―――――

千早「ハァッ…ハァッ…どうやら、私の勝ちのようですね」

舞園「………まさか、私が負けるなんて…予想だにしませんでしたよ」

千早「驚いたわ、まだ意識があったのね」

舞園「これでも『超高校級のアイドル』に推薦された身です…」

千早「そうだったわね…そして、その肩書は遠慮なくいただいていくわ」


舞園「構いませんよ。元よりそのつもりでしたから」

千早「それは私が、勝っても負けても、という意味かしら？」

舞園「はい。そうです」

千早「舐められたものね」

舞園「はっきり言って、あなたがここまでやる人だとは思いませんでしたから」

千早「でも…それならなぜ私を超高校級のアイドルに推薦する気になったの？」

舞園「エスパーですから」

千早「全く根拠になっていないわ。…じゃあ、推薦状を」

舞園「これです…どうか、御武運を」

―――――

「あの人………かなりやばいんじゃないでしょうか………」

「ファック！舞園さやかを倒すとか！どんだけつえーんだよ！イエス！」

「客観的に見てまだ私の姉のほうが強い気もしますね」

「私様が絶望できればなんでもかまわないがな…せいぜい楽しませることだな、人間」

――――

―――――

千早（私立、希望ヶ峰学園…『超高校級』と呼ばれる高校生が集められる、名門中の名門）

千早（……ここでなら、きっと頂点に立てる…？立ちくらみ…？）ｸﾗｯ



千早（…………………どうして私は見知らぬ教室に立っているのかしら？）

千早「まあ、なんでも、いいですけれど」

千早（本当は何もよくないけど…焦っても仕方ないわ）

「ん………あ……………れ？」

千早「！？」ﾊﾞｯ

「ここは………一体………？」

千早「………私の他にも人がいたのね」

「えっと………君は？」

千早「如月千早………あなたは？」

「苗木…誠。えっと…よろしく、如月さん」

苗木「って、えぇっ！？き、如月千早さん！？」

千早「えぇ、そうよ」

苗木「だ、大人気アイドルの！？でも…あれ？超高校級のアイドルは舞園さんだって…」

千早「彼女の推薦を受けたのよ」

苗木「そ、そうなんだ。ところで…今日って、入学式……だよね？」

千早「そう、そのはずよね……あなたも気づいたら、この教室に？」

苗木「うん。立ちくらみがしたと思ったら、この教室で寝ちゃってて…」

千早（全く同じ状況下で…？これが偶然…？）

苗木「あ…この紙に『エントランスホールに集合』って書いてある」

千早「向かいましょう。他の人がいるかもしれないわ」

苗木「うん、そうだね…」

―――――

千早（ここが…エントランス？）

苗木「…うわ…すごい…」

千早「…あなたたちも、今日入学するはずだった？」

「あぁ、そうだ。俺は十神白夜。名乗れ」

千早「…如月千早」

十神「そっちは？」

苗木「え、えと苗木誠」

十神「…フン」

千早（もう興味は失せたようね）

千早（超高校級の御曹司…か………傲岸不遜な態度ね）

千早（思い上がりではないようだから使い方間違ってるかしら？）

苗木「えっと、君は腐川冬子さん？たしか、超高校級の文学少女とか…」

「………」

千早「………どうしたの？彼をじーっと見つめて」

「別に。なんでもないわ」

千早「私は如月千早。あなたは？」

「霧切響子」

千早「あなたは、なぜここに？」

霧切「どうして言わなければ？」

千早「…言いたくないなら、別にかまわないわ」

霧切り「そう」

千早（もう会話する気はないようね）

千早（一応今日入学する顔ぶれは調べてはいるのだけれど…彼女に関しての情報は無かったわね）

「な～に難しい顔してんの？」

千早「………盾子？」

「そそ、江ノ島盾子ちゃん。久しぶり、千早」

千早（少し前に知り合った、カリスマ読者モデルの江ノ島盾子。彼女が入学することも知らなかったなんて…）

江ノ島「『超高校級のギャル』ってね。面白そうだから他には黙ってたんだ」

千早「ふふっ、いかにもあなたらしい理由」

江ノ島「でしょ？でもま、アンタがいることのほうが驚き。アイドル枠って舞園さやかじゃなかったの？」

千早「彼女の推薦を受けてね」

江ノ島「へー、よかったじゃん！」

千早「………ねえ、盾子…この状況、どう思う？」

盾子「異常だね」

千早「あっさりね…まぁ、同意するわ」

盾子「だって、エントランス…こんなのだった？中には入ったでしょ？」

千早「そうよね…間取りだけだと、希望ヶ峰のようなんだけど…」

盾子「あ、違う場所ってこともあり得るのか」

千早「そっちの可能性のほうが高い気もするわ…一、二時間で学校が様変わり、だなんて…」



ピンポンパンポ～ン

『うぷぷぷぷぷぷ…』

江ノ島「ブッホッ！」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

千早「？なに、この放送…」

『新入生の皆さんは、直ちに体育館に集合してくださいっ！』

「ほーら、やっぱ学園が用意したサプライズなんだべ！」

千早「楽観的ね。あなたは？」

「葉隠康比呂だべ。よろしく、如月っち」

千早「……」（どうしよう、あまりよろしくはしたく無い）

葉隠「んじゃ、俺は一足先に体育館にいくとすっか！」

江ノ島「ﾌﾟﾌﾟﾌﾟ…ﾌﾞﾎｯ…」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

千早「盾子はどうしたの？」

江ノ島「い、いや、なんかさっきのドラ声が妙にツボって…」

千早「確かにかなり個性的な声だったわね…」

「ほらほら！如月ちゃんに、江ノ島ちゃんだよね？急がないとみんな移動しちゃうよ！」

千早「そうね、急ぐとしましょうか…あなたは？」

「朝日奈葵！よろしくね！」

千早「ええ、よろしく」

朝日奈「じゃあ、一緒にいこ！」

千早（元気な人ね…好きだけど苦手なタイプだわ）

―――――

エントランス前、廊下

千早「あ、苗木君。まだエントランスよね」

江ノ島「あぁ、あの律儀に全員に挨拶してたやつね。霧切と他にも2，3人残ってるよ」

朝日奈「このままじゃビリになっちゃう！？」

千早（それ、今気にすることかしら…）

千早「朝日奈さんは先に行ってて。一声かけてくる」

江ノ島「え、あたしは？」

千早「別にちょっと戻るくらいいいじゃない」

江ノ島「まぁ…いいけど」

千早（あら…？ちょっと不機嫌そう）

―――――

エントランス

千早「みなさん、はやく移動したほうがいいのでは？」

苗木「あ、如月さん。ゴメン、僕が霧切さんと話し込んじゃったから…」

「いえいえ、とても面白い話を聞かせていただきましたわ」

「立ち聞きも悪いと思ったが…すまぬ、あまりに聞いているのが面白くてな」

千早「えっと…大神さんに、セレスティアさん…よね」

「いかにも。大神さくらだ」

「セレスティア・ルーデンベルグ。出身は栃木県ですわ」

霧切「………」

千早（この人が苗木君と会話？）

『えっと～そろそろ来てくれないと…さびしいんだけど…』

苗木「じゃあみんな、行こうか」

セレス「ウフフ……」

千早（話には聞いてたけど、不思議な人ね）

セレス「そうですわ、如月さん。呼びづらいようでしたら、ぜひ『セレス』とお呼びしていただいて結構ですのよ？」

千早「悪いけど、そうさせてもらうわね…セレス」

―――――移動中

苗木「えと、江ノ島さん、だったよね…なんでそんなプルプルしてるの？」

千早「どうもあの放送のドラ声がツボに入ったらしいの」

江ノ島「ぷぷぷ…」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

苗木「へー…」

―――――

体育館

『やーっと揃ったんだね！』

ボフン

千早（ステージ上に…煙幕？）

「うぷぷぷぷぷ……よろしくね、みんな！この学園の学園長、モノクマだよ！」

「さっそくだけど、皆さんにはコロシアイ、をしてもらいます！！」

千早（モノクロカラーのクマのぬいぐるみが出てきたと思ったら突然ｂｒ発言してきたわ…）

千早「何を言っているのかしら？」

モノクマ「まーまー落ち着きなさいって、如月さん。これから入学式だからさ！」

苗木「こ、コロシアイって…」

モノクマ「じゃあ、今からルール説明をはっじめマース！」

「ふざけんな！」

千早（あれは…超高校級の暴走族、大和田紋土）

大和田「誰がコロシアイなんざ…！」

がしぃ

モノクマ「ちょ、学園長の胸倉つかまないでよ。わ、わ、タイム！ルール説明をちゃんと聞いたほうが…」

大和田「こんなヌイグルミ…たたき壊して…」

モノクマ「……………」

ピッ…ピッ…

千早（…！爆薬の匂い！）

千早「大和田君！それは爆弾よ！」

大和田「なっ」

千早「投げ捨てて！」

大和田「ちっ…」ﾌﾞﾝｯ！

千早「みんな伏せて！破片が飛んでくるかもしれない！」

ピッ…ピッ…ピッ…ピィーッ！

セレス「………！」

千早「セレス！！」ｶﾞﾊﾞｧｯ


どん！

千早（間抜けた爆発音だけど…威力は確かね…）

千早「セレス、大丈夫？」

セレス「…女性に押し倒される日が来るとは思いませんでしたわ」

千早「あ、ごめんなさい」

千早（他のみんなも無事なようね…）

「まーったく！これで人の話を聞く気になったかな！？」

千早（まぁ、やっぱり量産されてるわけね、あのクマ）

霧切「………」

苗木「ありがとう…でも…あ、あのー…霧切さん？そろそろどいてくれないかな？」

霧切「…そうね、ごめんなさい」

千早（霧切さんに押し倒されてるし…）

苗木「………」

モノクマ「はいはい！イチャイチャはそこまで！もう！じゃあ、ルール説明！」

1．ここで一生共同生活を行うこと

2．ただし、誰かを誰にもばれずに殺した場合、ここから『卒業』することができる

3．学園長モノクマに対する暴力は禁止とする

4．就寝は個室でのみ行うこと

5．夜時間（午後10～）に、一部出入りできない施設有り

6．１～4を破った場合、罰則がある

7．校則は順次増える可能性がある

千早（………めちゃくちゃね）

苗木「な、何を言ってるんだ！」

モノクマ「あー、そうだよねぇ…大神さんとか十神クンとか…その辺の人たちに比べて苗木君みたいな人は不利だもんね…」

苗木「そういうことじゃ…！」

モノクマ「わかりました！各々に武器を支給しましょう！個室においておくよ！」

モノクマ「では、この電子生徒手帳を配って、入学式を締めくくりたいと思います！」

千早（電子生徒手帳？）

モノクマ「この電子化された生徒手帳ではこの学園の地図を見たり、校則を確認したり、みんなのプロフィールを見たり…そんな機能があります！ぜひ有効活用してね！」

千早「………まずいわね」

モノクマ「じゃ、まったねー！」

朝日奈「………大丈夫…だよね？私たちここから出られるんだよね？」

十神「出たければ殺すことだ。あのクマもそう言っていたじゃないか」

朝日奈「殺すなんて…！誰もそんなこと本気で…！」

十神「本当にそうかな？たとえお前がそう思っていても、他はどうだ？」

千早「まったく…疑ってかかってもしょうがないと思わないの？今はここからの脱出手段を考えるべきでは？」

十神「フン…」

千早「みんな、とりあえず手分けしてこの学校を探索しないかしら？何かしらの手掛かりは得られると思うのだけれど」

朝日奈「そ、そうだね！じっとしててもしょうがないし！」

千早「盾子、行きましょう」

江ノ島「またあたし？千早…ソッチの気とかあるんじゃ」

千早「黙りなさい」

セレス「集合場所はどうするのですか？」

千早「体育館でいいんじゃないかしら？」

霧切「…寄宿舎のほうに食堂があるわ。そこにしたほうが効率的ではないかしら？」

千早「どうしてそれを？」

霧切「生徒手帳の地図に載ってるわ」

千早「へぇ…じゃあ、食堂に集合でいいかしら、みんな」

「いいだろう！男子を代表して僕が賛成するっ！」

千早（石丸清多夏…超高校級の風紀委員）

「勝手に代表かよ！？マジパネー…」

千早（超高校級の野球選手、桑田怜恩…軽そうな外見ね）

―――――

千早「と、いうわけで個室に来たわね」

江ノ島「どうするよ」

千早「防音チェックでもやりましょうか…あとはどんなものが置いてあるか」

江ノ島「おっけー。じゃあ隣の部屋にいるからテキトーに大声出して」

千早「隣の部屋は苗木君の部屋だったかしら？」

江ノ島「さっき確認したら鍵開いてたし。ちょっと入るくらい問題ないって」

―――――

千早「あおいいいいいいいいいいとりいいいいいいいいいい」

―――――

江ノ島「うーん…廊下だとチラッと音は聞こえるけど隣の部屋には全く音が聞こえないね」

千早「結構な防音設備じゃない。歌の練習にはもってこいね…こんな状況でもなければ喜ぶんだけど」

　
千早「置いてあるものは…ふむ、何もないわね」

江ノ島「まああえて挙げるとすれば人体急所マップ付裁縫セット？」

千早「これが私に支給された『武器』なのかしら」

江ノ島「ぷ…貧弱だね。苗木の部屋も見てこよーか」

―――――

江ノ島「おいおいマジかよ…」

千早「…これはどう見ても拳銃よね？弾丸は入ってないようだけど…」

ガチャ…

苗木「でもこの伏線を考えると…って、えっ！？」

霧切「…あまりいい趣味ではないわね、二人とも」

千早「あ、ご、ごめんなさい！鍵が開いてたからつい…」

苗木「け、拳銃！？」

千早「ち、違うの！これは苗木君に支給された武器で…あ、はい！」

苗木「え、えっと…渡されても困るな…」

千早「弾丸は入ってないようよ」

苗木「あ、ほんとだ…別に武器が必要なわけじゃないけど、なんでこれを武器として支給したんだろ？」

江ノ島「…ところで、なんで霧切と一緒に部屋に戻ってきてんの？」

江ノ島「苗木って意外とヤリ手なん？」ﾆﾔﾆﾔ

苗木「えっ、ち、違うよ！」

霧切「…それぞれの部屋に支給された武器は把握しておいたほうがいいと思ってね」
　
千早「なるほど…何かあったとしても誰がやったか目星がつけやすいものね」

霧切「ここにある物資であからさまに凶器になりうるものなんて…部屋に支給された武器くらい」

千早「それなら全員への確認も取りやすいと…そういうわけね」

霧切「ええ」

江ノ島「ちなみに千早の部屋にあったのは裁縫セットだったよ」

霧切「裁縫セット…？」

千早「人体急所マップ付だったから…」

霧切「あぁ…」

苗木「霧切さんの部屋にはサバイバルナイフがあったよね」

霧切「ええ」

江ノ島「あー…あたしの部屋も確認してみる？」

苗木「あ、じゃあボクは食堂に行って人集まってるか見てくるよ」