男 「明るい地面の底で」(105)

http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/internet/14562/1332685984/#last

続きです

男 「む……」

目覚めてから、ここ数日で見慣れてしまった天井が一番に視界に入る。

そのまま隣のベッドに顔を向ければ、またまたここ数日で見慣れてしまったお嬢の寝顔を見ることができた。

男 「起きろ、お嬢。朝だぞ」

まだまだあちこちが軋む体に鞭を打ち、なんとかベッドから這い出てお嬢を起こしにかかる。

お嬢様 「まだ夜ですわよ……」

男 (馬鹿にしているのかコイツは……)

男 「早く起きろ、もう七時だ」

お嬢様 「寒いので出たくありませんの……」

男 「ったく……」

彼女は低血圧らしく、基本的に目を覚ましても直ぐには布団から出てこない。

それどころか、直ぐに眠りに落ちるなんてことがザラである。

男 「熱いお茶を淹れてやるから顔洗ってこい」

お嬢様 「……ミルクティーを所望します」

男 「わかったから」

これが最近の朝の始まり方。

お嬢様が手洗い場で顔を洗い、髪を整えている間に俺は台所で顔を洗いお茶を淹れる。

男 「補習前にこれでいいのか……?」

正直な所、学校で過ごすよりよっぽど楽である。

テレビも繋がる、食材もある、部屋に不手際があれば運営委員が飛んでくる。

ここまで優遇されると補習とやらが更に怖く思えて仕方が無い。

男 「そろそろ入ったかなー……」

男 「うし……」

ティーカップに少しだけミルクを注いでから、琥珀色の紅茶をゆっくりと注ぎ足す。

お嬢曰く、ミルクは先に注ぐのが当たり前だそうだ。

お嬢様 「おはようございます」

男 「あぁ、入ってるぞ」

お嬢様 「頂きますわ」

男 「しかしこれでいいのか……?」

お嬢様 「なにがですか?」

まだまだ熱いティーカップの中身に息を吹き掛けながらお嬢は上目遣いで尋ねた。

男 「俺達は一応落第生なわけだ」

男 「普通ブタ箱染みた場所で残飯を貪り藁の上に雑魚寝する、みたいなのを想像していたんだが……」

お嬢様 「流石にそれは飛躍し過ぎでしょう……」

呆れ半分な溜め息。

お嬢様 「わたくしのお知り合いの方からお聴きしたのですが」

お嬢様 「この学校の追試は、あなたがおっしゃったような場所で生活することの数倍は厳しいそうですわよ」

男 「そうか……」

それだったら、あの日々に比べれば随分と楽かも知れない。

男 「何が来ようと関係無い」

男 「絶対に這い上がってやる」

お嬢様 「なぜそこまで勝ちに拘るのですか?」

お嬢様 「わたくしにはあなたが何故裏切りを行ったかが理解できません」

男 「勝たないといけないんだ」

男 「俺は負けてはいけない」

男 「何をしてでも超えないといけない壁があるんだ」

お嬢様 「そうですか……」

少し真剣になりすぎてしまったせいか、場の空気が途端に重たくなってしまった。

男 「とにかく飯を食おう。もしかしたら今日追試があるかも知れない」

お嬢様 「トーストとベーコンエッグをお願いしますわね」

男 「たまにはお前が作れよ……」

今日も、地の底での一日が始まった。

職員室

教師 「はぁ、男君が追試ですか……」

解せない。

教師 「仕事を増やしてくれますねぇ……」

解せない。

裏切りなど行わずにいれば、確かにお嬢様さんの力を借りずに赤毛君を引き分けに持ち込むのは難しかったが、第一回の試験の成績から考えてクラス編成でa組にいけることは確実。

それがわからない彼では無いはずだった。

教師 「男という生き物は難儀なものですね」

彼女の思考では、彼の勝利への拘りを理解することはできなかった。

教師 「しかし、第二回からこんなに大荒れになるとは」

教師 「今年の生徒は大丈夫なんでしょうかね?」

そこにいれば誰もが教師の独り言かと思うような、早朝の人気の無い職員室。

しかしそこで、彼女は確かに誰かに話かけていた。

教頭 「問題無い」

そして、その誰かは言葉を返した。

いつの間に、いや最初からそこに座っていた男は続ける。

教頭 「我々の計画に必要な能力者の目処は大方ついている」

教頭 「彼の落第もまた、避けては通れぬ事象なのだ」

教師 「しかし、本当に可能なのでしょうか?」

教頭 「父なる神は七日間で天地を創造した」

教頭 「その神に等しき知恵を持つ我らにできない道理があるのかね?」

教師 「人が神になろうなどと、烏滸がましいとは思わないのですか?」

教頭 「ふふ、やはり君は実にいい」

教頭 「私に意見するどころか、私を認識することさえもできない人間ばかりだというのに」

教頭 「君はそのどちらもこなす」

教頭 「実に素晴らしく、興味深い人間だ」

教頭 「質問に答えよう」

教頭 「かつての私ならば思っていただろう」

教師 「ならば……!」

教頭 「しかし、触れてはならない領域に足を踏み入れた人間にそのようなことを気にしている余裕はないのだよ」

教師 「…………」

教頭 「我らで迎えようではないか」

教頭 「世界最後の日を」

隻眼の老人は笑った。

なんの含みもない、ただ誰かの冗談がツボをついた時のように。

静かに口の端を上げた。

会長 「…………」ソワソワ

姉 「うまいうまい」

人影もまだまばらな食堂。

少ない人の中には、男の姉である二人が少し早めの朝食を摂りに来ていた。

一方はやけに落ち着きがなく、一方はやけに落ち着き払っている。

会長 「…………」ソワソワ

姉 「会長ちゃん」

会長 「はいっ」

姉 「男くんが気になるのはわかるけどさ、お行儀悪いよ」

会長 「すみません……」

なんだかデカい話に?

?( ・ω・)っ④④"

>>16
一応男とかの能力はフラグのつもり


姉 「今日が追試なんでしょ? 声をかけといてあげたら?」

会長 「ですが、私が行ったところで……」

姉 「ところで?」

会長 「その、私は嫌われていますから……」

姉 「ちょっぷ」

会長 「あたっ」

会長 「それでこぴんじゃないですか。痛いです姉さん……」

少し赤くなった額を擦る会長。

姉 「昔はあんなにベッタリだったのに変なキャラ作りしようとするから」

会長 「だってぇ……」ウルウル

姉 「すぐ涙目にならないの。中身は全然変わってないんだから」

姉 「男くんは君が思うほどに君を嫌ってないよ」

会長 「本当ですか?」

姉 「おねーちゃんは嘘を吐きません!」

大きく胸をはり、トンと軽くグーで叩いた。

会長 「取り合えず声くらいはかけてみます」

姉 「上から目線はダメよ?」

会長 「ぜ、善処します……」

小さく縮こまりながら会長は味噌汁をすすった。

ねます

補習部屋

お嬢様 「襟が曲がっていましてよ」

男 「あぁ」

よれた襟元を正し、タイを絞めなおす。

男 「何故スーツなんだ?」

お嬢様 「わたくしに訊かないでくださいます?」

男 「……すまん」

部屋へとやって来た教師に補習の開始を告げられ渡された二着のスーツ。

彼女曰く試験官がこのスーツでないと補習を受けさせてくれないらしい。

監獄棟 一室

男 「もろにホテルだな……」

お嬢様 「どこかの廃ホテルを使っているのかも知れませんね」

試験官 「うーっす」ガチャ

部屋に入ってきた試験官と思われる女性。

どんな厳格そうな人間かと思えば、ジャージ姿にくわえ煙草のまるでチンピラのような人間だった。

試験官 「今年はどんなバカがここに来るかと思ったら……」

試験官 「裏切りを使ったバカとそれに付き添ったバカ」

試験官 「こりゃあ今世紀最大のバカだわな」

試験官がゲラゲラと大口を開けて笑うと、くわえていた煙草は床にゆっくりと自由落下する。

彼女は床に落ちたそれをスリッパでグリグリと踏み潰した。

お嬢様 「このっ……!」

男 「お嬢」

お嬢様 「なんですの!?」

男 「今は喋るな」

お嬢様 「どうして……」

試験官 「ほぅ、バカはバカでも賢いバカってか」

試験官 「嬢ちゃんの方はまだ分かってないみたいだなぁ」

ケタケタと人を小馬鹿にした笑い声。

試験官 「わかるかい嬢ちゃん。お前は落第生、あたしは試験官」

試験官 「お前が無事に補習に合格か否か」

試験官 「その判断を下せるのはあたしってこと」

試験官 「お前が試験官に暴言を吐いたってことにして補習無しで退学にしてやることもできるんだぜ?」

お嬢様 「っ……!」

試験官 「上下関係ははっきりさせとかないとなぁ」

お嬢様 「失礼いたしました……」

試験官 「うむ、よろしい」

試験官 「じゃさっそく追試を始めたいところなんだが……」

彼女はこちらをみやる。

試験官 「激しいことは無理なんだわなーお前は」

男 「問題ありません」

試験官 「こっちに問題があんだよ」

試験官 「死なれでもしたらあたしの首から上が物理的に飛ぶ」

男 (俺には関係無いんだが……)

試験官 「そーだなー、ろくに能力を使えなかったバカどもに超能力の試験したって意味ねーし……」

試験官 「頭を使うゲームでもやって貰おうかね」

男 (得意分野キター)

試験官 「運営いいーん」

運営委員 「なんでしょうか」シュン

試験官 「あれ頼むわ」

運営委員 「あれですか?」

試験官 「おぅ、あれだ」

運営委員 「了解しました」シュン

突然現れては消えていく運営委員。

呼ぶだけでやって来るとは相変わらず便利屋さんである。

試験官 「試験内容説明しまーす」

一人で盛り上がる試験官。

しかしこちらは下手な発言はできないので、完全に元気が空回りしている。

試験官 「テーブルトーク・rpgって知ってるか?」

お嬢様 「存じ上げません……」

男 「汝は人狼なりや? とかだな」

試験官 「そそ、男に試験官ポイントいってーん」

試験官 「ちなみに試験官ポイントは心の平常点みたいなものなので特に意味はありません」

お嬢様 「はぁ……」

男 (駄目だ、お嬢は既にゲームマスターの雰囲気に飲み込まれている)

男 (根が素直な分テーブルトーク・rpgには向かないな……)

試験官 「ま、男には汝は人狼なりや? を挙げてもらったわけだが」

試験官 「紙や鉛筆、それに人間を使って物語を作っていくゲーム、ってとこだな」

お嬢様 「えっと……」

男 「それぞれに役割があって、その特性と知恵を持ち寄って問題を解決する。そんなところだ」

お嬢様 「なるほど」

試験官 「お前らにはそれをやって貰おうってわけよ」

男 「超能力は必要ないようですけど、それでいいんですか?」

試験官 「言ったろ、頭を使うゲームにしてやるって」

試験官 「もちろん嬢ちゃんの超直感は使用禁止だがな」

試験官 「今回は犯人探しにするかな」

男 「犯人探し?」

試験官 「まぁ一旦部屋に戻ってくれ、そこで紙を渡すから」

男 「わかりました」

試験官 「因みにお前らには二人一組になってもらうからな」

犯人捜し?( ・ω・)?

興味深い( ・ω・)っ④"

自室

お嬢様 「な、中々奥が深いのですね……」

男 「今回のルールが分からない以上はどうしようもないが……」

男 「多くにに共通することが嘘を上手く吐ける奴がゲームを制することだ」

男 「基本は俺が立ち回るから、お前は極力喋らずにポーカーフェイスに徹しろ」

お嬢様 「わかりましたわ」

コンコン

運営委員 「失礼します」ガチャ

男 「うむ」

運営委員 「こちらをどうぞ」

手渡される一枚の紙。

運営委員 「それでは、失礼しました」

お嬢様 「なんですの?」

男 「ルールとバックストーリーの説明だな」

『とある孤島の洋館に招待されていたあなた』

『洋館でのパーティーを楽しみ、いざ帰ろうとしたその時』

『船のトラブルで島を出れなくなったことを知らされました』

『洋館の主の勧めで、船が復旧するまでの間宿泊することに決めました』


『あなたの役割は来客aです』

『来客の役割は、犯人を見つけ出すこと』

『もしくは船が復旧するまで生き延びることです』

男 「ざっくばらんとしているな……」

お嬢様 「大丈夫ですの?」

男 「任せておけ」

試験官 『皆さん、我が屋敷にようこそいらっしゃいました』

試験官 『パーティーの準備が整いましたので、一階ホールへとお出で下さい』

お嬢様 「口調が変わってますけど……」

男 「もうゲームが始まったんだ」

男 「気合い入れろ、俺たちは来客aだからな」

お嬢様 「わかりましたわ」

試験官 「今夜はごゆっくりどうぞ」

男 (他の参加者は五名……)

お嬢様 「この中に犯人がいるのですよね……?」ボソボソ

男 「そうだな……」ボソボソ

眼帯 「よっ」

男 「うん?」

眼帯 「お前らも補習か?」

男 「お前も?」

眼帯 「生憎ながらそうなんだわなこれが」

男 (やはり全員が補習か……)

眼帯 「ぶっちゃけお前犯人か?」

男 「そうだと言ったら?」

眼帯 「喜ぶ」

男 「残念だが俺は来客だ」

眼帯 「だーよなー」

男 「因みにお前は?」

眼帯 「俺は来客cだ」

男 「お嬢、cだ。覚えておけよ」ボソボソ

お嬢様 「わかったわ」ボソボソ

男 「他に声はかけたか?」

眼帯 「今から」

男 「俺たちも付き合おう」

眼帯 「さんきゅ」

男 (参加者は眼帯(男)、長髪(女)、キャップ(男)、坊主(男)、ジーンズ(女)……)

長髪 「補習がこんなにもいるとはねぇ……」

キャップ 「まぁ、落第生同士仲良くしていきましょう」

坊主 「そうだな」

ジーンズ 「ふん……」

自室

お嬢様 「何か分かった?」

男 「わかるわけがないだろう……」

男 「手がかりに出来ることは眼帯の役割だな」

お嬢様 「来客cでしたわね」

男 「明言したのは眼帯だけだ」

男 「これから先、来客cを名乗る人間が現れた時にそのどちらかが犯人になる」

お嬢様 「なるほど……」

男 「さて、と……」

お嬢様 「どうしたんです?」

男 「ゲームで勝つにはアリバイが必要だ」

男 「眼帯と長髪に声をかけてある、今日は二人がこの部屋に泊まるぞ」

お嬢様 「そのどちらかが犯人だったら……」

男 「仮にどちらかが犯人だとしても大丈夫だ」

男 「それに今夜殺されるのは……」

長髪 「お邪魔しまーす」

眼帯 「邪魔するぜー」

男 「ゆっくりしていってくれ」

お嬢様 「わたくしお茶淹れますわね」

長髪 「私も手伝うわね」

眼帯 「ぽてち持ってきたぜー」

男 (……さて)

男 「いいか二人とも、よく聞いてくれ」

長髪 「はい?」

眼帯 「なんだよ」

男 「実は俺達が犯人なんだ」

長・眼 「!?」

眼帯 「え、マジ?」

男 「考えてみてくれ」

男 「勝利条件は犯人を見つけ出すこと、もしくは船が直る四日目まで生き延びることだ」

男 「初日はゲームマスターを」

男 「残りの二日でお前たち以外の三人の内誰かを殺す」

男 「お前たちがアリバイをたててくれさえすれば犯人だとバレることは無い」

男 「俺に協力してくれないか?」

風呂入って来ます

いってら~

    ④"
( ^ω^)ノ

しかし駆け引きがなかなか良い感じだな

眼帯 「……お前が裏切らない保証は?」

男 「俺の誠意と真心」

長髪 「会ったばかりの人間によくそんなこと言えるわね……」

男 (食いつくか……?)

眼帯 「まー、裏切らねーってんならいいけどよ」

長髪 「私も、分の悪い賭けは嫌いじゃ無いし」

男 (……違ったか)

男 「悪いな、カマかけて」

男 「俺は来客aだ」

眼帯 「は?」

男 (この2人のどちらかが犯人ならばこの空間に閉じ込められた以上、正体を晒してこの手に乗るしかない)

男 (それをしないということは単にバカか、来客であるということ)

男 「この紙を見せてやっていい」ピラ

眼帯 「全然嘘だって分かんなかったわ……」

男 「どちらかが犯人だったら協力して貰おうと思ったんだが……」

長髪 「残念、私は来客eよ。紙を見せてあげてもいいわ」ピラ

眼帯 「俺も来客cなんだわなぁ」ピラ

男 (当たりだ、お嬢)

お嬢様 (やりましたわね)

男 (参加人数6人中来客は5人)

男 (他に特殊な役がないことはこれで確認できた)

男 (そして犯人はキャップ、坊主、ジーンズの誰かだ)

男 (後は犯人の逃げ場を塞ぐのみ)

男 (俺のゲームを作りさえできれば勝利は堅い)

翌日

使用人の悲鳴が響くや否や、参加者全員が1つの部屋に集まる。

使用人 「ゲームマスターである試験官さんが殺害されてしまいました」

使用人 「犯人はあなた方の中の誰か1人です」

使用人 「あなた方は犯人を突き止め、この事件を解決してください」

男 (始まったか……)

キャップ 「こういうゲームってどうすればいいんですか?」

坊主 「俺もよく分かんないんだが……」

眼帯 「男はやったことあるんだろ?」

男 (ナイスだ、眼帯)

男 「そうだな、互いに会話を繰り返して一日の終わりに投票をするなんてのが大抵だ」

キャップ 「投票?」

男 「例えばだが、こんな紙に犯人だと思う人間の名前を書いてゲームマスターに渡す」

男 「その投票で多数決をとった結果、最も票が多かった人間を処刑する、とかだな」

長髪 「処刑って……」

男 「あくまで便宜上だ。この場合なら犯人を捕らえた地点で終わる筈だろう」

眼帯 「なるほどな」

支援(^-^)

更新してくれると嬉しいです(^-^)/

一日目

男 「では早速、昨日の行動を聞こう」

お嬢様 「大丈夫ですの?」コソコソ

男 「任せておけ」コソコソ

男 「俺達は部屋に戻ったあとやって来た眼帯、長髪と話していた」

使用人 「私達も確認しております」

キャップ 「僕も一緒だよ、坊主くんと食堂で話してた」

坊主 「使用人たちにちょくちょくコーヒーを頼んだから証明はできるぞ」

使用人 「はい、朝まで話し込まれていたようでした」

男 「お前は?」

ジーンズ 「部屋で寝てた」

男 「ふむ……」

眼帯 「殺された時間とかわかんないの?」

使用人 「朝の5時頃以降だと……」

キャップ 「なるほど……」

坊主 「流石に寝てたってのは怪しすぎるんじゃないか?」

ジーンズ 「寝てたよ、文句ある?」

キャップ 「まぁまぁ落ち着いて」

長髪 「でも彼の言うことにも一理あるわね」

男 「証明はできるか?」

ジーンズ 「深夜に目が覚めてから使用人に水を貰ったことぐらいね」

ジーンズ 「あとは朝まで寝てた」

キャップ 「それじゃあちょっとねぇ……」

坊主 「それなら試験管を殺すこともできたんじゃないか?」

キャップ 「確かにその時間帯にアリバイがないのは君だけみたいだけど……」

ジーンズ 「……チッ」

坊主 「その態度も怪しいよな」

男 「えらく突っかかるじゃないか坊主」

男 「まるでジーンズを陥れようとしてるみたいに」ニィ

坊主 「なっ」

男 「こういうゲームで怪しいのは」

男 「喋らないやつと喋り過ぎるやつだ」

男 (後は仕切り屋だが……)

男 「必要以上に喋らない方が身のためだぞ?」

坊主 「う……」

男 「さて、続けるか」

男 「ひとつ、たらればの話をしよう」

男 「部屋にいた俺たちはともかくとしてそこの二人」

男 「仮に、あくまで仮にだが」

男 「席を立つ機会なんてものはいくらでもあったんじゃないか?」

キャップ 「!!」

男 「例えば、部屋に物を取りに行く」

男 「例えば、手洗いに向かう」

男 「本当に殺すわけではないのだから、必要以上に時間がかかることはない」

男 「何か席を立った際のついでに……と考えることはできないか?」

坊主 「そう言えばお前、朝方にトイレに……」

キャップ 「なっ!?」

キャップ 「違う! 僕はあの時ただトイレに……!」

使用人 「投票の時間になりました」

男 「ほれ、紙だ」

キャップ 「くっ……」

使用人 「なお、本日から消灯時間以降に部屋をでることを禁止します」

男 (徒党を組ませないつもりか……)

使用人 「それでは、おやすみなさい」

自室

お嬢様 「完璧でしたわね男!」

お嬢様 「見事にゲームを掌握していましたわ!」

男 「あぁ、そうだな」

お嬢様 「やはり犯人はキャップさんでしょうか……」

お嬢様 「でも、投票で処刑されるのは間違いありませんよね!」

コンコン

男 「来たか……」

使用人 「こちらをどうぞ」ペラッ

男 「すまない」

使用人 「いえ、それでは」

お嬢様 「なんですの?」

『投票の結果、坊主さんが処刑されました』

お嬢様 「!?」

男 「…………」ニィ

『また、これよりルールに』

『・自分の役を他言することは不可』

『・犯人に襲われた場合、反抗してもよい』

『・犯人は、必ず誰かを襲わなくてはならないが、殺す必要はない』

『以上を追加します』

お嬢様 「どうして坊主さんが?」

男 「ヒントは紙だ」

お嬢様 「紙……」

お嬢様 「!!」

お嬢様 「紙を変えたのですか?」

男 「ゲームを崩壊させる超直感が禁止されたのであって超能力は禁止ではない」

お嬢様 「……恐ろしいですわね」

男 「そうだな」

男 (俺の紙以外は適当に別のものに変えさせて貰った)

男 (よって坊主に一票が入ったのみで終了)

男 (さよならだ、坊主)

男 「だがここに来てのルール追加か……」

お嬢様 「なにか問題が?」

男 「いや、こうなると……」

男 (まさかな……)

お嬢様 「それで何故坊主さんを?」

男 「キャップを売るような真似をするやつを信用できるか?」

お嬢様 「あぁ、なるほど……」

男 「ゲームが終了しないから違ったようだがな」

男 (ならば犯人はジーンズかキャップか……)

男 (眼帯と長髪も考えられないわけではないが……)

お嬢様 「ふぁ……わたくしは寝ますわね」

男 「あぁ、おやすみ」

お前らこれ好きなのな…

オチがクソみたいなのしか思い付かないんだが…

男 「さてと……」

男 (今夜は眠れない、か)ガチャ

お嬢様 「すぴー」

男 「おやすみ」バタン

男 (餌になるしかないかな……)

消灯時間が過ぎ、灯りの落ちた暗い廊下。

男以外に人の姿は無く、ただひっそりとした闇が空間を支配している。

男 (追加されたルールは強くこちらの動きを制限するようなtrpgらしくないもの)

男 (しかもそれが不殺も可という意味の分からないもの)

男 (犯人を有利にするなら不殺だけでなく襲う必用もなくすべきだ)

男 (では何故それをしない?)

男 (ゲームマスターの狙いはなんだ?)

男 (さて……)

男 「運営委員」

運営委員 「はい」シュン

男 「ルールに関して質問がある」

運営委員 「消灯時間ですので部屋に戻っていただきたいんですけど……」

男 「お嬢が寝てるんだ、部屋の前だしいいだろう?」

運営委員 「しかたありませんねぇ」

男 「仮に今犯人が襲ってきたとしよう」

男 「もちろん俺は反抗する」

運営委員 「ですね」

男 「それで倒して捕まえた場合、ゲームは終了か?」

運営委員 「その方が犯人であれば」

運営委員 「あなたがカマをかけたように犯人と来客が徒党を組む場合もあります」

運営委員 「来客が来客を襲ってはいけない、というルールはございませんので、襲ってきたのは来客、という場合もあるでしょう」

男 「なるほどな……」

運営委員 「それと、次の投票の準備はこちらでさせていただきます」

男 (まぁ、一度きりしか使えないよな)

男 「ありがとう、助かった」

運営委員 「いいえ。それではお休みなさい」

男 「あぁ」

食堂

男 (とまぁ素直に部屋に戻るわけもなく……)

男 (しかし誰もいないか……)

ジーンズ 「いるよ」

男 「む?」

ジーンズ 「や」

男 「あぁ」

男 「どうした、水か?」

ジーンズ 「ん、それもあるけど、君に会えるかなって」

男 「俺か?」

ジーンズ 「うん。さっきは助けてくれてありがと」

男 「何のことだ?」

ジーンズ 「素直じゃないなぁ」

男 「俺は坊主やキャップの方が怪しいと思っただけだ」

ジーンズ 「ならそれでいいよ」

ジーンズ 「それで君は? 犯人探しかい?」

男 「ジュースを探しに来ただけだ。お嬢が果汁100%のグレープジュースが飲みたいと駄々をこねてな」

ジーンズ 「ふぅん」

ジーンズ 「君は彼女の執事なのかい?」

ジーンズ 「ジュースなら使用人に頼めばいくらでも持ってきて貰えるのに」

男 「外に出たい気分だったんだ」

ジーンズ 「それはやっぱり犯人探しの為じゃないかな?」

男 (なんだ、こいつの狙いは……?)

男 (確かに今犯人である可能性が高いのはこいつとキャップだ)

男 (だが犯人であるならば必要以上に接触するのではなく後ろから一撃を喰らわせるべきだ)

男 (ならばこいつの狙いは……!)

携帯 「いやっほぉう! 国崎最高ーっ!!」

ジーンズ 「うわっ」ビクッ

男 「すまない、俺だ」スチャッ

男 (姉さんからメール?)

会長 『今さらだとは思うが頑張れよ』

男 「」ゾクッ

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