いろは「なんでいるの？いつ帰ってきたの？？なんで褌一丁にエプロンして目玉焼きを焼いてるの！！？？」

慧「今日学校は創立記念日でね。帰ってきたのは昨日の夜さ。朝食といったら目玉焼きに焼きベーコンだろ？」

いろは「最後半分答えになってないんだけど……もう、帰ってくるなら一言言ってくれればよかったのに
……」

慧「ごめんごめん。ちょっと驚かせたくってね。」

いろは「まぁ、確かに驚いたけど。色んな意味で……そっか、おかえり、お兄ちゃん！」

慧「ただいまいろは！さぁ、兄さんの胸に飛び込んでおいで！」

いろは「いや、それはいいよ。汗臭そうだしキモイし」

慧「」がーん

いろは(絶妙な焼き加減の目玉焼き……こんなの初めてっ………)

いろは(プルプルの食感が、喉越しが、気持ちいいっ…！)パアァァァ

慧「それにしてもいろは。しばらく見ないうちに大人っぽくなったね」

いろは「何それ妹相手に口説いてるの？ごめんなさい確かにお兄ちゃんはかっこいいけど近親相姦とか考えられないし好きない人がいるから無理」

慧「はは、残念。振られちゃった───好きな人？」

いろは「あっ」

いろは(やばっ───)

慧「そうか……いろはにも好きな人が……素晴らしい！！学園生活といえば、勉強、部活、そして恋愛！これぞ青春！」涙ダーッ

いろは「またはじまった……」

慧「それで、どんな人なんだい？」

いろは「え、えーっと………あ、あー！もうこんな時間！わたし行くね、ご馳走様でした！」

慧「え、いろは？まだ急ぐ時間じゃないんじゃないか？」

いろは「ちょっと今日は朝から生徒会で収集かかってるから、早く行かなきゃいけないの。ごめんねお兄ちゃん。」

慧「生徒会？そうなのか、まぁ仕方ないよ。」

いろは「………お兄ちゃん、いつまでいるの？」

慧「嬉しいことに、今日は金曜だからね。日曜の夜の電車に乗るから、それまでは家にいるさ」

いろは「ホント？やった！」

慧「あぁ、だからいろは。明日の早朝は一緒に畑仕事で共に汗を流そ いろは「それは嫌かな」」

いろは「よしっと、それじゃあ行ってきます。お兄ちゃん」

慧「あぁ、行ってらっしゃい、いろは。気をつけてね」

いろは「う、うん……も、もー！子供じゃないんだから！やめてよ///」

慧「はは、ごめんごめん」

いろは「もう！………いってきます」ガチャ

慧「行ってらっしゃい」ヒラヒラ



慧「……さて、僕も準備するか」

ある程度のオリ設定は目を瞑ってくだしゃい

放課後

八幡「なぁ、今日はもう終わりでいいんじゃねーか？」

雪乃「そうね。依頼も来ないようだし」

結衣「さんせー！ゆきのん、一緒に鍵返しにいこ！」

いろは「じゃあ、わたしと先輩は昇降口で待ってますね？」

八幡「いや待て。毎度のことだけど、お前なんでいんの？」

いろは「先輩その言い方酷いですー！」プクーッ

平塚「じゃまするぞー」ガラガラ

結衣「あ、せんせー」

雪乃「何か御用でしょうか」

平塚「うむ、ちょっと依頼があってな」

八幡(マジかよせっかく帰れると思ったのに)

平塚「入ってきたまえ」

慧(スーツ姿)「失礼します」

いろは「お兄ちゃん！？」

はちゆいゆきしず「お兄ちゃん？？？」

雪乃「まさか、一色さんがあの一色慧の妹だったなんて……」

結衣「知ってるの？ゆきのん」

雪乃「えぇ。遠月学園十傑、第七席の一色慧と言えば、それなりの有名人じゃない。その妹ということは、一色さんは『割烹・いっしき』のご子息だったのね」

いろは「え、えぇ、まぁ……」

結衣「へぇ、いろはちゃんセレブだったんだねー」

いろは「……そんなんじゃ、ないです」

八幡「(……？)……で？その有名人さんが、うちになんの用っすか？」

慧「この度は、総武高校と我が遠月学園とで合同イベントの件で、帰省のついでにその打ち合わせに来ました。」

雪乃「……あの、平塚先生。そういうことなら奉仕部じゃなくって生徒会に行くべきだと思うのですが」

静「その会長がここにいるから来たんだろうが」

いろは「」ギクッ

由比ヶ浜「明日のこの時間に此処にお集まりください」



由比ヶ浜「本当の食戟をお見せしますよ」ﾆﾔｯ

八幡「葉山…、今日かぎりでNo.1の看板を降ろしてもらうぞ」

葉山「おまえには無理だヒキタニ」

八幡「俺じゃない。うちの由比ヶ浜がやる」

由比ヶ浜「えっ！」

葉山「ほう…」

由比ヶ浜「まいったな…」

葉山「………」

由比ヶ浜「……」

葉山 「(…こいつ、その気がないわけでもなさそうだな)」


由比ヶ浜（………）ﾆﾔｯ





すまん

平塚「まぁいい。私から奉仕部へ依頼だ。君たちは生徒会と協力して、合同イベントのサポートをしてほしい」

八幡「また随分と急ですね……」

平塚「遠月学園といえば、世界的にも有名な料理学校だからな、失敗は許されないんだ」

雪乃「わかりました。引き受けます」

結衣「料理学校かぁ〜。あたしも入ったら上手になるかな？」

八幡「やめとけ、多分1週間で退学になるぞ」

結衣「ヒッキー酷いし！」

慧「それじゃあ、よろしく頼むよ。あ、同い年みたいだし、僕のことは気軽に慧って呼んでくれ！」キラキラ

八幡「お、おう……」

八幡(なんて爽やかな笑顔……こいつ苦手だ)

いろは「………」

帰り道

慧「いやー、奉仕部か。いい人達そうで良かったよ！」

いろは「……」

慧「………い、いろは？なんか怒ってるかい？」

いろは「………別に。お兄ちゃんのことだから、また私を驚かせたかったんでしょ？それは別に気にしてないよ」

慧「そ、そうか……」

いろは「ただ……」

慧「？」





いろは「わたしの家のこと、あんまり知られたくなかったから……」

慧「いろは……」

いろは「……」

慧「まだ、父さんとは相変わらずなのかい？」

いろは「あの人の話はしないで」

慧「……すまない」

いろは「……」

慧「……」

いろは「ハンバーグ」

慧「え？」

いろは「お兄ちゃんのハンバーグ……食べたい」

慧「………あぁ、作るよ。いろはのためにとっておきのものを」

いろは「………うん！」

いろは「ただいまー」

一色母「いろは。慧。おかえりなさい」

慧「ただいま、母さん」

一色母「………慧。あの人が来てるわよ」

いろは「っ……」

慧「……はい、わかりました。いろは、部屋に行っておいで……」

いろは「………うん」

一色父「帰ったか、慧」

慧「はい、お久しぶりです。父さん」

一色父「遠月学園の第七席とはな。流石は俺の息子だ」

慧「いえ、上には上がいますからね。僕なんてまだまだですよ」

一色父「うむ、慢心はしてないようだな。何よりだ。さっそくだが、一品作ってみろ」

慧「はい」

いろは「……」コソッ

数分後

慧「海老しんじょう揚げです」コトッ

一色父「ほぅ……頂こう」もぐっ

いろは「……」

一色父(……ふわふわの海老の擂り身。その中にサクサクとした食感……これは、蓮根か。それに仄かにマヨネーズの香りが良く合っている。餡には僅かに柚子の皮を使っている。鼻に抜ける柑橘系の香りが何とも言えない清涼感を与えてくる……)パアァァァ

一色父「見事だ。腕を上げたな、慧」

慧「ありがとうございます」

一色父「これなら問題はないな。今すぐにでもうちの店を継げるだろう」

一色父「それに比べて……いろはと来たら……」

いろは「っ…」

一色父「お前と違って料理の才は皆無。一応進学校には通わせてやってはいるが......」

慧「......いろはは、生徒会長をやっているそうですよ？それに、素敵な友人にも恵まれています」

一色父「ふん、そんなの、料亭にはなんの意味も持たない。どうせ友人も、あいつと同じでバカな奴らに違いない」

慧「父さん。それは―――」

ガタン！

一色父「！」

慧「いろは...」

いろは「―――あんたに、何が分かんの?」

一色父「なんだと？」

いろは「わたしのことはいい。自分でも諦めてるから......でも、なんも知らないくせに、わたしの周りの人のこと、馬鹿にすんな!!」

一色父「いろは！貴様、親に向かってその口の聞き方はなんだ！？」バッ

いろは「っ―――」

ガシッ!!

一色父「なっ!?」

いろは「......お兄、ちゃん？」

慧「父さん。僕らの手は、人を殴るためにあるのではないはずです。」

一色父「...ふん」

いろは「......っ」ダッ

慧「いろは!」

いろはの部屋

いろは「……」

コンコン

慧「……いろは、入ってもいいかい？」

いろは「……うん」

ガチャ
慧「…ハンバーグ作ったけど、食べるかい？」

いろは「……うん」

いろは「……美味しい」

慧「そうか、良かった。」

いろは「……お兄ちゃんは、凄いね。料理の才能もあって、実力もあって……」

慧「そんな……僕なんて、まだまだ───」

いろは「そんなこと、言わないでよ。じゃあ、わたしはどうなるの？」

慧「え……？」

いろは「料理の才能も無ければ、なんの取り柄もない。誇りに思えるものなんて、本物なんて、何も、持ってない、偽物で固められたわたしは、どうなるの！！？」

慧「……」

いろは「ムカつくんだよ！あいつも……あんたも！！」ガシャン

慧「っ……いろは！?」

いろは「」ダッ

10年前

父『……不味い、なんだこれは？なかのチキンライスはしょっぱいし、具材も大きすぎる……卵も殻がはいってるし、火を通しすぎだ。カチカチじゃないか。とても食えんな。』

いろは『ご、ごめんなさい……』

父『まったく、慧は5歳の時にはもっとマシなものを作ってきたぞ？なのにお前は……それでも俺の娘か……？』

いろは『あ……あの、わたし……ぱ、パパ、に、喜んで、ほしく、て……』

父『だったら、せめて食べれる料理を作ってこい』


そういって、あの人は一口しか食べなかったオムライスを、わたしの目の前でゴミ箱に捨てた。

その日は父の誕生日だった。

父は料理の才能のあるお兄ちゃんにかかりっきりで、わたしなんて相手にしてくれなくて……

少しでもいいから認めて貰いたかった

少しでもいいからわたしを見て欲しかった

手のあちこちに切り傷と火傷を作りながら、それでも完成した、初めて作った料理。

それを………


父『こんなのは、生ゴミ同然だ』

気づけばどこかの公園に着いていた。
結構走ったはずなのに雨のせいで体は冷たく、心地悪い疲労感と吐き気に襲われる。

フラフラと覚束ない足取りでブランコに座る。当たり前ながら公園には誰もいなくて、私一人だった。

独り、だった……

「……はは、何やってんだろ」

自嘲気味な笑いと一緒に言葉が溢れる。答えは返ってこなくて、雨が地面に跳ね返る音だけが聞こえる。

お兄ちゃんが高校から遠月学園への編入が決まって、一族総出で喜んだ。寮に一人暮らしするって言ったとき、私は複雑な気持ちだった。

出て行って欲しい気持ちと、出て行って欲しくない気持ち……それでも当時の私はお兄ちゃんのことは大好きだったし、寂しい気持ちの方が大きかった。

私も必死に勉強して、進学校の総武高校に入学が決まって、お母さんは喜んでたし、お兄ちゃんはわざわざこっちに来て、涙を流してお祝いしてくれたけど、あの人は何も言わなかった……

その時、私は気づいた。あの人は、私に一切の興味なんてない事を、わかっていたことだったのに、それを突きつけられた。ほんと、遅すぎる。

きっと私はその時もどこかで、あの人に認めて貰いたかったのかもしれない……

みす！
>>66の前


お兄ちゃんは、料理の天才だった。
幼い頃から厨房に立ち、店の手伝いをし、中学に上がる頃には1人で店を任されることもあった。

それに比べて、わたしは勉強も運動も、これといった取り柄もない中、唯一恵まれていた容姿。自分で言うなって感じだけど、仕方ないじゃん。わたしには、それしかないんだから……

少しでも、自分は劣ってないっていうことを示したかった。自分が何かで優れているんだと、思いたかった。だからわたしは、「可愛さ」を極めた。イケメンの男を手玉にとって、バカな男を良いようにつかって、
詳しくは知らないけど、ファンクラブとかもあったらしい。

わたしにだって優れているものがあるんだ、と。当時の私はとことん『あざとさ』を突き詰めた。

けど、ある日気づいた。

そんなもの、なんの役にも立たないんだって。

実家の料亭で、お兄ちゃんの料理を幸せそうに食べるお客さんの笑顔を見て、ひたすら私は惨めな気持ちになった。

そんな、弱くて、偽物で塗り固められたわたしの周りには、結局偽物ばかりが集まって……

あの部屋だってそう。本物同士の3人で完結してしまっている世界。それが羨ましくって、わたしも本物が欲しくって、わたしも入ろうと、4人になろうと、もがいて、足掻いて………

そんなこと、無理だって知っているのに……

彼は、自分の事をぼっちだと言っていた。

本当、わたしにとって嫌味にしか聞こえない。

理解しようとしてくれる人が、理解したいと思っている人がすぐそばにいる癖に……


「……けて」

段々と酷くなる雨に、声がかき消される。

「……すけて」

もはや自分でも何を言っているのかわからない。それでも、その言葉は止まらなかった。


「わたしを……助けてよっ………っ！！」









「───先輩っ」

ジャリッ

激しい雨音とともに、地面を踏む音が聞こえて、雨が止んだ。

いや、正確には降っているけど、わたしの頭上に降ってくることはなくなった。

顔を上げると、誰かが立っていて、かさをわたしの上でさしてくれていた。涙と雨で視界がぼやけて、誰だかはわからない。けど、こんな時に迎えに来る人は1人しかいなかった。

いろは「お兄ちゃん……？」

袖で目を拭って、でももう一度顔を上げることは出来なかった。

そんなわたしに、ため息をひとつこぼし、お兄ちゃんはこう言った。







「───俺の妹は小町だけだ」

その声に、驚いて顔を上げる。
きっと今酷く間抜けな顔をしてると思うけど、そんなの気にならなかった。

いろは「ぁっ………」


そこにいたのは

わたしのかっこいい自慢のお兄ちゃんじゃなくって、

猫背で、アホ毛で、目が濁っていて、私が会ってきた中で一番カッコ悪くって



一番、優しい人……


いろは「先、輩……？」

八幡「風邪引くぞ？」

八幡「ったく、この時期傘もささないで外出るとか、バカなの？」

いろは「な、なんで先輩がここに？！」

八幡「お前の兄貴から連絡あったんだよ『いろはが行方不明』って、めっちゃ慌ててたぞ？」

いろは「そっか……お兄ちゃんが……」

先輩の口から私の名前が聞けて、ちょっと嬉しかったのは秘密だ。

八幡「つーかあの人、シスコンだったんだな、苦手って思ってたが、仲良くなれそうだ」

いろは「なんですかそれ先ずはお兄ちゃんから仲良くなってわたしに詰め寄ろうって作戦ですかごめんなさいわたしそういう遠回しなやり方より直接来てくれた方がときめくんで無理です」

八幡「お前めっちゃ通常運転じゃねぇか。探し回って損したわ」

いろは「さっきまで気分最悪だったんですけどね……先輩の顔見たら元気になっちゃいました！」

八幡「はいはい、あざといあざとい。っていうか俺の顔見て元気になるとか、お前ぐらいだからな？大抵の奴は俺の事見て顔を顰めるか目を逸らすか、気分悪くなるまである」

いろは「はい、わたしも若干の吐きそうなの我慢しています」

八幡「なに、俺の顔って吐き気催すほど悲惨なの？」

いろは「っていうか探し回ったって…心配してくれたんですか？」

八幡「……まぁ、人並みには」

目を逸らして頬をかく先輩。若干頬が赤らんでいる。まったく、この人も大概あざといですよね。

八幡「ほら、そろそろ行くぞ？このままだとマジで風邪引きかねん」

いろは「先輩、ちょー疲れました。おぶってください」

八幡「やだよ重いし」

いろは「サイテーですね」

そんな軽口を叩きながら、ブランコから立ち上がると、足元がもつれて転びそうになるのを、先輩に支えられる。

八幡「お、おい、一色……？」

いろは「あ、れ？す、すいませっ………」

なんだか、体が熱い、ぼやけた視界の中で先輩が必死に呼びかけてくれる光景を最後に、私の意識は闇に落ちて行った──。

懐かしい、夢を見た。

小さい頃、夜中に急に具合が悪くなって高熱を出したわたしをおぶって、走り回ってくれた記憶。

背中があったかくて、苦しかったけど、すっごい安心したのを覚えている。

その時、家にはわたしとお兄ちゃんしかいなくって、両親はいつも通り仕事だった。

だからきっと、おぶってくれたのはお兄ちゃんだった、と思うけど……。


お兄ちゃんの背中って、こんなに大きかったっけ──？

いろは「……」けほっ

「……」カチャ

いろは「んぅ……あれ？ここは……？」

「あ、ごめんなさい。起こしてしまったかしら？」

いろは「いえ……え？ゆ、雪ノ下先輩！？な、なんで……っていうかここどこっ……あれ？」フラッ

雪乃「落ち着きなさい。……まだ熱は下がってないわね……」ピトッ

いろは「熱……(雪ノ下先輩の手……冷たくって、気持ちいい……)」

雪乃「えぇ、貴方、あのあと酷い熱が出てたのよ？あんな雨の中走り回ってたら、当然のことだけれど」

いろは「そう、なんですか……迷惑かけてすいません…」

雪乃「これくらい、構わないわ。貴女が
奉仕部に持ち込んでくる厄介ごとに比べたらね」

いろは「あはは……本当、すいません……」

雪乃「お粥作ってあるから、持ってくるわね」

いろは「はい、ありがとうございます…」

リビング

慧「雪乃さん！いろはの体調は！？」

雪乃「落ち着いて一色君。さっき目を覚ましたわ。安静にしてれば問題ないわよ」

慧「そ、そうかい」ホッ

結衣「でも本当よかったね！いろはちゃん見つかって」

本牧「まったく、世話のかかる会長だ」

藤沢「ほ、本当ですよ！こ、こんなに心配させるなんてっ…」グスッ

八幡「……なぁ一色。いったい何があったんだ？」

慧「……あぁ、実は───」

数分後

慧「……結局僕は、いろはのこと、何もわかっていなかったのかもな……」

結衣「さとっち……」

八幡「そりゃあそうだろ。家族だろうがなんだろうが、そいつのことは、そいつにしかわからない。なんでも理解することなんて、不可能だ。」

慧「……あぁ、そうだな」

八幡「……ま、こと一色に関しちゃ、俺らよりも、あいつの方がわかってやれると思うがな」

結衣「あいつ……？」

寝室


いろは「ご馳走様でした。すいません、食べさせてもらっちゃって……」

雪乃「貴女、風邪引くと遠慮がちになるのね？いつもの猫なで声はどこにいったのかしら？」

いろは「流石にちょっと……申し訳ないって思ってるんですよ……」

雪乃「これくらい構わないと言ったじゃない。」

いろは「はい…」

雪乃「……お兄さんから、話は聞いたわ」

いろは「……」

雪乃「……貴女の気持ち、少し、わかるわ」

いろは「え……？」