ノーチヒロ・ノープロデューサー (159)
◆注意事項な◆
※【モバマスSS】ですが忍殺文体重点
◆確認◆読んでいてニューロンや体調に異常が発生したらブラウザバック◆しよう◆
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【ノーチヒロ・ノープロデューサー】
(あらすじ: エド時代より続く老舗芸能プロダクション「シンデレラ・プロダクション」。そこでアーチ
プロデューサーとして合法、非合法を問わず様々な方法で優秀な実績を上げ続けていたツールマスターと
インフィニティは、ある日突然センカワ・チヒロから除名処分を受けてしまう)
(アイドル達と築き上げた信頼も、これまでプロダクションに貢献してきたという結果も無視され一方的に
放り出されてしまった二人は、これを不服として初めは穏便な手段で復帰しようとする。だが司法も労働
組合も何もかもがチヒロによって牛耳られていると知った二人は、もはや手段は選んでいられないと悟る)
(センカワ・チヒロ暗殺すべし! 再びあの栄光の日々に返り咲き、大切なアイドル達の元に帰るため、
二人のプロデューサーは、最も関係のない人間を巻き込む確率が低い、妖魔が跋扈する闇の時刻ウシミツ・
アワーを選んでシンデレラ・プロダクションを襲撃したのであった!)
闇に溶けるダークスーツに対して、顔に装着したIRCゴーグルが奇妙なシルエットを浮かび上がらせる。
月に照らされ地面に落ちた影を見て、まるで自分の今の状況のようだと独りごちながら、ハッキングを
行っていたツールマスターは相棒へとIRC通信を行う。 1
「今ハッキングが完了した。これでプロダクションの監視システムは一時的に俺たちを認識出来ない」
『よくやったツールマスター=サン。あとは君が北口から、私が南口より敷地に侵入して本館に向かい、
あの忌々しいチヒロ=サンを殺せば、すべて元通りだ』通信を受けたインフィニティの言葉は荒い。 2
彼らにとってみればつい先日まで自由に出入りできていた、第二の我が家というべき場所にコソコソと侵入
せねばならぬのだ。その屈辱はいかほどばかりか、言葉では表すことは出来ない。相棒の言葉に自らも
気持ちを奮い立たせて、だが一方で冷静な口調でツールマスターは警告する。 3
「だが用心しろ。監視システムは死んでいても、独立起動しているモータウサや随所に散りばめられたトラップ
までは無効化できていない。それに、あの噂の連中の存在もある」ツールマスターが気にかけているのは、まこと
しやかにプロダクション内で囁かれているある噂話に出てくる者達のことだ。 4
……曰く、センカワ・チヒロを守る凄まじいカラテの使い手がいる。曰く、アイドルやプロダクションに危険と
思わしき連中を闇の中で消す者達がいる。曰く、夜のプロダクションは魔物めいて恐ろしい守護者が
巡回している。……どれも根拠の無い噂話ではあったが、今日に限っては、ひどくその噂話が恐ろしい。 5
『ああ、凄腕の守り人がプロダクションにはいるという噂か……。だが、所詮は噂だ。実際アーチプロデューサーで
ある私やツールマスター=サンが会ったことがない人間が、このプロダクションにいるはずがないだろう。
それに、仮に会っていたとしても、その力が我々のカラテやジツに及ぶはずもない』 6
慢心ともとれる言い草であったが、実際数万人単位でいるプロデューサーのほんの一握りしかなれないアーチ級に
選ばれる者の実力は、そのカラテ、ジツ、営業能力、礼儀作法、アイドル達とのコミュニケーション能力、
どれをとっても本来ならばそこらのサンシタでは相手にすらならないのだ。 7
「……そうだったな、すまない。緊張による失言だった、忘れてくれ」『構わない。これから私達が行おうと
していることは前代未聞だが、確実に後の世のためになることだからな』少しだけ口調を柔らかくしてくれた
インフィニティの気遣いに感謝しつつ、ツールマスターはチヒロ暗殺のための最後の確認を行う。 8
「あとは暗殺の方法をオサライ・インストラクションするぞ。俺とインフィニティ=サンがそれぞれ別方向から
プロダクションへ侵入し、チヒロ=サンがいる本館最上階アシスタント専用室へと向かう。途中、どんなことが
あってもお互い連絡は取り合わず、誰にも見つからないように行動し、極力騒動は避ける」 9
そこで一息置いたツールマスターの言葉を、インフィニティが続ける。『しかしどうしても邪魔をしてくる者が
いれば迎撃する。だがあくまで目標はチヒロ=サンの首一つ……だな?』 10
「ああ、あとはアシスタント室に残されているはずのチヒロ=サンの不正行為の情報を世間に公表し、シンデレラ・
プロダクションを清潔にするだけだ」実際不正行為の証拠をチヒロが残している確証はなかったが、仮になくとも
捏造すればよいだけ……。 11
ツールマスターはどう転んでも自分たちが有利になる展開を頭に描きながら、プロダクション本館最上階で一つだけ
灯りの付いている部屋を睨んだ。 12
「では、ここからはお互いの実力を信じて行動するとしよう。インフィニティ=サン、オタッシャデー!」『ツール
マスター=サンも、オタッシャデー!』別れの挨拶を交わしてIRC通信を切ったツールマスターは、そのまま
素早くプロダクションの敷地へと踏み込む! 12
「イヤーッ!」だがその瞬間、前方より飛来した3枚のメイシが彼の肩に突き刺さる!サツバツ!「グワーッ!?」
早すぎる迎撃に一瞬混乱しながらも、ツールマスターはその場から側転を行って距離を取り、続くメイシ
アンブッシュを回避すると、アンブッシュ者の顔を見るために前方を睨んだ! 14
「誰だ!」「……ドーモ、ツールマスター=サン。プロデューサースレイヤーです」先ほどアシスタント室を睨む際に
敷地を確認した時は確かにいなかったはずの人物が、立っていた灯籠から飛び降りてアイサツを決めてみせる。 15
ツールマスターは己のプロデューサー認識力を上回った相手の実力に気圧されつつも、アイサツを返す。
「ドーモ、プロデューサースレイヤー=サン、ツールマスターです。……馬鹿な、まさか貴様が噂の!」
「そうだ。オヌシのようなプロダクションに仇なす輩を殺す者だ」 16
プロデューサースレイヤーはジゴクめいた声で告げ、ツールマスターを睨む。その顔には恐怖を煽る字体で
「P」「殺」と刻まれたメンポが装着されており、表情を伺うことは完全には出来ない。 17
だが、その身から放たれるキリング・オーラが表情と言葉以上に、ツールマスターに対して何を行おうとしているかを
明確に告げる。「貴様の存在は噂でしかなかったはず! 真実なのであれば、なぜアーチプロデューサーの俺が
貴様の存在を知らぬ!」 18
「アーチプロデューサーも、所詮はチヒロ=サンの手の平の上の存在。オヌシが彼女から必要以上の情報を
与えられるに足る存在ではなかっただけのこと」 19
「黙れ! 俺はアイリをシンデレラ・ガールにし、その後もアイドル達のため、プロダクションのために常に
働いてきたんだぞ!」「だがオヌシはチヒロ=サンとの契約を破り、してはならぬことをした。……どうせなら
使ってみたらどうだ、オヌシ自慢のガラクタを」 20
「ガ、ガラクタ……だと!? 俺のボットをナメルナーッ!」ツールマスターは激昂し、袖口に忍ばせていた
トークンほどの小さなマシンを次々と空中に放つ! それはボットと呼ばれる彼が開発した小型のIRC遠隔制御
兵器であり、触れた人間や機械を彼の意のままに操ることが可能になるという恐ろしい代物である! 21
「このボットを開発したことで、俺はアーチプロデューサーにまで上り詰めることが出来た! それをガラクタ
呼ばわりした貴様は許さ」BOOM!「な……なに?」目の前で小さな爆発を見たツールマスター。 22
それがプロデューサースレイヤーが投擲したメイシによってボットが一つ破壊されたために起きたことだと
認識すると、バク転でさらに距離を取りながら急いでボットを拡散させていく! 23
「き、貴様! 人が話している時に!」「すでにアイサツは済んでおる。プロデューサー同士のイクサで呑気に
口を開いていたオヌシが悪い。所詮は機械でアイドル達や取引相手を強制的に操り、不当な利益を貪っていた
サンシタにすぎぬか」ナ、ナムサン! プロデューサースレイヤーはいまなんと言ったのか!? 24
……そう、このボットはアイドル達を守るために作られたものではない! 彼女たちを操り、その感情を偽り、
ツールマスターの意のままに動かせるようにすることで、あたかも彼の方針がすべて適切であるかのように
見せるために作られたものなのだ! 25
それだけではない。ツールマスターは自分の要求に従わないスポンサーにもボットを使い、たとえどれだけ
無茶苦茶なことをしても、彼にすべて賛同するように仕向けていたのだ! これではもはやプロデューサーの
仕事とは呼べない! 26
「それのなにが悪い! 利益を上げること、それがチヒロ=サンとプロデューサーとの契約の絶対条件だろう!
俺はそれを満たすための手段としてボットを使ったに過ぎない!」「契約は、アイドル達の意志を尊重した
仕事をするという内容もあったというのに、あくまで自分に都合よく開き直るか……イヤーッ!」 27
飛び散っていくボットをメイシで撃ち落としながら相手に近づいていくプロデューサースレイヤー。
対してそれから逃れるように距離を取り続けていたツールマスターは、とうとうプロダクションの敷地に踏むこむ
前の場所よりさらに離れた街の通りにまで追い出されたことに気づく。 28
「上位最高」「アイドルこれが好き」「リボルビングで回す」周りに並ぶネオン看板はまるでツールマスターを
あざ笑うように毒々しく光り、それが彼をさらに追い詰める。 29
だがここで破壊されずに残ったボットすべてが予定通りの動作を開始したIRC通信を受け取ったツールマスターは
笑みを浮かべ、いよいよプロデューサースレイヤーを迎え撃つことを決意する。 30
「プロデューサースレイヤー=サン、余興はここまでだ!」「なんだと……?」ウシミツ・アワーのため今は人の姿が
ないとはいえ、それもいつまでのことか分からない。一気にツールマスターを仕留めようとしたプロデューサー
スレイヤーは、相手の突然の態度の変化に警戒する! 31
「俺がただ逃げているだけと思ったか! いでよ! モーターウサ共!」「「「ウサーッ!」」」こ、これは
一体どうしたことか!ツールマスターの呼びかけと同時に、プロダクションを守っているはずのモーターウサ達が
次々と上空から飛んでくるではないか! 32
「オヌシ……まさか!」「そうとも! プロダクションを守るモーターウサ共をボットで操り我が下僕とした!
こいつらのカラテの力は貴様も知っていよう!」 33
イケブクロ・アキハによって開発されたモーターウサは、その鋼鉄のボディにプロデューサー達の様々な
カラテ動作がプログラミングされており、実際その強さはカワイイな見た目に反して一体でレッサープロデューサー
10人分に匹敵するのである! コワイ! 34
「どうだ、これで貴様の負けは確定だ! このまま俺を大人しくチヒロ=サンのところへ向かわせるなら、貴様は
殺さないでやるぞプロデューサースレイヤー=サン!」「……くだらぬ」 35
だが、集まってきた合計20体のモーターウサを前にしてもプロデューサースレイヤーは動じること無く、
彼はここで初めてカラテの構えをとった。彼のみが極めることのできたハイカキンカラテの構えを! 36
「やはり所詮は機械頼りのサンシタか。チヒロ=サンも嘆いておったわ、利益だけを見てオヌシのようなサンシタを
アーチ級にしてしまった己のウカツをな。だが……」そこでプロデューサースレイヤーは口を閉じる。
チヒロにとっては良い薬になっただろう、などとは頭で思っていても口に出しては危険だからだ。 37
「だが……どうした! 先の言葉を言えぬか! やはりこのモーターウサ軍団の前に怖気づいたな! 所詮
噂の守護者もこの程度!」だがツールマスターはプロデューサースレイヤーの言葉の濁しを自分の都合のいいように
解釈すると意気揚々とモーターウサ達に命令する。 38
「やれ! モーターウサ共! 後の世のために行動を起こした我々の邪魔をする敵を叩きツブセーッ!」「「「ハイ
ヨロコンデー!」」」命令を受け突撃するモーターウサ達。勝利を確信しその様を見守るツールマスターであったが、
そんな彼をジゴクの底へ叩きこむような恐ろしい視線が貫く! 39
「アイエッ!?」ツールマスターはその視線に小さく悲鳴を上げる。視線の主であるプロデューサースレイヤーは
モーターウサに囲まれながらもツールマスターのみを睨み、低く、圧倒するように言い放った!
「違反プロデューサー、殺すべし!」 40
【PRODUCERSLAYER】
【PRODUCERSLAYER】
同時刻。南口よりプロダクションの敷地へ侵入していたインフィニティは、コセキ・レイナによって随所に仕掛けられた
対プロデューサー用のトラップ群に手こずりつつも、ついにアシスタント専用室のあるプロダクション本館入り口へと
たどり着いていた。 41
(((先ほどモーターウサ達の様子……ツールマスター=サンは無事だろうか)))敷地を巡回していたモーターウサ達がほぼ
全てツールマスターがいるはずの方角へと飛行していったのを見届けていたインフィニティは、鍵のかかった入り口を
プロデューサー腕力で破壊しながら相棒の身を案じる。 42
(((まさか噂の守り人と出会ってしまったのか。そしてモーターウサ達をイクサのために操ったとすれば、ここにはもう……)))
破壊した入り口の先に広がっていたのは暗闇に包まれたエントランス。インフィニティの予想通り、本来ここを守っている
はずのモーターウサの姿はどこにも見えず、トラップの気配もない。 43
(((やはりか、感謝するぞツールマスター=サン。君のおかげで私は労せずチヒロ=サンを暗殺で)))「ドーモ」「!?」
目の前に突如現れた少女の姿に驚き、バックステップでタタミ三枚分ほど距離をとったインフィニティは、カラテを
構えながら叫ぶ。「誰だ!」 44
「ハマグチ・アヤメです。あなたは……インフィニティ=サンでしたか?」「ドーモ、ハマグチ・アヤメ=サン。
インフィニティです」(((アヤメ=サンだと……モバP=サンのところのアイドルがなぜ……そもそもいつ現れた!))) 45
アイサツを交わしたことで一触即発のアトモスフィアがエントランスに満ちる。闇の中から突如として現れたアヤメは
フードで頭を覆い、首元には長いマフラー。さらには露出の多いニンジャ装束と、これがただのコスプレならば、
インフィニティほどのプロデューサーがここまで警戒することはないだろう。 46
だがこの平均的な胸の少女は、インフィニティがつい先程まで目の前にいたことを気づけなかったことを見ても分かる通り、
まさしく本物のニンジャ! そしてアイドルなのだ!「……プロダクションから除名されたはずのインフィニティ=サンが
何用でこちらに?」 47
「……君には関係のないことだアヤメ=サン、大人しくそこをどいてくれないか?」「それは出来ません。
インフィニティ=サンはすでにここから先に行く資格はないはずですが」 48
前に忍殺モバマスのss書いてた人かな?
どうにか隙を突いてアヤメの横を通り抜けようとするが、どう動いても必ず立ち塞がるように位置取りをする彼女の
動きに、インフィニティはため息をつく。 49
「なるほど、言っても分かってくれないか……ならば少し、痛い目にあってもらう! イヤーッ!」ここで時間を消費して、
ツールマスターの作ってくれた警備の隙を無駄にするわけにはいかない! 50
インフィニティは一瞬でアヤメのワン・インチ距離に踏み込み、カラテを解き放った! 背中と肩をぶつける打撃!
ボディチェックだ! 51
>>57
恐らくそのSSは別の方だと思います
「イヤーッ!」しかし相手をボールめいて吹き飛ばす予定であった打撃は、衝突の瞬間、アヤメがインフィニティの肩に
手を起き、そこを支点に倒立するように回避したことで不発に終わる!「馬鹿な!」目を見開くインフィニティ! 52
だがアヤメはそれだけでは終わらぬ! 倒立のための勢いとボディチェックの勢いを利用して空中へと浮かび上がった
アヤメは、そこから鞭めいて身体をしならせ回し蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」 53
蹴りの当たる寸前、ボディチェック不発の体勢から辛くも脱したインフィニティは、なんとかガードを上げこれを防ぐ! 54
だがゴウランガ! すでに最初の蹴りが防がれることを想定していたアヤメはすでに次の攻撃に移っており、
ガードを蹴った反動でそれまでとは逆方向に回転すると、今度は落下する勢いも加えて蹴りを繰り出す!
これはカポエイラのアルマーダ・マテーロだ!「イヤーッ!」 55
時間差をつけて首を刈り取るように飛んできた蹴りを、ブリッジ姿勢になろうかという勢いで上体を反らして
インフィニティは躱すと、そこから宙返りするようにして蹴りを放つ!
あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック!「イヤーッ!」 56
「イヤーッ!」落下中に飛び込んできた強烈なカウンター蹴りを空中で身を捻って回避したアヤメは、追撃を避けるべく
間合いをとって着地し、カラテを構え直す。インフィニティも同様に構え直し、再び一触即発のアトモスフィアの中で
睨み合う! 57
「しかし予想外だ。私のカラテについてこれる者が居たとは」ジリジリと円を描くように動きながら、
インフィニティはそう賞賛する。「わたくしも予想外です。アーチプロデューサーともなれば、もっと強い方と
思っていましたが」「アァ……?」その言葉にインフィニティは一瞬凄まじい怒気の表情を浮かべる。 58
「私のことを舐めているなアヤメ=サン。私はね、そういうのが嫌いだ。訂正しなさい」「……なぜ訂正の必要が?」
これはアヤメの策であり、この場にインフィニティを足止めするためにわざとやっているのである。 59
そしてインフィニティもそれを頭で理解しており、このままアヤメを無視してチヒロの元へ強行突破するという選択肢も
この時点までは残っていた。 60
けれどもアーチプロデューサーとしてのプライド、そしてチヒロに理不尽に虐げられた怒りと不満はアヤメの態度を
許すことが出来ず、結果としてインフィニティはチヒロより先にまず目の前のアヤメを倒すことを決意する。 61
「そうか、訂正しないのなら……死ねッ! イヤーッ!」インフィニティは前進してチョップを繰り出す!ハヤイ!
「イヤーッ!」アヤメはそれを身を捻って躱し、踏み込みつつ裏拳を繰り出す!「イヤーッ!」 62
インフィニティはそれを腕で弾くと、踏み込んできたアヤメにハンマーめいて肘鉄を振り下ろす!「イヤーッ!」
「イヤーッ!」それを左拳でほとんど殴るようにして弾いたアヤメは、下から掬い上げるように右手で掌打を打ち込む! 63
「ええい!」顔を逸らして掌打の直撃を避けたインフィニティは苛立たしげに舌打ちし、打ち込まれたアヤメの右手首を
つかみ腰を落とすと、そこから彼女の掌打の動きを逆利用して、手首を支点に彼女を後ろへと投げ飛ばす!「潰れろ!」 64
投げられたアヤメは衝突して壁のシミとなる前に身体を空中で回転させる!「イヤーッ!」タツジン!
彼女は投げられた先の壁に着地すると、その壁から走ってトライアングル・リープを行い、インフィニティの
後頭部へ向けて飛び蹴りを放つ!「イヤーッ!」 65
(((カラテだけでは時間がかかるだと……! かくなる上は……!)))飛びかかってくるアヤメを忌々しい目で見つめた
インフィニティは、なんとここでバンザイの姿勢をとって叫ぶ!「来い!」 66
(((なにかしてくる……!)))危険なジツの兆候を感じ取ったアヤメは、とっさに飛び蹴りの勢いを自ら殺し、
その場に着地する。直後、アヤメが飛び込むはずだった空間に何者かが現れ、アンブッシュを仕掛けた!
「イヤーッ! ……なんだ?」 67
アンブッシュに失敗した人物に続いてさらに二人、三人と男が続き、インフィニティがバンザイをやめると
エントランスでのイクサに十一人が新しく加わった。しかし、その者達の顔を見よ! 「う、嘘ですよね……」 68
あまりの信じられない光景に、さすがのアヤメも自らの正気を疑う。それもそのはず、新たに現れた者達は服装や髪型が
微妙に違えど、全員インフィニティとまったく同じ顔をしていたのである! コワイ! 69
「これぞ私の奥の手、サブアカウント・ジツ! 並行世界の私を一箇所に集めるジツだ! そして……!」
「「「アバババババーッ!!」」」 70
後から現れたインフィニティ達が全員突然痙攣を起こしたかと思うと、オリジナル以外のインフィニティ達は全員死んだ
マグロめいた目になり、アヤメに襲いかかってきた!「「「アバー」」」 71
「な、なんですかこれは! イヤーッ!」死んだマグロめいた目をしていながら、動きはオリジナルと同じ素早さという
厄介この上ない相手の突撃に、咄嗟にエントランスの天井に張り付いたアヤメは、ジツの詳細をインフィニティに問う! 72
「簡単なことだ、サブアカウント・ジツを使えるインフィニティは私だけ。そしてジツを使える私は並行世界の私を
自由に操ることが出来る!」「そ、そんな……」「「「アバーッ!」」」「ンアーッ!」 73
天井に張り付いていたアヤメに向かって、並行世界のインフィニティ達が人間タワーを組み立てて突撃! オリジナルに
気を取られていたアヤメはそれを躱すことが出来ず、天井から吹き飛ばされ地面に激突してしまう。 74
しかし直前にウケミをとったことで最低限のダメージで済んだアヤメは、ネックスプリングで軽やかに立ち上がると
インフィニティを睨みつける!「仮にも自分をそんな乱雑に扱うなんてなにを考えているのですか!」 75
「所詮並行世界の私がどうなろうと知ったことではない!私が楽をして儲かるための礎となるなら本望だろう!
並行世界の私が持つ資産を集めて使えば、アイドル達をトップへ導くことなどベイビー・サブミッションなのだからな!」 76
今の言葉にインフィニティの邪悪な本性を感じ取ったアヤメは、露骨な嫌悪の表情でカラテを構え直す。
「インフィニティ=サンがモバP=サンと同じアーチプロデューサーだったという事実が、わたくしに
とっては最悪の話ですね……」 77
「ふん! ならば、この数の差を一人でどうにか出来るのか? それともお得意のブンシンでもするか?
ここに3D投影が出来る機械があればの話だがな!」「ウゥ……!」以前いくつかのイベントでアヤメの演出を
見たことがあるインフィニティは、ここぞとばかりにまくしたてる。 78
確かにアヤメのカラテは賞賛出来るが、ジツのほうはまったく駄目というのがインフィニティの見解である。
ブンシン・ジツの再現は機械頼り。さらにはいくつかのジツの認識について間違っているという噂もあり、
それがインフィニティの勝利への確信を強めていく。 79
いくらカラテが強くとも相手は一人、こちらは並行世界のインフィニティ達を含めて十二人。囲んで棒で叩くことすら
余裕の差だ。そしてジツもない相手を囲んで叩くならば、カラテで動きを止めてしまえばいいだけである! 80
「実際サブアカウント・ジツの秘密を教えたのは生かすつもりはないからだ! 覚悟しろアヤメ=サン!」
「「「アバーッ!」」」ナムサン! イクサに決着を付けるため、インフィニティ達から連続攻撃が始まった!
まずはオリジナルのインフィニティがアヤメに向けて飛び蹴りを放つ!「イヤーッ!」 81
「くっ……イヤーッ!」襲ってくるインフィニティを最小限の身の捻りでアヤメは回避! だが次が来る!
「アバーッ!」二人目のインフィニティがアヤメに向けてドリルめいて回転しながらのドロップキック!
「イヤーッ!」襲ってくるインフィニティを最小限の上体反らしでアヤメは回避! だが次が来る! 82
「アバーッ!」三人目のインフィニティが地面を勢い良く滑りながらのスライディングキック!
「イヤーッ!」襲ってくるインフィニティをその場で跳躍してアヤメは回避! だが次が来る!
「アバーッ!」四人目のインフィニティがコマめいて激しく回転しながらローリングソバット! 83
「イヤーッ!」襲ってくるインフィニティを空中で身を捻ってアヤメは回避! だが次が来る!
「アバーッ!」五人目のインフィニティがパイルドライバーのための掴みかかってくる!
「イヤーッ!」襲ってくるインフィニティを蹴り飛ばしてアヤメは迎撃! だがこれで体勢が崩れてしまう!
「しまった……!?」 84
この機を逃さず六人目のインフィニティが空中で体勢の崩れたアヤメを掴み高速回転!「ンアーッ!」さらに回転したまま
アヤメだけを床に叩きつけた!「ンアーッ!?」ワザマエ!これは暗黒カラテ投げ技、ヘルホイール・クルマ! 85
実際その威力は凄まじく、ウケミをとったはずのアヤメの身体が磔めいて半分ほど床に埋まり、さらに蜘蛛の巣状の亀裂が
エントランスの床全体に走ったではないか!「……ッ……」 86
床に埋まったアヤメの周りを十ニ人のインフィニティが取り囲み、オリジナルのインフィニティはもはやピクリとも動かない
アヤメを見下ろして勝ち誇った表情を浮かべる。 87
「少々手こずりましたが、所詮ニンジャといえどアイドル。アーチプロデューサーである私の敵ではありませんでしたね。
そしてこれ以上苦しむことのないよう、今カイシャクしてあげましょう」 88
すでに動かなくなったアヤメではあるが、生かしておけばニンジャ耐久力によって復活する可能性もある。それを危惧した
インフィニティは取り囲んだ十二人全員でアヤメの身体の至る所を踏みつける。おぉ、なんたる死体に喰らいつくバイオ
ハイエナの群れめいた恐ろしい光景か! 89
「ヤ……メ……」頭を、腕を、足を、腹を踏まれたアヤメが、か細い声でなにかを呟くが、もはやインフィニティは
意に介さず、十二人全員で一気にアヤメを踏みつぶした!「ア……――」 90
「ハハハハハ! どうだ! 所詮アイドルがプロデューサーに逆らうからこうなる! このままチヒロ=サンも……アレ?」
強敵を倒した高揚感に満たされたインフィニティであったが、すぐにある違和感に気づいて冷静になる。
「……なんで爆発四散しない? そもそも血が出ていないような……」「アバー」 91
その時、並行世界のインフィニティの一人が踏みつけたアヤメから足を引き抜こうとして失敗した。他のインフィニティ達も
次々に足を引き抜こうとするが、同じく失敗の連続だ。92
「……まさか」オリジナルのインフィニティも足を引き抜こうとするが、並行世界の自分達と同じく、アヤメから
足を剥がすことが出来ない!「……まさか!」93
さらによく見ると、踏みつけていたアヤメの身体の輪郭と色が徐々に崩れ始め、まるで糊の塊めいた物に変化した
頃になって、やっとインフィニティは初めに彼女に感じた疑問を思い出す。 94
(((最初にエントランスを見た時は確かに誰もいなかった。だが気づいたらアヤメ=サンがいた! つまり、
このアヤメ=サンは……!)))「――わたくしのブンシンは、やめたほうがいいですと警告しようとしましたよ?」 95
突如、エントランスの奥、上階へと続く階段から聞こえてくる声! インフィニティはその方向へと振り向き、
そしてその目は驚愕で限界まで開かれた。「ドーモ、インフィニティ=サン。ハマグチ・アヤメです」
「ソンナバカナーッ!」 96
階段から降りてきて現れたのは、先ほどインフィニティがカイシャクしたはずのアヤメ!「ブンシン相手に色々と
話してくださってありがとうございます。その内容から、インフィニティ=サンにはチヒロ=サンから、
ツールマスター=サンを処分した後でお話があるそうです」 97
ALAS! つまり先ほどまでイクサの真相はこうである! インフィニティの本館への侵入に気づいたアヤメがそのことを
チヒロに報告し、彼女からブンシンを使ってインフィニティの本性を引き出すように指示を受けたためのイクサだったのだ! 98
突然インフィニティの前にアヤメが現れたのも、それが彼女のブンシン・ジツによって生み出された実体のあるブンシン
だったからであり、結果として並行世界の自分を意のままに操る男は、たった一人のブンシンも見抜けずに敗北したのである!
これぞインガオホー! 99
「バカな……そんな……アヤメ=サン、君だって、ブンシン・ジツは……」「ニンジャのジツをアイドル業に使うことは
禁止されていまして。3D投影はどうしてもイベントの演出でブンシンがしたいわたくしの我儘を聞いてもらった
結果です。こうみえてわたくし最新技術に詳しいんですよ!」 100
そしてイクサの最中に言われたブンシンについての発言を思い出したアヤメは、インフィニティに自分のブンシン・ジツを
見せるために近づいていく。「な、何をする気だ……」 101
「いえ、確かにわたくしはまだまだ修行中の身のため、先程までインフィニティ=サンが戦っていたようなブンシンは今は
最大でも4体しか作れません。ですが」その瞬間、十二人のインフィニティの周りの空気が揺らめき人の形を取り始める! 102
「スリケンを投げるなど、アヤメと同じ簡単な動きをするだけのブンシンでしたら、これくらいは作れます」
さらにコンマ数秒後、エントランスを埋め尽くすほどのアヤメのブンシンが現れたのを見て、インフィニティは完全に
自分が手玉に取られていたことを知った。 103
(((……こんな……)))「ザ……」事実を知ったインフィニティの中に、新たな感情が生まれた。それは果てしない恨みの感情だ。
理不尽なチヒロへの恨み。アヤメのような存在をアーチプロデューサーである自分に知らせなかった恨み。
次々と生まれてくる恨みはついに彼にある行動を起こさせる! 104
「ザ……ッケンナコラーッ!」もはやアーチプロデューサーとしてのプライドもなにもなく、インフィニティはバンザイの
姿勢を取ると、サブアカウント・ジツの暴走を開始!「な、なにをしてるんですか!」 105
「ダマラッシェー! もうチヒロ=サンもなにも知るかーッ! まとめて並行世界の私に潰されろーッ!」
ナムサン! ヤバレカバレなインフィニティの行動によって、次々に並行世界のインフィニティが
召喚され始める! このままでは無限に増え続けるインフィニティ達によってプロダクションは潰れてしまうぞ! 106
「どうして大人しく……!」「待っててもチヒロ=サンにひどい目に合うのわかってるなら、こうするしかないだろーッ!
皆潰れアバーッ!?」その時である! 入り口より飛来した三枚のメイシがインフィニティの顔と両腕に突き刺さり、彼の
ジツの発動を無効化! 107
ジツが強制終了したために、召喚されかけていた並行世界のインフィニティ達は次々とゴアめいた死体へ変わって
いくではないか。コワイ!「……アー……」 108
「アヤメ=サン、相手に抵抗の余力を残しておくのはイクサでは死を招くぞ。たとえそれが元身内で
あっても容赦するな」サツバツ!メイシを受けたインフィニティと、周りの惨状に言葉を失ったアヤメは同時に
入口へと視線を向け、そこからエントリーしてきた人物の姿を確認する。 109
アヤメにとっては見慣れた人物であったが、ジツを無効化されついに心折れたインフィニティにとっては、初めて見る
「P」「殺」と刻まれたメンポを見ただけで恐怖が全身を覆い尽くす。 110
「プロデューサースレイヤー=サン、もうそちらの要件は済んだのですか?」「ああ、すでにツールマスターは始末した。
残っている違反プロデューサーはその男だけだ」プロデューサースレイヤーと呼ばれた男の発言に、インフィニティの
絶望は深くなる。(((ツールマスター=サンが始末された……? ナンデ?))) 111
インフィニティの理解を超えた現象が続いていたためか、すでに彼の精神は限界を迎えつつある。それを一瞬で見て取った
プロデューサースレイヤーは虚空に向かって呼びかける。「チヒロ=サン! そろそろ降りてきたらどうだ!」 112
すると、まるで最初からそこにいたかのように唐突に、アヤメとプロデューサースレイヤーの間の空間に一人の女性が
現れる。「ご連絡ありがとうございます。お疲れ様でしたプロデューサースレイヤー=サン、アヤメ=サン」
「礼を言う前にさっさとオヌシの仕事を済ませろチヒロ=サン」「あら酷い」 113
目に刺さるような蛍光色の制服を着たこの女性こそ、シンデレラ・プロダクションのアシスタントにして、真の支配者
センカワ・チヒロである! もしもアヤメと戦う前までのインフィニティであれば、このチャンスに意気揚々と
イクサを仕掛けたことだろう。 114
だがすでに心折れた彼にとってこのチヒロの出現は、死神の来訪めいた最悪の事態であった。
「ヒッ……チ、チヒロ=サン……!」「ドーモ、インフィニティ=サン。本来であればあなたはすでに
始末されていましたが、少し気になる点がありましたのでお話に参りました」 115
あくまでにこやかな笑顔で話すチヒロであるが、それが欺瞞でしかないことを、プロデューサースレイヤーとアヤメは
理解している。なにより、話しかけられているインフィニティにとってはその笑顔こそが一番恐ろしいのだ! 116
「き、気になる点ってなんだ……!」「あなたのサブアカウント・ジツ。並行世界から集められるのは、自分の同一存在と
その資産だけなのですか?」「そ、そんなことを知ってどうする!」「いえ、もしも並行世界からそれら以外も
集めることが出来るのでしたら、やってみたいことがありまして」 117
さも楽しそうに話すチヒロであるが、きっとそのやりたいこととは碌でもないことなのだろうと、
プロデューサースレイヤーとアヤメはお互い見つめ合って嘆息する。「それで、実際どうなんですか?
出来ますか? 出来ませんか?」 118
答えを催促されたインフィニティは何度も返答しようとして喉に言葉を詰まらせる。これはサブアカウント・ジツは
自分と自分の資産を並行世界から持ってこれないと分かっているために、出来ないとしか答えられない質問だ。 119
けれど、そう答えた瞬間自分はどうなる? それに思い至ってしまうとどうしても上手く返答が出来ないのだ。
「タイム・イズ・マネー。早く答えてくれませんと……」 120
しかし、返答を先延ばすのにも限界がある。インフィニティは覚悟を決めるとたった一言の返答を時間をかけてチヒロに伝えた。
「で……でき……な……い……」「……そうですか。あまり期待はしていませんでしたが、いざ聞いてみると残念です」 121
呟きながら、あまり落胆した様子のないチヒロ。「……それで、この人はどうしますかチヒロ=サン?」
そんな彼女にアヤメはやっと片付けが出来ると言った様子で尋ねる。早く処理しなければ、もうすぐ朝が来て
しまうからだ。すでに東の空は薄っすらとであるが明るさを見せ始めている。 122
「え? アー……」チヒロは言われ始めて思い出したという風にインフィニティを見る。サブアカウント・ジツに
利用価値がないとわかった時点で、チヒロの中からインフィニティという存在への興味は消え去っているのだ。 123
すでに除名処分を行った時点で、二人のプロデューサーが担当していたアイドル達の記憶は書き換えが済み、新たな
プロデューサーにそれまでの思い出を重ねて過ごせるように調整している。結局のところ、チヒロにとっては
ほとんどのプロデューサーは替えが効く存在でしかない。 124
「……そうですね、この割れた床のこともありますし……」「た、助けてください……!」ブザマな命乞いをする
インフィニティ。しかしその声はチヒロの耳に届くことすら無く、彼女は呆気なく処理の方法を決めた。 125
「仕方ありません。私が処理しますよ」そして……おお、ナムサン! チヒロがパチンと指を鳴らした直後!
「……な」「……エ」プロデューサースレイヤーもアヤメも認識出来ないなんらかの力が働き、
もはやそこにはなにもなかった。 126
インフィニティという男も、その存在を証明するイクサの痕跡も、全てが完全に世界から抹消されたのである。コワイ! 127
「これで良し。では私は新しいイベントに向けて仕事がありますので。お二人共、本当にありがとうございました。
後日お礼を用意しますので、今日はゆっくり休んでください。カラダニキヲツケテネ!」 128
そして、チヒロは現れた時と同じように突然その場から消え、後に残された二人は今目の前でおきた現象を理解しようと
必死になり……結局は意味のないことだと諦めるのであった。 129
--------------- 130
「……モバP=サン」チヒロに言われた通り今日は休むことになったアヤメは、隣でメンポを外し始めた男の名前を呼ぶ。
そう、プロデューサースレイヤーの正体は、彼女のプロデューサーであるモバPだったのだ! 131
「……なんだ」呼びかけられたモバPは、どこか疲れた表情でアヤメに向き直る。普通であればプロデューサー失格の行為だが、
もはや二人の間にはこの程度ではシツレイにならないほど、他人には言えない秘密が蓄積されている。 132
「わたくし達、実際このままチヒロ=サンに従っていてよいのですか……?」先ほど見た光景を思い出し、アヤメは身震いする。
「インフィニティ=サンを追い詰めたわたくしが言うのもおかしいのでしょうが、やはり、あんなことは……」 133
「……今日の二人も、契約を破った上、除名処分で済んだところをチヒロ=サンに反旗を翻した。だから始末対象になった。
それ以上でもそれ以下でもない。アヤメ=サンが気にする必要はない」 134
もはや同僚が消えていくことに慣れてしまったモバPは、そう淡々とアドバイスをする。なによりチヒロに弱みを握られているが
ためにプロデューサースレイヤーという存在になってしまった彼に、憐れみや後悔という感情はない。 135
「それは……」けれど、ニンジャであったがためにチヒロに目をつけられ。モバP……いや、プロデューサースレイヤーと同じ仕事を
させられるようになってしまったアヤメは違う。それは彼女のプロデューサーとなったモバPが一番良くわかっている。 136
だからこそ、モバPはアヤメがチヒロの怒りを買ってしまわないように努める。このマッポーな芸能界において、少女一人の
命運を破滅させるなど、チヒロにとってはベイビー・サブミッションだからだ。 137
「ニンジャなのに優しいなアヤメ=サンは。だが、さっきのことはもう忘れろ。この世にはどうすることも出来ない相手がいる。
チヒロ=サンはそういう相手だ」「しかし、モバP=サンであればきっと……」その先の言葉を言わせないために、モバPは
アヤメの頭を乱暴に撫でる。138
それだけで、アヤメも恐ろしいことを口にしようとしていたのだと認識し、これ以上モバPを困らせないために意識を
切り替える。「…………ではモバP=サン。今日はせっかくお休みになりましたし、ゆっくりと家で時代劇観賞など
いかがでしょう!」 139
「時代劇……まぁ、たまにはいいか」「ヤッター! ならば早速行きましょうモバP=サン!」「おいおい、引っ張るなよ」
悲壮なアトモスフィアを無理やり吹き飛ばすようにモバPとアヤメはプロダクションを後にする。 140
そして朝を迎えたシンデレラ・プロダクションは、今日もまた、何も知らない無垢なアイドル達と、チヒロの契約に
縛られたプロデューサー達の手によって、人々を笑顔にし利益を生み出す象徴として君臨するのだった。 141
【ノーチヒロ・ノープロデューサー】終わり
秘伝☆くのいちなアヤメ=サンを三人手に入れた記念です
なお、いくつかの通し番号のタイプミスの件はすでに担当者がケジメ済みですのでごあんしんください
さらに劇中でチヒロ=サンを怪しい人にしすぎた担当者はすでに自我の研修を完了しており、かさねてごあんしんください
よってチヒロ=サンは天使であり、アヤメ=サンのこともドーゾよろしくおねがいします
読んでくださった方ありがとうございました
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