は、何も変わらない)

少女「…」

少女(ここに、神様が?もっとこう、きらきらした雰囲気の所かと思ってた)

少女(…今更だけど、信じがたい気がしてきた)

少女「…遅いな」ボソ

少女(…心細い。怖い。…早く帰りたい…)


「…誰」

少女「ひっ!!!?」ビクッッ

「誰だ、お前は。…人か?」

少女(う、後ろ、から。…振り返れない…)バクバク

「…どうやって。まさか」

少女(…っ)ギュッ

鬼面「あれえ、おかしいな。どうやら白、留守にしてるみたいだよ」

少女(!お、鬼様…)

鬼面「よいしょ、っと」フワ

鬼面「やあやあ巫女。白のやつ、どこか行って…」

少女「……」

「おい、赤」

鬼面「…し、しろ…」ジリ

「これはどういうことだ?」

鬼面「あ、あはは。えーと、その。ね。…ちょっとした手違いで」

少女「…」

「手違い?」

鬼面「そ、そうなんだ!あのね、僕の帰りに巻き込まれちゃったんだよ、この子!」

鬼面「決して!決して勝手に入れたわけじゃあないよ!」

「…」

少女「…」

鬼面「だ、だからさあ。お願い、許しておくれよ。わざとじゃないんだ」

「…」

「…村の人間が騒がしいと思ったら、そのせいか」

鬼面「えっ。ああ、神酒捧げの途中だったからかなあ。参ったよ」

「だからやめとけと言ったんだ」

鬼面「う。…ごめんってば。ヘマしたよ」

「おい、巫女」

少女「ひゃ、はいっ!!」ビクッ

「屋敷に入れ。振り向くな。喋るな」

少女「…」コクコク

鬼面「ちょっと、そんな言わなくてもいいじゃない。気絶しそうだよこの子」

「知るか」

鬼面「おお、可哀相に。おいで、こっちだよ」

少女「…」ジャリ

鬼面「草履は脱がなくていいから、ここに座りなよ」

「赤っ」

鬼面「あ、ごめん目を閉じて。白を見てはいけないよ」

少女「…」ギュッ

鬼面「どう、白。戻せる?」

「ああ」

鬼面「良かったね、すぐ戻れるよ」

少女「…っ」コクン

「いや、少し待て。鈴はどうした」

少女「…」ビク

「喋れ。鈴はどこだ」

少女「わ、かり…ません。どこかに落としたかも、しれないんです」

「落とした?…あんな大事なものをか!」

鬼面「白ぉ!待って落ち着いて!駄目!」

少女「っ、申し訳、ありませんっ…」ビク

「巫女の風上にも置けない子どもだ。何故こんなのが…」

鬼面「まだ、まだ成り立てだから!怒らないであげてよ」

少女「…」

「…もういい。さっさと去ね。二度とここへは来るな」

少女「は、い…」

鬼面「厳しー…」

「…」

トン

少女「!」ビク

少女(肩に、…なにか、触れて…)




「…いたぞー!!!」

少女「…ん」

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