【艦これ】提督「心の部屋が覗ける鍵?」 (165)
提督「なにその千年アイテムあるいはキーブレードみたいなの」
妖精「対象の艦娘にこれを向けると心の内部に侵入出来るです」
提督「なんでそんなのつくったの……」
妖精「普段飄々としてる人も心のどこかに闇を抱えてるかもしれないです。それを調査するためです」
提督「心の闇ねぇ……」
妖精「心の奥に隠れた感情を引き出して自覚させれば艦娘はもっと強くなれるはずです」
提督「どういう原理なのそれ」
妖精「艦娘と深海棲艦は表裏一体、心の在り方で決まるです。だから提督さんとの信頼関係を強くして心を光で満たせば力はさらに増しますです」
提督「闇と光の戦い……やだ……中二……」
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妖精「というわけでよろしくお願いするです」
提督「まぁ分かったよ」
妖精「誰から見るかは任せるです。あと一つ忠告ですが、あまり入り込んだ心の中を荒らしてはダメです」
提督「荒らしたらどうなるんだ」
妖精「死にます」
提督「えっ」
妖精「さっきも言った通り艦娘は心の状態が存在に直結するです。だから心を乱されれば死にます」
提督「……やっぱ辞退したいんだけど」
妖精「それはダメです。じっけ……調査にならないです」
提督「というか深海棲艦も同じ原理なんだったらそっちに使えば内部から殺せるようになるんじゃないのか?」
妖精「それは難しいです。深海棲艦の心の中は汚れすぎているから入り込んだら負の感情に押しつぶされて死にます」
提督「」
妖精「あっ、それと侵入中は提督さんの周りの時間がなんやかんや止まっているので怪しまれることはないです」
提督「……そうか」
妖精「ではいってらしゃいー」
提督「これって使い方次第ではいくらでも洗脳とかに利用されるんじゃあ……」
提督「しっかり管理しないと……」
大井「あら、提督。なにぶつぶつ独り言言ってるんですか?気持ち悪いですよ」
提督「大井か……」
提督(一番適任そうなのが来たな……何考えてるかいまいちわかんないし)
大井「本当にどうしたんですか?ぼーっとして」
提督「えいっ」
キラーン
提督「急に目の前が真っ暗に!?所持金の半分持ってかれる!?」
提督「ってあれ、大井は……」
提督「……まさかもうここは心の中だっていうのか?」
提督「本当に一瞬かざしただけでいいのか。ヒューマンエラー的に誤作動しそうで怖い」
提督「あっちに扉があるな……あれが大井の心か」コツコツ
提督「おじゃましまーす……」ガチャ
提督「うおっ、部屋一面に北上の写真が貼ってある!あとそこらじゅうに魚雷がごろごろ転がってる!?」
提督「うわぁ……想像はしてたけど本当に北上と魚雷一色なんだな」
提督「部屋自体はそんなに広いわけじゃないな。10歩も無いうちに部屋の隅に行けるくらい」
提督「窓もあるな。カーテンはクリーム色、壁紙は淡いオレンジ。普通によくある部屋っぽい」
提督「……ん?そこの角……あそこだけ北上の写真がないな」コツコツ
提督「これは……他の球磨型の皆の写真……」
提督「笑顔で笑いあってる。そっか、そうだよな」
提督「姉妹だもんな。大事に決まってる」
提督「よく見ると北上の写真の間々にうちの鎮守府のみんなの写真があるな」
提督「なんだ、大井って優しいじゃないか。普段の言動は北上ばかりだが心の中では皆を思いやっていたんだな……」
提督「確かに北上が絡まないとすげえ真面目だもんな……執務もできるし料理も出来る」
提督「いいものを見た。さてそろそろ出ようかね」コツコツ
提督「しっかし天井まで写真でビッシリだとはな。他の皆もこんな感じで他の者への想いが表されるんだろうか」
提督「ってなんだ!?あの鎖でギッチギチに固められて吊るされた黒い棺桶みたいなの!?」
提督「うわ、なんか動いてるし……ドンドン言ってるよ」
提督「外に出たがってる……?でも大井はそれを無理やり抑え込んでるってことなのか?」
提督「にしてもなにをそこまでして封じているんだ?」
提督「よくわからんな……」
提督「まぁいいか。なにか抑えてるんならここを出た後直接聞けばいいし」
提督「それじゃ、お邪魔しましたー」ガチャ
スカッ
提督「……スカッ?」
提督「……地面がねええええええええええええええええええ!!」
提督「ああああああああああああああ落ちるううううううううううううう!!」
提督「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」
大井「うるっさいです!何を急に叫んでるんですか!」
提督「ぎゃあああああああああああああ……って大井……?」
大井「何なんですかさっきから!ちょっとおかしいですよ!?」
提督(戻って、来たのか。一度部屋から出たら現実に戻されるのか……)
大井「ああもう、北上さんのいる場所を聞こうと思ったけどもういいです。失礼します」
提督「あっ、ちょっと待ってくれ大井!」
大井「……なんですか」
提督「お前さ、何か心の中で抑え込んでるんじゃないか?」
大井「はぁ?どういうことですか」
提督「いや、例えば言い出したいのに言えないこととか、秘めてる想いとか……」
大井「っ!」
提督「心配事があるならいつでも相談に乗るからな?」
大井「相談事なんて、ありません」
提督「本当にか?」
大井「……はい」
提督「そう、か。ならいい」
大井「…………」
提督「呼び止めて悪かったな。北上探しに行くんだろう?さっき食堂で見たからまだいるかもしれないぞ」
大井「わかりました。ありがとうございます」
提督「それじゃあな」
大井「……提督」
提督「ん?」
大井「私、北上さんはもちろんですけど、提督のことも愛しているんですからね?」
提督「またいつものお世辞か?嘘でも嬉しいよ。じゃっ」スタスタ
大井「……っふふ。全く変わらないんだから」
大井「そう言うところも、私は……」
大井「改二にしてもらった頃くらいだっけなぁ。気付いたのは」
大井「でも駄目。北上さんの為だもの」
大井「私は我慢しなくっちゃ」
提督「ふぅむ、どうやら本当に心の中がああいう形で見れるんだな」
提督「正直ちょっと楽しい」
提督「覗き見るのは気が引けるけど、皆のメンタルケアのために仕方ないことだ」
加賀「メンタルケア?カウンセリングでもやるのかしら」
提督「うぉわ!?加賀!?」
加賀「はい、加賀です」
提督「何時からそこに……」
加賀「今来ました。せっかく見かけたので挨拶くらいはと」
提督「そ、そうか」
加賀「ところで先ほどのメンタルケアというのはなんなのでしょうか」
提督「あーそれは……」
提督(開錠っと)
キラーン
提督「っと、またこの黒い空間か。最初はここに飛ばされるみたいだな」
提督「さて、加賀の心の中へおじゃましまーす」ガチャ
提督「……質素だなぁ。大井のと比べるとほとんど物が置かれてない」
提督「部屋の色は全体的に赤いな……攻撃的なのか?」
提督「表に出さないだけで感情が高ぶりやすいのかもしれん」
提督「窓もとても小さなものが一つだけ。分厚い青いカーテンで覆われてる。出来るだけ外に出ないように抑えているんだな」
提督「今度から無茶振りするのは控えようか……反動が怖い」
提督「……さっき質素とは言ったものの、何もないわけじゃない」
提督「例えば部屋の中心には一本の矢が突き立てられてる。芯の強さなのか?」
提督「誇りや他の空母達という意味もあるのかも」
提督「同じ場所に二本の弓が矢を守るように『人』の字状に支え合ってバランスを保ってる」
提督「恐らく赤城と加賀だな。一航戦の二人は強い絆があるし」
提督「不安なのはどちらかがバランスを崩したら共倒れするかもしれないということだ……危ういな」
提督「突き立てられた矢は動かないだろうが、逆に言うと弓を失えばその誇りの為だけに戦う戦闘機械になってしまうかもしれない」
提督「……部屋には何処からともなく料理のいい匂いがする。やはり食べるのは好きみたいだな」
提督「あそこにあるのは鶴の置物……?まさか五航戦を表しているのか」
提督「とても優しい雰囲気が伝わってくる……だが部屋の中心、加賀自身を表している矢からは少し遠いな」
提督「どう接したらいいかわからないのかもしれん。素直な気持ちになれれば、ってところか」
提督「他には……布団が敷かれてるな。上に……鎮守府の模型か?あれは」
提督「安らげる場所ってことか。この鎮守府が安らぎの場と感じてもらえてるのはとてもうれしい」
提督「んでその傍に写真立てがある。誰が写ってるんだろうか」コツコツ
提督「…………」
提督「……俺じゃん」
提督「しかも何かこの写真の俺指輪捧げてんだけど。えっ何、そういことなの?」
提督「マジかよ……夜戦はお断りしますとか言ってたじゃん」
提督「……何となく布団の下が気になる」ゴソゴソ
提督「本?えーっとタイトルは、『空母の作り方』『素直な気持ち』」
提督「確定かぁ。どう接したらいいんだこれから……」
提督「こういう時は俺から切り出すべきなのか、待つべきなのか」
提督「まぁ、今はいいか。すぐに対処しなきゃいけないようなのならともかくこういうのはね」
提督「それじゃ出るか。また色々収穫があったな」ガチャ
スカッ
提督「……やっぱ地面無いのね」ヒュウウウウ……
加賀「提督?質問に答えてください」
提督「ん?ああ、そうだな。最近皆疲れているようだし皆のことをしっかり見てやらなきゃなってね」
提督(戻ってきたか)
加賀「そう……それで、私にはして頂けるのですか?」
提督「いや、加賀はうちのエースだからわざわざやらなくても分かってるよ」
加賀「では私が今抱いている悩みを言い当ててみてください」
提督「……五航戦との接し方だな。あとは赤城がもし自分の傍から離れたらと不安を持っている」
加賀「……驚いたわ。確かにそのとおりよ」
提督「瑞鶴たちとはやっぱり素直な気持ちになるのが一番だと思う。加賀はとても優しいから絶対に出来るはずだ」
加賀「…………」
提督「赤城については……そうだな。俺が支えてやる」
加賀「えっ……」
提督「俺が傍にいてやる。倒れそうになっても俺が手を差し伸べる」
加賀「それは……もしかして……」
提督「確かに赤城と比べちゃ頼りないかもしれない。でもこの鎮守府の頭として出来る限りサポートしていく」
加賀「ああ、そういうこと……」
提督「もちろん赤城を危険な目に晒すような真似はしないし、俺だけじゃなくて鎮守府みんなで支え合っていくようにしたい」
加賀「ええ、そうですね。私にはこんなにも暖かい変えるべき場所があるのだから」
提督「じゃあ俺行くから。何か相談があったらいつでも言ってくれ」
加賀「分かりました。それでは失礼します」
加賀「……もし、もしも私が提督と……」
加賀「……いえ、まだ早いわね」
加賀「この話は私の練度がもっと上がってからにしましょう」
提督「でも本当にそうなれたのなら、私はとても嬉しいです」
いったん休憩という名のネタ切れ
流石に二人で終わるには少ないから↓5までに出た艦娘で私が書けそうなのを適当に選ばせて頂きます。どうしても想像できない子は除外しますので悪しからず
それではまた次の更新まで
↓1~5まで艦娘
妖精「彼女達は…光と闇で出来ている」
提督「繋がる心が…俺の(コミュニケーション能)力だ!」グッ
〜ARMYBASE HEARTS〜
提督「さて次だ次」
吹雪「あっ睦月ちゃーん!ってええ!?司令官!?」
提督「ちょっと待ってどこに間違える要素があったの」
吹雪「いえ、なんというかその」
提督「燃費よさそうなところ?ガリガリで悪かったな!」
吹雪「ち、違うんです!や、優しそうな雰囲気とか!」
提督「遠回しに女々しいとか思ってんだろ」
吹雪「そんなこと!」
提督「だったらお前の心、見させてもらう!」
キラーン
提督「三人目っと。さて今回のお部屋はどんな感じかね」
提督「……あれ、扉二つあんだけど」
提督「まさか吹雪の奴二重人格だったのか!?」
提督「いやいやそんなまさか……」
提督「片方は普通の扉だがもう片方は少し小さいな」
提督「まずは普通の大きさの方に入ってみるか」ガチャ
提督「部屋の色は……すさまじく薄いが黄色気味か」
提督「しかし、結構汚い……」
提督「加賀や大井は比較的統一感があったが吹雪はぐちゃぐちゃだ」
提督「紙が散らかってるが……どれどれ、『マルロクマルマルに総員起こし~』か」ガサガサ
提督「ルーチンワークにするようにこういう形で覚えようとしてるんだな」
提督「だがこんなに散らかっていては要領も悪くなるわけだ。整理されていないと急にその記憶を取り出せまい」
提督「部屋の隅に転がっているフォークとナイフはなんだ?傍に金が積んであるし……」
提督「あー……もしかしたらこの前秘書艦だった時に外食を奢ってやったときのことを表してるのか?」
提督「ああいう場所の礼儀作法知らなかったみたいだし、勉強しようと思ったのかも。金はお礼をしたいってことか」
提督「しかし様々な場所にうちの鎮守府の艦娘の写真があるな。交流関係はかなり多いみたいだ」
提督「あそこの壁の高いところに飾ってある写真は……扶桑姉妹?」
提督「へぇ、あの姉妹を目標にしているのか。確かに最近の扶桑たちの活躍はめざましい」
提督「長門型に匹敵する火力や装甲、おまけに制空値もかなり稼げ、燃費も絶望的というわけでもない」
提督「こう考えると尊敬されるのは当たり前かもしれんな」
提督「うむ、まぁこれくらいにしよう」ガチャ……
提督「……あれ、地面がまだある」
提督「心を全て見るまで帰れないのか」
提督「では、次は少し小さいもう一つの部屋だな」ガチャ
提督「……ほぼ似たような感じだな」
提督「だが最初の部屋より少々物寂しいな。写真が少ない」
提督「その分一つ一つの写真のサイズが大きいな。深く付き合っているということなのか」
提督「……ん?こっちには扶桑姉妹の写真が飾られていない……代わりに赤城が大きく飾られてる」
提督「んでその真下に……遺影?」
提督「これは……如月!?」
提督「どういうことだ?何故吹雪の中で如月が死んだ扱いに……」
提督「……この辺りからはとても強い意志が感じられる。感覚だが、『守る』といったような」
提督「んーよくわからんな。単純に二重人格という感じではなさそうだ。というか今まで吹雪にそんな様子は一度もなかった」
ドクン……
提督「部屋が、胎動している……?そういえばさっきより部屋がさらに小さくなっているような……」
提督「長居は危険だな。出よう」タッタッタ ガチャ
スカッ
吹雪「だから司令官に失礼な気持ちを持ってるわけではなくてですね!」
提督(帰ってきた。よし、これで終わりだな)
提督「なあ吹雪」
吹雪「な、なんでしょう」
提督「自分が自分でないと感じたことはないか?誰かに体を乗っ取られてるとか」
吹雪「え、いえそんなことはありませんよ?」
提督「そうか……」
吹雪「ただ……」
提督「何か心当たりがあるのか?」
吹雪「最近夢を見るんです。この鎮守府ではない別の鎮守府で暮らす自分の夢を」
提督「夢ねぇ……どんな感じなんだ」
吹雪「ここより少ないメンバーで、決められた部隊で出撃をこなしたりするんです」
提督「……その部隊には赤城や加賀はいるか?」
吹雪「えっ、よくわかりましたね司令官」
提督「扶桑姉妹は夢では見たか?」
吹雪「んーっと……みてないと思います」
提督「もう一つ、その夢で如月が轟沈したか?」
吹雪「っ!……はい」
提督(ただの夢にしては出来過ぎてるな……)
吹雪「司令官、私怖いんです。夢ってわかってても、あまりにリアルで……」
提督「…………」
吹雪「その世界は少し狂ってるんです。現実とは似ているんですが皆の性格が違ったり……」
吹雪「何よりもおかしかったのは、司令官が一度いなくなってしまった時に誰一人として悲しまなかったことです」
吹雪「最初からいなかったみたいに安否を気に掛ける人がいなくて……あの金剛さんですら……そして私自身も」
提督「俺ってばもしかしていらない子?」
吹雪「あ、あくまで夢の中でです!」
提督「はは、分かってるよ」
吹雪「それで、こんなのは私の知ってる世界じゃないってずっと忘れようとしてるんです。でも如月さんの轟沈の姿とか、色々生々しくて……」
吹雪「司令官、私どうしたらいいんでしょう……毎日夜が怖くって……ぐすっ」
提督「……良くわからんが、あくまで夢なんだろ?ならそんな深く考えることはない」
吹雪「忘れられないんですよ……どう願っても刻み込まれたみたいに……」
提督「大丈夫だって。なんなら一緒に寝てやるし」
吹雪「ええ!?そんな、駄目ですぅ!心の準備が……!」
提督「い、いやそこじゃなくてだな。というか、その世界とこっちの世界には大きな違いがあるはずだ」
吹雪「ふぇ?」
提督「俺がイケメンだってことさ!夢の慕われてないような提督と一緒にしてもらっちゃ困る!」ドヤァ
吹雪「…………」
提督「無言はやめて!」
吹雪「っぷ、あはは!」
吹雪「そうですよね、私たちの司令官が勝手にいなくなったり意味不明な事を言い出す訳ないですもんね」
提督「そうさ。あっちはあっち、こっちはこっち、引きずってたら駄目だ」
吹雪「はい!夢なんかでくよくよせずに頑張ります!」
提督「その意気だ!」
吹雪「ありがとうございました!心が晴れ晴れとしました!」
提督「そりゃよかった。他に悩み事はないか?」
吹雪「大丈夫です!ああ、なんだか体を動かしたい!ちょっと演習してきます!」
提督「行ってらっしゃい。気を付けてな」
吹雪「司令官!私、司令官のこと……大す……い、いえっ信頼しています! はい!」
提督「?お、おう」
提督「吹雪のもう一つの部屋は結局なんだったんだろうか」
提督「小さかったり蠢いていたのは忘れようとしていたからだろうが、たかが夢で心が分離するほどのものになるのか?」
妖精「もしかしたら平行世界かもしれないです」
提督「……妖精さんか。急に出てくるのな」
妖精「妖精ですから」
提督「凄い説得力!それで、平行世界っていうのは?」
妖精「詳しくは省きますが、この世界以外の吹雪さんとこちらの吹雪さんが何らかの原因で繋がったのかもしれないです」
提督「繋がった?」
妖精「世界が終わりに近付くと、世界の欠片が他の世界に飛び散ります。それが今回こっちの吹雪さんに夢という形で送られてきたのかもしれないです」
提督「その欠片がこっちの吹雪の心に住み着いてたってことか」
妖精「そうです。欠片と言っても元々は大きな世界の一つ。どんな力を持っているかは未知数です」
提督「ふーん……よくわかんないや」
妖精「そんなことより、吹雪さんのカウンセリングはとてもうまくいったみたいです」
提督「まぁ憑き物が落ちたように元気になったな」
妖精「今の吹雪さんは戦意高揚でとても大きな力を引き出せますです。この調子でどんどん解決していってください」
提督「ま、出来る範囲でな……」
取り敢えず吹雪編。結構長くなってしまった
今日はここまでです
そういえば、今日のアプデでまた5-1任務とか追加されてキレそうです。鳥海改二ソロモンや西村艦隊をやったと思ったらもっときついのが来ました。そもそもアレに必要な面子が比叡しかいない……
ではまたの更新まで
乙
次は秋雲か。謎ポーズの秘密が解明…とかないな、うん
提督「心を癒すってのはあんな感じでいいのか」
提督「でも大井みたいに明らかによくわからない奴じゃなくて、吹雪とか一見普通に見えるのでも闇を持ってたからなぁ。全員怪しく見える」
提督「見かけたやつから次々やっていくか」
秋雲「提督ぅ、何が怪しいって?」
提督「この大和みたいな声は……秋雲か」
秋雲「正解!でもそんなに似てる?」
提督「なんとなくな。しかし今日は色んなやつから声を掛けられるもんだ」
秋雲「何々?なんかあった~?」
提督「人の心をね、こうガチャッと」
キラーン
提督「突撃となりの艦娘心っと」ガチャ
ザバァ
提督「…………」ボタボタ
提督「なんじゃこりゃ!?」
提督「入っていきなりペンキが落ちてきたぞ!くっさ!」
提督「ったく、これ現実世界だと治るんだろうな……」
提督「それにしても部屋中ぶちまけられたペンキだらけだ」
提督「色んな色が混ざって、なんかみてると気持ち悪くなってくる……常に絵の配色とか考えてるのか?」
提督「だが頭が絵一色なだけあって分かりやすいな。俺が入ってきた辺りではペンキが定期的にぶちまけられてるが、違う一角では鉛筆とかが置いてある」
提督「入ってきたときには気が付かなかったが扉の色は白。まずはここで構図を考えるんだな」
提督「んで、さっきみたいにペンキぶちまけた後鉛筆の場所で細かいところまで考える」
提督「完成したらあの窓際の所に飾られるわけか」
提督「飾られてる場所に破かれた絵がたくさんあるのは常に様々な絵を新しく書こうという気概からか?」
提督「それにしてもすっごい窓から光出てる……あんまり見てると目が焼かれそうだ」
提督「てか部屋全体が明るい。イラストを描くのにモデルを照らすのは基本ってところか」
提督「まるで工場だな。ベルトコンベアーみたいに決まった作業を決まった場所で繰り返してる」
提督「フォードやトヨタを連想させる。効率的な思考とみるべきか、こういう発想が大事なのには奇抜さも必要だとみるべきか」
提督「正直こんなめちゃめちゃな中でよく普通の思考が出来るもんだと思う」
提督「よく見るとペンキで塗られて分かりにくかったけどあっちこちに布団がある」
提督「秋雲はよく寝てるからな……まぁ健康的ではあるんだが」
提督「傍に牛缶と銀シャリ……オッサンか」
提督「しかしこの一連の動きは見てて飽きないな。プラレールを見続ける子どものような気持ちだ」
提督「……いつまでも居る訳にはいかないし、もう行くか」コツコツ
提督「最後にもう一回だけチラリ」
提督「……!」
提督「部屋全体が、一つの絵になっている……?」
提督「軍艦っぽいのがうっすらと、部屋全てを使って描かれているように見える」
提督「あの形は……陽炎型と夕雲型を組み合わせたような……あーもうぐちゃぐちゃでよくわからん!」
提督「だが、秋雲の中にも戦争を終わらせようと戦う意思がちゃんとあるのだな」ガチャ
スカッ
秋雲「何?その鍵」
提督「ただのキーホルダーさ」
秋雲「ふーん、珍しい形だね」
提督「そうか?」
秋雲「そうだよ。せっかくだからそれ描かせて!」
提督「駄目だ駄目だ。これは大事なものだから手放せない」
秋雲「ぶ~、ちょっとでいいから!」
提督「駄目なものは駄目」
秋雲「だったらさ、提督も一緒に描いてあげる。それならどう?」
提督「俺も?……確かにそれなら手放さなくていいか」
秋雲「でしょ?じゃあそこ座って~」
提督「こうか」
秋雲「あ~なんか違う。もっとこう……いい感じのポーズで」
提督「わからんわ!」
秋雲「ちょっとじっとしてて。秋雲さんが直々におさわりしちゃうから」
提督「うわっ、さ、さわんな!」
秋雲「よいではないかよいではないか~」
提督「アッー!!」
提督「あ”~肩凝った……同じポーズで長時間いるとかキツすぎる」
提督「おまけに秋雲はある程度書いたらどっか行っちまうし……全く」
提督「しかし、あいつは何か悩みとかなさそうだな」
提督「最後に見た陽炎型と夕雲型が合わさったようなあの艦の絵……」
提督「もしかしたら秋雲は陽炎型と夕雲型のどっちつかずな感じを気にしてると思ったが、あの様子だとどちらでもいいみたいだな」
提督「そもそも秋雲って正確にはどっちなのかが分かってないみたいだしな……」
提督「まぁ面白いもの見れたしいいか」
秋雲編終わり
ちょうどスプラトゥーンが発売したから秋雲のイメージがそっちに持ってかれてしまった
次の敷波はもう書いてありますが夕方ごろ投下します
ではでは
提督「次の奴はこっちから声をかけてやる」
提督「お、ちょうどあそこに……敷波!」
敷波「へっ?呼んだ?」
提督「ああ」
敷波「なんだよー。あたしも忙しいんだけど」
提督「挨拶くらいしてもいいだろう。何も言わずに通り過ぎるなんて寂しいじゃないか」
敷波「用がないならいちいち呼び出さないでよー……別に、い、嫌じゃないけどさ」
提督「そっかそっか」
敷波「何ニヤニヤしてんのさ!ふんっ!」
提督「忙しいって言ってる割にはつまらなさそうに外見てるからさ」
敷波「だって雨が降ってるんだもん……外出るのも嫌だし」
提督「だったら俺が面白いことしてやるよ」
敷波「なにさ」
提督「お前の思ってることを言い当ててやる」
敷波「はぁ?そんなことできんの?」
提督「どうせ、一瞬だ」
キラーン
提督「はいはいおじゃまおじゃま」ガチャ
提督「……なんて」
提督「なんて普通の部屋なんだ!」
提督「先に見た三人が結構異常だったから反動が……」
提督「まず部屋の壁紙は淡い茶色のぶち柄。すごくかわいい」
提督「少し散らかってるが吹雪程じゃないな」
提督「中心にある机には何か花が飾ってある」
提督「なんだろうか、たんぽぽ?いや、白い花弁のタンポポなんて無いか」
提督「後で調べてみよう」
提督「同じ机の上にある写真立てには……誰も写ってない?いや、うっすらと影みたいなのは見える」
提督「加賀みたいに俺が映ってるわけじゃないのか。だが部屋の壁には綾波とかの特型駆逐艦のものがある」
提督「んー、この花に関係してるのかね」
提督「敷波は結構な自信家だが、この部屋にはそんな雰囲気がひしひしと伝わってくる」
提督「だからこそ中心の儚い花が際立つな」
提督「こんなところか。普通だからあんまり見るところは無いな。いや、普通はとてもいいことなんだがね」
提督「よーしからかってやるぞ」ガチャ
スカッ
敷波「一瞬だって?出来るんだったら早くやってよ」
提督「そうだな……敷波はこう、たんぽぽみたいな白い花びらの花が何ていうか知ってるか?」
敷波「なにそれ……多分マーガレットだと思うけど」
提督「そう、マーガレットだ。それがお前の中に見えた」
敷波「どういうこと?意味分かんないんだけど」
提督「あーっとえーっと、じゃあマーガレットの花言葉?とか知ってるか?」
敷波「信頼とか秘めた想いとかだったような……まさかそれが言いたいだけ?」
提督「うっ!……ああそうだよ」
敷波「くっだらねー。適当抜かして」
提督「うぅ……本当に見えたんだって」
敷波「もういいよ。お腹空いたし、あたしもう行くから」
提督「……じゃあな」
敷波「ふんっ!そうやって他の人にも声かけてるんでしょ?」
提督「まぁそういう仕事だし……」
敷波「きっとあたしより話し甲斐がある子なんでしょうねっ!」
提督「何怒ってるんだよ……」
敷波「じゃあねっ」
提督「……なんなんだ一体」
敷波「マーガレット、か」
敷波「あたしにお似合いかもね。司令官に対してピッタリだもん」
敷波「……あれ?だったらあたし、司令官に秘めた想いがあるってことに……」
敷波「な、ないない!」
敷波「別に司令官と他の子が話してるの見てどうも思ってないし!」
敷波「ああもう!何か食べて気分変えよっと!」
敷波「…………」
敷波「あたし、もうっちょっと素直になった方がいいのかなぁ」
3人目、敷波編
次は初霜です
ではまた
提督「なんか怒らせちゃったな……」
提督「これじゃこの鍵を使ってる意味がないし注意しないと」
提督「そういえば秋雲の時にぶっかけられたペンキはやっぱり消えてるな」
提督「精神世界だから俺の肉体そのものがあっちに飛んでるわけじゃないってことなのか?」
提督「……深く考えるのはやめよう。ホームアローンの泥棒役みたいな姿にならなくてよかった。それだけでいい」
初霜「泥棒!?何処ですか提督!」
提督「何で君たちは急に現れるかね」
初霜「挨拶をしなかったのはすみません!ですが今は泥棒を……」
提督「いやいや泥棒なんていないから。呟いただけだから」
初霜「えっ!ええっ!?」
提督「真面目だよなぁ初霜は」
初霜「わ、私ったらとんだ早とちりを……ごめんなさい!」
提督「じゃあ礼はこれで払ってもらおうか」
キラーン
提督「たのもおオオオオオオオオオオオオオオ!!」ガチャ
提督「今回は灰色の部屋か。コンクリートっぽいな」
提督「というか、息苦しさを感じるくらいに無機質だ……生活感がない」
提督「今まで一応どんな形であれ最低限の家具一式があったが、初霜にはそれがない」
提督「代わりにあるのは数々の武器」
提督「部屋の片側に大量の武器が積んである。もう片側には病院にあるようなパイプ式のベッドと鎮守府全体が写ったいくらかの写真……」
提督「こんなにもたくさんの武器が何を表してるのか……」コツコツ
提督「初霜ってそんなに戦闘狂だったかな……?」
グラァ……
提督「んん?部屋が傾いた……?」
提督「っとと、危ないな。真ん中へ戻ろう」コツコツ
グラァ……
提督「元に戻ったか」
提督「じゃあもう片側、ベッドのある方に行ったら……」
ギシッ グラッ…
提督「少しだけ傾くが武器のある側ほどではないな」
提督「まるで天秤だ」
提督「もしかしたらこの構造は初霜の意思の傾きなのか?」
提督「初霜はこう言っちゃ悪いが、口調は静かだが戦いだと結構怖い」
提督「しかも以前、『私は今は恋愛とか、そういうことには興味がないの』と言っていた」
提督「武器が多い、つまり戦いの方に強く心が揺らぎ、逆に今はベッドしかない、要するに戦い以外を表す方にはあまり揺らがないということか」
提督「……いつか、初霜にも平和な世界で女の子らしく過ごしてもらいたいものだ」
提督「俺もそうできるように最大限サポートしよう」ガチャ
スカッ
初霜「鍵?その鍵でどのようにお詫びをすれば……」
提督「大丈夫だ。もう詫びに値するほどのものは見れたよ」
初霜「はぁ……」
提督「なぁ初霜、戦い以外のことはどれくらい興味がある?」
初霜「戦い以外のこと……?そうですね……」
初霜「今は戦争中です。私達艦娘にとって一番すべきなのは、深海棲艦を一刻も早く撃破して平和を取り戻すことだと考えています」
提督「平和か……」
初霜「私達の未来のために、今は我慢をする時期なのです。ですから……」
提督「……わかった。でもな初霜、俺はお前に戦い以外のことも楽しんでもらいたいと思ってるんだ」
初霜「…………」
提督「艦娘っていうのは心の力が大事だ。戦闘ばかりでは心がすり減っていってしまう」
提督「だから、適度に息抜きや趣味に走ったりしてもらっても全然かまわないんだぞ?」
初霜「……ふふっ、分かっていますよ」
提督「えっ」
初霜「そう言うことに興味がないのはあくまで『今は』です」
初霜「だからこの戦いが終わったら自分自身が楽しめることをやっていきたいと思っています」
提督「あっ……はは。そっか、分かってるならいいんだ」
初霜「はい。ですから提督、もしも私が歩みを止めてしまったらどうか叱責してください」
初霜「そして私が皆さんを守って見せます。一隻でも、一人でも多く」
提督「ああ、これからもよろしく頼むよ」
初霜「こちらこそ、よろしくお願いします」
初霜編、完
初霜は台詞から印象が掴み取りにくい感じですね……
さて、ラストは雪風となります
それでは次の更新まで
提督「初霜は心配いらなそうだな。やっぱりいい子だ」
提督「んで、また一つ分かったことがあるな」
提督「吹雪や敷波の部屋は色々な物が乱雑に散らかっていた」
提督「俺はこれを単純に物を片付けられない子なんだとだけ考えていたが、恐らくそうじゃない」
提督「現実の敷波や吹雪の部屋が汚いなんてことは無いし、それだったら秋雲とかの方が散らかってる」
提督「じゃああれは何か?」
提督「多分だが、心の部屋が散らかっているのは自分のことがまだよくわかってないからだ」
提督「アイデンティティの確立……さっき言った秋雲、他に大井は心の部屋が一つの物で満たされているだけで関係ないものが散らかってる訳じゃない」
提督「絵や北上一色だったのは、それが自分にとって大事なのだとはっきり認識しているからだ」
提督「逆に吹雪や敷波はまだ思春期。自分自身をどう表せばいいかわからないから散らかっている」
提督「様々な事を試し、選択し、そして自分なりの心の部屋というものが確立されていくんだろう」
提督「心か……」
提督「……日も落ちてきたし次の子で今日はおしまいにするか」
提督「秋雲に時間を取られ過ぎたかね。取り敢えず腹減ったし食堂いこう」
~食堂~
提督「夕方なだけあって混んでるな……どこか空いてる場所はっと」
雪風「あっ、司令!司令も御飯ですか?」
提督「おお雪風。お前もか」
雪風「はい!せっかくなので司令も一緒に食べませんか?隣の席が空いてますので」
提督「助かる。ちょうど空席を探してたところなんだ」
雪風「それは幸運でした!ではこちらです!」
提督「ああ」
雪風「司令と一緒だなんて幸運の女神のキスを感じちゃいますね!」
提督「そ、そこまでか?」
雪風「司令は皆に大人気ですから、雪風が独占なんてあまりできませんので!」
提督「そういうもんかねぇ」
雪風「ではいただきます!」
提督「いただき開錠っと」
キラーン
提督「本日最後は雪風か」
提督「雪風は明るい子だし楽しそうな部屋だといいな」ガチャ
提督「おお~オレンジ色の部屋か。温かい雰囲気だ」
提督「家具も机、布団、本棚、箪笥と何でも揃ってる」
提督「現実の部屋と言われても分からないくらい完成されているな」
提督「…………」
提督「なんだ……?何なんだこの感じ」
提督「確かに心っていうのは千差万別。こういう部屋があっても不思議じゃないはずだ」
提督「だがこの部屋は……完成され過ぎている」
提督「まるで、『こうであるべき』言われて作り上げたような……」
提督「雪風の本能、自然の意思で出来た様には見えない」
提督「仲のよさそうな子との写真も無い」
提督「なによりさっき建てた仮説、物が散らかってるという法則が成り立たない」
提督「俺が間違っている可能性もあるだろうが、塵一つ見つからないほどのものなのか?あの雪風のような幼い少女がだぞ?」
提督「……あの壁にある古時計、短針と長針がそれぞれ逆に動いている?」
提督「繰り返し繰り返し同じように……」
提督「駄目だ、どうしても気になる」コツコツ
提督「この時計、なんて気味悪いデザインなんだ……漫画によく出てくるような死神が掘られてる」
提督「んー……?後ろに空間がある……?」サワサワ
提督「動かしてみるか」
提督「おっも……」ズズズズズ……
提督「ようやくどけれた…………!?」
提督「なんだ……これ……」
提督「数えきれないほどの鎖と錠前で塞がれた扉……なのか?」
提督「この扉の奥から何かとてつもなく恐ろしいものを感じる……」
提督「鎖は壁に抉られる様に飛び出てる」サワサワ
バキッ!
提督「!?鎖と錠前が全部切れた!?」
提督「少し触っただけなのに……」
提督「この扉……入って、みるか」
ガチャ…ギギギギギ……
提督「ゲッホゲホ……さっきまでの部屋とはまるで違う……」
提督「不安、悲しみ、絶望。あらゆる負の感情が満ち溢れている」ゾクゾク
提督「不味いな・・・・・ずっとここにいると押しつぶされそうになる……」
提督「ええい!気をしっかりしろ俺!」
提督「部屋は真っ暗。少し奥へ行っただけで前の部屋の光が届かなくなって見えなくなるだろう」
提督「風が吹いている……この部屋無茶苦茶広いんじゃないか?」コツコツ
提督「駄目だ、もう入口の光以外見えない」コツコツ
提督「50歩ほど歩いたが全く壁があるように思えない……」
提督「引き返すか。これ以上の詮索は危険だ」
提督「妖精が言っていた……相手の心をいじくりすぎると壊れるって」
提督「だがそれは俺に対しても言えるんじゃないか?精神体の俺がこの部屋で引き込まれたら、現実の俺はどうなってしまうか……」
ジャラ…ジャラ…
提督「……何の音だ?」
ジャラ…ジャラ…
提督「近付いてくる……?」
ヒュッ!
提督「っ!!あ……っぶねえ!!」
『…………』
提督「何なんだコイツは!?」
『…………』ブンッ!
提督「鎌!?くそっ、こっちは丸腰だってのに!」サッ!
提督「さっきの古時計に掘られていた死神かコイツ……」
『……ル……』
提督「あぁ?」
『マモ……ル……』
提督「護る……?」
『ユキカゼハ……幸運ダ、カラ……』
提督「おいおい、まさかこんなのが雪風の幸運の正体だってのか!?」
『雪風ガ……皆ヲ……ガアアアアアアアアアアアアア!!』ブンッ!
提督「ヤバイヤバイ!これじゃ女神どころか死神だろ!」ササッ!
『アタシ……幸運……代ワリニ皆……死ヌ……』
『護ル……護……ル?ドウセ皆死ヌノニ……?』
『殺シテルノハ雪風……?』
『護ッテイルノハ……自分自身……』
『ウ、ア、アアアア……!!』
提督「動きが止まった……今のうちに逃げる!」ダダダダ
『ドウシテ……幸運ナンテ……沈マナイ艦ナンテ、ナイ……』
『雪風トイルダケデ……皆不幸ニ……』
提督「っく!」ガチャッ!
『辛イ……モウ皆ガ死ンデ、雪風ダケ生キ残ルノハ……』
『嫌……ダ……護……ル』
バタンッ!
提督「はぁ……はぁ……危なかった」
ジャラジャラジャラガチャガチャガチャ!!
提督「!?さっきの扉にまた鎖がと鍵が……」
提督「…………」
提督「取り敢えず時計を元に戻して……」ズズズズズ
提督「これで良し、か?」
提督「なんだかどっと疲れた……現実に帰ろう」
提督「さっきのこと妖精さんに聞かないとな……明らかに普通じゃない」
提督「お邪魔したな」ガチャ
スカッ
雪風「司令!美味しいですね……!?」
提督「ふぅ……って雪風!どうした!?」
雪風「う、おえっ……かはっ……」ガタガタ
提督「だ、誰か救護を!早く!」
雪風「あ、あたし……どうなって……」
提督「…………」
────────────────────────
提督「雪風の様子はどうだ?」
妖精「大分錯乱していたようですけど、なんとかおさまったです」
提督「心当たりはあるが……やはり俺のせいなのか?」
妖精「その通りです。提督さん、かなり心の深いところまで入り込みましたね?」
提督「ああ……雪風の心の部屋の奥にはとんでもないものが潜んでやがった」
妖精「どのような感じでした?」
提督「厳重に鎖や鍵がかけられた扉を壊れた時計の裏で見つけたんだ」
妖精「なるほど」
提督「だがその封は触っただけで解かれ、扉の奥には真っ暗なただっ広い空間と死神がいた」
妖精「死神ですか……」
提督「なぁ妖精さん、アレはなんだったんだ?」
妖精「死神というのはよくわからないですが、その扉は雪風さんのトラウマ、触れてはいけない部分だったんです」
提督「トラウマ?」
妖精「誰でも心には闇があるです。普通は何らかの方法でそれを解消したり、できない場合は闇に堕ちるです」
提督「中二……とからかう雰囲気じゃないな。続けてくれ」
妖精「雪風さんは堕ちてもいいほどの闇を抱えてます。それを強靭な精神力で心の奥に隠していたんです」
妖精「ですが今回提督さんが雪風さんの心に侵入したことでその精神力で封じられていた闇が出てきてしまったです」
提督「強靭って……封じ込めていた鎖や鍵は触っただけで千切れてしまったんだぞ?」
妖精「トラウマは少し思い出させただけでも次々と連鎖的に思い出され、蝕んでいくです。触っただけでもきっかけとしては十分すぎるです」
提督「そうか……そしてその封を切ってしまったから雪風は体調を崩したのか……」
妖精「その鎖はその後どうなったです?」
提督「部屋から出たらまた同じように出てきて扉が封じ込まれたよ。隠していた古時計も元の位置に戻した」
妖精「なら一安心です。もしふさがっていなければ、雪風さん今後はふとしたことでトラウマが呼び起されて今のような状態になるようになっていたでしょう」
提督「俺が雪風を壊すところだったのか……」
妖精「忠告したはずです。あまり物を壊しては駄目だと」
提督「済まなかった……」
妖精「それは雪風さんに言ってあげてくださいです」
提督「ああ……」
妖精「最後にその死神とやらですが、それは雪風さんがイメージした自身の幸運の形でしょう」
提督「あんなのがか?」
妖精「雪風さんは幸運故に生き残り、代わりに周りの艦の沈んでいく様を見ていたはずです」
妖精「勿論ここの雪風さんは他の方が轟沈した姿なんて見たことがありません」
妖精「ですが、艦娘の元はご存じの通り鉄の塊だったころの艦です。その艦の記憶が今の雪風さん自身に刷り込まれていても何ら不思議ではないです」
妖精「古時計は繰り返される歴史、昔の艦の自分と今の艦娘の自分を表しているはずです」
提督「あいつは自分が幸運だなんて本当は思ってないのか?」
妖精「自分が幸運なことで誰かが不幸になる。だから自分は他人を殺す死神だ、とでも考えているのですかね」
提督「……雪風の部屋は普通の方でも人間味を感じさせなかった。アレはトラウマを封じ込めるのにかなり力を使っているということなのかもしれないな」
妖精「まぁこれで大体分かったですね。雪風さんはハッキリ言って最も深い闇を持っているです。そんな方を見るのはまだ早すぎたんです」
提督「もっと配慮すべきだった……」
妖精「まぁまだやり直せるです。今は雪風さんをよく見てあげて下さいです」
提督「ああ、見舞いに行ってくるよ。ありがとうな」
妖精「いってらっしゃーい」
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提督「雪風、起きてるか?」
雪風「あっ、司令……」
提督「どうだ体調は?」
雪風「大分よくなりました。でも不思議です、急に気持ち悪くなっちゃって……」
提督「……雪風、無理しなくていい」
雪風「無理なんてしてません」
提督「じゃあどうしてそんな張り付いたような顔なんだ?」
雪風「…………」
提督「お前が何に苦しんでいるのかはあえて言わない。だけどそれは一人で抱えていけるものじゃないんだ」
雪風「……怖いんです。自分じゃない誰かの記憶があたしを取り込んでいって、いつか自分が自分じゃなくなるって」
提督「自分が自分じゃなくなる……?」
雪風「頭の中で響くんです。『どんなに願っても叶えられない絶望の中で、唯一自分を保つことのできるもの……それは怨念』と」
提督「怨念……」
雪風「その言葉に従ったら、多分深海棲艦みたいになっちゃいます。それが怖いんです……」
提督「…………」
雪風「だから頭の中も出来るだけ皆がやってることを真似るようにして、違う行動をしないことで変に意識を起こさないようにしてるんです」
提督「……誰かに頼ったりはしないのか?」
雪風「自分のことですから……頼ったところで……」
提督「そんなことはない!」
雪風「司令……?」
提督「本当に頼れるやつってのはな、心の中に刻み込まれるんだよ!」
提督「その時点でそいつのことを意識して止まなくなる。でも人はそうやって関係を作って成長していくんだ!」
提督「雪風はただ抱え込んで逃げてるだけだ!」
雪風「逃げてる……?」
提督「そうだ!蝕まれるのが怖いなら、抱え込まずに立ち向かうんだ!」
提督「そのための艦隊だろ!仲間だろ!俺がいるんだろう!」
雪風「!!」
提督「俺が、俺たちが力になる。一人で戦うのはもう今日で終わりだ雪風。俺の手を取るんだ」スッ
雪風「……いいのでしょうか。甘えてしまっても……」
提督「何も問題ない!俺はいつもみたいに『しれえ!』って元気よく言う雪風が好きなんだ!」
雪風「しれえ……似てないですよ……ふふっ」
提督「ほっとけ」
雪風「わかりました。この雪風、これからは本当の意味で皆さんと共に戦います」ガシッ
提督「OKだ」
グゥ…… グゥ…
提督「……すまん」
雪風「あはは……雪風もさっき食べれなかったからお腹空いちゃいました」
提督「なら、食いに行くか」
雪風「はい!お供します!」
提督「こうして俺はその後もいろいろな奴の心を見た」
提督「ある時は『勝利』と掲げられた旗がいくつもあるカツくさい荒々しい場所だったり」
提督「真っ青で暗い、だが天井からは細い光が暖かく差し込む部屋で静かな海底のような気分を味わったり」
提督「入った瞬間壁に叩きつけられ、常に全力ダッシュしてないといけない部屋だったり」
提督「航空戦艦と瑞雲まみれだったり」
提督「入った心の主の分身が、『素直な自分』と『素直になれない自分』とで喧嘩してる部屋でそれを宥めたり」
提督「大量の戦術書類が積まれていると思ったら、横から拳が付いたアームが飛んできて全部吹き飛ばしていたり」
提督「真っ暗な部屋で用意された懐中電灯と武器で迷路を進まされ、夜戦を強制的に味わわされたり」
提督「張りぼての化粧品や高級品の裏を覗いたらお子様ランチやなでなでゾーンとか言うのを見つけてしまったり」
提督「鋼のような部屋と思ったら、段ボールの中に小動物が大事に大事に世話されていたり」
提督「とにかく多種多様なものだった」
提督「だがこれのおかげで艦隊の結束は以前よりあるかに強くなったと思う」
提督「自分の弱いところを知り、大事なものを思い出す」
提督「それが心の力だ」
提督「んで、今日大変なことが起きた」
大井「誰に向かって話してるんですか?ってこんなことがちょっと前にもありましたね」
提督「全部バレて拘束された」
大井「提督……これで私たちのことを見てたんですね……ギョライウチマスヨ」ボソッ
加賀「…………」(気付かれてた……いっそ今すぐ想いを……)
初霜「面白い試みですね」ニッコリ
敷波「あんたサイッテー!」
雪風「雪風はかまいません!」
吹雪「まぁそのおかげで助かったところもありますけど……」
秋雲「これは提督の心の中にも入らせてもらわなきゃね~。スケッチしてやる!」
妖精「そういうと思ったので良かれと思って全員分の一回限りだけ使える色々改良した新鍵を用意しましたです」
提督「妖精さん!?裏切るのか!」
妖精「僕は別にバレたらどうこうなんて知らないですし」
提督「貴様ぁー!!」
妖精「はーいじっとしてて下さいねー。ついでに提督さんの鍵は全員分見たということでもう壊したです」
提督「まぁ悪用が怖いし……ってそんなこと今はどうでもいい!」
妖精「皆さんあんまり心の中で暴れちゃだめですよ~。対策はしてありますからある程度の破壊くらいならなんやかんやで大丈夫ですけど」
提督「何も大丈夫じゃないわ!や、やめろ入って来るな!!」
大井「それではみなさん行きますよ!」
「「「「「「「「「「「「「「「開錠!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」
提督「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
キラーン
これにて終わりです
ちょうどいい感じに纏めれたのでここで完結。だらだらやるの、良くない。引き際、大事
なお私は心理学も史実もWiki齧りですから責任は持てません
では安価を取っていただいた方、ここまで読んでくれた方、ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
那珂ちゃんと大鳳辺りが歌魔法を覚えそう