ナターリア「プロデューサー! プロデューサー!」
P「おっ、おはようナターリア。どうした? いつも以上に元気だな」
ナターリア「プロデューサー、今日何の日だか知ってル?」
P「今日? 6月29日は……肉の日とか?」
ナターリア「ブブー! 違うヨー!」
P「うーん……あ、ビートルズが日本に来た日だ」
ナターリア「そうなノ?」
P「物凄かったらしいぞ。……まぁ俺は知らないけどな」
ナターリア「フーン……っテ、そうじゃなくテ!」
P「ビートルズでもない? うーん……」
ナターリア「もーッ!」
ナターリア「今日は! ナターリアの誕生日なノ!」
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P「え!? あ! そうだよそうじゃん! ごめんなナターリア! 誕生日おめでとう!」
ナターリア「ウン……アリガト」
P「あああ……本当にごめんな……」
ナターリア「ンー、ダイジョウブ! でも、来年は忘れないで欲しいナ!」
P「もちろん。絶対に忘れないよ。プレゼントも用意しておく」
ナターリア「ホント!? 楽しみだナー!」
P「あいにく今日は何もないんだが……」
ナターリア「なら、今日はプロデューサーのハグで許してあげるヨ!」ギュッ
P「おっとと……そんなんでいいのか?」ギュ
ナターリア「ンー♪」
P「ん、そうか。ありがとな。しかしそうか、今日からナターリアも……1…4…あ、あれ?」
ナターリア「どうしたノ?」
P「いや、変なことを聞くけど、ナターリアは昨日まで14歳だったよな?」
ナターリア「そうだヨ?」
P「つまり今日から――」
ナターリア「14歳になるんダ♪」
P「あぁ、そうだよな。びっくりし……ん? いや、なんだ……?」
ナターリア「プロデューサー、どうかしたのカ?」
P「い、いや、なんでもない。14歳の時に誕生日が来たら1つ歳をとって14歳になるのは当たり前じゃないか。何を考えていたんだ俺は……」
ナターリア「~♪ コトシはアイドルにもなれテ、プロデューサーにハグもして貰っテ、最高の誕生日だナー!」
P「喜んでくれてなによりだ。……じゃあついでに、面白いことを教えてやろう」
ナターリア「面白いコト?」
P「ああ、実はな――」
P「俺も今日が誕生日なんだ」
ナターリア「ホント!?」
P「ほんとほんと。保険証見るか?」ゴソゴソ
ナターリア「……ほんとダ! オメデト、プロデューサー!」
P「はは、ありがとな」
ナターリア「誕生日がイッショ……これってウンメイだよネ!」
P「ああ……俺もスカウトしてからそんなことを思ったよ。……まぁ、今まで忘れてたんだけど」
ナターリア「ムー……それはもう一度ハグしてくれたら許してあげル!」
P「感謝感激恐悦至極」ギュッ
ナターリア「カン……?」ギュー
P「ありがとうってこと」
ナターリア「そっカ! ンン~、ヨシ!」
P「おぉ? どうした?」
ナターリア「ナターリア、もっとステキなアイドルになって、プロデューサーをメロメロにするんダ!」
P「俺を? ははは、そのためにはまずファンのみんなをメロメロにして、もっとランクを上げないといけないな」
ナターリア「ナターリア、もっとがんばるヨ! だから――」
ナターリア「待っててネ! P!」
・・・
ナターリア「P~!」
P「お、おはようナターリア。やけにニコニコしてるな。何かいいことでもあったのか?」
ナターリア「これからあるんだヨ!」
P「これから?」
ナターリア「P、今日は何の日だか知ってル?」
P「今日? 6月29日は……あ、そうだ」
ナターリア「!!」
P「ビートルズが来日した日」
ナターリア「……ソウダネ」シュン
P「というのは冗談で」
P「ハッピーバースデー、ナターリア」
ナターリア「~~!! アリガトー! P!!」ガバッ
P「おおっとと……」ギュッ
ナターリア「ちゃんと覚えててくれたんだナ!」
P「もちろん。約束したからな」
ナターリア「ンー♪ ナターリア、とっても嬉しいヨ!」ギュー
P「おうおう、そしてこっちが約束のバースデープレゼントだ」
ナターリア「~~!! P!」ギュウウー
P「おおぁナターリア苦しい苦しい!」
ナターリア「あ、ゴメンナサイ……」パッ
P「そんなに喜んでくれるとはな。まだ中を見てないだろう?」
ナターリア「Pがプレゼントをくれたことが嬉しいノ!」
P「ん、そうか。用意した甲斐があったな」
ナターリア「開けてイイ?」
P「いいぞ。気に入ってくれるかわからんが……」
ナターリア「……コレ、手帳……と、ボールペン?」
P「女の子にするプレゼントとしてはナシかなとは思ったんだが……ナターリアも人気が出てきてスケジュールが詰まってきただろう。自分で把握できるようにならないとと思ってな」
ナターリア「コレ、Pのとおんなじダ」
P「お、よくわかったな、色が違うのに。結局そいつが一番使いやすいんだ」
ナターリア「Pとオソロイ……?」
P「まぁ、そういうことになるが……すまん、嫌だったか?」
ナターリア「……」フルフル
ナターリア「嬉しイ!!」ガバッ
P「のわっ!」
ナターリア「アリガト、P」チュッ
P「! ナターリア、お前」
ナターリア「エヘヘ……ナターリアのファーストキッス、Pにあげちゃっタ……♥」カアァ
P(海外では挨拶海外では挨拶海外では挨拶海外では)
ナターリア「エェト……Pも、ハッピーバースデー、だナ!」テレテレ
P「お、おう……ありがとう」
ナターリア「あ」
P「ん、どうした?」
ナターリア「ナターリア、Pにプレゼント用意するの忘れてたタ……」
P「……なんだ、そんなことか」
ナターリア「そんなコト……? P、ナターリアからのプレゼント、楽しみじゃなかっタ……?」シュン
P「あああ、違う違う!」
P「もう、世界最高のプレゼントを貰ったよ」
・・・
ナターリア「P~!」
P「おう、おはようナターリア」
ナターリア「オハヨー! 今日は何の日か、知ってル?」
P「当たり前じゃないか。今日6月29日は――」
ナターリア「!!」
P「佃煮の日だ」
ナターリア「……ツクダニ?」
P「おう。美味いぞ」
ナターリア「ソウ……」シュン
P「からのー」
P「ハッピーバースデー、ナターリア」
ナターリア「~! ~!!」ポカポカ
P「痛っ、痛い悪かった悪かった!」
ナターリア「ホントに悪いと思ってル?」ムスー
P「ごめんな。ナターリアの反応が可愛いから、つい悪戯心がな」
ナターリア「ッ……そ、それなラ、優しくハグしてくれたら許してあげル……」
P「ん。おいで」
ナターリア「……」ポスン
P「ごめんな」ギュッ
ナターリア「ラブが足りないヨ……」
P「仰せのままに、お姫様」ギュ
ナターリア「ンー……♪ 幸せだナ……」
P「幸せ気分はまだ早いぞ」
ナターリア「どうしテ?」
P「今夜は特に用事はないな?」
ナターリア「ないヨ?」
P「よし。では今夜の食事は――」
P「寿司だ」
ナターリア「ス……シ……スシ!?」
P「しかも回らない」
ナターリア「回らないスシ!?」
P「銀座だ」
ナターリア「アアッ……」フラッ
P「おおっと……大丈夫か?」
ナターリア「ナターリア……今日、世界でイチバン幸せカモ……」
P「はっは、寿司屋が聞いたら喜びそうだ」
ナターリア「今夜はザギンでシースー!」
P「どこで覚えてきたそんな言葉」
??「トロトロの大トロ……ふふっ」
P「誰だ今の」
ナターリア「そうダ! Pも誕生……ア」
P「……去年も聞いた気がするな、その『あ』」
ナターリア「P……」ウルウル
P「ああもうそんな顔をするな……ナターリアは笑顔が一番可愛いんだから」
ナターリア「デモ……」
P「俺にとってはナターリアが輝いていることが最高のプレゼントだよ」
ナターリア「……! それなラ」
ナターリア「ナターリアをアゲル!」
P「…………は?」
ナターリア「ナターリアが、Pの奥さんになってあげるノ!」
P「…………いやいやいやいや」
ナターリア「イヤ?」
P「や、嫌とかそういう問題じゃなくてね? 14歳はまだ結婚できないからさ」
ナターリア「じゃあ、結婚できるトシになったら、ナターリアと結婚してくれル?」
P「い、いや、それは……」
P(どうする……適当に誤魔化すか? プロデューサーとして頑として拒否するべきか……)
ナターリア「……」ジーッ
P(この瞳を前にして? 拒否するか? 無理でしょ)
P「……そうだな……ナターリアが、その時になっても、気持ちが変わっていなかったら……」
ナターリア「ホント!?」
P「あ、ああ……」
ナターリア「あと何年で結婚できル!?」
P「16歳からだから……あと2年、かな」
ナターリア「2年ならすぐだナ! P、待っててネ! 愛してるヨ!」チュッ タタタッ…
P「お……」
P(純粋で真っ直ぐなのは知ってたけど、『結婚』か)
P(……早まったか?)
P(いや……ナターリアは14歳。まだまだ子供。異国の土地で慣れ親しんだ俺に父親のようなものを求めてるんだろう)
P「そうか……ナターリアも今日で14歳……1…4……去年は……あれ、16歳まであと……うっ……頭が」
・・・
ナターリア「P~♪」
P「ご機嫌だな。おはようナターリア」
ナターリア「今日は何の日?」
P「子日だよ~♪」
ナターリア「ネノヒ?」
P「なんでもない。今日6月29日は――」
ナターリア「!!」
P「俺の誕生日だ」
ナターリア「ソウ! ハッピーバースデー、P!」
P「あ、あれ?」
ナターリア「今日はPにプレゼントがあるんダ♪」
P「ほぉ」
ナターリア「はい、ドウゾ!」
P「ありがとう、ナターリア。なんだか可愛らしい箱だな。開けてもいいか?」
ナターリア「モチロン!」
P「では…………。これは……ネックレスか?」
ナターリア「ソウ!」
P「いいのか? こんな高そうな……」
ナターリア「いいノ! Pのおかげでお給料タクサン貰ってるカラ!」
P「いやまぁ……そっか、それならありがたく貰うよ。ありがとうナターリア」
ナターリア「これから毎日付けてきてネ!」
P「いや、でも俺スーツだしな。中につけても見えないし……」
ナターリア「見えなくてもイイヨ! 付けてくれることが大事ナノ!」
P「そうか? それなら明日からつけてくるよ」
ナターリア「ウン♪ それかラ……」ゴソゴソ
P「え、まだあるのか?」
ナターリア「ウン! コレ! ミジンコでもわかるポルトガル語入門!」
P(あかん)
P「ほ、ほう……ポルトガル語ね……」
ナターリア「ナターリアも教えてあげるヨ!」
P「いやぁ……あ、じゃあそうだな、『誕生日おめでとう』って、ポルトガル語でどういうんだ?」
ナターリア「エット、『Feliz Aniversário』ダヨ!」
P「ふ、ふぇれず?」
ナターリア「Feliz」
P「ふぇりーず」
ナターリア「Aniversário!」
P「あにべさりぉ」
ナターリア「そんなカンジ!」
P「なるほど。んっん、『フェリーズアニベサリオ、ナターリア』」
ナターリア「~~!!」ガバッ
P「うおっ」
ナターリア「Obrigada! Você tem meu coração!!」ギュウッ
P(どういう意味だろう……)
・・・
ナターリア「P!」
P「ん……おはよう、ナターリア」
ナターリア「どうしたノ……? なんだか元気ないナ?」
P「ん? そんなことないぞ」
P(二年前の約束を思い出して戦々恐々としているわけではない……決して)
P(いや……さすがにナターリアも覚えてないだろう、へーきへーき)
ナターリア「そうカ? ならいいケド……」
P「心配してくれてありがとな。ところで、6月29日の今日は何の日か知ってるか?」
ナターリア「エッ、ア……P! P!の誕生日!」
P「なるほど、それもある。が――」
P「ハッピーバースデー、ナターリア」
ナターリア「ア……アリガト、P……」
P「パーティーの準備も進めてある。帰ってきたら皆に祝ってもらえるぞ」
ナターリア「ホント!?」
P「もちろん。当然寿司もある」
ナターリア「出前ズシ! トロもあル?」
P「あるぞー。ま、それらは帰ってきてからのお楽しみだ。……さ、少し早いが、打ち合わせもあるし局に行こう」
ナターリア「……ウン」
P「……どうした?」
ナターリア「……ネェ、P……ヤクソク……覚えてル?」
P「約束……どの約束だろう。ナターリアとは一杯約束したからな」
ナターリア「2年前の……誕生日」
P(あー……)
ナターリア「ナターリア……ヤクソク通り2年待ったヨ……?」
P「……そうだな」
ナターリア「デモ……たぶん、ダメなんだよネ……?」
P「…………そう、だな」
ナターリア「どうしテ……? ナターリアがまだ14歳だかラ……? ナターリアのことがスキじゃないかラ……? それとも――」
ナターリア「ナターリアが……アイドルだから……?」
P「…………」
ナターリア「やっぱり……そうなんだネ……だったら」
P「ナターリア……?」
ナターリア「ワタシ、もうアイドルなんかヤメ――」
P「ナターリア!!」
ナターリア「」ビクッ
P「だめだ……その言葉だけは」ギュッ
ナターリア「……じゃあ……ナターリアは……どうすればいいノ……? ワタシはアイドルが好きで……でも……ドウシヨウもなくアナタが好きで……! それはいけないコトなノ……? わかんない……ナターリア、もうわかんないヨ……」ポロポロ
P「…………ああ、くそっ……」
P「俺は……大馬鹿野郎だ……!」
P「俺は誰よりも君を見てきた」
P「君は誰よりもアイドルに憧れて」
P「誰よりもアイドルを愛してて」
P「誰よりも一所懸命で――」
P「そんな君の口から、ほんの欠片であろうとも、『アイドルなんか辞める』と言わせてしまった」
P「君はもう何も知らない小さな女の子じゃないというのに」
P「君の気持ちに見ないふりをして逃げつつけてきた」
P「俺は本当にどうしようもない大馬鹿野郎だ……!」
P「ナターリア」
ナターリア「……ナニ?」
P「結婚しよう」
ナターリア「…………今……なん、テ……」
P「今すぐとは言えない……」
P「けど――」
P「ナターリアが、アイドルとして輝いて」
P「今よりももっともっと輝いて」
P「アイドル、ナターリアの総てを出し切って」
P「その輝きの向こう側に辿り着いた、その時に――」
ナターリア「それっテ……」
P「……俺の我が儘だっていうのはわかってる」
P「でも……俺は、まだまだ見たいんだ」
P「可愛らしい衣装で踊るナターリアを」
P「愛らしい役を演じるナターリアを」
P「舞台の上で煌めくナターリアを」
P「もっと沢山、見ていたい――」
P「ナターリア。ナターリアも、そうだろう……?」
ナターリア「……ッ」
P「君の目は変わっていない。街の巨大モニターに映っていたアイドルを見つめていた、あの時からずっと」
P「君は、もっと輝ける。だから――」
P「ナターリア」
ナターリア「……」
P「君の答えを聞かせて欲しい」
ナターリア「…………」
ナターリア「……P」
P「うん」
ナターリア「コレ……ウソじゃないよネ……?」
P「冗談でこんな事を言うか? 俺は本気だ」
ナターリア「……ワタシ、もっとアイドルやりたイ……」
P「ああ、わかってる」
ナターリア「もっと、ズット、たくさんキラキラしたイ……!」
P「ああ、そうだな」
ナターリア「ずっと、時間かかるヨ……?」
P「その間も、ずっと一緒だ」
ナターリア「ナターリア、たくさんワガママいうカモしれないヨ……?」
P「可愛いもんだ。あんまり酷けりゃお仕置きしてやる」
ナターリア「ウワキは許さないヨ……?」
P「ナターリア以外興味ないよ」
ナターリア「それはウソ!」
P「う……そうだな。悪かった。でも、浮気はしない。絶対に」
ナターリア「それじゃあ――」
「ズット、ナターリアをプロデュースしてくれル……?」
P「――誓うよ。君を一生、輝かせるって」
ナターリア「~~~~!!!」ガバッ
P「ナターリア……」ギュッ
ナターリア「…………Te amo, P……」ギュ
P「俺も愛してる、ナターリア」
P「そしてハッピーバースデー、だ」
P「15歳の誕生日、おめでとう――」
・・・
『ふぅ……あれ? なにしてるの?』
『ん、おう。本を読もうと思ったらアルバムが出てきてな』
『おー、懐かしいな! あはは、ワタシ小さいな!』
『そうか? この頃からかなり大きかったろ、お前』
『もー、どこみてるの、スケベ!』
『わははは。あ、これ誕生日パーティーの時だ』
『カナコとアイリのケーキ、結局食べきれなかったなー』
『途中からお前はマグロ乗せるしな』
『おいしいよ?』
『嘘だろ……』
『誕生日といえばさ』
『やめろ忘れろ』
『「結婚しよう」』
『やめろ!』
『14歳の女の子相手に……ふ、ふふっ』
『今思えばどうかしてたよ……』
『後悔してる?』
『そうじゃなくてさ。もっとやりようがあったんじゃないかって』
『いいじゃん。ワタシ、幸せだよ』
『赤っ恥かいた甲斐はあったかな』
『恥なんかじゃないよ。カッコよかったぞ』
『忘れろと言ってるのに……』
『むーり。ワタシの人生最高の思い出だもん』
『最高はまだこれからだろ?』
『……そうだね。ふふ、そうかも』
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