楽「なんか小野寺がデレデレになった」 (141)
一年くらい前に千棘がただデレデレになるだけのSSを書いた者です
・>>1はアニメ一期とゲームしか見てない
・ニセコイヨメイリの要素を含む
・キャラ崩壊あり
以上の事に注意して読んでください
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風呂
楽「──はぁ」
楽「今日もつっかれたわ」
楽「千棘にぶたれ、鶫に撃たれかけ」
楽「橘に追いかけられ、集のとばっちりを受けて宮本に殺されかけ」
楽「散々な一日だった・・・」
楽「小野寺といつもより多く話せたのが唯一の救いだな」
楽「ほんと・・・小野寺がいなかったら今頃精神崩壊してるかもしんねぇ」
楽「家に帰ってもむさくるしい男ばっかだしよ」
楽「参っちまうぜ」
楽「癒しが足りないんだよ、癒しが」
楽「小野寺はまぁ、申し分ない最高のセラピーだけどよ・・・」
楽「それ以上に凄まじいことが多過ぎてな・・・」
楽「欲を言うなら」
楽「小野寺が俺にデレデレになってくれたりしたら、最高なんだろうけどな」
楽「・・・まぁ、そんなのありえないか」
楽「叶わぬ願いだな」
バッシャーン
おたま「その願い、聞き届けたり〜」
楽「うおっ! おたま!?」
楽「どうしてここに!?」
おたま「ん? くだらんことじゃ」
おたま「人間がよく入っとる''おんせん''というものに一度入ってみたいと思うてのう」
おたま「それで今ここにおるのじゃよ」
楽「ここは俺ん家の風呂場だぞ? 温泉じゃねぇ」
おたま「何を言う! こんなに広い風呂場あるか!」
おたま「ここは温泉なんじゃろ?」
おたま「わらわを騙そうとしても無駄じゃぞ!」
楽「別に騙す気はねぇけど・・・」
楽(まぁ確かにホテルの温泉並みの広さだな)
楽「てか裸でいるな! 隠せ!」
おたま「どうしてじゃ、別に構わんじゃろに」
おたま「それに、お主だって裸ではないか」
楽「これは今急にお前が現れたからで・・・」
おたま「わらわはずっとおったぞ? 楽が気づいてないだけで 」
楽「え? そうなの?」
おたま「そうじゃ」
楽「だからって、裸でいいわけ」
おたま「うむ・・・どうしてそこまで裸でいることを恥じるのじゃ」
おたま「生物が在るべき本来の姿じゃろ」
おたま「別にわらわは、楽の裸を見ようと、わらわの裸が見られようと何とも思わんがの・・・」
楽「──まぁ、お前は狐だからな」
おたま「そんなことより、お主はあの小野寺とかいう女子のことが好きなのかの?」
楽「うわぁあ!? こっちくんな!」
おたま「どうしてじゃ!」
楽「せめてタオルを羽織れ! ほら、そこの使っていいから!」
おたま「むっ、そこまで怒鳴らなくても良いではないかぁ!」
おたま「しょうがない・・・そうすることにしようかの」
おたま「それで、どうなのじゃ?」
楽「いや、まぁ」
おたま「誤魔化そうとしても無駄じゃぞ? 楽の考えていることは大体分かるからの」
楽「じゃあ聞くんじゃねぇ」
おたま「いやいや、一応本人の口から聞いておこうと思うての」
楽「────好きだよ」
楽「好きだよ、小野寺のこと」
おたま「おー」
楽「なんだよ」
おたま「なんか、ぷろぽーずぽかったのう」
おたま「というか、楽ならあの女子落とせんこともないと思うけどの」
楽「・・・さぁな」
おたま「確認できたし、わらわはそろそろ上るとするかの」
楽「おう、そうか」
おたま「あ、こーひー牛乳? じゃったっけ」
おたま「あれを2本風呂上りに持ってきて欲しいのじゃが、よいか?」
楽「・・・あぁ、わかったよ」
おたま「じゃあの、楽〜」
楽「・・・勝手な奴だな」
楽「──」
楽「あいつなんか、願い聞き届けたとかなんとか言ってなかった?」
楽「気のせいか?」
楽「・・・まぁいいわ」
楽「結構あったまったし」
楽「そろそろ俺も上がるとするか」
バッシャーン
翌日
楽「・・・」
楽「こんなもんだな」
楽「できたぞー」
竜「おおおッッ!! お疲れ様っす坊っちゃんッ!!!」
竜「今日も美味そうですなぁ!!! さすがっスね!!!」
竜「おーいお前らァ!!メシだあーーッ!」
『うおぉおーーーーーっ!』
楽(──相変わらず騒がしいな)
学校廊下
楽「・・・」トコトコ
楽(今日もいつも通りの変わりない1日を過ごして)
楽(1日を終える)
楽(超自然的な存在を家に置いてるつっても、さして生活に影響はねぇし)
楽(まぁ、それでいいんだけどよ)
楽(現状維持が一番だよな──)
千棘「なにぼーっとしてるの? 行くわよ」
楽「ん? あぁ、ごめん」トコトコ
教室
楽「・・・」ガラガラ
集「おふたりさん! おはよう!」
楽「おはよ、集」
集「今日もおあついですなぁ〜」
楽「うるせぇ」
小咲「あ、おはよ! 一条くん!」
楽(小野寺!)
楽「おはよう、小野寺」
楽(今日も可愛いなぁ・・・)
小咲「・・・」
ギュッ
楽「・・・ん?」
小咲「一条くん・・・」
楽「え、ええええええええぇっ!?」
千棘「こっ、小咲ちゃん!?」
小咲「ふふふ、あったかいな」
楽「どどどどどどうしたんだよ小野寺!?」
楽「なんだ! 寝ぼけてんのか!?」
小咲「そんなのじゃないよ? ただ──ずーっとこうしてたいなって思って」
楽「・・・」キョロキョロ
楽「と、とりあえずみんな見てるから止めてくれ!!」
楽(嬉しいけど!)
小咲「うん・・・わかった」
楽「はぁ・・・はぁ・・・」
楽(なんだなんだ──一体何が起きたんだ)
千棘「」
マリー「」
楽「千棘!? 橘!?」
集「固まっちゃってるね」
鶫「小野寺様──一体どういうおつもりで」
鶫「あろうことか、彼女であるお嬢の前で一条楽に抱き着くとは・・・」
小咲「朝の挨拶をしただけだよ?」
鶫「──え? あぁ・・・そうなのですか?」
楽(予想外の出来事に鶫も怒るにも怒りきれないようだな・・・)
楽(相手が相手だし)
楽(てか本当にどうしちまったんだ小野寺!?)
昼休み
集「なぁなぁ楽〜」
楽「・・・んだよ」
集「朝のアレはいったいどういうことなんだ?」コソコソ
楽「分かんねぇよ・・・」
集「浮気か?」
楽「俺は何もしてないっつーの・・・あっちから勝手に」
集「桐崎さんは相当なショックを受けてるようだけど」
千棘「」シュー
集「灰のように燃え尽きてる」
楽「小野寺の予想外の行動にショックを受けてんのかな」
集「・・・鈍いな、楽」
楽「へ?」
集「小咲ちゃんのアレも結構なものだったけど、千棘ちゃんが灰になったのには別の原因がある!」
集「具体的に言うとお前に原因がある!!」
楽「はぁ!? なんで俺なんだよ」
集「・・・ま、分かんないか」
楽「気になるじゃねぇか」
橘「私は諦めませんわ!」ドン!
楽「橘!?」
橘「まさか小野寺さんがあんな大胆な行動を起こすだなんて思ってもいなかったですが・・・」
橘「ライバルが一人だろうと二人だろうと同じことです!!」
橘「私は楽様を奪い取ってみせますわ!!」
集「・・・ん?」
トコトコ
小咲「ねぇねぇ、一条くん」
楽「──ん?」
小咲「二人で一緒にお弁当食べない?」ニコッ
楽「!!!」ブッ
橘「!!!」
小咲「だめ、かな?」
楽「い、いいいや!いいぜ!」
楽「全然OKだ!」
小咲「ありがとう!」
集「──楽、頑張ってこいよ」ニヤニヤ
集「グットラック!!」
楽「な、なにをだよ・・・」
小咲「じゃ、行こ?」
楽「お、おう」
タッタッタッ...
橘「なかなかやりますわね・・・小野寺さん」
屋上
楽「ここなら人目につかなさそうだし・・・大丈夫だな」
小咲「見られたらだめなの?」
楽「いやだってよ・・・万が一見られちまったらヘンな噂が広まっちまうだろ」
小咲「ふふ、そっか」ニコッ
小咲「よいしょ、じゃあこの辺に座ろっか」
楽「おう」
小咲「じゃーん」
小咲「ふふっ・・・今日はお弁当作ってみたんだ」
楽「おお・・・」
楽(相変わらず仕上げはうまいな・・・見た目は一流だ)
小咲「ど、どうかな?」
楽「うん、見た目すげー良いしバランスも良さそう・・・俺はいいと思うぞ」
小咲「わ、ありがとう・・・!」
小咲「一条君のお弁当はあるのかな?」
楽「おう、もちろんだ」
楽「ほ、ほら」
小咲「!」
小咲「やっぱり一条君のお弁当はすごいね、惚れ惚れしちゃうよ」
楽「惚れ惚れしちゃう!?」
小咲「へ? ど、どうしたの?」
楽「い、いや、なんでも・・・」
楽(小野寺の口からそんな言葉が出てくるとは・・・)
小咲「大丈夫?」
楽「あぁ」
今日はここまでにします
小咲「いただきます」
楽「いただきます」
小咲「・・・」モグモグ
楽「・・・」モグモグ
小咲「・・・ひゃっ!?」
楽「──小野寺?」
小咲「うぅ・・・うっ・・・」
楽「どうしたんだ! 大丈夫か!」
小咲「ま・・・まじゅい・・・」プルプル
楽「あー・・・」
楽(なるほど)
小咲「おかしいな・・・美味しく作ったつもりなのに」
楽「誰にもそういう失敗はあるからな」
楽「料理に失敗はつきものだ」
小咲「うん、そうだよね」
小咲「頑張ってみる!」ハリキリ
小咲「あ──食べるものなくなっちゃった」
楽「・・・だな」
楽(は?『だな』じゃねぇ! )
楽(ここは男として、俺の弁当を小野寺にあげる場面だろーが!!)
楽「そ、そうだ! 俺の弁当でよかったら別に食っても構わないぜ?」
小咲「え!」
小咲「でも、それだと一条君のお腹がだいぶ空いちゃうよ」
楽「心配すんな!」
楽「こう見えて少食だからな!」
小咲「そう・・・? 無理してない?」
楽「ああ! 全然!」
楽(・・・小野寺の笑顔だけでお腹いっぱいだからな!)
楽(・・・実際は物凄く空腹だけど)
小咲「じゃ、お言葉に甘えて頂いちゃおうかな」
楽「おう!」
楽「自由に取ってっていいぜ」
小咲「・・・ふぇ?」
楽「・・・ん?」
楽(なんだよ今の声、くっそ可愛いんだが!)
楽(って、なんか様子がおかしいぞ)
楽「どうした?」
楽「自由に食っていいって──」
小咲「一条君が食べさせてくれるんだよね?」
楽「へぇあ!?」
楽「あの、『あーん』ってやつか!?」
小咲「・・・」コクリ
楽(まじかよ!!)
楽(何だかんだでいつもの小野寺に軌道修正されつつあるとか思ってたけど)
楽(全然朝のノリのままじゃねぇか!)
楽(やっぱおかしいぞ今日!!)
楽「・・・」
楽(だが・・・)
楽(なんだ。 とりあえず今は小野寺の要望に応えたほうがいいんじゃないか?)
楽(そうだ、ここで断るのは男じゃねぇ!)
楽(小野寺もその気なんだ──)
楽「──わかった」
楽(どうせならこん中で一番の自信作を食べさせてやろう)
楽(・・・これだな)
楽(オーソドックスに、卵焼き)
楽(弁当の定番ともいえるメニューだが、そのシンプルさ故に、奥が深い!)
楽(作り手の性格が顕著に現れる一品・・・!)
楽(卵焼き一つ見れば、どんなやつが作ったかが一目瞭然ってわけ──)
小咲「・・・んー」
楽「はっ」
楽(しまった、小野寺を待たせちまった)
楽「じゃ、いくぞ」
楽「・・・」チラチラ
楽(誰も見てないよな)
楽「はい、あ、あーん・・・」
小咲「あーん・・・」
楽(うわ・・・すげぇ)
楽(こんなに近くに、小野寺の顔が)
小咲「・・・」パクリ
小咲「・・・」モグモグ
楽「ど、どうだ?」
小咲「うん! すごく美味しい!」
楽「そうか、よかった」
小咲「こんなに絶妙なとろけ方してる卵焼き初めてだよ! すごいね!」キラキラ
楽「ま、まぁな・・・」
楽(すっげぇ恥ずかしい)
楽(でも、それ以上にむちゃくちゃ嬉しいな)
小咲「一条君に食べさせてもらったからかな、より美味しく感じるよ・・・」
楽「──」ブッ
楽(結構ぶち込んでくるなこの小野寺・・・)
小咲「じゃあ、今度は私の番ね」
小咲「一条君、お口あけて?」
楽「!?」
楽(逆──つまり、俺が小野寺にあーんしてもらうってことかぁ!?)
楽(──なんだろう、すごく嬉しいんだけど、素直に喜べない自分がいる・・・)
楽「・・・」
楽(やべ・・・)
楽(多分今すげぇにやけた顔になってる)
楽「・・・」
小咲「はい」
楽(自分の作ったやつを人に食わせてもらうって、なんか複雑な気持になるな・・・)
楽(小野寺の弁当を食べるわけにもいかねぇけど)
小咲「あーん、ってして?」
楽「・・・」
楽「あーん・・・」
楽(これしてもらうほうが恥ずかしいな・・・)
楽「・・・」パクリ
楽「・・・」モグモグ
小咲「どう?」
楽「『どう?』ってまあ・・・俺の味だな」
小咲「ふふっ、一条君って可愛いね」
楽「か、か、かわいいだあ!?」
小咲「顔が真っ赤っかだよ?」
楽「ん、んなこたぁねぇよ!」
楽「ていうか、お、小野寺!」
楽「お前だって顔真っ赤じゃねぇかよ」
小咲「!!」
小咲「う、うそ・・・!」ペタペタ
楽(顔を触って確認しなくても・・・)
小咲「・・・っ///」
楽「・・・///」
楽「確認なんだけどよ」
小咲「ん?」
楽「そ、その」
楽「俺と小野寺って、つ、付き合ってるわけじゃない、よな?」
楽(なに聞いてんだ俺!!)
小咲「──うん、お友達だよ?」
楽「あ・・・おぉ、そうだよな!」
楽「変なこと聞いちまったな! すまん!」
小咲「ううん、全然いいよ」
楽「・・・でもよ、朝のあれは一体なんだったんだ?」
小咲「あれ?」
楽「ほ、ほら、俺に抱きついてきたじゃねぇか」
小咲「あぁ、あれかあ」
小咲「だって、1日1回はやっとこないと落ち着かないんだもん・・・」
楽「!? そ・・・そうなのか」
小咲「一条君って、あったかくて、なんだか安心しちゃって・・・」
小咲「つい・・・」
小咲「ごめんね、迷惑だったらやめるよ」
楽「い、いやあ、まぁ」
楽「別に迷惑ってことはねぇけど・・・」
小咲「いいの?」
楽「あぁ」
楽「ただ、みんなの前でやるのは控えてほしいな」
小咲「うん──ありがとう」
ギュッ
楽「うおっ!」
小咲「誰も見てないし──ね?」
小咲「ふふ・・・やっぱり落ち着くなあ」
楽「──」
小咲「ねぇ、一条君」
楽「な、なんだ?」
小咲「昼休み終わるまで、こうしててもいいかな?」
楽「──おう」
放課後
るり「小咲・・・」
小咲「ん? なにるりちゃん」
るり「──あんた本気出せばいけるじゃない!」
小咲「え?」
るり「何があったかは分からないけど、この調子よ!」
るり「どうにか頑張るの!」
小咲「・・・?」
小咲「よく分からないけど、ありがとう」
千棘「ダーリン、帰るわよ」
楽「おう」
翌日
楽「一日経ったことだし・・・小野寺も元に戻ってるだろう」
楽「ちょっと不調だったんだよな、あれは」
ガラガラ
小咲「あ! 一条君だ!」
楽「ん?」
楽「おはよう、おので──」
小咲「いっちじょうくーん♪」
ギュッ
楽「っ!?」
小咲「おはよう!」
小咲「会いたかった!」
小咲「うん・・・今日もいつもどおりの一条君!」
小咲「・・・っはあ・・・いい匂い」
楽「!!!?!!!?!?!?」
楽(キャラ崩壊!?)
楽(てか昨日より悪化してんじゃねぇか!!)
楽(なんだこれ! もはや誰だよ!)
小咲「スリスリ・・・」
楽「ちょ、一旦落ち着こうぜ小野寺!」
小咲「うん・・・今すごく落ち着いてるよ・・・スリスリ・・・」
楽「えぇ・・・!?」
千棘「」バタンキュー
橘「」バタンキュー
鶫「」バタンキュー
楽「全滅!?」
楽(無理もない・・・イメージが違いすぎる)
るり「こ、小咲・・・あんた! やったわね・・・!」ウルウル
楽(──宮本はなんで泣いてんだ)
楽「とりあえず今は、その・・・離してくれ」
小咲「うん・・・仕方ないなあ」
小咲「おあずけかあ・・・」
楽「・・・」
────
小咲「ねぇ一条君」
小咲「一条君って女の子のどこが好きなの?」
小咲「顔?」
小咲「声?」
小咲「性格?」
小咲「それとも・・・」
小咲「胸?」
小咲「私一条君の為だったらなんだってどこだって変えてみせるよ」
小咲「頭がいい子が好きなら必死に勉強するし、胸が大きい子が好きならもっと頑張るし、泳ぎのうまい子が好きなら何を犠牲にしたって泳げるようにするよ?」
────
小咲「ねぇ一条君」
小咲「私実はね」
小咲「毎夜毎夜一条君のことを考えながら寝るんだ〜」
小咲「一条君とその日話したこと、言ってくれたこと、笑ってくれたこと」
小咲「なにもかもを思い出して、明日も一条君と話せたらいいなって思いながらね!」
小咲「それで、ちょっといやらしい気持ちにもなっちゃうんだ」
小咲「ふふ・・・」
────
楽(なんだなんだなんだなんだ!!!!)
楽(なんなんだ!!!)
楽(あんなの俺の知ってる小野寺じゃねぇ!)
楽(恥じらいもなにもない、あの小野寺は俺の好きな小野寺じゃない!)
楽(くそっ・・・)
楽(こんなことになるなんて、絶対あいつのせいだ!)
────
ピッシャーン
楽「おい! おたま!」
おたま「!?」
おたま「ど、どうした楽!」
おたま「滝のような汗じゃぞ?」
楽「どうしたじゃねぇ・・・」
楽「小野寺をあんなにしたのはお前か!!?」
おたま「小野寺・・・あの女子か」
楽「お前なのか!?」
────
楽「なに?」
楽「俺の願い?」
おたま「そうじゃよ、楽が『叶わぬ願い』などと言うもんじゃから」
おたま「折角じゃから、いなりのお礼に叶えてやろうと思うての」
おたま「『小野寺にデレデレになってほしい』という願いをの」
おたま「『その願い、聞き届けたり〜』ってちゃんと言ったんじゃが・・・聞こえとらんかったのか?」
楽「・・・そうだったのか・・・」
楽「にしても、おかしくなりすぎだろうが」
おたま「うむ、少しおーばーらんしまった」
楽「おーばーらんって・・・」
楽「どうしてくれんだよ、これ」
楽「小野寺はずっとあのままなのか」
おたま「放っておけばあのままじゃな」
おたま「むしろ、日に日にでれでれ度合は増してくと思うぞ」
楽「増してく?──つまり更に小野寺が小野寺らしくなくなっていくってことか・・・?」
楽「そんなの俺の願いじゃねぇ」
おたま「そうかの? 『小野寺にでれでれされたい』という楽の願い通りになっていると思うんじゃがのう」
楽「そうじゃねぇんだ・・・」
楽「あれは小野寺じゃない」
おたま「──どういうことじゃ?」
おたま「あの女子は確かに『小野寺小咲』として存在しておる」
おたま「なのに小野寺じゃないとな・・・?」
楽「・・・お前には分かんねぇだろうけど」
楽「あんな欲望丸出しの羞恥心の欠片のない小野寺なんて、それはもう小野寺じゃない」
楽「小野寺の体を借りた何かだ」
おたま「なっ、そこまで言うか! ひっどいのう」
楽「あんなに積極的で、そのうえ俺のことをあんなに好きな小野寺がこの世界に存在するわけがねぇんだ」
楽「それに過激な発言の等々・・・」
楽「あからさまにニセモノなんだよ、あの小野寺は」
おたま「うむ、そうか」
おたま「にせもの・・・のう」
楽「なんだよ」
おたま「よく聞け、楽」
おたま「わらわは何か願いを成就させる時、その度に世界の一部を書き換えるのじゃが・・・」
おたま「今回の楽の願いは女子と楽との関係のことじゃから、あの女子を書き換えることにしたのじゃ」
おたま「となると、そやつが持つ考え方から、何から何まで願いが叶うように書き換えなくてはならん」
おたま「──が、あの女子は特殊じゃった」
おたま「書き換える必要が無かったのじゃよ」
おたま「あの女子の持っておる自制心を少し緩めてやるだけで、おっけーじゃった」
おたま「──あの女子の気持ちは、既に書き換えられていたに等しき状態にあったのじゃ」
おたま「楽の願いを叶えるにおいての条件を十分に満たしていた」
おたま「これがどういうことか分かるかの」
おたま「要するに、わらわがいじったのはあの女子の自制心であって、それ以外はいじっておらぬ」
おたま「女子が何と発言したのかは知らんが・・・」
おたま「それは女子が自らの意思で言おうと思って言ったことじゃ」
おたま「その発言は真じゃ」
おたま「普段、自制心に阻まれて到底伝えられない」
おたま「日頃からあの女子が抱いておる本当の気持ちじゃ」
楽「・・・じゃあ・・・」
楽「俺のためだったら何だってどこたって変えられる、とか」
楽「毎夜毎夜俺の事を考えてる、ってことも・・・」
楽「全て小野寺が本気で思ってることってことか・・・?」
おたま「その女子がそう言ったならそうなるの」
おたま「真のことじゃろう」
楽「・・・」
おたま「どうじゃ、これならニセモノとは呼べまい」
楽「・・・」
楽「──いや」
楽「自制心にしろなんにしろ、少しでもいじくっちまった時点でそいつはもう小野寺じゃない」
楽「もう、元の小野寺じゃねぇんだ」
おたま「どうしてじゃ?」
おたま「むしろ秘めていた欲求を全開放した今のほうが『本物』の小野寺小咲と呼べるのではないか?」
楽「──ちげぇ」
楽「無理やり妖力かなんかで自制心をこじ開けたりしちゃだめなんだよ」
楽「たとえ言いにくいことがあったとして、俺の知るところの小野寺はそれを口に出すことは出来ない」
楽「ましてや内に秘めている思いなんてもっと言えるわけが無い」
楽「俺はそういう小野寺が好きなんだよ」
楽「俺は正真正銘、あの本当の小野寺と一緒になりてぇんだ」
おたま「うむ・・・よう分からんのう」
楽「さっきも言ったが、今起きていることは俺の願いなんかじゃねぇ」
楽「──願いを取り消してくれ」
おたま「勝手に願っといて勝手なやつじゃ・・・」
楽「お前が勝手に聞き届けたんだろうが」
おたま「そもそも願いを取り消せるとでも思うておるのか?」
楽「えっ? 無理なのか?」
おたま「出来る」
楽「出来んのかよ」
おたま「まあ、出来んことはないといったところじゃが・・・」
おたま「・・・分かった」
おたま「願いを取り消すとしよう」
楽「頼むぜ」
おたま「そのためにはある程度の手順を踏まなければならないぞ?」
楽「構わねぇよ、なんでもしてやるさ」
おたま「うむ、覚悟ができとるようじゃな」
おたま「この願いを取り消す方法は一つしか存在しない・・・」
おたま「それは・・・」
おたま「''楽の小野寺小咲に対する正直な気持ちを告白する''じゃ!」
楽「告白・・・」
おたま「そうじゃよ」
おたま「おっと、告白と言ってもじゃな、正直な気持ちを伝えれば良いのじゃから、それが好きだろうが嫌いだろうが内容は関係ない」
おたま「要は本心であれば何ら問題はないのじゃ」
おたま「──これは楽に説明する必要は無かったかの」
楽「・・・なるほど」
おたま「ただそれだけじゃ、楽じゃろ?」
楽「・・・」
楽(単純に小野寺のことが好きな俺からすれば、ただのプロポーズってわけか)
楽(それも正直に・・・)
楽(嘘をつくつもりなんてねぇけど・・・自分の気持ちが正直なものなのかどうか・・・自信が持てねぇ部分もあって)
楽(それを言葉に出来るだろうか・・・)
おたま「ん?・・・なんじゃい、しらけた顔しよって」
おたま「これじゃ足らんのか!」
おたま「しょうがない、おぷしょんを追加するかの」
楽「え?」
楽「いや、ちょっとま──」
おたま「では、''告白の後に接吻をする''という条件を追加じゃ!」
楽「・・・」
楽「えぇ!?」
楽「ま、待て! それは無しにしろ!」
おたま「もう遅いわい」
おたま「わらわが口にした後ではどうにもできん」
楽「そんな簡単に条件追加できちゃうのか・・・」
楽「てか、告白ってだけでも緊張すんのにそっからキスとかハードすぎだろ!」
おたま「なんでもすると言ったのは楽じゃぞ?」
おたま「好きなんじゃろ? あの女子のことが」
おたま「その思いをためてないで、この際告白しちゃえばいいんじゃ」
楽「きついっての・・・」
楽「大体、告白が成功する確証なんてないし」
楽「小野寺が俺の事を好きかどうかなんて分かんないんだから」
楽「もし告白が失敗したらキスなんて
出来ないだろ?」
楽「そしたら願い取り消せずじまいで終わっちまう」
楽「それはまずい・・・」
おたま「──はぁ?」
おたま「・・・楽、それ本気か?」
おたま「本気で言ってるのか?」
楽「なにがだよ・・・」
おたま「あんなん、どっからどう見ても楽の事が好きに決まっとるじゃろ」
楽「・・・」
楽「え・・・お前見てたのか?」
おたま「あ」
おたま「・・・そうじゃ、様子を見守っておった」
楽「珍しく学校に来て何もしなかったな」
楽「てか、じゃあ一部始終見てたのかよ」
おたま「一部始終どころか全部見ておった」
おたま「いや、わらわがいたかなんてそんなのはどうでもいい!」
おたま「──楽、本当に気づかなかったのか?」
楽「気づくも気づかないも・・・豹変した小野寺の姿に軽くパニックだったからな・・・それどころじゃなかった」
楽「ていうか、お前も見てたなら分かるだろうけど」
楽「小野寺は''好き''だなんて一言も言ってなかったぜ」
楽「だからやっぱり違うんじゃねぇかな」
おたま「・・・お主本当に人間か?」
おたま「心無いあんどろいどじゃないのか?」
おたま「鈍すぎじゃ・・・」
おたま「よく考えてみよ、好きでもない男に『あなたのためなら自分の何だって、どこだって変えてみせる』なんて言うか!?」
楽「・・・確かに」
おたま「な?」
おたま「それに『夜な夜なあなたのことを考えて、少しいやらしい気持ちになる』なんて・・・」
おたま「・・・か、完全にあれのことじゃろうが」
楽「・・・そう言われてみると、そうかもしれない」
楽「おたまの言ってた事が事実なら、ここ二日の小野寺の言葉はかなり本心に近い正直な言葉だ」
楽「そんな中でのあの発言・・・」
楽「じゃあ本当に・・・」
楽「──小野寺は俺の事が好きってことかぁ!?」
おたま「おお!やっとじゃ!」
おたま「周回遅れで気づいたのう!」
楽「・・・そうだったのか」
楽「うぅ・・・泣きそうだ」
楽「両想いだったのか・・・!」
おたま「泣くのはまだ早いじゃろうが」
おたま「楽が泣いていいのは告白が成功したその時じゃよ」
楽「お前にそんなこと言われるなんて思いもしなかったぜ・・・」
楽「あ、でも告白なんて・・・どこですればいいんだ」
おたま「両想いって分かった以上どこでもいいじゃろ」
楽「そういうわけにもいかねぇ・・・」
おたま「なんじゃったら、遊園地で一通りでーとを済ましてから最後にぷろぽーずをするというのはどうじゃ?」
おたま「自然な流れだとは思うのじゃが」
楽「あの状態の小野寺とデートしろっつーことか」
おたま「いざ付き合えたとして、あの女子があそこまで積極的に擦り寄ってくることは二度とないと思うぞ?」
おたま「楽にとってよい体験になると思うのじゃがな」
楽「・・・確かにそうだけど」
おたま「あの状態なら誘いを断られることはあるまい、思い切って誘うがいいわ」
楽「・・・学校の屋上とかどっか別のとこじゃダメなのか?」
おたま「条件に''遊園地で行うこと''を追加したからだめじゃ」
楽「いつの間に!?」
おたま「今」
おたま「とりあえず」
おたま「早く行動に移さんと願いが現実に変わってしまうからの」
おたま「ちゃっちゃと済ませるほうがよいぞ」
楽「まぁ・・・頑張るよ」
おたま「もしそうなると、楽の認識も変わってしまう」
おたま「楽がそうなりたくなければ、明日中に済ませよ」
楽「明日!?」
おたま「明日は休日じゃし、何かと都合が良いじゃろ」
楽「だけどよ・・・」
おたま「心配するでない」
おたま「両想いだと分かったうえでの告白ほど心強いものはないぞ」
今日はここまでにします
多分明日で終わります
翌日
楽(予想通り小野寺をメールで誘ったら、一分も経たないうちに了承の返信が来た)
楽(文面は大人しめだったけど、底知れない喜びの感情が隠しきれていなかったつうか・・・)
楽(とりあえずそのメールはお気に入りフォルダにいれといた)
楽「・・・」
楽「そろそろ時間だな・・・」
小咲「一条君!」タッタッタッ
楽「おっ、来た・・・」
楽(私服小野寺・・・)
楽(制服もいいけどやっぱ私服の小野寺も可愛いな・・・)
小咲「遅れてごめんね〜♪」
楽「おう・・・テンションたけぇな」
小咲「当たり前じゃん!」
小咲「一条君と遊園地デートだよ!?」
小咲「それも一条君からのお誘いでー!」
小咲「夢に見てた二人きりのデート!!!」
小咲「ふふふ・・・」
楽「あ・・・」
楽(やべぇ・・・だいぶキャラが崩壊してるぞ!?)
楽(小野寺が小野寺でなくなり、俺がそれを認識出来なくなるのもそろそろってところか・・・)
楽(てかゆっくり遊園地デートなんかする暇なんてあるのか・・・?)
小咲「早く! 行こうよ!」
楽「お、おう」
────────────
楽「じゃあ、何から乗るか?」
小咲「一条君が乗りたいのでいいよ!」
楽「うーん、そうだな・・・」
楽「ジェットコースターとかどうだ?」
小咲「うん!いいね〜」
────────────
アナウンス「まもなく発車いたします」
プルルルル...
小咲「はあ〜・・・ドキドキしてきたあ・・・!」
楽「俺もだ・・・」
楽(小野寺がこんな近くに座ってるなんて・・・)
小咲「あぁ・・・!」
ガシッ
小咲「無理無理無理っ!!」
楽「わあっ!? 小野寺!?」
楽「う、腕なんか掴んで、ど、どうしたんだよ!」
楽「ちゃんと座ってなきゃ・・・」
小咲「怖い! やだ! こうさせて!」
楽「え、で、でも」
ガタン
楽「うおっ、動き出した」
小咲「ひぃ!」
ガタガタガタ
楽「これこんなに高く上んのかよ!?」
小咲「うわ・・・うわ・・・」
ギュゥッ
楽「痛い痛い痛い!」
小咲「た、た、た、たたたかい」
楽「そろそろ落ちるから前向いといたほうが──」
グワン
楽「うぉわあああああ!」
小咲「きゃあああああ!」
──────────────
楽「だ、大丈夫か小野寺」
小咲「はぁ・・・はぁ・・・」
小咲「何のこれしき・・・!」
楽「無理すんなって・・・少し休むか」
小咲「うん」
ベンチ
楽「落ち着いたか?」
小咲「なんとか・・・」
小咲「悪いことしちゃったね〜・・・」
小咲「念願の初デートだったのに」
小咲「なんか台無しになっちゃった」
小咲「ごめんね一条君」
楽「構わねぇよ」
楽「別に台無しになんかなってねぇし」
楽「てか、普通に楽しいし」
小咲「えっ!? 本当に!?」ガッ
小咲「私なんかとで楽しい!?」
楽「あ、あぁ・・・そりゃあな」
小咲「ふふふ〜嬉しいな♪」
小咲「ありがと、一条君」
小咲「ねぇ、抱きついていい?」
楽「へ?」
小咲「それ!」ギュッ
楽「うぉお!?」
楽(!!?!?!?)
小咲「一条君の匂い・・・」
ジー
楽(うわ、すっげぇ見られてる・・・!)
楽「ま、周りの人が見てるし、ちょ・・・ちょっと」
小咲「すぅ・・・」
楽「寝てる!?」
楽「・・・」
楽「しゃーない・・・起きるまで待つか」
楽「・・・」
楽(膝枕、だよなこれ)
楽(・・・)
楽(頭撫でてみたり・・・)
楽(い、いいよな・・・寝てるし)
楽「・・・」ナデナデ
小咲「すぅ・・・」
楽(うわあ・・・!)
楽(・・・すげぇ)
────────────
楽「おはよう、小野寺」
小咲「ん・・・はっ!」
小咲「私寝ちゃってたのか!」
楽「すごく気持ちよさそうにして寝てたな」
小咲「そりゃあ、一条君の膝枕だもん、気持ちいいわけがない!」
楽「ははっ・・・そうか」
小咲「・・・なんかあたり暗くない?」
楽「もう夕方近いからな」
楽「日が沈みかけてる」
小咲「えええっ!? どんだけ寝てたの私!!」
小咲「あああ・・・まだジェットコースターにしか乗れてないのに・・・!」
小咲「ごめん・・・」
楽「いいんだ、小野寺。 心配ない」
楽(膝枕出来ただけで俺は満足だ・・・)
楽「・・・」
楽(違う! こんなことしてる暇はない・・・)
楽(日が傾きかけてるってことは、閉園時間が迫ってきてるってことだ)
楽(それまでに告白とキスを済ませなければなんねぇ・・・)
楽(そろそろ心の準備をしておかねぇと)
楽「・・・なぁ、小野寺」
小咲「ん?」
楽「せっかくだし・・・最後に観覧車に乗ってかねぇか?」
観覧車
楽(よし・・・なんとか乗れた)
楽(観覧車は一周だいたい15分くらいだ)
楽(この15分の間に・・・)
小咲「・・・すごくキレイな景色」
楽「そうだな」
小咲「あっ! あれ一条君のおうちじゃない!?」
楽「ん?・・・あ、ほんとだ」
小咲「あれは千棘ちゃんのおうちか・・・」
楽「こうやって見るとすげぇ目立ってんな・・・」
小咲「・・・」
小咲「あのさ、一条君」
小咲「一条君は千棘ちゃんのこと、好きなの?」
楽「・・・ど・・・どうなんだろうな」
小咲「はっきり答えて、『はい』か『いいえ』で」
楽「・・・そ、そりゃ、嫌いでは
ないけど・・・『はい』とも言いきれねぇし」
小咲「いつもそう」
楽「え?」
小咲「いつも曖昧だよね」
小咲「質問答えてるのか答えてないのか、よく分かんない」
小咲「答えてるようで、ただごまかしてるだけって気がする」
楽「・・・」
小咲「・・・別に一条君を責めてるわけじゃないよ」
小咲「でも一条君は曖昧すぎるの」
小咲「私が勇気をもっていろんなことをしたって、その回数だけ一条君は曖昧にして、受け流す」
小咲「その度に私は打ち砕かれちゃう」
小咲「そう・・・浜辺で二人きりになった時覚えてる?」
小咲「あの時一条君は、二人きりだっていうのに寝ちゃってて、私の言ったことなんて聞いてなかった」
小咲「私、『キスしてもいい?』って」
小咲「そう言ったんだよ」
小咲「でも一条君は寝ちゃってた」
小咲「私のこと、もしかして好きだったりしてくれないかな」
小咲「なんてほんの少しだけ思ってたりしてたんだけど」
小咲「あの日を境にだんだんやっぱそんなわけないって、その気持ちが強くなってきて」
小咲「・・・まぁ、私の思い込みだよね」
小咲「少しでも、一条君が私に興味があるだろうなって、思った私が悪かったんだ」
小咲「私の勝手な片思いだったんだよ」
小咲「──千棘ちゃんと一条君はお似合いのカップルになれるよ」
小咲「偽物を演じてるっていうけど、二人を見てるととってもいいカップルだなって思うんだよ」
小咲「だからこれから頑張って」
小咲「──なにが言いたいかさっぱりだよね」
小咲「・・・とりあえず、今までどおり、私とは友達でいてくれたらいいな」
小咲「抱きついちゃったりするかもしれないけど」
小咲「ふふっ・・・ごめんね! いきなり独り言みたいに話しちゃって!」
小咲「なし! なし!」
楽「・・・」
楽(今のが、小野寺の本音・・・)
楽「小野寺・・・」
楽「ごめんな、気づいてやれなくて」
小咲「・・・?」
ギュッ
小咲「ふぇ!?」
小咲「どうしたの?」
楽「・・・っ」
楽「小野寺がそんなに俺のことをそんなに思ってくれてたなんて・・・」
小咲「あぁ〜、うん」
小咲「いいよ、いくらでも抱きついて」
小咲「よしよし・・・」
楽「小野寺・・・」
楽「俺は・・・」
楽「・・・俺は、小野寺のことが好きだ!」
小咲「・・・へ?」
楽「中学生の時から!」
楽「俺はお前のことが大好きだ!!!」
楽「──」
チュッ
小咲「──!!」
楽「・・・っ」
楽(すげぇ柔らかかった・・・)
小咲「────」
楽「・・・」
小咲「い、い、一条君?」
楽(元に戻った──!)
小咲「・・・」
小咲「ど、どどどうして私に抱きついてるのかな?」
楽「えっ」
小咲「え、えーっと、その・・・」
小咲「それに、なんで観覧車に・・・?」
楽「覚えて・・・ないのか?」
小咲「う、うん・・・ごめん」
楽(うぉおおお!? マジかよ!?)
楽(かなり頑張って告白したのに、覚えてねぇって!?)
楽(聞いてねぇぞ、おい!)
楽「・・・その、だな」
楽(告白仕切り直しか・・・)
楽「よく聞いてくれ」
小咲「・・・うん」
楽「今日は伝えたいことがあって」
楽「小野寺をここに連れてきた」
小咲「そう・・・なの?」
楽「あぁ」
楽「・・・」
楽「その・・・俺は」
楽「・・・」
楽「俺は──小野寺がことが好きだ」
楽「だから・・・だから付き合ってくれ!!」
楽「お願いします!!」
小咲「・・・」
小咲「え? い、一条君」
小咲「い、いきなり何を言ってるの──?」
楽「小野寺と残りの高校生活・・・」
楽「ずっと一緒に過ごしたい」
楽「小野寺の一番近くに居たいって、本気でそう思ったんだ」
楽「何も高校入ってからじゃねぇ・・・」
楽「中学の時から、ずっと思い続けてきた」
小咲「──」
小咲「ほ、ほんとうなの?それ・・・」
小咲「変な冗談じゃないよね・・・?」
楽「あぁ・・・本気だって言ってんじゃねぇか・・・!」
小咲「私をからかってるんじゃないんだよね・・・!」ウルウル
楽「からかってなんかねぇ!」
小咲「──!」
楽「だから、どうか・・・」
楽「俺と、付き合ってください」
小咲「ぅ・・・うぅ」
小咲「本当・・・」
小咲「夢じゃないんだ・・・」
小咲「夢じゃないんだ・・・!」
小咲「・・・」
小咲「・・・はい」
小咲「私もずっと・・・一条君のことが好きでした・・・!」
小咲「中学生のときから、ずっとあなたのことが──」
小咲「──こんな私で良ければ」
小咲「・・・よろしくお願いします!!」
──────────────
帰り道
楽「・・・」トコトコ
小咲「・・・」トコトコ
小咲「私──まだ信じられないよ」
小咲「一条君が私のこと好きだったなんて」
楽「俺も、小野寺が俺のことを好きだったなんて思わなかったよ」
楽「それも中学の時から・・・」
小咲「ふふ、私達そんな前から両想いだったんだね」
楽「全然気づかなかったな」
小咲「そうだね・・・」
楽「今思うと、小野寺は意外と俺に好意を見せてくれてたのかもしれねぇな」
小咲「うん、実はね──私なりに頑張ってたりはしてたんだよ」
小咲「ほとんどるりちゃんの指示だけど」
楽「ん? なんで宮本が」
小咲「るりちゃんは私が一条君の事好きだって知ってたから」
楽「なるほど・・・」
楽「俺、全く気がつかなかった」
小咲「いいよいいよ、実際わかりにくかったし」
小咲「一条君の彼女になった今・・・もうそんなこと気にする必要ないよ」
小咲「そういえば、『キスしてもいい?』なんて言ったこともあったかな」
楽「へぇ」
小咲「一条君は気づいてなかったけど・・・」
楽「・・・すまん」
小咲「・・・」
小咲「どうなんだろう?」
小咲「カップルってキスするのかな」
楽「・・・まぁ、するだろうな」
小咲「・・・」
小咲「・・・キ、キス」
小咲「してみる?」
楽「!」
楽「い、いやぁ、まだちょっと早ぇんじゃねぇかな?」
楽(俺はさっきしちまったけど・・・)
小咲「そ、そうだよね!」
小咲「まだ出来立てだし!」
小咲「うん!」
楽「──とりあえず」
楽「な、名前で呼びあってみるとか?」
小咲「あ、うん!」
小咲「それいいね!」
小咲「なんかカップルっぽいし」
楽「・・・小咲」
小咲「・・・楽」
楽「///」
小咲「///」
小咲「も、もうちょっと後でいいかな〜、これも!」
楽「そ、そうだな!」
次の日
学校
小咲「というわけで、一条君とお付き合いすることになりました・・・」
るり「おめでとう!!小咲っ!」
るり「やったわね!!」
小咲「うん、ありがとう・・・」
るり「自分の事のように嬉しいわ」
小咲「これもひとえにるりちゃんのおかげだよ・・・」
るり「いいえ、違うわ」
るり「小咲、あなたはあなた自身の手で幸せを勝ち取ったの!」
るり「私は少し力を貸しただけよ」
るり「それで、なんて言って告白したのよ」
小咲「ん?」
小咲「あはは、いや、私じゃないよ」
小咲「告白してきたのは一条君なんだ」
るり「え?」
るり「一条君が?」
るり「それはまた・・・」
小咲「いきなりだったからびっくりした」
小咲「今でも思い出して泣いちゃいそう・・・」
るり「──よかったわね」
タッタッタッ...
るり「ん?」
楽「おーい! 小野寺!」
るり「あら、来たわね」
小咲「あ、い、一条君!」
楽「悪ぃ、遅れちまって・・・」ハァハァ
小咲「うん、大丈夫だよ!」
るり「あの・・・」
るり「せっかくカップルになれたのに未だに名字呼びなの?」
小咲「ま、まだそういうのは早いかなあ・・・って」
るり「──そう」
小咲「それどころか、まだちょっと緊張しちゃってるし・・・」
るり「まあ、ゆっくりとやっていけばいいわ」
るり「私は別に口出ししないわ」
るり「二人とも、末永くお幸せに」
楽「な、なんだよ、俺達が結婚するみたいな言い方」
るり「式、私も呼んでね」
楽「じゃあ、行くか」
小咲「う、うんっ!」
楽「ふふっ・・・」
小咲「ん?」
楽「いや、小野寺って可愛いよな・・・」
小咲「はひっ!?」ビクンチョ
楽「仕草とかさ、喋り方とか、そういう驚いた反応とか・・・」
楽「ていうか全てが」
小咲「うぅ・・・///」
小咲「そんなことないってば」
小咲「とかいったら」
小咲「い、一条君だってかっこいいし!」
楽「うおっ・・・!」
楽「・・・ありがとう」
楽「・・・」
楽(結婚・・・)
楽(さっき宮本がそんなこと言ってたな・・・)
楽(小野寺と笑いあって・・・ひとつ屋根の下一緒に暮らして・・・)
楽(それはとても楽しいんだろうな)
楽(・・・小野寺も同じこと思ってくれてたらいいけど)
小咲「・・・」
小咲(結婚・・・か)
小咲(こうやってカップルになれたのも夢みたいなものなのに)
小咲(結婚なんて夢のまた夢かな・・・)
小咲(──でも、楽しいだろうなぁ)
小咲(一条君との夫婦生活)
小咲(一条君も同じように思ってくれたらいいな・・・)
小咲「ねぇ」
小咲「その・・・」
小咲「手、つなごっか」
楽「──!」
小咲「あ! 嫌だったら全然いいんだけど、その、どうかなあって」
楽「──あぁ、良いよ」
小咲「・・・ありがとう」
小咲「──一条君」
小咲「これからも、よろしくね」
楽「あぁ」
楽「こちらこそ、よろしくな」
小咲(やっぱり・・・心配なんてする必要なんてないね)
楽(きっと小野寺も同じように思ってくれてる)
小咲(一条君もこう思ってくれてるはず)
楽・小咲(この人といつまでも一緒にいよう──)
楽・小咲(──って・・・)
おわり
終わりです、ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
さいっこう。
うらやましいーーーーw