幼「アナタに付き合うなんて、冗談じゃないわ」男「そう言うなよ」(100)

幼「まったく、本当に冗談じゃないわよ」

幼「休日に、アタナと買い物なんて…」

男「仕方ないだろー。幼だって、学祭の実行委員なんだから」

幼「こんな事になるなら、引き受けるんじゃなかったわ」

男「買出しに行くくらいで怒るなよー」

幼「…」




男「駅前のショッピングモールで良いよね?」

幼「そうね。あそこの雑貨屋で全部揃うわね」

男「二人で出かけるなんて、どれくらいぶりかな?」

幼「…ずいぶん久しぶりね」

男「中学の頃は良く行ってたのにね」

幼「そうだったかしら」

男「中3の頃に映画観に行ったのが最後だっけ?」

幼「…中2の夏、プラネタリウムを見に行ったのが最後よ…」ボソ

男「ん?今、何か言った?」

幼「別に何も!」

幼「さっさと行きましょう!」




男「…これで必要な物はそろったかな?」

幼「…」

男「幼?」

幼「…」

男「幼、どうかした?」

幼「えっ?な、何?」

男「ぼーっとしちゃって、どうしたの?」

幼「ぼーっとなんて、してないわよっ」

男「それじゃ、買い物リストのチェックしようよ」

幼「…はいはい」

男「これとこれ、それにこれが3個づつで…」

幼「…」

男「あと、これが…って幼、聞いてる?」

幼「あっ、ごめんなさい。もう一度最初からお願い」

男「疲れてるの、幼?」

幼「別に疲れてないわよ」

男「でもさっきから様子が変だよ?」

幼「大丈夫だったら!」

男「落ち着いてよ、幼」

男「あそこのベンチでちょっと休もう」

幼「…そうね」

男「俺、飲み物買ってくるからここに居て」

幼「…えぇ」

幼「…」

幼「…はぁ」

男「はい、これ」

男「ドクペで良かったよね?」

幼「あ、ありがと」

男「…ふぅ。暦の上では秋なのに、今日は暑いよね」

幼「…そうね」

幼「…さっきは怒鳴って悪かったわね」

男「いいよ、気にしてないよ」

幼「…」

男「…何かあったの?」

幼「別に何も無いわよ」

男「付き合い長いんだから、幼の様子が変なの、すぐわかるよ」

幼「知ったふうな口を聞かないで欲しいわ」

男「…」

幼「…」

男「ねぇ、幼」

幼「何よ」

男「一人で悩んでても、どうにもならない事ってあるんだよ?」

幼「…もし仮に私に悩みがあったとしても」

幼「それを他人に言うつもりはないわよ」

幼「そう言う性格って、知ってるでしょ?」

男「そうだね。だからこそ心配なんだよ」

男「俺たち、幼馴染だろ?」

幼「…そうね…幼馴染ね」

幼「…ただの、幼馴染よね」

男「…」

幼「さ、買い物を済ませて、さっさと帰りましょう」

男「…うん」




男「友~。ちょっとそっち持ってよ」

友「おっけー。おらよっと」

男「そのまま教壇の所まで運ぶぞー」

友「オラオラオラ~」

男「ちょ、強いよ!友!押すな押すな!危ないから!」

友「っと、ここらでいいか?男」

男「オッケー。これ、後で黒板に貼り付けるから」

友「しかし良く描けたなー、この看板」

男「自信作ですから」

友「良くやった!偉い!」

男「実行委員ですから!」

友「ん、そういえばもう一人の実行委員、幼ちゃんは?」

男「幼友と一緒に生徒会室まで暗幕借りに行ったよ」

友「女子2人で、重くないか?」

男「いやまぁウチのクラスは借りる暗幕3枚だけだし」

男「女子2人で十分だって、幼友がさ」

友「そっか。まぁ暗幕3枚なら、2人で十分か」

男「さ、準備続けようぜ。次はあの板に模様描くぞ!」

友「下書きはもう描いてあるのか。よし!塗るぞ!塗るぞ!」




幼「えっ?申請されてない?」

生徒会役員「されてませんね」

幼友「ちゃんと確認してよ!2のbよ?」

生徒会役員「だから、されてませんてば」

幼「今から申請…は」

生徒会役員「暗幕使用の申請は1週間前に締め切ってますよ」

生徒会役員「暗幕の割り当ては既に決まってますから無理ですね」

ペラッペラッ

生徒会役員「…やっぱり2のbから申請用紙は出されていません」

生徒会役員「暗幕は諦めて下さい」

幼「…どうしよう」

幼友「とにかく、一度教室に戻ろうよ」

幼「…うん」




友「え?暗幕借りられなかったの?」

幼友「そうなのよ。まったく生徒会ってば融通利かない連中ばっか!」

モブ女「えー。暗幕なかったら、ウチら、どこで着替えるのー?」

モブ男「いいじゃん、その辺で着替えれば」

モブ女「サイッテー!スケベ!」

モブ男「減るもんじゃねーし、いいだろ。客寄せにもなるかもよ?」

幼友「そんな事したら、生徒会から、強制停止されるわよ」

モブ女「マジどうすんのー?」

幼「…あ、あの…」

男「…あー!ごめん、みんな!」

友「ん?」

男「俺が申請用紙出し忘れたんだ!」

友「マジかよー」

男「代わりの布、必ず用意するから!」

モブ女「絶対だよ、男!」

モブ男「男ー。スケスケの奴もってこーい」

モブ女「アホッ!」

幼「あの…」

男「幼、ちょっと…こっちに」

幼「…」




男「書類、提出してなかったんだね」

幼「ごめんなさい…」

男「やっぱり、最近様子が変だよ、幼」

幼「…こんなミスをしてしまっては、言い訳も出来ないわね」

男「…俺には相談出来ない事なの?」

幼「…出来ないわ…」

男「俺は幼の力になりたいんだよ」

幼「この腹に溜まった物をいっその事、ぶちまけてしまいたいわよ!」

幼「でも…でもアナタは!」

男「俺?」

幼「…っく」

幼「何でもないわ…」

男「幼…」




男「悪いな、オタ友」

オタ友「気にしないでほしいでござる」

オタ友「拙者達、アニ研は、今回は展示無しなのでござる」

男「…気使わせて、悪い」

オタ友「男殿は、拙者の数少ない友達でござる」

オタ友「これくらい、屁でもないのでござる」

オタ友「だから、丁度余っていた暗幕を3枚持っていった所で」

オタ友「男殿が気にする事はないのでござるよ」

男「ありがとう、オタ友」

オタ友「ドゥフフ。男殿、拙者に惚れてはダメでござるよ?」

男「ははっ。気をつけるよ」




男「おーい、暗幕、調達してきたぞー」

友「マジで?」

モブ男「どうやって?」

男「フッフッフ。オレッちの盗みのテクを持ってすれば…」

友「盗んだの?」

男「すいません、ウソです」

男「…まぁ、闇のルートから調達って事で」

男「入手先の特定は、禁則事項です!」

友「まぁ、いいか。じゃ、準備しちまうか!」

クラス一同「おー!」




友「なんとか間に合ったなー」

男「うんうん。実行委員としては満足だよ」

友「それは全部終わってから、後夜祭の時にでも言えよ」

男「それもそうか。明日と明後日が本番だもんな」

友「まぁ、お前はゆっくりしてろよ」

男「ん?」

友「クラスの連中とも話したんだ」

友「お前と幼ちゃん、準備一生懸命だったじゃん」

友「だから当日は俺らに任せろよ!って話しだ」

男「そうかー」

友「幼ちゃんと一緒に色々見てまわってこいよ」

男「うーん」

友「…お前ら最近仲悪いの?」

男「そう言う訳じゃないんだけどさ」

友「夏休みあけた頃から、あまり話してないみたいじゃん」

男「鈍感なお前から見てもそう思うか?」

友「おい、鈍感じゃないぞ?」

男「んー。幼、最近何かに悩んでるみたいなんだよなー」

友「そうなのか?」

男「ぼーっとしてる事が多い」

男「でも俺には相談出来ない事みたいでさー」

友「お前に解決出来ない事なら、俺らが出る幕じゃねーな」

男「んー」

友「とりあえず、明日は一緒に学校中まわってこいよ!」

友「何かあったら、携帯にメール入れるからさ」

男「おー。ありがとな、友」

友「気にすんな!親友!」

男「友、ちょっとキモいな」

友「おい、キモくないぞ?」

男「はははっ。ホントにありがとな」




幼「アナタに付き合うなんて、冗談じゃないわ」

男「そう言うなよ」

幼「なんで私があなたと学祭を見て回る事になってるのよ」

男「クラスの皆が気を遣ってくれたんだよ」

男「実行委員頑張ったで賞って事でさ」

男「ほら、バッチまで作ってくれたんだぜ?」

幼「…」

男「…幼、俺と見て回るのそんなに嫌?」

幼「そ、そう言う訳じゃ…ないけど…」

男「それじゃ、行こう!」

幼「わ、わかったわよ…」




男「お、りんごアメ売ってるな!」

幼「…」

男「幼、りんごアメ好きだよな?」

幼「…えぇ」

男「おーい。りんごアメ、2つくれー」

販売係「あいよー。2つで600円ねー」

男「ほい、幼の分」

幼「ありがとう、お金出すわよ」

男「いいよ、おごりで」

幼「でも…」

男「ご馳走になるのも礼儀の一つって、幼が言ってた事だぞ」

幼「…ありがと、男。ご馳走になるわ」

男「俺、これをガリガリ食べるのが好きなんだよなー」

幼「りんごアメは長い時間楽しめるのが醍醐味なのよ?ふふふ」

男「…幼、久しぶりに笑ったね」

幼「…そうかしら」

男「そうだよ」

幼「…」

男「さぁ、学祭は始まったばかりだぞ!」

男「次はどこいく?何食べたい?」

幼「演劇部の発表を観たいわね」

男「お?ロミオとジュリエット?」

幼「そう。幼友が出るのよ」

男「そうだったな。あいつ演劇部だったもんな」

男「…ちなみに何の役?」

幼「…内緒だって」

男「よし!見に行こう!」

幼「…えぇ」




男「…なぁ」

幼「…何?」

男「幼友、出てた?」

幼「多分ね」

男「え?どこに?」

男「最前列で見てたけど、俺は気付かなかったぞ?」

幼「多分、あのラストのシーンで…」

幼「ロミオとジュリエットの前に置いてあった、岩じゃないかしら」

男「岩?」

幼「ずっと小刻みに動いてたんだけど」

幼「場面が暗転した時、足が生えて、舞台袖に走って行ってたわ」

男「ぷぷっ」

幼「ふふっ」

男「そりゃ、何の役か言わない訳だ」

幼「そうね、幼友らしいわよね。ふふふ」

男「何か、久しぶりに、楽しいなぁ」

幼「そう?」

男「最近、幼の様子がおかしかったからさ」

男「ずっと気になってたんだよ」

幼「…そうね。正直、最近の私はおかしいわよね」

男「…」

幼「私達、もう随分長い付き合いよね」

男「そうだね。生まれた時からお隣さんだもんね」

幼「私はあなたの事を、何でもわかってると思ってた」

男「まぁ、お互い何でも話してきたもんな」

幼「…アナタと居ると、楽しくて、心が踊ってしまって」

幼「つい、忘れてしまう所だったけど…」

幼「…アナタは…」

男「俺?」

幼「…彼女が居るのよね?」

男「は?」

幼「それを私に隠しているのよね?」

男「な、何言ってるの、幼?」

幼「…中2の夏休み、駅前で…」

男「?」

幼「あなたが私の知らない女の子と、腕を組んで歩いているのを見たわ」

男「は?」

幼「見間違いだと思いたかったけど…」

幼「私が、あなたの姿を見間違えるはずがない!」

幼「そして先月、やっぱり駅前で、あの時の女の子と」

幼「腕を組んで歩いているあなたを見たの!」

男「ちょっと待て、幼」

幼「勘違いじゃないわよ?あれはあなただった」

男「そうじゃなくて…」

幼「いいのよ。私達は単なるご近所さん、単なる幼馴染」

幼「私が勝手に勘違いをしていただけなんだから!」

幼「…私、帰るわね」

男「幼!待って!」

幼「追いかけて来ないで!」

幼「…今の私の顔を、あなたにだけは…み、見られたく、ない…」
タッタッタ

男「…幼」




男「おーう。友、売上げどうよ?」

友「おう、見ての通りの大繁盛だぜ」

男「確かにすげーな」

友「中華喫茶、大成功だな」

男「おー…」

友「…幼ちゃんと何かあったんだな?」

男「…おう。幼は今日はもう帰った」

友「…後で話は聞いてやるから!今は休んでろよ」

男「おう」

客1「ロングのチャイナドレス、いいなぁ」

客2「足のスリットが少ないのが良いよなぁ」

客3「写真撮っていいかな?いいかな?」

男「…どうすっかなぁ」




男「それじゃ、みんな。1日目お疲れ様っ!」

クラス一同「おー!」

男「1日目の集計結果が生徒会から届いておりますっ!」

クラス一同「おぉー!!」

男「開封っ!」
ザワ…ザワ…

男「…結果発表っ!」

男「2年の中で1位!学校全体で2位だーーーーーー!」

クラス一同「おおおおおおおおお!!!!!」
ヤッター! スゲー!

男「明日も、各自全力を尽くして…」

男「目指すは全校1位だーーーーー!!!!」

クラス一同「おーーーーーー!!」

男「それじゃ、今日は解散!」

男「友、幼友、2人ちょっと帰りに買出し付き合ってくれー」

友「おう。そのつもりだったぜ」

幼友「私もオッケーだよー」

幼友「もちろん帰りは送ってくれるんでしょ?」

友「2日分と思って買ってあった食材、ほとんど残ってないもんな」

男「んじゃ、行くか!」




友「で?幼ちゃんと何があったんだ?」

幼友「え?あんた幼と喧嘩してるの?」

男「…喧嘩っていうか、誤解っていうか…」

男「俺、どうしたらいいと思う?」

友「どうもこうも!」

幼友「誤解解いて、謝ればいいじゃない」

男「…幼が聞く耳持つと思おう?」

友・幼友「…微妙」

男「今日も話す前に、走って逃げちゃったんだよ」

友「…悩むなんて、男らしくないぜ!」

友「当たって砕けてこいよ!」

幼友「そうね。友の言う通り!」

幼友「骨は拾ってあげるから、砕けてきなさい!」

男「砕けるの前提かよ…」

男「まぁ、でもそうか。俺らしくないか!」

男「友、買い物と、幼友の護衛、お願いしていいか?」

友「任された!」

幼友「今日はコレで我慢しといてあげるわ」

友「コレ言うな!」

男「んじゃ、行ってくる!」








友「どう思う?」

幼友「…まぁ十中八九、上手く行くでしょ」

友「だよなぁ」

幼友「幼の方が、男にベタ惚れなんだから、さ」

友「やっぱそうだよなぁ」




男「幼、居るかー?」

男「おーい!」

男「おーーーーーーい!」

カラカラカラ
幼「うるさいわよ、男」

男「居るじゃん。まぁ電気ついてたから、居るってわかってたけど」

幼「何の用よ、こんな夜更けに」

男「話がしたいんだよ」

幼「…私はしたくないんだけど」

男「誤解を解いておきたいんだよ」

幼「誤解?何の?」

男「あのなぁ、先月俺と腕を組んで歩いてた女の子は…」

幼「…別にアナタが誰と腕を組んでいても、私には関係ないわよ」

男「最後まで聞けよ」

幼「…」

男「あれは俺の従妹だ」

幼「…従妹?」

男「そ。小さい頃、幼も一緒に遊んだ事あるでしょ?」

幼「…言われてみれば」

男「夏休みにさ、こっちに遊びに来てたんだ」

男「で、駅の周辺を案内してただけだよ」

男「まぁ、可愛い妹みたいなもんだ」

幼「…話はそれだけ?」

男「え?あ、ああ。まぁ」

幼「…それじゃおやすみ、男」
ピシャッ

男「あれぇ?誤解…解けたよなぁ?」

男「何で、まだ怒ってるんだよ…」



幼「あぁ、私ったら…どうしよう…どうしよう!」

幼「まさか従妹ちゃんだったなんて!」

幼「やっちゃった…やっちゃった!」

幼「嫉妬して、冷たい態度取ってたなんて言ったら…」

幼「男に幻滅されちゃうかも…」

幼「あぁぁぁ…どうしよう…」



男「さぁ、皆、学園祭2日目だ!」

クラス一同「おー!」

男「今日は一般のお客さんも来場する!」

男「今日が本番と言っても過言ではない!」

クラス一同「おーーーーー!」

男「総力戦だ!やるぞ、2のb!」

クラス一同「おーーーーーーーーーーー!」

友「やっぱ、男がいると、気合が違うな」

幼友「そうだよねぇ。今回は頑張ってるもんね」

幼「…」

幼友「幼、さ、着替えるよ!」

幼友「今日の目玉はアンタなんだから!」

幼「え、えぇ」



幼友「…ほら、幼。早く早く!」

幼「…」

クラスの男子一同「おぉぅ!」
ザワ…ザワ…

男「お、来たな、幼」

幼「な、何よ…」

男「すっごく似合ってるよ、幼」

幼「…あ、ありがと」

クラスの男子一同(恥ずかしそうに俯く幼さん、メチャ可愛い…)

幼友「さ、そろそろ始まるよー」




友「やべーくらい忙しいなー」

男「おう。休む暇なくてごめんな、友」

幼「友君、私もお手伝いしようか?」

友「いいから、気にすんなよ2人とも」

友「幼ちゃんは今、休憩時間だろ?」

友「それに、俺の料理の腕が評価されてるって事だろ」

友「嬉しいもんだぜ」

友「ほらよ、3番テーブル上がったぜ」

幼友「はいはーい。私行ってくるね!」

男「こりゃ、本当に全校1位取れるかもしれないなー」

幼「…そうだといいわね」

幼友「おーい、男ー」

男「ん?何?」

幼友「お客さんがお呼びだよー。3番テーブル」

男「え、俺?」

幼「…」

男「はいはー」

従妹「男お兄ちゃんっ!」
ダキッ

男「なっ!従妹?」

従妹「えへへー。来ちゃった!」

幼「!」

モブ男「お、おい。アレ誰だ?」

幼「…」

男「お、おい!離れろよ、従妹!」

従妹「いやーだもーん!」

男「場所わきまえず抱きつく癖!」

男「いいかげん直せっ!」

従妹「いいじゃん、男お兄ちゃーん!」

幼「…ぐすっ」

幼友「えっ!?幼っ!」

幼「うわぁぁぁぁぁん」

クラス一同「えっ?」
ザワザワ

モブ女「な、何で幼さんが号泣してるの?」

モブ男「し、知らねーよ」

幼友「どうしたの、幼、ねぇ!」

幼「うぅぅぅ…うわぁぁぁん」

男「従妹っ!離せっ!」

従妹「きゃっ」

男「幼!」
ギュッ!

幼「!」

男「大丈夫だから…泣き止めよ、幼」

幼「…」

ザワ…ザワ…

男「友、一旦ここ任せるぞ?」

幼「…離してっ!」
ダッ

男「待て、幼!」

友「男、ちょっと待て!」

男「離せ!友!」

友「幼ちゃんが心配なのは解るが!」

友「店放り出して行くのか?」

友「あの子もほったらかして?」

従妹「…」

男「…皆、すまん、ちょっと熱くなった」

男「ごめん。友、ちょっと出てくるな」

男「従妹、ちょっと来い」

従妹「…うん」

男「幼友、幼の事を頼む…」

幼友「わかったよ」

友「2人とも、なるべく早く戻れよ」

男「おう」




男「…また誰かに振られたんだな?」

従妹「…うん」

男「…はぁ」

従妹「しょうがないじゃん!男お兄ちゃんよりカッコ良い人なんて…」

男「夏休みにウチに来た時も言ったけどさ」

男「俺には好きな人が居るんだよ」

男「そしてそれはお前じゃないんだよ、従妹」

従妹「…でも」

男「さっき、教室で泣いてた女の子が居ただろ?」

男「あの子が、俺が好きな子なんだ」

従妹「えっ?」

男「お前が俺に抱きついてるのを見て、彼女は泣いたんだ」

男「普段は冷静な彼女が、人目もはばからずに、泣いたんだ」

男「わかるだろう?」

従妹「…ぐすっ」

男「…従妹、俺は…」




幼友「幼…」

幼「ご、ごめんね、幼友」

幼友「いいよ、今は泣いてて」

幼「うわぁぁぁぁん」

幼友「よしよし」
ナデナデ

幼「き、昨日の夜、誤解だって、言ってたのに…」

幼「わた、わたし、今日は謝ろうって…思ってたのに…」

幼「…うぅぅわぁぁぁあん」

幼友「幼、そのままで良いからちょっと聞いて」

幼友「…さっきさ、幼が教室飛び出した時さ」

幼「…」

幼友「男が真っ先に飛び出そうとしたんだよ」

幼友「あの抱きついてた子も、喫茶店も放り出してさ」

幼友「あの子が誰なのか、知らないんだけど」

幼友「男は絶対、幼の事を1番に思ってくれてるよ」

幼「…あの子は男の従妹なの」

幼友「そうなの?」

幼「昔、何度か遊んだ事あった…」

幼「男は、何でもないって言ってくれたのに…」

幼「私、従妹ちゃんに抱きつかれてる男を見て、頭真っ白になっちゃった」

幼「男の言った事、信じきれなかった…」

幼友「大丈夫だから。幼の正直な気持ち、男にぶつけちゃいなよ」

幼「うん…わかった。ありがとう幼友」

幼「後夜祭で待ってるって、男に伝えて?」

幼「こんな顔じゃ、教室に戻れないや」

幼友「わかった。それじゃ、後でね」




男「戻ったー」

友「おう。さっさと働け、女たらし」

男「俺はたらしじゃないよ」

友「あの子は?」

男「俺の従妹だ」

友「お前に惚れてたんだな」

男「あぁ。中2の時、ちゃんと断ったんだけどな」

男「他の誰かと付き合って、振られる度に俺の所に来るんだ」

友「今回はタイミングが最悪だったな」

男「…あぁ」

幼友「戻ったよー」

男「幼は?」

幼友「…後夜祭で待ってるってさ」

男「そっか…」




…後夜祭…

男「…」

幼「何よ…」

男「探したよ、幼」

幼「…」

男「あのさ、幼」

男「さっきので、俺の気持ちは伝わってるのかな?」

幼「…」

男「俺はさ、幼の事ずっと好きだったよ」

男「幼稚園の頃からずっと」

男「付き合い長いからさ」

男「お互いの良い所も悪い所もわかってるよな」

男「そう言うの含めてさ」

男「俺は幼の事が、異性として、好きなんだよ」

男「だからさ…」

男「俺と、結婚を前提に、お付き合いして下さい!」

幼「い、今さら…」

幼「アナタと付き合うなんて、冗談じゃないわ」

男「そう言うなよ」

幼「誤解して、嫉妬して、みっともなく取り乱して…」

幼「私はどんな顔でアナタの事を見ればいいのよ!」

男「どんな顔でもいいよ、幼」

男「どんな顔の幼でも、変わらずに好きだよ」

幼「…ぐすっ」

幼「…化粧も崩れて、涙でぐしゃぐしゃ」

幼「こ、こんな私でも…?」

男「あぁ、大好きだよ、幼」

幼「うぅ…うわぁぁぁぁぁん」

幼「男っ!わ、私もっ!大好きだったの!」

幼「幼稚園の頃から、変わらず、ずっと…」

幼「男の事が、大好きなのっ!」

幼「これからも一緒に居たい!」

幼「ず、ずっと…い、いっしょ、に…」

男「こちらこそ、だよ、幼」

男「幼稚園の時、約束したもんな」

幼「覚えててくれたのね…」

男「あぁ。忘れた事、無いよ」

男・幼「大きくなったら結婚しようね」

男「ははっ」

幼「ふふっ」

男「あぁ、胸のつかえが取れた気分だよ」

幼「私もよ、男」

男「ほら、ハンカチ」

幼「え?」

男「化粧と涙、拭いて」

幼「え?」

男「あっちでクラスのみんなが待ってるんだよ」

男「俺たちのクラスの売上、全校で1位だったんだぜ?」

幼「本当に?凄い!」

男「あぁ、後夜祭が終わったら、皆で打上げだ!」

幼「…うん」

男「あ、ちなみにね」

男「ウチのクラスの女子人気投票…」

男「ぶっちぎりの1位、幼なんだぜ?」

幼「今日の功労者が行かないと、打上げ始まらないよ!」

幼「え、は、恥ずかしい…」

男「さぁ、行こう、幼。俺が傍に居るから」

幼「…えぇ、男」




友「あいつら、ホント、良かったよな」

幼友「見せつけてくれるわよね、ホント」

友「幼稚園で結婚の約束…かぁ」

幼友「あの2人ならやりそうではあるよね」

友「…俺もしたんだけどなぁ」

幼友「は?何か言った?」

友「別に!何も言ってねぇよ!」

幼友「…このヘタレ!」


友・幼友(コイツ、ひょっとして覚えてる?)


おわり

これで終わりです
読んでくれた人が居たら嬉しいです

次スレは
幼馴染「ククク、見よ!男よ!」男「見てるよ」
ってタイトルでスレ立てると思います

では。

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