堀裕子「サイキック恋煩い」 (18)

裕子「最初は、私をアイドルの世界に連れて行ってくれる『いい人』というだけでした」

裕子「でも、一緒にお仕事を頑張ったり、私を一生懸命プロデュースしてくれる姿を見ているうちに……」

裕子「どうやら、プロデューサーのことが好きになってしまったみたいです」

裕子「こんな経験初めてで、どうしたらいいかわからなくて……」

裕子「だから、お二人に相談しようと思ったんです」



凛「………」

まゆ「………」


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凛「あの、ひとついいかな」

裕子「はい?」

凛「なんで私達に聞こうと思ったの?」

裕子「なんとなく恋愛に詳しそうだったので!」

凛「そ、そうなんだ」


凛「ちょっとどうするのこれ」ヒソヒソ

まゆ「この3人、全員想い人が同じですねぇ」ヒソヒソ

凛「普通にアドバイスしたら敵に塩を送ることになっちゃうよ」ヒソヒソ

まゆ「でも……」ヒソヒソ


裕子「どきどき」


まゆ「あの期待に満ちた視線を受けると、はっきり断ることもできませんしねぇ」ヒソヒソ

まゆ「ええと……ちなみに、Pさんのどこがいいと思ったんですか?」

裕子「どこが、ですか……うーん、やっぱり優しいところだと思います。私がお仕事で失敗しても、次につなげればいいよって励ましてくれますし」

まゆ「ああ、わかりますわかります。いいですよねぇ、優しいところ」

裕子「あと、真っ直ぐお仕事に取り組んでいるところもいいなあって。汗水たらして頑張っている姿を見ると、私も頑張らなきゃって思えます」

凛「わかるわかる。たまにシャツを嗅ぐと匂うあの汗臭さがたまらないよね」

裕子「えっ?」

まゆ「いえいえなんでもないですよぉ(ちょっと何言ってるんですか凛さん)」

凛「ごめん、つい本音が」

裕子「でも、プロデューサーのほうはなかなか私を意識してはくれないみたいで」

裕子「オーストラリアに行ったときは結構な時間一緒にいたんですけど、特になにもなかったですし」

裕子「温泉に行ったときはうっかりバスタオルをずらして、一瞬胸をあらわにしてしまったんですけど、プロデューサーはほとんどノーリアクションでした」

裕子「どうしたら女の子として見てもらえるんでしょう」

まゆ「それはまゆ達が聞きたいくらい……いいえ、なんでもありません」

凛「(うっかり胸をあらわに! そういうアピールもあるのか……)」

まゆ「……ちなみに、今までPさんにされてうれしかったこととかありますか?」

裕子「うれしかったことですか? そうですね……この前ライブがうまくいったとき、頭を撫でてもらえました!」

まゆ「そうですかぁ」

凛「頭を撫でてもらうくらいなら私だって経験あるよ」キリッ

裕子「はあ、そうなんですか」

凛「うん。10回くらいかな」キリッ

裕子「10回もですか! うらやましいです!」

まゆ「(凛ちゃんはどうして張り合い始めているんですかねぇ……純粋な裕子ちゃんには効果ないですよ?)」

裕子「どうしたらプロデューサーにアプローチできるんでしょう……?」

まゆ「そうですね……」


まゆ「どう思います?」ヒソヒソ

凛「うーん。確かに裕子はかわいいけど、今のところそこまで脅威はないんじゃないかな」ヒソヒソ

まゆ「理由を聞きましょう」ヒソヒソ

凛「あの子のキャラ的に、あんまり性欲をかきたてる感じではないから」ヒソヒソ

まゆ「ぶっちゃけましたね。アイドルが性欲とか言っちゃだめですよ?」ヒソヒソ

凛「それを言ったら恋の議論してる時点で全員アウトだよ」ヒソヒソ

まゆ「ですね。では、とりあえず裕子ちゃんへの警戒レベルは並程度ということで」ヒソヒソ

裕子「やっぱり普段の態度が問題なんでしょうか? 基本おバカキャラで通していますし」

凛・まゆ「!?」


凛「ちょっと待って。今あの子、『おバカキャラ』って言ったよね」

まゆ「言いました」

凛「キャラだったの? 素でちょっぴりアホの子じゃなかったの?」

まゆ「まさか、バカのふりをしているだけ……そうなると、先ほどの評価を改めなければならないですよ」

凛「……はっ!?」

まゆ「どうしましたか?」

凛「裕子がアホの子でないのなら……まさか、今このやりとりもあの子の計算あってのもの? 私達を牽制するために、わざわざ相談を持ちかけてきたんじゃ」

まゆ「そ、そんなっ……それじゃあまるで策士じゃないですか!」

裕子「もう少し頑張るべきなんですかねー。どう思います?」

裕子「凛ちゃんとまゆさんの意見が聞きたいです」ニコッ

凛「え、えっ? そ、そうだね……」



凛「駄目だ、裕子のすべての発言に(意味深)がついてるように思えてしまう」

まゆ「頑張るってどう頑張るつもりなんでしょう……考えが読めませんねぇ」

凛「くっ。あの笑顔の裏にはいったい何が隠れているの……?」

裕子「決めました! ちょっと私、今からしっかり者のお姉さんになります」


凛「しっかり者!? まさか、本気を出すつもりなの?」

まゆ「ど、どうなってしまうんでしょう――」


ちひろ「みんなー。和菓子をもらったんだけど食べる?」ガチャ

裕子「わーい」

裕子「おお、どら焼きがあるじゃないですか!」キラキラ

ちひろ「他の子のぶんも残さないとだめよ?」

裕子「はーい。では早速いただきます」

裕子「もぐもぐ」

裕子「ふう、ごちそうさまでした」


まゆ「………」

凛「……裕子、お姉さんキャラは?」

裕子「はっ、忘れてました!」ガーン

凛「(あ、これ素でアホの子だ)」

まゆ「(ほっとしました)」

裕子「うーん、難しいですね。おバカキャラならいつもできるのに」

凛「いや、それは多分キャラじゃないからだと」

まゆ「(とりあえず、裕子ちゃんへの評価は据え置きで大丈夫そうですね)」



P「おーい裕子。もうすぐ撮影の時間だぞ」ガチャ

裕子「あ、プロデューサー。もうそんな時間ですか」

P「おう。現場まで送るから準備してくれ」

裕子「準備はできてます。行きましょう!」

凛「いってらっしゃい」

まゆ「頑張ってくださいねぇ」

裕子「ありがとうございます! ……あ、そうだ。プロデューサー、日曜日のお出かけの件ですけど」

P「ああ、大丈夫だ。スケジュールに空きも作れたし」


凛・まゆ「……お出かけ?」

凛「プロデューサー。裕子とどこか出かけるの?」

P「ああ。近場のパワースポットめぐりにな」

裕子「最近のオフは、私の趣味にプロデューサーも付きあってくれてるんです」

P「半ば恒例と化しつつあるな。さ、遅れないうちに行くぞ」

裕子「はい。ではふたりとも、いってきます!」

バタン


凛「……ふーん」

まゆ「うふふ、恒例ですかぁ」

凛「とりあえず、奈緒と加蓮に報告しよう」

まゆ「まゆも、響子ちゃんに知らせておきますね」

移動中

裕子「むむっ」

P「どうした?」

裕子「なにやらびびっときました! 私のサイキック予知能力が何かを告げようとしているような」

P「ははは。なんだそりゃ」

裕子「むー、信じていませんね?」プクー


裕子「絶対何か起きますからね!」


おわり

ユッコの「おバカキャラで通してる」発言は劇場478話にあります。この回のユッコくっそかわいい

お付き合いいただきありがとうございました

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