私の名前は二条泉。麻雀を愛する、華の女子高生!
実力はインターミドル団体で活躍したり、
その功績を見た関西の名門・千里山から案内が来たりもするくらい…かな。
でもどういう因果か、千里山には入学でけへんようになってしまったんや…
泉「はぁ…なんやねん。オカンのアホぉ…」
理由は…まあ家庭の事情ってやつや。
それに案内自体は貰ったけど、別に特待生でって訳やない。
「見込みあるから声は掛けとくけど、入学するにあたっての雑費は自費で」ってことで…
泉「…文句言うてもしゃーないか。私がもっと強ければ良かったって話やしな…」トボトボ
こうして私は…特に有名でもなんでもない、ごくごくフツーの高校の入学式へと歩みを進めるのであった…
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―1章―
泉「はぁ……」
どうも毎日が浮かへんな…
入学して数か月、取り敢えず他愛のない会話をする程度の友人は出来たし、
初めての定期試験も、学年の上位2割には喰い込めた。
泉「フツーやったら上々なんやろな。フツーやったら…」
泉「でも…やっぱり、麻雀の無い生活なんて考えられへんわ」
最近はネト麻しかしていない…それすらもイマイチ集中できず、レートは200近くも下がってしまった。
泉「人ってこうも簡単に変わってしまうもんなんやろか」
泉「あ…しまった。財布忘れた」
門を出てしばらく歩いてから気が付いた。
あの中に定期も入ってるのに。まあ歩いて帰られへん距離やないけど。
泉「3000円の損失は女子高生にとっちゃイタイで…」
これは取りに行かなあかんな。
泉「…ここからだと、こっちの門から入った方が近いか」
初めて通る道…上級生の教室前を通って行くことになる。
上履きは…来賓用のスリッパを拝借すればええやろ…
パタパタ パタパタ…
泉「なんや、恥ずかしいな…」
スリッパってこんなにパタパタ言わせてたか?
静かな校舎に響く足音が、無性に恥ずかしい。
泉「ま、自意識過剰やな」
かぶりを振って、また歩き出す。
「で…………ーハイ………ピオンが決まった………」
「牌……異…ですね…」
…教室の中から、声がする。
部活のない上級生が駄弁ってんのか。
泉「…」
スッ スッ
なんとなく、足音小さめに…
……って、なんで気配消さなあかんねん。
泉「自意識過剰…」ボソ
はよ財布取りに行こ。
「私達……たかっ…な。私3年…し…」
「ま、………ないです。出来る人が…………………」
泉「…」
…まだ話しとる。何の話をしとるんやろ?
もうちょい近づけば聞こえるな…
…悪い興味。まるで出歯亀…
「……は2年やからな。まだチャンスあるやん」
「いやーでも厳しいですよ。この辺で打てる人はこの学校に来ませんし」
「ま、そやな。関西も激戦区やし、頭数揃えてどうこうなるとも思えへんしな」
…2年生と3年生の会話か。
「ここらで麻雀で青春しようって子は、みんな千里山か姫松に行きますからね」
ドクン
麻雀………?千里山………!?
「ま、私らはそんな感じやないしな」
「言えてます」
「おでかけ辛いしな」
「それはちゃうやろ」
…もしかして、麻雀の話してる…?
泉「…ふぅーっ」
…なんか、体温上がってってる気ぃする…
泉「…久しぶりやもんなぁ」
誰かの口から、麻雀の話を聞くなんて…
「今日も行きます?」
「んー…行こか。おっちゃんも待ってるやろしな」
「流石におっちゃんじゃ園城寺先輩の連帯は止められんと思いますけどね」
ガラッ
泉「あ」
怜「ほ?」
浩子「…は?」
怜「んー…?1年生か?」
浩子「教室前で何しとるんですか」
マズった……!!
盗み聞きして、鉢合わせって…私馬鹿やろ!!
泉「あ…ぅ…えっと……」
怜「…」
浩子「…」
うわ…先輩方の私を見る目が、不審者を見る時のそれや!
ヤバイヤバイヤバイ、何か言い訳せんと…
でも、何言うたらええんや………!!
怜「…立ち聞きは、お行儀よろしくないなぁ」
泉「うっ…」
浩子「別に聞かれて困るようなことちゃうけど…気分は良くない。
これに懲りたら、こういうことしたらアカンで」
泉「う…うう…………」
ああああああああああああ。どないしよどないしよどないしよ…
この機会をこんな形で逃したら、もう高校では牌に触れられへん…っ!!
泉「…しょっ」
浩子「しょ?」
泉「勝負!勝負や園城寺ィィィィィィィィィっっっ!!!」
怜「…は?」
浩子「…麻雀がしたい?」
怜「ははあ、成程な。ま、この界隈じゃ全然浸透してないしな。
北大阪が聞いて呆れるで」
浩子「…に、しても」
怜「急になぁ…あれはちょっと…」
泉「すっ、すみませんでしたァ!!」
なんであんな事言うたんや私はああぁぁぁぁっ!!
幾らテンパってたからといえ、あんな……
浩子「『勝負やオンジョウジイイィィ』」
怜「ぶはっ、あはははっ」
泣きたい。誰か私の為に穴を掘ってくれ。
特注の、全身すっぽり収まるヤツ。
浩子「ってか、なんで呼び捨てやねん」
怜「アンタも今呼び捨てしたやろ」ビシ
せや。なんで呼び捨て……
…どうしても引き留めなきゃって、気持ちが先行して。
唯一盗み聞けた、『園城寺』って人名を叫んだだけ。
泉「…すみませんでした…ホンマに…」
怜「いや、まあええけど」
泉「…最近打ってなさ過ぎて、気が狂ってました」
怜「ほんまクレイジーやな」
浩子「『ウォンジョウジイイィィ』」
怜「ぶっ」
殺してくれ。畜生。
怜「まあそういうことなら着いてきぃ。一局交えよや」
泉「…ここって麻雀部あるんですか」
怜「いや、ないで」
浩子「普段私達は雀荘で打ってるんや」
雀荘…存在は勿論知ってるけど…
…未知の領域や。
泉「お金掛けたりするんですか」
怜「そこはノーレート」
浩子「毎日夜まで打ってたら流石にすっからかんや。
まあおっちゃんはカモやけど」
怜「ちょいとでも手強い人が来たら、場代でゴリゴリ削られるで」
浩子「新規客来おへんけどな」
怜「せやな。もうあそこも潰れるで」
泉「…」
浩子「あ、でもノーレートっても場代は取られるからな」
泉「そうですか…それも高いんですか?」
浩子「いや、格安。学割使えるし」
怜「やなかったら使てへんな」
泉「はぁ…」
怜「ま、とりあえず行こう。物は試しや」
―雀荘『ふつてーな』―
カランコロン カランコロン
怜「おーっす」
?「またアンタらか」
ん…?この背の低い女の子は店員なんやろか…?
見た感じは同い年か、少し上に見えるな…
浩子「エライ接客どーもです」
?「どんだけ来る気やねん」
怜「学割サービスが終わるまで」
?「本来ウチでは学割やってへんって。
アンタらがしつこいから、しゃーなしにやっとんのやで」
浩子「ええやないですか。こうして固定客も着いた訳やし」
?「学生ってアンタら以外来てないで」
怜「やから今日はゲスト連れて来てん」
?「あ、この人お客さん?間違えて入って来たんかと」
浩子「なんでやねん」
泉「ど、どうも」
?「すまんな、汚いところで」
怜「ホンマにな」
?「黙っとけアホ。
今飲み物出すから適当に座っといてや。ルールはそこに貼り紙してあるから」
浩子「ツメ茶でー」
怜「はよメロンソーダ」
?「…ああ出したる。出したるが、お前らおかわりナシな」
浩子「扱いがぞんざいですわ」
?「学割の代償や」
怜「エライ接客やな」
?「メロンソーダはないからコーラな。アンタは?」
泉「私もコーラで」
?「了解。場代は後払いやから気楽に待っとってな。
アホども、この子に雀荘のことしっかり説明しとき」
怜「誰がアホやねん」
?「その無い胸に手をおいてしっかり考えるんやな」
浩子「それ自分で言ってて悲しくなりません?」
?「お前らの事や!」
泉「…」
怜「はー、ホンマ疲れるやっちゃで」
泉「あの人は店員さんなんですか?」
怜「ん、まあ店員っちゃ店員やな。おっちゃんの娘」
泉「おっちゃん?」
浩子「おっちゃんっていうのはここのマスター。
小太りの毛むくじゃらやからすぐ分かる」
怜「今日は居ないみたいやな。
おーい、おっちゃんはどうしたんやーーー!?」
?「競輪外して不貞寝しとるわーーー!!」
怜「ロクでもないな」
浩子「ホンマ、ギャンブル弱いなぁ」
泉「…お二人は、あの人と仲良いんですか?」
浩子「まあな」
怜「以前はもっと丁寧に接客されてたんやけどなぁ」
?「おまちどう。アンタ、名前は?」
泉「泉です。二条泉」
浩子「へえ」
怜「泉っていうんやな」
?「なんや、知り合いやないのん?」
怜「さっき会ったばっかり」
?「ナンパか」
浩子「逆ナンです」
泉「……////」カァァァァ
怜「私らも自己紹介しとこか」
怜「園城寺怜」
浩子「舟久保浩子や」
?「末原恭子。よろしゅう」
恭子「ほんじゃ、始めるで」
東1局
ドラ ⑥
泉(牌に触るのも久しぶりや…)
③(⑤)一三三六156東白8⑨ ツモ⑨
ちゃんと、打てるやろか…
打 白
9巡目
泉(うん、打ててる。調子もそれなりに良さそうや…)
③(⑤)⑥⑨⑨三三三四六456 ツモ④
三色ドラ2、カン五萬の親満………
泉(不慣れな場所やけど、これを和了れれば気持ちも落ち着ける筈や…)
打 ③
10巡目
泉(良いツモ…)
④(⑤)⑥⑨⑨三三三四六456 ツモ(5)
手牌の黒5索と入れ替えて、ツモっ跳。
問題はリーチに行くか否かやけど……
泉(跳満確定になるとはいえ、流石にリーチはないやんな……)
打 5
怜「ロン」
怜「2600」パラ
2233445五六七八八八
泉(う…)
安手で蹴られた……
泉(まあこういうこともある…か……?)
………なんやその捨て牌。
怜捨て牌
②一南白98
⑦北七
泉(なんで七萬を切っとる…?)
七萬残して5索を切れば、平和も付いて一盃口が確定する。
加えて四-七、六-九萬の良形四面張……
泉(5索を残してノベタンに構える意味は殆ど無い)
……ド素人か?
東2局
泉 タン
浩子「ロン」
23(5)5⑤⑥⑦四五六六七八
浩子「2900」
泉「…はい」チャラ
浩子「毎度」
恭子「コスいダマやな」
浩子「そりゃ褒め言葉ですよ」
泉「…」
確かにコスい。なんでそれをダマにしとる……?
浩子「泉の疑問に答えたろうか」
泉「!?」
しまった!カオに出てたか……!?
浩子「リーチしても、出えへんからやで」
……まあそりゃ、リーチされたらオリますけども。
東2局1本場
ドラ 三
浩子「リーチ」
って、言ってたのに今度は親リー!?
…つまり、役なしってことか……?
恭子「チー」
…末原さん、だったか。この人も仕掛けてきた……
浩子捨て牌
九⑧九白④
恭子捨て牌
北中七南⑨③ 仕掛け チー四・二三
泉(安全牌は……)
①②⑥⑧56678三五五七 ツモ東
これや……っ!!
打 ①
恭子「ロン」
恭子「4200」
①②③④234(5)67 チー四・二三
泉(う…三色…!!)
浩子「恭子さんも十分コスいです」
恭子「褒め言葉やろ?」
…上手く嵌められたッ…!!
東3局
ドラ 六
泉(アカン…安手ばっかり振って一人凹み…)
②④④⑧⑧五六六34678 ツモ③
絶好のイーシャンテン。この手はモノにしたい…
打 ④
怜「ロン」ゴッ
怜「5200」
③⑤(⑤)⑥⑦二三四(五)五678
アカン……!!!
東4局
泉(4連続放銃……)
泉:10100
浩子:26900
恭子:30200
怜:32800
ドンラス……
泉(最悪の気分や……)
ツモが噛み合ってないだけやない。
なんとなく………
泉(実力の違いを感じるような……)
10巡目
怜捨て牌
東南⑨1発2
中②⑦6
泉(園城寺先輩の打牌が強い…)
多分テンパイやな……
泉(もうこれ以上、振らんで……!!)
11巡目
怜 カチッ
怜「リーチ」トッ
泉(は……?)
ツモ切りリーチ!?
泉(モロ引っ掛けを嫌ったか……?でも…)
私はちゃんと覚えとる…最後の手出しは6索!
泉(見くびらんといてな…完全ベタオリや…っ!!)
浩子「…」チャッ
打 ⑤
泉(強いな。船久保先輩も聴牌かもしれへん。安直に現物は切れん……)
恭子「…」
浩子 フー…
泉「…?」
12巡目
怜「ツモ」
怜「6000オール」オッ
456一二三四五六七八⑥⑥ ツモ九
泉(一発!?どういうことやこの人……!?)
……ド素人…か…?
泉(偶然なんか…それとも…)
浩子 チャラ
恭子 チャラ
狙ってやっとんのか……?
東4局1本場
ドラ 六
恭子「ポン」タン
恭子捨て牌
①③五①南二 仕掛け ポン北・北・北
7
末原さんが自風をポン。ホンイツ臭さもあるな…
怜 タン
打 9
泉(ドラを固め持っとる可能性もあるが…)
123357三四五六八④(⑤) ツモ4
打 7
怜「ロン」
は……!?
怜「4200」パラッ
四(五)六②②②③④89白白白
末原さんの打牌を見逃して、三面張になる9索をツモ切りしてペン7索…!?
怜「飛びやな。ラスト」
泉「…」
腑に落ちん…
泉「どうして、あんな…」
あんな待ち方が出来る……!?
怜「なんでやろな」
浩子「教えへんスタンスですか」
恭子「鬼やな」
泉「…もしかして」
怜「ん?」
泉「分かっとるんですか」
泉「牌が」
恭子「おお…」
浩子「まあ、近い。流石に違和感あったんやろ」
泉「ガン牌とかですか」
ガン…つまりイカサマ。
もしおちょくられとったんなら、私は……!!!
怜「いや、ちゃうで」
泉「…」
恭子「気持ちは分かるわ。私も始めは疑うしかなかったし」
浩子「なんやと思う?」
泉「…」
そんなの、分かる訳ないやん。
浩子「露骨に不満そうな顔やな…」
恭子「結構顔に出るな、自分」
泉「えっ、す、スミマセン」
怜「いや否定せな」アハハ
怜「まあ可哀想やから教えたる」
怜「信じられへんやろうけど――」
怜「倒れて生死の境をさまよってから」
浩子「見えんねん」
恭子「一巡先が」
怜「台詞取んなや」
泉「…は?」
泉「誰がですか」
怜「皆で喋るからよう分からんくなってるやん」
浩子「園城寺先輩がや」
泉「…何がですか?」
怜「いや、だから一巡先」
…イチジュンサキ?
恭子「あかん。泉の頭がパンクしそうになっとる」
泉「…未来予知」
怜「せや」
浩子「やっと呑み込めたみたいやな」
…信じがたい。信じがたいけど…
「リーチ」トッ
「ツモ、6000オール」オッ
「ロン、4200。飛びやな」
泉「…なまじ嘘とも、思えませんね」
恭子「いや、案外理解早い方やないか?」
怜「んー、そうかもな。交友広くないから、どうしても比較対象が足りひん」
浩子「切ねーです」
泉「…」
もし、この人達の言ってることが本当ならば。
怜 アハハ ジュースオカワリー
勝てるんか……
勝つ道があるんか…?この人に……!!
ここまでで1章、邂逅編でした。
また2章の目処がついたら書きに来ます
2回戦結果
泉:7900
浩子:27700
恭子:24900
怜:39500
今度は飛びこそしなかったけど……
泉「焼き鳥でラス…」
もう悔しさもない。
末原さん、船久保先輩はともかく…
園城寺怜。
彼女は次元が違い過ぎる…!!
泉(勝てる方法が分からへん…)
浩子「まだ打つか?」
恭子「別に無理せんでもええよ」
もうやりたくない。
こんな惨めな姿を晒し続けるなら………
泉「やります」
考えるより、先に。
怜「良い返事や」
もしかすると、自分で思っているより、悔しかったのかもしれない。
怜「そろそろ席替えしよか」
誰からともなく、風牌を集め、開局。
それは、新たな空気を呼ぶのか―――
3回戦
起親:怜 南家:恭子 西家:泉 北家:浩子
東1局
ドラ 五
6巡目
怜 カチッ
三四(五)六七八③③④6678 ツモ6
怜「リーチ」トン
怜捨て牌
西1⑨東3④
恭子「チー」
⑥⑦⑧⑧⑧⑨三四四12 チー④・⑤⑥
打 1
泉(一発消し…これで園城寺先輩の一発ツモはない)
②④355三六九九南南南中 ツモ中
泉(とは言っても、この手牌では押せないやんな…)
打 3
7巡目
恭子「…」
⑥⑦⑧⑧⑧⑨三四四2 ツモ③ チー④・⑤⑥
打 四
泉「!」
泉(無筋のドラ表示牌…強いな。
末原さんは当たり牌の内の一つが分かっとるから、ある程度待ちの推測が立っとるんやろか)
泉(せやけどシャボ待ちとかだったら、どうする気なんやろ…)
②④55三六九九南南南中中 ツモ3
泉(完全に推測が立つんは、素直な両面待ちの時くらいやないか…?)
打 3
浩子「…」
8巡目
恭子 チャッ
③⑥⑦⑧⑧⑧⑨三四2 ツモ(5) チー④・⑤⑥
打 四
泉(対子落としやったんか。随分強引やな…)
泉(おかげで三萬がワンチャンスになったが…)
②④55三六九九南南南中中 ツモ六
怜捨て牌
西1⑨東3北
中
泉(無理することもないやろ…)
打 中
10巡目
怜 タン
恭子「ポン」⑧・⑧⑧
打 三
泉(やっぱ三萬は通しか。さて、ツモ…)ザワッ
ん……?
今の寒気はなんや……?
泉(何かをしくじった…か?)
15巡目
怜「…へえ」トン
打 ②
恭子「ロン」パラッ
①③⑥⑦⑧⑨⑨ ポン⑧・⑧⑧ チー④・⑤⑥
恭子「8000」
怜「やるな」チャラ
泉(…いや押し過ぎやろ)
泉(結果的に叩き切った無筋たちは全部通しやったけど…
何向聴から和了りに向かっとんねん)
浩子「…泉ィ」
泉「はい?」
浩子「それ、七対子で和了れてたんちゃうか」
泉手牌
②③④458二五六六七九九
泉捨て牌
北西⑨9①3
3中中三南南
南5
泉「…」
っていうか面子手でも和了れてたっぽいけど。
浩子「それじゃ、駄目やな」
は?
恭子「お、アドバイスか?」
は??
怜「今の泉に足りんものやな」
はぁ…!!??
泉(なんやこの人達…)
イカレとんのか!?
誰があの手牌で押すっちゅうんや……!!
泉(そんなブンブン行って良いもんちゃうやろ…!!麻雀って……!!)
恭子「チョイ、顔」
あ……
恭子「まだ体感的には掴めとんのやろな」
怜「相手次第では、ベタオリにもタイミングがあるっちゅうことや」
浩子「自分で言いますか」
園城寺先輩相手では……!?
東2局
親:恭子
ドラ 4
恭子「ツモ」
3(5)678④④ ツモ4 ポン白・白・白 ポン二二・二
恭子「2000通し」
恭子「もう一つ教えたろうか」
泉「?」
恭子「鳴きは絶対的加速やない」
恭子「相対的加速や」
……。
泉「それもヒントですか」
恭子「せやで」
浩子「っちゅうか、これはほぼ答え。
ほんの一部やけど」
泉「…」
一部しか聞いとらんから、意味不明なんやろか…
浩子「1年強掛けて、尚練り上げ中の戦法や」
…この人達がおかしいんやろか。
東2局1本場
親:恭子
ドラ ②
7巡目
恭子「ポン」カシャッ
よう鳴くなこの人。
泉(でもおかげで聴牌したで…)
③④(⑤)三四五五六六七468 ツモ5
泉(手替わりだらけやから、ダマにしとこ)
打 8
恭子「ポン」
②②②三4467 ポン88・8 ポン⑦・⑦・⑦
打 三
泉(あ…)
出た。
泉「ロン。2900」
恭子「おおぅ」
よっしゃ、デバサイ。ついでに初和了り。
安手やけど、2副露されてて流石に見逃せんしな。
恭子「やられたわ」
怜「今のは良かったな」
トーゼンです。やられっ放しには行きませんからね!
東3局
親:泉
ドラ 北
7巡目
怜「リーチ」チャッ
マジで!?
怜捨て牌
発三北南93
⑥
泉(早ー…)
泉(一発ツモられたらマズイ……!!)オヤヤシ
泉(末原さんもトップな訳やし、絶対にツモらせたくない筈。
甘い牌を切ってくる…)
鳴かして下さい…ッ!!
泉手牌
二三三五五七①①①68白白
恭子「…」
打 発
は!?
泉(そ、それ4枚目の発……)
鳴かす気ないんか……!?
泉(くっ……何故や……)
浩子 タン
打 9
泉(うう………)
怜「…」チャッ
ツモられる………っ!!!
怜 タン
泉(は?)
怜「くくっ。泉。
ハトが豆鉄砲食ったみたいな顔しとんで」
い…
泉「一発や、ないんですか…」
怜「フツーならマナー違反の問いかけやで、それ」
泉「あっ。スミマセン!!」
恭子「謝ってばっかりやな」フフッ
怜「ま、対策される身には、対策の対策があるってことや」
………なるほど。
泉(毎回一発リーチを打ってたら、さっきみたいに流されてしまう。
たまには棒テンリーチで相手の構えを空振らせるってことか)
泉(こうしてブラフリーチを挟んでおけば、本命の時に邪魔されずに和了れる可能性が高まる。
それを末原さんは分かっとったから、鳴けない牌を切ったんやな……)
…ん?
泉(なんで末原さんは、今のがブラフって分かったんや……?)
恭子 タン
………???
浩子(おもろいやっちゃ、コイツ。考えてること全部顔に出とる。
流石に手牌の情報にはポーカーフェイスを守れてるけどな)
④⑥⑧⑧⑨三(五)444(5)77 ツモ④
浩子(この手組なら、現物の⑥筒を切ってもまだ闘える。
筋を頼って⑨筒でタンヤオに行ってもええ。が)
浩子(園城寺先輩は4-7索待ちが濃厚。そうでなくとも、これは9割通る。
ならばこれを切ることは曲げへん)
浩子(私の教えは厳しいんや……!!)
打 (5)
9巡目
泉(船久保先輩が赤5索切り……!?超危険牌を平然と切るなんて…)
泉(巨大手のイーシャンテンとか、そんなんやろか。
それとも現物待ちの大物………!!)
泉手牌
二三三五五七①①①68白白 ツモ四
怜捨て牌
発三北南93
⑥92
浩子捨て牌
西東南九2発
9(5)
泉(9索が3枚見え…カン8索は薄い。
赤5索のスジやし、ここか)
打 8
恭子「ロン」
んなっ………!?
恭子「3200」パラ
四四八八③③⑥⑥⑦⑦778
そっちかい!!
浩子(冷静に考えれば、泉なら躱せた待ちかもな。
末原先輩は7巡目に、私の発切りに合わせ打ちしてきた。
そんな余分な字牌を切りだすってことは、七対子か好形面子手が仕上がっとると読めた筈)
ま、冷静にさせへん為のドラ切りなんやけどな……!
東4局
親:浩子
ドラ 二
9巡目
泉 タン
打 ⑦
怜「…」
10巡目
怜 チャッ
怜「ツモ」
怜「1300・2600」
二三四七七678(⑤)⑥⑦⑧⑨ ツモ ④
泉(あ…私の切った⑦筒見逃しとる)
末原さんからの直撃狙い?
泉(…ツモれるのに、リーチ一発にせんのか)
……これも揺さぶりか?
怜「見えた未来と違う行動を取るとな」
泉「?」
怜「2巡くらい未来が見えへんのや」
なるほど。そんな代償があるんか…
泉(しかし見逃してくれたんは助かったな…)
南1局
親:怜
ドラ 八
7巡目
怜「ポン」西西・西
泉(オタ風ポン…?)
怜捨て牌
南九⑧北二5
二①
泉(染め手っぽくはないな…トイトイ辺りか?)
②④④(⑤)⑥三三六七2345 ツモ(⑤)
打 ②
浩子「ロン」
浩子「3900や」
③④⑤⑥⑦56667六七八
………おぇ。
恭子(掴ませたんか)
怜(ツモられたくないし。泉なら使い切れる可能性もあった訳やし…)
恭子(初めての子に、ほんまゲスいわ)ヤレヤレ
怜(そういうもんやろ)
恭子(まあな)
―南4局
恭子「ツモ、300・500」
③③七九 ツモ八 ポン7・7・7 ポン発・発・発 チー3・12
恭子「ラストやな」
―3回戦結果
怜:25900
恭子:32900
泉:14200
浩子:27000
またラス…が。それはどうでもええ。
泉(園城寺先輩が3位やと……!?)
ますます意味分からん…!!
なんで勝てんねん!
怜「んー、やられた」
浩子「次レモンティーよろしくです」
恭子「自分で注いで来いや」
浩子「ホンマぞんざいですわ」
恭子「私がトップやしな」フフン
しかもなんかあっさりしとらん?
こういう展開は初めてちゃうんか……!?
泉「…」
怜「お、質問来る?質問来そうやで」ワクワク
恭子「なんでアンタが嬉しそうやねん」
怜「アホ言うなや」ソワソワ
浩子「落着きなくなってますよ」
泉「…」
泉「…お2人は」
泉「園城寺先輩には、いつも勝っとるんですか」
恭子「ほぉ」
浩子「そこから聞くんか」
恭子「結構負けず嫌いなんやなぁ」
泉「…そうですね」
恭子「ま、それなりにな」
浩子「そら園城寺先輩が一番トップは取ってるけど」
泉「対抗策があるんですか」
恭子「で、強欲やね」
浩子「その一言で全部聞きだすつもりかいな」
泉「うぐっ…」
浩子「…」チラ
恭子「…ま、教えたってもええ。レベルの高い面子が増えるのは私らにとってもプラスや」
恭子「けれど全部は教えられんし、言ったところで分かるとも思えん」
………
浩子「勘違いすなや。別に泉を見くびっとる訳やない」
恭子「人には得手不得手がある。たった1人の対策を論じるにもな」
泉「そういうもんですか」
恭子「そういうもんや」
浩子「私も実践してないやつあるからな。
そもそも出来へんし、私には効率が悪いってな理由で」
泉「…」
泉「搦め手が有効ってことですか」
恭子「ん」
泉「隙が出来るリーチに押しまくったり」
泉「後付でもなんでも、鳴いてツモ番飛ばしたり」
浩子「…実践したことなら気付けてたんやな」
恭子「表面的なことをあえて言うなら、そうなるな」
浩子「連携がキモや」
怜「滅茶苦茶してくるからなコイツ等。恥も外聞もないで」
それって……
泉「皆が好き勝手やるだけじゃ、勝てないってことやないですか」
恭子「当たり前やん」
浩子「凡人嘗めんなよ」
泉「!?」
浩子「泉さー、その反骨心剥き出しなん嫌いやないけど、小難しく考えすぎやで」
恭子「好き勝手やって勝てないのなんて、いつでも同じやろ。
怜相手やとプライドが邪魔しとんのちゃうか」
泉「…」
恭子「勿論真意は理解しとるよ。1人相手に、複数で組んで嵌めるみたいなんが嫌なんやろ」
泉「…」
恭子「でもそれって、普通の事やで。よう考えてみぃ」
恭子「例えば泉がさ。
トップと10000点差くらいの2着目で、トップの上家に座ってたとするやん。
その時トップがW東を仕掛けてきたとして、泉は無神経に手を進めるか?」
泉「…」
恭子「場況は無視して考えてええ。
多分、絞りにも少しは気ぃ回すやろ」
泉「…自分が良い形になるまでは、まあ」
恭子「それと同じことや」
浩子「自分が行けない時は、下家を走らせんと他人に任す。
それと言うとることは全く同じ」
怜「ま、言うなれば」
怜「私は存在するだけでトップみたいなもんってことやな!」フハハハ
恭子「引っ叩いてええ?」
怜「酷」
浩子「承諾得るだけ良心的です」
怜「惨」
恭子「やかましわ」
泉「…」
怜「…そんなあっさりと『ハイ、そうですか』とはならんかもな」
恭子「…」
浩子「もっかい打ちますか」
怜「せやな。ほら泉」
泉「…はい。お願いします」
―4回戦結果
怜:35400
恭子:21200
泉:18400
浩子:25000
泉「…」チーン
怜「どうする?」
浩子「私達はいつももうちょい打っとるけど」
泉「…今日のところは、帰ります」
恭子「うん」
泉「幾らですか?」スッ
恭子「ああ、ええよ今日は。サービスしといたる」
泉「え…」
怜「うわ、ええなー」
浩子「依怙贔屓やー」
恭子「アンタらは数百円くらい黙って払え」
泉「いいんですか」
恭子「今日だけやで?」
泉「…!」
恭子「明日からはちゃんと取るからな」
泉「…考えときます」
恭子「ん。お疲れ」
浩子「おつー」
怜「またな、泉」
泉「失礼します」
ガチャッ カランコロンカラン
恭子「…あの子、怜らと同じ学校なん?」
怜「せやで」
恭子「ええな。まだ初心やが」
浩子「環境が合っとらんのやろうけど、基本的なとこはしっかりしてますね」
恭子「な。それに察しも良い。多分成長は早いやろ。
後は何処で頭打ちが来るか」
怜「ふむ。めっけもん?」
恭子「かも」
怜「偶には学校に居残ってみるもんやなぁ」
浩子「因縁ですねー」
怜「それが案外、馬鹿にならんかもなぁ」
浩子「明日も来ますかね」
恭子「来ると思うな。
気も強いし、何かしらの結論を持ってくる筈」
怜「賭けるか?」
恭子「賭け事は苦手」
怜「まったく、因果なもんやで」ククク
1章終わりと書きましたが嘘でした。半端すぎて2章に行けませんでした。
このSSにはデジタル的な展開とかも盛り込んでいきたいので
打牌・牌譜批判など、お待ちしてます。
デジタル的根拠がなくても、「自分ならこう打つ」程度でも大変参考になるので
何か思うところがあれば頂けると幸いです。
続きにあまり手を付けられず、しかも展開の方向転換をしたためまだ先になりそうです。
先の投稿分は導入なので、闘牌はかなりあっさり書いてました。
洒落臭いかと思って打牌選択の思考はかなり省略しているのですが、次からはもっと練り込んだ上で載せてみます。
クドイようでしたらご指摘ください。
構想と進行の剥離が激しくなってきたう上、私用が増えてしまったために安定した更新が難しくなってしまいました。
これまで見てくださった方には大変申し訳ないのですが、一度依頼出して新規スレで立て直します。
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