【ラブライブ】にこ「ドロシーちゃんと」 ドロシー「にこにー」【プリパラ】 (62)



トップアイドル。
夢のまた夢だってことは最初から分かっていた。
そう割り切った上で私たちはどこまで、あの雲の上の世界に手が届くのか挑戦を続けていた。...はずだった。


にこ「そう...やめるの」


『ごめんなさい...もう、ついていけなくなってしまって』


『でも、矢澤さんとはこれからも友だ...』


にこ「ありがとう。でも、大丈夫。無理しないでいいから」


にこ「にこは1人でも大丈夫だから」


あなた達の気持ちは少し前から察してはいた。...少しだけ信じていたのに。
裏切られたの?
違う。
私の魅力が伝わらなかっただけ。
私が何も分からなかっただけ。
私が...
何で、夢ってこんなに冷たいのかな

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風が、吹いてきた。

もう、4月だっていうのに、冷たい風。

いや、まだ4月だから北風が吹いてもおかしくないのかな。

あの日から何だか周りに敏感になった気がする。

もともと私はアイドルだから?『自分』が少しでも表れる仕草に細心の注意を払ってきたけど?

自分とは全く関係ない、例えば自然とかに目を向けたのはいつ以来だったかな。


にこ「もう入学シーズンね...」


ウチの学校は春休み中、受付さえすればいつでも学校を見学できるみたい。生徒数が少なくなってるからそれくらいしないと集まらないんでしょうね。

でも必然的にオープンスクールの時期が終わると来校する人は減る。

お祭りが終わった後の田舎みたいね。何ともやるせない感じになる。

私にはもうあまり関係のないことなんだけど...


『あなた達、こんな時期に校内を見学?』


たまに外れた時期にちらほら人が来ても、
それだけでは何も動かせない。

現実は残酷、というか非情で。お前の目は節穴かって何度も叫びたくなる。

頭が悪くても16歳にもなればこれくらい理解できる。

理解していながらもこんなことをするから頭が悪いって言われるんでしょうけどね。


『アイドル研究部、部員募集!』

今日は何をしよう。


まずは活動日誌を書かなきゃね。


今日は何をした?


屋上で踊ってみたわ。


にこ「...虚しいわね」


口ではそう言いながらも欠かさず続けているあたり、にこも随分引きずってるなあ、なんて思ってみたり。

今日も誰も来なかったけど

あと1週間もしないうちに入学式だからその日に備えて練習しとかないとね。

活動日誌を埋めた後は、


情報収集しなくちゃね。


アイドルとは移り行くもの。川の流れなんて生温いものじゃないわ。


にこ「やはり今期もAーRISEはぶっちぎりね...」


去年、デビューとともに人気のビッグバンとなったスクールアイドルユニット。


近年、アキバにできた最高峰とも言われる芸能学校UTX学院が自信を持って送り出すというネームブランドもあるけど


にこ「住んでる世界が違うわね...」


あーもう、やめ!戦意喪失するだけ!


大体スクールアイドルはAーRISEだけじゃないし?


トップだけ見るのはにわかのすることよ!

にこ「......」


ひとつ、分かったことがあるわ。


歌やダンスだけなら私はAーRISEの次の次の次の次の次の次の次...何回言ったかしら?...くらいあるってこと。


つまり、このにこちゃんにはそれだけの素質があるってこと。


変に焦る必要なんてなかったんだわ!


にこ「...ダメダメ」


いけない。こうしている今にもスクールアイドルは進化してるんだから。


どんなに光の速度の通信が広がったからってスクールアイドルのムーブメントを隈なく捉えることなんて不可能!つまり!


にこ「練習あるのみってことよ!」

時が経つのは早いわね。


時は金なり、光陰矢の如し、とは本当に先人の知恵には驚かされるばっかりだわ。


諸葛亮孔明や聖徳太子がもしスクールアイドルをしてたらどうなっていたでしょうね。にこには歴史なんて全然分かんないけど...


にこ「何考えてんの、私」


1人の練習にはもう慣れたはずなのに、


いや、慣れてしまったからこそ、バーゲンセールの列のように意味分からない雑念が入ってくる。


そう、歌や、ダンスでは周りに勝っている。


でも、世の中ってのは単純な実力だけで願いが叶うほど便利にはできてないのよ。

にこ「失礼します、アイドル研究部の矢澤にこです。鍵を返しに来ました」


『矢澤さん、もう部員が1人しかいないのに、よく続けるわねえ』


にこ「1人でもアイドル研究部が消えたわけではありません。私は、卒業するまでこの部屋をアイドル研究部の部室として使用するつもりです」


にこ「失礼しました」


分かってる。先生が本当に部員がにこしかいないのに健気に頑張っているにこを労ってくれていることなんて。


でも、何でよ。今すぐ机をひっくり返したくなったわ。


そんなこと言うくらいならあんたがやってみなさいよ。


にこ「...はあ」


希「あれ?にこっちやん。今日は早いなあ」


にこ「早いってあんたの体内時計は...」


希「何言っとん?今、ちょーど正午、お昼時やで?」


にこ「...は?」


とうとう、時間の感覚までおかしくなったみたいね。

にこ「希こそ、何でこんな時間に学校に来てんのよ」


希「ちょっと絵里ちがまーた無理しようとしとったみたいやから神田明神からすっ飛んできちゃった」


にこ「それで鞄の中から巫女服がはみ出してるのね」


希「わっ...!よぉ、落ちんかったなあ」


にこ「よく、気がつかなかったわね」


希「いやぁ、一気に仕事を片付けてやれ!って意気込んで重たいもん持ったらな?どーにも無理があったみたいで」


希「親切な二人の女の子に助けてもらったんやけどな」


にこ「そう、それは良かったわね。じゃあ、にこはもう帰るわ」


希「ちょっと〜、釣れないなーにこっちは」


にこ「私はあの生徒会長嫌いなのよ...分かるでしょ?」


希「む〜。じゃ、今度2人で話そーな」


にこ「はいはい。じゃ、頑張んなさいよ」


...希。あんたはどうして、そんなにヘラヘラしてられんのよ。

また、来てしまった。


スクールアイドルショップ。


今年度から部員が1人しかいないって理由で大幅に部費がカットされるからもうほとんど来ることがないであろう、場所。


夢の集うところ。


夢の儚さを知るところ。


にこ「...」


にこはこのスクールアイドルショップから何も知らない状態で夢を始めた。


また、『AーRISEすら知らないようなスクールアイドルビギナー』がこの場で夢を始めようとしている。


...これはにこの自己満足よ。

何か眠くてぐちゃぐちゃになったので本日はここまで。

おはようございます。ちょっとだけ、更新します。

【矢澤家】


にこ「ただいまー」


にこママ「お帰り。お昼はもう食べた?」


にこ「うん、食べちゃったよ。こころ達は?」


にこママ「部屋で遊んでる。みんな、にこの帰りを待ってたわよ」


にこ「そう。悪いことしちゃったかな」


にこママ「そんなことないわよ。宇宙ナンバーワンアイドルのにこにーが始動するんだーってみんな心待ちにしてたから」


にこ「...宇宙ナンバーワンアイドル、か」


学校ではあんなだけど、


家では、妹弟達の前ではにこはスーパーアイドルなんだ。


ここあ「にこにーお帰り!今日は何したの?」


こころ「おかえりなさいませ、お姉様。今日は新メンバーのスカウティングでしたよね?」


こたろう「おかえりー」


にこ「ただいまー。そうよ?このにこにーに釣り合うメンバーとなるとホンット探すのに苦労してね。連日部室のドアを叩く人間は多いけど全員ふるい落としているわ」


何と悲しい嘘。


私に対して、よりも私のつまらない嘘で妹弟を期待させてしまっていることが、悲しい。


でも、この子達の笑顔を曇らせたくない。


ウチは両親が出張が多いから普段、普通の家の子どもより、親と一緒にいる時間が少ないから。


にこ「じゃ、汗掻いちゃったからシャワー入るわね。アイドルは...いや、女の子なら1日に2回以上はシャワーに入るものなのよ」


やばい、涙が出そうになった。


泣いてる姿なんて、絶対にタブーよ。

【深夜 0時】


にこ「......」


今日は、ねむれない。


にこの体内時計では4時間は練習したはずなのに実際は半分くらいだった。あまり身体を動かさなかったから眠るに値する分だけの体力を消耗してないのね。


こんな夜が一体どれだけ続くのかな...


あの子達に嘘だっていつバレちゃうのかな...

【翌日 アイドル研究部部室前】


希「にこっち、おはようさん」


にこ「希!?あんたいつから部室の前で待機してたのよ!」


希「さーな。ウチ、昨日約束したやろ?2人で話したいって」


にこ「覚えてたの?しかも、翌日だなんて誰が言ったのよ」


希「明日じゃないって誰も言ってないよな?」


希にかかると、屁理屈もたちまち理屈が通ったものになってしまう。


希「さ、にこっち。はやく部室に入ろうや」


にこ「う...部外者なんだから少しは遠慮しなさいよね!」

希「にこっち、今日もネットサーフィン?」


にこ「アイドルたるもの情報のアンテナは常に張っておかなくてはならないわ。それに今日、雨でしょ?やることが殆どないのよ」


希「ふーん、そうなんや」


今日は、スクールアイドルから少し足を広げて、
他のアイドルを調べてみようかしら。


希「...妹弟さん達にはまだメンバーを探してる、で押し通してるん?」


にこ「...は!?」


希「分かるのよ。あなたが夢を壊したくないこと。ずっとあの子達の中でのアイドルになりたいってこと」


にこ「...なら、気安く喋らないでくれる?」


希「そんな軽い気持ちでなんか言ってない。嘘だったとしてもせめてにこっちが1人でもアイドルしてる姿を、1度くらい見せてあげないと」


希「ずっと待ってるあの子達がかわいそう」


希「...そうは思わへん?」


...正論だった。


にこはいっつも口先ばっかりで言葉だけで期待を持たせてきた。


それがどれだけ卑怯で、最低なことだと気付いていながら


にこの変なプライドが、邪魔してきた。


にこ「...1人じゃ、意味なんてないのよ」


希「...ある」

希「...あるよ、にこっち」


にこ「...それは、ソロ活動してるアイドルなんて多いけど?」


にこ「にこは1人じゃ意味がないのよ」


希「スクールアイドル、ならな」


にこ「ちょっ何勝手に備品のパソコンに触ってんのよ!」


希「その備品を調達したのは誰やと思う?」


にこ「...あんた個人で払ったわけじゃないでしょ!」


希「お、あったあった。にこっちもちゃんと調べてるやん」


偶然見つけ出したように言ってるけど確信した様子で検索エンジンではなく履歴から探し出したのを見ると


にこの考えなんてお見通しだって言わんばかね。...ホント、そのお節介焼き。相手を間違えてるわよ。


『プリパラ』


希「にこっちがスクールアイドルとして1人で活動するのが嫌なら」


希「こういう手もあるんと違う?」


...それは、にこが一番敬遠していたものだった。


でも、もう、にこのプライドも錆びついてきちゃったのかな。


妹弟の笑顔を守るためにアイドルをする。最初はくっついてくる副産物でモチベーションのブースターだったのに


今じゃ目的にまで昇進するとはね。


にこ「...考えておくわ」

【プリパラ 控え室】


ドロシー「ねーレオナ、見つかった?」


レオナ「ドロシー&レオナの3人目のアイドル...だよね?」


ドロシー「そう!なーんかどいつもこいつもパッとしないのばっかりでさー。もーやんなっちゃうよー!」


レオナ「それは...まだ探し始めたばっかりだから、見つからなくても仕方ないんじゃないかな...」


ドロシー「ちがわい!ボクらに合う奴がいないのが悪いんだい!」


レオナ「...ドロシーがそういうなら、って言いたいけど今回は流石に無理が...


『さあ!次はソロデビューした期待の新人!
ニコちゃんのステージです!』


ドロシー「......」


ドロシー「いたじゃん」


レオナ「ん?」


ドロシー「いたじゃん、3人目」

今回はここまで。やっとドロシーが出せました。

再開します。構想が思いつき次第投下しますので不定期になりますが見てくれると嬉しいです

レオナ「え?でもあの人、いつも1人で歌ってるし、ライブも不定期だし...会えるの?」



ドロシー「会えるの!前々から上手いな〜って目をつけてたけど今見て決めた!ボク、あの人誘ってくる!」



レオナ「答えになってないよ、ドロシー!」


ドロシー「レオナ、ボクについてきなー!」

ふう。


ライフ間の回数を重ねて、大体プリパラがどういうところか、掴めてきた気がするわ。


にこの思った通り、ここは少しキラキラしすぎている。


夢を始めるのは簡単でしょうけど夢を終えるのは難しそう。


引き時が分からないままなあなあでアイドルを続けて気づけば誰もついてこない。


そんな悲しい最後を迎えそうって考えるのはにこのマイナス思考が過ぎるだけなのかしら?


にこ「明日はそろそろ違う曲を始めてみようかしら?」


ドロシー「いた!ほら見ろ、レオナ!ボクについてくりゃよかったんだよ!」


レオナ「...ドロシーが、そういうなら...」


にこ「...あんた達。私に何か用でもあるの?」


ドロシー「そうさ、単刀直入に言うよ」


ドロシー「ボクとチームを組んで神アイドルを目指してよ!」


にこ「...単刀直入に返すわ」




にこ「お断りよ」

ドロシー「何でさ!このボクがせっかくチームに入れてやろうってのに!」



レオナ「ドロシー。リラックス、リラックス...」



にこ「今のでさらにあんた達とは組まない決心をしたわ」



にこ「あんたみたいにものの頼み方もろくに知らない奴、グループを組むことの重みを知らない奴と組むほど、私は暇じゃないわ」



にこ「あんた達、実力はそこそこあるんでしょう?双子のドロシー・ウエストとその弟のレオナ・ウエスト。2人でチアリーディングをやってたんだっけ?」



ドロシー「ちょっと!何でそこまで詳しく知ってるのさ。ストーカー?」



にこ「ストーカーとは人聞きが悪いわね。アイドルするならリサーチは基本中の基本よ」



にこ「あんた達くらいなら別に私じゃないとダメってことはないでしょ?同じくらいの実力か、それ以上の人間でも頼み方をちゃんとすればチームになってくらるんじゃないの?」



ドロシー「いやだね。ボクハナあんたとチームが組みたい!」


レオナ「失礼な、態度をとったことは謝ります。だから...ドロシーと、私とチームを組んで下さい」



にこ「......」


困ったわ。ここまで厳しく言えば引き下がると思ってたのに。


口は悪いけど根性だけはすわっているって感じかしら?


いいじゃない。乗ってやろうじゃないの



にこ「いいわ。じゃ、今からステージで勝負しましょう?」



ドロシー「そうこなくっちゃ!レオナ、ボク達の実力、見せてあげ



にこ「ただし!ドロシー、あんた1人でかかってきなさい?」

ドロシー「はぁ?僕一人で!?」



にこ「当然でしょ?見たところ、私をチームに入れようと言い出したのはあんたの方みたいだし、それにアンタ、弟に頼らないとステージにも立てないクチかしら?」



にこ「もちろん、そうだと分かった時点でこの勝負はなしよ」



ドロシー「うぐぅ...」



レオナ「ドロシー...」



ドロシー「いいさ、やればいいんだろ!ボク1人で!」



にこ「そうこなくっちゃね。さ、ステージを予約するわよ」

めが姉ぇ「はい、ドロシー・ウエストさんと矢澤にこさんの対決ライブ、予約、受け付けました!」



にこ「30分後だそうね。この時間、アンタだったらどう使う?」



ドロシー「どうもこうも、ボクはもう準備万端だからね。アンタを倒すイメージトレーニングでもしておくさ」



にこ「そう。ま、上手くいかないでしょうけど。...ところでレオナはどこまで付いてくるのかしら?」



ドロシー「どこまでってまだステージは始まってないだろ。レオナがいて、何か問題でもあんの?もしかして男が苦手、とか?」



にこ「私がその程度のことにビビると思う?ただちょっと気になっただけよ。
...疑問と言えばもう1つあるわね」



ドロシー「?」



にこ「ここって夢を叶える場所なんでしょ?
そんなとこでこんな無粋な戦いを流すなんてお門違いだと思わない?」



にこ「大会とかと違って完全に個人の話でしょ」



ドロシー「...それは違うよ」


ドロシー「確かにボクとあんたの様に喧嘩みたいなライブバトルを流すのに虫が好かない人もそりゃいるだろうさ」



ドロシー「でもさ、そういうのもひっくるめて自由にできるからプリパラはいいと思うんだよ」



にこ「ふーん。わっかんないわね」



ドロシー「まだプリパラを始めたばっかのアンタには分からないことだろうけどさ」



めが姉ぇ「ドロシーさん、にこさん、ステージのスタンバイができました!」



にこ「負けて、弟に泣きつくんじゃないわよ」



ドロシー「へっ!ボクの方が抱かれる側だっつの!」



めが姉ぇ「コーデチェンジ、スタート!」

相変わらず、このシステムには慣れないわね。



くるくる回りながら着替えて下からステージに飛び出す。ドームとかのライブみたいじゃない。



どれだけ夢を与えたら気がすむのよ。



にこのコーデはDreaming Girlのキューピッドハートシリーズ。別に皮肉とかじゃなくて単にめが姉ぇの選別眼でにこに会うって判定が出ただけ。
実際デザインはストライクゾーンだしね。



ドロシーはいつも通り、Fortune Partyのツインギンガムシリーズ。チアリーダーらしい元気なデザインが多いブランドね。こっちも着る人にマッチしてると思うわ。



ドロシー「(後で泣くのはあんたの方だよ!)」



程なくして曲のイントロが流れ始める。Make it!もう聴きなれたわ。



あまり聴いてていい感じがしないから性急に次の曲に移りたいところね。もういっそこれで最後にしようか。



イントロが、終わる。歌い出し。最初の数秒で勝負を決めてやるわ。



『おしゃれなあの子、真似するより〜』

【控え室】



ドロシー「くっそぉぉぉ!!」



にこ「約束通り、私が勝ったから3人目は他を当たりなさい。じゃあね」



冷たい態度を取ってるけど実際そこまで大きな差はなかったと思う。



ここで見栄を張ってレオナまでステージに立てたらにこ、負けてたわね。



だからこそ、にこの弱みの出ない1対1にしたんだけど。



ドロシー「...待ってよ」



にこ「まだ、何かあるっていうの?」



ドロシー「失礼な態度をとったことは謝るよ。だからさ、せめて、ボクを弟子にしてくれないかな?」



にこ「弟子?何でわざわざそんな面倒くさいことしなきゃいけないのよ」



ドロシー「ボク、本当に自信があったんだ。でもアンタに負けた。だからボクに勝ったアンタから学びたくなったんだよ!」



ドロシー「この通りだ!」



にこ「...それを利用して私をチームに引き込もう、なんて考えてないでしょうね」



ドロシー「そんなこと...ないさ!勝負には負けたんだから!」



にこ「ふーん...そういう点では潔いのね」



にこ「じゃあ、条件付きで弟子にしてあげる。しかも私がちょっとでもダメだ、と判断したらすぐに破門。それでも構わないなら、明日から来なさい」



ドロシー「上等だ!」

ドロシー「どうしてプリパラの外でやるのさ!」



にこ「条件に逆らうつもり?」



ドロシー「ぐぅ...ここじゃあ床も鏡もないのに...」



にこ「環境に文句を言わない!」



ドロシー「は、はいぃ...」



にこ「まともに返事はできるようになったみたいね。じゃあ早速第1回を始めるわ」



にこ「あんた、自然な笑顔、出せる?」



ドロシー「もちろんさ!見てろ!」



ドロシー「テンションマーックス!」



......



にこ「笑顔という形だけは整っているわ。でも、まだまだね」



ドロシー「マジで!?いや、もっかい見れば理解できるさ!」



にこ「もう一回見るまでもないわ」



にこ「人を笑顔にする前にまずは自分が自然な笑顔を出せるようにする!いい?例えばこういう風に...」

にこ「にっこにっこに〜!あなたのハートににこにこにー!笑顔、届ける矢澤にこにこ!」



にこ「にこにーって覚えてラブにこっ!」



にこ「さ、お手本は見せたわ。これを踏まえてやってみなさい」



ドロシー「にっこにっこ



にこ「別ににこにーしろとは言ってないわ」



ドロシー「...」



ドロシー「ボクの恥ずかしい思いを返せ!」



にこ「恥ずかしい、ですって?気が変わったわ。後30回にこにーしなさい!」



ドロシー「は!?横暴だ!ならアンタこそテンションマーックス!しろよ!」



にこ「いいわ、余裕よ。
...テンションマーックス!!」



にこ「ほら、やったわよ!」



ドロシー「マジでやりよったよ...」



にこ「ぼーっとしない!にこは時間を無駄にする人間は大嫌いよ」



ドロシー「くぅ...やればいいんだろ!やれば!」



にこ「キレがなかったら一からやり直しよ」



ドロシー「キレってなんだよ!そんなのあるのかよ!」



にこ「ほら、早く帰ってレオナに慰めてもらうんじゃないの?」



ドロシー「ぅぅるさい!ボクが慰める方だ!」

【後日】



にこ「30秒遅刻よ」



ドロシー「誤差の範囲だよ!」



にこ「アイドルは時間厳守でしょ?2回目はないと思いなさい」



にこ「第2回!あんたはそのチアリーディングの技術をダンスに活かしているそうね」



ドロシー「そうさ、盆踊りでも活かせっていうつもりならやらないよ」



にこ「誰がそんなこと言うもんですか」



にこ「チアリーディングのおかげもあってあんたのダンスはかなりの実力がある。初心者によくあるおっかなびっくりして動けないって問題はないわね」



ドロシー「もちろんさ!ボク程度胸がある人間はそうそういないからね」



そういうやつに限って臆病なことが多いんだけど、触れないでおいてあげるわ。



にこ「じゃあ逆に細かい動きは?ステージは応援の舞台ほど跳んだり跳ねたりできないわ」



にこ「アンタが負けた原因のひとつにはそういう細かい動きに気を遣えてないことがあると思うのよね」

ドロシー「...細かい動き?」



にこ「そ、例えば指先とか視線とかね。今からそれを意識してちょっと踊ってみなさい」



ドロシー「わかったよ。意識すりゃいいんだろ」



......



にこ「ダメね。全然なってない」



ドロシー「ウソ!?いつもの3倍くらい意識してやったのに」



にこ「私にはとてもそうは見えなかったわ」



にこ「...アンタ踊ってる時だけ、練習してる時だけ注意すればどうにかなると思ってるでしょ」



ドロシー「...そんなこと、ないし...」



にこ「来て。これは踊る以前の問題よ」

ドロシー「今度はプリパラの控え室に連れてきてなにさせようってのさ」



にこ「あんた達、普段はステージ前の緊張とステージ後の疲れで目を向けることは少ないでしょうけど」



にこ「ここを掃除するのにどれだけの神経を使うか分かってる?」



ドロシー「...つまり、ここを掃除しろと?」



にこ「言わなきゃ分かんない?別ににこは1人でやっても一向に構わないわ。面倒くさい師弟関係が終わってくれるんだもの」



ドロシー「...いちいち棘のある言い方するなぁ...やるよ!それで細かい動きが身につくっていうんならいくらでもやってやるさ!」

ドロシー「ほーら!やってやったぞ!」



にこ「私が半分終わらせる間にあんたは4分の1もできてなかったけどね」



ドロシー「いちいちつっこんでくるからだろ!」



にこ「...でも、文句言ってる割に良くできてるじゃない」



ドロシー「...そう?っていうか急にデレるなよ。調子崩れる」



にこ「誰があんたにそんなサービスすると思ってんの?もしかしてツンデレが好み?」



ドロシー「そんなわけないだろ!ボクは清純派一択だ!レオナみたいな!」



にこ「そこまでは聞いてないわ」



ドロシー「誘導尋問だ!」



にこ「アンタ、詐欺に引っかかりやすそうね。気をつけなさい。...さ、今日のレッスンはここまで」



ドロシー「ほとんど掃除しかしてないじゃん!」



にこ「あら、実践練習なら今すぐにでもできるんじゃない?」



にこ「せっかく綺麗にした部屋、誰も使う前に汚しちゃったら勿体ないでしょ。はやく出ていきなさい」



にこ「次回は遅刻するんじゃないわよ」

今回はここまでです。

再開します。


にこ「ただいま」



ここあ「お帰りー!にこにー、観たよ!にこにーのライブ!すっごく可愛かった!」



にこ「でしょ?もっと褒めてくれたっていいのよ?」



こころ「お帰りなさいませ。今日もお姉様は誰よりも目立っていました!」



にこ「うんうん!みんなゴメンね~。今まで中々にこの歌っている姿、見せられなくって」



こころ「お姉様に無理を言うわけにはいきませんわ。お姉様のペースで、ゆっくりと見せてくれれば私はそれで」



にこ「もう、我慢しなくたっていいのよ?にこはちょっとやそっとのハードスケジュールではへこたれないんだから」



にこママ「お帰り。にこってば人気者ね。帰ってきた途端囲まれて。出待ちされて...あれ?家で待っているのは家待ちっていうのかしら?」



普通、自宅で待っているファンなんて通報ものだけどにこにとっては最初にして唯一と言っていいものだから。宝くじか何かに当選した時より遥かに勝る喜び。



...宝くじどころか、家族の声援に匹敵する幸福感を今まで一度も味わったことがないんだけどね。



にこ「虎太朗は?」



にこママ「お昼寝。帰ってきたらにこにサインもらうんだーってはりきってたのに」



にこ「サイン、か...頼めばいくらでも書いてあげるわよ」



こころ「では、お姉様。早速ですが一筆、いただけないでしょうか」



にこ「はいはい。一つと言わずいくらでも書いてあげるわよ~。ここあは?」



ここあ「あ、うん!わたしもにこにーのサイン、ほしいな!」



ここあ「ねえ、にこにー。にこにーはプリパラでは1人で歌うの?」



もちろん、ここあに悪意なんて欠片もない。
ただ、純粋に1人で歌うにこに対して疑問を抱いただけ。
別にソロはにこだけじゃない。よく聞くあたりだと北条そふぃなんかあれだけ上手いのにソロアイドルじゃない。



...何、ムキになってるんだろう。
決めたじゃない。1人になったって変わらずやっていくって。



にこ「あのね、ここあ」

にこ「あのね、ここあ」



にこ「今はプリパラでアイドルやってるけどやっぱりスクールアイドルが1番なの」



にこ「ほら、今にこのグループはメンバーがいなくてお休み中でしょ?でも休んでいるからと言って何もしてないことはない」



にこ「プリパラでにこが有名になったらアイドル研究部にも多く人が集まってくるようになる。プリパラってとてもたくさんの人が観れるでしょ?アピールするのに使わない理由がないわ」



この上なく、惨めだった。
言葉を紡げば紡ぐほど、にこがどれだけ1人を怖がっているか、一刻も早く1人を脱したいか、メガホンでも当てられたようににこの中に伝わってくる。



じゃあ素直にドロシーちゃんやレオナ君とチームを組めばよかったやん。



きっと希なら間髪入れずにそう言うでしょうね。



ここあ「そーなんだ」



ここあ「じゃあもっとがんばらないとね!」



こころ「こらここあ!お姉様にワガママ言ってはいけませんわ!」



にこ「ワガママでいいのよ。にこが望んだからやってるんだし、オーバーな要求くらいが原動力にはちょうどいいから」



そう、にこがしたいからそうしてるだけ。
別にドロシーまで巻き込む必要なんてどこにもない。砂粒ほどもない。
だから、いつでも縁を切れる厳格な昔風の師弟関係は何よりもやりやすくて、



...何よりも私の心を締め付けた

妹弟に、ドロシーを弟子にとっていることは話さなかった。
にこがイメージした希と同じ回答を返してくるのが目に見えてたから。



返す言葉ならショーケースに飾れるくらい持ち合わせているけどもうこれ以上笑顔を保っていられる自信がない。



にこ「次回は...そろそろ次のステップに進んでいいかしらね」



無論、ドロシーのレッスンについて、であって断じてにこが進むのではない。
にこの進む道なんて言葉にするまでもないし。



5月になって冷たい北風は帰省でもしたのかめっきり姿を見せなくなった。
今年は冬将軍が健闘したせいで大分遅めの春の陽気だと天気予報が言っていた。



ドロシーは数回に渡る清掃活動と、もちろんダンスのレッスンも重ねにこの予想を30°くらい上にいくペースで上達していった。



...良い兆候ね。

一旦席を外します。
かなめちゃんの話も面白そうですね


ドロシー「...今日はダンスレッスン中止?」



にこ「そうよ。見ての通り練習場所の周辺で工事が始まったの。2、3日で終わるって話。スタント系のアイドルを目指しているならその中での練習を検討するけど?」



ドロシー「いや...遠慮しとく。プリパラでの練習もしないんだったよね」



にこ「このままじゃプリパラ清掃人にジョブチェンジしちゃうものね。あ、もちろんそっち方面を希望するなら...」



ドロシー「もういいよ!それ!」



にこ「アンタってバラエティ性に富んでいるわよねぇ」



ドロシー「誰かさんのおかげでね。結局今日は解散ってことでいいの?」



にこ「練習場所が使えないのなら...」



「今日は解散。自主練を怠らないこと」



その一言でドロシーのモチベーションをなるべく落とさずにこの場をお開きにすることができた。



にこ「今日はおしまい、なんて言うと思った?」



ドロシー「...へ?」



にこ「常にアイドルとして振る舞うことはできない。だからこそアイドルをしていない時間の過ごし方にも注意を払わなければならないわ」



にこ「街に繰り出すわよ。今日は初めての校外授業といったところね!」



にこは何がしたいんだろう。

にこ「あんた達のことだからファッションに関してはとやかく口出ししなくてもいいでしょうから敢えてファッション店には寄らないけど」



ドロシー「もちのろんさ!ファッションなら師匠にだって引けをとらないと思うね」



にこ「こっそり、初めて師匠って言葉を使ったわね」



ドロシー「それだけボクが敬意を払ってるってことだよ。悪い気分はしないじゃん?」



にこ「急に呼ばれ慣れてない愛称を使われたら気にするわよ。確かに言われて悪くは思わないわ。皮肉じゃない限りね」



ドロシー「ボクを疑ってるな~!」



にこ「これまでの態度から疑われない方が不思議だという考えには至らなかったのね」



ドロシー「皮肉の使い方はアン...師匠の方が上手いだろーよ」



にこ「あんたの方こそ呼び慣れてないじゃない。それで変に縮こまるなら今すぐその呼び方はやめやさい」



ドロシー「もー、ボクが師匠にビビって遠慮したことある?」



にこ「思い当たる節が怖いほどないわね。...見えてきたわ。ここが最初の目的地よ」



ドロシー「...わんこそば?大食いでしか馴染みがないよ」



ドロシー「...まさか、本当に入るの?」



にこ「当たり前でしょう。これは授業よ」



側から見れば見た目によらないハングリーな女子2人が新たな伝説でも作りにきた、とでも見えるのかしら?
滑稽な光景ね。

ドロシー「身体のサイズと胃袋の容量は比例するんだね」



にこ「う...うるさい。例外は普段あり得ないから例外って言葉をもらえるのよ」



ドロシー「師匠って呼び方は自分の可能性を手放しで託すことのできる人にこそ与えられるって思考ははたらかないのかね」



にこ「ドロシーじゃなかったらね」



ドロシー「ああもうやっぱりこの流れ!しかもボクをからかう時だけ純粋な笑顔を見せるのやめなよ!」



ドロシー「そんなにボクの困った顔を見て楽しいかっつーの!」



にこ「師匠ってみんなドSなもんでしょ」



ドロシー「弟子として絶対に知りたくなかった事実だよ!」



...楽しんでる、ね。



本気で嫌がっている人をただ傷つけるためにからかって楽しさを覚えるなら人間としてそいつはクズで、ドロシーから離れる時のためにクズな一面を見せるのもまた方法の一つだけれど



にこはドロシーに嫌われるためじゃなく、ドロシーにもっと関心を持ってもらうため



さらに詰めていくなら、好かれるために、やってるの?



ドロシー「ドS師匠に付き従うドロシーはドMになるわね」



にこ「誰がドMだ!このツンデレ!」



これはにこがしたいこと。
にこがしたいからそうしているだけ。

ドロシー「次は文房具?一貫性がないね」



にこ「知識は役に立たないことはあっても損になることはまずないでしょ」



にこ「文房具と言えば学生やデスクワークの多い会社員にとって水や食料と並ぶ必需品といっても過言ではない」



にこ「そこをガッチリ抑えておくのも人気アイドルへの道になるわ」



ドロシー「師匠が言うんならそうだろうけどさ」



にこ「信じきるの?」



ドロシー「二度も言うのは恥ずかしいよ。ボクは師匠の弟子」



にこ「態度がコロコロ変わって面倒な子ね。てっきりアイドルと関係ない、と突っぱねてくると思ってたんだけど」



ドロシー「師匠が教えてくれたんだろ?一見、全く繋がりがないように見えても必ず後で実になる。実際に口に出してはいないけど伝わってるんだよ」



ドロシー「弟子は師匠の背中を見て、育つんだからさ」



にこ「こっちとしては手がかからなくなって助かるわね」



ドロシー「へへっ二人ともハッピー、だね」



にこ「ちょーし狂うわ。お喋りが目的じゃないんだからもう行くわよ」


ドロシー「文房具ってこんなにたくさんあるのかよ...これじゃあ服と同じじゃないか」



にこ「でも特別大きく違う点もないし服より軽い気持ちで選べるわ」



ドロシー「こんなんなら春休みに大急ぎで買い揃えるんじゃなかったよ~」



にこ「後悔先に立たずね。にこも人のことは言えないけど...これを機に選びなおしてみたら?ドロシー、今年から中学生なんでしょ」



ドロシー「うわ、それもリサーチ済み?」



にこ「まーだにこの情報収集能力の高さを理解していないようね?何なら今日中にドロシーのおねしょの回数だって調べ上げるのも不可能じゃないんだけどなー」



ドロシー「やめてそれはホントやめて」



にこ「へー、それがあんたの弱みなんだー」



ドロシー「師匠の学年はどうなのさ」



にこ「いくつに見える?」



ドロシー「うーーーーん...
分かんないよー!教えてっ」



にこ「ダーメ。ただ一つヒントをあげるとするなら」



にこ「ドロシーほど若くはない。入学なんて晴れ晴れとした気持ちはアルバムの1ページ」



にこ「それくらいね」



ドロシー「今度はポエムを詠み始めたよ」



にこ「アイドルするならシンガーソングライターになるにせよならないにせよ、曲の一つくらい自分で書くくらい自立しないと」



ドロシー「ほんっとどんなことでもアイドルに絡めてくるね」

にこ「たくさん買うのね、後で欲しいものが見つかって悔し涙を浮かべることになるわよ」



ドロシー「ならないさ。だって半分はレオナの分だもん」



冗談も嘘もなく。ドロシーにとっては朝起きたらおはようという習慣と変わらないのね。



にこ「そう。親切なお姉さんなのね」



ドロシー「親切?ボクとレオナは一心同体。もったいぶった感情なんてただの飾りだよ」



にこ「だと思った」



にこ「ねえ、レオナを連れてこよう、とは思わなかったの?」



ドロシー「うん」

即答、だった。



にこ「一心同体なんでしょ?」



ドロシー「そうだよ。レオナはボクがいなきゃ何もできないってほどヘタレじゃないけどボクがいなきゃダメ」



ドロシー「双子ってのはどこまでも似るものでボクもレオナがいないとダメ」



にこ「...破門されるのが嫌だから寂しいのにも耐えている。のかしら?」



ドロシー「ねえ、本当何度も言わせないでよ」



ドロシー「弟子は黙って師匠についていく、それは当たり前」



ドロシー「でもボクが師匠についていくのは誰にも強制されたわけじゃない」



ドロシー「ましてやよくある弟子と師匠の関係だから、でもない」



ドロシー「ボクがそうしたいから、師匠についていくんだよ」



にこ「...!」



ドロシー「ボクがボクの意志で師匠のそばにいたい。師匠のそばに居続けるためには師匠の条件を守る」



その言葉は。にこの頭のショーケースを、データチップを、何処を漁っても。



出てくることはなかった。



にこ「あんた、馬鹿ね」

にこ「...馬鹿なドロシーにはこれからのレッスン、スーパーハードコースをプレゼントするわ」



ドロシー「ええ!?ボク今いいこと言ったなって思ったのに!恥ずかしいの、台無し!?」



にこ「そこはもっと捻くれて返すべきだったわね。減点」



ドロシー「何の点数を引いてるんだよ!」



にこ「ふふっさあ恐怖しなさい」



にこ「なーんて冗談よ。今日の校外授業の配点は特別式。細かくビクビクするのは無用だから」



ドロシー「びっくりさせないでよ、もー!」



ドロシー「お詫びにパフェ奢ってよ!パフェ!」



にこ「弟子にお金をかける師匠がいると思う?」



にこ「...それがいるのよね。今回だけ特別よ」

ドロシー「美味しかった!師匠、よく知ってたね、ここのメイド喫茶」



にこ「にこが食べ歩きした結果、一番クオリティが高いと太鼓判を押せるお店よ。どう?満足した?」



ドロシー「しないわけないじゃん!レオナにお土産できないのがこの上ない悲しみだよ!」



にこ「今度、2人で行ったら?」



にこなんかとじゃなく。
心の底から通じ合えるパートナーと共に。



ドロシー「うん。でも今度は師匠とボクとレオナ、3人で行こうね!」



...全く。
こいつはどこまでにこのことを引っ掻き回して
混乱させて



楽しませるの。



にこ「その内、ね」



にこ「...もう、こんな時間。レッスンは終わりね」



ドロシー「えー、もう時間なのー?...あ、陽が暮れるの、気づかなかったや」



いつもなら太陽が沈んでいくのをリアルタイムで凝視しているくせに。



ドロシー「それだけ、レッスンが充実してたってことだよね。ありがとう、師匠」



にこ「...ありがと。今日は楽しかったわ」



ドロシー「え」



ちょっと、何抜かしてるのよ!
これはレッスンよ!
何で友達と週末に出かけて、明日学校で会えるのに別れを惜しむ時みたいな態度とってるのよ!



にこ「〜!明日に疲れを残さないように今日は早く寝るのよ!外を歩き回った時の疲れって運動とは違うんだから!」



これはにこの自己満足。
にこの自己満足にドロシーを巻き込む余地なんてない。...の?



もう、巻き込んでるじゃない。
巻き込まれてる、とも見て取れるのかな。



にこのしたいことって。
にこの望みって

6月になった。



春はボルテージを上げて夏色へと衣替えに忙しいところ。
爽やかな風の代わりに眩しすぎる陽射しが照らす、7月への準備段階の灰色。



ドロシー「ねえ、師匠。ボクついに3人目を見つけたんだ!」



にこ「よかったじゃない。実力は釣り合う相手なの?」



ドロシー「おかげさまで!まだ、ぎこちないところもあるけどさ。師匠が言ってた通り細かいところに気を使ってるからどうにかなりそうだよ」



にこ「ね、言ったでしょ?ドロシーほどの実力があるなら私に拘る必要なんてなかったのよ」



ドロシー「あのさ、師匠」



にこ「何?野暮な質問なら受け付けないわよ」



ドロシー「どうして、そこまで頑固に1人を貫くのさ」



ドロシー「ボクとはチームを組まないのは勝負で負けたから当然のこととしてさ、他の誰ともチームを組まない、それがすごく気になって



にこ「受け付けられないわ」



ドロシー「どうでもいい質問じゃないよ!ボクが師匠に拘り続けることが必要ないって言うなら師匠がどうして誰とも組まないのか教えてよ!」



ドロシー「答えなよ、弟子の真摯な質問には頑固者の師匠でも動かされるもんでしょ。音ノ木坂学院アイドル研究部、矢澤にこ!!」



にこ「調べたのね」



ドロシー「リサーチ力を散々ひけらかしたのはどこのにこにーだっけ?」



にこ「...次のレッスンよ」



にこ「仲間といる時間を今まで生きてきた中で飛び抜けて輝かせなさい。
じゃあね。レッスンは通常に戻るから」



ドロシー「待ちなよ!にこにー!」



待てない。
だってそれ以上関わったら、それ以上にこと仲良くなったら、あなたまで涙を見る羽目になるのよ。



私はあなたの要求どおり師匠となり夢を叶える手助けをした。
それだけで十分じゃない。


にこの目的はしっかり果たされているわ。

本日はここまで。次で完結します。

【アイドル研究部 部室】



今日も、何も新しい変化は訪れない。
でも湧いてくる感情らしい感情はない。ああ、また今日も部活動をするんだな、という程度。



大学の部活やサークルなら6月からの途中参加も大いにありえることだけど高校なら、こんな時期に部室の扉を叩こうとする人なんていないでしょ。



希「にこっち、いる?」



にこ「いないわよ。入部希望者以外お断り」



希「冷たいこと言わんとってや。...見学って体でどうやろ」



にこ「どうせにこがどう返そうが入ってくるつもりなんでしょ?こんな小さな部室のどこに魅力を感じるのか分かりかねるわ」



希「ウチはにこっちがおる部室に行きたいんや。誰もおらんかったらそれこそパソコンを使いたいなら自宅でも、ネットカフェでも行けばいいやん?」



希「隣、座っていい?」



にこ「椅子なら他にもたくさんあるんだけど」



希「離れて座ったらいる意味ないやん」



希「観たよ、にこっちのプリパラ」

にこ「あれだけ派手に放送されてるんだから観ないって方がおかしいと思うわ」



希「でも分母はすごく大きいやろ。そん中からにこっちのライブを探して視聴するんは楽な作業ではなかったんよ」



にこ「労力の無駄使いよ。生徒会の仕事とか予習復習に使いなさい」



希「にこっちに予習復習、だなんて説教される筋合いはないなぁ」



にこ「ぅうるさいわね!にこだってやってるわよ、多少は!」



希「あまり捗ってないみたいやけどね。今回のテストがしっかり示してるやん」



にこ「大体、勉強なんて好き好んでやる人間、そうそういないんじゃないの?好き嫌いは良くないって言うけど嫌いなことをわざわざ継続してやろうとは思わないでしょ」



希「点数が悪い言い訳にはならんけどな...」



希「じゃあにこっちはプリパラを、やりたいから続けとるんやね」



にこ「そうよ」



希「それでプリパラで1人でライブを続けるのもにこっちの意思でやっとるんやな?」

にこ「...そうよ。グループは組んでないわ」



希「グループは?」



突っ込まれるのを承知でにこはこの言葉を選んだ。
希になら無理して笑顔を見せる必要がないから?
分からない。希じゃなくても良かったのかもしれない。



にこがもう1人で居続けることにガタがきたのかもしれない。
1人でいたいと仮面を被り続けるにこ自身に。


にこ「...にこにとってプリパラは少し優しすぎる世界だったわ」



希「レベルが...ってことじゃないよな?」



にこ「もちろん。そこまで天狗じゃないわ。...にこが居続けるにはあそこは、あそこにいる子達は輝きすぎているの」



にこ「にこなんかと一緒にいたら曇ってしまう、だからグループを組まない」



でもやっぱり他人は巻き込めない。矛盾しているわ。



にこ「ただし、弟子ならできたわ。きらびやかな乙女の世界に似つかわしくないような」



にこ「口が悪くて、捻くれてて、でもちょっと無理してて、文句言いながらもにこに付いてきて...」



にこ「すぐ根を上げてにこから離れると思ってたんだけどちょっとその子と仲良くなりすぎた気がして...」



にこ「卒業のタイミングを見失った...って感じかな?」



希「にこっち...」



希「にこっちが人と距離を置きたいのならそうするといい。でもな」



希「にこっちと関わった人がみんな不幸になるなんてそんな悲しい世界はどこにもないよ」

にこ「希...あんたは知ってるでしょ。にこと志を共にした人の末路が」



希「でもそれでにこっちが人と関わることに嫌気がさしたわけやない。その子と仲良くなったって言ったのはにこっち自身やん。にこっちが望んでしてきたことに惹かれた。違う?」



希「一番残酷なんは何の前触れもなくお別れしちゃうことよ。お互いの心に深い傷を残す」



希「にこっちがその子とこれからとうするかはウチに口出しする権利はない。ただしっかり向き合って話してほしい。それだけや」



にこ「希...いつからあんたはにこの保護者になったの」



希「損な役回りだよね。でもほっとけないんよ。ウチもな」



にこ「...一応、感謝はしておくわ」




希「受け取っておくね。...あ、晴れ間が出てきたみたいやで」



希「練習するなら今のうちやね」

ドロシー「にこにー。話してくれる気になった?」



あの日からも私とドロシーのレッスンは続いた。希の言う通り何の前触れもなく放り出すことはにこ自身もしたくなかったから。



にこ「うん。この前はごめんね。今日までも何も話さなくて」



にこ「仲間とは上手くいってる?」



ドロシー「うん。ボクがにこにーのレッスンを破ったこと、あった?」



にこ「クレームは垂れまくりだったけどね」



ドロシー「ははは、ゴメン...ボク、にこにーのこと調べて、にこにーがプリパラに来るまでのこと知って、必死に考えた」



ドロシー「でも、分からなかった」



にこ「いいのよ。あんな気持ちになるのはにこだけで事足りてる」



ドロシー「違う...にこにーがどうしてボクの面倒を見てくれたか」



ドロシー「どうして、夢を諦めたのかそうじゃないのかどっちつかずの態度をとるか、さ」



にこ「聞きたいことが増えてるんだけど?...図々しい娘ね。ま、今さら隠すこともない、か」



にこ「最後のレッスンよ」

ドロシー「最後!?もうボクとにこにーは会えないってこと?」



にこ「ゼロになることはないわ。文明の利器ってのがあるでしょ」



にこ「回数は減るでしょうけど」



にこ「そんな悲しそうな顔しない。あんたにはレオナやにこ以外の仲間がちゃんとできたんでしょ?」



にこ「涙顔になったらにこの言葉を聞き逃すわよ?一回しか言わないから」



にこ「にこのレッスンは一から最後までドロシーちゃんに後悔しないようにするため」



にこ「そして最後のレッスンがドロシーちゃんの望む答えになると思うわ」



にこ「始めること=産み出せることじゃない」



にこ「終わること=死ぬことじゃない」



にこ「これだけ肝に命じておけばあんたくらいの実力があれはどこまでもいけるわ」



ドロシー「にこにー...」



にこ「...テンションマックス!!」



にこ「ほら、ドロシーちゃんの番よ」



ドロシー「にっこにっこにー!」





にこ「あなたはにこにとって最高の弟子で」



にこ「その...友達、にもなれたかな」



にこ「にこのレッスン。無駄にするんじゃないわよ!」



ドロシー「もっちろん!ボクのすごさがまだよく理解できていないみたいだね?」

【あれから時が経って】



季節がまた巡った。
元から期待はしてなかったけど大した変化もなく。
最後の一年を迎えた。



はずだった。



??「いったーい!」


??「ホノカちゃん!大丈夫?」



また、夢を始めようとする子達を見つけた。



今度はドロシーちゃんのようにちゃんと付いてくるだろうか。一度あることは二度なく、すぐ諦めてしまうのだろうか。



にこ「あんた達、解散しなさい!」



この眼で見極めて判断してやろうじゃないの。
それでもし、本気だって分かったら。



その時は覚悟しなさいよ。



にこがとことん付き合ってあげるから

【さらに時が経って】

ドロシー「...うん。両方観たよ。分かった。ありがとね」ピッ


ドロシー「......」


シオン「どうした、ドロシー。そんなに意気消沈してお前らしくない」


シオン「レオナは何か、聞いていないか?」


レオナ「うん...聞いてたら少しでも力になってあげられるんだけど...」


ドロシー「...そうさ、ライバルが1グループ消えただけ、それに9人もいなくなったんだ!」


シオン「ドロシー...白昼堂々、物騒なことを言うものじゃ...む。それは迷惑千万だったな」


ドロシー「でもそれだけで喜んじゃぁダメさ!ソラミだってアロマゲドンだってふわりや今はどっか行ってるけど、ファルルだって!」


ドロシー「ライバルはごまんといる!喜んで舞い上がっちゃぁ撃ち落とされるさ!全然良くない!」


ドロシー「良くない!全然良くないよ!」


ドロシー「...1度も、同じステージに立てなかったんだからさ...」


レオナ「ドロシー...」


シオン「支離滅裂な言葉。お前に何があったかは敢えて問わん。今はお前にも語る気はないだろう。だが、これだけは聞いて欲しい」


シオン「私達がこれからどのような道を行くかは分からん。暗中模索だ」


シオン「しかし、どんな道になろうとも悔いのないようにしよう」


ドロシー「うん...!」


ドロシー「よーし!そうと決まればライブだー!」


レオナ「...うん!そうだね!」


シオン「それでこそ、ドロシーだ!」



『始めること=産まれることじゃない』


『終わること=死ぬことじゃない』


『これだけ肝に銘じておけばアンタぐらいの実力があればどこまでもいけると思うわ』


ねえ、にこにー。
ボクはまだにこにー達と比べたら全然産み出せてないのかもしれない。このボクが言うんだから間違いないさ。
でも、でもね。
少なくともにこにーが若い内にはボクらもみんなの幸せを生み出せるアイドルになるだろうからさ、その時は、また...






『ボク達と勝負だ!』


これにて終了です。
少しでも楽しんでくれた方がいたら何よりです

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