照「続・百合妄想士たちの戦い」 (625)


照「百合妄想士たちの戦い」
照「百合妄想士たちの戦い」 - SSまとめ速報
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東西決戦の1ヶ月後―――

【長野 宮永家】

咲「わぁあ……じゃあお正月はお姉ちゃんの家で過ごしていいの!?」

照『っ……咲、急に大声出さないで。久保さん以外と電話してる時は受話器を耳に付けてるから』

咲「そ、そうだね。ごめんねお姉ちゃん。でもお姉ちゃんのお部屋が見れると思ったら嬉しくて……」

照『それで……その時にさ、私の……アレで作ったワンピース、持ってきて』

咲「えっ!ど、どうして?」ドキッ

照『この世から消し去りたいから』

咲「そ、そそそ、そんな!お姉ちゃん!何が目的なの!?」

照『だって……存在自体が恥ずかしいから』

咲「……お姉ちゃん……今の時代、地球の資源は大切にしないといけないんだよ?廃棄なんて非人道的!」

照『……………』

咲「あのワンピースは私を元気にしてくれるし……まだ現役で大丈夫!」

照『……咲は』

咲「?」

照『…………そ、そんなに私の……その……アレで作ったワンピースが……いいの?』

咲「うん!だって私、お姉ちゃんが大好きだもん!」

照『へ、へえー』

咲「だから………処分したくないよぉ」

照『…………』

咲「お願い。お姉ちゃん……」

照『…………ま、まぁ……咲がそんなに言うなら……うん…………わかった』

咲「!お姉ちゃん!!」

照『ただし条件が2つ。着て外出はしないことと、ワンピースの素材については他言無用』

咲「うん!外出はしないよ!でも……」

照『でもって何?すでに誰かに話した、とか?』

咲「ううん。誰にも話してないけど、手作りしたタグに『品質表示 お姉ちゃんのパンツ100%(宮永照)』って書いちゃったから、クリーニング屋さんにはバレてるかも……」

照『本当に勘弁して』

咲「リアルを追求しちゃってごめんなさい……でも、今後は気を付けるから」


照『…………うん。本当に気を付けて。あ……』

咲「どうしたの?」

照『ううん。お母さんが帰ってきたから。そろそろ切るね』

咲「あ、うん」

照『また夜に電話する』

咲「うんっ!楽しみに待ってるね!」

照『うん。それじゃ』

ツーッ..ツーッ..

咲「…………ふふっ」

咲(最近、お姉ちゃんと毎日お話できて楽しい)

咲(それに……お正月は一緒に過ごせるんだ。今からワクワクするよぉ)

咲(あ、そうだ。カレンダーに印をつけよう)

キュキュキュ..

咲(お泊まりの日と……お正月まであと何日かを書き込もう。ん、これでよしと)

咲「……あっ」

咲(そういえば今日は百合姫の単行本の発売日だった……買いに行かないと)タタッ!


【本屋前】

咲「あれ?お父さん?」

界「ん?おお、咲」

咲「もしかして、百合姫コミックスの新刊を買ったの?」

界「いや、違う。18禁コミックでふたなりモノがあってな。それを買ってた」

咲「そうなんだ?」

界「他には絵が気に入ったエロ漫画を何冊か。男女モノなんだが、男の絵が割と細身だから女の子に書き換えられそうなんだ」

咲「さすがお父さん」

界「というわけだから俺は急いで帰る。あ、新刊読み終わったらリビングに置いといてくれ」

咲「うん!気を付けてね」

界「ああ」テク..テク..

咲「?」

咲(お父さん、どうして変な歩き方してるんだろう?)

咲(ポケットの中で何かを握ったまま窮屈そうに前傾姿勢で…………)

咲「…………ま、いいか」

咲(……それにしても、一時期はふたなりを捨てるって言ってたけど、リリーフラワーガーデンとの戦いが終わったあと、わざわざお姉ちゃんと私に……)

界『すまん!俺はやっぱりふたなりが好きだ!愛してると言ってもいいね!だから……頼む!ふたなりを愛させてくれ!』

咲(……なんて…………ふふっ、お父さんらしい)

咲(お姉ちゃんに『お父さんの好きなようにすればいい。お父さんが幸せな方が私も嬉しい』って言われて照れてたお父さん普通!優しいお姉ちゃんかわいい!)エヘヘ


【本屋 店内】

咲(ん、これで全部かな)

咲(じゃあレジに持って…………行く前に)チラ

『18禁コーナー』

咲(ちょっと寄っていこう)バサ..

咲「……うーん」

咲(前情報がないと、どれがいいかイマイチわからないや)

咲(……あ、この表紙の子、お姉ちゃんと同じ髪型だ。書き込めばいけるかな?)

咲(…………ダメだ。体型が違いすぎる。こんなに胸があったら邪魔だよ)

咲(うーん……気になる物は何冊かあるけど……一度家に帰ってお父さんに検索してもらった方がいいかな……)

??《宮永咲さんですね》

咲「!」

咲(今のは……プライベート回線!)チラ

??「………………」

振り返ると、そこには5人の女性が咲を囲むように立っていた。

咲「!!」

女性A《あなたに用があります。少し付き合ってください》

咲「っ……」

咲(このイントネーション、関西の人だ……もしかしてこの前の戦いの関係者……?)

女性A《……来てください》テクテク

女性B「………………」ジィーッ

咲(……逃げられそうにない……言う通りにするしか……)テクテク


【裏道】

女性たち「………………」テクテク

咲「………………」

咲(しまったなぁ……お父さんに『18禁コーナーでは周りをよく見ろ。学校の先生とバッタリなんてこともあるからな』って何度も言われてたのに……本に集中しすぎてたよ……あーあ……)

咲「…………」

咲(……この人たち、私に何の用だろう?報復、とか……?)ゾワッ

女性A「…………この辺りでいいですね」

咲「っ!」ビク

女性A「……宮永咲さん……」

咲「は、はい……」

女性A「先の戦いでは、姉の宮永照と共にリリーブライドの勝利に貢献……そうですね?」

咲「え?あ、えと…………そう、なるのかもしれないです……」

女性B「急にこんなところに連れてきておいてなんですけど、怖がらなくて大丈夫です。私たちはただ、あなたと戦いたいだけですから」

咲「!」

女性C「そう……百合妄想士として、優れた者との勝負もまた楽しみの1つ……」

女性D「そして、その勝負を受けることは強者の義務!」

咲「で、でも私……新刊を読まないといけなくて……」

女性A「わかりました」

咲(あ、納得してくれた。よかった)

女性A「では、早く終わるよう……今すぐ勝負です!」カッ!

咲「!!」

女性A《この×せつ!『お嬢様をお守りいたします』と言う刹那に…》

咲(わわっ……問答無用だ!?)アワワ

女性C《ブレンナーとエレオノーレのありえたかもしれない未来とは…!》

咲「う……っ」

咲(こうなったら……私もやるしかないよっ!)

咲《お姉ちゃんが風邪を引いた時!お尻にネギを入れれば治ると言って無理やり脱がし…そのまま最後まで……》

女性たち「きゃああ!!」

バタバタバタ..

咲「?」

咲(あれ……?一発で終わっちゃった……)

あまりの手応えのなさに拍子抜けの咲。

それも無理もない。東西決戦という激戦を潜り抜けてきた咲は、今や全国屈指の百合妄想士へと成長していたからだ。

さらに姉との電話に加え、新刊をゲットしたホクホク感も相まって、百合に対するやる気は十分で絶好調。パワーに+30されている。

咲「…………」

咲(えっと……もう帰っていいのかな?)

女性A「…………素晴らしい」ムクリ

咲「あ」

女性B・C・D・E「」ムクリ..ムクリ..

咲(全員立ち上がった……まだフラついてるけど)


女性A「……やはり、本気にならないとダメみたいやね」

咲「え?」

咲(ということは……手を抜いてたの?)

女性A「…………ス」ボソリ

咲(?……今、何か呟い…)

女性A「っ!」カッ!!

ゴォオッ!

咲「!?」

咲(な、なに……この感じ!?この人たち、急に力が増したような……)

女性A《なつきは静留の想いを知り………拒もうとするも……受け入れてしまう!》ズムッ!

咲「っあ、が……」

咲(これは……!さっきと明らかに違う…!)

女性A《想いが通じた静留は、激しくなつきを求め、体位を入れ替え続け…》ズムムゥ!

咲(このままじゃ……反撃しないと負けちゃう!)

咲《掃除機でお姉ちゃんのスカートを吸い込んで持ち上げると下着が見えた!なんとその下着には『咲大好き』の文字が縫われていた!》

女性A「うっ!?」

咲《するとお姉ちゃんは『私の気持ち、バレちゃった……ずっとないしょにしてたのに……///』と真っ赤な顔で俯く!この一連のお姉ちゃんかわいい!!》

女性A「く……っ、まだまだ!」

咲《お姉ちゃんかわいい!お姉ちゃんかわいい!お姉ちゃんかわいいいいい!!!》

咲(連続攻撃で押し込む……!)

女性B《晴に慣れ慣れしく接する鳰。そんな鳰に対し、兎角は苛立ちを隠せず、いつものカレーが不味く感じるっ!!》

咲「っ!?」

咲(この人も……強くなって……る!)

女性C《夜一様と砕蜂が…!》

咲(っ……ああ!こっちの人も……!?)

女性D・E「っ!」

女性A「…………」ザッ!

咲(……だめ……もう……耐えきれないよぉ…)

女性A「とどめやっ!」

咲(っ……!お姉ちゃんっ……!!)

咲「………………」

咲「………………」

咲(……攻撃が来ない?)チラッ


女性たち「………………」

咲(あれ?全員が止まったまま…………ああっ!?)

咲の目が見開かれる。

それもそのはず。目の前に広がった光景が、生まれて初めて見るものだったからである。

女性A「く……」

その光景とは、女性たちの眼前に地面から生えた巨大なち○ぽが立ち塞がっているという、アンビリーバボーなもの。

亀頭付近に漂う甘い香りによって、ふたなり娘だとわかるため、ギリギリ不快感を抑えている女性たち。

すぐにでも離れたいと思っているだろうが、ち○ぽがどう動くかわからないため、身動きが取れずにいる。

咲「これって……?」

界「……大丈夫か?咲」

咲「お父さん!?」

界「……ああ。これは宮永流ぽち○ぽ忍法第3の技、ち○ぽ墓前だ。なんだか嫌な予感がしてな。本屋に戻ったらお前がその子たちと人通りの少ない方へ向かうから後をつけた」

女性A「…………」スッ

界「動くな」

ムグ..

女性A「!!」

逃亡か戦闘か……どちらかは不明だが、何らかのアクションをとろうと動いた女性。

その動きをけん制するため、目の前のち○ぽの皮が自動的に少し剥かれる。

それによって、攻撃を警戒した女性は動きを止める。

界「………………」

女性たち「…………」

咲「…………」

静寂。

誰一人として動かず、口を開かない。

強い風が吹き、前髪を揺らし、ち○ぽ皮がぱたぱたしても、微動だにせず。

界(……このままでは埒があかないな)

女性たち「……………」

界「…………はっ!」ザッ!

女性たち「!!」

しびれを切らした界が動く。それに合わせて、女性たちも動き出す。

目の前のち○ぽから距離をとり、界へと狙いを定める。

咲(お父さん……!)


女性たち「!」ザッ!

界「っ!」

咲(ああっ!囲まれちゃった!)

女性A(もろた!)

界「…………」

一気に決着を付けるべく総攻撃へと打って出る。

界「っ……く……うぉぉ!」

咲(お父さん!やられちゃう!?)

女性たち(私たちを侮りすぎよ!倒れなさい!!)

最後の一撃を与えるべく、妄想を紡ぐ。

その時、一瞬の空白が生まれるた。

界「……ここだっ!」

そのタイミングで界は動いた。サイドステップをして、迫りくる女性たちの横へ回り込む。

女性たち「え」

界から見える景色。それは、正面に縦一列に並ぶ形となった女性たち。

界(俺の誘いに乗り、まとめてかかってきてくれたな)ニヤリ

女性たち「ま、さか……!」

界「おおおおっ!!」

気合の咆哮と共に、右腕からち○ぽを発し、飛ばす。

一直線に進むち○ぽは、女性たちを全員まとめて貫いた。

女性たち「きゃあああ!!」

女性B(こ、れは……一撃で仕留めるために一斉攻撃を誘ったんか……!?)

界「ははは!まさか自分たちが串カツみたいになるとは思わなかっただろう?」ニヤリ

咲「す、すごい……!」

咲(今言った決め台詞みたいなのはセンスないと思うけど、攻撃自体はすごいよお父さん)

女性A(な……わ、私の大好きなキャラたちに……あ、アレが生えて…………貫きあってる!!)ガハァ!

女性B・C・D・E「」バタバタバタッ..!

界「…………ふぅ」

女性A「…うぅ……」

界「なんだと!?」

界(まだ動けるのか?脳内はふたなりち○ぽが舞い踊っているはずなのに……)

女性A「ま、だ……まだ……」フラ..

咲《お姉ちゃんの乳歯を携帯ストラップ化!!》ゴアアア!

女性A「きゃああ!」バタッ!

咲「ふぅ……」

界「咲……見事だ」

咲「うん!隙があったから」ニッコリ

女性たち「…………うぅ……」

界「では、帰ろう」


咲「あ、この人たちはどうするの?このまま置いていったら女の人にイタズラされるかも……」

界「大丈夫だ。3分もしたら動けるようになる」

咲「そうなんだ。じゃあ安心だね。そんな短時間じゃできることは限られるし」ホッ

界「じゃあ帰るぞ」

咲「うん!」

テクテク..

咲「お父さん、助けてくれてありがとう」

界「ん?ああ、気にするな」フフ

咲「……………ねえ、お父さん」

界「なんだ?」

咲「あの人たちすっごく強かったよ」

界「…そうだな」

界(俺の全力を受けて動けるやつもいたしな)

咲「喋り方が関西の人っぽかったし、この間の戦いにも参加してたのかな?」

界「……………」

界(5人がかりとはいえ、東西決戦を経て成長した咲を圧倒した彼女たち……)

界(それほどの実力者が参加してたのなら情報が入ってきてるはず)

界(……連合軍への参加は義務ではないだろうし、組織に属さない隠れた強者がいるのは不思議ではないが……)

咲「お父さん?」

界「……あ、いや、なんでもない」

咲「?」

界(そう……なんでもないことのはずだ。東西決戦で名を上げた咲に野良試合を挑むために関西からやってきた、と考えれば納得がいかないわけじゃない)

界(………………なのに)

界(………嫌な予感がする。ち○ぽがうずく……キ○タマの裏が痒くてたまらん。病気では決してないのに……)

界(これは東西決戦が始まる前に味わった以上の痒さだ………おそらくこうやってズボンに手を入れて……)

ゴリゴリリ..!

界(強めにかいても……やはり……痒いまま……か)

界(……一体、何が起きようとしてるんだ?)

胸騒ぎと裏痒み……この2つが界を不安にさせる。嫌な予感が止まらない。

果たしてそれはシモの病気に対するものなのか?それとも…………。


その日の夜―――

咲「――――ってことがあったんだ」

照『…………』

咲「……お姉ちゃん?どうしたの?」

照『……実は………私も今日、咲と同じ体験をした』

咲「えっ!?じゃ、じゃあ……その人たちも串カツみたいになったの!?」

照『なってない』

咲「あっ、そうなんだ……」

照『うん』

咲「…………えと……それじゃあどういう……?」

照『今日、新刊を買いに行こうと思って本屋さんへ行ったんだけど、その帰りに戦いを挑まれた』

咲「……だ、だいじょうぶだった?」

照『うん』

咲「よかったぁ」ホッ

照『咲も大丈夫?怪我とかしてない?』

咲「うん、大丈夫だった」

照『そう……よかった』

咲「それにしても……同じ日にお姉ちゃんも私も戦いを挑まれるなんて……」

照『……うん、私も思った。タイミング的に何か怪し…』

咲「運命だよねっ!」

照『え?』

咲「お姉ちゃんとお揃いだよぉ……嬉しいな♪」

照『………………』

咲「……お姉ちゃんは?どう思う?」

照『ま、まぁ………お揃いっていうのは……ちょっと…………嬉しい、かも……』

咲「!お姉ちゃん!!」パァァア..

照『……ただ、やっぱり何か裏があるんじゃないかと思っ…』

咲「お揃い……お姉ちゃんとお揃い……やったっ」ニコニコ

照『…………咲、かわいい』

咲「そ、そんなことない!咲、かわいいっていうお姉ちゃんの方がかわいい!」

照『そんなことない。お姉ちゃんの方がかわいいっていう咲の方がかわいい』

咲「お姉ちゃんかわいい!」

照『咲かわいい』

咲「お姉ちゃん―――」

照『咲―――』

かわいい合戦はこの後、数分続き、

咲(お姉ちゃんとお揃いになれたし、幸せなことがいっぱいありそうな予感がするよぉ)

最高にハッピーな気分で咲は眠りについたのだった。


その頃、リビングでは界が携帯電話を片手に真面目な表情を浮かべていた。

界「………では、リリーフラワーガーデンではないと?」

恵『ああ。君の娘さん……姉の方から久保君へ連絡があったのだが、襲ってきた相手は関西弁ではなく東京弁だったようだ』

界「そうですか……」

恵『さらに、深堀君の元へも数人が戦いを挑みに来た。君が言うようにかなりの耐久力で、有名女子高の生徒会役員全員分のスカでなんとか撃退できた……とのこと』

界「!」

恵『そしてその子たちは東北弁を喋っていたらしい』

界(東北、関西、東京……方言はバラバラ……)

界「……ではうちの娘たちが戦いを挑まれたのは偶然で、組織立った者たちによるものではない……?」

恵『…現段階ではそう考えていいだろう』

界「…………」

界(本当にそうか?ただの偶然だったらこんなにも嫌な予感は……)

恵『どうした?』

界「…………原村さん」

恵『なんだ?』

界「最近、ち○ぽが疼きませんか?」

恵『………………』

界「キ○タマが永遠に痒くありませんか?」

恵『……疼きはしないし、痒くはない』

界「…………そうですか」

恵『ああ……』

界「………………」

恵『…………ん?なんだ?今は電話中…………何?』

界「どうかされました?痒くなってきたんですか?」

恵『いや違う。新しい情報が入ってきたようでな』

界「それは一体……」

恵『今回の件には関係ないのだが、明日、宮守女子高校麻雀部が遠征で長野に来るらしい。目的は練習試合。その相手は龍門渕だ』

界「!」

恵『……両校合わせて四天王が3人いる……さらに小瀬川もな』

界「このタイミングで……ですか?」

恵『そうだ。もしも君の予感が正しければ…』

界「何かが起こる……」

恵『……かもしれんな』

界「………………」


翌日―――

【龍門渕高校】

透華「ようこそ龍門渕高校へ!歓迎いたしますわ!!」

塞「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」ペコリ

トシ「私の言いたいことは全部塞が言ってくれたよ」フフ

豊音「うわわ……このお部屋、ちょー豪華だよー!」

エイスリン「キレー!」

胡桃「キョロキョロしない!失礼だよ!」

白望「…………」

胡桃「シロ!勝手に椅子に座らない!」

白望「………………うん」

純「……しっかし、なんでまたこの時期に練習試合なんだ?全員3年だし、岩手からわざわざ来るか?」ヒソヒソ

一「どうしてだろうね?」

純「なぁ、智紀はどう思う?」

智紀「…………多分、衣が目当て」

純「衣?確かに全国区だけどよ……」

智紀「…………」チラ

塞「…………」チラッチラッ

衣「楽しみだ!」ニコニコ

塞「…………」ニヤー

智紀「!」

衣「うに?衣に何か用か?」

塞「へっ?い、いや、用は別にないけど……」

衣「??」

塞「っやば……っ!きょとん顔やばいって……///」ハァアァ..

智紀「……ちょっと来て」

塞「え?あ、沢村さん?腕、引っ張らないで………って、なんで部屋の隅に?」

智紀「…………ここなら誰にも話を聞かれないから」


塞「っていうか、聞かれたくないならプレイベート回線で話せば……」

智紀「少し移動すればいいだけ。力を消耗する必要ない」

塞「んー……それもそうね。で、一体なんなの?」

智紀「…………今日の練習試合、話が来たのは急だった…………まさか衣を狙いに来たの?」

塞「え?そ、そんなわけないでしょ?」

智紀「でも臼沢さんは未成熟な未成年の体を触るのが好き……」

塞「ちょ!聞き捨てならないし、聞こえが悪すぎる言い方しないでよ?」

智紀「でも事実」

塞「いやいや、事実じゃないから」

智紀「……衣はどう?」

塞「超可愛いし、体全体がプニプニしてそうでいいわよねー。それと細い太ももの間に顔を挟んでもらったりとかしたら気持ちいいだろうなー…………あ」

智紀「………………」

塞「………………とか普通の人は言うと思うけど、私は言わないわ」

智紀「リカバリーは無理」

塞「うっ」

智紀「…………」ジー

塞「……わかったわ。認めるわよ。確かに衣たんの未成熟の体を触りたいと思った。でも本当に衣たん目当てで来たわけじゃないのよ」

智紀「…………」

塞「大体、宮守のメンバーのほとんどが百合妄想士だけど胡桃は違う。だから胡桃の前で衣たんに欲情するわけいかないのよ。なんていうか普段の私と比べてイメージが悪すぎる」

智紀「……確かに」

塞「いや、それ以前に先生以外の身内には幼女趣味を知られないようにしてきたし……まぁ、エイスリンにはバレちゃったけど…………でも!その努力を今さら無にはしないって」

智紀「…………」

塞「それにね、今日の試合を組んだのは先生よ?」

智紀「え?」

塞「なんでも、試合とは別に用事があるとか」

智紀「…………そう」

智紀(スポンサー関係で透華に話がある?……いや、それなら正式にアポをとって会うはず………一体何が目的……?)チラ

トシ「熊倉トシ、早くもラーメンが食べたいんだよ」

豊音「私もー!」

胡桃「食べたばっかり!」

トシ「よく言われるよ。でも本能さね」

智紀「………………」

智紀(試合が終わればわかる……かな)


試合後―――

衣「わーい!衣の勝ちだー!!」

透華「さすがですわね」

豊音「うぅー……天江さんちょー強いよー……」

塞「ぬぎゃー……勝てないわー……」チラ..

(塞の視線)『衣の太もも』

塞「さすが」チラ

『衣の鎖骨』

塞「天江」チラ

『衣の喉元』

塞「衣」チラ

『衣の唇』

塞「さ」チラ

『衣の目』

塞「ん」チラ

『衣の股間辺り』

塞「だ」チラ

『衣の股間辺り ズーム:120%』

塞「わ」チラ

『衣の股間辺り ズーム:130%』

塞「ぁ」チラ

『衣の股間辺り ズーム:150%』

塞「~」チラ

『衣の股間辺り ズーム:200%』

塞「…………っふふふ……」ハァァ..


智紀「……………………」

胡桃「塞?」

塞「っ!?な、なんでもないよ!?何も見てない!」

胡桃「?」

塞「何も……」

『胡桃の太もも』

塞「見」

『胡桃の腰』

塞「て」

『胡桃の胸』

塞「な」

『胡桃の唇』

塞「い……よ?」

『胡桃の目』

胡桃「……なんか……視線、変!」

塞「っ!?そ、そんなわけないって!ねぇ、シロ?」

白望「………………ダル……」

透華「臼沢さん……想像していたよりもずっと賑やかな方ですのね」

一「そうだね。実際会うと印象変わるね。でもちょっと目が怖いというか……迫力あるなぁ」

透華「?私はそうは思いませんけど」

一「あれー?」

智紀「……一もストライクゾーンだからね」

一「え?」

智紀「…………なんでもない」


トシ「……さて、今日はありがとうございました」ペコリ

透華「いえ。こちらこそ勉強になりましたわ!ありがとうございます」

トシ「私たちはこれで失礼します。ほら、みんなも挨拶するんだよ」

塞・胡桃「ありがとうございました」ペコリ

豊音「ありがとうございましたー!天江さん、サインありがとー!」

衣「うむ。未来永劫、宝にするとよい!」

エイスリン「アリガト!」

白望「…………ありがとうございました……」

純・智紀・一「ありがとうございました」

トシ「……よし。じゃあ私が食べたカップ麺らを片付けたら帰るよ」

塞「はい」

豊音「わぁ!熊倉先生、雀卓にスープがちょー飛んでるよー!」

トシ「汁が飛ぶのは必然さ」

胡桃「私が拭く!……と思ったら……シロ!?」

白望「……めんどい……けど礼儀だから」フキフキ

トシ「見事な教え子発見さ」ニコリ

智紀(…………え?もう帰る?どういうこと?私たちに用があるわけではない?)

一「……ともきー」

智紀「あ……っ」ハッ

一「……何か心配事?」

智紀「…………」

一「リリーブライド関係?」ヒソヒソ

智紀「…………」コクリ

一「そっか……でも何かあったら透華のところに情報が入ってくるからすぐ対処できる。心配いらないよ」ニコ

智紀「………………うん」

智紀(……そう……心配はいらないはず。過去最大級の事件と言える東西決戦が終わった今、大した問題はない)

智紀(…………ない、はずなのに……)

智紀(どうしてここまで心が落ち着かない?何か……得体のしれないモノが辺りを漂い出しているような気がしてならない……)

智紀(……どうか……気のせいであってほしい……)


その日の夜―――

【長野 ファミレス】

ウェイトレス「ご注文はお決まりでしょうか?」

トシ「味噌ラーメンをここに。あんたらは?」

貴子「………ハンバーグ持ってこいァァッ!!」

ウェイトレス「ひっ!」

貴子「はっ!いい顔するじゃねェか……ビンタしてェぞァァッ……」

トシ「今はよしなよ。で、あんたは?」

晴絵「あ、じゃあミートソースで……」

トシ「ソースを飛ばさないように気を付けるんだよ?」

晴絵「はい、わかってます。飲み物はどうしますか?」

トシ「ウーロン茶しかありえないんだよ」

貴子「私もウーロン茶で」

晴絵「それじゃウーロン茶3つでお願いします」

ウェイトレス「ありがとうございます。ではご注文を繰り返…」

貴子「口答えするんじゃねェ!!」

ウェイトレス「ひいい!?」

トシ「怒鳴ったらダメじゃないか」

貴子「あ……す、すみません」

トシ「ごめんなさいね。どうぞ」

貴子「早くしろオラァ!」


ウェイトレス「は、はい。味噌ラーメンがお1つ、デミグラスハンバーグがお1つ、ミートソースがお1つ、ウーロン茶が3つ。以上でよろしいでしょうか?」

トシ「いいに決まってるよ」

ウェイトレス「かしこまりました。少々お待ちください」ペコリ..スタスタ

貴子「早足で歩けコラァァッ!!」

ウェイトレス「ひぃっ!」スタタタタ!

晴絵(血の気が多いなぁ……)

貴子「ふん!雑魚が」

晴絵「あの……今日は一体どのような用件で……」

トシ「ん?ああ、別に重要な話ってわけじゃないんだ」

晴絵「はぁ」

トシ「ただね。リリーフラワーガーデンとリリーブライドのライバル関係はわかるけど、少しはお互い歩み寄ってはどうかと思ったのさ」

貴子「…………それは……」

晴絵「……まぁ、確かにわかりますけど……リリーブライドがスポンサーによって優遇されている以上、どうしたって…」

トシ「そうだね。でも、両者が手を取って協力すれば、百合業界はさらに発展すると思うんだよ」

貴子「…………」

晴絵「…………」

トシ「今がそうであるように、競合することによってお互いが研鑽を続け、成長する……ということはある。でもね、これからはその先を見るべきさ」

貴子「先……」

晴絵「……ですか」

トシ「そうさ。だから今日は、親睦を兼ねて食事会ってわけなんだよ。本来はお酒でも飲みながらゆっくり話したかったんだけど、練習試合の遠征で引率者として来ているからねぇ」

晴絵「あ、そういえば生徒さんたちは?」

トシ「自由時間さ。それぞれ長野を満喫してるよ」

晴絵「なるほど…」

トシ「ま、お酒はまた次の機会だね」フフ

貴子「……あの、こうして会って話すのは大丈夫なんですか?リリーフラワーガーデンの許可とか……」

晴絵「あぁ……平気です。個人的に熊倉さんにはお世話になってますし」

トシ「オールグリーンなんだよ」

貴子「それならいいんですけど…………にしてもウェイトレスの女……ちっとも来やしねェ。どこで油売ってやがんだ……」

晴絵「いやいや、まだ頼んだばかりですから。もう少しかかりますよ」


食事後―――

晴絵「ごちそうさまでした」

トシ「ん?ふふっ」

晴絵「?どうしました?」

トシ「ミートソースのシミがテーブルに付いているよ?勢いよくすすりすぎだねぇ」

晴絵「あ……あの……それ、熊倉さんのラーメンのスープです……」

トシ「…………こっちは?」

晴絵「それも熊倉さんです。近くにネギもこぼれてますし……」

トシ「…………私の負けだよ」フフッ

晴絵「あ、いえ……」

トシ「どうして飛ぶんだろうねえ?歯の隙間かねぇ」ハァ..

貴子「私が拭きます。オラァ!!クソテーブル死ねぇ!!」キュキュッ!

トシ「ありがとう。じゃあ出ようか」

晴絵「はい」


【ファミレス前】

ウェイトレス「ありがとうございましたー!!」

貴子「うるせェぞコラァァッ!!!!舐めたクチきくんじゃねェ!!」

ウェイトレス「ひぃいい!!」

晴絵「ちょ、ちょっと……」

トシ「ごめんなさいね?この子、威張れる相手に対しては怒りっぽくて」

ウェイトレス「い、いえ……」ビクビク

貴子「ったく……また来るからな。テメェを指名する」フン

♪~

貴子「ん?メール……ふむ…………」

晴絵「…………」

貴子「なんだとォォォァァッ!!!!!」

晴絵「っ!」ドキッ

トシ「ぐ……ぅ……驚きは心臓に…くるんだよ……」

貴子「…………大変です」

トシ「い、今の私の方が大変だよ……」カァハハァァ..

晴絵「どうしたんです?」

貴子「……また……襲撃がありました」

晴絵「!!」

トシ「!!?」

貴子「宮守の小瀬川、エイスリン、臼沢……そして沢村が戦闘したそうです」

トシ「!あの子たちが……!?それで……結果は?」

貴子「全員、勝利しました。ただ……かなり苦戦したみたいで…………って、四天王と小瀬川が苦戦……ちっ、マジかよ」

晴絵「ここ数日で何度も起きてる襲撃事件。データをまとめると……狙われたターゲットは四天王、そして四天王と対戦経験がある人間。いや、それとも……東西決戦で活躍した人物か?」フム..

トシ「その予想が正しければ、うちの子たちが練習試合で長野にいるという情報を得た上でピンポイントに戦いを挑んでることになる……偶然ではありえないね」

貴子「はい…………ん?なっ!?」

晴絵「?」

ザザッ!

女性たち「………………」

貴子「てめェら……まさか……」

女性たち「………………」

晴絵「やる気十分みたいね……私たちも対象ってわけか」

女性たち「…………」

貴子「………あのウェイトレスといい、どいつもこいつも私を舐めやがって……許さねェ……」ギリリ

トシ「待ちな。ここは目立つよ。裏通りへ行くんだよ」

貴子「……そうですね。お前ら、ついて来い!」テクテク


【裏通り】

女性たち「覚悟っ!」タタッ!

貴子「着いてすぐかこの野郎ァァッ!メリハリききすぎだぞコラァァ!!」

晴絵「っ!」

女性F《優香に振り回されながらも、心の底から楽しんでいる凛子は…》

貴子「〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )〕!!」

女性F「!!!」

貴子「オラァ!!」

女性F「きゃあ!!!凛子ちゃん!!!」

貴子「ふん……!」

貴子の〔愛なき時代(ビンタオアビンタ)〕によって、妄想したキャラたちは往復ビンタをされる。

その衝撃により、女性Fの妄想は弾け飛び、大ダメージを受けた。

晴絵「すごい……」

女性G「やあああ!!」タタタ

晴絵「!」

晴絵(感心してる場合じゃなかった!私だって……!)

晴絵《結衣×京子……抱き合う2人……》

女性G「!」ピク

晴絵(よし、興味を惹いた!ここで……)

晴絵《そんな2人の股間を、ふたなりち○ぽが繋げる!》

女性G「!?」

晴絵《動けない2人。そこへやってくる綾乃!!ここで真相!京子は綾乃と付き合っていた!》

女性G「ひぃいい!!」

晴絵《空気が凍る。一体どうなってしまうのか?》

女性G「あぁ……あぁ……」

晴絵《しかし綾乃は優しい女の子。2人の前を黙って去ろうとする》

女性G「あ……」ホッ

晴絵《……だが!そうは問屋が卸さない!やはり感情は誤魔化せない。私はそんな綾乃に手を貸した!シットスル、ち○ぽを授ける!そして貫く!3連コンボ!!》ズムゥゥン!

女性G「いやあっぁあぁあああああ!!!!」バタッ..

晴絵「ふぅ……」

女性H「な……強い……」

トシ「同感だね」

貴子「ふん!キャリアっつーものがあるんだよァァッ!」

女性H「う……」

貴子「次はてめェだ」ジリ..

女性H「うぅ……」

??「…………あなたは下がって。あとは私に任せて」ザッ..

貴子「ん?なんだ?まだ他にいやがっ…」


ザアッァァアッァ...

貴子「―――――」

空気が……変わった。

いや、変わりながら近付いてくる。

??「………………」テク..テク..

その場に現れたのは、ローブのような物を身に纏う女性。

フードで顔の大部分が隠れているため表情が見えず、彼女が何者なのかは不明だ。

ただ、その人物が歩みを進めるたび、周囲の空気は貴子が慣れ親しんだものではなくなる。

重く、固く、熱く、痛く……。

触れるだけで全身に緊張を呼び起こすものへと変化していくようだ。

晴絵「あ……――――」ガタガタ...

晴絵(足が……動かない……)

その空気に、貴子以上に圧倒されたのは晴絵だ。

まさに蛇に睨まれた蛙。社長を前にした部長。ラーメン屋の行列に数時間並んだのに自分の番の直前でスープ切れ終了になった人……。

ただただ立ち尽くし、動くことができない。

??「………………」テク..テク..

彼女は何もしていない。

ただ歩いているだけ。そこに『近付いてきている』という側面が足されるだけで、圧倒的なまでの絶望が貴子たちを包む。

トシ「………………」

トシ(この雰囲気……今回の事件、裏で糸を引いていたのは彼女か……?)

貴子たちと同じように、立ち尽くす以外できないトシ。

悔しさからか、舌で口内の上の方をチロチロ撫でることで、少しは動けてるアピールをする。

女性G「お、お待ちください!」

??「………………」

女性G「私たちはまだ負けていません!これから『リリース』を使って戦うつもりです!」

貴子(リリースァ?)

晴絵(何、それ?)

トシ(舌が前歯に近付くほどくすぐったいんだよ)チロチロ

??「………………」フルフル

女性H「な……ど、どうしてですか!リリースを使えばきっと……」

晴絵(む……いや、待てよ。確か襲撃してきた相手は、みんな急に強くなったって…………それが、リリース?)

女性G「お願いします!リリースさえ……」

貴子「うるせェァァッ!!」

女性G「え…」

貴子《〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )〕!!》

女性G・H「きゃああああ!!みんながビンタされるぅうう!!」

バタバタ..

??「!」

貴子「ごちゃごちゃとうるせェ!社会人の時間の大事さを知れァァッ!」


晴絵(……動けるんだ…………すごい……)

女性F「くっ……リリー…」

??「…………だめ」

女性F「!!」

晴絵「!!」

晴絵(い、まの声……は……)

??「私が来た以上、あなたたちは無理しなくていい」

貴子「お、おいおい……あんた……まさか……」

晴絵(間違い、ない……この人は…………)

女性F「GRAND M@STER…!ありがたきお言葉です……」

??「………………」スッ

優しい言葉に感動し、頭を下げる女性を一瞥し、彼女はゆっくりとフードを脱ぐ。

そこに現れた顔は……。

貴子「!!」

晴絵「っ……!!」

実家でジャージのプロ雀士。『実況適当、解説的確、仲良しコンビ』の苦労人。

手にしたタイトル数えきれない。だから部屋には飾りきれない。

地元を愛するグランドマスター、

健夜「…………」

アラサーの星、小鍛治健夜だった―――。


貴子「やっぱりかよ……」

晴絵「小鍛治……プロ……」

トシ「そっくりさんのクオリティじゃないんだよ。故に本人さ」

健夜「…………」

貴子(小鍛治プロ……百合妄想士だったのかよ……そんな雰囲気、全然なかったぜ)

晴絵(…………くっ……)

健夜「……ここからは私がお相手します」

貴子「っ……ま、そうなりますよね」

貴子(ビビってんじゃねェぞ私!この間の戦いじゃ強者のオバハンにもビンタできた!私は成長したァッ!弱者以外にも手を出せるようになったはずだ!!)

健夜「どなたからでも構いません。どうぞかかってきて下さい」

貴子(?そっちから仕掛けてきたんだろうが)

トシ「やれやれ……そういうことなら、まずは私から行くよ」

晴絵「え?熊倉さん?」

トシ「そして、戦う前からわかる。私の負けだよ」

晴絵「え!?」

トシ「私は限りなく雑魚なんだよ。戦うだけ無駄さ」

晴絵「………………そう、ですか」

トシ「さ、前座は終わったよ。後は君たちの番だ」

晴絵「…………はい」

貴子「赤土さん。ここは私らで戦うしかない」

晴絵「…………わかりました」

晴絵(……さっきまでは気圧されてたけど………………うん)グッ..グッ..

晴絵(相手が小鍛治プロだってわかったことで気合いが入った。動ける……!)

健夜「…………では、どうぞ」

貴子(……余裕のつもりか……確かに……最初に感じた実力差はハンパねェ……けど……舐めてると痛い目見るぜァァッ!!)

貴子「おおおおおあァァッ!!!!」タタッ!

健夜「!」

貴子「〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )〕!!」

勢いよく駆け出し、健夜の傍を通り抜ける貴子。

その際に〔愛なき時代(ビンタオアビンタ)〕を発動し、健夜へと攻撃。

脳内にいる百合キャラたちにビンタをする。

健夜「っ……く」

貴子(いける!!ビンタできるぞァァッ!!)

晴絵「すごい……」

晴絵(私も負けていられない……!)キッ!

晴絵「はあああっ!!」

貴子に続き、晴絵も仕掛ける。

晴絵《ふたなり娘が……あなたのカプの恋人繋ぎを……ち○ぽで解く!!》

ち○ぽによる恋人繋ぎの解除。

この凄まじい外道行為に、百合カップルのラブラブ物語は一転、悲恋へと化す。


健夜「!」

晴絵(効いてる……通用するぞ!私たちの攻撃が!)

女性F「GRAND M@STER!!」

貴子「まだまだァッ!」

ビンタ。

晴絵「はあああ!」

ち○ぽ。

健夜「…………ぅ」

ビンタ。

ち○ぽ。

ビンタち○ぽ後にビンタち○ぽ。

『パンッ』と乾いた破裂音に、『ムニュ』という生温かそうな音。

貴子「おおおお!」

晴絵「くらええ!」

健夜「…!」

しかしそれでも健夜は倒れない。

貴子(こいつ……っ!)

晴絵(効いてないはずはないのに!)

2人の猛攻を受け続けた健夜。動いたのは5回目のパンムニュ後。

健夜「」ギラッ

目つき鋭く、強い視線で2人を射抜く。

貴子「!」

貴子(ガン飛ばしてきやがった!だが、ここで引くわけには…)

晴絵(阿知賀のみんなが私の自信になってる!引かないっ!)

しかし睨まれても2人の気合は揺るがない。

これまで以上に勢いよく、

健夜へと、

攻撃を、

………………せずにゆっくりと後退した。


貴子「…………あ?」

晴絵「…………え?」

健夜「………………」

貴子(な、なんで下がる!?心の底ではビビッてるってのか!?くそっ!!)

晴絵(私は……乗り越えたはず!!自分の弱さを克服した……なのに!!)

健夜「…………」

自分の行動が理解できず混乱する2人を尻目に、健夜は静かに語り掛ける。

健夜《……強いね、2人とも。このままじゃ……少し大変そう》

貴子「?」

トシ「お褒めに預かり光栄だよ」フフッ

晴絵(私たちの全力をただ避けもせずに受け切っていたのに何を言ってるんだ?)

晴絵「あ……」ハッ!

晴絵(『このまま』ということは……まさか)

『リリースを使えばきっと……』

晴絵(襲撃事件では、相手が急に強くなるという情報が入っている……そして襲撃してきた者たちがGRAND M@STERと呼ぶ小鍛治プロ……つまり……)

健夜「〔 リ リ ー ス (Lily×Release) 〕」

キュィィッィァァァアァア....

貴子・晴絵「!!!!」

トシ「!!!だよ」

リリース。

健夜がそう呟くと、体全体が輝き、脳が活性化し、全細胞が百合色に染まった。

百合(Lily)の力を解放(Release)したことにより、健夜の力は先ほどまでの数倍以上に膨れ上がっている。

貴子(な、なんだよそれはァァッ!?)

晴絵(ありえないだろ……さっきまでの小鍛治プロですら、2人がかりでも勝てるか微妙だっていうのに……)

トシ「なかなかだね」

健夜「……驚かせちゃったかな」

貴子「…………」

健夜「これは〔リリース(Lilys×Release)〕。私が編み出した、百合妄想士がたどり着くべき新たな領域へと足を踏み入れる技」

晴絵(新たな領域……確かに。その力はそう呼ぶにふさわしいかもしれない……)

健夜「でも別に特別なことじゃない。これは誰にでも使えるし、誰もが秘めてる力」

貴子「!?」

健夜「……ほとんどの人が自分で限界を決めて才能に蓋をしてる。〔リリース(Lilys×Release)〕はその蓋を外すだけ」

晴絵「…………」

晴絵(自分の限界、か……)

健夜「特別な訓練も必要ない。ただ『才能の蓋を外せること、外している人がいる』ということを知るだけでいい。それだけで誰もがリリースを扱える準備ができる」

貴子「…………」

貴子(……私がオバハンにビンタできたのも、ある意味同じか……弱者以外殴れねェっつう悲しい宿命を跳ね除けようとした気概と、私ならできるという気持ちがビンタを生んだ……)

健夜「あとは限界を超えられるという確信が体全体に染み渡っている状態で、〔リリース(Lilys×Release)〕と言うだけ……種明かしすると簡単だよね。もちろん、自分を信じられないと使えないけど」クス


貴子「………………」

晴絵「………………」

トシ「………………」

健夜「……さて、お喋りはおしまい。戦闘中だもんね」フゥ

健夜「あまりにも2人がビックリしてたから、ついサービスしちゃった。本当なら〔リリース(Lilys×Release)〕については仲間内だけの秘密だったんだよ?」

トシ「それはそれは……ありがとうしかないよ」フフ

健夜「どういたしまして。それじゃあ……」ザッ..

貴子「!」

貴子(呆けてる場合じゃねェ!やれることをやらねェと!)

戦闘態勢に入る貴子。いつでもビンタをできるように感覚を研ぎ澄ます。

晴絵(せめて……いつでも逃げられる状態を保ちながら立ち回りたい…………けど…)チラ

トシ「ふう、疲れた。レジャーシートは役立つアイテムさ」

晴絵(地面にシートを敷いて座り出した熊倉さんを逃がすほどの隙を作るのは不可能……もう、倒すしかない!)ギラッ!

健夜「…………」

貴子《……左右から同時に攻めましょう。私は小鍛治さんの右側》サッ!

晴絵《私は左側ですね。了解!》ササッ!

健夜「……!」

2人が健夜から少し離れた両サイドへ移動する。

貴子「…………!」ダッ!
晴絵「…………!」ダッ!

そして同時に健夜へと襲い掛かる。

タイミングはバッチリだ。

貴子(!完璧な飛び出しじゃねェか)タタタ

晴絵(少しもズレないとは……もしかして私ら気が合うのか?)タタタ

阿知賀のレジェンドと風越のコーチ。

ズバ抜けた洞察力を持ち、生徒たちに好かれる人気者である赤土晴絵。

生徒にビンタすることを日常とし、隙あらばパシリにも使う久保貴子。

同じ指導者ながら正反対の性質を持つ2人だが、連携は完璧だった。

貴子(決まった!!)
晴絵(決まった!!)

健夜「…………」

あまりにも息の合った攻撃に、健夜は一歩も動かず。

そして2人は、健夜へとビンタとち○ぽを振りかぶる。

貴子「……ァァッ?」グラ

晴絵「えっ……」ユラ..

バタ..バタ...

だが次の瞬間、2人は前のめりになり、倒れ込んだ。

貴子(な、なんだこれ……私は何をされたんだァァッ!?)

晴絵(私の目が確かなら、小鍛治プロは動いてない……なのに……)


健夜「…………」クルッ

貴子「!ど、どこへ……」

健夜「もう勝負はついたから」テクテク

晴絵「待…………っ、ぐっ」ズキン

貴子(なんだこの感覚………くっ)

貴子の本能が恐怖を覚える。

小鍛治健夜はあまりにも強く、手の届かない存在だと。

手が届かなければビンタはできないのが自明の理。

最大の武器が通用しないと知ってしまった貴子。戦おうとする意志はあるものの、恐怖に支配された本能によって抑えられ、体を動かすことができない。

貴子(動けねェ………くそっ!このまま倒れているわけにいくかコラァ!」ググ..ッ

トシ「無茶するんじゃない!」

貴子「!!」

晴絵「熊倉さん……?」

トシ「今は無理をするべきじゃないのさ。冷静さを失うことを大人がしちゃダメなんだよ」

晴絵「………はい。すみません…」

トシの言葉は説得力抜群だった。

レジャーシートに横になっているトシは、大人かどうかはともかく冷静ではあった。

貴子「っ……!」

健夜「あ、そうだ」ピタ

晴絵「?」

健夜「赤土さんも久保さんも今日のことを報告すると思うんだけど、連絡はもう少し経ってからの方がいい思う」

貴子「どういう……ことだ」

健夜「それはね……――――」


その頃、貴子たちのいる場所からかなり離れた駅前の裏通りでは、リリーブライド会長、原村恵が戦闘を繰り広げていた―――

女性I《森下のアピールに先輩はついに陥落!》シュバァァ!

恵「…………効かん」

女性I「そ、そんな……」

恵《さっき言っただろう?私の〔百合図書館(リリー・ライブラリー)〕の枠内に嵌っている間は、君の攻撃は泡のようなものだと》

女性I「くっ!」

恵《ふっ……では次の問題だ。サブロウタ先生のCitrusより。『まつり登場後、テスト勉強を頑張った柚子の順位は…》

女性I《!それはわかるわ!97位よ!》

恵《最後まで聞きなさい。『柚子の順位は97位ですが、98位の子のフルネームはなんでしょう?』が問題だ》

女性I《そ、そんなのっ……》

恵《さあ、シンキングタイムだ。〔 百 合 図 書 館 ( リ リ ー ・ ラ イ ブ ラ リ ー )〕装着!》

ガチャァン!

女性I(うぅっ……)

恵《続けて問題。同じくCitrusからだ。『テスト結果が載っている前のページにて。新キャラのまつりが後ろ手を組んでいますが、どちらの手が手前でしょ
う?』》

女性I《っ……それは……》

女性I(二択!だったら……)

女性I《右よ!》

恵《………………不正解。左が正解だ》

女性I「!!!」

恵《残念だったな。〔 百 合 図 書 館 ( リ リ ー ・ ラ イ ブ ラ リ ー )〕、発動》

ビリビリビリリィ!リリィ!ビリリリィ..!

女性I「が……は…………ぁあ!」

恵《ちなみに1つ前の問題だが、時間切れだ。正解は久米宏子…………発動》

ビリリリィ!リリィ!!

女性I「…………」フラッ..バターン..

恵「………………ふう。終わったか」

〔百合図書館(リリー・ライブラリー)〕。

百合にまつわる問題を出し、その答えを間違えた者にダメージを与える。

問題を出されると、その問題はツタと化して相手の体に絡みつき、答えるまで決して外れない。(動きを制限されはしない)

ツタが絡んでいる間は、恵へ向けた攻撃は威力を大幅に軽減される。さらに恵からの攻撃によるダメージが数割増しになる。

正解すればツタは外れるが、不正解の場合はツタから喝を入れられ、ダメージを受ける。(問題の難易度によってダメージ量は増減する。難しいほど不正解のダメージは少ないため、難しすぎてもいけない)

その他にも、ツタが絡まった状態で恵から離れすぎても喝が入る。

さらに、範囲内の人間にまとめて出題したり、問題を複数出すことも可能。

その間にも恵の通常攻撃は有効なため、とりあえず問題を出しておいて相手が考えている間に攻撃を続けることもできる。

恵(謎のパワーアップに疑問は残るが、それ以上に彼女たちの目的が気になる。一体何を……)

??「うーわ。10人がかりを楽勝とかマジっすかー?」

恵「む」ピク

??「おー。こりゃ超スッゲーですね。まるでエックスメンですー」

恵(この声は……)


【大阪】

雅枝「アホンダラァ!!」

女性J「あ、あ、あ……そんな……録画もできない、なん……て……」ガク

女性K「うぅ……〔リリース(Lilys×Release)〕を使っても……これほどの差が……」

雅枝「…………ふん。舐めるんやないで。ボケ共が」

女性K「あぁ……っ……」バタッ..

雅枝「…………それにしても……話には聞いとったが色々面倒なことになりそうやな……どないなっとんねんほんま……」

??「教えてあげても~……い・い・ぞっ☆」キラッ!

雅枝「ぁん?」

はやり「はややっ」ニッコリ

雅枝「!お前……チャラチャラしたプロの……」

はやり「えー!?その言い方、棘があるぞっ♪めっ!」

雅枝「あぁぁん!?」ギロリ!

はやり「きゃー!こわーい。助けて理沙ちゃん!」

理沙「…………」

はやり「無言はダーメ♪」ダキッ

理沙「た……すけない///」プイッ

はやり「ひどーい♪」

雅枝「ハラワタぶちまけて死ねやぁ!!」ヒュン!

はやり「っ!はややっ!?」サッ

雅枝「ちぃ……避けよった」

はやり「話も聞かずに問答無用とか……気が短いゾ☆」

雅枝「うっさいわアホ。ええ年のくせにハリのええ肌しおってからに……許さへん」

はやり「え?それ八つ当たり…」

雅枝《〔 希 望 を 刈 り 取 る 鎌 ( ペ ナ ル テ ィ ー シ ッ ク ル ・ 壱 )〕!!》

はやり「わぁ!?ちょ、ちょっと……理沙ちゃん、お願い」ヒョイッ!

理沙「…………〔リリース(Lilys×Release)〕!」プム!

雅枝「ん?」

理沙「…………」ゴォオォォオオ..

雅枝(こいつもか……ふん!かまへんわ。少々強なったところで、うちの敵やない!)

理沙《エビマヨ×ホテイ!》

雅枝「む!?」ズン..!

雅枝(な、なんや?カプを言うただけやのに……)

理沙《汀×オサ!》

雅枝「ぅおっ!?」ズムン..

理沙《紘子×園!ほのうみ!ゆいあず!有希×ハルヒ!!》

雅枝「がはぁぁ!」グラッ..

雅枝(ありえへん……!うちの脳内が反応してまう!あいつの言うたカプ妄想を……勝手にっ!!)

雅枝(……いや、それだけやない!あいつがカプに込めた妄想も一緒に……)


はやり「うふっ☆口下手な理沙ちゃんだからこそたどり着いた『妄想短縮』……強力ダゾ☆」

理沙「…………!」プンコ!

野依理沙の妄想短縮は、生き急ぐ現代人を象徴するような能力である。

あらすじ不要、1話完結、すぐ観てすぐ萌える……そんな性質を持つ。

カプを言うだけで相手にそのカプ妄想を喚起させ、さらに自分の妄想をぶつける。

その威力は一撃必殺には程遠いものの、連発がきく上に理沙が実力者である分、一発一発のダメージはバカにならない。

並の人間がカプだけを相手にぶつけた場合のダメージがウェットティッシュを顔面に軽く当てられたぐらいだとすると、

理沙の場合は、小ぶりな木彫りの仏像で小振りされ額を殴られるクラスだ。大概の人間は痛いと思うだろう。

雅枝(あかん!こいつは後回しや!先にあのボケを……)ダダッ!

理沙「!!」プムッ!?

はやり「きゃっ、はやりがお目当て?しょうがないなぁ。それでは、ご期待に応えちゃおっかな!」

雅枝「くそがあああああ!!!!」ダダダ!

はやり「〔リリース(Lilys×Release)〕」キャルルーン!

雅枝「次期アニメはお預けやボケがあああああ!!!!」ヒュヒュン!

バシュゥ!

はやり「はややっ!」

雅枝「よっしゃ!当たった!!」

はやり「…………なーんてね♪残念でした」

雅枝「…………あ?」

はやり「はやりの身は、ファンのみんなが守ってくれましたっ♪」

雅枝「…なんやと……?」

はやり《〔 は や り フ ァ ン ク ラ ブ 〕》

ザァァァァァアッ!

雅枝「な……!!」

驚きのあまり、雅枝のトレードマークであるキュートなタレ目がその役割を放棄し、目をひん剥く。

何故なら、はやりの背後に大勢の人だかりがまるで幽霊のようにうっすらと映ったからである。

その数は1万を超えるだろう。

雅枝(ファンのみんな……やと?まさか……)

はやり「はやりへの攻撃はファンのみんなが受け止めてくれる。その応援を励みにはやりは頑張る。ウィンウィンだよっ☆」

雅枝(っちゅうことは……全ての攻撃は1万分の1になる!?うちの〔希望を刈り取る鎌(ペナルティーシックル・壱)〕も、あのファンの1人1人が次期百合アニメを数秒だけ観られない程度に軽減された……!?)

はやり「みんなー!ありがとー!」

はやりが自身の背後に映るファンに声をかける。

しかしあくまでそれははやりが生み出した映像。実際のファンたちは、この戦いのことなど知らずに過ごしているだろう。

そう……本人は何も知らないまま、はやりに協力し、はやりの力になっているのだ。

雅枝(くそっ……どないせえっちゅうねん。ひたすら攻撃してファンのボケ共を全員いてこます時間はあらへん……)

理沙《こな×かが!みな×ゆた!》プンスコ!

雅枝「ぅご……ぁ……」ガハッ..


はやり「よぉーし♪とどめ、いっくよー☆」サッ

右手を高々と挙げるはやり。

すると背後のファンたちがサイリュームを取り出し、掲げた。

はやり「みんなのはやりとの百合妄想、貸してもらうねー♪」

はやりの一言をきっかけに、サイリュームが発光し、はやりの頭上へと光が伸びる。

そして女性ファンが自分自身とはやりの絡みを妄想した力が集約された。

雅枝(あ、あかん!あれをもろたら……)

はやり「それじゃ、バイバ~イ♪」

集まった光の塊に、はやりが右手の小指を立てながら触れる。

そしてそのまま、雅枝へ向けて右手を振り下ろす。

はやり「〔 H A ・ Y A ・ Y A L O V E S O N G ☆ 〕」

ハヤヤヤヤヤヤヤ...

雅枝「!!!!!」

星型へと変化した光が雅枝を貫く。

はやり「ふふっ☆」

雅枝「………………」

はやり「どう?」

雅枝「…………はやや…」

はやり「……成功かな?」

じいー……っと、雅枝の瞳を覗き込むはやり。

その瞳には☆印が浮かんでいる。

雅枝「はややっ☆」

はやり「うんっ♪大成功☆」

〔HAYAYA LOVE SONG〕を受けた雅枝。

はやりファンの妄想の影響をモロに浴びたせいで、強制的にはやりファンにされてしまった。

もはや正気も勝機も失われている。

雅枝「はややっ!はややっ!はやややっやや!」ヘーイ!

歌すら流れていない静寂の中、恍惚とした表情で飛び跳ねながら合いの手を入れている雅枝。高校生の娘が2人いる。

雅枝「L・O・V・E・はやりちゃん!fu-fu-!はやりちゃん!fu-fu-!はやりちゃん!fu-fu-!」

年齢による筋力低下からかジャンプ力も低く、オバハンファン感がガンガン漂うが、心から楽しんでいる者は強い。


理沙「…………」フィー..

はやり「理沙ちゃん、手伝ってくれてありがとね☆もうちょっと待ってて」ゴソゴソ

雅枝「はややっ☆はややっ☆はややっ、ややほーい!」

はやり「早くしないとファンじゃなくなっちゃうからね~♪」ゴソゴソ(持ってきたバッグを漁る)

はやり「あった。ねえ雅枝ちゃん?」

雅枝「はややっ?」

はやり「これ、はやりの携帯なんだけど……このサイトのここに雅枝ちゃんのメアドとか入れてくれるかな☆」

雅枝「はややっ!」

はやり「ありがとう…………うん、そうそう。あ、メルマガを受け取るのチェック外したらダ・メ・だ・ぞ☆」

雅枝「はやりちゃぁああん!!」

はやり「……うんっ♪登録完了だねっ!ありがとう!」

雅枝「こちらこそありがとー!はやりちゃーん!!」

はやり「これで雅枝ちゃんも……正式に、はやりファンだねっ☆」パチッ

雅枝「はやりちゃんにウィンクしてもうたー!今日は赤飯やでー…………うっ」ドサッ..

はやり「あ、時間切れ……危なかったー♪ギリギリセーフ☆」

雅枝「うーん……」ムニャムニャ

はやり「ふふふ……次の戦いの時は、はやりのために頑張ってね☆」

理沙「…………」

はやり「あ、理沙ちゃんありがと♪じゃあ行こっか☆」

理沙「…………」コクリ!

愛宕雅枝。

瑞原はやりに敗北するとともに、ファンクラブへ加入。

次に〔はやりファンクラブ〕を発動する時、ファンの一員として登場することだろう。


【長野】

??「…………」

??「…………」

恵(たった今現れたこの2人……確か和が持っている麻雀雑誌に載っていたな。プロ雀士、だったか)

恵「…………君たちも……百合妄想士だったのか……」

恵がド渋い声で話しかける。

??「そうなんだよね~。あっはは!」

その声に応えたのは、

めがっさ可愛い体重37キロ合法ロリ雀士、三尋木咏と、

??「イエス。気付かないあなたとってもトゥーバッド」

そして、クールビューティーボンキュッボン。

ノーウェイノーウェイグッモーニンこと戒能良子の2人だった。

恵「…………私に何の用かね」

咏「いぃや~♪ちょっと頼まれごとって言うんですかねー?しらんけど」

良子「その通り。三尋木さんと任務トゥゲザー」

恵「誰からの頼まれごとだ」

咏「んふー?それは言えないなぁ~」

良子「シークレットベース」

咏「……それ違くね?」

良子「…………そうですね」

恵「……ここまでしておいて秘密か……ふざけているようだな」

咏「そんなつもりは~……ないんだけどねぃ」パタパタ

恵「……悪いが、力づくでいかせてもらうぞ」

咏「…………ふーん」

良子「三尋木さん。ちょっと危険な匂いがプンプンしますよ」

咏「そだね。じゃあ…………〔リリース(Lilys×Release)〕っと」シュゥゥゥウゥゥウゥ..

恵《問題、行くぞ!『ラブライブ2期の6話のなりきりシーンにて…》

咏「…………」サッ(扇子を広げる)

恵《…セリフを喋った順番を全部…》

咏「…………ッ!」

パチン!

恵《………!?》

恵(なんだ……今のは……扇子を閉じた音、か……)

恵(……それがどうした?そんなことを気にしている場合じゃないだろう。戦闘中なのだ。すぐに問題を再度出題して…)チラ

和母「あなた」ニコリ

恵「な……っ!!?」

恵(バカな……いつの間に…………いや、おそらくこれは敵の能力だ。落ち着こう)

恵(どこで情報を得たのかは知らんが、小癪な真似をする……こんなことで私を止められると思っているのか)

和母「うふふ」ニコニコ

恵(その甘さごと、私が蹴散らしてくれる)


和母「あなた?今日も子作りに励みましょう?」

恵(……くだらん。姿形を真似ただけの張りぼてでは私を騙すことはできない)

和母「昨日はマーキュリーだったから、今日はジュピターよね?ほら、早く着替えて?」

恵「な…………なんで知っている!!!!!!!」

先ほどまでの冷静さが嘘のように声を荒げる恵。

何故なら、たった今、和の母の口から発せられた言葉……それは夫婦間のみで交わされた会話だからであり、他の人間が知る由もないからだ。

この会話を説明すると、百合を愛するが故に男として妻を抱くことに疑問を抱いていた恵は、子作りに消極的であった。

しかし妻は子供を欲しがっており、両親も孫を望んでいた。

そんな周りの気持ちに触れ、子供を作ろうと決意する恵だったが、男の自分が女性を抱くということに違和感があるため、

腰の動きもぎこちなく、そして何よりち○ぽが大人しい。さざ波のようだった。

一体どうすればいいんだ。何か方法は無いか?

仕事中、バスタイム、パック剥がし時。恵は常に子作り対策について知恵を振り絞り続け……ある結論に達した。

その答えとは、

『妻と2人でセーラームーンのコスプレをして、女性同士として子作りをする』というものだった。

一流大学を卒業した恵が出した答えということもあり、両者合意の上で、それなりの金額をかけてセーラー戦士たちの衣装一式――テロテロの薄い生地ではなくしっかりした作り――を揃えて子作りを行ったのだ。

そして結果がどうなったかというと、大成功。

ちなみに和は、恵がウラヌス、和母がネプチューンの時にできた子である―――。

恵(ありえん……妻以外が知るはずが……)

セーラー戦士的子作りに関しては、当然誰にも話したことはない。

同僚、仕事の依頼人、バーのマスター、親戚であってもだ。

恵(では何故……!?本物の妻は今仕事中……目の前にいるのは偽物であることは間違いないのだが……どうなっている……?)キッ!

仕組みを見抜こうと、和の母をギロロと睨み付ける恵。

しかしおかしな点は見当たらない。

和母「…ぁ…ね……」

恵「ん?」

和母「」スゥーッ

恵(!姿が消えていく………………完全に消えた)

恵「……………………!」

恵(あの2人がいない……どころか、私が倒した子たちの姿もない)キョロキョロ

恵「…………今日のところは様子見だった、というわけか……」

恵(……ならばいずれ本気で潰しにくるのだろうな……)

確信に近いその予感に、

恵はキ○タマの裏が痒くなるのを感じた―――。


【恵から少し離れた場所】

咏「じゃあ気を付けて帰ってねぃ」

女性たち「は、はい。失礼します」

咏「……ふぅ~、疲れたねぃ」

良子「少しはバトルをしてもよかったのではないですか?」

咏「んー?それはどうかなー?原村恵をナメすぎじゃね?」

良子「……ずいぶんケイハラムラを買ってますね」

咏「そりゃね。あの能力は厄介だし。しらんけど」

良子「能力……」

咏「相手に百合にまつわる問題を出して、間違えたらダメージ。範囲内の複数人にも出題可能で重ねがけも有効。出題された相手は答えるまで攻撃力が激減……」

咏「これってさー、地味なようで強力なんよ。まず雑学クイズと違って知識がないと正解しようがない。答えを考えてる間は妄想できないから攻撃も封じられるし、答えずに攻撃しても効果は薄い」

良子「なるほど…」

咏「知識で原村に勝てるやつはそういない。次々と出題されたらジリ貧確実ってやつだねぃ。ま、基本能力もかなり高いし」

良子「ワオです…………では東西決戦の際、連合軍はハラムラをどう攻略するつもりだったのでしょう?」

咏「ん~………原村に問題を出させない、あるいは百合妄想させない状態にして、愛宕雅枝の〔生きがいを刈り取る鎌(ペナルティーシックル・弐)〕を叩き込みまくるとかじゃね?しらんけど」

良子「ウープス」

咏「……ま、私らが気にすることじゃないってことで。帰ろう」

良子「イエスマイロード」


【ファミレス近く 裏通り】

貴子「な……会長が……!?」

晴絵「会長を狙った……!?」

健夜「うん。2人に刺客を送り込んであるんだ」

貴子「てめェ……仕事で疲れた会長を襲うとか……せめてビールを飲んで一息つかせてあげてからにするとか配慮はねぇのか外道がァァッ!!」

晴絵(愛宕会長の実力に疑いの余地はない……けど……小鍛治さんたちが使う〔リリース(Lilys×Release)〕によってパワーアップされた人たちが相手だと………)

トシ「……一体何が目的なんだい?」

健夜「…………」

トシ「百合界をけん引する両組織に喧嘩を売って……何がしたいか聞きたい。私はそんなことにも興味を持つんだよ」

健夜「……簡単な話。私たちは……リリーブライドと…」チラ

貴子「…………」

健夜「リリーフラワーガーデンと…」チラ

晴絵「…………」

健夜「その他、百合妄想士を有する組織全てを……」

トシ「っくしゅっ!!っふぁ~…」

健夜「…倒します」

貴子「な……」

晴絵「ん……」

トシ「だと……だよ」

健夜「そして……我々は最強の組織として頂点に君臨し、百合業界を今以上に発展させる」

貴子「て、てめぇは…」

健夜「今日は挨拶代わり。後ほど改めて……本気で相手をさせてもらうね」

貴子(マジかこいつ……)

晴絵「本気で……言ってるんですか?」

健夜「もちろん。今は信じられないかもしれないね。でもいずれわかるよ。私の言葉が正しかったって」

晴絵「…………」

健夜「……それじゃあ、今日はこの辺で…」

トシ「…待ちなさい」

健夜「…………」ピタ

トシ「宣戦布告なら名前くらい名乗るべきだよ。もちろん、小鍛治健夜ではなく……組織名をね」

健夜「…………確かに、その通りですね」

貴子「…………」

晴絵「…………」

健夜「私たちの組織の名は…………『5か2458プロ(こかじすこやプロ)』です」

貴子「!」

晴絵「!!」

トシ「トップがわかりやすくて親切だよ」

健夜「正式名は長いので458プロと呼んでください。ということで、我々458プロはあなたたちを倒して全国を制圧します」

貴子(く……っ、体が動けば……その舐めた口を塞いでやりてェ……)


健夜「……では私は帰ります」クルッ

晴絵(どうすればいい……?今の私じゃ……何も……)

健夜「……大丈夫?立てる?」

女性F「あ……GRAND M@STER……は、はい!」

健夜「よかった。じゃあ帰ろう?」ニコリ

女性F「うっうー!」

貴子「…………」

晴絵「…………」

トシ「…………」

圧倒的な強さを見せつけ、とてつもない目的を表明し、去っていく健夜たちを眺める貴子、晴絵、トシ。

それぞれ思うところがあるのだろう。

無言のまま、しばらく立ち尽くした。

しかし、

貴子(……ナメんじゃ……ねェぞ……このままで終わってたまるかァァッ!)

晴絵(リリーフラワーガーデンを潰すと宣言されて、はいそうですかと言えるわけがない……)

トシ(この悔しさを晴らすためには……スーパーカップ1.5倍しかないんだよ……)

彼女たちの心に絶望や諦めはない。

奮起、気概、ガッツに空腹。

確実に訪れるであろう、458プロとの戦闘に必要なモノをグツグツと煮えたぎらせながら帰路に着いたのだった―――


翌日―――

【リリーブライド本部】

久美子「そんな……私がエステで美顔60分お試しコースを体験している間にそんなことが……」

恵「ああ。只者ではないことがはっきりとわかった」

久美子「会長がピンチだったというのに、肌がツヤツヤになって若返りを実感してた私は……うぅ」

恵「宣戦布告された以上、仕掛けてくるのは間違いない。あとはどのタイミングで来るかだな」

久美子「っ!会長が戦いの時期を考えてた時に、料金のリーズナブルさに大満足して、早速次回予約を申し込んだ私はなんて愚かなの……」

恵「……そんなにいいのか?どこの店か教えてくれないか?」

久美子「会長!今はリリーブライドの将来にかかわる大事な話をしてるんですよ?エステがどうとかいってる場合じゃないです!」

恵「…………そうだな」

久美子「しっかりしてください……あ、タイが曲がってますよ?」

恵「む……」

ホームグラウンドに戻り、いつも通りにセーラー服に着替えた恵。

スカートのプリーツは乱さないように。白いセーラーカラーは翻さないようにしていたのだが、タイが曲がってしまっていたのだ。

久美子「しょうがないですね、もう」クスッ

恵「…………すまない」

久美子「……………………」

恵「…………………………」

久美子「?いえ、ご自分でお願いします」

恵「……そ、そうだな。うむ」キュキュッ


恵「…………これでどうだ?可愛いか?」

久美子「はい!タイは可愛いです」

恵「そうか。ありがとう」

久美子「……それで、リリーブライドはどう動くんですか?」

恵「今のところ、相手の本拠地などはわかっていない。こちらから攻めることはできん。それに話を聞く限り、現時点で勝ち目があるとは思えん」

久美子「!そんな……じゃあただやられるのを待つだけだとでも言うんですか!?」

恵「いや、今のはあくまで現時点での話だ」

久美子「……それじゃ……」

恵「すでに久保君が動いている。来たるべき日に備え、修行を開始した」

久美子「!さすが久保さん……手を出すのが早いだけに動き出しも俊敏です…」

恵「………もしも勝機があるとするなら……それは……」

久美子「それは?」

恵「…………若き百合妄想士たちが……我々の予想を超える成長をしてくれること、か……」

久美子「あ!そうそう、若いと言えば、エステで施術後に肌年齢を測ってもらったら、なんと!」

恵「ほう、何歳若返ったんだ?」

久美子「って、そんなことより、問題なのは458プロについて理解を深めることです!」

恵「……確かにな」

久美子「久保さんたちを倒すほどの実力者なら、今まで名前が知れ渡ってないのが不思議ですよ。しかもプロ雀士なんて目立つ職業の人なのに……」

恵「そうだな」

久美子「……会長は何かご存じないのですか?」

恵「……わからない」

久美子「そうですか……」

恵「ああ」

恵(……私に存在を知られずに実力を磨き上げることは別に不可能ではないが……)

恵(あそこまで実力者揃いの組織が立ち上げられたことに私が気付かぬはずはない)

恵(一体……どういうことなのだ……)


【???】

女性たち(改め458兵)「GRAND M@STER!原稿の送信が完了。受信の連絡ももらいました!」

健夜「そう。お疲れ様です。ありがとう……今日はもう大丈夫だから、解散で」

458兵たち「うっうー!」

テクテクテク..ガチャ バタン

健夜「………………」

咏「……今の用事、同人誌関係っすか?」

健夜「……うん」

咏「ってことは『儚可憐女学院(はかなかれんじょがくいん)』の新刊が近い………うっわ、楽しみすぎ」

健夜「………ありがとう」

咏「完成したら一足先に見せてもらっていいっすか?」

健夜「うん、いいよ」

咏「わあー!ありがたい」

健夜「…………」

儚可憐女学院とは、百合妄想士なら誰もが知る、オリジナル百合同人専門のサークルである。

練り込まれたシナリオが話題で、過去発売された作品はどれも完売。

大手通販サイトでも取り扱われ、その人気は不動であり、儚可憐女学院生――サークルの大ファンである女性たちの通称――は全国に数十万人いるとされている。

作・画ともに健夜が担当しているが本名は名乗らず、作者名は『いち百合好き』という飾り気のないもの。

イベント会場で販売する時は知り合いの子を作者ということにし、健夜は表舞台に一切顔を出さず裏方に徹してきた。

故に小鍛治健夜を百合妄想士だと知る人物は少ない。

では何故、リリーブライドを含む組織に戦いを挑めるほどの戦力を得ることができたのか?

その理由、まず1つ目。

儚可憐女学院生の中に、瑞原はやり、野依理沙、三尋木咏、戒能良子という、百合妄想士として優れた才能を持つ4人がいたこと。

2つ目。健夜の作り上げる作品に心酔し、弟子入りを志願する者が続出したこと。

3つ目。同じ儚可憐女学院生であるプロ雀士たちの百合力の高さに影響され、みんなが己を磨き上げる努力をしたこと。

3つ目。健夜やはやりたちの強さに触れることで、ファン心理や尊敬の念を超え、崇拝にまで達する感情を抱きだしたこと。

その結果、彼女たちの結束はとてつもなく固いものとなり、

原作者である健夜の正体を始めとした秘密は決して漏らさず、

健夜の指示通り研鑽を重ね、健夜の域に達せられるよう目指し、健夜のために健夜を想う。

そのため458プロと名を改め、宣戦布告するまで彼女たちの強さは外部に知られることがなかったのだ。

健夜(やっと……準備が整った。リリーブライド、リリーフラワーガーデン、その他全てを相手に戦える、その時が来た……)クスッ

儚可憐女学院の学院長であり、458プロのGRAND M@STER、小鍛治健夜は、

己の勝利を確信したかのような笑みを浮かべるのだった―――


【長野 山中】

照「………………」(座禅している)

咲「………………」(座禅している)

照「………………」

咲「…………ぅ…」ユラッ..

久「…勝負ありね」

咲「ぁああー……負けちゃったぁ」

照「ふぅ……」

咲「お姉ちゃんすごいよ。まさか伊介様を理事長で落とすとは思わなかった」

照「それを言うなら咲のカプの多さにはビックリした。兎角さんの母と叔母の姉妹百合から始まって、黒組以外の女生徒も組み込むなんて……」

咲「えへへ……だってモブたちが演劇を話題にしてたから……」

久「マイナーカプは私の専売特許なんだけど?」クス

咲「わゎ、ごめんなさい」

久「ふふっ、冗談よ。じゃあ次はどうしましょうか?もう1回イメージトレーニングでも…………あら?」

貴子「………………」

久「…………久保さん、浮かない顔ね?」ヒソヒソ

照「うん………私の交通費を負担してくれたけど、そのせいでお酒買うお金がなくなって怒ってる、とかかな?」

久「いえ、違うわ。元々修行するよう呼び出したのは久保さんだし。それにお金は風越女子の麻雀部の部費で払うみたいだから」

照「…………それ、いいの?」

久「よくないわね。でもさっき聞いたら―――」

貴子『部員。文句言う。私。ビンタする。部員。言うこと聞く。幸せ』

久「――って言ってたわ」

照「……どうして片言なのかな」

久「何やら考え事してたみたいだから」

照「…………そういえば、思いつめた表情をしてる」

咲「うん……今日は『ァァッ』も少ないもんね……」

貴子「…………」

咲の言う通り、『ァァッ』は貴子の元気のバロメーター。

『ァァッ』の数と幸福度は比例する。

『ァァッ』が少なきゃ溜息、猫背。

『ァァッ』が多けりゃ生徒にビンタ。

どちらが貴子かは一目瞭然である。

久「……ま、さっき聞いた458プロの話でしょうね」

咲「……全国を制圧……」ゴクリ

照「それに久保さんを圧倒する強さ……このままじゃ勝つのは無理」

咲「うん……」

久「…………ねぇ」

照「なに?」


久「2人はさ、どうして戦うの?」

咲「部長?」

久「いや、連合軍との戦いはさ、関西弁になるかどうかっていうのがあったじゃない?でも今回は特にそういうわけでもない……」

照「………………」

久「458プロが目指す方向はわからないけど、もしかしたらリリーブライドが覇権を握るよりも百合業界が発展するかもしれないじゃない」

照「………………」

久「2人はどう思ってるのか、なんか気になってね」

照「…………私たちは」

久「うん」

照「……リリーブライドで育ったようなものなんだ」

咲「…………」コクリ

久「え?」

照「この間の戦いのあと、お父さんと話す機会があって……そこで色々と話を聞いたんだけど、私が小さい頃に好きだった百合要素のあるアニメや漫画のほとんどにリリーブライドが関わってたみたい」

久「!!」

照「言うなれば、リリーブライドは私の人生の教師みたいなもの。だからリリーブライドのために戦うのは自然なことなんだ」

咲「私も……お姉ちゃんと一緒です」

久「……そう」

照「それに……」

久「それに?」

照「その時、聞いたんだけど……―――」


~~~~~~~~~~~~~~~

界「照、咲。今、リリーブライドが進めている計画はすごいらしいぞ?」

照「……計画?」

咲「どうすごいの?」

界「なんと…………百合版メモリーズオフの開発プロジェクトだ!」

照・咲「!!!!」

界「すごいだろう!?」

照「…じゃあ……女性主人公でKIDシステムを使える……」

界「ああ!!」

照「すごい……」ドキドキ

咲「時代は進んだねお姉ちゃん。昔はほたると静流お姉ちゃんでカップリングしてたけど……」

照「懐かしい……私は鷹乃と香菜でよく妄想した」

界「もしかしたら百合リメイクもあり得るかもな!旧作ヒロイン全員攻略できるとか」

照・咲「!!」

照「リリーブライド……」

咲「……一生付いていく」コクリ

~~~~~~~~~~~~~~~


照「……っていう感じになった」

久「それが本当なら、大ニュースじゃない!」

咲「はい」

久「百合版メモオフかー。楽しみねー」ニコニコ

照「…………」

久「ん?どうしたの?」

照「……久は?」

久「え?」

照「久はどうして戦うの?」

久「……一緒よ。2人と同じ」

照「一緒?」

久「ええ。私も辛い時に百合に救ってもらったから。リリーブライドがなければ、その百合作品も存在しなかった。だから、ね」

咲「部長……」

照「うん、百合は全てを救ってくれる」

久「ええ。それじゃあ、やると決まった以上は頑張るわよ!久保さんに次の指示をお願いしましょ!」

照・咲「」コクリ

久「久保さん、次は何をしたらいいですか?」

貴子「………………」

貴子(このままじゃ絶対勝てねェ……くそっ……どうしたらいいんだ)

久「?久保さん?」

貴子「……ん!?なんだ?」

久「あ、トレーニングが終わりました」

貴子「あぁ……そうか…………次は…………」

貴子(……何をすればいいのか……わからねェ。こいつらの才能なら戦えば戦うほど強くはなるだろうが……それでもある程度までだろう……)

久「…………」

貴子(くそっ……腹立つ!池田ァッ!今度会ったら腹筋1000回と罰金だ!)

久「……あのー」

貴子「なんだ」

久「もしかして、何したらいいかわからない、ですか?」

貴子「!!て、てめェ!失礼千万だぞ!とんだご無礼野郎だな竹井ィ!!」

久「すみません。でも、そんな感じがしたので」

咲「ぶ、部長……あんまり本当のことを言ったら、お姉ちゃんに交通費の返還を要求されちゃいます……」

照「……お金はない」コクリ

貴子「て、てめェら!?目上を敬わねェ人間のスリーカードかコラァ!!あまり舐めてっとビンタが待ってるぞ!アァン!?」

咲「ひっ……す、すみません…………お姉ちゃん怖いよぉ」ダキッ

照「っ!?さ、咲……///」

咲「お姉ちゃぁん……///」ウルウル

照「……だ、大丈夫。安心して。悪は滅びるんだから……///」ギュッ

咲「うん……///」


貴子「ちっ……眼福じゃねェかよ。萌えさせやがって」

久「ふふっ」

貴子「……ふん、仕方ねェ。ビンタは竹井だけにしとくか」

久「えっ」

貴子「右か左かだけ選ばせてやる」ザッ

久「ちょ、ちょっと待って!」

貴子「ぁん?」

久「私、アイデア持ってます!いいトレーニング方法の!」

貴子「……マジかコラァ…」

久「はい。だからビンタは……」

貴子「……ふん!」クルッ

久「」ホッ

貴子「で?そのアイデアってのはなんだ?」

久「……さっき久保さんから話を聞かせてもらった時に気付いたんですけど、小鍛治さんたちは〔リリース(Lilys×Release)〕という技を使うとかなり強くなるんですよね?」

貴子「ああ……ムカつくことにな」

久「だったら、私たちも〔リリース(Lilys×Release)〕を使えるようになればいいんじゃないですか?」

貴子「……………」

久「………………」

貴子「……………」

久「……あれ?いいアイデアだと思ったん……ですけど」

貴子「竹井コラ」

久「は、はい」

貴子「お前……頭が切れるじゃねェか」ニヤリ

久「あ……」ホッ

貴子「小鍛治プロも言ってたな。『才能の蓋を外せること、外している人がいるということを知るだけでいい』とな!」

久「はい。なので、私たちは条件を満たしてるかなー、と」

貴子「ははっ!その通りだ!竹井……お前のおかげで方向性が見えたァァッ!ご褒美にビンタしてやる!」ズズィッ!

久「いっ!?いえ、大丈夫です!」

貴子「遠慮すんじゃねェぞ謙虚野郎が!ご褒美ビンタの痛みは3割減だ。安心して受ければいい!」

久「いえいえ、本当に!」

貴子「そうか?縁起物なんだがな…………まぁいい。とにかく、これからは〔リリース(Lilys×Release)〕を会得することを目的にトレーニングをするぞァァッ!」バッ!(右手を高く突きだす)

咲「お姉ちゃん……あったかい」スリスリ

照「ん……咲も…………あったかい」ナデナデ

貴子「………………おい。目上の人間がエイエイオーの体勢に入ってるっつーのにてめェら……」

久(!いけない。血管がピクピクしだした!?)

久「お、おー!頑張りまーす!」バッ!

貴子「!ハッ!いい右手挙げじゃねェか」ニヤリ

久(よかった……なんとか怒りをおさめられた)ホッ


咲「お姉ちゃん……」

照「咲……」

久「ちょ、ちょっと2人とも!イチャイチャはその辺にしなさい?」

咲「え?」

照「?イチャイチャしてないけど」

久「………………そう」

久(よく言うわ。見つめ合って2人の世界を作ってたじゃないの)

貴子「よぉーし!じゃあ始めるぞ!!」

照・咲・久「はい」

照「………………」

照(才能の蓋………)

照(久保さんの話だと『限界を超えられるという確信が体全体に染み渡っている状態で、〔リリース(Lilys×Release)〕と言うだけ』らしいけど……)

照(…………うーん……言うは易し、な気がする。どうやったらそんな確信を持てるんだろう…)

咲「わぁあ!!!」

照(!咲……?)チラ

咲「あ、あ……これ、って……」

照「咲……!?」

咲「お、お姉ちゃん。私、リリースできたかも…」

久「す、すごいわ!さっきまでの咲の力とは比較にならないくらい……」

貴子「ああ……その感じは間違いねェ……成功だ」

咲「ほ、本当ですか?」

貴子「おい!どうやったんだ!吐け!」

咲「え?その……お姉ちゃんを……」

照「私?」

咲「う、うん……あのね……お姉ちゃんと……その……こ、恋人になれたら……いいな、って想像して……///」

照「っ!?さ、咲………そんな大胆なこと……///」カァァ...

久「…………」

久(どういうことかしら?咲が照と付き合うのと、限界を超えることになんの関係が……)

貴子「詳しく説明しろ妹ァァッ!!」

咲「は、はいっ!えと、あの……どうなったら私がもっと頑張れるかな、勇気が出るかな、って考えたらお姉ちゃんに行き着いて……そのままもっと想像して……」

貴子「んー?」

久「…………あ」

照「どうかした?」

久「今の言葉で少しピンときたかも……」

照「え?」

久(……元々、能力に関わることは本人の本質だったり、気持ちや経験によるものが大きかった)

久(私の場合は……)

久(両親の都合で……家に1人ぼっちだった時に感じた寂しさを味わいたくなくて……)

久(友達や知り合いをたくさん作ろうとして人当たりをよくしようと頑張るようになった)

久(きっとこの気持ちが〔無数の絆(フラグメーカー)〕に目覚めた理由)


久「………………」

久(……マイナーカプが好きなのは……)

久(姓が変わったり、行きたい進路を諦めざるを得なかったり……どうにもならない現実によって遠回りをしているような気持ちだった時期…)

久(そんな自分は、周りの人より遅れていると焦った。それが真実だと信じたくなかった…………だから)

久(私は苦境でこそ強い……そう思い込もうとした。分の悪い状態でこそ真価を発揮する、他の人たちとはタイプが違うだけだって……)

久(だから王道から外れたカプで妄想するようになった。他のカプより妄想材料が少なくても、私の実力ですごいカプにしてみせようと……)

久「………………ふぅ」

久(……今思えば、若かったなぁ。人それぞれ違って当然だし、スタートが遅れたと言っても、取り返しのつかないほどじゃなかったんだし。って、それは今はいいか)

久(……要は、百合妄想士の能力は精神が影響するのは確か。となれば〔リリース(Lilys×Release)〕を使うためには………)

久「―――――」

『部長!』

『会長!』

『久』


久(……あぁ……なんか、しっくりくるわ)

久(私……仲間に囲まれてるのが……幸せなんだって)

久(そんな中で……悪待ちが得意なマイナーカプ好きの……自然体な私がいる)

久(それが……今の私が思う、一番の……幸せ……)


キュァァァ..

久(あ……これは……)

照「久?」

久「…………〔リリース(Lilys×Release)〕」

照「!!」

シュゥゥゥウゥゥウゥ...

久「………………」

咲「部長!」

貴子「っ!?こいつ……私の背後で会得しやがったのかコラァ!」

久「…………これが……」

久(すごい……力が溢れてくる)

久「……ふふっ」

久(小鍛治プロが強気になるのもわかるわ……こんな力に目覚めちゃったら、〔リリース(Lilys×Release)〕を使えない相手は遥かに格下になるものね)

照「久。一体どうやって…」

久「ん、簡単よ。あなたが一番幸せになる方法を考えればいいだけよ」ニコリ

照「え?」

貴子「どういうことだ!この竹井がァァッ!!」

久「い、今言いましたって。物は試しですから、言われた通りに……」

貴子「……おう」

久(ふぅ……清澄にはいない……というか普通に生きてたら出会わないタイプよね……ちょっと怖い)

照「……幸せ……」チラ

咲「部長すごい……」

照「………………」

照(私の幸せは…………咲と……)

貴子「………………」

貴子(………幸せだと?そんなのは……弱者にビンタすることと……あとは……――――)


~~~~~~~~~~~~~~~

華菜『コーチ!まだまだ頑張るし!』

貴子『うるせェ!』バシッ!

華菜『にゃ痛っ!?』

貴子『…と言いたいところだが……よく吼えたァァッ!!』

華菜『コーチ……』

貴子『来年は……てめェの大会にしてみろこの池田ァがァァッ……』

華菜『は、はいだし!!』

貴子『歯を食いしばれェァァッ!!』バシッ!

華菜『にゃああああ!!』

~~~~~~~~~~~~~~~


貴子(生徒のヤツらが……成長しやがった時、か……)ニヤリ

貴子(この間なんて『まだ足りません!指輪をはめてビンタをしてください!』とか言ったのもいたな。まったく……)

照(咲……生まれた時から傍にいる妹…………可愛い、妹……)

照(私の幸せ……そこには絶対……咲が……)

シュゥゥゥウゥゥウゥ...

貴子「!」

照「!」

照(これは……!)

久(!照と久保さんが同時に目覚めた!)

貴子「宮永てめェ!私の〔リリース(Lilys×Release)〕を真似すんじゃねェ!」

照「い、いえ……そんなつもりは……」

貴子「ふん!まぁいい。どの業界もパクリが横行してるしなァ」

照「…………〔リリース(Lilys×Release)〕自体、小鍛治プロのパクリな気が…」

貴子「聞こえねェ!!」

照「…………ふふ」

照(なんかこの人、子供みたいで意外と可愛い)

咲(母性本能を見せたお姉ちゃんかわいい……けどちょっとヤキモチ……)

照「それにしても…………すごい」

貴子「ああ!マジですげェじゃねェか!あぁん!?」

久「は、はい。そうですね」

貴子「この力があれば……戦う時に…………ん?」

久「どうしました?」


貴子「いや…………上手く力が使えねェ」

照「………………本当だ」

照(妄想のコントロールが難しくなってる)

貴子「クソが!カスタマーセンターに電話して泣くまで怒鳴ってやろうかァァッ!」

久「お、落ち着いてください。これは多分まだ覚えたばかりだから扱い方がわかってないだけだと思います」

貴子「……そうか?」

久「はい。少しずつ慣れていけば大丈夫かと」

貴子「……ふん、気付いてたんだがな」

久「ふぅ……」ホッ

咲「……部長、大変ですね」

久「本当にね……」ハァ

照(でも、この力があれば……前よりももっと戦える。咲を守れる)

貴子「よし、じゃあこの後は〔リリース(Lilys×Release)〕の状態で組手だ。宮永姉妹ペアと竹井と私ペアだァァッ!」

久「え゛」

照・咲「はい」

久「あ、あのー……」

貴子「なんだ?私の対戦相手」

久「いえ……ペア決めに意見があるのとは違うんですけど……学生は学生同士で戦った方がいいかなーと」

貴子「そんなこと言っても学生はもう種切れだろうが」

久「あー……そうだ!最初から気になってたんですけど、沢村さんと深堀さんはどうして来てないんですか?」

貴子「沢村は用事で不参加だ。深堀は…………1人でトレーニングしてる」

久「え、どうして1人で?」

貴子「知らねェァァッ!!!!!!!!!!!!!!!」

久「っ!」キーーーン..

貴子「……あいつも思うところがあるんだろ……私が心配してやったってのに」

久「え?今なんて……」

貴子「何も言ってねァァッ!やるぞオラ!私のビンタは痛ェぞ!」

久「うぅ……」


【長野 公衆便所 個室内】

純代「……………………」(制服を着たまま便座に座っている)

純代(ダメ……)

純代(自分を追い込んでも、ひたすら連続でスカ妄想しても……リリースを会得できない……)

純代(…………私は…………もう成長できないのかもしれない)

純代(宮永さんなんて、少し前まで四天王のレベルに達してなかったのに急成長して東西決戦で大活躍したのに……)

純代(……しかも、私があっさりと敗北した神代小蒔に勝って……)

純代「………………はぁぁ……」

純代(……もはや私なんかよりも宮永さんの方が……)

純代「……っ!」ズキン!

純代(キャプテン……辛いです……あぁ……キャプテンに会いたい………あ)ハッ!

純代(私は何を……キャプテンに頼ろうなんて…………甘えすぎだ……)

コンコン..

純代「っ!!」ドゴンドゴン!!!(正拳突きでノックを返す)

??「ひっ!!?」

純代(くっ……弱気で情けない自分に腹が立つ……)

??「文堂さん?どうしたの?大丈夫?」

??「あ、睦月さん……いえ、ちょっとノックの返りが強かっただけですから」

純代(このままじゃ……458プロとの戦いで足手まといになる………なんとかしないと……)


【岩手】

白望「…………」ダルーン

トシ「……なるほどね」

塞「どうでした?久保さんからメール来ました?」

トシ「ああ。たった今ね」

豊音「わあ!やった!」

エイスリン「ナンテキタ?」

トシ「ふふっ。老眼だから見えないんだよ」

塞「いやいや……だったら眼鏡かけましょうよ。というか、なんで送信したあとに外したんですか」

トシ「女の子には秘密がいっぱいあるからだよ」

塞「……はぁ。で、〔リリース(Lilys×Release)〕のコツについて何かありました?」

トシ「……ふむ……本人が幸せに思うことが関わっているんだとさ」

塞「幸せ?あー、そっか。百合妄想士の場合、限界を超えるとかって、とどのつまりは思い込みによるものだもんね。ポジティブな妄想が有効なのかー」フム

塞「私の幸せは……」

塞(幼女……ビニールプール……スモック…………保母さんになった私。みんなから『さえちゃんせんせーとけっこんするのー!』……)

キュァァァァァ...

塞「!」

白望「早……」

エイスリン「ハヤイ!」

豊音「ちょーすごいよー!」

トシ「ちょっとしたスペクタクルさね」

塞「………あはは。意外と簡単だ。シロもやってみなよ」

白望「…………ん」

白望(私の幸せ……)

白望(私は…………悩んだり、迷ってる女の子の表情が好き………)

白望(真剣であるからこそ、その人の心根が見え隠れするような気がして……)

白望(だから……どのカプ推しかを問いかける。本気で迷うその表情がたまらなく見たいから…………それは嘘じゃない)

白望(でも……一番見たいのは…………私が見たいのは……)チラ

塞「?」キョトン

白望(…………塞の…………ううん、塞が私の隣にいてくれて、それで……――――)

塞「おお!シロも成功した!」

エイスリン「ツギ、ワタシ!」

豊音「エイスリンさん、がんば!」

エイスリン「ウン!」

エイスリン(ワタシノシアワセ…………オンナノコノ、イチャイチャ!!)

キュァァァァァ..

豊音「わぁー!エイスリンさん、ちょー早いよー!」

エイスリン「YES!」ニコリ

塞「あはは……さすがエイスリン」


豊音「よぉーし!次は私だねっ!」

塞「え……あの……豊音は……大丈夫じゃない?」

豊音「え……」ジワ

塞「あ……」

豊音「また……私……仲間はずれ…?」ジワワ

塞「し、シロから言ってよ」チラ

白望「……………やだ」フィッ

塞「ちょ、ずるいって!」

豊音「この前……リリーブライドが危ないって聞いて、私も戦おうって意気込んだのに……決戦の日を教えてくれなくて……置いてけぼりで……」グス

塞「う……」

豊音「私だって……百合妄想士なのに~」ウワーン!

塞「で、でもさ……豊音の力は戦闘向きじゃないでしょ?だから無理に戦わせるのは悪いと思ったのよ」

豊音「だったら……せめて連れて行って欲しかったよー!」

塞「うっ!」ズキン

豊音「さえー……」グシュ..

塞(涙目の豊音……せめて幼稚園に入る前に見れてたら……)ゴクリ

白望「…………」

白望(塞……幼女時代の豊音を想像してるのかな…………ちょっとだけ……ムカっとする)

白望「……豊音、かわいそう……」ボソリ

豊音「シロ……」グス

塞「!ちょ、ちょっとシロ!あんたねぇ」

白望「連れて行ってあげればいい」

豊音「!」ワァ..

塞「でも……豊音の能力知ってるでしょ?」ヒソヒソ

白望「……対象の能力値をパワーアップさせる……」

塞「その通り。それだけなら問題どころか、かなり有効な能力ね……でも豊音の場合は……」

白望「……敵も同時にパワーアップさせるね」

塞「そうよ!範囲内の人間を全員パワーアップさせる!そしてパワーアップした人間の傍に近寄ったらその人もパワーアップする。結局意味ないのよ?」

白望「………………」

塞「それどころか……パワーアップした分だけ倒すのに時間がかかるから、連合軍に人数で負けてるリリーブライド軍には不利な能力。だから泣く泣く置いていったんじゃない」

豊音「…………」シュン..

エイスリン「トヨネ……ファイト」(豊音の背中をポンポンと撫でる)

塞「しかも豊音自身はパワーアップできないから、危険な目に合うだろうし……」

白望「………まぁ、ね」

豊音「ぐす……1人はやだよー……ちょーさみしいよー」

塞「う……」ピクッ

白望(……あ、塞……良心が痛んでる?)

塞(……今ここで豊音に〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕を使って触りまくりたい…………けどさすがにダメよね……)ムラ

白望(…………いや、興奮してるのか)ハァ


トシ「1つ妙案があるよ。豊音が〔リリース(Lilys×Release)〕を使えるようになれば違う能力に目覚めるかもしれない……そいつに賭けてみるのはどうだい?」

豊音「あ……」

トシ「そうすれば、みんなで一緒に戦えるかもしれないよ」ニコリ

豊音「わ、わぁああ……それ、いい!私、頑張るよっ!」

塞「豊音……でもさ、戦うのって危険なんだよ?この前の戦闘でも体を色々触られた人がいるらしいし…」

エイスリン「サエ……ニジュウジンカク!?」

塞「違うよ!自覚はあるし。ただ、ここはあえて経験談をね?」

エイスリン「カガイシャガワガ……?」

塞「う……そ、そうよ!警察が元泥棒から話を聞いてセキュリティを高めるように、私も豊音のために……」

豊音「〔リリース(Lilys×Release)〕」シュゥゥゥウゥゥウゥ..

塞「ええっ!?早っ!」

エイスリン「トヨネ!」

白望「お見事……」

豊音「わわっ……すごい……力がいっぱいだよー」

トシ「やったわね。それで、どんな感じだい?」

豊音「ええっとー…………新しい能力に目覚めたよ?」

塞「えっ!?どんな?」

豊音「んとね。ちょーパワーアップするんだー」

塞「…………」

エイスリン「…………」

白望「………………」

トシ「………………」

塞「誰が?」

豊音「?みんなが」

塞「……今までの能力と、どう違うの?」

豊音「え?だから『ちょー』パワーアップだよー」

白望「………………ちょーパワーアップ……」

エイスリン「ウーン……」

塞「敵も味方も……」

白望・塞・エイスリン「……………………」


豊音「あれ?」

トシ「豊音」

豊音「あ、うん。なぁにー?」

トシ「これ、ゲームボーイアドバンスって言うんだけどね」ハイ

豊音「あー、知ってるー。ピコピコするやつだねー」

トシ「『西原理恵子の殿堂麻雀』っていうソフトが入ってるんだよ」

豊音「なにそれー?麻雀できるの?」

トシ「ああ、そうさ。塔をどんどん登ってごらん。長い間楽しめるよ」

豊音「本当?ちょー嬉しいよー♪最上階目指して頑張るねっ」ニコリ

トシ「ああ」

豊音「早速スイッチオンー…………あれ?点かないよー?」

トシ「電池は自前で用意するものさ」

豊音「ええー……」

トシ「人生舐めちゃいけないんだよ」

豊音「ううー……単3電池ー……」

トシ「単4電池ならこの通りドッサリなんだがね」コンモリ

塞「何に使うんですかこんなに……」

白望「…………」

結果、トシ以外の全員が〔リリース(Lilys×Release)〕を会得した宮守女子は、単3電池を求めて部室を後にしたのだった―――


その頃―――

【長野 宮永家 リビング】

界「……………連絡もなしに急に訪ねてきて…………用件はなんだ?」

晴絵「…………」

界「…………はぁ」

晴絵「…………」

界「いいか?俺たちは仮にも敵同士だ。さらに君は若い女性……その上、俺は既婚者。そして今この家には俺と君の2人きり……」

界(……あれ?この状況、かなりヤバくないか?後ろ暗いことはなくても、誰かに見られたらあらぬ噂が……)ドッ..ドッ..

晴絵「………私を」

界「ん」

晴絵「………………私を……弟子にしてください!」

界「…………なに?」

晴絵「……………」

界「急に何を言い出すかと思えば……」

晴絵「本気です」

界「…………理由は?」

晴絵「…………もっと強くならなければならないからです」

界「それなら〔リリース(Lilys×Release)〕を使えるようになればいいんじゃないか?」

晴絵「…もう会得しました」

界「む」

晴絵「まだ完全に使いこなせてないですけど……」

界「……だったら俺に弟子入りなんてしなくても、〔リリース(Lilys×Release)〕を完璧に扱えるように訓練すればいいじゃないか」

晴絵「いえ!ダメなんです……例え使いこなせるようになれたとしても………小鍛治プロには敵わない」

界「…………」

晴絵「……だから……宮永さんに………『ふたなりグラディエーター』とまで呼ばれている宮永さんに教えを乞いたいんです!」

界「……呼ばれる方は照れ臭いんだぜ」フフッ

晴絵「…………ダメ、でしょうか」

界「………………ちょっと待て」

晴絵「え……はい」

界「………………」

界(キ○タマの痒みよ……今なお続く痒みよ……)

界は目を閉じ、意識をキ○タマへと集中させた。

カユカユカユカユ..

界(ん……この感じか…………ではこの子を弟子にした場合、痒みはどうなる?)

カユカユ......

界(!痒み値が減った……なるほど。俺の本能は答えが出てるようだ)


界「……赤土さん」

晴絵「は、はい!」

界「痒みは君を選んだみたいだ」

晴絵「え……」

晴絵(かゆみ?妄想内の女の子かな?)

界「弟子入りを認める」

晴絵「あっ……ありがとうございます!!」

界「聞いた話じゃあ相当ヤバいことになってるらしいしな。俺もリリーブライドのためにできる限りのことはしてやりたい」

晴絵「は、はい」

界「言っておくが、ふたなりに関しては俺は厳しいぜ」

晴絵「……覚悟はできています」

界「そうか……わかった」フフッ

晴絵「よろしくお願いします。師匠!」

界「!」

界(俺が師匠………)

界「…………ふふっ」

晴絵「師匠?」

界「いや、なんでもねえよ。昔を思い出しただけだ。俺の師匠のことをな」

晴絵「え?その人は一体…」

界「そうだな……いずれその話もしてやるさ。だが、今はそれよりも訓練だ!」

晴絵「あ、はい!」

界「覚悟しろよ……連日の疲れマラでふたなりっ娘が痩せこけるまでしごいてやるぜ!」

晴絵「よろしくお願いします!!」


【大阪 ファミレス】

洋榎「……おかしい」

竜華「怜~♪」(怜を膝枕)

怜「りゅーかー……」スリスリ

憩「んー、ファミレスのハンバーグってめっちゃ美味しいわぁ」ニコニコ

洋榎「マジでおかしいんや」

竜華「と~き~♪」ナデナド!

怜「くすぐったいてー。撫でんといてぇや」モジモジ

憩「うちは人参も食べるでー。もぐもぐ……」

洋榎「…………」ポチッ

ピンポーン

店員「お待たせいたしました」スッ

洋榎「…………あの、店員さん」

店員「はい」

洋榎「この子ら、全然うちの話聞いてくれへんねんけど」

店員「は?」

洋榎「どないしたらええんやろか?」

店員「ええと……」

憩「あ、この人の言うことは気にせんといてください」

洋榎「え?ちょ…」

憩「コーラ1つお願いしますぅ」

店員「かしこまりました。少々お待ちください」テクテク...

洋榎「お、おい!なんで帰すねん!」

怜「常識的に考えて、注文以外のことで店員さん呼ぶのは違うやろ?」

洋榎「う」

竜華「もう高3なんやからちゃんとせんと」

憩「ほんまやで」

洋榎「お、お前らがうちのこと知らんぷりするからやんけ!めっちゃ寂しかってんぞ!」

怜「んー……なんか『大変やったなー』とか『おかしい……』とか、何があったか聞いてオーラがめっちゃ出てて……誘いに乗るのが癪やってな」

洋榎「ぐうう……」

憩「うんうん。聞いてほしかったらストレートに話したらええやん?」

竜華「そやな。回りくどいで?」

洋榎「…………いや、さっきまで話しかけてんのに返事せえへんから…………って、まぁええわ。ほなもっかい話すな?実は~…」

怜「ぐーぐー」zzz...

憩「むにゃむにゃ……」

竜華「すー……」コクリコクリ..

洋榎「って聞けや!!」


竜華「あははは」

憩「いやー、今のはベタやけどお約束やし。なぁ?」

怜「せやな。それにちょっと誘ってるところあったやん。実は~、とか間を作ってたし」

洋榎「……ほな今度はマジで話すで?実はうちのおかんが…」

店員「コーラお待たせしました」

洋榎「お前もかい!」

店員「っ!?」ビクン!

洋榎「あ……すんません……つい……」

怜「ふむ。『実はうちのおかんがコーラお待たせしました』と……続きは?」

洋榎「ちゃう!おかんとコーラは別問題やから」

怜「えー?監督かてコーラは飲むやろ?」

洋榎「んー…どっちか言うたらペプシかなぁ?」

怜「あー……言われてみればペプシのロゴみたいな顔してはるもんな」

洋榎「あんなカラフルな顔色してるかぁ!どこがどの部分やねん!」

怜「似てるけどなぁ」

洋榎「あれが顔やったら色的に絶対体調おかしいやろ!心配や!」

竜華「怜ー。脱線させすぎやで?」ナデーデン

怜「……そやな。なんか反応ええからついボケてもうた」

憩「その気持ちわかるわ~」

洋榎「……あー、もう。今度こそ話すで?うちのおかんなんやけど、妙に変やねん」

怜「どういう風に?」

洋榎「急に瑞原はやりファンになってん」

憩「?」

怜「急に?」

洋榎「そうや。今まではテレビに瑞原はやりが出とっても反応せえへんかったのに、グッズとかめっちゃ買うてきて……普段は節約にうるさいんおかんがやで!?」

怜「……そら確かに変やな」

洋榎「しかも……瑞原はやりのこと『金本よりも、八木よりも好きや』って」

怜・竜華・憩「変や!!」

洋榎「せやろ!?」

怜「隙あらば六甲おろしを歌うあの監督が……」

竜華「うん……百合とほぼ同レベルで阪神を好きなはずやのに……」

憩「……これは何か怪しいなぁ」

洋榎「…………リリーブライド、か?」

怜「?どういうこと?」

洋榎「いや、この間の戦いでおかんにやられたヤツが反撃に出たとか……そんなんちゃうかな?」

怜「………………」

竜華「えー?監督がそない簡単にやられるかなぁ?」

洋榎「む、そらそやな……」


怜「………………あ」

洋榎「ん?園城寺?何か思いついたん?」

怜「いや、このポテトカロリー高いなぁ思って」

洋榎「この流れでおかんよりメニュー気になる!?」

竜華「もー……怜?」

怜「ついやってもうた」

洋榎「まぁええわ。それでー…………なんの話やったっけ?」

怜「ファミレスのハンバーグがめっちゃ美味しい」

洋榎「だいぶ前や!そこからもっかいは二度書きが長すぎるわ!」

憩「園城寺さん、話が進まへんよ?」

怜「……そやな。ちゃんと話しよう?な、洋榎?」

洋榎「……なんで諭すような言い方やねん。うちが悪いみたいやないか」

憩「愛宕さんも。ほら続きお願いします」

洋榎「……それで……おかんに何があったんかを……」

♪~

憩「あ、電話や……もしもし」

洋榎「また話途中で…………世界はうちの敵なんか……?」

怜「何言うてんの。そんなわけないやろ?世界が洋榎の敵なんや」

洋榎「おんなじや!今うちが言うたことなぞってるだけや!漢字の書き取り練習か!」

怜「………………漢字の書き取り練習………うーん……このツッコミって……どうなんかなぁ」

洋榎「あっ…………いや、ちゃうねん。今のは……」

怜「漢字以外もなぞり書き練習するしなぁー。なんで漢字限定にしてまうのか……」

洋榎「そ、そんなん言いなや。ほな園城寺やったらなんてツッコむねん」

怜「えっ?」ドキッ

洋榎「行くで?『世界は私の敵とか大げさやで?世界が園城寺の敵なんや』」

怜「そ………あー……」

洋榎「…………」

怜「…………りゅーかっ!」ボソッ

竜華「こら!憩ちゃんが電話中やから静かにせなあかんで?」

怜「…………」コクコク

洋榎「園城寺!ずるいで!」

怜「……誰からの電話やろう?私らは今大変なことに巻き込まれてるのかもしれへんな……」キリッ

洋榎「くぅ……シリアスいれんなってー!もっとボケていこうや!」

竜華「気になるなぁ」

洋榎「うちの味方はおらんのか……店員呼ぼかな」


【霧島神境】

巴「ふぅ……やっとお掃除終わった」

全裸初美「お疲れ様ですよー」タタタ

巴「あ!もう!ハッちゃんったらまた裸で……服を着なさーい!」

全裸初美「服なんて飾りですよー!」

巴「うぅ……全然言うこと聞いてくれない……」

春「言うだけ無駄。自由にさせてあげるといい」パリポリ

巴「…………お掃除終わったばかりだからここで黒糖食べないでね?粉がポロポロ落ちてるから」

春「……善処する」ポリポリ

巴「霞さんに言いつけちゃうよ?って……あれ?霞さんは?」

春「電話…」

巴「どこに?」

春「……愛宕洋榎に電話って言ってたけど……」

巴「けど?」

春「出なかったから荒川憩にかけるって言ってた」

巴「??どんな繋がりなんだろう」

春「わからない…」

巴「ふーん」

霞「…………あら、そうだったの?」ウフフ

憩『ごめんなさい。充電忘れてそのままらしくて……』

霞「いえいえ。気にしないで……ということは、雅枝さんも同じ理由かしら?」

憩『どういうことです?』

霞「実はね、雅枝さんにお話があってお電話したのだけど繋がらなくて……」

憩『なるほど。それで次は洋榎さんにかけたんですね』

霞「ええ」

憩『それやったら、うちの方から会長に用件を伝えましょうか?これから会う予定なんです』

霞「ありがとう。でも大丈夫よ。用件はお礼の電話なの。機を改めてかけなおすわ」

憩『お礼?なんか貰たんですかぁ?』

霞「ええ。お人形を」

憩『………人形?』

霞「そうなの」チラッ

霞が部屋の隅へ視線を向ける。

そこには、巫女装束に身を包み、小さな人形を手に微笑んでいる小蒔がいた。

その人形は、愛宕雅枝の〔ヤミの鎌(ヤンデレシックル)〕によって精神を病んだ弘世菫――通称ヤンスミ――から照の身を守った人形である。


小蒔「えいっ」ポチッ

照人形『三連覇は、私たちの一大目標です!そのためにも、明後日の準決勝は負けられません』

小蒔「照さん……素敵な声です……///」モジモジ

照人形『今年も、手強いチームが多くて、試合がとても楽しみです』

小蒔「確かに………永水の神代さんとか……な、なんちゃって……///」

照人形『一生懸命頑張ります!応援、よろしくお願い致します』

小蒔「はい!応援します!!」ニッコリ!

音声機能を備えたそれは、霞の手によってヤンスミ期が終了したあと、白糸台にて保管されていた。

その後、東西決戦が終わり、小蒔が照に敗北……そして失恋したことを雅枝は知った。

そして雅枝は、『自分が小蒔を巻き込まなければ失恋することもなかったかもしれない』と責任を感じ、何かできることはないかと考え、照人形をプレゼントするという結論へたどり着く。

逆効果になるかもしれないという恐れはあったものの、他にいい手も思い付かなかったため、雅枝は敵である貴子をパシらせ、照人形を入手した。

一方、小蒔は東西決戦後、ずっと落ち込んだまま過ごしていた。

霞の言葉も、巴の配慮も、春の黒糖も、初美の全裸も、小蒔の心を癒せなかった。

浮き輪を与えると膨らませて装着するものの、そこで終わり。

中の空気の大半が溜息であり、浮力はあるが笑顔はない。全然、まったく浮かばれない。

どうしたものかと頭を悩ませる霞たち。しかしいい案も浮かばず、沈黙が部屋を支配する。

そんな時間がどれくらい続いただろうか?静寂は、青い服を来た女性の来訪によって破られた。

その人物の正体……それは、宅急便だった。

止まったら死ぬとばかりに常に走り続け、ハンコを押すと荷物を置いていくシステム。

その女性ドライバーによってもたらされた段ボールによって、事態は好転する。

装着している浮き輪に邪魔されながら、なんとか段ボールを開ける小蒔。

中にあったのは照人形。ボタンを押したら照の声。

『わああ……』

憂鬱そうな表情で、ずっと落ち込んでいた小蒔。

そんな彼女はこの日、消え去った。

まるで宝物を手にしたかのように照人形を抱え、幸せそうな笑顔でボタンを押し、会話をする小蒔。

愛宕雅枝による梱包は割と雑だったが、小蒔を思いやる気持ちは確かに届いたのだった。

憩『うーん……なんやようわからんけど……』

霞「ううん、こちらの話だから。〔リリース(Lilys×Release)〕の練習中だったらごめんなさいね?時間とらせちゃって」

憩『……〔リリース(Lilys×Release)〕?なんですそれ?』

霞「あら?雅枝さんから聞いてないかしら?」

憩『?はい、全然。それ、なんなんですか?』

霞「私は久から聞いたのだけど……――――」


【長野 商店街 外れ】

458兵A「いないわ」キョロキョロ

458兵B「ここにいるという情報だったけれど……」

458兵C「もう一度手分けしてを探しましょう」タタタ

………………

桃子「ふぅ……やっと行ってくれたっすか」

桃子(急に襲い掛かってくるとか……ありえないっす。私のステルスも通用しないし……)ハァ

458兵D「いたぞ!!」

桃子「っ!?」

桃子(見つかったっす!逃げないと……)

458兵A《させないわ!苺と満天、蓮華は今日もプレイに夢中!》

桃子(ぐぅ……っ!ストレートなのできたっすね……にしても………この人たち、なんて強さ……)タタタ

458兵B「まだまだっ!」

桃子(ステルスが効かない以上、私に勝ち目はないっす……なんとか逃げ切る方法を…)タタタ

458兵C「きゃああ!」ドサッ

桃子「?」チラッ

458兵B「うぅ……」ドサッ

458兵A「あ……あぁ…」ドサッ

桃子「!」

桃子(あの人たちをあっという間に倒した?一体誰が……)

??「大丈夫ですか?」

桃子「あ……あなたは……沢村さん」

智紀「…………」コクリ

桃子「あんな強い人たちを瞬殺とか……さすが四天王。沢村さん、超強いっすね」

智紀「……まだ使いこなせてないとはいえ、一応〔リリース(Lilys×Release)〕を使ったから」

桃子「〔リリース(Lilys×Release)〕?」

智紀「そう。今日はそのことを東横さんに伝えにきた」

桃子「?」

桃子(どういうことっすか?何がなんやらチンプンカンプンっす……)

智紀「……とりあえず、付いてきて」

桃子「…………はいっす」


【龍門渕家】

智紀「透華。東横さんを連れてきた。このあとはどうする………?」

透華「………………」

一「…………………」

桃子「?なんか空気が重いっすね」

智紀「……何かあった?」

透華「………………」

智紀「………………透華?」

一「………………」

桃子「??」

智紀「……何があったの?」

透華「…………たった今、ハギヨシから連絡がありましたの……」

智紀「?うん……それで?」

透華「………ハギヨシが……」

一「………………」

透華「ハギヨシが…………458プロの一員としてわたくし達の敵に回る、と…………」

智紀「!!?」

この日、百合妄想士たちを巡る環境は大きく変化した。

〔リリース(Lilys×Release)〕という力であったり、

新たな戦いへの切っ掛けであったり、

仲間たちとの関係の変化であったり……。

それらが1日の間に起こったのは偶然か、はたまた必然か。答えは誰も知らない。

そして、彼女たちの行き着く先に何が待っているのかも……やはり誰も知らない―――


1ヶ月後―――

【長野 公園】

晴絵《おおおおおっ!!》シュ

界《ふんっ!》

フニュン!

界《甘い。俺のふたなりっ娘の包皮を簡単に貫けると思うなよ。今度はこっちからいくぜ!》ブンッ!

界(このままふたなりっ娘の尿道へ亀頭をねじ込む!!)

晴絵「!!」

界《もらったぁ!》ゴゴオッ!

ヌルン!

界(な……っ!?)

晴絵「………………」ニヤリ

界《が、我慢汁で滑らせただと!?いつの間に……》

晴絵《私の狙いはここから………くらえ…ッ!》ゴオッ

晴絵(師匠の勢いを利用して……ち○ぽの付け根を……一点突破ぁああ!!)ブオッ!

ドズン!

界《ぴぎゃああああああ!!!》

晴絵(よしっ!勝った!!)

界《……なんてな》

晴絵「!?」

界《ギリギリ間に合った……》

晴絵(な……っ!剥けてた皮がいつの間にかリセットされてる!?そのせいで私の攻撃は皮で滑って……)

界《これで終わりだ……〔 ち ○ ぽ 剣 山 ( エ タ ー ナ ル ソ ー ド ダ ン ス )〕》

晴絵(!これは……地面から無数のち○ぽを生み出す……師匠の……)

チポポポッポ!

晴絵「が……ぁ……」

界「…………」

晴絵「うぅ……」ドサッ..

界「…………ふぅ……」

晴絵「…………また……負けた……」

界「……いや、今日はマジでやばかったぜ。前よりも汁の使い方が上手くなったな」

晴絵「師匠……」

界「たった1ヶ月でここまで成長するやつを俺は知らないぜ」

晴絵「……いえ、師匠の教え方がよかっただけですよ。それに……」チラ

界「…………」チラ


照《にこりんぱなに割り込む真姫ちゃんが一番好きなのは、やはりにこちゃんで……!》

咲《練習後の穂乃果のお腹を舐める雪穂!しょっぱいようで、甘い口どけ……!》

久《A-RISEの3人は矢澤こころの肢体を思う存分堪能した後、次のターゲットとしてフミコを選んだ……!》

晴絵「あの子たちの方がよっぽど強くなってます。1ヶ月前よりもずっと……」

界「……ああ、そうだな」フフ

晴絵「…………それにしても」

界「?」

晴絵「………一体いつになったら458プロは動くんでしょうか?」

界「あぁ………」

晴絵「あれから全く音沙汰なしです」

界「確かにそうだな。俺たちにしてみれば鍛えることができてありがたいが……」

晴絵「……リリーブライドが進めていた百合系雑誌の企画も中止になってしまったようですし……もしかしてそれが狙い?」

界「かもな。458プロがどう動くかわからない以上、出版社に迷惑がかからないようにする必要があるからな……」

晴絵「でも、この空白期間に何の意味が……」

♪~

界「む。電話か…………埴淵さんから?」ピッ

晴絵「……!」

界「もしもし」

久美子『……たった今、458プロから動画が届きました』

界「!それで……内容は?」

久美子『観てもらった方が早いと思います。パソコンの方で確認してください』

界「そうか……わかった。観終わったらかけなおす」

久美子『はい。お願いします』

界「…………」ピッ..

晴絵「…………師匠?」

界「………俺は先に戻る。みんなをリビングまで連れてきてくれ」テクテク

晴絵「あ、はい」

界(458プロ……どう動く?)


【宮永家 リビング】

照・咲・久・晴絵「………………」

界「……再生するぞ」カチッ

咏『どもー、こんちわ。お久しぶりだねぃ』

良子『お待たせしてソーリーですー』

はやり『はやりに会いたくて会いたくてしょうがなかったみんなー!ほんっとごめんねっ?』

理沙『あやまる!』

照「………………」

はやり『なんでこんなに時間がかかったのか……はやり、わかんなーい!咏ちゃん知ってる?』

咏『こっちにも事情があるんじゃね?しらんけど』

良子『すっげーミステリーですね』

理沙『摩訶不思議!』

久「……話が進まないわね」

晴絵「それに、小鍛治プロがいない……」

健夜『その答えは私の方から発表するね』スッ

晴絵「!」

健夜『……と言っても、大した理由じゃない。この1ヶ月間に私たちがしていたのは、リリーブライドやリリーフラワーガーデンを倒したあと、458プロがすぐに活動できるようにするための地盤作り……それだけ』

界「!俺らに勝つこと前提か……」

界(ずいぶん舐めてるじゃねぇか……)

健夜『……それと、この前は全国を制圧って言ったけど、ちょっと予定を変更したので改めて言うね』

照「?」

健夜『458プロが狙うのは……全国ではなくて…………世界』

咲「え……!?」


健夜『我々458プロは、あなたたちを倒したあと、世界制覇を狙います』

久「な……っ」

健夜『そのための準備に1ヶ月かかった、というわけです』

晴絵(……もしそれが本当だとしたら、たった1ヶ月で準備を終わらせたというニュアンスの方が強いぞ……それこそよほど有能な人間じゃないと不可能だ……)

健夜『あなたたちは知らないだろうけど、458プロには誰でも知っているであろう有名漫画家が多数在籍しています』

健夜『その他にも、音楽関係者やアニメ関係者……才能あふれる方たちがいる……』

界(儚可憐女学院生か……あれほどの超人気サークルならありえない話じゃない)

健夜『オリジナル百合作品を制作するプロダクションとして、458プロは世界へ羽ばたきます………海外へ発信するための翻訳も良子ちゃんがいれば問題はありません』

良子『イエスイエッス』

照(……あの人の訳で、感情の機微とか細かいニュアンスが伝わるのかな……)

健夜『……というわけで、ようやく準備が終わりました』

照「…………」

健夜『ですので』

咲「…………」

健夜『改めて、宣戦布告をします』

久「…………」

健夜『我々458プロは』

晴絵「…………」

健夜『あなたたちを倒します』

界「……………」


【龍門渕家】

健夜『リリーブライドもリリーフラワーガーデンも……宮守女子も野良百合妄想士も……倒します』

透華(……458プロの海外進出の準備をしたのは間違いなくハギヨシですわ。ハギヨシなら顔がききますし交渉能力にも長けていますもの…)

透華(それに英語以外の言語も多数扱えるから、翻訳担当としても活躍の場がある……ハギヨシを取り込み、我々が目指している道の先を行くとは……屈辱ですわっ!)

透華(そして……小鍛治さんの強気な姿勢から察するに、龍門渕グループの助力なくとも組織を維持できる資金源も得たはず……いえ、小鍛治さんを始めとした一流プロたちが集まっている以上、スポンサーはいなくても十分ですわね)

健夜『とは言っても、何もあなたたちから百合を愛する権利を奪うことはしません』

健夜『ただ、トップが変わり、方針が変わり、業界が変わるだけです』

智紀(……この人の本は読んだことがある。どれも素晴らしい話だった。百合を愛しているのは間違いない……でも……)

智紀(だからといって、こんなやり方で透華たちが支えてきたものを変えられてしまうのは…………嫌)


【大阪】

健夜『あ、そうだ。もし458プロへ入りたい方がいたら是非申し出てくださいね。歓迎します』

洋榎「アホか。誰がそんなんすんねん」

怜「……せやな。リリーフラワーガーデンがリリーブライドに突っかかるんは、ある程度認めてるからこそ……ただ強いっちゅうだけの理由で横から全てをかっさらわれるんは我慢でけへん」

竜華「え?けどスポンサーは強さが全てやって…」

洋榎「ちゃうちゃう。どっちのこともよう知ってるからそんな感じに言うてるだけや」

憩「そうやな。大体『関西関東どっちが主役やねん』って戦うのがケンカップルみたいでよかってん。それを横から出てきてひっくり返す……やってることは百合を邪魔する婚約者の男みたいなもんやしなぁ」

洋榎「ああ。おかんもそう思うやろ?」

雅枝「そんなことより、はやりちゃんをもっと映さんかいボケカメラが……小鍛治はもうええねん」チッ

洋榎・怜・竜華・憩「………………」


【奈良 憧の家】

健夜『それでは……お待たせしました。戦いの日取りを発表します』

憧「何よ……急にケンカ吹っかけてきたかと思えばしばらく音沙汰なくて……それで今度は日取り指定とか……勝手すぎるってーの」

灼「同感。この人たちを認めることはできな…」

穏乃「うわ、このお菓子うっめー!」モグモグ

灼「……穏乃。今は大事な動画を…」

憧「えへへ。しずが好きそうだなって思って買っといたんだー♪」

穏乃「ホント!?ありがと、憧!」ダキッ

憧「うん///」

灼「………………」

灼(…………ハルちゃん……会いたいよ……はやくふたなり修行から帰って来て…)


【長野 久保家】

健夜『日時は2週間後の土曜…』

貴子「…………おい深堀ァァッ!ちゃんと観てんのかコラァ!」

純代「……はい…………観てます」

貴子「ちっ……ここんとこずっと便所にこもりやがって……そんなんで戦えんのかよ」

純代「………………」

貴子「……あんまり腑抜けてっと、ビンタしてやらねェぞ!」

純代「………………」


【宮守女子高校】

健夜『場所は○○県、○○……』

トシ「なんだって?こりゃまた厄介だね」

塞「え?それはどういうことですか?その場所に何か?」

トシ「知らないよ」

塞「…………は?」

トシ「何を言っても厄介と言うつもりだったのさ」

塞「そうですか……」

エイスリン「サエ!ホットク!」

塞「ん、そうする」

トシ「放任主義は嫌いじゃないよ」フッ


【霧島神境】

霞「どうやら458プロから動画が届いたらしいわ」

小蒔「そうなんですか?」

全裸初美「どんな内容か、気になりますよー」

霞「ええ、私もよ。でも……」

小蒔「?」

霞「パソコンがないから観られないわね」

小蒔「……わーぷろじゃダメでしょうか?」

霞「うーん……無理ね。それにもしワープロで観られるとしても、ワープロもないから……」

小蒔「残念です……」

全裸初美「……霧島神境にもハイテク機器が欲しいですよー」

霞「………………………」

小蒔「……………………」

全裸初美「………………」


【東京 リリーブライド本部】

久美子「………これはどう動くべきでしょうか?場所がわかった以上、所定の日の前に攻め込むのもありでしょうか……」

恵「……いや、そこが本拠地だというならともかく、ただ戦場として用意しただけの可能性もある。ならば意味がない」

久美子「なるほど……」

恵「それにこちらが458プロの指定した日時に従わなかった場合、向こうもなりふり構わず攻めてくる可能性がある。いつ何時攻撃されるかわからないという状態では、戦いは泥沼化するのみだ」

久美子「あ、そうか……その場合、ただでさえ連携がとれてないリリーフラワーガーデンとの共同戦線はさらに混乱するだろうし、向こうは各個撃破を狙えて有利になる……」

恵「458プロは絶対に勝利するという自信があるのだろう。戦況を有利に運ぶよりも、我々をまとめて倒すことを優先した。ならばここは誘いに乗り、こちらの持つ最大戦力でぶつかるのがベストだろう」

久美子「……そうですね……でも、どうしましょう」

恵「…………」

久美子「敵である458兵は全員〔リリース(Lilys×Release)〕を扱えるようです。それに引き換え我がリリーブライドの子たちは……半数程度しか会得できた人はいませんでした」

恵「…………そうだな」

久美子「ある程度の才能が必要とはいえ……宮永さんたちはみんな使えるようになったのに……」

恵「……簡単な話だ。彼女たちが優れていた、それだけのこと」

久美子「…………ですが……」

恵「……今さら何を言っても始まらん」

久美子「…………はい」

久美子(でも……みんなからの情報では〔リリース(Lilys×Release)〕を使う前の458兵はさほど強くはなかったみたい。ということはLB軍が458兵より遥かに劣ってるわけじゃない……なのに458兵は全員〔リリース(Lilys×Release)〕を使えて、LB軍は半数しか使えない……これはどういうことなんだろう……)

恵「…………」

健夜『そこで決着を付けましょう。では、ごきげんよう』ニコリ

健夜『………………』

健夜『………………ふぅー、緊張したぁ……』

良子『ベリーお疲れ様ですー』

健夜『お疲れ様。あ、カメラ止めてくれる?』

はやり『あれれー?これどう止めるのかな?咏ちゃん知ってる?』

咏『いや、知らんし』

良子『インポッシブル。私に任せてくださいー。サポートセンターに電話します』

理沙『先に説明書!』

健夜『いや、ただボタン押すだけ……って、私が押すからいいよ』テクテク

咏『ていうか、このやりとりも映ってね?大丈夫っすか?』

健夜『あっ……じゃあ編集してもらおうか』

はやり『えー、これはこれでいいと思うけどなっ☆ね?咏ちゃん』

咏『んー……どうっすかねぃ』

健夜『……ま、まぁ、いいや。切るね』

プツッ...


【長野 龍門渕家】

一「……終わったね。最後、すごいグダグダだった……」

智紀「うん…」

透華「…………」

一「透華?どうしたの?」

透華「いえ……なんでもありませんわ」

透華(何かが引っかかりますの。『編集してもらおう』という言葉……これはつまり、この場にいない人物へ頼むという意味でしょう)

透華(もし頼まれたのが458兵なら、終わりの部分は編集で切られてるはず。でもこの動画では残っている。その理由は…)

透華(…………あ)

透華(もしかしたら……編集を頼まれたのはハギヨシなのでは?)

透華(ただ……ハギヨシが編集したのなら、なおさら完璧なはず……)

透華(…………一体、どういうことなんですの?この最後の動画にはどのような意味が……?)ウーム


【東京 リリーブライド本部】

久美子「………2週間ですか……できる限りのことをしないとですね」

恵「……そうだな」

久美子「戦闘タイプじゃない私にできることは通信でサポートするくらいですけど……頑張りますね!」

恵「ああ、期待しているよ」

久美子「?会長……元気ないですね?何かあったんですか?」

恵「ない。私はいつも通り……そう、いつも通りだ……」

久美子「………………」

恵「……動画は終わった。今日のところは帰るとしよう。久美子君も用が済んだら帰宅したまえ」

久美子「はい……」

久美子(どう見ても元気ないよ……でも、会長は理由を言いたがらない。だったら……)ニヤリ

ポチッ..ゴオッ!

久美子(床からの強風で、パンチラを狙う!)

恵「っ!?」

久美子のボタン操作により、恵の足元の床から強風が発生する。

そこから導き出されるのは、

『帰路の途中+床下強風=スカートめくれる』

『スカートがめくれる≒パンツが出る』というもの。

久美子(常人ならパンチラ必須!会長、どう凌ぎますか!?)フフフ

恵「……!!」

恵がとった防衛方法は、両手によるスカート押さえ。オーソドックスタイプ。

並の人間なら、間に合わずにパンツをご披露してしまう愚策だろう。


久美子(でも、会長の場合はハンドスピードがすごいから間に合っちゃうんだよね。あっという間にスカートを抑え込んで……)

恵「……あ…………」

久美子「ぇ……」

恵「…………」バサッ..

久美子「………………」

恵「…………では、お先に失礼する」テクテク..

久美子「………………」

久美子(今…………ほんの少しだけど…………パンツが…………見えた?)

あまりの出来事に、久美子は放心する。

常に恵のパンチラを狙い続け、様々な手で仕掛けてきた久美子だったが、

実際のところは、恵の鉄壁さを再確認したいがために行っている、という側面が強かった。

恵が信念を曲げない限り、リリーブライドは負けない。そう信じているから。

そんな恵が、初めてパンチラを許した。

ほんのわずかだが布地が見えた。もちろんお尻もちょっぴり見えた。

その事実が久美子にもたらしたのは、恵に勝利したという喜びなどではなく、458プロとの戦いを前に暗雲が立ち込める予感と、

原村恵の信念が弱まってしまったのかもしれないという疑惑だ。

久美子「…………会長……」

ただ、久美子はまだ幸せだったのかもしれない。

パンチラを見たとは言っても、見えたのはわずかであり、しかもお尻部分だった。

もし正面から見ていたら、きっと慟哭しただろう。

何故なら……歩く清楚と呼ばれた原村恵のパンツ、その股間部分に尿漏れの跡があったからだ。

年齢による避けがたい事情……しかしそれはセーラー服には相容れぬもの。

どれほどプリーツを乱さぬように歩いていても、一歩一歩が尿漏れと共にあるのでは、清楚とは言えない。

ピカピカに磨かれて光る床の反射によって自らの過ちを目の辺りにしてしまった恵は、

久美子以上に絶望を感じつつも、心の内に封じ込め、家路へ急ぐ。

今はとにかく熱い風呂に入りたい……。それだけを考えて―――


【長野 宮永家】

照「………………」

咲「……お姉ちゃん」

照「ん?」

咲「…458プロは強そうだし、怖いけど……頑張ろう」

照「………そうだね」

照(今回の戦いに勝てば、きっとしばらくは静かな生活に戻るはず)

咲「だって、458プロに勝ったら……」

照「……うん。戦いが終わったら、咲と一緒に…」

咲「百合版のメモオフが制作されるもんね!」

照「どこか遊………え?」

咲「お父さんが言ってたでしょ?リリーブライドが企画してるって!メモオフの雰囲気そのままに、女性主人公でヒロインを落とせるとか最高だよね!」

照(…………私は咲のことを考えてたのに……咲は旧KID、現5pb.のことを考えて……)

咲「すっごく楽しみだなぁ。早くやりたいなぁ」ニコニコ

照「………………私はやらない」プイッ

咲「お姉ちゃん!?」

照「私は1人でメモオフみっくすをやる」

咲「そんなぁ……わざわざPS2を押入れから出す手間をかけてまで1人で……?」

照「そう。アカイイト以外で使うチャンスだし」プイー

咲「……うぅ……そんなお姉ちゃんもかわいい……けど、私……寂しいよぉ……」

照「……私の方が先に寂しかった」プイ

咲「うぅ……」

久「……ちなみに、アカイイトはPS2アーカイブスで配信されてるからPS3でプレイできるわよ?」

照「知ってる。でもPS2でやる」プーイ

咲「初志貫徹なお姉ちゃんかわいい……」

界「……2週間後、か……」


ついに運命の日が決まった。

来たるべき時に備え、

マリみてを読み返す者、

姉に萌える者、

黒タイツを履く者、

嫁を整列させる者、

生徒をビンタする音、

個室便所を占領する者、

ちょー○○だよー、な者、

しず……大好き……と言う者、

麺をすすり、むせるトシ……。

それぞれが様々な想いを胸に、2週間を過ごした―――


【竹井家 玄関】

久「………………」

久(そろそろ出発の時間ね。あ、そうだわ。チェックリストチェックリスト)パサ

久「んーと……」

『バナナと牛乳かヨーグルト』

久「バナナよし」キュッ

『洗眼薬と頭痛薬』

久「両方ともよし」キュッ

『トイレ』

久「トイレよし」キュッ

『冷え性対策』

久「これもよし」キュッ

『服装』

久「んー」チラ(鏡を見る)

久「むー」ヒラヒラ(スカート揺らして)

久「えいっ」クルッ(1回転)

久「」ニコッ

久「…………って、何やってんだろ私///」カァァ

久(や。別に可愛いとか言ってもらおうとしなくていいのよ……服装よし)キュッ..

久「あとは……」

『もしもの時のために自爆できる能力を身に付けていない。あるいは爆弾のような物を作って持ち歩いていない』

久「死亡フラグ折り1……よし」キュッ

『戦闘中、複数人と共に密室に閉じ込められた時、1人で外の様子を見に行こうとするつもりがない』

久「2も……よし」キュッ

『戦闘中、私の思い出の品が壊れて不吉な予感を覚えられる可能性がない』

久(うん。お気に入りのお皿は吸盤で固定したし、棚も開けられないようにした上に南京錠でロックした。私以外触れられない。写真立てとか賞状もガラス部分は撤去してラップにした。私が写ってる写真とかについては部員のみんなにも気を付けるようお願いしてあるし……)

久「おっけ」キュッ

『この戦いが終わったら結婚する約束をしていない。さらにその約束を誰かに話していない』

久「当然してない。よーし」キュッ

久「……ん♪完璧」

久(さあて、行くとしましょうか)ザッ..


【宮永家前】

照「…………」ペラッ

久「おはよう。あら?またマリみて読んでるの?」

照「ううん。今日はCandy☆boy」

久「お、いいわね」

照「うん」パタム

久「咲は?」

照「トイレ」

久「やっぱり」

照「トイレ行ってご飯食べてトイレ行った」

久「ハイペースね……」

照「……多分緊張してるんだと思う」

久「なるほどね……その気持ちわかるわ」

界「竹井さん、おはよう」

久「あ、おはようございます」

界「娘たちがお世話になってます」

久「いえ、全然。私の方こそ助けてもらってますから」アハハ

咲「お姉ちゃん、お待たせ……あ、部長。おはようございます」ペコリ

久「おはよう」

界「……そろそろ待ち合わせ時間だが、車は……」

ブロロロ...

咲「あ、来た」


ブロロロロ....ァァッ!

照「…………誰が運転してるかわかりやすいね」

久「そうね……」

キキィィィィ...ァァッ!バフォッ..

貴子「オラァッ!!」

照・咲・久「おはようございます」

貴子「ああァァッ!おはようァァッ!」

界「おはようございます、久保さん。迎えに来て頂いてすみません」

貴子「あ、いえ……おはようございます。どうぞ乗ってください」ペコリ

界「はい。では失礼します」ガチャ

照・咲「失礼します」バタン

久「よいしょ……っと」

智紀「おはようございます……」ペコリ

純代「おはよう……ございます」

桃子「……っす」

咲「おはようございます」

照・久・界「おはよう」

貴子「よォし……全員乗ったな」バタムァァッ!!!!!!!!

照・咲・久・智紀・純代・桃子・界「!!」ビクッ!

貴子「踏むぞペダルコラァァァッ!!!」ギュムゥゥゥ!!!

ブロロロロ...ァァッ!!

照「………………」チラ

純代「……………」

照(深堀さんから力が感じられない……どうしてだろう?)

純代「………………」フゥ..


【某県○○】

キィッ..

ガチャ..

貴子「…………」

界「到着だな。久保さん、運転ありがとう」

貴子「あ、いえ……」

界「…………」

久「久保さん、やけに静かね」ヒソヒソ

咲「そうですね。サービスエリアでは店員さんを3人も泣かせるほど怒鳴ってたのに」

智紀「……多分、肌で感じてるんだと思う。この近くに強者がたくさんいることを……」

久「…………」ゴクリ

照「……でも見渡す限り……何もない」

咲「うん……本当にここで合ってるのかな?」

界「指定されたのはここで間違いないんだが……」キョロキョロ

久「……もしかして、罠とか……」

指定された場所には誰もおらず、建物も見当たらない。

この場で戦闘が行われようとしているとはとても思えない風景に一同が戸惑っている時……。

??「お待たせ」

その人物は突然現れた。

照「!?」クルッ

??「…………」

久「あなたは……晩成高校の……小走やえ!」

やえ「……いや、違う」

久「え?」

やえ「私は…………」


久「…………」ゴクリ

やえ「………………ニッワニッワニー♪」

久「は?」

やえ「あなたのハートにニワニワニー♪小3の頃から小走ニワニワー♪ニワニーって覚えてラブニワッ♪」

照・咲・久・智紀・純代・桃子・貴子・界「………………」

やえ「………………」

照・咲・久・智紀・純代・桃子・貴子・界「………………」

やえ「………………ふっ……心配しなさんな。そんな反応には相当慣れてる」ニヤリ

貴子「……お前も百合妄想士だったのか」

やえ「そう。そして……458プロの人間として案内役を務める者だ」

照「!」

やえ「そんなに驚くことじゃない。458プロは関東だ関西だのというしがらみはない組織……誰でも受け入れてくれる」

貴子「……ふん……」

やえ「付いてきな」クルッ..スタスタ

照(にこにーの真似にも驚いたけど、それよりも突然現れたことの方がビックリ……どうやったんだろう?)

やえ「…………」ピタッ

照「?」

やえ「……よいしょ……っと」カチッ(しゃがんで地面に手を触れる)

貴子「雑菌でばっちいぞコラァ!ウェットティッシュ持ってんだろうなァァッ!?」

やえ「ふふっ……私は小3の頃から豆すらできん」

照(……答えになってない)

ガコッ...

照「!?」

咲(わ……)

智紀(……隠し通路……階段……)

純代(なるほど……戦場は地下というわけか)

照(何もない場所からいきなり現れたように見えたのは、この道を使ったからか……)

桃子(ふー……ステルスライバル登場かと思って焦ったっす)ホッ

やえ「お待たせ。さあどうぞ」カツ..カツ..

照「…………」カツ..カツ..


【地下 エリアA】

照「!」

咲「ぅわ……広い……」

久「……広すぎて壁が見えない………地下にこれだけのスペースを作るなんて……」

智紀「…………龍門渕グループ並」

やえ「ふふ……広さはリリアン女学院何個分だろうな?私にもわからない」

貴子「確かにここならァァッ!東西決戦のような規模の戦闘も可能ァァッ!だな」

桃子「あ、そういえば、他の人たちはまだなんすか?」

やえ「まだだよ。お前さんたちが早かったのさ」

貴子「私は待ち合わせ場所に時間より早く到達し、遅れてきた者をビンタする人生を送ってきたからな。時間厳守どころじゃねェ!」ニヤリ

照(だから道中あんなに飛ばしてたんだ……)

やえ「まぁいい……本来なら全員揃うのを待ちたいところだけど………一足先にお相手するとしようかな」

照「え」

貴子「アン?」

やえ「役者が揃ってなくても舞台の幕が開けば劇は始まる。この地下の秘密エリアに足を踏み入れたというのは……そういうことだ!」

咲「で、でも……小走さんが率先して案内……」

やえ「〔リリース(Lilys×Release)〕」

咲「ええっ!?」

久「……戦いたくてしょうがないってことよ。油断しないで」

咲「は、はい!お姉ちゃんも頑張ろうね!」

照「…………」

照(咲が久をリーダー格っぽく感じてる……)ムッ

やえ「いくぞっ!私の能力は〔ニワカ殺し(ニワカキラー)〕。百合歴の浅いニワカを圧倒する力!小3の頃から百合しか読まない王者小走が覇王として王道の頂点へ君臨する!!」

照・咲・久・智紀・桃子・純代・貴子・界「………………」

やえ「………………ん?」

照「…………」←1歳の頃からシンデレラの姉妹百合にハマっていた

咲「…………」←生まれてすぐ照との姉妹百合に本能的に目覚めていた

久「…………」←幼稚園時、地元の公園の女の子と自分の親戚の女の子のマイナーカプに萌えていた

智紀「…………」←保育園で仲良し保母さんコンビの片方が結婚したことに絶望した

桃子「…………」←3歳の時、とても仲良しの同級生コンビを尾行し、百合関係かどうかを確かめる日々を送っていた

純代「…………」←1万年と2千年前から百合観てる、と言っても過言ではないレベル

貴子「…………」←3歳の頃から女の子にだけビンタすることを決めていた(男は拳)

界「……………」←2歳でバービー人形に擬似ふたなりち○ぽをくっつけ、リカちゃん人形の恋人にした

やえ「……………………」

照・咲・久・智紀・桃子・純代・貴子・界「………………」


やえ「……私の迫力に呆けてるのか?だったら…」

照《エリナとレイナッ!歪んだ愛情であろうと妹の愛は真実そのもの。次第にレイナはエリナを愛おしく思うようになった》
咲《お姉ちゃんのおしゃぶりは宝物!固まった唾液を私の唾液が溶かす……姉妹融合!!》
久《アリスのお母さんが急きょ来日。そして恋に落ちた!その相手は、猪熊美月……陽子の妹だった!》
桃子《森島先輩が本気になって美也を口説いた。美也は、森島先輩のダッ君プレゼント攻勢によってあっという間に恋人になったっす》
純代《女子高のテニス部レギュラーメンバー全員の1週間分の大便ッ!》
貴子《頬が隙だらけだァァッ!この特殊髪型野郎がァァッ!!》バシィッ!!
界《いがみ合っていた幼馴染の子たち。想いが通じ合い、ふたなりち○ぽは絡み合う。ち○ぽ知恵の輪の術……》

やえ「きゃああああああああ!!!!」

長野勢のボコスカアタックが炸裂。王者が断末魔の声をあげる。

やえ(まだだ…………まだ落ちんよ……!)グググ...

桃子(!しぶといっすね……こっちは〔リリース(Lilys×Release)〕を使ってないとはいえ、全員分の攻撃を受けたのに)

やえ「ここから………王者の逆転劇が始ま…………あ」ハッ

智紀「………………」

やえの目に映る紫の服。漆黒の瞳、白目の部分。

そんな色づくしな智紀の手によって次にもたらされたのは、

やえ「…………や、やめ…」

智紀《ニワカは相手にならないと豪語する小走やえは、ここで無様に散る……》

やえ「あ…………っ」フラ...ドサッ...

冷たい地面の味とコンクリートの灰色だった。


智紀「……ふぅ」

やえ「う……うぅ……」

貴子「ふん……こんなだだっ広い空間でかませを1人だけ用意して、なんのつもりなんだ?」

やえ「わ、私は……かませじゃないっ!」

貴子「ラァ!!」ギロリ!!

やえ「ッ……!に、睨んでも同じだ!私は王者だ!!」

照「………………かませの王者?」

やえ「な……っ……」

咲「本人が気付いてない真実を指摘しちゃうお姉ちゃんかわいい!」

やえ「や……やめろ……そ、そんなこと言うなよぉ…………私、泣くぞ……ぉ……」グス

久「2人とも。小走さんを傷付けるようなこと言っちゃダメよ?」

照「あ……」

照(……ついポロッと言っちゃった……謝らないと……)

咲「す、すみませんっ!お姉ちゃんが迂闊なせいで……ほら、お姉ちゃん。私も一緒に謝るからちゃんと謝ろう?ね?」

照「え?うん……」

咲「小走さん、私のお姉ちゃんがすみませんでした」

照「ごめんなさい……」

照(あれ?私だけが悪いんだったかな?咲も少し加担した気がするけど……)

久「……許してくれるかしら?」

やえ「ふ、ふんっ!別に私は傷付いてなんかいないからっ!」プイッ

久「あら、そうだった?余計なお世話だったみたいね」クス

やえ「…………でも…………あんたの心遣いは……その……嬉しかった…………あ、ありがと///」

久「ふふっ……どういたしまして」

照「………………」


~~~~~~~~~~~~~~~

久『じゃあ……お礼としてあなたを私にくれない?』

やえ『な……何を言ってる!?冗談はやめろっ!』

久『冗談じゃないわ。私は……』スッ..(やえの腰に手を回す)

やえ『っ……』ピクン

久『あなたが好きなの。あなたが……欲しい』

やえ『そ、そんなこと……///』

久『ダメ?』

やえ『…………///』

久『ねえ……お願い』

やえ『/////』コクリ

久『ふふ……ありがとう』チュ

やえ『ん……っ///』ニワァ..

王者、陥落……。新チャンピオンは竹井久―――

~~~~~~~~~~~~~~~


照「………………」ムラァァ..

久「ふふふ」ニコニコ

やえ「…………っ///」プイッ...

桃子(……あー、この2人いいっすね……ほんわかムードになったおかげで妄想が捗るっす)

貴子「おい!かませ!色々聞かせろコラァッ!」グイイイ!(やえの両肩を掴んで起こす)

やえ「ひっ!」

桃子(……色々台無しっす)

やえ「わ、私はかませでなく王者…」

貴子「無駄口の度にビンタ一発がレートだァァッ!!」

やえ「っ!」バッ!(両手で口を押える)

貴子「てめェッ!目上を前にして口を隠すんじゃねェ!!ストパーかけて個性終わらすぞコラァ!!」

やえ「~~~~!」

照「あ、あの……やりすぎじゃ…」

ブツッ..

??『あー……ストップ』

貴子「ん?」

智紀「この声は…………小鍛治プロ……」

健夜『小走さんが怯えてるから、その辺で離してあげてくれないかな』

界「スピーカーから流れてるようだな」

貴子「オラアアアアァッ!!!!」バッ..(やえから手を放す)

やえ「ひぅ……」


貴子「覚えてやがれ!」

健夜『ちょ、ちょっと。乱暴すぎだよ』

照「……久保さん、いつもより凶暴と言うか、怖い気がする……どうしてだろう?」

界「戦いに向けて気合を入れているからだろうな。それにしても殺気立ちすぎだがな」

貴子「……それで、どういうつもりですか?指定された戦場に来てみれば、特殊な髪型のかませを1人用意して……」

やえ「かま…もごご……」

久「しーっ。言わせておきましょ、ね?あなたがかませじゃないことは知ってるから」(やえの口を手で押さえる)

照(!久×やえが現実味を……)オォ..

健夜『安心していいよ。小走さんは案内役。戦いはこれから始まるから』

やえ「私は勝つつもりもごご……」

久「そうね。強敵オーラ出てたわ」ガッシリ

やえ「っ……///」ドキッ

健夜『……では、これより開戦としましょうか』

界「……待ってくれ」

健夜『……なんでしょう?』

界「他の連中がまだ来ていない」

健夜『…そうですね。でも、もう時間です』

純代「……あ」

久「ちょうど今、時間が来たわね」

健夜『遅刻した人は途中参加ということになりますね。ちなみに……今あなたたちが入ってきた入口は封鎖されています』

界「何っ!?」

健夜『一度入ったらパスワードを入力しない限り出ることはできません。458プロは秘密裏に行動していましたから、そのような作りになっているんです』

界「く……」

界(敵対していた関係でリリーフラワーガーデンと揃って移動できなかったのが痛い……リリーブライドと宮守は合流して来るという話だが……そもそも遊撃部隊に近い俺たちが先行したのはまずかったか……ち○ぽが萎えてきたぜ)

久「だったら携帯で連絡…………って圏外だわ」

久(徹底してるわね……こうなったら、時間を稼ぎながら助けを待つしかないかな)

ゴゴゴゴゴ...

照「この音は…?」

咲「な、なんか怖い……」

貴子「何鳴ってんだァァッ!音のクソ野郎が!」

純代「っ……」ゾワッ

桃子「……どうしたんすか?」

純代「…………すごい数……」

桃子「え?」

健夜『開幕戦……その相手は』

智紀「…………」

健夜『458プロ所属の子たち…………1000人です』


純代「…………」

照「!!」

咲「えっ!!」

貴子「!!ァァッ!!」

久「せ……」

智紀「1000……っ」

桃子「マジっすか……」

界「ちっ……萎えてる場合じゃねぇな……擦るか」

ゴゴゴゴゴゴゴ...ガタン!

照たちから数百メートル離れたところ。

458プロの軍勢が降り立った。

照「……す」

咲「すごい……」

照(なんて迫力……東西決戦の時も大人数相手に戦ったけど……1000人を目の当たりにはしなかった……)

純代(…………やっぱり。肌を刺すような感覚はこの人たちのものか)

健夜『それでは……みんな、頑張ってね』ブツッ..

458兵たち「うっうー!GRAND M@STERのために頑張るのー!」

オオオオオオォォ...

照「き、きた……」

久「1000対8って無茶すぎ…………でもやるしかないわね」

貴子「いや、8じゃねェぜ」

智紀「?」

貴子「9だ……」グイ

やえ「え?いやいや、私は458プロ側の……」

貴子「うるせェ!行こう!!」ドンッ!!

照(ナミ×ビビ)

咲(ノジコ×ナミ)

久(ロビン×カヤ)

やえ「いや、そう言われても……」

貴子「黙れァァッ!捨て駒程度でもいいから数が必要なんだァァッ!」

やえ「な……」

458兵たち「〔リリース(Lilys×Release)〕」

智紀「!」

貴子「こっちも負けんな!行くぞォァァッ!」

照・咲・久・智紀・純代・桃子「〔リリース(Lilys×Release)〕」

貴子「〔リリース(Lilys×Release)〕ァァッ!」

シュゥゥゥウゥゥウゥ..

照「………………」

照(うん。大丈夫……ちゃんと制御できてる)

458兵たち「うっうー!!」ダダダダダダダ...!!

照(これなら……いける!)キリッ


【地下 総司令室】

健夜「…………」(モニターで照たちの様子を観ている)

咏「うっわ。いきなり1000人投入とかマジっすか?」

健夜「うん。これで終わるなら楽だしね」

咏「まー、そうっすけど。ていうか、すっげー地響き。この部屋まで聞こえるとか」クス

健夜「そうだね。結構離れてるけど……人数が人数だから」

咏「……小鍛治さん的にはどうなんすか?あの子たち、勝つと思います?」

健夜「…………どうだろうね?咏ちゃんの予想は?」

咏「んー……うちらがあの子たちと戦ってから今日まで、準備とかその他諸々で1ヶ月以上かかったじゃないすか?」

健夜「うん」

咏「その間、あの子たちすげー成長してるっぽいんすよね。元々才能あるのかしらんけど、全員〔リリース(Lilys×Release)〕マスターしてるし……あのおっさん以外は」

健夜「そうだね……でもあの男の人は違うベクトルで才能の蓋を外してるみたいだから、〔リリース(Lilys×Release)〕を使えるのと同じようなものだね」

咏「そんなんすか……ま、どちらにせよ、うちらの勝ちじゃね?って感じっす。あの人数で一気に攻められたら……」

健夜「ふふ……まぁね」

咏「…………あの、疑問なんすけど」

健夜「なに?」

咏「あの連中……長野の子たちって、そんなに厄介っすかねぃ?」

健夜「…………」

咏「わざわざ『リリーブライド、宮守、リリーフラワーガーデンの連中を足止めして』まで、先に仕留めるほどの強敵とは思えないけど……」

健夜「…………保険だよ。宮永さんたちの〔姉妹の愛(シスターラブ)〕は厄介だからね」

咏「あー…………確かに」

健夜「別にここまでしなくても私たちの勝利は確実だと思うけど、勝率を高めることになんのデメリットもないから」

咏「……そうっすね」

♪~

咏「!電話……って携帯は使えないんだった。固定電話とか久しぶりだねぃ。はーい…………もしもし?」

健夜「………………」

照『!』

458兵『…………』バタバタッ..

健夜(瞬殺、か……思った以上に強いね)

咏「あそう。へー……いや、知らんし。お疲れー」ピッ

健夜「誰からですか?」

咏「足止め役の子から。順調に抑えてますっつーことで」

健夜「そう。よかった」

咏「……さーて、長野っ子ちゃんたちはどこまで頑張れるかなー」


【地下 エリアA】

界「〔 馬 ち ○ ぽ 投 げ ( ち ○ ぽ ゴ ー ラ ン ド )〕」

チポーーーー!

458兵E「きゃああ!」バタッ

照《はああっ!》

貴子《オラァッ!》

458兵F「ああああっ!?墨染さんがーーっ!!」

照「はぁ、はぁ……」

照(こっちの方はなんとかしのげてる。あっちはどうだろう?)チラ

458兵G「が……はぁ……」バタン

やえ「ふんっ!ニワカは相手にならんよ!」ニヤリ

458兵F「な、なんで裏切っておいて平然と勝ち誇ってるの……?」

458兵H「理由はあと!とにかく倒すのよ!」タタッ

やえ「かかってこい!」

照「………………」

照(意外とノリノリで頼もしい)

貴子「小走の野郎ァァッ……いい顔するじゃねェか」ニヤリ

照「はい」

458兵I「覚悟っ!!」

照「!」


458兵I《みどりの告白に戸惑うたまこだったが、付き合うことに……》

照《…ならなかった!》

458兵I「!!?」

照《たまこは、前日にあんこからも告白されていた。そして、オーケーしたから……》

458兵I《ちょ……姉妹!?ならチョイちゃんの方が…》

照《たまこはあんこと付き合った!!》

458兵I「きゃあああ!」バタッ..

照「……ふぅ……」

458兵J「うっうー!」

照「!また……」

照(キリがない……)

純代「……っ!」

458兵K「それそれそれっ!」

純代《………寿司屋の姉妹が脱糞。妹のに姉のを乗せ、擬似寿司の完成!値段は当然、時価……》

458兵K「っ……き、効かないわっ!まだよっ!」

純代「…………」

智紀《あなたが前に食べたお寿司は、その擬似寿司に触れた手で握った物だった……》

458兵K「ひいいいいいい!!!」バタン!

純代「…………ありがとう」

智紀「ううん……」

智紀(深堀さん………〔リリース(Lilys×Release)〕を使ってない……いや、というよりも……)

純代「…………大丈夫」

智紀「……そう」


【総司令室】

咏「深堀って子、苦戦してるねぃ」

健夜「そうだね。でも当然だよ。〔リリース(Lilys×Release)〕を使わない状態じゃあね」

咏「この場面で温存……はないか。まだ会得してないのかな?しらんけど」

健夜「……おそらく後者だね。実力、才能は申し分ないけど……」

咏「自分を信じられなきゃ〔リリース(Lilys×Release)〕は扱えない……ってやつですかぃ。どちらにせよ皮肉なもんだなー。四天王最強って話なのに足を引っ張ってる。現時点じゃ、あのメンツの中で一番弱いんじゃねっすか?」

健夜「…………そうだね。でも仕方ないよ。自分を乗り越えられないなら……勝てるわけがないからね」


【エリアA】

458兵L「ええいっ!」

純代「ぐぁ……っ」

桃子「後ろがガラ空きっす!」

458兵L「え」

桃子《先輩とのラブラブイチャイチャ……たまらないっす。『モモ』と呼ばれるだけで、私の胸は高鳴りまくりっす》

458兵L「はぁあぁあ…………」バタッ!

純代「ありがとう……」

桃子「いえ、平気っす。では!」ユラー..

純代「………………」

純代(大事な戦いでこんなざまじゃ……でも……私はダメだ。〔リリース(Lilys×Release)〕の使えない私では……)ハァァ..

戦闘の最中でありながら、純代は大きくため息をつく。それに合わせて腹が出る。

その姿からは食後の満腹さをイメージさせるだけで、もはや戦意を感じることはできない。

その理由は、彼女が〔リリース(Lilys×Release)〕を会得していないことが関係している。

圧倒的な実力を持つ彼女なのに、何故〔リリース(Lilys×Release)〕を扱えないだろうか?

個人個人によって会得までの難易度は違うが、純代の場合、問題となっているのは難易度ではなく、あくまで精神。

純代は自分の望むものに対し、叶うことなどあり得ないとマイナスに強く信じているからである。

そうなれば自分で自分の足を引っ張ることとなり、〔リリース(Lilys×Release)〕を会得することは不可能になる。

純代「…………」

458兵M「そこぉっ!」ダダッ

久「深堀さん!危ないわ!」

純代「…………」

純代(いや、いっそのこと負けてしまえばいいのか……)

久「深堀さん!?」

純代(私が脱落しても、宮永照さんがいる……彼女ならきっとなんとかしてくれるはず)

純代(私は…………もう…………)

??「深堀さん、諦めたらダメよ?」

純代「!!?」

純代(この声は…………キャプテン!!)

??「目の前に敵が迫ってきているわ。倒しましょう」

純代「!!」

純代《〔 生 放 送 中 に 気 象 予 報 士 の 森 田 さ ん の 近 く で 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

458兵N「きゃあああああああ!!」バターン!

純代「…………キャプテン……?」

貴子「…………」

純代「え…………コーチ……」

貴子「……今のはよぉ……声帯模写だコラ。私が福路の野郎を真似たんだよ」


純代「!?あんなにそっくりに……?」

貴子「…………てめェ、いつまでダラけてんだ」

458兵O「何突っ立ってるのよ!」タタッ

貴子「とっとと戦力になりやがれっつーんだよァァッ」バシッ!

458兵O「い、痛いっ!?」バタッ..

純代「コーチ……」

貴子「大方、てめェが望む幸せっつーのは『福路に自分を受け入れてもらえること』とかその辺りだろァ?」

純代「!!?」

貴子「ハッ!何を小鳩がマリアと豆を鉄砲でいじり合ってるみたいな顔してやがんだ!」

純代「してません。でも……どうして……」

貴子「……何度ビンタしてきたと思ってる。てめェの考えることなんざお見通しなんだよ」

純代「…………」

貴子「それで、だ。てめェが〔リリース(Lilys×Release)〕を使えねェのは『自分が百合スカ妄想してることをキャプテンに知られたら嫌われる』……とか思ってたからだろァ?」

純代「………………はい」

貴子「やっぱりな……てめェは…」

458兵P「うっうー!!」タタッ!

貴子「話してる途中だろうが!このクソボケがァァッ!」バシッ!

458兵P「あふぅ!!」バターン!

貴子「……っとによぉお!おい小走ァァッ!てめェ何やってんだ!私らを守るのが仕事だろうがァァッ!」

やえ「えっ!?そんなの初耳……」

貴子「うるせェ!!とにかくこっちこい裏切り者がァァッ!!」

やえ「うぅ……なんてメチャクチャなやつ………王者の私じゃなければ怒るところだ」タタタッ

咲(……そう言いながらも助けに行く小走さん、結構かわいい……)

純代「……コーチ……でも私は……キャプテンに拒まれたらと想像しただけで……」

貴子「…………ちっ、バカか」

純代「……すいません……」

貴子「福路の野郎がそんなことで拒むわけねェだろうが」

純代「……え」

貴子「私は……ビンタする前にその人間がどんなヤツかを計ってんだ。『こいつは親にチクる』とか『ビンタしたらすぐ口を中を切る。挙句にその血を拭かないで授業に出て騒ぎを起こすタイプだ』とかな」

純代「…………」

貴子「そんな私の観察眼はなァ!福路はてめェを拒まねェと確信してんだ」

純代「…………」

純代(キャプテン……)


貴子「……そこんとこ踏まえて、もう一度考えてみろ」

純代(…………確かに、キャプテンはいつでも私たちを受け入れてくれた)

純代(私が自重で椅子を壊してしまった時……)

美穂子『深堀さん、大丈夫?怪我はない?』

純代(その日で4つ目だと言うのに、初回の時と同じ様に心配してくれた)

純代「………………」

純代(部活中、私がオーラスで逆転手をツモ和了った瞬間、興奮してついオナラをしてしまい、プゥーという音が部室に響いた時……)

美穂子『……♪Winnie the pooh Willy,nilly,silly,old bear~』

美穂子『……急にごめんなさい。くまのプーさんを歌いたくなっちゃったものだから』ニコリ

純代(プーさんの歌で誤魔化そうと頑張ってくれた…………最終的に匂いでバレたけど、キャプテンの可憐さによってオナラの罪は軽減され、なんか丸く収まった……)

純代「…………そうだ……」

純代(キャプテンはいつも優しく、私たちを見守ってくれた……)

純代(なのに私は…………キャプテンを疑ってしまった……)

純代(宮永さんの活躍に嫉妬し、劣等感を抱いて、自信をなくしていた……その自信のなさが、私の中のキャプテンに対する疑心暗鬼を生んだ……)

純代「……っ!」キリッ

貴子「…………どうした。少しはマシな面になったじゃねェか」

純代「……はい。ありがとうございます。コーチ」

純代(あなたのおかげで……私は自分を取り戻せた。そして……今なら…………)

純代「………………」

純代(私の幸せ………)


~~~~~~~~~~~~~~~

純代『………キャプテン。今話したことが、私が愛する百合……そして私の妄想の全てです』

美穂子『…………』

純代『…………どう思いますか?』

美穂子『………………素敵よ』ニッコリ

純代『あ……』

美穂子『特に中盤で出てきた、部活動中の百合スカ妄想、お見事でした』ニコニコ

純代『キャプテン……』

~~~~~~~~~~~~~~~


純代(そう……キャプテンなら……きっと…………こんな風に私を受け入れてくれる…………)

キュァァァァァ..

純代「あ…………」

純代(これは……この力は………)

貴子「…………ふんっ!遅ェぞコラァ!今から巻き返しだ!行くぞ!」ニヤリ

純代「……はいっ!〔リリース(Lilys×Release)〕」

シュゥゥゥウゥゥウゥ..

純代「はぁぁ……」

照「!!」

照(これは……さっきまでの深堀さんが嘘みたいな力強さ…………やっぱり、深堀さんはすごい……)フフッ

やえ「……何やらよくわからんが、表情を見るにいいことがあったようだな」ニヤリ

貴子「小走ァァッ!邪魔だどけコラァァッ!」ダダダッ!

やえ「ええっ!?わわっ……!」ヒョイ

貴子「おおおおおらァァァッ!!」

458兵たち「きゃああ!!」バタバタ..!

やえ「……すごい迫力だ……」

ドスドスドスドス...

やえ「む?」

純代「…………」ドスドスドス..

やえ「こっちも……って、お前!後ろから5人来てるぞ!!」


純代「!…………」クルッ

458兵たち「うっうー!」

純代「………………」ニヤリ

純代《〔 任 務 中 に 脱 糞 ( 脱 糞 イ ン ポ ッ シ ブ ル )〕!!》

458兵たち「いやあああああ!!」

ドサドサドサ..

純代「…………」

やえ「な……んて威力……」

純代(……心が……体が軽い。次の相手は誰だ!どんどんかかってこい)ギラリ!

〔リリース(Lilys×Release)〕に目覚めたばかりでありながら、458兵を圧倒する純代。

10、20、30と、蹴散らしていく。

そんな純代の気迫に後押しされるように、照たちも勢いよく敵をなぎ倒していく。

しかし、それでも……

照「はぁ……はぁ……」

咲「ぅう……」

8人で1000人を相手にするのは無理があった。だんだんと限界が近付いてくる。

最初のうちは跳ね返してきた458兵の攻撃も受け止めざるを得なくなり、少しずつ包囲されていった。

照(まずい……多人数相手の戦いで囲まれたら一気にやられる)

咲(うぅ……なんとかしないと……でも、どうしたらいいのっ……)

界「…………」

界(このままじゃ確実に負ける……だったら、この空間の広さを利用して……)

界「ち○ぽっ!!」

照「……お父さん?」

界「ち○ぽっ!キ○タマ!」

458兵たち「……な、なんなの?この男……」

界《みんな聞いてくれ!これは淫語による放射攻撃だ!威力は微々たるものだが、けん制にはなる。このまま全員で下がり、包囲から抜け出すぞ!》

照・咲・久・智紀・純代・桃子・貴子「!」コクリ

ダダッ!

458兵たち「ああっ!逃げるつもり!?そうはさせな…」

界「インポ!インキン!タマ裏蒸し蒸し!!」

458兵「…………」

界「ち○ぽ!ザーメン!我慢汁!」

界(よし……下がりながら攻撃を続ける!)ザッ

界「タマシワ!ち○毛!キ○タマほくろ!」タタタッ...

照・咲・久・智紀・純代・桃子・貴子「………………」

界「ち○ぽ!ち○ぽ!ち~~~~○ぽ!」

458兵たち「………………」

必死の形相で淫語を連発する界。

その迫力に味方までもが度肝を抜かれる。

界(よし!態勢を整えられたぞ!)


界「ふぅ……みんな大丈夫か?なんとかなったな」ニコリ

照「………………うん」

久「…………はい」

智紀(……なんだろう?危険を覚悟してしんがりを務めて私たちを助けてくれた勇気ある行動なんだけど、尊敬とかそういう感情がまったく湧いてこない……)

報われない界であった。

淫語によるレスキューは誰も幸せにならないのかもしれない。

458兵たち「…………はっ!あまりの出来事にボーっとしてたわ。追撃よ!」

界「ちっ……来るか。だが、さっきよりは迎え撃てる陣形になってるぜ」ザッ..

久(…………でも正直なところ、このまま8人で全員倒せるとはとても思えない……それに……)

久(仮にこの人たちに勝っても……肝心の小鍛治プロたちと戦える力を残していられるとはとても……)

智紀「………竹井さん」

久「え……なに?」

智紀「今は、できることを……やりましょう」

久「あ…………」

智紀「…………」

久「…………そうね」ニコリ

久(私らしくなかったわ。何を弱気になってたのかしら。元々、確率の低い方を選ぶ人間でしょうに)

純代《〔 シ ャ ル ・ ウ ィ ・ 脱 糞 ( ダ ン ス 中 に 脱 糞 )〕》

458兵たち「ぎゃああ!!」

久(ここで全員を倒して、なおかつ小鍛治プロたちにも勝つ!)

界《〔 仮 性 包 茎 舞 踏 会 ( ナ チ ュ ラ ル ス タ イ ル パ ー テ ィ ー )〕》ポチラララ...

智紀《絶望をあげる……》ザァァアアァア..

桃子《私はいつもあなたを見てるっす……淫らな、姿も……》

照《涙のごきげんよう!!》

咲《姉萌えっ!》

貴子《登場人物全員ビンタァァッ!!》

458兵たち「怯んじゃダメよ!数で押しなさい!!」

照(くっ……諦めない……)

458兵Q「そこぉ!」

458兵R「まだまだよ!」

458兵S「くらえっ!」

458兵T「いくわよぉっ!」

照「ぐ……」

久「ちょ、これは……」

態勢を立て直した照たちだが、それも束の間、あっという間に押し流されて背後をとられる。

もはや包囲どころの話ではなく、のしかかられ、押し潰されてしまうのも時間の問題であった……


【総司令室】

咏「あーあー……ちょっとあの子たちも無茶がすぎるねぃ」

健夜「そんなこと言わないであげなよ。あの子たちはあの子たちなりに頑張ってるんだから」

咏「いや、しらんし。でもまぁ、これで決着ってのも呆気ないっすけど、最初から勝負は見えてたようなもんだし、しょうがないんすかねぃ?」

健夜「そうだね。しょうがないよ。あとは足止めしてる子たちを迎え入れて、同じように攻めれば終わりだね」

咏「そうっすねー……ま、ここに来るまで1時間はかかるだろうし……ちょっと寝てていいっすか?」

健夜「どうぞ。出番が来たら起こすから」

咏「ありがとうございまーす」テクテク..

咏「…………」チラ

照『!』

458兵たち『♪』

咏(…………もうちょっと頑張ってくれると思ってたんだけどねー)

咏(……ま、期待する方が悪かったってことと、うちのGRAND M@STERが容赦なかったってことで。んじゃ、寝るとしよ…)

健夜「!これは…………」

咏「?」

咏(何かあったのかねぃ?どれどれ…………む?)

咏「…………は、ははは……」

咏(そうかいそうかい………まだ楽しみは終わってないってことかねぃ?)ニヤァァァ..


【エリアA】

照「え……」

静寂。

今まさに敵に押し潰されようとしていた照たち、そして押し潰そうと迫っていた458兵たち。

両者の間を、この空間を、無音が支配していた。

それはありえないこと。

つい先ほどまで苛烈な攻撃に見舞われていた照たちにとって、聞こえるのは敵の声、あるいは自分たちを倒したことによる勝ち鬨のはず。

あまりの出来事に、思わず立ち尽くして思考を止めてしまう。

照(………………)

本来ならば隙だらけのその様は戦場では格好の餌食となるだろうが、458兵たちも照と同様に立ち尽くしている。

だがその理由、驚きの原因は両者で全く違っていた。

照たちは、『何故攻撃が止んでいるのか』、『何故静まり返っているのか』。

対する458兵たちは、

458兵たち「な、なんで……」

『あんたらがここにいるの―――』

その問いに答えたのは、

??「簡単なことや」

やたら自信満々な表情を浮かべる大阪人、

洋榎「お前らは…………うちの嫁やからや!」

リリーフラワーガーデンが誇る百合妄想士、愛宕洋榎だった。

458兵U「な、なんで?足止めに成功してるって連絡があったのは、ついさっきなのに……!」

洋榎「さあて、なんでやろなぁ?」ニヤリ

458兵に動揺が走る。

全員が思わず攻撃の手を止め、思考停止してしまうのは、この場に現れるはずのない人物が乱入してきたからであった。

彼女たちは『リリーフラワーガーデンは足止めしているため、8人以外に敵は現れない』との連絡を受けていた。

他でもない、458プロのトップであるGRAND M@STER、小鍛治健夜から。

……なのに、愛宕洋榎はやってきた。

普通に考えれば、健夜、あるいは健夜が足止めを命じた者のミスというのが妥当だろう。誰でも考え付く。

しかし458兵たちは、自分たちが尊敬し、崇拝する健夜が間違えるはずがない。そんなことはありえない、と思考を放棄した。

これが静寂を作り出した原因であり、この間が照たちを救った。

洋榎がやってくるのがあと数秒遅ければ、照たちは押し潰されていただろう。

それは取りも直さず、確率の低い奇跡を待った彼女の願いが届いたという事実であり、長野勢にとっては起死回生の出来事。

ピンチの後に訪れたチャンス。

この瞬間を待ち続けた彼女は、誰よりも早く動いた。

久「…みんなっ!盛り返すわよっ!!」

照「……っ」ハッ!

咲「部長…………はい!」


オオオオ...

458兵V「な、え……あれ?」フラッ..ドン..

458兵W「痛っ!ちょっと、ぶつからないでよ!」

458兵X「あ、慌てないで!落ち着いて!!」

洋榎「……ははっ……お転婆な子らやなぁ…………ええわ。まとめて面倒見たるわ。〔リリース(Lilys×Release)〕」

シュゥゥゥウゥゥウゥ..

洋榎「…………行くで」ニヤァ

ダダッ!

458兵たち「!!?」

洋榎《初めまして。うちは愛宕洋榎や。よろしくな…………嫁!》

458兵W「きゃああ……っ!」ドサッ..

458兵V「くっ……」

洋榎《遅いわ!遅すぎて……この間に子作りできそうやわ!》ギュアア!

458兵X「あ……ぁ……」ガク..

洋榎《ま、嫁の支度が遅いんはあるあるネタやろうし、しゃあないか》

458兵たち「こ、この子……」

洋榎「……おう。嫁ら。うちがみんな相手したるわ。まとめてかかってこんかい」

458兵たち「……調子に乗っちゃって……みんな、一気に片付けるわよ!」タタタッ!

洋榎「…………はは、ええでー。来いや」ニヤリ

458兵たちは愛宕洋榎に対し、怒りを露わにして襲い掛かる。

洋榎の乱入によって照たちにトドメをさせなかったこと、そして健夜の顔に泥を塗ったということ。

その2つの理由だけで激昂に足るとばかりに、彼女たちは洋榎へ向かって連携を無視した特攻をかける。

洋榎「…………」

常人ならその迫力に呑まれて動けなくなるか、怯えて逃走を図るだろう。

しかし愛宕洋榎は当然常人ではない。

洋榎「おお……嫁がいっぱいや」

嫁は1人じゃ満足できない。精進料理は物足りない。

正真正銘のハーレムタフガイ……いや、タフウーマン……だろうか。

躊躇なく我が道を突き進むその姿は、ある者にとっては尊敬の念を抱くだろう。

彼女が自分らしく生きる道。そこにある扉は、たった1つ。

鍵の有無や扉の先など考えず、足で蹴破るであろう洋榎。

そんな彼女を、百合妄想士たちはこう呼ぶ……

Hiroe's Gate(ヒロエズゲート)

~一妻多妻の嫁嫁嫁嫁(いっさいたさいのビッグマミィ)~

文法がどうとか意味がどうとかは誰も気にしない。強引なんて誰も思わない。

それだけの個性を洋榎は持っているのだ。

洋榎「おーおー!ええ調子や!今日も体が軽いでぇ!」

458兵Y「甘い!後ろが空いてるわ!」

洋榎「へ?」

洋榎(しもた……しゃあない。一発覚悟や)


??「後ろを振り向かないちゅうのはある意味前向きやけど、それだけやとあかんで?」

458兵Y「えっ……?」

バシュッ!!

458兵Y「か……はっ……」

458兵Z「!?大丈夫!?」

458兵Y「………………トキリュー!」

458兵Z「え……?」

458兵Y「トキリュー?トキリュー!リューカリューカ…………リュー……カ」ドサッ

458兵Z「これ……は……まさか!」

竜華「バッチリ、命中やな」

怜「ほんまやなぁ」

そこにいたのは、関西屈指の名門である千里山女子に通う、関西屈指のイチャイチャカップル。

常に竜華は怜を膝枕し、怜は常に竜華に膝枕されている。

竜華は怜に膝枕をするのが大好きで膝枕をすることを幸福に感じ、

怜は竜華に膝枕をされるのが大好きで膝枕をされることに幸福を感じる。

どちらが主導権を握っているのか、2人の間でも曖昧だ。

『膝枕させてもらってる』のか『膝枕してもらってる』のか?

日と気分によって変化するそれは、まさしく『メビウスや輪』と言えよう。

怜「さて……〔怜と竜華の日常(バカップルデイズ)〕を使うか、それとも……」

竜華「うちに任せて!怜は休んでてええで!」

怜「竜華……ほな頼んだ」

竜華「うん!行くでー!」

458兵Z「え……?」

竜華「はあっ!」バシュ!

458兵Z「ビーム!?情報では園城寺がやられるまで撃てないはず…………きゃああ!!」バタッ..

竜華「ふふん!〔リリース(Lilys×Release)〕をマスターしたおかげで、自由に撃てるようになったんやでー♪」

洋榎「ほぉお……そら心強いことやな。けど、間違ってうちに当てんといてや?」

竜華「うん、気ぃ付けるわ~……っと」バシュ!

458兵たち「ひぃっ!?」

怒り状態にならずともビームを発せられるようになった竜華の凶悪さは、まさにドラゴンと呼ぶに相応しい。

ばったばったと敵を倒していく。

洋榎「む、やるな清水谷。けど、今のところ撃破数はうちの圧勝やでー!すごいやろ!?」

怜「スピリチュアルやね」

洋榎「ちゃうわ!実力じゃ!」

怜「……ま、ええわ。休んどこ」コホコホ..

怜は休憩モードへ。

地面に敷かれたシートへ座り、静かに恋人の頑張りを見つめる。


憩「うんうん、その方がええよ~」

その隣では、シートの持ち主白衣の天使、荒川憩が笑顔を浮かべて座っていた。

いつもニコニコあなたの隣で牌寄るポン、ロン。

献身的な介護能力は大阪一であり、憩がいるからこそ、洋榎はガンガン前に出られる。

……いや、憩がいなくてもきっと洋榎は前に出る。だが、いざという時に安心だ。

怜「ん。けど……あんたはここにいてええの?」

??「…………ダルい……」

ニコニコ笑顔の憩の隣で寝転寝転(ねころねころ)しているのは、宮守女子の小瀬川白望。

やる時はやるけどいつもダルい。

そのバイオリズムは激しく波打ち、揺らぐ曲線は眉毛以上。

ここまで来てくれただけでも感謝するべきなのかもしれない。

怜「……ダルいんならしゃあないんかなぁ……?ま、ええわ。それで……」チラ

豊音「」

怜「……なんであんたは戦わへんの?」

豊音「えー?クリア条件は対面をトビ?ちょーむずかしいよー」ピコピコ

怜(…………ゲームに夢中になっとる……全然聞いてへん)

白望の隣に座っているのは、姉帯豊音。

敵をも強化してしまう能力の持ち主。

そのため留守番を命じられ、電池抜きのゲームボーイアドバンスを渡されていたが、

携帯ゲームなら出先でやれることに気付き、ゲームをプレイしながら白望や塞のあとを追いかけてきた。

トシ曰く、

『やれやれ』

だそうだ。

怜「…………」

憩「…………」

白望「…………」

豊音「…………」

眼前では激戦が繰り広げられているが、このシートの上は平和そのもの。

コホコホ、ニコニコ、寝転寝転、ピコピコ………なんと静かなオーケストラ。

白望「……あの……」

怜「?」

白望「……敵がこっちに来たら……ちゃんと戦う……けど、ほら……あれ」

怜「?」チラ

純代「おおおお!!」

458兵たち「うぎゃーー!!」バタバタバタ..

白望「……あの様子だと、助っ人いるかな……って感じ」

怜「……確かに……」


純代「はああああ!!」

洋榎たちの登場によって勢いを失った458兵を圧倒する純代。

迫りくる敵を次々と葬っていく。

リリースによって引き上げられたその攻撃力はまさに鬼のよう。

東西決戦で失われつつあった自信を取り戻したことで精神面も充実している。

その実力に疑問符を抱く者は誰もいない。

そんな彼女を、人はこう呼ぶ。

『とある長野の超重量級(ヘビーウェイト)』、

『体重計殺し(スケイルズブレイカー)』、

『糖尿病危険度レベル5』。

呼び名は数々あるけれど。百合愛は増加の一方通行だ。

今の彼女を止めるのは非常に困難だろう。

方法があるとするならば、強力な攻撃をぶつけるか、あるいは…………強制的に操るかしかないだろう。

??「♪~」カキカキ..

そう、可愛くてキュートな天使――エイスリン・ウィッシュアートちゃん――のように。

エイスリン「デキタ!」

458兵AA「えっ?ええっ?体が……勝手に……」フラフラ..

458兵AB「嘘……!動かない……」

458兵AA「……『ABちゃん』……」

458兵AA(な、なんなのー!?私、喋ろうとしてないのに!!)

458兵AB「えっ?AAちゃん?」

458兵AA「『私ね……ずっとABちゃんのこと……好きだったんだよ?』」

458兵AB「!?な、ななな……そんなこと言われても…………わ、私は……GRAND M@STERのことが……///」

458兵AA「『大好き……これからは…………私を……見て……』」チュッ..

458兵AA(きゃああああ!!やめてやめて~~!!)

458兵AB「!?!?!?」

458兵AA「『うふふ……まだまだ本番はこれからだよ?んっ……ちゅ……』」

エイスリン「イエス!」

〔エイスリンちゃんの描くとおり(エンジェルドリーム)〕。

〔リリース(Lilys×Release)〕を会得し、パワーアップしたエイスリンの能力である。

エイスリンが描いた絵、そしてその絵に込めた願い(という名の命令)を相手にお願い(強要)する。

すると描かれた相手は、エイスリンの願い(という名の命令)を叶えるために頑張ってくれる(操られる)。


458兵AA「『れろ……ちゅ……ABちゃぁあん……///』」

エイスリン「ワンダフル!ヤッタネ!」

この能力は戦闘以外でも抜群の汎用性を誇り、今現在洋榎たちとこの場にいられること自体がエイスリンの力によるものである。

宮守女子は、約束の場所である某県へと向かっていた途中、458兵の妨害によって足止めを受けていたリリーフラワーガーデンと合流した。

458兵の数は多く、リリーフラワーガーデンを以てしてもそう易々と突破できそうになかった。

時間に遅れると、先行した長野勢が孤立する。これを避けるにはどうすればいいか。

カップラーメンで舌をほんのり火傷したトシを筆頭に、頭を悩ませる。

そして出た結論が『リリーフラワーガーデンと宮守女子の主力メンバーを長野勢の元へ向かわせること』。

その他の人間――両組織の兵たち――はこの場で458兵と戦い、主力メンバーたちを戦場へ向かわせる手助けをする。

〔リリース(Lilys×Release)〕を使えない以上、長くは持たないだろうが、覚悟を決めた彼女たちに迷いはなかった。

そしてこれから作戦開始という時に、幸運な出来事が起こった。

リリーフラワーガーデンに所属する非戦闘員の医療班の子が、458プロの連絡係を発見したのだ。

この偶然に対し、舌を火傷していたトシは、

『ほへをひほうひはいへははい』

と言い、誰にも伝わらず、もう一度言い、さらに伝わらず。

エイスリンのペンを借りて、

『これを利用しない手はない。だよ』

と書いて、ようやく『ああー』となった。

あとは連絡係の彼女をエイスリンの能力で操り、足止めが成功しているように伝えさせ続けたのだ。

エイスリンの能力の効果範囲の都合上、連絡係の彼女を同行させなければならなかったが、

エイスリンの魅了によって操られずとも味方してくれるようになった。

そのため、健夜たちには足止めが成功していると思わせることに成功。さらに連絡係の子から隠し階段の位置も聞き出し、洋榎たちの到着が早まったのである。

458兵AC「だ、誰かあの子を止めて!」

458兵AD「それどころじゃ……ないわ!来たっ!」

458兵AC「え……?」

ヒュン..ドスッ..

458兵AC「か……ふ……ぁ……」ドサッ!

458兵AD「AC!?」

ヒュヒュヒュッ..

ドサドサドサ...

458兵AE「み、みんな!?どうし…………あ、あ……」

??「…………」ニヤリ

458兵AE「愛宕……雅枝…………!」

何故味方が倒れたのかという疑問。

見回したことでその理由に気付いたことへの驚愕。

そしてこれから自分も同じようにやられるのだと自覚した恐怖。

まるで流れるような敗北への道筋は、彼女がこの場に立った時点で決まっていたかのよう。


雅枝「行くでぇ…………ボケがぁ!」タタタッ!

トラ・トラ・トラ!(ワレ奇襲ニ成功セリ)

気合と共に吐き出されたのは、百合と同等レベルに達する猛虎魂。

その叫び声は部屋中に響き渡るほど木霊し、ド迫力。

生半可な子供騙しは通用しないだろうと誰もが思うはずだ。

ちなみに、『ワレ』とは『我』であり、関西特有のフランクなやりとりで使われる『おう、ワレェ』の『ワレ』ではない。

458兵AE(騙し討たれた子たちと違って、私は正面から迎え撃てる。ここはカウンターを狙って……)

雅枝「ああああああああああん!?」ギロロロロロロォ!

458兵AE「ひぃいいいい!」

返り討ちを狙ったAEだったが、雅枝の得意な睨みつけによって体が硬直してしまった。

もはや戦意喪失したも同然だろう。

だがそれも仕方のないこと。

雅枝の目を見た者は、きっとこんなイメージを浮かべる。、

『バイクの免許を取得しており、ヘルメットなしで運転しても気にしないほどスピードに強く、難しい漢字が得意な物知りで、カラースプレーの扱いに長けており、バットを折らないように釘をたくさん打ち込める職人技を備えている』……そんな人物。

雅枝がそうであるかは定かではないが、一度頭にこべりついたイメージはなかなか剥がせない。

怯え、震えるAEは、ただ棒立ちのまま雅枝の鎌を受けた。

458兵たち「うぅ……」

雅枝「おっしゃあ!いくでぇ!」

LFG軍たち「おおおお!!!」

勢いよく突っ込む雅枝に続くは、〔リリース(Lilys×Release)〕を会得したLFG軍400人。

地上にて足止めをしにきた458兵の相手を〔リリース(Lilys×Release)〕の使えない者たちに任せ、主力メンバーと共に先行した精鋭たちだ。

458兵AF「うっ……」タジ..

458兵AG「恐れないで!人数を考えるのよ!合流されたとはいえ、数では圧倒的にこっちが有利なんだから!」

458兵AF「そ、そうよね……だったらまだ…」

??「それは違うのよねー」

458兵たち「!!」

塞「数だけが全てじゃないから」クスッ

458兵たち「臼沢……塞!」

颯爽と現れたのは、宮守女子の臼沢塞。

ルックス良し、スタイル良し、性格良しの三拍子。

1に幼女、2に幼女、3歳の幼女もちストライク。

前髪と共に切り落としたのか、好みの子の年齢は幼女で止まったまま。

岩手が隠す、ロリ愛好家。保母さんを目指す百合妄想士だ。

458兵たち「う、後ろにいるのは……?」

老婆たち「…………」

トシ「ふふふ……見たまんまさ。老婆だよ。オール老婆ーズ」

458兵たち「あっ……ま、まさか……」

トシ「まさかなんて言っちゃダメさ」ニヤリ


458兵たち「臼沢塞を回復させるための……!」

塞「……ふふっ」

塞が老婆(トシ含む)を引き連れてきたのは、458兵の言うように回復役としてである。

銭湯が大好きな老婆らは、トシと塞が銭湯へ行った際に仲良くなった湯あみ友達だ。トシによるカップラーメンの餌付けの成果もあり、今回の戦いに同行してくれることとなった。

いつでも回復できるように塞と共に行く。この老婆たちはロックマンでいうE缶だ。

塞「それに……おばあちゃん以外にも……」

宮守軍「…………」ザッ!

老婆ーズの背後には宮守軍100人。

塞「……と、いうわけで……早速だけど……」

458兵たち「ひっ!?に、逃げっ……」

塞「〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕」

458へいたち「あ……からだが……ちいさく……」

塞「〔 幼 女 操 作 ( よ う じ ょ ・ コ ン ト ロ ー ル )〕」

458へいたち「ぎ……う、ごけ、な……」

塞「………………」テクテク...

458へいたち「あ……あぁ……た、たすけ……」

塞「」サワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリサワリ

458へいたち「いやぁぁあああ!!!」

塞「…………ま、時間もないし、この辺で終わりだね」

458へいたち「ぁああ……あぁ……」ドサドサドサ...

塞「あれっ?これから〔絶対幼女(アブソリュート・ようじょ)〕使おうと思ったんだけど……ま、いいか」

老婆A「…………」ゴソゴソッ(ちゃんちゃんこを脱ぐ)

塞「あ、まだ大丈夫ですから」ニコリ

老婆A「あら、そうかい」

トシ「潔さは買うよ。次、頑張りな」

老婆A「ありがとうねぇ」

塞「よしっ!まだまだ行くわよー!」

宮守軍「はいっ!」


【総司令室】

健夜「………………」

咏「わぁあー!もうメチャクチャだぁ♪こうまで形勢逆転するもんっすかねぃ?」

健夜「……そうだね。あっけなくひっくり返されちゃった」

咏「どうします?別にエリアAだけで決着つけなくてもいい気もするんすけど」

健夜「…………そうだね……でも……せっかくだから」

健夜「……次の1000人、投入しようかな」

咏「おおーっ!?攻め手を緩めない!これぞ常道……かはしらんけど」

健夜「私もこれが正しいかわかんない。でも、ちょっとだけ……」

健夜「調子づいてるあの子たちの鼻をへし折ってみたくなっちゃって」フフッ

咏「ぅお」ゾワッ

咏(さっすが……半端ない迫力だねぃ……抑え込んでるつもりなんだろうけど、すっげー出てっし)

健夜「…………」ピッ

健夜「もしもし。エリアBの皆さん、聞こえますか?次の1000人、エリアAへ移動してください」

健夜「……………………聞こえてますか?」

咏「……どうしたんすか?」

健夜「……『うっうー』がありません……」

咏「『了解なのー』は?」

健夜「それもありません……」

咏「…………てことは……」

健夜「…………まさか……」

??『ふぇ……』

健夜「!もしもし……?」

??『ふぇ…………』

咏「ふぇ?」

健夜「……Fate/Kaleid linerプリズマ☆イリヤ ツヴァイ!のキスシーンの話ならあとで聞くから、今は……」

??『ふぇっくしょいいいい!!!』

健夜「クシャミ…………らんま1/2のあかねと女乱馬の話?」

咏「いや、違くねっすか?」


【エリアC】

穏乃(…………やっべー。ついクシャミしちゃった……せっかく潜入捜査を憧に任されたって言うのに……うかつだったー…)

穏乃(私、人前以外だと100%全開のクシャミしちゃうからなー……ここは手で押さえるとか小細工すべきだったかも……)

健夜『……そこにいるのは誰?』

穏乃「!!」

穏乃(わああ!どうしよう!?そ、そうだ!こういう時、憧ならどうするかを考えればいいんだ!)

穏乃「………………」

穏乃(…………でも……『敵の秘密基地に潜入してる最中にクシャミで居場所がバレそうになった時』の憧を知らないや……)

穏乃「………………」

穏乃(こ、こういう時は無視だよね!もしかしたら勘違いだと思うかもしれないし)

カチャ..キィー...

憧「………………」ソローリ..

穏乃「あ、憧ぉっ!!いいところに来てくれた!ねぇ、助けてよ!!」

憧《!ちょ、しずっ!》

穏乃「敵の秘密基地に潜入してる最中にクシャミで居場所がバレそうになったら、憧はどうする!?教えて!」

憧「………………」ハァ..

穏乃「…………え?あっ…」

憧「………………」

穏乃「……………やっちゃ……った?」

憧「………………」コクリ

穏乃(…………いや、まだだ!諦めるわけがない!もしかしたらバレてないかも…)

健夜『すごいね。私たちに気付かれないように侵入したんだ?』

穏乃(バレたーーーっ!!で、でも……私たちの正体には気付かれてない!だったら……絶対に諦めな…)

健夜『声と会話の内容からして……阿知賀女子の高鴨穏乃ちゃんと、新子憧ちゃんかな?』

穏乃(大正解ーーーっ!!)

憧(まったく……しずったら…………多少力を消耗するとしても、敵地ではプライベート回線を使うって話だったのに)ハァ..

穏乃《ぅう……どうしよぅ……あこぉ……》ウルウル..

憧「っ!」キュン!

穏乃《私のせいで…………バレちゃったよぉ……ぉ……ぐす……》

憧(ど、どうしよぅ……しずが可愛すぎるんだけどっ!)キュキュキュン!

穏乃「ぐすっ……」

憧(可愛すぎるせいで……たまらなくなっちゃった…………で、でも……ここは我慢しないと……///)モジモジ..

憧《と、とにかく!ここから出てみんなと合流!一応この施設の見取り図はチェックできたから!》タタタッ

穏乃《あ、うん!わかった!》タタッ


【総司令室】

健夜「…………」

咏「どうっすか?」

健夜「…………返事がない。作戦ではエリアBの連絡係の子たちが何人か電話前で待機してたはずなんだけど……高鴨さんたちにやられちゃったかな?」

咏「……それがマジだとしたら……どうやって中に入ったんすかねぃ?」

健夜「うーん……」

はやり「それなら、私知ってるよ☆」ガチャ

健夜「え?」

咏「起きたんすね」

はやり「うんっ☆よく眠れたよぉ♪」

健夜「あの……知ってる、とは?」

はやり「あの子たちね、エリアBの方の入り口から入って来てたよ?」

健夜「!」

咏「……どうやってっすか?隠し階段の場所はわからないはずっしょ?事前に下見に来てたとしても絶対気付かれないように、今日まで入口は塞いでたんすよね?」

はやり「そうなんだよね☆不思議ー」

咏「…………ハギヨシさん、だっけ?」

ハギヨシ「はい」スッ

咏「ハギヨシさんはどう思います?何故地下への入り口がわかったのかについて」

ハギヨシ「いえ……私にはわかりかねます」

咏「ふーん……」

理沙「それより!」プモッ!

はやり「はや?」

理沙「待機してた子!」プムッ!

咏「あ…………エリアBで待機してた1000人……」

はやり「奇襲にあってる……かも?」

健夜「……カメラ切り替えるね」ピッ


【エリアB】

458兵たち「うっうー!?」ドサドサドサ...

458兵AH「みんなっ!こ、この……っ!」

晴絵「………………」

458兵AH(あいつ1人に100人以上やられた……絶対、許さない!!)

晴絵「………………」

458兵AH「ああああああ!!」タタタタッ!

晴絵「おおっ……特攻?甘いよ」

458兵AH「あああああっ!!!」

晴絵「〔 亀 頭 、 夢 は 叶 う ( ド リ ー ム ズ カ ム ト ゥ ル ー )〕」

458兵AH「ひぃいぃっ!?」

〔亀頭、夢は叶う(ドリームズカムトゥルー)〕。

ち○ぽのサクセスストーリー。サイズや弾力などをある程度変化させられる技だ。

晴絵「……ふたなりっ娘のち○ぽは固さを取り戻し、さらに数センチの成長を果たす……」

458兵AH「いやぁ……いやぁぁあ……!」

晴絵「……ごめんね?本当は優しくしてあげたいけど数が数だから……まとめて相手させてもらう!」

チポォォォ..!

晴絵「はああああ……!」

458兵AH「あ……あぁ……」ガタガタガタ..

晴絵「宮永流ぽち○ぽ忍法……」

晴絵「〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!」

チポジョバァァァァァァ!!!!

458兵AH「―――――!!」

〔尿道炎・膀胱砲(にょうどうえん・ぼうこうほう)〕。

宮永界が尿道炎になった際に苦しみに耐えながら尿道炎っ娘を介護する保健委員の子とのカップリングを妄想したことにより生まれた技。

そして尿道炎が百合へと繋がり得るとした界は、

膀胱から愛の波動を放出する技へと昇華させたのだ。

晴絵「はああ……!」

ジョババポチンポチポッポジョーン...

458兵「え?なに?この聞いたことない音は………」

〔亀頭・夢は叶う(ドリームズカムトゥルー)〕との合わせ技により、

晴絵が繰り出したふたなりち○ぽは急成長し、口径――尿道――が大きくなった。

つまり発射される膀胱砲の威力・範囲は増し、

ボジョチポォオオオォ...バジョッポチーン..

458兵たち「ぎぃぃぃやああああああああ!!!!」

晴絵「…………これも百合さ」

阿知賀のレジェンド、赤土晴絵。

彼女が新しい伝説を作るのは、今日なのかもしれない……。


458兵AI「…………ちょ、ちょっと……あんな変なのがいるなんて聞いてないわよ」

458兵AI(でも……あの変なのをどうにかしないと…………ここは少し引いて、背後から攻撃するのー……)ソローリ

晴絵「あははは!私、強ぇえ!いけるっ!」ポチチッ!

458兵AI(よし……このままゆっくり近付く……)

晴絵「まだまだぁ!あははは!」

458兵AI(……なんか浮かれてる……ビックリするくらい隙だらけね……)

AIが晴絵の背後へと近付く。

しかし晴絵は膀胱砲の威力に酔いしれており、気付く気配はない。

このままでは奇襲を受けてしまう。

膀胱砲は高火力だが、基本的に遠距離攻撃のため、ち○ぽの付け根にまで入り込まれてしまえば、どんなに中折れしても攻撃は届かない。

虚をつかれたのと相まって、しばらくの間はいいようにやられてしまうだろう。

458兵AI(うっうー!もらったわっ!)シュバ!

??「さすがに甘…」

458兵AI「え……」

それは一瞬。

ペロン..ズルッ..ズポ!!

耳元で聞こえた声に反応したその瞬間に、AIのスカートはめくられ、パンツを下ろされ、お尻に親指を挿れられた。

458兵AI「っ……ぎ……がが……ごお……」

どうしてこんなことをするのか。

そしてこんなことをしたのは誰なのか。

ここは現代の日本。急にお尻に親指を挿れる風習はない。

では一体この親指は誰の指なのか?

戸惑うAIは、ふと健夜に言われたことを思い出した。

健夜『この子はリリーフラワーガーデン所属の要注意人物の1人だね』

健夜『この子と戦う時は決してお尻を丸出しにしないように』

458兵AI(そうだったわ……名前は…確か…………)

??「…………」

458兵AI(鷺森……鷺森灼!!)

灼「……………」

そう……たった今AIのお尻に突き挿れた指を手ぬぐいで吹いている人物こそ、健夜が語っていたという要注意人物。

性器とお尻に指を近付けてくるおかっぱのユリボウラー。

一撃必殺の奈良県人、鷺森灼だ。


灼「ハルちゃんはやらせな…」

458兵AI「う……ぅ……」ガクッ..

晴絵「ん?なんか倒れた音がしたけど…………お!」

灼「…………」

晴絵「灼じゃん!1人仕留めたのか。やるねー」

灼「べ、別に……///」

晴絵「こっちおいで。いーこいーこしてあげる」

灼「い、いいって……そんなの………もう高校生だし……」

晴絵「あ、そっか。だよなぁ。ごめん、子ども扱いしちゃって」

灼「あ……」

晴絵「よし、じゃあ引き続き戦闘に…」

灼「ま、待って……」

晴絵「ん?」

灼「……が、頑張ったら褒めてもらうのは……その……子供とか関係……ない……から……///」

晴絵「そっか。じゃあ、おいで」

灼「う、うん……///」テクテク

晴絵「灼……頑張ったね」ナデナデ

灼「ん……///」

晴絵「素早くお尻の穴に指を挿れて……偉いな」ナデナデ

灼「別に……慣れてるから……///」

458兵たち「………………」

458兵たち(今なら攻撃されずに近寄れる…………でも……)

458兵たち(あんなラブラブなやりとりを邪魔できないっ!!

??「みなさーん!こっちを見るですよー!」

458兵たち「??」クルッ

458兵たち「!!!!!」

声のする方向へ振り向いた一同が目にしたのは褐色の巫女。

その姿に、全員が驚愕する。それは何故だろうか?

褐色だから?それもある。

巫女服が珍しいから?それもなくはない。

だが決定的なのは、その巫女さんが……

全裸初美「あははははー!」

全裸であること。

全裸初美「地下でもスースーするですよー!」クルクルクルー!

神聖な巫女さんが全裸で踊るわけがない。

地下であることから、アダルトビデオの撮影かと錯覚してしまう。

それはつまり『AVなのか?VSなのか?』の二択で迷ったということ。

迷ったということは、隙が生まれたということ。

その隙を見逃すまいと近付いてくる影が1つ。プラス揺れる乳の影2つ。


??「よいしょ。ごめんなさいね」タタタ..

458兵たち「………………はっ」

ボイーーーーーーン..

霞「うふふふ……」

458兵たち「………………ばぶー」

〔母なる大乳(ははなるだいち)〕。

巨乳すぎる巫女、石戸霞の母性により、458兵たちは赤ちゃんたちへと変化した。

458兵たち「ばぶー……バブー」

赤ちゃんとなって立ち尽くす彼女たちはもはや戦闘能力を失った。

バブーのコーラス隊として奏でるしかできない。

458兵AJ「くっ……永水の巫女…………だったらこっちは、数で押すしかないわ!みんなっ!!」

458兵たち「うっうー!!」

霞「あらあら……いっぱいいるわねぇ……」

AJの号令によって集まった数は50。全員の顔におっぱいを押し付けるのは至難の業だ。

霞「困ったわ……どうしましょう?」ウーン..ウーン..

そう言って首を左右に傾けると胸が揺れる。谷間が擦れる。つまりは蒸れる。

458兵たち「みんな!行くわよっ!」タタタタッ..

霞「…………さて」

霞(ここは一旦退くべきかしら?)

??『三連覇は、私たちの一大目標です!そのためにも、明後日の準決勝は負けられません』

霞「あら?この声は……」

聞こえてきたのは宮永照の声。

??「…………」テクテク..

この場にいない照の声が、誰かが抱える人形の中から聞こえる。

照人形『今年も、手強いチームが多くて、試合がとても楽しみです』

霞「………うふふっ」

その人物は人形を抱きかかえたまま霞の傍へと歩き、その人形を手渡した。

照人形『一生懸命頑張ります!応援、よろしくお願い致します』

??「照さんを預ってもらっていいですか?」

霞「ええ、もちろん。じゃあ、あの子たちはお任せしちゃいますね」ウフフ

??「はい」ニッコリ

照人形『三連覇は、私たちの一大目標です!そのためにも、明後日の準決勝は負けられません』

458兵たち「ぅおおおおおお!!!」タタタタ!

照人形『今年も、手強いチームが多くて、試合がとても楽しみです』

??「では行ってきますね……あ、照さんはどうですか?」

照人形『一生懸命頑張ります!応援、よろしくお願い致します』

??「あ、はいっ!私、精一杯応援しますっ!照さんも頑張ってくださいね!」

458兵たち「うっうーーーーー!!」

霞「ではお願いします…………小蒔ちゃん」

小蒔「はいっ!」


458兵たち「覚悟ぉおお!!」

小蒔「〔 八 咫 鏡 ( や た の か が み )〕」

458兵たち「!?!!?」

神代小蒔。霧島神境の姫。

薔薇妄想士と百合妄想士の娘。

彼女の繰り出した八咫鏡は、妄想内の性別を反転させる。

最強の百合妄想士にして、最強の百合妄想士キラーだ。

458兵AK「な、なに……これ……!?」

458兵AL「私の妄想が……男の子になった!?」

小蒔「あまり照さんと離ればなれになりたくないので……」

そう言い、小蒔は流れるような動きで

〔天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)〕を放ち、458兵たちの防御力を奪い、

最大級の破壊力を誇る〔八尺瓊の勾玉(ヤサカニノマガタマ)〕で、50人がかりで仕掛けてきた彼女たちを一掃した。

458兵たち「………………」ドサドサドサ..

小蒔「ふぅ……霞ちゃん」

霞「はい、どうぞ。人形よ」

照人形『三連覇は、私たちの一大目標です!そのためにも、明後日の準決勝は負けられません』

小蒔「えへへへ……照さん…///」ギュッ

頬を赤らめて人形を抱きしめる小蒔。

霞「さて……」

毎秒胸揺れを実現化させている霞。

全裸初美「あははーですよー!」

全裸がフォーマルな初美。

そんな彼女たちの背後には、

巫女軍団「………………」ザッ!

〔リリース(Lilys×Release)〕を会得した優秀な巫女さんたち。

圧倒的な強さと存在感を誇る永水女子、ここに参戦―――


【総司令室】

はやり「あっれれ~?あの人数でもうピンチになっちゃってるのぉ?」

咏「小鍛治さん、これちょっと予想外だったっすねぃ?」

健夜「…………」

咏「宣戦布告したはいいけど、それがきっかけで〔リリース(Lilys×Release)〕の秘密にたどり着かれた……さらに、こっちの想像以上の力を身に付けてる……いやぁー、まいったまいった」

健夜「…………そうだね。少し計算外だった。甘く見過ぎてたかもね」

咏「……けど、過程は計算外かしらんけど、最後に勝てばよくね?ってやつっすけどね」

健夜「うん」

はやり「はややぁー……だったらどうする?」

健夜「…………とりあえずエリアAの連絡係に伝達して。ある程度の人数でエリアBへ向かってもらいましょう」

咏「ふむ。とりあえずBにいる子たちを先に潰すと」

健夜「うん。だってエリアBの入り口付近には……」


【エリアB】

透華「……このエリア入口からの援軍はありません。ですので他の通路からの侵入を警戒するべきですわね」

一「そうだね。ここへの入り口がある地上は、リリーブライド軍と宮守女子軍の子たちに加え……」

久美子「我らがリリーブライド会長が守ってくれていますからね」フフッ

一「ほんと助かったよ。後でお礼しないとね」

透華「ええ。会長さんが助けてくれたおかげで、なんとかここへ逃げ込めましたわ」

久美子「ただ……逆を言えば、こっちから外に逃げることもできないんですよね……外は敵の方が多いですし………」

一「……確かに」

久美子「それにLB軍も宮守軍も、458兵と違って全員が〔リリース(Lilys×Release)〕を使えるわけじゃありません。ですから普通に戦えばかなり不利です。それをなんとか耐えていられるのは会長がいるからで……」

透華「……そうですわよね……その負担、想像しただけで……」

久美子「……はい。でも会長ならきっと大丈夫……と、普段ならそう思えるんです………けど」

一「けど?」

久美子「パンチラしたんです」

一「………………え?」

久美子「会長、パンチラしたんです」

透華「それは…………どういう意味ですの?」

久美子「パンチラした会長……大丈夫でしょうか……?」

透華「…………」

透華(説明してくれませんのね……)

一「…………心配と言えば、ハギヨシさんのこと……」

透華「……ええ」

久美子「え?ハギヨシさんもパンチラしたんですか?」

透華「してませんわ」

久美子「じゃ、じゃあパンモロの方を……?」

一「ち、違うよ。なんでパンツが出てくるの?」

久美子「なんだ……」ホッ

透華「……ハギヨシは私たちの元を離れ、458プロのところへ行ってしまったのですわ」

久美子「えっ?じゃあ……今は……」

一「…………」


透華「普段は今まで通り龍門渕家で執事として働いてくれておりますけれど……百合絡みの件になると、ピュイーッと458プロのへと行ってしまいますわ」

久美子「あ、だったら完全に敵というわけじゃないんですね」

一「そうですね……でも458プロのことは何も話してくれませんし……」

久美子「そんな……龍門渕さんたちの傍で百合に関われて幸せそうな顔してたのに……」

透華「……ですが……ハギヨシからしてみれば、私たちといるよりも458プロへ行った方が幸せだと言えるのかもしれませんわ」

久美子「ど、どうしてですか!?」

一「……ハギヨシさんはすごく器用なんです。いいシナリオを書きますし、絵もすごく上手い。時々同人活動をしているんですけど、同人誌の売り上げもなかなかみたいです」

久美子「それが一体……」

一「…458プロには小鍛治さん以外にもすごい作家さんが所属しているみたいだし……ハギヨシさんにしてみれば自分の力を試したくなるかもしれません」

透華「458プロとしても、10ヶ国語以上扱えるハギヨシは、世界を相手にする上でかなり重宝するでしょうし」

一「それに……」

久美子「?」

一「最近、ハギヨシさんがよく鼻歌を歌ってて……」

透華「あのハギヨシが!?」

一「うん。しかもその歌は『はやりりはやりららら大神殿』なんだ」

久美子「瑞原はやりさんのシングル曲ですね。ゆるゆりのパクリと噂の……ということは、ハギヨシはもしかしたら瑞原プロに憧れて寝返った線もあると……」

透華「……ええ。ただ……」

458兵AM「うっうー!!」ガバッ!

久美子「!?」

透華「!!」

一「しまった!接近に気付かなかっ……」

会話に夢中になり、無防備な透華たちに襲い掛かる。

3人とも棒立ちのまま戦闘態勢をとれない。このままではやられてしまう。

??「はあっ!」

しかし1人の女性が透華たちの前に立ちはだかり、AMの攻撃を跳ね除けた。

458兵AM「うっ!?な、なに……あなた……」

??「ふふふ……名乗るほどの者ではない」

久美子「鶴賀の加治木ゆみさん!助けてくれてありがとう!」

458兵AM「む。鶴賀の加治木ゆみっていうのね。覚えたわ」フム

ゆみ「……あの、埴淵さん。こういう場合は名を呼ばずに……」

458兵AM「では改めて……覚悟!加治木ゆみ!」

ゆみ「……っ」

458兵AM《猫耳を付けておねだりするサーニャの可愛さに、エイラは『ショウガナイナ』と言いつつも興奮を抑えられず抱きしめる!!》

ゆみ(!なかなかの威力だ……百合妄想士になって日が浅い私ではとてもこれほどの威力は出せないだろう)

ゆみ(…………だが!)


ゆみ《〔 原 作 編 集 ( シ ナ リ オ コ ン ト ロ ー ル )〕》

458兵AM「!?」

ゆみ(『私を』を『抑えきれず』と『抱きしめる!!』の間へ挟み込む!)

458兵AM「え……っ……うっ……」

〔妄想編集(シナリオコントロール)〕。

その名の通り、相手の妄想を編集する能力。

今回の例でいうと、

『猫耳を付けておねだりするサーニャの可愛さに、エイラは『ショウガナイナ』と言いつつも興奮を抑えられず抱きしめる!!』

というAMの妄想を、

『猫耳を付けておねだりするサーニャの可愛さに、エイラは『ショウガナイナ』と言いつつも興奮を抑えられず『私を』抱きしめる!!』

と編集し、ゆみたちによる攻撃を自分へのダメージへと塗り替えた。

458兵AM「そ、んな…………エイラが私を……はぁぁ……///」ドサッ..

ゆみ「ふう……」

透華「助かりましたわ」

一「ごめんなさい。ボクたちは戦闘タイプじゃないから」

一が言う通り、透華も一も戦闘には向かない。

純粋な戦闘能力は、マリオで例えるならせいぜいパタパタレベル。

2人が真価を発揮するのは、百合作品を生み出す際のサポート時である。

透華の能力は、『ある一定以上の才能を持つ人物の作品に出会う確率を上げる能力』。

つまり才能ある作家や編集者、アニメーター等々、百合にまつわる人物と出会いやすくなるというもの。

ただし、才能を見抜く力は別物のため、透華がその才能に気付かずに通り過ぎてしまうこともある。

一の能力は、〔魔術師の指先(マジシャンズアシスタント)〕。

手品で身に付けた手先の器用さを存分に発揮し、

ベタ塗り、トーン貼りなどを神業レベルの速度と正確性で行えるというもの。

それに加え、密室内で漫画家と2人きりの作業、しかも頭がクラクラする夏場に、一が薄着でアイスをペロペロ舐めている状況でも、

『この子、私を誘っているの?だったら押し倒しちゃおう』という風には決して思われず、襲われる確率を限りなく0パーセントに近付ける能力。

ただ、絶対襲われないというわけではない。

例えば、上半身裸で作業し、相手の二の腕に乳首を押し当て、『ボクの心臓の音、聞こえる?』などと言ってしまった場合は襲われる。

以上のことから、戦闘に関して2人はザコキャラ♪だと理解できただろう。

久美子「すごいですね……」

ゆみ「……君たちの話を聞いていて気になったんだが……」

透華「…………何がですの?」

ゆみ「……龍門渕さん。君はハギヨシさんが敵になったとは思ってないのではないか?」

透華「!」

久美子「え?」

ゆみ「違うか?」

透華「………………ええ、加治木さんの言う通りですわ。私はハギヨシが完全に458プロ側になったとは思ってませんの」

ゆみ「その理由は?」

透華「……私たちがここに……地下にいるからですわ」


ゆみ「?意味がわからないが」

透華「……私たちがこの上……地上ですわね。そこへと着いたあと、458プロの妨害にあい、足止めされました……さらに入口もわからず……」

ゆみ「ああ……確かにそうだった」

透華「そんな時、このハンカチを見つけたのですわ」

久美子「それは……誰のハンカチですか?」

透華「これは私のです。ただ、今日持ってきていないハンカチなのです。本来ならこれは家にあるはずですわ」

ゆみ「ということは……」

一「……うん。誰かが持ち出して、どこかで落とした…………そう、龍門渕と関係がある人間が……」

ゆみ「なるほど。ハギヨシさんか……」

透華「そうですわ。そしてこのハンカチは地下への隠し扉に挟まれていました。まるで私たちに入口を教えるように……」

ゆみ「!」

透華「……これが偶然とはとても思えませんわ」

一「ハギヨシさんなら、ボクたちの移動ルートを知ることはできただろうしね。LFG軍、RB軍、巫女軍団の大人数による移動手段は限られてるし、資金的にも龍門渕グループが賄うしかないから」

ゆみ「……確かに、その可能性は考えられるな」

透華「ええ。そうなると、458プロ側へ行ったことにも、何か意味があったのかもしれませんわ」

一「うん。ボクはそっちの線が濃厚だと思う。ハギヨシさんが透華から離れるなんて、特別な理由がない以外ありえないと思う。その理由はわからないけど……」

透華「……私は、ハギヨシを信じますわ」

ゆみ「ふっ……なるほど。君たちは強い絆で結ば…」

久美子「ああっ!また敵が!」

ゆみ「!まずいな……数が多い。私1人じゃとても相手できない……かといって、他の人たちが戻ってこれる時間は……」

458兵たち「ハニィーー!!」タタタ..

ゆみ(……いや、やるしかない!敵の攻撃を編集し……反らす!)ピキュン!

458兵AN「きゃああ!」ドサッ

458兵AO「うわぁあ!」バタッ

458兵AP《少し前のminiminiのCM!女の子2人!!》

ゆみ(ダメだ……とても間に合わない!)

ゆみ「………………?」

ゆみ(攻撃がこない……?一体……)

??「真打ちは後から登場するものです!」

ゆみ(この声は……)

その献身さは全国1位。

親でツモられ300-500。失点わずかの500点。

それでも和了った人を喜ばせようと『親かぶり……』の一言。

他者を守り、他者を受け入れ、プラスマイナスどっちもすばら。

すばらで始まりすばらで終わる。煌はそういう人間ですから……。

誰もが必ずこう思うだろう。『こんな娘がいたら私はもう……』

娘にしたい女子高生雀士ランキングがあったら多分上位。

福岡のポジティブ百合妄想士、花田煌。

すばらっと登場である。


煌「すばらですっ!」

久美子「私たちを守ってくれた……?」

透華「〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕ですわね」フフッ

一「うん。加治木さんが対応できなかった攻撃を受け止めてくれたんだ」

煌「解説がとてもすばらですっ!そして……」チラ

ゆみ「ああ。わかっているさ!」

ゆみ《はああっ!》

458兵たち「くっ……でも大した威力じゃないわ!」

ゆみ《ならば……何度でも食らわせるのみ!》

煌「皆さんは私が守ります!」スバラッ!

458兵たち「……この子……なんて防御力……」

ウッウーー!!

透華・一・久美子・ゆみ・煌「!!」

一「な……」

458兵たち「うっうー!うっうー!」タタタタタッ!

ゆみ「増援だと!?」

458兵AQ(あれは……エリアAを攻めていた子たち!?助っ人に来てくれたのね!)

久美子「ま、まさか……敵がまた増えるの!?」

ゆみ「まずい……この位置では囲まれる…」

458兵たち「うっう…………っ!?」バタッ...

透華「え……急に倒れたですわ!?」

一「誰も攻撃してないのに……どうして……」

煌「すばらな謎です!」

ゆみ「!」

ゆみ(これは……)

458兵たち「うわああ…………」バタッ!

458兵AQ「助っ人に来てくれた子たちが………次々とやられてるのー……」

ゆみ(よし、間に合ったか……)

ゆみ「花田さん!みんなを頼む。私は増援部隊を叩く!」タタッ!

煌「おおぅ!?説明なしで単独行動!?勇気があってすばらです!」

ゆみ《ベストなタイミング………作戦通りだな……モモ!》

ユラー..

桃子《先輩のプランがあってこそっす》

458兵たち「あぁぁ……」ガクッ..

ゆみ(私とモモで二手に分かれて移動。私はこちら側の味方の状況を把握し、モモたちのグループと連携をとりやすくする)

ゆみ(モモはステルス性を活かして潜入行動と、味方同士で情報を共有するための連絡係……セキュリティのあるドアを敵と一緒に通れるモモだからこそできる業だ)

桃子《宮永さんたちの現状とかは、この人たちを倒してから話すっす》

ゆみ《ああ。頼む》


458兵たち「……はっ!?こうしちゃいられないわ!みんな!エリアA組を助けるわよ!」

ウッウー!!

ゆみ(!あっちも来るか……)

桃子《このままこの人たちに専念するっすか?それとも……》

ゆみ「!」

桃子《…………先輩?》

ゆみ《……いや、問題ない》

桃子「?」

458兵たち「うっうー!今、助けるのー!」タタタッ!

憧「盛り上がってるところを悪いけどっ……」ザッ

458兵たち「!?」

憧「あたしたちも混ぜてもらうわよ!」

桃子《あれは……阿知賀の……》

ゆみ《ああ。どうやら偵察から戻ってきたようだ》

桃子《……なんで……高鴨さんと服を交換してるっすか?》

ゆみ《………………わからない》

穏乃「あ、憧ぉぉ……やっぱり制服よりもジャージがいいよぉ……///」モジモジ

憧「何言ってるの!千里山の江口セーラは、普段は学ランだけど、試合中は制服なのよ!?」

穏乃「それは前に聞いたけど……今は試合中じゃないじゃんかぁ……」

憧「試合みたいなものよ!」ドドンッ!

穏乃「めちゃくちゃだよぉ……」

憧「いいから!あたしだって、なんの意味もなく服を変えたわけじゃないっての!」

憧(もちろん、しずが着てたジャージを身に付ければ、しずと合体できたみたいでキュンキュンするけど……それ以外にも……)

憧《しず!そこでスカートを押さえながら立ってて!》

穏乃「え?あ、うん……わかった」

憧《そのまま押さえててね》タタタッ

穏乃「??」

憧《行くわよー……せえーー……のっ!》グイッ!

穏乃「!!!!」

458兵たち「!?!?!」

穏乃の傍まで来た憧が行ったのは、寸止めスカートめくり。

穏乃がスカートを押さえる筋力を想定し、ギリギリの際どいラインまでめくり上げる。が、肝心な部分は見えない。

穏乃「あ、あ、ああ……な、なにするんだよっ!」カァァ..

憧「だって…………今日のしず、あたしとエッチするために勝負パンツ履いてきてるって言ったから……」

458兵たち「!!!」ザワ..

穏乃「えええっ!?い、言ってないよ!」

憧「……あたしは……履いてきてるよ?しずに…………脱がしてほしい……な……///」

穏乃「あ、憧……」ゴクリ


458兵たち「は、はぁぁあぁ~~……いいわぁああ……」ドサ..ドサ..

穏乃「……え?な、なんであの人たち倒れたの?」

憧「あたしの能力」

穏乃「憧の……?」

憧「そ。しずとイチャイチャすると相手にダメージを与えられるの」

穏乃「そうなんだ……」

憧(……ま、実際は『あたしの願望を実現すること』で攻撃するんだけどね……)

穏乃「…………」

憧「……しず?」

穏乃「じゃあ……憧は敵をやっつけるために私と服を交換したんだ……」

憧「ん、そうね」

憧(しずの匂いとかを感じたいっていう方が強いけど)

穏乃「…………憧のばか」

憧「え?」

穏乃「私はこんなにドキドキしてるのに……」ボソボソ

憧「?ごめんよく聞こえない、今なんて言ったの?」

穏乃「なんでもない!」

憧「…………??」

一「……あっちはなんとかなったみたい……」

久美子「どんどん敵の数が減ってる……みんなすごい……」

透華「…………」

一「……透華?」

透華「すばらですわーっ!!!!」

一「わあっ!?」

透華「あのお2人の関係!そして活躍!すばらという他ありませんわ!!」

煌「!?本人の前で持ちネタを奪うメンタル……競争社会を彷彿とさせてすばらです!そう思いませんか!?」スバラッ

一「そ、そうだね」


【総司令室】

健夜「………………」

はやり「はややー……2000人も投入したのに全然ダメだねっ☆」

咏「しゃあないっすねぃ。458兵とあの子らじゃ元々の素質が違うかも知れんし。どっちも〔リリース(Lilys×Release)〕使えるんじゃ差は顕著っぽいかなー?それに向こうの兵士もそこそこできるみたいだし」

はやり「健夜ちゃん、どうする?」

健夜「…………そうですね…………大軍を相手に戦えていることで調子に乗っているようですから……」

健夜「……この辺で少し現実を知ってもらいましょう」

はやり「わー、こわーい☆」

健夜「……咏ちゃん」

咏「ん」

健夜「エスコートしてあげて」

咏「……りょーかい」ニヤリ


【エリアA】

雅枝「なんやこれは……霧が出てきおった……」

雅枝(バイクでもふかしたんか?地下で何さらしてけつかんねん)

雅枝「ちっ……」

はやり「もうっ☆そんなに怒っちゃダ・メ・だ・ぞっ♪」

雅枝「!?は、はやりちゃん!」

はやり「そう!はやりだゾっ☆」キラーン

雅枝「めっちゃ可愛いやんけぇ!生はやっぱちゃうなぁ!!」

はやり「ありがとっ♪あ、そうだ。これからは愛宕さんは458プロとして一緒に戦ってくれない?」

雅枝「当然や!はやりちゃんのナイトとして一生懸命戦うで~!」

はやり「わぁ~!感激♪じゃあ一緒に行こ?」タタタ

雅枝「うおおお!走り方もめっちゃ可愛いなぁ!」ダダッダ..


【エリアB】

小蒔《〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ ) 〕ですっ!》

458兵たち「うぅ…………」ドサドサドサ....

小蒔「……いっぱい倒してしまいました……ね?照さん?」

照人形『今年も、手強いチームが多くて、試合がとても楽しみです』

小蒔「はい!同感です!」

458兵たち「うっうー!」

小蒔「えいっ!」ブゥンッ!

458兵たち「うっ……う……ー……」バタバタバタ...

小蒔「ふー……」

小蒔(………息つく暇もないですね………なんだかノドが乾いてきちゃいました……おちゃが飲みたいです)

フワ...

小蒔「え?」

小蒔(なんか……霧のようなものが……)

フワ..ユラ..

小蒔(周りが真っ白で見えなくなってしまいました……まるで車がいっぱい走ってるみたい……)

??「小蒔……」

小蒔「え?私ですか?」

??「小蒔………」

小蒔「?はーい。ここにいます」

??「小蒔…………」

小蒔「??」

小蒔(お返事したのに……音楽でも聴いているのでしょうか?では、もっと大きく頑張ります)スゥーッ..

小蒔「私はここですーっ!ここにいますっ!!」

照「あ、ここにいたんだ」

小蒔「ええっ!?て、照さん!?」

照「うん」

小蒔「え、う、あ……えと、その……ご、ごめんなさいっ!大きい声を出してしまって……私、はしたない……///」

照「そんなことない」

小蒔「…………照さん……///」

照「それよりも、この霧は敵の攻撃だから、ここにいたら危険」

小蒔「えっ?そうなんですか?」

照「うん。だから行こう」キュッ(小蒔の手を握りる)

小蒔「ひゃっ!?あぅ、え……あの……て、て、てて……///」

照「ほら」クイッ

小蒔「は、はいっ///」

照「…………」タタタタ..

小蒔「…………」タタタタ..

小蒔(夢みたい……私、照さんと手を繋いでます……///)


【エリアA】

久「………………」

久(妙ね……さっきまであれほど敵がいたのに、今は姿かたちもない……)

久(それもこれも、この霧が発生してから……)

久(ということは、この霧は誰かの能力の可能性が高いわね……)

智紀「あ、竹井さん」

久「!沢村さん……無事だったのね」ホッ

智紀「はい。竹井さんこそ」

久「他のみんなは?」

智紀「わかりません……霧のせいではぐれてしまって……」

久「……そっか……じゃあ……」

智紀「はい。協力して皆さんを探しに…」

久《〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )》

智紀「えっ!?竹井さん……な、何を!」

久「行くわよっ!」

久(石戸霞さんとのライバルフラグ!引き出すのは……)

久《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕》

久が〔無数の絆(フラグメーカー)〕を使って引き出したのは〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう) 〕。

おっぱいの感触を作り出し、飛ばす技。

触れた者は柔らかいその感触に負け、 戦闘意欲を奪われて眠たくなる。

智紀「な、なんで私を攻撃……!」

久「〔 爆 巨 …〕」

『くっ!バストがたりない!』

久「っ!」

技を繰り出そうとした久だったが、自身の心の奥から聞こえてきた声によって、途中で手が止まる。

久の本能が、このままでは……つまり『久のバストでは霞ほどの威力は期待できない』と告げているのだ。

久(わ、わかってるわよ!〔無数の絆(フラグメーカー)〕によるコピーで威力が軽減されてるし、本家に比べたら大した効果は期待できない。む、胸がどうとかいう以前の話!)

久(でも……この場合はそれでいい!)タタッ!

智紀「!」

久(距離を詰めて……………撃つ!!)

久「はぁっ!」ポヨォォォ...

智紀「っ!」ムニョン!

久(当たった!)

智紀「………………ふふふ」

久「………………」

智紀?「…………偽物だってよくわかったねぃ」

久の目の前にいる沢村智紀。その口から、別人の声が聞こえる。


久「……いえ、偽物と思ったわけじゃないわ」

智紀?「へぇー……じゃあどうして攻撃してきたの?」

久「簡単なことよ。いきなり霧が出てきて、敵も味方も誰も見えない……急にそんな怪しい状況が作られたのに、何もないわけないじゃない。だから先手を打っただけ。本物の沢村さんだった時のために手加減はしたけど」

智紀?「警戒するのが普通かもしらんけど、思い切ったことするねぃ」

久「……その喋り方。誰が元凶か、わざとバラしてると見た方がいいかしら?」

智紀?「さて?この声も喋り方も幻かもよ?もっと言えば、さっきまで戦ってたこと自体が……ね」

久「…………」

智紀?「…………というわけで……目的はある程度達成したし?ここは退散するねぃ。それじゃ…………また」

スゥゥゥウ..

久「…………消えた」

久(『また』……か。次に会う時は、今回みたいな顔見せじゃないってことね)フゥ..

サァァァー...

久(!霧が少しずつ晴れてきた)

久(今まで戦ってたことが全部夢なわけはないだろうけど、霧が発生してからの状況変化が気になるわ。一体どうなったことやら……)

ウッウー!!

久「!」

久(458兵がいる!霧が発生する前と状況は同じだわ!)

久「…………あれ、でも……」

久(味方の数が減ってる?もしかして連れていかれた?)

久(ただでさえ数的不利すぎるのに……)

458兵「うっうーー!!」

久「っ!」

久(嘆いてる暇はないみたいね!やってやろうじゃないの!)ニヤリ


【総司令室】

咏「ただいまー」

健夜「……お疲れ様。咏ちゃん」

はやり「相変わらず便利だよねー☆その能力」

咏「そっすか?」

はやり「だって相手が勝手に幻を見てくれるんでしょ?あとは咏ちゃんの都合のいいように誘導できるんだもん。す・て・き☆」

咏「んー……便利なんすかね。しらんけど」

健夜「これで少しはあの子たちにも危機感が出てきたかな?」

咏「おそらく。人数的には対して減ってなくても、味方がいなくなれば動揺するっぽいかもっす。しらんけど」

ガチャ

良子「グッドモーニングですー」

はやり「良子ちゃんおはよ☆」

良子「はいですー」

健夜「ちょうどいいタイミングで起きたかも」

良子「ワオ。今からがワンダフルラッシュですか?」

咏「そだねぃ。ほら、モニター見てみ?」

良子「ふーむ」

はやり「気になる部屋あるー?」

良子「そうですねー。やっぱり、エリアDでしょうか。神代小蒔が気になりまーす」

健夜「そっか」

咏「わかるわかる。なんといっても自力じゃあナンバーワンかも知れんしね。能力も凶悪だし」

良子「イエス。彼女との戦いがどうなるのか……楽しみですね」


【エリアD】

小蒔「………………」

小蒔(……狭いお部屋に連れてこられてしまいました。霧は晴れていますが……照さんは一体どういうつもりなのでしょう?)

小蒔「あの……照さ…………あら?」

小蒔「…………誰も……いない……」

小蒔(そんな……目を離したのはほんのちょっぴりです…………なのに、いなくなるなんて変です。お化けでもない限りは無理……そして照さんはお化けじゃない……)

小蒔「一体……どういう仕組みでしょうか……」

ガチャ..

小蒔「!」

目の前から照がいなくなったことに戸惑いを隠せない小蒔。そんな彼女の前に、新たな人物が現れた。

小蒔「あなたは…………ええと……」

??「……辻垣内だ。辻垣内智葉」

小蒔「あ、そうでした!確か臨海女子の方ですね。すみません……メガネをかけている印象でしたので……」

智葉「構わんさ。この姿を知る者の方が少ない」

メガネを外し、髪を束ねず、サラシを解いて、ポッケに手を。

臨海女子の制服に身を包んでいながらも、彼女が放つ雰囲気は麻雀を打っている時のそれとはあまりにも違っていた。

小蒔(…………気迫はテレビ越しでも伝わるほどでしたが……それとも違ってます……というよりも……)

小蒔「あのっ!」

智葉「なんだ」

小蒔「辻垣内さん、百合妄想士だったんですねっ!」

智葉「………………あー、そうだ。ここにいるってのはそういうことだからな」

小蒔「今気付いて、とてもビックリです」

智葉「……さすがお姫様、と言ったところか」

小蒔「?」

智葉「ずいぶんと弛緩した空気を発しているが……ここは戦場だ」

ゾワッ...

小蒔「!」

智葉「そして…………私は敵だ」

小蒔「………………そうですね……では……」キリッ..

智葉「む……」

小蒔「全力以上で……当たらせてもらいますっ!」

智葉「……っ……」

戦闘態勢に入った小蒔。

同時に、彼女の身に宿した九面が体内で蠢く。

内側からにじみ出るような迫力を前に、智葉は微動だにせず小蒔を眺める。


智葉「………………」

小蒔「………………」

智葉「………………」

小蒔「………………」

両者動かず。先手を打たず。

まるでガンマンの決闘。まるで焼肉で焦げた肉を誰が食べるかの心理戦。

先に動いた方が負けるという局面でもないはずだが、どちらもひたすら機を待つ。

智葉「………………」

小蒔「………………」

そうやって互いを見つめ続けて何秒が経っただろうか?

緊張感から、額に汗がポツポツと浮かび出す。

呼吸も少しずつ、ほんの少しずつだが乱れていった。

息を吸い、吐く。相手を観察しながら、ただただそれを繰り返す。

吸って、吐く。吸って、吐く。

この空間にはその音しか存在しないかのようだ。

あとどれくらいこの時間が続くのだろう?

永遠に続くのではないかとすら思われたその時、変化が訪れた。

小蒔がほんの少し身じろいだ際に、抱えていた照人形に腕が当たったのだ。そして次の瞬間、

照人形『三連覇は、私たちの一大目標です!』

智葉「っ!!」

小蒔「っ!!」

部屋に照ボイスが響き、戦闘の火ぶたが切って落とされた―――


【エリアB】

久美子「…………あ……霧が晴れてきましたね」

透華「ええ」

一「敵の攻撃だったのかな?」

煌「う……うぅ……」

久美子「花田さん!?どうしたの!?」

煌「いえ……少し惑わされたと言いますか…」

煌(よくわかりませんが、数人の方が目の前に急に現れました。おそらく龍門渕さんたちへの攻撃でしょう。どこかへ誘導しようとした……)

久美子「……花田さんが守ってくれたんだね」

煌「ええ、一応は……」

煌(しかし私に通用しないとわかったらスーッと消えました……幻のように消えるとはすばらです!)

久美子「……あれ?」

透華「どうかしたのですか?」

久美子「…………味方の数が減ってるんです」

一「えっ!?あ……園城寺さんたちがいない!?」

煌「!なるほど…………先の攻撃の狙いは、こちらの戦力を散らすことでしたか……」

透華「な、なんてことをっ!」

一「……どうしよう?」

久美子「どうするも何も…………戦闘能力がない私たちには、見守るかお菓子とか食べるくらいしかできないですよね………ベビースターラーメン食べます?」

一「わ、ありがとうございます!」

透華「いただきますわっ!」

モグモグモグ..

久美子・透華・一「天ぷら味、美味しい(ですわ)……」ホァー

ワァァァア!!

透華「!?な、なんですの!?急にこんな歓声!!」

一「かなりの人数っぽい!敵の増援!?」

久美子「ちょっと待ってよ……もう残ってるのはカニラーメン味が2袋だけなのに……足りるかな」

LB軍たち「久美子さん!」

久美子「!あ、あの子たち……」

透華「地上にいたリリーブライド軍ですわっ!ということは……」

久美子「ベビースターの数が全然足りない!」

一「それもそうだけど!」

久美子「カニラーメン味が好きな順に2人選ぶしかない……」

透華「彼女たちがここに来れたということは……地上の458兵を振り切ったのですわね!」

一「会長さんすごいね。あれだけの劣勢の中で、これほどの数の味方を守るなんて……」

久美子「……わかりました。1袋は会長にあげることにします」

一「いや、それよりも……」


久美子「はっ!国広さんまさか……私が自分用にうましお味を隠し持ってたって気付いたとか?…………わかりましたよ。うましお味も会長に譲ります」

一「だから……」

透華「…………私、うましお味好きですわ……」

一「と、とうか!?」

久美子「……じゃあ一緒に食べます?1個しかないですけど、ベビーちゃんも好きな人に食べてほしいでしょうから」

透華「よろしいですの!?」

久美子「うちの会長には…………ナイショだよっ♪」ウェヒヒ

透華「それもまた……献身の形ですのよー!」オーッホッホッホ!

一「……あれ?」

透華「……はじめ?どうかしたんですの?」

一「あ……いや、その会長さんの姿が見えないから」

透華「え?」

久美子「女装してるおっさんだよ?かなり目立たない?」

一「はい……見当たりません」

久美子「…………あの会長が負けることはないはず……」

久美子(だったら……きっと何か会長の考えがあっての行動なんですよね……)

久美子(私は……会長を信じて待ちます……うましお味を食べながら……)モグモグ..


【エリアD前】

霞「はぁ……はぁ……はぁ……」タタタ..ボヨヨン..タタタ...ブルルルン!

霞(……小蒔ちゃんの神気はこの先の部屋へ向かっている……)

霞(霧が立ち込めている時に連れ去られてしまったようだけど……誰の能力だったのかしら?)

霞「……っと」ハッ

霞(今は小蒔ちゃんのことが先ね)

霞(私の分も初美ちゃんが裸で頑張ってる……急ぎましょう)

ガチャ..

霞「…………小蒔ちゃ………………あ」

扉を開けた霞の動きが止まる。

何故なら、少し離れたところで力なく床に横たわる小蒔の姿があったからだ。

霞「!!!」

小蒔「………………」

智葉「………………」

そしてその傍に立ち、小蒔を見下ろしているのは辻垣内智葉。わかりやすい勝敗の図がそこにあった。

霞「小蒔ちゃん!!」

霞(そんな……小蒔ちゃんが負けるなんて……)

ありえない光景を前に、霞の顔が青ざめる。

眠り姫と揶揄される小蒔でも、さすがに目の前の年上の敵の斜めの下の辺りのヒンヤリの感覚の地下のコンクリートの床のシートのなしの状態で眠るとは思えない。

霞(……では……まさか本当に小蒔ちゃんが……?)

智葉「…………石戸霞か」

霞「………………」

霞(辻垣内智葉!この子も百合妄想士だったの?……いえ、今はそれよりも倒れてる小蒔ちゃんの無事を確認しないと!でも……)

智葉「………………」

霞(……辻垣内さんがそれを許してくれるかしら?小蒔ちゃんを1対1で倒した相手に、私が太刀打ちできるはずがないけれど……)タジッ..

智葉「…………」

霞(……なんとか小蒔ちゃんだけでも逃がしてあげたい………一か八か、辻垣内さんの顔に胸を当てにいくしかないわ!)タタッ!

霞「っ!」ボヨタタタッ!!

智葉「!」

霞(運よく両胸で挟めれば……長い間赤ちゃんにできる!)タプッタタ!

智葉「…………」

霞(最悪……乳首だけでも当てる!)モニュダダ!

智葉「……っ」スッ

霞「?」

智葉の元へと胸を揺らしながら走る霞。

その距離が、身長160センチ、ウエスト60センチの人のバストサイズでいう293Zカップまで縮まった時、智葉は一歩後ずさった。

ちなみに293Zカップは約10メートルである。

ただしこのバストサイズ数値は正しい表記と言えないかもしれず、きちんと説明するなら単純に『10メートルを割った時~』とするべきだ。その方が絶対にわかりやすい。


霞(辻垣内さんが下がった?)ボンヨヨタッタ..

智葉「…………」クルッ

霞「え」

智葉「…………」タタタッ...

霞「あ……あら?」

戸惑う霞をよそに、智葉は表情を変えずに霞に背を向け、走った。

ガチャバタン

そして扉を開けて部屋を出ていった。

霞「…………」

霞(……っ!まさかの展開に戸惑ってしまったけれど、こちらにとっては願ったり叶ったりだわ。小蒔ちゃんを助けないと)タタタボンヨミュ!

小蒔「…………」

霞「小蒔ちゃん!」

智葉へ向かっていった勢いそのままに小蒔の元へ向かい、すぐそばで急ブレーキ。勢い余った乳揺れがフォロースルーみたくなった。

霞「…………」

小蒔「…………」スー..スー..

霞(…………よかった。寝ているだけだわ)ホッ

霞(でも……まさか小蒔ちゃんが負けるなんて…………あら?)

霞(何かしら?辻垣内さんの足元に何かが散らばっているわ)テクテク...プルルン

霞(乾電池、ハンカチ、手ぬぐい……)

ハンカチ以外は和風だ。

霞(なんでこのような物が地面に落ちているのかしら?小蒔ちゃんは手ぶら。辻垣内さんの持ち物のようだけれど……)

小蒔「ん……ぅ」

霞「あ……小蒔ちゃん、大丈夫?」ポヨン..

小蒔「え、かす、みちゃん……?」ムクッ..モニュ..

霞「ええ」


小蒔「…………あ……私……辻垣内さんに……」モニュ..

霞「……どこか痛いところはない?」ボヨッ..

小蒔「あ、はい。だいじょぶです」プルッ

霞「よかった……」ホッ..ボムッ..

小蒔「……私、負けちゃいました……」プルル..

霞「………………」ムニョ..

小蒔「……………」フニー..

霞「……辻垣内さんには何をされたの?」ボムッ...

小蒔「え……そ、それは……///」モニュニュ..

霞「?」プルルン?

小蒔「…………教えません///」ヘミュ...

霞「え、でも……今度戦う時のために情報は必要で……」ボルルン..

小蒔「そ、それでも……教えませんっ……///」プルルーッ..

霞(何か恥ずかしいことがあったのかしら?本来なら辻垣内さんの情報はどんなことでも知っておきたいところだけれど……)ボヨッヨム..

霞「……わかったわ、じゃあ聞かないことにする」ボボム

霞(小蒔ちゃんの気持ちが一番大事だもの。無理に聞き出すのはよくないわね)

小蒔「霞ちゃん……ありがとう」ニコプル..

霞「いいえ。では戻りましょうか。荒川さんに頼んで回復してもらいましょう」ウフフ..プルル..

小蒔「はい」モニュ


【総司令室】

智葉「…………」ガチャ バタン

咏「おっ、帰ってきた」

はやり「はややー。お姫様を倒した英雄さんだね☆」

智葉「……そんなに大したことじゃない」

健夜「石戸さんは放っておいてよかったの?」

智葉「………………」

健夜「………………」

智葉「……わざわざリスクをおかす必要はない。それだけです」スッ

健夜「そう……」

はやり「あれ?それって、石戸さん相手だと負けるかもしれないってこと?」

智葉「………………」

はやり「……図星?はやり大正解かなっ☆」

智葉「………………」

はやり「ねーねー。どうして神代さんには圧勝したのに、石戸さんだと負けちゃうかもなの?教えてほしいゾ☆」

智葉「………………」

はやり「はやや?」

良子「はやりさん、サイレスです」

智葉「…………」プイッ..テクテク..

咏「ごゆっくり~」パタパタ

ガチャ バタン

はやり「はやー。行っちゃった」

良子「ちょっとしつこすぎたかもしれまラインよ?」

はやり「でも知りた~い☆」

良子「ですが……」

健夜「……確かに。あの子はどの組織にも属さずに日陰を歩いてきたようなものだから情報は少ないし、気になるのもわかるかも」

はやり「ほらー」

良子「OH……」

健夜「でも無理に聞き出すのはよくないよ?」

はやり「はーやー……」

咏「……私は瑞原さんが言うように、どうして石戸霞相手だと負けるリスクがあるのか興味あるかもしれんけど?」

良子「三尋木ソングさんまで……」

咏「……漫才師みたいだからやめてくんね?」

良子「OH……」


【休憩室(総司令室の隣)】

ガチャ バタン..

智葉「………………」

智葉(戦場だというのに緊張感のない……居心地が悪くて仕方がない)フゥ

智葉(……が、それはそれだ。私は自分の目的のために戦うのみ)

??「サトハ。お疲れサマ」

智葉「ああ。迎えに来たぞ…………ってまたラーメン食ってるのか、メグ」

ダヴァン「ロンオブモチのマエアタリ!ラーメンはトモダチ、怖くナイ」

智葉「怖いとかではなく飽きないかと聞いているんだが」

ダヴァン「飽きまセン!ラーメンの可能性はムゲン!店長はナゼか腕組みで写真!」

智葉「……言われてみればそうだな……やたら腕を組んでる」

ダヴァン「OH、ミステリー」

智葉「………………」

ダヴァン「?ドウしまシタ?」

智葉「いや、今さっきもメグみたいな喋りをする人間と一緒だったんでな」

ダヴァン「ライバルでスカ!?」

智葉「かもな」クス

??「楽しそうなお話してますね」テクテク

智葉「ん?ああ、起きたのか」

??「はい。時差は克服しました」

智葉「……思った以上にヤツらが奮闘しているようだ。出番は近いぞ明華」

明華「はい。頑張ります。LALALA~♪」

ダヴァン「いいメロディデス。食欲が増しマス」ズルズルズルー!

智葉「……さて」テクテク

ダヴァン「サトハ?」

智葉「戻ってきたばかりだが、もう一度出る。いや、むしろこれからが本番だ」

ダヴァン「ということは……早く食べ終わらナイと私……ボリオブオイテキ?イノアンドコリ?」

智葉「普通に言え普通に」ガチャ

??「うぅ……」

智葉「待たせたな本内。準備してくれ」

成香「わ、私……いきたくないです……」

智葉「そう言うな。私にはお前の力が必要だ」フッ

成香(うぅ……ふてきに笑われました……怖いです)


【エリアE】

怜「…………………」(膝枕る)

竜華「………………」(膝枕れ)

怜「なぁ……りゅーか」

竜華「んー?なぁにー?」

怜「うちら、なんでちゃう部屋におるん?」

竜華「うーん……うちは怜が『こっちでエッチしよー』言うから……」

怜「ぅえっ!?そ、そんなん……言うわけないやん!」

竜華「えー?でも間違いなく怜やったで?」

怜「大体、こんな地下でエッチとかせえへんし!」

竜華「そういう問題なん?」

怜「そんなことより、竜華かて『ちょっとだけイチャイチャしよう』言うて……私の太もも撫でてんで?」

竜華「ええっ!?そんなヤラシイことするわけないっ……///」

怜「でも言うたで?」

竜華「そ、それ絶対うちちゃうもん!」

怜「…………ほな、誰なん?間違いなく竜華やったで?見間違いちゃう」

竜華「え、ええっと………………生き別れの姉、とか?」

怜「そらまたえらい大ニュースやな。ほんまやったら膝枕してる場合ちゃうやん」

竜華「そ、そやな」

怜「…………真面目な話、敵の能力ってとこやろな」ムクリ

竜華「え?ほなら、敵はうちらの味方なん?」

怜「?なんでそうなるん?」

竜華「だって、怜とうちが素直にイチャイチャできるよう取り計らってくれてるやん?」

怜「…………ちゃうって。ただ誘い出されただけやで?」

竜華「ええーっ!?そんなんひどいやん!」

怜「ひどいなぁ」

竜華「ほんまやー!」

怜「うん……」

竜華「………………あれ?で、何の話やったっけ?」

怜「……ぷっ……あはは。まったく……竜華はボケボケで可愛いなぁ」

竜華「と、怜……///」

怜「けど、今は戦いの途中やし、きりっとせなあかんな、うん」

??「その意見には同意、だな」

??「はい」

怜「!」

竜華「っ!?」

??「ずいぶんビックリしとっとが、うちんらさっきからおったと」

怜「あんたらは……」


??「自分たちの世界に入り込み過ぎやね」

竜華「新道寺の……」

哩「ま、そこんとこは私と姫子も負けとらんがな」

姫子「はいっ!部長!」

トキリューの前に現れた2人組……彼女たちは九州の名門新道寺女子公認の百合カップル、哩-リザhimeだ。

怜「……………」

怜(なるほど……どっちが真のカップルかを決めようというわけやな……そういうことなら、やったるで)

竜華「……あんたらもここに連れてこられたん?お互い大変やなー」アハハ

怜「」ズルッ

哩「は?」

姫子「え?」

竜華「うちらもな?なんか変な怜に呼ばれてこの部屋に連れられてん。ビックリやで」

怜「……りゅーか。ちゃう」

竜華「え?」

怜「ちゃうねん。竜華が思ってんのと全然ちゃうねん」

竜華「全然ちゃう?」

怜「あの2人は敵や」

竜華「あのふたりはてき…………ええっ!?なんで!?」

怜「え?」

竜華「なんで敵なん!?あの子らも西やろ!?むしろリリーフラワーガーデン寄りやん!なんで敵なんや!」

怜「なんでってそら………………なんで?」

哩「…………それを私に聞くのか」ハァ

姫子「部長の博識さが他校にまで知れ渡ってるってことですね!さすが部長です!」

哩「そ、そうか…………そうか!」フフフ

姫子「素敵です!惚れ直しました!」キャッキャッ

哩「ひ、姫子……やめろ……そぎゃん目で見られたら……私は……」サワ..

姫子「あっ…………ぶ、部長…………私は……部長がしたいなら……どこでも……///」モジモジ

怜「…………」

竜華「と、怜……なんか……あの2人見てたら……うちも……ドキドキしてきた……///」

怜「それはまた今度な」

竜華「ぁん。お預けされてもーた」

怜(……悪いけど、ど隙だらけやから先手とらせてもらうで)

怜「〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕」

哩「!」

姫子「ぶちょ…」

ギュアアアアア!!

トキー..リューカー..

怜(うちらの世界に酔ってもらうで)


哩「……なるほど……いいイチャイチャだ」

怜「!」

怜(効いてへん!?)

姫子「っつう……羨ましか……」

怜(いや、効いてはいるみたいや。けどまだ足らんか)

竜華「え?え?もう始まってるん?」キョロキョロ

哩「卑怯……ではなかな。気ば抜いよったこちらが悪い……姫子」

姫子「あ、はい……大丈夫です」

哩「では……行くぞ……」

哩・姫子「〔リリース(Lilys×Release)〕」

シュゥゥゥウゥゥウゥ..

怜《竜華!》

竜華「あ、うん!ええいっ!」バシュ!

哩「!逆鱗ビームか……」スッ..

姫子「当たるわけにいかなかっ」ササッ

竜華「まだまだ……!」バシュシュ!

哩「……その厄介な力……縛らせてもらう!」カッ!

哩「〔 哩 と 姫 子 の 妄 想 縛 り ( ラ イ フ イ ズ ビ ュ ー テ ィ フ ル )〕」ギィッ!!

怜「!……」

怜(くるか?どんな攻撃を仕掛けてくる……?)

哩「…………公務員縛り!!」

怜「?」

姫子「ぁっ……///」ビビクン!

竜華(……なんかされそうやな……けど、このまま攻撃や)

竜華「…………あれ?」

竜華(ビームが出えへん!?)

哩「悪いな。そんままではイチャイチャできなくさせてもらった」

竜華「!?」

怜「なんやて?」

哩「姫子……できるか?」

姫子「は、い……っ……部長の……が、入ったままですけど……い、いけます……///」

哩「そうか……ありがとう」ナデナデ..

姫子「ぶちょ……う///」ビビクン

竜華「なんで……?なんで出えへんの?」

哩《行くぞ!》


~~~~~~~~~~~~~~~

姫子(区役所の人)「こ、こぎゃんと手錠なんてかけて……ひどいです……私は何もしてません」

哩(婦警)「いや、君は私の心ば奪った。おかげでなんも手に付かん。今も、こうして仕事を邪魔しとっと…………公務執行妨害だ」

姫子「そ、そんな……」

哩「罰として……判決ば言い渡す」サワッ

姫子「ぁ……///」

哩「永遠に……私の家で私と愛し合うこと…………わかったと?」チュ

姫子「わかり……ました……///」

~~~~~~~~~~~~~~~


怜「っう……!」

竜華「わあああ!」

哩「ふふ……」

怜(……なかなかキツイのお見舞いしてくれたわ……今度はこっちの反撃やで)

怜《〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕》

怜「………………?」

怜(なんでや!?なんで攻撃でけへん!?向こうのわけわからん警官のはちゃんと………………あ)ハッ

『公務員縛り!!』

怜(まさか…………2人の能力は……)

怜《竜華!攻撃の時は公務員絡みのイチャイチャにして!》

竜華《へ!?どういうこと?公務員絡みって……》

哩(…………む、気付かれたか?鋭かやつだ)

哩(だが『妄想シチュエーションを縛る』この能力……そう簡単に破られはせん!)

竜華(……怜が言うならやってみるけど…………公務員……ほな先生で……怜とうちが職員室でどちらからともなくキスして……)

バシュッ!

竜華「!出た……」

哩「ふっ……」サッ..

哩(やるな…………次はこちらも教師で返すとしよう)

哩《担任の私と副担任の姫子!授業参観中にバレないようにイチャイチャしとっと!!》

怜「が……はぁ……!」

竜華「ひぎぃ……!」

怜(なん、て妄想や……!そんなん……バレんとできるわけ……ないやん)フラ..

哩《テスト用紙が後ろの席から回収され、手元に戻るまでにキス5回!》ズバァ!

怜「っは……が……ぁ……」

哩(まだまだ……次は……)

姫子「ぶ、ぶちょう……///」フラ..

哩「!」


姫子「そろそろ……限界、です……///」

哩「すまん……無理させたな」

哩は姫子の言葉を受け、攻撃を切り上げて怜たちに背を向ける。

そして姫子の元へと駆け寄っていく。

怜「……っ……?」

怜(トドメを刺さない……?理由はわからへんけど……このチャンスは逃がすわけにいかへん)

怜《竜華……膝枕お願い……》

竜華「怜!うん!」(地面に座る)

怜「ありがとな……」(膝枕る)

竜華「ううん。うちが好きでしてることやから」(膝枕れ)

怜(ふーー……これでなんとか回復……けど、どうにかせんと勝てへんな……)

怜(白水が『公務員縛り』って声に出したんは、おそらく能力の条件や……こちらにも縛りを教えんと使えん能力なんやろ……)

怜(せやったら、向こうより先に縛りをクリアする妄想をすればええ……竜華とは色んなことをしてきた……バカップルや言われるようなことも!)

怜(イチャイチャやったら…………負けへん!)

哩「…………」テクテク

姫子「はぁ……はぁ……っ。ぶちょ……わ、私の方から行きます///」スクッ

哩「いい。私の太いのが入ってるんだ。無理せんでよか」テクテク

竜華「…………」

竜華(こっちに背中向けて……めっちゃ無防備や。これってチャンスちゃう?)

竜華(ちょっと前のうちらなら、攻撃は怜頼みやったけど、今はうちも戦える。怜はもう少し休んだ方がええとしても、うちはもう平気や。だから……)

竜華《視聴覚室で怜と2人、イチャイチャデート動画の上映会!その流れで………///》バシュ!

哩「!?ぐっ……あ……」

姫子「部長!」

哩「大丈夫……油断しただけ……そいより、ほら……おいで」グイッ

竜華からの攻撃のダメージによりフラつきながらも、ビビクン中の姫子の手を取る哩。

そして、お互い背中合わせに密着し、両腕を絡める。

このポーズは、哩姫の宣材写真として登録されているもので、麻雀雑誌のグラビアでも何度も披露してきた定番ポーズ。

言うなれば古畑任三郎が額に手を当てるのようなものである。

哩「ふぅ……」

姫子「あぁ……部長の背中……あったかい……///」

哩「姫子も……可愛い背中たい」ニコリ

姫子「部長……///」

このポーズには、恋人繋ぎを超える密着によって感じる愛しさ。そしてお互いの顔が見えないことの切なさ、キスしたくてもできないもどかしさが含まれている。

愛しさと切なさと、心強さではなく、もどかしさ。

この3つを味わうことで、何故か2人は体力を回復しあってく。愛してく。

怜(!!向こうも回復できるんか!)

哩「……さて、まだ全快には程遠いが……よかか?」

姫子「はい!部長っ!」


哩「では……〔 哩 と 姫 子 の 妄 想 縛 り ( ラ イ フ イ ズ ビ ュ ー テ ィ フ ル )〕」ギィッ!!

哩「『黒タイツ縛り!!』」

姫子「っ……ぁ……はぁんっ!」ビビクン!

怜「!?」

竜華「く、黒タイツ……?履いたことない……」

怜(……私もない……けど、黒タイツを絡めた妄想やないとあかんっちゅうなら、無理矢理でもそうせんと……)

怜(………黒タイツを履いた竜華。夏場は蒸れたない言うて少しズラしてる。その冷えた部分を撫でる私の指を竜華がとって、胸へと導かれる……いける!)

怜《〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕!!》

ギュアアアアア!!

怜(出た!やったで!)

哩「……甘い」

怜「!?」

哩「妄想できたようだが……実体験ではないせいか、ずいぶんと弱い」

怜「くっ……」

哩《姫子がズラした黒タイツ!しかしまだまだ蒸れたままで熱がこもってる……そこに私が愛ば込め、キスして抱きしめ『お母さんごめん……』》

怜(!?ズラしても蒸れるんか!?)

ズォオオオオ!

怜「~~~っ!!」

竜華「うぅ……!!」

哩「君たちの絆をば過小評価はしなか。だが私と姫子はこれまで数々のコスプレばしてきた……姫子の上着の裾の長さも数種類ある」

姫子「……色んな部長ば見たい。色んな部長に愛されたい……職種の数だけちごとっ部長に会える!」


好きな人がいて、その人の本質を好きになって。

でも違う一面も見たい。それがその人を好きになった理由とは真逆の性質であっても。

そんな二律背反も、愛しい人へ思いを馳せていることに繋がり、ビビクン体感となる。

怜(コスプレ……そんなん、全然したことない)

竜華(うぅ……怜に着てほしい服はたくさんあってんけど言い出せへんままやった……その報いなんかなぁ?せめてサンタコスくらいお願いしてれば……)

哩「その膝枕にしてもそうばい。気持ちよさ、リラックス効果など、園城寺さんが得すぎとっと。イーブンとは程遠か」

怜「!」

哩「回復しながらの移動もじゃろかり大変なはず。例ゆっぎ砂利道では膝が悲鳴ば上げるから無理ばい。それに横になる必要があるため場所ばとっと。満員電車では回復不可能。きっと舌打ちされまくる」

怜(そらそうや……)

哩「その点、私と姫子は違う。お互いが同じポーズ。立ったままでええから市街ば歩きながらでも回復できっと。奇異な視線ば気にせん」

怜「……そ、そんなん言いながらも、攻撃は白水さんだけが…」

姫子「〔 姫 子 と 哩 の 妄 想 縛 り ( ラ イ フ イ ズ ビ ュ ー テ ィ フ ル )〕」ギィッ!!

怜(な……鶴田も使えるんか!)

哩「残念やったな……次は私が太いのば挿れられる……対等たい」

姫子「ビビクンは……2人の快楽になるとやけん!!」

怜「………………」

怜(これは……あかん…………この2人は私ら以上のカップルや……膝枕は最高やけど移動には向かん。私の膝はスカスカやし竜華と交代でけへん)

怜(もうダメや……ざんねん!!ときりゅうの ぼうけんは これで おわってしまった!!)

怜は敗北を覚悟し、そっと目を閉じた―――


【エリアA】

咲「お姉ちゃん!」

照「うん」

照《ごきげんよう!》シュバ!

458兵たち「きゃああ!」バタバタ..

智紀《特装版をオークションで落札したのに、特典が付いてなかった!》

458兵たち「ひぃぃいい!!」ドサ..

久《羽黒 露世理亜を愛でるモモカの母!その愛情は次第に本格化していき…》

458兵たち「わああ!」バタバタバタ!

やえ「やるわねあんたら!この調子でいくわよ!リリーブライドの力、見せてやるわ!!」

照(…………あれ?この人、敵じゃなかったっけ……まぁいいか)

貴子「ふっ……ノリノリじゃねェかクソが……」ニヤリ

純代「はい」

貴子「舐めた口を利くんじゃねェ!!」オラァ!!

純代「す、すいません!」

貴子「…………まぁいい。敵の数が少なくなったとはいえ、なかなかいい状況だ」

純代「……ただ、心配なのは……」

貴子「ぁん?」


純代「私たちへ当てるべき人数を他所へ向かわせてるとしたら、他の人たちの負担が……」

貴子「オラァ!!」バシッ!

純代「痛っ!?」

貴子「不吉なことを言うな。不安になるじゃねェか……」

純代「す、すみません」

貴子「…………謝ることはねェ。つい流れで殴っちまったがてめェの言い分もわかる」

純代「コーチ……」

貴子「そろそろ私らも守るだけじゃなくて、攻めに意識を向けるべきかもな……この部屋にいるのは……」

貴子「……宮永姉妹ァァッ、竹井ァァッ、沢村ァァッ、深堀ァァッ、エイスリンァァッ、小瀬川ァァッ、荒川ァァッ、姉帯ァァッ、愛宕娘ァァッ、臼沢ァァッ……と私ァァッ!だな」

純代「?あれ……東横さんと宮永さんのお父さんと熊倉さんがいない……?」

貴子「何ィァァッ!?忘れ物か!?それとも逃げやがったのかコラァァッ!」

純代「……いえ、多分霧が出た時に何かされたのかと……」

貴子「悟ってんじゃねェ!もう一発いくか!?」

純代「い、いえ……」

純代(とりあえずここは残ったメンバーで戦うしかない……あの隅っこの方では臼沢さんが頑張ってるし……)チラ

老婆A「塞ちゃん、頑張って!勝ったらこのおはぎあげるよ!」

塞「ありがとうございます!この子たちを幼女にしたらいただきます!〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕」

458へいたち「わわっ……」

塞「はぁっ!」サワリサワリサワリサワリサワリサワリ!!

458へいたち「ひぃぎぃぃ……///」ドサドサドサ...

塞「…………ふぅ……では、触ったこの手でおはぎ食べます」

老婆A「はいよ。私が起きてすぐに生の手でこねて握ったおはぎ」

塞「…………い、いただきます」

塞(……この辺りはずいぶん片付いた……向こうの方ではまだ混戦かな?それにしても……先生、どこ行ったんだろう?そろそろ徘徊が始まったのかな……心配)


【エリアB】

灼「はぁっ……」ズポ

458兵AR「うむぅぅぬぅん……」バターン!

灼「…………」フキフキ..

458兵AS「…………」ザッ

灼(まずい……数が多すぎる。お尻に入れた手を拭くタオルも汚れてきたし……このままだと能力が使えなくなる……)

灼(気付いたらハルちゃんもいないし、神代さんたちの姿もなさそう。1人じゃ限界が近…)

ゲシッ

灼「あ」コテン

灼(しまった!つまづいた………あ、つい右手を地面に着いちゃった)

458兵AT「!もらった!」シュバ!

灼「!」

灼(これ、いけな…今からお尻に指は間に合わな…)

458兵AT《小悪魔家庭教師と生徒!自宅がラブホテル化!》

灼「っ……!」

灼(この一撃……避けられない……)

??「ぐ……っああ……」

458兵AT「な、なによ、あなた!」

灼(!誰かが、かばってくれた……一体誰が?)チラ

トシ「………く……ババアを標的にすると罰が当たるよ」ハァハァ..

灼(この人……確か……宮守のE缶って呼ばれてるおばあさん……)

トシ「っふ……」

458兵AT「っ!邪魔するならあなたを先に倒すわ!」

トシ「その夢はすぐ叶うさ。私は有名な雑魚だよ」フッ..

灼「!」

灼(倒れてる場合じゃない)スクッ..タタッ!

458兵AT「え……」

灼「もらっ…」シュバ

スカートめくる

パンツ下ろす

お尻に指を突き刺す

ズブリという音が鳴る

完成


458兵AT「ぎぇえぇ……」

灼「…………」ヌポッ

458兵AT「は……ぐぅ……」バターン!

灼「ふぅ……」

 「ありがとね。助かったよ」

灼「いえ……私こそ助けてもらってしまって………あの……どうして私を?」

トシ「……ふふふ」

灼「?」

トシ「私はね、隣の部屋で教え子の戦いを他人事の感じで見てたのさ。巻き込まれないようにね」

灼「はぁ」

トシ「そうしたら……懐かしい気配を察してね」

灼「?」

トシ「それでそのまま気配を頼りに歩いていたらドアがあってね。そりゃもうガチャリと開けたのさ」

灼「あれ?ドアにロックとか……」

トシ「そんなもん気合いさ」

灼「そうですか…」

灼(セキュリティとかないのかな?)

トシは気付いていないようだが、そのドアは桃子が458兵と移動した時に、自動ロックがかからないように小石をドアに挟んでロックがかからない状態にしておき、あとで出入りできるようにしておいたものだ。

そのドアを開け、トシはエリアBへと入った。ちなみにその時に目ざとく小石を見つけ、通るのに邪魔だと思い、蹴ってどかした。

そしてバタンとドアを閉めたので自動ロックが発動。トシはエリアBの住人になったのだ。

トシ「長年生きてきた人間力の前には、ドアなんてただの板にすぎないんだよ」フフフ

灼「……あの、懐かしい気配って……私から感じたんですか?」

トシ「…………そうさ。今も感じてるよ」

灼「それって、どういう……」

トシ「……あんた、鷺森さんだね?」

灼「あ……はい。鷺森灼です」

トシ「私はね、あんたのおばあちゃん……鷺森公子さんと知り合いなのさ」

灼「え……!?」

トシ「学生時代は、公子さんとよく過ごしたものだよ……ふふ、思い出すねえ……」


~~~~~~~~~~~~~~~

【トシの母校 校門前】

トシ(学生時代)「私たちも今日で卒業ね……」

鷺森公子(学生時代)「ええ」

トシ「うふふ。通っている間はとても長く感じたけれど………いざ卒業となると名残惜しいわ」

公子「……そういうものよ」ウフフ

トシ「…………今日であなたとも……お別れかしら?」

公子「そうね……でも湿っぽくなる必要はないわよ」

トシ「え?」

公子「これで最後の別れじゃないんだから」

トシ「………………」

公子「…………しばらくは会えないかもしれないけれどね」

トシ「っ!」

公子「でも……いつかまた会える日がくればきっと…」

トシ「わ、私っ!」

公子「!」

トシ「……今まではずっと秘密にしてたけど……本当は前からずっと……」

公子「ダメ」

トシ「好っ……?」

公子「これから私たちは別々の道を行くんだから……ね?」

トシ「………………」

公子「卒業までに……お互いが想いを伝えられなかった以上、その想いは……胸に秘めておくべきよ」

トシ「……でも……!」

公子「…………お願い……でないと私……自分で選んだ道を……捨ててしまいそうになるから……」

トシ「……………………」

公子「……………………」

トシ「…………わかったわ」

公子「ありがとう」

トシ「………………でも」

公子「?」

トシ「これが最後の別れじゃないのなら……次に会った時は……口に出していいわよね?」ウフフ

公子「………………ええ」ニコリ

トシ「………………」

公子「………………」

トシ「それじゃ……また会える日を夢見て……」

公子「ええ……」

トシ「ごきげんよう…………ロサ・ボウリング……」

公子「ごきげんよう…………ロサ・カップラーメン……」

~~~~~~~~~~~~~~~


トシ「懐かしMAXさ」

灼(おばあちゃんの呼び名……カッコイイ……)

トシ「……ま、そういうわけだよ」

灼「はぁ」

灼(それで、結局どうすれば……)

ワアア!

灼「っ!敵がまた来た……」

トシ「今度こそ私、終わったね。FINさ」

灼「まだ諦める必要な…」

灼(……とはいえ、あの人数を相手にこの人をかばいながら戦うのは大変)

灼「…………しょうがない」

灼(消耗は激しくなるけど……アレを使うしかない!)

灼「〔 カ ウ ン ト ダ ウ ン 〕」ゴォオオオオ...

トシ「お?」

灼「……『私は鷺森灼』」

トシ「これはこれは。私は熊倉トシなのさ」

灼「違う……今のは定型文……って……そんなこと言ってる場合じゃな…」

トシ(ん?なんだか今、少し違和感を覚えたんだよ?)

灼「安心して。私がなんとか……」

トシ「?」

458兵たち「あの2人よ!うっうー!」

灼「わずら…」

灼「もう少ししたら倒して見…」

458兵たち「それーっ!」タタタ

灼「!熊倉さん。逃げて。ここは私がなん…」

トシ「……わかったよ。救心も持ってるし、いけるとこまで逃げるんだよ」タッタッタッ...

灼「はい。お…」

458兵たち「えいえい!」

灼「っ……なかな…」

458兵「まだまだだよっ!」

灼「強力な攻撃だ…」

灼(あと少し……)

次々に攻めてくる458兵たちを前に、灼は一切攻撃する意思を見せない。

鈍足のトシをかばっているのだろうが、それにしても無防備だ。

右手は固く握られているため、どんな奇跡が起きたとしてもお尻に指が入ることはない。

これは野球のバッターが全球見逃しをしているのと同じだ。

どんなに不利であろうと、実力差があろうと、バットを振ればヒットが打てるかもしれないのに……。

しかし、灼の表情には諦めがない。何かを狙っているかのように爛々としている。

果たして、灼の狙いとは一体なんなのか?


灼「…………」

458兵たち「いっくのー!」

灼「この次は…」

灼(よし……これで……)

458兵たち「えへへへ!もういっぱーつ!」

灼「『わ…』」

灼(……完成……)

458兵たち「?」

パッカーン!!

灼が『わ…』と言ってから数秒後、どこからかボウリングのピンが倒れる音がした。

そして、その音と共に灼の全身に力が漲る。

458兵たち「ど、どういうこと?」

灼「……カウントダウン……私の新しい力を目覚めさせた」

鷺森灼の能力は一撃必殺。しかしその能力には弱点があった。

右手でしか使えないこと。

右手が濡れていたら無効になること。

直接性器か肛門に触れなければいけないこと。

これらはかなりの枷であった。

しかし〔リリース(Lilys×Release)〕を会得したことと、ある条件を満たしたことで灼はこの欠点を克服した。

ある条件とは、灼が口にした〔カウントダウン〕。

カウントダウンを宣言してから、一言ごとに語尾を1文字ずつ消していく。つまり、語尾の消失。

最初は1文字消去。次は2文字、そして3文字……と、語尾を消し続け、9文字まで消していく。

そして最後の10文字目に『私は鷺森灼』という定型文を発声――『わ…』とだけ言う――ことで発動する必要がある。

つまり、今回の場合は

『違う……今のは定型文……って……そんなこと言ってる場合じゃな(い)…』1

『安心して。私がなんとか(する)…』2

『わずら(わしい)…』3

『もう少ししたら倒して見(せるから)…』4

『!熊倉さん。逃げて。ここは私がなん(とかします)…』5

『はい。お(ねがいします)…』6

『っ……なかな(かやるね。キツい)…』7

『強力な攻撃だ(けど、負けはしない)…』8

『この次は(私の番だから)…』9

と語尾を消していった。

そして最後にもう一度、

『わ…(たしは鷺森灼)』10

という定型文を呟く。


新しい能力の解放に対し、何故このような条件になったのかは、灼が会話中に最後の文字を言わない癖があったためだろう。

灼(〔カウントダウン〕完成によって、〔一撃必昇(パーフェクトゲーム)〕はパワーアップする)

灼(両手、両足、どの指でも一撃必殺が可能。さらに直接触らなくてもいい!)

それはつまり、いちいちパンツを脱がさなくてもいいということ。

工業が機械によるオートメーション化で飛躍的に製造スピードを上げたように、

灼もまたさらなるレベルアップを果たしたのだ。

直に触れず倒せなかった敵たちを想い、灼は決心する。

パンツ越しのリベンジ―――

灼「もう、布も怖くない……」タタタッ..

ズプ!ヌポ!パズゥ..

458兵たち「な……どうして……生尻じゃなければ平気なはず……じゃ……」

灼「……………」

灼(……パンツごと貫くから汚れない。指を拭く時間を削れる……一石二鳥)

458兵たち「ちょ、ちょっとみんな!あの子は危険よ!ここは……」ゴニョゴニョ

灼「?何をするかわからないけど……私が勝……………あ!」

458兵たち「うふふふふ」ピターリ

灼(やられた……全員、お尻をくっつけて輪になった。さらに股間を両手でガード……これじゃ性器も狙えない)

458兵たち「1人じゃ無理なことでも、みんなで力を合わせれば……できないことはないの!うっうー!」

灼(……いや、そんなことはない。1人を集中して狙って、腕を引っ張ったり胸を鷲掴みにしたりすれば、手のガードは外れて…………ダメだ。その間に攻撃される……)

458兵たち「打つ手なしね!」

灼(……うぅ……こんな時、ハルちゃんがいてくれたら……)


【エリアF】

晴絵「…………」

灼が敵のお尻合わせを前に戸惑っている頃、晴絵は界と共にエリアFにいた。

そして、灼が味わった以上の衝撃を受けていた。

晴絵「…………師匠」

界「………………」

晴絵「これは…………なんの冗談なんですか?」

界「…………何がだ」

晴絵は視線を前方に向けたまま界へと声をかける。

一瞬でも目を離させない何かが晴絵の目の前に存在しているからだ。

晴絵「なんで…………なんで!!」

晴絵は次第に声を荒げる。そして眼光鋭く睨み付ける。

その視線の先に立っているのは、

恵「………………」

原村恵。リリーブライドの誇る、清楚なセーラー会長だ。

晴絵「…………」ギリ..

そんな彼を前に、晴絵が苛立ちを覚える気持ちはわからないでもない。リリーフラワーガーデン所属の晴絵にとって恵は敵なのだから。

しかし今は一応共同戦線を張っている状態。

恵は458兵に襲われた透華たちを地下へと導き、自身は地上で敵を足止めしたりと活躍しており、実力的には申し分ない。この戦いにおいては心強い存在であるはず。

それなのに、何故晴絵は光蟲とにが虫を間違えて持って来てしまったような顔をしているのか。

界「…………」ギリ..

傍にいる界も同様の表情だ。

どうして素材玉を忘れているのか。なんで生焼け肉なのだ。

晴絵と界。2人をこのような表情にさせた理由、それは……。

晴絵「なんで……なんであんたはっ!」

晴絵「味方のはずの師匠に……ふたなりっ娘の亀頭を向けてるんですか!!」

……ということだ。

恵「…………」ポチーー..ン..

味方から剥けている亀頭を向けられる苦しみ。これは向けられた者のみ知る。

界「…………」

さらに、衝撃はそれだけではない。界にとって、亀頭を向けられる以上にショックだったのは恵の姿だ。

セーラー服を身に纏っているのは普段通りだが、決定的に違っているところがある。

晴絵「それに……噂では一度もパンチラしたことのないはずの……あなたが……」

恵「………………」

晴絵「なんでパンモロしてるんですか!!」

恵「………………」ゴゴゴゴゴ...

晴絵の指摘通り、恵のパンツは丸見えだった。

それも当然だろう。スカートをパンツの中に入れてしまっているのだから。

見えない方がありえない。だが見えているこの状況もありえない。


何故なら、パンモロしているのが原村恵だからである。

過去にどれほど強い風があろうと、両腕を拘束されていようと、パンチラすら許さず過ごしてきたという伝説は、百合妄想士たちの間では有名だ。

『恵のパンツを見るためには、虫か動植物か大地に生まれ変わるしかない』とか誰かが言ってた。

実際は458プロが関わり出してから一度、久美子がパンチラを見たのだが、それを知るのは久美子本人のみのため、伝説は生きている。

それに、パンチラとパンモロではレベルが違う。

『原村恵がパンチラを許した』ということであれば驚きと戸惑いは隠せないだろうが、『彼も老いてしまったか……』と呟きながら煙草を吹かすような反応に落ち着くだろう。

しかし『原村恵がパンモロし続けてた』となれば、『超ありえないんですケドマジでー!』と、ギャルだ。

そんな風にギャルになってしまうくらい、原村恵とパンモロは結びつかない。

どれほどありえないことかをわかりやすく例えるなら、ストライクウィッチーズが月9で実写ドラマ化すること……これくらいのレベルだろう。

当然あの格好のままであり、最終回は『スースーするの』。

あるいはマリみての祥子様がスマブラに参戦するくらいの可能性。誰もが驚く。

恵「………………」

そんな恵が、今や前後左右どの角度からでもパンツが見えるシステムになっていた。

そして言うまでもなく、股間部分には尿漏れのシミが2滴ある。

晴絵「あなたは……敵ながら伝説的に清楚で………それなのに……」

界「アッカドーン」

晴絵「なんですか」

界「……それ以上言うな」

晴絵「ッ!どうしてですか師匠!これは裏切り…」

界「アッカドーン!!」

晴絵「……っ!」ビクッ!

界「……ここは俺に任せてくれ」

晴絵「…………はい」

界「………恵さん。いえ…………師匠」

晴絵「!」

晴絵(師匠って……じゃあ原村恵が……師匠の師匠!?)

恵「…………なんだ」

界「……あなたは今日、俺たちが地下へ行けるよう、敵の追撃を防ぐべくしんがりを務め、地上の敵と戦ってくれていた……そうですよね」

恵「ああ」

界「俺は……あなたが地上にいる458兵を片付け、加勢してくれるのを待ってました」

恵「……そうか」

界「それなのに…………………これはどういうことですか」

恵「見たままだ」

界「百合を愛し、百合を育て、百合と共に生きてきた組織、リリーブライドの会長が458プロ側に付いた、と?」

恵「……そう思ってくれて構わない。そのためのパンモロだ」

界(師匠……)

恵「………………」

界(なんでだ…………なんで裏切った?)

界(あんたは……あんたは……――――)


~~~~~~~~~~~~~~~

【コミケ会場】

界(当時20歳)「………………」

女性「…………」テクテク

界(来たっ!お客さん!)ドキン!

女性「………………」スッ

界(おっ!手に取ってくれた!その同人誌は自信作だぜ!)

女性「………………」チラ

『ふたなり好きな人は絶対読まないでください。興奮しまくりで女性は子宮、男性は玉袋の中でフェスティバルが開催されちゃいます!』

界(どうだ!インパクトあるだろ!?)

女性「………………」パサ

界(!な……一目で見切り付けた!?そんなバカな!)

女性「…………」スッ

界「あ、あの、待ってください!このCDはどうですか!?俺が作ったふたなりの唄です!良かったら聴いてください!カップリングは、ぽち○ぽ体操第2で……」

女性「……っ……」テクテクテク!

界「あ……」

界(………………ダメだ。まったく売れねぇ…………同人誌だってもう少し読んでくれればち○ぽが飛び出す立体仕様のページにたどり着いたのに……そこまで読んでもらえねぇし)

界(………これだけこだわってて、なんで1冊も売れねぇんだろうな……)ハァ..

界「………………」

界(去年はふたなりシフトレバーを作ったが1個も売れなかったし……)

界(…………やっぱり、ふたなりは誰も求めてねぇのか?)

界(俺の夢……近所の公園にふたなりオブジェをダブルの意味でおっ立てることは……叶わねぇのかもな……)

界(もう……諦めて帰るか……)スクッ

恵「…………」

界(ん?いつの間にかお客さんが……)

恵「『ふたなりウォウウォウ ち○ぽド根性 だけれどやっぱりお姫様に憧れる……』か」

界(!ふたなりの唄を聴いてくれてる!?)

恵「魂のこもったいい歌だ」

界「あ、ありがとうございます」

恵「…………む?この立札は……」

界「?ああ……これ、ラーメン屋とかでよくある格言の真似というか……俺が思ったことをただ書いただけで……」ポリポリ

恵「『ふたなりを愛し、百合を愛し、コツコツ生きてきた俺だけど、いつかち○ぽがふたなりと百合を結ぶ架け橋になるといいのになぁ…』か…」

界「あはは……なんかすいません。若造が変なこと書いて」

恵「いや……そんなことはないさ。それより…」

界「?」

恵「喜べ少年。君の望みはようやく叶う」

界「え……?」

恵「私のところへ来ないか?」

~~~~~~~~~~~~~~~


界(あの日、あんたに出会った時から照が生まれるまでリリーブライドに所属していた俺にとって、あんたは常に輝いていた)

界(百合業界を陰から支え、百合作家を見出し、ふたなりにも温かい目を向けてくれた…………俺は生涯の師に出会えたと……信じていた!)

界(それが……)

恵「…………」

界(その答えが…………パンモロなのかああああ!!!!)ギリリ..

晴絵「……し、師匠……落ち着いてください」

界「…………っ」ハッ

―――恵『落ち着け少年。我慢汁が垂れている。ふたなりであろうと清楚を失うな』

―――界『す、すいません……』

界「………………」

界(そうだった……よく師匠に注意されたな……『戦闘時に必要なのは冷静であること。そしてふたなりのホウレンソウ―――包茎、連続射精、早漏―――を守ることだ』って……)

界(ひとまず呼吸を整えるんだ)スゥー-..ハー..スゥー..ハァァ..

界「…………」

界(……少し落ち着いた)

晴絵「師匠……」

界「ああ、大丈夫だ。ありがとな」

界(アッカドーンのおかげで冷静さを取り戻せた。そして、気付いた……いや思い出したことがある。それは……)

恵「…………」

界(師匠が俺に亀頭を向けたからといって、裏切ったと安易に決め付けてしまうのはよくない。言葉では458プロについたと言っていても、本心が同じとは限らない。何かの作戦なのかもしれねぇ)

界(それに……考えたくねぇけど、師匠より強い人間がいて、そいつによって操られてるのかもしれない)

界(!そういえば、龍門渕さんところの執事が458プロ側に寝返ったと言ってたな………裏切るはずのない人間が同時に裏切った…………偶然とは思えねぇ)

晴絵「ああっ!」

界「!どうした?」

晴絵「…………あの人のスカートのポケット部分を見てください」

界「ん?あれは……っ!」

晴絵「星の形のキーホルダー。瑞原プロのグッズです」

界「それをどうして師匠が?…………はっ、そうか!」

界(愛宕雅枝を虜にしたという瑞原はやり!彼女が何かしらの能力を使い、師匠を操っているということか!)

恵「もういいかね?」

界「っ……」ハッ!

恵「…………君が動かないのなら……こちらから動くとしよう」グゴゴゴゴゴゴ..

界「!」

界(な……なんだこの力は……!?)

晴絵「!!?」

恵「がああああああああああああああ……!!」

界(常に師匠から発せられていた百合の波動が……みるみる薄れていく……)


リリーブライド会長、原村恵。

彼が会長として行動している時、体からは常に百合の香りと波動を放ち、加齢臭とは無縁の存在だった。

しかし今、その波動は消え去った。

そしてツンと鼻をノックするのはニンニク臭、タバコ臭、練習量が多い運動部の部室臭。

界「し、師匠……」

界(ありえねぇ!こんな匂い……師匠がフローラルを切り捨てたっていうのか!?)

恵「はあっ!!」ヒュバッ!

界「!?」

晴絵「師匠!危ない!」グイッ..

ビチャッ..

界「アッカドーン……」

晴絵「ふー……もう少しで当たるところだった…………師匠!何をボーっとしてるんですか!あの人が今投げた妄想は、髭と陰毛を固めた毬ですよ!」

界「!?な……師匠が……そんな物を投げるわけ……」チラ

モッサー..

界「マジ……か……」

晴絵「はっ!?どうやら、それだけじゃないみたいですね」

界「?」

晴絵の言葉を受け、周りを見回すと、信じられない光景が広がっていた。

界「な……ぁ……!?」

ただの無機質なコンクリートの壁だったエリアFの床と壁一面に、陰嚢――キ○タマ袋――が張り付いていたからである。

界「気持ち悪ぃ!!」

恵「……そうだろう?ブヨブヨに柔らかいところがまた不気味……それが陰嚢だ」

界「……師匠、あんた……」

恵「私は今日、この時をもって百合を捨てた…………今の私は『百合嫌ー(ユリキラー)・恵』だ」

界「………………」

恵「もはやこの部屋のほとんどが男性ホルモンで覆われている。床、壁は陰嚢。ドアノブは陰茎。蛍光灯は裏筋、セキュリティの暗証番号入力用のボタンは毛の生えた男の乳首……」

恵「この部屋には百合など存在しないっ!!」

界「……師匠……あんた………………ん?」

恵「百合は……無力なのだ!!」

界「…………なぁ、師匠」

恵「なんだ?」

界「『百合嫌ー』、『百合など存在しない』、『百合は無力』。百合を愛してきたあなたが口にするとは思えない言葉だ」

恵「ふっ……だからこその百合嫌ーだ」

界「確かにそうだ。だけどよ…………だったら、どうして!」

恵「?」

界「……あんたは……尿漏れのシミを増やしてるんだ?」

恵「!!」


界「さっきまでは2滴だった…………でも今は5滴だ……」

恵「何を……言っている……」

界「……もう1回言ってくださいよ。百合は無力だと」

恵「何度でも言ってやるさ……百合は…………無力だ」

ポツーン..ジワー..

界「…………また1滴、尿漏れした」

恵「っ……!」

界「……あんたの尿道は……体は口より正直だ。あなたが平静を装おうとしてるからこそ……涙を流せないからこそ、代わりに尿が何滴か漏れた」

恵「ぐ、ぅ……」

界「百合嫌ーなんて……思ってもないことを言わないでくれ……師匠」

恵「………ぐ」

界「…………師匠?」

恵「ぐ……あああああああああ!!!!」

界「っ!?な……師匠!?どうし…」

恵「YURYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!」

界「!?!?」

恵「はあっ!はぁっ!はぁ……がああっ……!」

界(なんだこれは……顔付きが急に荒々しくなった……)

恵「はやー……」

界「!」

界(今の深呼吸は瑞原はやりがよくやるもの!これは……)

恵「………少年。もうお喋りは終わりだ……ここで朽ち果てよ!!」

界「…………そうかよ」

界(間違いない。師匠は瑞原はやりによって操られてる。もはや説得とか言う段階じゃねぇ…………ならば!)キッ!

界「師匠……あんたを倒してこの部屋を出る!」

界(照や咲たちにはこの陰嚢部屋に入ってほしくないしな!)

恵「…………そうか。ではかかってこい!」ニヤリ

界「……ああ!今から……俺の全てをぶつけてやるっ!」ヒョイッ!(メガネを投げ捨てる)

恵「!」

晴絵「師匠!?どうしてメガネを……」

界「……今この部屋に展開してるのは男性ホルモンの支配するフィールドだ。そんなところでメガネなんてかけてたら、あっという間にザーメンレンズさ」

晴絵「…………!」

界「そうなれば、百合がどうこう言うまでもなく俺は取り込まれる。陰嚢布団にでも包まれて、目が覚めたら戦いは終わってるだろう」

恵「ふ、ふふふ……はははは!よく気付いた!そこまで成長したか!少年!」

界「あんたに鍛えられたんだ」

晴絵「師匠……」


界《……アッカドーン》

晴絵《師匠!?なんですか!》

界《このフィールド内では男臭くしろ。百合とは正反対に振る舞え。でないと、すぐに潰される》

晴絵「っ……」ゾクッ..

界《それと師匠への攻撃もするな。俺は百合と男性ホルモンのバランスを調整できるが、アッカドーンでは無理だ。百合妄想した瞬間にやられる》

晴絵《わかり……ました……》

界《いいか?男らしく……いや、少年誌らしくと言った方がわかりやすいか?そういう風に振る舞え、わかったな?》

晴絵《はい……あ、いえ…………わかったぜッ!!》

界《ああ……それでいい》

恵「相談は……終わったか?」

界「あたぼうよ!じゃあ……行くぜェッ!!」

恵「YURYYYYYYYYYYYYY!!!」

陰嚢部屋と化した地下の密室にて、百合妄想士同士の勝負史上、最汚にして最後であろう戦いが幕を開けた―――


【総司令室】

はやり「はやー」

良子「オーウ。会長さんが頑張ろうとしてますねー。グッド」

健夜「そうだね。うん」ニヤ

雅枝「ファンなら当然や!はぁあ……はやりちゃん……かわええ///」

咏「たださぁ、会長さんの調子はよくても、他が悪くね?」

良子「同感です」

咏「……今現在の戦力は、エリアAだとこっちが1200人くらいで相手がLFG軍と宮守軍を合わせて500人ほど……Bは1300人くらいに対しLB軍とLFG軍、巫女さんたちで400人ってとこ……」

良子「458プロはミックス1500人ほどやられてるのに、敵は今だに100程度……ミラクル」

咏「まー、敵は主力中心で凌いでるからかもしれんけど」

健夜「……もう少し様子を見よう。それでもダメなら……」

理沙「私たちの出番!」プム!

健夜「…………だね。ふふ……」


【エリアA】

貴子「ちっ……宮永の親父さんまでいなくなっちまったじゃねェか」

純代「はい」

貴子「……ん?ということはなんだ?この部屋の中で私が一番年上になるのか?つまりは全権委任者か?」

純代「……そうですけど、今は戦闘中ですので威張ったりビンタするのは……」

貴子「……おいコラ深堀てめェァァッ!私が『年上がいる時は大人しくしてるくせに一番年長者になったら急に威張るような姑息な人間』だとでも思ってんのかァァッ!?」

純代「…………い、いえ。久保コーチは裏表のない素敵な人です」

貴子「ふん!よし……ジュースでも奢ってやる。どこか自販機はねェか?」キョロキョロ

純代「……あの……今は結構大変な状況ですので……ほら、宮永さんたちとか……」

貴子「ん?」

照「……く……っ…」

458兵たち「えいえいえいえーい!」ズオォオオオ..

咲「お姉ちゃん、危ない!」シュバ!

458兵AU「あふぅ!」

458兵たち「まだまだなのー!」ザザザ..

咲「うぅ……全然数が減らないよぉ……」

照「お父さんもいなくなって兵力差がさらに広がったからね……」

やえ《〔 ニ ワ カ 殺 し ( ニ ワ カ キ ラ ー )〕!!》

458兵たち「ひぎゃあああ!!」バタ!

やえ「まだまだっ!私たちを……数でどうこうできる相手と思うなよお前らーっ!」シュバア!

458兵たち「ぎゃふぅう!」

やえ「リリーブライド魂を……舐めるなぁー!」

照(小走さんが予想外に活躍してるけど……それでも……)

458兵たち「ちっひゃーー!」

照(数が違いすぎる……)

照「………………」

照(もう出し惜しみしてる場合じゃない……)

咲「お姉ちゃん?まさか……」

照「うん。ふふ……今からリリ…」

咲「『〔リリース(Lilys×Release)〕を会得したことによって身に付けた強力な新技をここで披露する。できることなら小鍛治プロたちと戦うまでは温存しておきたかったんだけど……』的な感じ!?」

照「…………うん。何故なら新し…」

咲「『新しい能力を使うことによって情報が相手に伝わって対策を立てられちゃう危険性があるから』とか!?」

照「………………そう。でもそれ…」

咲「『それを踏まえた上で、この追い詰められかけてる状況を打破するには新技が必要だと確信した。だから今から使う』。でしょ!?」

照「……………………………………」

咲「どう?お姉ちゃん、当たってた?」

照「…………全部正解」

咲「や、やったぁ。私、お姉ちゃんの気持ちを理解できてるよぉ」ニコニコ


照「……正解だけど……」

咲「?」

照「……私が言いたいセリフを全部奪ったから、私の咲への好感度はダウンした」

咲「ああっ!?お姉ちゃんエンドが遠くなっちゃった!でも難攻不落なお姉ちゃんかわいい……」

458兵たち「ひゃーーー!!」タタタ!

照(っ!来た!)

照(……落ち着いて……焦らず、ちゃんと組み立てよう)スゥー..ハァー..

照(体の中にある百合への想いを胸の辺りへ移動させるイメージ…)

458兵たち「ひゃーなのー!」タタタ!

照(!近い……)

咲「お姉ちゃん!この人たちは私が相手するから!お姉ちゃんは落ち着いて集中して!」

照(咲……ありがとう……)

照(…………胸へ集めた百合への想いを凝縮させ……)ユラリ..

照(そして……その想いをも、百合を想う気持ちで包む……そう、花の輪(Wreath)の様に……)

シャラ..ラン

照「!!」

照(できた……これで…………もう一度……)

照《〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕》ゴアァァ..

たった今照が使ったもの。それは〔リリース(Lilys×Release)〕に目覚めた百合妄想士が次に到達する境地。

咲「お姉ちゃん!」

照(……これスは最初の〔リリース(Lilys×Release)〕と違って大幅にパワーアップ、というような意味合いはないけど……自分の中に眠る新しい力を呼び出すことができる)

照(私の……力は……)

458兵たち「うっうー!」

咲「あ!お姉ちゃん!そっちに行ったよ!」

照「……任せて」スッ

照が右腕をダランと下げ、拳を閉じて開いてと繰り返し、最後にゆっくりと拳を握る。

そして範囲型のオープン回線を展開した。

照《〔はる×ちは〕》カシャ

照(『はるちは』をセット)

カプ名を発したと同時に、右腕がピクリと動く。

照《〔ハム子×ゆかり〕》カシャ

もう一度カプ。今度はさっきよりも少し大きく動く。

照(セット。次は…)

照《〔リャン・チー×アルファルド〕》カシャ

照(セット!3つ…)

3組目のカプ名を発した瞬間、照の右腕の周りを何かが包み込んだ。

その何かは、まるで小型の竜巻のようにグルグルと腕のそばで回転を続け、

回転に呼応するように右腕がピクピクと振動する。


照「っ!!」ギュルル...

458兵たち「おおおおお!!」タタタ

照(敵は20人程度……だったらこれでいける!)

近付く敵勢を前に、照は右腕を後ろへ引く。

そして敵へ狙いを定め、前方へ突き出した。

照「〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!」ギュロォォォォ!!

右腕を包んでいた竜巻は、照の意志によって方向性を与えられた。

照が描いた3つのカプ妄想の塊が、回転しながら飛翔する。

458兵たち「え……」

ズァアァアアア!!

458兵たち「が…………はっ……」

ドササササア...

照「…………ふう……」

咲「す、すごい……」

照(……うん。いい感じだ……これならいける)

〔連続妄想(コークスクリュー)〕。

カプ名や作品名などを範囲型オープン回線で発声し、右腕にその妄想をセット(集めて)し、凝縮させて放つ能力。

多くの妄想をセットするほど威力が増す。

ただし2つ目以降をセットする際には、何種類かの条件がある。

1つは、前の妄想あるいはカプ名の最後の文字から始まる言葉であることが条件。

要は『しりとり』である。

例)はる×ち『は』→『ハ』ム子×ゆか『り』→『リ』ャン・チー×アルファルド

何故このような条件があるのか。それは照が麻雀で行う連続和了の『前の和了りよりも高い点数でなければいけない』というような制限があるのと同じ理由だ。

『強い力を使うためには代償が必要』という照の考えに基づいたもの。

買いそびれた百合漫画の限定版を欲したものの、大人気で値段が高騰したためお小遣いで買えなかったという過去を持つ照の『いい物は高い。定価を遥かに超える犠牲が必要』という結論が原因である。

咲「!お姉ちゃん、また来たよ!」

照《任せて。『なのは×フェイト』……―――》


白望「……ダル……」

458兵たち「」ダダダ..

エイスリン「テキオオイ!」

洋榎「嫁は多いに越したことないねんけど……にしてもやなぁ……」

塞「うーん……セクシー系の子が多いからちょっと微妙かも」

憩「みんな頑張ってぇー!」

豊音「うーん……頂上はまだなのかなー?ちょー高いよこの塔……」ピコピコ

白望「……あー……もういいや」

塞「シロ!?諦めるの!?」

白望「うん」

塞「いやいや、それは……」

白望「このまま戦うのは諦める……」

塞「え?」

エイスリン「エ?」

洋榎「へ?」

豊音「ええっ!?また対面ドボン条件!?ちょーむずいよー」ピコピ

白望《〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕》ゴアァァ..

塞「!シロ……」

白望《〔 迷 い 家 増 築 ( マ ヨ ヒ ガ ・ リ フ ォ ー ム 〕》

458兵たち「え……」

白望《君たちはどんなカプが好き?》

458兵AV《…………静なつ……なつ静もいい……》

458兵AW《アームストロング少将とイズミカーティス…》

458兵たち《私は……――――》

白望《そう……残念だね……》

458兵たち「?」

白望《そのカプたちは…………私が閉じ込めた》

ギィィ..ガチャァァン!!

白望《〔迷い家増築(マヨヒガ・リフォーム〕は、そのカプを逃がさない》

458兵たち「ぐはあぁぁ!!」ドサドサ..

白望(私の能力が続く限り、あんたらはそのカプ以外で妄想できない)

塞「わわ、強烈ね。やるじゃないのシロ」

白望「…………ダル……」

洋榎「確かに小瀬川の能力は見事やったけど、敵はまだまだおるで」

458兵たち「わさわさ……」

塞「む」

458兵たち「わさわさ……」

洋榎「……っちゅうか……逆からも来たで」

塞「これは……ちょっとやばいかも」


白望「…………確かに。私だけじゃ手が回らない」

エイスリン「シロ!」

白望「?どうしたのエイスリン」

エイスリン「ワタシ、タタカウ!」

白望「…………」

塞「いやいやいや……っていうかなんで今までほとんど戦ってなかったのよ」

エイスリン「?」キョトン

洋榎「くはぁああ!!ワールドワイド嫁や!」キューン!

白望「まぁ……エイスリンが手伝ってくれるなら……助かる」

エイスリン「マカセテ!」

塞「でも、この人数相手じゃ辛いんじゃない?絵を描いてる間に攻撃されるし……」

エイスリン「ヘーキ!ミテテ!」

塞「?」

エイスリン《〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕》ゴアァァ..

塞「お」

エイスリン「…………イクヨ!」ニコッ

458兵たち「なのー……」ジリジリ..

エイスリン《〔 セ ン ジ ュ ナ モ リ ( 千 手 な も り )〕》ユッリユッラッラッラッラ..

洋榎「ほー……なもり先生、とな?」

エイスリン「コレヲツカエバ……ナモリセンセイノテ、センボンブンノハヤサデ……」

エイスリン「カケルヨッ!」クワッ!

エイスリン「」キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ

塞「は、早っ!?」

人間業とは思えない速度で絵を描いていくエイスリン。いや、もはや描いているところすら目で追えない。


白望「すごい……」

それは白望がダルさを忘れるほどの衝撃映像だ。

458兵たち「え……」ピキ

だが、脅威的なのはスピードだけではない。

今までのエイスリンの能力では百合妄想を描いて対象を操ったあと、その絵を消した場合は効果が切れ、対象者は自由を取り戻していた。

しかし〔リリース(Lilys×Release×Wreath)〕を会得したエイスリンは、描いた絵を消してから1分間はコントロールさせ続けることができるようになっているのだ。

その結果、凄まじいスピードで絵を描き、すぐに絵を消し、再び描く……この繰り返しによって、大人数を1分間まとめて操ることが可能となる。

そしてさらにもう1つ、恐るべき事実がある。

人間離れしたスピードで手を動かして絵を描いているエイスリン。その動きは、ともすれば不気味に映るものだろうが……

エイスリン「デキタデキタ♪デデデデデキタ♪」

不気味な動きのエイスリンちゃんも天使。これは驚愕であると同時に常識。

『天使すぎる○○』というキャッチフレーズがあるが、エイスリンちゃんの場合はそれを超越する『人間すぎる天使』なのだから。

塞「……どうやら、なんとかなりそう」

老婆A「そろそろ脱ごうかね」ファサ..

塞「あ、まだ大丈夫です。そこに座っててください」

老婆A「あれま。そうかい」

憩「隣へどうぞー」ニコニコ

豊音「むむむ……何を切ろうかー……」ピコピコ


【エリアB】

灼「………………」

458兵たち「むふふ……」

灼(彼女たち……お尻をくっつけあって輪になった。しかも両手で股間を押さえてる)

灼(これじゃ打つ手がない……両手両足どの指でも〔一撃必殺(パーフェクトゲーム)〕を使えるようになったとはいえ…………どうしようもない……)

灼(ハルちゃん……)

??《何をボーっとしてるっすか》

灼「え」

灼(この声は…………東横さん?)

桃子《先輩の指示で鷺森さんを呼びに来たっす。あっちにみんな固まってるので、来てほしいっす》

灼《……うん。私的にも誰かと組んで戦った方がいいんだけど……でもこの人たちをなんとかしたい。じゃないと私の対抗策が他の人に漏れるから》

桃子《だったら私が手伝うっすよ》

灼《それは心強…》

桃子《それじゃあ…………〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕っす》ゴアァァ..

桃子《……鷺森さん、行くっす》

灼「え……?」

458兵AX「?今、何か誰かの気配がしたような…………って……ええええっ!?」

458兵AY「どうしたの?」

458兵AX「さ、鷺森灼が…………消えたの!!」

458兵AY「は?そんなわ……」ズム..

458兵AX「AY?どうし…」ゾムン!

458兵AX・AY「」バタバタ..

458兵AZ「え?え?あ、あなたたち……どうしたの!?」

ズム!ズポ!

458兵AZ「うぇ……むぅ……ん……」ドサドサ..

458兵たち(な、何よこれ………姿が見えないのに、攻撃だけされてるなんて……まるで…………)ハッ

458兵たち(姿が見えない……?ま、まさか!)

桃子(……勘のいい人たちは気付いたみたいっすね)タタタ

桃子(私が……鷺森さんをステルス状態にしていることに……)フフッ..

灼「」シュッ!ズブッ!

458兵たち「がはぁ……!」バターン!


桃子(〔2人だけの世界(ステルスデート)〕。この能力によって、私が手を繋いでいる人の存在感を私と同じ段階にまで引き下げられる)

桃子(あとは、こっちの姿を見失っている隙だらけの子のお尻の穴を鷺森さんが突くっす)

桃子「…………」

桃子(……本来は、誰の目も気にせずに先輩と2人きりの時間を過ごしたいがための能力なんすけど……使えるものは使わないと損っすもんね)

灼「」ズブブ!ヌポズブム!

桃子(あ……両手パターンもあるんすか)

458兵たち「く、くぎゅうううううう……」ドサドサ..

灼「ふぅ……」

458兵たち「あ!今薄っすらと見えたわ!あそこよ!」

灼・桃子「!!」

桃子(鷺森さんの大活躍によって注目度が上がってステルスが薄れてきたみたいっすね……囲まれでもしたら逃げられない……まずいっすよー)

灼《ここは逃げた方がいいと思…》タタッ

桃子《そうっすね》タタタ

458兵たち「!そっち行ったわ!追いかけるのよ!」

灼・桃子「!」タタタ

458兵たち「うっうー!」タタタ!

桃子(……手を繋いだままだから走りにくいっす。でも手を離したらステルスが解けるっす)

桃子(何かいい方法は……)

??「私に任せるですよー!」

桃子「?」

初美「」ニコー

桃子(あれは……服を着てる薄墨さんっす。こんなところまで出てきてたんすね)

灼(任せるって……結構な人数に追われてるけど……どうする気だろう?それに服を着てるなんて珍し…)

初美「ふふふ……」

初美が服を着ている謎。その答えは1週間前―――


~~~~~~~~~~~~~~~

【はつみンち】

全裸初美「………………」

全裸初美(なんか……こうしてボーっとしてると、あの時のことを思い出しますよー)

純代『服があるからこそ全裸が映える。チラリズムを蔑ろにするものはチラリズムに泣く』

純代『あなたは露出にこだわるあまり、本来の………インハイであなたが見せてくれた最高のチラリズムを捨てた……』

純代『最初から全裸など………言語道断!!』

純代『脱ぎそうにない子が脱ぐからいい………』

純代『普段見えないから見えた時に嬉しい………』

全裸初美「………………」

全裸初美(〔全裸こそすべて(アパレルキラー)〕。妄想したキャラが全裸に見える能力……かなり強力だと思ってたのに、深堀さんに否定されましたー…………でも今だにその理由がよくわからないですよー……)

全裸初美(それに深堀さんは私の裸を見てもあまり興奮してませんでした……)

全裸初美(私の裸、魅力ないのですかー?)

全裸初美「…………」ウームム

全裸初美(このまま答えが出ないままだと458プロとの戦いに集中できないですー。ここは相談しましょう)

ピポパ..トゥルルルル..

巴『はいもしもし。どうしたのハッちゃん』

全裸初美「あ、聞きたいことがあるですよー」

巴『なに?』

全裸初美「私の裸、どう思いますかー?」

巴『…………いや、服着なよって思う』

全裸初美「どの程度着たらいいんですかー?」

巴『いや、普通に街歩けるぐらい』

全裸初美「私は裸でも平気ですよー?場所は選びますけど」

巴『……あのね、前も言ったけど年頃の女の子が日焼けあとを見せるだけでもちょっとアレなのに、ハッちゃんはその数段上をひた走ってるの。大体全国ネットで…』

全裸初美(!これはお説教60分コースですよー!?)

全裸初美「あ!ちょっと用事を思い出しました!切りますねー!」ピッ

ツーッツーッ..

全裸初美「ふう……巴ちゃんの『何気ない会話からお説教が始まること』こそ鬼門ですよー」

全裸初美(他にいい相談相手はいませんかー?)ピポポ

全裸初美(あ)

全裸初美(これは……この前のリリーブライドとの戦いが終わってから無理矢理渡された番号……)


全裸初美「………………」

全裸初美「ダメもとでかけてみますかー」ピプポ

トゥルルルル...

??『……もしもし?どちら様ですか?』

全裸初美「あ、私……この前…」

??『はつみたん!?』

全裸初美「っ!は、はい……臼沢さん、お久しぶりですよー」

塞『ひ、久しぶり!え、なに、電話くれるとか超嬉しい!どうしたの!?』

全裸初美「えーと……聞きたいことがありまして……」

塞『どんなこと?なんでも聞いてよ!全部答えるから』

全裸初美「…………私の裸、どう思いますかー?」

塞『触る』

全裸初美「ひっ!」

塞『舐める。撫でまわす』

全裸初美「……ど、どうしてですかー?」

塞『え?そんなの、はつみたんが魅力的だからに決まってるじゃない』

全裸初美「え……///」

塞『だから私は触るの』

全裸初美「へ、へえー……そうなんですかー。私の裸はそれだけ魅力的……///」

全裸初美(……?でもそれなら、深堀さんはどうして全裸を否定したですかー?)

塞『あ、ごめん。訂正する』

全裸初美「えっ!?や、やっぱり……魅力的じゃないですかー……?」

塞『違う違う!はつみたんの裸が魅力的だっていうのは本当よ!こないだの戦いの時、気絶してるはつみたんの姿をこっそり写メ撮ったくらいだし!私が言いたいのは、はつみたんの魅力は裸だけじゃないってこと』

全裸初美「え?」

塞『私、もっと違う服装のはつみたんを見たいって思うもん』

全裸初美「違う服装……例えばどんなですかー?」


塞『うーん……シンプルにスクール水着とか園児服もいいわね。あ、園児服の変化形で裸の上に名札シールで左胸、たすき掛けしたバッグで右胸を隠す感じもいいなー!』

全裸初美「…………」

塞『はつみたん?』

胡桃『……塞、さっきから誰と話してるの?』

全裸初美「?」

塞『え……ああっ!』

胡桃『なんか園児服とか変なこと言ってたような……』

塞『ちょ、ちょっとごめん!電話するから部屋出るね!先生、ちょっとどいてください』

トシ『私はすでにどいてるよ。健康という名のレールからね』

塞『だったらカップ麺控えましょうよ』

トシ『それはありえないんだよ。わかめラーメン美味いよ』

塞『もう……』テクテク ガチャ

塞『…………ごめんねはつみたん。お待たせ』

全裸初美「あ、うん……」

塞『……あ、あれ……?はつみたんもしかして引いた?』

全裸初美「いえ……」

全裸初美(引いてもおかしくないこと言われた気がするのに、臼沢さんがあまりにも嬉しそうなトーンで喋るから、普通に聞いてしまったですよー)

全裸初美(それに…………ちょっとアリかな、とか)

塞『と、とにかくね!裸だけがはつみたんじゃないの!その……裸の上にシールとか言ったけど!それが全てじゃないっていうか』

全裸初美「ふふ……わかってますよー」

塞『あ、そ、そう?』

全裸初美「……ありがとうございます。相談に乗ってくれて助かりましたー」

塞『え?あ、いえ……』

全裸初美(おかげで……何か見えた気がします)

~~~~~~~~~~~~~~~


初美「………………」

初美(そして、私は新しい力を身に付けたですよー)ニヤリ

458兵たち「あの巫女は後回し!鷺森を先に倒しましょう!」

初美「む、無視する気ですかー!?それなら……無視できなくするまでですよー!」ゾワァ..

灼「!」

初美「〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕」ゴアァァ..

桃子「!」

458兵たち「!!」

初美「〔 初 美 脱 衣 祭 ( は つ み だ つ い ま つ り )〕!!」ラーラララー

服を着ている初美が能力を発動すると、初美の体がボウッと光った。

そしてその光が複数の人型へと変化し、横一列に並ぶ。

灼「?」

初美「ふふふ……」バサァッ!

そのタイミングで初美は巫女服を脱ぎ捨て、いつも通り全裸になる。

すると光に包まれた人型のナニカが色づき、姿形が露わになった。

そのナニカとは……薄墨初美。


桃子「!!」

ホログラムなどではない、質感を伴った初美の発現。

性格、体格など全てが完璧に一致しており、まさに本人を増殖したようなものだ。

さらにこれらの初美の格好に注目したい。

1人は巫女服を普通に着ている。

1人は緋袴のみで上半身裸。

1人は襦袢のみで下半身は裸。

1人は裸で白ニーソ。

そして本人もちろん全裸。

様々な姿の初美を堪能できる素晴らしき能力。

ヌギノミクス、脱衣の極意。全員揃ってハツミクス。

周りの視線を一斉に集め、〔初美脱衣祭(はつみだついまつり)〕、ここに開催。

458兵たち「ごくり……」

灼・桃子「…………」ジィーッ..

誰もが初美から目を離せない。

これが〔初美脱衣祭(はつみだついまつり)〕の効果。

近くにいる人間の視線を強制的に自分へ向け、初美の姿を見て妄想を喚起させる能力だ。

楽しみ方、眺める順番などは人それぞれ好みで選べるため、汎用性も高い。

襦袢に飽きたら緋袴へ。緋袴飽きたら白ニーソ。原点巫女服、ラストは全裸。白米たくあんお味噌汁、である。

全裸初美「あはっ!見られてるですよー!」キャッ

襦袢初美「あはっ!見られてるですよー!」キャッ

458兵たち「だ、だめ……目が離せない……///」

桃子(っ……!薄墨さんが敵の目を引き付けてくれてるっすけど……私たちも夢中になるっす……)

灼(……刺激的な姿もそうだけど、楽しそうに全裸な薄墨さんを見てると、露出に興味が湧いてくる……この思考は危な…)

桃子《と、とにかく!視線は薄墨さんから外せないけど足は動くっす。カメラ固定のままドアまで逃げるっす》

灼《わかった》


【総司令室】

良子「OH……春のところのあの子、なかなかの強ハートですね」

咏「そだね」

良子「他の部屋の様子は…………あ、ちょっとこっちのカメラ見せてもらっていいですか?」

健夜「どうぞ」

良子「サンクスですー」ピッ

照『』ギュオォォ..

458兵たち『』バタバタ..

良子「宮永照……うちの子たちをアロットオブ倒していきますね。脅威です……防ぐ手立てはありますか?」

咏「いや、知らんし」

はやり「でもぉ~、どうする?このままだと形勢逆転されちゃうゾ☆」

健夜「………………」

ガチャ

智葉「…………」

咏「お。姫を倒した英雄だねぃ」

智葉「……それはさっき聞きました。状況はどうですか?」

健夜「…………」

咏「あんまよくないんじゃね?なんでかしらんけど」

はやり「あ!でもエリアAから引っ張って連れ出した子たちいたよね?そろそろ決着ついたかも☆」

智葉「………………」

智葉(白水たちか。園城寺たちとの対戦を希望してたからな……)

理沙「458プロ有利だった!」

はやり「そうそう、優勢だったよね♪」

咏「えと………このボタンで画面を切り替えて…………ほいっと」ポチ

良子「ナイスチャンネルザッピングです」


【エリアF】

姫子「〔 姫 子 と 哩 の 妄 想 縛 り ( ラ イ フ イ ズ ビ ュ ー テ ィ フ ル )〕」ギィッ!!

怜(もう負けや。終わり。やめやめ……このまま竜華の膝で眠ってまおう……)

哩「『囚人と看守縛り!!』」

怜(ほら見てみ。そんなプレイとかしたことないし……手も足も出えへん。向こうは回復しながら移動もできる。絶対有利や。めっちゃずるい)

哩《両手が自由にならない囚人姫子……看守哩は欲望ばを滾らせながら、囚人姫子の独房目指し廊下ば歩く。コツ……コツ……コツ……コツ…………ヒールの音が静寂の床ばノックすっと。囚人姫子はその度に体を縮こめっと。その様子はさながら袖の長いハムスター……》

怜(しかも長尺のストーリー攻撃……この一撃で私は終わりや……はぁ……短い青春やったなぁ。今はただナイトスクープが観たい)ハァ..

??《怜!!》

怜(ん……竜華?そない必死に呼びかけんでも聞こえてるて)

??《怜!!》

怜《…………せやから、聞こえてるで。なに?》

哩《カチャリ。ギィイ……。看守哩は鍵ば開け、独房へと足ば踏み入れる。囚人姫子へと迫る影がその体ば覆うように伸び、同調するように怯えの表情が顔全体ば占めた。そいばってんしかし看守哩の手からは姫子は逃げられん。そしてまつ毛が長か》

??《怜!》

怜《竜華。何度も呼ばんでも……あれ?体が動かへん》

キィィィィ..

怜《………あれ?新道寺ペア……》

哩・姫子「」

怜《…………2人も止まっとる……微動だにせえへん。まるで時間が止まったみたいや》

??《怜!やっと繋がった!》

怜《繋がった?どういうことや?あぁ……体が動かへんから竜華の顔も見れへん》

??《動かんでも大丈夫やで。うちが行くから》スィィーッ..

怜(行く?)

竜華?《怜!会いたかったで》ニコリ

怜《な、なんや……?竜華がめっちゃ小さなっとる…………まるで怜ちゃんやないか》

竜華?《そやで。怜ちゃんをモデルにしてみてん》

怜《モデル?》

竜華?《そや。怜がうちの膝にパワーを送って枕神怜ちゃんを使ったように……うちも怜のほっぺにパワーを送ったんや》

怜《…………何言うてんの?霊感商法?ごめん、持ち合わせないから……》

竜華?《怜が信じひんの!?最初に怜ちゃん言うといて!?》

怜《うん》

竜華?《うんって、そないあっさり…………と、とにかく!今、怜の前にいるうちは清水谷竜華やない!『膝柳 竜華(ひざやなぎ りゅうか)』や!!》

怜《なんで柳なん?》

膝柳竜華《…………なんとなく》

怜《……ま、ええわ。で、膝ちゃん。何の用?》

膝柳竜華《膝ちゃんやなくて竜ちゃんて呼んで!》

怜《……竜ちゃん。何?》

竜ちゃん《怜!諦めないで!》

怜《それ竜ちゃんちゃうやん。真矢みきちゃんやん》

竜ちゃん《そ、そんなんちゃう!茶化さんといて!》


怜《…………別に私、諦めてへんて》

竜ちゃん《そんなことない。怜のほっぺから力を感じひんかった!多分『ざんねん!!ときりゅうの ぼうけんは これで おわってしまった!!』とか考えてたはずや!》

怜《か、考えるはずないやん。世代がちゃうもん。古い古い。私、ピチピチの女子高生やで?》

竜ちゃん《なんで古い世代のネタって知ってるん?》

怜《う……うーん……眠なってきたなぁ……》

竜ちゃん《…………なぁ怜》

怜《…………なに?》

竜ちゃん《私たち、新道寺ペアに負けてまうん?》

怜《!》

竜ちゃん《うち……怜のことめっちゃ好きやのに……》

怜《そ、それは……私かて竜華のこと……す、好きやけど……》

竜ちゃん《せやったら……うち、勝ちたい》

怜《……竜華……》

竜ちゃん《うちと怜の方がラブラブやもん!》

怜《けど……コスプレとかしたことないし……》

竜ちゃん《あ、あんな?実は……うちの部屋には怜用の衣装とかめっちゃあるねん》

怜《え?》

竜ちゃん《怜に着てもらいたいなー、と思って買うてん。あと自分で縫うたりもしたでー♪》

怜《そ、そうなん?》

竜ちゃん《定番のナースとかシスターはもちろん、変わり種で言うたらF1ドライバーとか易者さん、虚無僧、ソニー損保CMの制服、相撲の行司、改造学ラン。あとは…》

怜《い、いや、もうええから。ていうか……なんでそんなんしてん?》

竜ちゃん《怜の可愛さを色んな姿で見たいからやん》

怜《っ……///》

竜ちゃん《……けど、怜が着たないって言うかも思って言い出せへんかった》

怜《そんなこと私が言うわけないやん》

竜ちゃん《ほんま?ほな『なぁ怜~。今日のエッチの時、F1ドライバーの服着てくれへん?』って言うたらどうする?》

怜《『大丈夫?ちゃんと保険証持った?』ってなる》

竜ちゃん《病院行かへん!なんもおかしない!って、ほらー!そんなリアクションやん……》

怜《今のはボケやんか…………ま、まぁ……私かて竜華が可愛い服とか着てるの見たい気持ちも……その……なくはないっちゅうか……//》ボソボソ

竜ちゃん《ほんま!?ほな今度絶対着てや!?》

怜《え?あ、うーん……》

竜ちゃん《やったぁ!めっちゃ嬉しい!!怜が色々着てくれる~♪》

怜(……早まったこと言うてもうたかなぁ……―――)


キィィィィン..

怜「はっ……!」パチリ

怜(今のは………夢?)

哩《最初は囚人姫子が食べたお皿へ舌を這わせる看守哩。変態的な行為でありながらも、その姿を見た囚人姫子の感想は…》

姫子《看守部長……キレイです……///》

哩《だとさ》フフッ

怜(いや……でもあのリアルな感じは……)チラ

竜華「」コクリ

怜(やっぱり……夢やない!)

竜華《怜……》

怜《……うん》

怜(私と竜華の絆、見せたる!)

怜《私は……看守でありながら、囚人竜華の脱獄を助ける!》

哩「む……」

姫子「な……」

怜《夜中……1人エッチに夢中になっとった竜華の手を引き、牢を出る私……》

哩(!そんな状態の恋人を前にして、襲わずにいられるだと!?)

姫子(それは……もし私が1人エッチサイドの立場だったら、部長をエッチな気持ちにできなかったと落ち込むったい……)

怜《そして脱獄成功、逃走成功。ずっと幸せにくらしましたとさ!〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕ギュアアアアア!!

哩「ぐっ……あああ」

姫子「ぶちょ……っ……」

哩(トドメば刺そうと長尺妄想にしたのが裏目に出たか……だが)

姫子(今のダメージも……こうして背中合わせで触れ合っていれば回復する)

哩(次は短めの妄想ば連続でぶつけっと。そうなれば私たちの勝ちだ)

怜「…………」

怜(ここや……ここからが大事。向こうは回復しながら移動できる。けど私らは膝枕のまま動かれへん)

竜華《怜……大丈夫》

怜《竜華?》

竜華《膝柳竜華ちゃんはな、怜のために生み出した力なんや》

怜《私のために……?》

竜華《うん。そやから竜ちゃんの膝枕でも回復できるんや!》

怜《!!?それはつまり……宙に浮いてる竜ちゃんの膝にほっぺをくっつけたら、立ったままでも……!)

竜華《回復可能やで!》

怜《ほ、ほなお願いや!竜ちゃん出して!》

竜華《うん!任せて!》

ボフッ

竜ちゃん《膝柳竜華やでー!》

怜《ほな、早速……》

哩《〔 哩 と 姫 子 の 妄 想 縛 り ( ラ イ フ イ ズ ビ ュ ー テ ィ フ ル )〕》ギィッ!!

怜・竜華「!!」


哩《『近所で工事するから騒音でご迷惑かけますと告げに来た女性とのやりとり縛り!』》

哩・姫子「…………」コホン

姫子《工事?うるさいのは困る。言葉だけじゃ足りん。誠意を見せなさい》

哩《そ、そんな…………えっ!?ど、どこ見てるんですか……///》モジモジ

怜(あかん。向こうはすでに攻撃の態勢に入ってる!しかも演技バージョン……きっと強力や)

竜ちゃん《怜。おいで!》

怜「!うん」

透明で小さい竜ちゃんの膝へ、ゆっくりと頭を預ける。

当然感触はない。だが、心が温まる。

そして消耗した力が回復していく。

怜(……これなら何度かは耐えられる……)

姫子《あなたの可愛い声なら、何ホーンでも我慢する!サワワ!》

哩《ああんっ!そ、そんなところ……汚い……///》

姫子《あなたの体に汚いところはないわ。あるとしたら……実際はやらない工事をでっち上げて、深夜に私の家に押しかける作戦を思いついた頭脳かな?ジュパパ》

哩《~~~っ!》

ズォオオオオ!

怜「ぐ……ああ……っ」フラッ..

怜(今までで一番の威力……けど……!)

哩《む?これも耐えるか》

姫子《部長!次はSFでいきましょう!》

哩《そうだな。宇宙船のコンピューターが壊れたアレでいくか》

姫子《はいっ!》

怜(……私は…………私と竜華は負けへん!私らの方が……ラブラブや!)チラ

竜華「」ニコリ

怜(その想いを…………ぶつける!)

哩《〔 哩 と 姫 子 の ……》

怜「私と竜華の絆の場合ーっ!!」

竜華(頼むで!怜!)

哩「む……?」

姫子「部長の言葉を遮るなんて……ひどか!」

怜「私やったら……………竜華以外の子も愛せる!!」

竜華「…………」

哩「な……」

姫子「…………それって……」

哩「ふっ……」

姫子「部長?どうして笑ってるんですか?」

哩「園城寺が負けば認めたからな。今の言葉は敗北宣言に等しい。私なら姫子以外の女性に対して愛ば叫ぶつもりはなか」

姫子「ぶちょうっ……///」ポッ

怜「…………」


哩「……お前たち2人のカップルっぷりは噂に聞いとったから、私たちとどちらが上か確かめたくて直接対決できるよう小鍛治プロに取り計らってもらったが……どうやら私たちの勝ちのようだな」

姫子「はいっ!私たちは最強の…」

怜「待って。まだ私の話は終わってない」

哩「…………いいだろう。聞こうか」

怜「……私は竜華以外の子も愛せる…………ただし!」

哩「?」

怜「……竜華を含む……清水谷一族限定や!!」

哩・姫子「な…………っ!?」

竜華「…………ふふ」ニコリ

怜「…………」

哩「い、一族……?」

怜「そうや。私は……竜華を愛してる。せやから……竜華のおかんも愛せる……おばあちゃんかて抱ける!」

哩「ば、バカな……」

怜「竜華の先祖の写真で1人エッチかてできる!できるんやーーーっ!!」

哩「な……にを言って……」

竜華「うちも!」

姫子「!?」

竜華「うちも…………怜のお母さんとエッチできる!怜の面影があるから……愛する人の一族やから当然や!」

哩「清水谷……お前まで……」

姫子「あぁ……部長……私、寒気が……」ブルッ

哩「だ、大丈夫ばい。抱きしめて温めてやる」ダキッ

哩(愛する人の一族なら当然……?)

哩(それなら私だって…………)

哩(………………いやダメだ。姫子のおばあさんと……舌ば絡ませるのは……無理だ)

哩(言葉責めされても……説教だと思ってしまうだろう……)

姫子「……ぶ、部長!私は……部長ば愛してます!だから部長のお母さんとだって……」

哩「……私の母は、かかとが大理石並に固いぞ?」

姫子「あっ……」

哩「それに……母が姫子ば抱くなんて……私が耐えられない」キュッ..

姫子「ぶちょう……///」

怜「最終的に…………園城寺一族と清水谷一族のカップリングが成立する……」コォォォ..

哩「……私が愛しているのは……姫子だけだ。姫子のお母さんとは仲良くしたいが……抱ゆうなかばい」

姫子「私もです……部長……//」

怜「そして……」スッ

竜ちゃんの膝から頬を離す怜。その左手が竜華の手を探る。

竜華「怜……」キュッ

怜の目を見たままその手に応え、恋人繋ぎをする竜華。


怜「………………」

竜華「……………」

数秒見つめ合ったあと、

怜・竜華「…………っ」

2人は哩たちへ向かって、繋いでいない方の手を突き出した。

怜・竜華「〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕!!!」シュババババ..

哩・姫子「あ……」

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

哩(こ……れは……)

哩の脳内には、怜の母が竜華に『あーん』し、『ほっぺについてるで?』し、『ちゃうちゃう。反対』し、『もうちょっと上』し、

『もっと上』し、『行き過ぎ。少し下』し、『しゃあないな。私がとったる』し、『えー?そない照れんと』し、

『いやいや。私がとった方が早いやん』し、『いやいやいや。せやからとったるて』し、

『……自分でできる?ほんま?じゃあもっかい自分でとってみ?』し、『いや、もっと上』し、『惜しい!あと少し』し、

『ちゃうて。反対反対』し、『そこ最初の位置やん』し、『もう少し斜め上やなぁ』し、

『もう時間切れ。私がとるで?』し、『…………ぺろっ』し、『ふふっ……美味しそうやったから舐めてもうた』をした。

哩(なんていう間………普通ならダレるだろう。だが……)

哩(この長いやりとりは清水谷の甘えに他ならない。普通ならしつこすぎて嫌気がさしても不思議ではないのに、まったく怒らずに対応していた…………なるほど。これが恋人の母の愛か……)フラ..

姫子(なんでかな……?この妄想に触れた今、部長のお母さんのバストサイズが気になる……もちろん、部長が唯一無二やけど……)フラッ..

怜「…………それが……」

竜華「愛やで」

竜ちゃん《ほんまやね♪》

哩(そう、か………この……勝負は……)

姫子(…………私たちの…………負………け……)

ドサドサ...

怜「……はぁ……はぁ……」

竜華「はぁ……はぁ……怜、大丈夫?」

怜「…………ん、大丈夫や」

哩・姫子「………………」

怜(……なんとか勝った…………けど紙一重やった。もしも囚人と看守縛りの時にファンディスク的な短いシナリオで攻めてたら………私らが負けとった)

怜(自分たちの勝利を確信してたからこその長尺妄想やったんやろうけど…………策士策に溺れるっちゅうやつか?…………いや、全然ちゃうわ)フゥ


竜華「疲れた?」

怜「……そやな。ちょっと疲れた」

竜華「ここで休む?」

怜「いや、早くみんなのところへ戻ろう。休むのは合流してからの方がええ」

竜華「そっか。ほなそうしよー♪」

怜「あ……けどドアの鍵っちゅうかパスワードがわからへん」

竜華「あー!ほんまや!どないしよう!?」

怜「うーん……」

竜華「……開いたままになってへんやろか?」タタタ

怜「いやいや……セキュリティ的に普通は…」

ガチャ

竜華「開いたで?」

怜「…………2人に勝ったら開くようになってたんかな?まぁ、出れるなら理由はどうでもええわ」

竜華「ほな行こ行こ」

怜「ん……」テクテク..

竜華「♪~」

怜「………………」チラ

哩・姫子「………………」

怜(この2人と今度会う時は、戦うとかやなくてイチャイチャの情報交換とかしたいなぁ……)

倒れている状態でなお袖を余らせる姫子と、インハイ時に心の中で叫んでいた『リザベーション……セブン!』の『セ』の口の状態でいる哩。

そんな2人を背に、怜と竜華は再び戦場へと向かったのだった。


【エリアA】

照「〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!」ギュロォォォォ!!

458兵たち「ちひゃー!」バタバタバタッ!

照「ふう……」

咲「お姉ちゃんすごい!」

久「ほんっとにね。一撃で10人とか倒すんだもの」

照「でも深堀さんの方がすごい」チラ

純代「〔 任 務 中 に 脱 糞 ( ミ ッ シ ョ ン 糞 ポ ッ シ ブ ル )〕!!」

458兵たち「おごおおお!!」バタバタバタバタッ!

純代「…………」

久「そうね……何か吹っ切れたような表情をしてる」

照「うん。さすがだよね」

咲「むー」

照「咲?」

咲「お姉ちゃん、深堀さんをよく褒めるよね」

照「……確かに。だって深堀さんすごいから」

咲「むうー!!」

照「??」

久「ふふ……」

咲「……私だって、ちょっとはすごいもん」

照「あ、うん。咲がすごくないとは思ってないよ。ただ深堀さんはやっぱり…」

咲「……お姉ちゃんどいて」スッ

照「咲?」

咲「〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕」ゴアァァ..

久「お……」

458兵たち「うっうー!ハイターッチ!」

咲「〔 リ ン シ ャ ン カ イ ホ ウ ノ ス ス メ 〕」ユリン!

ブワァァァ...

照「っ……」

咲が能力を発動すると、辺りを温かく柔らかい風が吹き抜けたような気がした。

ここは地下。風など吹かないが、咲から生まれた波動によって肌を撫でられたような感触を覚えたのだ。

458兵たち「うっうー?」

咲《……お姉ちゃんと2人でお出かけ。その時、お姉ちゃんが着てる服にサイズ表記シールが貼ったままだと気付いた》

照「!」

咲《すれ違う人が何人かシールに気付き、笑う。でもお姉ちゃんは気付かない。サイズを晒したままジュース飲んだりエレベーターに乗ったり……信号待ちしたりしてる》

照「………………」

咲《多分、私がその事実をお姉ちゃんに伝えたら、きっと顔を真っ赤にしてシールを剥がすと思う。これはつまり私が『お姉ちゃんの顔をいつでも赤くできる権利』を持っていることに他ならない》

咲《その事実に私は歓喜して涙する。そしてお姉ちゃんの恥ずかしがる表情を見逃すまいと、来たるべき瞬間に向けて脳をフル回転させるのだった……》


458兵たち「あ…………ぅーん……」バタバタバタ..

咲「……よぉしっ」フゥ

〔リンシャンカイホウノススメ〕。

咲の脳内に百合の花を咲かせる能力。

簡単に言えば、咲の思考・妄想・行動すべてに百合要素を付与させる。

つまり普通の会話にも百合的威力を追加し、百合妄想に至ってはその威力を数割増しにする。

照の〔連続妄想(コークスクリュー)〕と違って派手さはあまりないが、かなり強力だ。

弱い相手なら普通に話すだけで倒せる上に、力をまったく消耗しないですむ。

この能力自体に枷もないため、ただ純粋に総合力が底上げされた形だ。

ちなみに『ノススメ』とあるが、相手がこの能力を使えるようになったりするということはない。

この名は、咲が照に対して向けた気持ちを表しており、

『お姉ちゃんも私との会話すべてに百合の花を咲かせてよ』という願望から付けられた。

久「あらー……やるじゃない、咲」

咲「あ、いえそんな……別にそれほどじゃないですよ……」チラ

照「…………」

咲「確かに10人以上倒しましたけど、褒められようなんてつもりはなかったですし…」チラチラ

照「…………」

咲「………………あ、で、でも一瞬で10人倒したのって、客観的に見たらすごいのかも、なんて」チラチラチラ

照「…………」

咲「………………ぶ、部長もそう思いませんか?」

久「思うわよー。咲、すっごい!」ニコリ

咲「ありがとうございます。ふ、ふむ、なるほど……すでに褒められた実績がついちゃったなぁー……ということは、やっぱり褒められるくらいのことを私はしたんだね。じゃあすごいんだ」チラ

照「…………」

咲「……あ、あれ?なんか今、時間あるなぁ。もう1人くらいに褒められてもスケジュールに問題ないかも……」チラチラ

照「…………」

咲「…………」

照「…………」

咲「…………うぅ……お姉ちゃん………褒めてよぉ……………褒め不足で寂しいよぉ」グス..

久「照。咲が褒めてほしがってるわよ。なんで無視するの」ヒソヒソ

照「え?あ……ごめん、ちょっと考え事してた」

久「考え事?」

照「うん。咲がしてた妄想の内容に覚えがあったから」

咲「」ギクリ

照「昔、咲と一緒にお出かけして、家に帰って来てからシールを指摘されて恥ずかしかったこと」

久「い、家まで黙ってたの?」

照「うん」

咲「……そ、そうだったかな」


照「あと、咲がその時のことについて書いた作文が表彰されて朝礼で読んだ気がする。タイトルは『剥がしたくない背中』だったかな」

咲「…………お、お姉ちゃん。戦場ではあんまり私語は…………ね?」

照「わかった。じゃあ今日の咲との会話はこれでおしまい」プイ

咲「ああっ!?自分の首を絞めちゃった!迂闊な私のばか!」

照「………………」ツーン..

咲「お、お姉ちゃん」

照「………………」プーイ

咲「うぅ……お姉ちゃん。ポッケに入れてたお菓子あげるから許して」グス

照「………………なんのお菓子?」

咲「カントリーマァム…」

照「許す」

咲「やったぁ!カントリーマァムありがとう!」

照「」パクパク..ポロポロ

咲「一口ごとに粉をこぼしてるお姉ちゃんかわいい!」キュン

久(あぁー……なんかこの2人見てると和むわねぇ……)ホッコリ

一方、咲たちから少し離れた場所では、

塞《〔 絶 対 幼 女 ( ア ブ ソ リ ュ ー ト ・ よ う じ ょ )〕》ゴァアアアアアアア!!

少女が幼女にされていた。

458へいたち「だ、だめ……ぷ、ぷちます……す、すき……」ドサ!

塞「よし!次……っ、と……」フラ

老婆B「大丈夫かい!?」

塞「……ちょっと厳しいです。すみません、脱いでもらっていいですか?」

老婆B「ああ、かまやしないよ」ヌギッ

塞「ありがとうございます」

全裸ー老婆ーB「ふぅ……外で脱ぐのは久しぶりだわ」

塞「ん……きた……力が満ちてきた……」

全裸ー老婆ーB「……っ、年齢のせいかねぇ?マッパは寒い……」

豊音「あ!おばあちゃん。だったらこっち座って。ゲームずっとやってると本体が熱くなるって噂聞いたことあるから試してみようよー」ピコピ

全裸ー老婆ーB「おや。ありがとう」テクテク

豊音「ゲーム機、背中に当てるね」ピタッ

全裸ー老婆ーB「んー……」

豊音「どうかなー?」

全裸ー老婆ーB「何も変わらないねぇ。全身鳥肌。風邪引く準備万端よ」

豊音「あれー?」

塞「もう服着て大丈夫ですー!!」

豊音「あ、服着ちゃっていいみたいですよー」

老婆B「そうかい……よいしょ、っと。生き返るよ」


豊音「お疲れ様でーす。さえに協力してくれてありがとうねー」ニコニコ

老婆B「いやいや。塞ちゃんは銭湯仲間だから当然だよ。あ、そこは8萬切りじゃないかい?」

豊音「えー?でも一通目があるよー?ま、いいか。8萬切ろう。えい」ピココ

『ロン!』

豊音「わわっ!和了られちゃったよー!」

老婆B「あらあら。筒子の方を切るべきだったのに……」

豊音「ええー?おばあちゃんさっきと言ってること違うよー」

老婆B「結果が変われば過程も変わるわよ」

豊音「へー、そうなんだー?」

老婆B「ええ」

憩「お待たせー。あったかいお茶やでー?」

豊音「わー!ちょー飲みたいよー!」

憩「どうぞー」

老婆B「ありがとう。いただきます」ズズ..

憩「はーい」ニコニコ

憩(うん。みんなええ感じやね。この分ならケガ人続出ってことにはならなそうや)ホッ


塞「……っ……」サワリサワリサワリサワリサワリ!

458へいたち「いやぁ……もうおよめにいけない……///」

塞(うん、調子いい。結構数も減らしたし。シロたちはどうかな?)チラ

白望「〔 迷 い 家 ・ 犬 小 屋 ( マ ヨ ヒ ガ ・ に ち よ う だ い く )〕」

白望(面白くなりそうな妄想も、時間がかかった割にしょぼい出来になってしまう呪いにかける……これでこの辺りの相手は弱体化する)フゥ..

458兵たち「!!」

白望(私はそろそろ休憩しよう。あとのことは塞と……)

エイスリン「クッツケ!イチャツケ!」キュキュキュ!

458兵たち「あっ……あぁっ……体が勝手に……」

キャッキャウフフ..

エイスリン「ナイス!」

白望(エイスリンに任せればいい。それにあの人たちもいるし)チラ

洋榎「お前は嫁や!お前も嫁!お前からお前まで嫁や!!嫁アイランドに上陸ゥ!!」

458兵たち「そ、そんな……///」

貴子「踊れオラァ!!」

458兵たち「ひいい!!」

白望(園城寺さんたちがいなくなったのは痛いけど、なんとかなりそう)

白望(宮永さんたちも………うん、かなり優勢みたい。となると……)

白望が目を向けたのは、エリアAの端で戦う一行。

智紀《もう……2期は制作されない……》

458兵たち「いやああああ!!」バターン!

やえ「ニッワニッワニー!ダメダメダメェ!!」

458兵たち「きゃあああ!」ドサドサ..

やえ「ふう……大分敵の数を減らした……さすが王者」フフフ

458兵たち「いくわよー!!」タタタ

やえ「む?後ろから!?」

やえ(勝利の余韻に浸る間も与えないとは……野暮なやつらめ)


458兵たち「え?きゃああっ!」ビクッ!ドサッ..

やえ「?」

458兵たち「ああんっ!」ビクゥン!バタッ..

やえ(なんだ?こちらへ向かってきたと思ったら、急に変な声を出して倒れた?)

やえが疑問に思うのも無理はない。

何もしていないのにいきなり嬌声を上げる人間はそうそういないのだから。

倒れた子たちはアクエリオンのパイロットで、走りながら合体したのだろうか?いや違う。

では嬌声を上げていきなり倒れる状態とはどういうことか。

その答えは、次の瞬間に明かされた。

??「大丈夫っすか?」

やえ「あ、ああ……お前は……」

??「東横桃子っす」

やえ(!そうか……こいつが噂の…)

敵が突然倒れた理由は、エリアBから戻ってきた東横桃子のステルスと、

灼「お久しぶ…」

アナルスナイパー、鷺森灼の一撃必殺によるものだとわかった。

灼「加治木さんの作戦で来た。隣の部屋にいる味方に、この部屋に入るための暗証番号を教えてきた。これから続々と味方がこっちに来ると思…」

やえ「お、それは我がリリーブライドにとって朗報だ」

灼「……いつからリリーブライドになったのかわからな…」


【総司令室】

健夜「………………」

咏「あー……今突破されたねぃ」

はやり「はやー。敵の作戦だから当たり前だけど、こっちよりも敵の方が早くエリアAに侵入してくねっ☆」

良子「イエス。露出ガールが上手い具合に注目を集めてることもこちらの動きを遅くしてますねー」

理沙「置いてきぼり!」

健夜「それに龍門渕さんたちがしんがりを務めてるのも大きいね。最悪自分たちが犠牲になるつもりなんだと思うけど、その気持ちに応えようと頑張る子が多いみたい」

ハギヨシ「…………」

健夜「……お嬢様が心配?」

ハギヨシ「はい……」

健夜「って当たり前だよね。でも大丈夫。花田さんの能力はそう簡単に破れないだろうから」

ハギヨシ「………………」

はやり「なんかいいようにやられちゃってなーい?このままでいいのかなー☆」

健夜「……龍門渕さんに関しては別にそのまま放っておいても大丈夫だけど…………そうだね、そろそろ本番に移ろうか」

ハギヨシ「!」

健夜「……咏ちゃん」

咏「ん」

健夜「はやりさん」

はやり「はーい☆」

雅枝「うちもおるで!」ハヤヤヤデー!

健夜「理沙ちゃん」

理沙「!」プム!

健夜「良子ちゃん」

良子「ハイ」

健夜「そして……」

ガチャ..

智葉「…………尖った気配がすると思ったが……やはりな」

明華「……鋭い風を感じました」

ダヴァン「?まだラーメン途中デス……ずるるっ!」

健夜「辻垣内さん、雀明華さん、メガンダヴァンさん……」

智葉・明華「………………」

健夜「5か2458プロ幹部全員、今から…」

ダヴァン「タンマデス。ずずず…………スープだけでも飲み干しタイ…」

健夜「…………では、ダヴァンさんがスープを飲んだら……出陣です」

ダヴァン「待ってくれマスか!?サンクス!ダッタラ、落ち着いて味わって飲みマス」

智葉「いや、待たせてるんだから急いで飲め」


【エリアA】

ゆみ《〔 原 作 編 集 ( シ ナ リ オ コ ン ト ロ ー ル )〕》

ゆみ《『絵が可愛くて好き』のあとに『だったのに最近はデッサンが狂ってきていて魅力が半減した』と編集!!》

458兵たち「やめてぇぇえ!!!」

憧「しず、ナンバー2のシチュお願い」

穏乃「う、うん……」

穏乃「『あ、憧……私ね、ちょっと胸が大きくなったみたい……だから』」

穏乃「『憧の手で……確かめて……くれないかな///』」(胸の前で両手をもじもじさせ、俯きながら上目遣い)

憧「『う、うん……じゃあ……触るね?』」サワ

穏乃「『んッ……ふぁ……っ///』」ビクン(スカートの裾をギュッと握りしめながら声を押し殺す)

憧「〔 野 し ず 。 を プ ロ デ ュ ー ス 〕」シズズズズ!

ここで自身の妄想シチュエーションを叶えたことにより憧の能力が発動。458兵たちを巻き込んでしずに萌える。

458兵たち「かわわああああああああああああああ!!!!!」バッタターン!

ちなみに憧辞典によると、

◇◇◇

のしず――【野しず】

野生的なしず。山を駆け回って可愛い。羞恥心は人一倍。

使用例

――があたしを抱きしめて離さない。

――と付き合ってること、みんな知ってたの?

お母さん。あたし、―――と合体したい。

◇◇◇

だそうだ。

憧「どう!?しずがどんだけ可愛いか、思い知った!?」フフン

穏乃「あ、憧ぉ……そんなこと言うなよぉ~……恥ずかしいって///」モジモジ

458兵たち「かわあああああああ!!!」バターーン!

霞「〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕 」

ポヨォォォ..

458兵たち「う……ぁぁ………ぁ」ドサッ..

全裸初美「どの私が」
襦袢初美「好きですかー?」
緋袴初美「ぜひぜひ」
ニーソ初美「教えて」
股間絆創膏初美「ほしいですよー」

458兵BA「だ、だめ……目が離せない」ゴクリ

458兵BA(この子の体からは…………そして)チラ

一「ん~~~……」

458兵BA(こちらにお尻を向けて伸び伸びストレッチをしてるあの半裸っ子の体からは……目が……離せない……///)


透華「……は、はじめ……あんまり煽情的なポーズをとっては…///」

一「え?ボクは普通に体をほぐしてるだけなんだけど……」

458兵BB「こらー!戦場でボーっとしてちゃダメでしょー!」タタタ

透華「!敵が!」

458兵BB《……頬のタトゥーシールを舐める私!あなたは感じる5秒前!!》

煌「すばっ…………らぁ……」

458兵BB「!わ、私の攻撃が……?」

煌「残念ですが……あなたでは〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕を破れません!」

458兵BB「っ……でも、あなたたちは攻撃力が皆無!このまま連続で……」

小蒔「〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ ) 〕」カッ!!

458兵BB他「!!!!」

ドサドサドサドサ..

458兵たち「そ、そんな……あの人数を一気に……」

煌「神代さん……ありがとうございます」

小蒔「いえ……」ニッコリ

煌「その笑みすばらっ!さすがです!」

小蒔「ふふ……ありがとうございます。でもまだまだです。荒川さんに治してもらったお返しに、もっと頑張らないと!それに……」カチッ

照人形『三連覇は、私たちの一大目標です!』

小蒔「照さんだって頑張っているのですから」ニコリ

煌「なるほど……キャラ作りもすばらです」

エリアAへと押し寄せる面々。

1人1人が確かな実力を持ち、458兵を圧倒する。

458兵BC「……っ……こ、こんな……」ジリ..(後ずさり)

トン..

458兵BC「?後ろに誰か……」クルッ

怜・竜華「…………」

458兵BC「ひぃい!!」

458兵BC(この人たち、哩姫さんたちと戦ってるはずじゃ…………まさか…………お2人に勝った!?)

怜「えー……その反応なんなん?傷付くなぁ」

竜華「傷付いてる怜もかわいいなぁ」ナデナデ

458兵BC「あ……あぁ……」

怜「〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕」ギュアアアアア!!

458兵BC「ぁ……」ドサッ..

怜・竜華「…………」フィー..

怜たちがエリアAに戻ってきたこの瞬間、

晴絵、界のふたなり組と、はやりと共に行った雅枝を除く全員が合流した。

怜(……どうやらかなりいい状況みたいやな。LFG軍もLB軍も宮守軍もおる。これなら…)

竜華「あれ?」


怜「ん?どうしたん?」

竜華「いや、なんか458プロの子たちがみんな逃げてくねん」

怜「え」

458兵たち「…………」タタタタ..

怜(ほんまや。数では向こうが圧倒してるけど、見たところ士気はこっちの方が遥かに高い。そんな状況で退却なんて逆効果や思うけどな)

竜華「どうする?」

怜「そらもちろんできる限り追撃やろうなぁ。私は走るのきついからせえへんけど」

竜華「うーん。うちも怜を抱っこしながら走るのは少し辛いなぁ」

煌「走ることを辛いと認める潔さ……すばらですっ!」

怜「ん?あれ?あんたは……花田さん」

煌「はい!」スバラッ!

透華「お2人とも、ご無事だったようですわね」テクテク

竜華「わわ、龍門渕さんや」

一「お疲れ様です」

怜「薄着の君(きみ)……」

一(え……ボクそんな風に呼ばれてたの?)

透華「確かにこの状況ならば追撃するのは有効です。しかし、それ以上に私たちに今必要なのは情報の共有ですわ」

怜「…………んー……確かに。分断されとったしなぁ」

透華「その通りっ!では、全員一度集まりましょう!!」

怜「………そのためには結局誰か走らなんとあかんみたいやなぁ」

透華「え?」

怜「ほらあそこ」

透華「?」ジー..

洋榎「嫁ェ!逃がさんでえ!!実家に帰る気ぃかー!?」ダダダダダ!

貴子「オラァオラァ!狩りの時間だぜァァッ!!ハハハハハ!!」ダダダダダ!

怜「思いっきり追撃してるあの2人を止めんと」

透華「…………そうですわね……」ハァ..

煌「アグレッシブなお2人すばら!」

その後、誰が洋榎と貴子を呼びに行くかを相談した。

穏乃が名乗りをあげたが、憧が体力を温存するべきだと主張し、却下。

結果、みんなにおだてられて乗せられたやえが1人で止めに行き、息も絶え絶えで洋榎と貴子を連れ帰ってきた。

そして呼吸が整うのを待つことなく、作戦会議が開かれた。

『王者たるものゼーハーしててはならない』と強がって平静さを保とうと必死なやえに萌えつつ、情報を話し合った。

ゆみ「……なるほど。哩姫と2対2か……」

怜「うん。口ぶりから言うて、私らと戦うのを希望してたみたいやな」

透華「ライバルと競う……わからないでもないですわ」フム

憧「……でもちょっと妙ですね」

怜「え?」

憧「園城寺さんたち以外の人を……それこそ1人ずつ白水さんたちの部屋に連れていけば、こっちの戦力を削れたはず」


怜「…………確かに」

憧「白水さんたちが458プロに協力する条件が、園城寺さんたちと戦うことだったという可能性もありますけど……」

ゆみ「園城寺さんたち以外に小部屋に行ったのは……神代さんでしたね」

小蒔「あ、はい」

ゆみ「その部屋には辻垣内智葉がいた。そして神代さんに勝ったあと、石戸さんが突入すると逃走した」

久「それも妙な話よね」

純代「うん。神代さんに勝ったのに石戸さんとは戦わなかった」コクリ

全裸初美「意味がわからないですよー」

一「本当にね」

智紀(……一と薄墨さんが並ぶとすごい絵になる……)

一「ともきー?どうかした?」

智紀「……なんでもない」

霞「……私も不思議に思ったわ。見たところ、それほど力を消耗してるようにも見えなかったし……」

洋榎「相性とかはあるやろうけど、それにしても変やな」

貴子「茶ぁよこせオラァァッ!」

憩「ど、どうぞ……」

貴子「フン!ずず……うめぇぞァァッ!!」

憩「ひぅ!」

豊音(この人、ちょーこわいんだけどー……)ビクビク..

照「…………」

照(神代さんより強い人がいるなんて……そんな相手に私たちは勝てるのかな……)

咲「お姉ちゃん?どうかしたの?」

照「……ううん、なんでもない」

照(私が弱気になったら咲が不安になる。ちゃんとしないと)キリッ

塞「でも本当にどういうことなのかしら?それだけ強い辻垣内さんなのに、私たちの前には姿すら見せなかったなんて…………いや、これから戦うかもしれないけど」

白望「……うん。相性の問題なら、石戸さんを誰かに任せればいいだけだし。気になるね」

エイスリン「キニナル!」

穏乃「あ、あの……」

憧「しず?どしたの?」

穏乃「最初から気になってたんですけど……」

久美子「何がですか?」

穏乃「あの……エイスリンさんの後ろにいる人たち……」

458兵たち「………………」

穏乃「50人くらいいますけど……458プロの人たち、ですよね?それがどうして作戦会議に……」

トシ「ふふっ……困ったものだ。高鴨さんは私と同じで何も知らないんだね」

穏乃「え?あ、はい」

トシ「よし。私にも教えておくれよ」

怜「……なんなん、この人?」ヒソヒソ

塞「…………まぁ、ちょっと変わった人でね」


怜「…………っちゅうか、あんたの後ろも気になるんやけど」

塞「え?」

老婆たち「…………」

怜「……いや、なんでもない」

怜(なんでおばあちゃんを従えてるんやろ?どんなパーティーやねん)

塞「?まぁいいか。えっとね、この人たちは…」

458兵たち「私たちは、エイスリン様の親衛隊に立候補した者です!」

トシ「ほぉ……」

塞「……エイスリンの魅力に惚れて、458プロを辞めてエイスリン親衛隊になることに決めたみたいなの」

元458兵改め親エイ隊「はいっ!!」

洋榎「……ほんまかい……一体何したん自分?」

エイスリン「……ワカンナイ♪」ニコッ

洋榎「お、おぉぉお……クソ可愛いやないか……この嫁め……///」

エイスリン「?」キョトン

久(天然の魅了でしょうね……)

白望「序列的には、すでに存在してるエイスリン親衛隊の下につく感じで…」

親エイ隊「わかりました!」

白望「……ていうか、いつもの親衛隊の人たち、今日はいないの?」

エイスリン「ヤラレチャッタ」

白望「そう……来てたのは来てたんだね」

白望(でも当然か。あの子たちはエイスリンが好きなだけだから百合妄想士としての力は微妙だし……)

白望「……じゃあみんなでエイスリンを守るってことで」

親エイ隊「わかりました!プロデューサー!!」

白望「……プロデューサー……」

白望(…………なんで私がエイスリン親衛隊のプロデュースをしないといけないんだろう……ダルい……)

エイスリン「シロ、ヤサシイ!オモイヤリ」

塞「こらこら。エイスリンが強引に『シロニマカセル!』って言ったんでしょうが……」

エイスリン「…………エヘッ♪」

久美子「……か、かっわいい……///」

塞「まったく……」

桃子「先輩……話を戻した方がよくないっすか」ヒソヒソ

ゆみ「あ、そうだな。あの、神代さん」

小蒔「はい?」

ゆみ「今度辻垣内さんと戦うことになった時、どう対応すればいいかを考えたい。神代さんと辻垣内さんの戦闘内容について話してもらえないだろうか?」

小蒔「えっ」

ゆみ「?」

小蒔「……そ、それは……」

霞「…………」

ゆみ「それは?」


小蒔「い、言えません……///」

ゆみ「言えない?」

小蒔「は、はい……///」

ゆみ「では戦闘内容ではなく、言えない理由について教えてもらうのはどうだろうか?」

小蒔「…………うぅ……」

ゆみ「……ダメか?」

霞「あの……こま…姫様にとって恥ずかしい内容のようで……私にも話せないくらいです」

ゆみ「そう、か……」

小蒔「は、はい。霞ちゃんにも恥ずかしくて言えませんし……それに……」チラ

照「?」

小蒔「うぅ……///」カアァ..

霞「ということですので、この話は…」

洋榎「お?神代、お前が持っとる人形、宮永ちゃう?」

小蒔「!」ビクン!

照「?あ、本当だ……」

照(病んだ菫から私を守ってくれた素敵なアイテム……どうして神代さんがゲットしてるんだろう?)

小蒔「そ、それは……」

洋榎「あ!わかった!神代って宮永のこと好きなんちゃうん!?そやろ!?」

小蒔「~~~~~/////」ボフッ

照「っ……//」

霞「あ、あの……愛宕さん…」

洋榎「ほれ!絶対そうや!その反応でまるわかりやわ!ほー!神代が宮永を好きとは意外やなー!」

小蒔「あ、えと……うぅ……その……////」

洋榎「ほなら記念に宮永になんかしてもらいーな!あ、今流行りの壁ドンとかしてもらうとええわ!宮永!」テクテク..グイッ

照「あ……引っ張らないで」

洋榎「ええやんけ!お前のファンやで!?壁ドンや壁ドン!」

怜「ちょ、やめぇて。走りすぎやで?がさつの祖先か」

洋榎「誰が全てのがさつの源やねん!細やかやっちゅうねん」

怜「せやけど無理にやらそうとするんは…」

洋榎「無理矢理ちゃうで?ほれ、神代の方見てみぃ」

怜「…………」チラ

小蒔「そ、そんな……照さんにかべどんなんて……わ、私…………でも……うぅ……///」モジモジ

怜「メスの顔なっとる」

竜華「何言うてんの」

洋榎「いや、園城寺の言う通りやで清水谷。ここは壁ドン一択や!」

エイスリン「イッタク!ダヨネ?シロ!」

白望「…………さあ」

白望(………関西のノリ、ついていけない……)

親エイ隊「エイ様の言う通り!壁ドン一択ですよ!プロデューサー!」

白望(親エイ隊のノリにもついてけない……ダル……)


照「…………」

照(……私はどうしたらいいんだろう?前のことがあるから神代さんとは面と向かって話すのが少し……なんだろう?変な感じがするけど……)

咲「お、お姉ちゃん!壁ドンっていうのはね、相手を壁の方に向かせて後ろ手にして捻り上げて、体を壁にドンって押し付けて身動き取れなくする……犯人逮捕の時とかによくある光景なんだよっ!」

久「咲ー?物騒な嘘言わないの」

霞「………………」

霞(ここは止めるべき、なのかしら?でも……)

霞(最近宮永さんの人形に夢中になりすぎているし……このままエスカレートして人形しか愛せないようになるくらいなら……)

霞「……小蒔ちゃん」

小蒔「は、はい」

霞「もし宮永さんに壁ドンしてもらえたら、辻垣内さんのこと、話せる?」

小蒔「………………」チラ

照「…………?」

久「っ!『壁ドンするから、小蒔の秘密を私に教えて?』って言って」ヒソヒソ

照「…………」コクリ

照「……壁ドンするから、小蒔の秘密を私に教えて?って言って」

久(言って、は言わなくていい!)

小蒔「あ…………は、はい……照さんが……そう言うなら……いうこときいちゃいます……///」

久(……全然気付いてないのね)

照「じゃ、じゃあ…………一緒に壁際まで行こう?」

小蒔「は、はい!」ドキン!

照・小蒔「」テクテクテクテク...

洋榎「……壁際行こうて、冷静に考えたらすごい誘い文句やな。それで頬染めるて、壁際で何を想像してんねん」

怜「ええやんそんなん。もしかしたらロッククライミングのスポーツのアレ……なんやっけ?あー……なんやっけ…………ま、まぁ、とにかくそれをよくやる子らやったことにでもしたら……」

洋榎「うわー……名称全然出てきてへんやん。それなら例えんかったらええのに……ツッコミがしどろもどろでもう……はぁぁ……」

怜「…………」イラッ

洋榎「あ、ちなみに園城寺が言いたかったんは『ボルダリング』な。覚えとき。勉強なってよかったやろ?」

怜「……あんたの腹に壁ドンしてええ?」

洋榎「や、やめぇや!それただのボディブローやん!」

貴子「お?なんだ?お前の腹殴っていいのか?気前いいな」ズイ

怜「お先にどうぞ」

洋榎「あかん!!」

貴子「じゃあ顔か?」

洋榎「もっとあかん!!」

怜「わがままやなぁ。ほなら殴ったらあかんところだけ教えて」

洋榎「全身や!愛宕洋榎の全身!どこもかしこも大事です!」

貴子「ちっ……冷やかしかよ。まぁいい……母親にチクられでもしたらやべぇし……」

洋榎「ほっ」


貴子「ゥオラァァァァ!!!」ガオオ!

洋榎「ほげぇ!?」ビクーン!

貴子「……気迫だけで勘弁してやる」

洋榎「ぁぁあぁあ……あかん……驚きすぎて……腰抜けそうや」

怜「……なぁ」

洋榎「……なにー?」

怜「左手なら腹ドンしてええ?」

洋榎「利き手やなかったら耐えられるとかいう話ちゃうわ!ちゅうかもう腹ドン言うてもうてるやん!」

怜「えー」

竜華「むー……怜、なんか楽しそうやなー。愛宕洋榎とええ感じや」

怜「そんなことないて。言うたら……私にとって竜華は妻で、愛宕洋榎は人生ゲーム盤みたいなもんや」

洋榎「人と道具!?同じ土俵に立ててへんの!?」

怜「うむ」

洋榎「何が『うむ』や。しかも人生ゲームって……親戚集まった時だけ愛されて、他の時は押入れの奥や。お札もどんどんどっかいってもうて……全部揃ってんのは約束手形だけや」

怜「それはきちんとしまおうや。ゲームの要やん」

洋榎「……ふん、なんやねん。お前もうちの嫁のくせに」

怜「ちゃうわ……っちゅうか、こんな話してる場合やない。宮永さんと神代さんの壁ドン見に行かな」

洋榎「ほんまや。いこか」

照「?」

怜「あれ?」

洋榎「宮永……何してんねん。早よ壁ドンせな」

照「?今やってきたところだけど」

小蒔「///」モジモジ

洋榎「ええええ!?ちょっと!何してくれてんねん!」

照「え?何って……壁ドンを…………ちょっと勢い付けすぎて突き指もしたけど……」ジーン..

怜「私……なんで見逃してんねん…………これもがさつなあいつのせいや」

洋榎「なんでやねん!壁ドンの流れを生み出したのはうちや!うちがおったからこそ壁ドン展開になったんや!」


怜「……会社の創設者が途中で身を引くみたいなもんやろ?」

洋榎「あぁもうわけわからん!」

怜「私かて、腹に壁ドンの意味がわからん」

洋榎「お前や言い出したの!そのせいでうちは怖い大人に怒鳴られてんぞ!」

やえ「まぁまぁ落ち着け。そう興奮しなさんな」

怜「…………」

洋榎「…………」

やえ「これが私たちリリーフラワーガーデンのノリだろう?」フッ

怜・洋榎(……絶対つっこまんからな)

煌「……お2人とも」

怜「ん?」

洋榎「お前は……『真打はあとから』でお馴染みの……」

怜「使いどころ限られるやろ。浸透せえへんわ。『すばら』でお馴染みの、や。それで、なに?」

煌「私、宮永さんと神代さんのやりとりをじーっと見てきました。よければお話しましょうか?」

怜「ほ、ほんま!?」

洋榎「助かるわ!ありがとう!」

煌「はい。まず神代さんが壁に寄りかかり、力の入りすぎた宮永さんが壁に手をぶつけて突き指したあと……―――」


~~~~~~~~~~~~~~~

小蒔「だ、だいじょぶですか?」

照「う、うん。この感じなら、多分……」

小蒔「そうですか……一安心です」ホッ

照「…………」

小蒔「…………」

照「じゃ、じゃあ……いくね?」

小蒔「は、はい……///」

照「!」ドンッ!

小蒔「……っ!」

照(………確か、顔を近付けるんだよね)スッ

小蒔「ぁ……ち、近ぃ……です……照さん……///」

小蒔(これでは私の息が照さんの顔に……照さんの目をシパシパさせちゃったらいけません。息を止めないと……)ッ..

照「神代さん」

小蒔「……は、はい……///」ドキドキドキドキ...

小蒔(む、胸が苦しい……い、息も……苦しいです…………かべどんって……くるしい……)

照「……辻垣内さんの能力について教えて」

小蒔「ぁ……っ///」

小蒔(照さんの唇が……///)

照「…………」

照(あとはなんて言えばいいんだろう?壁ドンの時にする会話なんてわからない……)

小蒔「……///」

照(多分、口説き文句みたいなことだよね…………だったら自分が言われて嬉しいことでいいのかな?だとしたら……)


照「……息切れして顔真っ赤な神代さんかわいい」

小蒔「!!!」

照(……なんて、咲だったら言いそう)フフ

小蒔「ぁ……」フラッ..

照「あ」

小蒔「…………っ!」ドシン(尻餅をつく)

小蒔(……腰が……抜けて……でも……これでようやく呼吸できます)スー..ハー..

照「大丈夫?」スッ(手を差しのべる)

小蒔「は、はい!今は息を吸ってますので大丈夫です」

照「え……?」

照(どういうことだろう……昔は吸ってなかったのかな?巫女さんだから?)ジィー...

小蒔「///」

照「……とりあえず、立てる?」

小蒔「?はい。立てます…………あっ……手……」

小蒔(まるで……インハイの時みたい……)

照「?」

小蒔「はっ……あ、失礼します……///」キュッ..

照「ん、しょ」グイ

小蒔「あ、りがとうござります……///」

照(ござり?)

小蒔「…………///」

照「あ、えと……それで……」

小蒔「あ、そうでした!辻垣内さんのことですよね!今話します!けど……」

照「?」


小蒔「…………は、恥ずかしいので……み、耳打ちでいいですか?」

照「……うん」コクリ

照(最終的にみんなと情報を共有するからあんまり意味はない気がするけど……気持ちはわかる)

小蒔「ありがとうございます。では……失礼します///」スッ

照「…………」

小蒔「…………実は」ヒソヒソ

照「っ……!?」ビクン!

小蒔「…戦いが始まってから……」ヒソヒソ

照「っ!ぁ……っ……///」

照(神代さんのウィスパーボイス……破壊力絶大……)ゾワゾワ..

照(でも……ちゃんとしないと……変に悶えたりしたらきっと咲が……)キリッ

咲「耳が性感帯のお姉ちゃんのばかー!!」

照(!?もう言った!!)

咲「昔お姉ちゃんが自分で耳に猫じゃらしをファサファサやってビクンってやってるのを見て『すごくかわいい!』って思ったけど……他の人の息で感じてるお姉ちゃんはやだー!!」

ざわ……

『え?そんなことしてたの……』

『もしかして東京に来たのって、本格的な耳責めアダルトグッズを買うためなんじゃ……』

ざわ……ざわ……

『エロァァッ!』

『昔っていうのが小学生とかなら……ふふ……いいわね……』

ずる……ずる……

『うまい。キクラゲが最強なんだよ』


照(うぅ……なんか色々言われてる気がする……咲のばか。普段大人しいのにこんな時だけ大きい声出して……)

小蒔「それで……」ヒソヒソ

照(でも……今は神代さんの話に集中しないと……っ)ビクン

~~~~~~~~~~~~~~~


煌「……というわけです」

怜「おおー」

洋榎「めっちゃリアルやなぁ」

煌「心の声も、おそらくこんな感じだと思います」スバラッ!

怜「……辻垣内についての情報は?」

煌「それはきっと……」

やえ「心配しなさんな。今から宮永が説明する」

照「…………神代さんから聞いた話をまとめると、辻垣内さんの能力についてわかったことは…」

やえ「ふっ。この王者な読み……たまらんよ」

怜(何言うてんの?ってつっこみたい……けどせえへん。つっこんだら負けや)

照「彼女に見つめられると……その……変な気持ちになるみたい」

久「変な気持ち?」

照「その…………『この人に支配されたい』って思う……とか」

小蒔「っ……///」カァアァ..

洋榎「ええ嫁やぁ……」

ゆみ「支配、か。瑞原プロがリリーフラワーガーデンの会長を味方にしたのと同様、相手を操作する能力なのかもしれないな」

智紀「辻垣内智葉……カリスマ性がある」

憧「確かに。人の上に立つ存在っぽいオーラあるわよね」

照「あと、辻垣内さんが戦闘中に物を置いていくみたいなんだけど………その意味がよくわからない、って」

塞「物を……置く?」

照「うん。急にスカートのポケットから取り出して地面に置いたらしい。その物というのがハンカチ、手ぬぐい、乾電池」

純代「???」

照「しかもその置いた物を踏む」

トシ「何が何だかわからない……だよ」

照「でもそうみたい。置いた物は必ず踏んで、そしてまた見つめてくる。するとさらに『支配されたくなる』」

ゆみ「ん?踏んだ後にまた見つめるのか」

ゆみ(どういうことだ?相手の精神を地面へ置いた物として扱うことで能力を強化するのか?うーん……)

憧(……踏みつけるという行為が相手を服従させるという面はあるだろうけど……神代さん自身あるいは私物を踏むというわけでもないんだ……)

やえ「私にはわかる気がする。辻垣内智葉は私と同等レベルに王者の風格があるからな」

怜「なるほどー。つまり県予選敗退レベルのカリスマ性を持つと」

やえ「ん?」

怜「ん?」

やえ「んー?」(怜を指さす)

怜「んーん?」フルフル

やえ「んー……?」

照「それで最終的に辻垣内さんに屈してしまい、ノドを撫でられた瞬間に倒れた。これが神代さんと辻垣内さんの戦いのすべて」

憩「ノドだけで……?」

桃子「感度いいっすね」ボソ

小蒔「っ……///」ボフッ!


穏乃「???結局、辻垣内さんの能力ってなんだったんですか?」

灼「……これだけじゃ正解にたどり着くのは難し…」

久「そうね。ただ注意すべきことはわかったわ。辻垣内さんと戦う時には目を見ないこと」

ゆみ「それと彼女が取り出した物を踏ませない、あるいは彼女に踏まれないようにする、だな」

久「あと三尋木プロにも気を付けて。近しい人間に化けてくるから」

エイスリン「バケル?」

久美子「あ、それ会長から聞きました。なんでも他人には絶対にわからないことまで知っているみたいですよ?」

咲「そ、そんな……」

久美子「会長曰く『三尋木さん自身が変身するのではなく、能力をかけた相手が勝手に幻を見る』だそうです」

憧「なにそれ?じゃあ合言葉とかで偽物かどうかを判別することもできないじゃない」

久美子「はい」

やえ「ふん……王者であるかないかを見抜ける私なら問題ないな」

怜「そやね。県予選敗退クラスの目利きができたらオッケーやな」

やえ「ん?」

怜「ん?」

やえ「んー?」(怜を指さす)

怜「んーん?」フルフル

やえ「んー……」

洋榎「……おい園城寺。県予選をバカにしなや」ヒソヒソ

怜「本気でバカにはしてへんで?ただこの子の鼻っ柱へし折りたぁてゾクゾクすんねんもん」

やえ「ん?」

怜「ん?」

やえ「んー?」(怜を指さす)

怜「んーん?」フルフル

やえ「んー……」

怜「ん」スッ(洋榎を指さす)

やえ「お、お前っ!私が王者じゃないというのかっ!?」

洋榎「ええっ!?ちょ、濡れ衣やて!園城寺!!」

怜「んー……」

洋榎「『んー……』やない!」

怜「♪Uh~……」

洋榎「なんで歌うねん。しっとり聴かさんと喋れ」

やえ「私は王者だっ!奈良個人戦1位!そんなことも知らないのかニワカめ!」

洋榎「知ってる!知ってるから!怒んなて!」


ゆみ「……幻、か。それは厄介だな」

穏乃「匂いとかも同じになっちゃうのかな?」

憧「多分ね」

穏乃「そっかー……じゃあ憧に化けられても匂いでは気付けないのかぁー」

憧「も、もうっ!しずったら……恥ずかしいこと言わないでよ……///」

塞「でもさ、そういうことしてくるって前情報があるだけでも大分違うわよね。実際目の当たりにした時にそれほど戸惑わなくてすみそう」

エイスリン「スミソー!」

竜華「……それでこの後はどうするん?もう少し話し合い続ける?」

ゆみ「いや、もう十分だと思う。それにリリーブライドの会長と赤土さん、宮永さんのお父さんがいないということは、敵に捕まっているかもしれない。助ける必要がある」

久美子「あ……そうだ。会長戻って来てなかったんだ」

照「お父さん……」

憧「ハルエなら大丈夫だと思いたいけど……やっぱり心配。さっき地下エリアの見取り図を見てきたんだけど、広いエリア2つの他に小部屋がいくつかあったから、そこに閉じ込められてるかも」

貴子「いや、大丈夫じゃねェか?3人とも強ェし」

久美子「でも……会長パンチラしてたし……」

貴子「ァァッ!?てめェ!マブかコラァァッ!!」

久美子「はい……」

貴子「…………くそっ!それはやべェな……いや、会長のことだからなんとかしてくれるとは思うが……」

久「……退却した458プロの人たちを追うより先に、小部屋の方を探索しましょうか?もしかしたら会長さんとかがいるかもしれない」

怜「いや、無理や」

久「え?」


怜「私らも小部屋に連れてかれたけど、そこのドアは暗証番号とかなかったで。普通に鍵しまっとった。もしおったとしてもドアを開けられへん」

憧「え?じゃあお2人はどうやって出てこれたんですか?」

怜「哩姫に勝ったあと開錠されてん」

憧「あー……なるほど」

久「それじゃあ会長さんたちも同じ状況の可能性が高いわね……こちらからじゃどうしようもないか……」

やえ「別に決着を急ぐ理由もないんだから、戻ってくるのを待ってから動けばいいんじゃないか?」

ゆみ「いや、できれば早めに攻め込んだ方がいい。今現在こちらの方が士気が高い。反して458プロ側は押し込められて逃げた形だから士気は下がっている」

憧「あたしも同感。ハルエたちがすぐ出てくる保証もないし。というか、どこにいるのかもわからないわけだしね」

トシ「よしっ!」

ゆみ・憧・久「?」

トシ「……3分経った。食べるとするんだよ」

豊音「熊倉先生ー……大事な話してるんだから大声出しちゃだめだよー」ピコピコ

トシ「自然と出るのは止められないよ」ズルズル..

煌「ポットを持参してまでカップラーメン……すばらです!」

久「……えーと、結局は……」

ゆみ「このまま攻める、でいいのか」

憧「ですね」

こうして話し合った内容をLB軍、LFG軍、宮守軍に伝えたあと、

458兵たちを追って進軍をした。

貴子(……会長のことだから心配はいらねェよな……)

灼(…………ハルちゃん……)

照「…………」

照(お父さん……大丈夫だよね?)


【エリアF】

その頃、エリアFでは熾烈な戦いが繰り広げられていた。

恵「YURYYYYYYYYY!!」

界「くっ!」サッ!

晴絵「な、なんてこったァ!陰嚢で足をとられる師匠を容赦なく襲う男根!こいつぁヤベェ!いつまでも耐えられる代物じゃねェってやつだぁ!!」

恵「チ○カスチ○カスゥ!」シュバババ!

界「ぅおおお!」

晴絵「避けたっ!またギリギリだ!!その反射神経に私は敬意を表するッ!」

恵「ちぃっ!」

男性ホルモンに支配されたフィールドは、壁や床が陰嚢(キ○タマ袋)で覆われており、前後左右がシワシワだ。

そんな中、百合を否定する攻撃を次々仕掛けてくる恵。

陰嚢床に苦戦しつつも、軽快なフットワークでさばく界。

そして、男性ホルモンに適応するため、少年誌っぽさを前面に出す晴絵。

3人が3人とも全力を出していた。

恵「おおおおお!」

界「っ……調子に乗って……!いつまでも守り一辺倒じゃねぇぞ!」ヒュバ(床の陰嚢を突き破るふたなり娘のち○ぽを発動)フニュチポヴォーン!!

恵「ぐああ!?」

界「当たったぜ俺ッ!この持ち味!上級ッ!」

恵「…………」フラ...ブモッ..

晴絵「た、倒れたーッ!やっやったーッ!やっぱり師匠!スゲーぜ!思ったよりもあっけないが!イバッてるやつは案外あんなもの!師匠の実力が私以上ということもあるが!」

恵「…………ッ!」シュッ!

界「!!」

晴絵「な……すげぇえ!!極上生徒会第3話で和泉香が妄想したパヤパヤポーズのまま飛び上がったァ!」

恵「YURYYYYYYYYYY!!」ヒュドムッ!

勢いそのままに、恵は1メートル大の陰毛の毬を10個ほど作り出し、ばら撒いた。

界「!」

晴絵「ちょ、ちょっと待ってくれ!いっぱいのあんな毬、避けられるやつがいるのかぁっ!?私の同級生にジャグリングを得意気にしている子がいたが、その子でもせいぜい毎日数時間練習をみっちり積んでたというのに扱えるのは5個程度!とうてい素人にはその子の倍の数を前にしたら避けられっこないぜーっ!」

恵「…………」ニヤリ

界「…………」

ポムポムポムポム!

界を襲う陰毛の毬たち。あっという間に界にのしかかる。

晴絵「し、師匠!!あれだけの毬をくらっちまって……これから先の勝負の行方ってやつは誰がどう考えても師匠に分が悪い。なんてこっただぜ……」

恵「ふふふ……」

パンモロで微笑む恵。しかし次の瞬間、

フニュ..

恵「!!」

恵の背中にズル剥け亀頭が当てられた。


恵「ば、ばかな……何故……」

界「俺が淫語を言った。そして脱出できた」

恵「っ!」シュ(体を反転させる)

界「遅いっ!」

亀頭を一直線に突き出した。これぞ宮永流ぽち○ぽ忍法、亀頭正拳突き。

恵「ごぁああ!」

晴絵「おおっ!この逆転劇!これこそ勝者の器!それすらできない小物は去れと言わんばかりの風格に今、私は体が打ち震えるほどの感動を覚え中だッ!この感動を今晩日記に書くと決めた!」

界(よしっ!このまま続けて……)

ヴモッ..

界(ん?何か踏んだか?)

追撃を狙い、足を踏み出した界。

彼が踏みつけたのは、赤い玉。

射精生活の終焉を意味する玉である。

実際のところ、『射精時に赤い玉が出たらもう打ち止め』というのは都市伝説であるが、この話に頭を悩ませた少年は数知れない。

それは界も例外ではなかった。

冷静な状態であれば、正拳突きしただけで射精していないのだから赤玉は関係なく、さらにその亀頭はふたなりっ娘のものだとすぐに気付き、

『なんか……キレイな色だと思うんだ』と感想を言う余裕もあるだろう。

しかし戦闘中で気も高ぶっている今、『亀頭による攻撃後に赤玉を踏みつけた』とあっては、総毛立つのは必然。

界「ひっ!これがラス1!?」

思わず体を縮こませる界。

そんな隙を見逃す恵ではない。

恵「YURY…」

界「はっ!しまった!ドジこいたーーーっ!!」

恵「YYYYYY!!!!」

恵が右腕を振るう。その動きに合わせ、床の陰嚢がめくれ上がり一瞬で固結びになる。

そして結び目部分が界のみぞおちを突く。

界「げほぁっ!!」

晴絵「し、師匠!」

界「ぐ、は……ぁ……」

恵「トドメだぁぁ!!」

恵《かつて互いに認め合っていた2人の男女は、次第に想いを深めていき、最後には身も心も結ばれた…》

晴絵「うわあああ!やめてっ!聞きたくない!!」

界「っ……おおお!」グググ..

恵「何!?耐えただと!?」

晴絵「し、しょう……?」

界「はぁ……はぁ……」

恵「…………男性ホルモンが強化されている陰嚢部屋だというのに……何故耐えられる?」


界「……伊達にヘテロも観てねェぜ!!」

恵「!!」

ポワァ..

晴絵「?」

恵「……よかろう!ならば今度は、薔薇を一輪活けようか!!」

晴絵(今……師匠の師匠の体から何か光の球が出たけど……あれは一体……)

恵「柔道部と空手部の帯をォォォォォォォ……いやらしい形に結んだ瞬間んんんッ!!部長同士の肉体関係を喚起させるアイテムと化すゥゥゥゥ!!」

界「くっ!帯か……古来より男根と共にある聖遺物……厄介だな」

晴絵(……師匠は気付いてない……だったら、私が確認しないと)ソローリ..ソローリ..

恵「きええええええ!!」

界「くそっ!」

晴絵「…………」ソローリ...

ポワポワァ..

晴絵(よし。球のところまで来れた……さて)

晴絵「………………」(球を覗き込む)

晴絵(ん……球に映像が…………これは…………幽遊白書のぼたんとあやめ(霊界案内人)だ)

晴絵(!2人がコエンマの机の下でキスしてる……)

晴絵「………………」

晴絵(紛れもない百合妄想……でもどうして男根主義と化した師匠の師匠から……しかもこんな球になって?)ウーム

恵「無駄無駄ァ!お前では私には一生追いつけない!永遠にだ!」

界「なんだと……!」

恵「影すら踏めんんんん!追い求める存在へ近付こうとしてもその領域にまでは至れないぃっ!そんな男はこの世に山ほどいるだろう!!」

界「……ンのことか……」

恵「ンン?」

界「ムネリンのことかーーーっ!!!!!」

恵「…………」

ポワァ..

晴絵(!また出た!!)

界「イチロー選手に憧れ、どこまでも追いかける……そしてメジャーにまでたどり着いた才能ある人を……馬鹿にするんじゃねぇ!!」

恵「川崎選手に対しては何も言ってはいないが……」

界「嘘だッ!!!」

恵「…………ふん」

ポワァ..

晴絵(また!!)

界(ん?なんだ?球みたいなもんが……何か映ってるな……)

界(………これは……ドラゴンボールのランチさんと、幼少期の悟空が連れてきた人魚?2人が恋人繋ぎしてる……天津飯を追って消息不明になったランチさんは人魚と暮らしてたという妄想か?)

界(もう1つの球は…………ひぐらしの梨花と沙都子?)

恵「YURYYYY!!!」シュヴォッ!

界(また陰毛か!)サッ!


恵「ちいっ!」

界「………………」

界(ドラゴンボール、ひぐらし………師匠の男性ホルモンに対抗しようとした俺の発言の元ネタだ)

界(その作品の百合妄想が球となって師匠の体から出た……これはどういうことか……)

晴絵「師匠!危ないっ!」

界「え……」ハッ

恵「キ○タマによる圧迫をくらえっ!!」ブワァアァ..

思考に気を取られている隙に、恵は巨大なキ○タマをハンマーの形に具現化させ、振りかぶっていた。

恵「ハンマーヘル!光になれぇぇぇぇぇっ!!」

界(やべぇ!避けられねぇ!!玉袋の皮が顔にくっついちまうのか!!)

晴絵「〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!」チポジョバァァァァァァ!!!!

恵「なんだと!?」

全くのノーマークからの膀胱砲に恵は一瞬たじろぐが、すぐに冷静さを取戻す。体を捻って膀胱砲をかわし、キ○タマハンマーを界に向かって振り下ろした。

界「っ!」サッ!

恵「ぬうっ!?」チヴォ!

しかしキ○タマが捉えたのは生温かい床だった。

界「助かったぜアッカドーン。助太刀がなかったら確実に食らってた」

晴絵「は、はい」

界(考えるのも大事だが、まずは身の安全だ。少し距離をとろう)サッ

恵「………………」

界(……よし、情報を整理しよう。まず、この部屋は男性ホルモンによって玉袋化している。だから少年誌のパワーを借りた)

界(そうして戦ううちに、元ネタの百合妄想が映っている球が師匠の体から出てきた)

界(……さらに、女性であるアッカドーンのふたなりっ娘の膀胱砲には女性ホルモンがかなり多いはずだが……)チラ

晴絵「…………」

界(アッカドーンは無傷のようだ……男性ホルモンに取り込まれない……ということは……)

界(……師匠は完全に男性ホルモン化させるつもりがない?……いや、そうじゃない)

界(…………師匠は……完全に百合嫌ーになってるわけじゃない……うん、こっちの方がしっくりくる)

恵「どうした?かかってこないのか?」

界(そうだよな……操られているとはいえ、師匠が百合を完全に拒むわけがねぇ。だったら……俺がやることは……)ギラッ!

界《アッカドーン!》

晴絵《は、はい!!》

界《今からアッカドーンも戦闘に参加してくれ!妄想内容はなるべく少年誌系を絡めた、百合妄想で頼む!あと喋り方は元に戻していい!》

晴絵《え?それだと……》

界《大丈夫だ!とにかく今は百合をぶつけてくれ!そうすればきっと、あの球が出る!》

晴絵《!師匠、気付いて……》

界《ああ。あの球を増やせば、この部屋に百合要素が増える。そうなれば師匠が展開した男性ホルモンフィールドは薄れていくはずだ!》

晴絵《?》

恵「来ないならこちらから…」

界「今から行くぜっ!」サッ

界は両手を前へ突き出し、手首同士を合わせて手の平を開く。


晴絵(それは……悟空の……)

界「ハ~…」

そしてかめはめ波と同じように手を動かし、

恵「?」

界「ナ~…」

晴絵「??」

界「ヤ~…」

恵「!」

腰の辺りで溜めていた力を一気に放つように、

界「マ~~~~………………ターーーーーーーッ!!!」

恵へ向かって突き出した。

恵「むおっ!?」

ドラゴンボールの男性ホルモンを纏いながら、よさこいの百合波動が恵を襲う。

ポワァァ..

そしてまた一つ、百合妄想の球――ゆりたま!――が出現した。

晴絵(なるほど……あの要領ね。だったら……)

晴絵「…………」サッ

晴絵(えっと……確か幽助は……)サッ

右手の親指と人差し指を立て、拳銃を現す形にし、前へ出す。

そして左手で右手首を握る。

晴絵(よし…………いくわよ!)

晴絵「レイちゃーーん!!」

ドキューン!

恵「なにィ!?」

晴絵が放ったのは幽遊白書で幽助が使う霊丸をモデルにした妄想攻撃だ。

晴絵の言うレイちゃんとは、セーラーマーズ火野レイであり、ファーストチルドレン綾波レイである。

恵「…………」

ポワァポワァ...

レイちゃんをまともに食らい、飛び出したゆりたま!それはツーセット。

界「もう一発!」

間髪入れず、再びかめはめ波のポーズをとる界。

界「ソ~」

界「ラ~」

界「ノ~」

界「ヲ~」

界「…………ト~~~~~~~~~~!!!!!」ジュバアアアア!

恵「ぐうぅぅ!!」


晴絵「もっかい幽白!六花風陣拳!!」ゴ!!

今度は気鋼闘衣を纏った仙水の裂破風陣拳。その仙水を中二病でも恋がしたいの六花に変えた。

恵「!」

ポワァ..

界「やるなアッカドーン!それなら俺は……森夏の秘法だ!」

界が繰り出す中二病繋がり。モリサマーこと丹生谷森夏と凸守のカプが、ドラクエ4の進化の秘法を探す百合物語を展開させた。

恵「!!」

ポワァァ..

晴絵「次っ!Free!の江ちゃんのふたなりち○ぽ!江ちゃん主役のいわゆるFutanaree!」

界「『江は凛よりデカし』ンッン~名言だなこれは」

恵「!!!!」

ポワッファファーン..

間隙なく攻めたてる界と晴絵。恵は防戦一方だ。

恵の周りにはゆりたま!が溢れていく。

界「!お……これは……」

晴絵「床が……元通りに……」

恵「なにっ!?」

ゆりたま!の大量発生効果によって床と壁の陰嚢化が消え、コンクリートに戻った。

同時に、陰嚢の温かさを失ったせいで室温が2度ほど下がった。

界(この調子だ……どんどん攻めれば、師匠の百合嫌ー状態も解除できるはず!)

恵「…………さすがだな少年。そして教員」

界「?」

晴絵「あ、はい……」

恵「だが……まだ甘い」

界「!」ゾワッ..

界(はったり……なわけねぇか。でも俺らがやることは変わらない。いや、陰嚢が解除された今、ふたなり百合妄想をストレートにぶち込める!!いくぜっ!!)

界《ふたなりを隠していた海未。ふとしたことで穂乃果にバレてしまう!軽蔑されると泣き崩れる海未だったが、穂乃果は『ほ』のTシャツをそっと海未の肩にかけ、ギュッと抱きしめた!》

恵「…………」

界《そして涙を浮かべて振り返る海未に微笑みかけると『どんな海未ちゃんでも私は大好きだよ』と言い、キスを交わした……!》

界(どうだっ!)

恵《……そんな2人の背景は……》

界(!……)

恵《…………見渡す限りの陰嚢!!》

界「!!!」

界(ば、バカな!俺の妄想内では2人がいるのは部室だった!それが……あっという間に陰嚢で埋め尽くされただと!?)

恵《〔 私 を 陰 嚢 畑 に 連 れ て き や が っ て ( ノ ッ ト リ リ ー )〕》ヴォムゥゥゥ..

恵「どんなに魅力的な場面であろうと……情熱的な告白だろうと……場所や状況によってその感動度合いは変わる。それは常識だ」

恵「ならば……少年の妄想のシチュエーションの背景をこちらで変えてしまえばいい。恋人繋ぎで見つめ合っているならば、2人の指の間に陰毛をねじ込む。大自然の中での告白なら、陰嚢をばらまけば台無しだ」

界(確かに……ARIAがそうであるように背景や場所の力は大きいが……)


恵「わかるか?どんな百合シーンも、陰嚢には勝てないのだ」

界「!それは違う!」

恵「そうだろうか?少年。君は陰嚢で作られたテントの中で結ばれる百合カップルを魅力的だと思うかね?」

界「……う……」

恵「教員はどうだ?床に広がる陰嚢カーペットのぼっこりのせいで体が傾いたまま『ごきげんよう』と微笑むお嬢様をどう思う?」

晴絵「…………」

恵「絶句か。そうだろうな。女性こそ陰嚢を嫌う」

晴絵「…………私は」

恵「ん?」

晴絵「……ふたなりっ娘の陰嚢は……キレイだと思います」

恵「なに……?」

界「アッカドーン……」

晴絵「何故なら……きちんと毎日洗ってるだろうから」

界「ちょっと待て。男だって洗ってるぞ。偏見はやめろ」

晴絵「それに……師匠がした妄想のように、もしも海未ちゃんがふたなりで、陰嚢があったとしたら…………私は陰嚢を愛せます」

恵「なん……だと……」

界「アッカドーン……」

恵「ふ、ふざけたことを……陰嚢はしわくちゃだ。見栄えがよくない。そんな陰嚢背景の中で生まれた百合カップルなど……」

晴絵「関係ないです。それにドラゴンボールではトランクスがいた未来は人造人間によってメチャクチャに破壊されました。でもその中でもきっと百合カップルは生まれていた」

恵「待て。荒廃した町と陰嚢は別物…」

晴絵「どれほど追い詰められようと、紅茶を飲まなくても、乗馬をしてなくても……プリーツを乱していても…………百合は負けない!」キッ!

界「…………よく言った」

晴絵「師匠?」

界「俺としたことが……危うく認めるところだった。ふたなりを百合と信ずる俺にとって、陰嚢は身近なもの。もっとちゃんと見てやらなきゃいけなかったのにな」フフッ

恵「な……」

界「ありがとな、アッカドーン」

晴絵「いえ」ニコリ

恵「何をバカなことを……百合なんて……百合なんて……」

『百合は素晴らしい』

恵「ぐうっ!?頭が……痛い……」

『私は百合を愛している』

恵「違うッ!私は百合嫌ー・恵!!百合を愛してなどいないッ!」

界「………師匠」

界(そうだよな……あんたは誰よりも百合を大事にしてきた。操られて無理矢理百合を否定し続けるなんて辛いよな)

界(……ここは、弟子の俺が師匠を救う!)キッ

界《アッカドーン。今師匠の力は弱まってる。勝負を決めるチャンスだ》

晴絵《!はい》


界《陰嚢背景によって多少男性ホルモンが増えたせいで百合のみの攻撃は効果が薄い。だから……》

晴絵《わかってます。さっきの要領ですね》

界《ああ。さすが飲み込みが早いな!じゃあいくぜ!アッカドーンはすぐに俺に続いてくれ》

晴絵《わかりました!》

恵「……陰嚢が……かゆい……かゆいッ!どうして……っ!」

界(師匠……今助けるぜ!)

界「うおおおおおおおお!!!!」タタタッ!

恵「っ!とどめ……のつもりか…………少年。だが……まだだ……まだ私は……」

界「おおおおおおお!!!」タタタタ!

恵「タマタマァ!!」ブニョ!

右手で頭を押さえ、痛みを堪えながらも恵は陰嚢を生み出す。

突進してくる界に対するカウンター狙いだ。

しかし界は恵の攻撃に臆さず、足を緩めない。

界「カリカリカリカリカリカリカリカリ…」シュダダダダダダ!!!

恵の陰嚢は手数で封じるつもりなのだろう。

限界を超えるであろう速度で次々に亀頭を突き出す。

晴絵「……ッ!魔羅(マラ)魔羅ァ!!」ポチチ!

界に遅れること数秒、晴絵も攻撃に参加した。


恵「っ……!タマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマ…」ブニョブニョブニョブニョ!!!

界「カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…」シュダダダダダダダ!!!

晴絵「魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅…」ポチチチチチチチチチチチチ!!!

三者三様の激しいラッシュ。流れる汗、火花散る我慢汁。

陰嚢、睾丸、カリ、亀頭。

これは伝説になるきっと。

恵「タマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマ…」ブニョブニョブニョブニョ!!!

界「カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…」シュダダダダダダダ!!!

晴絵「魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅魔羅………っ」フラッ..

晴絵(ダメだ……全力を出し過ぎて一気に力が…………どうして2人は平気、なの……?)


恵「タマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマ…」ブニョブニョブニョブニョ!!!

界「カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…」シュダダダダダダダ!!!

晴絵(……いや、違う!2人とも辛いんだ……でも、その辛さを必死に押し殺してる……)

恵「タマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマタマ…」ブニョブニョブニョブニョ!!!

界「カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…」シュダダダダダダダ!!!

晴絵の予想通り、2人も苦しんでいる。

界は体力が尽きかけており、恵は尿漏れのシミが7滴へ突入。

いつ倒れても不思議ではない。

恵(私は…………百合嫌ー……負けるわけには……)

界(師匠を……必ず救ってみせる!!)

限界を超え続ける2人。さらなるラッシュを仕掛けようと全身に力を入れたその時、

恵「タマタマタマタマ…」フラッ

恵の体が傾き、倒れ込みそうになる。

転倒を防ぐため、両足に力を入れて踏ん張り、なんとか体勢を立て直した。

しかしその隙はあまりにも大きく、

恵(この大事な場面で私は……なんと情けない)

恵の強靭な心に、諦めという名の大きな亀裂が走った。

このチャンスを逃す界ではない。


界(師匠……)

恵(…………少年……)

界「……カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!!!!」シュダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

界「カリぶと・野武士(さよならですわ)!!」バァァーーン!!

恵「…………っ」フラァァ...

ドサッ...

界「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

晴絵「師匠……大丈夫ですか?」

界「あ、ああ……アッカドーンは?」

晴絵「私も平気です……」

界「そう、か……だが無理するなよ?」

晴絵「はい……」

恵「………………」

晴絵「…………気を失ってるみたいですね」

界「ああ。そうだな」チラ

界(!師匠……)

恵を見た界の表情がパッと輝く。

それは倒れている恵のパンツが、膝によって隠されていて見えないから。

操られていたとはいえ百合嫌ーを名乗り、下品の限りを尽くした恵だったが、無意識下でパンチラを防いでいたのだ。

界(目が覚めた時、いつもの師匠に戻ってくれてるかはわからねぇけど……)

界(あの鉄壁度合いなら大丈夫だ。そう思えるぜ)

あとは尿漏れが乾くだけ。そう心の中で呟き、宮永界は師に背を向け歩き出した―――


一方、退却した458兵のあとを追っていた照たちは、エリアAを突破していた。

鍵は開錠されており、とてもスムーズだった。

ドアを開けると少し狭い空間があり、そこを通ってさらにドアを開けると、上へ向かう階段。

道幅がそれほど広くない上に、総勢で1000人近くが通るため、かなり窮屈だ。

もしも途中で攻められたら一巻の終わり。

なので、列の先頭におだてられていい気になったやえを配置し、犠牲を最小限に押さえる作戦を実行した。発案者は貴子。

しかし特に何もなく階段を上ることができ、見えてきた景色は……。

照「……うわ……」

咲「すごい……」

周りを木々に囲まれた大自然。

ついさっきまで密閉されていた分、いやー今日も空気がうまいっ!

そしてそんな自然溢れる光景の中で、一際大きな存在感を持つ建物が見える。

久「これは……学校ね」

古びているものの、厳格かつ清楚な佇まいの校舎。

さぞかし、タイが曲がっていたら直すのだろう。

そして特筆すべきはその広さだ。

運動場、薔薇園、乗馬コース、プール、マリア像、アルパカ小屋。

施設もバッチリ、トシ大満足。

桃子「……それにしても、敵の姿が全然見えないっす」

ゆみ「建物の中か陰に潜んでいるんだろうな」

貴子「フン!そんなこと気にしてられねェ。行くと決めたら行く。おい、小走ァァッ!」

やえ「な、なんだ」

貴子「私はお前を認めてる」

やえ「へ?」

貴子「お前がナンバーワンだ」

やえ「…………」

貴子「だから引き続き先陣きって単騎駆けしてくれ」

やえ「……ふ、ふふふ!そうか!何度も怒鳴ってきて怖かったが、ようやくわかったようだな。王者たる私の実力を!」

貴子「ああァァッ!だから頼んだぜァァッ!」

やえ「任せろ!単独で進む!これこそ王者の行く道よ!」

怜「……普通、王はやられたらあかんから本陣で守られんねんけどな」

やえ「ん?」

怜「ん?」

やえ「んー?」(怜を指さす)

怜「んーん?」フルフル

やえ「んー……?」

貴子「早く行けコラァァッ!!右手が疼くぞァァッ!」

やえ「っ!?い、行ってくる!」タタッ


照(……なんか可哀想な気が…………でも……)

やえ「王者♪王者♪やった……あいつが私を認めたぞ~」ニコニコ

照(…………すごく嬉しそうだから止めるのも気が引ける)

貴子「…………LB軍、LFG軍、宮守軍も50人ずつあの女に続け」

怜「お。さすがに1人で突っ込ませへんねんな」

竜華「よかった~。小走さんが危険な目に合ったらどうしようって心配やったわ」

純代「コーチは稀に優し…」

貴子「ドラララァッ!!」

純代「ひっ!」ビク!

貴子「黙れ深堀ァァッ!それとてめェら!早く行けコラァァッ!!」

LB軍「は、はいっ!」

LFG軍「行ってきます!」

宮守軍「し、出発!」

タタタタタ...

貴子「…………おし、私らも行くぞ」

久「はい。みんな気を付けてね」

照「うん」

咲「はい」

純代・智紀「」コクリ

ゆみ「モモ」

桃子「?はいっす」

ゆみ「私は百合妄想士になってから日が浅い。ここにいる者たちの中で一番弱いだろう」

桃子「先輩……そんなことないっす。少なくとも熊倉さんの方が雑魚っす」

トシ「ダブルピースさ」ピース

ゆみ「……だとしても私が弱いことに変わりはないさ」

桃子「…………」

ゆみ「ただ…」

桃子「?」

ゆみ「モモだけは守る。私の全てに変えても」

桃子「せ、先輩……///」

ゆみ「モモ……///」

トシ「な、長野の子……//////」

透華(……戦場だというのに甘い雰囲気ですわね……私だってできることなら一と……)チラ

一「と、透華……///」モジモジ

透華「っ……は、はじめ?」

一「…………手、繋ぐだけでも……///」

透華「え、ええ。もちろんですわ///」

キュッ..

一「…………えへへ///」

透華(あああああああ!!!はじめぇええ!!愛しすぎますわぁぁあ!!)


怜「…………」ジー

ゆみ・桃子・トシ「」

怜「…………なんかあっこの温度は高そうやなぁ」

竜華「?あぁ、長野の子たち?」

怜「そや。ま、ええけど…………はぁー……校舎まで歩くの……辛いなぁ」

白望「同感。ダルい……」

塞「シロの場合は怠惰でしょ。園城寺さんとは違うからね?」

エイスリン「チガウ!」

竜華「階段の上り下りとか、怜にとってはハードやったもんなぁ。おんぶしよか?」

怜「いや、大丈夫や」

白望「…………」チラ

塞「……しないからね」

豊音「おんぶ!」サッ

塞「わっ!?びっくりした」

豊音「私がしようかー?ちょー背負うよー?」

白望「……冗談だから。高3になっておんぶは……ダルい……」

豊音「そうかなー?」

エイスリン「カナ?」

洋榎「なんややめるんか?うちが背負ったろ思たのに」

憩「やめといた方がええよー?絶対転ぶと思います」

洋榎「ぬ」

憩「そしたらうちが治療しますけど」ニッコリ

洋榎「嫁……」

全裸初美「おんぶとか懐かしい響きですよー!」

小蒔「はい。日常であまり使わない言葉ですものね」

全裸初美「はい。おんぶかー……」

霞「初美ちゃん。あっち見てごらん」

全裸初美「……?」チラ

塞「」ハァー..ハァー..

全裸初美「っ?!」ビクッ

全裸初美(こっち見て密かに興奮してますよー!)

霞「あんまりおんぶとか言うと、背負いに来るかも?」

全裸初美「け、け、結構です。自分で歩けますよー」

憧「しず、どうぞ」

穏乃「?どうぞって?」

憧「いや、おんぶ」

穏乃「私なら大丈夫だよ。それよりも憧の方が体力ないじゃん」

憧「…………確かに」


穏乃「私がおんぶしてあげよっか?」

憧「そ、そう?じゃあお願い」

穏乃「よい、しょ!あれ?憧、軽いなー」

憧「……当たり前じゃん。ちゃんと気を遣ってるんだから」

穏乃「さすが憧」

憧(しずの耳が近い……)

憧「………………ふぅー……」

穏乃「ひぃう!?」ビクッ

憧「ふふ……」

穏乃「や、やめろよぉ~……力抜けちゃうよぉ……///」

灼「………………」

灼(じゃれ合うのはいいけど、転んだりしないか心配……)

煌「鷺森さん」

灼「ん?はい」

煌「あの2人が羨ましいのでしたら、私がすばらなおんぶを…」

灼「結構です」

わいわいと会話をしながら一同は歩く。まるで戦場ではないかのような雰囲気。

『儚可憐女学院』と書かれた校門を通過するも、敵の姿はない。

照(儚可憐女学院……小鍛治さんが名前を伏せたまま活動していたサークル名……)

久(廃校を借りて看板だけ変えたとかそういうことかしら)

咲(ぅわ~……広くていい雰囲気の学校……お姉ちゃんと一緒に通いたいな)

純代(この入り口付近と運動場が一番広い……458プロの大軍勢を考えると、この辺りできっと……)

LB軍「前方から458プロ、来ました!!」

純代「!!」

LFG軍「こっちからも来ました!」

宮守軍「あっちからも!?」

やえ「くっ……!」

久(先行してた子たちを囲むように配置されてる。逃げられるのは私たちがいる校門側だけ……でもここまで退くよりはむしろ…)

貴子「お前らァァッ!走れ!先走ったやつらと合流して跳ね返すぞァァッ!」

久(…そうよね。こちらが向かった方がいい)タタッ!

純代「あの……先走ったんじゃなくて、コーチが先に行けと命令したから…」

貴子「おしゃべりかオラァァ!!」

純代「す、すいません……」

458兵たち「うっうー!!」

やえ(来た!数は…………500ってところか?先行したうちらは150くらい……普通に考えたら絶望的だけど……)

LFG軍「迎え撃つわ!」ザッ!

LB軍「ええ!」

宮守軍「みんな!落ち着いていくわよ!」

やえ(地下での戦いに比べたら……なんてことない!)ギラッ!


やえ「ニッワニッワニー!」シュバァ!

458兵たち「きゃあ!!」

宮守軍「小走さん……」

やえ「心配しなさんな」ニワリ

LFG軍「うわぁ!」

458兵たち「んっふっふ~……覚悟ぉ!」

やえ「しかたないわねー!」タタッ

458兵たち「!」

やえ「〔 ニ ワ カ 殺 し ( ニ ワ カ キ ラ ー )〕」

458兵たち「う……この……!」

やえ(……さすがにニワカ度が少ない……細かいニワカ部分に何度も攻撃するしかないか)

LFG軍「小走さん……」

やえ「安心しろ。私は奈良県個人戦1位。ニワカは相手にならんよ!」

LB軍「ええい!」

458兵たち「こ、この子たち……」タジッ

やえ「なかなかやるじゃないか!」

やえ(鷺森たちが来てくれるまで数分だろう……それまでなら持ちこたえられる)ニワリ!

??「その余裕こそビッグ問題……」

やえ「なに!?」

良子「グッモーニンですー」

やえ「戒能良子プロ!?イタコの傭兵で、ソロモン王の力で役満を和了り、キン肉マン マッスルタッグマッチのゴールドカートリッジを所有しているという噂の……」

良子「ノーウェイノーウェイ。全部シティGUY(間違い)」

??「そーそー。ロックマン4の金色カセットの方だよねぃ」

やえ「それでもすごい!?」

良子「ノー!嘘はやめてください。三尋木さん」

咏「いやー、嘘じゃなくて勘違いだから」パタパタ

やえ(……って三尋木プロまで!?458プロの幹部が2人も……)ゾワ...

LFG軍たち「う……ん……」ドサドサドサ..

やえ「っ!?一体どうし……」

はやり「はやー☆」

やえ「な……きついプロまで!」

理沙「……………」ザッ!

やえ「!」

理沙「……………」

やえ「……………」

理沙「……………」

やえ「なんか言え!」


照「!あれは……」

咲「ぷ、プロの人たちがいるよ!?」

洋榎「おい!シャレになってないで!?早よ行ったらんと全滅してまう!」ダッ!

穏乃「あれ?ちょっと待って。この気配……」

憧「どしたの?」

ワアアアァア..

ゆみ「ん?」

灼「後ろから敵が来…」

458兵たち「」タタタタ!

豊音「わわっ!ホントだー!校門の外からちょーいっぱい来たよー!」

怜「挟み撃ち……逃げ場は…」

竜華「小走さんの方しかない!急ごう、怜!」

ダダダダダ!

良子《晃の密かな想いに藍華は気付かない……そして明日もまた、いつも通りの生活が始まる……》

やえ「うぐっ……」

やえ(軽い妄想のはずなのにこのダメージ……さすが幹部……)

咏「辛そうだねぃ」パタパタ

はやり「はや~、大変☆」

やえ(……これは……もはや万事休すか。王者を倒すとは……この人たちは……勇者か?)

咏「トドメ……お?」

はやり「わわっ?」

やえ「?」

ギュルルルルル!!

やえ(な……これは……竜巻?)

咏「よっと……」サッ

はやり「ひらり~ん☆」クルクルッ

咏「危ない危ない。すっげー威力だった~」

やえ(……今の攻撃は……?)

照「」

やえ(宮永……照……?)

はやり「あの距離から届くんだね☆すっごーい」

理沙「避けて!」プム!

はやり「?……あ」

バシュゥゥ..

理沙「後ろ下がる!」

はやり「ッ……」サッ!

咏「おおー。機敏」

はやり「ちょっと危なかったかも☆」ニコリ

竜華「」

咏「今度はドラゴンフラワーちゃんのビームか……遠距離砲ってずるくね?」


はやり「ほんとほんと」

良子「ドラゴンフラワー……ナイスネーミングです」

やえ「ッ!〔 ニ ワ カ 殺 し ( ニ ワ カ キ ラ ー )〕!!」

咏「お?」

はやり「っ……はやー……」

やえ(幹部相手だろうが、苦手ジャンルのニワカ部分を突けば多少はダメージを与えられる!)

咏「この状況で攻撃……君、なかなか根性ある?しらんけど」

はやり「逃げないのは偉いゾ☆」

やえ「…………」

ギュルルル..

咏「はぁ……またか」

はやり「咏ちゃん。避けなくてもいいよ☆」スッ

照「………………」

照(さっきのコンボ数は2つ。でも今回は『にこ×まき(ラブライブ)』、『きもちのかたち(漫画)』、『千秋×冬馬(みなみけ)』の3コンボ……これなら!)

照が放った連続妄想が竜巻のように回転しながら咏たち目がけて飛んでいく。

そんな竜巻を前に、はやりは咏をかばうように一歩進んで右手を前へ突き出してそのまま受け止めた。

照「!!」

結果、竜巻が力を失って消滅する。はやりはその手を軽く振り、衝撃によって痺れたような素振りを見せたが、表情は笑顔のままだ。

はやり「…………はややっ☆」ニッコーン!

妄想の混ざり合った〔連続妄想(コークスクリュー)〕の威力は絶大。

並大抵の相手ならかすめただけでも倒せるレベルだ。

もちろん瑞原はやりが並大抵ではないことは照も承知の上だろうが、片手で受け止められたとあってはショックを隠せない。

照(私のせいでにこまきが負けたような気持ちになってとても辛い……にこまきファンのみんな、ごめん……)

謎の責任感を覚える照。しかしすぐに頭を切り替え、次のコンボを狙う。

照(小走さんたちを倒させないようにプロの人たちをけん制しつつ近付いて……合流する)

照《『ちなつ×あかり(ゆるゆり)』、『りん×くろ(こどものじかん)』…………『ろ』……『ろ』……『ロクロイチ先生』!セット!》

照「〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!」ギュロォォォォ!!

竜華「〔 竜 華 と 怜 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕ギュアアアアア!!

走りながら攻撃を放っていく照と竜華。

狙うコースに変化を加えていく。

咏やはやりを直接狙ったものや、458兵たちを狙ったもの。

その高い威力から敵は警戒心を深め、受け切れるはやり以外の動きが鈍くなっていく。

はやり「うーん」

咏「んーふ、なっかなかやるねぃ」ニマニマ

良子、咏、理沙、はやり。幹部を4人を揃えていながら、やえたちを相手に手こずっている現状に458兵たちの士気がますます下がる。

大軍勢による地下での戦いで勝ちきれなかったことが彼女たちの影を落としているのだ。

そうこうしているうちに、


ダダダダ...

咏「ふむ」

はやり「はやー」

足音は大きくなり、

良子「バッドタイミング」

理沙「なんかヤダ!」プムン!

リリーブライド、リリーフラワーガーデン、宮守女子、永水女子……。

それぞれがそれぞれな想いを抱える百合妄想士たちが、先行したやえたちに追いついた。

久「はぁ……はぁ……間に合った……はぁぁ……」ゼェゼェ..

久(って……一息入れてる場合じゃなかったわ!すぐに攻撃を……)

智紀《素晴らしい『起』。ワクワクするような『承』。思わずのめり込む『転』。そして………………ヘテロエンドの『結』!!》

458兵たち「ぎゃああああああああああ!!!」

久「………………すごい」

久(走った疲れをまったく見せずに大技を決める…………さすが沢村さんだわ)

塞「よし………それじゃあ触ろうかしら」ギラリ

塞「〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕!!」

458へいたち「ふぁっ……!?」

塞(さァ私を魅了するといいよ……未成熟な体……!!)ジュルリ

智紀、塞による連続攻撃。地下での勝利の勢いをそのまま持ってきたかのような構成、攻勢。

我も続けと、洋榎、怜、竜華、照、咲、純代……。それぞれが押せ押せ。

負けじと458兵も当然、応戦。しかし勢いは止まらない。

純代「〔 宇 宙 規 模 の 脱 糞 ( だ っ ぷ ん マ ゲ ド ン )〕」

458兵たち「やめてぇえええ!!」

純代「…………」

―――美穂子『ふふ……深堀さん。星々が煌めく中でのスカ妄想、お見事でした』

純代「うおおおおお!」

純代(キャプテンが認めてくれると思えるなら、私はどこまでも強くなる!!)

やえ「おお……おおおぉ……形勢逆転……よーし、私も負けてられないわ!」

やえ「ニッワニッワニー!」

458兵たち「あふぅ!」

やえ「これぞ王者……」

怜「……自分のことニワニー言うってことは自分がニワカやって意味になるけどな」

やえ「ん?」

怜「ん?」

やえ「んー?」スッ(怜を指さす)

怜「うん」コクリ

やえ「んー?…………ってお前で合ってるのか!?」

怜「うん」


458兵たち「わんつー!」タタッ!

やえ「!しまっ…」

ズムン!ズム!

458兵たち「もじぴっ…」

やえ「?」

458兵たち「」バタバターン!

灼「…………」

倒れた兵士の後ろに灼。『グッジョブ』の指の形のアナパ。

攻撃を終えた姿が挨拶になるとは、なんてエコなスタイルだろうか。

やえ「鷺森……助かったわ。ありがとう」

灼「ううん。そっちに意識が行ってたからお尻の穴が隙だらけだっただけ…」

謙遜し少し照れながら指をハンカチで拭くその姿はまるで…………何かだ。

雅枝「このアホンダラが!死にさらせ」

灼「!」

その何かに向かって暴言を吐きながら物理的な意味で突っ込んでくるのは愛宕雅枝。

はやりファンとして信者の域にまで達したのか、目は血走り、本気で何かを潰しにかかる。

灼(この迫力、お尻の穴どころじゃな…)タジッ..

雅枝「いてこましたろかボケェ!!」

灼(……とにかく、鎌だけは避けないと)

百合アニメ鑑賞禁止だけは絶対に嫌だ、と必死の形相で腰を落として重心を低く構える。

そんな時、背後から灼を追い抜くように貴子が飛び出し、雅枝へと向かっていった。

灼「!」

貴子「オラァ!!」

雅枝「あ゛ぁ゛!?」

貴子「あなたの相手は私です!」

雅枝「…………ふん!ええ根性しとんのぉ」

灼「久保さん……」

貴子「鷺森ァァッ!ここは私に任せて、てめェはどんどん尻の穴に指を挿れ続けろ」

灼「……はい」タタッ

雅枝「けっ……」

貴子「やってやるぜェァッ!!」

理沙《ロロ×クー!》シュバ

洋榎「く……っ……効くわ……けど!」

理沙「!」

洋榎「ロロナもくーちゃんもうちの嫁ェエエエエエ!!」ゴオォ!

理沙「う……」

久「あなたのカプは寝取られる……」ザァァアアァア..


理沙「や、やめて……!」

はやり「理沙ちゃん!今助けてあげ…」

霞《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕 》ポヨォォォ..

はやり「っ!?」サッ!

霞「あら」

はやり「あっぶないところだったゾ☆」キラーン

霞「いえ、まだ危ないところですよ?」ニコリ

はやり「ふぇ?」

小蒔「〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ ) 〕」カッ!!

はやり「きゃあああ!!」

霞「うふふ」

野依理沙の妄想短縮を洋榎がカプごと嫁にし、

精神的に弱ったところを久の〔無数の絆(フラグメーカー)〕で智紀の絶望が追加される。

理沙を助けようとするはやりには霞がおっぱいの感触を飛ばし、

避けた先には小蒔の強力な一撃。

はやり「はやー……これは……ちょっときついかも」

一連の攻撃後、はやりの表情には若干の焦りの色が見えた。

小蒔たちから少し距離をとり、ちらりと良子へと視線を向ける。

その良子はというと、

良子「くっ!全然見えないです」

ステルスによって消えたゆみと桃子を相手に戸惑っていた。

良子「……だったら、違うエネミーを打倒するエトセトラありません」

ゆみ《モモと胸をくっつけ合うと、不思議と穏やかな気持ちになる》

良子「No!?また背後から……」

桃子《先輩の匂い……甘いっす。危険っす》

姿を消しながら移動を繰り返し、LB軍たちをけん制役に使って攻撃を仕掛けていく。

良子「……でも攻撃してきたことによってあなたたちがいるコースがわかりましたよ」

桃子「…………」

良子「そこにいるのでしょう?あとはウォーキングスピードを考慮して…」

全裸初美「ほらほらー」

良子「む?」

襦袢初美「そんな子たちよりも…」

緋袴初美「私の方を…」

ニーソ初美「ちゃあんと」

股間絆創膏初美「見てほしいですよー」


良子「あ……また……」

桃子のステルスの効果を最大限に発揮させている要因がこれだ。

ゆみたちの注目度が上がってしまえばステルスは弱まる。

しかし〔初美脱衣祭り(はつみだついまつり)〕によって良子の視線は強制的に初美の元へ誘われ、ステルスは再び強化される。

良子「卑怯な……私は正々堂々とバトルを希望するデス!」

白望《……そんなあなたはどんなカプが好き?》

そしてその隙を突く小瀬川白望。

良子「カプ……それは……純情な2人の清純なやりとり…………!」ハッ!

これもまた強制的にカプを引き出される。

白望《でも、そんな2人が激しく求め合うのもいい……》

良子「ち、違います。あくまでもプラトニックな…」

白望《プラトニックだからこそ、乱れた様がよく映える》

良子「あぁ……確かに…………」

白望《〔 カ ッ プ リ ン グ 迷 い 家 ( マ ヨ ヒ ガ )〕》

良子「うぅ……でも…………私は………絶対……プラトニック!」バチィ!

白望「!」

良子「はぁ……はぁ……」

白望(……また破られた)

さすが良子と言うべきか、〔リリース(Lilys×Release×Wreath)〕を使用した白望の力を以てしても完全にカプ迷路に閉じ込めることはできない。

しかし確実に消耗させ、ダメージを与えていく。

白望(でも……何度も仕掛ければいずれ効くはず)

咏「ぅおあ!?」ピキ..

エイスリン「デキタ♪」

458兵たち「わ」ピキ..

咏「え?あ?ちょっと……」フラフラ..

458兵たち「み、三尋木プロ……体が……勝手に」

咏「へ?わああ!?」

今回エイスリンの描いた夢は、身長が高めの458兵たちに顔中を舐められる咏。

体を押さえつけられ、味方であり部下であるはずの子たちに好き勝手にペロペロされるなんて………………悔しい……でも感じちゃう。

エイスリン「♪♪♪」

夢が叶ったエイスリンは満面の笑み。

対象的に咏は頬を赤らめて屈辱の表情。

咏に群がる高身長458兵たち。その絵はとても背徳的。

これはもしかしてとカメラを引くと……ほうらやっぱり塞が見てる。スケベな顔して臼沢見てる。


一方、穏乃と憧はプロたちから少し離れ、458兵たちが密集している位置にいた。

数で圧倒されながらも、周りの仲間と協力して戦っている。

458兵たち「くっ……」

憧「しず、お願い!ナンバー3で!」

穏乃「う、うん……///」

憧が〔野しず。をプロデュース〕を発動させようと穏乃に目配せし、声をかける。

その合図を受け、穏乃は憧の願望を具現化させようと動く。

穏乃「…………///」スッ..

『両手を自分の胸へ置き、

円を描くよにマッサージ。

大きくなあれ、と呟いて。

そしたらなんとも気持ちがいい。

触る目的が変わるかも?

次第にスイッチ入ったら、

ほらほら女の顔になる。』 作/新子 憧

穏乃「ん……っ///」モジッ..

憧「」クワッ!!

憧「〔 野 し ず 。 を プ ロ デ ュ ー ス 〕!!」シズズズズ!

458兵たち「あっあっ……そ、んな……タマリマセンワー!!」

憧「しずの可愛さを思い知ったみたいね」ファサッ..

穏乃「うぅ……恥ずかしい……///」

咲「ぅわ、すごい……みんな強いよ!」ワァ

咲(プロの人たち相手に一歩も引いてない。ううん、それどころか押してるよぉ)

咲「…………」チラ

豊音「むむむ……これは『何切る』の問題に使えそうな場面だよー」ピコピコ

透華「そこは1筒ではありませんこと?」

一「えー?ボクなら2索だけどなぁ」

久美子「私もー!」

煌「くっ……」

煌(守られることに慣れてリラックスしている龍門渕さんたち……すばらです!それでこそお嬢様!)

憩「ずず……お茶が美味しいなぁ」

トシ「美味しいからお茶って呼ぶのさ。これ豆知識」

咲(あそこの人たちは雑談しかしてないけど……)

照「……本当にみんな強いね」

咲「あ、お姉ちゃん」

照「今がチャンスだよ咲。みんながプロの人たちを抑えているうちに校舎の中に逃げ込もう」

咲「……え?」

照「そうすれば安全だから」

咲「で、でもみんな戦ってるのに……」


照「私は咲が心配だから」

咲「……………」

咲(心配してくれるのは嬉しいけど……)

??「咲!!」

咲「え?」

照「…………」

咲「お、お姉ちゃん!?いつの間にそんな遠くに!?」

照(遠)「そいつは偽物の私!逃げて!」タタタ

咲「えっ……」チラ

照(近)「…………」

咲「…………」チラ

照(遠)「早く!逃げて!」タタタ

咲「そんな……お姉ちゃんが2人……?」

咲(お姉ちゃんが双子だったら一粒で二度美味しいけど……そんなことはありえない。ということは誰かの能力?)

照(遠)「咲!!」

咲(最初に話しかけてくれたお姉ちゃんと、そのお姉ちゃんは偽物だと叫ぶお姉ちゃん。きっとどちらかが偽物……だとしたら……)チラ

照(近)「咲……行こう」グイッ

咲「や、やめて……!」

照(遠)「『あいたま』、『マミ×まどか』、セット!」シュバ

咲「!」

照(遠)「はあっ!」ブンッ!

ギュルルルル!

照(近)「…………ぁ」

ボシュゥ..

咲「!お姉ちゃんが消えた……」

照(遠)「はぁ……はぁ……危なかった……」ホッ

咲(近くにいたお姉ちゃんが偽物だったんだ……)

咲(……でもそうだよね。お姉ちゃんなら、みんなを追いて逃げようなんて言うわけないもん!)

照「咲、大丈夫?」

咲「うん!お姉ちゃん!ありがとう!」

照「ん。じゃあ行こう」

咲「うん!」

照「GRAND M@STERのところへ」

咲「…………え?」

458兵たち「捕まえたっ!」ガシッ!

咲「え?え?」

咲(敵が……!いつの間に近くに!?)

照「…………残念だったねぃ」

咲「!!」


ボフン..

咏「どっちも偽物だったりして」

咲「あ……あ……」

咲(そんな……この人はあっちでエイスリンさんに操られて部下に舐められて快感を得てるはずじゃ……)

咏「あっちも偽物かも知れんし」パタパタ

照「咲!!」

咲「!」

咏「今、遠くから呼んだのが本物のお姉ちゃん…だったりするかもしないかも」クスッ

咲「そんな……」

咲(お姉ちゃんの可愛さをあそこまで完コピできるなんて…………いい時代になったよぉ……)ホワァ..

咲(って……そんなこと考えてる場合じゃなかった!)

咏「ごめんね?ちょっと付き合ってもらうから」

シャン..シャン..

咲「ぁ……」

咲(頭の中に鈴の音が……響いて……)

照1「咲」

照2「私と」

照3「一緒に」

照4「行こう?」

咲(ぁ……お姉ちゃんがいっぱい……お祭りだぁ……)

咏「さあ、疲れたっしょ?少し休むといいよ。お姉ちゃんたちが抱っこしたまま連れてってくれるってさ」

咲「うん……ありがとう……」

照まみれになった咲は、恍惚とした表情を浮かべながら458兵たちに連れていかれてしまった。

照「咲っ!」ダッ!

咏「ごめんね?別に妹ちゃんが嫌がることはしないからさ」

照「そんなこと信じられない……っ!」

照(きっと大勢で裸にひん剥いた咲を囲んで、いやらしいことをする気なんだ!)

照(そして私の写真を見せつけながら色んなところを触って……『お姉ちゃんごめんなさい。私もう……』を言わせるつもりだ)

照(もし仮に健全な方面だとしても、豊胸グッズを売りつけてお小遣いを巻き上げる気かも…………私と同じ轍を踏ませるわけにはいかない!)

照「……そんなひどいことさせないから!!」

咏「どんなことを想像してるんだろうねぃ?」

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!》ギュロォォォォ!!

咏「おっと」

照《『アカイイト』、『トオル×るんちゃん…》ハッ!

咏「あっはは。冷静さを欠いた~。『ん』が付いた場合は攻撃失敗になるのかねぃ?しらんけど」ニヤリ

照「………×ユー子!』、セット!」

咏「えっ!?続くのかい!?ずるくね?」

確かにずるいが、照の中ではセーフである以上、しりとり続行が認められる。

照「はあっ!」ギュルルル!

咏「っと!あっぶね」サッ


照「…………」チッ..

咏「んーふふふ。威力はずば抜けてるけど……攻撃前にいちいち〔連続妄想(コークスクリュー)〕って宣言したらこっちも避ける準備ができるってやつだよ」

照「…………」

咏「まぁ……そうやって声に出すことが条件……だったりするのかもしらんけど」

照「っ……」

はやり「咏ちゃん、後ろ!」

咏「お?」

純代「〔 タ イ ム ス リ ッ プ 脱 糞 2 ( だ っ ぷ ん ト ゥ ー ザ フ ュ ー チ ャ ー ツ ー )〕!!」

最初から2。

照と対面する咏の横っ面をはたくように、1を飛ばした過去のう○ちと未来のう○ちがやってくる。

咏「やっべ……!」ガハァッ..

純代「…………」

咏「」フラ..ドサ...

過去と未来のう○ち妄想に挟まれ、今を生きる咏がフラりと倒れる。

う○ちがバンズ、咏が身に纏っている鮮やかな赤い着物がトマト。

これでスカトマトバーガーの完成(イメージ図)だ。

純代「これで1人……」

照「!深堀さん……すごい……」

照(不意打ちとはいえ、三尋木プロをやっつけた)

純代「宮永さん、早く妹さんを……ぐっ!?」フラッ..

照「えっ!?」

言い切る前に超巨体が真横に揺らぐ。

敵の攻撃であることは間違いない。純代がすぐさまそちらへ目を向けると、

咏「久しぶり」ニマー

純代「!」

倒したはずのロリプロ雀士が立っていた。

咏「君が倒したのは偽物だったりして♪何度もごめんねぃ」

純代「…………」

純代(じゃあ目の前にいるこの人が本物?いや、それもわからない)

照「…………」

はやり「ねーねー咏ちゃん」

咏「はい?」

はやり「そろそろはやりたち…………本気出していいかなー?」

照「!?」

霞「な……」

小蒔「ええと……できれば出さないでもらえるとありがたいです」ペコリ

良子「……タイム稼ぎ疲れました」

白望「時間稼ぎ?それじゃ……」

ゆみ「今までは……」

桃子「手を抜いていたっすか……」


エイスリン「エー……」

理沙「手加減疲れる!」

怜「……笑えんわ……」

全裸初美「………ほんとですよー」

塞「ふぇへ……へへへ……」ジィー..

竜華「そんな……」

貴子「ことが……ァァッ」

雅枝「手加減してあの強さやと……?めっちゃすごいやん。さすがはやりちゃん」

洋榎「おかんは知らんかったんかい」

咏「んー……そうっすねぃ。咲ちゃんは連れて行ったし……」

照(はっ!そうだ!咲を助けないと)

咏「じゃあ本気で戦うということで」

宣言と共にバサッと扇子を広げる。

その音と動作をきっかけに、戦場の空気がガラリと変わる。

はやり「はやー☆」

小蒔「あ……ダメージが治って……ピンピンしちゃってきてます!」

霞「そんな……小蒔ちゃんの攻撃を受けて致命傷なはず……!」

はやり「ごめんネ☆はやりはー、ファンのみんながはやりを応援してくれるとー、元気になるんだゾ☆」

小蒔「あ、その気持ちはわかります」ニコリ

霞「小蒔ちゃん。わかってる場合じゃないわ」

小蒔「えっ?でもいいことを言っていますよ?私たちのインターハイ出場が決まった時、皆さんが応援…」

霞「とにかく!離れましょう!〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕」ポヨォォォ..

はやり「ふふふ」タタタ

ボフッ..

霞(えっ!?避けずに突っ込んで真正面から受けた!?)

はやり「はやー」ニコリ

霞「そんな……!?」

はやり「残念だけど、本気出した私にはこんなの効かないよっ☆ファンのみんなが肩代わりしてくれるから☆」

〔はやりファンクラブ〕。

それはファンを背負う牌のお姉さんである瑞原はやりならではの能力。

『はやりの受けた攻撃をファンが分散して肩代わりする』というもの。

威力は今現在はやりで百合妄想しているファンクラブ会員の数だけ軽減される。今回の場合はコンマ数秒だけおっぱいの感触を味わう程度になった。

霞(しまったわ!避けると想定していた分、反応が遅れて……)

小蒔「霞ちゃん危ない!〔 天 叢 雲 剣 ( あ め の む ら く も の つ る ぎ )〕!」

はやり「うふっ☆」

防御力を奪う〔天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)〕も避けずに受けるはやり。

この攻撃に対してもはやりは大した影響を受けていない。

結果的には、ファンがそれぞれうっかりしやすくなっただけ。


はやり「君たちもはやりのファンになってもらおうかなー☆」スッ

霞(まずいわ!これは愛宕さんのお母さんが受けた……〔HA・YA・YA LOVESONG☆〕!)

またの名を『ファンクラブ強制加入』。

はやり「いっくよー☆HA・YA……」ピクッ!

霞「?」

はやり「う……?は、やー……」グググ

息がとまるくらいの甘いくちづけをするどころか、動きがとまるはやり。

霞「これは…………あ?」ピキ..

エイスリン「デキタ♪」ジャジャーン!

小蒔「わぁ……お上手です!もっと近くで見てみたい……」ホワァ..

はやり「はや……や?」フラー..

霞「う……ぁ……」フラー

小蒔「あれ?霞ちゃん?」

霞(そんな……小蒔ちゃんの前で……)

霞とはやり。巫女とアイドル。

2人はフラフラ近付いていき、抱き合って胸を密着させた。

霞・はやり「!!」

エイスリン「ブリリアント!シャドウワーカー!」ワー!

そしてそのまま体を揺らして乳を荒波の如く泳がす。

霞「…………」モニュムユ..

はやり「…………」ピョヴム..

霞(これは……どうリアクションしたらいいか困るわね。でも助けられたことも事実……)

小蒔「おしくらまんじゅうですか……懐かしいです」

エイスリン「イイネ!」

ご満悦の天使。しかしそこに忍び寄る影。ポンポン、と肩を叩かれる感触。

エイスリン「?」

白望「エイスリン……」

エイスリン「シロ?」

白望「もう少し後ろにいた方がいい……エイスリンの能力ならある程度離れてても使えるし。ここは危険」

エイスリン「ソウ?アリガト♪」ニコー

白望「別に……」

エイスリン「ジャア……アレ?」

白望「どうしたの?」

エイスリン「……ボード……ナイ……!」

エイスリンの命ともいえるイラストボード。

つい先ほどまであったはずが、慌てて辺りを探すも見当たらない。

エイスリン「ドウシテ……シロ、ミナカッタ?」

白望「…………」

涙目の天使が白望に視線を向けるも、白望は無言で見つめ返すだけ。


エイスリン「シロ……?ア……」

どうして何も言ってくれないのか、可愛く疑問に思っていたエイスリンの視線がふと白望の右手に向く。

そこには天使ご用達のイラストボードが握られている。

エイスリン「シロ、アリガト!」ニパァア

白望「…………」

エイスリン「??」

塞「エイスリン!それはシロじゃない!」

エイスリン「エ……」

塞の言葉にキュートな耳を疑い、改めて白望を見てみると……

雅枝「アホンダラァ!」

エイスリン「ヒィ!」ブン!

突然の関西弁とおばはん。

そして紙一重の差で触れずに通過した鎌。

あまりの驚きに顔がひきつる。

それはそうだろう。白望だと思ったら雅枝。

いきなり10以上の加齢。脳が展開に追いつかない。でもそんなエイスリンは可愛い。

雅枝「ちっ!運がええな」

エイスリン「アウアウアウ……」オロオロ

塞「やっぱり幻だったわね。思ったとおりだわ。うちのシロがそんなにアクティブなわけがない。」

白望「…………いや、私も一応458兵と戦ってるんだけど……」

貴子「待てェ!」

雅枝「振り切った思たのにしつこいわ……ま、ええか。エイスリンのボードは458兵が持ってったし」

エイスリン「ウゥ……」

雅枝「残念やったな。けど安心せえ、どうせお前らは負けるんや。これで諦めがつくっちゅうもんやろ」タタタ

貴子「逃がすかァァッ!」

エイスリン「………………ウフ」


エイスリン(ケイカクドオリ!)

エイスリン(タカカモシズノ ニ ボード ヲ トラレテカラ、ヨビ ヲ ヨウイスルヨウ ニ シタ!ヤツ ガ モッテイッタ ノハ ニセ ノ ボード……ジャナイケド、ヨビノボード!モウイッコアルヨ!)ニヤリ!

エイスリン「コノバッグ ニ……」ゴソゴソ..

エイスリン「………………?」

エイスリン「…………!……!」ゴソゴソゴソ..

エイスリン「………………ナイ」

雅枝「あ、そや。そのバッグの中に入っとったもう1個のも貰といたから」

エイスリン「エ」

エイスリン「………………ケイカク……」

エイスリン「…………シッパイ……」グス

エイスリン「グス…………ウゥ……」

親エイ隊Aたち「エイ様を泣かせるなんて……許せない!みんな!ボードを取り返すわよ!」タタッ!

親エイ隊Bたち「私も……」

白望「待って。半分はエイスリンを守るために残って」

親エイ隊Bたち「プロデューサー……わかりました!全てはエイ様のために!」

貴子「コラァァァッ!!!!」

親エイ隊Bたち「ひいぃ!?」ビクッ!

貴子「頼んだぞ!」

親エイ隊Bたち「あ、は、はい……」

親エイ隊Bたち「………………」

親エイ隊Bたち(え?私たちどうして怒鳴られたんだろう?)


【地下エリア 総司令室】

健夜「ふふ……相変わらずすごいなぁ、咏ちゃんの能力は」

ハギヨシ「………………」

健夜「こうして画面越しだと何もないように見えるだろうけど、咏ちゃんの能力は実際に味わってみないとその本当の怖さがわからない……」

健夜「〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕。飄々として掴みどころのない咏ちゃんらしい能力だよね」

〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕。

幻を作り出す能力。幻として浮かぶ映像や人物は、能力をかけられた対象が勝手に描くもの。

ある程度の方向性――何を目的として行動するか――だけを決定し、あとはオートパイロット(自動操縦)になる。

咏が自身で全ての行動をコントロールすることも可能。その場合は当然、咏が知らないことを幻に喋らせることはできない。

操れる幻の数や量、大きさは、咏からの距離や力の残量に影響される。

複数の人間(幻)を生み出した場合、その人間の視界の映像が咏の脳内に映る。つまり複数台のテレビ画面の前にいるようなものである。

健夜「あの4人を相手にして勝てる人間なんていない。ふふ……安心してみていられるね」

ハギヨシ「GRAND M@STERは戦闘に参加されないのですか?」

健夜「うん。だって……」

健夜「私が出る前に決着がつくだろうから」


【地上 儚可憐学院 校庭】

良子「…………」ゴゴゴゴゴ...

怜「な、なんやねんこれ……!」

竜華「……ビームが……出えへん……?」

初美「ふ、服を脱げないですよー!?体が……拒否しますー」グググ..

塞「そんな……幼女にできないなんて……天変地異!?」

良子「ノンノンノン。それだけユーたちがただれた思考をしているというだけですー」

塞「心外よ!私は心から未成熟な子を愛してるだけ!やましい気持ちなんてないわ!」

初美・怜・竜華「…………」ジトー..

塞「な、何よ?って……ジト目のはつみたんかわいい……///」

良子「単ピュアにアウトですー。私の〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕の前では、ヤラシイことは無意味…」

塞「だから純粋なお触りなのに……」

怜「っ……せやから私たちの愛の営み部分が関わる〔怜と竜華の日常(バカップルデイズ)〕が使えへんのか……」

良子「その通り。私の信条は『グッドヴァージン』ですー」フフン

〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕。

CERO(Computer Entertainment Rating Organization)とは、

通常、家庭用ゲームソフトの年齢別レーティングを表示する制度である。

その制度を見て『ナイス』や『グッド』と思った良子は、これを自らの能力へと反映させた。

戒能良子のCEROは、Conjecture Entertainment Rating Organizationの略。※Conjecture・・・(推測)

女の子同士のやりとりからエンターテインメント(百合関係)性が高まるよう推測するという行動を審査。

良子の座右の銘であるグッドヴァージン(処女のように、初めてのように)の影響から、

18禁行為はもちろん、パンチラ、淫語、牛の乳をいやらしく揉むなど、全てがCERO Y(良子がイヤラシイと認めるもの対象)となり、でっかい無効。

この能力の範囲内では、矢吹健太朗も桂正和も過ごしづらくなるだろう。

ちなみにこのCERO Yの内容は良子の本心、本能によって自動的に決められるため、

本人が好き勝手に操作をすることはできない(価値観の変化などによって基準の変動はある)。

怜「キス……くっ……あかん。キスすら妄想でけへん」

竜華「な、なんてピュアなんや……その考えはちょっと素敵やけど……」

初美「健康にもいいんだから全裸は認めてほしいですよー……」

塞「うぅ……どうして両脇を抱えて高い高いがダメなのよ!少しくらいパンツが見えたって……不可抗力なのに……」

良子「今のアースのワールドは刺激的すぎる……視線を交わすだけでドキドキが止まらない。交換日記をすることがドリーム……そんな時代に戻るべきです」

竜華「あ、それもええなー?」

怜「……いやや。竜華に触れたい」

竜華「怜……///」

怜「大体、膝枕すらNGてどんだけお堅いねん」ムスー

塞「本当よ。太ももの間に手を挟むくらいいいじゃないのよ。確かに手に唾を付けてからっていうのは少しアレかもだけど……」

怜「あんたは少し休息が必要みたいやな」

塞「なんでよ」


ピュア思考を強要させる良子に、ときりゅうさえは成す術なく立ち尽くす。

そんな3人の姿を見た洋榎はすぐに助けに行こうとするも、理沙がそれを許さない。

洋榎「なんやねん!急に勢いづいて……」

理沙《ゆい×あず!》

洋榎「うぐ……っ」

洋榎(くそ……シンプルやけどこの短縮妄想は厄介やな………速度と手数が圧倒的や)

理沙《ゆい×あず!》

洋榎(しめた!同じカプでの連続攻撃は失敗やで!二度目はダメージを減らせる!ここで突っ込んで倒す!)タタッ!

ズン..

洋榎「へ……?」フラッ..

洋榎(な、なんやこれ……?さっき使ったゆい×あずやのに……威力が全然落ちひん?)

理沙《ゆい×あず!》

洋榎「ぐああ……あ!」

洋榎(またや……そんなん……ありえへんやろ!)ギロリ

理沙「」プム!

洋榎が信じられないのも無理はない。

いくら理沙のゆい×あず愛が並外れたものだったとしても、何度も受ければ耐性がつくためダメージは減らせる。

それは『慣れ』であり『新鮮味』だ。

何度観ても面白い物語はあるだろうし、繰り返し観ることで新たな発見をするかもしれないが、どうしたって新鮮味は薄れてしまう。

よって同じカプによる妄想攻撃は通常威力が落ちる。

では何故、理沙のゆい×あずの威力が変わらないのだろうか?

あ、どうやらそのことについて洋榎ちゃんが質問するようですよ?

洋榎「なんでゆい×あずだけでこんなに強いねん!」

理沙「…………」

洋榎「なあ!」

理沙「…………い」

洋榎「い?」

理沙「いっき!」

洋榎「いっき?…………あぁ、1期か」

理沙「次は2期!」

洋榎「あ……」

理沙「最後は劇場版!」

洋榎「……なるほどな……」

洋榎(そうか……普通は妄想内容で時系列がわかるけど、この人の場合は短縮されとるからか)

理沙「……ふぅ」

洋榎(……何を『いっぱい喋ったなあ』みたいな満足感出してんねん……可愛いやないか)

理沙「…………」

洋榎(けど、からくりがわかった以上、もうゆい×あずはないから安心やな)フゥ


理沙《……ゆ》

洋榎「む?」

理沙《ゆい×あず!》プムァァ..

洋榎「痛ぅ……!な、なんでやねん!もう他には……」

理沙《かきふらい先生版》

洋榎「原作か!」

理沙《ゆい×あず!ゆい×あず!》

洋榎「ぅおおおお……!?」

理沙《アニメイトの手ぬぐい!木札根付!!》

留まることを知らないゆい×あずの嵐。

反撃どころか耐えるのがやっとという有様だ。

怜たちに続いて、成す術もなくパート2である。

久「愛宕さん!」ポヨォォォ!

理沙「!」プム

そんな洋榎を、久が〔無数の絆(フラグメーカー)〕で霞の〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕を使い、おっぱいの感触を飛ばして助ける。

洋榎「お前は……嫁……」

久「嫁じゃないわよぅ。もう……」クス

洋榎「…………」

久「?」

竹井久。

黒タイツで髪を束ねてうなじを強調し、本気を出すと腕まくりをして華奢な腕を露出。

そして温泉で全裸のまま部員たちの方を振り返った経歴をもつ長野在住の清澄高校麻雀部部長、学生議会長。

魅力いっぱいの彼女をじいっと眺める洋榎。

洋榎(……やっぱこいつええ女やなぁ)ニヤリ

久「え、なんで笑うの?」

洋榎「そらお前、嫁の良さを再確認でき…」

理沙《洋×久!》プムァァ..

洋榎「いっ!?」

久「ええっ!?」

理沙《2人、付き合ってる!》

久「つ、付き合ってないわよ!」

洋榎「それ以前に、もともとうちの嫁や!」

久「ちがーう!っていうか、変に妄想させる材料与えないでよ!ただでさえ押されてるんだから!」

洋榎「う……けどお前が来てくれたように、こっちも協力して戦えるんやからええやんけ!相手は4人やし」

理沙《久×洋!》ムプーン!

久「確かにそれは…………って、愛宕さん危ない!後ろ!」

洋榎「え?」クルッ

雅枝「…………」


洋榎「おかん!?って、鎌が!ぅおっと!」サッ

雅枝「……避けよったか…………む」

貴子「キシャー!!」

雅枝「このガキ……」タタタ!

洋榎「……向こう行ったか……にしても危なかった……助かったわ。ありがとな」

久「ううん、いいの。それよりも……今晩はどうする?」

洋榎「え?」

久「ご飯にする?お風呂にする?それとも…………私?」モジモジ

洋榎「お前や」

久「ぁ……///」

洋榎「お前っちゅう大海原へ船出や。どんな荒波もうちが乗り越えてみせるし、黄金卿へ連れてったる。せやから少々アブノーマルやったとしても怒り(錨)は沈めてや?なんてなぁ」ニヤリ

久「…………何言ってるんだい?」

洋榎「うまいことや」

久「真顔で言うとはねぃ」

洋榎「…………ん?その口調、なんか……」

久「ごめんねぃ。嫁じゃなくて」

洋榎「!三尋木プロか!?」

ボフン!

咏「その通り」

洋榎「せやったら嫁で合うてるやん」

咏「いや、しらんし。嫁になった覚えないんだけど」

洋榎「ふん。どちらにせよ嫁……え?」

咏「あ、そだ。隙だらけだったから仕掛けさせてもらったよ?」

洋榎(なんやこれ……めっちゃ色んな妄想が押し寄せてきて……ぐ……あかん……きっつい)ガクガク..

今洋榎が苦しんでいるのは、咏による攻撃によるものだ。

〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕によって洋榎が幻を見せられている間、咏が洋榎に妄想をぶつける。

普通ならその都度ダメージを受けるはずだが、〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕の影響下にいる場合は違う。ぶつけられた妄想は蓄積される。

そして自力であれ咏によるものであれ、幻から解放された瞬間に、溜まった妄想がまとめて襲い掛かる。

カプ追求型や18禁型など様々なジャンルの妄想が一気に脳内を駆け巡る衝撃は相当のものだ。

夏休みの宿題と同様、溜まったものは脅威と相場が決まってる―――

洋榎「ぅあ……あ……ぁ……」

咏「んーふ♪とどめとか刺しちゃおうかいねぃ」パタタ

ギュルルル...

咏「!っと……」サッ!

照「…………咲をどこに連れて行ったの」

咏「ふふ。だから、私を倒したら教えてあげるかも知れんし?」ニヤリ

照「っ!」キッ

咏「おー、怖い怖い。〔姉妹の愛(シスターラブ)〕発動してっから威力がやばくね?あっはは」ケラケラ

雅枝「……くそ……もう逃げ回るのはやめや。めっちゃしんどい」ゼェゼェハァハァ


貴子「………………」

雅枝「こんなことならロングブレスダイエットをもっとちゃんとやっとくべきやったわ」ハァ..ハァ..

貴子(妙ァァッだな…………鎌のスピードも鈍い上に、ジャブ代わりの妄想の威力も大したことねェ。一体何を考えてやがるこのうすらロン毛は……)

雅枝「…ワンダーコアも買ってから使ってへんかったしな……帰ったらやろ」

貴子(〔リリース(Lilys×Release)〕を使わねェでしんどいとか意味わかんねェ…………使わない手はねェだろうが。使えないならともかくよぉ)

貴子「…………ん?」

貴子(使えない……?いや、そんなはずは…………けどもしかしたら…………よし、物は試しだ。聞いてやるァァッ!!)

雅枝「いや、バランスボールが先か。それとも二の腕プルプルさせるイカの足みたいなやつで……」

貴子「愛宕さんァァッ!どうして〔リリース(Lilys×Release)〕を使わねェんすか!」

雅枝「…………んぁ?なんやそれ」

貴子(!これは……この女、マジで〔リリース(Lilys×Release)〕を会得してねェのか!?遅れてるぅ!)

雅枝「なんかどっかで聞いたことあるような……」

貴子「ふ……ふふふ……」

雅枝「んぁ?」

貴子(そうか……手を抜いてたんじゃなかったんだなァ。つまり……私の方が圧倒的強者だということだァァッ!!)ギラッ

雅枝「おい。何笑てんねん」

貴子「うるせェァァッ!!」

雅枝「て、てめェ……誰に口利いてんねんコラァ!」

貴子「お前やオバハン!関西圏!」

雅枝「……な、んやと……久保……お前……」

貴子「戦場では年上は関係ない!しかも敵ならなァァッ!〔リリース(Lilys×Release)〕を使えないオバハンは弱者!だからタメ語だァァッ!!!」

雅枝「このボケ……何をわけわからんこと言うて…………あ……そういえば洋榎が〔リリース(Lilys×Release)〕がどうとか言うてたな」

貴子「♪オ~ォ~バ~ァ~ハ~ン~ン~……シ~ミ~に~ぃい、小~じ~わ~に~」

君が代のオバハンバージョンを披露して雅枝を煽る貴子。

しかし過去の出来事思い出し中の雅枝は、うっすら聞こえる歌詞に苛立ちを見せるものの、動かない。

貴子「♪カ~カ~ト~、ヒ~ビ~が~」

雅枝「洋榎は言うてたんは…………こんな感じで……」

貴子「♪岩~と~同~じで~~」

雅枝「〔リリース(Lilys×Release)〕」シュゥゥゥウゥゥウゥ..

貴子「!?」

雅枝「おぉお……これが〔リリース(Lilys×Release)〕か?はは、めっちゃパワーアップやん」

貴子(なにぃぃっ!?あっという間に会得しやがった!しかも覚えたてのくせに私より強力じゃねェか!?)

雅枝「これで形勢逆転やな」ジロリ

貴子「…………」

貴子(やべェ……調子に乗って君が代なんて歌っちまったが、今やこっちが狩られる側だ……)


雅枝「色々言うてくれたなぁ。オバハンとか関西圏とか」

貴子「…………本当にすいませんでした!」ペコリ!

雅枝「…………」

貴子「愛宕さんを尊敬しすぎるあまり、敬語がオーバーフローして……逆にタメ語になってしまいましたァァッ!」

雅枝「小じわとか歌ってたなぁ」

貴子「は、はい!愛宕さんの美肌ケアを心配する気持ちをロック風に表現したら言葉遣いが乱暴に………今後は音楽性を改めます!!」

雅枝「カカトにヒビ……」

貴子「…………」

雅枝「…………」

貴子「……あ、あの」

雅枝「なんや」

貴子「……今のは全部深堀に『言え』と命令されてたんです」

雅枝「嘘つけ。なんで生徒の命令聞くねん」

貴子(深堀の野郎……こんな時は役に立てコラァァッ!!)ギリ..

雅枝「……まぁええわ」

貴子「!ありがとうございます!!」ペコリ!

雅枝「どちらにせよ、お前はしばく」

貴子「ええっ!?話が違うじゃないっすか!」

雅枝「しばく。うちを舐めたガキはしばく」

貴子(なんて大人気ねェ……とにかく弱者じゃなくなったこの女には威張れねェ!逃げる!)タタッ!

雅枝「待てコラァァ!!!」ダダダ

穏乃「……あわわ……」

戦場の中、憧の制服を着ている穏乃はプルプルと震えている。

それはチームメイトの松実宥に対するオマージュやリスペクトではなく、普通に震えている。

周りで行われている激しい戦いに気圧されているのだ。

穏乃「ど、どうしよう……?憧ぉ……」チラ

憧「〔 野 し ず 。 を プ ロ デ ュ ー ス 〕」シズズズズ!

458兵たち「はぁああ!じゃ、じゃあ……今1人で立っている穏乃ちゃんのあそこには…………アレが入って……?」

憧「そう考えてもらって結構よ」

458兵たち「なんてエッチな…………あふぅ……」バタ

憧「よし……」

穏乃「……憧も頑張ってる……それなのに私は……」

トシ「どうしたんだい辛気臭い顔して」ズルズル..

穏乃「あ、確か赤土先生の知り合いのラーメンの人……」

トシ「赤土先生の~よりもラーメンを先にするべきさ。優先順位は間違えちゃいけないよ」

穏乃「え?あ、はい……ラーメンの、赤土先生の知り合いの人……」

トシ「日本語が変さ。勉強してるかい?」

穏乃「で、でも、今……先にって」

トシ「まぁいい。それより、こんなところで立っててもしょうがないだろう?麺も伸びるし」フーフー..ズルズル


穏乃「あ……」

トシ「あなたの能力のことは聞いてる。相手の能力を完全に無効化できるなんてかなり強力だ。ここはあなたの力が必要な場面だよ」

穏乃「…………」

トシ「さしあたって……幹部たちの能力を封じながら味方をサポートしてもらえないかい?そうすれば多少有利さ」

穏乃「…………」

トシ「ん?どうしたんだい?辛気臭い顔を続行してるじゃないか。あなたの力が必要とされてるんだよ?」ズルズル..コホッ!コホッ!

穏乃「…………あ、あの……実は…………私、その能力……使えない……んです……」

トシ「それはどうしてだい?確か条件は……ええと……なんだったかねぇ」

穏乃「あ、す、すみません。条件のことはともかくですね…」

トシ「ああ、そうだ。1週間オナ禁することだったね」

穏乃「!ちょ……あの……声に出さないで…」

トシ「ん?ということは、能力が使えないイコール…………………ここ最近オ○ニーしたってのかい!!!!!!!!!!?????」

ってのかい!!!

…のかい!

…かい!

かい……

い……

穏乃「ぁぅぁ……ぅぅ////」

シィィィーーーン.....

ネギを飛ばしながらの怒鳴り声が木霊し、戦場が静まり返る。

トシ「……高鴨さん」

穏乃「ぁ……は、はい……///」

トシ「あなたが能力を使えるかどうかは、この戦いの行方を左右するんだ」

穏乃「はい……」

トシ「だから正直に答えて。高鴨さん、あなたは……オ○ニーをしたのかい?」

穏乃「そっ……そんな質問……/////」

トシ「絶対答えてもらうのさ」

穏乃「う、うぅ……///」

シィィィーーーン....

穏乃(な、なんで静まり返るの!?さっきまで『オラァ』とか『うっうー』とか騒いでたのに!)

トシ「………………」

トシが手に持っていたカップラーメンをゆっくりと床に置く。100%の状態で穏乃の答えを聞くためだ。

そのためなら、麺が伸びようとも構わないという姿勢である。

この『トシ’s カップラーメン床置き』を見た白望、塞、エイスリン、宮守軍の全員が驚く。

何故なら、トシは麺が伸びることを最も嫌う人間だからだ。

過去、麺を伸ばしたくないあまり、重要書類に全く目を通さずにサインしたことが何度かあり、結果マジ泣きする地獄を見ているほど。

そんなトシが容器を置いた。

これはつまり、オ○ニー告白関と書類内容確認関が相撲をとったなら、オ○ニー告白関が白星だということ。決まり手とかは知らない。


穏乃「ぁ……ぅ……その……」オロオロ

穏乃(あ、憧ぉ……助けてよぉ……)チラ

憧「…………」

穏乃の視線は憧の横顔に弾かれた。

穏乃(憧……ぉ……)

憧「…………」

見つめ続けるも、憧は気付かない…………いや、気付いていないように見せていた。

『オ○ニー告白かも?パート』が始まってから全く穏乃を見ず、ひたすら耳に全神経を集中させていたのだ。

仮に今の憧をモデルに油絵を描くとしたら、耳から描き始めるだろう。

はやり「…………」

咏「…………」

理沙「…………」

良子「…………」

それは458プロの幹部たちも同様。

誰もが戦うことをやめ、穏乃の返事を待っていた。

その中には、咲を連れていかれて怒り心頭だった照も含まれている。

穏乃の告白を聞くために、全ての感情を押さえ、ただひたすら耳を澄ます。

羞恥に耐えながら恥ずかしい告白をしようとする女子高生を無視することは誰にもできないのである。

穏乃「ぅう……」

トシ「チェックメイトさ。言うまでみんな待つよ」

穏乃「憧……」チラ

最後にもう一度幼馴染をチラ見するも、

憧「…………」

マネキンよろしくポーズ固定。望みはない。

穏乃「うぅうぅ……////」

トシ「さ。もう気が済んだろう?早く言いなさい。大人は時間がないんだよ」

穏乃「…………わかり、ました///」

トシ「よしきた。どうぞ」

穏乃「は、はい…………私は……実は……その……数日前に……」

塞「ちょっと待って」ザッ

穏乃「え?」

トシ「A New Warriorなんだよ」

塞「もっとちゃんとした方がいいと思うのよ。そうね……まず『私、高鴨穏乃は』ってちゃんと名乗ったほうがいいと思う」

穏乃「っ……///」

トシ「採用」

塞「ありがとうございます」

トシ「というわけさ。もう一度」

穏乃「うぅ…………あ、あの……わ、私、高鴨穏乃は……///」


穏乃「その………………あ、アレを……///」

待った!

トシ「その場面、まやかしは不要なんだよ」

塞「正式名称を言うべきね。あ、できれば舌足らずな感じでお願い」

穏乃「そんな……///」

トシ「さ、もう一度」

穏乃「………………わ、私、高鴨穏乃は…………その…………お、オ○ニーを…………し、してしまいました////」

恥ずかしさと緊張からか、俯き加減でスカートの裾を握っては離す行為を繰り返しながら告白する。

エイスリン「キュート……」

穏乃「ぅぅ……///」

塞「んー……もう少し鼻にかかったような声の方がいいけど……ま、いいか」

1000人を超える人前でのオ○ニー告白を終え、穏乃は顔を真っ赤にさせながら、ふぅと息をついた。

それを合図に皆が思い思いの感想を話し合う。

この瞬間、敵も味方も心が通った。

誰もが笑顔で穏乃の可愛さを称えたのだった。

そして夜が明けた……。りはせず、さらに……

トシ「おかずはなんだい?」

真実の探求者があらわれた。

穏乃「え、お、おかずって?」

トシ「何を想ってシタか。ま、誰を、とかどんな状況で、とか諸々さ」

穏乃「それは……い、言えな」

貴子「オラァ!!」

穏乃「ひぃっ!?」

貴子「てめェ……途中で降りるんじゃねェぞ!」

雅枝「せやな。ここでやめたら金返せレベルや」

穏乃「お、お金なんて……」

トシ「そう深く考えなくていいんだよ。ただ何を想って興奮したか言うだけさ」

穏乃「ううぅ……」

トシ「……大丈夫。みんなあなたのおかずを知りたいだけ。敵じゃないんだよ」

久美子「……たとえ、今は恥ずかしくても…………これを乗り越えた先には、きっと新しい光が待ってる」

穏乃「で、でも……///」

貴子「次に否定語が飛び出たら………………ハァン?」

穏乃「ぅ……」

トシ「およしよ。今言うから。さ、カウントダウンするよ。5、4、3……」

穏乃「え?え?」


貴子「ゼロになったら……ァァッ……」

穏乃「わ、わわっ……」アワワ

トシ「2、1……」

穏乃「あ、憧!!」

トシ「……あこ?」

憧「………………え?」

穏乃「ぁ………」ハッ

穏乃「~~~~~/////」カァァッァア...

トシ「カァァッァア...じゃないんだよ。説明求むだよ」

穏乃「ぇと……そ、の……あ、憧と…………その……くっついたりすること……想像して……触って……///」

はやり「はやー♪いいねー」

良子「…………」

咏「戒能ちゃん的にはNG?」

良子「…………私は何も聞いていないです」

はやり「黙認?」クス

良子「…………彼女ズを否定はしたくありまライン」

理沙「は、はれんち……///」ボソ...

憧「しず……?」

憧(しずが……あたしをおかずに……?あたしと同じ……)

憧「しずっ!」ダダッ!

穏乃「あこ……///」

憧「しず!しずっ!しずぅ!」ダキッ

穏乃「あ、憧ぉ……苦しいよぉ///」

憧「しず……」

穏乃「あ……」

チュ...

穏乃「憧……?」

憧「……ずっとこうしたかった……」

穏乃「…………」

憧「あたし、しずが好き……」

穏乃「憧……!」

憧「……こんな流れで告白とか……最低だし、信じられないだろうけど……」

トシ「うんうん、確かにそうだね」

憧「でもあたしは、ずっと前からしずが好きだったの」

トシ「なるほどね。ちなみにずっと前とはどれぐらいかを…………ん?裾を引く者がいるよ?」

塞「先生、さすがにここは邪魔せずに……」グイグイ

トシ「塞……そうだね。わかったよ。私はラーメン食べるさ」

塞「……結構伸びてますけど」

トシ「……チッ」


穏乃「そっか……ごめん、全然気付かなかった」

憧「うん……しず、鈍感だから」

穏乃「……私は……インハイが終わったあと、約束通り裸で一緒に寝た時から……かな」

憧「あ……」

穏乃「ベッドの中で思い出話とかしたよね?実はその時、話の内容よりも憧の匂いの方に気がいってて……」

憧「え?」

穏乃「ま、前に制服を交換した時にも感じたんだけど、憧ってすっげーいい匂いで……なんか……たまらないっていうか……」

憧「しず……///」

穏乃「そ、それで……だんだん憧ばかり目で追うようになったんだ……///」

憧「最近よく目が合うとは思ってたけど、あたしの気のせいじゃなかったんだ……」

穏乃「うん……///」

憧「あ、あの、さ……だったら……ええと……どう、かな?」

穏乃「どう、って?」

憧「…………あ、あたしはしずが好き。だから…………あたしと付き合ってください!」

穏乃「あ……」

憧「…………///」

穏乃「………///」

怜「…………そこで『オコトワリシマス!』や。ドカーンウケるで」ボソボソ

洋榎「ウケへんて。いい場面なんやから黙っとき」

穏乃「…………わ、私こそ……憧と恋人になりたい///」

憧「しず……っ!」

穏乃「憧……だいすき///」

煌「すばらっ!!」

豊音「ちょーおめでとうだよー!」

エイスリン「アコシズ コイビトルート!」

透華「……なんだか思い出しますわね」

一「…………何を?」

透華「そ、その…………私が……は、はじめに……///」

一「どうしたの透華?その先をちゃんと言ってよ」クスス

トシ「……伸びたラーメンは愛しずらいんだよ」ズルズル..

穏乃「憧……」

憧「しず……」

2人は再び抱き合い、キスをする。

そんな彼女たちを中心にゼクシィムードが広がった。

ついさっきまで戦いが繰り広げられていたとは思えないほど、空気は柔らかい。

そんな中、全く違う温度を纏った4人が現れた。


智葉「ようやく出番だというのに、なんだこの生温い空気は」

穏乃「?」

憧「あんたは……」

智葉「……そろそろ、互いの目的を思い出そうじゃないか」

髪を束ね、サラシを巻き、凛々しい表情でメガネの奥の目を光らせる智葉。

堂々としたその姿は姐さんと呼ぶにふさわしい。

成香「わ、私は……すてきな場面だと思い…ます」

明華「これが恋する高校生……勉強になります」

ダヴァン「オ?伸びたラーメン食べてマスね!」

トシ「不本意100%、熊倉トシさ」

ダヴァン「ラーメンは飲むモノ!早食いがスタンダード!」

トシ「ババアの胃をなめちゃいけないよ。下手するとコスモを吐くのさ」

ダヴァン「深い……ラーメンの可能性は無限。それはまるで宇宙…………マトを射てマス。詩人でスネ!」

トシ「詩的なババァ、岩手から来たよ」

智葉「これ以上話を反らすな。今すべきことは戦って決着をつけることだろう。小鍛治プロならそう言うはずだ」

458兵たち「GRAND M@STERなら……」ハッ!

智葉の指摘は正しかった。

憧しずによるASフィーバーによって戦場はほんわかとし、スタッフロール待ちの感じになっていた。

この場で戦士として存在しているのは、たった今やってきた智葉、ダヴァン、明華と、

やえ「………………」キュゥー..

人知れず負けて倒れていた王者のみ。

しかし、小鍛治健夜の名を出した瞬間、458プロ全体の空気が引き締まった。

それは健夜が年齢を考えてお肌の引き締めに尽力していることから連想されたわけではなく、健夜を尊敬している気持ちから呼び起こされるものであり、

彼女の想いに応えなければという意思だ。肌は関係ない。

458兵BT「そうよ……GRAND M@STERのために……戦わないと……」

段々とざわつきが広がり、少しずつ殺気立っていく458兵たち。

それに合わせて、幹部4人も気持ちを戦闘態勢に持っていく。

咏「さて……」

はやり「うん」

もはや憧しずイベントは終わりに近付いていると誰もがそう感じていた。

その時、

貴子「スキありーーーーーーっ!!!!!」

雅枝「んなっ!?」

パァァン..!

貴子が、戦闘を中断して憧しずを祝福していた雅枝の脳内キャラをビンタした。

貴子「はははははァァッ!あんたがよく妄想するキャラを全員まとめてビンタしてやったぜァァッ!」

雅枝「こ、いつ……シバきまわす!」

458兵たち「み、みんな!行くわよ!」


ワァァァアァ...!

不意打ちビンタを号砲に、再び戦が始まる。

智葉「そうこなくては」

成香「うぅ……」

ダヴァン「ごちそうさまでシタ」

明華「始まりですね」

智葉のメガネ、成香の涙目、ダヴァンのレンゲ、明華の傘の親骨がそれぞれキラリと光った。

智葉「っ!」ダッ!

照「!」

智葉「宮永……覚悟してもらおう!」

照「…………」

智紀《そこで滑って転んでケガをしたあなたは病院へ……》

智葉「ん?」

智紀《あなた好みの看護師さん……献身的で清楚でとても素敵な人。やがて付き合うことになった》

智葉(……ふん、なかなかいいじゃないか)

智紀《…………でもその人を婦長に寝取られた!!!》

智葉「っ!?」

智葉(これが沢村智紀の絶望か!なるほど……胃にくるものがある…………しかし!まだ生ぬるい!)

智葉「それならば私は、その看護師を婦長から寝取り返し、私を裏切ったことを後悔するほど徹底的に可愛がってやるとしよう!」

智紀「な……!」

智葉「本内っ!来い!」

成香「は、はいっ!」タタタッ!

智紀「?」

智紀(この人は……有珠山の先鋒、本内成香さん?)

成香「あ、あの……どうすれば……」

智葉「これを食べろ」スッ

成香「え?これ……コンビニのおにぎり……」

智葉「食べろ」

成香「?わかりました」

智紀(??)

成香「では……いただきます。あっ、それよりまずは袋を剥がしてからですね。よいしょ、よいしょ」ペリペリ..

成香「あっ……海苔がパラパラと落ちてしまいました……地面を汚したら大変です。ハンカチで拭きましょう……あっ」ポロ

成香「ハンカチを落としちゃいました……拾わないと……あ、それよりおにぎりはどうしましょう?地面に置くわけには……!そうだ、地面に落ちて広がったハンカチに乗せましょう」ポス

成香「……あっ……これだと海苔を拭けません……ハンカチ……もう1枚持ってきてたかな?」ゴソゴソ

智紀「…………」

成香「…………ないです……」

成香「………………どうしよう……おにぎりを先に食べちゃった方がいいのでしょうか?でも、海苔が飛んでっちゃったらお掃除が大変です……うぅ……」

智紀(そんなの気にしないで早く食べればいい)


成香「!ハンカチをスライドさせて海苔の上に敷いてからおにぎりを食べればいいのですね!」

智紀(……それでもいい。とにかく早く食べた方がいい)

成香「あ……でもハンカチの上におにぎりが載ってます……ころんと倒れて地面に落ちちゃったら食べられません……物を粗末にしちゃう……」

智紀(だったらおにぎりを持つか、早く食べてからにすればいいだけの話)イライラ

成香「そんなことしたらお母さんに叱られます………あっ、そういえばお母さん昨日お買い物行ってたけど、お菓子買ってくれたかな」

智紀(今はおにぎりが先。早く食べて)イライライラ

成香「でもお菓子ばかり食べたら太っちゃいます…………でもでも、やっぱり食べたいですお菓子……」

智紀(お菓子はどうでもいい。おにぎり!あっ、置き方が下手だから少しずつ傾いてる!)イライライラ

成香「はっ……それよりも今はおにぎりの問題でした。どうしましょう?ハンカチを誰かに借りればいいのかな……」

智紀(そういう問題じゃない!それより早く!おにぎりが……あ、倒れた。ハンカチの上だから大丈夫だけど……あの子がモタモタしてるから……)イライライライラ

成香「うーん……わかりません……とにかくおにぎり……………え?」

成香「おにぎりが……ふしぎと倒れてます……どうして?」

智紀(あなたのせい!)イライライライラ

成香「うぅ……怖いです……誰かに相談……」

智紀(うあああああ!この子はあぁああ!)イライライラ

冷静沈着な智紀が、成香の言動に対し我慢の限界を迎え、心の中で叫び声を上げる。

そんな怒りの波動に気付いたのか、成香が智紀の方へ振り向き、怯えた表情を浮かべた。

成香「ぁう……私、何か悪いことしちゃいましたか?ご、ごめんなさい……」ビクビク

智紀「………………」ゾワッ

智紀(……何?この感情は……?何故か、すごく…………この子に…………意地悪したい。泣かせたい)

自分の中に生まれた新しい想いに困惑する智紀。

そんな智紀に向けて、智葉は百合妄想で作り上げた細身の日本刀を鞘から抜いた。

すると、刃から発生した光が智紀を貫く。

智紀「ぁ……」

智葉「〔 S の 世 界 〕」

納刀し、呟く。

智紀「……これは……」

成香「うぅ……ごめんなさい。私、あやまります……ですから許してください」ビクビク

智紀「ぉ……ぁ……ぁぁ」ゾワゾワゾワ!

智紀(なんで私は………メガネの柄を舐めさせたいなんて……考えてるの?)

智葉「はあっ!」シュバ!

戸惑う智紀をよそに、練り上げた鋭い妄想をぶつけてくる智葉。一撃一撃のキレが凄まじい。

智紀(っ!こんな強力な妄想……下手すると辻垣内さんの価値観に引っ張られる……というより……)

智葉「どうした?」ニヤリ

智紀「っ……///」

智紀(何故か…………この人に支配されたいと強く思ってしまう……)

智葉「……ふむ。なかなかしぶとい。さすが四天王といったところか。だが……〔Sの世界〕からは逃れられない」

ダヴァン「さすがサトハ。沢村さん相手にアッアンドショウしそうデス」


明華「ええ。普通に戦ってもかなり強いのに、今日は成香さんがいますから」

ダヴァン「イエス。本内さんはトンデモナク嗜虐心をくすぐりマス」

明華「成香さんを攻めたいというSっ気が顔を出した瞬間、Sを屈服させることに快感を見出す〔Sの世界〕が待っている」

ダヴァン「ソレはつまり、SがMに変えらレル……」

明華「はい」

〔Sの世界〕。

自分を恐れずに立ち向かってくる相手を好む智葉の気性から生まれたものだが、

少し方向性が変わっており、『他者に嗜虐心を抱いた相手を屈服させる』性質を持つ。

それは強者を自分の支配下に置くことで得られる達成感、つまり相手を思うがまま可愛がることができる征服感を最大限に味わうためのもの。

対象によって効果に違いがあり、名前に『M』が入っている相手の方が効き目が強い。

それはいつ何時であれ『Mというもの』をパーソナルデータとして抱えているからだ。

効果はMの数によって増減し、多ければ多いだけ強く影響を受ける。

例えば『桃山村 真摩美(ももやまむら ままみ)』という名前だった場合はMが7つ――MOMOYAMAMURA MAMAMI――なのでヒッギャヒギャになる。

対義語は『笹瀬川佐々美』。

名前というものは強い想いから名付けられたものであり、そして全ての物事には意味がある……。

そう考える智葉だからこそ目覚めた特性だ。

名は体を表す。

智葉が名前にMを持たずにSを持ち、濁点を加えるだけで『サドハ(サド派)』となることにも、きっと意味があるのだろう……。

智紀「あぁ……ぁ……」ガクガク..

智葉「…………」テクテク

成香「あ、あの……辻垣内さん……」

智葉「…………」スッ

成香「えっ……わ、私にくれたおにぎり……」

智葉「もぐ、もぐ……」

成香「あ、あ、あ……っ……」

智葉「ごくん……ふぅ……」

成香「ぅぅ……食べたかったです……」

智葉「本内」

成香「はっ、はい!」

智葉「次、頑張ったらふんわり名人きなこ餅をやる」

それは美味しいお菓子。

成香「わ……本当ですか?」

ふんわりとした食感。

智葉「ああ。だから……私の言うことを聞け」

きなこの風味。

成香「わかりました!いちずに頑張ります!」

ご褒美を目指して成香は行く―――。


明華「…………」

ダヴァン「どうしまシタ?サトハの方をじっとミテ」

明華「あのおにぎり……イクラです……食べたかった」

ダヴァン「そうでスカ……あ、ラーメンならありますけどどうデス?」

明華「いえ、ラーメンとイクラは違います。プチプチした物がありません」

ダヴァン「モットモ!」

明華「……うん、後悔は終えました。始めます」スゥー...

ビュゥゥウ...

明華が大きく息を吸うと、まるで明華に引っ張られたかのように風が吹いた。

そしてその風に乗せるように、手に持った傘を放つ。

空へと羽ばたいた傘は、頂点へ到達。

地を蹴った明華が飛びついて手元を掴み、ゆっくりと下降する。

その優雅さはまさに風神と呼ぶに相応しい。

怜「……なんやえらい派手な子やなぁ」

竜華「うん。めっちゃ強そう……」

洋榎「勢いに乗ったらきっと嵩(かさ)にかかって攻めてくるやろなぁ」

怜「む」

洋榎「ははは。どや。『嵩』もそうやし、『かかって』も傘が『かかってる』ことにかかってる……つまりダブルやで?」

怜「…………今は戦闘中や。みんなが必死なって戦ってるんのに、かかるとかかからへんとか……はぁ……これやから姫松は……」

洋榎「な、なんやねん。学校ごと呆れんなや……あ、悔しいからそんなん言うてんやろ?」

怜「…………別に。私なんてトリプルやったことあるし」

洋榎「ほんま!?どうやって?」

怜「………え?眉間がキーンってして色々見えた」

洋榎「全然わからん」

怜「ダブル程度やと理解でけへんやろね」

洋榎「……ほんまは嘘なんちゃう?」

怜「う、嘘ちゃうもん」

洋榎「なんか怪しいわ……なんだかんだあって結局最後は『ドラえもーん』ってなるんちゃう?」

怜「誰がのび太くんやねん。ちょっと答えへんかったからってそんなやいやい言いなや。セワシないで」

洋榎「む」

怜「静かにせんと、チラノルズやで?」

洋榎「……いや、2つ目は全然できてへんで?」

怜「…………りゅーかぁ♪」ダキッ

竜華「と、怜……///」ナデルデウス

洋榎「愛の巣へ逃げよった」チッ

純代「……そんな話してる場合じゃない」ザッ

洋榎「へ?」

純代「明華さん、強い」

洋榎「!」チラ


明華「♪行こう!スタッカートみたいに胸を叩くワクワク感~」

洋榎「……歌っとる?こんな時に?」

怜「……これは……ヤマノススメ1期の曲やな」

竜華「な、なあ!周りの子を見てみ!」

洋榎「?」チラ

LB軍「あぁ……っ!ダメっ!指が勝手に動いて……買っちゃう!」ピピピ

怜「みんな携帯を出してる?」

明華の歌声は魔性。風に乗って心へ届く。

スタッカート・デイズを聴いた子たちは皆、作中に出てきたダウンジャケットやシュラフ、バーナーなどに興味が湧き、アマゾンでポチっていく。当然、カートに入れるだけに留まらず、購入までいってしまう。

妄想をぶつけた上に経済的損失を味わわせる、これも色々なアングルとか違うベクトルで考えてみたら、風神らしいと言えなくもないかもしれない。

エイスリン「ヤックデカルチャー……」

怜「地上に出て圏外やなくなったのが悪い方向へいってもうてるな…………ん?けど、私らも歌を聴いてるけどなんともないで?」

竜華「なんでやろ?うちヤマノススメめっちゃ好きやねんけど」

洋榎「うちもや。嫁がたっぷり出とるから。あおいのおかんもうちの嫁」

明華「♪また明日!ヤッホー♪……テレテレテテッテー……」

LFG軍「や、やばい!二番や!このままやと『この商品を買った人はこんな商品も買っています』のやつらまでカートに入れてまう!」

このままではヤマノススメのせいでこの子たちの人生はナニワ金融道になり、最終的には賭博黙示録カイジへと繋がってしまう。

破綻っ……!

せいぜいBDやDVDを複数枚買う程度ならまだしもっ………!

本格的グッズは……非常にまずいっ………!

失う!希望を……!

ご来光どころか……『どないしよう?』が関の山っ……!

怜(……まぁ、注文してもうてもキャンセルすればええだけの話やろうけど。にしても……歌に乗せられとる人はみんなこっち側や……458兵は誰もいいひん)

怜(その辺りにはどんな秘密が…………ん?)

ダヴァン「決闘(デュエル)!ハイそこも決闘!」

怜(…………なんやあの露骨に目立っとるのは)

ダヴァン「そこの子も決闘デス!」ビシィッ!

LFG軍「あああっ!?テントを買っちゃったわ!?」

怜(あいつが指さした子が歌の影響を受けてるみたいやな。それなら……あいつを止めればこの状況はなんとかなるっちゅうことか?)

怜の読みは当たっていた。

ダヴァンの能力は〔決闘選定者(デュエルマッチメーカー)〕。

普通は自身の妄想を相手にぶつける際に使う。

この能力によって決闘相手として選ばれた対象とのやりとりは、

妄想内容の知識や思い入れによるダメージ(攻撃側が愛しているカプや作品に対し、守備側が視聴していない、興味が薄いなど)軽減がなく、最大限の効果を与えられる。

さらに回線が届く距離を倍以上に広げる、というもの。


明華「♪ア・ラ・モードな毎日 嬉しかったこと おいしかったもの」

ただ今回の場合は少し変わった使い方をしている。

明華の能力は歌に想いを込め、放つもの。

歌うことに精神を集中させるため、アバウトな範囲でしか対象を指定できず、

敵味方入り乱れる戦場では使いどころが難しい。

モンハンのオンラインでひたすら散弾を撃つようなもの。そうなれば、いくら風神と言えども自身に向けられる風当たりが強くなるのは防げない。

そんな不自由さをカバーするのがダヴァンの〔決闘選定者(デュエルマッチメーカー)〕。

明華の歌の効力の向きをダヴァンが選定。VSを振りまき、特定の相手との決闘をマッチメイクする。

言うなれば刃牙の徳川ご老公だ。

ご老公の髪型を変え、眉や目、鼻、口などを変え、体格を変え、国籍を変え、性別を変え、雰囲気を変え、生活環境を変えたのがダヴァン。つまるところ別人だ。

LFG軍たち「あ……冷静になって考えてみれば、注文してもうてもすぐキャンセルすればええんやった」ホッ

明華「…………」スゥー

明華「♪こっそり出てゆくよ~」

LFG軍「?これは……ミスチルの『星になれたら』や。ボクっ娘の百合物語……」

明華「♪だけど負け犬じゃない~」

LFG軍(やっぱええ歌や……)

明華「♪もう~キャンセルもでき~ない~」

LFG軍「!!!」

ダヴァン「キャンセルさせまセン!」

風神の歌声により、登山グッズ購入決定。もはやどうもできない。

唯一の救いは、焦らせるような表現が含まれていない歌詞のため、お急ぎ便を申し込んでいないことだけ。

そのことにほんの少しホッとしながら、LFG軍の面々は倒れていく―――

穏乃「…………」

憧「……………」

穏乃「………みんなが押されだしてる……」

憧「うん……これはちょっとまずいかも」

激戦地から少し離れたところ、憧しずが残り少なくなったゼクシィムードを保ちながら戦っていた。

458兵を倒しながら周りの様子を窺うと、明らかに味方が圧倒されだしたと感じ取れる。

咏の幻惑によって混乱させられ、久、白望、純代が一方的に攻められ、

ファンを盾にする圧倒的防御力を誇るはやりを前に、小蒔、霞。

ぴゅあぴゅあな純潔至上主義のマジじゃん。なCERO使い良子に手も足も出ない塞、怜、竜華、服を着ている初美。

口数最低、妄想短縮、表情憤慨、野依理沙。そんな彼女のラッシュに、洋榎はただただ防戦一方。

〔リリース(Lilys×Release)〕を会得し、より逞しくなった雅枝にはタメ口をきけず後輩的な接し方になる貴子。

智葉によってほぼ戦闘不能状態になった智紀。

その智葉は照に狙いを定め、仕掛けている。

明華の歌声をダヴァンがコントロールすることでLB軍、LFG軍、宮守軍、巫女軍団は次々と倒れていき、

結果、広がっていく戦力差をどうにかしようと地味に奮戦していた灼、ゆみ、桃子も、数で上回る458兵を相手に思うように戦果を上げられない。

煌は透華、一、憩、久美子を守ることで精一杯で、やえはまだ倒れたまま。

調子がいいのは、強運が続き、課題を連続クリアしているゲーム中の豊音と、『ユーキャンなら年齢は関係ない』と話が盛り上がる老婆軍団ぐらいである。

トシは食べ過ぎで苦しそう。そしてやっぱりエイスリンは可愛い。


穏乃「このままじゃ……」

穏乃(…………みんな頑張ってるのに……私は……)

憧「そうだね。地下で勝った時の勢いは完全に削がれちゃってる。となると人数で負けてるうちらはかなり厳しい……」

穏乃(私がオ○ニーしてなければ………)

憧「しず?どうしたの?」

穏乃「…………」

穏乃(ううん、オ○ニーの件だけじゃない。私にもっと力があれば…………)

穏乃(もっと……強くなりたい……っ!)

キィ...ィン...

穏乃「!!」

穏乃(な、なに……この感じ?あ、あ、あ……)

憧「きゃっ!ちょ、ちょっと……えっ!?体が……―――」

世界でいちばん強くなりたいとまでは思わなかったものの、今の自分以上の力を欲し、求めた穏乃。

その強い想いが、奇跡を生む。

シュゥゥゥ...

458兵たち「えっ!?そんなバカな!」

その奇跡を目の当たりにした子が、言葉の引き出しの一番手前に入っているであろう驚いた時に言うセリフを口にする。

しかし彼女を責められる者はいない。

何故なら、穏乃たちがいた場所に立っているのは、穏乃であり穏乃ではなく、憧であり憧ではない。

??「………………」

凛とした姿勢で立っている1つの影。

ポニーテールでツーサイドアップ。

お尻丈の紺色ジャージに、阿知賀女子の制服の上だけ。

ツリ目猫口、活発な偏差値。

山を愛し、ダッシュを愛し、麻雀を愛し、マカロンを愛す。

そしてなにより穏乃を愛し、そしてなにより憧を愛する。

458兵たち「あ、あなたは一体……」

??「わたしは…………高鴨穏乃と新子憧が1つになった存在…………タカラシ アコノよ!」ババン!

458兵たち「!?」

驚愕の真実。しかしアコノは落ち着いた表情だ。いつもの朝、いつもの日常とでもいうように。

それは、アコノにとってこの現象は別段不思議ではないと考えているからである。

その考えとは、友達は『交換』を重ねていくことで絆が強固になる、というもの。

まずは自己紹介などによる情報交換。次に会話で意見交換。一歩踏み込む制服交換。そして愛欲の唾液交換。

ここまでくればもはや交換は不要。2人で1人になればいい。

そんなわけで、タカラシアコノは生まれたのだ。

他人からすればトンデモ理論かもしれない。でも、信じ続け、思い込めば力になり、真実となる。それが百合妄想士だ。


458兵たち(な、なんてパワーなの?恐ろしいほどの力を感じるわ……)

アコノ「さて、どうしようかな……」テクテク..

アコノ(まずこの子たちを、幼馴染のお泊まり会妄想で…………)

458兵たち「っ!?あぁ……パジャマ……旅行……」バタバタバタ

アコノ(……倒した。そして……)

頭の中で最も理想的な作戦を練っていく。

458プロによって窮地に立たされている現状を打破するために。

穏乃が持つ野性の直感による閃きを、新子憧の頭脳が形作る。

アコノ(よし!これだ!)

アコノ「みんな!散会して!このままじゃ全滅するから!」シュバッ!

458兵たち「きゃあ!」バタッ!

出した結論は相手の戦力を分散させること。リスクはあるが、このまま戦うよりはマシだということだろう。

アコノ(このまま攻撃しながら突っ込んで、みんなが逃げやすいようにする!)

成香「て、敵ですか?怖いです……許してください……」オドオド

照(っ……だ、だめ……変な気持ちになりそう……抑えないと……)

智葉「…………あの風貌……まさか……」

純代「……誰かに似てるような……」

久「!みんな!あの子の言うことを聞いて!」

純代「竹井さん?」

久(誰だかわからないけど、ここで戦い続けてもジリ貧。確実に負ける……となれば、彼女の作戦に乗らない手はない!)

咏「んーふ、そりゃそうなるよねぃ。でも、そう思い通りには……」

アコノ《幼馴染の家に遊びに行った。その子がお茶を用意してくれている間、部屋に1人で待つ。その時、目に入ったリップクリームに手が伸びて……》ズァァッ!

咏「ぅおっ!?」

咏(手が伸びただけでこの威力かい!?もし唇に塗られたらまずい!)

アコノ《ドキドキしながらリップをクルクルさせて……》

理沙《律×澪!律×澪!律×澪!》プムァリィィ..

アコノ「っ!ぐぁぅ……」

咏「お、おおぅ……テレビシリーズと劇場版をまとめて……助かった……どもです」ホッ

理沙「べっ、別に……///」プム..

久「!チャンス……」タタッ!

洋榎「おし!逃げるなら今しかないで!」ダッ!

咏「あ……」

理沙「!止め…」

純代《〔 ゴ ッ ド フ ァ ー ザ ー 〕!!》

咏「!!」


理沙「っ……!」

咏「…………」

理沙「…………?」

咏「あれ?何もない……」

理沙「っ!?逃げた!」

純代「…………」ドスドスドス

純代が見せたのは、スカ攻撃と見せかけてただ作品名を言うだけ。

勢いで怯ませるフェイントであり、言うなればすかしっ屁である。

咏たちがアコノの存在に戸惑っていたからこそ成功した。

アコノ《リコーダーの貸し借り!》シャザァ!

咏「ちっ……」

理沙「一撃が重い!」プールム

久(よし……成功だわ!)タタタ

純代(次は他の子たちを逃がす!)ドスドスス

良子「む。ツーヒューマンの登場……ここを通すわけにはゲソノーです」

久「ゲソノー…………あぁ、『いかない』か。って……イカとゲソはまた違う気がするけど……」

純代「……とにかく、あの人をどかします」

良子「…………」

純代「………………?スカ妄想ができない……」

久「??」

塞「気を付けて!この人の前だとちょっとしたエッチ妄想は全部キャンセルされるわ!」

純代「!じゃあ……スカも……」

良子「ノー!そんなのもってのエトセトラです。ダメ、アブソリュート!」

純代(…………本当だ。妄想すらできない……白衣性恋愛症候群のオムツシーンすらも映像として組み立てられない……)

純代「……ここを通るのはやめ…」

久「待って。ちょっと試してみるわ」

純代「え?」

久「……こればっかお世話になってるけど……」

久《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕》ポヨォォォ..

良子「…………そうきましたか……」

怜「出た……!?」

久「やっぱり……おっぱいの感触を乳飲み子時代の思い出だとすれば、エッチな妄想とみなすわけにはいかない」

久(あとはこれをいくつも放てばいい……)ポヨォォォ..ポヨォォォ..

純代「…………」

純代(それならスカも……保健体育の一環として……あるいは健康管理のための検便ということに……………………ダメか)ハァ

良子「…………オフコース。その程度のパワーなら、大したダメージではないです。返り討ちにします」

久(う……やっぱり私のじゃ弱いか。別にそんなに言うほど小さくないと思うんだけど)


良子《あの人にネームを呼んでもらえるだけで幸せな気持ちが心を満た…》

ギュルルル!!

良子「!危なストマック(あぶない)!!」サッ!

竜華「今の竜巻は……」チラ

照「…………」

アコノ「ありがとう!照さん!」

良子「宮永照……あの距離から邪魔アンダーのですか」

塞《今のうちに逃げましょう!》サワッ..タタタ..

初美「ひぅっ!?な、なんで触るですかー!?」

洋榎「文句はあとや!走れ!」グイッ..タタタ!

初美「わわ!引っ張らなくても大丈夫ですよー!」ワタワタ

竜華「怜!行くで…………あ」

怜「待って。沢村さんを連れてったらんと」

智紀「うぅ……ぁ……」

竜華「わぁ、ほんまや。ほなら2人で肩貸そ」グイ

智紀「……ぁ……」ハッ

怜「ん。よいしょ」グイ

智紀「……すみません。大丈夫です」

怜「……ほんまに?」

智紀「はい。ありがとうございます」

竜華「それならよかった」

怜「ほなら行こ」タタッ

竜華「無理そうやったら言うてな」タタッ

智紀「はい」タタッ

純代「…………」ドスドス!

良子「アウチ!させませ…」

ギュルルル..

良子「っ……!」サッ

照「…………」

良子「また邪魔を……シット!」

久「…………」タタタ..

久(照のことだから、この竜巻に含まれてる妄想がエッチ要素ゼロのはずがない……にも関わらず無効化されなかった)

久(つまり戒能プロの能力の有効範囲内では妄想できないけど、範囲外からの妄想は有効なわけね)フム

はやり「はやー☆急展開にビックリ☆」キラン

久「!」

久(やっば……!この人、ある意味一番危険よね……どうしよう?無理矢理突破するべきか……)

はやり「全員無傷で逃げようとか~、人生なめちゃダメだゾ?」ハヤッ

塞「〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕!!」

はやり「!」


塞「………………」

はやり「…………残念☆はやりは今が一番輝いてるから、子供には戻らないゾ☆」キラン

塞「……やっぱり通用しない……」ギリッ..

久(臼沢さんの攻撃もファンの人が受け止める………一体どうすればいいのよ……)

はやり「ふふっ♪それじゃあ、はやりの……むごぅふ!!」

久「え……?」

洋榎「なんや今の声」

智紀「奇声……」

怜「近くにゴラムおったっけ?」

竜華「えー?ゴクリちゃうの?」

初美「あ……あれは」

灼「…………」シュター..

純代「決めポーズの鷺森さん……じゃあ今の声は……」

灼「うん。瑞原さんのお尻に指を挿れた時のやつ」

はやり「………………」

灼「これでなんとか…………ん?」

はやり「…………はや☆」

灼「!」

久「は、離れて!瑞原プロはまだ健在よ!」

灼「……っ!」

はやり「もう……!ビックリしちゃったよぉ♪いきなりお尻に指が刺さるんだもん」

ハイスピードでお尻を捉えた灼の指。その鋭さは一瞬呼吸が止まるほど。事実、アイドルらしからぬ奇声を上げてしまった。

しかしはやりにダメージはない。一撃必殺の特性はファンが受け止め、結果としてはファンそれぞれのお尻が若干スースーするにとどまった。

ただし、痔持ちのファンは健康なファンの1.5倍痛みを感じ、そして数人のファンは何かに目覚めた。

灼「……私の能力も効かないなんて、ずる…」

久「効かないわけじゃないと思う。でも、瑞原プロを倒すには1万回以上刺さないとダメかもしれないわね」

灼「…………色々な意味で無理」

純代(こっちの攻撃はほぼ無効化されるけど、瑞原プロの攻撃は普通に有効。しかも精神に侵食して458プロ側へ寝返るように操られるかもしれない……)

純代(一体どう戦えばいいのか…………考えてる時間はあんまりない。あっちはあっちで……)チラ

アコノ《臨海学校での朝の歯磨き!コップと歯ブラシで両手が塞がってるあの子の胸を揉むっ!やめてと言われてもやめない!集合時間まで続けるっ!!》

理沙「!」

咏「最悪絶交ものだねぃ……」

照「はっ!」ギュルルル!

良子「ホウェンアンティル私の邪魔をするオーラですか……!」サッ!

純代(あの人たちを抑えてくれてるから私たちは逃げる時間を得た……なら、作ってくれたチャンスを潰すわけにはいかない)スゥー..

純代《〔 衆 人 環 視 の 中 で 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

はやり「それもはやりには効かないよ~☆気持ち的にはかなりゲンナリしちゃうけど☆」

純代(……わかってる……どんな攻撃も1万分の1程度にされてしまう…………でも、それなら……!)

純代「衆人環視とは………………オリンピック!!!」ゴァァァァァ!!

純代(……威力を増せばいい!ファンの限界を超えれば、瑞原プロにダメージが通るはず!!)


はやり「はやっ!?」

純代「ぐ……は……ぁ……」

はやりの防御壁を突破するため、純代は脱糞のステージを五輪へと引き上げた。

朝礼台や体育館の舞台などでも十分すぎるほどの威力を誇った〔トラウマメモリー〕。

それが五輪で漏らすとなれば、学生気分じゃいられない。規模が違いすぎる。

当然、能力を使用した純代にかかる負担も過去最大級となり、幅のある体を容赦なく蝕む。

純代「〔 砲 丸 を 投 げ た 瞬 間 に 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕」

否応なしに力む砲丸投げはスカとの相性は抜群。

純代「〔 キ ス & ク ラ イ & 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕」

冬季も同時に開催する荒業。規模と共に威力が倍になる。

はやり「は、や……☆」ググ..

純代「はぁ……はぁ……」

純代(効いてる?いや、演技かも知れない……とにかく……)

純代《みんな!逃げて!》

久「はっ……わ、わかった!行くわよ!」タタッ

洋榎「助かったで!深堀!」

怜「ほな、あとで」

竜華「待ってるから!絶対来てな!」

初美「お先に行ってるですよー」

はやり「あっ……ダメ☆ここを通すわけには…」

純代「〔 脱 糞 し な が ら 閉 会 式 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕」

はやり「うぅ……この……っ」

純代(まだまだ…………この後は……夜の報道番組の出演時に……いや、やっぱり開催中に戻って段違い平行棒に……)

ガクン!

純代「あ……」

純代(体が………動かない……)

純代(さすがに……オリンピックは無理があった……けど……仕方ない)

はやり「……はやー……あの子たちに逃げられちゃった……もうっ!君のせいだゾ☆」

純代「はぁ……はぁ……」

純代(目的は果たした)

はやり「しょうがない。君だけでもやっつけとこうかな☆」キラ

純代(…………みんな……あとは任せた……)

はやり「せぇーの!はや…」

貴子「深堀ァァッ!!」

はやり「やっ!?」

純代「ぇ」

貴子「うるぁ!!」

はやり「ちょ、ちょっと。急に大声出したらビックリしちゃうよ?」


貴子「るっせぇ!!」

はやり「むー……はやりにそんな言い方するの?」

貴子「私の教え子に手ぇ出すやつにはタメ口上等だァァッ!戦いが終ってから詫びるァァッ!」

純代「久保コーチ……」

貴子「せいか~い」ニヤリ

純代「どうしてここに……LFGの会長と戦ってたんじゃ……」

貴子「うるせェ!!あのオバハンは走り疲れて休んでる」

雅枝「はぁ……はぁ……しんど……」

純代(本当だ。波止場にあるロープを止めるでっぱり……ビットっていうんだっけ?あれに似たやつに座ってる)

貴子「この人は私がなんとかする!てめェは逃げろ!」

純代「え……でも」

貴子「逃げなきゃビンタだァァッ!!」

純代「ひ!わ、わかりました」ドスドス

はやり「逃がすわけないゾ☆」

貴子「させるかァァッ!〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )〕!!」

はやり「はや!?」ビクゥ!

貴子「……はぁぁ……どうだオラァ」

妄想したキャラをまとめてビンタする〔愛なき時代(ビンタオアビンタ)〕。

今回はその対象をはやりの妄想するキャラではなく、ファンに向けて放った。

今まで数多くの弱者を叩いてきた貴子の経験は、三次元の人間を相手取った時に真価を発揮する。

顔も知らないファンならば貴子にとっては弱者。

自分の手を痛めず殴れてラッキー♪ということで、フルスイングを繰り返す。

はやりを通した向こう側で、数人のファンの頬が腫れていく。

はやり「こ、これは……ファンのみんなを直接攻撃するなんて……」

貴子「サンドバッグ大量発生ァァッ!ストレス発散んん!!!」ハハハ!

純代「す、すごい……」ドスドス..

貴子「遅ェぞ深堀ァァッ!!これ以上モタモタしてっと、もう一発ビンタ追加するからなァァッ!」

純代「は、はいっ!」ドドスドスドドス!

貴子「……ふん!さて、と」

貴子(とにかくここで粘って、逃げる隙を狙うか)

成香「あ、あの……」

貴子「ぁん!?」

成香「わっ……ご、ごめんなさい……怖いです……謝りますから……怒らないでください」

貴子「知らねェ!!殴るッ!!」

成香「ひぅ!」

智葉「ほう……嗜虐的な精神状態になることなくただ単に怒鳴る、か……面白い人だ」

貴子「うるせェ!!分析されたくねェ!!あっち行け!」

ダヴァン「色んな人いまスネ!面白いデス!」ズルズル...

貴子「!……人が腹減ってるのにラーメンなんか食いやがって……地獄に落ちやがれ!」


ダヴァン「ラーメンを常備しないあなたが悪いデス……ということで決闘(デュエル)!」ビシッ!

明華「♪1・2・3・4 GO・HA・N!」

貴子「っ!?て、てめェ!腹減ってるっつってんだろ傘野郎!」

アコノ「あ……やば……久保さんも囲まれてる」

アコノ(でも……不思議と大丈夫な気がする……どうしてだろ?)

咏と理沙を相手になんとか凌ぎながら辺りを見回すアコノ。

ただしその表情には焦りはない。理由はわからないが、穏乃が持つ直感が大丈夫だと告げているからだ。

アコノ(さて……どうしたものかな?三尋木プロと野依プロを相手してるだけで精いっぱいだし……うーん)

楽観的な表情を見せながらも、頭の中は凄まじい速さで計算をしている。この辺りがまた憧らしい。

雅枝「はぁ……」

モコ

雅枝「んぁ?なんや?このでっぱり、動いたんちゃうか?」

??「残念だったね」

雅枝「へ?」

??「このでっぱりは……波止場のアレじゃないよ」

雅枝「……どういうことや」

??「これは…………可愛い女の子の………………亀頭だよ!!」

雅枝「………………は?」

キトウダヨ。

雅枝の頭の中で会話が成立しない。

『キト、ウダヨ?』

『キトウダ、ヨ?』

……句読点さんどこ座ります?

雅枝「??」

疑問が体を固くする。

その瞬間を彼女は…………赤土晴絵は逃さない。

晴絵「宮永流ぽち○ぽ忍法!カリ蛇拳!」シャーッ!

雅枝「どわぁあ!」ポニョフ!

晴絵「奇襲成功!東横さん、ありがとう」

桃子「いえいえっす」ユラー

雅枝「お前……いつの間に!」

晴絵「ついさっきこっちのエリアに来ましてね。東横さんに頼んでステルス状態のまま亀頭をお休み処として設置し、疲れたあなたを待ったんです」

雅枝「……狙い通りっちゅうわけか」ケッ

晴絵「ええ」

晴絵(ただ、私の……ううん、私たちの狙いはもう1つ。ひとまず幹部たちからみんなを逃がすこと。そのために……)

ダヴァン「ジーザス!!」

晴絵「……ふふ」ニヤリ

晴絵(そっちはお願いしますよ。師匠……―――)


界「…………」ドドン!

貴子「あ、あんたは……」

智葉「…………宮永界……」

明華「なんという……」

師との戦いを終え、ようやく合流を果たした宮永界。

腕組みをする彼の半径10メートルの地面からは、おびただしいほどのふたなりち○ぽが生えている。

女の子特有の甘い香りが漂っているものの、不気味さは隠せない。

界「悪いな。ふたなりの里の完成だ」

成香(えっ……なんでしょうふたなりの里って……意味がよくわからないのですけど……)

照「!お父さん……」

良子「…………なんですかあのアンビリーバボーなエリアは……」

界「里のルールを話そうか。今から一歩でも動いたら、亀頭はお前たちをつつくだろう」

智葉「…………」

界「……頼む。そのまま動かないでいてくれ。ふたなりはふたなりで完結させたい。そちらの管轄に立ち入りたくはない」

ダヴァン「………………」

界「久保さん。今のうちに逃げろ」

貴子「うるせェァァッ!!わかりましたァァッ!」タタッ!

明華「…………」

界「……お嬢さんたちも逃げてくれ」

豊音「え?でもでも、今リーチされたところでー……」ピコピコ

憩「捨て牌ちゃんと見んとあかんよ?」

エイスリン「フリテンオッカケリーチ!」

老婆たち「おやおや。若さゆえの冒険心かい。羨ましいぞい」

透華「ずるずる……おいひいですわね。カップラーメンというのも」モグモグ

一「最後の1個だったんですよね?頂いてしまってよかったのですか?熊倉さんの分は……」

トシ「私はもう満腹。完全にフルハウスさ」

458兵たち「えい!えい!」

煌「ぐぐぐ……ひたすら猛攻に耐えるという試練……すばらです!」

界「…………あの……マジで逃げてもらわないと……」

親エイ隊たち「エイ様、逃げましょう。私たちが守りますから」

エイスリン「ウン!」

明華「……させません」スゥー..

ダヴァン「デュエル!」ビシッ!

エイスリン「!」

ダヴァン「もひとつデュエル!」ビシッ

親エイ隊たち「うっ!?」

界「しまった!」

界(くそっ!なんて素早い連携だ………出遅れた。こうなったら今から仕掛けて…)


智葉「…………」

界(……いや、少し様子を見よう。ここは全員を逃がすのが目的。今動けばその隙を突かれてふたなりの里を潰されちまう。我慢だ)

エイスリン「ウゥ……」

界(すまんなエイスリンさん。だが危険な状態になったらすぐに助けに行くからな)

明華「…………」

親エイ隊たち(……一体どう仕掛けてくる?)ゴクリ

明華「♪君は誰とキスをする?」

エイスリン「!」

明華「♪わたし それともわたし?」

ダヴァン「ナルホド!ランカとシェリル版トライアングラーでスカ!いい手でスネ!」

親エイ隊たち「…………」

エイスリンと親エイ隊を明華の歌が襲い掛かる。

元々の歌詞に加え、明華の妄想を含んだ歌唱により、三角関係を上回っている現状を強く責め、恨むようなニュアンスが追加され、

『この苦しみから逃れたければ誰か1人を選べ』という強迫観念を植えつける。

エイスリン「…………」

明華(誰からも愛されるあなたにとっては一番効果的でしょう)

トライアングラー。気が多い人間にとってはまさに心を抉られるだろう。

そして誰か1人を選ぶことでこの場を凌いだとしても、そのあとは人間関係のギクシャクが待っている。

親エイ隊たち「……私たちは全員エイ様を愛してます。エイ様は誰を選ぶのですか?」

エイスリン「!…………」

歌の作用によってエイスリンに詰め寄る親エイ隊の面々。

親エイ隊たち「それとも他に好きな人がいるのですか?その人の名前はなんですか?」

答えを聞くまで終わらない。決して諦めることがない。

親エイ隊たち「答えてください」ズズィ

エイスリン「……………………」

エイスリン「……………………」キッ

覚悟を決めたのだろう。表情を引き締めたエイスリン。

ダヴァン(さて……誰を選ぶのでショウ?どちらにしても地獄でスガ)

エイスリン「………………」

親エイ隊を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。

エイスリン「…………エ?ナンダッテ?」

明華「な……」

ダヴァン「………………OH……」

親エイ隊たち「……だ、だから……私たちの中で1人、本当に好きな人を選んでください!」

エイスリン「エ?ナンダッテ?」

親エイ隊たち「ほ、他に好きな人がいるんですか!?」

エイスリン「エ?ナンダッテ?」

親エイ隊たち「………………………」


エイスリン「エ?ナンダッテ?」

親エイ隊たち「………………………」

エイスリン「……………………」

口を『エ?』の形にして待つエイスリン。

聞こえなければどうということはない。

何を言っても返ってくる言葉は同じだろう。

そんな彼女に対し、親エイ隊は、

親エイ隊B「…………で、では……この件は一旦保留にしましょう。その方がいい……よね?」チラ

親エイ隊Cたち「…………」コクリ

保留ということで意見が一致した。

明華「な……っ!?」

明華(そんな簡単に流せるのですか!?)

エイスリン「…………」フゥ

親エイ隊の言葉に安堵の表情を浮かべる。

先の発言はこの結末を見越し、計算した上でのことなのだろうか?

もしそうだとしたら、KKE――かしこいかわいいエイスリン――の3文字を与えるべきだ。

エイスリン「ニゲヨウ!」タタッ

親エイ隊Bたち「は、はい!」タタッ

ダヴァン「…………まさか、答えを出さずに押し切るトハ……信じられまセン」

明華「……ええ。私の歌を聴いた状態では、お茶を濁すなんて通用しないはずなのですが……」

明華(これがハーレム系主人公体質というものでしょうか…………侮れませんね……)

界「………………」

界(エイスリンさんは大丈夫だった。あとは残りの子たちを逃がすだけだが……)

智葉「………………」

界(……俺1人では手が足りないか?無理矢理押し切るのも手だが……)

タタタ..

界(!?新手か!?)チラ

ゆみ《宮永さん!私に任せてください》タタタ

界《!君は……加治木さん》

ゆみ《さっきまでモモといたのですが、龍門渕さんたちを連れて行かなくてはと思い、引き返してきました》

ゆみ《花田さんの能力の範囲内なら未熟な私でもやられることはない。そして私の能力である程度の敵は倒せます。今から宮永照さんと一緒にこの場を離れ、どこかの建物内に退避します》

界《おお、さすがだな。助かる》

ゆみ《いえ、こちらこそ宮永さんたちが来て下さったおかげで助かりました。ありがとうございます》

界《いや、そんなことは…………なんて言ってる場合じゃないな》

智葉「…………っ」タタッ!

ゆみ「っ!」

界(加治木さんを狙ったか!?いや、ついでに他の子たちもまとめて……という腹積もりか!させねぇ!)


界「加治木さん、あとは任せた!」

ゆみ「はい!」タタッ!

智葉「そうはさせん」

界「それはこっちのセリフだ!!くらえ!」

界「〔 ぽ ち ○ ぽ ー ズ サ ー ク ル ( 3 6 0 ° ち ○ ぽ )〕」

あのふたなりち○ぽが今度は円柱になって再登場!

前回好評だったあの先走りも健在!初回特典には余った皮が付いてくる!

これからの展開にますます目が離せない!

智葉「ちっ!なんだこれは……」

明華「私に任せてください……」スゥー..

明華「♪トイレには~それは~それはキレイな~女神様がおるんやで~」

界「う……」

ヘニャァァ..

おばあちゃんと娘のほんわかするやりとりによって性的な感情はリセットされ、ふたなりち○ぽは握り寿司サイズへと縮こまった。

智葉「すまん、助かった」

晴絵「〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!」チポジョバァァァァァァ!!!!

智葉「なっ……!?」

晴絵「………………」

智葉「……何してくれている……」

成香「うぅ……いやです……ひたすら怖いです……」ビクビク

攻撃自体は回避しているものの、ふたなりに翻弄される智葉たち。

その間にゆみは透華たちを連れて移動を開始する。

際限なく458兵の邪魔が入るが、煌が攻撃を受け止め、ゆみが反撃して突破していく。

アコノ「お、みんな来た」

アコノ(これならなんとかなるかも…………って、あれ?)

アコノ「三尋木さんが……いない?」

理沙《秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!秋穂×水夏!》

アコノ「へ?ちょっ…………づぅっ!?な、何それ!そんな連続……!せいぜい漫画とドラマCDで2連続でしょ!?アニメ化もしてないのに!」

理沙「1巻……2巻3巻、以下続巻!」プムル!

アコノ「嘘っ!?コミックスの数だけ再利用できるの!?そんなのありなわけ!?」

理沙《沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!沙穂都×みはり!》プムーーーム!

アコノ「ま、負けないっ!」

アコノ《初めてブラを買う時に相談される!買い物後の急展開!『初恋の人はあなたなの……』、『女の子同士で……しかも幼馴染なんて……変、だよね……』》ゴオォ!

理沙「~~~っ!」プンスコフララッ!

アコノ「…………」

アコノ(わたしもそろそろ移動しないと完全に囲まれちゃう!頃合いだ、行こう!)タタッ!


理沙「!待つ!!」タタッ

咏「あっ……行かせるわけにはいかないよっ!」カランコロン..

458兵たち「と、通さないわ!」

アコノ《次週、大好きな幼馴染を待ち伏せ下校!の巻っ!》

458兵たち「ちひゃー!!」バタタタ!

アコノ「…………」タタタ...チラ

理沙「はぁ……はぁ……」プンタタ..スコタタ..

咏「ま、待てってーの……」カランコロン

アコノ(よしっ!逃げきれそう!野依プロはプンスカしながら走ることですでに息切れしてるし、三尋木プロは下駄だから転ばないようにちょこちょこ走ってるからおっそいし)タタタ

ダヴァン「オー!?あの人は阿知賀女子の人デス!」

智葉「逃げる気か。そうはさせん」

明華「……歌います」スゥー

アコノ(げっ!?あの3人相手はきつい!けど見つかっちゃった以上、多少は戦わないとダメかー……)チッ

智葉「本内!私に続け」タタッ

成香「うぅっ……ひじょうに怖いです……」プルプル

アコノ「くっ……仕方ない……」

智葉「行くぞ。覚悟してもら……」

攻撃しようと構えた智葉の眼前に、ひらりと舞う1本の毛。そう、ご存じ陰毛だ。

智葉の行く手を遮るようにファサッと落ちる。

そして地面に接触した瞬間に、爆発したように陰毛が撒き散らかされた。

その数は数万本を優に超えるだろう。

智葉「な、んだこれは……」

ダヴァン「……コレは……限りなく食欲を奪いマース……」

明華「……口に入ったら立ち直れません……歌は封じられました」ムグ(両手で口を押さえる)

界「〔 陰 毛 怪 奇 フ ァ イ ル ( い ん も う か い き ふ ぁ い る )〕」

智葉「やはりお前か……」ギリッ..

アコノ「宮永さん!」

界「行け!ここは俺に任せろ!」

アコノ「ありがとうございます!!」タタッ!

智葉「待て!逃がすわけには……」

ファフッ!

智葉「っ!?足元に毛が……!くそ……」タジッ

アコノ「…………」タタッタタ!

智葉「…………ちっ……もはや追いつけない」

穏乃の身体能力に憧の股下の長さを持つアコノの速さは高校生のレベルを超えていた。

出遅れた状態では並の人間では追いつけない。

智葉は舌打ちをして界の方を向いた。


界「すまんな」

智葉「…………」

ダヴァン「…………」

明華「…………」

界の放った、宮永流ぽち○ぽ忍法の1つである〔陰毛怪奇ファイル〕は見事に3人の足を止めた。

この能力は、日常生活で誰もが一度は経験したであろう『いたるところで発見!こんなところに陰毛が!』というあるあるを具現化したもの。

裸で歩いた場所でもない。当然抜いて置いてもいない。

それなのに何故か陰毛が。ぽつりと1本だけ存在。

もしも毛に意志があるなら問いたい。Youは何しに1本で?と。

界「…………」ファフー..モッサー..

手をかざすと、陰毛が智葉たちを先回りしようと蠢く。

その陰毛とは、ふたなり美少女のものであり、お風呂上がりで滅菌済み。

それなのに、こうして目の前でファサッとなると、みんな『うっ』って言う。

智葉「…………仕方ない」

ダヴァン「サトハ!?まサカ!」

智葉「……この男は私が倒す」ギラリ

界「!」

界(はったり……ではなさそうだ。これは心してかからないといけねぇな)

界(…………せめて、あの子たちが逃げ切るまでの時間は稼ぐぜ……―――)


それからしばらく経った頃、校舎付近を目指す一行は激しい攻撃に見舞われていた。

458兵たち「うっうー……」バターン..

久「よし、倒した…………けど疲れた。敵、多すぎよね」ハァ

智紀「もともとの戦力差が大きい……」

純代「……それと、幹部の人たちと戦ってた時の458兵は邪魔しないように遠巻きに見てたから……」

洋榎「せやったな。幹部への攻撃のついでに数を減らすこともでけへんかった……おかげでなかなか先に進めへんわ。鬱陶しい」

霞「そうかしら?かえってよかったのかもしれないわよ?458プロの子たちを倒しながら進んだことで、数的不利を多少は軽減できたと思うわ」

小蒔「おかげでこうして合流もできましたし」ニコリ

灼「確かにそうかも……上手い具合に時間調整できたかもしれな…」

怜「…………」フゥー

竜華「怜、大丈夫?疲れてへんか?」

怜「疲れた……けどそうも言ってられへんから」

竜華「ぁ……健気な怜、可愛い……///」

怜「……ほな、今ちょっとだけ可愛がって」

竜華「怜、えらいえらい」ナデナデ

怜「ん……///」スリスリ

竜華「…………」ムラァ..

怜「///」ハフゥ..

竜華「…………と、怜」

怜「ん?なに?」

竜華「え、ええやろ?し、しよ?」サワ..

怜「え、ええことない!こんなところでは嫌や!」

竜華「けど……スイッチ入ってもうて……」

怜「……き、キスで我慢して……ん」チュ

竜華「ん……」

レロレロッレッレッロー!

白望(……ずいぶん余裕あるなぁ。今の状態、結構ピンチ寄りなんだけど……関西特有のノリなのかな)

塞「惜しい……保育園児の2人を見たかった……ねー、はつみたん♪」サワ

全裸初美「ひぅ!?ちょ、太ももを触らないでほしいですよー!」ワタワタ

塞「この吸い付く肌……は、はつみたん……///」ハァハァ...

白望(…………ダルい)

458兵たち「うっうー!!」タタタッ!

塞「!?しまった!不意打ち!」

白望「いや、ただ塞が隙だらけなだけ」

白望(私が相手するかな…………って、世話焼きは塞のポジションなはずなのにね……)フゥ

ギュルルル!

白望「!」

458兵たち「がはぁ!!」ドバターン!


照「……はぁ……はぁ……間に……はぁ……合った」タタタ..

久「照!」

洋榎「宮永!大丈夫か!?」

照「はぁ、はぁ……う、うん。大丈夫……っ、はぁ……」

洋榎「他の面子はおらんのか?」

照「はぁ……うん、そう……はぁ……私、1人で……先行……」

洋榎「458プロの幹部は!?」

照「えと……はぁ……はぁ……ふ、振り切っ……てきた」ゼェゼェ

洋榎「これからどないする!?」

照「はぁ、はぁ、と、とにかく、一度息を整えさせ…」

洋榎「こっちの面子はみんな無事やねん。他におらん子は誰?」ユサユサ!

照「あ、の……か、肩……揺らさないで…」ゼーハー

洋榎「あ、そうや。今の竜巻の技どうやってん。教えてぇや」

照「え、と……はぁ……はぁ……でも、教えて、どうなるものとは……それにまずは息を…」ゼェーゼェー..

洋榎「最初はまずどうするん?コツとかある?」

照「と、整え…」ゼハァ..

洋榎「何を整えんの?妄想?それとも設定!?焦らさんと教えてぇや」ユサユサ

照「ま、待って……い、息が……か、か、肩……や、やめ…」ゼハハハーン..

怜「……呼吸落ち着くまで質問攻めはやめたりな。力士のインタビューみたいになってるやん」

洋榎「あ、せやな。すまん」

照「う、ううん……だ、大丈夫」ハァ..ハァ..

洋榎「あそう?大丈夫やったら聞きたいねんけど、まず一番初めに考え…」

照「!?やっぱり……むっ、無理!」

洋榎「なんでや!大丈夫言うたやん!」

照「……わ、私の今のは強がり。たくさん、息……っ、吸いたい……そして吐きたい」

洋榎「それやったら早よ言いな。水臭いやっちゃ」

照「………………………………ごめん」

怜「……色々面倒くさなって飲み込んだなぁ。賢いわ」

洋榎「?」

智紀「ずっと走りながら戦っていたのなら休んだ方がいいです……」

照「はぁ、はぁ……あ、ありがろん……でも、追いつかれたらまずいから……少しだけ」

洋榎「ん?宮永が来た方から見覚えのあるやつらが…………あ!」

エイスリン「オーイ!」

トシ「お腹いっぱいの状態で走り続けて…………このままじゃゲーム機にゲロ吐いちまうよ」

豊音「本体にかけちゃダメだよー!?でも大丈夫ー!?ちょー心配だよー!」

老婆たち「肉体の衰えを感じる……空が近い……」ハフゥ

塞「エイスリン!熊倉先生!豊音!おばあちゃんたち!」

白望(……冷静に考えたら、おばあちゃんたち置き去りにしたとか結構アレだよね……)


透華「ひ、久しぶりの全力疾走ですわ」

一「あはは。いい運動になったんじゃない?」

智紀「透華、一……」

憩「やっと追いついたぁ……」

久美子「ねー。ようやくホッとしたよ」

やえ「ニッワニッワニー!おまたせ!」

煌「……みなさんは無傷で私だけダメージを負っている…………私は役割を全うできたのですね……そんな自分を少し褒めてあげたいです」スバラッ!

ゆみ「すまないな。花田さんのおかげで逃げ切れた。感謝している」

煌「いえいえ。加治木さんが戦ってくれたからこそです。すばらっ!」

怜「お、荒川さん、埴淵さんと小走、それと花田さん、加治木さんが来たで」

竜華「結構集まったなぁ」

やえ「……待て。どうして王者だけ呼び捨てにしなさんだ?あ、なるほど。芸能人をいつもテレビ観てる感覚で呼び捨てにしてしまうというやつか。さすが私。仕方ないわねー、今サインを…」

怜「あと揃ってないのは……」

やえ「ちょっと!スルー!?」

白望「……そこまでにこになりきらなくてもいいのに……」

エイスリン「イミワカンナイ!」

やえ「ぬぬぬ……」

久「んー、あとは……咲と宮永さんのお父さん。あとリリーブライドの会長さん、久保さん、赤土さん、東横さんね」

ゆみ「モモは別行動をとっている。後ほど合流する予定だ」

久「なるほど、ステルスを有効活用ってわけね。納得」

照「……咲は458兵に連れていかれた」

久「えっ!?」

照「絶対に……助け出す」

久「照……」

照(大勢でよってたかって咲の体を羽でくすぐって悶絶させてるかもしれない……そんなこと…………嫌)ギリ...

洋榎「それとおかんもな。何をトチ狂ったんか、瑞原はやりの言いなりなってもうてるけど一応こっちサイドの人間やから」

霞「そうね……」

458兵たち「うっうー!逃がしませーん!」

久「!これはまた……大勢で来たわね」

智紀「迎撃してる時間はない……逃げましょう」

純代「……宮永さん、大丈夫ですか?」

照「すぅー、はぁー…………うん、平気」

洋榎「よっしゃ。ほな出発するで!」

霞「待って。あそこ……すごい勢いでこっちに来る子がいるわ」

アコノ「や、やっと見えてきた……」ダダダ!

照「あの子は……高鴨さんと新子さんの……」

照(よかった。囲まれてたから心配してたけど、振り切ったんだ)ホッ

458兵たち「な、なんと面妖な恰好!」

アコノ「……うっさいなぁ。ジャージの上に制服着てるだけじゃないの」ダダダ


久「あの速さなら迎えにいかなくても追いつきそうね。私たちも行きましょう」

塞「そうね………………」

全裸初美「………………今回は触らないですかー?よかっ…」

塞「さ、触ってほしいの!?もしかして私の手を待ってた!?」

全裸初美「ち、違いますよー!」

エイスリン「ドスケベアニマル!」

トシ「上の口では……ってやつかね」ニマァァ..

白望「……ダル……」

洋榎「そんなん言うてんと行くで!」グイッ

458兵たち「あ!コラ―!待ちなさーい!」

アコノ「待つわけないっての。もう少しで校舎なんだから」タタタ

458兵BCたち「えへへ。私、通さないんですよねー」ザッ!

久「!前にも大軍が……」

ゆみ「ああ……しかしここは無理やり通るしかなさそうだな」

小蒔「…………」チラ

照「…………じゃあ私が…」スッ

小蒔(照さんは先ほどまで疲れてぜーはーしてました。それならばここは私が先陣をきって頑張るところを照さんに見てもらいましょう!褒めてもらえるかもしれません!)ニコニコ

小蒔「ここは私に任せてください!」ザッ

照「神代さん……」

小蒔「〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ ) 〕」カッ!!

シュゴオオオオオオオオ!!!

458兵BCたち「!!」

小蒔「えいっ!えいっ!」

458兵BCたち「っ……相変わらずだわ!強すぎる……」タジッ..

小蒔「あっ!隙間が空きました……そこを突破しちゃってください!」

久「ありがとう!みんな、行きましょう!」

トシ「あいよっ!」タタッ!

照「神代さんありがとう」

小蒔「は、は、はいっ!どういたしまして!」

小蒔(作戦がぴったんこです!照さんに褒められちゃいました……///)エヘヘ

攻撃によって陣形が崩れ、僅かに空いたスペースめがけて久たちが走り抜けていく。

その先には校舎。この兵たちを振り切れば無事たどり着けるだろう。

458兵BCたち「し、しまった!」

458兵BDたち「落ち着いて!突破されたのはまだ半分程度!今から囲むのよ!」

小蒔「!またたくさんの人が増えました……」

霞「小蒔ちゃん!立ち止まっちゃダメよ。校舎へ向かうことが最優先。けん制しながら進みましょう」

小蒔「はいっ!」

458兵BCたち「うっ……囲むと言われても……神代小蒔には手も足も出ない……」


??「そんなことないんじゃね?しらんけど」カラン..

458兵BCたち「えっ……あ、三尋木さん!」

咏「やっほー」

アコノ「うそっ!?全速力で振り切ったはずなのに!下駄のまま走ってこのタイミングでここまで来れるわけないって!」

咏「いやぁー、その通りだねぃ」

アコノ「だったらどうして!」

咏「んー……例えば……君が戦ってた三尋木咏が途中で偽物とすり替わってたとしたら?なんてね」

アコノ「あ……そうか……」

アコノ(最初の三尋木プロは本物で、戦闘途中にわたしに偽物の幻を見せ、本物は校舎へ向かった……とすれば辻褄が合う。どうりで幹部にしては手応えがないと思ったんだ)

咏「突破されたのはしょうがないよ。今は残りの子たちをここで倒しちゃおう」

小蒔「!させません」ザッ..

458兵BCたち「あっ……またあの能力を使う気だわ!」

458兵BDたち「止めないと!でも……神代小蒔の能力によってこっちの攻撃は無効化される……」

咏「……そんなに焦らなくていいんじゃないのかねぃ?」

458兵BDたち「えっ?」

咏「確かにさ、神代小蒔の〔八咫鏡(やたのかがみ)〕だっけ?男女反転させる凶悪な技かもしれんけど……無敵じゃなくね?」カラン..コロン..

霞「!」

霞(何を言っているの?小蒔ちゃんの能力に弱点があるとでも?薔薇妄想士でもなければ〔八咫鏡(やたのかがみ)〕を打ち破る方法なんて……)

咏「例えばさ……その能力の範囲内に……味方がいたら?」

小蒔「!」

霞「ぁ……」

咏「味方も百合妄想できなくね?」

458兵BD「確かに……」

咏「1人で戦う分にはかなり有効かもね。けど……共闘には向かないんじゃないかなー?」アハハ

小蒔「そ、それは……」

咏「その証拠に、巫女さんたちは離れて見守ってる」

巫女軍団「っ……」

咏「ま、もしもそれがカモフラージュで、実際の能力は範囲型じゃなくて誰か1人を対象にするっていうタイプだとしても……こうやって」シュァァァ..

小蒔「!」

霞(咏)「味方と区別できなければ攻め手は鈍るわよね?うふふ」

霞「!!」

ボフッ..

咏「なんてね。ま、最強クラスの能力の持ち主でも、本領発揮させなきゃいいって話」

アコノ「………三尋木プロ。やっぱりあんたが一番厄介かもね」

咏「あっはは!それはどうかねー?」

霞(……やりづらい相手……ここはひとまずみんなを追って校舎へ逃げるとしましょうか)チラ

アコノ《……今、話してる間に態勢を整えられてしまった。先行した灼さんたちの後を追おうにも……》

霞《ええ。先ほどよりも強固な陣形を敷いてしまったわ。崩すのは骨が折れそう。モタモタしていると、他の幹部がやってくるかもしれない》


アコノ《ということは……隣にあるもう1つの校舎を目指すべきだね。そっちの方はまだ守りが薄い》

霞《そういうことね。2つの校舎は中で繋がっているみたいだから》

アコノ《それじゃあ決まり。後は三尋木プロをどうやって振り切るかだね》

霞《…………それが一番の問題ね》

咏「んー?何か相談してるのかねぃ?何をしようと無駄じゃね?しらんけど」

小蒔「!今が無防備でチャンスです!〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ ) 〕」カッ!!

シュゴオオオオオオオオ!!!

咏「!あ、やべ……………ぅぅ……」ドサッ..

霞「すごい……小蒔ちゃん」

小蒔「やりました!三尋木さんをやっつけちゃいました!」ニコリ

咏「………………」

アコノ「…………待って。油断しないで。そんな簡単にやられる人じゃ…」

458兵BE「ないって?正解かもねぃ」

霞「!」

ボフッ..

咏「…………ふふふ」

小蒔「えっ」

咏「残念。最初から私はこっちにいたんだよ。神代さんの能力の範囲外にね」クスッ

458兵BD「き、気付かなかった……」

咏「……そしてその間、神代さんにはたっぷりと……」

小蒔「っ!?」

『好き』、『あなたの手ってさ、柔らかいよね』、『お揃いのリング。内緒の関係』、『私はあなたが好き。誰にも渡したくないの』……。

小蒔(これは……頭の中に妄想が大量に浮かんで…………うぅ……音量が大きすぎて頭が痛い……まるで都会の交差点です)フラッ..

霞「小蒔ちゃん!」

咏「離れた位置からならいつでも対処できると思ってるでしょ?確かに君なら余裕で可能かもしれんね……ただ、私相手にそれは通用しないよ?私の能力の支配下にあるなら、この程度の距離は十分射程圏内だからねぃ」

小蒔「うぅ……」

アコノ「………ほんっと、厄介……」

咏「……とはいえ、一撃で仕留めるのは無理だったみたいだね。君、タフすぎるよ?」

霞(三尋木プロの言う通り、小蒔ちゃんの体力は並外れている。でもそれは九面が小蒔ちゃんを守っているからで……)チラ

霞《小蒔ちゃん。大丈夫?九面の様子は……》

小蒔「あ……」

小蒔《……二柱が力を失ってしまいました》

霞《そう……》

霞(残りは七柱……)

咏「んー?かかってこないのかい?それなら、こっちからいっちゃおうかな?」

霞「……!」

咏「…次は君たちも一緒に仕掛けてね?あの子たちの近くから攻めれば神代さんは男女反転が使えないからねぃ」

アコノ「!」

458兵BCたち「は、はい!わかりました!」


アコノ(どうする……ここは逃げる一手だと思うけど、もしかしたらすでに三尋木プロの能力にかけられてるかもしれない……そうなったら、逃げたところに攻撃をぶつけられる上、こっちは遠すぎて反撃ができない……)

咏「よーし、それじゃあ……」

ワァッ..

咏「む?」

458へいたち「あ、あれ……からだが……ちいさく……」

霞「!子供に変化した……これは……臼沢さんの……」

塞「こっち!急いで!動きを止めるほど余裕はないから!」

エイスリン「オソイ!」

智紀「早くこっちに」

戦うためにこの場に留まった小蒔、霞、アコノの元に、先行したはずのメンバーのうち、塞とエイスリンと智紀が引き返してきていた。

それは咏たちからすれば想定外であり、虚をついた〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕に動きが止まる。

アコノ「!」

アコノ《今よっ!走って!こっち!》タタッ!

小蒔「は、はいっ!」タタタ..ポニュポニュ

霞「行きましょう。小蒔ちゃん」ユサブルルンタタ!ユサブルルンタタ!

アコノ(能力の支配下にある可能性はあるけど……それでも今はこの場を離れるのが正解!わたしの直感がそう告げてる!)

咏「……残念。君たちはすでに私に囚われてるんだよねぃ」ニヤリ

咏「逃げ切ったと安堵した瞬間、絶望が待っている……可哀想だけど、それもまた…」

ヒラリ

咏「ん?」

ヒラリ

視界を横切る黒い影。

それは細く弱く、風に吹かれる。

なんともいえない曲線具合。

素手ではなんとも触りづらい。

咏「これは………………おいおい、アレじゃね?」

そうだね、陰毛だね。

咏「…………こんなことをするのは……」チラ

晴絵「どうも」

咏「やっぱりね……」

晴絵「〔陰毛怪奇ファイル〕。師匠ほど本数は出せないけど、香りは甘いし、なかなかだと思う」ニヤリ

咏「知らないよ」

晴絵「そう……ま、いいけど」

咏「……あの子たちを逃がしたのはいいけど、君はどうやってこの状況を切り抜けるんだい?」

晴絵「…………」

咏「LB軍もLFG軍もいるけど、数の上で圧倒的不利。詰みっぽくね?しらんけど」

晴絵「……ふふ……かもしれないね」


咏「……承知の上ってことかー。玉砕覚悟?」

晴絵「諦めるつもりはないけど……ね!」ザッ!

覚悟を決めた晴絵は戦場に舞う。

余裕を醸し出しながら咏は優雅に躱す。

陰毛、扇子、着物、靴。

お互い変わった髪型なれど、

抱える想い、信念は異なる。

百合とふたなりの舞踏と武闘。

相容れ『る』のか、『ぬ』のかは不明。

それでも決して止めない歩み。

咲くのは栗か百合の花か。

頂点に立つ者は常にひとりであり、

真実はいつもひとつ―――


タタタタタ...

アコノ「……さっきはありがとうございます。助かりました。でもどうして引き返してきてくれたんですか?」

智紀「鍵をかけられた」

アコノ「鍵……?」

塞「少し前に向こうの入り口に着いて何人かは中に入れたんだけど………途中で邪魔されてね」

智紀「私たちは外に締め出されて……」

エイスリン「カギカケラレタ!キチク!」

塞「しかもドアの前をガッチリ固められちゃって……だからこっち側の入り口を目指すことにしたのよ」

霞「あらあら……」

小蒔「大変だったのですね」

塞「うん。そしたらあなたたちがピンチだったから私たちが助太刀したってわけ」

アコノ「そっか。じゃあ他のメンバーは入口を確保してくれてるってとこ?」

智紀「そう。同じ轍を踏まないよう、小瀬川さんたちに行ってもらってる」

塞「だからできるだけ早く……って、いたいた」

タタタタタ..

白望「おかえり」

小蒔「お待たせして申し訳ありませんでした」ペコリ

トシ「ババアと留守番は相性いいんだよ。気にしちゃ損損」

全裸初美「2人が無事でよかったですよー」

霞「ふふ……初美ちゃんもね」

小蒔「本当……よかったです」ホッ

ゆみ「揃ったな。では早く入ろう。すでに中で待っている者たちもいるからな」

煌「はい!すばらにお邪魔しましょう!」スバラッ!

こうして彼女たちは校舎の入口へとたどり着いた。

東校舎と西校舎。2組に分かれた百合妄想士たち。

建物に入ったことで大勢に囲まれる危険性を回避したとはいえ、ここは敵地。

まだまだ何が起こるかわからない。

合流できた安堵感を味わった後、

これから待つであろう戦いに向けて新たに気持ちを切り替えるのだった。


【地上エリア ???】

咲「う、う……ん………」

咲「……………………」

咲「………………ん?」パチリ

咲(ここは……どこ?私は……えっと……確かお姉ちゃんがいっぱいいるルートに突入して…………!)ハッ

咲「誰かに引っ張られて……!」ガバッ

健夜「おはよう」

咲「ひっ!」ビクッ..

健夜「……そんなに驚かなくてもいいじゃない」

咲「で、でも……458プロの……一番偉い人ですし……」

健夜「まぁ……そうだね」

咲(あれ?一番偉い人がいるということは……ここは天守閣みたいな場所!?もし私がこの人を倒せば、なんだかんだ色々あったあとに…………お姉ちゃんと結婚!?)

咲「………………お姉ちゃんと結婚……」

照『お父さん、お母さん、今日まで私を育ててくれてありがとう。私は……咲と幸せになります』グス

咲(ウェディングドレスで涙目のお姉ちゃんかわいい!!)ハァァ..

健夜「……ずいぶん楽しそうだね」

咲「え?あっ……」

咲(そうだ……ここは敵の本拠地なんだよね……落ち着かないと)スー..ハー..スー..ハー..

咲(…………うん、落ち着いてきた。おかげで周りもちゃんと見えるようになった)キョロキョロ

ハギヨシ「……GRAND M@STER、お茶をどうぞ」コトッ

咲(!あれ……あの人はりゅーもんさんの家の執事さん、だよね?どうしてここに……)

健夜「ありがとう」

咲「…………」

健夜「……どうかした?ああ、ハギヨシさん?彼ははやりさんのファンになったの」

咲「はやりさん……」

ハギヨシ「ええ。はやりさんは私の嫁の嫁です。百合百合で素敵なアイドルです」ニコリ

咲「そうですか」

咲(お姉ちゃんを嫁にしないなら別に問題ないね、うん)

咲(…………あ、そういえば……)

咲「あ、あの!」

健夜「なに?」

咲「お姉ちゃんは……どうしてるんでしょうか?」

健夜「………さぁ?もしかしたら今頃負けてるかもしれないね」

咲「!!」

咲(そ、そんな……お姉ちゃんがもし負けちゃったんだとしたら……きっとその相手はお姉ちゃんの可愛さに目がくらんで……)

咲(裸にして後ろ手に縛って猿ぐつわを噛ませたお姉ちゃんにいやらしいことをする気なんだ!)

咲(私の写真の前でアヘ顔満貫ツモ和了りとかさせて…………許せないよ!)

健夜「よいしょっと」テクテク

咲(『これは妹の写真をプリントアウトしたベッドシーツよ。あなたは今からこのシーツに体を擦りつけてイきなさい』とか命令しちゃって…………恥ずかしがりながらも快楽に負けちゃうお姉ちゃんかわいい…………って、ダメダメ!今のなし!)ブンブン


健夜「……宮永咲ちゃん」

咲「え……?」

健夜「…………」

無言で咲を見つめる健夜。若干の怯えを含みながら見つめ返す咲。

2人に目を向けることなく直立不動のハギヨシ。

静かな緊張感が揺れていた。そしてそれは部屋の中だけでなく、ドア1枚を隔てた向こう側でも……。

桃子「…………」

桃子(エイスリンさんのボードを取り返すはずが、なんかとんでもないところに迷い込んだっす)

桃子(でも結果的に小鍛治プロの居場所を突き止めることに成功したんすから、よかったんすよね)

桃子(それに宮永さんが捕まってることもわかったっす。ここはボードの件はいったん忘れて、宮永さん救出作戦に切り替えっすね)

桃子(小鍛治プロがいなくなるまで待機っす)

ハギヨシ「………で………す?」

桃子(ん?話し声っす)

健夜「……に…………から」

桃子(……よく聞こえない……もう少し近付いてみるっすか)ピタッ

健夜「―――――」

ハギヨシ「――――」

桃子(……………………)

健夜「―――――」

ハギヨシ「―――――」

桃子「!!!」

桃子(い、今の会話……マジっすか…………)

桃子「………………」

桃子(はっ!?って、ボーっとしてる場合じゃないっす!今の話の内容を先輩にメールして、あとは宮永さん救出作戦を続行っす)チャッ

ギイィィ...

桃子(!?ドアが開いた…………なんてタイミングっすか!とりあえず、息を潜めて……)

健夜「…………」バタン

桃子(………………)

健夜「…………」

桃子(…………どうして動かないっすか?何か忘れ物?)

健夜「東横さん」

桃子「ひっ!?」

桃子(な、どうして!?ステルスは完璧に……)

健夜「ごめんね?しばらくの間、私たちに付き合ってもらうね」ガシッ!

桃子「!!」

健夜「メールも……この戦いが終わるまでは禁止」クスッ

その笑みは優しい聖母のようだ。

しかし桃子は健夜の笑顔に、心の胸ぐらを掴む精神的スケバンのような恐怖を覚えたのだった―――。


【儚可憐女学院 東校舎】

照「………………」

久「どうにも身動きがとれないわね」

洋榎「暇や。めっちゃ暇や」

怜「ほんまやなー」(膝枕る)

竜華「そやなぁ」(膝枕れ)

小蒔たちより一足早く校舎へたどり着いた面々が、東校舎の入り口付近の昇降口にて、何をするでもなく集まっている。

休憩をしているのではなく、単純に身動きがとれないのだ。

入口のドアは外から封鎖され、北校舎へと繋がる通路はバリケードで塞がれている。

いくつかある教室は全て鍵がかけられており、開放されているのは女子トイレのみ。校舎内に閉じ込められた形だ。

ただ、外に出る手段がないわけでもない。廊下の窓は内外から開錠できないようにされているが、ガラス部分は防弾でもなければ強化ガラスでもない。

よって、ガラスを割れば脱出は可能だ。

しかしガラス付近には貼り紙があり、『割ったら裁判必須』と書いてある。

さいばんこわい。ということで、一同は平和的解決を望んだのだ。

ちなみに東校舎にいる面子は、

宮永照、竹井久、深堀純代、愛宕洋榎、園城寺怜、清水谷竜華、タカラシアコノ、鷺森灼、龍門渕透華、国広一、荒川憩、小走やえだ。

アコノ「はぁ……一体何がしたいんだろう?兵糧攻めじゃあるまいし……」

久「外で戦うよりも安全かと思ったけど……この状況が長く続くと、まずいわよね」

灼「……うん。いつでも外に出られると踏んでたから逃げ込んだけど、これじゃ袋のたぬき……大勢で突入されたら終わりだと思…」

憩「たぬき?」??

純代「……久保コーチがいたらガラスを割ってくれたのに……」

久「そうね……『裁判?知らねェ!』とか言って普通に割りそう」

怜「しかも頭突きでな」

洋榎「せえへんわ、そんな無駄な捨て身」

透華「こんな時、ハギヨシがいてくれたら……」

一「うん……そうだね。『すでに開けました』だろうね」


【儚可憐女学院 北校舎】

一方、遅れて到着した北校舎組も、入口を封鎖され、閉じ込められていた。

こちらも東校舎組と同様、探索した後に昇降口に集まって並んでいる。

面子は左から、

小瀬川白望、エイスリン・ウィッシュアート、姉帯豊音、熊倉トシ、老婆たち、

沢村智紀、加治木ゆみ、花田煌、埴淵久美子、神代小蒔、石戸霞、臼沢全裸初美塞。

全裸初美「ちょ、ちょっと近いです、というより……なんで包むように抱きしめてるですかー///」

塞「閉じ込められて怖がってるかもしれないから……その恐怖心を塞いでるのよ」ギュッ..

全裸初美「うぅ……」

塞「……は、はつみたん……あったかいね、ふふ」

全裸初美「も、もう……///」

霞(あら?満更でもなさそうなのは気のせいかしら?)

小蒔「臼沢さん大胆です……」パチパチ

ゆみ「……さて、どうするか。校舎が内部で繋がっているからこそ、別行動をとっても合流できると踏んだんだが……」

智紀「とりあえず、連絡……」

煌「連絡?どうやってですか?」

智紀「携帯……」

白望「あ、そうか……地下では使えなかったけど、ここは地上だから……」

久美子「!確かに……すっかり忘れてたわ」

塞「私も………くんくん……忘れてた」

全裸初美「か、嗅がないでほしいですよー……///」

エイスリン「カンジテル?」

全裸初美「感じてませんよー!」

久美子「だったらここでネットもできるわね。よーし」ピ..ピ..ピ..

豊音「ふーむ。この5索は通る気がするよー」ピコピコ

トシ「じゃあ通らなかったら罰として電源切るんだよ」スッ...

豊音「だ、ダメー!今の発言は取り消します!」アワワ

ゆみ「……あの、とりあえず今は連絡を…………いや、私が電話をすればいいだけか。モモ……は隠密行動中だ。見つかるとまずい。久に電話を…」

♪ピンポンパンポーン

ゆみ「なんだ?……校内放送か」

健夜『校舎にいる皆さんへお知らせします』

智紀「……お知らせ?」

塞「やっぱりそうよね。閉じ込めるだけなんて無意味だし。元々有利なのは向こうなんだから」

煌「確かに……」

健夜『今からあなたたちがとるべき行動をこちらで指示します。その通りに動いてください』

トシ「私は誰かに命令される年齢じゃないんだよ。それに最近は自分でも思う通りに体が動かないんだ。生きるって辛いよ」

白望「……カップ麺を控えればいいと思うんだけど……」

トシ「………あんたらはみんな同じことをいうんだね。カップラーメンをいじめないでおくれよ。いいやつなんだ」


ゆみ「あ、あの……申し訳ないのですが、放送が聞こえないとまずいので……」

トシ「お口チャックは得意さ。任せな」ンー..

健夜『今から数名ごとにチーム分けをし、それぞれある場所へ向かってもらいます』

豊音「………………」

健夜『そこには458プロの幹部他、こちらの主力が待ち構えています』

ゆみ「………………」

健夜『何をするかは説明いらないですよね?ふふ……』

智紀「戦闘……」

霞「当然そうなるわよね」

健夜『戦闘開始は30分後。メンバーはこちらで選ばせてもらいますけど、指定されたエリアの何処に行くかはそちらで決めて構いません』

トシ「ありがとうございます」ペコリ

小蒔「あっ……ありがとうございます」ペコリ

全裸初美「姫様、しなくていいですよー?」

ゆみ「………………」

健夜『……では、メンバーを発表します』


【東校舎】

健夜『まずは東校舎から。1組目、園城寺さん、清水谷さん、愛宕さん』

洋榎「!」

怜「……うちらを離すことはせえへんねんな」

竜華「嬉しいなぁ」

健夜『2組目……竹井さん、新子さん、高鴨さん、小走さん』

やえ「おまたせ!」

久「……バランスは悪くないわね」

アコノ「………………」

健夜『ラスト3組目は……宮永さん、深堀さん、鷺森さん。以上です』

照「!………」

照(誰が相手でも……絶対勝つ。勝って、咲を助けるんだ)グッ..

純代(3組とも割とバランスのとれた人選……)

灼(ハルちゃん……会いたい……)

健夜『選ばれなかった人たちはこちらが指定する場所で待機してください』

憩「安心したわぁ。うちが選ばれても戦えへんもんなー」

透華「私も同感ですわ」

一「そう考えるとフェアな選考と言えるかもしれないね」

アコノ「………………」


【北校舎】

健夜『次は北校舎ですが……こちらは東側とは違い、1組のみとなります』

霞「あら」

ゆみ(……外から見た校舎はどちらも同じような作りだったが……何故こちらだけ1組なんだ?)

健夜『メンバーは……石戸さん、神代さん、薄墨さん、加治木さん、エイスリンさん、花田さん、臼沢さん、沢村さん、小瀬川さんです』

エイスリン「エラバレタ!」

煌「すばらです!」

塞「……やっぱり全員ではないのね」

智紀(このチーム分けに何の意味がある?それとも余裕だからゲーム感覚で遊んでるとか?)

ゆみ(……エイスリンさんはイラストボードを奪われたままだ……実質9人か)

豊音「また待機かー。ゲームがちょー進むよー」

トシ「いつの時代も選考漏れは心に穴を空けるね」ハァ..

久美子「うーん……」

久美子(この組み合わせはどういう意図なんだろう?カプにしては奇数のところもあるから1人あぶれちゃうし……まぁ怜竜をかき回す愛宕さんとか、深堀さんに乗られて身動きできない鷺森さんをくすぐって恥ずかしがらせるとかもありだけど……)


【東校舎】

健夜『以上でチーム分けを終わります。次に対決する場所ですが……』

アコノ「………………」

健夜による説明が続く中、アコノは黙ったまま考え込んでいた。

アコノ(どうして急にこんなルールを作って戦わせるんだろう?窓の鍵全てが開かないようにしてあることといい、徹底してる)

健夜『……というわけです。詳しい場所は昇降口の壁に貼ってある見取り図を見てください』

アコノ(大体、わたしたち主力メンバーを校舎に閉じ込めてるんだから、東か北かどちらか一方を幹部総がかりで攻めればそれで458プロの勝利は決まるはずなのに、どうしてこんな回りくどいことを……)

健夜『ちなみに、チーム分けを守らなかったり、選ばれていないメンバーが対決指定区域に侵入した場合はペナルティがあります』

アコノ(ペナルティ……それが狙い?)

健夜『ペナルティとは…………こちらでお預かりしている子たちによくないことがおこる、というものです』

アコノ「…………」

照「お預かり……まさか!」

健夜『……ほら、呼びかけて』

ガガ..

咲『お、お姉ちゃん……』

照「咲!!」

咲『ごめんねお姉ちゃん。私、小鍛治プロに捕まっちゃった……』

照「咲……っ!」

咲『それと……』

桃子『先輩……すみませんっす。私も捕まったっす』

久「っ!東横さんまで……!」

健夜『……わかりましたか?この2人は私の手の中にいます』

照「っ……!」ギリッ..

咲『お、お姉ちゃん!!』

照「……咲……?」

咲『……わ、私は大丈夫だよ!昔お姉ちゃんが部屋でしてた1人遊びみたいな設定だけど……平気だから!!』

照「!!!待っ……」

桃子『1人遊び?どんなのっすか』

咲『……エッチな後輩に誘惑されちゃった劇場~~私、初めてなのに~~……ってやつ。胸とかアソコとか結構強引に触る物語だよ』

照「さ…………き…………そ、れは……」

ガヤガヤガヤガヤ..

え?それってもしかして1人エッチじゃ……

責められ願望があったんだ……意外……

後輩……誘惑……初めてなのに……ここから導き出される結論は……マゾってこと?

ガヤガヤガヤガヤ..

照「せ、静粛に!今は放送をき、聞くべき」

咲『触る前にね?すごく調子に乗った状態を演じるのが特徴なんだぁ。あ、その部分も強要されてないから安心してね、お姉ちゃん!』


照「~~~~っ////」カァァァァ....

ガヤガヤガヤガヤ..

どういうこと?

おそらく絶頂からドン底に落ちた時の快感を増幅させる前フリやな。あるいは滑稽さを強調する狙い……

なるほど……

脳内じゃなくて実際に演じるのはレベル高いわね……

ガヤガヤガヤ...

照(うぅ……若気の至りなの……本当に……10回もやってない……)

久「ま、まぁ……もしかしたら咲が小鍛治プロに命令されてデタラメ言わされてるだけっていう可能性もあるから……」

照「ひさ……ありがとう……」

久「う、うん」

久(だって本気で泣きそうなんだもの)

健夜『……そうそう。よくないことをすると言ったけど、もちろん叩いたり引っ張ったりはしないからそこは安心して』

怜「引っ張る……」

竜華「その響き……嫌いやない…………ぽっ///」

怜「や、やめぇて///」

健夜『ただ……心変わりをしちゃうかもしれないってだけ』

照「え……?」

健夜『優しく……時に激しく…………そんなことが続くうち、気が付いたら………なんてことになるかも。それが嫌なら説明した通りに行動してください。以上です』ブツッ..

洋榎「激しくって……まさか、オーク兵を使って…」

照「や、やめてっ!!」

洋榎「ぅわあ!じ、冗談やんけ!そない血相変えんでも……」

照「オークなんてありえない!せめて触手……いや、スライム……というか、どれもダメ!絶対!」

怜「……冷静な宮永がこうも取り乱すとは……」

竜華「それだけ妹さんのことが大切なんやねぇ」ホッコリ

怜「…………そやな。あんな致命的な暴露話された直後でもこんだけ心配できんねんから」

照「ち、違う。暴露じゃない。事実であると認識できる証拠は今現在確認されておりません」キリッ

怜「いや、けどあれだけ慌てて……」

照「誘惑されちゃった劇場なんて開催してない。本当に」

怜「…………そう、わかった。信じるわ」

照「あ……ありがとう」ホッ

怜「ん…………あ、そや。それで後輩にどんな感じに責められるのを想像するん?」

照「今まで通りの態度に少しずつエッチなタッチが加わってくるとかかな?気が付いたらもう逃げられない……という感じ。そこから少しずつ盛り上がって山場へ突入する」


怜「なんや、やっぱしてんねや」

照「あ」

怜「引っかかってくれてありがとうな」

照「………………」

怜「今…霧は晴れた」

照「………………」

怜「………………?」

照「さ……」

怜「さ?」

照「咲!お姉ちゃんが絶対助けに行くからね!」

怜「無理無理。熱血では誤魔化されへん。あんたのキャラちゃうし」

照「うぅ……///」

久「ま、まぁまぁ、照の話はその辺にしましょうよ」

怜「ん……そやな」

照「ひ、ひさ……ありがとう……さっきに引き続き……」グス..

久「い、いえいえ」

竜華「それで?どないする?放送で言われた通りにした方がええよなぁ?」

久「うーん……大げさに言ってるだけで実行に移すとは限らないんじゃないかとも思うんだけど……」

アコノ「……いや、どうかな?可能性がなくはないと思う」

久「え」

アコノ「瑞原プロがいるから」

久「あ!」

アコノ「愛宕さんのオバハンをメロメロにして458プロ側に引き入れた能力の持ち主……宮永さんや東横さん相手でも同じようにできるはず」

洋榎「オバハンっておかんの前で言うなや?マジでキレるで?」

照「さ、咲が瑞原プロに……メロメロ?」

照「……………………」

『ごめんねお姉ちゃん……お姉ちゃんと割り勘でファミレス行くよりも、はやりちゃんのグッズを買う方が有意義なお金の使い方だと思うんだ。ようするにお姉ちゃんよりはやりちゃんの方がかわいい!』

照「…………耐えられない」ガクッ

久「照!?」

照「こんな未来がきたら世界に色はない。私はお菓子食べ過ぎの死を選ぶ」ハァー..

洋榎「何を最後に願望満たそうとしてんねん。滅多なこと言いな」

照「うぅ……咲……」

アコノ「…………とにかく、癪だけど従うしかなさそうね」

久「ええ」

純代(……久保コーチがいなくてよかった……もしいたら『知らねェ!絶対言う通りにしねェァァッ!』とか言ってただろうから……)


【北校舎】

ゆみ「………………モモ」

豊音「ぁ、ぅ……えとえと、大丈夫だよー!絶対東横さんたちは無事に助けられるよー!」

煌「同感です」スバラッ!

トシ「ただ、向こうの要求が今の放送で言ったことで終わりとは限らないよ?また追加されるかもしれない……それが続けば、いつかは……」

塞「ぁ…………」

老婆B「……そうなった場合、東横さんはオーク兵に……」

エイスリン「ダメ!オークイラナイ!ユリジャナイ!」

智紀「……最悪の事態の想定は必要ですけど……今はとりあえず放送で言われたように動くしかないと思う」

ゆみ「ああ、そうだな。オーク?とは何なのかわからないが……」

小蒔「あ、はい。私も知りません。おーくとはなんですか霞ちゃん」

霞「小蒔ちゃん。オークという言葉は口にしない方がいいわ。夜中に口笛を吹くと蛇が来るというけれど、それと同じよ」

小蒔「じゃあおーくと言わない方がいいんですか?」

霞「ええ」ニコリ

小蒔「わかりました。もうおーくと言いません」ニコリ

ゆみ「………………」

ゆみ(458プロが何故メンバーを指定する形をとったのかもわからないが、それ以上にプロたちを相手にどう戦えばいいのかが見えてこない……)


ゆみ(三尋木咏)

ゆみ(彼女が見せる幻は本物との区別がつかず、そしていつの間に能力をかけられたかも気付けないという厄介なもの)

ゆみ(複数相手でも使用可能で、幻を見ている間に集中攻撃を仕掛けられたら手も足も出ないだろう)

ゆみ(敵味方入り乱れての大混戦ならばLB軍たちによるけん制もできただろうが、少人数での戦闘となれば全員まとめて彼女の幻に魅せられてしまうかもしれない)

ゆみ(戒能良子)

ゆみ(彼女が規定する年齢対象のレーティングはこちらの妄想の内容を著しく狭め、本領発揮を阻止する。一度でもワイルドローズ的な雑誌を読んでいたら彼女の支配は避けられない)

ゆみ(こちらの力を抑えつつも本人は伸び伸びとピュアな妄想をぶつけてくる……彼女と戦うということは、ほとんどの人間がアウェイの中での勝負を余儀なくされる)

ゆみ(野依理沙)

ゆみ(久の話ではカプ妄想を数文字だけで放つという能力を使うらしい)

ゆみ(手数が多い上、1つ1つの妄想にかける想いは強い。パワーとスピードを備えた攻撃は脅威的。一度窮地に立たされてしまったら逆転は難しそうだ)

ゆみ(瑞原はやり)

ゆみ(一番戦いたくない相手。相手を無理やりファンにするという能力の使い手。それによってLFG軍の会長である愛宕さん、龍門渕さんのところの執事さんを味方へ引き入れた)

ゆみ(さらに彼女の背後には大勢のファンがいる。こちらの攻撃は全てファンが受け止め、彼女自身にダメージを与えるのは容易ではない。少なくとも私には無理だ)

ゆみ(彼女の能力を躱しつつ、ひたすら攻撃をする……言うは易し、だな)

ゆみ(……それに、能力の件を抜きにしても、私たちと彼女たちの間には大きな差がある)

ゆみ(基礎体力とでもいうべきか。同じような妄想でもプロたちの方が威力が上だ。これは妄想に費やした年月によるものか、それとも才能なのか?いや、両方かも知れない)

ゆみ(それにさっきの放送で、対戦相手は幹部『他』と言っていた。ということは間違いなく辻垣内たちとも戦うことになるだろう)

ゆみ(神代さんを負かすような相手に私の力が一体どれだけ通用するのだろうか?ただでさえ百合に出会った時期がみんなよりも遅いというのに……)

白望「……ねえ」

ゆみ「ん?」

白望「…………なんか思いつめてる……?」

ゆみ「え?」

白望「あんまり気にしない方がいいかも……できることだけやればいいっていうか…………」

ゆみ「ぁ……………」

ゆみ(…………そうか。私は相当不安気な顔をしていたんだな。気を遣わせてしまったようだ)フフッ..

白望「……あれ?違った?」

ゆみ「いや、君の言う通り少しナーバスになっていたようだ」

白望「……そう」

ゆみ「声をかけてくれたおかげで落ち着いたよ。ありがとう」

白望「……あー、うん」ポリポリ

ゆみ(そうだ……やるしかない以上、自分を信じて戦うしかない。モモを守ると誓ったんだ。怯んでたまるか)キリッ


【???】

健夜「……………………」

咲「………………………」

桃子「……………………」

ハギヨシ「………………」

健夜「……………………」

咲「………………………」

桃子「……………………」

ハギヨシ「………………」

咲(なんか暇だなぁ……放送が終わったあとは特に何を話すわけでもないし、何もされない)

咲(……そんな時は、お姉ちゃんのことを考えるに限るよね!)ヌーン..


~~~~~~~~~~~~~~~

照『あっ……』

咲『どうしたの?お姉ちゃん』

照『……裸でアイスを食べてたら……アイスをお腹にこぼしちゃった……』

咲『そうなんだ。じゃあ私が舐めとってあげるね?……はむ』

照『ゃっ!?そ、そこは……胸…っ!』ビクン!

咲『え?なぁんだ。こぼしたのって雪見だいふくじゃないんだ?』グヘヘ

照『ち、違う……』

咲『じゃああずきバー?』

照『違う……』

咲『ええー?でも……先っぽがあずきバーみたいに……固くなってるよ?』

照『っ……///』

咲『それに……あずきが……下の方にも……ふふふ』

照『だ、だめっ……///』

咲『大福、あずき……和の心……ちゅ』

照『あ、あぁっ///』

~~~~~~~~~~~~~~~


咲(えへへ……何につけてもお姉ちゃんかわいい!)

桃子「………………」

桃子(なんか余裕……私も先輩のこと考えてみるっすかね……)

ガチャ

智葉「…………」

ダヴァン「ただいま戻りまシタ!」

明華「失礼します」

桃子「!」

桃子(辻垣内智葉と留学生さんたちっす)

健夜「おかえりなさい。ずいぶん苦戦したみたいだね」

智葉「……ええ。さすがは宮永界、といったところでした」

咲「!」

咲(え?お父さん!?)

智葉「ちっ……何がふたなりの里だ。不気味な男め」

健夜「それで、倒したの?」

智葉「…………いえ、ひとまずダメージは与えましたが倒すまでには至らず。途中で切り上げてきました」

健夜「そっか、ありがとう。でもよく逃げられたね」

智葉「ええ……」

ダヴァン「GRAND M@STER!サトハはミヤナガカイを振り切るトキ、無茶しまシタ!強がってまスガ、疲れてるのデス!」

智葉「余計なことは言わなくていい」

明華「っ!?……こほん。サトハ疲れてるラララー♪」

智葉「歌で伝えろという意味でもない」


健夜「宮永界さんが相手ならしょうがないよ。今、回復してあげる」スッ

桃子(回復?小鍛治健夜の能力は癒し系っすか。ここから脱出したら先輩に伝えるっす)フームッス

智葉「…………申し訳ないです」

健夜「ううん、気にしないで」

智葉「…………」

健夜「…………じゃあ始めるね。目を閉じて」

智葉「…………」スッ

咲(目を瞑った辻垣内さんの顔の前に手をかざした……荒川さんとはやり方が違うんだね)

ダヴァン「うーん……回復中は暇デス。何かないでスカ?」

明華「…………小さいうちわで扇いであげます」ファサファサファサ

ダヴァン「オー!涼しくて癒されマス!ホワイトウィンド!青魔ホウ!」

健夜「…………終わったよ」

智葉「………ありがとうございます」

ダヴァン「こちらも回復しまシタ!」

明華「準備完了ですね」

健夜「うん。開始時間までまだ少しあるから、それまでに着くようにお願いね」

智葉「はい。失礼しました」クルッ...テクテク..

ダヴァン「ではでは……出発デス!」

明華「♪行こう!スタッカートみたいに…」

智葉「やめてくれ。今月は余裕がない」

ダヴァン「ラーメンが美味しくなる歌をお願しマス!」

明華「♪小池さん 小池さん 好き好き~」

咲「………………」

眼鏡、ラーメン、ソング。

眼、ラ、ソン。

それは臨海の三国志。

彼女たちはこれから戦場へと向かう。

はたしてそこで何を見るのか…………咲はそんなことを一瞬だけ考え、すぐに照とのイチャイチャに思考を切り替えた―――。


【儚可憐女学院 校庭】

界「はぁ……はぁ……」

458兵たち「覚悟っ!とかちつくちてやるぅー!」

界「っ!しまっ…」

晴絵「はああ!!!」

ポチチポッチポチチポチチッポ!

458兵たち「うわああああ」バターン!

晴絵「師匠!大丈夫ですか!」

界「う……あ、あぁ、問題ない」

晴絵「あっ………これは……」キョロキョロ

界「……情けない話だが見ての通りだ。俺が築いたふたなりの里のち○ぽは縮み上がり、ほうれん草広場と化しちまった」

晴絵「ふたなりの里よりかはハイキングに向いてていい感じですけど、誰が広場にしたんですか?」

界「辻垣内智葉だ。正直油断してたよ……それと『向いてていい感じ』はやめてくれ。最初から剥けてたんだ」

晴絵「あ……これは失礼しました。そんなつもりではなかったんですけど……」

晴絵「………………」

晴絵(しかし辻垣内智葉……まさか師匠を相手にここまでやれるとは……)

界「里の崩壊と引き換えにかなりのダメージは与えたが……倒すことはできなかった。アッカドーンの方はどうだ?」

晴絵「三尋木プロと戦ってたんですけど、気付いたら逃げられてました」

界「……やはり一筋縄ではいかないか」

晴絵「はい。それと……耳を澄ませてください」

界「?わかった…………」

・・・・・・・

ァァッ!

ァァッ!

ァァッ!

晴絵「久保さんがあっちの方で愛宕さんと戦ってます」

界「そうか……そちらも放っておけないな」テクテク

晴絵「師匠?大丈夫なんですか?」

界「しんどいのは確かだが……ふにゃちんのままじゃいられねぇだろうが。俺のふたなりっ娘は絶倫だ」ニヤリ

晴絵「……はい!」

界の心強い言葉に晴絵は笑顔で頷く。

目指す先には雅枝と貴子。鎌とビンタのぶつかり合い。

強気女性のタイマン勝負。激闘必須の戦場だ。

そこに亀頭を割り込ませるべく、2人はほうれん草広場をあとにした―――。


その頃、儚可憐女学院校舎では、指定されたチーム分けに沿ったメンバーが廊下を歩いていた。

東校舎の3組。

怜、竜華、洋榎。チーム名は『チーム関西やっちゅうねん』

久、アコノ(憧、穏乃)、やえ。『インテリワイルドニワガール』

照、純代、灼。『言葉少なし大人し乙女』

北校舎の1組。

小蒔、霞、全裸初美、ゆみ、エイスリンちゃん!煌、塞、智紀、白望。『全裸系巫女天使☆ダルダルモノクルビート板~素晴らしき白い壁紙~』

それぞれ向かう場所は違うが、

このあと彼女たちは全く同時に戦闘を開始することとなる。

ちなみにチーム名を付けたのは熊倉さんちのラーメン狂である。

4組全てのチーム名が決まった瞬間、えらく満足気だったそうな――――


【東校舎 廊下】

<チーム関西やっちゅうねん Side>

洋榎「…………」テクテク

怜「……………」テクテク

竜華「…………」テクテク

指定された場所へ向かって3人が廊下を歩く。

途中までは他の2チームも同行していたが、分かれ道で別行動となり、今現在はこの3人だけだ。

洋榎「お、ここやな」

怜「ん、時間通りや」

竜華「到着♪」

洋榎「……普通の教室やな。いや、広さは2クラス分くらいありそうやけど」

怜「…………」

竜華「…………」

洋榎「……黙るなて。緊張してんのか?」

怜「してへんよ。ただ何が待ってるのか考えてただけや」

竜華「うちも。あと、何があっても怜だけは守ろうと決意をしとった」

洋榎「おいおい嫁。うちはどうなってもええんか。うちを守る決意は?」

竜華「うちはあんたの嫁ちゃうもん。うちは怜の嫁や」

洋榎「……ま、ええわ。入るで?」

怜「うん」

竜華「怜はうちの後ろ。うちは愛宕洋榎の後ろ」

洋榎「ちょっと待って。うちが一番危険な気が………ここはジャンケンで…」

怜「エースが先鋒なんはインハイと同じや。頼りにしてるで?」

洋榎「……それもそうか。しゃあないなぁ」ニヤリ

竜華「うわ……愛宕の性格、ちょろすぎ……?」

怜「しーっ!」

洋榎「…………ん?けど姫松は伝統的にエースは中堅……」

怜「いいから早よ入り」トンッ

洋榎「わ、わかったて!」

ガラガラガラ..

洋榎「失礼しまーす…………っ!」

怜「………!」

竜華「………!」

理沙「………………」プーマー

怜(野依理沙……)

竜華(妄想短縮、口下手女王……)


洋榎「……あんたが相手か……」

理沙「そう!」プム!

洋榎「……誰が相手やろうがやることは同じなんやけどな」

ガチャガチャ!

怜「!?今、扉の外で鍵が閉まる音が……」

理沙「無理!」

竜華「無理?何が?」

理沙「外!」

洋榎「外……?」

理沙「ここから!」

怜「……いや、一言しかあかんとしても、普通に『出られない!』でええやん」

洋榎「せやな。その方がわかりやすい」

理沙「…………」プーー..ンム..

洋榎「あ、怒ってる」

理沙「年下!」プマァ!

怜「……誰が?」

理沙「君たち!」プム!

怜「君たちって誰と誰?」

理沙「!?お、園城寺!」

怜「あーあ、そこは下の名前とか『怜竜!』でええのに。園城寺はないわぁ、長い」

竜華「それか『君たち!』てもう一遍言うとか?」

理沙「…………」

怜「喋るのが恥ずかしいっちゅうのは可愛いと思うけど、こういうところが詰め甘いなぁ」

理沙「…………」

洋榎「いや、その不器用さも嫁らしくてええで?」

理沙「…………」

竜華「そうそう。野依プロは天然さんなんやからあんまり言うたらあかんよ?」

理沙「………す」

怜「ん?なんて?」

理沙「たおす!」プモッフ!

怜「えっ!?」

理沙《森下×川口!森下×川口!森下×川口!森下×川口!森下×川口!森下×川口!!!》プムムムム!

竜華「うわああ!?」

怜「ちょ、ちょっと……いきなり激し……」

洋榎「せやから言うたんや!挑発すんのはやめようて!」

怜「今さら遅い!立て直すで」スッ

洋榎「わ、わかった!嫁嫁嫁ェ!!」シュババ!

理沙《引きこもり少女A×引きこもり少女B!》カキーン!


怜「っ!?オリキャラで回線をガード!?しかも固い……練り上げてるみたいやな……」

竜華「怜、どいて!がおー!」シュバッ!

理沙「!」

洋榎「お、ビームや!タイミングも完璧!避けられへん!」

理沙《…………怜×竜!!》

怜「!?」

竜華が放ったビームが理沙に当たる直前で屈折し、地面へと吸い込まれた。

当然、理沙にダメージはない。

竜華「な、なんで?今のは……」

理沙「……した!」

洋榎「した……って何をや!」

理沙「怜×竜!」

怜「っ………なるほど。うちらで妄想したっちゅうわけか」

洋榎「インハイの時、園城寺が清水谷と廊下で腕組んで歩いてたって話題になっとったもんな……知ってても不思議やないか」

竜華「やーん♪恥ずかしいなぁ//」

怜「………………」

怜(そしてうちらで妄想して竜華のビームを弾いたんやな)

怜「……ま、ええわ。次は私や。〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕」ギュアアアアア!!

理沙《怜×竜!竜×怜……》グググ..

怜「それで防いだつもりなん?甘いわ。それくらいなら押し切れる……っ!」ググググ..

理沙《っ……洋×竜!》カキーン!

怜「!?」

怜(っ!〔怜と竜華の日常(バカップルデイズ)〕を弾き返しよった!)

洋榎「洋×竜……うちと清水谷か!?」

竜華「なんでや!そんなん嫌や!」

洋榎「お、おいおい!そない強く言うな、っちゅうかいい加減覚えろや。お前もうちの嫁の1人やねんぞ!」

竜華「せやから勝手に嫁にせんといて!うちは怜だけ好っきゃねん!」

理沙《…………竜×洋!!ケンカップル!!》

怜「!!」

怜(今度は攻撃……!ぐっ……)

竜華《竜×洋!ケンカップル!洋×竜!ケンカップル!》ゴオオ!

怜(……い、言われてみれば確かに今の2人のやりとりは結構……い、いや、そんなわけない!)ブンブン!

怜「竜華!がさつ洋榎から離れて!こっちこぉ!」

竜華「怜~♪」

洋榎「なんでうちがディスられてんねん。ったく」

理沙「……立ち直った」プゥーム

怜「当然や」

怜(正直、愛宕洋榎と竜華がくっつくなんて考えたこともなかったから少し焦ってもうたけど……心配はいらん。私と竜華との絆は永遠や!絶対!)

怜(なんちゅうても新道寺カップルに勝ったんやから!)


【地下 エリアF】

哩「………………」

チュパ..チュパ..

哩「…………ん……」

哩(このキスは…………姫子か)パチリ

姫子「あ!部長!」

哩「……おはよう姫子。今何時だ?」

姫子「もうこんな時間です」サッ

哩「……ずいぶん長い間眠ってしまったようだな」

姫子「すみません部長……私が目覚めた時に起こせばよかったんですけど……部長の寝顔が愛おしくて……」

哩「ふふ……安心しろ。怒っていない。大体、私が姫子の立場でもそうしたさ。ずっと姫子を眺めとっごた」

姫子「ぶちょおぉぅぅ~///」

哩「……今頃は地上で戦っているのだろうな……」

姫子「あっ……はい。おそらく………………」

哩「ん?どうした?もしかして……あの方のことば心配しとっとか?」

姫子「……はい、大先輩ですし……」

哩「ふっ……心配は無用だ。あの方の伝説ば知らないわけじゃないだろう?」

姫子「それはもちろん知っています」

哩「普通に百合妄想するのではなく、できるだけ少なか文字数でクオリティの高い妄想ば生み出そうという縛りの中で努力し続け、カプ名ば告げるだけでそこに深いストーリーば埋め込む能力……」

姫子「時には『あ行禁止』、時には『名前呼び禁止』……自ら決めた制約ばかいくぐりながら妄想し続けてきたことで培われた精神力」

哩「そのストイックさは日常生活に支障ばきたし、妄想による脳内会話が主軸になったせいで、声ば発するのが苦手にまでなった……」

姫子「それでも決して妄想ばやめん、百合妄想士の鑑であり、縛りのスペシャリスト……」

哩「我ら新道寺女子が誇る最強のOG……初代リザベール様……」

姫子「………………」

哩「…………………」

姫子「……あはは。なんか……心配しすぎでした」

哩「ああ。リザベール様が負けるなんてありえない」

哩(そう……誰が相手であろうとな―――)

野依理沙。彼女は孤高の縛りスト。

またの名を明太王女と呼ばれた九州最強の百合妄想士。

しかしある時、

『明太王女というネーミングで代々受け継がれていくのはちょっと……』と言う気持ちを『名前やだ!』の一言でストーリー仕立てにして集約し、後輩を説得。

結果、初代リザベールとして新道寺女子に通う百合妄想士たちの間で伝説となった。

妄想しすぎの結果、口下手になるといったところなどは、どこか深堀純代を彷彿とさせる部分があり、

もしも純代が照との戦いを経験せずにそのまま成長し、ダイエットし、髪質その他を色々大幅に変えていたら……理沙のようになっていたかもしれない。

そんな理沙を相手に、怜たちはどこまで戦えるのだろうか?


【東校舎 理沙のいる教室】

理沙《八千代×秋!八千代×秋!八千代×秋!》プムモモモ!

怜「っく……犬神さんか……これは……辛いなぁ」

竜華「怜!うちの後ろに隠れて!ブロックしたる!」

理沙《……久美×真理!》プモヒュッ!

竜華(?くみ……まり……誰それ?)

洋榎「あかん!はじめの一歩や!!」

竜華「?」

怜への回線をブロックしようとする竜華。

だが理沙の妄想した間柴久美と飯村真理のカプ妄想の影響から、久美の兄である間柴了のフリッカージャブの如く、鞭がしなるように別角度から怜に命中した。

怜「ぅわぁ!?」

竜華「怜!!」

怜「だ、大丈夫や。今のはかなり強引な百合妄想……大した威力はない……けど」

竜華「けど?」

怜「怖いんは……」

竜華「怖いんは?」

怜「はじめの一歩のコミックスは……今現在……」

竜華「?」

怜「ひゃ、100巻以上発売…」

理沙《久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!久美×真理!》

竜華「ひゃああ!」

洋榎「お前ら!」

驚愕のラッシュ。

強引ゆえに一発一発の威力は微々たるものだが、様々な角度から繰り出され、間断なく叩き込まれる連続攻撃は、精神的ダメージを増加させる。

しかもそのラッシュは100発以上続くだろう。というのも……。

怜(―――……そろそろ終わるはずや……な、なんとか耐えた……)

理沙「…………」

怜(よし!終わった。ここで反撃や!)

理沙《真理×久美!》

リバース。それはカプの反転。

記者が看護師を押し返す。

怜「あ……」

怜(そうやった!あかん、防御…)

理沙《真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!》

竜華「こ、これ以上、怜に攻撃させへん!がおー!」バシュッ!

理沙「っ……」クルッ


理沙《真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!》

シュバァァァ..

竜華「な……び、ビームにぶつけて……消した!?」

理沙《真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!!!》

竜華「っ!がっ……ぅ……」

理沙《真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!!!》

洋榎「やめえ!嫁!うちの嫁を……いじめるなーーっ!!!」

理沙「…………」クルッ

洋榎「!」

理沙《真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!真理×久美!!!》

洋榎「ぅおおおお!?く、くぅ……こまいくせに……なんやこの強さは……」

怜たちはひたすら耐え続ける。

理沙を止めようと仕掛けても、真理×久美によって弾かれ、窮地におかえりなさいしてしまう。

下手に攻勢に出ると守備がおろそかになり、手痛いダメージを負う。

そう学んだ3人は、理沙の攻撃が残りいくつであるかなど考えず、ただ守りを固め、防御に専念した。

理沙「真理×久美………………」

竜華「……?お、終わった?」

洋榎「おっしゃ!この隙を逃すな!」

怜「わかってる!」

焦りの表情のまま反撃に出る2人。それもそのはず。

怜たちは理沙の次の手が予想できたからだ。

理沙《…………奈々子》

怜(奈々子!板垣の妹や!あかん、また100発以上くる!)ゾクッ..

怜「〔 怜 と 竜 華 の……」

洋榎「嫁ェ!嫁ェ!!」

理沙《……×久美!》

怜(間に合わん!ここは……)チラ

怜《りゅーか!!膝枕や!》

竜華「!わかった!」スッ

怜「っ!」タタッ!

怜「…………よいしょ」ストン

竜華「…………」ナデナデ

怜「ふぅ……」

もはや間に合わないと判断した怜は、理沙の攻撃を膝枕されながら耐えることにした。

そうすればダメージを受けつつも回復できるからである。

怜(〔リリース(Lilys×Release)〕を会得してからは回復量が増えとる……このままじっと我慢や)

理沙《奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!》

怜「ううっ!」


洋榎「………………」

洋榎(園城寺が集中攻撃を受けとる……助けてやりたいねんけど……なんか膝枕のままやったら大丈夫みたいやな)

洋榎(下手に手ぇ出してこっちを狙われたらうちの方が危ない。回復手段なんてあらへんし)

洋榎(…………けど、あの状態やと園城寺はともかく、清水谷がめっちゃ隙だらけなんちゃうか?)

理沙「………………っ」チラ

竜華「?」

洋榎(!やっぱり!清水谷を狙う気や!)

理沙《奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!奈々子×久美!!》

竜華「………………」

理沙「!?」

洋榎(……全然効いてへん?どういうことや)

怜「………………」

怜(…………危なかった……けど、こうして膝枕されて落ち着けたことで、ようやく本領発揮できそうやわ)

怜(私への攻撃は膝枕で回復しながら受ける。そして竜華への攻撃は……)

怜ちゃん《♪》

怜(怜ちゃんを介して膝枕の回復量を半分竜華へ流す!これで2人とも耐えられる!)

怜(……実戦で怜ちゃん出すのは初やったけど……完璧や。大成功)

竜華「…………」

竜華(そして……)

膝柳竜華《怜のために生まれた竜ちゃんが……怜ちゃんをパワーアップさせる!》

洋榎(……なんやようわからんけど、大丈夫そうやな)ホッ

理沙「…………」スッ

怜(?ラッシュをやめた?通用しないて気付いたんか)

理沙《…………纏(まとい)》

竜華「あ……」

理沙《×……麗子……!》ゴゴゴゴ...

洋榎(っ!こ、今度は……こち亀か!一緒に風呂入ってたシーン!)

怜「…………」

洋榎(あかんで園城寺!こち亀は190巻以上出とる!耐えきれるんか!?)

怜(……問題ない。元々百合要素が少ない分、一撃の威力は弱い)

理沙《纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子……》

竜華(あれー?攻撃が来いひんで?)??

理沙《纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子……》

怜「ま、マジなん……?」

怜(この感じ……力がめっちゃ高まってる。もしかして野依プロの脳内でいくつもの纏×麗子が集まってるんちゃうか……?)

怜の予想は当たっていた。

理沙は、纏×麗子のカプ妄想を縛り付けている。今までは1個1個飛ばしていたものをまとめているのだ。


女3人寄れば姦しい、という言葉がある。

では纏×麗子は?

纏×麗子が190組寄ったらどうなる?

いや、190ではすまないだろう。

纏×麗子が190組寄り、さらに麗子×纏が190組寄ったとしたら……?

それはもはや姦しいどころではないだろう。都心の大渋滞が『轟』どころではないのと全く一緒だ。

怜《あかん!竜華!ひとまずここは離れるで!》ガバッ!

竜華《わ、わかった!とりあえず端っこまで逃げよ!》スクッ!

理沙「……逃がさない!!」クワッ!

怜「っ!」ピキッ..

竜華「え……っ?」ピキーン..

怜(……体が……動かない)ググ..

竜華(うぅ……なんで?)

理沙「…………」

洋榎「?」

怜と竜華の動きを封じたのは、理沙のもう1つの能力だ。

〔言霊×事黙(ことだま)〕。

事あるごとに黙ってしまう口下手な彼女だからこそ、発せられる一言は深く、重い。

言葉に妄想を込めて発声することで、相手を言葉通りにコントロールできる。

今の場合は『逃がさない』という言葉に、様々な漫画やアニメで先の言葉を発するに相応しいシーン、あるいは自ら作り出した妄想シチュエーションを詰め込む。

そしてその力が溜まった時に、『逃がさない』と発声すれば、〔言霊×事黙(ことだま)〕の完成となり、相手は身動きがとれなくなる。

ただし効果の持続時間は短く、理沙本人が嫌う暴力的行動に関わる言葉や、複数の動作が必要な場合は無効となる。

つまりウルトラマンのお面をかぶって、キスを待って、そしてキスしたらピアノを弾いて……などはできない。

理沙「…………」プムッフー..

怜「ぁ……く……」

怜(全然動けへん……こんなん、竜華と無茶なんを試した次の日以来や)

理沙《……纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子……》

洋榎《お、おい!何してんねん!2人!やつが力を溜めてんねんぞ!早よ動けや!》

怜《わ、わかってるわ》

竜華《うちらかてそうしたいけど……体が固まって……それに何故か動きたないっていう気持ちが湧いてくんねん》

洋榎《……やつの能力か?どうもならんのか?》

理沙《纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子、纏×麗子……》

纏と麗子がどんどん増えていく。階段、カギ積み、折り返し……。

しかし決して消えない絆。

竜華《どうもならん……って?》

洋榎《やつの力で動きたない状態やってんやったら、逆に動きたくなるようなこと考えたらどうやって話や!!》

竜華《それは……》

怜《……………動きたなること……》


竜華《うちは……怜と遊園地とか行きたい!!》

怜《私も…………竜華と……デートしたい!》

パキップム!

怜「あ……」スッ..

竜華「動けた……」

理沙「!?」プンム!?

洋榎「おっしゃ!」

理沙「っ!逃げられない!」

怜「っ!」ピキ

竜華「また……!」ピキ

理沙「…………」

怜(……もっかい、さっきの要領で……)

竜華(怜と一緒に歩きたい!ずっと!)

パキップム!

怜「っ……よし」

怜(この能力の対処法がわかったわ。野依プロの命令と対になるようなことを妄想すればええんやな。わかればもう怖ないわ)

理沙「……眠る!」

怜「えっ!?そ、それは無理っ………………ぐぅ」コテン

竜華「とき……むにゃむにゃ……」

理沙「…………」プッフー..

洋榎「マジか!?めっちゃずるいやんそれ!」

理沙「…………」ジロリ

洋榎「う……」

洋榎(あかん。うちが眠らされたら絶対負けや!その前に……園城寺たちを起こす!)タタッ!

理沙「眠…!」

洋榎(!間に合わ…)

ゲシッ

洋榎「ぁ」フラッ

洋榎(こんなところで転ん…)

理沙「る!」

洋榎「っぎゃふ!」ドシン!

理沙「…………」

洋榎「いたたた……『えへへ。うち、いつもこけちゃうんですよねー』って言うてる場合やないわ」

理沙「…………」

洋榎「はっ!?あかん!早よ園城寺たちを…」

理沙「眠れ!」
洋榎「起こさなあかんわ!」タタタ

理沙「…………」


洋榎「……起きろ。ほれ、園城寺」ユサユサ

怜「ん…………ぁ、れ?」パチリ

洋榎「おっしゃ。起きたな」

理沙「…………眠れ!」

洋榎「次は清水谷やな。ほーれほれ」ユサユサ

竜華「んもぅ……朝からそない激しいのは無理やって…」ムニャムニャ

怜「な、何言うてんの///」ユサユサ

竜華「ふぁ?」パチリ

洋榎「よし。2人とも起きたな。助かったわ。うちまで寝かされてもうたら完全にアウトやった」

理沙「………………」

怜「?なんであんたは平気なん?」

洋榎「へ?」

怜「普通に考えて、全員寝かせたら楽勝やん。そんな必勝パターン持ってんのに、なんでせえへんねやろ?アホなんかな?」

理沙「!?」プム!!

洋榎「ええんちゃう?うちらにとっては敵がアホなんはラッキーやし」

理沙「ね、眠る!」

怜「ぁ…………すーすー」コテン

竜華「…ふぁ………ぐぅ」

洋榎「いや、むしろうちの強運が守ってくれてるんやないか?おお……なんか格好ええなぁ」

理沙「!!」

洋榎「って、何寝てんねん。起きろって」ユサユサ

怜・竜華「あ……」パチリ

洋榎「やつに言われんと寝てどうすんねん」

怜「は?いや、『眠れ』言うてたやん」

洋榎「言うてへんて」

竜華「言うてたよ。せやからうちら寝てしもてん」

洋榎「んー?聞こえへんかったけどなー」

怜「はは、あんた人の話聞けへんタイプやもんな。せやから野依プロの声も…………ぁ!」ハッ

怜(うちらには効いて、愛宕には効かへんのって……もしかして)

理沙「っ」スゥ

怜「…………!」サッ(両手で耳を塞ぐ)

理沙「眠る!」プームゥ!

竜華「…おやすみなさい……」グゥー..

洋榎「見当違いも甚だしいわ。人の話を聞くのは常識やっちゅうねん。うちは常識人中の常識人や」

怜「………………」

怜(やっぱりそうや。声が聞こえへんかったら眠らずにすむ!)スッ

理沙「…………」プムーーッ..

怜(つまりこの能力は、声に出した命令を聞いた人間を操るっちゅうわけやな。愛宕が耳を塞がんでも平気やったことを考えると『対象が聞いたと認識する』必要があるんかもしれへん)

怜(……ふむ。口下手やからこそ発する言葉には伝えたい想いが集約され、強い力を持つ……そんなところか。回線を使わへんってことは、脳内会話での命令やと効果なし、っちゅうことやな)


耳を塞いだまま立ち上がる怜の姿を見た理沙は悔しそうに頬っぺたを膨らます。

怜の表情から〔言霊×事黙(ことだま)〕の弱点に気付かれたと察したのだ。

洋榎に効果がなかったのは転んだ衝撃で聞こえなかったこと、そして集中しすぎるあまり理沙の声を認識していなかったため。

決して耳が遠いわけではない。歩く健康優良児。

理沙「……だったら……これを当てる!」

怜「っ!」

怜(……何言うてるか聞こえへんけど……溜めた纏×麗子カプを放つ気やな。それはまずい。とにかく竜華を起こして……)ユサユサ

竜華「ふぁ……?」パチリ

洋榎「常識を知ってるからこそボケられるっちゅうもので……っておい。耳塞ぐなて。話し中やろ」

理沙《〔 同 カ プ 団 地 ( ど う か ぷ だ ん ち )〕》プッムムーッ!

怜「!!」

理沙が頬っぺたを膨らませながら150近いカプの集合体を放った。

101から最上階、A棟B棟C、D棟。

全て纏と麗子のお部屋。夜な夜なキャッキャとでんぐり返し。

孤独な気分の時に幸せな家族のやりとりを見せられて幸せ当たりする人間がいるが、

この能力はその『家族のやりとり』を『カプのイチャイチャ』に置き換えたもの。

しかもそれは一家団らんではなく、団地単位で怜に襲い掛かる。

怜「っあ、あ、ああ、ああ~~……」ガクガクガク...

竜華「怜!?っ!」シャッ(神速で怜の頭を自分の膝へ)

怜「ぁ……う……た、助かった……」ホゥ..

竜華「よかった」ホッ

理沙「…………」プム..

洋榎「……って、なんやねんさっきから」

理沙「?」

洋榎「うちを除け者にして園城寺たちばっかり狙いおって」

理沙「…………」

竜華「愛宕……」

怜「がさつ……」

洋榎「ここに至ってそんなん言う余裕あるなら起きぃや」

理沙「…………」

洋榎「……しゃあない。ほんまは小鍛治プロと戦うまで秘密にしておきたかってんけど……ここで使うわ!」カッ!

怜「!」

洋榎「〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕」ゴアァァ..

理沙「…………っ!」

洋榎「そんで……これがうちの新しい力やっ!」クワッ!

洋榎「〔 百 合 婚 ジ ャ ン プ ( ユ リ コ ン ジ ャ ン プ )〕」シュウウゥゥ..エェィイイィィ...シャァァァ...

怜「!」


竜華「すごい……」

洋榎が力を解放すると、背後に数えきれないほどのキャラが浮かび上がった。

その誰もが洋榎にとっては嫁であり、愛すべき伴侶。1人に絞れぬほど全員が魅力的。

そんな嫁たちがズラリと並ぶ光景は圧巻。黄金期のジャンプのオールスターが集合したのとピタリと一致。

洋榎「へへ……ほなら見せたろやないか!うちの嫁自慢を!」ザッ!

理沙「…………」プムーー..

洋榎「行くで!まずは早乙女乱馬の女バージョンや!」

竜華「古いなぁ」

怜「しかもジャンプ作品ちゃうし。ちゃんとせえやもう」

細かいことを気にしないのも愛宕洋榎のチャームポイント。悩む現代人必見。

洋榎「くらえっ!」ヒュバッ!

洋榎の合図と共に後ろにいた早乙女乱馬(♀)が理沙に襲い掛かる。

理沙「!!?」

乱馬が理沙の体にぶつかると、その姿は霧のように消えた。

同時に、理沙の脳内に洋榎と乱馬の愛のエピソードが流れる。

『うちは乱馬の女性としての快楽を目覚めさせた。結果、男に戻りたなくなった乱馬は呪泉卿のことなど忘れ、うちと仲良く暮らした』

ちなみにナレーションは愛宕洋榎。

普段から嫁に対して抱いている気持ちや妄想が自動的にキャラにインプットされており、それが流れるのだ。

理沙「っ!」

『そして追いかけてきたシャンプーも嫁にし、3人暮らしに。なんやかんやで、あかね、かすみ、なびき、も加わり、ラッキースケベな毎日や』

理沙「…………」

『気ぃ付いたら九能小太刀に、二ノ宮ひな子もおった。そして良牙に嫌気が差した雲竜あかりもお風呂に入ってきた。スケートで体を冷やした白鳥あずさもおる。脱いどる』

理沙「意味不明!急にお風呂!?」プエスチョン!

『そんなうちらの生活は、らんま1/2やない!らんま100%!ちょいエロラブコメやあああ!!』

洋榎「どや!」

理沙「っ……へ、変!」

洋榎「次行くで!ゆりキャン!上代 ゆりか!!」シュバ!

理沙「う……」

怜「せやからジャンプはどこいったんや」

竜華「なんとなくで名前付けたんかなぁ」

『女スケコマシであるゆりか。数々の女を落としてきおった。けど、うちにコマされたことで嫁になった』

『これはつまり、ゆりかにコマされた茜や雪村、セシリアもうちの嫁っちゅうことになる』

理沙「!?ならない!」プッム!

『何故ならシューマイ理論が適応されるからや。つまり挽き肉やエビの練り物は皮に包まれとる……練り物は皮に抱かれ、身も心も全て皮に委ねとる…』

『皮がその気になれば地べたに放り出されるからや。もちろん、皮はそんなひどいことはせえへん。いつだって優しく包み込むんや。練り物を大事な嫁と思っとるからな』

理沙「…………」

『そんな皮やけど……練り物の前では女神を気取っとるけども!実は……グリーンピースに顔面騎乗されとる!!』

理沙「…………」


『皮に直接乗ってるんか練り物の上なんかは作り方次第やけども、どちらにしてもグリーンピースが嫁に顔面騎乗されとるか自分が乗られとるかの違いだけや。そんなのどっちもあかんやろ!』

『つまりグリーンピースは皮も練り物も手中に収めとる……もっと言えばそいつら全員に醤油が体液をぶっかけたりするわけや。えらいこっちゃぁ~』

理沙「長い!」プムッ!

洋榎「ぅお!?」

理沙《緋那子×亜衣梨(デビルサバイバー2)!緋那子×亜衣梨!緋那子×亜衣梨!》

洋榎「お、おいっ……まだ途中やろうが!」

理沙「でも動ける!」

『ようするに、ゆりか周りは全部うちの嫁!!』ゴォッォッ!

理沙「っ!?」フラッ..

洋榎「よし……効いたか。まだまだ行くで」

ニヤリと笑い、さらなる嫁を向かわせる。

今度はるろうに剣心の薫と巴。

原作版に加え、矢吹健太郎先生の描いた2人も並んでいる。十本刀以上に魅力的な四本嫁だ。

理沙「っ!」

さらに理沙の背後に回り込んだ巻町操が飛びつく。

そして弥彦より洋榎を選んだ三条燕もやってくる。

洋榎「嫁の波状攻撃!どや!」

それぞれに妄想が込められており、流れるナレーションが思考を邪魔し、反撃のための妄想を阻止する。

攻撃にして防御も備えている能力。さすがジャンプである。

理沙「……っ」

ただし、誤算だったのは相手が理沙であること。

理沙《ぁ……春香×優!!》プミィー!

洋榎「ごはぁっっ!?」

過去にどれだけ妄想してきたのだろう?と疑問に思うほど練られた理沙の妄想は一言で全てを語る。

この短縮妄想は〔百合婚ジャンプ(ユリコンジャンプ)〕でも防げない。

洋榎「き、きっついわー……なんやねんそれ……一撃の重さがさっきまでと全然ちゃうやないか」

怜「……単純に百合度が高いほど強力なんちゃうか?」

竜華「せやな。無駄撃ちでけへんから、うちらが元気な序盤は弱いの使ってたんかも」

洋榎「お、おいおい……膝枕しながら解説とはいい身分やないか、え?嫁ーズよ」

怜「誰が嫁ーズやねん」

竜華「うちは怜の嫁やけど///」

怜「あ…………アホ言いな、っちゅうか何度同じような会話すんねん……もう……///」

洋榎「……ちっ、まぁええわ。嫁同士仲がええ方が上手く回るわ」

理沙「…………」

洋榎(それよりこいつをなんとかせんと。力の消耗度合いを考えたら、嫁をちゃんと選んで飛ばさなあかんし)


理沙「…………」クルッ

洋榎(ん?なんや?園城寺たちの方向いて…………まさか!)

理沙《春香×優!!》プムウ!

怜「ぅぐっ!?」

竜華「っ……が……は……!」

洋榎「あかん!行けっ!姉崎まもり!梓川月乃!!」ヒュバ!

理沙《……春香×優!!》プマフ!

洋榎「うおおっ!?」

洋榎(早すぎるやろ!こっちが先手とったはずやのに!しかもまだ2回目……桜Trickは5巻まで出とるし、アニメもある……このまま続けられたらまずい!止めな!)

理沙「………!」

『セナより洋榎や!アメフトよりも洋榎!マネージメントしてる場合ちゃう!うちの指はまもりの森の奥にある守りをモリモリ元気に突破し……』

『月乃と一緒にパン食べながら抱き合う!明日はうちがお好み焼きプレイを披露するでー!』

理沙「…………」プムーハァ..

洋榎(おっ、さっきのが届いたか!けど、こっちも手は緩めへんで!)

洋榎「伊織、いつき、泉、藍子!!」ヒュババ!

理沙《……春香×優!春香×優!春香×優!春香×優!》プバァァ!!

怜・竜華「!!」

洋榎「!?」

怜(うちらと愛宕を……!)

洋榎(同時攻撃やと!?)

理沙「…………」プム...

『伊織にはグラビアはさせへん!うちの伊織や!嫁なんや!』

『芸術的なエッチをしようや……いつき……愛宕流のすっごいやつ見せたるわ……』

理沙「っ!」グ..

洋榎(よし!かなり効いとる!ここで追撃や!)タタッ

理沙「…………」ギラップム!

洋榎「!?」ゾワッ

洋榎(なんや?この寒気は……)

理沙《〔 同 カ プ 団 地 ( ど う か ぷ だ ん ち )〕》プッムムーッ!

洋榎(んなアホな!?さっき使たはずや!)

驚愕する洋榎。それも最もだ。

〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕の威力は絶大。

強力なだけに消耗も激しく、そう何度も放てるはずはないと誰もが思うだろう。

しかし、団地に住んだ人がそう簡単に引っ越すか?という観点から見ると、話は別。

纏×麗子はまだ入居して間もない。お隣も纏×麗子である以上、厄介な隣人トラブルもない。快適なのである。

ついでに反転カプの麗子×纏は別の棟に住んでおり、たまに挨拶するくらいでお互い踏み込まず、平和を保っている。

能力を発動する際には力を消耗するが、その威力に反して必要な力は意外と少ない。この立地と間取りでこの家賃!?てなものだ。

欠点としては発動までに時間がかかることと、団地に住めるほどの数のカプはそうそういないこと。

そして一度使用したら少しだけ休憩が必要だというくらいだ。


洋榎(あかん!まともに受け…)

怜《〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )》ギュアアアアア!!

理沙「!?」ヨロッ..

洋榎(お!?園城寺のおかげで反れた……助かったわ)ホッ

怜「……うん。そろそろ全快や。膝枕ありがとうな」

竜華「怜が元気になって嬉しいわぁ~」ギュッ..

怜「や、やめぇて///」

理沙「…………」ギリ..

洋榎「?」

洋榎(なんや?いっつも怒ってる顔しとるけど……今のんはそれ以上に不機嫌やな。邪魔されたからか?)

理沙「……離れて!」

怜「へ?…………わっ!」バッ

竜華「ぁ…………」バッ..

理沙「…………」

洋榎(しもた!2人を離すことで能力を制限さす気ぃか!)

洋榎(…………ん?けど、くっついてないとあかん能力でもない……やんな?膝枕はもう十分そうやし)

理沙「…………」

洋榎(しかも突っ立ったままで動かへん……なんなんや一体?)

理沙「……るさい……」

怜「?」

理沙「うるさい!!」プガー!!

怜・竜華・洋榎「!!?」

理沙「さっきから!嫁とか……!怜とか!竜華とか!うるさい!」プギー!

怜「な、なんや急に……」

洋榎「あんたかて纏×麗子って100回以上……」

理沙「うるさいうるさいうるさい!!」プム!

洋榎「っ!」チラ

理沙の叫びを受けて、自身の背後にいる嫁のシャナとヘカテーに目をやるが、とりあえず何もせず動向を窺う。

洋榎(なんか様子が変やしな)

理沙「……嫁……なんて……変!百合は……作品内のみ!!」

洋榎「!なんやと!?それはちゃうわ!うちが女である以上、うちと嫁のラブストーリーは百合や!」

理沙「違う!俺嫁思考!」

洋榎「何が悪いねん!キャラを愛してる証拠やろ!」

理沙「そんなの……望んでない!カプを割くのやめる!!」

洋榎「うっさいわ!最終的にうちが幸せにするんや!問題ないわ!!」

怜(この言い争いはなんや?口下手なはずの野依プロが、顔を真っ赤にしながら怒鳴って……)


竜華(もしかして時間稼ぎなんかなぁ?けど集中力を欠いてるから全然意味ないやんな?)

竜華が気付いたように、時間稼ぎではないことは一目瞭然だった。

理沙はただひたすら洋榎を怒鳴っている。そこに全神経を向けており、妄想をしていない。

その証拠に、理沙の脳内では〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕の住人である纏×麗子たちも何事かとドアを開けて理沙を見ている。

仮に今能力を発動しようとしても、準備ができていないため無効となる。

理沙「そんなの!幸せじゃない!」

洋榎「幸せや!嫁に囲まれてんねから!カプの残った片方も嫁にするしな!!」

理沙「っ……!」

洋榎「ふふん……論破や」

怜(いや、どこがやねん)

理沙「だったら……」

洋榎「ん?なんや?言いたいことあるなら言うてみぃ」

理沙「…………」キッ!

洋榎「ほれ」

理沙「…………っ」スッ(洋榎を指さす)

洋榎「ん?」

理沙「嫁を………私が寝取る!!」

洋榎「っ!?」

〔言霊×事黙(ことだま)〕が発動した。

言い争いをしていた流れから、確実に洋榎の耳へ届いてしまった。

怜(あかん!)

竜華(愛宕……)

理沙「…………」

洋榎「………………?」

洋榎(なんや?嫁を寝取るんちゃうんか?何ともないで?)

理沙「!?ね、寝取る!寝取らせる!嫁を差し出す!」

洋榎「…………」

しかし何も起こらない。

洋榎の嫁らも動かない。

理沙「…んで……どうして……」

怜「?」

理沙のトーンが変わった。


理沙「……あなたたちは……嫁とか……恋人とか…………」

竜華「野依プロ……?」

理沙「私は…………ずっと1人……」ポロ..

俯きながら喋る理沙。

その瞳から一筋の涙が零れ、

洋榎「ぁ……」

さっきまでの充満していた戦闘ムードは霧消した。

理沙「……ずるい!ずるい!どうして!私は……っ!私だって……!好きな人……と……」

怜「………………」

竜華「……………」

洋榎「……………」

抱えた想い。抑えた願い。

感情の吐露に乗せられるようにポロポロと涙が零れる。

理沙「……でも……上手に……喋るの……無理……で」

その姿は、か弱い少女を連想させた。

理沙「し、かも……ぐすっ……おん、女の子同士、だし……」

怜「…………」

竜華「…………」

理沙「だからっ!な、がめるだけで…………よかった……はず、なのに……」

洋榎「…………」

理沙「後輩が……っ……女の子同士……付き合ったって…………聞いたから……」

初代リザベールと呼ばれ、尊敬を集めた理沙。

しかし白水哩と鶴田姫子が羨ましかった。

理沙「アドバイス…………欲しかった…………でも……私を……尊敬…………とか言う……から……相談…………無理で……」グス..

怜(……そうか。『嫁を寝取る』っちゅう命令が通用せえへんかったのも、自分で自分の言葉を信じられへんかったからか)

理沙「だったら二次元で……って思った、けど……キャラ……たちの……幸せも…………う、奪いたくない…………からっ…………ただ……見守る……だけ…!」

百合百合しく結ばれる作品内のキャラたち。

その中に自分お気に入りのキャラがいても、決して自分とカップリングにはしなかった。

自分はあくまで傍観者に徹しなければいけない。自然とそう思ってしまうような人生を送ってきたのだから。

理沙「うぅ……っ……」

だけど。

いつからか心は寂しいと言っていた。

洋榎「…………」

理沙「うっ……うぅ…………ぐす……」

洋榎「…………アホか」

理沙「っ!」ビク

怜「…………!それはさすがに言いす…」

竜華「怜、大丈夫や」


怜「竜華?」

竜華「大丈夫」ニコリ

怜「…………」

理沙「うぅ……ぐす……あ、あほ……?」グシュ

洋榎「ああ。アホやな」

理沙「……あほ……」シュン..

洋榎「あんた優しすぎんねん」

理沙「え……」

洋榎「もっと自分に正直に生きたらええやんけ」

理沙「…………」

洋榎「好きなキャラは嫁にしたらええし」

理沙「で、でも……っ!作品から無理矢理引っ張り出して嫁にするなんて………そんなことは……」

洋榎「知らんやん。好きなんやから」

理沙「!!」

洋榎「向こうの都合ばかり気にしてどうすんねん。例えば……スーパーで試食品巡りとかよくするやろ?」

理沙「しない……買う」

洋榎「あー……そう。珍しいな。ま、ええわ。試食品巡りする時、販売員のおばちゃんがこっちを気に入ってなさそうやったら試食を諦めるのかっちゅう話やで」

理沙「…………??」

洋榎「つまり、相手のことばっか考えてもしゃあないやんけ!キャラかてこっちの理想の展開に持ち込んで付き合う妄想にすればええやろ!」

理沙「…………」

洋榎「誰に気ぃ遣ってんねん!て話や」

理沙「………………」

洋榎「ああ、それと好きな人と付き合いたいみたいなこと言うてたやんな?」

理沙「…………うん」

洋榎「で、上手に喋られへんから無理、やったっけ?」

理沙「……………………うん」

洋榎「ふーん…………せやけど、さっきからうちと普通に喋れてるやん」

理沙「…………ぇ……?」

洋榎「もちろん、間とかはまだまだあかんで?もっとテンポよくとか注文はある。けど会話できてるやん。言いたいこと言えてるやん」

理沙「ぁ…………」

洋榎「告白とかもその感じやったらええんちゃうの?うちやったら、そのたどたどしさが逆に嫁にしたなる要素の1つやけどな。うちの嫁になるか?」

理沙「そっ……それは……いい」

洋榎「そうか……」

理沙「………………」

怜「………………」

竜華「……………」

静寂が場を包む。さっきまでカプや嫁が飛び交っていた教室とは空気が違っていた。

しかし全員が理解している。

ここで行うべきは話し合いではなく、戦いだと。


理沙「………………ごめん」

洋榎「………………」

理沙「泣いちゃって……」プム

怜「い、いや別に……」

竜華「か、可愛かったで?」

理沙「………………決着」

洋榎「む」

理沙「付ける……」

目を赤く腫らしたまま涙のあとを拭い、宣言する。

あまりにも強引で無理矢理な場面転換。

しかし、

怜「当然や。ここであんたを倒さんとあかんから!」

竜華「絶対負けへんよ!」

洋榎「うちの嫁の強さ、見せたるわ!!」

理沙に続いて、怜たちも戦いのムードに戻そうと声を張る。

理沙「…………ありがとう」ボソ

呟き、〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕を再び発動しようとする。纏×麗子たちの準備ができ次第、攻撃可能だ。

怜「竜華!」サッ

竜華「うん!」

理沙の動きに合わせ、怜と竜華も戦闘態勢に入る。流れるように手を合わせ、恋人繋ぎに移行する。

洋榎「嫁たちよ……」

洋榎は背後にいる嫁に意識を集中し、婦婦の絆を再認識。

理沙「…………」

怜「……………」

竜華「…………」

洋榎「…………」

全員の準備が整い、緊張感が高まる。

静寂の中、まるで心音が聞こえてくるようだ。

理沙「…………」

怜「……………」

竜華「…………」

洋榎「…………」

一体誰が仕掛けるのか?

それぞれが視線をばら撒き、機を窺う。

そんな時間がしばらく続き、そして……。

洋榎「ぶぇっくしゅ!!」

怜「っ?」

竜華「ちょぉ!?」

理沙「…………っ!」サッ

洋榎のくしゃみを合図に理沙が動いた。


理沙《〔 同 カ プ 団 地 ( ど う か ぷ だ ん ち )〕》プッムムーッ!

怜「あれ?」

〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕の発動。しかしそれは攻撃目的ではなかった。

理沙は自身――脳内――を団地の真ん中に置き、その周りにA棟からD棟を敷いた。

竜華(守りを固めた?なんで?)

洋榎「っはぁ……はは、すまんすまん。むずむずしてもうた…………ってもう始まっとるんかい!?」

理沙「すぅぅ……ふぅぅううぅ~~……」ゴォォゴゴゴ..

怜「!まさか……」

理沙《千歌音×姫子、千歌音×姫子、千歌音×姫子、千歌音×姫子、千歌音×姫子……》

竜華(!?ちょ、それは……)

王道カプを連呼し、団地の空きスペースに集めていく。

アニメ放送回である12話分に加えコミック2巻分、つまり14組の千歌音×姫子だ。

洋榎「お、おい!あかんて!なんかやばいの感じるで!?」

怜「っ……竜華!」

竜華「う、うん!」

慌てて恋人繋ぎをする2人。そしてすぐに空いた方の手を理沙へと向ける。

怜《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕!!》シュババババ..

放たれるバカップルの百合波動。理沙に一直線に向かっていく。

理沙「!」

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

衝突。

理沙を囲む団地の壁に園城寺一族と清水谷一族の愛が激突したのだ。

壁を削りながら愛し合う両一族に対し、

纏×麗子たちは部屋の中で必死に耐え続ける。

怜「ぐ……っ……」

竜華「ぅう……うううぅ……」

〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕を以てしても一撃で壁を破ることはできなかった。

しかし2人は諦めずに力を注ぎ、ひたすら理沙を、団地を攻めたてる。

洋榎「うちも負けてられへん!」

数テンポ遅れて動き出した洋榎。

数人の嫁を団地へ使いに出す。

洋榎(纏と麗子のカプやろ?上手いこと誘い込んでうちの嫁にしたる!)

狙いは嫁による嫁勧誘。団地に住むカプが少なくなれば守りは薄くなり、壁も脆くなる。

内部からの崩壊を狙った頭脳プレイ。

嫁が増えることありきで思い付いた作戦だが、成功すれば結果的に一石二鳥だ。

洋榎《頼むで!夜神粧裕!弥海砂!高田!南空ナオミ!ハル・リドナー!その他!》

団地へ向け、複数の嫁を送り込む。

リドナーの後ろにはシブタクにナンパされてた子、そして魅上照と同じ電車に乗り合わせたミニスカの女の子も続く大所帯だ。

理沙《千歌音×姫子…………完成》フゥ

怜「!」


理沙《〔 同 カ プ 公 園 ( ど う か ぷ こ う え ん )〕!》プム!

千歌音×姫子が14組。仲良く公園で遊んでいる。

王道カプだけあってその力は凄まじいものがあり、遊具がピンクに染まっている。

怜(あかん……早いとこ団地を突破せんと。あれをぶつけられたらまずいわ)

理沙《…………杏×さや、さや×杏、まど×ほむ、ほむ×まど……》

竜華「!?」

理沙《結×京、京×結、さく×ひま、ひま×さく、あか×ちな、ちな×あか……》

怜(な……今度は違うカプを集めて……何をする気や!?)

理沙《アスカ×レイ、レイ×アスカ……れいん×小百合、小百合×れいん……美樹×真由、真由×美樹……鶴屋さん×有希、有希×鶴屋さん……》

王道カプに加え、口下手で想いを上手く伝えられない自分自身を自己投影してしまう無口キャラカプを集め、ピンク色の車……『百合ワゴン』に乗り込ませる。

竜華《なんかわからへんけど……急がんとあかん気がする!》ググッ..

理沙「………………」

『うちのことをライト以上に好きになったミサミサは、めっちゃめちゃ尽くしてくれてええ感じや!!』

理沙「………………」

洋榎(……効いてへん。団地を突破できてないわ。このままやと確実に負ける……どうやら覚悟を決めんといかんようやな)

3人による一斉攻撃も〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕が受け止める。

理沙はその隙に百合ワゴンを発車させ、ある建物の前で停車させた。

そして車から降りたカプたちがその建物内へ入っていく。

理沙「………………完了」ゴゴゴゴゴ..

怜「!」

理沙《〔 テ ラ カ プ ハ ウ ス 〕》プムァォオァァォアァ...!!!

竜華「えっ!?」

洋榎「ちっ……なんてオーラや……」

〔テラカプハウス〕。

王道カプと思い入れの強いカプの共同生活にワクワクが止まらない。

その魅力はメガを超え、ギガを上回るテラ。

〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕にいるカプたちも羨望の眼差しで見つめる。

理沙「…………ふぅ……」

目を閉じ、一息。

ぷくっと膨らんでいた頬っぺたの空気を抜く。

そして、

理沙「……倒す」プクゥ

リターンオブザプム。

頬膨張と同時に〔同カプ団地(どうかぷだんち)〕の住人、纏×麗子が動き出す。

荷物をまとめて――アダルトグッズはわからないように『雑貨』と書いた段ボールに入れ――団地を出た。転居先は不明だがきっと幸せな場所だろう。

理沙「……っ!」プムゥゥウウ!

全部屋が空きとなった団地。そこへ〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕の千歌音×姫子が突っ込み、更地にする。

これで防御壁は崩壊したが、その代わりに攻撃ルートができる。


怜(!先手を打たれたらあかん!こっちから……)

怜・竜華《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕》シュババババ..

祖先から怜竜まで。

遥か昔に行われた(と2人が信じている)であろう怜と竜華のご先祖様たち(付き合っていただろうと2人が信じている)の熱いディープキス(性知識が今ほど知られていない時代なのにも関わらず、激しく情熱的なキス)。

長い絡みのあと、離れ際にできた銀色の糸の橋。

その橋が繋ぐものは現代の怜と竜華の間にある感情と何も変わらない。

この瞬間、再び過去と現代が百合の名の元、一直線に並んだ。

怜《これが……うちらの想いや!》

竜華《絶対……負けへん!》

理沙「っ……!」シュバッ!

怜「な……!」

理沙「……させ、ない!」プム!

団地跡を狙った怜たちの攻撃は、理沙が生み出した〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕が受け止めた。

勢いを完全に殺せてはいないが、理沙本人へのダメージはない。

怜「ぐ、ぐぐ……」

竜華「まだ……まだや……」

理沙「…………今度こそ終わり」

怜「な、んやと……」

理沙「………………」プクゥ

頬っぺたを今日イチ膨らませる理沙。

それが合図となり、〔テラカプハウス〕が一斉に怜たちに向かっていく。

怜(き、来た……!)

その道中、〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕とぶつかり合っている〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕を後ろから押し出した。

怜「っ……ぐぁ……」

怜(なんやこの重さは……あかん……竜華への想いが……潰される……?)

〔テラカプハウス〕の圧倒的な質量に〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕がみるみるうちに押されていく。

竜華「と、怜……!」

怜(…………ははっ)

怜(なんや……なんで竜華はそんな不安そうな顔してんねん。私が竜華を想う気持ちがそう簡単に負けるわけないやん)

怜(……いつもは素直に口にはせえへんけど……私はほんまに竜華が好きなんやから……)

怜(…………それに……)

洋榎「……すまんな。全員分やから時間がかかってもうた」

怜(こいつもこいつで、結構頼りになるやつなんやから)

洋榎「けど、もう心配はいらんで」

洋榎「〔 愛 宕 王 国 ( あ た ご キ ン グ ダ ム )〕」ズォォォォ..

理沙「!」

洋榎「突撃や!」


オォォオォォ..!!

号令と同時に、洋榎の背後にいた嫁たちが全員声を上げ動き出した。

数百をゆうに超える嫁たち。これはつまり、洋榎の妄想の集大成。

身長も体重も年齢も趣味も得意分野も国籍も時代も種族もバラバラ。

しかしもれなく過剰なまでに愛されている。

そんな嫁が形となり、声となって、理沙に迫る。

理沙「…………っ」

咄嗟に怜たちへ向けていた〔テラカプハウス〕を洋榎の方へ向け、

〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕には〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕だけ残す。

洋榎「うちの嫁たちをなめんな!そんなんすぐ吹っ飛ばしたる!」

理沙「……させない!」

ズドォォオ...

洋榎「っおぉ……な、なんやこれは……」

洋榎(めっちゃ重……うちの嫁全員分でも互角やと!?)

理沙「…………」

洋榎(〔愛宕王国(あたごキングダム)〕は捨て身技や。もし押し負けてもうたら、うちの後ろには誰もおらん……確実に負けや……)

洋榎(………………いや、そんなはずない!うちの嫁たちは世界一や!負けるわけない!!絶対勝つんや!)

怜「………………」グググ...

怜(……きっつい方が愛宕の方へいったからなんとか耐えられてるけど……それでも……)

竜華《……怜?どうしたん?辛い?》

怜《辛い。けど……竜華と一緒やったら平気や》

竜華《………ふふっ。うちも》フフッ

怜「あ……」トクン..

怜(………………あかんなー……なんやねんそれ。竜華に微笑まれただけでこんなに嬉しいって……)

怜(そら自分が竜華をめっちゃ好きなんはわかっとったけども)フフッ

竜華《怜?》

怜「…………竜華」スッ

竜華「え?」

〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕と〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕がぶつかり合い、

〔テラカプハウス〕が〔愛宕王国(あたごキングダム)〕が激しく火花を散らしている中、

2人はキスをした。引っ越し途中の纏×麗子が見た。

怜「……ありがとう。ちょっと勇気出たわ」

竜華「無理せんといてや?」

怜「わかってる」

怜(……けど、ここはちょっと無理するわ)

竜華「………そんなん言うても無理するんやろ?」

怜「!」

竜華「怜のことやもん。わかるて」

怜「竜華……」


竜華「せやから……今度はうちも一緒や。2人なら……絶対平気や」

怜「………………いや、ちゃうで。4人や」

竜華「え?」

怜ちゃん《そやでー》

竜ちゃん《とき~》

竜華「あ…………ふふっ、そやな」

怜「…………ほな、いこか」

竜華「うん」

怜(怜ちゃんと竜ちゃんも……私らと同じように恋人繋ぎして……)

竜華(そして……想う。うちと怜の絆を…………)

トキィィィイン...

リュゥゥゥゥゥ...カカカカカ....

怜ちゃん・竜ちゃん《〔 怜 ち ゃ ん 一 族 × 竜 ち ゃ ん 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー ・ ミ ニ サ イ ズ )〕》

怜「……っ……」ガクン!

竜華「ぁ……ぅ……」ガクン!

怜(〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕とのダブルは……さすがに……きつい……)

竜華(けど……怜とやったら……)

怜「……あぁぁぁぁぁあぁ!」

竜華「ぅおおおおおお……!」

バシュゥゥゥ...

理沙「え……!」

理沙(〔同カプ公園(どうかぷこうえん)〕が……消えた……!)プム..

怜(どう、や……抜け……たで)ハア..ハァ..

〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕は千歌音×姫子たちに押し勝った。

そしてそのままの勢いで理沙へと迫る。

理沙「っ!」シュバ

バチチチチ!

怜「!」

怜(〔テラカプハウス〕を手前に引いて防いだ!?)

竜華(けどそれは……)

洋榎「もらったああああ!!」

理沙「!」

竜華(愛宕に勢いを与える行為やで!)

理沙「う……ぐ……」

洋榎(甘いわ!ここで下げるんは愚策やで!これで園城寺たちと3人で攻撃できる!)

怜(いける……!)

竜華(少しずつ野依プロに近付いてる……この調子でいけば……)

理沙《……奈々×なるみ!》

洋榎「なっ!?」

洋榎(それはキミキスの……ってかマジか!ここにきてカプ追加やと!?)


怜(これ以上〔テラカプハウス〕に同居人を増やされたら……)

理沙《裡沙×美也!!》

竜華(押し返されてまう……)

理沙《みさきち×花子!》

洋榎「…………ん?」

理沙《……雪歩×真!》

怜「……?」

理沙《………………りせ×奈々!》

竜華(…………あれ?)

理沙「っ……」

怜(カプを増やしたはずやのに……〔テラカプハウス〕の威力が変わってない?)

竜華(これは一体……)

洋榎(……………………なんやようわからん!とにかく、強ならへんなら儲けもんや!)

怜と竜華の〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕。

怜ちゃんたちの〔怜ちゃん一族×竜ちゃん一族(バカップルファミリー)〕。

洋榎の〔愛宕王国(あたごキングダム)〕。

3人+怜ちゃん、竜ちゃんによる全力攻撃は、〔テラカプハウス〕をジリジリと押していき、理沙の眼前へと迫る。

理沙「…………そんな……」

質量でいえば〔テラカプハウス〕が圧倒的なはずだった。

怜たちが〔リリース(Lilys×Release)〕を会得し、458プロとの戦いで成長したのは間違いないが、

それでも全力を出した理沙を上回るほどでは決してない。

怜「……ぁぁぁあ……」ググググ...

竜華「もう少し……っ」ググググ...

洋榎「嫁……嫁ぇぇぇ!」グォォォオォ..

理沙「うぅっ……」

しかし、ある意味この結果は必然だった。

素敵な恋人同士である怜と竜華、そして一点の迷いもなく自分の愛する嫁たちに惜しみない愛情を注ぐ洋榎のことを、理沙は『羨ましい』と思ってしまった。

自分が欲しかったもの、手に入れられなかったものを持っている彼女たち。

それに比べ、自分が得たものは強さ。でも本当に欲しかったものとは少し違う。

羨望―――そして生まれた嫉妬は理沙の中で影を落とし、『私は3人に劣っている』と心の奥底で実感してしまったのだ。

妄想は本人の精神状態に大きく作用される。それが土壇場なら尚更。

若干の劣等感が含まれた妄想は、本来の威力を発揮することができず、追加したはずのカプ妄想も〔テラカプハウス〕に入居できず、門前払いをくらって霧散した。

理沙(………私が……負け……る?)ググググ..

怜「うぅううぅ……」ググググ..

竜華「もう……ちょいやぁあ……」ググググ..

洋榎「早よ……諦めぇやぁ……」グググ..


理沙「………………」

理沙(…………ありえない……と思ってた……けど……)

理沙(この子たちなら…………それも…………悪く……ない)

理沙が目を閉じる。

それは諦めとは違う。

3人を認めた行為であり、祈りだ。

次に目を開けたその時には、

自分も彼女たちのような…………自分が望んでいた未来に向かって進んでいけますように……と。

怜「これで……」

竜華「うちらの……」

洋榎「勝ちやあああああ!!!!」

理沙「――――――」

ズァァァアァァァ!!!!!

死力を尽くした3人+怜ちゃん竜ちゃんの一撃は、〔テラカプハウス〕を解体し、理沙を飲み込んだ。

園城寺怜。

清水谷竜華。

愛宕洋榎。

九州の名門、新道寺女子が誇る初代リザベールこと458プロ幹部、野依理沙をプムっと撃破―――


【東校舎 演劇部部室前】

<インテリワイルドニワガール Side>

久「……ここね」

アコノ「うん。この中で……誰かが待ってる」

やえ「なぁに、心配しなさんな。私は小3の…」

ガチャ

久「失礼します」

やえ「ニワッ!?」

アコノ(……というか、当たり前のようにメンバーに入れられてるけど、小走さんって458プロじゃなかったっけ?)

咏「おっ、来たねぃ」

久「!」

アコノ(っ……この人が相手か……)

やえ「おまたせ!」

待ち構えていたのは三尋木咏。赤い着物に下駄、扇子。左右の髪まとめる輪っか。きっと『わっかんねー』とかけているのだろう。

咏「………………」

久「………………」

アコノ「…………」

やえ「さぁて、始めるとしようか!」

1人気を吐くやえ。前だけを見るその姿勢は素晴らしい。

咏「そうだね。あんまり時間もないし」

久「時間?」

咏「そそ。だって君たちを倒した後、残りの子たちも相手しないといけないかねぃ」ニヤリ

久(あーらら。わかりやすい挑発だこと)

アコノ(こっちをカッとさせてその隙に幻を見せようって魂胆ね。そうはさせないってーの)

やえ「王者を……ナメるんじゃない!」タタッ!

久「ええっ!?」

やえ「ニッワニッワニー!」ダッダダダダ!

アコノ「ちょ……あんた晩成じゃ部長でしょ!?もっと冷静に……」

咏「…………」バサッ!(扇子を広げる)

やえ「む?!な、そ、そんな……私は確かに王者だが…………えっ?そこまで尊敬してくれてるのか?照れるな」

久(うわー……思いっきり幻を見せられてる……多分べた褒めされる系だと思うけど)

アコノ(……本人は幸せそうだし……ほっとこう)

やえ「じゃあサインを書いてやろう。そうだな……親戚の子の分までは書こう。9枚といったところかな…………ん?なんだ?消えたぞ?目の前にいたのに………………ぐあっ!?」バターン..

やえが撃沈した。

幻を見せられている間に咏によってぶつけられた妄想――やられた本人は気付いていない――が蓄積され、幻が解けると同時にまとめて襲い掛かってきたためだ。

前のめりになって倒れるやえを見た久とアコノは意外と冷静で、むしろ想定内だという表情をしている。

途中からは咏がどうやえを片付けるかに注目していた。


久(小走さんに対してどういう風に攻撃するかを見たかったんだけど……特に変わった動きはなかった)

アコノ(最初に扇子を広げたけど、それが発動の条件だったりするのかな?)

咏「さて、と。次はどっちがかかってくるんだい?」カラン..コロン..

下駄を鳴らしながらゆっくりと歩く咏。その歩みには大人の余裕とロリ可愛い歩幅の狭さがあった。

久「…………」

アコノ「…………」

咏「んー?」

久《……私から行くわ》

アコノ《竹井さん……》

久《私には〔無数の絆(フラグメーカー)〕がある。照の能力を使えば、三尋木プロの本質と同時に能力のこともきっとわかるはず》

アコノ《あ、それはすごい》

久《じゃあ行くわね》スッ

咏「む?」

久「〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )〕!!」

久(これで照の〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を……)

久「……………………」

久「………………あれ?」

久(照の能力が使えない!?ということは…………照とのフラグが折れちゃった…………ってことよね……)

久「………………あぁ、そっか」

久(……照はもう決めたんだ……自分が選ぶべき相手を……)

久(だから私と恋人になる可能性はもうないというわけか………)クス

アコノ《……竹井さん?何笑ってるんです?》

久《?ああ、実はね。照の能力が使えないってわかったから》ウフフ

アコノ《………………笑ってる場合じゃなくないですか?》

久《あっ、それもそうか》

やえ《全くだ》

久「あら?もう復活したの?」

やえ「王者は決して滅びない」フフン

アコノ「はぁ……」

やえ「故に、君たちは終わりだ」

久「え?」

アコノ「っ!しまった!これは……」

やえ「」スーーーッ..

久たちの目の前でやえの姿がかき消える。

久「偽者の小走さ……きゃぁあ!?」ズキィン!

アコノ「あぅ……!?」フラッ...

幻の解除と共に、2人には蓄積されたダメージが与えられた。

本物のやえは安定の地面うつ伏せ状態。

呼吸に合わせて床のホコリがファサと飛ぶ。


久(この状態はなんとかしないと……)チラ

咏「…………ふふふ」

久(今、攻撃の際に能力を解除したのは間違いない。でもすでに新しい幻を見させられてる可能性がある……)

アコノ《……竹井さん。ここはとりあえず幻かもしれないですけど、攻めてみませんか?》

久《……ええ、そうね》

アコノ《では……わたしから行ってきます……》タタッ!

咏「…………おろ?」

アコノ(……あの三尋木プロは偽者かもしれないけど……やってみるしかない!)

アコノ《幼馴染の部屋に遊びに来たわたし。その子がお茶を用意する間、いけないと知りつつも家探し。すると、引き出しからピンク色の機械が……》シュバ!

咏「っお、お……やるねぃ」

アコノ(効いてる?いや、わたしがそう思うように仕向けられてるだけかもしれない……でも………続けてみよう)

アコノ《部屋に戻って来た幼馴染。わたしをとっさにその機械を後ろ手に隠した。その時、誤って床に落としてしまう》

アコノ《コトリと音を立てる機械。さらにまずいことに、落下の衝撃でスイッチがオンになってしまった。ブブブという振動音を鳴らすピンクに、幼馴染とわたしの視線は釘付けになる》

アコノ《2人きりの部屋。真っ赤になった彼女の顔と、淹れ立てのティーカップから湯気が上がる》

アコノ《そこでわたしは彼女にこう言った》

アコノ《…………一緒に…………これで…………しよ?》

咏「……きゅ、急展開だねぃ……くっ……」

アコノ(どう?これは……)

穏乃「憧……その子とするんだ……?」

アコノ「へっ?」

穏乃「私のこと……好きじゃないの?」ウルウル

アコノ「そ、そんなわけないじゃない!っていうか、わたしはあなたでもあるし、憧でもあるから、なんて言ったらいいか……」オロオロ

久「落ち着いて!偽者よ!」

アコノ「はっ……そうよ。しずはわたしなんだった……憧を惑わすどころか、目の前に現れるはずもなかった」

穏乃「」スーッ..

アコノ「あ、消え…………うぐぅ!?」グラッ..

久「アコノ!」

アコノ(……まずい……このまま何度もダメージを受けられるほど余裕がない……)

咏「んー?もうおしまい?情けなくね?」パタパタ

久「今度は私よ」ザッ

久「〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )〕」

咏「…………ふーん」カラン..コロン..

久《あなたに絶望をあげる……》ザァアァァアァ..

咏「どうぞ?絶望するかはしらんけど」カラン..コロン..

久《…………麻雀プロリーグの試合を生中継する番組で解説者として出演した三尋木プロ》

久《試合後、アナウンサーやゲストが見守る中、カメラの前で牌譜を解説する》

久《滞りなく進行していく番組。しかし次の瞬間、とんでもないことが起こった!》

咏「?」


久《解説中の三尋木プロの着物の帯が解け、肌が露わに!!》

咏「なっ……///」

久《女性カメラマン、女性AD、女子アナ、女性ゲスト……全員の前で三尋木プロは全てを晒し、わっかんねー部分はもはや体内のみ》

久《その姿を生中継され、色んな女の子に見られてしまった…………明日からあなたは、どう生きていきますか?》

咏「や、やだよ……そんなの……///」

久(!この反応……効果あり?)

咏「絶対…………」

久「?」

咏「」スゥーッ...

久「!!」

久(消えた!これも幻!?そんな…………うっ)ズキッ!

久「か…………は……っ……」

久(この妄想は…………私が黒タイツを……破られて……咲や優希に……無理やり押し倒される……?)ゾワワ

久(そんな姿を……美穂子に見られて…………あぁ……あの美穂子が……なんて冷たい目で…………)ゾクッ

アコノ「竹井さん!」

久「ぁ……」ハッ

アコノ「大丈夫!?」

久「…………え、ええ」

久(危なかったわ……もう少しで完全にのめり込むところだった……)

咏「んーふ。惜しい。しぶといねぃ」パタパタ

アコノ《あの……このままだと体力的にキツイんで、アレ使いませんか?》

久《あ、そうね。そうしましょう》スッ

アコノ《では……》スッ

2人は両手で両耳を押さえた。

まるでヘッドホンを装着するようなポーズだ。

咏「?」

久・アコノ《〔 ス ピ ー ド ヒ ー リ ン グ 〕》キュアァァ

全身を青い光の膜が覆う。

そして2人の脳内に、荒川憩の甘い声が響いた。

憩『お疲れさん』

憩『一生懸命頑張ってるなぁ。えらいえらい』

憩『うちができることなら、なんでもしたげるで?』

憩『…………少しくらいやったら…………や、やらしいのも…………ええよ?』

咏「???」


【東校舎 空き教室】

憩「あ……」

久美子「どうしたの?」

憩「今、うちの能力が発動したみたいで」

透華「能力?癒しの力ですの?」

憩「はい」

一「あれ?でも、荒川さんの力は……」

憩「ええ。前までは近くにおらんと効果なかったんですけど、〔リリース(Lilys×Release×Wreath)〕を覚えてから少し使い勝手がようなりまして」

久美子「どういう風に?」

憩「んと……遠隔回復と言ったらええんかな?それとも治癒デリバリー?ま、どちらにせよ、うちの力を事前に相手に埋め込めるようになったんです」

透華「???おっしゃってる意味がよくわかりませんわ」

憩「わかりやすく言うたら栄養剤を1個渡す能力ですね。力が全快になる癒しの力を脳内にあらかじめ仕込むっちゅうか……」

一「なるほど……要するに、憩さんの力を離れた場所で一度だけ使用できる、ってことだね」

憩「はい」

透華「なんと……素晴らしいまでのサポート能力ですわね」

久美子「離れてても憩さんと繋がるみんな………………あぁ……妄想が……///」

憩「うちにできるのはこれだけですから」アハハ

憩(……けど……心配や)

憩(〔スピードヒーリング〕を使うってことは、危ない状況なわけで……)

憩(…………みんな……無事で帰って来てや……)


【東校舎 演劇部部室】

久「はぁぁ~……」ポワー

アコノ「んっ……これ……たまんない」ポワー

〔スピードヒーリング〕は癒し。

ただ使用する――聴く――だけで効果があるという優れもの。

脳内を憩のほんわかボイスが満たし、明日への活力を生む。

欠点は一度使用すれば失われることと、騒がしい場所では使用しても効果がないこと。

そのため2人は耳を塞ぎ、憩の声に集中したのだ。

久「…………よし」

アコノ「…………全快」

咏「……んー、なるほどねぃ。回復されるのって、もんのすごく面倒なんだね。なんかRPGの敵の気分を味わってる感じ?しらんけど」

久(回復はした。けど………あの幻をなんとかしないと、同じことの繰り返しよね。ただやられるまでの時間が伸びるだけ……それじゃ意味ない)

アコノ(……本物の三尋木プロがどこにいるかわかれば、幻を見せられていても攻撃することも可能なはず……ただ、どこにいるかわからない状態だと回線を飛ばしようもないんだけど……)

久(考えるのよ。この状況を打破する方法を……)

アコノ(三尋木プロの能力はこちらを惑わすこと……本人からすれば、わたしたちが勝手にオロオロしてるところを攻撃してるだけ……)

やえ「……むにゃむにゃ」ゴロリ(寝返り)

久(私たちは今、どれが本物でどれが偽者かわからないから苦労してる…………つまり本物を攻撃する手段を探す必要がある……)

アコノ(三尋木プロがこの部屋にいるのは間違いない。ならば、偽物も本物もまとめて倒せれば…………)

久・アコノ「!」ハッ!

久《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕!!》

本日何度目の〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう) 〕だろうか?

それもそのはず、この能力の使い勝手の良さはかなりのものである。

大体、胸自体がそもそも汎用性抜群なのだ。

子育て他の授乳はもちろん、谷間で水を溜めて運べる(巨乳2人が胸を合わせれば汲めるデシリットルも増える)。

巨乳なら指人形の舞台としても使えるし、トントン相撲への移行も可。その際、使用する紙は注意する必要がある(紙で肌を切ったら損)。

くるみを割る際のイメージトレーニングにも役立つだろうし(現実で割ろうとしてはいけない)、視力検査で矢印の方向を指し示すのもオツだ。

ということで、アレコレ使えてこんなに便利な胸は、文句なしに星3つ。

久(私のサイズじゃ胸の感触に浸らせるのは短い時間でしょうけど、それでも構わない。とにかく当てることが先決!)

ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..

久(こうして……たくさんの〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕を部屋中に放てば……)

咏「……!」

久(本物の三尋木プロに当たるはず!)


アコノ(さすが竹井さん……わたしと同じ結論にたどり着いた……となれば、わたしがやるべきことは……)

ボフン...

憧「…………」

穏乃「…………」

咏「?」

憧「っ!」タッ

穏乃「よぉーし!」タタッ

アコノが穏乃と憧に戻る。

そして間髪入れず二手に分かれ、それぞれが部屋の隅へと移動した。

久「なるほど……さすがね」

久(あの位置に移動することで部屋全体が見渡せる。三尋木プロが〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕に触れた瞬間、あるいは触れる前に幻を解いた時、本物の居場所を確実に発見できる!)

憧(さあ……どこにいるわけ?)

穏乃(絶対見逃さないぞー)ムン

咏「…………」

咏「」スーッ..

久・憧・穏乃「!!!」

久「ぐっ……はあぁ……」

憧「きゃぁあ!」

穏乃「い……ってー……」

久(……でもこれで幻は解けた。あとは居場所を……)チラ..

憧「…………え?」

穏乃「…………あれ?」

久「…………いない……」

久(そんな……まさか解いた瞬間にまた幻を……?)

憧(……ちょっと待ってよ……そんなことされたら見破る方法が……)

穏乃「っ!」タタッ!

憧「えっ?しず?」

穏乃「なんか今、変な感じがした!」ガチャ!

久「ちょっ……部屋を出ても……」

穏乃「あーーー!いた!!」

久「えっ?」

憧「いた、って……三尋木プロ!?」

穏乃「うん!だから早く来て!!」

久「え、ええ……」タタッ

憧「今行くっ!」タタッ

久・憧「…………」タタタ..

久(あ…………そうか。姿が見えないのに動転してたけど……)

憧(なるほど……そういうカラクリってわけ……)


久(三尋木プロは最初から……)

憧(部屋にいなかった)

久(私たちがこの部屋に入る直前から幻を見せて……)

憧(幻の自分で待ち構えて……そのまま戦闘が始まった)

久(あとは部屋の外から私たちを惑わせて……)

憧(一方的に攻撃すればいい)

久(扇子を広げたり、ダメージを受けているように見せたりも……全部思わせぶりな演技だったわけね)

憧(……幻を解く瞬間に部屋に誰もいないと気付かれないように、しきりに立ち位置を変えてたのもそれが狙いだったと)

久(結果的に私たちの作戦は成功したわね。って、これからが本番だけど)

憧(……あとは三尋木プロに追いついてからが勝負ね)

咏「ほっ、ほっ、ほっ……」カランコロン..カランコロン..

穏乃「待てー!」

咏「ぅお?」

久「あっ、高鴨さん、追いつきそう」

憧「下駄のまましずから逃げ切るとか無理だから」ニヤ

咏「……んー……追いつかれそうだねぃ」カラコロカラコロ..

久「!」ゾク

久(これは……何かする気ね?)

憧(……やばそうな気配……ここで逃げられたら厄介だ)

憧「しずっ!三尋木プロを追い越して!」

穏乃「え?うん、わかった」ダダダッ!

咏「?」

憧の指示通り、咏を追い越す穏乃。

憧「そこで反復横跳びして!」

穏乃「???よくわからないけど……やってみる!」ギラッ

久「…………あ、なるほど」

穏乃「うおおおおおおおお!!!!」バダダダダダダ!

廊下で全力の反復横跳びをする穏乃。

その速さと叫ぶ声量は全国屈指だ。

久(あれほどのスピードで高鴨さんが動き続けていれば横を通り抜けるのは困難。物理的な問題だから幻でどうこうできないし……さすが新子さんだわー)

憧(これで逃げ道は封じた。次は……)チラ

久(わかってるわ)ニコリ

久《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕》ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..ポヨォォォ..

久(私たちの後ろに〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕でバリケートを作る……これで……)

咏「…………」

久(逃げ道は塞いだ。真っ向勝負なら勝てるって保証はないけど……勝率は上がるはず)


憧「…………」チラ

穏乃「うおおおおおおお!!!」バダダダダダ!

憧の視線の先には絶賛反復横跳び中の穏乃。

右へ左へ激しく動いている。

その度に、制服――憧と交換したまま――のスカートがピラリと揺れて、太ももが露わになる。

憧(あの反復横跳びは、三尋木プロを逃がさないようにすると同時に、あたしの願望も叶えてくれる攻防一体の作戦……一気に仕掛ける!)ギラリ

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧《〔 野 し ず 。 を プ ロ デ ュ ー ス 〕》シズズズズ!

久《あなたに絶望を…………大好きな作品が打ち切り!!!!》サァァアァア...

咏「うっ……」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「……は、ははっ……なかなかやるねぃ。でも……」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「これで追い詰めたなんて…」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「思わない方がよくね?しらんけど」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

久「はい?今なんて言いました?」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「…………いや、これで追い詰めたなんて」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「思わない方がよくね?って……」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧「……すみません。ちょっと聞こえなくて……もう1回…」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「……………………これで!追い詰めたなんて!」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「……もうっ!さっきからうるさいなぁ!!」パタンダ!

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「…………君の方から先にやっちゃおうかな」スッ

憧(!?あの動き……しずを狙うつもり!?させない!)

憧《〔 野 し ず 。 を プ ロ デ ュ ー ス 〕》シズズズズ!

憧(叫びすぎてノドがガラガラになったしず。ハスキーボイスにあたしはキュンキュン!!)

咏「っ……もう……めんどくさいねぃ……」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧《……ちなみにですけど、大声出さなくても回線使って話しかければ聞こえてましたよ?》

咏「あ……」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧《…………天然?》

咏「ち、ちげーし……そんなわけ……ない///」


穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

久《はい?すみません、もう一度……》

咏「…………や、やだ。言わね///」プイ

久(…………可愛い)

咏「…………」

咏「…………はぁ……」

咏「こうなったらマジでやるしかないかねぃ」フゥ..

久(?なんか雰囲気が少し変わった?)

咏「………………」

咏《〔 幻 影 百 合 色 地 獄 絵 図 ( げ ん え い ゆ り い ろ じ ご く え ず )〕》ザ..ザザ..ザザザ...

憧「!?」

久「こ、これは……?」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

久(三尋木プロの体が揺らいでる……?いや、というより……見える景色全部が歪んで……)

憧(ちょ……なんなの?)

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「………………」

久(……治まった……今のは一体……)

憧(何かが起きたのは間違いないけど、何をしたのかはわからないから警戒する必要がある。でも三尋木プロを囲んだ状態で様子見をしててもしょうがない。ただの時間稼ぎの可能性もあるし、軽めの妄想で探りを入れてみよう)

憧(しずがスカートをドアに挟んじゃって『や、やだぁ……見ないでよぉ///』なところを…)

『もしかしてそれ……演技じゃないの?』

憧「え……?」

『わざとそういう風に装ってて、「はいはい。これがいいんでしょ?お疲れさま。どうぞ見てください」という冷めた視点から眺めてるのかも』

憧「な、なによそれ……」

憧(あたし……どうしてこんなこと考えてるの?普段は全然思いもしないのに……)

『本当は恥ずかしいとも思ってないんじゃない?大体、中学の間に初体験をすませてる可能性もある。だとしたら、今更パンツくらい見られても気にしないんじゃない?』

憧「……っ、やめて!!」

久「あ、新子さん?」

憧「……しずは……そんなこと…………絶対……」ウゥゥ...

久「………………」

久(何が起きてるのかわからない……けど、とにかく三尋木プロを倒さないと)

久《桂(アカイイト)が忘れていった携帯から現れたノゾミに東郷凛は一目惚れをした……》

『でもノゾミは桂を想っているんじゃない?それに一目惚れする前に、不思議な現象について引っかかると思うけど』

久「!?」

久(これは……私の声が……妄想の邪魔を……?)

『第一、携帯云々はノゾミルート後の話なんだから、ノゾミは桂と結ばれるべきじゃないかしら?凛には陽子ちゃんがいる。桂をとられた寂しさから2人がくっつくのもいいかもね』

久(……違う……それは……確かに一理あるかもしれないけど……私が好きな展開ではないわ!)


咏「ふふ……」ニヤリ

久(妄想する度に浮かんでくる否定的な気持ち。自分の考えに対しての猜疑心を植えつけられたみたい…………これも三尋木プロの能力……)

『それはどうかしら?ただ相手の威圧感に押されて自分に自信を持てなくなっただけじゃないの?』

久(っ……妄想以外の思考にまで作用するわけ?本当に厄介……)

咏「……さて、効いたところで少し移動を……」クルッ

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「………………」

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

咏「…………心の声とかいう以前に、反復横跳びすることしか頭にない……これじゃ通じないか」

咏(あの子のことをよっぽど信頼してるのかねぃ?)チラ

憧「しず……あたし以外の子はダメ……絶対やだ……」

咏「………ま、いいか。高鴨さんはあとでもいい」カラン..コロン..

久「………………あ」

久(こっちへ向かってくる…………このまま混乱してても意味ないわ。攻めなきゃ勝ち目はゼロ)

『でも攻めたところで突破口はないじゃない。いっそのこと逃げるのも手よ』

久(うるさいわね……そんな言葉は聞き入れないから。私が今すべきことは……私の新しい能力をぶつけてこの猜疑心から逃げる。それが一番必要なこと!)キッ

咏「お?」

久《〔 次 元 を 超 え た 出 会 い ( ク ロ ス オ ー バ ー )〕》シュビィン!

憧「あ……竹井さん?」ハッ

久《いくわよ…………『とある』の食蜂操祈と『デビルサバイバー2』のティコ(♀)。瞳に輝くマークを持つ2人は惹かれあう…》

咏「…………」

久《しかし2人の間には次元という障害がある。ティコは携帯のアプリ内のナビゲーター。操祈がどれほど触れたいと望んでも、決して叶わない》

久《なんという悲劇。でもこれはある意味必然なのかもしれない。何故なら、心理掌握ができる操祈にとって画面の中のティコは思い通りに動かせず、苛立ちやもどかしさの中で恋愛感情が育まれていったのだから…》

〔次元を超えた出会い(クロスオーバー)〕を繰り出した久。

この能力は作品の枠を超えたカプを成立させるという、マイナーカプ愛好家の久がたどり着いた聖なる領域。

出会うはずのないキャラたちが出会い、無であったはずの結ばれる可能性を有へと変える。

マイナーカプを強烈に愛し、強い思い入れを持つ久だからこそ扱える。そしてマイナーであることがマイナスではなくプラスへと変換される能力だ。

久(これを食らえば、三尋木プロといえどもタダではすまないはず……)

咏「…………」

久(どう?)

咏「」スーッ..

久「!?き、消え…………うぐっ!?」ズキン!

咏「…………残念」カラン..コロン..

久(あっ……さっきと位置が違う?これって……また幻……?)

咏「君のそれさー……かなりやばそうだったけど、当たらなければ意味ないからねぃ。あはは」

『そうそう。三尋木プロの言う通りだわ』

久(……確かに…………)

久「っ!?」ハッ

久(いけない……心の声に惑わされちゃダメ。幻が解けて居場所がわかったんだから、そこを狙って……)


『……あれも幻かも知れないわよ?』

久「!」ビクン

『何度騙されれば気付くのよ。私より三尋木プロの方が何枚も上手なんだから、あえて姿を見せたんだってわからないの?』

久(…………それも……確かに一理ある………)

久(少なくとも……こっちより上なのは間違いないし、攻撃を当てない限り勝ち目はない……)

久(その当てる手段も思い付かない……せめて三尋木プロが隙を作ってくれればチャンスはあるけど……)

『それは甘いわね。たらればという思考に逃げてるだけでなんの意味もないわ。勝ち目なんて皆無』

久(………………そう、かもしれない………だって今現在の私は自分の考えにも迷いばかり……動くに動けず隙だらけで、三尋木プロがどこにいるかも把握してない)

久(倒す手段を考えても何も思い付かない状態だもの……そんな状況…………あれ?)

久(…………ということは……)

ギュルル..

久(?何の音……?)

咏「ぅわぁ!?」

久「!?」ビクッ

憧「!?」ドキッ

咏「あ、あっぶねー……」チラ

久(えっ?一体何が……?)チラ

照「…………………」

久(!?照が遠くに立ってる…………まさか、あの距離から〔連続妄想(コークスクリュー)〕をこっちに撃った?)

憧(……深堀さんたちと一緒に出発したはずなのに……もう勝ったとか?)ウーン

照「っ!」タタッ

久(あっ、行っちゃったわ……)

憧(……何が何だかわかんないけど……今ので助けられたのは確かね)

咏「……あーあ。今ので幻が解けちったねぃ」チェッ

憧(でも……どうしたらこの人に勝てるかがわからない……)

咏の新たな能力から逃れたものの、憧の表情が冴えない。

それもそのはず。〔幻影百合色地獄絵図(げんえいゆりいろじごくえず)〕は対象を幻の中へ誘った後、本人が持つ猜疑心を最大限にまで膨らませる能力。

妄想の根幹を揺るがし、行動を否定し、信念に亀裂を入れようとする。

何を考えても自分によって否定され、何をしようとしても自分によって拒まれてしまう。

そんな力を受けていた久たちの心は、自信喪失を招き、行動力を減少させているのだ。

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧(……しずが今だにスカートをピラピラさせて頑張ってるけど…………そんなしずは興奮するし、愛おしいし、触りたいし、っていうか…………活発なしずかわいい……好き……大好き……///)

現実逃避入りました。

憧の脳は困難な状況を打破するために思考するよりも、かわいい穏乃にキュンキュンする方を選んでしまった。

鼻から息を吸えば自らが着ている穏乃のジャージから漂う甘い穏乃臭。

体を包むその香りは山の中にいるようなリラックス効果を生み、熊に襲われるかもしれないと錯覚し恐怖を覚え、生存本能を刺激されて性的興奮も増す。

この行為に名前を付けるとすれば、穏林浴(Shizu-rin-yoku)。そう呼ぶのがふさわしいだろう。

とまぁ、大体そんな感じで憧は戦闘意欲を失ってしまった。


憧「はぁ……はぁ……しずぅ……たまには大胆になっちゃいなよぉ……ど、どんぐりの本当の使い方……レクチャーしてあげる……///」

咏「あっはは。残るは君だけだねぃ」カランコロン

久「………………」

咏「後ろの高鴨さんは……反復横跳びに疲れてダウンするか、その阿知賀の子が戦闘不能だと気付けば私の力から逃げられないだろうしねぃ」クス

久「…………なさい」

咏「ん?なんて?」

久「覚えてなさいっ!!」ビシッ(咏を指さす)

咏「………………はい?」

久「今度会う時は、絶っっ対負けないんだから!!」

咏「……何言ってるのかわっかんねーけど……負けを認めたっつーことかい?」

久「聞いてるの!?次は絶対私が勝つからね!勝ち逃げなんて許さないから!」

咏「…………………事情が呑み込めてねーけど……」

久「だから!次こそ私が勝つの!」

咏「はぁ…………はいはい。わかりましたってね」

久「…………やった」

咏「へ?」

久「一か八かだったんだけど……勝ちを目前にして、油断したわね」ニヤリ

咏「…………いや、意味わっかんねーけど。今のやりとりに何が……」

久《〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )〕!!》

咏「?」

咏「…………」ンー?

咏「………………っ!?ま、まさか……!」

久《〔 幻 影 百 合 色 地 獄 絵 図 ( げ ん え い ゆ り い ろ じ ご く え ず )〕》ザ..ザザ..ザザザ...

咏「これは……っ!私の……」

咏(そうか……今のやりとりは…………)ギリ..

久(三尋木プロを倒すため……隙を作るために一番いい方法として私が思い付いたのは……『三尋木プロ自身の能力をぶつけること』!!)

久(実現するためには〔無数の絆(フラグメーカー)〕で使えるようにフラグを立てないといけない)

久(でも私と三尋木プロの間に恋愛フラグはない。未来はともかく今すぐは不可能。となれば狙うべきフラグはこれ!)


久(ライバルフラグ!)

久(強引で無理矢理だけど……私の攻撃が当たったことと、三尋木プロが私のライバルキャラっぽいセリフに乗ってきたことでフラグは立った!)

もし時間があれば、食パンをくわえたまま走って咏にぶつかり、『きゃっ!ごめんなさい!』すれば『もしかして運命?!ドキッ!』フラグも有効だろうが、今は戦闘中。

食パンを焼くどころかパンそのものを用意する暇もない。

よって戦闘中に行うフラグ立てに向かないという結論に達し、手ぶらで行える一番手っ取り早く効果的なライバルフラグを選択したのだ。

しかしライバルフラグ以外にも、『実は私たち、許嫁なの』と告げ、咏がそれを受け入れる、あるいは極めてラブコメ的な拒否リアクション、またはすったもんだの末にラッキースケベに発展すれば高橋留美子的フラグを立てるチャンスもあったが、

かなりの確率で失敗するだろうと判断し、中止した。英断である。

この判断力こそ、久の強みかもしれない。

マイナーカプを成立させるため――自分で納得できるレベルまで上げる――には、こじつけも必要になる。

過去幾度となく練ってきたであろう、疎遠な2人を恋人へ導くストーリー考案が久の脳を鍛え、学生議会長にまでのし上げた。

もし久がマイナーカプを諦め、なんとなくのカプで満足していたら、学生議会長どころかTSUTAYAの会員にすらなれなかったかもしれない。

咏「………………」

久「さぁて……逆転劇といきますか」ニヤリ

笑みを浮かべ、腕まくりをしながら、自分を鼓舞するように、咏を揺さぶるように言う久。

しかしその声は自分の能力によって幻を見せられている咏の耳には届かなかった。

……いや、もし仮に咏が通常であっても届かなかっただろう。

何故なら、

穏乃「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

疲れによって反復横跳びのスピードが落ちた穏乃が、自分を奮い立たせるために声を絞り出して叫んでいたのだから―――


【???】

健夜「………………」

ハギヨシ「…………三尋木様、大丈夫でしょうか?」

健夜「………………」

桃子「………………」

桃子(何やらモニターみたいなの観てるっすね……気になるけど、ここからじゃ観えないっす……いっそのことステルスで……)モゾ

ハギヨシ「……東横様」

桃子「!」

桃子(やっぱり……この人、隙なさすぎっす……)チラ

咲「えへへ……お姉ちゃんったら試着室の中で手招きしちゃって……何するつもりなの?もう……///」モジモジ

桃子(そしてこの人はマイペースすぎっす……)ハァ


【東校舎 演劇部前廊下】

咏「………………」

『何を冷静なフリしてるんだい?正直に慌てた方がよくね?』

咏の脳内に自分の声が響く。

それは〔幻影百合色地獄絵図(げんえいゆりいろじごくえず)〕によって増幅された猜疑心。

咏(うるさいって。慌ててもいいことなんてないっての)

『そんなことないと思うけど?自分を繕うことが大人じゃないからねぃ』

咏「………………」

久「私もそう思うわ」

咏「……おいおい高校生。君に私の何が……」

久「わかりますよ……」ザザ..

えり「あなたとは一緒に仕事してますから……」ザザ..

咏「!!」

咏(あの子の姿が……針生さんに変わった……………実際に自分の能力を味わうのは初めてだけど……妙な気分だねぃ)

えり「……私、あなたのそういうところ、嫌いです」

咏「え……」

えり「インハイの時、事前に牌譜を見て選手の打ち筋などを把握しているくせにわからないと嘘をついたり、仕事中におどけたり……」

咏「いや、それは……別に……あんまり真面目にやりすぎても私のキャラじゃないっつーか……」

『どうしてそこで誤魔化すんだい?本人に言ってやりなよ』

咏(や、やめろって……)

『真面目すぎるあなたの気を惹きたいから、あえてそういう態度をとってしまった、って』

咏(違う……私はそんなこと……)

『完璧にこなす自信はある。だけどあえて少し崩した解説をした。何故なら、そうすることによって真面目なえりちゃんは次こそ完璧に仕事をこなそうとする。つまり、私とコミュニケーションをとろうと努力してくれる』

咏(……違う……!)

『会う回数が増えれば、チャンスも増える。そうなれば自分の想いが届くかもしれない』

咏「や、めろ……って。そんなつもりは……」

『怒らせるような言い方をしてえりちゃんの感情を揺さぶったり……仕事にかこつけて何してるんだろうねぃ』

咏「だから……違うって……」

えり「違う?何がですか?」

咏「え?それは…………その……」

えり「……私の気を惹こうとしてるわけではない?」

咏「…………う、うん」

えり「そうですか。それはよかったです」ニコリ

咏「……え?」

えり「私、三尋木プロのこと好きじゃないですから」

咏「!!!」ズキン!

えり「正反対な性格のコンビという形は仕事上、面白いと思いますけど……プライベートでの付き合いとなると疲れるだけですし」

咏「う……っ……」


えり「正直言うと、私は小鍛治プロと一緒にやりたかったんですよね」

咏「そんな……」

えり「あ、そうだ。三尋木プロ。今度小鍛治プロと一緒に食事に行きたいんですけど、セッティングをお願いしてもいいですか?」

咏「ぇ……」

えり「ダメですか?」

咏「や、やだ……だって私……」

えり「いいじゃないですか。私のことが好きというわけじゃないんでしょう?」

咏「ぁ………」

えり「…………」

咏「わ、わたし……は」

咏(えりちゃんが……好きだよ……だから……そんな冷たい目で見ないで……)

えり「ま、好きだとしても関係ないですけどね」

咏「…………」

『疑ってごめんねぃ?私の勘違いだったみたい。もし本当に好きだったら、こんな結末にするわけなくね?ってもんだよねぃ』

咏「そ、そんなこと……」

えり「では、すみませんけど小鍛治プロとの件、よろしくお願いしますね」

咏「!や、やだ……っ、私は…………」

えり「」スーッ..

咏「!?消え……」

久《千歌音とほむらーーー!!!!》

咏「!!!!!」ハッ!

久「…………」

久(どう?猜疑心に支配された状態でなんらかの幻に惑わされて……その間に沢村さんの絶望による攻撃……)

久(幻が解けた今、そのダメージはかなりのものなはず!)

咏「…………」

久「…………あれ?」

咏「ゃだ……私は…………好きで……」グス..

久(!?な、泣いてる!?なんで!?)

咏「うっ……うぅ……ぐすっ……」ペタリ

力なく座り込み、両手で顔を覆って泣く咏。

その姿は、普段の飄々とした彼女を思い出すことが困難なほど悲壮感が漂っている。

久「………………」

久(一体どんな幻を見たの?)


久は気付いていない。

本人的には対象の相手が幻を見ている間に攻撃を加えるという咏の上等戦術を真似ただけのつもりだ。

ただ、その攻撃がたまたま〔次元を超えた出会い(クロスオーバー)〕による千歌音×ほむらだったことが大きい。

さらに智紀の絶望妄想を何度か使っていくうちに絶望に対する練度が高まっていたせいで、幻を見ている咏自身の心境に影響を及ぼし、負の妄想を作り出させたのだ。

咏は自分の能力によって猜疑心に支配され、自信を喪失し、えりが言うはずもないことを勝手に喋らせ、落ち込む。

今まで相手を惑わす側として生きてきた咏は、強者として常に相手を圧倒してきたことも相まって、

攻められ慣れていないこと、そして自分の心の中をかき乱されることに対しての免疫のなさ、脆さを露呈してしまった。

もしかしたら咏の飄々とした態度は、相手に本心を悟られたくないという深層心理からくる防御策だったのかもしれない。

咏「うう……ぐす……ひぐ……」

心を囚われた今、咏は幻が解けたことも気付かずに泣きじゃくっている。

久「あ、あの……」

咏「っ!」ビクッ..

久「あれ?」

咏「ぐす……や、やめて……来ないで……」ウルウル..

久「………………」

久(……なんだろう?すごく…………興奮する……)ゴクリ

久(こんな三尋木プロを見たらマホちゃんはどうするだろう?調子に乗って裸にしちゃって、写真を撮って弱みを握ったり……?)ドキドキ

咏「…………って……あれ?君は……」

久「あ、ど、どうもー」

咏「……………………」キョロキョロ

久「……………………」

咏「……………………」

久「…………あはは…」

咏「…………っ!?」ガバッ!(勢いよく立ち上がる)

久「わ、ビックリした」

咏「……………………」

久「………えーと……」

咏「………………泣いてないんだよね、実際」ゴシゴシ

久「……いや、泣いてましたけど」

咏「……そ、そんなのしらんし///」

久「………………」

咏「………………」

久(これは……どうするべきかしら?変な空気だけど、まだ戦いは終わってないし……)

咏「………………」

久(って、考えてる暇はないわ。先にこっちが…………あっ!)クラッ..

久(……今一瞬意識が飛びかけたわ……限界が近いわね……)

久(でもこの勝機を逃すわけにはいかない!)ギラッ

久《〔 幻 影 百 合 色 …〕》

咏「!ま、待った!!」


久「…………え?」

咏「………………」

久「………………」

沈黙。

今は戦闘中であり『待った』と言われても待つ必要はない。

しかし咏の表情は鬼気迫るもので、久はつい攻めの手を止めてしまった。

久(まずい!この一瞬の隙を狙った作戦を考えてるかもしれないのに!)

咏「…………」スゥ..ハァァ..

久が躊躇している間に、咏は深呼吸をした。

ここで咏に先手をとられれば形勢は逆転し、今度は久が窮地に陥るだろう。

久(と、とにかく!間に合うかわからないけど、もう一度仕掛ける!)

再度咏の能力を発動しようと急ぐ久だが、

対照的に咏はゆっくりと視線を地面へと向け、口を開いた。

咏「………………降参」

久「……………………はい?」

咏「……降参する」

久「…………えっ?」

咏「私の負けってこと。なんか…………もう戦いたくないんだよねぃ」

久「…………」

それは久にとって全く予想外の言葉。

油断を誘うための口三味線かと疑ってしまいそうなほどだ。

しかし咏の表情を見て、嘘ではなく本心だと悟った。

咏「はぁ……」

久「…………」

咏「ま、実際力もほとんど残ってないんだけど、それ以上に…………もう1回アレ使われたらマジで泣きそうになるっつーか……」

久「え?すでに泣いて…」

咏「ねーし。君の見間違いじゃね?しらん……くない。真実」

久「…………わかりました。泣いてません」

咏「……うん……」

久(よっぽど辛いものを見たのね……なんか申し訳ない気分)

咏「…………そういうわけだからさ」

久「……はい」

咏「君らはこのままこの先に進んでってことで。私はしばらく休んで……って、もう戦闘には参加しねーけど」

久「それは助かります」ニコリ

咏「……だろうねぃ。自分でくらってみて改めてあの能力のやばさに気付いたよ」

久「ええ。かなり厄介でしたから。私たちは泣きませんでしたけど」

咏「うん………………あ!わ、私も泣いてないけどねぃ?」パタム!

久「そうでした」クス

久(なんか今の三尋木プロ、すっごく無防備というか……)


咏「…………」ムスー

久(普段と全然違って可愛いわね)ウフフ

咏「」スーッ...

久「……え!?」

ウフフのスーッ。それから「え!?」

予期せぬ流れに久はうろたえる。

久(消えた…………ってことは……まさか!)ゾク

久(普段とはまた違った三尋木プロの可愛さ……あっけなく降参したこと………)

久(これはつまり……この戦いを早く終えたいという私の願望が生み出した幻……ッ!!)

咏「残念……惜しかったねぃ」バサッ!

ニヤリと笑い、扇子を広げる咏。

余裕を見せているような素振りだが、よく見ると手が少し震えている。

かなりのダメージを受けているのは間違いないようだ。

咏が幻を使ったのは、久が一瞬意識を失いかけた時であり、ほんの少し前。

追撃を避けるため、〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕を防御に使ったのだ。

しかし久は目の前で勝利が消えていったショックが尾を引いているのだろう。咏も限界が近いことに全く気付いていない。

久(もしここで私が負けたとしても、あとの2人がきっと……)チラ

穏乃「うおおおおおお!!!」バダダダダッピラー...バダダダッピラー!

憧「え?しず知らないの?しょうがないなぁ。あたしが教えてあげるよ。腸内洗浄っていうのはね…」ウフ..ウフフ...

久「………………」

久(ダメ……任せられない……私がなんとかしないと!)キッ!

咏「……へー。やる気になった?でも、遅くね?」ニヤ

久(確かに……三尋木プロに勝つためには〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕で幻を見せる他ないけど……早さでは私の負け)

〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕だけを使えばいい咏と、〔無数の絆(フラグメーカー)〕を経る必要がある久。

どちらが早いかは一目瞭然だ。

久(だったら……一か八か!)タタッ!

咏「ん!?」タジッ!

咏へ向かって突進する久。

〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕を使ってくると読んでいた咏は、たじろぐ。

久《〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )〕》タタタ!

咏(……なるほどねぃ。突っ込んでくることで私を驚かせる作戦か。悪くないかもしれんけど……)

咏(愚策じゃね?私の方が早い)スッ

久より先に〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕を放とうとする咏。

狙いを久に定める。

久「っ!」ダダッ!

咏(えっ?なんで止まんねーの?わ、ぶつかっ…)


久「っ……」ギュッ!(咏を抱きしめる)

咏「むぐぐ!?」

それはハグ。

あんなハグやこんなハグ。ハグには色々あるけれど。

自分の胸に相手の顔を。埋めるこのハグ、パラダイス。

走る勢いそのままに咏を強く抱きしめる。

咏(こうやって幻を封じる気かい?そんなの無駄。この状態からでも能力は使える。〔 幻 想 夢 絵 巻 ( げ ん そ う ゆ め え ま き )〕!!)

久「…………」

咏(……これで私の勝…)フフ

久「私の勝ちね」

咏(…………何を言ってるのか意味わっかんねー。私の能力が先に発動した以上、君はもう…)

久《〔 母 な る 大 乳 ( は は な る だ い ち )〕》ボィ..ンヌ!

咏「ぁ……」

久「………………」

咏「……………………ばぶぅ」

咏ちゃん赤ちゃんかきくけこ。

久の胸に抱かれ、三尋木咏は幼児と化した。

全身の力を抜き、久に寄りかかるように甘える。

久(よかった……成功したわ)ホッ

〔母なる大乳(ははなるだいち)〕。それは石戸霞の能力。

自身の巨乳に相手の顔を埋めることで対象を赤ちゃん化させる。

久(この能力なら、抱きついてさえおけば幻を使われたあとでもなんとかできるかもしれない……正解だったわね)

〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕はある程度自動で動く能力ではあるが、さすがに赤ちゃんでは扱えない。

久(でも急がないと。悲しいけど、私のバストサイズじゃ石戸さんほど長い時間は赤ちゃんにできない)スッ

咏「ぁ……ばぶぅ……ばぶぅぅ」

久がハグをやめると、支えを失った咏はペタリと地面に座り込んだ。

咏「ばぶぅ…………ばぶ…………」

咏「…………あれ?私…」

久(元に戻ったわね。でももう十分)サッ

久《〔 幻 想 夢 絵 巻 ( げ ん そ う ゆ め え ま き )〕》

咏「……っ!?」

咏(何これ!?私の方が先に仕掛けたはずなのに!?)

久が放った幻が咏を包む。

咏(それに……なんで私は座って…!?)

えり『……三尋木プロ……』

咏(!!えりちゃん……)

そして再び、惑わされていく。


久「…………ぅ」フラッ

久(……もう力が残り少ない……これが最後の一撃ね)

久(トドメをさせなければ今度こそ私の負け。そして私が負けたら2人も負ける)

久「………………」

久(…………そっか。インハイの時、大将の咲はこんな気持ちだったのね)

久(自分が清澄最後の砦。みんなのために負けられない)

久(適正があるとはいえ、1年生のあの子にとってはすごい重圧だったわよね)

久(……辛い思いさせてごめんね咲。それとありがとう)

久(ここで三尋木プロに勝って、絶対助けるから!)キッ!

久《〔 次 元 を 超 え た 出 会 い ( ク ロ ス オ ー バ ー )〕》シュビィン!

久《好き勝手暴れる結月(月刊少女野崎くん)。その全てを優しく受け入れるアリシアさん(ARIA)……》

ズキッ..

久《っ……その包容力は過去味わったことのないもの。次第に結月はアリシアさんのことが気になっていく…》

ズキッ..

久《そんな2人を眺める灯里。アリシアさんをとられてしまったような気持ちになり、少し気分が沈んでしまう》

久《『はぁ……』とため息をつく灯里。そこに現れたのは神奈(総合タワーリシチ)。ぐいぐいと灯里を引っ張るその手は優しくも激しい》

久《コロコロと……というよりもゴロゴロと変わる神奈の表情は灯里を笑顔にさせ、そんな灯里を見た神奈もまた笑顔になる》

久《髪を燃やしてしまった藍華には、世良が明るく……っ!》クラッ..

久「あ……」

久(限界……が……)ガクッ!

咏「………………ぁ」

久が力を使い果たして地面に膝をつくと、咏が正気を取り戻した。

咏「……っ……!が……」

そして幻が解けたことで蓄積された妄想が襲い掛かる。


咏「ぐぁ……ああぁ……ぅ……っ!」

久(……これでダメならもう……)

咏「…………は………」

久「……………………」

咏「…………ふふっ…」ニヤリ

久「!!」

久(ダメ……だったの?)

咏「わっかん、ねー……」

久「…………」

咏「………………なんで……私が負けるのか…………ぜんっぜん……わっかん……」フラ..

ゆらり。

笑みを浮かべたまま、体が傾き、鮮やかな着物の赤が地面へと吸い込まれていった。

長い袖が後を追うように宙を舞い、ワンテンポ遅れて床の咏の顔を覆う。

それはまるで敗北した自分の表情を見せまいとしているかのようだった。

咏「………………」

久「………………」

久「……今度こそ……幻じゃない…………わよね?」

咏「………………」

倒れている咏を眺め、周りを見渡し、何も起きないことを確認する久。

そして気付く。

自分が勝利したことを。


久「か、勝った……勝った!」スクッ!

クラッ..

久「うっ……痛たた……」

久(……なんかものすごい疲れたわ……勝ったことは勝ったけど、紙一重にもほどがあったし……)

久(少し休んでいきたいけど……せめてみんなのところに戻ってからの方がいいわよね)テクテク..

久「……新子さん」ツンツン

憧「…………えっ!?何これ……しずが黒タイツ履いて腕まくりしてる世界線に迷い込ん……って竹井さんかぁ」

久「そ。勝負は終わったわ。行きましょ」

憧「うっそ!マジで?すっごい……」

久「ありがと」テクテク

憧「どうやって勝ったんですか?」

久「んー……一番強い能力を使ったというか借りたというか……」

憧「??」

久「それはあとで話すわ。今は…」

穏乃「うお……おおおお……おおお~……お、お……」フラフラ..フラ...

久「ありがとう高鴨さん。もう反復横跳びは大丈夫だから」

穏乃「そ、そう……ですか……はぁ、はぁ……よかった。さすがに疲れて……」ガクガクガク..

久「肩貸すわ。捕まって」

穏乃「あ、ありがとうございます。すみません、竹井さんも辛そうなのに」

久「大丈夫よ。私より高鴨さんの方が疲れてると思うしね。よいしょっと」ガシッ

憧「っ!あたしも!ほらしず!ちゃんと捕まって!」ガシッ

穏乃「あっ……ね、ねぇ憧……胸が、その……腕に…///」

憧「当ててんのよ」

久(……やっぱりこの2人、いいわー……王道だけど心揺さぶられる)ゴクリ

憧「一旦みんなのところに戻って休もう?」

穏乃「うん……そうしてもらえるとありがたいよ……もう足パンパンだもん」テク..テク..

久「声もガラガラね」テク..テク..

穏乃「あはは……ちょっと叫びすぎました」

久・憧・穏乃「」テク..テク..テク..


咏「………………」

咏「………………」

咏「………………」

咏「………………」

咏「………………ぁ」パチリ

咏「………ぁー……」

咏(意識飛んじったかぁ………こんな感覚初めてだよ)フゥ..

咏(まさか、私が負けるとはねぃ。考えてもみなかった)ハハ

咏が苦笑する。

実力からいえば咏を上回る者は誰もおらず、複数人相手だろうと立ち回れるだけの能力を持つのだから、敗北を意識することはなかった。

もしも久以外の人間が相手だったとしたら、当然の帰結として咏は勝利していただろう。

小蒔の男女反転も、猜疑心の中でその効果を保てるかは定かではないし、幻を打ち破るのも難しいだろう。

智紀の絶望も、今回の久のように作用させるには〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕を展開される前に攻めるしかなく、仕留めきるには火力が足りない。

エイスリンの場合、仮にイラストボードを持っていたとしても、幻を見せられている状態では咏の絵をそのまま描いても現実の咏と一致しないため無効になり、操れない。

塞に至っては見た目ロリっぽい咏にキュンキュンする上、幼女ハーレムの幻で楽勝。

純代も力技で押し切ることは難しく、美穂子への信頼に対する感情に猜疑心が顔を出せば〔リリース(Lilys×Release)〕すら使えなくなる可能性がある。

照の〔連続妄想(コークスクリュー)〕も当たらなければ高威力であろうと意味がなく、最終的には敗れただろう。

他の面子も同様に、相性や実力差を考えると太刀打ちできない。

よって咏を倒すことができる者はただ1人、〔無数の絆(フラグメーカー)〕を使える久のみである。

何故なら咏の能力こそが咏の弱点だったのだから。

これはロックマンに出てくるあいつに通じるものがある。

彼女には最大限の敬意を払って、この称号を与えてもいいかもしれない。

『プロ雀士界のメタルマン』と。

咏「…………」

咏(ここにいてもしょうがないよねぃ。少し休んだら戻ろう)

咏「あー……」

咏(小鍛治さんに怒られっかなー……いや、なんか慰められそうな気がする……それもきついんだよねぃ)

咏「………………ふー……ま、いいや。とにかく……」スッ

咏「………………」

咏「…………君も行った方がよくね?」

やえ「……ふぇ?」ムニャ?

王者の目覚め。

やえはこのあとすぐに起き上がり、走り、久たちに追いつくこととなる。

小3の頃から寝起きがいいやえ。

髪の毛は寝癖によっていつも以上のローリング具合だったが、それでも元気いっぱいだったニワ―――


【東校舎 廊下】

<言葉少なし大人し乙女 Side>

照「……………」

純代「…………」

灼「……………」

照「…………ここだね」

純代「…………」コクリ

灼「指定の場所…」

照(誰が待ってるかわからないけど、咲を助けるために……絶対勝つ)ガチャ

ギィィ..

照「…………!」

純代「!」

灼「…………」

智葉「…………来たか」フフッ

成香「わ……さ、3人も来ました……たぜいで怖いです……」

照(辻垣内さんと本内さん……)

純代(この人たちが相手か)

灼(……辻垣内さんは強そうな気がする…)

智葉「……このような状況でなければお前たちと百合談義をしてみたかったが………それはまたの機会としよう」

照「…………うん」

純代「…………」コクリ

成香「えっ?わ、私はみんなで楽しくお話したいです……お、お茶とか飲みながら……」

智葉「またの機会といっただろう」

成香「で、でも……時間はありますし」

智葉「……本内」

成香「はっ、はい……!」ビク

智葉「またの機会だ」

成香「す、すみません……」

智葉「……と思ったが、あえて楽しく会話するのもいいかもしれないな」

成香「っ!そ、そうですよね?よかったぁ……では私から話しますね!実はこの前チカちゃんが…」

智葉「というのは嘘だ」

成香「ぁ…………」シュン...

智葉「期待したか?残念だったな」

成香「…………ぐす……ひたすら悲しいです……」ウルウル..

照「………………」

照(この子……なんだか……すごく意地悪したくなる)ゾワ

純代(〔トラウマメモリー〕をぶつけたらどんな顔するだろう?きっと大泣きして『やめてください……お願いです……』なんて……)ゾワ

灼(……『お尻に指を挿れられたくなかったら四つん這いになって猫の真似をして』とか命令したら必死になって真似をするよね……そして許してもらえると思ったところで約束を反故にする……)ゾワ


智葉「……ふふ、さすが本内だ」

成香「えっ?」

成香(何がさすがなのでしょう?はからずも褒められてしまいました)??

智葉《〔 S の 世 界 〕》シャキン!

照・純代・灼「!!!」

照(な、なにこれ……心がざわつく感じ……)

純代(ウォシュレットのマックスパワーを使った時、『これより3倍強かったらどうなっちゃうんだろう?』って思うのと同じ気持ち……)

灼(……ハルちゃんにおあずけされた妄想で味わう感覚のやつだ……)

成香のナチュラルいぢめてオーラに誘われ、戦闘開始前の時点で3人は智葉の〔Sの世界〕に囚われてしまった。

それによって思考の片隅や深層心理に『追い詰められたい』、『焦らされたい』、『強く責められたい』という感情が根付かされた。

〔Sの世界〕の支配下では、智葉の視線や仕草から漏れ出るSっ気に強く反応してしまうようになる。

その状態で智葉に本気で迫られたら、壁ドンはおろか網ゴシ――網目越しに口説かれる――や味ポン――色んな料理に合う――でも心奪われるだろう。

照「………………」

照(…………確かにちょっと変な気分になるけど、戦闘を続けらないほどじゃない。よし……)グッ

照《〔 照 魔 鏡 ・ 極 ( し ょ う ま き ょ う ・ き わ み )〕》ドンッ!

照(まずは辻垣内さんの本質を知る)

智葉「…………」サッ!

照「えっ」

照(避けた!?そんな……)

智葉「……そう驚くほどのことではないだろう?どこの敵が黙って相手の能力を受けるというんだ」

照「それは……」

智葉「相手の攻撃をブロック、回避するのは基本だろう」

照「…………」

智葉「ま、ブロックを使うと力を消耗する上に攻めに移行する際に時間がかかるからブロックせずに叩き合いをした方が遥かに効率がいいがな。力関係によってはブロックの上からでも攻撃可能でもあるし」

純代「…………」

智葉「宮永。お前の能力については大体見当が付いている。そして能力の性質上、戦闘経験が少ない神代や、お前能力のことを知らない者は反応できないだろうが、私には通用しない」

照「!」

照(……確かに〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕は効果範囲も狭いから、鏡が後ろから出てくるって知ってる人は避けやすいと思うけど……)

照「どうして私の能力を知ってるの?」

智葉「ふっ……簡単な話だ。能力というものは使う本人の精神、本質に関わるもの。知らず知らずのうちに能力の内容が見え隠れする」

照「………………」

純代「……………」

灼(確かに……私もボウリングの穴からお尻の穴に繋がった…)

智葉「宮永の場合は麻雀からヒントを得た。牌譜を調べているうち、相手の性格や心理までも踏まえた上での打牌が目立つことに気付いた。それは異能とまで言えるレベルだ」

照「………………」

智葉「そして対局の映像を観ているうちに、宮永と初顔合わせ時の対戦相手が後ろを振り返ることが多々あった……つまり背後に何かを感じたわけだ」

照「…………」ムム

灼(あ……そういえば玄もそうだったような…)


純代(鋭い洞察力……同じメガネでも末春さんより数段上だ)

智葉「あとは推測にすぎないが、とりあえず背後に注意を払えばいい。私の反応速度をもってすれば躱せる」

照(……だったら他のことに意識を向けさせた瞬間に使えばいい。『あ!あんなところにUFOが!』と言って、そっち向いた隙にもう1回照魔鏡を使おう)コホン

照「……あ、あ~っ!あんなちょろ…とろ…とろこ……ところにUFOが!」ビシー(指さす)

照(しまった!焦って口がこんがらがった!)

智葉「……UFOだと?どこだ?」クルッ

照(!やった、成功した!よぉし…)

照《〔 照 魔 鏡 ・ 極 ( し ょ う ま き ょ う ・ き わ み )〕》

智葉「……なんてな。そんな浅知恵に引っかかるわけないだろう」スッ

照「あ……」

照(避けられた……)

智葉「…………案外姑息な手を使うんだな」

照「…………」

照(だって……咲を助けないといけないから……手段は選んでられない)

智葉「それにしても……ふふっ……あははは。騙そうと焦りすぎてしまったようだな。言葉になっていなかったぞ」クス

照「……っ///」カァァ..

智葉「っ……はははは!」

純代(…………こんな風に笑う人だったかな?少しイメージと違う)

灼(……辻垣内さんの意識がチャンピオンに向いてるうちに少しずつ移動しておこう。その方がお尻の穴を狙いやすい)ススス..

成香「あっ……あの人、こっそり移動して…」

灼(くっ!気付かれた…)チッ!

成香「ひっ!し、舌打ちこわいです……聞きたくない……」ウルウル

智葉「ふう……笑わせてもらった。さて、それでは……そろそろ戦闘開始といくか」

照「……!」

純代《……宮永さん、私と鷺森さんが攻撃してる間に〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を使ってください。その方が当てやすいはず……》

灼《私もそう思います。1対1の状態だと難しい…》

照《……うん、わかった。ありがとう。でも〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕は力の消耗が激しいから気軽に連発はできない。確実なチャンス以外では普通に攻撃することにする)

純代《…………さっきの確実なチャンスでした?》

灼《噛んだ時に諦める手もあったような……》

照《………………一生懸命頑張って戦おう》

純代(誤魔化した……)

智葉「はっ!」ダッ!

純代(!来た……っ)

智葉「…………」ギラリ

純代(……っ……あの目……心を鷲掴みにされるようだ…………思いっきり睨まれて唾をかけてもらいたい気持ちが湧いてくる……)

灼(くっ……これが辻垣内さんの能力……攻撃するのが申し訳ないような、落ち着かない気分……戦いにくい)

照(う……視線が勝手に辻垣内さんの足に向く…………深層心理で蹴って欲しがってるような……)

智葉「さあ……可愛がってやる」ニヤリ


照「………っ!」

智葉「む?」

照《妹の寝室に無許可で入る!》バァッ!

智葉「っ!?く……」タジッ

照《私のお古のパジャマで……夜な夜な一体何してる!?こんなところに湖が!地名をはっきり答えなさい!》

純代(すごい……宮永さんも私たちと同じ気分のはずなのに……この状態で攻撃できるとは……)

灼(ゾワゾワする気持ちを吹き飛ばすためだろうけど、やけに強い口調になってる…………なるほど。強気な妄想でMっ気を吹き飛ばすつもりなんだ)

照《塩分濃度を確かめようか!?何よ、真っ赤な顔をして!手をどけて後ろ手に組んで!姉のチェックが始まるよ!!》

純代《〔 犬 の 散 歩 中 に 犬 よ り 先 に 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕だっつってんだ!!》

智葉「な……にぃ……!」

灼(2人ともすごい……私も負けてられない。強い意志を持ってお尻を狙う)サササッ..

成香「わ、わ……つ、辻垣内さん……大丈夫ですか?は、ハンカチとかいりますか?」

智葉「そ、そんなものは……っ、いらん」

成香「うぅ……でも……じゃあ何が必要ですか?あっ、ちょっと待ってくださいね。今メモ帳出しますから。このメモ、安いやつなんですけど防水加工なんですよ?」ゴソゴソ

智葉「…………」イラ

成香「ですから雨の日も…………あ!違いました……防水用を買おうとして、でも結局違うのにしたんでした……すみません、これ普通のメモです……でもすごく書きやすいってチカちゃんが言ってました!チカちゃんっていうのは同じ麻雀部の仲間で、もちろん有珠山に通ってて、来年は卒業だから大学生で……」ゴソゴソ

照「………………」

成香「あ……………ペンがないです……」

純代「……………」イラ

成香「今日家を出る時には絶対あったはずなのに……きみょうでこわいです………」

灼「………………」イラ

成香「あ!!ありました!反対のポッケに入ってまし…………あ…………これ、もう書けないペンでした…………うぅ……辻垣内さん、どうしましょう……」ウルウル

智葉「知らん!」

成香「ひぅぅ!?す、すみませんすみません!頭の中にめもします!だから怒らないで……ああっ!?」バサッ!

成香「メモを落としてしまいました!拾わないと……ぐす……」ワタワタ

照「………………」

照(拾う直前であのメモ帳を蹴ったりしたら本内さん傷付くよね……絶対してはいけない…………でも……いけないことをした私を辻垣内さんがおしおきして……)ゾワゾワ

純代(落ちたメモを奪って全ページをスカ絵で埋め尽くしたあと、表紙に『本内成香』と書いて有珠山の生徒に見せたら……彼女は………あぁ……そんなことしたら今度は私が辻垣内さんに同じ目に遭わされるかも……)ゾワワワ

灼(メモに手を伸ばしてかがんだ体勢の本内さんのお尻に指を当てて、『動いたら穴に挿す』と言う。脅える本内さんはかがんだまま動かない。でもだんだん疲れてプルプルしてきて、最終的には倒れ込む。私は涙目で息の荒い本内さんに『約束通り……挿すね』と迫る。そんな時、辻垣内さんが私のお尻に指を……)ゾゾクゾクゾゾク!

戦闘ムードに入った4人を成香の天然被虐体質が引き戻す。

〔Sの世界〕を受けた3人は成香にSっ気を出しながらも、無意識のうちに最終的には自分が責められるという妄想を作ってしまう。

成香「よい、しょ」(メモを拾う)

照「…………あ」ハッ

照(私、今何を考えて……おしおきなんて……そんな……)ゾク

純代(いい感じで攻めてたのに……本内さんに視線を奪われて……くっ)

灼(……この調子で妄想を狂わされるとまずい。私はともかく、2人にとっては致命的。ここは本内さんを先に…)スッ

智葉「そうはさせん」サッ


灼(!立ち塞がれた……)

成香「わ……辻垣内さん、ありがとうございます」ニコー

智葉「…………」ジロリ

成香「えっ……あ、あの……」

智葉「……守られて嬉しいか?」

成香「は、はい…」

照(!この流れ……まずい)

純代(辻垣内さんに意地悪させたらダメ!そうなったらまた……)

智葉「守られて嬉しい……そうか。ならばお前を敵に差し出そう」

成香「え……っ、ど、どうしてですか……むじょうでひどいです……」ジワッ..

照「あ…………」

智葉「私はお前を泣かせたい」ニヤリ

成香「うぅ……そんな……ぐす……ろこつに悪趣味です……」ウルウル

純代「う……」

成香「せっかく……嬉しかったのに……どうして……ぐす……」エグエグ

灼「…………」

灼(これ、いけない……同じことの繰り返し……いや、このままだとどんどんM的な思考に…)

智葉「…………」テク..テク..

灼「…………あ」

灼(こっちに来た。逃げないと……じゃなくて、迎撃……)

智葉「………………」ニヤリ

灼(う……自信満々なその笑顔……ゾクッとする……まるでハルちゃんの高校時代みたい……)ドキドキ

灼「…………はっ」

灼(違う!ハルちゃん以外にドキドキするなんて不義理!)ブンブン!

智葉「ほう……まだ落ちないか」

灼「…………」チラ

照(『涙を拭いてあげる』と言いながら本内さんに近付く私。でも実際は涙を拭くと見せかけてハンカチで鼻の下をゴシゴシと擦る。そしたらきっと本内さんは『うぅ……まさつがこわいです』ってさらに泣く…………そんなやりとりを辻垣内さんに見られた私は両手を縛られ……)ゴクリ

純代(今すぐ2人に近付いて『私も本内さんを泣かせたいです』と告白する。すると『本内を泣かせていいのは私だけだ』と辻垣内さんは私を睨み付け、胸ぐらを掴んで、私のお腹の肉を掴む。そして『はい弱火~……そら強火~』とコンロのつまみの要領で右に左に捻る。その痛みによって私の肉は熱せられる……///)

灼(……2人は完全にM的思考になってそう。私がなんとかしないと)タッ!

智葉「来るか」フフ

灼(〔カウントダウン〕を使いたいけど……途中で辻垣内さんの攻撃を受けて、何文字消したのかわからなくなって失敗する可能性を考えると……)

灼(うん……消耗しただけで終わるより、確実に仕留められる機を狙う方がいい!)タタッ!タタッ!

智葉に向かって一直線に進んでいた灼は、サイドステップで智葉の右斜め後ろに回り込む。

その動きを見た智葉は、灼の狙いは肛門だと察し、体を捻って真正面で互いに向き合うような体勢をとった。

灼(予想通りお尻の穴を守った……でも私が狙うのは壁を削ること。つまり……スカートを奪い取る!)ススッ!

智葉が反応した瞬間、灼は体を低く沈め、レスリング選手のタックルの要領で智葉の下半身へと迫る。

そしてスカートを掴もうと両手を伸ばす。


智葉「させるか!」ガシッ(灼の手を掴む)

灼「っ!」

智葉「なるほど。確かにハンドスピードは大したものだ。ボウリングをやっているだけのことはある。だが……それ以外は並のレベルだな」

灼「ぐ……」

灼(そんなことない……!ボウリングはハンドスピード以外にも私に色々なことを教えてくれた!)

灼(レンタルシューズの使用限界を確かめるために匂いを確認してきたおかげで鼻も利くし、球を投げ終わって席に戻るまでの微妙な間をどうしたらいいのか迷ってる人たちを見るうちに空気を読む力も人並み以上に学べた!)

灼(ボウリングはあらゆることに応用できる力を身に付けられる!だからもっとみんなボウリング場に足を運ぶべき!やってみたら意外と楽しいことも思い出して!)

智葉「少し裏をかいたぐらいでは私は抜けんさ」ニヤリ

灼「あ……っ」

灼(この距離……しかも両手を掴まれて……見下ろされて……笑みを浮かべられたら……)ゾクンゾー..

智葉「それとも……あえて私に捕まりたかったのか?その意志や良し」フフ

純代《〔 D . P . The Extra-Terrestrial ( デ ィ ー ピ ー )〕》ダップゥゥゥ..ン!

智葉「!立ち直ったか」

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》ギュロォォォォ!!

智葉「……ふッ!」サッ!(灼の手を離す)

灼(助かった)ホッ

智葉「なかなかの回復力だ。さすがと言うべきか」

照《『安奈×いずみ(これが私の御主人様)』、『美也×紗江(アマガミ)』……セット》

智葉「!来るか……」

純代《〔オープンカフェで優雅にコーヒーを飲んでたのに下痢便( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!》

智葉「……ぐっ……こっちもか!」ズシッ..

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》ギュロォォォォ!!

智葉「ちっ!」ギリッ!

照「……っ!?」ゾクッ

照(しまった……舌打ちにゾクッとしたせいで攻撃が反れた……これでは…)

智葉「…………」サッ!

照(……やっぱり……避けられた……)

智葉「ふぅ……肝を冷やしたぞ」

純代《〔 前 夜 祭 と 後 夜 祭 で 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

智葉「く……」

純代「………………」

純代(私の攻撃が通じてる……〔Sの世界〕で植えつけられた被虐思考はかなり厄介だけど、逆を言えばその思考さえなんとかできればきっと勝てる)

純代(そのためには本内さんを先に倒すことが重要。私と宮永さんで辻垣内さんを足止めしている間に、鷺森さんに動いてもらって…)チラ

灼「…………!」サササ

純代(さすが鷺森さん。私がお願いする前に適切な判断力で動いてくれてる。スペアやストライク後の点数を瞬時に計算できるだけのことはある。頭がいい)

成香「つ、辻垣内さん辛そうです……」ハワワ..

灼「…………ごめんね」ヒュッ

智葉「!本内、逃げ……」


成香「えっ……わぁ!?い、いつの間に!?とつぜんで怖いで…」

灼「はあっ!」サッ!

進撃のスカートめくり。

成香「きゃあぁっ///」

灼「しっ!」ズルゥ!

開闢のパンツ下ろし。

灼「…………滅」

ズムゥゥゥゥ!

他人の指IN肛門。a a 無情。

成香「あ……か…………が……は……」

一瞬、何をされたかわからなかった成香だが、時が経つにつれ事態を理解できた。

聖書を習う学校に通っている間にお尻に指を挿れられるとは思ってもいなかっただろう。

灼《〔 一 撃 必 昇 ( パ ー フ ェ ク ト ゲ ー ム )〕》

成香「うっ……うぅ……」ペタン

力なく床へ座り込み、涙を浮かべながら、体の奥から溢れる快感に翻弄される成香。

成香(なん……でしょう……これ……っ……き、もちよすぎて……)ハァハァ..

灼(……ごめんね。本内さんには戦う意思はなかったんだろうけど……)

成香(こ、こわい……です……私、どうなるんでしょうか……)ハァアァァ..

灼「…………」

成香「あ、あ……あの……」

灼「?」

成香「……気持ちよすぎて……こわいです………………た、たすけて……///」モジモジ

灼「―――っ///」ドクン!

灼の心がターキーをとった時以上に高鳴る。

涙を浮かべ、頬を赤らめて上目遣いで灼を縋るような目で見つめる成香。

息は荒く、熱く。快感に染まった体をアピールしているかのようだ。

これこそ、

『南北海道産 怖がり成香 ~胸の前で小さく握り拳添え~』。

なんという素晴らしさだろうか。

一品だけれどフルコース以上。

もう他に何も頼む気にならない。ラストオーダー確定。手掴みで美味しくいただこう。

灼(な、なんて破壊力……!私色に染めてしまいたくなる……これが……)

最後の嗜虐。

灼は成香によって強烈な嗜虐心を植え付けられた。

それは〔Sの世界〕の支配をさらに強く受けることを意味する。

成香は敗北したが、役目は十分に果たしたといえるだろう。

智葉「……守り切れなかったか。本内、すまない」

照(鷺森さんありがとう……これで3対1)

純代(……宮永さんと連携して攻めれば……)

灼(間違いなく勝てる……でも……勝ってしまったら……辻垣内さんにいぢめてもらえない……)ハァハァ..


灼「!」ハッ

灼(私は何を考えて…………くっ……だめ……少しでも気を抜くと責められたくなる……ハルちゃん助けて……言葉責めして……)モジモジ

智葉「………………」

純代(本内さんを倒されたショックから立ち直る前に仕留める!)ダッ

純代《〔ウィンドウショッピングから本格ショッピングに移行する節目に脱糞( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!!》グォオオ!

智葉「っ!がはっ!!」ガクン!

純代(まだまだ!)

照「………………」

照(すごくいい調子……このまま深堀さんだけで勝っちゃいそうなくらい……)

純代《〔ジェットコースターの一番前の席で一回転した時に脱糞( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!!》

照(でも……なんか違和感……)

智葉「ぐ……っ……」

照(辻垣内さんはあの神代さんに勝った。それなのに、こんな簡単に勝てるものかな?)

照(それとも、私たちがこの戦いの中で想像以上に強くなったとか?)

純代(もう一発……む?)

智葉「ふっ……くく、くくく……」

純代(……笑ってる……そんな余裕があるはずは……)

灼(あぁ……なんてSっぽい笑い方……私の顔を裸足で踏みに来る時、こんな風に笑ってほし…)ポー..

智葉「……強い。さすがだよ深堀純代。四天王最強と言われるだけのことはある」

純代「…………」

智葉「本内の力を借りるだけで勝とうなど、おこがましかったようだ」

照「…………」

智葉「非礼を詫びよう」スッ

そう言うと智葉はメガネを外し、Sの軌道を描きながら懐へしまう。

智葉「これからは全力で…」スッ

髪を止めていたヘアゴムを外し、Sの軌道でポケットへ入れる。

智葉「お前たちの相手をしよう」

そして背中へ手を入れ、サラシをほどき、Sの軌道を描くと見せかけ、そのまま手を止める。

間。

そして間。

やはり間。

まだまだ間。

20秒ほど経ってようやく手が動き、

Sの軌道を描きながらサラシをポケットへしまう。

さすがの焦らしプレイである。

智葉「待たせたな」ゴゴゴゴ..

照「…………」

照(これは…………さっきまでの辻垣内さんとはまるでオーラが違う)

純代(3つのアイテムは自分の力を抑えるための道具だとでも言うのか?)ゴクリ

灼(あぁ……サラシを待ってる時の胸の熱さが治まらない……ハルちゃん……)ハァァ..


智葉「では早速行かせてもらう」ギンッ!

照「!」

智葉「〔 生 徒 総 性 奴 隷 制 度 制 定 (せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕」カッ!!

照・純代・灼「!!!」

智葉が能力を発動させた。

そして、

智葉「…………」ジロリ

照「っ!」

智葉「…………」ジロリ

純代「…………」

智葉「…………」ジロリ

灼「ぁ……っ!」

3人をそれぞれひと睨み。

すると照と灼の体がブルッと震えた。

照(な、何これ……さっき感じた責められたい願望が……すごく強くなった……)ゾワワ

灼(体が……落ち着かない……心が……Mに支配されていく……)ブルル..

純代(?2人の様子がおかしい……私はなんともないのにどうして……?)

智葉「……宮永、鷺森。ようこそ、22ヶ110(つじがいと)学園へ」

照「…………え?」

灼「ぁっ……か、歓迎しないで……拒んでほし…」ゾクゾク

智葉「お前たち2人は私の学園の生徒になった。そう……22ヶ110学園の理事長である、私の性奴隷候補生にな」フッ

純代「…………?」

純代(どうして私を含まない?単に好みの問題?いや、能力の支配下に置くなら3人まとめての方が都合がいいはず……)

照(そんな……性奴隷なんて…………私を調教して、色んなパラメーターを上げるつもり!?)ゾワ!

灼(う、嬉しい気持ちが勝手に…………私の体はハルちゃんに捧げるのに……)ゾワームド!

純代《……2人とも落ち着いて》

照《!深堀さん……》

灼《うぅ……はぁぁ……》

純代《なんで2人だけ能力にかかったのかを考えましょう。理由がわかれば、辻垣内さんと戦う上で有利になる》

照《確かに……私と鷺森さんの共通点はなんだろう?》

灼《……き、共通点?》ハァァ

純代《…………友達が少ない、とか?》

照《す、少なくない!》
灼《す、少なくない!》

純代《っ!》ビク

照《……菫とか友達だし……ひ、久とも仲良くなった。それに……会ったことのない人とでもきっと目に見えない絆が結ばれてる。人類はみんな友達》

灼《あ、阿知賀のみんなとは強い結びつきがあるから、1人で30人分くらいの友達パワーがある。だから友達は多い方に分類されるはず》


純代《……わかりました。というか、私も友達は少ないから2人だけの共通点にはならないか》フゥ

照《私は友達は少なくない》
灼《私は友達は少なくな…》

純代《…………はい》

智葉「…………」

3人がプライベート回線で会話をしている間に、智葉は懐からハンカチを取り出し、地面へと落とした。

そしてそのハンカチを踏む。

純代「…………?」

純代(今の……一体何の意味が……)

智葉「…………」ギラッ!

照「!!!」

灼「!!!」

ハンカチを踏みながら再び照たちを睨み付けると、照と灼の体がビクッと震えた。

照(ま、また……この感じ……)

灼(っ……これ、本当にいけな…)ブルブル

純代「…………」

純代(ハンカチ……踏む…………あ!これ、神代さんと戦った時の話と同じだ……)

―――置いた物は必ず踏んで、そしてまた見つめてくる。するとさらに『支配されたくなる』

智葉「…………」スッ

純代(!手ぬぐいを取り出した!まずい!)

純代《宮永さん!鷺森さん!逃げて!》

照「え?」

灼「……それ、どういう…」

純代《いいから!この部屋から出て逃げて!》

照《でも、勝手に出たら咲の身に何かあるかも…》

純代《小鍛治プロが出した条件は『チーム分け通りにわかれること』と『待機している人たちは戦闘区域に入らないこと』。私たちが部屋を出てはいけない決まりはないですから!》

照《!わかった》タタッ!

灼《……………》コクリ...タタッ!

ガチャ..タタタ

智葉「!逃げる気か」

純代(うん、それでいい。辻垣内さんの能力は地面に置いた物を踏みながら見つめることで支配を強める能力……というようなものだと思う。見つめられるだけで影響を受けるなら、とにかく辻垣内さんの視界から出る必要がある)

智葉「そうはさせない」スッ(手ぬぐいをしまう)

純代(物を踏まないといけないなら、走ってる最中に行うのは困難なはず。逃げてる間は安全ということ。対策を考えながら移動して勝機を待つのが得策)

純代(それに……辻垣内さんの新しい能力の支配下にない私なら、〔Sの世界〕に耐えさえすれば戦える。1対1で倒してしまえば全て解決する!)

純代《〔トイレの鍵を閉め忘れ、偶然ドアを開けてしまった親友に見られながら脱糞( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!!》

智葉「…………ふっ」

純代「!?」

智葉「確かに大した威力だ。さっきまでの私を苦しめただけのことはある」

純代(効いていない!?そんな……)


智葉「だが……全力の私には通用しない。お前の妄想を受け入れない」

純代「!!」

なんという強靭な精神力だろう。

純代の攻撃は、感覚を伴った映像を強制的に見せるもの。

目を閉じても網膜に映るスカに、誰もがダメージを負う。

しかし智葉はそれを拒む。映像、設定、全てを否定する。

自分の好むシチュエーションとは真逆にあるからこそ、全精神力がスカを拒絶するのだ。

百合妄想士としての強さ、揺るぎない信念、そして人を支配する女王気質を持つからこそなせる業。

このことから、全力を出した智葉には好き嫌いを越えたところにある極端な百合妄想は通用しないとわかる。

智葉「人には譲れないもの……どうしても受け入れたくないものがあって当然だろう?」

純代(……だからこそスカは強烈なダメージを与えられるのに………この人に限っては逆効果か……)

智葉「…………宮永たちを追わなくてはな」タタッ

純代「!」

純代(私を無視……相手にならないと……?)ギリッ..

純代「………………」

純代(でも……スカが通用しないなら……私なんて………)

純代「…………っ」ブンブン!

純代(それでも、ここで呆けてるわけにはいかない。辻垣内さんを追おう)ズシズシ..


【廊下】

照「………はぁ……はぁ」タタタ

灼「はっ……はっ……」タタ

照(逃げられたのはいいけど、いつまでも逃げ続けてもしょうがない……辻垣内さんを倒す方法を考えないと)

灼《……物を踏みながら見つめられるのがダメなんだと思います》

照《あ……そういえば神代さんがそう言ってた》

灼《はい。だから深堀さんはひとまず逃げるように言ったのかと…》

照《さすが深堀さん》

灼《……とりあえず、辻垣内さんの攻撃というか……見つめられることを避けながらの攻撃が前提ですね》

照《うん。私の場合は遠くから攻撃して…》

灼《はい。私は隙を見て背後から……いえ、今のうちに〔カウントダウン〕を発動させておいてからアソコかお尻を狙います》

照《それがいいね》

灼《はい。では早速……〔 カ ウ ン ト ダ ウ ン 〕》ゴォオオオオ...

〔カウントダウン〕の発動準備が始まった。

これから1文字ずつ、語尾の消失が始まる。

灼「……『私は鷺森灼』」0

照《戦法は決まったね。私たち2人の遠近両方からの攻撃と、辻垣内さんの能力の影響を受けてなかった深堀さんの攻撃が加わればなんとかなるかもしれないね》

灼「『そうですね…………でもどうして深堀さんは辻垣内さんに見つめられても平気だったんでしょうか?辻垣内さんは深堀さんも見つめてましたけ(ど)…』」1

照《……言われてみれば……》

灼「『私と宮永さんにあって深堀さんにない(もの)……』」2

照《…………言いたくないし、私自身は全然気にしたことないというか、将来的にまだ可能性もあるんだけど………その…………胸の大きさ、とか?》

灼「『……大きい人には効かない能(力)……?」3

照《『効かないのう……?』あ、能力のこと…………うん。私の胸が大きくなる可能性は無限だけど、まぁ……今現在、そう、現時点で大きくないかもしれないと分類される人だけ効くとか?》

灼「『……でも神代さんが負けた時に地面にハンカチとか落ちてたみたいですから、神代さんには通用したってことになり(ますけど)…』」4

照《……………本当だ。神代さんは大きいのに効いたことになる……》??

灼「『他のきょ(うつうてん……)』」5

照《きょ?》??

照(他のきょって何……?)ウーム

タタタ!

照「!この足音……」

灼「『……つ(じがいとさん)?』」6

智葉「」タタタ!

照(早い!?追いつかれる前に、妄想をセットしておこう!)

照《『神無月の巫女』、『この靴しりませんか?』、『かわいいあなた』……セット》

灼「『……それ、あらかじめいくつかセットしておくとかできるんですか?そうすればかなりきょ(うりょくな気が)…』」7

照《きょ……?はわからないけど、セットするのはできる。でもセットしたままの状態でも力を消耗するから難しい》

灼「『あ、な(るほど。そうですか)…』」8

照《あ、な?》??

照(……鷺森さんの話は激ムズ譜面……ヒドゥンモードすぎて私じゃ理解するのは無理かもしれない)フゥ..


智葉「」タタタ!

照(……少し遠いけど、けん制もかねて撃ってみようかな…………ん?)ピタッ

十字路に差し掛かった照がふと立ち止まる。右側の廊下の先に、久たちの姿が見えたからである。

灼「『宮永さん?(止まったら危ない)…』」9

久「!」

咏「」ニヤリ

照(!久がピンチだ………助け……に行くのは辻垣内さんを引き連れちゃうから……せめて援護だけでも……)スッ

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!》ギュロォォォォ!!

咏「ぅわぁ!?」

久「」ビクッ

憧「」ドキッ

照(………なんとかなったかな?もう一発撃った方がいいかもしれないけど……辻垣内さんに追いつかれるかもしれないから逃げよう!)タタッ!

智葉「…………」タタタ

灼「『宮永さん、辻垣内(さん来てるから早く)…』」10

照《……う、うん》

照(年上でしかも威圧感のある辻垣内さんを呼び捨て……鷺森さん、すごいスピリッツ。もしかして元ヤンキーだったりするのかな?ボウリングの球でケンカとか、裏切った仲間にエッチな罰を与えたり……)ドキドキ

灼「『わ』(たしは鷺森灼)…」

ここで灼が語尾の10文字消しを達成。

カウントダウンが成立した。

今後しばらくの間は、両手両足問わずにパンツ越しの〔一撃必昇(パーフェクトゲーム)〕が可能となる。

灼(…………)タタタ..チラ

智葉「…………」タタタ

灼(辻垣内さんがこっちへ走って来てる。ここで私が急に引き返したら多分一瞬戸惑うはず。その隙にお尻の穴かアソコを狙う)

灼(とっさに対応しようとしたとしても、辻垣内さんが物を置いて踏むより先に私の指が秘部を捉える!)

智葉「…………」タタタ

灼(うん、いける。素早くやればMっ気を感じる前に終わる。よし……3、2、1…………今だ!反転!!)クルッ!

智葉「!!」ピクン!

灼(やっぱり驚いてる……ここでスカートの上から……)シュバ!

智葉「…………はあっ!」

灼「え……?」

気合いを込めた発声と同時に、智葉の体が宙を舞う。

走ってきた勢いそのままに床を蹴ったのだ。

それは同時に、智葉のお尻の穴や股間も宙を舞ったという意味だ。

お尻は智葉で智葉はお尻で。

別売りはできないのであーる。

灼(かわされた……なら、もう1回!)シュッ!

着地後の智葉を狙うため、再び体を反転させる灼。

それに対し智葉は足が床に触れた瞬間、壁際にあった手すりを掴み、その手を支点にぐるりと体勢を立て直し、灼と正対した。

灼(さすがの身のこなし……でも物を取り出すほどの暇は与えない。辻垣内さんの目を見ないようにして……)タタタ


照「…………」

照(鷺森さんすごい……さすが元ヤンキー。裏切った仲間にエッチな罰を与えてただけのことはある)ゴクリ

灼「…………」タタッ!

間髪入れず突進してくる灼。

そんな灼を見た智葉は、小さく笑みを浮かべた。

そして手すりを掴みながらジャンプし、手すりの上に乗った。

灼「?」

灼(そんなところに乗って何を……?スペース的にも長時間乗ってられないし、バランスも悪いのに……)

智葉「…………」ギロリ!

灼「!!!!」ドクン!!

灼(これ……は…………!)ゾクゾクゾク

灼の動きが急激に鈍る。

そして智葉を狙いにいった指が、自らの肛門へと向かっていく。

灼「!あ、危なっ!」グリュン!

指が肛門に到達する寸前、体を捻って回避する。

灼「はぁ……はぁ……」

灼(今のは……指が私を攻撃した?いや、私が自分の意思でやったんだ……被虐思考が増幅した私が……)

智葉「ふふっ……」

灼(どうして……辻垣内さんはハンカチとかを踏んでるわけじゃない。それなのに……)

照「鷺森さん!?」クルッ..タタタ...

灼「!宮永さん、近付いたらいけな…」

智葉「…………」ジロリ!

照「う……!」ゾクン!

照(また……あの時の……ゾワゾワが……)

灼(……このままじゃ……まずい……やっぱり逃げないと…)タタタッ!

智葉「させはしない」スッ

灼「あ……」

灼(逃げ道を塞がれた……う、その目で見つめられると……)ゾワ

純代《〔 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 脱 糞 の 流 儀 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

灼「深堀さん!」

灼(早い!もう追いついてきてくれた!)ホッ

最初に走り出した照たち、そして後を追った智葉よりも出遅れた純代。

追いかけながらの戦闘のため、どちらかといえばリアル系ではなくスーパー系である純代の助太刀は期待できないだろうと思っていた灼。

しかし純代は追いついた。加速持ちの避けるスーパー系だった。

インハイの長野県大会決勝、副将前半戦終了時に、誰よりも早く対局室の階段を降りることに成功した瞬発力。

そして池田華菜の妹たちと遊ぶうちに身に付けたであろう俊敏性。

見た目で侮ることなかれ。純代は結構動けます。

智葉「……追いついたか。しかし効かん。そして……」ギロリ

純代「!!?」ゾワワ!


灼「!」

灼(え……深堀さんにも睨みが効いた?さっきは効かなかったのにどうして?)

智葉「ふふふ……入学おめでとう。ようこそ22ヶ110学園へ」

純代「う……ぐ……」

灼「深堀さん…」

純代《わ、私はいいから!逃げて!》

灼「!」ビクン!

灼(でも……辻垣内さんの能力が効かないならともかく……)

純代《私は自分でなんとかできる!一撃必殺の鷺森さんと高火力の宮永さんを失うわけにはいかないから!》

灼《…………わかりました。宮永さん、行きましょう》タタタッ!

照《あ、うん》タタタ

智葉「っ!しまった……深堀に意識がいきすぎたか……逃がさん」タタッ!

灼(!深堀さんを無視して一目散に私たちを追う気……?)

純代《させない!〔 フ ォ ー ク ダ ン ス 中 に 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

智葉「ちっ……効かないと言っているだろう」

純代《それでも……ほんの少しの足止めくらいにはなる!》

智葉「こいつ…………」ギロリ!

純代「あ……っ……」ゾクッ

純代(お、おかしい…………何故か無性にトイレのスリッパで顔を叩いてほしい気持ちが現れた……)ゾクゾット..

智葉「逃がさん」タタッ!

純代(はっ……まずい。行かせるわけには……)ドドスドスドドス!

照「はっ、はっ、はっ……」ダダダ..

照「…………」チラ

智葉「」タタ

照(!!………また追いかけてきた。このままだとまずい。疲れてヘロヘロになった瞬間に捕まっちゃう)

照(〔連続妄想(コークスクリュー)〕で遠くから攻撃しよう。辻垣内さんにダメージを与えれば振り切れるかもしれない)タタタ..

照《『モモカ×アンジュ』、『ユウナ×リュック』…》ギュルル..

灼(!宮永さん……そこから狙う気なんだ……いつでも避けられる用意しておこう)タタタ

照(……この距離なら攻撃されるまでに3つ目をセットできそう。『ク』がつくのは……えーと……)フム

智葉《『クロスアンジュ』!!》

照「!!!」

ギュルル..ル..ル...シュゥゥ..

灼(宮永さんの腕の竜巻が…………消えた……)タタタ

照(辻垣内さん……〔連続妄想(コークスクリュー)〕の弱点に気付いていた!?)

智葉「ふっ……三尋木プロの予想通りだな」タタタ


照「……っ!」タタタッ!

智葉「む。呆けて立ち尽くすことなく逃走…………気持ちを立て直したか。さすが宮永」ニヤリ

照「………………」

宮永照が使用する能力である〔連続妄想(コークスクリュー)〕。

しりとりの要領でカップリングや作品名など、百合にまつわる(と本人が思う)言葉を繋げる――コンボを増やす――ことにより威力を増す。

その破壊力は絶大で、コンボ回数によっては小蒔の〔八尺瓊の勾玉(ヤサカニノマガタマ)〕や純代の〔トラウマメモリー〕の威力を遥かに凌ぐ。

幼い頃から百合を愛し、百合知識が豊富な照にとってはしりとりを繋げることにそれほど時間がかからないため、スピードとパワーを備えたバランスのいい能力といえ
る。

ただし弱点がないわけではない。

先ほど照が灼に話したように、しりとりを繋げるたびに力を消耗する……つまり攻撃してもしなくても疲労するということ。

そして何よりも大きい弱点が『他者によるしりとり介入によって積み重ねたコンボは無に帰してしまうという』こと。

これは麻雀の際の連続和了と同じで、他者の妨害をかいくぐりながら前局よりも高い点数を目指すという照のプレイスタイルが大きく影響しており、

『早くて連発がきく高威力の能力……そんなものがなんのデメリットもなく使えるはずもない』という照本人の意識が設定したものである。

そのため、〔連続妄想(コークスクリュー)〕を使用する際にはオープン回線でなくてはならず、途中で他者がしりとりを妨害――照より先に言葉を繋げる――すれば、その時点でご破算となり竜巻は消失。力を消耗しただけで終わる。

さらに言葉を繋げる時にはある程度妄想する必要があり、ただ言葉だけを早口で繋げてることは不可能。

ある程度事前に考えておくことはできても、10も20も繋げるのは難しいだろう。

そして使える言葉――カップリングや作品名、キャラ――は1日に1度となっているため、定型文を決めてずっと同じコンボのパターンを繰り返すことなどはできない。

……といったように、使いこなせれば強力ではあるものの弱点も多いのである。

照「…………」

照(……弱点を知られたからって絶対に破られるわけじゃないけど……どうしよう?)

照(辻垣内さんの能力がどういうものかイマイチ掴めてない以上、先に〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を使いたいけど……こっちに向かってくる相手に背後から出現する〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕は当たらない……)タタタ

智葉「どうした宮永。少し疲れたか?そのざまではすぐに追いついて…………ん?あれは……ホウキか」タタタ

智葉が見つけたのは廊下の端っこに転がっていたホウキ。

照も灼も通りがかりにその存在に気付いたが、特に何も思うことなく一瞥して走り抜けていた。

そんなホウキに向かって智葉は方向を変えた。

そして踏みつけながら照と灼の背中を睨み付けた。

照「っ……!?」ゾワッ

灼「あ……ぅ!」ゾワ

智葉「ふふ……っ」タタタ

背筋をSの軌道で撫でる悪寒に一瞬体をMの軌道で波打たせた2人。

しかし一度振り返っただけで立ち止まりはせず、再び走り出す。

智葉があとに続き、純代が追走する。

数秒前の焼き増しのような映像だ。

灼(今のは辻垣内さんの能力……ホウキに乗ったから発動したんだ)タタタ

灼(…………あれ?そういえばどうして今は深堀さんに使わなかったんだろう?さっき手すりに乗った時は深堀さんも睨んだのに)

灼(ホウキだと辻垣内さんの能力が効かないから?だとしたら、その理由はなんだろう)

灼(手ぬぐいでは効かない。手すりでは効く。ホウキでは効かない……)

灼(他の2つと手すりの違いは、手すりは腰の辺りにあるからそこに乗ると高い視点から深堀さんを見下ろすように………………あっ!)

灼(私と宮永さんと神代さんには効いて、深堀さんに効かなかった理由……それはもしかして…………)


灼(身長―――)

灼(相手を見下ろすことで被虐心を増加させる、とか?自分より背の低い相手なら、何を踏んでも見下ろせるから有効で、相手の背が高い場合は手すりとかに乗らないといけない……)

灼(…………これ、いい線いってるかもしれない。物に乗るっていうのが条件なのかはよくわからないけど……)

灼(あ……でも宮永さんと辻垣内さんって身長は同じくらいかも……聞いてみよう)

灼《宮永さん》

照《なに?》

灼《宮永さんと辻垣内さん、どっちが背が高いですか?》

照《え?身長?ええと…………辻垣内さんが161センチで私が160センチ。辻垣内さんの方が1センチ高いね》

灼(!これ……ビンゴかもしれな………って……)

灼《…………聞いておいてなんですけど、なんで辻垣内さんの身長を即答できるんですか?》

照《インハイの時、色々なチームのデータを集めてチェックしてたから》

灼《あ……なるほど》

照《うん……特に身長差が熱かった時期もあった……男気があってみんなに慕われる辻垣内さん。でも背が高いダヴァンさん視点では辻垣内さんは常に上目遣い……可愛くって仕方がない。結局、押し倒す流れとなり……///》ハフゥ...

灼《………………あの、今は妄想はその辺で…》

照《あ、うん…………でもどうして急に私と辻垣内さんの身長のことを…………あ》ハッ

灼「?」

照《…………大丈夫。鷺森さんもいつかきっと私みたいになれるよ。胸も諦めないで》ニッコリ

灼《違……『あなたみたいに素敵な人になるには?』的な意味合いじゃない。この状況でその勘違いはありえな…》ジト

照《…………い、今のはジョーク。本気で言ってないジャンルのやつ……だから別にその……///》カァァ..

灼《どっちでもいいです……それよりも……辻垣内さんの能力、わかったかもしれないです》

照《!本当に?》

灼《はい……あ、階段……2階へ上がってください》

照《2階?横の廊下は?構造上ぐるりと回れるから1階で行き止まりとかなさそうだけど》

灼《辻垣内さんが2階で私たちが1階にいる状況は避けたいので…》

照《?わかった》タタタ

灼(……でも……私の推理が正解だったとして……辻垣内さんに勝つにはどうしたらいいんだろう?近付いたらゾクゾクするし、被虐心からか動きが鈍る…)

照「あっ!?」

灼《?宮永さん、一体どうし…》

照「廊下、塞がれてる……」

灼「!!」タタタ!(階段を駆け上がる)

灼「…………本当だ……」

照「椅子がバリケードみたいに積まれてる……」

灼(……右も左も塞がれてて通れる隙間がない……)

灼「ここは引き返すしかな…」

智葉「そうだろう?」ガシッ!

灼(辻垣内さん!?腕を掴まれた……!)

照「!!」


智葉「もう逃がさんぞ」ギロリ

照「ふぁ……っ」ゾワ

灼「~~~~っ!!」ビクビクン!

智葉の足元に手ぬぐい。

視線が2人を射抜く。

灼「ぁ……あぁ……」ガクガク..

智葉「鷺森……お前はそろそろ限界か。無理もない。本内にかなりの嗜虐を植え付けられたものな」ニヤリ

純代「!鷺森さん!」タタタ

灼「あ……」

灼(深堀さん……ダメ……今こっちに来たら階段の上から見下ろされる……)

灼《ひ、引き返して!階段から離れて!》

純代「?」

智葉「ん……?」ジロ

灼《はっ……早く!》ゾワ

純代《わ、わかった》サッ

智葉「余計なことを…………鷺森、お前私の能力に気付いたのか?」

灼「ぁ……そ、それは……」

智葉「答えろ。命令だ」

灼「っ……は、はい……正解かはわからないですけど………」ゾワ

智葉「言ってみろ」

灼「つ、辻垣内さんに……物理的に高いところから見下ろされると……Mになる……とか……」

智葉「ほう。よく気付いた。賢いな……ふふふ」

灼(やっぱり……)

〔生徒総性奴隷制度制定(せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕。

見下ろした相手の被虐心を増幅させ、智葉の性奴隷へと調教する能力。

性質上〔Sの世界〕の最終進化版。

能力の有効範囲内を智葉が女王様兼理事長を務める22ヶ110学園の敷地内とし、

見下ろした対象を『性奴隷を目指す生徒』として入学させる。

性奴隷化への進行度(被虐心の成長度合い)は、

睨んだ回数や睨まれた場所(目が合うと強力)が影響しており、長時間視線を受けるほど進行する。

しかしただ睨めばいいのではなく、異なる足場で相手より高い位置から見下ろす必要があり、

智葉がハンカチなどを踏んでいたのはそのためである。

ちなみに一度乗った物を同じ相手に再度使用することはできない。

弱点は、智葉より背の高い相手には総じて効果が薄いこと。

何かの上に乗ることで高さで勝れば智葉より背の高い相手も22ヶ110学園に入学できるため、全く役に立たないわけではないが、

相手からすれば『小さい子が背伸びをして頑張って睨んでいるものの、足がプルプルして辛そう』に見え、可愛く思う気持ちが被虐心より強く出るため、性奴隷から遠く離れてしまう。いわゆる留年だ。

その他に、対象が〔生徒総性奴隷制度制定(せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕の有効範囲から離れるとだんだん被虐心はおさまってしまうので、

ある程度の距離を保つ必要もある。(範囲は50メートル)


照「!」

照(見下ろされるとMに…………そうだったんだ!でも私がいるのにバラシていいのかな?)

智葉「……宮永、聞いたか?」

照「!」

智葉「私の能力は今鷺森が言った通りだ。それを聞いて、お前はどう動く?」ニヤリ

照「……っ!」

照(これは……わざと私に聞こえるように言わせたんだ……手の内を晒した上で、あがく私を屈服させるつもり……)

智葉「ふふ」コトッ...ギュム(乾電池を床に落とし、踏む)

照・灼「!」

灼(逃げないとまずい………でも……手を掴まれてる…)

智葉「……諦めろ。抗わず、従え」ギロリ

灼「ぁ…………」ゾワワワッワワー!

灼(辻垣内様の目……なんて強い光なんだろう……それに比べたら……ハルちゃんなんてヤングガール……)ポワワ..

智葉の睨みにより、灼は思考を……戦闘意欲を奪われた。

名前にSを1つ含む分だけ反抗できたようだが、成香によって嗜虐心を高められた状態で〔Sの世界〕を受けていたことが決め手となり、

この瞬間、灼の精神は智葉の性奴隷メンタルへと堕ちてしまった。

照(鷺森さんの様子がおかしい……助けないと!)

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》シャキン

智葉「む」

照《『エビマヨ×ホテイ(エビスさんとホテイさん)』……『いなり、こんこん、恋いろは』……》

智葉《『白衣性恋愛症候群』!!》

照「!!!」シュゥゥゥ...

智葉「はははは……残念だったな。最後に『ん』もついたし、キレイな終わり方だろう?」

照「…………っ」フイッ!

照(あ、危ない……目を合わせないようにしないと……!)

智葉「ふん……」ギロリ

照「ぁっ!?」

照(だ、だめ……目を見なくても……視線を感じるだけで…………いぢめられたくなる……)ゾワンゴ

灼「はぁぁ……智葉様……踏んでほし…///」

智葉「踏んでほしいだと?自分がどれほど惨めなお願いをしているかわかっているのか?」クス

灼「そ、それは……///」

智葉「……わかっていてなお、踏まれることを望むか?」ニヤリ

灼「イエスアイアム!」ハァァ...

照「!」

照(だ、だめ!鷺森さんが阿知賀のメンバー以外と怪しい雰囲気になるなんてやだ!絶対止める!)

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》シャキン

照《『マユリ×蘇芳(FLOWERS)』……『烏月×桂』……》

智葉《『和泉香×蘭堂りの(極上生徒会)』!》


照「!!!」シュルル..ル..

智葉「残念だったな」

照(ダメ……どうしても返される……)

智葉「そろそろ諦めたらどうだ?そして、私の能力に屈服する前に、自分の意志で私の性奴隷にならないか?」

照「……ならない」

照(そんなことになったら……咲が悲しむ)

照(戻ってきた時に姉が性奴隷になってるなんてひどい悪夢だもん)

智葉「ははは……それでこそ宮永だ」

照(……嬉しそうな顔……辻垣内さんは力づくで抑えつけるのが大好きなんだ……こわい人……)ブルッ

灼「踏んで……踏んで……///」

智葉「……よし、ならば床に寝そべれ」

灼「は、はい……」ゴロン

照「!」

照(まったなしで危険!踏まれちゃう前になんとかしないと!)

照(…………もう出し惜しみしてる場合じゃない。切り札を使おう!)

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》シャキン

智葉「またか。懲りないやつだな。ま、嫌いではないが」フフ

照《…………『ギギギモード』》ギギギギ...

智葉「ん?」

照《『マミ×まどか』……》

智葉《『神原駿河×戦場ヶ原ひたぎ』!》ニヤリ

照《…………『円×唯(けいおん)』……》ギュルル..

智葉「なに!?」

智葉(妨害したはずが続いている!?しかもしりとりではないだと!?)

照《『結衣×京子』…………『杏子×さやか』…………》ギュルルルルル...

智葉「これは…………同名で繋げたのか!」

照《『サヤカ(出島)×アリア(生徒会役員共)』…………セット!》ギュルルルルルル!!

照(完成……)

智葉(凄まじい力が集約されている……なんだそのバカげた火力は……あんなものを受けたらタダではすまない)

智葉(ならば…………撃つ前に抑える!)サッ

床に寝転んだ灼のスカートを踏む智葉。

そしてすぐさま照を睨みつける。

照「っ……!」ゾワ

狙いを定めるために智葉を見ていたことが仇となった。

真正面から視線がぶつかる。

性奴隷へ、1マス進む。

照「…………こ」

智葉「…………」

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!》シュバッ!

智葉(まだ足りなかったか!)


ギュルルルル!!

照(当たって!)

智葉「くぅっ!」タッ!

照(ああっ!?避けられた!)

竜巻を放つ直前に睨まれた影響か、狙いから少しズレた攻撃に対し、智葉は捻ってギリギリでかわした。

そしてそのまま階段を駆け下りる。

智葉「…………」タタタタ!

智葉(しまった……あのタイミングでかわせたのなら、そのまま距離を詰めるべきだった。私は何をしているんだ)チッ

Sの得意技、舌打ちを鳴らす智葉。

それは作戦ミスによる苛立ちからではあったが、本質は別のところにある。

照の放った〔連続妄想(コークスクリュー)〕を避けた際、その威力に恐怖心が生まれてしまい、半ば本能的に階段を駆け下りてしまった。

そんな自分に対し、智葉は怒りを覚えたのだ。

灼「あぁ…………智葉様に置いて行かれた……これもまた……よし……」ガクリ

照(……次こそ当てる。もう一度……)タタタ!

智葉(…………次だ。次こそ確実に仕留める)

??《下りてくるのを待っていた……》

智葉「?」

純代《〔 お し め を 貫 い た あ の 日 の 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!!》ゴオッ!

智葉「っ……またお前か……」

純代(…………やはり……全然効いてない……)

智葉「無駄だと言っただろう。私にソレは通用しない」

純代「………………」

智葉「これは私と宮永の戦いだ。外野は下がっていろ」

純代「!!」

純代(外野……)

照「…………」ザッ

階段を下りてくる照。

智葉の能力に対抗するため、1段だけ上の位置で立ち止まる。

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕……『ギギギモード』》ギギギギ..

智葉(!また来るか……だが名前繋がりだとわかった以上、次は潰してやる!)

照《『結衣×あかり』……》

智葉(あかり……あかり……む?赤座あかり以外に同じ名前のキャラは…………??)

照《『灯里×アリス』……》

智葉(ARIAの水無灯里か……くっ、思い出せなかった…………いや、悔やんでいる場合ではない。アリスなら…)

照《『アリス×カレン(きんいろモザイク)』……》

智葉(先を越された!カレン……カレン…………そうだ!シスプリの…)

照《『カレン×C.C(コードギアス)』……》

智葉(くっ……間に合わなかったか……)


照《…………》ギュルルルルル...

智葉(しかし……これ以上繋げるにはC.C(シーツー)と同名が条件、か。さすがにこれ以上は続くまい。打消しが不可能ならば回避に専念するのみ。竜巻がかなり大きくなっているが、避けるスペースがないわけでないしな)

照《……『CC(カードキャプター)さくらの大道寺知世×さくら』…………》ギュルルルルル!

智葉「な、なにぃい!?そ、そんなパターンがアリなのか!!」

照(……アリだけど、強引すぎるから負担がさらに増えるのが欠点……)ズキンズキン..

照《『桜×凛(Fate)』……》ギュルルルルルル!

智葉「…………馬鹿な」

智葉(なんという巨大な竜巻……激しい風によって宮永のスカートがかなりめくれているではないか。肝心の部分は見えないが……太ももが……)

純代「…………」

照《…………セット!》

智葉「っ!」ハッ

智葉(いかん、呆けていた。ここにいてはまずい。あの大きさでは廊下のどこにいても当たってしまう!敵前逃亡のようで気に入らんが、ここは一度……)

ガシッ

智葉「な……!」

純代「………………」(智葉を羽交い絞め)

照「!深堀さん……」

純代《このチャンスは逃してはダメ。私ごと撃ってください》

照「でも……」

純代《今は勝利だけを考えて》

照「…………」

智葉「ぐ……き、さま……!離せ!」

純代「……嫌です」

智葉「ここで宮永を裏切って私を逃がせば、罪悪感で被虐の悦びに打ち震えられるぞ!どうだ!?」

純代「…………確かに、私の中にはあなたと本内さんに植え付けられたMの心が残ってます。だから宮永さんの竜巻を全身に受けたいという気持ちもある」

智葉「……はは、そうだろう?ならばこの手を離して思う存分味わえ」

純代「…………嫌です」

智葉「!!」

純代《……宮永さん、お願いします》

智葉「貴様……」

少し離れた位置で、踏まれるか踏まれないかのターニングポイントを待ち続ける灼を尻目に純代は覚悟を決める。

床にごろ寝と羽交い絞め。

被虐心に支配されている人間との違いが表れたわかりやすい例である。

智葉(くそ……宮永に固執しすぎたか……先にこいつを片付けておけば……)


照「………………深堀さん、ごめんね」スッ

智葉「!」

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕》シュバッ!!

ギュルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!

純代・智葉「!!!」

ズバアアアアアアアアアアアアアア......

照「………………」

智葉「……………」

純代「……………」

照「………………」

智葉「……………」フラ..

純代「……………」フラ..

ドサ..ドサ...

照「!」

照(倒れた……深堀さんも巻き添えにしちゃったけど、なんとか辻垣内さんを……)

ドクン..

照「っ!?」フラッ..

照(これは……ギギギモードの……反動…………)ガクン(膝をつく)

ギギギモード(擬偽戯モード)とは、

〔連続妄想(コークスクリュー)〕の補助的な能力である。

通常はコンボの繋がる条件はしりとりだが、ギギギモードを使用することでその条件が『同名』あるいは『同じ言葉を含むもの』となる。

同名なだけの別作品のキャラやタイトルを本物に見えるよう『擬』態させ、いつの間にか同一だと思えるよう『偽』装し、そして繋げる遊『戯』。

例えば『さくら』は『朝倉』という風に繋げることも可能。ただし全く同じ漢字の同名であったり、類似度が高いものに比べて威力は落ちてしまう。

しりとりに比べ難易度が上がるが、その分だけコンボが繋がった時の威力は増し、さらに選べる言葉の幅が狭まることで妨害を防ぐことができる。

難点は力の消耗度合いも通常時よりも増すこと。

上手く使いこなさなければ自滅してしまうだろう。

今現在の照のように。

照(……初めて実戦で使ったから少し計算が狂った…………まさかこんなに辛いとは……)ハァ..ハァ..

照(でも…………辻垣内さんはなんとか倒せた。それが救い)

智葉「……ぐ……」

照「え!!」

智葉「まさか…………たった一撃でここまでのダメージを……受けるとは……思わなかったぞ」グググ..

照「……っ……」

照(倒しきれなかった………力を使いすぎたから?だけど……どちらにしても、辻垣内さんはフラフラ。普通に戦って……倒…)ガクン

智葉「ふ……攻撃を受けた私以上に辛そうだな」

照(……た、立てない………)

智葉「…………」スッ(純代のスカートを踏む)

照(あ……それはまずい……けど……どうしたら……)


智葉「……………」ギロリ!

照「!!!」ゾワゾ!

智葉「……………」スッ(サラシとヘアゴムを取り出し、地面へ置く)

智葉「汚したくはなかったが……万全を期す」グッ(サラシとヘアゴムを踏む)

照「ぁ……ぁ…………」

智葉「……………」ギロリ!!

照「~~~~~!!!」ゾゾゾワ・ゾゾ

智葉は両足でサラシ、ヘアゴムを踏み、〔生徒総性奴隷制度制定(せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕をダブルで発動させた。

それは音楽と美術の選択科目を同時に受講するようなもの。オンリーワンな特別性。

歌いながらりんごを描き、パンくずをハーモニカに詰める。

シャッシャッ、ラララ。ポロロン、ジョポン。

照は性奴隷のエリートコースへ引き上げられるように、急激に被虐心を増幅させられる。

照(………………)

高まりすぎた被虐心は、照を放心状態へと導いた。

限界まで力を使い果たしたことと〔Sの世界〕を受けていたこと。

そして今回のW選択授業。

これらの要因が合わさった結果、照の精神を揺さぶる被虐心は、咲がさらわれてから常時発動していた〔姉妹の愛(シスターラブ)〕による耐久力強化の恩恵、そして咲に対する強い想いをも通り越し……。

照「辻垣内……様……///」

宮永照、高校3年生!性奴隷としてデビューです!


【???】

咲「はっ!?」

桃子「ど、どうしたっすか?」

咲「…………わからないです。でも…………お姉ちゃんが性奴隷になっちゃったような気がして……」

桃子「いやいや……それはないと思うっすけど……」

咲「でも……お姉ちゃん、素質バッチリだし……」

桃子「妹さんにそんなこと思われるなんて、どんな人っすか」

咲「うぅ……お姉ちゃん……私以外にらめぇとか言わないで……」グス

桃子「リンシャンさん……」

咲「あぁぁ……でもだめだ。お姉ちゃんはきっとすぐらめぇって言っちゃう……早く止めないと……らめぇを止めないと」スクッ

桃子「え、あ……リンシャンさ…」

咲「…………」ジィー..

健夜「…………」

桃子「…………」ゴクリ

咲「お、お姉ちゃんがらめぇってなるくらいなら……一か八か……小鍛治プロ、あなたを……た、倒します!」

ハギヨシ「宮永様、どうか落ち着い…」

健夜「大丈夫です」スッ

桃子(と、止めるべきっすか?それとも、この機に乗じて私も攻めるべきっすか!?と、とりあえず、リンシャンさんを見捨てるわけにはいかないっすから……いつでも助けられるように準備するっす…)ススッ

咲《〔 リ ン シ ャ ン カ イ ホ ウ ノ ……〕》ピタッ..

健夜「…………」

咲「………………」

桃子「…………??」

桃子(あれ?急に動きが止まった……)

健夜「……さ。座って静かに待っててね」

咲「うん。わかったよお姉ちゃん」ニコリ

桃子「!?」

桃子(……小鍛治プロがお姉ちゃん?意味がわからないっす)

咲「」ニコニコ

桃子(この表情……まるで本当のお姉さんを見てるようっす……年齢差はアレっすけど)ハッ

桃子(これって、三尋木プロの使う幻じゃないっすか!?小鍛治プロの能力は癒しの力だったはずじゃ……?)

健夜「………………」

桃子(それともまさか…………幹部が持つ能力を全部使える……っすか……)ゴクリ


【東校舎 廊下】

照「らめぇ……辻垣内様ぁ……体が熱い……我慢できない……っ///」モジモジ

智葉「は、はは……はははは!やった……やったぞ!ついに宮永を……性奴隷にした!!」

智葉「宮永照!私の最大のライバル!目標!乗り越えるべき相手!」

智葉「凄まじい雀力!美貌!美声!華奢で折れてしまいそうな儚くも美しい体!全てにおいて私を上回る奇跡の存在……そんな宮永を…………私は……せ、性奴隷にしたのだ!!」

照「あぁ……大きい声……そのホーン数が耳を……っ///」ビクン

純代「………………ぅ」ピクン

純代(なん……だろう。この声……あ……そうだ。私、辻垣内さんと一緒に倒れて……)

智葉「やった……やったぞ……」

普段の冷静沈着さが嘘のように興奮している智葉。

それは今本人が語った言葉からわかるように、自分よりも上だと認める存在である照を手に入れたということ。

念願の高嶺の花を手に入れたかのような達成感、そして気高き者を我が身とした征服感はとてつもなく強い感情をもたらした。

推しメンのURが立て続けに出たようなものであり、我を忘れて騒いでしまうのも無理はない。

智葉「はぁ……はぁ……///」

智葉「はぁ…………………」

智葉「…………さ、さて……」コホン

照「っ……はぁ……///」

智葉「み、宮永。お前は私の……せ、せせ、性奴隷になったんだ。わかるか?」

照「はい……智葉様///」

智葉「っ!!がはっ!」

照「…………///」モジモジ

智葉「き、貴様……可愛すぎるだろうが愚か者め!い、いい加減にしないか!」

照「あ、ごめんなさい……」シュン

智葉「!」

怒鳴られて落ち込む照の姿は、

女の子座りで眉毛八の字。

さらに涙ぐむおまけ付き。

匂い松茸味しめじよりもしっくりきてしまう。

智葉「ああああああああ~~~~~っ////」

落ち込む照を見て叫ぶ智葉。

自分の髪の毛をわしわしと掻き毟り、息も荒く目を血走らす。

照「?」

智葉「お、おお、落ち着け……何を興奮しているんだ。私らしくもない」ハァハァ

照「智葉様?」

智葉「っ!」ゾワン!

智葉「………………」

照「…………?」

智葉「……い、いけるか?いや、大丈夫だ。私の能力は完璧……今までの相手と同じように命令すればいいだけだ」ブツブツ


照「??」キョトン

智葉「!!や、やめろ!可愛らしく首を傾げるな!む、胸が苦しくなるだろうが!」

照「っ……ごめんなさい……ぐす……」

智葉「と、とにかく!これから命令をする!性奴隷の宮永は……」

智葉「…………ま、待て。性奴隷にはそれなりの呼び方があってしかるべきだな。うむ。では、新しい呼び名をくれてやる」

照「!ありがとうございますっ」ニコリ

智葉「!!!」

智葉(こいつ……!こんな風に笑うのか!!な、なんて凶悪な可愛さだ……)ドキドキ

純代「………………」

純代(……何、この状況)

純代(宮永さんの攻撃を2人で受けてから一体何が……というか、この辻垣内さん……本物?さっきまでと態度が全然違う)

智葉「お前の呼び名は…………そ、そうだな。下の名前がて、てるだから……」

照「」ニコニコ

智葉「『てるみゅう』というのはどうだ?小動物っぽくて可愛いだろう?」

照「素敵」エヘヘ

智葉「だ、だろう?」フフフ

純代「…………………………」

照「ありがとうございます」ニッコリ

智葉「ち、ちなみに……てるみゅうは語尾に『みゅう』をつけるんだぞ?」

照「はい。わかったみゅう」

智葉「~~~~~~っ!!」キュンキュキュキュヴヴヴヴヴ!

純代「……………………」ゾワー...

純代(……本当に、何が起きてるんだろう)

智葉「はぁああ……くそ……愛しすぎる……」ワナワナ

照「あの……それで……みゅう」

智葉「な、なんだ?」

照「……智葉様のことは智葉様とお呼びすればいいみゅう?」

智葉「…………そうだな…………その呼び方も捨てがたいが…………よし、決めた」

照「みゅう?」??

智葉「か、かわいい…………じゃ、なくて……いや、可愛いが、今は置いといて…」

智葉「私のことは『さとリーフ』と呼べ。『様』はつけるなよ?」

純代「………………」

照「さとリーフ……?」

智葉「ああ。みやな……てるみゅうだけにはそう呼ばれたい……あ、違う。無理矢理呼ばせてやる。性奴隷だからな。ははは」

純代「………………」


照「うん、わかったみゅう。さとリーフ♪」ニコリ

智葉「はあぁぁぁあぁぁ……ば、ばかやろううぅうぅ……性奴隷が可愛いこと言うんじゃなはぁぁぁあああ……い……///」

純代「……………………」

智葉「はぁはぁ…………よ、呼び名も決まった。では早速今から性奴隷としての役目を全うしてもらおう」

照「はいみゅう」

純代「!!」

純代(それはダメ!そんなひどいことをさせるわけにはいかない!)

智葉「まずは…………膝枕だ!」

純代(…………………え?)

照「膝まくみゅう?」

智葉「ば、ばかぁ。お前それじゃ語尾が単語にめりこんでるじゃないかぁ。けしからんなあもう」ニヘラ

照「ごめんみゅう……」シュン

智葉「ああっ!?ち、違う!元気出せ!命令だ!」

照「あ、はい。むんっ」グイッ(力こぶを作る)

智葉「お前それ可愛さが飽和状態でデフレ待ったなしだろうがぁ。こらっ!」メッ!

照「……ごめんなさいみゅう。さとリーフ、許してみゅう」

智葉「し、仕方ないな。許してやる。ささ、膝枕をしろ」

照「はい……どうぞみゅう」スッ

智葉「い、いくぞ?」

照「みゅう」コクリ

智葉「…………」コテン

照「…………」

智葉「…………」

照「………あの、どうですか?変じゃないみゅう?」

智葉「あ、ああ……言葉を失っていた。この柔らかさと甘い匂い……最高だ。これが宮永の……あ、いや、てるみゅうの膝枕か……」

照「ぁ……よかったみゅう」ニコリ

智葉「っ……あ、あまり見つめるな。苦しくなるだろう」

照「??」

智葉「……では次の命令といこうか。そうだな……膝枕ときたら……耳掃除か」

照「はいみゅう」

智葉「あっ、いや、待て!」

照「??」

智葉「それでは耳の中をてるみゅうに見られることになってしまう……そんな恥ずかしいことができるはずもない。万が一汚れていたら……」

照「てるみゅうは性奴隷みゅう。さとリーフ、気にしないでみゅう」

智葉「気にするに決まっているだろう!」

智葉もやはり年頃の女の子。

もしもメガ耳垢が見つかろうものなら……と恐れるのも当然だ。

智葉「そ、そうだ。耳掃除はやめだ。その代わりに、目を閉じたまま耳に優しく息を吹きかけてくれ」


照「わかったみゅう。じゃあ…………………………ふぅ~」

智葉「っ……はぁあ……」ゾワワ

照「どうみゅう?」

智葉「なかなか素晴らしい……では次は私の番だ。てるみゅう、私の膝に寝ろ」ムクリ

照「あ、はいみゅう」コテン

智葉「ではいくぞ………………ふぅううぅ」

照「ぁ……っ///」ビクン

智葉「ふぅぅうぅぅうぅぅ……」サワワ

照「っ!ぁ……さとリーフ……ひ、膝……」

智葉「触っているよ。触っているよ?私の右手が触っているよ」ハァハァ..

照「やぁ……っ……くすぐ……った、い……////」カァァァ

智葉「てるみゅう……なんて可愛いんだ……お前は……私のものだ……」サワワワ!

純代「………………」

純代(なんて穏やかな表情……辻垣内さんって心を許した人の前では甘えるタイプなのだろうか……)

純代「………………」ハッ

純代(しまった……あまりの展開につい見入ってしまった)

純代(最初は豹変した辻垣内さんがなんだか微笑ましかったけど、これ以上は宮永さんの貞操が危ない。助けないと)

純代(…………助けないと……いけない………)

純代(だけど……一体どうやって助ける?)

純代(私のスカは辻垣内さんに否定された。弾き返されてしまった)

智葉『無駄だと言っただろう。私にソレは通用しない』

智葉『これは私と宮永の戦いだ。外野は下がっていろ』

純代「……っ……」

純代(そう……私のスカは通用しなかった。もはや打つ手は…)

――――だったか?

純代「ぁ……」

純代(そういえば……前も一度同じようなことを考えた時があったっけ……)

――――頼りすぎなだけじゃねェのか?

純代(あれは確か……〔リリース(Lilys×Release)〕を会得する前……―――)


~~~~~~~~~~~~~~~

【深堀家 リビング】

純代母「大したおもてなしができなくてすみませんが、ごゆっくりと召し上がってくださいね」

貴子「うるせェァァッ!いただきます!!」

純代母「は、はい……」

貴子「もぐもぐ……うめェァァッ!くそうめェぞコラァァッ!!食いすぎてゲロ吐いちまいそうだァァッ!!」

純代母「あ、ありがとうございます」

純代《……それで、その……》

貴子《あん?なんの話だっけか?》パクパクモグモグ

純代《……いえ、その……今度の相手がどれほど強大なのかがわからないので不安が……》

貴子「うるせェァァッ!」

純代「っ!」ビクッ!

純代母「ひぃ!」ドキン!

貴子《……そんなこと気にしてもしょうがねぇだろうが。てめェはてめェでできることをすりゃいいんだよ》

純代《そう、ですか……》

貴子「っ茶ァァッ!!」

純代母「は、はいっ!おかわりですね!持ってきます」タタタ

貴子「飯時に走るんじゃねェ!」

純代母「す、すみません!」

純代「………………」

貴子《……なんだ。私の答えに文句があるのかコラ》

純代《い、いえ……ただ、やっぱり不安で……今までは無理矢理ねじ伏せる力技でやってきましたけど、神代さんのようにそれが通じない人にはどう戦えばいいのかとか……悩んでしまって》


貴子《あん?そんなの簡単じゃねェか》

純代《え?》

貴子《力技ってスカだろ?》

純代《はい》

貴子《で、スカが効かねェ相手にどうすりゃいいかを悩んでる》

純代《そうです》

貴子《そんなの簡単だろうが。他のやり方で攻めりゃいいだろ》

純代《えっ……》

貴子《つうかよ、お前の一番好きな妄想はスカだったか?》

純代《それってどういう……》

貴子《楽だから、強いからって頼りすぎなだけじゃねェのか?》

純代「………………」

純代(今の言葉……なんだか引っかかる……一体どうして……?)

貴子《いや、それよりもよぉ……》

純代《はい?》

貴子《てめェは〔リリース(Lilys×Release)〕をマスターするのが先だろうがこの野郎がァァッ!》

純代《ひぃいいい!!?》

貴子「そんで深堀ァァッ!のお母さんァァッ!」

純代母「は、はいっ!今、お茶をお持ちしまし…」

貴子「茶はあとだァァッ!それよりもこの豚汁よぉ、肉が劇的に少ねェ!!ケチるんじゃねェァァッ!けどうめェ!おかわりァァッ!!」

純代母「たっ、ただいまよそります!」

貴子「慌てるんじゃねェァァッ!だが急げァァッ!でも走るなァァッ!!」

純代母「ひぃぃぃ!!」ワタワタ

~~~~~~~~~~~~~~~


純代「…………」

純代(思い出した……)

純代(あの時は結局うやむやになったし、そのあと考えることもなかったけど……)

貴子『つうかよ、お前の一番好きな妄想はスカだったか?』

貴子『楽だから、強いからって頼りすぎなだけじゃねェのか?』

純代「………………」

純代(そうだ……)

純代(私には一番肝心なところが抜けていた)

純代(どんな妄想が好きか……そんな大事なことを忘れてた)

純代(私は……『可愛い子が快楽に溺れるところ』が大好きだった)

ヒンヤリ廊下に寝そべりながら、純代は思い出した。

以前に照と戦った際に自分が言ったセリフを。

『でも私は……ただ相手を制するのではなく………色々な表情が見たい』

『………快感に溺れたり………とてもいやらしい気分になっている時の表情が………たまらなく好きなんです』

『だから、できることなら………全員快楽責めの妄想で倒したかった』

それは初めて敗北したからこそ出た素直な言葉であり、まぎれもない本音だった。

純代(それなのに……私は強さを求め、スカに固執してしまった)

〔リリース(Lilys×Release)〕を会得する時に、妄想上の美穂子にスカを認めてもらうという流れになったことも原因の1つだろう。

美穂子がいいならスカでいこう。

キャプテン信仰が邪魔をしてしまっていたのだ。

純代(……本来の私……宮永さんに負けるまでの私は常に妄想していた。擬人化とかスカもあったけど、基本は快楽責めの妄想だった)

純代(言葉を発さず、周りを観察し、仲良さげな女子たちでストーリーを作る……そんな毎日を何年も繰り返していたのに……たった一度の敗北でスカ専門みたいになるなんて……周りに流されすぎた)フフ


純代(……でも、今ようやく思い出すことができた……そして……)チラ

智葉「ど、どうだ?わ、私の手は……気持ちいいか?」

照「……は、……恥ずかしいから……言いたくないみゅう///」

智葉「ば、ばばっ、ばかぁ。お前その反応やばいだろうがぁ!一生触り続けさせるつもりかぁ!」サワサワ..フゥーッ..

純代(……その時に培った観察力を…………発揮するまでもないけど、とにかく辻垣内さんから宮永さんを助け出そう)

純代(まずは荒川さんの〔スピードヒーリング〕で回復して……)キュアァァ

照「さ、さと……リーフゥ……なんか……せつないみゅうぅ……///」

智葉「お、お互い様だ……どこまで私をドキドキさせるんだお前は……///」

純代「…………よし」ムクリ

純代「…………」テクテク..

智葉「……で、では……そ、そそ、そろそろ……き、キスといこうか///」

照「え……」ピクン

智葉「……どうした?膝枕ときたらキスは普通だろう?」

照「みゅぅぅ……」

智葉「さぁ、こい」

照「……さ……」

智葉「そうだ。さとリーフにキスしてくれ」

照「……さ……き……」

智葉「………………なんだと?」

照「咲……」

智葉「…………てるみゅう……!」

智葉(バカな……〔生徒総性奴隷制度制定(せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕に逆らえるはずが…)

純代「………………」

純代「っ!」キリッ

智葉「ん?」

ピキィイィイィン...


~~~~~~~~~~~~~~~

照「智葉」

智葉「……おい、さとリーフと呼べと言っただろう?」

照「智葉は……なんでも言うことを聞くような、人形みたいな私としたいの?」

智葉「っ……」

照「…………」

智葉「それは……」

照「ねえ、ただの言いなりの私よりも…」

智葉「?」

照「今の私を…………そう、智葉がずっと目で追ってきた私を……」スッ(智葉の手を握り、自分の頭へ持っていく)

智葉「み、宮永?」

照「力づくで」ギュッ!(智葉の指ごと強く自分の毛を掴む)

智葉「ぁ……」ゾワ

照「こうやって掴んで、引っ張って」グイッ

智葉「っ……」ゴクリ

照「地面に這いつくばらせたくない?」

智葉「う……」ゾワワ

智葉(その目は………クールで、感情を表に出さない、対局時の目……)

智葉(私は今、そんな目をしてる宮永の髪を掴んでいる……)ドクンドクン..

照「……どうする?」

智葉「っ……お前は……それでいいのか?」

照「絶対に嫌」

智葉「!」

照「だから……思いきり抵抗する」

智葉「そ、れじゃあ……」

智葉(そんな宮永を……無理やり……組み伏せて……)ゴクリ

照「…………」

智葉(そのすました表情を……悔しさと恥ずかしさで塗りつぶして……)

照「…………」

智葉(お前の存在を……全て私のものに……)

~~~~~~~~~~~~~~~


智葉「…………はっ!?」

智葉「…………い、今のは……」

純代「…………」

純代(戦闘開始からやけに宮永さんに固執していた辻垣内さん。宮永さんに対する態度は私たちのそれと違ってた)

純代(鷺森さんと私が倒れたあと、人が変わったように照れたり取り乱したりした)

純代(その理由は簡単……)

純代(辻垣内さんは、宮永さんのことが好きだから)

智葉「っ!?お前……まだ余力を残していたのか」

純代「…………」ピキィ..ン..

智葉「!」


~~~~~~~~~~~~~~~

智葉「っ!」グイッ(照を強引に押し倒す)

照「きゃっ」ドサッ

智葉「はは……華奢だな。麻雀は強くても荒事には弱いか」

照「っ……」ギリ

智葉「悔しいか?」

照「離して」

智葉「離すものか。ずっとこうするのが夢だったんだ」

照「……最低」ギロリ

智葉「ほう……いい目だ。屈服させがいがある」

照「屈服なんて絶対しない」

智葉「…………」ググッ!(照の鼻を上へ押し上げる)

照「っ!」

智葉「ふっ……鼻の穴が丸見えだ。こんな宮永を見るのは初めてだ。整った顔だけに無様だぞ……くくく」

照「くっ……//」

~~~~~~~~~~~~~~~


智葉「っ!?また……!」

純代「…………」

智葉「お前か……お前がやったのか」ギロリ

鋭い視線で睨み付ける智葉だが、その頬はうっすらと赤らんでいた。

純代が作り上げ、押し付ける妄想は、その場の空気や匂いなど細部まで設定されているため、妄想内容はともかくとして舞台として凄まじいリアリティを誇る。

さらに〔リリース(Lilys×Release)〕を会得したことにより純代自身の能力が上がったため、感情や思考をも再現できるようになっていた。

つまり純代が妄想した智葉の気持ち、感情が現実の智葉に押し付けられるのだ。

智葉の中に純代が妄想したような想いが含まれていれば、あっさりと妄想側へ引っ張られるだろう。

智葉「く……っ、なんだこれは……胸が……苦しい……」

純代(……何かを掴んだ気がする。これは……)

〔深堀さん劇場〕。

後にそう名付けられる能力だ。

会話を放棄し、妄想し続けた日々によって培われた観察眼と、類まれな妄想力によって作り出され、押し付けられる妄想。

今まで純代が当たり前のように使ってきたもの。

しかし〔リリース(Lilys×Release)〕を会得し、自分の気持ちに気付いた今、その威力は依然とはくらべものにならないほど増した。

性的な内容を多分に含む〔深堀さん劇場〕。純代が奏でる物語。

この力はとても強力だ。受けた相手は人生観を丸ごと変えられてしまうかもしれない……。

純代「…………」

智葉「なんだその目は……被虐心はどこにいった」ギリッ

純代「……向かってくる相手を支配するのが好きなんじゃないんですか?」

智葉「……………貴様……」

純代(宮永さんとの時間を邪魔されたのがよほど腹立たしいみたいだ。すごい迫力……もしも荒川さんの〔スピードヒーリング〕で被虐心がリセットされてなかったら縮こまって攻撃できなくなってたかもしれない)

智葉「いい度胸だ。私が〔生徒総性奴隷制度(せいとそうせいどれいせいどせいてい)〕に頼るだけの人間でないことを見せてやる」

純代(普通の妄想でくるつもりか……でもその前にこっちから!)ピキィィン..


~~~~~~~~~~~~~~~

智葉「ふふ……これで両手は使えないな」(押し倒した照の両手をスカーフで縛って頭の上へ置き、左手で抑えつける)

照「っ……」ジタバタ

智葉「無駄だ。力では私には勝てない。では、唇をいただくとしよう」

照「!?」

智葉「…………ん……」

照「んむぅうっ!?」

智葉「……ちゅ……は……ぁ……ん…………」

照「………っ!!」ガリッ!(智葉の唇を噛む)

智葉「ぐっ!?」

照「はぁ……はぁ……はぁ……」

智葉「…………やってくれたな」

照「…………」プイ

智葉「キスだけで解放してやろうと思っていたのに」

照「……だったらもういいはず。離して」

智葉「いや、今ので気が変わった。唇以外の場所も味わうとしよう」

照「え」

智葉「首、耳……キスしたい場所はたくさんある」

照「ゃ、やだ……」

智葉「お前の体を……全て味わい尽くしてやるよ。宮永……」ニヤリ

~~~~~~~~~~~~~~~


智葉(………キスの時に噛まなければ助かっていたと思わせることで、逆らったら悪い方へ転がるかもしれないという気持ちを植え付ける作戦か。わかるぞ……本当は最初からキスだけですますつもりなどなかったくせに……)

智葉(このあとは……少しずつ焦らすように宮永を責め、心を折りにかかるだろう。そして……)

無意識のうちに純代の妄想の続きを考え始める智葉。

妄想内容に精神が引っ張られている証拠だ。

そしてその内容は純代へと伝わっていた。

純代(よし……いい具合だ)

〔深堀さん劇場〕は純代の妄想を押し付ける以外に、能力を受けた対象が妄想の続きやスピンオフのストーリーなどについて思考した場合、その内容が純代に伝わるという性質を持つ。

結果、相手が望む展開を作り上げることができ、純代と対象が力を合わせて、快楽に溺れる結末へとたどり着くこととなる。

純代(次は……全身を愛でるシーンを……)ピキィィン..

智葉(まだだ……宮永はそう簡単に屈しない……だが、宮永はお尻の穴が弱点だった……)ハァハァ

純代(……辻垣内さんの手が背中からお尻のラインを撫でた時、宮永さんは慌てる。ここで初めてポーカーフェイスが大きく崩れた)ピキィィン..

智葉(そんな顔をされたら私の手は止まらない。もっと違う表情を見せてくれ)ハァハァハァ..

純代(無理矢理されていながらも、実際に指を触れようとしたら『汚いから……だ、だめ……』と恥じらう)ピキィィン..

智葉(それだ。そんなお前が見たかった。誰にも見せない宮永を私だけに晒せ)ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!

純代(このまま最後まで行為が行われると気付いた宮永さん。情欲にまみれた辻垣内さんの顔を一瞥し、もはや何を言っても無駄だと諦めた。その時、一筋の涙が頬を伝う)

智葉(涙を舌ですくい取る。この涙も私のものだ。宮永照が持つもの、発するもの、彼女がもたらすもの全てを私は手に入れる……)ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!

積み上がる。

純代の妄想に智葉の妄想が乗っかり、その上に純代が妄想をかぶせる。

そこに智葉の妄想が加わり、純代の妄想を受け止める。

純代(宮永さんは小さな声で『……もう何をしてもいい。でもお願い。目隠しして……』と言う。それは現実から目を背けたいという気持ちの表れ。目を閉じていられなくなった時、光なんて見たくないから。望まない行為、届かない願い。今の自分は暗闇の中にいるのだから…)ピキィィン..

智葉(その願いもまた届かない。私はお前の全てが欲しい。歪んでいるのは百も承知。憎むなら憎め。お前の憎悪も愛おしい)ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!

さらに積まれる妄想。それに伴い智葉の息は上がり、心臓は激しく脈打つ。

五感を刺激するリアルすぎる妄想は、智葉の現実を侵食していく。

もはや目の前にいる照の姿すら見えていない。

純代(そしてついに……来たるべき時は訪れ…)ピキィィン..

智葉(私は……宮永を………………っ!)ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!

ドクン....ッ!

智葉「――――――」

純代「………………」

止まった。

智葉「ぁ…………ぁ……」

高く、高く積み上がった、2人が力を合わせて構想を練って作った高層の妄想が崩れていく。

まるで泡沫の夢だったかのように、跡形もなく消えていく。

それはまるで、呆然と立ち尽くす智葉の精神とリンクしているかのようだ。

智葉「………………」

昂りは消え、急に現実へ引き戻され、現在地のわからない迷子のようにただ立っている。


照「…………ぁ」ハッ..

智葉「みや……なが…………やっと……おまえを…………手に……」フラ

照「!危ない」ガシッ!

智葉「あ……う……」

照「…………大丈夫?」

智葉「…………いい…………匂いだ…………みやな……が…………」ガクリ

純代「…………ふーっ……」

純代(辛い戦いだった……でも、なんとか勝てた)

純代(…………コーチの言葉のおかげです。ありがとうございます……コーチ)

照「………何がなんだかわからないんだけど……」

純代「…………気付きましたか」

照「うん……辻垣内さんは深堀さんが倒したの?」

純代「あぁ、はい。なんとか勝利しまして」

照「すごい……さすが深堀さん」

純代「いえ……ほとんど宮永さんのおかげですから」

純代(私1人ではどうあがいても勝ち目はなかった)

照「??そう言われても、何があったのか全然思い出せないけど……」

純代「それでいいと思います」

純代(さっきの性奴隷モードの時は完全に思考も支配されてたからかな?)

照「ただ…………何故かわからないけど、えげつない悪夢を見た気がする」

純代「…………でしょうね」

照「???」

智葉「…………」スー..スー..

照の腕に抱かれて眠る智葉。

その顔はとても安らかで、とても幸せそうだ。

それも当然。

好きな人をわずかな時間といえど性奴隷――性的なやりとりをせずに終わったが――にし、そして智葉が以前から思い描いていたやりとりを実現できたのだ。

こんなに嬉しいことはない。

22ヶ110学園理事長、辻垣内智葉。

純代の〔深堀さん劇場〕にて、妄想共同作業の末に敗北―――


【北校舎 廊下】

<全裸系巫女天使☆ダルダルモノクルビート板~素晴らしき白い壁紙~ Side>

煌「ふむ……すばらな面子ですばらな廊下を渡る……まさしくすばらです!」テクテク

エイスリン「スバラ!」

小蒔「そうですね。皆さんと一緒で心強いです!」ニコニコ

霞「うふふ、そうね」

全裸初美「この床のヒンヤリ感……裸足で歩くと気持ちいいですよー」ペタペタ

塞「あぁ……はつみたんのお尻かわいいわよね……そう思わない?」ハァァ

ゆみ「……見ているこっちが恥ずかしいのだが……よくあのような恰好で……///」

塞「ダメよ。そんなことじゃ。自分を解放して精一杯楽しまなきゃ損よ?」

白望「……ロックフェスじゃないんだから」ダラー

智紀「あ…………着いた」

霞「あら。では入りましょうか」

そう言うと、霞は健夜に指定された北校舎のメンバーである、

小蒔、初美、ゆみ、エイスリンちゃん!煌、塞、智紀、白望の顔をそれぞれ見てから、ドアの取っ手へと手をかけた。

そして胸が当たらないよう気を付けてドアを開ける。

ガラガラガラ...

霞「………………」

煌「おお……すばらな体育館」

その通り。煌が0.5秒前に口にした通り、北校舎メンバーの戦闘の場として用意されたのは体育館だ。

奥行きがサーッとなっており、横もダーッとしている。

天井もグワーッてな具合で、面積でいうとドドーンな感じの、儚可憐女学院らしい造りとなっていた。

そんな体育館のど真ん中に、人影がある。

はやり「はやー。遅いぞ?き・み・た・ち☆」キラン

458プロ幹部、牌のお姉さんこと瑞原はやり。

良子「ブックタワーです。とてもつカリーハンドストライプストマックデビルアンダー(訳:本当です。とても疲れてしまいました)」

同じく幹部、英語が得意な戒能良子。

戦闘モードになったからか、英語の割合が増えている。

明華「♪ア~ア~ア~ア~ア~~~……リハは終わりました。いつでも歌えます」

臨海女子所属の歌う留学生。風神、雀明華。

ダヴァン「♪ズ~ル~ズ~ル~ズ~……OH!これ以上遅かっタラ麺が伸びるところでシタ!」

そしてラーメン通、メガン・ダヴァン。明華のリズムに合わせて麺をすする。

エイスリン「ヨニン!オオイ!」

煌「ええ……これはかなり大変ですね…………すばらですが」

白望(あー……そりゃそうなるよね)ハァ

智紀(東校舎は1チーム3人か4人なのに、こっちは人数が多すぎるとは思ったけど……)

ゆみ(向こうが指定してきている以上、多少の不利は覚悟しなければならない、か)

はやり「さぁ~て☆それじゃあ時間もないことだし…………」

霞「!小蒔ちゃん、来るわよ。気を付けて」

小蒔「はい……」グッ


良子「ピクチャーピクチャー。早速でビネガーが……(ええ。早速ですが)」

ダヴァン「OH!始まりマス!?早く飲み干さネバ!お願いしマス!」

明華「♪飲んで~飲んで飲んで~飲んで~飲んで飲んで~飲んで~飲んで飲んで~~飲んで!」

ダヴァン「サンクス!ゴクゴクゴクゴク!!!」

ゆみ《……みんな!さっき決めた通りにバラけるんだ!》

煌《了解です!》ササ

白望《ん……相性の悪い相手と戦うことは避けるべきだしね……》タタタ

良子「!ムーブしましたね」

はやり「はやー☆バラけちゃったね☆」

明華「……どうしましょう?全員で動きますか?」

はやり「……ううん。それだと時間かかっちゃうからー、手分けして戦ってね♪」

ダヴァン「了解デース!」タタッ!

霞(いい具合に分散してくれたわね。4人ともまとまったまま動かれたら困っていたところだわ)ホッ

良子「まずはホールたを止アイます(まずはあなたを止めます)!」タタッ

塞「わぁ!?」

ゆみ「させるか!」サッ!

良子「っ!」

ゆみ(臼沢さんは18禁でこそ輝く。戒能プロの〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕で封じられるわけにはいかない!)

〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕。それは良子が規定する表現規制能力。

この能力の範囲内では18禁妄想をすることはできなくなる。

つまり〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕は使用できないのだ。

何故なら、塞が他人を幼女にするその先にはモザイクが待っているから。

ゆみ(戒能プロを抑えられれば、臼沢さん以外も戦いやすくなる)

ダヴァン「甘いデス!」

ゆみ「何っ!?」

ダヴァン《〔 決 闘 選 定 者 ( デ ュ エ ル マ ッ チ メ ー カ ー )〕》ビシィッ!

良子「プラスかりました。アントがアイランド(たすかりました。ありがとう)」

ゆみ(まずい!メガンさんの能力は『VS』を作り出す能力!私を通り越して戒能プロと臼沢さんを結び付けられたか!)

良子《〔 完 璧 な る C E R O の 世 界 ( パ ー フ ェ ク ト セ ロ )〕》

塞「う……っ!!」

エイスリン「サエ!」

塞(この感じ…………能力を封じられた!私の中の幼女がみんな服を着ちゃった……そして純真無垢でエッチに興味ない性格に……)ギリッ!

白望「……大丈夫?」

塞「結構辛いかも……でも、はつみたんの裸を見られれば勇気が……」チラ

初美「うぅう……」

塞「は、はつみたん!?どうして服を着てるの!?」

初美「服を着てないと落ち着かない気持ちですよー……多分……というか絶対あの人のせいですよー」

良子「……服ウェイクアップスニークリー、ヒューマンですオーイエー(服を着てこそ、人間です)」

白望「…………会話するのが面倒な人だね」


塞「うぅう……極悪非道………」ワナワナ

初美「同意見ですよー……脱ぎたい……」ウルウル

良子「ダアイです。健全でライブデビルショウ(ダメです。健全でいきましょう)」クス

はやり「良子ちゃんさすがだねー☆」

明華「……私も負けていられません」

霞「……はあっ!」ポヨォォォ...

霞は〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕を周囲に展開し、胸の感触で防壁を作る。

霞(これに触れれば多少は足止めできる。その間に移動か攻撃かを選択できる時間を稼ぐ)

明華「………………」スゥー..

霞(特に瑞原プロは小蒔ちゃんと相性が悪いわ。なんとしてでも彼女と小蒔ちゃんを遠ざけないと…)

明華「♪全部だきしめて きみの近くにいよう」

霞「えっ?」

明華が歌ったのはKinki kidsの『全部だきしめて』。

Kinki Kidsを近畿で育った純朴な女の子2人の百合ユニットとし、

片方1人をボクっ娘にして歌詞を百合ソングへと変換。甘く歌い上げる。

そして……

明華「…………」ニヤリ

霞「そんな……っ!」

霞が全方位へ展開していた胸の感触を、百合ユニット『Kinki kids』が歌詞の通りに『全部だきしめて』、

霞の『近くに』現れた。

霞「っ!」ポヨォォォ..

それを受け、霞は自滅を防ぐために最初の胸の感触を消して再度〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕を発動する。

しかし、

明華「♪全部だきしめて きみと歩いて行こう」

再びKinki kidsが全部だきしめて無効化する。

霞(こんなにあっさりと破られるなんて……それなら……)ボヨォオン!

明華「……!」

霞《〔 母 な る 大 乳 ( は は な る だ い ち )〕》ボッィィィッィッィイ....ンヌ!

明華(その能力は確か……胸を押し当てた相手を赤ちゃんにするというもの……万が一にでも受けるわけにはいきませんね)スゥ..

霞「はあっ!」タタブルルッ!

明華「♪ちかよらないでおくれ もう痛いのはごめんだ」

霞「!」ピタッ!

霞(体が……動かない……)ブルルルルルル..

明華の歌の通り、近寄ることができない霞。

勢いを急に止められた反動からか、胸だけがとんでもなく揺れている。

明華「…………」テクテクテク(ゆっくり後ずさりして距離をとる)

霞「っ!」ガクンポヨ!

霞(あ……体が動いたわ)


明華「♪桜咲き~ 桜散り~ 明日もいい日と歌うよ~」

霞(!!これはゆるゆりのオープニング!うぅ……この曲を聴いているとゆるゆりはもちろん、他の日常系アニメの妄想を喚起させられて……)

明華(残念でしたね石戸さん。〔母なる大乳(ははなるだいち)〕は厄介な能力ですが、胸を押し当てられなければなんのダメージもありません)

霞(うぅ……ほのぼのイチャイチャしてる子たちの関係が永遠に続いてほしい気持ちが止まらない……)ハァ..ハァ..プルル..

明華「……続きまして、2期……♪ちょっち待っち…」

小蒔《〔 天 叢 雲 剣 ( あ め の む ら く も の つ る ぎ )〕!!》ザァアアァ..

明華「!!」

霞「あ……小蒔ちゃん……」

小蒔「大丈夫ですか?霞ちゃん」

霞「ええ……小蒔ちゃんが助けてくれたから。ありがとう」

小蒔「はいっ!」ニコリ

明華(……見た目に反して意外と俊敏なのですね。まともに受けてしまいました。ダメージはないものの、防御力を刈り取られた……これは厄介)フゥ

小蒔「明華さん……いきます!」

小蒔《〔 八 咫 鏡 ( や た の か が み )〕》

明華(〔八咫鏡(やたのかがみ)〕……男女反転ですか)

小蒔《『シャモア(♀)はソファに座る優(♀)』の隣に座ります。そして膝の上に手を置いて……》

明華(〔天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)〕で相手の防御を崩し、〔八咫鏡(やたのかがみ)〕で攻撃を封じ、一方的に攻める……確かに脅威ですね。ただ……)チラ

ダヴァン「イエス!」コクリ

ダヴァン「デュエル!」ビシッ!(霞を指さす)

霞「えっ…………うぐっ!?」

小蒔「霞ちゃん!?」

霞「あ、ぐ………シャモアが……あぁあぁ……」

小蒔「!これってもしかして……」

明華「ええ」クスッ

小蒔「霞ちゃんも今シャモアが気に入ってるのですか?奇遇ですね!」

霞「ち、がうわ……はぁ、はぁ……」

小蒔「?では優の方ですか?」

霞「どち、らでも……ないわ……」

小蒔「???…………あ!」

霞「気付いて……くれた?」

小蒔「はい!2人揃っているのが好きなのですね!」

霞「…………そうじゃなくて……」

小蒔「???」

霞「小蒔ちゃんの妄想が……私に……流れてるの」

小蒔「えっ……そんな……私は確かに…」

霞「……彼女の……ダヴァンさんの仕業よ」ギリッ..

ダヴァン「イエス!私の仕業デス!」

霞(小蒔ちゃんの明華ちゃんへの攻撃(VS)を私と繋げた、ということでしょうね……明華ちゃんの歌の指向性を定めるだけじゃなく、同士討ちも誘える能力……思った以上に厄介だわ)


小蒔「……では私はどうすれば……私が明華さんに攻撃すると霞ちゃんが苦しむなんて……ひどい手順です」オロオロ

霞(本当にそうね。相手を攻撃したら味方を傷付けてしまうと思わせることでけん制にもなる……でもなんのリスクもなく使える能力とは思えないわ。それに……)タタッ!

ダヴァン「OH!?」

霞(プライベート回線による脳内アクセスではなく、物理的に触れることで効果を発揮する能力なら、同士討ちは狙えないんじゃないかしら?)タタタッブルルッ!

ダヴァン「っ……!」

霞(体が強張った……私の読みは正しかったわけね。ダヴァンさんの能力は回線による攻撃にのみ作用する)

霞(だったら〔母なる大乳(ははなるだいち)〕で直接胸を当てて赤ちゃんにしてあげるわ!)タッ..タッ..

霞はダヴァンの元へと大きいストライドで跳ねるように走る。

その振動で、胸が変幻自在に形を変える。

揺り揺らららら揺る揺り大事件。

奇妙といえるレベルで蠢く人外魔胸にダヴァンは目を奪われ、動きが止まる。

ラーメンの食べ過ぎによる満腹も体の鈍さに影響していた。

明華「!危ない……!」スゥ..

霞(この子を倒せば、戦闘はグッと楽になる)タタタボヨヨン!

明華「♪あるこう あるこう わたしはげんき」

霞「!」ブルピタッブルッ!テクテク..

霞(くっ……あと少しで胸をダヴァンさんの顔に押し当てられそうだったのに………ゆっくり歩くことしかできなくなった……)テクテク..

ダヴァン「あ、危ないトコロでシタ」サササ..

霞(逃げられた……この2人、やはり厄介だわ……)

小蒔「うぅ……どうしたらいいでしょうか……私の攻撃が霞ちゃんに向かってしまうとなると安心できません……ここは大人しくシュンとしてます」シュン..

明華「…………」スゥ..

明華「♪ウーイエ!」

ダヴァン「!デュエル!」ビシッ!(霞を指さす)

霞「?」

小蒔「えっ?」

明華「♪GANGAN進め 風切って GANGAN行くぜ 最後まで」

小蒔「あ、ああ……体が熱く……や、やります!頑張ります!がんがんいきます!」

ダヴァン「デュエル!」ビシッ!

霞「!これはまずいわ」

霞(このままだと小蒔ちゃんの攻撃は…)

明華「どうぞ。かかってきてください」

小蒔《はい!〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ )〕》カッ!!

霞「っ……う、ぐ……ああ、ああああああ……」ガクガクガク!

小蒔「ああっ!?霞ちゃん!?ごめんなさい!攻撃をやめます!」ハワワ!

明華「させません……」スゥー..


明華「♪何度も何度も キミを想って 何度も何度も未来を描いた」

小蒔「あ…………」

霞「!?待っ…」

小蒔《…………『大胸筋が大発達してる霞君は春君や初男君、巴君との四角関係の果てに、真実の愛を掴みました……』、『霞君はお尻の穴の開発者。未来の子供たちの体に優しい製品を生み出そうと頑張っています』》

霞「ああああああ……!」プルッペク!

歌の作用により、小蒔は霞を想って何度も未来の霞妄想を繰り返す。

男女反転の範囲内であることを本能的に察しているため、本来女性である霞を男で妄想し、それが反転して女性に戻って明華に向かうが、ダヴァンの能力によってVSは霞と結ばれているため、攻撃は霞へと向かう。

これはややこしい。例えるならば、

『NOT 元・被ややこしくなくなくもあることなくなくないかもしれなくなくない?』のようなこんがらがり方じゃなくないかもしれないようなものじゃない。

小蒔「ああっ!?また!」

霞「うぅう……」

霞(これは……明華ちゃんから倒さないとダメかしら……?でもその間にダヴァンさんに同士討ちを狙われてしまうかもしれない)

明華「…………」

霞(……一体どうすればいいの?打つ手が思い付か…)ハッ!

小蒔《霞ちゃん?どうしましたか?》

霞《いえ、なんでもないわ。ふふ》

小蒔「?」

霞《いいアイデアを思い付いたの》

小蒔《!すごい……さすが霞ちゃん》パチパチ

明華「………………」ジィー

小蒔「」パチパチ

霞「」ニコリ

明華(何やら楽しそうな雰囲気……戦闘中でなければ混ざりたいところです)

ダヴァン《なにかを企んでるようでスネ》

明華《はい》

明華(だとしてもメグちゃんと私のコンビに勝つのは無理というものです)

霞「…………………」

明華「………………」

小蒔「………………」

ダヴァン「…………」

明華(……こちらが動くのを待っているみたいです……ならば、その誘いに乗ってみましょうか)

明華「…………」スゥ..

霞《!今よ小蒔ちゃん!明華ちゃんを狙って!》

小蒔《はい!いきます!》タタッ!

明華(!出鼻を挫かれました)チラ

ダヴァン「わかってます!デュエル!」ビシッ!

〔決闘選定者(デュエルマッチメーカー)〕を発動。

ダヴァンの手によって小蒔と霞の間にVSが生まれる。このまま小蒔が攻撃を繰り出せばそれは霞へと向かってしまう。

それを察知した小蒔は攻撃の手を止める。


明華(ひとまずこれでよし。今度はこちらの番です)スゥ..

霞《残念ね。同士討ち狙いでしょうけど、今回はさっきまでとは少し違うわ!》

明華「?」

霞「」タタタボンヨヨ!!

ダヴァン「!?私狙いでスカ!」

明華(メグちゃんを先に潰すつもりですか。賢明かもしれませんが、そうはさせません)

明華「♪アル晴レタ日ノ事 魔法以上のユカイが」

霞「!!」タタタ..ピクン!プルル...

明華(ハレ晴レユカイでしばらく踊ってもらいます!〔決闘選定者(デュエルマッチメーカー)〕を神代さんと石戸さんに使っている以上、メグちゃんも巻き込みますが、危険を防ぐためには我慢してもらいます)

霞「…………っ!」タタタッ!

明華「な……!」

明華(どうして踊らないのですか!?くっ……では別の曲を!)

明華「♪持っていけ最後に笑っちゃうのは私のはず~」

霞「」ボンヨヨタッタタ!

明華(止まらない!?そんな……!?)

ダヴァン「OH!?何故止まらないのでスカ!?」

明華(!メグちゃんも踊ってない……一体どうし……)ハッ

明華「まさか……」

??「真打は後から登場するものです!」

明華(スバラなクワガタ女子高生……花田煌!!)

煌「すばらです!」

明華(忘れていました。彼女の能力は……)

悔しげな顔をする明華の瞳に映るのは、いつの間にか近付いてきていた、ノリノリでダンスをする煌。

何故踊っているのか。それは簡単。

煌は〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕で明華の歌を霞たちの代わりに受けたのだ。

故にキレッキレのダンスを披露している。

明華「あ……」ハッ

明華(悔しがってる場合じゃなかったです!)

明華「メグちゃ…」クルッ!

UダヴァンU「…………」ボヨーン

霞「うふふ」

明華「………………」

振り返る。ダヴァンは谷間に住んでいた。

顔を両胸で挟まれダヴァン。恍惚ダヴァンの出来ダヴァり。

明華「メグ……ちゃん……」

ダヴァン「ば……ばぶー……デス」

霞「いいこいいこ」ナデナデ

ダヴァン「OHバブ……」


霞「……小蒔ちゃん」

小蒔《はい。〔 天 叢 雲 剣 ( あ め の む ら く も の つ る ぎ )〕》ザァァアアァア..

ダヴァン「バブ……ダアダダ」

母乳および麺を求めるように口をすぼめて甘えるダヴァン。防御力がさらに失われる。

小蒔《〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ )〕》カッ!!

そして超特大の威力を誇る小蒔の一撃が炸裂した。

ダヴァン「ガハアッ!?」

明華「ああっ!」

ダヴァン「……わた……シハ……」フラ..

薄れゆく意識の中、視界に入ったのは霞の両胸。

ダヴァン(ああ……味付け玉子が食べたいデス……)ガクン!

最後までラーメンにこだわったダヴァン。ここに散る。

明華「………………」

小蒔「ふぅ……なんとかなりました」ホッ

明華(私が花田さんの接近に気付いていれば……メグちゃんごめんなさい)

霞「…………」

霞(これで明華ちゃんとは戦いやすくなるはず)

明華「…………」スゥ

霞「!」

煌「切り替えが早い……すばらです!」

明華(メグちゃんがいないのはかなり痛いですが……それでも私は負けません!)キリッ

霞(……これは……気を引き締めた方がよさそうね。やっぱり甘い相手じゃないみたい)

明華「♪ピカチュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョン…」

煌「おお……昔のポケモンの歌ですね。すばらです」

霞(?この曲……歌詞的にも特に戦闘向きの内容は含まれてなかったはずだけれど……)

明華「♪コダック/コラッタ/ズバット/ギャロップ」

明華「♪サンダース…………………………………………」

霞「!」

煌「…………っ!」

霞(ど、どうして……どうしてメノクラゲを言わないの!?)

小蒔「仲間外れは可哀想です…」

煌「そこで止めるのはすばらくない!」

明華「…………」クスッ

テンポのいい歌を途切れさせる行為。

それはとてつもないもどかしさを生む。


明華「♪うー!にゃー!うー!にゃー!」

煌「次こそは……お願いします」

小蒔「信じてますね」

明華「♪うー!にゃー!てっててれれん………………」

霞「っ!!」

小蒔「うううう!!レッツニャーをください!!」

煌「すばらくなあああい!!!」

かゆいところに手が届かなくて、伝わりそうで伝わらない。

両想いの2人のはずなのに、付き合いそうで付き合わない。

そんな悲しい感情が煌の精神をかき乱す。

〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕によって煌が霞と小蒔の分を受け止めているため2人にダメージはないが、

それでも聴いてしまった以上、もどかしさは残る。

煌(すばらくなさすぎることはすばらです…………でも……こんな悲しいすばらがあったとは………………それもすばらです)


小蒔たちから少し離れた位置では、良子が猛攻を繰り広げていた。

良子《あの子からもらった飴。お店で売っているのと何も変わらないけれど、どこか勿体ない気がして、今もポケットの中に……》

塞「っ……」

良子《背の低い私の代わりに黒板を消してくれたあなた。クラスメイトに向けるごく普通の親切心だろうから、そんなことがあったことも忘れてるよね?でも私にとって、その思い出は決して消えることはなかった》

白望「ぐ……っ……」

智紀《……けれど、真実は残酷だ。その子が黒板を消してくれたのには別の目的があった。その目的とは、背が低くて高い位置の文字を消すことに難儀している子を助ける優しい子だと周りに見せつけること》

智紀《手伝ってくれたと喜んでいるキミの後ろには、その子が片想いしている女の子がいた。そう、キミは利用されただけだった……》

良子「ブラッドリトルツ!ランスますね(ちっ!やりますね)……」

智紀(……なんとか18禁は避けて攻撃してるけど……この人の能力は『戒能良子が思う18禁相当の妄想を封じる』だから線引きが曖昧……意外なところで引っかかってこっちの攻撃が途切れる)

良子《顔も知らないあなたからの手紙……キレイな字と知的な文面から想いを馳せる……いつか会えたらいいな……》

智紀《しかしその人の正体はクラスメイトのギャルだった!ユーキャンでペン字を習っただけの能力!文通だけで女の子を落とせるかをクラスメイトと賭けていた……》

良子《……そんな風に面白半分で手紙のやりとりをしていたギャルだが、次第に返信を楽しみにしている自分に気付く。メールなら数秒ですむやりとりを数日かけて行う……それはとても新鮮だった。そして文面に溢れている純粋な好意に心弾む自分がいると気付いた。そして教室で1人本を読んでいる彼女の背に声をかけ……》

智紀「がはっ……!」

智紀(絶望を物ともしないどころか、あっさりと返してくる……これは……かなりの強敵……)

良子「ビーフワン発(もう一発)……」

智紀「!」

良子《冷めきった家庭で過ごしてきたせいか愛情に疎い彼女は、クールだった。自分でも可愛げない女だと自覚しているくらいに。そんな彼女に対し、周りは近寄りがたさを感じており、顔立ちが整っているせいも相まってどこか遠巻きに見ていることが多かった》

ゆみ《〔 原 作 編 集 ( シ ナ リ オ コ ン ト ロ ー ル )〕!!》タタッ!

良子「!」

ゆみ(沢村さんにばかり負担をかけさせるわけにはいかない!ここは私が編集する!)


ゆみ《彼女は恋人がいた。それは人懐こい後輩。家庭も幸せ》

良子「オー……ストーリー性をダストデッドますか(おお……ストーリー性をくずしますか)」

ゆみ(これで主人公の女の子のキャラがブレる。続きを練るのは難しくなるはずだ。だが……)ズキ

ゆみ(自分より格上の相手の妄想を編集するのはかなり消耗する……何度も使えそうにない)

良子「ま、シックルナウライン。再度スリープります(ま、かまいません。再度練ります)」

ゆみ「!」

白望「その前にこっち……『幼馴染との帰り道…』」

良子「む……」

ゆみ(助かった……狙い撃ちされたらひとたまりのないからな)

ゆみ(神代さん、石戸さん、花田さんが向こうで雀明華と戦っている今、こちらの戦力は、小瀬川さん、沢村さんと私だけ……1人でもやられたらバランスが崩れて一気に押されるだろう)

ゆみ(幼女を封じられた臼沢さんと、服を着てなくてはならない薄墨さん、そしてイラストボードのないエイスリンさんは戦闘不能に近い。実力者だけにこれは痛すぎる)

エイスリン「ミンナガンバッテ!」

初美「うぅ……生地が肌にくっついてゴワゴワしますー」

ゆみ(雀明華を倒したあとに合流してもらうつもりで花田さんにフォローに行ってもらったが……早計だったか?こちらが先に負ける可能性もある……)

良子《恋人がいない者同士、手編みのマフラー取り替えっこすることに…》

白望(っ……この人……私と一番相性悪い、かも。オリジナルのカプ妄想だし、オムニバス的に色んなシチュになる……カプを閉じ込められない……)ググ..

塞「シロ……わ、私だって!」

ゆみ「!臼沢さん……」

塞(エッチにならなければいいなら…………直接的じゃなく、間接的に…………そう、公園の水飲み場でつまみをひねりすぎた結果、水が服にかかってびしょ濡れの幼女を……)

塞《…………っ!…………っ!》

塞(そんな……これも戒能プロの18禁に引っかかるの!?少し透けるだけなのに!漏らしたみたいに見えなくもないだけなのに!!)ギリッ..

ゆみ(………やはりダメか。臼沢さんにとって相性が悪すぎる……このままではいずれ誰かが脱落してしまう……)

ゆみ(……………………しかし)チラ

はやり「~~~♪」フンフフーン

ゆみ(救いは瑞原プロが戦闘に参加してこないことだ。彼女が加わればあっという間に我々は負けるはず……一体何故だ?)

ゆみ(強者の余裕?いや、確かに実力差はあるが、もしも私たちが戒能プロと雀明華、メガン・ダヴァンを倒せば、いくら彼女とはいえ楽勝とはいかないだろう)

ゆみ(では、どういう理由で戦闘に参加しないんだ?他に考えられるとすれば…………あ)ハッ

ゆみ(雀明華は歌を武器にする。ただ、欠点として歌はピンポイントで敵を狙えない。だからメガン・ダヴァンとコンビを組んでいる……そして、瑞原プロも歌を武器にする百合妄想士……)

ゆみ(つまり、今の状態で戦闘に参加すれば味方をも巻き添えにしてしまうから、戦わずにいるのではないか!?458兵との混戦では歌っていたが、元々458兵たちは瑞原プロのファンクラブに加入していたと考えれば、巻き添えにしてもかまわない)

ゆみ(それに比べて幹部連中は別。対等に近い関係ならば、支配するされるという状況は避けたい。となると、私たちが幹部と戦闘中には瑞原プロは加われない……)

ゆみ(この予想が正しいならば、少しは勝ち目が出てくる。瑞原プロに介入されないよう動くことができるからな)

ゆみ(……とはいえ戦闘前の作戦会議では瑞原プロへの対抗策は決まらなかった。出たとこ勝負なのは否めないが……)

良子《いつもいがみ合う陸上部の2人……そんなライバル関係は、1人がケガをしたことで大きく変わっていった》

智紀《そのケガの原因は、ライバルを陥れようと故意で仕掛けられた罠だった!》

良子「………………ふぅ……センターセンターアローりますね(ふぅ……なかなかやりますね)」

智紀「…………」


良子「……では、ソロちらもブックオーラを出させてもらいデビルす(では、こちらも本気を出させてもらいます)」

ゆみ「なに!?」

白望(今までは手加減してた……?)

良子《〔 完 璧 な る C E R O の 世 界 ・ 改 訂 版 ( パ ー フ ェ ク ト セ ロ ・ か い て い ば ん )〕》

白望「!!」

新たに展開される良子のルール。

今まで以上のがんじがらめ感が漂う。

良子「ナウデビルゴー ストマックオーバーフィールドカンピョウマキアクセサリーテール プレゼントゴービネガー(今まで以上の締め付けをプレゼントです)」

白望「??」

塞「???」

ゆみ「???」

〔完璧なるCEROの世界・改訂版(パーフェクトセロ)〕。

妄想制限にさらなる拍車がかかる能力。

18禁どころか15歳以上対象も封じる。

もちろんこれも良子の判断で定められる。

良子「エアー……ミスターナオスケオーラミニッツデス(ふぅ……いい気分です)」

全力を出すことで、独特の言葉遣いに拍車がかかる。

順位付けをすると、

英語交じり<カタコト<リョウコト<英語?交じり?

となり、良子はレベル1から4にアップしたのだ。

そしてそれは、塞の妄想にも変化をもたらした。

塞「!!!」

塞(そ、そんな……さっきまでは服を着てれば幼女でも妄想できたのに……)

なんと、塞の妄想内の幼女が勝手に成長し始めたのである。

塞「や、やめて……!」ガタガタ...

ゆみ「臼沢さん?どうした?」

塞「よ、うじょが……義務教育に……突入…………あぁあ……卒業……そして…………」ガタガタガタ...

白望「塞……真っ青。大丈夫?」

白望(さっきまでとは全然違う。本気で苦しんでる……どうして?)

初美「臼沢さん……」

エイスリン「サエ!カンガエチャダメ!」

白望「!エイスリン……塞が今こういう状態になってる原因を知ってるの?」

エイスリン「…………ウン」コクリ

白望「それは何?」

エイスリン「…………ケノ、トラウマ」

白望「…………けの……トラウマ?」???

エイスリン「ウン……ツラカッタセントウ……ゼツボウノダツイジョ……サエ……カワイソウ……」ウルウル

白望(ああ……なるほど。銭湯、脱衣所、毛のトラウマ………なんとなくわかった)


塞「やめて……お願い…………」

良子「……ディファレンスハンド、ホールライスフィールドハスクティーチャーストップデビリッシュネスモスキート(さて、あなたから仕留めましょうか)」ブラッドアヘ(チラリ)

塞「うぅぅ……やめてぇ……」

白望《させない。子供の頃に婚約する約束…………っ!》

白望(子供の妄想ができない……ここまで制限されるとは……)

智紀《大人になった今も、昔の恨みを忘れていなかった彼女は、恋人の…………っ!?》

智紀(そんな……イヤラシイ意味ではない復讐が妄想できない……どうして……)

良子「……マインドツーダメージテールギブフィールドリーフプールデビルサウザンド。チルドレンツーバッドインフルエンスデス(精神にダメージを与えるのはいけません。子供に悪影響です)」

智紀「あ、はい…………」

智紀(何言ってるか全然わからない……ただ、絶望も封じられたのだとすると厳しい……こうなったら……)

智紀《〔 リ リ ー ス (Lilys×Release×Wreath)〕》ゴアァァ..

白望「!」

良子「ラストオブフィフティミュージック?(ん?)」

智紀「………………」サッ(メガネを外す)

智紀(絶望をより引き立てるために編み出したこの力を使って……)

メガネを外した智紀。

すぐさま妄想を紡ぎ、良子へとぶつける。

良子「!ソロゼロリング(これは)……」

その妄想内容とは、とても幸せな物語だった。

登場人物の誰もが幸せになる、素晴らしい妄想。

脳内で展開する智紀の妄想によって、良子の気分も晴れ晴れだ。

良子「ビネガーフィールドネイキッドデスストマック(素晴らしい)」

しかしその内容は百合的に今一つでパンチが足らず、ダメージは少ない。

『絶望使いだから仕方がないのだろうか』と、良子はいい気分のまま智紀の方を見る。

すると、そこには再びメガネをかけた智紀がいた。

良子「クエスチョンマーク(?)」

智紀「今のは前菜……次が本番!」

智紀《愛しの彼女と家でグラタンを食べることになった。料理が完成し、いざ食べようという時に気付いた。なんとスプーンがなかった!フォークもなかった。レンゲもなかった。お玉もお箸も全然なかった!》

良子「エクスクラメーションマーク(!)」ガハッ!


智紀(よし……効いた……)グッ

幸福な妄想は全てこのため。

幸せを知っているからこそ、その後に味わう絶望は深く、重い。

絶望、その反対は幸福。

メガネっ娘。その反対はメガネなしっ娘。

メガネの着脱によって別人格になったような心理状態を作り出し、幸福に特化して妄想する自分に対する絶望感を抱かずに幸福一辺倒を突き進めるようになる。

この能力によるダメージは通常の絶望以上のものがある。

幸せを味わわせておいてから絶望の底へ突き落すのだから。

これが智紀の新しい能力、〔幸福と絶望のあいだ(ハッピーメガネディスペアー)〕

そう、幸福と絶望の間を繋ぐのはメガネなのだ。

良子「ブラ……ッド……リトル……ツ……(ちっ)!」

智紀(……制限のせいで浅めの絶望だったからか……思ったよりダメージが少ない)

良子《仕方なくグラタンを食べるのは諦めた2人。いずれそのグラタンは冷めるでしょう。しかし、2人の絆は永遠に熱く燃え続ける……》

智紀「ぎ……っ……!」

智紀(なんて威力……妄想内容は普通だけど、練度が並外れてる……)

良子の能力が驚異である理由の1つに、18禁要素を含む妄想を排除することで、相手を自分の土俵に引きずり込むという点が挙げられる。

良子が今までずっとこだわってきたピュアな非18禁妄想は長い年月を経て研ぎ澄まされており、

似たようなシチュエーションがぶつかった場合、相手を圧倒できるだけの力を備えている。

〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕は、そんな自分の得意分野で勝負できる場を作り上げる、攻防一体の能力なのだ。

白望《そのカプのいいところを教えて……》ザァァ..

白望(これが通用すればカプに戸惑って妄想を止められるかもしれないけど……)

良子《今の2人は同居してるパターンも作れるからいいですね。ただ、他にも好きなシチュエーションはいっぱいあります》

白望「………………」

白望(ダメか……迷っているというよりも、全部オリジナルだから次から次へと新しい設定を作られる……思い入れがなくはないだろうけど効果が薄い)

ゆみ《小瀬川さん。今の……効果のほどはどうだ?》

白望「…………」フルフル

ゆみ《…………そうか》

智紀「あぁ……っ……!」フラ..

塞「!沢村さん……」

良子「ネクストトゥース(次は……)」

塞「!!」

良子《秘密の共有。鞄の内側にお揃いのキーホルダー!》

塞「きゃああ……!」

白望「塞……!」ギリ..

塞「ぅあ……ぁ……」ドサ

良子「トゥースファイブウィズスタンドノットデスプライス(歯ごたえないですね)」


白望「っ……」

塞「よう……じょ…………ぃ……ぱん……」ハァ..ハァ..

白望(塞……好きな幼女妄想を封じられたせいで……)

良子「…………」ハンドナインハンドナイン(テクテク)

ゆみ「臼沢さんから狙う気か!させな…」

良子《屋上でサボる先輩に会いに行くのが日課のクラス委員!》ゴオォ!

ゆみ「がはああっ!」

智紀「くっ……このままじゃ……」

ゆみ(まずい……臼沢さんを失っては……瑞原プロと雀明華を相手に戦えるとは思えない)

塞「びに……る……ぷー…………る……浮き……輪…………」ハァハァ..

白望(塞を助けたい。でも……私にできることなんて……)

塞はもはや限界寸前。幼女関連ワードを口にするも、良子の〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕が妄想として形にすることを許さない。

白望(どうすればいいんだろう……特定のカプに強い想いを持っていない以上…………ん?)

白望(………持っていない……なら…………)

白望(今……持たせれば……)

良子「プレートホース。フォースカイキングフィールドフレイムバード(さらば。四天王のひとり)」ツーデイズ(ニヤ)

白望「…………待って」ザッ..

良子「…………クエスチョンマーク(?)」

白望《……屋上でサボる先輩に会いに行くのが日課のクラス委員、だっけ?その子が屋上に行くのはどうして?》テクテク

良子《興味が湧いたから、でしょうね。真面目を絵に描いたような子なだけに授業をサボる意味がわからない。理由を知りたくなり、通うようになる》

白望《そう……確かにそれは言える。でも、まだ他にもあるよね?例えば…………冒険心》テクテク

良子《冒険心……なるほど。確かに》

ゆみ(小瀬川さん……?)

ゆみ(攻撃するでもなく、無防備の状態で戒能プロの元へと歩いている…………一体どういうつもりなんだ?)

白望《そして…………救済》

良子《救済?》

白望《そう。彼女は変えてほしかった。窮屈な毎日を》テクテク

良子《…………》

白望《臆病で、自分では動くことができなかった……そんな自分を……違う世界へ引っ張って欲しかった》チラ

塞「……アイス……キャン………ディ………ブラン……コ……立ちこぎ……」

白望「………………」

白望《……授業に出ない、不良とも噂される彼女なら……自分と正反対であろう彼女を知ることができれば、見える景色が変わるのではないかと思った》テクテク

良子《確かに。ありがちなパターンですね。正反対同士で惹かれあうというのは》

白望《…………だから、私たちもそうかもしれない》

良子「……ピクチャー?(え?)」

白望「…………」グイッ(良子の腰に両手を回し、引き寄せる)

良子「ネーム……(な……)」


白望「…………」

良子「…………」

腰と腰がピッタリとくっつき、2人の距離が限りなくゼロに近づく。

白望の予想外の行動に戸惑う良子の両手が所在なさげに浮いている。

白望「そう……まるで正反対。ピュアなあなたと…………欲望にまみれた私は」スッ

良子の耳元で囁く。

良子「っ……!」ゾワ..

白望「私は……こうやって」

腰に回した手にグッと力を込め、体をさらに密着させる。

豊満な胸と胸が混ざろうとして拒み合い、2人の人間の輪郭を保つ。

白望「あなたの体温を感じていたい。この細い腰を……私の手で撫でたい」

良子「ぁ……ぁ……っ」ゾワワ

囁き声が良子の背筋を滑り、全身にさざ波を起こす。

良子(これは……い、一体どういうことですか……?こんな展開……)

さっきまで戦っていたのが嘘のようである。

白望の行動に引っ張られるように、良子の思考は戦闘モードから日常モードへと切り替わる。

その証拠に、英語が激減した。

ゆみ「………………」

智紀「………………」

エイスリン「………」

初美「………………」

白望が作り出した甘い空間に、周りのゆみたちも戸惑いを隠せない。

しかし、誰1人動くことなく成り行きを見守る。

白望「…………ねえ、あなたはどうかな?戒能プロ」

良子「な、何が……ですか……」ゾワ

白望「本当に…………興味ないですか」

腰を優しく触る。

良子「…………な、何を……」

白望「……こういうことを私とするのは……興味ないですか?この続きを……してみたくはないですか?」

ジッと、強く、良子を見つめる。

良子もまた同じ。

白望の瞳に映る自分の瞳に白望が映り、その瞳にはまた……。

良子「わ、たしは……」

良子(こういうこと……を……小瀬川さんと…………そ、そんな破廉恥なことは……)

白望が作り出す甘いムードに呑まれた良子は、真剣に考えてしまう。

白望の容貌をサラリと流し見、密着している体温を自覚し、腰に触れている手の大きさを意識する。

良子(私と……小瀬川さんが…………こ、この続き…………い、一体この続きとはどういうことをするのでしょうか……す、少なくとも……ふ……服を脱ぐのは確か……///)

良子の顔が紅潮する。

今まで考えないようにしていた部分。そこに意識を向けたせいだ。

知識としてすらも吸収することを拒んだ『そういう行為』。それは漠然としたイメージしか持たないものの、漏れ聞こえてくる断片がイヤラシさを孕んでいた。


白望「…………すいません」ボソ

良子「え?」

白望《〔 迷 い 家 シ ェ ル タ ー ( マ ヨ ヒ ガ シ ェ ル タ ー )〕》ガコォ...ン...

良子「な……!?」

良子(これは………)

白望「…………」

良子「あなた……私に一体何を……」

白望「……マヨヒガの中に閉じ込めた…………私と一緒に」

良子「な……」

白望「この能力は、私と相手が同じカプで妄想している時にのみ発動できる能力。特定のカプを封じ込める〔迷い家増築(マヨヒガ・リフォーム〕の強化版。戒能プロが私とのカップリングを妄想した瞬間に能力を使った」

良子「!!」

白望「シェルター内にいる間は、外にいる人間と回線を繋ぐことができない。能力の影響も外には関係ない」

良子「……なるほど……隔離、というわけですね」

白望「…………」コクリ

良子「無意味ですね。1対1なら私にウィンできると?」

白望「思わない」

良子「え?」

白望「私の目的は……」チラ

塞「」ウーンウーン..

白望「……戒能プロを閉じ込めること。私は戒能プロをここから出さないことだけに集中する」

良子「それなら……あなたを倒してここから出るだけのこと」

白望「確かに。ただ……このシェルター内では〔迷い家増築(マヨヒガ・リフォーム〕同様……」

良子「……………あ、あれ?」

白望「能力発動のキーとなったカプ以外では妄想できない」


良子「な……」

白望「つまり妄想できるのは私と戒能プロのカプだけ……」

良子「っ……」

白望「…………戒能プロ」

良子「……なんですか」

白望「あなたは……本人を目の前にして、自分とのカプ妄想ができますか?」

良子「それは……」

白望「18禁妄想を拒み、恥ずかしさに耐性のないあなたには難しいはず。しかもこのシェルター内ではあなたの能力は無効化されている」

良子「ぐ……っ…………」

白望「そして私はこの能力を保つので精一杯。攻撃する余裕はない。つまり……」

良子「…………」

白望「私たちはこのまま……ここで戦局を見守るだけです」

良子「…………キングマイゴッド(オーマイゴッド)」

ガクリと肩を落とす良子。

強者であるからこそこのシェルターの強固さが理解できた。

そして短い時間とはいえ年下に心理面で優位に立たれたショックもあり、戦意は失われた。

白望「………………」フゥ

しかし白望もまた精神に若干のダメージを負っていた。

白望(塞を助けるためとはいえ…………塞にしてみたかったことを、塞の目の前で戒能プロ相手に…………私は最低かもしれない)

白望(今の塞は意識朦朧としているから気付きはしなかっただろうけど……)

塞「……よう……じょ……」

白望(……いや、もし見てたとしてもヤキモチとかそういうのはないか……)

良子「………………」

良子(…………すみません。はやりさん、私はここまでのようです)

白望(みんな……あとは頼んだ……)


エイスリン「シロ……」

初美「小瀬川さん……」

ゆみ「………………」

ゆみ(あの2人に向けた回線は全て弾かれた。外部との接触を断つような性質を持つ能力ということか)

智紀(……小瀬川さんありがとう。あとは任せて。私たちでなんとか……)チラ

はやり「………………」

智紀(この人を倒すから!)

はやり「はややー……まさか良子ちゃんが負けちゃうなんてー……って、閉じ込められただけで負けたわけじゃないんだっけ☆」

白望「…………」

はやり「小瀬川さんをやっつけちゃえば能力は消えるっぽいけどー……攻撃しようがないからダメダメかぁ☆」

ゆみ(来るか…………どうする?移動して雀明華の近くへ行けば瑞原プロは手出しできないかもしれないが……)チラ

塞「うぅ……毛が、毛がぁ~!」

エイスリン「…………」

ゆみ(彼女たちを置いていくわけにはいかない。それに向こうにいる雀明華も強敵。下手すると挟み撃ちに合う)

智紀《加治木さん。ここは瑞原プロを迎え撃ちましょう》

ゆみ《!沢村さん……》

智紀《少しばらけながら攻めれば、まとめてやられることもないはず……神代さんたちが雀明華を倒すまでの時間稼ぎも兼ねて……》

ゆみ《ああ、わかった。では……》

智紀《はい》タッ

はやり「はや?」

智紀《牌のお姉さん瑞原はやり。大人気でグッズはバカ売れ。ライブは毎回満員御礼!》チャッ(メガネを外す)

はやり「はやー……わかってるね☆」

智紀《しかし……》チャッ(メガネをかける)

智紀《…………しかし!それも過去の話!歳月は無情にも現実を教える!》

はやり「ふふっ。何言ってるのか、はやりわかんなーい」ニコニコ

智紀《〔 幸 福 と 絶 望 の あ い だ ( ハ ッ ピ ー メ ガ ネ デ ィ ス ペ ア ー )〕》

はやり「っ!?」ガクン!

智紀「?」

智紀の絶望の一撃によって、はやりの体が力を失い傾く。


はやり「え……?」

ゆみ「ん?」

はやり「っ!は、はやぁ~?」

すぐさま立て直すが、その表情はアイドルスマイルから程遠いほど険しい。

はやり「そ、そんな……どうして……」

智紀(かなり効いてる……それ自体は嬉しいけど………)

ゆみ(おかしい。瑞原プロへの攻撃はファンが肩代わりするからダメージを与えるのは困難なはずだ……だからこそ、彼女を倒す方法を考えあぐねていたのだが……)

はやり「私の……力が……?」

智紀「…………っ!」タタッ!

智紀(理由はわからない。でも攻撃が通じるなら、今は考えるよりも行動あるのみ)

智紀《ファン激減!グッズ売れ残り。収入は絶頂期の10分の1!》

はやり「きゃああ!?」フラッ..

智紀(……いける。このまま押し切れる)

ゆみ「私も続くぞ!」

ゆみ《最愛の彼女は、今が旬の後輩アイドルに奪われる!》

はやり「う……ぐ……ぁ……」

はやり(そんな……どうして…………)

瑞原はやり、突然の弱体化。

これには本人も驚きを隠せずにいた。

余裕のBeforeから困惑のAfter。

その間に起こっていた出来事とは―――


【北校舎】

久美子「おおー、いい感じいい感じ」カタカタカタ..

トシ「埴淵さん。ノートパソコンをエンジョイ中かい?」

久美子「あ、はい」

豊音「私はゲームボーイアドバンスをエンジョイしてるよー。塔を登ってるよー」ピコピコ

トシ「しかしラーメンを食べるならまだしも……敵地で何をパソパソしてるのさ」

久美子「あ、実は会長の指示なんです」

トシ「会長とだけ言われてもババアはわからないんだよ。何会長か述べてくんないとお先真っ暗さ」

久美子「リリーブライドの会長です」

トシ「私はやっとわかったトシさ。それで?何を指示されたかすぐに言いなよ」

久美子「はい。これ見てください」

トシ「これ、じゃわかんないんだよ。名詞を使いなさい」

久美子「ノートパソコンのディスプレイを見てください」

トシ「見るよ。む?このスタイリッシュなブログはなんだい?」

久美子「私の個人ブログです」

トシ「ふむだよ」

久美子「そこである内容の記事を書くよう言われてたんです。458プロとの戦いが決まった頃からなので……結構前ですね」

トシ「どんな内容だい?」

豊音「ロンだよー!やった、三色同刻だー!ちょーめずらしいよー」ワーイ

トシ「話の途中によりにもよって三色同刻和了るんじゃないよ!!次に割り込んだら電源切るよ!」

豊音「ひっ……ごめんなさい……」

久美子「内容はですね、エイスリンちゃんのことなんです」

トシ「エイスリンの……?」

久美子「はい。実は今日発売のWEEKLY麻雀TODAYでエイスリンちゃんの特集が組まれてまして」

トシ「ほう」

久美子「本人承諾の元、色んな写真とかインタビュー記事を掲載したんですね。そのことをブログで大々的に宣伝するよう言われてたんです。なのでちょこちょこエイスリンちゃんの情報を小出しに載せてきたんです」

豊音「ん?わああ!エイスリンさんちょーかわいいよー!」

久美子「ふふふ。私が厳選した写真だからね」

トシ「ブログでもエイスリンの画像を載せてるのかい?」

久美子「はい。合わせてツイッターとかSNSで宣伝しました。今もエイスリンちゃん妄想を呟き続けてました。反応は上々ですよ」

トシ「なるほどねぇ。でも、そんなことをする意図がわからないんだよ。でもわかってるフリをするよ」

豊音「えー?先生でもどうしてかわからないんだー?」

トシ「いや、わかってるよ。ただ口をつぐむさ」

豊音「教えてほしいよー」

久美子「瑞原プロ対策らしいです」

豊音「ほえ?」

久美子「今号のWEEKLY麻雀TODAYはグラビアが瑞原プロだからファンの人は買いますよね?で、その後ろのページにはエイスリンちゃん特集があります」

トシ「ほう」


久美子「可憐でキュートなエンジェルエイスリンちゃんを一目見たら、ほとんどの人は魅了されます。それは瑞原プロのファンも例外じゃない」

豊音「ふんふん」

久美子「私がブログとかで宣伝したこともあって、今結構話題になってるみたいです。特に今日のブログ記事ではエイスリンちゃんで妄想しちゃうような内容を書きましたし」

トシ「……なるほどね。それで…………つまりはどういう意味があるんだい?」

久美子「………………さあ?」

豊音「えー、答えが知りたいよー」

久美子「ごめんなさい。でも会長からはエイスリンちゃんの可愛さを宣伝しろって言われただけなので……」

トシ「時に知識が邪魔になる……今回は邪魔にならないけどね」

豊音「ほんとそうだよー。気になるよー」

トシ「そういう時は電源オフさ」スッ

豊音「だ、ダメだよー!せっかくここまで登ったんだからー」サッ

久美子(……理由は教えてもらえなかったけど……私がこうすることでリリーブライドに役立つってことですよね?会長……)

久美子が恵の意図に気付かぬまま作成していた記事、そして宣伝。

これは瑞原はやり対策としてとてつもない威力を発揮していた。

瑞原はやり。

彼女は幹部の中で最も強力な存在と言われている。

万単位存在するファンクラブ会員の力を借り、鷺森灼の一撃必殺を受けてもビクともしない防御力を得た上、ファンの妄想力を使用することで攻撃力は絶大。

個にして万。反対にしてはいけない。

その強さを前にした面々は、はやりに勝つための方法を全く思い付けないほどだった。

しかし逆に考えてみると、ファンがいなくなることでその力は激減する。

そのためにどうすればいいか。

恵がとった作戦は、リリーブライドの力を使って458プロとの決戦当日に発売するWEEKLY麻雀TODAYにはやりとエイスリン特集を載せること。

はやりファンに雑誌を買わせ、エイスリンの可愛さに魅了させるという狙いだ。

はやりが力を引き出せるのは、はやりで百合妄想しているファンのみ。

もしもはやりで妄想するファンが存在しなければ、攻撃も防御もパワーアップすることはない。はやり本来の力しか発揮できない。

458プロとの戦いが始まった頃、ファンたちははやりの載っているページを見て妄想をしていた。

そのため、はやりはとてつもない力を発揮していた。

しかし次のページをめくると、あら天使。

エイスリンのキュートさに目を奪われたはやりファンたちは気が付けばエイスリンに魅了され、はやりで妄想することはなくなっていった。

久美子の宣伝も相まって、はやりファンの大半がエイスリンに魅了されたのだ。

その結果、瑞原はやりの弱体化に成功したのである。


【北校舎 体育館】

はやり「くっ……」

はやり(どうして?ファンのみんなの力が感じられない……こんなこと初めて……)

ゆみ(演技には見えない。確実にダメージを与えられてるようだ)

智紀(これなら勝てる!)

はやり「…………はやー」

はやり(ずいぶん嬉しそうな顔してくれてるねー……でも、それはちょっと甘いと思うなー)

はやり《〔 H A ・ Y A ・ Y A L O V E S O N G ☆ 〕》ハヤヤヤヤヤヤヤ...

智紀「うっ」

ゆみ「ぬ……」

ゆみ(これは……瑞原プロのことを応援したくなる気持ちが湧き出てくる……)

はやり(ね?私だけの力でも戦える。それとー……)チラ

智紀「?」

はやり(良子ちゃんを解放すればこの勝負は私たちの勝ちだよね☆)

白望「…………!」

良子「はやりさん!」

ゆみ(何をする気だ?)

はやり(良子ちゃんを封じてる『小瀬川さんの能力を私のファンにする』!)

はやり《〔 H A ・ Y A ・ Y A L O V E S O N G ☆ 〕》ハヤヤヤヤヤヤヤ...

白望「!これは……」

白望(心に何かが入ってくる……くっ……)

良子「スティックがファッションスリー(さすがはやりさん)」

はやり「………………」

はやり(……外部の回線を弾くだけあって、全力でやっても効果が薄いなぁ~。でも、少しずつ取り込んでみせるぞ?さあ、はやりのことを好きにな~れ☆)

白望(ダメ……ここで私が飲み込まれたら……塞たちの勝ち目がなくなる……)ググ..

智紀《させない!》

はやり(!……この子たちの攻撃を受け続けるのはたいへん。ここは……)

はやり《〔 は や り フ ァ ン ク ラ ブ 〕》ザァア..

〔はやりファンクラブ〕を発動させると、背後にぼやけたファンの映像が現れた。

ゆみ「な……っ!」

雅枝『』

そのファンとは愛宕雅枝と他複数人。

智紀《……かまわない。その程度の人数なら押し切れる》ズアッ!

智紀が絶望を繰り出す。

すると雅枝の横にいたファンたちの姿がかき消え、雅枝が苦しみだす。

はやりはというと、全くダメージを受けていない。

智紀「!」


はやり「ざーんねん。今回はダメージを全部ファンの子に肩代わりしてもらっちゃった。こういう使い方もできるんだゾ☆」

ゆみ(ならば、愛宕さんごと潰すのみ!)

ゆみ《後輩に懐かれ、恥ずかしがりながらも嬉しい先輩。そして…》ゴオッ!

雅枝『!』

はやり「頑張ってね。私は私で頑張るから」

白望「く……っ……あああ……!」

白望(頭が……痛い……!)

エイスリン「シロ……」

初美「辛そうですよー……誰か助けてあげないと…………せめて服を脱げたら私が…………あれ?」スルッ

鎖骨出し初美「…………脱げた……」

鎖骨出し初美(そうでした……戒能プロさんは閉じ込めることに成功したんでした……すっかり脱げないままだと思ってました)

塞「う……」ピクン

エイスリン「!」

鎖骨出し初美「やっと脱げますよー!今すぐ助けに……」

エイスリン「マッテ!」

右胸出し初美「えっ?」

エイスリン「サエ……キヅイタ!」

右胸出し初美「何がですかー?」

塞「……私……何してたんだっけ…………あ、そうだ……毛事件を思い出して……」ムクリ

白望「ぐぐぐ……ああぁ……」

はやり(しぶといなぁ)

塞「えっ…………シロ……どうしたの?」

白望「さ、え……」グググ..

エイスリン「サエ!キイテ!」

塞「エイスリン……?」

エイスリン「シロ、サエノタメニ、ギセイナッタ!ロリモーソー、デキル!」

塞「!!」

エイスリン「イマモ……シロ、クルシンデル!タスケテアゲテ!」

塞「…………」

白望「がぁ……は……っ……」

塞(………エイスリンが言う犠牲の意味はよくわからないけど……)

塞(とにかく今はシロを助けることが最優先!)

はやり「はやー……意識を取り戻しちゃったんだ?もう少し寝ててもいいのに☆」

塞《裸の幼女が…………っ!》ピキン!

はやり「?」


塞(これは…………何……)

ゾワッ..

塞(力が……溢れてくる……)ゾワワワ

白望「さ……塞……?」

塞「……っ!」ビク..ゥゥン!

エイスリン「サエ……」

左胸チラ初美「な、何がどうなってますかー?」

塞「………………」

塞の体の表面を走った悪寒にも似た微振動。

それはしばらくすると治まり、同時に全身の筋肉が弛緩し、立ったままフラフラと揺れる。

塞「………………」

はやり(…………なに?この感じ……得体のしれない生き物に出会ったような……)

塞「…………あー……なんかすごいいい気分。まるで生まれ変わったみたい」フフッ

白望「塞……」

白望(いや、塞なんだけど違う人のような……というより……)

エイスリン「サエ?」

塞「……違うよ。私は塞じゃない」

エイスリン「エ?」

ゆみ「……じゃあ誰だと言うんだ」

塞「…………穏やかに条例を守りながら激しい妄想規制によって目覚めた百合妄想士……」

塞「超(スーパー)ロリコン、塞よ!」

エイスリン「ジャアサエデアッテル……」

塞「あっ……ちょ!そこは気付いてもわからないフリしとこうよ!社交辞令的に!」

ゆみ(超ロリコン……真顔で堂々と言い切るとは……ふふ、さすがだな)

智紀(……確かに、今まで以上の凄まじい力を感じる。まさに生まれ変わったみたい。超を付けるだけある)

はやり「…………超だかなんだかわからないけどー……」

塞「?」

はやり「キミが強くなったのは事実みたいだから…………小瀬川さんより先に私のファンになってもらおうかな☆」

智紀「!」

ゆみ「まずい!止めなければ!」シュバ!

はやり「無☆駄☆」

雅枝『っ!』

はやりへの攻撃は雅枝に。

ゆみ「ちっ!」

智紀「しまった……」

はやり《いっくよー☆〔 H A ・ Y A ・ Y A L O V E S O N G ☆ 〕》ハヤヤヤヤヤヤヤ...

塞「………………」

はやり「………………」

塞「………………」

はやり「…………あれ?」


塞「ふふ……無駄です。あなたの攻撃は私には効きません」

はやり「!!?」

塞「私は超ロリコン。乳歯が生え変わった相手の攻撃なんて全然効きませんよ」

はやり「な……っ!」

塞「瑞原プロ。あなたの外見は若々しい。でも…………ロリじゃない!」

エイスリン「ミンナワカッテル!」

はやり「う、うるさいよっ☆」

塞《行くわよ……》

はやり「!!」

全身の力を両手に集め、右と左の指を交差させるように組む。

そして組んだまま手の平をはやりへと向ける。

塞「くらえっ!!」

塞《ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリ!!!!》

ロリラッシュ。

幼女妄想を連続で放っていく。

一言ごとに幼女キャラがはやり目がけて飛んでいき、はやりの脳内を埋め尽くす。

噛まずに言えてることもポイント高し。

はやり「!!?!?!?!?!?」

これは恵や界が使ったラッシュにも似た攻撃。

過去に二次三次問わず数多の幼女で妄想してきた塞。

そしてその幼女妄想を封じられた苦しみを経てからたどり着いた境地。

その威力は純代のスカ五輪妄想をも上回る。

雅枝『………………』スゥ...ゥッ

はやり「!はや、はややああ……」

あっという間に愛宕雅枝の耐久限界を超え、〔はやりファンクラブ〕が消失する。

そうなれば攻撃の対象は瑞原はやりへと向かう。


塞《ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリ……》

はやり「はやややっは……」

塞《ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリ……ッ!》

はやり「や……はや……はあ……」

塞《〔 ロ リ キ ャ ラ タ ブ レ ッ ト ( ― ど こ で も い っ し ょ ― ロ リ が い っ ぱ い )》ロリィィィィィィ...

はやり「やぁ……っ……」

はやり(そんな……はやりが…………こんな……あっさり……)

フラッ..

はやり(あ……力が入らない……このまま倒れたら……頭打っちゃうかも……アイドルなんだから、ケガとか……ダメ、なの……に……)

ガシッ

はやり(………………あれ?痛く、ない……)

塞「…………」

はやり「キミ…………なん、で……」

塞「幼女以外はどうでもいいってわけじゃないですから」ニコ

はやり「…………はは…………キミ、面白い……ね」

塞「そうですか?」

はやり「うん…………はやり、ファンになっちゃう…………か……も………ふふ………」ガクッ

塞「………………」

はやり「…………」

458プロ幹部であり牌のお姉さんでもある瑞原はやり。

数多くのファンを魅了し、その力を武器に戦う百合妄想士。

圧倒的な攻撃力と堅固な防御力を誇る実力者だが、持ち味を封じられ本領発揮することなく敗北。

もしも全力を出すことができる状態であれば、超ロリコンに目覚めた塞相手だろうと勝利を収めたであろう。

そういった意味では、この戦いにおける大殊勲をたてたのはこの場にいない埴淵久美子。

恵の指示によるものとはいえ、記者としての腕があってこその結果であり、そして彼女自身の百合への愛がはやりファンの心を掴んだのだ。


塞「……ここで寝ててくださいね」コロン

はやり「………………」ハヤー..

良子「リミットローな……はランスさんが……(そんな……はやりさんが……)」

白望「塞……」

塞「……シロ、ありがとう」

白望「え?」

塞「シロが頑張って戒能プロを抑えてくれたから、私もみんなも無事でいられるんでしょ?だから」

白望「…………別にそういうわけじゃないけど」

塞「……それじゃ、少ししたらその能力解いて」

白望「……どうして?」

塞「私が戒能プロを倒すから」

良子「!…………ははっ……ずいぶんドアセブンアイらメールようでサルキー(ずいぶんと舐められたようですね)」

白望「……でも能力を解いたら、また戒能プロに幼女妄想は封じられて……」

塞「うん。だから……解けた瞬間に攻撃が当たるようにする」

白望「!」

良子「っ……!」

塞「5秒後に解除してもらっていい?」

白望「…………わかった」

塞「ありがと」

白望「じゃあ…………5……4……」

塞《ロリロリロリロリロリロリ…》

良子「ちょ、ちょっと……」

白望「3……2……」

塞《ロリロリロリロリロリロリ…》

白望「1……0!」

0カウントと同時に白望と良子を閉じ込めていた〔迷い家シェルター(マヨヒガシェルター)〕が消える。

良子「っ!〔 完 璧 な る …( パ ー フ ェ ク ト …)」

塞《〔 ロ リ キ ャ ラ タ ブ レ ッ ト ( ― ど こ で も い っ し ょ ― ロ リ が い っ ぱ い )》ロリィィィィィィ...

良子「!!!!!!」

幼女妄想を防ぐべく〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕を発動しようとするが間に合わず、

塞「…………………」

良子「………………」

塞「…………………」

良子「………………ゾーマ(ぐふっ)」ドサ..

戒能良子はライフを失い、体育館のタイルにダイブするように崩れ落ちた。


塞「………………ふぅ」

ゆみ「……すごいな」

智紀「はい。圧倒的ですね」

塞「これで残るは雀明華さんだけ。よし、任せて!」タタッ

ゆみ「あ」

智紀「アグレッシブ……」

ゆみ「……そうだな。頼もしい限りだ」クス

エイスリン「ハタラキモノ!」

塞「………………」タタタ

塞(残る敵は1人……)タタタ

塞「あれ?」タタタ

明華「!!」

明華(臼沢塞……太ももむっちり女子高生が何故ここに?花田さん同様、戦闘中に抜け出しましたか?)

小蒔「あ、臼沢さん」テク..テク..

霞「助っ人に来てくださったのですか?でもあちらの方は……」テク..テク..

塞「あっちは大丈夫。瑞原プロも戒能プロも倒しましたから」

明華「な……!?」

霞「まあ。すごいわ」テク..テク..

塞「……それより……2人は何してるの?」

霞「ええと……明華ちゃんの歌で……その……」テク..テク..

小蒔「上を向いてあるいてますっ!」テク..テク..

塞「……そ、そう。でも花田さんが2人の代わりに受け止めてくれるはずじゃ……」

霞「煌ちゃんはあそこよ」テク..テク..

煌「ふぬぅ!ぐぐ……すば……らぁあ……」グググググ

塞「え?あ……ドアを開けようとしてる……なんで?」

霞「……カローラⅡに乗ってパーティーに出かけようとさせられてるの」テク..テク..

塞「??」

霞「そういう歌があるみたいよ」テク..テク..

明華「小沢健二……日本の歌手……」

塞「な、なるほど。それで〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕の有効範囲から外れたわけね」

霞「ええ。だから私たちは涙がこぼれないように上を向いて歩いているの」テク..テク..

塞「……そしてその隙に攻撃されそうになったところで私が来た、ってところかな?」

霞「そうよ」

明華「…………」

塞「残念ね。明華さんの目論見は崩れたわ」

明華「…………」スゥ..

明華(確かに作戦通りとはいきませんでしたが、まだ終わったわけではありません)

塞「…………」


明華「♪走り出せ 走り出せ 明日を迎えに行こう~」

明華(臼沢さん、あなたもここから離れてもらいます。その間に神代さんたちを倒します)

塞「…………ふむ」

明華「!?」

明華(どうして走り出さないのですか!?)

塞「ふふっ」

明華(これも太ももの成せる業……でしょうか)

塞「ごめんね?でも今の私は超ロリコン。蒙古斑がない女の子の攻撃は効かない」

明華「っ!!!」

霞「それは……」

小蒔「もうこはん??中華料理ですか?教えてください霞ちゃん」

霞「え、ええと……神秘的な印……というか……」

小蒔「そうなんですか?わあ……もうこはん見てみたいです」ニコニコ

霞「……み、見れるといいわね」

小蒔「はい!」

明華(……臼沢さんの話が本当なら打つ手がありません……蒙古斑が蘇るような内容の歌は思い当たらない……)

塞「……さて、今度はこっちの番ね」

ゆみ「…………すごいな。雀明華の歌も無効化している」

白望「うん」

エイスリン「サエ!ムテキ!」

智紀「ええ。幹部を2人も倒してますし……もしかしたら現時点で最強の百合妄想士かも……」

全裸初美「うー……姫様より強いとか信じたくないですけど……確かに臼沢さんはすごいですよー」

塞「むっ!?」ピクン

明華「?」

塞「今の声は………」キョロキョロ...

全裸初美(?攻撃せずにこっち見ましたよー?)

塞「はつみたん!!!!」

全裸初美「え?」

塞「はつみたんはつみたんはつみたんはつみたんはつみたんはつみたんはつみたん!!」

全裸初美「え?え?」

塞(はつみたんの首はつみたんの指はつみたんの腕はつみたんの胸はつみたんの喉はつみたんの頬はつみたんの耳はつみたんの尻はつみたんのアレ…)ガタガタガタガタ

明華「い、一体何が……」

明華(急に震えだす女子高生……恐怖です……)ゴクリ

塞「かは…………っ!」ビクゥン!!

明華「!」ドキン!

塞「………………」

ドサッ..

全裸初美「!!う、臼沢さん!?」


白望「塞!」

塞「は……つみ…………たん………か、わい……すぎ……る………………ぅ」ガクッ

地面にロリの字になって倒れた塞は、満足そうな笑みのまま気を失った。

その原因は初美にある。

ある程度の年齢に達した人間の攻撃をほぼ無効化し、なおかつ攻撃力を飛躍的に増す塞の超ロリコンはとても強力だがその反面、幼きフォルムに大層弱い。

遠目で初美を見ただけで、血圧上昇、情操暴走。

萌えも燃えも得たいと求めてく。初美がいるから塞がいる。

己が持ちうる全ての力を使って初美で妄想してしまい、

結果塞は力尽きたのだ。

明華「……わけがわかりませんが……運が向いてきたようです。あの人がいなければ戦いようは…」クス

霞「はあっ!」ボンヨヨヨーン!

明華「っと!」サッ

霞「く……」ヨヨン..プル

明華「そう簡単に胸を顔に当てられはしません」スゥ..

小蒔「…………」スッ

明華「♪居直れ もうブレブレブレブレブレまくって 震えてるのわかんねぇようにしてやれ~」

小蒔「ああっ!?景色が!ゆ、ゆれてます!歩きにくい!」ブレブレブレ!

明華「…………」サッ

明華(ふぅ。こうして距離をとって少しずつ神代さんに攻撃を…)

白望《いつも一緒にいるからこそ感じ取れる君の変化。そして物憂げな横顔を見るたび、否応なしに気付かされる。君の心は違う人のものだと!》タタタ

明華「っ!これは……!」

明華(いつの間に近付いて……能力を使わずにストレートにきましたか……ならば……」スゥ..

白望(!歌……)サッ(両手で耳を押さえる)

明華「♪あれれ?小さな胸が震えてる~」

白望「うっ?」

明華「♪抱きしめられたら壊れちゃうよ~」

白望「ぐ……あああ……」

白望(耳を塞いでも……頭に響く……!)

ノリノリで堂々と歌う『さくらんぼキッス~風神だも~ん~バージョン』。

その歌詞と歌声と表現力によって、白望の頭は電波に侵食される。

白望(な、んだこれ……)

『大宇宙の天使より生まれた純白の黒ニーソを履いた美少女はツインテールでありながらブラックホールの化身。食パンをくわえながらタイムスリップしてきたおかげで同居することになった』

『初めて出会ったが昔からヤキモチ焼きだと知っており、幼馴染がいない主人公(♀)の幼馴染に嫉妬してその度に世界を破壊しようとする人間になりたいと思った瞬間に人間になっていた彼女』

『さらに反重力作用によって生まれた金髪碧眼アンドロイドの少女は正真正銘の人類でありアンドロイドを開発する博士。無口ながら名言のオンパレードで何もないところで転ぶがパンチラはせず。しかしスカートは履いていない』

白望(わけわからない……何この設定……)

ただただ適当に編まれていくストーリーによって妄想するチャンスを奪われ、ひたすら電波の嵐に耐えるしかできない。


エイスリン「シロ!」

智紀「……こうなるとダヴァンさんがいた時の方が攻めやすかったかもしれませんね。有効範囲はわかりませんが、全方位カバーしているように見えます」

ゆみ「ああ。ただ……小瀬川さんのおかげで光明が見えたかもしれない」

智紀「え……」

全裸初美「どういうことですかー?」

ゆみ「……小瀬川さんは歌を聴く直前に耳を押さえた。しかしそれでも歌の影響を受けた。つまり雀明華の声を聴かずとも能力は有効だということ」

智紀「確かに……」

ゆみ「つまり回線で歌を聴かせれば効果がある。メガン・ダヴァンの能力を借りた理由は『能力を使用する時は回線を自在に繋げず、アバウトにしか指定できなかったから』で説明がつく。だがそれなら今の場合……」

エイスリン「ウタウヒツヨウナイ……」

ゆみ「そう。今の推測が正しいならば歌わずとも能力は発動できる。しかしチーム分けする前に高鴨さんたちから聞いた話では、宮永さんの父上の能力によって口を開けられず、歌を封じられたと雀明華が言っていたらしい」

智紀「……声を出さなければいけない理由……」

ゆみ「おそらく……歌うことで能力が発動し、回線越しに相手に作用する。あるいは……」

ゆみ「声と回線内で同時に歌わなければいけない……または声か回線かのどちらか……」

智紀「!なるほど……」

全裸初美「??難しいですよー?」

ゆみ「私は声と回線内で同時に歌う必要があるのではないかと踏んでいる。だが決め付けて掛かれば一か八かの賭けになってしまう」

智紀「そういうことですか。わかりました。では私も行きます。加治木さんと同時に」

ゆみ「……ふふっ、さすがだな。頼む」

智紀「はい」クス

ゆみ「では行ってくる。薄墨さんたちは神代さんの傍へ行ってくれ。私たちがやられたら後は頼む」タタッ

智紀「お願いします」

全裸初美「あ、はい」

エイスリン「マカサレタ!」

全裸初美「…………あの2人が何を言ってるか、わかりましたかー?」

エイスリン「ワカラナイ!」Why..

全裸初美「ですよねー?」

明華「………………」

白望「うぐ……」フラ..

明華「トドメです……」スゥ..

白望「…………」

ゆみ「させん!」タタッ

智紀「……同じく」タタッ

明華「!」

明華(いいところで邪魔を……ならばあなたたちから先に始末します)スゥ..

智紀(ここっ!)

智紀《雀明華は今、無理矢理に口づけを受けていた……その相手は実の母!》

明華「?!」


智紀《それはそれは息もできないほどの熱く長いキス!》

明華(そんなわけが……お母様とキスなんて……)ムグ..

思いもよらぬ絶望に、声が詰まる。

そして同時に歌詞が頭から消えた。

明華(しまった!挽回……)スゥ..

ゆみ「遅い!」

ゆみ《後輩と秘密のデート。『2人が付き合っていることがバレると噂になって先輩に迷惑がかかるから……』と後輩が言う。その悲しげな表情の裏に潜む真実に気付いた先輩は、後輩と付き合っていることをみんなの前で発表した……》

明華「うっ!」ガクン!

青春な先輩後輩妄想を受け、体をくの字に折る明華。

そこへさらに智紀の絶望が襲う。

智紀《キスのあと、母親の舌は雀明華の鼻を舐めだした。穴の入り口、天井、側壁、外壁、鼻下ペロペロと。鼻で息を吸えば今にも母親の唾液の匂いが……》

明華「っ!?や、やめて!!」ムググ..

あまりにもな智紀の妄想に嫌悪感を抱いた明華は息を止め、母親の唾液から逃れようとしてしまう。

現実でそのような行動をとってしまうほど、智紀の絶望は強力だった。

明華「はっ……しまっ…」

智紀《……神代さん!あなたも一緒に!》

小蒔「あ……はいっ!」タタッ

ゆみ《『何があっても君を守る』と告げる先輩。後輩はその言葉を受け、とめどない涙を拭うこともせずに先輩に思いっきり抱き着くのであった》

明華「がっ……」

智紀《唾液まみれの雀明華。もはや親子の関係には戻れないと気付いたその時、家族写真にヒビが入り、雀明華の口内に母親の舌が入った……》

明華「ぐ!?」

明華(まだ……まだ……歌えば……勝機は……ある!)スゥ..

ゆみ(!今だっ!)

明華「♪あなたも私もポッキー!」

明華(あとは……ポケットにしまっていたポッキーを投げれば…………えい)ポイッ

明華(これでポッキーゲームがしたくてしょうがなくなって戦闘意欲を削れる……)フゥ

ゆみ「…………」

智紀「…………」

小蒔「…………」

明華「…………?」

ゆみ「当たっていたか」

ゆみ(実際に歌いながら回線内でも歌う……この2つが重なることによって効果を発揮する。それが雀明華の能力の正体)

明華「???」

ゆみ「残念だが……回線内の君の歌詞は私が変えた。〔原作編集(シナリオコントロール)〕でな」

明華「!!」

明華(そんな……私の……能力を……)


小蒔「……いきます」スッ

明華「っ!?待っ…」

小蒔《〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ )〕!!》カッ!!

明華「!!!!」

明華(これは……もう…………避けられ………………)

シュゴオオオオオオオオ!!!

明華「―――――」

シュゴオオオオオオオ...

小蒔「………………」

明華「………………」

小蒔の激しい攻撃に貫かれ、風は止み、音は止まり、舞っていた音符は地へ落ちた。

明華「………………」フラッ..

ドサッ....

明華「ぁ………………」

ソシてソのまま、ミょんファは両あシのちかラを失い、仰向けにドさっと倒レた。

薄っすラと開いた目がミているのは悔シさに滲んだ体育館の天井か、ソレを通り越シたソラか。

ドちラが正シいかはわからない。あーだこーだ言う間もなく倒レたのだかラ。

小蒔「…………」

ゆみ「…………」

智紀「…………」

霞「……………」

明華(まさ……か……わ、た……し…………が………………)スッ

そしてその目は閉じられる。

臨海女子の風神・雀明華。

最後は1人気を吐くも、敗北。

北校舎体育館で行われた戦いはここに幕を閉じた。


ゆみ「………………ふぅ……なんとかなったか」

智紀「はい」

ゆみ「神代さん、ありがとう。助かった」

小蒔「いえ。私は最後にちょこっとやっただけですから」

霞「それにしても……最後、明華ちゃんの歌が無効だったのはどうしてかしら?」

ゆみ「私が彼女の歌を編集したからです」

霞「編集?」

ゆみ「ええ。彼女の能力は声に出すのと回線で歌うことの両方が必要なのだろうと踏んだので回線内の歌詞を変えたんです。『あなたも私もポッキー』の『ポッキー』から先が『サザエさんのうた』になるようにね」

霞「……なるほど」

小蒔「??」

ゆみ「沢村さんが絶望を与えて雀明華の歌を封じつつ、さらに意識を引き付けてくれたおかげで私が編集する隙ができた」

小蒔「はぁ……」??

雀明華の能力の条件についてゆみが立てた仮説は、

1.声に出して歌うことで能力が発動する。実際は回線を通して能力が発揮される。

2.声に出して歌うのと回線での歌を同時に行うことで能力が発揮される。

3.声を聴かせるか回線で聴かせるかのどちらかに該当する場合、能力が発揮される。

この3つだった。

そしてどの場合でも対応できるように、智紀に絶望を使って声を出せないようにしてもらい、ゆみは回線内の歌詞を編集する、という作戦に出た。

実際の条件は2……『声と回線内で同時に――当然同じ歌――歌わなければならない』というものであり、ゆみの推測は当たっていた。

相手が耳を塞ごうと明華が条件を満たせば効果を発揮するという強い能力だからこそ、歌に集中する必要があり、狙う対象を選ぶことすらできなかったのだ。

霞「…………さて!」パン

ゆみ「?」

霞「難しい話は後にするとして……みんなのところに戻りましょう」

ゆみ「ん、そうだな」

智紀「はい」

エイスリン「シロ……ダイジョウブ?」トテトテ..

白望「う……エイスリン……」

全裸初美「あのー……う、臼沢さん大丈夫ですかー?」

塞「…………くん、くんくん……あ、美味しそうな匂い……まさに食べ頃の……」

全裸初美「ひぃ!?介抱は霞ちゃんに任せるですよー」

霞「あらあら」

北校舎にて、瑞原はやり、戒能良子、雀明華、メガン・ダヴァンとの戦闘を終えた一行は体育館を後にした。

もちろん、カローラⅡに乗ろうとし続けていた花田煌も一緒に―――


【廊下】

霞「あら?」

トシ「おや、おかえり。CVトシさ」

豊音「お疲れさまー♪」

ゆみ「わざわざ出迎えてくれるとは……」

トシ「それもあるけど、別の理由もあるのさ。その理由を聞きなよ」

ゆみ「え、ええ。どんな理由なんですか?」

トシ「…………どうしようかね?教えてもいいんだけど……」フフフ

ゆみ「………………」

久美子「なんか入口の方で物音がしたので様子を見に行ってまして……今はその帰りです」

ゆみ「あ、なるほど」

豊音「そしたら扉が開くようになってたよー。ちょーうれしいよー」

トシ「…………ネタバレだよ。困ったものだね」

智紀「……タイミング的に考えて、監視カメラか何かで戦いを見てて、戦闘が終わったから開けた……といったところでしょうか?」

ゆみ「おそらくは。悪趣味だな」フゥ

小蒔「でもこれでお外に出られるのですね」ホッ

塞「そうね」

白望「…………塞、元に戻った?」

塞「あー……うん。なんかあの時はちょっと暴走してたっていうか……だからそんなに離れないでよ」

全裸初美「…………」オドオド

エイスリン「ロリコンコワイ?」

全裸初美「…………」コクコク

塞「えー」

霞「……それじゃ、早速出ましょうか」

ガチャ...ギィィィ...

霞・小蒔・ゆみ・白望・全裸初美・エイスリン・塞・豊音・智紀・久美子・トシ「………………」

校舎のドアを開け、外へ出る一行。

???「………………」

霞・小蒔・ゆみ・白望・全裸初美・エイスリン・塞・豊音・智紀・久美子・トシ「!!!!」

するとそこに立っていたのは――――


―――時間は少し遡り、東校舎と北校舎にわかれていた面々が幹部たちと戦闘を開始した頃、

儚可憐女学院の校庭では激しい戦いが繰り広げられていた。

458兵たち「うっうー!」

LB軍「お、押し返すわよ!」

LFG軍「わかって……ます!」

宮守女子「はい!!」

巫女軍団「ですが……この数は……」

貴子「うるせェァァッ!」

オオオオオ...

晴絵「………………」

数で圧倒する458兵を相手に、LB軍、LFG軍、宮守女子、巫女軍団。そして宮永界、赤土晴絵、久保貴子の3人が立ち向かう。

晴絵(……これは厳しいな)

状況は芳しくない。照たち主力メンバーを欠いた状態での戦いは厳しく、苦戦を強いられていた。

界「ふたなり娘、我慢汁の大海原をくらえ!」シャバァ!

458兵「きゃあああ!」

晴絵(師匠と久保さんがいるおかげでなんとか持ちこたえてるけど……いかんせん数が違いすぎる)

LFG軍「う……」ドサ

LB軍「大丈夫っ!?」

458兵たち「はあああ!」

LB軍「きゃあああ!?」バタバタ..

晴絵(それに……)

雅枝「あはははは!踊れオラァ!!」ヒュン!

貴子「くそっ……!この先輩のクソ野郎が……」チッ

晴絵(最初の頃は味方が多かった分、狙いも散ったけど今は集中砲火が来る。3人がかりで愛宕さんを制しようにも……)

458兵たち「ちひゃー!!」タタタ

晴絵「くっ……〔 ち ○ 毛 ミ サ ン ガ 断 裁 ( ラ グ ナ ロ ク )〕!!」

458兵たち「あふぅ……」バタバタバタ...

晴絵「はぁ……はぁ……」

雅枝「休んでる場合ちゃうぞボケがぁ!!」

晴絵「え」

雅枝《〔 愛 宕 王 国 ( あ た ご キ ン グ ダ ム )〕》ズォォォォ..

晴絵「!!」

〔愛宕王国(あたごキングダム)〕。雅枝好みの嫁が勢ぞろい。妄想を携えて晴絵に襲い掛かる。

洋榎の嫁思想は母親譲りであった。

晴絵「ぎ……っ!?」

晴絵(キツイ……久保さんを相手にしていながらも周りが見えてる……)

界「アッカドーン!大丈夫か!?」

晴絵「は、はい……」

晴絵(師匠なら愛宕さんとも互角以上に戦えるだろうけど、そうなると私たちでは458兵を抑えきれない……)


雅枝「どないしてんお前ら!若いもんがトロトロしくさって!欠伸が出てしゃあないわぁあ!!」

荒ぶる雅枝。

数で圧倒する458兵。

晴絵も界も善戦し、貴子も雑魚をビンタしたりしているが、戦局は次第に458プロ側へと傾いていく。

晴絵(このままじゃ……)

思考を巡らすも、いい案が浮かばない晴絵。

ところどころで邪魔するオバハンに苛立ちながらもどうすることもできず、時間だけが過ぎていく。

界「ちっ……何人倒してもキリがない……」

貴子「なんだよこの状況は……クソゲー認定するぞァァッ!!」

晴絵「…………」

晴絵(……人数の差はあるし、愛宕さんの存在が厄介。だけど……)

晴絵「せめて…………せめてあと1人でも強力な味方がいてくれたら……」

晴絵(勝てないまでも、みんなが帰ってくるまでは持ちこたえられるのに……)

縋るように言葉を漏らした時、晴絵の背後に1つの影が現れた。

??「喜べ教員。君の願いはようやく叶う」

晴絵「っ!?あなたは……」

恵「…………」

それはセーラー服を身に纏う、リリーブライド会長。

晴絵「……原村……さん……」

晴絵(最悪だ……この人が加わったら、もう勝ち目は……)

恵「安心しろ。私は正気に戻っている」

晴絵「え?」

恵「君たちには迷惑をかけたな」

ビュゥゥゥウゥ...

その時、強い風が吹いた。下から突き上げるような突風。

恵「…………」

揺れる恵のスカート。しかし……肝心のパンツは全く見えない。

晴絵「!」

恵はいつもの清楚を取り戻していた。誰にも見えていはいないが、尿漏れのシミも渇き、パンツは白一色。表情は穏やかだ。

恵「今さらかもしれないが、私はここからリリーブライド会長として戦わせてもらう!」ザッ

晴絵「原村さん……」

恵「…………はあっ!」タタッ

458兵「え?」

界「ん?あっ!し、師匠!?」

恵「避けろ!」

界「っ!?」サッ

恵《ARIARIARIARIARIARIARIARIAQUARIARIARIARIARIARIARI…》ドドドドドドド...

458兵たち「あああああああああ……!?」ガフゥゥ!

恵《ARIA The ANIMATION( ネ オ ・ ヴ ェ ネ ツ ィ ア へ よ う こ そ )》

458兵たち「………………」ドサドサドサドサ...


恵「…………」

連続攻撃によって458兵たちを沈めた恵。それは百合嫌ー(ゆりきらー)時に使ったものとは違い、百合愛に満ちていた。

界「師匠……」

恵「……私は操られていたようだ。迷惑をかけて本当にすまなかった」ペコリ

界「いえ。正気に戻ってくれたのなら何も言うことはありませんよ」ニコッ

恵「……ありがとう。では……」

界「ええ。師匠が加わればこの局面を打開できます」

恵「うむ。行くか」

界「はい!」

雅枝「クソ!なんやねん。厄介な野郎が来おったわ」

貴子「会長!遅ァァッ!です!」

雅枝「…………ここは少し退かせてもらう」ススッ

貴子「!」

雅枝「お前ら行け!」

458兵たち「は、はい!」タタタ

貴子「逃げやがんのかコラァッ!!」

雅枝「……舐めた口を利きよんのぉ」ギロリ

貴子「うるせェァァッ!安全圏で野次るのが私のポリシーだァァッ!」

雅枝「最低やなお前!けど今は見逃したる!」タタタ

貴子「ふん!」

雅枝(原村恵が加わろうが数ではこっちが圧倒的や。しばらく458兵と戦わせておいて疲れた頃にいてこましたる!それがええよな?はやりちゃん!)

恵たちによる集中攻撃を避けるため、雅枝は一時退却した。

強敵が去ったことで戦いやすくなった晴絵たちは458兵たちを次々と撃破していく。

恵《〔 百 合 図 書 館 ( リ リ ー ・ ラ イ ブ ラ リ ー )〕!!》

界《〔 ふ た な り の 世 界 ( イ ッ ツ ・ ア ・ フ タ ナ リ ワ ー ル ド )〕!!》

晴絵《〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!》チポジョバァァァァァァ!!!!

貴子「殴らせろァァッ!」パシィィン!

しかし、数が数だ。最初の内はスムーズに戦っていたが、

次から次へとやってくる458兵に手を焼くようになっていく。

力は消耗され、だんだんと思考も動きも鈍くなる。

恵「く……っ」

界「大丈夫ですか師匠?」

恵「あ、ああ。決してパンチラはせんし、負けはしない」

晴絵「まだ終わらないのか……」

貴子「打ち止めはねぇのかコラァァッ!」ハァハァ..

かなりの458兵を倒してきたが、味方にも犠牲が多数出ており、全員が疲労困憊。

晴絵の尿道砲は右曲りになって外れやすくなり、貴子のビンタも狙いがズレてアゴに当たり、いい音が鳴らない。

恵もパンチラを防ぐことに意識を奪われ手数が減り、界はふたなりっ娘の硬度を保つので精一杯。


界「くそ……さすがにキツイな」

晴絵「はい。でもかなりの数を倒しました」

その言葉通り、最初に比べて458兵の数は確実に減っていた。

それだけでも界たちの功績を称えるべきだろう。

しかし、

雅枝「そやなぁ。け~ど~?」ザッ!

結果として界たちは平常時の力を発揮できないほど疲れ果てていた。

それを見逃すオバハンではない。

晴絵「!!」

界「……やはり来るか」

雅枝「待ちくたびれたわ。ほんま、ようやったわアンタら」

恵「…………くっ」

雅枝「けど、それも終わりや。全員、次のクールは百合断ちしてもらうで」ニヤリ

笑みを浮かべながら鎌を生み出す雅枝。

食らってしまえば敗北必至だ。

晴絵(……荒川憩からもらった〔スピードヒーリング〕も使ってしまった。ここから逆転する手は………………ない……)

恵(万事休すか……)

貴子(やべぇ……力が出ねェ)

界(くそ……『ふたなりのプリンスさまっ』とも呼ばれた俺が……)

雅枝「いくで!今こそ……っ!?」ビクン!

晴絵「?」

雅枝「が……は…………?」

界「……なんだ?何が起きてるんだ?」

雅枝「ぐお……ぅぁ……」

貴子(急に苦しみだしただと?しかも立ちっぱでフラついてやがる…………まるで弱者じゃねェか!おもしれェ!)

意気揚々と攻めようとしていた雅枝を襲ったもの。

それが何であるかは晴絵たちはもちろん本人すら知る由もない。

雅枝(なんや……これは……誰の攻撃やねん……)ググ..

当然だろう。雅枝にダメージを与えたのは、この場にいる人間ではない。

雅枝の脳内には絶望と先輩後輩…………沢村智紀と加治木ゆみの妄想が流れ込んでいる。

たった今、北校舎で戦闘中の瑞原はやりが〔はやりファンクラブ〕を発動させ、雅枝の精神を召喚してダメージを肩代わりさせたのだ。

貴子「どうしたどうしたァァッ!やんのかコラァァッ!」オウゥ!?

雅枝「っ……のボケ……が!やっ…………たらぁ……」ヒュッ!

貴子「遅ェ!そんなもの当たるかァァッ!!」

雅枝「だったら…………直接…………当てたらぁ!!」ダッ!

貴子「なにぃ!?」

雅枝(〔ヤミの鎌(ヤンデレシックル)〕をぶち当てて終わらせたる!)ダダダ!

貴子「ダッシュがクソ早えァァッ!オバハンじゃねェのかよァァッ!?」

雅枝が動けないので存分にいい気になっていたが、貴子も限界が近いのだ。予想以上の踏み込み速度に焦り、反応が遅れてしまう。


雅枝「おおおおおおおおおおお!!!!」ダダダダ!

貴子「池田ァァァァァァァァッ!!!!」

叫ぶ。叫ぶ。

気合いでは負けないという強い意志を込めて。

貴子(ダメだッ!避けられねェ!負けた……)

雅枝(勝った!!)ニヤリ

貴子(くそっ!池田ァァッ……てめェだけは許さねェ)スッ

敗北を確信し、池田への復讐を誓い、1秒後にやってくるであろう衝撃に備え目を閉じる貴子。

しかし貴子が思う1秒後は3秒経ってもやってこなかった。

貴子「……………………ァァッ?」チラッ

雅枝「……………………」

雅枝は手を振りかぶったまま止まっていた。

思考も停止し、立ったまま気を失っていた。

雅枝「……………………」

あと一歩で貴子へ届くという瞬間に、北校舎で超ロリコンとなった臼沢塞がはやりを攻撃した。

その強力な幼女妄想によって、はやりに召喚された雅枝の精神は打ち破られた。

気を失った今も、雅枝の脳内には幼女が元気に駆け回る。

雅枝「………………」フラ...ドサッ..

貴子「………………」

雅枝「………………」

貴子「ふ、ふふ、ふふふ…………雑魚がァァッ!私の勝ちだオラァァッ!!!」バァーーン!

晴絵「…………何が何だかわからないけど……」

界「勝ったのは間違いない、か」

雅枝「う……ぐぐ……」ピク

貴子「復活が早ェ!ズルすんな!」

雅枝「な、に言うて……んねん」ムクリ

界「……まだ戦うつもりか?」

雅枝「戦う?うちらは今回協力する話やったやろが」

界「は?それはそうだが、君は……」

雅枝「………………あ…………そうか…………うちは瑞原はやりに操られて……」

恵「正気を取り戻したか」

雅枝「…………申し訳ない。迷惑かけてもうた」

晴絵「えっと……?」


恵「瑞原はやりを倒したのだろう。そのおかげで瑞原はやりの呪縛……ファンから抜け出したのだ」

雅枝「そういうことや」

界「師匠と同じか」

恵「私と?」

界「ええ。瑞原はやりに操られてました。師匠の場合は師匠を倒すことで解決しましたけど」

恵「………………」

界「師匠?」

恵「……いや、なんでもない」

雅枝「……さて。それじゃもうひと頑張りしよかな」ムクリ

恵「ん?」

雅枝「ついさっきまで敵として戦ってたし、今更遅い思うかもしれんけど、打倒458プロっちゅうことで協力するわ。まだ少しは力も残ってる」

恵「それは心強い」ニコリ

貴子「本当ですね」

雅枝「…………久保」

貴子「な、なんですか?」

雅枝「戦ってた時、色々言うてくれたよなぁ。お前そのうちしばくから」

貴子「そ、そんな!ありえねェ!!」

界「ははっ」

貴子(くそ……池田ァ、てめェ覚えてやがれ!)

恵「さて……あとは458兵を片付けるのみ」

界「ですね。愛宕さんも加わったことですし、今の俺たちの体力でもなんとかなるでしょう」フフッ

恵「もうひと踏ん張りだ。行くぞ」

界・晴絵・貴子「はいっ(ァァッ)!!」

雅枝「いてこましたらぁ!」

その後、幹部たちが敗れたことをきっかけに458兵が引き上げるまで、界たちは戦い続けたのだった―――


――そして時間は再び現在へ。

【???】

健夜「………………」スクッ

ハギヨシ「……モニターの方はもうよろしいのですか?」

健夜「ええ。幹部たちとの戦闘が終わりましたから」

咲「…………あ、あの小鍛治プロ……お姉ちゃんは……」

桃子「……!」

桃子(さっきは小鍛治プロのことを『お姉ちゃん』って呼んだっすけど今は元に戻ってる……やっぱり小鍛治プロが幻を見せてたんすね)フムッス

健夜「安心していいよ。無事だから」

咲「ぁ……」パァァア..

桃子(…………本当っすかね?安易に信じていいものやら……っす)

健夜「ま、今から直接会うんだから自分の目で確認すればいいかな」

桃子「!」

咲「え、え?あの……」

健夜「……リリーブライド、リリーフラワーガーデン、宮守女子、永水女子の連合軍が私たち458プロの幹部を全員倒したから」

咲「!!」

桃子「……っ!マジっすか!」

健夜「うん。458プロで残っている主力は……もはや私1人だけ」

桃子「…………」

健夜「……私は一足先に最後の戦場へ向かう。君たちはみんなと合流してから来るといいよ。案内はハギヨシさんにお願いしてあるから」

咲「お姉ちゃんに会える……ちょっとぶりのお姉ちゃんも可愛いんだろうなぁ」エヘヘ

桃子(先輩……)

健夜「それじゃあ、またあとで会いましょう」テクテク...ガチャ..バタン

咲「…………」

桃子「…………」

ハギヨシ「……それではご案内致します」

咲「あ、はい」

桃子「よかったすね。龍門渕さんに会えるっすよ」

ハギヨシ「いえ、私は458プロの人間でございますから」

桃子「え……?」

桃子(なんかおかしいっす……聞いた話では執事さんは瑞原プロのファンにされたせいで458プロに寝返ったらしいっすけど……)

桃子(幹部を全員倒したってことは、瑞原プロも倒したはずっす。それなのに執事さんに変化がないっす)

ハギヨシ「どうぞこちらへ」

桃子「…………それ、とらなくていいんすか?」

ハギヨシ「?」

桃子(執事さんの胸ポケットから見えてるのは『はやリー棒るぺん』とかいう瑞原プロのグッズっす。瑞原プロが負けたのなら、能力の影響から解放されてるはず……)

ハギヨシ「あ、こちらは私の宝物なのです。はやり様のグッズですから」ニコリ

桃子「そう……っすか」

桃子(……どういうことっすか?幹部全員負けたというのは小鍛治プロの嘘?それとも……)


ハギヨシ「どうぞこちらへ」

咲「あ、あの、東横さん……」

桃子「あ……今行くっす」テクテク

桃子(どうもしっくりこないっすけど、先輩たちと合流してから考えるっす)

そしてハギヨシに連れられ、歩くこと数分。

3人は北校舎の入り口に到着した。

咲「あ!」

照・久・純代・洋榎・怜・竜華・穏乃・憧・灼・透華・一・憩・やえ「」

界・晴絵・恵・貴子・雅枝「」

桃子「結構揃ってるっすね。先輩は…………あれ?いないっす」

咲「お姉ちゃん!!」タタタッ!

照「!!咲っ!」

咲「お姉ちゃーん!!」ダキッ!!

照「咲……大丈夫だった?」

咲「うん!お姉ちゃんは?」

照「私も大丈夫だった」

咲「よかった……私ね?なんでかわからないけど、お姉ちゃんが性奴隷にされちゃってるかもしれない、なんて思っちゃって。変だよね」エヘヘ

純代「!」ギクリ

照「………性奴隷……あれ?なんか聞きなれたフレーズ……う、頭が……」

純代「お、お姉さんは立派だった。心配はいらない」

咲「そうですよね?さすがお姉ちゃん。立派でかわいいなんて最強!」

照「っ……べ、別に最強なんて……そんな……///」

界「咲も元気そうでよかった」

咲「お父さん!なんか疲れてるみたいだけど……」

界「ああ。影多きふにゃちん闇の如し、って感じだ」

晴絵「儚いですね……」

咲「よくわからないけどそうなんだ?」

界「ああ」

洋榎「おかん、やっと正気に戻ったんかいな」

雅枝「そや」

洋榎「ええ年して『はやり~fuwa♪fuwa♪』とかめっちゃキツかってんで」

雅枝「…………う、うっさいわ。アホ」

桃子「あの……先輩は?」

久「多分もうそろそろ来るんじゃないかしら……」

ガチャ...ギィィィ...

久「……ね?」

桃子(先輩……!)

霞・小蒔・ゆみ・白望・塞・豊音・智紀・久美子・トシ「!!!!」

こうして、幹部たちとの激しい戦いを終えた面々は再会を果たしたのだった―――


【儚可憐女学院 校舎前】

照「……みんな無事でよかった」

久「ホントね」

ゆみ「ああ。特にさらわれていたモモと宮永さんが戻っ…」

桃子「先輩っ!」ダキッ

ゆみ「わっ!も、モモ……!?」

桃子「寂しかったっす~」スリスリスリスリ!

ゆみ「わかった!わかったから!こ、ここでは……やめろ……///」

塞「ね、ねぇ……」

全裸初美「嫌ですよー」

塞「……まだ何も言ってないんだけど」

全裸初美「…………じゃあ言ってください」

塞「私たちもスリスリ…」

全裸初美「しないですよー」

塞「うぅ……」

トシ「トシ肌カサカサコースはどうだい?」

塞「や、やめときます」

トシ「賢明だよ」

透華「……………」

一「………………」

ハギヨシ「…………」

透華「ハギヨシ。あなたは…」

ハギヨシ「私はGR@ND MASTERから案内役を仰せつかっております。皆様を最終決戦の場へとお連れするようにと」

透華「…………あくまでも458プロ側の人間だと言うのですわね?」

ハギヨシ「はい」

透華「……わかりましたわ」

一「透華……」

透華(瑞原プロが敗れた現在でも支配から逃れられていない?そんなことありえませんわ……)

透華(基本的に相手を操作するなどの能力をかけられた場合、使い手が百合妄想士の攻撃によって気を失うなどすればその段階で能力は無効になる)

透華(瑞原プロが気を失ったところを臼沢さんたちは見た。それでもなおハギヨシの状態が変わらないなんて……どうなっていますの?)

透華(ハンカチで地下の施設の場所を教えてくれたこともありましたが……)

ハギヨシ「……ではご案内致します」

憩「あ、ちょっと待ってぇな」

ハギヨシ「はい」

憩「結構疲れてる子とかおるし、回復してから出発してええ?」

ハギヨシ「かまいません」

憩「ありがとう」ニコニコ

憧「………………」


穏乃「憧?どしたの?」

憧「……うん、ちょっとね。回復を許すなんてずいぶん余裕だなーって」

穏乃「あー、確かに。気前いいよね」

憧「でしょ?残る敵は小鍛治プロだけ。対するうちらは主力がこれだけいるっていうのにさ」

やえ「ふっ、王者とはそういうものだ」

憧「それだけ小鍛治プロが強いってことなのかな……それとも……」ウーム

やえ「いかに不利な状況であれ、真っ向から勝負を受けるのが王者の宿命だからな。わかるだろう?」

穏乃「ま、今考えてもしょうがないって」

憧「うーん」

やえ「……さ、鷺森。私の姿、ちゃんと見えてるわよね?」

灼「うん。大丈夫。ただ聞き流してるだけだと思うから」

やえ「そ、そう……仕方ないな。王者は常にやっかみの対象。赤コーナーに住む実った果実。挑戦者は青二才なのが通例、許そう」フッ

灼「はぁ」

竜華「怜~♪おいでー」

怜「ん」コロン

竜華「えへへ」(膝枕れ)

怜「……ふー……」(膝枕る)

豊音「わー……いいなー。私も膝にコローンってしてほしいなー」

貴子「ほう。膝が好きなのかてめェコラ」

豊音「ひぅ!?あ、えと……」

貴子「好きなら膝で腹蹴ってやる。歯ぁ食いしばれクソがァァッ!!」

豊音「や、やだよー!この人怖いよー!ちょー無法者だよー!」

貴子「てめェ!名誉棄損ァァッ!!!」

純代「こ、コーチ、落ち着いてください」

貴子「おう」フゥ

純代(あれ?一言で冷静に……?)

貴子「と見せかけてオラァッ!!」

豊音「ひいぃっ!!」

貴子「怒りはいつでも蘇る!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァァッ!!!」

豊音「わああああ!こわいよー!」

洋榎「なんや騒がしいなぁ。これから最後の戦いなんやから少し気持ち落ち着かさんとあかんやろうに」

エイスリン「ホントホント!」

洋榎「お?お前もようわかってんな。って……ん?お前、板どうしてん?」

エイスリン「イタ?」

洋榎「ほれ、板にピャーって描くやん。絵」


エイスリン「ア……」

洋榎「?」

エイスリン「……ボードハ……」

親エイ隊たち「あ!エイ様!!」タタタタ

エイスリン「?」

親エイ隊たち「お待たせしました!エイ様のイラストボード、取り返してきました!どうぞ!!」

エイスリン「ホント!?アリガトー!!」パァァァ...

親エイ隊たち「あぁ……エイ様……可愛い……///」

洋榎「よかったやんか。これで絵描けるやん」

エイスリン「ウン!」

桃子「…………先輩」

ゆみ「なんだ?みんなの前だ。その……もう抱きしめるとかはやめよう……嫌ではないが……//」

桃子「あ、いえ、抱きしめたいのは本当っすけど、そうじゃなくて……小鍛治プロについてなんすけど……」

ゆみ「そ、そうか……なんだ?」

桃子「私、小鍛治プロが能力を使ってるのを見たっす」

ゆみ「!その情報はありがたいな。教えてくれ」

桃子「……荒川さんみたいに癒しの力を持ってるっす」

ゆみ「癒し……戦闘向きではない能力なのか」

桃子「はい。ただ他にも、リンシャンさんに幻を見せたりしてたっす」

ゆみ「幻……それはまるで……」

桃子「……三尋木プロっぽいっすよね?」

ゆみ「ああ。だがそうなると少し妙だな。癒しと幻惑では能力のカテゴリが離れているというか……」

桃子「それに……前に対峙した久保さんと赤土さんが『小鍛治プロに向かって歩こうと思ったら逆に後ろに下がってしまった』とか言ってたっす」

ゆみ「……幻惑?いや、体を操作されたのか?となると愛宕雅枝さんを裏切らせた瑞原プロの能力に似ているな」

桃子「はいっす。なのでもしかしたら小鍛治プロは……」

ゆみ「幹部全員の能力を操れる可能性があるかもしれない、か?」

桃子「……癒しを使う幹部はいないみたいっすけど……2つは該当するっすから……」

ゆみ「ありえない話ではないな。あれだけの強さを誇る幹部たちを従わせているくらいだ」

桃子「…………」コクリ

ゆみ「…………とりあえずこの情報はみんなで共有しよう」

桃子「そうっすね」

ゆみ(……GR@ND MASTER、小鍛治健夜……一体どれほどの強さなのだろうか……)

全員が集合してから30分後、憩による回復が終わり、いよいよ最終決戦へ向けて一同は出発した。

校庭を抜け、木々に囲まれた道を進んでいく。

霞「……意外と距離あるわねぇ」フゥ

トシ「これ以上歩かせるとトシ殺人事件勃発だよ」ゼェゼェ

洋榎「ほんますか?少し休みます?」

トシ「急に休んでもトシ殺人事件さ」

洋榎「なんでやねん」


白望「…………ん?この匂い……花?」

塞「あ、本当だ。花のいい匂いがする………はつみたんみたい」

全裸初美「………………」ビクッ

塞「……………あ、あのさ。今のは別に悪いこと言ったわけじゃないんだから脅えないでよ」

全裸初美「そうですけど……」

塞「うぅ……愛宕さんたちの会話聞いてたらつい言いたくなっただけなのに……」

ハギヨシ「…………皆様。まもなく到着いたします」

照「……結構歩いた……疲れた」

咲「ね。あ、お姉ちゃん鍛えてないから足腰へにゃへにゃだし辛いよね?大丈夫?」

照「…………咲も鍛えてないくせに。咲だってへにゃへにゃ」

咲「うん!お揃いだね!えへへ……///」

照「!そ、そう、だね。いっしょ///」

久「あ、見えてきたわ」

智紀「…………あれは……」

透華「大きな門、ですわね」

一「その先はお花がいっぱいだ」

テクテク..テクテク..

純代(…………門の前に着いたけど、閉まったままだ)

小蒔(鍵を開けるのを忘れちゃったのでしょうか?)

ハギヨシ「……GR@ND MASTERはこの中にいらっしゃいます」

貴子「だったら早く入れろァァァァッ!!!!」

雅枝「うっさいわ!静かにせえ!」

貴子「す、すいませんァァァァァァァァ…………」

貴子(くそっ!静かに怒鳴るのムズイじゃねェか!)

ハギヨシ「……申し訳ありませんが、1つ条件があります」

ゆみ「条件……」

ハギヨシ「はい。あちらをご覧ください」

久美子「?あ、門に看板が……なになに……『男子禁制』?」

界「……なるほどな」

恵「ふむ」

ハギヨシ「この先に入れるのは女性のみ、ということになっております。ですので男性は私を含め、こちらで待機していただくことになります」

透華「この戦いは458プロとリリーブライド、リリーフラワーガーデンとの戦いのはずですわよね?リリーブライドの会長抜きに決着を付けるのはおかしいですわ」

ハギヨシ「……そういう声もあるだろうということで、交換条件があるそうです」

一「交換条件?」

ハギヨシ「…………」サッ(手を上げる)

ザザザザッ!

照「!!」

ゆみ「これは……」

458兵たち「………………」


塞「そんな……500人……いや、下手するともっといる……まだこんなに残ってた!?」

晴絵「……いや、違う。全員じゃないかもしれないけど、見たことある顔がいくつかある……」

桃子「!小鍛治プロが回復させた……」

白望「……この人数を?だとしたら……」

白望(小鍛治プロの力がどれほどすごいか嫌でもわかる……)

ハギヨシ「……男子禁制のルールに従っていただけるのなら、彼女たちはこの場に残る男性のお2人のみと戦います。他の皆さんには手出し致しません」

界「…………」

恵「…………」

ハギヨシ「強引に押し通ろうとするのならば、彼女たちを全員倒してもらいます」

晴絵「…………」

やえ「フッ!上等だ!王者なら全てを乗り越え…」

恵「我々が残ろう」

界「そうですね」

やえ「ニワッ!?」

照「お父さん……」

咲「だ、大丈夫?」

界「ああ、安心しろ。師匠と2人でなんとかしてみせる。俺はまだカピカピになっちゃいない」

晴絵「師匠……さすがです」


恵「ふっ、言うじゃないか少年」

久美子「…………会長」

恵「久美子君?」

久美子「私…………会長が心配です。こんなに大勢を相手にしたら………………ふっ!」シュッ!(アッパーカットの様に恵のスカートをめくりにいく)

恵「ぬんっ!」ガシッ!(久美子の手を素早く掴む)

久美子「…………さすがです」

恵「当然だ。昔から言っているだろう?見せパンは履かん。見せないからだ」

久美子「はい……っ」

エイスリン「ハラショー」

白望「……エイスリンはニュージーランドでしょ」

エイスリン「エ?ナンダッテ?」

塞「気に入ってるし……」

ハギヨシ「…………それでは皆さんどうぞこちらに」カチャリ..ギィィィィ...

照「…………」クルッ

界「……照、咲、気を付けろよ」

照「……うん、お父さんも」

咲「転んでケガとか気を付けてね?」

界「ああ」

照たちは門の中へと足を踏み入れる。

界、恵、ハギヨシ以外の全員が門を通過すると、ハギヨシが門を閉めた。

ガチャリという音と共に花の香りがフワリと漂う。

ハギヨシ「私に案内できるのはここまでとなります。皆さまはこのまま道なりにお進みください。GR@ND MASTERがお待ちです」

照(小鍛治プロ……)

久(いよいよ決着の時ね……)


【庭園 入口前】

界「………………」

恵「………………」

458兵たち「………………」

界「……師匠」

恵「うむ」

界「ここが俺たちの最後の見せ場になりそうですね」

恵「そうだな。彼女たちならきっと勝利を得てくれるだろう。その時に我々が情けない姿をさらすわけにはいかない」

界「ええ……なんか燃えてきましたよ」

恵「ああ、私もだよ」

458兵たち「………………」

界「…………行きますか」ニヤリ

恵「うむ!」

458兵たち「………………」

大軍対2人。

数字の上では敗北必至。

しかし百合は数字じゃない。そしてふたなりも数字じゃない。

それを証明するかのように、2人は真正面から向かっていく。

界「うおおおおお!!やってやるぜぇええ!!!」

戦意を勃起させ、やる気をテカらせる界。

恵「ああああああ!心がぴょんぴょんするんじゃぁぁあああああ!!!」

最後まで戦い抜くと決意する恵。

458兵たち「!!」

2人の勢いに気圧されながらも458兵たちは迎え撃つ。

激しく、熱い戦いの火ぶたが切って落とされた――――


【庭園】

照「…………」テクテク

照(すごい数の花……百合が一番多いけど、薔薇とか他の花もいっぱいだ)

久「……百合だけ植えてるわけじゃないのね」

ゆみ「おそらく『女子高で男子がいないから女の子同士付き合う』といった消去法的な話ではなく『男子もいる状態で女の子同士で付き合うことを選択した』という百合カップルを表現したのだろう」

純代(……わかる。だから他の花もいっぱい植えてあるというわけか)

ゆみ(ただ……その場合は庭園が男子禁制だということが矛盾するが……彼女が持つ百合の定義と聖域は別ということなのだろうか?)

アコノ「入口の辺りに比べてどんどん百合が占める割合が増えてるみたい。それがピークを迎える場所に小鍛治プロはいるわけね」

灼「そうだと思……あれ?2人ともいつの間に合体したの?」

アコノ「戦闘が始まったら余裕ないだろうからね。さっき……その……キスしたの」

灼「なるほど」

アコノ「そしたらね?しずが『強くなるためだけに憧とキスするなんて……やだよ。好きだって気持ちを確かめ合うためにしたいよ……』だって!」

灼「そ、そう」

アコノ「可愛すぎるでしょ!しかもそれに対する憧の返しが『い、いいの?あたし……24時間ずっとしずのこと考えてる……ずっとずっとしずと一緒にいたいし、しずを抱きしめたいし……しずと……その…………い、言えないこと、とか……し、したいし……///』って!!」

灼(聞いてるこっちが恥ずかし…//)

怜「お熱いなぁ」

竜華「うちと怜みたいやなー♪」

洋榎「……合体した状態の2人の精神状態はどうなってんねやろな?園城寺はどう思う?」

怜「え?なんだって?」

洋榎「なんでやねん。先延ばしにする質問ちゃうやろ」

竜華「とぼける怜も可愛いなぁ♪」ナデナデ


花に囲まれた空間を進んでいく。すでに門が小さく見えるくらいの距離だ。

風が吹くたびに花びらが舞い、存在を主張するかのように花の香りが鼻孔へ運ばれる。

これから最後の戦いだということを忘れてしまいそうなほど、安らいだ気持ちにさせられる。

しかしそれもここまで。

視界の先に見えたのは、石畳を敷かれた広いエリアと小鍛治健夜の姿。

照「………………」

テクテク..テクテク..

歩く。歩く。

健夜の元へと、ゆっくりと歩いていく。

照・咲・久・智紀・エイスリン・塞・白望・純代・桃子・ゆみ・貴子・豊音「………………」

リリーブライド、百合四天王、その他協力者。

怜・竜華・洋榎・煌・憩・小蒔・霞・全裸初美・アコノ・灼・晴絵・雅枝「………………」

リリーフラワーガーデン、霧島神境関係者。

透華・一・久美子・やえ「……………………」

スポンサー、従者、記者、ニワニー。

トシ・老婆たち・親エイ隊たち「……………………」

パイングミ、ブラックベリィ、エーテルな、いざという時の回復老婆と、

まじえんじぇーなエイスリンの熱狂的ファン。

458兵や幹部たちとの戦いを経て大きく成長した彼女たちは、迷いのない足取りで進む。そして……

健夜「…………ようこそ。最終決戦の場へ」クス

笑顔で照たちを出迎えるGR@ND MASTER小鍛治健夜の元へとたどり着いた。


照「………………」

健夜「……………」フフ

458プロの最後の砦である自分自身が出張ることになったというのに表情はただ穏やかで、

気負いも追い詰められているという焦燥感も一切感じられない。

照(この人数差で余裕なんて……何か作戦があるのかな?)ムム

咲(ムムってなってるお姉ちゃんもかわいい!)

久「………………」

久(厳しい戦いを勝ち抜いてきたんだもの。最後も勝たせてもらうわよ)

健夜「……さて、早速だけど始めようか?」

照「!」

健夜「最後の戦いを」ニコッ

ブワァッ!

照「!!」

笑顔で告げた開戦の言葉。

言い終わると同時に周囲に威圧感がばら撒かれる。

照(すごい迫力…)

智紀(……幹部の人たち以上…………さすが……)

洋榎「な、なんや。ラストバトルやのに会話もなしにいきなり始まるんか?」

健夜「……ふふ。ここに来て会話なんて必要かな?」

洋榎「ぬ」

健夜「あなたたちは私を倒しに来た。私はあなたたちを倒すつもり。それだったらやることは1つ……」

洋榎「……せやったな」ニヤリ

健夜「…………では……始めましょう」スッ

照「!」

照(いよいよ最後……絶対に勝つ!)ギラリ

458プロのGR@ND MASTER、小鍛治健夜。

最強の相手に照たちは戦いを挑む―――


健夜「………いきます」クス

健夜《…………グラウンド、体育館、部室、教室、生徒会室、花壇前!》

健夜が学校内の場所を言う。

すると健夜の体から無数の球体が飛び出し、照たちの元へと迫る。サイズは小さいが数が多い。数百を超えている。

アコノ「!!」

その球体に込められているのは、過去に健夜がしてきた妄想だ。

グラウンドや体育館を題材に練ってきた妄想たちが集まり、固まり、そして動き出したもの。

ゆみ「うっ……ぐ……っ」

食らった相手が過去にしてきた妄想をも喚起させる効果もあり、さらにダメージを増幅させる。

そんな無数の小さい球を放つこの能力。

名付けるなら『百合マシンガン』、『百合つぶて』、『百合挽き肉』、『百合緩衝材のザーッてやつ』と言ったところだろうか。

しかし健夜が付けた名は……

健夜《〔 ゆ り 座 流 星 群 ( ゆ り ざ り ゅ う せ い ぐ ん )〕》

星の数ほど練った妄想を降らす。そのような意味を込めてつけられた。

煌「な、なんてすばらな妄想っ!そして……すばらに苦しい……!」グバラッ!

小蒔「っ……て、照さん……そんな……いけません……///」

高速かつ高威力の攻撃に、照たちは「うぐぅ」となる。

アコノ(これだけ広範囲に回線ばら撒いてこの威力とか……GR@ND MASTERは伊達じゃないってわけね)

健夜《ボウリング場、河川敷、橋の上、駄菓子屋、コンビニ…》パララララ..

灼「!!きつ…」グラッ

この能力、球体に込められている場所に思い入れがあればあるほど威力は増す。

特にボウリング場に住む灼は大ダメージだ。

健夜《まだまだ》パラララ...

白望(この手数と威力はまずい……押し込まれる)ググ..

健夜「」パラララ

純代《はあああああ!!》

健夜「!」

純代《〔 浣 腸 を し て あ げ て た ら こ っ ち が 脱 糞 ( シ ン ク ロ ニ シ テ ィ )〕!!》ゴオォッ!

健夜「くっ……そっち系は範囲外……」

純代(私は友達が少ない。放課後もほとんど寄り道せずに妄想し続けてきた。妄想内ではお世話になった場所だけど、現実で経験してない分ダメージは軽い)

健夜「っ……」

純代(私が一番好きな妄想は『快感に溺れる子』。スカじゃない…………でもこの場では勝利が第一!)

健夜《……女子トイレ、洋式、和式、裏山、原っぱ……》パラララ...

純代「ぐああっ!?」

純代(野外でのスカポイントを押さえてきた!?)

霞《〔 爆 巨 双 乳 ( ば く き ょ そ う に ゅ う )〕》ポヨォォォ..

健夜《!鳥居、境内、手水舎、物置…》パララ..

バシュバシュ!

霞「ああっ!?胸の感触が消し飛ばされて……うっ……く……」


小蒔「霞ちゃん!う……うぅ……」

次から次へと繰り出される健夜の妄想。

その手数は凄まじく多く、相手に合わせる柔軟性も備えている。

ただ場所を言うだけという能力はシンプルながら強力だ。

健夜《体育館、陸上競技場、教室、部室…》

久「ぐ……っ……」

久(また教室……そうか、同じ場所でも妄想内容が変われば構わないわけね。だとしたらほぼ半永久的に攻撃できるじゃない。止めるためにはこっちから仕掛けて防御させないと)

ゆみ(ここは……)サッ!(右手を挙げる)

アコノ(!この合図は……)チラ

塞(私とエイスリンと……他の数人は下がって様子見。他のメンバーで一斉攻撃だったわよね)コクリ

アコノ(よし……!)スッ

健夜「!」

アコノ《幼馴染同士、秘密の場所と秘密の行為!!》

純代《〔 す っ か り 暖 か く な っ て 気 持 ち も 晴 れ や か だ か ら 脱 糞( ス プ リ ン グ ハ ズ だ っ ぷ ん)〕》

咲《〔 リ ン シ ャ ン カ イ ホ ウ ノ ス ス メ 〕》ユリン!

咲(…で妄想力を高めてから……お姉ちゃん尽くし!)

咲《お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!!》ゴオオオ!

健夜「!!」

晴絵「まだまだっ!」

晴絵《〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!》チポジョバァァァァァァ!!!!

久《〔 次 元 を 超 え た 出 会 い ( ク ロ ス オ ー バ ー )〕!!》シュビィン!

久《そして……『AKIBA’S TRIP』の師匠×『ゆりキャン』の有栖川 茜!テクとテクの応酬!》

貴子《〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )〕》ァァッ!

洋榎《〔 愛 宕 王 国 ( あ た ご キ ン グ ダ ム )〕》ズォォォォ..

怜・竜華《〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )〕》ギュアアアアア!!

幼馴染、スカ、百合強化後の姉萌え、ふたなり膀胱砲、作品別の百合妄想、脳内キャラへのビンタ、嫁による嫁のための嫁、百合バカップルのイチャイチャ。

単独でもかなり強力な攻撃が一斉に健夜を襲う。

健夜「っ……これは……」

アコノ(効いた!チャンス!)

小蒔「畳みかけます!〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ )〕!!」シュゴオオオオオオオオ!!!

健夜「!!」

智紀《〔 幸 福 と 絶 望 の あ い だ ( ハ ッ ピ ー メ ガ ネ デ ィ ス ペ ア ー )〕!》

たたらを踏んだ健夜に霊力たっぷりの小蒔の一撃が襲い掛かり、さらに智紀が続く。

メガネを外して幸福見せて、再び装着しそして絶望。

落差が大きい分だけ心が痛む。

健夜《く……視聴覚室、美術室!》

智紀(痛っ……やはり一筋縄ではいかない……けど)

久(458プロとの戦いを経て、私たちは成長してる。だから!)

アコノ(このまま押し切るッ!!)


健夜《飼育小屋、サーカス団の楽屋…》

貴子「ぬおっ!?さすがだァァッ……でも負けねェ!」

健夜「こ、これは……」

健夜の〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕は全員に当たっている。ダメージも与えている。

しかし、誰1人として倒れない。傷を負いつつも、前へ踏み込んでくる。

ゆみ「………………」

ゆみ(小鍛治プロの意識がこちらに向いている……今がチャンスだ。モモ、鷺森さん、頼んだぞ)

桃子(……任せてくださいっす)ユラー..

灼「…………」ユラー

桃子の能力によってステルス状態になった2人。

智紀たちの攻撃を受けている健夜の背後からゆっくりと迫る。

健夜《……碁会所、英会話教室…》ヒュヒュン!

智紀「っ……まだまだ……」

久《もう1つ!〔 次 元 を 超 え た 出 会 い ( ク ロ ス オ ー バ ー )〕!》シュビィン!

久《……転職アドバイザーの縁ゆかりは、仕事帰りに音砂みはり(マンガ家さんとアシスタントさんと)と出会い、一目惚れをする。そしてゆかりはみはりを追いかけ、転職した。テキパキと仕事をこなすゆかりに、みはりもやがて惹かれていく……》

健夜「うぐっ!?」

灼(すでに〔カウントダウン〕は発動させてある。小鍛治プロは気付いてない。あとはタイミングだけ……)ユラー

指をお尻にホールインワン。

布ごといってしまえばそれで解決だ。

健夜「この……っ」

灼(………よし、もらった…)シュッ!

桃子(完璧なタイミング!避けようがないっす!)

健夜「――――」

ザザ..ザザ..

灼「!!」ピタッ!

桃子(?鷺森さんが止まった……一体何が……)

灼「…………」クルッ

桃子「え……」

灼「はあっ!」シュバ!

桃子「な……っ?」

桃子(なんで私を攻撃するんすか!?意味がわか…)

ズム..ン

桃子「!!!!!」

♪まるかいてちょん。まるかいてちょん。りょうまるのあいだにばってんひとつ。

ばってんのまんなかぐりぐりぬって、あっというまに~~~お尻の穴に指を入れられちゃった女の子~♪

桃子「…………………………」

この歌を説明すると、要するに灼の指が桃子のお尻に入ったということだ。

ちなみに丸の中の点はほくろだろう。


灼「………………」グリグリ..

桃子「か……ぺ………ぺ……ぺ………たわば!……っす」バタッ!

ゆみ「モモ!!」

煌「鷺森さん!?どうして東横さんを!それもまたすばらかもしれませんけど…………いえ、やっぱりすばらくないです!」スバラッ!

アコノ「!これって……」

ゆみ「っ……!小鍛治プロも相手を操る能力を持っているという話は聞いていたのに……くそっ!モモ……」

洋榎「ちっ!ほなら今度は鷺森も敵になったっちゅうわけか!」

灼「………………あれ?」ハッ

雅枝「一撃必殺は厄介や!あのボウリング娘から片付けるで!」タタッ!

灼「えっ?あの……ちょっと待って!私は敵になってな…」

雅枝「何言うてんねん。ステルスッスのやつを倒したやないか」

灼「え………………あ、本当だ……これ、私が……?」

貴子「その年でボケ始めたのかコラァァッ!!」

トシ「よろしくね。先輩」

灼「違います!ただ、一瞬意識が飛んで……気が付いたら……」

貴子「疑わしきは殴る!弱者ならなおさらだァァッ!覚悟しろ!くたばれ!」

晴絵「待って!灼は嘘を言う子じゃない!」

怜「ハルちゃん…」

晴絵「目を見ればわかる。今の灼はいつもの灼……操られてない」

貴子「知らねェ!今はただ殴りてェ!!」

晴絵「そ、そんな……」

貴子「……んだよその目は!くそっ!だったら敵じゃねェ証拠見せろ!もう一度攻撃しろァァッ!」

灼「は、はい」タタッ

健夜「………………」

灼(今度こそ!)シュッ

健夜「――――」

ザザ..ザザ..

灼「はっ!」ガシッ(健夜に抱き着く)

晴絵「……え?あ、灼……?」

貴子「何してんだこの野郎!おかっぱのベアハッグなんて効かねェだろうが!」

灼「ベアハッグ?私はお尻に指を挿れただけですけど……」

晴絵「…………は?」

貴子「……………………てめェ何言ってんだ?池田殴るぞ?」

灼「??」

健夜「………………」

アコノ「これは……」

ゆみ「…………っ!」タタッ!

ゆみ《授業中に抜け出して裏庭で後輩とイチャイチャ!》

灼の言動にみんなが戸惑う中、ゆみが健夜へ攻撃をする。


健夜「!」

灼「あ……」ハッ

ゆみ「………………」

健夜「………………」

灼「私……今、また変なこと……」

ゆみ《すぐにこっちへ戻ってくるんだ。小鍛治プロから離れてくれ》

灼「は、はい」タタタッ

貴子「チッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」タァーーーン!

灼「っ!」ビクン

銃声のような貴子の舌打ちに体を縮こまらせながら下がる灼。

しかし貴子が苛立ち気持ちもわかる。

灼の謎の行動によって桃子は『たわば』になり、健夜を攻撃するどころか抱きしめる始末。

寝返ったのではないかと思われても仕方がない。

健夜「………………」

灼「一体何がどうなってるの……?」

アコノ「………………」

ゆみ《アコノさん》

アコノ《……ええ。少し妙です。どういうことかわかりませんが、灼さんは小鍛治プロのお尻に指を挿れずに抱きしめた》

ゆみ《……瑞原プロと同じ能力かとも思ったが……どうも違和感がある》

アコノ《わたしもです。瑞原プロの場合はファンクラブに加入することが条件でした。小鍛治プロは無条件で操れるのでしょうか?それとも……》

健夜「黙ったままでどうしたの?何か企んでるのかな?ま、いいけど」クス

アコノ「…………」

健夜《それじゃ勝負を続けるよ?掲示板シリーズ……テスト結果発表、合格発表、校内新聞!》シュバッ!!

やえ「ニワッ!?」ズムン!

煌「小走さん!」

やえ(なんて重さだ!小3の頃の女子の平均体重並の負荷が体にかかったような……場所を関連付けして威力を高めたのか!?)クッ

煌《……加治木さん。やっぱり私が〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕で皆さんの分まで受け止めるべきでは……?》

ゆみ《いや、君の能力はかなり重宝する。相手の動向がわからないうちは温存しておきたい。もう少し耐えてくれ》

煌《…………わかりました。すばらに耐えます》

照《そろそろ私の〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕で視た方がいいんじゃないかな?どう動くかわからないから様子見してたけど、これじゃいつまでも手を出せない》

アコノ《…………そうですね。今までの戦いを見ただけでは能力が断定できません。宮永さんに頼るしかなさそうです……準備はオーケーですか?》

照《うん》

アコノ《では……作戦通りお願いします》

照《了解》

照(エイスリンさんが仕掛けて小鍛治プロを操るか、失敗したとしても小鍛治プロの意識が前方に向いたら背後から〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕で狙う……)

アコノ《……ではエイスリンさん、お願いします》

エイスリン《イエス!》


健夜《地下鉄シリーズ。ベンチ、白線の内側…》

エイスリン「〔 セ ン ジ ュ ナ モ リ ( 千 手 な も り )〕!!」ユッリユッラッラッラッラ..

健夜「!」

エイスリン「♪」ヒュヒュヒュン!

ゆみ(なんというハンドスピード!)

〔センジュナモリ(千手なもり)〕状態のエイスリンは神懸っている。4000枚のサインもあっという間に描いてしまうだろう。

自分が描かれてしまうと気付いてから動いてももう遅い。先手をとられれば確実に描き切る。連載は止まらない。

エイスリン「デキタ♪」

アコノ(よっし!)

照(これで確実に当てられる)

健夜「………………」

アコノ「………………??」

照「………え?」

アコノ(……どういうこと?エイスリンさんに描かれたらその通りに動かされるはずのに……)チラ

照(描き終わったんじゃ……?)

晴絵「うっ……これは……」ピキッ!

灼「あ……」ピキッ!

アコノ「えっ?ハルエさんと……灼さん!?」

照「これは……」

灼「あ……体が勝手に……」フラフラ..

エイスリン「イエス!ダイセイコウ!」

白望「……エイスリン?何を……」

晴絵「灼……」

灼「は、ハルちゃん……あっ……」

ンチュー...

エイスリン「サラニハゲシク!」キュキュキュ!

晴絵「灼……ご、ごめん……」サワ

灼「ぁっ……は、るちゃ……そこは……だめ……」

塞「ちょっとエイスリン、鷺森さんたちに攻撃してどうすんのよ!」

エイスリン「エッ?サエ、ヘン。カイタノ、コカジプロトアカドサンダヨ?」

塞「え?」

エイスリン「?」

白望(冗談を言ってる感じじゃない。となると……勘違い?)

KKE。かわいいかんちがいエイスリン。

白望(いや……これはきっと……)

KPA。こかじぷろにあやつられた。

SSO。しろはそうおもった。

照(エイスリンさんの攻撃はかわされた……今動いても多分〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕は避けられちゃう……どうしよう)


智紀《…………私が引き付けます。小鍛治プロがこっちに集中したらお願いします》スッ

照《!わかった》

智紀「………………」ザッ..

健夜「……今度はあなた?」

智紀「はい……」

智紀(人は長く生きている分だけ絶望を感じる。私との相性はいいはず)ギラリ

メガネを光らせ、健夜へ絶望を放つ智紀。しかし、

照「ぁああっ……!?」ガハッ..

苦しんだのは健夜ではなく照だった。

智紀「えっ……!」

健夜「…………」クス

照「ぐ……ううう……」

咲「えっ……お、お姉ちゃんどうしたの!?」

照「う……うぅ……」ブルブル..

咲「まさか……この忙しい時に病人アピールして優しくしてもらおうとか考え出したの!?甘えんぼなお姉ちゃんかわいい!」

照「ち、がう……沢村さんの絶望が私に…………うぅ……1話の頃のアンジュとシルヴィアがあんなことに……思い出すだけで」ガクガク

純代「沢村さん!?」

智紀「え?あ…………ど、どうして宮永さんが?私は小鍛治プロを攻撃したはずなのに……」

健夜「」クス

怜「……またか」

竜華「ずるいなぁ」

アコノ(なんて厄介なの?攻撃することが自滅に繋がるなんて……)

ゆみ「これほどの差があるのか?小鍛治プロは戦いが始まってからまだ一歩もあの場所を動いていない……」

貴子「マジかァァッ!さすが実家暮らしァァッ!!」

健夜「…………あのね?ものぐさだからここを動かないわけじゃないし、だらけたいから実家に住んでるわけじゃないからね」ウフフ

貴子「あ、は、はい……」

貴子(なんだか知らねェけど、今の感じはやたら怖ェ!この恐怖を池田に味わわせてェ!)

アコノ(……加治木さんの言う通り、小鍛治プロと私たちの力の差は大きいかもしれないけど諦めるわけにはいかない。とにかく〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を小鍛治プロに使ってもらって、それから作戦を立てないと……)

全裸初美《私に任せてくださいですよー!》

アコノ「!そうか、その手があった!」

全裸初美《〔 初 美 脱 衣 祭 ( は つ み だ つ い ま つ り )〕》ラーラララー

健夜「!」

〔初美脱衣祭(はつみだついまつり)〕開催。

初美の周りに複数人の初美が現れる。

半裸、襦袢のみ、ニーソのみ。

今回はさらにスク水の上半身はだけバージョンも収録。

周りの目を釘付けにするそのパフォーマンスは素晴らしい。

アコノ(薄墨さんの能力自体が相手の視線を奪うもの……これなら確実に……)チラ


健夜「…………」ハァ..

アコノ「!!」

アコノ(全然見てない……!そんな……薄墨さんでもダメなの……)

全裸初美「うぅ……どうしてですかー……私、魅力ないですかー……」シューン

塞《……はつみたん》

全裸初美《なんですかー……》

塞《落ち込まないで。自信持って。私はすっごく興奮してるから》

全裸初美《……私は小鍛治プロを狙ったですよー。それなのに能力的にも無視されて……》

塞《…………はつみたん》

全裸初美《……はい》

塞《……はつみたんが恥じらいを覚えれば無敵だよ?》

全裸初美《恥じらい……》

塞《そう。こんな風にやってみて…………まず……―――》

全裸初美《―――……わかったですよー。やってみます》

健夜《スポーツ用品店!バッティングセンター!》パラララ

洋榎「ぬぐぉぉおお!?」


全裸初美「ってもう戦ってましたー!?こっ、小鍛治プロ!こっちを見るですよー!」

健夜「…………」チラ

全裸初美(ここで恥じらい!)ギラリ

全裸初美「あっ…………い、言ったそばからそんな目で見るなんて…………ぃやぁん……///」モジモジ

塞「ふぇへっ」ニマー

健夜「………………」

全裸初美「あ、あまり……じろじろ見ないでほしいですよー……か、体が……熱くて……溶けちゃいましゅう……///」

塞「満点!さすがはつみたん!」

全裸初美「うにゃぁぁ……はにゃぁあ~~ん……みゅうぅぅうん……///」クネクネ

照「…………うっ……なぜか『みゅう』という言葉にデジャヴが……」

純代「きっ、気のせいですよ!」

咲「お姉ちゃんは気のせいかわいい!」

全裸初美「だ、だめっ!裸の私を見ないで……っ……そ、その…………どうしてもっていうなら…………私の……むねだけ……見て……くだちゃい///」

塞「はぁっぁぁぁあ……///」

白望(……あからさまにあざとい気が……)

健夜「む……」ピクン

白望(って、効いてる?)

健夜「これは……視線が外せない……」

なんと健夜が夢中になった。

貴子「あんなゲロあざといっつーか棒読みっぽいのになんでだコラァァッ!!」

エイスリン「ボウヨミキライ!セイユウツカエ!」

親エイ隊たち「エイ様の言う通りです!」キャー!

晴絵「多分その棒読み具合が素人っぽくていいんじゃないかな?上手すぎると慣れてると思っちゃうだろうし」

アコノ「理由はこの際置いといて……宮永さん!」

照「うん、ダメージは抜けた…………よし」

照《〔 照 魔 鏡 ・ 極 ( し ょ う ま き ょ う ・ き わ み )〕!!》

健夜「!」

〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕が発動。健夜の背後に鏡が現れた。

全裸初美を視線で追っていた健夜は避けることなく鏡に映される。

照(やった……成功!)

そして〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕は健夜の本質を照らす―――


~~~~~~~~~~~~~~~

【長野 龍門渕高校付近の公園】

健夜「………………」

ハギヨシ「……小鍛治様。私はあくまで執事です。お嬢様にお話がおありなのでしたら直接…」

健夜「すみません。それはあくまで口実で、本当に用があるのはハギヨシさんなんです」

ハギヨシ「私、ですか?小鍛治様と私にはお嬢様以外に接点が思い浮かびませんが……」

健夜「そうですよね。大体龍門渕さんと私の接点だって『麻雀をやる』ということぐらいしかないですしね」

ハギヨシ「はい」

健夜「でも実はもう1つ、共通点があるんです」

ハギヨシ「………それは一体なんでしょうか?」

健夜「……私も……百合妄想士なんです」クスッ

ハギヨシ「!!…………そうだったのですか。初耳でした」

健夜「知られないよう活動してきましたからね」

ハギヨシ「では今回のお話というのは…」

健夜「リリーブライドのスポンサーである龍門渕さんの執事……百合妄想士ハギヨシさんにお話があって、ここに来てもらったんです」

ハギヨシ「なるほど……そのお話の内容とはどのようなものでしょうか?」

健夜「………………私、思うんです」

ハギヨシ「?はい………」

健夜「ようやく最近になって百合作品が増えてきた、と」

ハギヨシ「ええ、確かに」

健夜「それはリリーブライドやリリーフラワーガーデンの影響が大きいだろうし、私が儚可憐女学院で頑張ったことも少しは影響したと思います」

ハギヨシ「儚可憐女学院……まさか小鍛治様が……!!」

健夜「ゆるゆりや桜trick、犬神さんと猫山さんがアニメ化したり、百合キャラがいる漫画も増えてきました」

ハギヨシ「あ、はい。喜ばしいことです」

健夜「でも……」

ハギヨシ「?」

健夜「まだ……まだ足りない」

ハギヨシ「………………」

健夜「私は世界を百合で満たしたい」

健夜「いい作品を作ってくれる百合漫画家さんたちがお金に困らず生活できる世界にしたい」

健夜「百合アニメを愛し、全力で取り組んでくれるスタッフ全員に幸せになって欲しい」

健夜「オープンカフェで百合について語り合うことが日常になるレベルにまで百合を浸透させたい」

ハギヨシ「…………なるほど。わかります」コクリ

健夜「そのためには……百合をさらなる高みへ押し上げるためには…………日本を制して世界へ進出しないといけない」

ハギヨシ「はい……私たちも同意見でございます」

健夜「私は今、458プロという組織を設立し、水面下で動いています」

ハギヨシ「でしたら今度、お嬢様やリリーブライド会長を含めてお話でもどうでしょうか?」

健夜「…………ふふっ」

ハギヨシ「?」


健夜「私が458プロを作った目的は…………リリーブライド、リリーフラワーガーデンを倒すためです」

ハギヨシ「っ……!?」

健夜「あなたたちに任せておくより、自分で動いた方が早く理想へたどり着けますから」

ハギヨシ「しかし……」

健夜「今日ハギヨシさんを呼び出した理由は1つ。全面戦争へのきっかけとなってもらうためです」

ハギヨシ「な……?」

健夜「――――」

ハギヨシ「っ!?う、うごけない…………ぐ……私に……何を……?」グググ..

健夜「『攻撃するということはその場に立ち止まること』だと認識させました」

ハギヨシ「は…………?」

健夜「私の能力は〔深淵に触れる花びら(リリアルメモリアル)〕。私が生み出した六角形の百合の花(リリアル)に触れた者の百合にまつわる記憶(メモリー)を視ることができる」

ハギヨシ「!!!」

健夜「それ以外にも、記憶を書き換えて新たな本物(リアル)の記憶として植え付けたり…………言うなれば記憶を扱う能力です」クス

ハギヨシ「そ、んなことが……記憶を書き換えたとしても、動けない理由は……」

健夜「ありますよ?百合妄想士なら歩いたり走ったりしながら百合妄想するのは日常。つまり私の能力の範囲内ですから『動くということはその場で止まること』だと記憶を書き換えれば、心からそう思い込みます」

ハギヨシ「し、しかし……」

健夜「思い込みだけで動けないのはおかしいと?」

ハギヨシ「………それは……」

健夜「ふふ……なるほど。信じたくはないけど、思い込みの力のすごさは理解してるって感じですか。ま、百合妄想士ならわかりますものね」

健夜「純度100%、何の疑いもなく『動く=止まる』だと思い込ませる。そしてそれが『常識』だというレベルまで到達させれば、それは思い込みじゃなくて真実になります。少なくとも本人には」

ハギヨシ「っ……!」

健夜「……説明はこの辺にして、そろそろ本題に入りましょうか。と言っても、ただ私がハギヨシさんに強制的に手伝ってもらうんですけどね」

ハギヨシ「私に……一体何をさせるおつもりですか」

健夜「458プロとリリーブライド、リリーフラワーガーデン他の全面戦争のきっかけになってもらいます。ハギヨシさんが458プロに寝返る、というシナリオです」

ハギヨシ「そんな!私はお嬢様のお傍で……」


健夜「ええ。なので強制的に」

ハギヨシ「くっ……」

健夜「理由は………458プロの方が居心地がいい、じゃ不自然だから…………まぁ、はやりちゃんに操られたってことでいいかな」

ハギヨシ「私は……決して思い通りにはなりません!」

健夜「残念ですけど私の能力に逆らうのは無理です。さっきあなたの記憶を見せてもらった時に確認してありますから。あなたの忠誠心と行動原理には百合が絡んでいる。であればその部分も私の思い通りに書き換えられますから」

ハギヨシ「それでも……私は…………!」

ハギヨシ(お嬢様……!)

健夜「……うーん、ある程度準備が整うまでは普通に行動。458プロから送られてきた動画を観たら私の指示通り動くように……と」

ザザ..ザザ...

ハギヨシ「!!!」

健夜「………………よし、と」

ハギヨシ「………………私は何を……?早くお嬢様のところへ戻らなくては……」テクテク..

健夜「………………」

健夜(記憶操作は完璧。今日私とここで会って話した記憶も封じた。あとは計画通りに進めればいいだけ)

健夜「……さて」

健夜(原村恵……次はあなたの番――――)

~~~~~~~~~~~~~~~


照「…………っ!」ハッ!

アコノ《どうでした?》

照「あ、え……?」

照(どうでしたって言われても……ハギヨシさんとか会長さんが458プロ側についたことが小鍛治プロの策略だったのは驚いたけど…………それ以上にあんな反則的な能力……)

照(……それに今の感じ……なんかちょっと変だった?いつもの〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕みたいなんだけど、どこか違うような……)??

アコノ《………宮永さん?見えましたか?》

照《え?あ、うん》

アコノ《ではわたしと加治木さんに内容を教えてください。それを踏まえて作戦を練ります。それで……花田さん、話してる間のわたしたちを…》

煌《はい!お守りします!すばらっ!》

ゆみ《すまない。ありがとう》

照《ええと、小鍛治プロの能力は……》

照《……!………!》

アコノ《!……》コクコク

ゆみ《…………》コクリ

怜(……宮永が鏡で見た内容を伝えてるみたいやな)

怜《………今んとこええ感じや》

竜華《せやなぁ》

洋榎《宮永が敵の能力を見抜いて、賢いタカラシと加治木が対策を練る。それまで花田が3人を守る……そんで残ったうちらは…》

健夜《〔 ゆ り 座 流 星 群 ( ゆ り ざ り ゅ う せ い ぐ ん )〕》パララララ...

怜《っ……作戦が決まるまで時間稼ぎ》

洋榎《ほな、今からうちが…》

塞《待って。私に任せて》ザッ

洋榎《臼沢……?》

塞《小鍛治プロはアラサー。だったら私が戦うのが一番いいと思う》

洋榎《せやったらなんで今まで下がっててん?》

塞《条件を満たすまで時間がかかったのよ》

洋榎《時間?》

塞《そう。私は今、シロにカプを制限されてるの》

白望「……………………」

怜《…………どういうことなん?》

塞《今私が妄想できるのは『熟女同士のカプのみ』……だから非常に辛い》ハァ

白望「でも……だからこそ解放された時の反動は大きい。こうして解除すれば……」

塞「!!!」

ロリィィン!!

塞「はぁぁぁあ……」

白望「……あの時の力を使えるようになる」

竜華「おおー!すごい!」

塞「蒙古斑も乳歯もなく、ガラガラも哺乳瓶も卒業した小鍛治プロの攻撃なんて、超ロリコンになった私には通用しない」フフッ


洋榎「マジか!これいけるんちゃう?倒せてまうんちゃうか!」

怜「……けど、さっきみたいに同士討ちを狙われてもうたら……」

白望「……その時のために薄墨さんに来てもらってるからいつでも止められる」

初美「いつでも脱げますよー」

怜「なるほど。安全面も確保されとる。ええ作戦やな」

塞「さて……行きますか!」

健夜「………………」

塞「はあっ!」ダッ!

健夜「………………」

塞「幼女尽くしをお見舞いしてあげる!!」タタタ!

健夜「――――」

ザザ..ザザ..

塞「!!!」ピタッ

怜「……あれ?止まった?」

健夜「………………」

塞「………………」

洋榎「一体何が起き…」

塞「ああああああ!!すこやたん!超かわいいっ!!」

怜「!!??」

白望「これは……」

塞「すこやたん!ミルクの匂い!二の腕、うなじ、たまらないっ!頬っぺた、首筋、耳の裏!」ハァハァハァ!!

健夜「…………」

洋榎「小鍛治プロに萌えとる……ロリコンの臼沢が……!?」

塞「がはっ!興奮しすぎて……頭がクラクラして…………あぁ……」バタッ..

怜「な、何がどうなってん……」

竜華「臼沢さんがやられてもうた……あの一瞬で……?」オロオロ

白望「っ!」タタッ!

洋榎「っ!おい!今無闇やたらに突っ込むと……」

白望(どんな妄想をぶつけたのかわからないけど……〔迷い家・犬小屋(マヨヒガ・にちようだいく)〕で威力を下げてダメージを抑えれば塞を連れて戻れるだけの時間は稼げるはず!)

白望《〔 迷 い 家 ( マ ヨ ヒ ガ …》


健夜「――――」

ザザ..ザザ..

白望「ぁ……」ピタッ..

白望(?私、何しようとしてたんだっけ…………あれ?塞が倒れてる?どうして……)

洋榎「嫁!危ない!!」

白望「……嫁?」

健夜《結婚式、同窓会!》パラララ...

白望「ぐあ……っ!」

怜「竜華!」

竜華「う、うん!」

怜・竜華《〔 怜 と 竜 華 の 日 常 ( バ カ ッ プ ル デ イ ズ )》ギュアアアアア!!

健夜「む……」サッ!

洋榎「今のうちに下がれ!」

白望(塞を抱えて一緒に……いや、無理だ。ここは一旦私だけでも退避…)タタタ..

健夜「……逃げられちゃったなぁ」ハァ

怜「…………」ゴクリ

竜華「なんなんこの人……?」

洋榎「くそ……なんかズルいことしてるんちゃうか?」

怜「ここは手出しせえへん方がええんかな?反対側におる神代さんたちも様子見しとるし」

白望「……その方がいいかも。私自身、何をされたかわかってない。飛び込むのは危険」

洋榎「ちゅうか宮永たちはいつまで話して…」

アコノ《みんな!一旦逃げるよ!庭園の入り口まで退避!そこで作戦会議!!》


洋榎「お!話が終わったんか!」

怜「竜華!」

竜華「うん!行こ!」

白望「待って。塞が倒れたままで……」

??《任せてくださいっす》

白望「え……?」

健夜「…………ん?」

塞「………………」ムクリ

健夜が目を丸くする。倒したはずの塞が気絶したまま立ち上がったからだ。

塞「………………」ズズ..ズズ..

そしてそのまま引きずられるように一歩、二歩と進み、姿を消した。

健夜「これは……」

白望(東横さんか。ステルス状態で塞を抱えてくれたんだ)

白望(……でも東横さんはやられたはずじゃ……)

憩《小瀬川さん!臼沢さんは大丈夫や!うちらも逃げよ!》タタタ

白望《!荒川さんが東横さんを回復したのか……》

憩「ふふっ」ニコリ

白望《……ありがとう》

憩「どういたしまして。さ、行こ!」タタタッ!

白望《ん……》タタタッ!

タタタタ...

健夜「……………………」

健夜「RPGとかだとラスボス戦は逃走不可なんだけどね……」

健夜「あっという間に全員逃げちゃっ…」チラ

トシ「ま、待つんだよ。トシの牛歩は筋金入りだよ」テクテク..

老婆たち「水中ウォーキングでも始めようかねぇ」テクテク..

健夜「………………」

健夜(……見逃そう。あの人たちを追いかけて殲滅するのは後味が悪すぎるよね)


【庭園 入口付近】

照「なんとか逃げてこれた」ハァ..ハァ..

咲「う、うん。小鍛治プロ追いかけてこなかったもんね」

久「必要性がないからでしょうね。門の外は458兵でいっぱいだもの。この庭園からは出られないのはわかってる」

怜「それに私らはいつでも倒せるっちゅうて余裕しゃくしゃくなんやろうな」

竜華「むー。なんか嫌やなぁそれ」

貴子「オラァァッ!!無駄口叩いてるやつ見つけたァァッ!!」ガァア!

竜華「ひうっ!?」ビクッ!

貴子「今はクソ時間がねェ!作戦会議だァァッ!!!?」

竜華「ご、ごめんなさい」ペコリ

貴子「うるせェァァッ!」

竜華「っ!ど、どないすればええんや……」

怜「もう黙っとこ」

アコノ「みんな揃いましたね。じゃあさっそく説明します……――――」

アコノは、トシたちを除く全員の前で健夜の能力について説明した。

『百合に関する記憶を操作する』という能力。

説明を聞いた誰もがその凶悪すぎる能力に対し、表情をこわばらせた―――

洋榎「…………それ、ほんまなんか?」

照「うん」コクリ

アコノ「振り返ってみれば辻褄は合うわ。リリーブライドの人たちで〔リリース(Lilys×Release)〕を会得した人が半数程度しかいなかったのに458プロの人たちは全員使えるっていうのが不思議だったけど……」

アコノ「小鍛治プロが458兵の記憶を操作して〔リリース(Lilys×Release)〕を扱えるように思考を書き換えたんだとしたら……」

純代「なるほど……〔リリース(Lilys×Release)〕を会得するために重要なのは自分と向き合うこと……。上手い具合に記憶を扱えば可能かもしれない」

アコノ「458兵を回復させたのもそう。『力が十分にある状態の記憶を蘇らせた』とかそんな感じだと思う」

小蒔「……聞けば聞くほど万能ですね。すごい……」

霞「ええ。どう立ち向かえばいいのかしら?」

やえ「さすがの私も今回ばかりは焦る……『私は王者ではない』なんて記憶を植え付けられるかもしれないと思うと……」

煌「人の記憶を操作するなんて……すばらくないです」スバラッ!

怜「どっちやねん」

洋榎「しっかし……正直反則ちゃうか?勝ち目ないやろ」

雅枝「……うちや姫さんや四天王を操って同士討ちとかさせられたら一気にやられてまうしな」

白望「メガン・ダヴァンの能力と違って、攻撃する側の意識ごと変えられるみたいだし……」

ゆみ「…………だが勝ち目がないと決まったわけではない」

貴子「なにィィ!?どういうことだそりゃあ!!今すぐ言え!!説明しろ!語れァァッ!遅ェぞ早くしろァァッ!!」

ゆみ「い、今説明しますから」

貴子「その一言が無駄ァァッ!」

ゆみ「っ……ま、まず1つ。もし小鍛治プロが無条件で私たちの記憶を操れるのなら、すでに勝負はついているはず…」

白望「あー……確かに。全員を動けなくすればそれで終わり……」

エイスリン「ズルイ!」


ゆみ「力の差があるから余裕を見せている可能性もなくはないが、458プロの主力で残っているのは小鍛治プロだけで、自分が負けたら敗北が決まるという状況であえて手を抜くとは考えにくい」

久「そうよね。手を抜いて負けた、なんて本末転倒だものね」

ゆみ「だとすれば全員の記憶を操作しない理由は…………おそらく『何かしらの条件を満たしていないと能力を使えないから』ということ」

全裸初美「なるほどですよー。でもその条件ってなんなんですか?」

ゆみ「それが……宮永さんの〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕でも見破れなかったようだ」

照「うん……」

ゆみ「だが……タカラシさんがあることに気付いてくれたおかげで、その条件がなんとなく予想できた」

アコノ「そ。小鍛治プロの戦い方にちょっと違和感を覚えたんだけど、その理由がわかったの」

憩「それってなんなん?」

アコノ「まず、味方を小鍛治プロだと思い込ませて同士討ちを狙ったこと、そして自分を幼女に見せて臼沢さんを無力化したこと。これが記憶の操作が成立した時なんですけど……」

アコノ「どちらも『こちらの攻撃に対するカウンターによって行われたもの』だったんです」

洋榎「!!」

晴絵「そうか…………あ!それともう1つ『その場を動いていない』というのもある」

アコノ「ハルエさんの言う通り。『カウンター』と『静止した状態』によって記憶を操作されました」

怜「……ちゅうことは……」

アコノ「……もし自分から記憶を操作できるなら、〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を使う宮永さんの記憶を封じるなりして無力化すれば自分の能力の秘密は守れる。なのに小鍛治プロはそれをしなかった…」

竜華「確かに変やな」

アコノ「それと、宮永咲さんや東横さんを別室に連れて行った時もそう。自分の能力のヒントになるような記憶は書き換えてから解放するはず」

桃子「それはそうっすよね……スクリューさんが様子見する作戦になったのは、小鍛治プロが三尋木プロみたいに幻を見せるかもしれないっていう情報を私たちが皆さんに伝えたからっすもんね」

照(……スクリューさんって私のこと?)

桃子「あ……思い出したっす。リンシャンさんが小鍛治プロをスクリューさんと勘違いした時も、リンシャンさんが攻撃しようとしてた瞬間だったっす。これ、幻を見せたんだと思ってましたけど、カウンターで記憶を操作したんすね!」

アコノ「その時もカウンターだったんだ……これでさらに信憑性が高まった」ニヤリ

智紀(……小鍛治プロの凄まじい威圧感を前にここまで対策を練れるほど観察できているなんて……高鴨さんの鋭い直感と新子さんの洞察力……脅威的)

雅枝「そんで?能力については見当ついたのはええけど、結局どう戦うねん」

ゆみ「……カウンター条件なのが正しいとしても、攻めなければ勝てません。なのでまずは能力の有効範囲を測るために遠距離から攻撃してもらいます」

アコノ「宮永照さん、園城寺さんと清水谷さん、エイスリンさん、ハルエさんが遠距離から攻めます」

照・怜・竜華・エイスリン・晴絵「」コクリ

アコノ「他のメンバーは小鍛治プロの意識が遠距離組に向いたらすかさず攻撃です。一度に能力を使える人数に限りがあるかもしれませんし」

白望「『動かないこと』が能力の条件なら問題ないけど、違ったとしたら誰かが守らないといけないしね……」

洋榎「せやな。ま、ただボーっと待ってるのも退屈やしちょうどええわ」

豊音「……ねぇねぇシロー。私も何か役に立てないかなー?」

白望「え?」

豊音「邪魔しないようにゲームしててって言われたけどー、やっぱりみんなと戦いたいよー。このゲーム、いくら塔を登っても終わらないしー」

白望「………でも豊音が能力使うと、味方だけじゃなくて小鍛治プロも強化されちゃうから……」

豊音「あー…………そ、そうだよねー……ごめんなさい……」シュン

白望「………………」


ゆみ「近距離組にとっては玉砕覚悟になると思う。やられたらすぐ荒川さんと花田さんのペアで回復してもらうが、危険性が高く辛い役目だ……申し訳ない」

怜「いや、しゃあない。生半可な覚悟じゃ勝てへんやろうし」

竜華「せやな」

洋榎「遠距離組が言うな」

ゆみ「ちなみに鷺森さんは操られると危険だから待機で頼む」

灼「わかりました」

アコノ「それと神代さんは隙を見て〔八咫鏡(やたのかがみ)〕による男女反転を試みてください。効果的かもしれませんので」

小蒔「はいっ!頑張ります!」

アコノ「ではそんな感じでお願いします。指示はわたしと加治木さんがしますので。じゃあもう一度小鍛治プロのところへ…」

トシ「はぁ……はぁ……遅速のババアが今来たよ」テク..テク..

老婆ズ「おま、たせ……」

豊音「わぁー、先生おかえりなさーい」

アコノ「お疲れ様です。あ、作戦内容ですけど……」

トシ「ふふ。私たちを蔑ろにしないために説明してくれるのかい?でも大丈夫さ。私たちは戦闘タイプじゃないからね」

アコノ「そうですか……」

トシ「どっこらしょっと。これでようやく休めるよ」ドスン

老婆ズ「ええ。座るっていいわね」ドスン

アコノ「………………」

トシ「きょとんだよ。どうしたんだい?あんたらもお尻を大地へ乗せなよ」

アコノ「あの……これから戦いに戻るので……」

トシ「……………………今、やっと到着したんだよ」

アコノ「はい……でももう行かないと……」

トシ「……………………」

アコノ「…………………」

トシ「くそぅ!くそぅ!」

エイスリン「ゴメンネ ナーミン」

作戦会議を終えた一行は、ぐずるトシをなだめ、再度健夜の元へと向かった―――


健夜「…………あ」

テクテク..テクテク..

照「…………」

健夜「ずいぶん早かったね」

照(すごい余裕……自宅にいるみたい)

健夜「じゃあさっきの続きを始めようか?」スッ

ゆみ「そうですね」スッ

ゆみが右手を挙げる。作戦開始の合図だ。

照(よしっ……!)サッ!

健夜「?」

それぞれが一斉に動き出す。

照、怜、竜華、エイスリン、晴絵がバックステップして距離をとり、

透華(皆さんの勝利を願いますわ)

一(頑張ってね、みんな!)

豊音(ちょー応援してるよー)

久美子(信じてるから!)

トシ「ぜぇぜぇ……」

透華たち非戦闘員が隅っこへ移動する。

そして残ったメンバーは健夜と照たちのちょうど中間地点にとどまる。

健夜「ふぅん……何か企んでるみたいだね」

アコノ「………………」

健夜「…………何でもいいけど、攻めてこないの?来ないなら…」クス

小蒔「……いきますっ!」タタタ!

最初に仕掛けたのは小蒔。〔八咫鏡(やたのかがみ)〕を展開し、男女反転のフィールドを作り出した。

この場では薔薇妄想が百合妄想に、百合妄想が薔薇妄想になる。

健夜「…………」クス

小蒔「!?」

健夜《軽音学部、楽器屋、ライブハウス、ロンドン!》パラララ...

小蒔「あぁっ!?」ガクッ..

霞「小蒔ちゃん!!」

小蒔(ど、どうして……?いくら場所を挙げるだけで効果的な攻撃とはいえ、多少は本人の妄想が含まれるのに……性別が反転してません…………まさか……私の記憶に何か細工を……?)

健夜「……不思議そうな顔だね。答えが知りたい?」

小蒔「え…………」

健夜「簡単なからくりだよ。神代さんが能力を発動する直前に記憶を操作して〔八咫鏡(やたのかがみ)〕の効果を変えたんだ。『相手からの攻撃を倍にして受ける』という風にね」

小蒔「そ、そんな……」

洋榎「……ずいぶん簡単にバラすんやな」

健夜「うん。だって宮永さんの〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕をくらっちゃったからとっくに気付かれてるだろうし、それに……」

健夜「知ったからって止められるものではないから」クスッ


照「っ………」ゾワ..

照(なんて自信……小鍛治プロの能力は無敵なのかな……)

アコノ「………宮永さん、とりあえずできることをやりましょう」

照「…………うん」コクリ

エイスリン「ワタシカラヤル!」タタッ

アコノ「エイスリンさん?どうして近付くんですか!?」

エイスリン「ココ、トオイ!」

アコノ「え?」

エイスリンの〔エイスリンちゃんの描くとおり(エンジェルドリーム)〕は、イラストボードに描いたように対象を動かせるという能力。

肉眼で確認できればある程度離れていても有効という強力なものだが、弱点も存在する。

それは実力差がある相手の場合、能力の有効範囲が狭まることだ。

エイスリン(………………!ココナラ……)ピタッ

健夜「………………」

エイスリン《〔 セ ン ジ ュ ナ モ リ ( 千 手 な も り )〕!》ユッリユッラッラッラッラ..

アコノ「……っ!」サッ(右手を挙げる)

洋榎「!」

霞「!」

洋榎(きた!エイスリンが描き始めるタイミングでうちらが攻撃する!そうすれば…)タタッ

霞(エイスリンちゃんの記憶を操作しようとしている隙を突ける。もしこっちを狙うのならエイスリンちゃんの能力の支配を受ける)タタタボンヨヨ!

アコノ(小鍛治プロの能力が『静止した状態でなければ発動できない』という予想が合っているのか見極めるチャンスでもある)

ゆみ(一挙手一投足、見逃さん)ギラリ

洋榎《〔 愛 宕 王 国 ( あ た ご キ ン グ ダ ム )〕》ズォォォォ..

霞《〔 母 な る 大 乳 ( は は な る だ い ち )〕》ボッィィィッィッィイ....ンヌ!

小蒔(わ、私も……)

小蒔《〔 八 尺 瓊 の 勾 玉 ( ヤ サ カ ニ ノ マ ガ タ マ )〕》カッ!!シュゴオオオオオオオオ!!!

健夜「…………」

4人同時攻撃。妄想による寝取り&ハーレム入り強制の洋榎と、

物理的威力を含む、胸に顔を埋めさせての赤ちゃん化を狙う霞。

一撃必殺にも似た、ずば抜けた攻撃力を誇る小蒔。

そして離れた位置からエイスリンがなもり先生のスピードで健夜を描いている。

健夜「………………」

小蒔「あ……」スゥーッ..

小蒔(そんな……勾玉から力が失われて……消えてしまいました。これではもう普通の妄想並の力しか発揮できない……)

洋榎(神代?何をボーッとしとんねん!)

ピュー..

洋榎「…………んあ?なんや今飛んできたの…………って、あれはエイスリンのペン!?」クルッ

エイスリン「フンス!」ドヤ!

洋榎「おお~、かわええなぁ♪やない!!なんでペン投げんねん!そんなことしたら描けへんやろ……あ」

洋榎(そうか!これは小鍛治プロの……)


健夜《縁日、花火大会、ハロウィン!》パラララ..

洋榎「うっ……おお……っ」

小蒔「きゃっ!」

洋榎(なんやねんくそっ!)

霞「っ!もらったわ!」ピョンプヨ!

健夜「!…………」

洋榎と小蒔へ攻撃している健夜の背後。霞が勢いよく跳んだ。

狙いはもちろん顔面だ。

霞(タイミングは完璧!これなら……)

モッニョ!!

霞(やったわ!)

健夜「………………」モニョー..

霞(これでしばらく赤ちゃん状態になる。その間に全員で攻めれば…)

健夜「……………ふ」

霞「え……?」

健夜《海の家、ビーチ、無人島!》パラララ..

霞「っっ!!そ……んな……がはっ……」ガクガク..

アコノ「………………なによそれ……」

アコノ(神代さんの能力を記憶操作によって無効化し、エイスリンさんの『絵を描く』という行為を『ペンを投げる』という記憶へ変えて能力の発動を阻止)

アコノ(石戸さんの〔母なる大乳(ははなるだいち)〕も神代さんと同様に能力を無効化。そして近距離から反撃。3人にダメージを与えた……)

アコノ(記憶を操作された人間に共通するのはカウンターによるものであること……わたしの読みは当たっているっぽいけど……)

状況把握に努めるアコノ。

今のやりとりだけで四天王2人を含む実力者を手玉に取った健夜に驚きつつも、冷静さを失わない。

穏乃の感性と憧の頭脳と度胸が合わさっているだけのことはある。

アコノ(……目の前の結果でいちいち慌ててられない!次よ次!)サッ

照・怜・竜華・晴絵「!」

照(遠距離攻撃のサイン………)

怜(小鍛治プロの能力の範囲外からの攻撃やったら操られんですむ……理屈は合うてる。けどその範囲がどんだけなのかがわからんのが問題やな)

竜華(1人ずつ距離を変えて攻撃……小鍛治プロの射程を探る……大変やなぁ)

晴絵「最初は私がいくわ。はあっ!〔 尿 道 炎 ・ 膀 胱 砲 ( に ょ う ど う え ん ・ ぼ う こ う ほ う )〕!!」

チポジョバァァァァァァ!!!

健夜「………………」

晴絵(避けない?受け止めるつもり?だとしたら私を見くびりすぎ!膀胱砲の威力は超…)

チポジョ.....バァァァァァァ!!!バァァァァァァ!!!

晴絵「!!!」

驚愕する晴絵。

その理由は、健夜へ放たれた膀胱砲が途中で二門に割れたためだ。

そしてその結果、膀胱砲は健夜の両サイドを通り過ぎ、ノーダメージに終わった。

晴絵(そんな……!もしかして……私が昔読んだ『ノーコンふたなり女子ピッチャー』っていう本の記憶を使った……!?)


健夜《うん、そう。一番有効だったから》

晴絵「!!」

晴絵(どうして私が考えてることを……)

健夜《そんなに驚かなくても。記憶を操作できるってことはつまり……『記憶を視ることもできる』ってことだよ?記憶が視れるから変えられる》

晴絵「…………」

健夜《それが私の能力……〔深淵に触れる花びら(リリアルメモリアル)〕だよ》

晴絵「っ……」

アコノ「ハルエさん!」

晴絵「あ……」ハッ

アコノ「下がって!」

晴絵「あ、ああ」タッ

怜《りゅーか!次はうちらや!》

竜華(うん!赤土さんの位置から少し下がって……ここや!)タタッ

晴絵が記憶操作されたことを受け、健夜からさらに距離をとる。

お互い正面を向き合い、両手を恋人繋ぎにした。

そして自分たちも含むご先祖様同士が百合カップルだという想いを紡ぎ……

怜・竜華《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕」!!》シュババババ..

イチャイチャの波動を放った。

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

健夜「…………」

ゆみ(……どうだ?)

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

健夜「…………」スッ..

迫りくる〔園城寺一族×清水谷一族(バカップルファミリー)〕に対し、健夜は横へ一歩踏み出すことで回避した。

アコノ・ゆみ「!!」

アコノ(動いた!つまり記憶操作をしなかった……ということは、今の園城寺さんたちと小鍛治プロの距離が有効範囲外!)

ゆみ(…………よし。距離を覚えたぞ。25メートルといったところか)

怜(なるほど。この距離からなら安全なんか。遠い分避けられやすいけど、操られて同士討ちされるかもしれへんよりはよっぽどマシや……りゅーか)チラ

竜華《わかってる。もっかいやろ?》

怜《ん。ほないくで》キュッ..


照「………………」タタッ

照(この位置からなら大丈夫みたい。私も攻めよう)

照《『花依×志麻(私がモテてどうすんだ)』、『マルスのキス』、『ストロベリーパニック』…》ギュルル..

照(このまま竜巻が巨大になるまで繋いでから撃てば、距離があっても当たるはず!)

健夜「…………」

白望「………………」

白望(この状況……私たちが仕掛けると操られるから攻められないけど、宮永さんたちに近付かれないようにしないといけない……結構ダルいなー)

全裸初美(……うー、下手に動くとカウンターを発動されますー。背伸びの運動とかして注目を集めるわけにはいかないですよー)

塞(……動かないわね。こっちとしては都合いいけど)

ゆみ(…………普通なら宮永さんたちを有効範囲内に入れるために近付くのが常道だろうが……何故動かない?)

健夜「…………」スッ

アコノ(手を挙げた?一体何を……)

健夜「〔 新 鋭 百 合 作 家 爆 誕 (スーパーノヴァエクスプロージョン)〕」バッ!

一言。

呟くような言葉と共に挙げた手を振り下ろす。その方向にいるのは照。

照「?」

絶賛妄想中の照の足元に、小さな光が生まれた。

そしてその光が瞬く間に大きくなり……爆ぜた。

カッ!!!

照「!!!」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

照「………………」

数秒後、光が消えたと同時に、

照「」ドサッ

照は力なく地面へ倒れ込んだ。

咲「お、お姉ちゃん!!!!」タタタッ!

怜「な……」

竜華「そんな……」

アコノ「み、宮永さん!」

健夜「………………」

〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕。

自身の記憶を操作し、お気に入りの漫画家や作家、百合クリエーターなどをデビュー間もない同期の新人たちだと思い込むことにより、

黄金時代の到来を感じさせ、とてつもない幸福感と期待感が生まれる。

そしてその作家たちの既存作品を一斉に解き放つことで、超新星が爆発したような規模の威力を発生させる能力である。


アコノ(そんな……いくら小鍛治プロが強いといっても、あそこまで強力な攻撃があんな簡単に出せるなんて……)

ありえないモノを見るような目で健夜を見るアコノ。

それもそのはず。目の当たりにした〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕の威力は桁違いだったのだから。

しかしそれには理由があった。

健夜は今まで数多くの百合作品を見てきた。他の百合妄想士も同様だろう。

アレを見たら次はコレ。コレを見たら次はソレ。読み返すことよりも新たな作品を、と常に新作を求めている。

いくら面白くて感動できる作品であっても二度目三度目では新鮮味が薄れてしまい、初見の時の衝撃を超えることはかなり難しいからだ。

そのため、普通ならその状況を打開するために妄想で補完し、二次創作などに繋げていく。

だが小鍛治健夜は違う。

『読んだことがある本を読み返す』ことはない。何故なら『読んだことがある本を初めて読む』状態にできるからである。

『過去に読んだことがない』と思い込むように自分の記憶を操作し、読み返す度に初見の感動を味わえるのだ。

さらにイマイチな作品を読んだ場合にも健夜の能力は大活躍する。

百合に触れる際の感情記憶を操作し、常にポジティブで心地よい心理状態を作った上で本を読み始め、

内容が特筆すべきではなかった際は膨大な記憶領域から『この作品を面白くするべき方法』を探し、組み立て、違う物語として成立させ、それもまた記憶へ定着させる。

能力の性質上、一度読めば内容を完璧に記憶できるというのも強みだ。アニメも同様で、1回視聴するだけで全コマを記憶する。そしてまた自分の妄想で補完し、組み立て、記憶に定着させる。

このような行為を続けることで、健夜の百合脳は他の追随を許さないほどに研ぎ澄まされていった。

その結果、〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕の威力は並外れたものとなったのである。

照「…………」ウーン...

咲「お姉ちゃん……完全に気を失ってる……薄目なお姉ちゃんかわいい」

咲(だけど……)ギリッ..

咲(薄目じゃないお姉ちゃんの方が魅力的!!)ダダッ!

怜「あっ!妹さん……」

桃子(リンシャンさん!?突っ込む気っすか!?無茶っす!)

憩《宮永さん。今元気にしてあげるから待ってな?》スッ

照「う…………ん……」

憩《早く……早くしないと……》

煌《荒川さん。焦らずに。荒川さんの身は私が守りますから落ち着いて治療に専念してください》スバラッ!

憩《花田さん……ありがとうなぁ》ニッコリ

咲「…………」タタタタ!!

健夜「…………」

咲(お姉ちゃんのカタキ!薄目にされた恨み!)ゴォォオオ..

ゆみ「凄まじい闘志だ」

アコノ「〔姉妹の愛(シスターラブ)〕による効果もあるんだろうけど……」

雅枝「ちっ!1人じゃ無謀や!加勢したる!久保!洋榎!」ザッ!

貴子「はいァァッ!!」

洋榎「いくでぇえ!!」


雅枝《〔 生 き が い を 刈 り 取 る 鎌 ( ペ ナ ル テ ィ ー シ ッ ク ル ・ 弐 )〕》ヒュンッ!

貴子「〔 愛 な き 時 代 ( ビ ン タ オ ア ビ ン タ )!!〕ァァッ!

洋榎「〔 百 合 婚 ジ ャ ン プ ( ユ リ コ ン ジ ャ ン プ )〕」シュウウゥゥ..エェィイイィィ...シャァァァ...

真正面から突っ込む咲を援護するように、雅枝たちが大技を繰り出す。

健夜「…………」

それに対し健夜は、1人1人の攻撃に〔深淵に触れる花びら(リリアルメモリアル)〕を発動させた。

雅枝「っ!?」

雅枝には『鎌は手元を離れてすぐ地面へ落ちるもの』と認識させ、触れずして鎌を撃ち落し、

貴子「なにぁァッ!?」

健夜の脳内キャラをビンタしようとした貴子には、逆にビンタを返されたという記憶を植え付けてダメージを跳ね返し、

洋榎「がはっ!?」

無数の嫁キャラを放つ洋榎には、嫁たちがストライキを起こしたと錯覚させ、大ダメージを与える。

咲「っ……!」タタタ

健夜「…………」スッ

そして咲には、

カッ!!!

咲「!!!」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕をお見舞いした。

咲「ぁ…………っ……」フラ..ドサッ...

健夜「………………」

まさに一蹴。

リリーフラワーガーデンの会長と娘、そしてマスターオブビンターとも呼ばれる攻撃的百合妄想士、久保貴子、

〔姉妹の愛(シスターラブ)〕によって超強化された宮永咲。

並の百合妄想士では歯が立たないであろう相手を、ほんの数秒で沈めてしまった。

さらに咲へ放たれた爆発の余波で、小走やえもサクッとやられていた。

トシ「………………」

あまりにもかけ離れた実力差に、トシもラーメンを食べる手を止める。

今は何を食べても戦慄味に感じるからだ。

白望(……これはどうしたらいいんだろう……このまま見てるだけじゃ何も変わらないけど、かといって仕掛けたら記憶を操られる……)

塞(やられたみんなは荒川さんが回復してくれるけど、その時間稼ぎをする人間が必要だから全員で攻めるわけにもいかないし……)

全裸初美(身動きがとれないですよー。でも……あの『ずどーん』ってやつをやられたら終わりですー……)

ゆみ「………………」

アコノ「……………」

ゆみ《タカラシさん。どうする?正直私には打つ手が思い付かない》

アコノ《…………わたしもです。小鍛治プロの能力が記憶を扱う以上、相手の記憶内を探るために時間がかかるだろうと踏んでたのですが、今の連続攻撃をさばけるほどのスピードではタイムラグはあってないようなものですし》

ゆみ《そうだな……無闇に仕掛ければあっさり全滅してしまう。歯がゆいが数名は待機させなければ荒川さんを守ることすらできない……》

アコノ《それも小鍛治プロが動かなければの話ですしね。先に荒川さんを狙われたらそこで終わりです》

アコノ(有効範囲外から攻撃すれば安全だと思ってたけど、それもあの爆発攻撃によって無意味だと知らされた……こうなるとどう戦えばいいのか……)


照「あ……」ムクリ

憩「目ぇ覚めました?」

照「え?あ……えと……」

照(私は一体どうなったんだっけ……)

久「……う……」ムクリ

憩「大丈夫ですか~?」

久「え、ええ。ありがとう」

憩「いいえ~♪ほな次は愛宕さんたちやね。あ、でも小鍛治さんの近くやから危険やなぁ」

桃子「……そうっすね。ステルス状態でも見破られるかもしれないっす」

煌「私が守ります!と言いたいところですけど……私がそばにいたら逆に存在がバレてしまいますね……」

憩「んっ!しゃあない!遠隔ヒーリングやね!」

久「そんなことが可能なの?」

憩「はい。〔スピードヒーリング〕もそうやけど、〔リリース(Lilys×Release×Wreath)〕を使えるようになってから能力の幅が広がったんです。離れたところの子を回復できますよ~」

久「すごい……」

憩「目の前の子を癒すのに比べて、かなり力を使てまいますけどね」

照「………………」

照(やっと頭がはっきりしてきた……私は小鍛治プロにやられて倒れてたんだった)チラ

健夜「」

照(…………ん?あれは……)

咲「…………」

照「!!!!」

照(咲が倒れてる!!小鍛治プロにやられたの!?)ゴォッ..


久「っ!」ゾワッ..

久(照……すごい殺気……)

照(よくも咲を……私の大切な妹を……)ザッ..

久「ま、待って!」ガシッ

照「……久?」

久「悔しい気持ちはわかるけど、抑えて!無闇に突っ込んでも返り討ちにあうだけよ!」

照「………それでも構わない」

久「え」

照「私は咲を守ると決めたの。それなのに私はあっさりとやられて意識を失った。私は自分が許せない」

久「照……でも……」

照「……やられるとわかってても動くことに意義がある。少しでも咲の近くに行きたい。でないと咲を守ることができない」

久「咲を守る……か。小鍛治プロを倒すのが一番手っ取り早いだろうけど…………ごめん。私にはその手段が思い付かない」

照「ううん、それは私も同じだから……」

照(だったらせめて咲の近くに行きたい。例えボロボロになろうとも……精神力を振り絞って咲の前に立ってみせる。頭の中を咲を守ることだけに集中して、無理やりにでも体を動かして見せる!そうすればきっと………)

照「あ」

照(………………もしかして……これなら……)

久「照?」

照「…………いけるかもしれない」

久「え?」

照(倒せるかもしれない…………小鍛治プロを)

久「?」

照(そのためには……――――)


健夜「はぁ……」

雅枝たちが倒れてから数秒後、

動くに動けずに立ち尽くしていた面々を前に、健夜はため息をついた。

健夜「……ねぇ、見てるだけでいいの?最後の戦いだよ?」

純代(…………確かにその通りか。操られるのは厄介だが、あの爆発を受けたら一撃で終わる。ならば恐れず仕掛けるべきだ)グッ

智紀(最初から力の差は歴然だった。挑戦者が臆病風に吹かれている場合じゃない)スッ

塞《……やっぱり見てるだけじゃ勝てないわよね》

白望《うん……こうして立ってるのもダルいし、当たって砕けろの覚悟で行こうか》

全裸初美《姫様》

小蒔《ええ。もとより退路はありません。道は前にしかありません》

霞《大勢で一気にかかればなんとかなるかもしれないわね》ウフフ

健夜の言葉を受け、それぞれが闘志を燃やしていく。

その熱く滾る空気は離れた位置にいる怜たちの肌も焦がした。

怜《……なんや。みんなやる気やな》クス

竜華《うちもめっちゃ気合い入ってきた》

晴絵《……うん、覚悟決めるか》

ゆみ《…………モモ。荒川さんを頼んだ》ザッ..

桃子《!わかりましたっす》

アコノ《このあとの総攻撃、おそらく私たちは次々とやられていくと思います。でもその時に荒川さんが無事ならば、再び仕掛けられる。一度では無理でも、二度三度と繰り返せば、活路が見出せるかもしれない。だから……》

煌《わかっております!花田煌、全力で荒川さんをお守りします!》

憩《ごめんなぁ、ありがとう》

久「…………照」

照「うん、行くよ」

照(咲……お姉ちゃん、頑張るから)

倒れている咲を一瞥し、目を閉じる照。

精神を集中し、右手に妄想を流し込む。

照《『キャスター×ザビ子(Fate EXTRA/CCC)』、『小路綾×猪熊陽子(きんいろモザイク)』、『近衛木乃香×桜咲刹那(ネギま)』…》ギュルルル..

智紀「!」

智紀(宮永さんが〔連続妄想(コークスクリュー)〕の体勢に入った…)キリッ

純代(〔連続妄想(コークスクリュー)〕は最強クラスの威力……。当たれば小鍛治プロでも倒せるかもしれない。何が何でもサポートしなければ)

白望(あの爆発だけは阻止する)

ダダダダッ!

健夜「む!」

照が〔連続妄想(コークスクリュー)〕を発動したことをきっかけに、倒れている咲や雅枝たちを除く全員が健夜の元へと向かった。

智紀《〔 幸 福 と 絶 望 の あ い だ ( ハ ッ ピ ー メ ガ ネ デ ィ ス ペ ア ー )〕》

純代《〔 深 堀 さ ん 劇 場 〕》

塞《〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕》

しかし、

健夜「…………」


智紀「ああっ!?」

絶望も幸福も『自分1人だけで味わうもの』と認識を書き換えられ、智紀は自滅し、

純代「あふぅん!」

快楽責めを誘う映像を押し付ける〔深堀さん劇場〕も、対象を純代に向けて返されたことで本人が快楽に溺れた。

塞「あれ?きゃあっ!」

〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕は、塞が思う幼女の定義を20代後半に書き換えることで、能力を使用しても健夜に変化がない状態を作り上げたあと、

〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕を放った。

白望「!!」

塞への攻撃の直前に白望が使った、相手の妄想力を弱らせる〔迷い家・犬小屋(マヨヒガ・にちようだいく)〕も、小鍛治健夜がタカラシアコノであると思い込ませることで対象を捻じ曲げた。

そして塞と一緒に〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕を浴びて後ずさる。

アコノ「くっ!」

白望の攻撃によって弱体化したアコノは、得意とする幼馴染妄想ではなく健夜に合わせた社会人妄想を繰り出すも、

その直前にタカラシアコノを形成する要素である『高鴨穏乃の瞬発力と直感+新子憧の知性と構成力』を、

『高鴨穏乃の知性と構成力+新子憧の瞬発力と直感』という風に入れ替えることで、能力をさらにダウンさせた。

結果、アコノの攻撃が届きはしたものの、ダメージはほぼ皆無となった。そして、

健夜「…………」

アコノ「!!」

過去の記憶に接触し、穏乃と憧は『合体したことがない』と改ざん。

カッ!!!

穏乃「あ」

憧「そんな……」

2人はタカラシアコノの姿を保てなくなり、元の状態に戻ってしまう。

健夜「……じゃあね」スッ

穏乃・憧「!!!!」

カッ!!!

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

穏乃「がはっ……」

憧「っ……し、ず……」

そして混乱がおさまる前に〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕を受け、吹き飛ばされた。

健夜「…………」

ポワァァァ...

健夜「……これは」

霞「…………」タタタボムッ!

小蒔「…………」タタタポヨ

健夜の周りにはおびただしい数の胸の感触。

〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕によって作り出されたヴァーチャルチチリティだ。

さらに〔1日分の爆乳(ワンデイバクニュー)〕で巨乳の重さを与え、動きを鈍くしようとする。

これらは全て〔母なる大乳(ははなるだいち)〕を当て、健夜を赤ちゃん状態にするためだ。


霞(さっきは無効化されてしまったけれど、今度こそ!)ボヨンガ!

小蒔「…………」タタポ

小蒔(危険ですけど……切り札を使います!)カッ!

挟み撃ちの形で霞と反対側から近付く小蒔は、神気を解放した。

小蒔《〔 九 面 解 放 〕》カッ!!

己の中に宿した九面の力が小蒔の数倍もの大きさとなって顕現する。

そしてそれぞれの神が妄想力を凝縮した光を健夜へと放つ。

その威力は単体で小蒔の〔八尺瓊の勾玉(ヤサカニノマガタマ)〕を凌ぐものであり、それが9つ。

紛れもない小蒔の切り札であるが、この能力には相応のリスクがある。

使用後、九面はしばらくの間力を失ってしまう。

それは小蒔の耐久力や体力を大幅に下げることになる、まさに諸刃の剣だ。

小蒔(この戦いが最後……ならば、もう出し惜しみはしません!)

覚悟を決めた小蒔。その斜め後ろでは、様々な恰好をした褐色の巫女が体をくねっていた。

襦袢初美・半裸初美・緋袴初美・全裸初美(姫様や霞ちゃんから意識を反らすですよー)クネネン

健夜「…………」

3人の巫女による同時攻撃を前にして、健夜は変わらず冷静だった。

健夜「…………」

胸は『重力に引かれる』という概念を『天に昇る』と書き換え、〔爆巨双乳(ばくきょそうにゅう)〕で作り出された胸の感触は全て空へ舞って消えた。

〔1日分の爆乳(ワンデイバクニュー)〕もその影響を受け、巨乳の辛さを味わわせる能力としての意義を失い、むしろ快適さをプレゼントする。

そして正面から向かってくる霞の動作記憶の『走る』を『後ずさる』に改ざんした。

霞「あら?あらあら?」

そしてゆっくりと後ずさる霞に〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕を放ち続けながら、小蒔へと正対した。

視線を強引に奪う初美の存在に気付くと、『視線を奪う』に関連付けた記憶を操作し『服を着る』と結びつける。

瞬間、初美は服を着る。もう脱ぐこともできない。脱げない巫女はただの巫女だ。

健夜の視線は自由を取り戻し、接近する小蒔へと目を向ける。

健夜「…………」

小蒔「…………」ポタタタヨンッ!

九面を解放した小蒔に対し、健夜は〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕で迎え撃った。

小蒔「!!」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

健夜「………………!」

小蒔「っ……まだですっ!」

爆発を受けた小蒔は無傷。しかし背後にいた九面が消滅していた。たった一撃で全て消し去られてしまったのだ。

小蒔(まだ私が残ってます!)タッ

それでも小蒔は諦めない。健夜目がけて勾玉から光を放とうとする。

健夜「…………」

そんな小蒔に対し、健夜は小蒔の記憶を操作して『前方』を『自ら』に、そして『小鍛治健夜』を『神代小蒔』に書き換えた。

それによって、前に向けて放てば自分に、健夜への攻撃も自分に返ってくることになる。


小蒔「!!」

シュゴォオオォオオ!!!

小蒔「あ…………ど……どうし……て……」ガクッ..

結果、小蒔の攻撃は自分へのトドメと化した。

霞「小蒔ちゃ…」

健夜「…………」スッ

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

霞「ぁ…………」バタッ..

小蒔のところへ向かおうとしていた霞もまた、一撃で沈む。

健夜「…………」チラ

これで残るは〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕を浴びて負傷している塞、白望、純代と、

離れた位置にいる晴絵、久、エイスリン、怜、竜華、灼、そして……

健夜「ん?」

照《『レゥ×リース(My Merry May)』、『スパロボのイルイ×アイビス』、『スパロボのシャイン×ラトゥーニ』、『にゃんぱすー』…》ギュルルルルルル!!!

健夜「あれは……!」

純代(気付かれた!まずい!)タッ

純代《〔 行 列 の で き る ラ ー メ ン 屋 の 最 前 列 で 脱 糞 ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕!!》ドバァ!

健夜「…………!」

突然のスカ。悪臭と絶望感が健夜に襲い掛かる。

しかしすぐさま自らの記憶を操作し、『漏らしたのは店長』だということにすり替えた。

あとは行列を離れて違う店に行くだけだ。

健夜「…………」スッ..

純代(ノーダメージ……ッ!そんな……)

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

純代「げふぅ……!」ズズーーーン...

照《『すこやかパラダイムシフト』、『とある科学の超電磁砲』、『ウィルベル×アーシャ(アーシャのアトリエ)』、『ヤングガン・カルナバル』…》ギュルルルルルル!!!

健夜「………………」

塞(宮永さんが一発逆転の力を溜めてる。なんとしてでも成功させないと!そのために私ができることをしよう!)キッ!

塞「はああっ!」

健夜「……!」

塞「ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリ…………あれ?」

塞(おかしい……幼女妄想ができない!?)

困惑する塞。連続攻撃なら健夜も対応しきれないのではないかと考えた上での〔ロリキャラタブレット(―どこでもいっしょ―ロリがいっぱい)〕だったが、

肝心の幼女を妄想できていないからだ。

塞(これはまるで戒能プロの…………あ)ハッ

塞(もしかして……戒能プロの能力で幼女妄想ができなかった時の私の記憶を蘇らせて……!?)


健夜「…………」スッ

塞(やばっ……!)

白望「塞!」サッ

塞「えっ!?シロ……?」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

白望「が……はっぁっ!」バタッ..

塞の代わりに〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕を受け、前のめりに倒れる白望。

戦闘不能は確実だ。

塞「そんな……私をかばって……?」

健夜「んー……そんなことしても無駄なのになぁ」スッ

塞「っ!?あ……っ」

ゆみ「っ!」

しかし白望の行為はほんのわずかな時間稼ぎにしかならなかった。

健夜の手が塞とゆみへと向けられると、

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

塞「ぐ……っ……」

ゆみ「……う……」

ドサ..ドサッ...

2人は一撃でやられてしまう。

桃子「先輩……ッ!」ググ..

憩「……ごめんな東横ちゃん。本当は今すぐ加治木さんのところに行きたいよなぁ……うちを守るために辛い思いさせてもうて……」

桃子「……いえ、私は私の役目を果たすだけっす。先輩もそれを望んでるはずっすから」グググ...

健夜「…………ふぅ。これで近くの子たちは片付いたかな…………ん?」

照《『ヤミと帽子と本の旅人』、『途中までの北鹿 酉里(きたじし ゆり)×北鹿 海鵬(きたじし みゆき)(γ-ガンマ-)』、『キミキスのなるみ×菜々』、『夏色キセキ』、『キミ恋リミット』…》ギュルルルルルルルル!

健夜が視線を向けた先には、ひたすらコンボを繋いでいく照の姿があった。

いくつもの百合妄想が入り混じり、重なり、反発し、結合している右腕の竜巻はとてつもなく巨大だ。

その様はまさに百合都市といえよう。

健夜「あらら。ずいぶん大きいの作っちゃってるね」

照「………………」

健夜「どうするつもりかな?そこから撃ったら避けられる。でも近付いたら……ふふ」

照(操られて攻撃を当てるどころじゃない……)

さらに当たれば敗北必須の破壊力をもつ〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕がある。

これらの障害をかいくぐって健夜へ攻撃を当てることは可能なのだろうか。

健夜「……さて。向かってくる子たちもいなくなったことだし、こちらから攻めようかな?」スッ

照「…………!」

怜「そうは……」

竜華「させへん!」

健夜「ん?」


怜・竜華《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕》シュババババ..

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

健夜「…………ふぅん」

怜(そして……)

竜華(もひとつ!)

ボフン!

怜ちゃん《いくでー!》

竜ちゃん《おー!》

怜ちゃん・竜ちゃん《〔 怜 ち ゃ ん 一 族 × 竜 ち ゃ ん 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー ・ ミ ニ サ イ ズ )〕!!》

トキィィィイン...

リュゥゥゥゥゥ...カカカカカ....

1組のカップルの一族の想いを乗せた百合波動が飛んでいく。

そしてその波動を追いかけ、ミニマム百合波動が寄り添う。

次第に混ざり合い、園城寺一族と竜ちゃん一族、または清水谷一族と怜ちゃん一族のカップリングといった可能性も生まれ、

怜たちの手元を離れた今も可能性と威力が膨らんでいく。

しかし、

健夜「…………ふっ!」タンッ!

素早くサイドステップし、あっさりと避ける。

健夜「だから言ったよね?その位置からじゃ避けられるって」クス

怜・竜華「…………」

笑みを浮かべる健夜。それは最もな話だ。

いくら強力な攻撃とはいえ、当たらなければ意味はない。

しかし記憶を操作されないためには遠距離から撃つしかないというジレンマ。

それは遠回りに勝ち目がないことを示しているようで、弱気になった瞬間に戦闘意欲を奪おうとする。

怜(確かに……その通りや)

竜華(けど……)

健夜「!」

怜たちの攻撃を避けたところに、強大なふたなりが迫る。

晴絵(一発で終わりじゃないんだよっ!!)

健夜「これは……!?」

晴絵(師匠が教えてくれた、全ての力を出し尽くして放つ最終奥義……〔 約 束 さ れ た 貫 通 の 肉 棒 ( エ フ タ ナ リ バ ー )〕!!)

晴絵(寸止めのないエロ漫画から厳選した最強のふたなりをくらえっ!!)

女の子らしいフローラルな香りと、先端に黒い四角モザイクを纏ったふたなりの棒。

一直線に健夜へと突っ込んでくる。

健夜「っ……」

怜たちの攻撃を避けたことで油断していたせいか、違う角度からやってくるふたなりの棒に気付くのが遅れた健夜は、

とっさに反応するものの間に合わず……。


ポチィィィィイィンド!!!!

健夜「ぎっ……!!」

まともに食らうこととなった。

晴絵(当たった!!)

灼「ハルちゃん!!」

照「!」

照(すごい……)

健夜「かはっ……は……ぁ……」

怜(めっちゃ効いてる!)

今まで何度攻撃しても跳ね返され、ダメージを与えることが叶わなかった相手。

それだけにふたなりを受けて苦しんでいる姿は、照たちに希望を抱かせた。

久(もしかしたらいけるかもしれない……)

健夜「はぁ……はぁ……はぁ……」

竜華《けどまだ倒せてへん。怜!もっかいや!》

怜《うん》

健夜「あ、はは……これは一本とられちゃったなー」

怜《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕》シュババババ..

オンジョジョジョ..ズタニニニ!

弱っている健夜にトドメを刺そうと怜たちが追撃する。

今の状態なら当たるかもしれない、勝てるかもしれない、と。

しかし、

健夜「…………っ」サッ

怜(……ちっ、まだ動けるんか)

攻撃はかわされた。

そして次の瞬間、勝利へのほのかな希望は打ち砕かれた。

健夜「ふー……」

竜華「…………?あれ?」

怜「?どしたん?」

竜華「…………小鍛治プロ…………回復してへん?」

怜「え?」

健夜「………………」

晴絵「そ、そんな……」

怜たちの目に映ったのは、完全回復している健夜。

ふたなり前を食らうに戻っていた。

桃子(!そうだったっす……この人は458兵を蘇らせてたっす!)

健夜「……記憶を操作できるということは、全身の筋肉や細胞に対しても癒しの感情を与えられるということ」

怜・竜華「!!」


健夜「もっと簡単に言えば、精神力が回復した時の記憶を使って、たった今自分は癒されていると思い込ませれば脳はそれを現実と捉える……」

晴絵「それじゃあ……」

健夜「……そう。私は何度でも回復できる。力が尽きることはない」

灼「そんな……」

久「…………怪物ね……ほんと」

晴絵「…………ぁ……っ」フラッ..

晴絵(〔約束された貫通の肉棒(エフタナリバー)〕を使った代償か……力が出ない)

桃子「…………」

憩「何をしても……無駄なんか?」

煌「どこかに活路はあるはず…………そう思いたいですが……」

透華「……皆さんの闘志が薄れていきますわ……」

一「……無理もないよ。やっとのことで一撃当てたのに、それもすぐに回復しちゃうんじゃ……」

久美子「こんなに力の差があるなんて……」

豊音「うー……先生、なんとかならないかなー?」

トシ「……永遠に考え中だよ」

老婆たち「…………」ウトウト..

希望を見出したところで突き放された反動によって絶望が生まれ、諦めムードが漂う。

みんなが下を向き、冴えない表情をしていた。

……ただ1人を除いて。

照「…………まだだよ」

久「照……?」

健夜「…………」ピク

照「確かに……永遠に回復できるのはずるい。卑怯。チートだけど……」ギュルルルル..

怜「………………」

照「……一撃で倒しちゃえば、回復しようがない」

竜華「!」

照「私の〔連続妄想(コークスクリュー)〕なら……倒せる」

健夜「確かにね。宮永さんのソレが当たれば、ひとたまりもないだろうね」クスッ

煌「おお……」

健夜「でも……どうやって当てるつもりかな?言っておくけど、もうさっきみたいに油断しないよ?」

照「………だとしても……必ず当てて見せる!」ダッ!!

言い終わると同時に地面を蹴る。

照《『アヤ・エイジア×弥子(魔神探偵脳噛ネウロ)』……セット!》

そしてひたすら繋ぎ続けたコンボをセット。

目標は小鍛治健夜。

過去最大規模の竜巻を腕に纏いながら、一直線に走っていく。

照「っ……」ギュルルルルル!!!

健夜「…………根性論?嫌いじゃないけど……」


照「…………」タタタタ!

健夜「近くからなら避けられないって考えたんだね。確かに正しいよ。でも……」

久(小鍛治プロの記憶操作の有効範囲に入った!あのままじゃ…)

健夜「残念だったね。無駄だよ!」

健夜が〔深淵に触れる花びら(リリアルメモリアル)〕を発動させた。

そして照の記憶を操作し、攻撃の対象を憩と桃子に書き換えた。

これで照たちは健夜を倒せる威力をもった〔連続妄想(コークスクリュー)〕と回復する術を失う。

灼(今、操作されたっぽい……終わった……)

照「…………」タタタタ!

しかし照は止まらない。

健夜「……………」

照「………………」タタタタ!

健夜の元へと走り続ける。〔連続妄想(コークスクリュー)〕を唸らせながら。

健夜「………ん?」

久「どうして……?」

久(あの距離なら小鍛治プロは確実に能力を使うはず……それなのに変化がない……)

健夜「っ……!」スッ

照「!!」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

久「照ッ!」

怜(〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕……さすがにあれをもろたら……)

健夜「…………」

照「ぐっ!ああ……!」タタタッ!

健夜「!!!」

晴絵「一体……何が起きてるんだ……?何故倒れない……」

久「それどころか……止まらずに小鍛治プロの元へ向かって行ってる……」

記憶操作、〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕を受けてもなお止まらない照。

健夜の表情が驚愕に染まる。

健夜「くっ……」パラララ!

照「っ……」タタタ!

〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕を放つも、照はひるまず突き進む。

健夜「これは一体……」

照「………………」

照(やっぱり……思った通りだ―――)


~~~~~~~~~~~~~~~

少し前―――

照「…………いけるかもしれない」

久「え?」

照(倒せるかもしれない…………小鍛治プロを)

久「?」

照(そのためには……精神を操られてもなお戦えることが条件……)

照(普通に考えたら無理。行動記憶をも書き換えられる小鍛治プロの支配から逃れるのは不可能……)

照(……でも……それは自力での話……)

照(彼女の能力なら……―――)

~~~~~~~~~~~~~~~


照「っ……!っ!」タタタッ!

健夜「ちっ!」パラララ!

何度攻撃を受けても止まらない照。

ダメージは受けている。限界を超えてもいる。しかしその足は動き続けている。

そんな奇跡を起こしているのは、これまた奇跡的な美少女。

エイスリン「♪」カキカキカキカキ!

可愛すぎる気配を抑えて潜んでいたエイスリン・ウィッシュアートちゃんだった。

照(もう少し……っ)タタタ

〔エイスリンちゃんの描くとおり(エンジェルドリーム)〕。それは百合行動を操る能力。

イラストボードに描かれた対象は、全く同じ行動をとることを強要される。

照はこの能力を利用し、体力が尽きようと、精神力が果てようと、決して歩みを止めずに戦い続ける自分を描くよう頼んだのだ。

そのため、照の攻撃目標が健夜から憩と桃子に切り替わるよう記憶を操作され、さらに〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕によってすでに敗北するだけのダメージを受けてもなお動けている。

つまり、エイスリンが『健夜に挑む照』の絵を描き続けている限り、操られていようがいまいが照の意思は無視される。

エイスリンの能力では脳内までは支配できないため、健夜の記憶操作を無視して妄想をすることはできないが、

照の場合、妄想はすでに〔連続妄想(コークスクリュー)〕として外部に存在している。あとは竜巻となって固まった妄想をぶつけるだけだ。

本来なら健夜も操りたいところだが、〔エイスリンちゃんの描くとおり(エンジェルドリーム)〕の有効範囲は健夜の能力の範囲内。

自身が操られてしまっては全てが台無しであり、『照を描き続けるエイスリン自身』を描いても本人には能力は適用されない。

そのため、健夜の能力の範囲外から能力を使っている。

なのでイラストボードには健夜に向かっていく照――健夜と照という両者――が描かれていても、能力が作用するのは範囲内の照のみで健夜には無効。

健夜はあくまで『照の攻撃目標』として設定されている。

それは例え健夜によって攻撃目標を憩たちに変更させられたとしても変えられない。

照はエイスリンが描くとおりに動いている。健夜を敵とみなしていようがいまいが関係ないのだ。

照「はぁっ!」

真正面から突っ込んだ照はすでに健夜の目の前まで来ていた。

健夜「!!」

照「これ、で……っ……終わりだ……咲の……カタキ!」

記憶を書き換えられ、目標を変更させられた今の照にとっては不本意な攻撃。

しかし健夜へ向かって走り出した時の照は、この瞬間をずっと願っていた。

その想いを汲んだエイスリンが、照が言いたかったであろうセリフを描き、照はその通り口にする。

照「そして……私たちの……勝ちだっ!」ギュルッ!!

ギュルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!

健夜「―――――!!!!」

右腕に宿った竜巻。照が過去に積み重ねてきた妄想の集大成が振り下ろされる。

それは人生をそのまま叩き付けるようなもの。

一撃にして十数年の重みを備えた質量が、

健夜を、

健夜「!!」

貫いた。


健夜「………………」

照「…………っ、はあっ……はぁ……」

健夜「………………」

照「はぁ……は……っ……はぁっ……」

健夜「…………惜しい」

しかし健夜は倒れなかった。

それどころか、緊張を解いてリラックスするために息を吐くような、安堵を含んだトーンで声を発した。

その様子から全くダメージを受けていないことがわかる。

照「っ!?」

久「そんなっ!!」

エイスリン「!?!?」

怜「なんでやねん……当たったやないか……」

竜華「怜……うち、怖い……」ギュッ..

灼「嘘……」

晴絵「おいおい……」

照「…………」

呆然とする照。記憶が元に戻り、作戦通りに勝利できたと確信した矢先の衝撃に、頭の中が真っ白になる。

エイスリン「ッ!」キュキュキュ!

照「あ……」タタタッ!

すでに戦闘不能状態である照を健夜から離れさせるエイスリン。

しかしそのあとはどうすればいいのかまったくわからず、ただひたすらに照を動かし続ける。

健夜「ずいぶんショックを受けてるみたいだね。ってそれもそうか、何がなんだかわかってないよね」

久「…………」

健夜「教えてあげる。私は宮永さんの攻撃を受ける直前、数秒間だけ『自分の記憶を封じ込めた』」

照「!」

健夜「その瞬間、私は『百合知識を一切持っていない百合妄想士』になった」

健夜「これがどういうことかわかる?」

怜「…………」

健夜「一部例外は除いて、百合妄想士の攻撃が通用するのは百合妄想士だけ。つまり…」

晴絵「……その間、百合妄想による攻撃を無効化できる……」

健夜「正解。さすがだね」クス

怜(その理屈やったら百合に目覚めたばかりの百合妄想士にはどんな攻撃も効かないことになるんちゃうか?少し前の高鴨さんみたいな……いや、ちゃうか)

怜(百合が好きやったり百合に興味を持ってるから百合妄想士なんや。百合妄想士でありながら百合知識がゼロっちゅう人間が存在することがありえへん……高鴨さんかて、多少は知識を持っとった)

健夜「今の攻撃によって宮永さんの百合妄想を多少は記憶したから、二度目の攻撃は百合知識が少ない分、大ダメージを受けるけどね。当たればあっさりと倒れるくらい」

竜華(……けど、それも……)

健夜「ま、それも記憶の封が解けるまでの間だけどね。攻撃を受けてから数秒後にはもう元通りの私になってるから」


照「……………………」

久「……………………」

怜「……………………」

竜華「…………………」

灼「……………………」

晴絵「…………………」

エイスリン「…………」

桃子「…………………」

煌「……………………」

静寂と共に再び浮かび上がる絶望と諦め。

攻撃を積み重ねてダメージを与えたとしても何度でも回復し、一撃必殺は自分の記憶を操作して無効にしてしまう。

反則的なまでの強さだ。

照(もう……ダメなのかな……何度やっても、勝ち目は…………)

キュアァ..

照(え……?体が……精神力が癒されて……これは……荒川さん?)

憩「宮永さん……ごめんなぁ?」

照「?」

憩「……それにみんなも!ごめん!」

久「……へ?」

怜「な、なんなん?」

竜華「んー?」

灼「急に謝る意味がわからな…」

晴絵「うん……」

桃子「??」

煌「荒川さん……?」

エイスリン「??」why?

憩「うちにできることは、みんなを回復させるだけやのに、勝てへんとか希望はないとか……そんなことばっかり考えてもうててん」

照「…………」

照(それは私だって……)

憩「けどな?さっき宮永さんが諦めんと向かっていったのを見て、目が覚めてん。うちは自分にできることをやる!最後まで!」

照「荒川さん……」

憩「それであかんかったら……そん時はそん時や!」

照「…………そう、か………………うん、そうだね……」

照(諦めたらそこで終わる。大体、相手は私たちより10年以上長く生きている三十路手前。経験も実力も上回ってて当たり前だったんだ)

怜「……せやな。なんちゅうか、あれだけ強いと逆にオモロなってきたわ。負けて元々っちゅうか……猛虎魂の見せどころっちゅうか」

竜華「ほんまや……」クス

久「……そうね。ちょっと弱気になってたかも。でも考えてみれば、今のこの状況って悪待ちみたいなものよね。私の得意分野じゃない」フフッ


晴絵「あーあ。高校生に励まされるの何度目だろう?私は情けない大人だわ。ははっ」

灼「ううん、そんなことない。ハルちゃんは立派だよ」

晴絵「……ありがと。さて、もう一度気合い入れなおそうかな。そういえば、昔インハイでやられた借りを直接返すいいチャンスだし、それに……」

『今の攻撃によって宮永さんの百合妄想を多少は記憶したから、次に当たったら無効化どころか、今の私は百合知識が少ないから防御力が極端に低い。当たればあっさりと倒れるだろうね』

晴絵「…………少なくとも、ダメージを与える方法はわかったんだからね」

桃子「先輩のカタキ、絶対とるっす。そのためにはできることをやるっす」

エイスリン「ワタシモ……イッパイカク!」

洋榎「うちも……ここで負ける気はない!」グググ..

塞「同感。せっかくなら勝ちたいっていうかさ」ググ..

憩による癒しが満ち、力尽きた者たちが起き上がっていく。

小蒔「その通りです……」

霞「ええ……」

白望「……戦うのはダルいけど……それでも……」

穏乃「そうだよ……みんなで頑張ってきたんだ……勝って終わりたい!」

憧「……うん。しずの言う通り」

ゆみ「諦めるにはまだ早い……」

やえ「リリーブライドは王者だ……そして私も……っ!」ニワワ..

咲「……お姉ちゃん……」ググ..

照「!咲……」

咲「ごめんね。やられちゃって。もっと頑張ってお姉ちゃんを助けないといけないのに……」

照「ううん。咲はそんなこと気にしなくていい。咲は私が守るから下がってて」

咲「え……」

照「私が咲の分も戦う。だから咲は安全な場所に…」

咲「やだよっ!」

照「!!」

咲「私だって……お姉ちゃんを守りたい!お姉ちゃんだけに大変な思いをさせたくないよ!!」

照「咲……」

咲「……お姉ちゃんはいつも辛い思いをしてきたでしょ?」

照「…………」

咲「小学生の時、お父さんがお姉ちゃんへのお弁当にキャラ弁を作ったけど、そのキャラはふたなり魔法少女の全身を海苔といなり寿司で表現したものだった。秘部もリアルなアート作。それをクラスメイトの人たちに真っ白い目で見られたって言ってたよね?」

照「…………」ズキン

咲「その大事件があってから、お父さんはキャラ弁は顔だけでいいと学んだ。おかげで私に作ってくれるお弁当は可愛いって学校でも評判だった……お姉ちゃんは一時期『正午の陰部魔神』とか言われてたのに……」

照(そうだった。略して『インブマー』とか言われたっけ。忘れかけてた記憶が……うぅ……)

咲「……だから……私はお姉ちゃんを守りたい!お姉ちゃんが私を守ってくれたみたいに!」

照「『だから』の意味がよくわからない…………ううん、その話は置いといて……やっぱり危険だよ。咲が危ない目にあうのは……」

桃子「スクリューさん!」

照「?」


桃子「リンシャンさんの気持ち、よくわかるっす!好きな人に守られてるばっかりじゃ辛いっすよ!」

ゆみ「モモ……?」

桃子「甘える時は甘えて、やる時はやる!それが愛っす!」

照「…………」

怜「………………そやな。なんでもかんでもおんぶに抱っこっちゅう感じは……恋人ちゃう気ぃするな」

竜華「わ!怜をおんぶしたげたい!」エヘヘ

怜「………………こ、今度な//」

照「……園城寺さん……」

洋榎「宮永。妹ちゅうのは、姉が知らんうちに成長するもんやで。絹なんていつの間にかめっちゃデカなってなぁ。背もそうやけど……胸も……」

照「………………」

貴子「はッ!どいつもこいつもいいこと言ってんじゃねェ!腹殴るぞ!!」ズンズン..

雅枝「やめとき。青春や。ええやないか」

貴子「え?あ、はい!まさに!」

貴子(くそぉやりにくいァァッ!年上よ世界から消え去りやがれァァッ!)

照「咲……」

咲「…………」

照(……覚悟を決めた目をしてる……)

咲「私を信じて」

照(そう、だよね。咲ももう高校1年生の終盤だもんね)フッ

照「わかった」

咲「!お姉ちゃん」

照「私は咲を守る……だから」

咲「私はお姉ちゃんを守る」

照「うん……」

咲「えへへ。守り守られお姉ちゃんかわいい」

照「さ、咲だってかわいい//」

咲「うんっ!」

久「……準備は整ったみたいね」

照「あ、うん」

咲「はい」

久「…………じゃあそろそろ行きましょうか!」

照「うん」コクリ

洋榎「今度こそ倒したる!気合い入れるで!!」

咲「!」

キィィン..

照「?どうかした?」

咲「………私……新しい力に目覚めた」

照「!すごい」


咲「これなら……お姉ちゃんの隣で戦えるよ!」

照「咲……うん」

全員「っ!!」

ゴオオオオオ..

強大な敵、健夜へ挑むために奮い立つ面々。

圧倒的な実力差を前にしてもなお尽きぬ闘志。

この瞬間、彼女たちの精神力は大きく成長した。

健夜「…………あはっ、みんなすごいね。ここでパワーアップするなんて」

健夜「これだから若い子は面白いよね。私もまだ若いっちゃ若いんだけど」

雅枝「…………え、あんた何歳やったっけ?」

健夜「………………」

雅枝「………………」

健夜「……………………小鍛治健夜、17歳です♪」

全員「おいおい!」

健夜「ふふっ……なんて、ね」スッ

憧「!エイスリンさん!みんなを描いて!」

エイスリン「ラジャ!」カキカキカキ!

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

洋榎「ぐぉおおっ!?」

雅枝「ぐぉおお゛!!」

竜華「愛宕親子さん!」

洋榎「…………へ、平気や」

雅枝「ああ……っちゅうかその呼び方なんやねん」

エイスリン「フゥ……」

エイスリンは攻撃を受ける直前に雅枝たちを描き、戦闘不能を回避した。

さすがなもり先生500人分の速描きである。

憧(間に合ってよかった)ホッ

健夜「………………」

貴子「よく耐えたァァッ!そんじゃ突っ込むぞてめェらァァッ!!」タタッ!

塞「ええ」タタッ

白望「ん……」タタタ

エイスリン「デキタ♪」

貴子「!?私の体がオートモードになってっぞ!なんてミステリーだコラァァッ!!」

健夜に向かっていく近距離攻撃組。

エイスリンに描かれ、攻める。

ゆみ(近距離組が攻めてくれている。この間に作戦を練らないとな)

ゆみ《…………新子さん》

憧《はい》


ゆみ《小鍛治プロを倒すための作戦……君はどう考える?》

憧《……エイスリンさんの能力を利用すれば宮永さんの時みたいに小鍛治プロの攻撃と記憶操作に対抗できると考えられます。であればエイスリンさんの能力の支配下で戦うのがベストじゃないかなー、と》

ゆみ《なるほど……》

久《ただ小鍛治プロは、自分の百合妄想士としての記憶を一時封じてノーダメージにするという方法で攻撃を無効化してくるわ。これをどう対処するかが問題ね》

憧《…………そうですね……》

ゆみ《ふむ……厄介だな。小鍛治プロは致命傷を受けても自分自身を回復できる以上、強力な攻撃を与えて一撃で仕留めるのが最も有効だと思うが……》

久《一応、記憶を封じている状態では1回しか攻撃を無効化できないという欠点はあるのが救いね。2回目はむしろ通常よりダメージを与えられるなら……》

憧《ですが……強力な一撃ならばなおさら連発はできないですよね?小鍛治プロからすれば最初の一撃を凌いでしまえばいいだけ……》

ゆみ《そうだな……かといって他の手段は、回復する間もないほど連続で攻撃を叩き込むくらいしかなさそうだ。しかしこれでは……》

憧《エイスリンさんの能力では脳内までは支配できない。肉体が小鍛治プロと対峙していても妄想をぶつけられなければ無意味ですよね……》

ゆみ《ああ、そうなるな。妄想を形として具現化する宮永照のような能力でなければ難しい》

憧《…………やっぱり……結論は……》

ゆみ・憧《強力な一撃を連続で叩き込む…》

久《…………しかないわよね。となると照と鷺森さんがトドメ要員になるわね》

ゆみ《久の〔無数の絆(フラグメーカー)〕で宮永照の〔連続妄想(コークスクリュー)〕を使うことはできないのか?》

久《ええ。フラグが折れちゃったから》

ゆみ《そうか……》

憧《2人では心細いですけど……小鍛治プロの記憶操作の対象は一度に付き1人っぽいですし、その効果も数秒ほどでしたから、上手く立ち回れば数人がかりで攻撃できるかもしれませんね》

久《え?そうだった?でも2人をまとめて操ってた気がするけど》

ゆみ《いや、ほんの少しだけズレていた。記憶操作が有効な数秒間の間に次の相手を操っていた。正確に言えば『能力を使用する瞬間は1人ずつしか操ることはできない』というような制限なのだろう》

久《すごい……よく気付いたわね》

ゆみ《私の戦闘能力はかなり低いからな。せめて戦術面で役に立たなければ話にならない》

咲《あ、あの……》

ゆみ《ん?どうした?》

咲《私、ついさっき新しい能力に目覚めたんです。それで……お姉ちゃんほど強力じゃないですけど、私もトドメ要員に加われるかもしれないかな…って思いまして》

ゆみ《!それは心強い。是非頼む》

咲《は、はい!頑張ります》

憧《……ただ、一撃で倒せるだけの威力かはわからないから、あくまでトドメは灼さんか宮永さ…照さんで、咲はその前ってことでいい?》

咲《うん、わかった》

照(…………出会ってそんなに経ってないのにもう『咲』って呼び捨てにしてる……なんて早業……)ムムム..

憧《……えー、まとめると『エイスリンさんの能力を使い、小鍛治プロに攻撃を仕掛けて隙を作り、咲を先頭に灼さんと宮永照さんが仕留める。小鍛治プロが自身の記憶を封じることによる攻撃無効化に対応できるよう、時間差で攻撃する』》

ゆみ《状況次第では、神代さんや深堀さん、沢村さんたちに同時攻撃してもらい、トドメ組のサポート、だな》

憧《ですね》

ゆみ《それと、最重要なのは『エイスリンさんを守ること』。彼女がやられたら全てがおしまいだ。護衛役として花田さん、回復役として荒川さんと共に安全な場所にいてもらう必要がある》

憧《それはあたしに任せてください。常にみんなを操作できて、なおかつ小鍛治プロの有効範囲の外……そんな位置取りができるようサポートします》

ゆみ《頼んだ》


久《……大体決まったかしら?》

憧《はい》

久《それじゃ私もそろそろ行くわ。全体の把握とか諸々は2人に任せるからお願いね》

ゆみ《ああ》

憧《任せてください》

久「よぉし……」

久(いっちょ、やりますか!)タタッ!

腕まくりをして気合いを入れ、久は健夜の元へと走っていった……。

照「…………咲」

咲「なぁに?」

照「一緒に頑張ろう」

咲「……うんっ!」ニコッ


【儚可憐女学院 校庭】

咏「………………」

はやり「どうしたの?」

咏「いえ、小鍛治プロからなんにも連絡ないんで、どうなってるんかなーって」

明華「♪きっと無事ですよ~ラララー」

良子「たズームモスナインフィールドモスミスターナオスケホワイトバックとミスターナオスケますモス(便りがないのがいい知らせと言いますが)」

咏「……えーと……」??

理沙「何言ってるかわかんない!」プム!

成香「…………」コクコク

良子「そうですか?今のは…」

智葉「待ってください。本内が説明したいそうです」

成香「ええっ!?あ、あの……辻垣内さん……わた、私も、全然わからなくて……」オドオド

智葉「謙遜するな。さぁ、説明しろ」

成香「そ、そんな……」ジワ..

智葉「早くしろ」

良子「お願いします」

成香「あぅあぅ……そ、そうです!英語ならメガンさんが詳しいはずです。あの、メガンさん」チラッ

ダヴァン「ネギ味噌ラーメン、デリシャスメルデス」ズルズル

成香「今の戒能プロのセリフの意味を……」

ダヴァン「ソーリー。麺に集中したいノデ」

成香「あ、そうですか……す、すみません……」

智葉「早くしろ、と言ったのが聞こえなかったか?」

成香「あ、えと……うぅ……何から何までわからなくて……ミスターって2回も言ってますし、男性特有のことわざとかかもしれないですけど……でも……」

智葉「早くしろ」

成香「えっ!?あうぅ、えと……ご、ごめんなさい。わかりま…」

智葉「わからない、と言ったら罰金100万だ」

成香「っっ!!」ムググ

智葉「答えなくても罰金100万だ」

成香「っ!?」ハワワ!

はやり「たいへ~ん♪」

良子「エイトアローナインデッドハンドナインタッキー(早くしてください)」

成香「え?え?えいとあろー?あの、その……えうぅう……ゆるしてください………たぜいにぶぜいです……」グス

智葉「ふふ、しょうがないやつだな」

成香「はぅぅ……」

智葉「……取り乱し方がなかなか気に入った。あとで好きなお菓子を買ってやる」

成香「え?ほ、ほんとですか!?」

智葉「嘘だ」

成香「うぅ……そんな……」グス


智葉「……冗談だ。買ってやる」

成香「わ!嬉しいです」エヘヘ

智葉「……ふん」

はやり「はやー♪辻垣内ちゃん、本内さんに夢中?結構お気に入りなのかな?」

成香「えっ……」ドキ

智葉「……違います。私は……」

智葉(宮永……)

成香「つ、辻垣内さんが私を……て、照れちゃいます///」ハワー..

智葉「……調子に乗っているようだな。よし、デコピン1000回だ」

成香「い、嫌です!ひたいが痛いです!」

良子「ストマックボディでインクスペースビネガーマネークエスチョンマーク(痛いですみますかね?)」

咏(全然違う話になってっし……)

咏「…………」

咏(……負けたうちらがどうこう言うことじゃないかもしんないけど……大丈夫かねぃ)

咏(…………いや、あの人が負けるわけないか……)

哩「ん?こぎゃんところで何ばしとっとですか?」テクテク

姫子「もう戦いは終わった、とか?」

はやり「終わってないよ♪」

良子「ナウスリープ、小鍛治さんがバトルデスハンドるトゥースマップです(今頃、小鍛治さんが戦闘してるはずです)」

哩「????なるほど」

姫子「あぁっ!本当は全然わかっとらんはずやのに強がるぶちょう……素敵ですっ……///」

哩「参ったな。姫子はなんでもお見通しか。では私の愛も……」

姫子「はい……っ、すっごく、すっごく感じます///」


哩「姫子……///」

姫子「ぶちょう……///」

理沙「遅かった!」

哩「リザベール様!」

智葉「何をしていたんだ?」

哩「そ、それは……///」

姫子「ぶ、ぶちょう///」キュッ

はやり「はやー……それって人には言えない感じ?」

理沙「時と場合!」プム!

哩「し、仕方なかです!だって……地下、隣、姫子……とくれば……ラブしかなかと……///」

姫子「部長……///」

哩「あぁ……姫子……かわいいよ」ナデナデ

姫子「ぁん……部長の手……愛しいです///」スリスリ

理沙「は、はれんち……///」

成香「はわわ……らぶらぶでお熱いです……//」

ダヴァン「ずるずる……ッ!ゲホッ!ゲホッ!」

明華「♪むせないで、もう少し最後まですすり抜けて~」

ダヴァン「アリガトウ。マスバリガン!」

理沙「ゆっくり食べればいい!」プーム!

智葉「……そろそろ行きませんか?」

はやり「はや?」

智葉「小鍛治プロが戦闘に入ったのなら、勝っても負けてもこの戦いに決着は付きます。ならば、いつまでもここにいたってしょうがないです」

良子「カッパーアルミです(同感です)」

咏「……そだね」

咏(小鍛治さんの勝利を目の前で見届けて『458プロファイトオー』で締める……そんな感じになるだろうねぃ)


【儚可憐女学院 庭園】

純代《〔 他 校 と の 練 習 試 合 で 脱 … ( ト ラ ウ マ メ モ … )〕》

健夜「…………」ザザ..ザザ..

純代「…………あれ?私は……」

健夜「っ…………」スッ

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

純代「ぐぅぅっ!」

エイスリン「♪」カキカキカキ

純代「っ……まだまだ……!」

貴子「私もいるぞァァッ!!」

健夜「…………ふぅ」

戦闘再開から数分。照たちは猛攻を見せていた。

エイスリンの支配下の元、矢継ぎ早に健夜に襲い掛かり、ダメージを与えていく。

誰かが記憶操作されたら別の誰かが健夜を狙う。

どれほどダメージを受けても止まらない波状攻撃は、まるでゾンビの特攻だ。

厳密に言えば精神に負担はかかっているものの、憩がその都度回復するため、限界一歩手前を保っている。

〔ゆり座流星群(ゆりざりゅうせいぐん)〕も〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕も足止めにはならず、健夜はひたすら防戦一方だ。

しかし、それでも照たちには決め手が欠けていた。

どれだけダメージを与えようと、数秒あれば健夜は全回復してしまう。

しかも自分の力を使って他者を癒す憩と違い、健夜は『自分の力を使って自分の力を癒す』、まさに永久機関。

ただし力が無限にあるわけではないため、小蒔や純代、晴絵たちの火力なら連続して当てれば倒せる可能性は十分にある。だが健夜がそれを許さない。

実にいいタイミングで記憶を操作して間を作り、回復して凌ぐ。

時折灼が一撃必殺を狙いに行き、お尻の穴を見事捉えるも、記憶操作で肛門の位置の認識を変えられてしまい、能力を無効化されてしまう。

憧(……なんて人なのよ。たった1人でこれだけの人数を相手にして……)

煌「敵ながらすばらです」

ゆみ(絵面的にはこちらが押しているように見えるが……荒川さんの力が尽きればそれでおしましだ。エイスリンさんによって動けていても、妄想の力がなければダメージを与えられない)

憧(灼さん1人では決定機を作っても逃げられる。やっぱり頼れるのは…)

照《『パチプロ風雲録』、『クーデリア×ロロナ(ロロナのアトリエ)』、『中町かな×久地院美華(かなめも)』、『桂聖奈×桂みなも(極上生徒会)』、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら(みなみ×友紀)』、『蘭×園子(名探偵コナン)』…》ギュルルッルルルルルル!

憧(ものすごいサイズの竜巻を作ってる照さんと、新しい能力に目覚めたという咲……この2人と灼さんだ)

憧(他の人たちが上手く立ち回ってくれてる間に準備をして、最高の一撃を連続で決める……これしかない)

照がコンボを繋いでいく。すでに竜巻の規模は前回のものを上回っている。

あとは健夜に攻撃し続けている面々と、トドメ組である照、咲、灼の連携が鍵となる。

久《〔 無 数 の 絆 ( フ ラ グ メ ー カ ー )〕!そして…》ユラ..

健夜「!それは……」

久(私の記憶を操作されても大丈夫なように……あなた自身に作用するコレをくらってもらうわ!)

久が〔無数の絆(フラグメーカー)〕を使い、選んだ能力。それは三尋木咏の〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕。対象に幻を見せる能力だった。


久(これなら私の記憶がどうこう関係なく効果が期待できる!上手いこといけば照たちに大チャンスを与えられるわ!)

健夜「………………」

久(…………あれ?)

健夜「」スゥーッ..

久「!?消えた…………」

健夜「…………」

久「えっ?いつの間に違う場所に…………いや、違うわ。私が勝手に…………がはっ!?」ズキン!

久(なに、これ…………これってまるで……今私が使った〔幻想夢絵巻(げんそうゆめえまき)〕と同じ……)

健夜「…………」

久「……ま、さか……」

久はダメージにふらつきながら、最悪の答えに辿り着いてしまう。

久「……記憶を視た相手の…………能力も使える、わけ……?」

健夜「正解」

久「……!!」

百合妄想士は性格や環境によって様々な能力に目覚めるため、人に教わって能力に目覚めるということは少ない。

感性の似た者同士ならある程度は可能だが、あくまでも能力を使用する人間の素質や性質によって変わるため、自分に合った能力以外を扱うのは非常に難しい。

しかし健夜は対象の記憶を視ることができ、さらに自身の記憶をも操作できる。

対象が能力を使用できるに至る過去や考え方などをまるまる自分の記憶領域へ書き込めば『そんな一面を持つ健夜』が新たに生まれる。

人間が持つ多面性の一部に他者の人格や記憶を加えられるのだ。

『視る』だけで『知る』ことができ、その知識を『理解』し、自分自身の出来事として『思い出す』という形で完璧に使用できる……小鍛治健夜はそんな離れ業を可能にする。

健夜「…………」スッ

久「!!」

ズドォォオオオォォッォォォォオ...ン!!!!!

久「か……は…………」

久(エイスリンちゃんのおかげで体は動く……でも……精神力が……足りない)

憩「っ……」

憩(あかん……回復が追いつかへん。うちの限界も近なってきた……)

精神力を削りながらの特攻の要である荒川憩。

そんな彼女に限界が近付いていた。

もし憩の力が尽きれば回復手段は潰え、勝機はなくなる。大ピンチだ。

そしてさらにもう1つ問題が発生しようとしていた。

それは……

エイスリン「…………」カキカキカキ

エイスリン「…………ア!!」

エイスリン(……インク、キレカケテル!!)


可愛く衝撃の事実。

なもり先生ばりのスピードでひたすら絵を描き続けてきたエイスリン。

そのペースは一向に落ちることがなかった。

しかしインクは可愛くない。健夜を攻める面々をずっと描いたせいで、あっという間に消費してしまった。

もしインクが切れてしまえば〔エイスリンちゃんの描くとおり(エンジェルドリーム)〕は使用できなくなる。

それは健夜に対抗する術を失うことを意味する。

憧《……エイスリンさん?どうしました?》

エイスリン《インク、キレソウ》

憧《ええっ!?》

ゆみ《それはまずいな……どうする……》

照《……大丈夫。インク切れの前に決めればいい》

ゆみ《!》

照《この〔連続妄想(コークスクリュー)〕が当たれば倒せる。私たちが勝機を逃さなければそれで片が付くはず》

咲「お姉ちゃん……」

照《……みんなが…》

怜・竜華「はああっ!」トキリュリュリュ..

照《傷付きながらも…》

塞《ッ……まだまだ!ロリロリロリロリ…!》

全裸初美《ちゃんと……こっちを見るですよー!》

照《頑張ってくれてる…》


純代《〔 身 内 の 糞 便 を 踏 ん だ ( ト ラ ウ マ メ モ リ ー )〕》

智紀《もうすぐ三十路、同級生結婚、実家プレッシャー……》

照《だから今度は私たちが頑張る番……》

咲「……うん!そうだよね!さすがお姉ちゃん!みんなが思ってる当たり前のことを言ってくれたよ!」

照「え……………………う、うん。そう、だよね……当たり前……うん」

咲「お姉ちゃん?」

照「なんでもない。別に傷付いてないし。それじゃあ、咲…」

咲「わかった。そろそろ行くね」

照「ワンテンポ遅らせて私も行く。気を付けてね」

咲「お姉ちゃんも」

照「うん」

憧《……準備オーケーね。じゃあ合図送ります》

照《お願い…………『ファング×ヴァニラ(FF13)』、『らき☆すた』……セット!》ギュルルルルル!!

憧《エイスリンさん、東横さん、お願いします!ここが正念場です!》

桃子《!了解っす。鷺森さんをステルスにするっす》ユラー..

エイスリン《イエス!ラストバトル!》

憧の言葉を合図に、直接体に触れなければならないという灼の弱点を補うため、桃子が灼の元へ向かう。

そしてエイスリンがイラストボードに照たちを描く。

咲「!」

照「!」

灼「!」

ゆみ(エイスリンさんのインク切れと荒川さんの限界が近いことから判断するにチャンスは一度きり…………頼むぞ……)

458プロとの最終決戦、

ついにクライマックスに突入……。

咲「…………」タタタ!

咲(まずは私が先制して……小鍛治プロが自分の記憶を封じて無効化するように仕向けて、その直後にお姉ちゃんたちが攻撃して倒す……)

咲(あくまで私はきっかけ作りだけど……もし上手い具合に私だけで倒しちゃえば……)


~~~~~~~~~~~~~~~

照「咲は強いね」

咲「えへへ」

照「ご褒美として咲の言うこと何でも聞いちゃう」

咲「ほんと!?」

照「うん」

咲「じゃあじゃあ、24時間ず~っとギュッてしてほしいな///」

照「だめ」

咲「えっ!そんなぁ……約束が違うよお……アコギなお姉ちゃんかわいい……でも違法……」

照「……24時間じゃ足りない。ワンウィークギュッてする///」

咲「お姉ちゃん……///」

照「咲……」

そうして私たちは抱きしめあったまま『ハブアグッドナイト』を7回言う……。

~~~~~~~~~~~~~~~


咲(……いいっ!かわいいお姉ちゃんかわいい!)

咲(よぉし……頑張ろう!)キリッ

やる気に満ちた表情の咲。新たな能力を使うために集中する。

咲(お姉ちゃんとお風呂、お姉ちゃんと縁日、お姉ちゃんとピクニック、お姉ちゃんとお買い物……)

咲が妄想するのは照との日々。

強く求め、熱く願い、温かい想いに満たされる。

脳内に広がるいつぞやの景色。緑と花に囲まれ、嶺上開花の由来を聞いたあの日。

咲の意識はその時の場面へ入り込み、辺り一面に新たな花を咲かせた。

その花の名は妄想花(もうそうか)。

姉が放つ愛の光に照らされ、咲く花。

愛しい想いを込めて咲き、姉を優しく照らす花。

決して消えない姉妹百合。

宮永科 照咲属 おねえちゃんかわいい―――


咲(この……お姉ちゃんラブの妄想花を………左手に……)

脳内の映像から妄想花の放つ光を集め、左手に宿す。

咲「はぁあぁああぁ……」

咲の手より二回りほど大きい、ぐにゃぐにゃと揺らいでいるその光からは妄想花の花びらがヒラヒラと舞い、

その度に照の声が脳内に響く。

照『咲、咲。咲!咲?咲♪咲☆咲~、咲っ、咲ー、さき…』

咲(お姉ちゃん!お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!!!)

そしてそのあまりの愛しさに、胸がいっぱいになった時、その光は強く輝き、大きな花びらに変化する。

咲(あとはこれを……)タタタ

そして、咲は健夜の能力の有効範囲へと足を踏み入れた。

咲(ぶつけるだけ!)

ブンッ..

咲(当たって!!!)

ゴゥッ!

咲《〔 嶺 上 開 花 妄 想 花 ( お ね え ち ゃ ん と い っ し ょ )〕!!》シュリリリリリリリリ!

左手を軽く前へ突き出す。

それだけで光は高速で健夜目がけて飛んでいく。

健夜「む」

凄まじいまでに凝縮された姉への愛は、先ほど照が放った〔連続妄想(コークスクリュー)〕に勝るとも劣らない威力だ。

当たれば確実に倒れるであろう。

咲(お願い……!お姉ちゃんとのワンウィークのためにも!)

シュリリリリリリリリ!

健夜「っ……」

ズドォォオオォオォオ!!!

咲「やった!当たった!」

念願叶い、咲の攻撃は健夜に命中した。

健夜「…………」

咲「…………あれ?」

しかし、一瞬遅かった。

健夜「………………」

照(まただ……!)クッ

自らの記憶を一時封じ、無効化。

健夜はダメージを受けることなく、咲の攻撃を凌いだ。

咲(そんな……)


灼《大丈夫。最初から想定内だったでしょ》タタッ

桃子《その通りっす。無効化させただけで十分な仕事をしてくれたっす!》

ショックを受ける咲の横をすり抜け、第二の刺客が健夜に迫る。

狙いは性器かお尻の穴。

ボウリング場生まれボウリング育ち。タヌキT好きは大体友達。

一撃必殺のアナルスナイパー鷺森灼。

桃子と2人、ステルス状態で追撃する。

灼(記憶を封じている状態で宮永さんの攻撃を受けた今、小鍛治プロには百合知識が生まれた。その状態で私の〔一撃必昇(パーフェクトゲーム)〕を食らわせば、確実に倒せると思…)タタタ

健夜「………?」

灼(!気配を感じ取った……けど、遅い!今から動いてもこっちは反応できる!)

実家生まれ実家育ち、出かける時も大体その町。

運動不足のGR@ND MASTERへ、灼は手を伸ばす。

灼(よしっ!もらった!)シュッ!

右手と左手を使い、前と後ろを同時に狙うハイレベルアタック。

タイミングはバッチリだ。

勝った―――。

灼はそう確信した。

しかし、その手は健夜の太ももを掠めるにとどまった。

健夜「っ……」

灼の手は狙い通り確かな軌道を描いた。健夜は動けずに立ち尽くした。

それなのに灼の攻撃は失敗に終わってしまった。

灼の脳内は混乱状態に陥る。

何故?どうして?スプリットの嵐だ。

咲「そんな……!」

だが周りは気付いていた。何が起きたのか。

その答えは簡単だった。

健夜はある能力を使用し、灼の〔一撃必昇(パーフェクトゲーム)〕を防いだ。

その能力とは……

あらた「……………」

臼沢塞の〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕。

対象を幼女に変える能力である。

灼の攻撃が届く直前に記憶を取り戻した健夜は、再度記憶封じで凌ぐことをせず、〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕を使用したのだ。

その結果、灼は身長が縮み、狙いがその分だけ下がってしまった。

そして、

健夜「……捕まえた」ガシッ

あらた「!!」

幼女あらたの両手を掴み、再攻撃を封じた。


あらた(しまった!これじゃお尻の穴どころか……)グイグイ

ももこ(うぅ……離すっすー!)グイイ

健夜の手から逃れようとあらたとももこが奮闘するも、三十路手前の腕力には敵わない。

照(まずい……!この状況……!)タタタ

あらたたちの背後には照。作戦では咲、灼、照の順で攻撃し、記憶封じで回避したタイミングを狙う手はずだった。

記憶のない状態で攻撃を無効化できるのは一度きりであり、二度目は普段以上のダメージを与えられるからだ。

そのため、封じた記憶が戻るまでの数秒間に二度目の攻撃を仕掛ける必要があった。

咲の攻撃を記憶封じで防いだ場合の二度目が灼。灼の攻撃を防がれた場合の二度目が照、という作戦……。

しかし、灼の攻撃は塞の能力によって止められた。

つまり照の攻撃は『一度目』になり、〔連続妄想(コークスクリュー)〕は記憶封じで無効化されてしまう。

エイスリン「!」カキカキ

エイスリンが焦りながら周りのメンバーを動かしてあらたを解放しようとするが、灼の攻撃から数秒以内のタイミングを狙って健夜に向かう照の方が早い。

照「!!」タタタ

憧(…………終わった……)

ゆみ(この機を逃せばもう……)

全体を見渡す参謀の2人が観念する。この作戦は失敗だと。

照(ここまで来て……)タタタ

咲「…………っ!」ダッ!

照(え)

咲「と、まって……!」ガシッ!

照(咲……)

諦めムードが漂う中、動いたのは咲だった。

照の右腕を必死に抑え、攻撃させないようにする。

咲「ぐぐ……ぐ……」

照「っ……」グッ!タタタ..

咲「あっ……」

けれど、抑えられたのはほんの1秒程度。咲1人ではエイスリンの強制力を抑え込めるはずもなかった。

咲「うぅ……」

健夜「………………」

健夜が照を見つめ、待つ。

照の〔連続妄想(コークスクリュー)〕を凌げば、勝利は目の前だ。表情には焦りは全くない。

反して、とてつもない威力の竜巻を右腕に纏っている照の表情は暗い。

照(ダメだ……止まらない!)

健夜「……………」


穏乃「わあーーーーーーーーっ!!!」

健夜「!」

照「!?」

穏乃「…………」

何を思ったか、突然大声を出した穏乃に、健夜が一瞬目を向ける。

健夜「…………」フイッ

穏乃「あ……うぅ……」

だが穏乃はただ立っているだけ。一瞥し、すぐに照へと視線を戻した。

照(高鴨さん……少しでも私の攻撃が当たるように……ありがとう)

穏乃への感謝、そして敗北を悟ったことによる観念。

照は2つの意味を込め、目を閉じた。

そしてエイスリンが描いた通りに右腕を振り抜こうとする。

その瞬間、

健夜「…………」

健夜は自分の記憶を封じ、

やえ《〔 ニ ワ カ 殺 し ( ニ ワ カ キ ラ ー )〕!!!》

背後からやえの叫びを聞いた。

健夜「!!!」

健夜の意識外からの思わぬ乱入者。穏乃の声に気をとられ、視線を向けたその一瞬の間にやえが接近してきていたのだ。

照「!?」

そして照の攻撃が当たるほんの1秒前、自らの記憶を封じた健夜に対し、やえの〔ニワカ殺し(ニワカキラー)〕が命中した。

健夜「っ!ぐぁ……!」

記憶を封じ、百合妄想士でありながら百合知識のない唯一の存在となった健夜。

この状態では、知識がないが故に百合妄想を一度だけ無効化できるという特性がある。

しかし、やえの攻撃は無効化できず、ダメージを受けていた。

何故なら〔ニワカ殺し(ニワカキラー)〕はニワカな百合妄想士ほどダメージを与えられるという能力だから。

ある程度のレベルまで達した相手には効果が薄いが、今の健夜は百合知識のない百合妄想士。

百合を知りもしないのに百合妄想士を名乗る者……それは誰がなんと言おうと『ニワカ』である。

健夜「ぁ……」

そして〔ニワカ殺し(ニワカキラー)〕を受けたことによるダメージに加え、健夜の脳内には百合知識が蓄えられ、封じた記憶が蘇るまでの数秒間は知識の少ない百合妄想士となる。

つまり今の健夜は『限りなく弱い駆け出し百合妄想士』。

健夜「!!!」

そんな健夜に、

照《〔 連 続 妄 想 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー )〕!!!!!!》ギュロォォォォォォォォ!!

最大級の百合妄想が襲い掛かった。


健夜「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ズゴァァアアァァギュルルルルルルルルル!!!!!!!

脳内をカプが駆け巡り、百合作品が舞い散る。

そのあまりにも激しい百合濁流は、竜巻が血管を広げながら突き進むかのように全身を震わせるほどの衝撃を与えた。

健夜「ああああああああああああああああ……」

物語、設定、背景、考察、心情。その他様々な要因を込めた照の妄想群。

照「…………これで……っ……!」

一撃でありながらその厚みはすさまじく、

カプたちの甘い告白は何重奏にもなる。

視覚聴覚を百合が埋め尽くし、幸福感から味覚が至高の味を思い出す。

全身が百合に覆われ、癒され、埋め尽くされ、満たされる幸福の中……

健夜「……………………」フラッ..

健夜は意識を失った。

照「っ……」ガシッ

健夜「……………………」

照「決着…………っ……」フラ..

ドサドサ..ッ

力を失って前のめりに倒れる健夜を抱き留めた照。

しかし消耗によって足に力が入らず、健夜もろとも地面に倒れ込んだ。

健夜「………………………」

照「…………………………」

健夜「………………………」

照「…………………か、てた?」

照(勝てた…………勝てたんだ……)

照(………これもみんなのおかげだ…………)ホッ

『役割を果たすことができた』と安堵の表情を浮かべながら、照は撫で下ろし気味の胸をもっと撫で下ろす。

照「………………」

リリーブライド、リリーフラワーガーデン、宮守女子、永水女子、そして照たちと途中から加わったたやえと親エイ隊。

この日、458プロとの戦いに参加したメンバーのうち誰1人欠けてもこの結果をもたらすことはできなかっただろう。

みんなの力が合わさったからこそ、数で勝る458兵を退け、幹部たちを撃破し、

GR@ND MASTER、小鍛治健夜を倒すことができたのだ―――


照「………………」

健夜が倒れてからしばらくの間、沈黙が満ちていた。

何をしても勝てないと思わせられた強敵だけに、勝利したことが信じられない気持ちが実感としてあるのだろう。

だがそんな空気も時間と共にゆっくりと解けていく。

それぞれが抱えていた緊迫感が薄れ、表情が穏やかになる。

咲「お姉ちゃん、大丈夫?」

照「…………うん、大丈夫」

咲「よかった」ホッ

照「私より鷺森さんたちが心配。小鍛治プロのそばにいたけど気遣ってる余裕なかったから巻き込んじゃったかも……」

咲「あ、それなら……」

照「?」

灼「私たちは大丈夫です」

桃子「小走さんの攻撃で小鍛治プロの手が緩んだので逃げられたっす」

照「そうだったんだ。よかった」

灼「宮永さんの方が心配です。無理してましたから」

照「……私は大丈夫。みんなが協力してくれたから。最後頑張っただけ。鷺森さん、東横さん、ありがとう」

灼「いえ……」

桃子「こちらこそっす」

晴絵「灼」タタッ

灼「あ、ハルちゃん」

晴絵「よく頑張ったな。えらいえらい」ナデナデ

灼「………………うん///」

桃子「羨ましい……私も先輩に撫でられたいっすー!」

ゆみ「そうだな」

桃子「え」

ゆみ「モモ……頑張ってたな」ナデナデ

桃子「はぅ……///」

ゆみ「それに引き換え、私はダメだな。最後の最後で勝利を諦めてしまった」

桃子「先輩……」

ゆみ「諦めたら終わりなのにな」フゥ

憧「……あたしもです」

穏乃「あこ?」

憧「宮永さんたちが必死に戦ってたのに『もうダメだ、負けた』って思っちゃった。しずなんて能力が使えない状態でも最後まで諦めなかったのに」

ゆみ「そうだな。この勝利は高鴨さんが小鍛治プロの注意を引き付けてくれたことも大きい。間違いなく勝因の1つだ」

穏乃「いえそんな……私はただ叫んだだけで……」

ゆみ「謙遜する必要はない」クスッ

憧「……あの、ありがとうございました」

照「ううん、新子さんや加治木さんが色々作戦を考えてくれなかったらそもそも途中でやられてたと思う。こっちこそありがとう」

ゆみ「……そうか。ありがとう。少しでも役に立てたのなら嬉しいよ」

憧「え、あ、う…………ど、どういたしまして?」


穏乃「なんで疑問系?」

憧「いや、なんか面と向かってお礼とか恥ずいっていうか……」

穏乃「そう?嬉しくない?」

憧「嬉しいけどっ!宮永さんは素直クールっぽい感じで言うからなんか照れるの!」

穏乃「??」

純代「……宮永さん、お疲れ様です」

照「あ、お疲れ様」

純代「最後の一撃、すごかったです」

照「……ありがとう。でもあれを当てられたのはみんなのおかげだし……今回勝てたのは私がどうこうって言うよりみんなの力があったから…」

洋榎「そらそやな」テクテク

雅枝「当然やな」

貴子「ベタなこと言ってんじゃねェぞ宮永ァァッ!クソ語彙かてめェはァァッ!!」

照「っ、す、すみません」

貴子「その言葉も知ってる!!知らねェこと言えァァッ!!」

照「そんなこと言われても……」

怜「『活躍発 罵声行き』とかなかなかハードやな」

竜華「うちは宮永照は頑張った思うで?めっちゃえらい!めっちゃすごい!」

照「ありがとう」

小蒔「わ、私も!」

照「?」

小蒔「……私も照さんがひーろーだと思います///」

照「そ、そう?ありがとう」

小蒔「///」

霞「あらあら」

照(なんかみんなに褒められて恥ずかしい)

咲「……お姉ちゃんどうしたの?昔、胸を大きくするために牛乳パックで作ったお守りを学生鞄の内側に入れてたところを私に見られた時みたいな顔してるけど……」

照「さ、咲!!!それは……!」

ざわ・・・ざわ・・・

『そうだったんだ……牛に祈りをね……』

『神頼みしか手がなかった……悲しいけどそれも人生……』

照「も、もう!余計なこと言わないで!」カァァ..

咲「ご、ごめんね。今日も私はドジだから……」

全裸初美「…………宮永さんの気持ち、痛いほどわかるですよー」

塞「もうはつみたんったら冗談キツイんだから。小さいからいいのに。ねえ?」

白望「いや……ね?って言われても」

エイスリン「リョウホウスキ!」

白望「……エイスリン、意外と節操ないね」

エイスリン「エ?ナンダッテ?」

白望「……なんでもない」

親エイ隊たち「エイ様素敵~♪」キャー!


憩「…………なんとかなってよかったわぁ~」ホッ

智紀「同感。こんなに疲れたのは初めて…」

煌「私もです!しかし……決戦が終わったあと仲間で労をねぎらうこの感じ……まさに青春!すばらですっ!」

やえ「そうだな。この光景を見ることができて、王者として嬉しく思っているよ」ニワッ

久「加わってくればいいじゃない。荒川さんも小走さんも大活躍だったんだから」

やえ「しょうがないわね~。ちょっと顔見せがてら輪の中に加わってくるわ」テクテク

久「荒川さんは?」

憩「うちは見てるだけでええよ~♪」

久「欲がないのね」フフッ




豊音「終わったみたいだねー」

トシ「本当だね」ズルズル

豊音「わぁ!もう食べてるよー!ちょーはやいよー!」

トシ「すすることすなわち生きがいさ」

老婆たち「すすれるうちが花、とも言うわね」

久美子「…………これで458プロとの勝負はついたんですよね……」

透華「ええ……それにしてもまさか小鍛治プロがあれほどの強さだとは思いもよりませんでしたわ」

一「そうだね。想像を遥かに超えてたよ。それでも勝ったみんなは本当にすごいよね」

久美子「…………」

久美子(会長……皆さんがやってくれましたよ)

久美子(これで今まで通りの……いえ、今まで以上に百合に満ちた日々が続いていくんですね……)


【儚可憐女学院 庭園前】

界「カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!」

458兵たち「きゃあああ!!」

界「カリウ・ラ・スージ(わたくしの妹になりなさい)〕!!」

458兵たち「ぁ…………」ドサドサドサ..

界「ふぅ……」チラ

458兵たち「うっうー……」

界(残りわずかか……もう少しでなんとかなりそうだな)

界「………………」

界《……師匠、あの子たちは今頃どうなってるでしょうか?小鍛治健夜の強さは底が見えなかったですけど……この時間になっても彼女がここへ来ないということは、まだ戦いが終わってないと信じたいですが……でも……》

恵「………………」

界《……師匠?どうしました?》

恵《…………ん?なんだ?》

界《いえ、話しかけても反応がなかったので……》

恵《あ、ああ……そうか》

界「?」

恵《すまないがもう一度話を聞かせてくれ》

界《あ、はい……俺はもちろんあの子たちに勝ってほしいと思ってますし、小鍛治健夜が俺たちを始末しに来ない以上、まだ決着が付いてないんでしょうけど……嫌な予感がするんです》

恵《嫌な……予感?》

界《…………はい。師匠は感じませんか?》

恵「………………」

界《キ○タマの裏が蛇腹になるほどのかゆみを……》

恵《それは……》

界《俺は感じます。すぐに薬を塗りたいほど……》

界(このかゆみは一体…………病気ではないと信じたいが……)

ハギヨシ「……宮永様、原村様」

界「ハギヨシ君……?なんだ?」

ハギヨシ「申し訳ありませんでした」ペコリ

界「?」

ハギヨシ「たった今、私は全てを思い出しました」

界「なに!?」

恵「!」

ハギヨシ「458プロ側へついたことや、お嬢様を完全に裏切ってはいないと思わせるため、地下エリアへの隠し扉がわかるようにハンカチを挟んだことなど…」

界「それは……」

界(少数だけ地下へ連れていって各個撃破するという458プロの策略を破るきっかけになった時のことか。龍門渕さんへの恩義が瑞原はやりの支配をその一瞬だけ超えた、ということだと思っていたが……)

ハギヨシ「今回の私の行動の全ては、小鍛治プロによって決められたものだったのです」

界「なにっ!?小鍛治プロに……?」


ハギヨシ「はい。彼女の能力は『百合に関係する記憶を操作する』ことですので」

界「!なんて凶悪な……」

界(そんな相手にどうやって勝てっていうんだ…………ん?)

界「待ってくれ。君は今、全てを思い出したと言ったよな?それはなんでだ?彼女が解いたのか?」

ハギヨシ「………考えられるとすれば、小鍛治プロが敗北したことによって能力が解除されたか、お2人をここへ連れてきた時点で私は用済みとなったため、記憶を蘇らせた……といったところでしょうか」

界「そうか……本格的な戦闘に入る前にハギヨシさんにかけた能力を解除して負担を減らすということかもしれないな。反則的な能力だけに、負けたから解けたというより可能性は高いか」

恵「…………違う」

界「え?」

ハギヨシ「?」

恵「小鍛治健夜は敗北した。だから君にかけられた能力が解けたのだ」

界「師匠……?どうしてそんなことが言えるんですか?」

恵「私も全てを思い出したからだ」

界「えっ!?」

ハギヨシ「……どういうことでしょうか?」

界「師匠は瑞原はやりに操られ、敵対するよう仕向けられて……でも俺たちとの戦いが終わってからはリリーブライド会長としての自分を取り戻してくれたじゃないですか!」

恵「そうだな……だが真実は違っていたんだ。私は『瑞原はやりに操られてるように見せかける行動をとるように記憶を操作されていた』。さらに『瑞原はやり、あるいは自分が敗北した瞬間にリリーブライドの会長としての自分に戻る』という行動をとるよう植えつけられていた」

界「??ちょっと待ってください……それじゃあ師匠が正気に戻ったのは、小鍛治健夜によってそのように記憶を操作されていたからなんですか?」

恵「ああ」

界「……意味がわからないです。師匠を戦力として利用するならわざわざそんな面倒なことする必要は…………いや、それとも何らかの制限があって仕方なくやったことなのか?」ウーン

ハギヨシ「あるいは、そうすることで小鍛治様に都合のいい展開が望める……」

界「………………全然わからねぇ」

恵「………………」

界「…………あれ?」

ハギヨシ「どうされました?」

界「……師匠。小鍛治健夜は敗北した……つまり、うちらが勝ったんですよね?だから師匠は自分にかけられた記憶操作に気付いた……」

恵「ああ、そうだな」

界「…………おかしいぞ」

界(それならどうしてキ○タマがこんなにもかゆいんだ?)

界(戦いは終わった。それならこのかゆみは治まるはず…………まさか……)

ザァァァァア..

界(………………マジで病気なのか……?)


【儚可憐女学院 庭園】

健夜「…………ん……」パチリ

雅枝「お?目ェ覚めたようやな」

健夜「ここは…………そっか……私、宮永さんの攻撃を受けて……」

雅枝「ふふふ……どや?敗北の味は?」

健夜「………………」

雅枝「圧倒的な戦力差やのに負けた気分はどや?」ククク

洋榎「おかん……口悪いなぁ」

怜「しゃあないて。洋榎譲りやもん」

洋榎「なんでやねん!うちが後で産まれてんぞ!」

健夜「気分、ですか……そうですね。悪くない……ふふふ」

穏乃「…………?」ゾクッ

穏乃(何?今の感じ……背筋に冷凍みかんを当てられた時みたいな……)

健夜「圧倒的な戦力差で……最初は〔リリース(Lilys×Release)〕の使い方もわからなかった相手に……負けた」

雅枝「?」

健夜「強者揃いの幹部がいるというのに全力を出せない状況ばかり作ってしまい、最終的には戦力を分断した上、そちらから見れば最良とも言える組み合わせでの対決となり、全員やられてしまった……残念です」

憧「…………!」

憧(ちょっと……待って)

憧(この戦いは……458プロがリリーブライドを始めとする組織を倒して覇権を握る目的で行われた……そしてそのきっかけは辻斬りのように路上で戦闘を仕掛けてきたことが発端……)

憧(……その際に458兵や小鍛治プロが〔リリース(Lilys×Release)〕という力を使ったことから、あたしたちも458プロに対抗するために〔リリース(Lilys×Release)〕を会得した)

憧(……そして戦闘が始まった。戦力差に苦戦しながらもなんとか458兵たちとの戦いをしのぎきり、幹部と戦うことになった)

憧(咲と東横さんがさらわれたことで小鍛治プロが要求を受け入れざるを得なくなったあたしたちは、東校舎と北校舎に戦力を分散させられた状態を作り出された……と思ってたけど……)

憧(もしもあたしたち全員と幹部の人たちでまとめて戦ってたとしたら、はたして勝つことができた?)

憧(三尋木プロの幻をかわしながら辻垣内さんの視線から逃げ、雀明華の歌や野依プロの攻撃をしのいで、戒能プロの制限をかいくぐって瑞原プロの強固な防御を貫く攻撃ができた……?)

憧(その瑞原プロとの戦いだって、埴淵さんが雑誌とブログの記事によって瑞原プロのファンがエイスリンさんに流出するようにしてくれたからなんとかなったけど…)

憧(作戦が成功したのは校舎内の控室で埴淵さんがパソコンを操作できたからっていうのと、『リリーブライドの会長さんが前もって指示しておいてくれた』おかげでギリギリ間に合った)

憧(もし校舎内へ閉じ込められなかったら、埴淵さんは記事を書く余裕がなくて、瑞原プロを倒すこと自体が不可能になってた……地下での戦いが続いてても同じ。電波がないからパソコンも使えないし、瑞原プロの弱体化の効果も薄れてたはず……)

健夜「……そしてトップである私も、皆さんの前に敗北しました」

憧(……幹部を倒したあたしたちは小鍛治プロとの戦いへ。記憶を操作するという脅威の能力を前に、苦戦しながらも食らいついて、全員力を合わせて作戦を遂行して最後は勝利した……けど……)


ドクン..

憧(あれ……?そういえば……)

憧(小鍛治プロは記憶を視ることができるのに…………『どうしてあたしたちの作戦内容に気付かなかったんだろう?』それに……)

憧(『なんであたしたちは作戦を見破られる可能性に気付かなかったの……?』)

ゾワリ..

憧の背後に何かおぞましいモノが走ったような感覚に襲われた。

今まで見えていた景色が本物とはまるで違ったことに気付いたような……唖然とするしかない、そんな感覚だ。

憧(……おかしい。今になって違和感が止まらない。宮永さんの〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を簡単に受けたのはどうして?)

憧(エイスリンさんの能力によってなんとか持ちこたえていた時、エイスリンさんを一度も狙わなかったのはどうして?)

憧(回復役の憩さんもそう。憩さんがやられたらこっちは手詰まりだったのに、全く目を向けなかった。今回の戦いは救護班とかいうくくりはなかったのに……)

憧(回復といえば……小鍛治プロは回復能力を持っているのに、幹部の人たちを回復させずに1人であたしたち全員を相手したこともおかしい)

憧(458兵を蘇らせたことから、自分以外には効果がないわけでもないのに……)

憧(それと……宮永さんから〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕で見た内容を教えてもらった時、『ハギヨシさんが記憶を操作された時、カウンターじゃなくて小鍛治プロから仕掛けてた』って、あたしはどうして気付けなかった?)

憧(自分から操れるってわかってたら、カウンターじゃなければ記憶操作できないなんて考えには至らなかったのに……)

憧(……でも実際戦闘ではカウンターでのみ記憶操作をしてたよね……それってつまり『意図的にそうしてた』ってこと)

憧(それじゃあまるで……)


憧(『手を抜いてた』みたいじゃない……)

憧「っ……!!!」

気付いてしまった。

様々な違和感。そして疑問、仮定。

頭の中でそれらに対する答えを探し、1つの結論に達した時、あまりにもしっくりときてしまった。

いくつものピースが重なり、望まない絵が見えてしまったのだ。

憧(あたしの考えが正しいとしたら……)チラ

ゆみ「………………」

憧(……やっぱり、加治木さんもあたしと同じ結論に達したみたい)

雅枝「……なんやずいぶん奥歯に物が挟まったような言い方やな」

健夜「………………」

憧「…………小鍛治プロ」

健夜「なに?」

憧「あなたの目的はなんですか?」

健夜「……………」

貴子「おいァァッ!何を今さらなこと言ってんだ1年坊ァァッ!歴史を紐解く時期じゃねェ!」

憧「……あなたは、この勝負で勝利を目指さずに、敗北を目指したんじゃないですか?」

貴子「な……っ!てめェ!絶賛血迷い中か!?」

健夜「…………ふふ」

憧「…………やっぱり」

健夜「よく気付いたね」

憧「……おかしな点がいくつもありますから気付きますよ」

照「………………」

照(そうだったの?私は全然わからなかった。でもわかったふりしておこう)キリッ

咲「ね、ねえお姉ちゃんはわかってた!?」

照「え?あ、えと…………う、うん、わかってた」

咲「ホント!?すごい!じゃあ教えて!」

照「え……」

咲「お願い!」

照(訳知り顔してれば流してくれると思ったのに…………もしかして咲は私のそういう感じを見透かしてるの?)

照「……………………やめとく」

咲「えっ!?」

照「…………今はまだ多くを語る時じゃないから」

咲「そんなぁ……でも焦らすお姉ちゃんかわいい」

貴子「何がどうなってんだクソが……わけわからなくて暴力を振るいてェ……誰か適役……」チラ

やえ「!?~~っ!~~っ!」ブンブン!


憧「……改めて聞きます。『あなたの本当の目的はなんですか?』」

健夜「……………」

貴子「!コラァァッ!!短時間で2回質問するんじゃねェァァッ!!」

雅枝「うるさいわ。お前は黙っとれ」

貴子「………………ァァッ……」ムグク

貴子(クソァァッ!私の人生試練が多いじゃねェかァァッ!!)

健夜「……私の目的は前に言った通り…………『世界制覇』だよ」

憧「…………」

健夜「もっとも、ちょっとニュアンスが違うけどね」

雅枝「……どうちゃうねん」

健夜「……それは……」

健夜が口を開くと同時に、庭園を柔らかな風が吹き抜けた。

それはまるで閉じられた部屋のドアが開き、外を駆け回っていた空気がなだれ込んできたよう。

今まで過ごしていた場所とは違う空気が入ってきた、そんな感覚。

何を確信したわけでもない。だが全員がある一点に目と意識を向けていた。

そこにいたのは―――

?「………………」

照「え……」

咲「…………どう……して?」

久「これは……!?」

憧「!!?」

穏乃「え……………え?」

この場にいるはずのない人物。

リリーブライド会長の娘であり清澄高校1年生、原村和だった―――


【儚可憐女学院 庭園前】

界「はあっ!」ポチンチポ!

458兵たち「ぐぼぁあ!!」バタバターン!

界「ふぅ……」

458兵たち「ええーい!」タタタ

界「甘い!俺のふたなりっ娘に賢者タイムはない!!」ポチンタ!

458兵「げええっ!」バッターンヌ!

界「ふう~…………」

458兵たち「………………」ゴローン...

界「…………うむ。これで片付いたか。師匠、そろそろ……」

恵「………………」

界「…………師匠?」

恵「……あ、な、なんだ?」

界「いえ、なんだか心ここにあらずという感じだったので……」

恵「そうか……」

界(……師匠は一体どうしたんだろうか?)

ハギヨシ「…………原村様」

恵「…………なんだ?」

ハギヨシ「原村様も私と同様、何か思い出したのではありませんか?」

恵「!」

界「?さっき言ってたじゃないですか。記憶を取り戻したって」

ハギヨシ「……いえ、気になる言い方をされていたので」

界「?」

ハギヨシ「『瑞原はやり、あるいは自分が敗北した瞬間にリリーブライドの会長としての自分に戻る』と記憶を操作されていたのですよね?」

恵「…………」

ハギヨシ「『リリーブライド会長としての自分に戻る』。この言い方は少し引っかかります。その前に『全てを思い出した』とおっしゃっていますので……」

界「どういうことですか?」

ハギヨシ「原村様は瑞原様が敗れたあと、記憶を取り戻されました。しかしその記憶は本来の原村様のものではなかった。小鍛治様が敗れて初めて、全てを思い出した……ということではありませんか?」

界「!………そんな………」

恵「………………」

界「……そ、そうなんですか?師匠」

恵「それは…………」

ハギヨシ「………………」

恵「……………………その通りだ」

界「!!」

ハギヨシ「やはり……」

恵「…………そうだな。ここまで皆を巻き込んでおいてだんまりというわけにもいかんか」

界「?」

恵「……話そう。私が思い出したことを。そして……この戦いの始まりを」


界「始まり……」

恵「ああ」

目を閉じて一呼吸し、沈黙。

恵はスカートの裾を押さえながら、何から話そうか思案する。

そして少し強めの風が吹く。その風によるパンチラを防いだあと、ゆっくりと口を開いた。

恵「……私は結婚した時、妻とあることを話し合った」

恵「それは『やがて生まれてくる子供には、お互いの持つ百合知識を全て教えよう』ということ。そうすれば子供も百合の素晴らしさを知り、豊かな感性を身に付けてくれるだろう……とな。妻も私と同じく百合妄想士。議論をすることなく意見は一致した」

界「ああ……その気持ちはわかります。残念ながら俺の娘はふたなりはハマりませんでしたが…」

恵「その後、私たちは子を授かった。名前は和に決めた」

恵「2つ以上の数を加えて得た値である『和(わ)』はカップリングを表し、仲良くなる(平和、親和)、混ぜ合わす、応えるという意味も込めて名付けた」

ハギヨシ「素敵な名前です」

恵「……私たち夫婦は、和をとても可愛がった。和が興味を持ったアニメキャラやゆるキャラがいればすぐに関連グッズを買ってカプ相手を用意し…」

恵「漢字の勉強では部首を女の子に見立て、漢字が完成すると同時に百合になるよう工夫して自作の問題集を作ったりもした」

界「すげえ……俺はせいぜい女の子の人形をふたなりに改造して照にプレゼントしたくらいだ……しかもすげぇ泣かれて嫁に怒られたってのに…」

恵「そして次第に和の方から百合を求めるようになり、私たちがその要求に応えることでさらなる成長を遂げ、和は幼いうちから立派な百合妄想士となった」

恵「心から百合を愛し、そしてヘテロエンド丸出しの作品からですら百合要素を絞り出して百合萌えし、二次創作でたっぷりの百合を加えることを覚えた」

界「!!」

恵「幼稚園では、保母さんや友達のお母さんで複雑な恋愛関係の話を作り、すれ違う女性2人組を見ればネコかタチかを瞬時に見極め、そこから設定や付き合うに至った経緯を妄想し、トゥルーエンドとバッドエンドの両方をすぐに思い描けるほどのレベルに到達したのだ」

界「マジですか!それはすごい……」

恵「……そう、私も妻も同じように感じたよ。娘はものすごい才能を秘めている、とね。歴史上最高の百合妄想士になるのではないか……そう思うほどに」

恵「そして和もまた、それを望んでくれていた。少なくとも私にはそう見えた。だから私は和にもっと喜んでもらおうと、ある人物に和の教育を依頼した」

界「ある人物……」

恵「……その人物は……小鍛治健夜」

界「!!」

ハギヨシ「……!」


恵「本人は公にしていなかったが、小鍛治君は当時から百合妄想士としてトップを走っていた。私はその情報を入手し、彼女にコンタクトをとり、和の教育係を依頼した」

界「それで……小鍛治さんは……」

恵「快諾してくれた。顔合わせの際に和本人が『どれほど百合を愛しているか』を力説したんだ。その時に和の生き生きとした表情を見て……即決だったよ」

恵「それからというもの、電話やメールを使ったり、あるいはこちらから出向いたりもした。小鍛治くんは和のために色々なことを教えてくれたよ」

恵「和はとても心を許していた。小鍛治君も和を可愛がってくれてな。楽しそうに話している2人はまるで姉妹のようだった」

界「……百合を通して結ばれる友情……これはいいものだ」

ハギヨシ「ええ」

恵「だが……私たち夫婦は和の成長に夢中になるあまり、気付かなかった。私たちの百合教育が和にとってとんでもない悪影響を与えていたことを……」

界「え……?」

ハギヨシ「悪影響、ですか?」

恵「ああ。私たちは百合教育とは別に、通常の教育もしてきた。一般家庭でやるようなものをな。初めての子育てでわからないことだらけの中、探り探りで頑張ったつもりだ。しかし…」

恵「……私も妻も百合妄想士。どうしたって百合を愛する気持ちが先立ってしまう。全ての物事に百合を見てしまう。情操教育も、食育も百合だ」

ハギヨシ「……それは仕方ないことかと。実際はほぼありえないと思いながらも、デパート売り場の女性たちが恋愛関係にある可能性を期待してしまうものです」

界「ああ。対立し、罵倒し合っているレディース――暴走族――も、裏では昼間の喧嘩を引き合いに出して互いの肉体を貪っていると信じたくなる……これは条件反射のようなもの」

恵「………そう言ってもらえるのはありがたい。だが、結果として私たち夫婦の百合教育のせいで和に辛い思いをさせることになってしまった」

界「辛い、思い……ですか?」

恵「ああ……」


【儚可憐女学院 庭園】

和「………………」

穏乃「和……?ど、どうしてここに?」

和「………………」

貴子「原村和は百合妄想士じゃねェ。なのにここにいるってことは…………どういうことだコラァァッ!!私がパニックになってんぞ!!」

健夜「……そう。和ちゃんは百合妄想士じゃない。それは正しいよ…………でもそれは記憶が蘇るまではの話」

咲「!!」

憧「!それじゃ……小鍛治プロが和の記憶を……?」

健夜「うん。私が封じた。そして新たな記憶を植え付けた」

久「で、でも……記憶を操作できるのは数秒間だけじゃ……」

健夜「それはあえてそうしてただけ。やり方によっては長期間どころか永遠に効果が続く」

久「な…」

健夜「その場合、私の消耗もすごいし、解除するには条件があってね。その条件は……私が誰かに負けること」

ゆみ「!では……あなたの本当の目的は……」

健夜「私の目的、それは……」

健夜「『この戦いによって敗北し、和ちゃんの記憶を解放すること』」

憧「…………!」

煌「お、お待ちください!あなたは一体、原村さんの記憶をどのように変えたのです!」

健夜「……私はただ、和ちゃんが和ちゃんらしく生きていけるようにしただけ。辛い思いを抱えたままでいてほしくなかった」

久(………小鍛治プロと和の間に一体何があったというの?)

和「……ぁ……り……」ブツブツ

照(……原村さん……前に会った時と雰囲気が違う……なんだか、存在感が妙に薄いというか……)

咲(ずっと何か呟いてる………和ちゃん、どうしちゃったんだろう?)

洋榎「……ちょい待ち!その前に気になること言うてたやん!そっちを先に説明してくれや!」

健夜「?」

洋榎「負けるのが目的言うてたよな?それ自体にもなんでやねんって言いたいねんけど後回しや。負けたいんやったらなんで抵抗すんねん!回復したり記憶を操ったり……そこがどうしてもわからん!」

健夜「……そうだね。隠す必要はないし、説明するよ」

洋榎「おう!」

健夜「私は今まで誰にも負けなかった。どんな百合妄想士相手でも」

洋榎「…………」

健夜「素晴らしい百合作品に出会う度に『その作品を観た』という記憶を封じて、初見状態を維持したまま何度も繰り返し観賞して感動することで百合妄想士として鍛え上げられたんだろうね、自分でも気付かないうちに圧倒的な力を身に付けていた」

怜(……そらそうやろな。感性がものすごく磨かれる作品なんて限られとるし、何度も観ればええわけちゃう。ほとんどが初回の感動を上回れへん。けど、この人の場合は永遠に新鮮な状態で観られるんやもんな)

健夜「だからかな?私の防衛本能が負けることを良しとしてくれなかった。自分の意志ではなくて、体に染み込んだ記憶が体を動かしてしまうんだ」

久「!!」

塞「キルミーのソーニャちゃんが寝てる時でもパンチした時のアレね」

健夜「そう。だから私は防衛本能が働かないように自分の記憶を操作しようと思った……でも無理だった」


健夜「私の力は『記憶を操作する』。その操作とは『その記憶にたどり着く経路を塞いだり動かしたりする』というものと『記憶の空きスペースに新たな記憶として書き込む』というもの。記憶そのものを消すことはできない」

久「じゃあ……『忘れさせる=消す』じゃなくて『経路を塞いで思い出せなくしておく』ってこと……?」

健夜「そう。だけどそのやり方で『負ける恐怖心』とかその他諸々のマイナス感情を『安全で気持ちいい』という快楽記憶に繋げようとしたら、できなかった」

憧(!できなかった……?じゃあ、小鍛治プロの能力も無敵ではないということ……?)

貴子「なんでできなかったんだァァッ!……ですか?」

健夜「……私が和ちゃんの記憶を封じたからだよ」

穏乃「???」

健夜「私が和ちゃんに使ったのは、君たちに使ったような数秒単位で解ける軽い記憶操作とは違っててね。どうあがいても思い出せないほど、何重、何十重、何百重にもなる層で包んだ厳重すぎる封印なんだ」

健夜「本来なら封印した人間ならいつでも解けるようにするんだけど、和ちゃんの秘めた才能と能力がすごくて、そこまでコントロールできなくてね」

健夜「なんとか封印に成功したものの、その代償は私の全能力の8割を和ちゃんの封印維持のために使わざるを得ないほどだった。2割の力で8割の力を持つ存在の記憶を操作することはできない」

久「…………」

健夜「そして弱体化したせいで、私は自分の防衛本能という、生命に関わる領域の記憶を操作することができなくなった。だからわざと負けようとしても防衛本能に邪魔されてしまう……気付いたのはかなりあとだけどね」

洋榎「お、おいおい!ちゅうことは、うちらと戦った時のあんたは全盛期の2割程度の力やったっちゅうんか!?」

健夜「うん、そうなるね」

洋榎「…………なんやそれ……あれで2割やと……?」

健夜「まぁ、最初は弱くなった自分に戸惑ったけど、和ちゃんにかけた封印を解きたいと思った時、弱体化したことはむしろ好都合だった。何故なら最初に言った通り、封印を解く条件は『私が負けること』だったから」

照「!」

健夜「……正確に言うと『百合妄想による攻撃で私の意識を飛ばしてもらうこと』だけどね。私の封印は寝ても解けない。誰かの百合妄想で私が能力を一瞬でも使えない状態……電源が落ちるみたいなことかな?にならないといけない」

健夜「あ、もちろん私自身が死んじゃうか脳が機能を失っても解けるね。って、そんなの考えたくないけど……」

憧「……………」

憧(やはり小鍛治プロはわざと負けようとしていた……だから東西決戦のあと、わざわざあたしたちの前に姿を現し、〔リリース(Lilys×Release)〕を会得するヒントをわざわざ与えた)

憧(……小鍛治プロと戦ってる時にあたしらが思い付いた作戦も、戦闘中に植え付けられた記憶…………能力の隙に早く気付けたのも対処法を思い付いたのも、全ては小鍛治プロによるものだった……)

憧(そして……和にかけた封印が解けたということは、今の小鍛治プロは全盛期、つまりさっきまでの5倍ほどの力を取り戻したことになる……これは……もうどうしようもない……)

照「………………」

照(おかしい)

照(今の小鍛治プロの話……嘘をついてるようには見えない。だけど……)

照(それなら〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕で見通せてたはず。でも実際は今話したようなことは全く出てこなかった)

照(どういうことなんだろう……)

健夜「……とまぁ、そういうわけだから……って、ずっと私が喋っちゃってたね。主役は和ちゃんなのに」

ゆみ(今の話を聞く限り、原村和は458プロに所属しているわけではなさそうだが……しかしどうなるか……)

和「……ぃ……ぁ……ぅ」

健夜「…………どう?記憶を封じられてる間の記憶がなくなったわけじゃないから、変な感じはあるだろうけど…」

和「………ぇ………ゃ……」


健夜「………和ちゃん?」

和「…………………………ありがとうございます。小鍛治さん……いえ、健夜さん」

健夜「あ……懐かしいなその呼び方」

和「健夜さんには本当に感謝しています。全てを思い出した今ならわかります。健夜さんが私のためを想って行動してくれたということを」

健夜「和ちゃん……」

和「……でも、ごめんなさい」

健夜「え」

和「今、私の理性は……感情に支配されてます。だから……もう…………っ!」

最後まで言い終わる前に、和が体を一瞬震わせた。

すると全身をピンク色の光が包む。

健夜「和ちゃん……?」

何事かと思い、和の記憶を探ろうとする健夜。

しかしその直前……

和「その<行為(ゆり)>は<無効(ゆり)>です」

健夜「っ!?」ビクン

和の言葉と共に、健夜は能力を失った。

健夜(これは……!?記憶を視るどころか、能力を発動すらできなくなってる!!)

健夜「まさか……和ちゃん……」

和「<健夜さん(ゆり)>を<凡人(ゆり)>と<無能力者(ゆり)>の<三角関係(ゆり)>にしました」

健夜「!!」

なんという不思議なやりとりだろう。

和が発した言葉は、ほとんどが(ゆり)、(ゆり)、(ゆり)、(ゆり)。

健夜の耳にもそう届いた。

だが、回線を使った脳内のやりとり時のように、頭の中に正しい文字と音に変換され、なんの違和感もなく当然のように会話が成立していた。

健夜「私の能力を無効化……いや、違う……これは言葉通り……」

和「………を……に…………す」

そして完全に自分の世界に入っているかのようにブツブツと何かを呟く。

すると、

和「…………」スゥーッ..

和の体が段々と薄くなり、風景に溶け込むように消えた。


雅枝「ど、どういうことや。原村の娘は一体何をしてん!」

桃子「今の……っ!」

ゆみ「モモのステルスと同じ原理か!?」

霞「……そうね。どこからかはわからないけれど、気配はなんとなく感じるわ」

小蒔「な、何が起こってるのでしょうか?展開がよくわかりません」

全裸初美「私もですよー」

塞「……ホント、どうなってるのよ……」サワサワ

全裸初美「ひぅ!?こ、こんな時に触らないでほしいですよー!」

458兵BF「GR@ND MASTER!!大変です!」タタタ..

健夜「……あ……」ハッ

貴子「っ!まだいやがったのか雑魚敵ァァッ!ラスボスの時は空気消してろ三下がァァッ!」

健夜「いや、あの子たちは庭園の奥で和ちゃんの身の回りの世話をしてもらってたんだ。だから戦闘には参加しないよ」

貴子「そうなんですか?だったら…………物見遊山かコラァァッ!」

雅枝「お前はブレへんな。けど黙っときって」

458兵BF「た、たいへ……大変っ!」タタタッ!

健夜「大変って……何があったの?正直、今はこっちの方が大変なんだけど…」

説得力↑↑。

たった今能力を失うという驚愕の出来事を味わったばかりの健夜にとって、並の『大変』は大変ではない。

だが、息せき切って走ってきた彼女たちが言う『大変』は、『大変』だった。

458兵BF「実は……!今……」

健夜「?」

458兵BF「世界から…………ロシアがなくなりました――――」


【儚可憐女学院 庭園前】

恵「っ、なんだ?今の感覚は……」

界「師匠も感じましたか!?」

ハギヨシ「……お2人もですか?どうやら気のせいではないようですね」

恵「…………まさか……和……?」

界「え?」

恵「……間違いない」

界「どういうことですか?娘さんが俺のキ○タマの裏をかゆくしていたとでも?」

恵「……結果的にはな」

界「なんてこった……!」

恵「とにかく、庭園へ」

咏「あれ?あんたらって確か……」ザッ

界「む?」

理沙「会長!スポンサーの執事!」

良子「……ドア、宮永ラストのテールロードクローズドゴーすルーツ(と、宮永姉妹のお父さんですね)」

哩「???」

姫子「素直にわからない表情ばする部長も素敵です……///」

咏「……『宮永姉妹のお父さんですね』、だってさ」

智葉「な、何!?そ、そうなのか……こほん」キリッ

成香「?なんで急に真面目そうな演技をするんですか?さっきまでポケットに手を入れて舌打ちしながら歩いてたのに……いろいろ不思議です」

智葉「…………あん?」ギロリ!

成香「ひぃぃいい!!こわくて怖いです!」

ダヴァン「OH!同じ言葉を続ケテ言うことで強調してまスネ!タンタン麺と同じ原理デス!」

明華「♪NO NO NO NO NO NO NO~」

はやり「はやー☆ブルーハーツかぁ。いいねー」

恵「君たちは……458プロの……」

界「……やる気か?それならこっちも、先端をテカらせて…」

♪~

ハギヨシ「失礼します……ぁ!お嬢様から着信が…………もしもし、ハギヨシです」ピッ

咏「ここでうちらが戦ってもねぃ……決着の瞬間を見に行こうとしてただけだし……」

理沙「戦わない!」

明華「♪Wow WowWow~ さぁWAになって踊ろう~」

良子「ダンシングアンティルゲソメソメソハンドもストマックストマックのでリーフ?(踊るまでいかなくてもいいのでは?)」

哩「……戒能プロ。今は能力ば使っていないのにどうしてそこまで英語を……?」

良子「……クセです」

姫子「意外とシンプル……そぎゃん言葉ば引き出した部長……好きです///」

界「……そうか。戦う意思がないのならこちらから仕掛ける必要もない。亀頭を皮に収めるか」フゥ

ハギヨシ「っ!!!!」


恵「…………」

ハギヨシ「…………は、はい。かしこまりました。失礼します」ピッ

界「どうしました?青い顔してますけど……」

ハギヨシ「……少々お待ちください。今はお嬢様からの情報の事実確認がありますので」ピッ..プルルル..

界「?」

恵「……少年。行こう」

界「え?あ、はい」

智葉「……では私たちも行きますか」

良子「ジェネラルターム(そうしよう)」

咏「それ『総称』じゃね?響きは似てるけど」

良子「……アローボウ(野暮)」

咏「いやいや……Bow and Arrowも弓矢で似てるかも知れんけど……」

良子「…………」

明華「♪ゲンキダシテ~」

はやり「はやー☆咏ちゃんの茶々は気にしないで☆」

理沙「応援する!」プムッム!

良子「サンクス(ありがとう)」

咏「茶々っていうか純粋に気になって………って別にいいけど」

哩「とりあえず庭園へ行きましょう。姫子、手ば繋ごう」サッ

姫子「あっ、はい…………部長の手……あったかい……///」

ダヴァン「このカップ麺もなかなか熱くていいでスネ!ずずず……」ゴクゴク

成香「あ……インスタントラーメンのスープを飲み干すなんて……けんこうが危険です」


【儚可憐女学院 庭園】

やえ「ろ、ロシアがなくなった?な、何を言ってるんだ!」

塞「その通りよ!それじゃあイリヤたんや響やマリー・ローズたんやクドリャフカたんの存在はどうなるのよ!」

エイスリン「エリーチカモ!」

458兵BFたち「え、あの、ですから、その……今言った通りで……」

透華「…………ええ。ではまた後ほど」ピッ

一「……ハギヨシさん、どうだった?」

透華「正気に戻ってましたわ。458プロ側へ付いたのはハギヨシの意志ではなく、小鍛治プロに操られていたみたいですわ」

一「よかった」ホッ

透華「ええ、本当に」ニコリ

透華「……そして今、ロシアについて調べが付いたら折り返し連絡をするよう頼んでおきましたわ」

一「そっか。ハギヨシさんならすぐに調べてくれるよね」

透華「…………それにしても……ロシアがなくなった、とは……」

一「どういう意味なんだろう?ロシア出身の百合キャラがいなくなった……?」

♪~

透華「!ハギヨシですわ!」

一「さすが!早いね」

透華「もしもし………………ええ…………わかりましたわ」ピッ

智紀「…………ハギヨシさんから?」

透華「智紀……」

一「!ともきー……お疲れ様」

智紀「うん。2人もお疲れ様。それで……」

透華「……ええ。ハギヨシからですわ。ロシアについては『検索していただければわかります』と言われましたわ」

智紀「検索?やってみる」ピッ

智紀(『ロシア』で検索……)ピッ

智紀「………………!!そんな……」

透華「い、一体どうなったんですの!?」グイ

一「ボクにも見せて!」グイ

智紀「………………これ」スッ

透華・一「!!!」

智紀が2人に検索結果を見せる。

その画面には、

『次の検索結果を表示しています:シア×ネリネ

元の検索キーワード:ロシア』

と表示されていた。

透華「……普通ならありえませんわ……ロシアが引っかからないなんて」

トシ「それだけじゃないんだよ」テクテク

一「え?あなたは……」

トシ「ババアに名前なんてないよ」

一「いやあるよ!?」

智紀(……こんな時でもマイペースなのは尊敬に値する……かもしれない)


トシ「これは世界地図の画像を表示した携帯画面さ。そこには……」スッ

透華「まさか……!」

一「……そ、そんな!!」

智紀「…………ありえない……っ」

トシの手の中の携帯画面を見た透華たちは驚愕の表情を浮かべた。

まさに三者一様の反応だ。

何故なら、その世界地図には本来ロシアがある場所はそのまま載っているが、国名の代わりに『テーマパーク』と表記されていたからである。

透華「……ど、どういうことですの?」

一「…………ボクに聞かれても……」

トシ「簡単な話さ。ロシアはこの世界から消え、その土地はテーマパークになったんだろうさ」

透華「………そんな馬鹿な話が……」

洋榎「ありえるっちゅうか、起こってもうたみたいやで」テクテク

一「え」

洋榎「wikiでロシア出身キャラのページを見てみてんけど、出身地は書いてへんかったり、別の国やいうことになっとった」

智紀「じゃあ……本当に……」

洋榎「今あっちで園城寺がずっと調べてんけど……」チラ

怜「…………」スッ(膝枕れつつ両手でバッテン)

竜華「はいっ!」スッ(膝まくりながら両手でバッテン)

洋榎「……やっぱあかんみたいや」

智紀「………………」

智紀(ロシアが消えた……本当に……)

照「………………」

照(一瞬の間に世界から国が消えるなんて……そんなことがありえるの?)

咲「お姉ちゃん……大丈夫?」

照「え?大丈夫って……?」

咲「だってお姉ちゃん昔、ゴッドイーターのアリサのコスプレを作って着てたよね?ロシアにすっごく思い入れがあるんじゃないのかなって」

照「なっ……そ、それは……///」カァァ

咲「際どい衣装で鍵盤ハーモニカを持って鏡の前で学習机をアラガミに見立ててポーズを…」

照「だ、だめ!しーっ!」ガシッ

咲「もごぐ!?」

照「……それは喋っちゃダメな過去。顔が赤くなるやつ。ね?」

咲「…………ん」コクリ

久「あなたたちもマイペースね」

照「そんなことない。ただ咲が血塗られた歴史を……」

咲「ごめんねお姉ちゃん。私、ドジで…」

照「……………ドジってどういう意味だかわからなくなってきた」

穏乃「ねぇ憧。ロシアがなくなったってどういうこと?」

憧「あたしにもどういう意味かよくわからない。国土はそのままでテーマパークになったなんて…………ねえ?」

灼「うん。謎だよね」


憧「それと気になるのは、和の姿が消えたこともだよね。和の能力は自分の姿を消すこと?それに付随して何かを巻き添えにするとか?それがロシアで……」

晴絵「可能性はあるかもね。でも考えるよりも聞いた方が早いよ」

穏乃「??」

憧「……それもそうか」

晴絵「…………小鍛治さん」

健夜「………………」

晴絵「今、一体何が起こっているのか……あなたなら知っているんじゃないですか?」

健夜「………………そう、だね」

晴絵「…………教えてもらえませんか?和の身に何が起きたのかも」

健夜「………………うん」

恵「それは私から説明しよう」ザッ

晴絵「え」

健夜「……原村さん……」

界「照、咲。元気そうだな。よかった」

照「!お父さん……」

ゾロゾロゾロ..

小蒔「わわ……いっぱい来ました。幹部の人たちです」

霞「そうね」

咏「へえ。さっきまでだんまりだったのにねぃ。どういう風の吹き回しかな?」

恵「…………」

咏「……ま、いいけど」

白望(…………原村和の姿と共にロシアが消えた。一体どういう繋がりがあるんだろう……)

豊音「ね、ねえ、何がなんだかわからないよー?敵の人たちも来てるし……シロ、教えてよー」

白望「今から説明してくれるってさ」

豊音「あ、そうなんだー。よかったー」ホッ

白望(塞は大丈夫かな……)チラ

塞「ソーニャちゃんはどうなるのよ!カーチャたんだって!」

458兵BF「私に言われても……」

白望(…………落ち着かせに行くのもだるい……ま、いいか)

恵「………………」

恵はゆっくりと周りを見回す。

その視線を受け、『ロシアの存在と共に幼女遺産が失われるのでは』と騒いでいた塞も静まり返った。

恵「………………」

そして全員の注目を集めた恵は、ゆっくりと語り始めた。

恵「……今、この世界に起きていること……それは和の力によるものだ」

恵「和は自身の能力を使い、世界からロシアを消した」

憧「………………」

恵「いや、それだけではないはずだ。こちらに情報が届いていないだけで、数えきれないほどの変化が起きているだろう」


ハギヨシ《!原村様、たった今連絡が入りました。原村様の予想通りでした》

恵《詳しく話してくれ》

ハギヨシ《はい。まず……》

哩「……プライベート回線で何かを話しているようだな」

姫子「話せないようなことなのでしょうか……」

恵「……わかった。ありがとう」

ハギヨシ「はい」

恵「…………たった今新しい情報が入った。世界に起きた変化の続きだ。オランダのFIFAランキングが1位になった」

智紀「?」

豊音「FIFAランキングってなにー?熊倉てんてー!教えてー!」

トシ「えっと……そう、だね…………そ、それは人によって意味合いが違うんだよ。定義はないのさ」

豊音「そうなのー?」

老婆たち「え、ええそうよ。言葉のまやかしね」

豊音「そっかぁー。デタラメなんだー」フムー

煌「いえ、FIFAランキングというのは簡単に言うと『サッカーの強い国ランキング』のようなものです」

豊音「へえー!そうなんだー!教えてくれてありがとうねー♪」

トシ「……ババアに恥かかせることもすばらかねミスハナダ」

煌「も、申し訳ありません……すばらっ」

恵「……そして2位から5位がベルギー、カナダ、ノルウェー、南アフリカ共和国に変わっている」

洋榎「は?いやいや、そない上位の顔ぶれが変わるわけないやん」

恵「…………言っただろう。そのありえないことを起こしてしまうのが和の力なんだ」

洋榎「……っ………」ゴクリ

恵「和の能力……それは『百合を支配すること』」

照(百合を支配……なんだか漠然とした言い回しだけど……)

恵「百合が関わるものは全てが和の支配下に置かれる。そして和が望むまま、その姿、価値、意味……様々なモノを変える」

霞「…………」

恵「……ロシアは同性愛について色々と問題があった。だから和はロシアが存在しなかったことにし、同性婚を認めた国のFIFAランキングを大幅にアップさせたのだろう」

貴子「ガキ丸出しじゃねェか!」

恵「…………そうだな」

良子「ナウまで住んでた侍1コンボは(今まで住んでた人たちは)……」

恵「和の性格上、犠牲は出さないだろう。別の国で産まれたことにしたか、そのままテーマパークのスタッフや関係者として暮らしていると思われる」

怜「よかった……けど『侍1コンボ(さむらいわんこんぼ)』で『人たち(一太刀)』は強引すぎひん?」

良子「…………ノーコメント」

怜「ビシッ!(なんでやねん!)」

雅枝「……ちょお待って!百合を支配する言うても……『あの国は嫌や!』と思ったからって存在を消せるとかおかしいやんけ!ロシアは百合ちゃうし!なぁ?」

エイスリン「ワケガワカラナイヨ……」コクコク


恵「……そうだな。では1つ質問をしよう。この世界の物質は何でできているか知ってるか?」

照「???」

塞(『幼女が何でできてるか?』だったらわかるんだけどなー。お砂糖とミルクと……ハチミツ?あ、はつみたんだったら甘~い黒蜜かも)フヘヘ

全裸初美「っ……」ブルッ..

憧「……原子と分子の集まりだったかな……電子とかも関係してたっけ?確か……」

恵「いや、そこまでで構わない。簡単に説明すれば、この世界の物質は分子や原子から成り立っているということだ」

界「師匠、それがどう関係してくるんですか?」

恵「……言っただろう?『和は百合を支配する』と。そして和は『分子(ぶんし)』を『分子(ぶんこ)』という女の子として認識し、支配下に置いた」

照「…………は?」

咲「え……?」

恵「そうなれば、分子や原子が集まって作られる物質は『分子(ぶんこ)』という同一人物による百合物語、または多重人格者かパラレルワールドでの自分との百合になる。『原子(げんこ)』も絡めば三角関係にもなり大作に近付く」

ゆみ「ということは……」

恵「……物質は百合、ひいては地球自体が百合になり、地球に存在する物質は和の望むままに動かせる」

怜「…………うそやん……」

咏「あっはは、は……」

咏(理屈が無理矢理すぎる……でも無理矢理なだけに、分子を百合だと本気で思える原村和の異質さが際立つねぃ)

咏(極端な話、百合妄想士は思い込みで限りなく成長することができる存在だけど…………心から思い込むというのは簡単じゃねーし)

咏(妄想を練るのが上手くなればなるほど人間の心理について鋭い感覚を身に付ける……だからどこかで自分を騙してることに気付いちゃうしねぃ)

ゆみ「し、しかし……原村和はこの場にいながらにしてロシアを消したというのですか!?能力の有効範囲のケタが違いすぎます……いくら才能が図抜けていたとしても、ありえない……」

恵「常識で考えれば君の言う通りだ。だが現実は違う。さっきから和の姿が見えないことについてどう思う?」

ゆみ「え……それは……」

恵「……和は今、『世界になっている』」

ゆみ「…………な」

怜「………あかん。電波すぎて理解が追いつかん。まるで小走やえや」

やえ「おい!私は至極まっとうだ!電波なことなど言ってない!!」

恵「和は自分自身を百合として扱ってるのだ。『分子(ぶんこ)』の集まりしてな。ならば人と光、空気の境目などあってないようなもの」

恵「世界と同化し、『世界という存在そのもの』になった和は、自分以外の百合妄想士の力を自分の力として取り込んでいるのだ」

恵「つまり……『この世界に存在する全百合妄想士の力が和の元に集まっている』ということだ。人間の思考も百合だからな。その膨大な力が和本来の能力を最大限に活かし、世界を変えることを可能にしている」

智葉(…………なんだこの展開は。どうなっている……)

成香「はわわ……ぜんぜんわからないです……」

憧「……要するに、和はあたしたちを含む全百合妄想士の力を使って世界を改変したってこと?」

恵「そうだ」

憧「…………なるほど。とんでもないことだけどある意味理解できる。臼沢さんの〔幼女領域(ようじょ・フィールド)〕の中ではみんなが幼女に見えるのと同じ現象を地球規模でやってる、みたいなことね」

恵「ああ」

洋榎(なんで理解できんねん……逆にアホちゃうか?)


憧(……だったら現実世界ではロシアは存在したままで、百合妄想士たちだけが世界が変わったと思い込まされてる状態ってことかな?でも……)

憧(人間が持つ力はまだまだ計り知れない部分がある。スピリチュアル的だけど『思考は純粋な振動』で、その振動によって物質ができるとか聞いたことあるし…)

憧(そんな力を和が引き出して、全世界の百合妄想士で一定の志向性を持つ思考エネルギーを発し続けたら……現実に影響を及ぼさないとも限らない)

憧(人が思考する生き物だからこそ、世界では信じられない出来事が起こっているんだし……)

憧(もしかしたら、全世界の百合妄想士以外の人間の脳内にまで影響を及ぼして、ロシアに関連する記憶や何やらは全て存在しなかったという風にしたのかもしれない。ロシアを消したというより、ロシアを知る人間を0人にした可能性もある)

憧(でもそれならあたしたちがロシアの存在を覚えてることが引っかかる。一番近くに存在してる百合妄想士を放っておく理由がない…)

照「………………」

照(……ダメだ。全然わからない)

咲「お姉ちゃん、私よくわからなくて……教えて?」

照「えっと…………ごめん、私もよくわからない」

咲「そっか……」

健夜「………だろうね。それだけあなたと和ちゃんは考え方が違うってことだよ」

照・咲「え」

照(なんだろう……やけにトゲのある言い方だけど)

ゆみ「……小鍛治プロ。これがあなたたち458プロがやりたかったことなのですか?」

健夜「…………そうだね。458プロが目指したのは世界制覇。あながち間違ってないよ。順番が違うけどね」

ゆみ「順番?」

健夜「そう。私は和ちゃんの封印を解くために458プロを立ち上げた」

健夜「そして和ちゃんを助け出した結果、和ちゃんによって世界は百合に優しい世界へと変化を遂げ、和ちゃんも458プロのみんなも幸せになれる、そんな世界にしてくれると思ったから」

咏「…………確かにそうかもねぃ」

咏(あくまでもこの世界におけるスタンダードは異性婚。いくら百合が浸透しようが同性同士が結ばれるための壁は高くて厚い。けどそんな壁を原村和は一瞬で溶かせる……そんな壁が百合の醍醐味だったりもするからややこしいけどねぃ)

健夜「……だから458プロは君たちとの勝負で負けたけど、結果的には思惑通りになった…………そう、思惑通りだよ……」

恵「………………」

貴子「……待ってください。小鍛治プロ、あなたは原村ァァッ!に能力を封じられたじゃないですか!」

健夜「え?ああ、そうだね」

貴子「それは反逆のノドーカじゃねェッスかァァッ!!?裏切りだァァァァァッ!!!!」

洋榎「語呂わる…」

健夜「…………ううん、別にいいんだよ。私はもうこれ以上強くなる必要はないし、感性は人並み外れたレベルまで磨いた。これから出会う作品に真摯に向き合って楽しみながら百合に生きるから」

はやり「……ま☆今の健夜ちゃんなら能力を使えなくても最強クラスだけど☆」

良子「リリーのツリー礎ボディパワーガチハードルますゲートね(百合の基礎体力が違いますもんね)」

ダヴァン「素うどんもグッドデス!」

明華「♪もっと自由にもっと素直にそのままの君でいいんじゃない?」

洋榎「チョイス…………あんたほんまにフランスの人?」

明華「YES♪広い空のような~」

洋榎「あああ!いちいち歌で返さんでええ!」

咲「ちょ、ちょっと待ってください。能力とか世界とかの話の前に……和ちゃんはどこに行っちゃったんですか!?」

健夜「…………」


咲「さっき消えてから全然出てこないし……世界になったなんて言われても……」

健夜「………今の和ちゃんは姿を見せたくないんだよ、きっと」

咲「え?」

健夜「大丈夫。存在がなくなったわけじゃない。今はただ気持ちの整理がつかないだけで、近いうちに戻ってくるはずだから」

咲「でも……」

照「………………」

透華「どうしてそのようなことが言えますの?」ザッ

健夜「……それは……」

ゆみ「嫌な言い方ですが、あなたの想定が正しいという証拠はありません」

憧「…………小鍛治プロ」

健夜「何かな?」

憧「あなたは和に能力を奪われました。その時の反応を見る限り、能力の喪失は予想外の出来事だった。違いますか?」

健夜「…………」

憧「……すでに予測を上回る事象が起きている以上、小鍛治プロの見込みが正しいと断言するのは難しいと思います。本当に和は大丈夫なんですか?」

健夜「…………それは……」

憧「………………」

健夜「……………」

♪~

透華「!電話…」

貴子「っ!!着信音のクソボケがァァッ!!静寂をピポピってんじゃねェ!!!みんなビックリしてるだろうがァァッ!」

一「お、落ち着いてください。久保さんの声の方が心臓に負担がかかります!」

貴子「なんだてめェ……携帯会社の回し者か!だからそんな服着てんのか!!」

一「こ、これはボクの個性で…」


恵「……久保君、落ち着きたまえ」

貴子「会長…………ァァッ!ぬううぅ…………ァァッ!!池田のやつゥゥァァァッ……!!!」

一「はぁ……はぁ……」

恵「国広君、すまない。久保君は八つ当たりが得意でな」

一「そ、そうですか」

貴子「ふんっ!」

透華「な……なんですって!!は、はい……それは確かな事実なのですか……?」

はやり「…………急に顔色が悪くなったね」

理沙「重大事件?」プメェェ..

智葉「……もし大問題が発生したんなら……本内、お前の鼻を強くつまむ」

成香「や、やです!そんなことされたら、鼻がつぶれて痛いです!」

透華「……では……失礼します」ピッ

一「……透華?」

ハギヨシ「私を通さずお嬢様に直接電話するということは……」

透華「……………………ええ、問題どころの騒ぎではありませんわ」

恵「……それは……和が絡んでいる事案ですか?」

透華「間違いないですわ。でなければこんなタイミングで起こるとは思えません」

健夜「……………一体、何が……」

透華「……………………」

透華「月が…………地球に向かってきているようですわ」

全員「!!!!!」

透華「このままですと……間違いなく地球に衝突し、人類は滅亡します……――――」


照「…………………」

咲「…………………」

透華「………………」

健夜「………………」

恵「…………………」

智葉「………………」ギュゥゥ..

成香「ぃ、いたいぃたい!鼻が痛いですぅ~!」

罰を受けている成香以外の全員が押し黙る。

月と地球の衝突、人類の滅亡。

あまりにも衝撃的な発言は、儚可憐女学院らしからぬもの。

『もしかしたら、冷やかし透華になったのか?』と思う者もいたが、透華の表情は悲壮感に溢れ、いつものアホ毛も元気がない。

照(……こんな超展開……普通だったらただの冗談で終わるだろうけど……)

憧(さっきの説明を聞く限り、ありえない話じゃない。宇宙には分子の他にも陽電子、陽子、中性子、光子、素粒子とかがある。それも女の子として捉えることで百合扱いできるなら……)

恵「信じがたい話だろう?だがおそらく事実だ。龍門渕君相手にそのような嘘をつく者はいまい」

ハギヨシ「……その通りでございます」

透華「龍門渕グループが関わっている天体監視組織からの報告なので間違いありませんわ」

灼「でもどうやって月を……」

恵「……宇宙にも分子はある。だからロシアと同様の方法を使ったのかもしれんし、他にも突拍子(とっぴょうし)は突拍子(とっぴょうこ)とすれば百合になる…」

晴絵「!………」

恵「そうなれば『確率』という概念も和の支配下におかれる。月と地球が衝突する可能性を100パーセントにしたのかもしれない」

洋榎「まさか……!『確りっちゃん』っちゅうことか!?」ハッ!

恵「うーん……それはどうだろう?」

洋榎「…………そ、そか。ちゃうんか///」

健夜「……待ってください。和ちゃんがそんなことすると本気で思ってるのですか?」

恵「思いたくはない。だが、他に誰がこのような現象を引き起こせるというのだ」

健夜「っ…………」

照(…………人類が滅亡……?そんな映画みたいなことが……)

煌「あ、あの……防ぐ方法はないのでしょうか?」

恵「………………」

健夜「……………」

煌「人類が滅びてしまうのはすばらくないです……」

恵「そうだな……当然だ」

健夜「………………」

久「……月が地球に迫るのを防ぐ……普通に考えたら、解決方法は1つよね」

ゆみ「……ああ」

憧「ですね」

桃子「ど、どうするんすか?」

久「月が地球に接近しないようにしてもらうのよ。今回の現象を引き起こした張本人にね」

桃子「あ」


咲「和ちゃんにお願いするんですか?」

久「そ。わかりやすいでしょ?」

洋榎「なるほどな。ご飯を大盛りによそおうとするやつに普通盛りに変えてもらうみたいなことやな」

久「え?うーん……まぁ、そうかもね」

怜「……もうしばらく黙っとき。さっきから例えがファールチップばっかりやで」

洋榎「さ、三振ちゃうならええやんけ!」

咲「よかった……方法はあるんですね」ホッ

憩「ほなら早速…」

咏「無理じゃね?知らんけど」

憩「え?」

咏「だってさ、原村和は『世界』になったんだよね?君らは『世界』に対してどうお願いするんだい?」

咲「それは……」

憧「…………そうか……あたしたちが視認できないだけで存在はしてるって思ってたけど……もし仮に和が『全てに嫌気が差して自分を分解して世界と同化した』みたいな意味合いだとしたら、人類滅亡は道連れにする意志の表れかもしれない…」

咏「や、ただ疑問を投げかけただけだよ?そんなに落ち込まないでって」

憧「でも……」

咏「大体さぁ、さっき私も調べてみたけど、世界中の人たちがロシアの存在を知らないような異常事態になってるのに、どうして私らは正常なのか、不思議じゃね?」

憧「…………それは」

咏「リリーブライドの会長さんと小鍛治さんが嘘ついてないならって前提はあるけど、分子も原子も自由自在なんでしょ?それなら私たちも他の人たちと同じようにすればよくね?っていうか、今の自分たちの状況が原村和によって『思い込まされてる』かも知れんけど」

憧「……………」

咏「人類を滅亡させたいなら、過去にあった事件やら災害やらを記憶してる人たちから情報を抜き出して再現するとか、リアルな『死』の概念を全員に植え付ければ、脳が死んだと錯覚するだろうし」

咏「でもそれをしないであえて月を衝突させるってことは、何かしら理由がありそうなんだよねぃ」

憧「……確かに……」

咏「……そこんとこ、どうなんすか?」

恵「……………」

健夜「………………」

咏「…………」

健夜「………………」

咏「……あの」

健夜「……なに?」

咏「…………この状況も、小鍛治さんの思惑通りなんすか?」

健夜「っ………―――」

咏「……このまま人類が滅んじゃうのが、百合なんすかねぃ?」

健夜「………………」

咏「………………」

健夜「………………はぁ……」

咏「………………」

健夜「………………本当は、こんなはずじゃなかったんだ」

咏「?」


健夜「和ちゃんを苦しみから解放して、元の自分を取り戻すことで、世界がいい方向に向かうと思ったんだけど……ね」

表情を曇らせ、ため息と共に肩を落とす健夜。

恵「……小鍛治君」

健夜「…………今の和ちゃんは、記憶を封印する前の自分と、その間に過ごしてきた自分が混ざりきれずにいる状態だと思う」

健夜「封印前の幼い感情が、百合――和ちゃんの常識――を否定されたことに対する反発を生み、ロシアの存在を消してテーマパークに変えた」

怜(……今さらやけど、ロシア全土がテーマパークってどないやねん。他に思い付かんかったんか……って、幼い頃の理屈やから拙いんか?)

豊音「でもでも、月をぶつけるよー?」

健夜「……うん。でもそれも純粋さが悪い方に転んだ結果かな」

白望「純粋……?みんな嫌い、みたいなこと?」

健夜「ううん、逆だよ。多分和ちゃんは『月と地球がルミナスしたら天体百合カップル』とでも思ったんじゃないかな」

照「…………え?」

咲「ルミナスって…」

純代「まどマギのアレ?頬っぺた同士をスリスリする…」

健夜「うん。人類の誰かの記憶を視てルミナスを知った和ちゃん。そして幼い時の百合妄想と合わさって月と地球を連想した……ということだと思う」

洋榎「ほ、ほんなら何か?月×地球でルミナスするカプ妄想したせいで、月が地球にスリスリしにきて人類滅亡の危機なんか!?」

健夜「……多分だけど」

洋榎「マジか……なんやねんそれ……アホやんけ……」

怜「……洋榎やったら『全ての星がうちの嫁や』とか言うて地球が蜂の巣になるやろな」

洋榎「ぐっ……否定できひん」

ゆみ「……待ってください。月と地球で妄想した結果そうなるのなら、『人類』を『無事』という概念、あるいは『生存』とか、そのようなものとカップリングすることは可能では?」

健夜「不可能じゃないはずだけど、今は不可能。和ちゃんが意図的に能力を使ったのは私の能力を奪った時だけ。そのあとは世界に同化したことで、自分の過去の妄想や願いを意志を通さずに流してるようなものだから」

ゆみ「……そう、ですか……いや、どちらにせよ原村さんとの意思疎通ができた上で、彼女にこちらの願いを聞き入れてもらわなければならない以上、無理があるか……」

健夜「………でもね、色々言ったけど、この危機を回避する方法はあるんだよ」

ゆみ「!」

貴子「マブかコラァァッ!!」

トシ「グッドニュース、おかえりなんだよ」

健夜「至ってシンプルだけど、和ちゃんを倒せば……私の時と同様に、能力の効果は消滅する」

智紀「!」

やえ「だが、今の原村和は……」

健夜「うん。攻撃しようがないよね…………今のままでは、ね」

成香「方法があるんですか!?」

良子「グッドニュース」

トシ「一足遅かったね。私が宣言ずみさ」

白望「あの……今大事なとこなので真面目に……」

トシ「私だって現在に意識を向けてるよ」


健夜「…………宮永照さん」

照「あ、はい」

健夜「私を〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕で見てください」

照「え?でもさっき……」

健夜「その時にあなたが視たのは偽の記憶。私が戦闘の直前に作り上げたもの」

照(!だから違和感があったんだ)

健夜「負けるためには〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を受けて防御力を弱める必要があったから。でもその時に真実を知られたらまずい。ということで私は自分の記憶を封じて偽の記憶を書き込んだの」

照「なるほど……」

健夜「……今の私が本当の私。私の記憶を見れば、和ちゃんを倒せるかもしれない方法がわかる」

照「……」ゴクリ

憧(かもしれない、か。やっぱ可能性は薄いんだ)

健夜「その方法は和ちゃんの内面に深く関わってるからみんなに説明するわけにはいかない。あなただけが見て」

雅枝「おいおい。人類が滅亡かもしれんのにそんな悠長なこと…」

健夜「……方法は1つだけ。これでダメなら終わりですから。全員が知る必要ありません」

雅枝「むう……」

照「……それじゃ、いきます」

健夜「……うん」

照《〔 照 魔 鏡 ・ 極 ( し ょ う ま き ょ う ・ き わ み )〕!!》

健夜「っ…………」

照(小鍛治プロの本質……記憶が……っ……これは……)

照(自分の記憶を何度も操作してるからかな?やけに……深くて……重い………)

〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕が健夜へと潜り込む。

本質を知るため、奥へ、奥へ。

暗闇の中、進んでいく。

そして突然、明かりに包まれ、視界が開ける。

そこで見たものは、小鍛治健夜の過去……。


~~~~~~~~~~~~~~~

【原村家前】

健夜「こんにちは」

恵「小鍛治君。よく来てくれたね。どうぞ上がってくれ」

健夜「はい、お邪魔します」

和(小学3年生)「あ、健夜さん!」

健夜「こんにちは。遊びに来たよ」

和「やった!じゃあ早速部屋に行きましょう!」グイグイ

健夜「わ、ちょっと、引っ張らないでよ」クス

恵「こら和。すまないな小鍛治君。和は君が来るのを楽しみにしててな、さっきから落ち着かなくて」

健夜「いえ、私も和ちゃんと会うのを楽しみにしてましたから」ニコリ


【和の部屋】

和「同じクラスの美紀ちゃんなんですけど、貴美子ちゃんを見る時の目がキラキラしてるんです!きっと体操服とかの匂いを嗅ぎたいと思ってるはずです!」

健夜「そうなんだ?」

和「はい!今日なんて着替えの時間で2回も貴美子ちゃんの前を通りましたし、私が見た限りでは5回は貴美子ちゃんの顔を見てました。秒数までは把握してませんけど、クラスで一番見つめてるはず!」

健夜「そういう時は、貴美子ちゃんの後ろに誰もいない位置取りになるようにすれば正確なデータがとれるよ。後は美紀ちゃんの視線の角度がわかりやすいように白い壁を背にしてもらうとか」

和「なるほど!その位置で視線の方向を把握するんですね!」

健夜「そう。上の方ばっかり見てるなら髪型を気にしてるってことで、家でひっそりと髪型を真似てるかも……な妄想できるよ」

和「……アリですね。貴美子ちゃんと同じヘアゴムをネットで探していて、画像を見ているうちに貴美子ちゃんを想って……」

健夜「いいね」

和ちゃんと話すのは楽しい。

内容はいつも百合妄想で、普通は小学生とするような話じゃないかもしれないけど。

和「あ!ということは……同じヘアゴムを買った美紀ちゃんは、そのヘアゴムをある程度使い古した風に汚してから貴美子ちゃんのとすり替えるという狙いでは……」

こうしてたまに和ちゃんの家に来て喋るようになったのは、私が本屋さんで百合姫を購入しようとしていたところを原村恵さんに見られ、私が百合妄想士だと知られたことがきっかけだ。

原村さんがリリーブライドの会長だと知っていた私は、名前が知れて目立つことを恐れ、原村さんの記憶を操作して忘れさせようとした。

しかし彼の記憶を視た時、百合への凄まじい情熱を知った。

今まで出会った中で、最も百合を愛している人間。

その気持ちは私も負けてない。当時も私はそう思った。

でも私はずっと百合好きであることを隠し、ただ1人で楽しんできた。百合を素晴らしいと思っているのに、胸を張って公言することはなかった。

百合妄想士だとバレて戦いを申し込まれた時は、倒したあとに私に関わる記憶を封じた。

だから私には百合について話せる知り合いはいない。そしてそれが当然だと信じて疑わずにいた。

でも原村さんは男性でありながら百合を愛する組織を立ち上げ――公にしていないとはいえ――百合文化をさらに発展させようと奮起していた。


記憶を視た限りでは百合以外のことに対しても誠実。

百合知識も申し分ない。百合妄想士としての強さもかなりのもの。

1人でいることに飽きたわけじゃないけど、私はその時、一歩踏み出してみようと思い、リリーブライド主催の集まりに参加させてもらうことにした。

そんな風に何度かイベントに参加していくうちに、人と直に百合について話すことの楽しさを知った。

いつもは他人の記憶を自分の中に取り込んで脳内で会話をしてたけど、声に出して話すのとはやっぱり違う。

そしてある日、イベントに顔を出すと、原村さんから相談を受けた。

『私も妻も仕事の関係で家を留守にする時間が多い。だから小鍛治さんがよければ娘の話相手になってほしい』と。

最初に原村さんの記憶を視ていた私はもちろん和ちゃんのことを知っていたし、イベントの帰りなどで直接会って話したこともある。

子供ならではの純粋さがとても心地よくて話がとても弾んだのを覚えていた私はその場で快諾した。

そして私は、時間がある時は和ちゃんに会いに行くようになった。

学校での出来事を楽しそうに喋る和ちゃんは子供らしくて可愛い。

でも時にハッとさせるような人間の本質を突いたような鋭い観点からの指摘をするところもあり、さすが原村さんたちの娘さんだと思わされたものだ。

……そんな日々が3年ほど続いたある日―――


和(小学6年生)「すこやさん……」グス

健夜「……どうしたの?泣きながら電話してきたからビックリしたよ。大丈夫?」

和「はい。でも……みんな、おかしいんです………ぐす」

健夜「え?」

和「美紀ちゃんが、隣のクラスの男の子と付き合うことになったんですけど……誰も反対しないんです」

健夜「それは……」

和「男の子と女の子が付き合うなんて、そんなオカルトありえません……」

健夜「……和ちゃん……」

和ちゃんと話すようになってからは相手の記憶を視ることをやめていた私は和ちゃんの変化に気付かなかった。

和「世間やドラマでは男性と女性が結ばれるなんて許しがたい行為を当たり前のように表現してますけど、それはあくまで百合との対比のためなのに……」

健夜(それは違う……私たちは百合を愛してるし、女性同士で結ばれることを素晴らしいと思ってるけど……)

和「子供が生まれるきっかけもそうです。精子(せいこ)と卵子(らんこ)が交わり、子宮で結ばれるからこそ!百合だからこそ生命が宿ります!」

和「大体、子宮だって子供だって……逆さまにすれば宮子(みやこ)で供子(ともこ)です!命(みこと)も女の子なのに……っ!」

和「間違った知識、誤った歴史、捻じ曲げられた真実……百合を滅ぼそうとする悪の思念が世界に溢れてます!アダムとイブもそうです!」

和「最初の人間が男女だなんてデタラメです!禁断の果実とされてるリンゴ、これはリンゴという女性の名前を間違えて果実と描写してしまった結果です。イブとリンゴが愛し合っていた世界が真実で、アダムは存在しません!」

健夜「………………」

幼い頃から百合教育を受けていたこと、そして百合を見続け、現存する全ての百合作品を記憶している特殊な存在である私と日々を過ごすことによって、和ちゃんの価値観や常識は百合一色に染まっていた。

男性はあくまで百合を引き立てるための存在であり、よき理解者。

それ以上はなく、彼らについては深く掘り下げられない、という風に。

健夜「…………落ち着いて。ね?」

和「落ち着いてなんて……っ……いられません!私の……恋が叶わないような世界だと……信じたくありません……!」

健夜「!!」

健夜(恋……それじゃ和ちゃんは……)

和「ありえません……大体、私のお父さんは百合で……お母さんも百合で……百合だからこそ男性は百合で……百合ならば宮子で命(みこと)とラブラブなはず……」ブツブツ..

健夜(!……目が虚ろになっていく……このままじゃまずい!)

健夜「……ごめんね」

和「大体私が女性である以上、女の子を好きになるのは当然で…………ぁ……」

健夜「………………」

その時、私は初めて和ちゃんの記憶を視た。

同時に、和ちゃんが私の前では明るく振る舞おうとしていたことを知った。

百合のみを基準としてきた和ちゃんにとって、学校はもっと百合に満ちていると信じていたが、現実はまるで違っていた。


次第に自分が拒絶されているかのような気持ちになり、百合がマイノリティーであるかのように感じられる日々が続いた。

でもそれは和ちゃんにとってありえないこと。

『お前は人間ではない』と言われたに等しい。傷付かないわけがない。

しかし私といる時はネガティブなことは一切考えず、純粋に百合を語り合い、楽しい時間を過ごそうとしていた。

『健夜さんの百合観に影が差すようなことにならないように、明るく振る舞おう』と。

小学生ながらそこまで考えていたのかと感心する一方、そんな和ちゃんの内面に全く気付いかずにいた自分に頭に来た。

でも今はそれよりももっと深い記憶の底まで潜り込もう。

和ちゃんの奥へと私は進んでいった。

すると和ちゃんが底なしの力を秘めていることに気付き、とても驚いた。

それは『百合を支配する能力』

本人の思い込み次第では最強であり、最悪にもなり、無力にもなる。

過去出会った能力の中で最も危険な代物。

今の和ちゃんは百合妄想はしても、百合妄想士である自覚はなく、能力にも気付いてない。

でももし今の心理状態で自身の才能に気付いてしまったら……。

健夜(学校から男子が全員いなくなることもありえる……いや、攻撃性が現れたらもっと悲惨なことも……いくら和ちゃんが優しくても、悪い感情を一瞬も抱かずにいられるわけがない)

このあと、私は和ちゃんを落ち着かせてから、ご両親に和ちゃんの能力について話をした。

そして出た結論は、しばらくの間、和ちゃんから百合を遠ざけることと、

和ちゃんの精神が不安定にならないよう、私がポジティブな記憶を書き加えるなどのサポートをすることだった。

しかしどちらも効果はなかった。

和ちゃんにとって、百合は人生そのものであり、百合を遠ざけることすらも百合であるという思考回路。

私の能力はその思考によって打ち消されてしまう。

幼いながらも和ちゃんの力は私に対抗しうるだけのものを持っていた。

そんな日々が続き、事態はさらに悪化していった。


健夜「……学校で体調を崩す男子が増えたようです」

恵「……和の影響か」

健夜「おそらくは。百合妄想士ではない子たちも百合である、という思いがあるからでしょう。程度は軽く、女性が幻滅するほど鼻水が垂れ流しになるくらいですが」

恵「……………全て私の責任だ。私が百合教育などしたせいで……」

原村妻「あなただけのせいじゃないわ。私だって同じよ」

健夜「……そんなことはありません。教育に使われた書籍は女性しか出てこない作品ではなく、共学が舞台の作品が多めだったり、女性同士であることが障害になるストーリーのものもありましたし、普通の異性ものもあった。女性同士以外は全て拒むような教育ではないはずです」

恵「いや、それでもだ」

原村妻「…………どうしたらいいのかしら……百合を取り上げて解決する問題ではない……」

健夜(そう。それでは奪われたという感情が爆発するかもしれない。となれば異性同士で結婚したお2人が悪という理屈になる危険性がある)

健夜(それが行き過ぎて、異性婚によって自分が生まれたことが百合を穢したとなれば……自分の存在が消えてなくなることが百合……なんて考えて……)ゾクッ

健夜「………………」

健夜(……和ちゃんがいなくなる……?)

和『今日学校で調理実習があったんです!だからこれ……どうぞ!美味しいうちに健夜さんに食べてもらいたくて走ってきちゃいました』ニコッ

健夜(っ……そんなの……嫌!)

いつしか私は、和ちゃんを妹のように大切に思っていた自分に気付いた。

……絶対守りたいと思った。


そしてその後、再びご両親と相談し、新たな結論を出した。

それは『和ちゃんが百合妄想をする原因となったものを含む、全ての記憶を封じる』こと。

ご両親による百合教育、今まで見た百合要素のあるアニメ、漫画、ドラマ……。そして和が百合を愛する気持ちも、全てを忘れさせる。

……当然、私と過ごした日々も。

その忘れた部分に開いた記憶の穴は『麻雀をやっていた』という形で埋めた。

空白のままでは記憶喪失になったかのように疑心暗鬼になり、精神の不安定さを生み出す。

百合以外に和が興味を持っている麻雀ならその期間の穴埋めには十分。整合性がとりやすい。

健夜「………………」

幼いながらもとてつもない力を秘めてる和ちゃん。

私の力の8割を和ちゃんの中に定着させることでようやく記憶を封じることができた。

その際、ご両親の記憶もある程度変えた方がいいと提案した。でなければ罪の意識を抱えて辛い思いをするだろうから。

そう告げると、2人は拒否した。同じ過ちを繰り返さないための戒めだ、と。

でも私は2人を説得した。2人が百合妄想士の和ちゃんの記憶を持っていたら、それに喚起されて記憶が蘇ってしまうかもしれないからである。

最終的に2人は私の提案に納得してくれたため、記憶を書き換えた。

ご両親には1割の力で記憶の封印と書き換えに成功。当然私が百合妄想士であることや、私と関わったことも違う記憶に書き換えた。

原村さんに対しては、リリーブライドの会長として行動しなければならないから、百合知識はそのままに、和ちゃんは百合から離して普通に育てたと認識させた。

あとは私が誰にも負けずに力を維持していれば、3人は幸せになれるはず。

…………和ちゃん。

百合を通して仲良くなった女の子。

もう前みたいにお話することはできないのは寂しいけど……和ちゃんが不幸になるよりはよっぽどいい。

こうして私は和ちゃんたちの元から離れた―――

それからしばらくして彼女たちは奈良へと引っ越した。

人づてに聞いた話では、友達もできて楽しくやっているという。

そのあとも、何度かこっそりと様子を見に行ったけど、元気そうだった。

私がいなくてももう大丈夫、そう思えるほど―――


それから数年が経ったある日、私は仕事で咏ちゃんと長野行きの新幹線に乗っていた。

咏「いやー、三連覇するとか白糸台やっばいですねー、運もあるかもしれんけど」

健夜「そうだね。でもオーダー変更が大きかったね」

咏「確かに。姉妹対決は色々想像が捗った捗った……よいしょっと。ちょっとトイレ行ってきます」スクッ

健夜「ん」

健夜(……清澄は残念だった…………和ちゃん……)

咏「あっるぇ~?もしかして……宮永照?」

健夜「?」

健夜(宮永照?どうして長野に……って、妹さんに会いに行くのかな)

健夜「…………長野、か」

咏「それじゃ、また今度ねー」テクテク

照「あ、はい……」

健夜「…………」チラッ

照「………………」

健夜(……!あの表情……もしかして……)

浮かんだ直感。私は思わず照の記憶を視ていた。

そこでは、咏ちゃんと針生アナの妄想が繰り広げられていた。

健夜(なるほど……この子も百合妄想士。しかもかなりの才能を秘めてる)

健夜(でもそれ以上に気になるのは姉妹で…………ううん、それは余計なことだよね)

長野駅に着くと、宮永照と宮永咲が仲良く話しているのが見えた。

咏「んーふ♪仲睦まじいねぃ」

健夜(……宮永咲。和ちゃんのチームメイトか……)

健夜(インハイのあと、和ちゃんはどうしてるのかな………………少しだけ視せてもらおう)テクテク


咏「ん?どこ行くんすか?」

健夜(…………ごめんね)

私は気付かれないように宮永咲の記憶を視た。そしてその記憶の中、宮永咲と過ごす和ちゃんを見て違和感を覚えた。

健夜「!!」

健夜(これは……明らかに宮永咲に好意をもってる…百合の記憶は封じたはずなのに)

健夜(……いや、本質的に女性に恋をするということは全く悪くはないけど……記憶を封じられてなお百合に惹かれるのかな……)

健夜(でも……それ以外にも気になるのが、宮永咲の反応……。途中までは和ちゃんと相思相愛のような感情を持っていたのに、それを追い越すかのように宮永照への感情が膨らんでいる)

健夜(一体何故……)

その疑問は解決することはなく、私の中に残り続けた。

それから数週間後、儚可憐女学院として活動していた時にある情報を入手した。

リリーブライドが西の連合軍と大規模な戦闘を行うという話。

今までにない規模の戦いということで、直接は関係のない私だったけど、そこに至った経緯や結末がどうなるかが気になった。

とはいえ、私は参加するつもりもなければ見物するつもりもない。東西決戦当日は実家でゆっくりしようと思っていた。

しかしそこに待っていたのは、とてつもない偶然。

和「…………」

リリーブライド会長の娘として狙われることを考慮した結果、リリーブライドの人たちは和ちゃんを県外へと連れ出したのだが、その場所がなんと私の地元だったのである。

本当に驚いた。こんな奇跡のような可能性があるのかと。

しかし、今の和ちゃんは私のことをプロ雀士としてしか知らないことになっているため、気安く話しかけることもできない。

でもこのまますれ違ってしまうのはあまりにも味気なく、寂しい。

そう思った私はつい、和ちゃんの記憶を視てしまった。

封じた記憶は大丈夫なのか、宮永咲から見た和ちゃんではなく、本人がどう感じ、どう過ごしてきたのか……無性に知りたくなったから―――


~~~~~~~和の記憶・始~~~~~~~

和(中学3年生)「…………」

あの子のことをこんなにも好きになったのはいつからでしょう?

……いえ、きっと理由はないのかもしれませんね。

気が付いたら惹かれていた。それでかまいません。

だって好きになった理由を見つけてしまったら、その理由が失われた時に嫌いになってしまうかもしれません。それは嫌です。

?「のっどちゃーん」テクテク

和「!」

優希「お。何を見てるのだ?」

和「これは……あれです。進路希望の調査票です」

片岡優希。中学2年生の春に出会った子。

転校やクラス替えなどで友達と疎遠になることが悲しくて『もう友達を作ることをやめようか…』などと思いつめながら通学路を歩いていたら、

いきなりぶつかってきたことにビックリしたのを覚えています。

謝られた後、『脳は大丈夫か!?』なんてよくわからないことを言われたことが印象に残りました。

そしてその後……

和『…………!』

優希『じょ?』

和『小学校の頃の友達2人に…ちょっとずつ似てるなって…』

優希『…………』フ

優希『じゃ、私とも友達になれるじぇ!』ニパッ

和『!』

優希『』ニコニコ

和『……そうですね//』

暗い気持ちを抱えていた私は、彼女の笑顔によって、心が温かくなりました。

そして友達として一緒に過ごすうちに、その想いは次第に友情を超えて……。

優希「のどちゃんはインターミドルで優勝したから、いろんな高校からスカウト来てるんじゃないのかー?」

和「それは確かにあるのですが……」

でも私はもう離ればなれになりたくありません。それが友達……いいえ、好きな人ならなおさら。

優希「まーなんだ。進路に悩んだらうちに嫁に来るといいじょ。我が家の台所を預かるのならタコス作れないとダメだけどな!」

和「!!」

嫁……?私が、ゆーきの?なんて素敵な……

和「…………それもいいかもしれませんね」

優希「え……マジで…?も、もじもじしてもいいかな?」クネクネ

照れているゆーき。私の想いが通じたのでしょうか?それならばとても嬉しいです。

あ、そんな私たちに朗報がありました。

和「そういえばiPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」

優希「あいぴ……?それはタコスで例えるならなんなのだ?」

和「例えなきゃいけませんか」

ゆーきの反応はイマイチでした。それもそうですよね。いきなり子供とか言われても戸惑いますよね……。

嫁とか言われたのでつい先のことを考えてしまいました。


優希「―――私は清澄に行こうかと思ってるじぇ」

和「清澄高校ですか…」

ゆーきは清澄高校に進学する……。

この瞬間、私も清澄高校への進学を決めました。

優希「高校に行ったらきっとまた新しい友達ができるじょ」

和「そうでしょうか」

優希「そうだじょ。それも全てを変えるようなすごい出会いが待ってるかもしれないじぇ」

ゆーきは私がスカウトされた高校へ行き、心細い想いをすると見越して励ましてくれてるのでしょう。

その優しさに私の胸は高鳴り、思わず抱きしめたくなってしまいました。

でも、心配はいりません。

ゆーきが私を嫁にしたいと言ってくれたように、私もゆーきとずっと一緒にいたいと思っています。

全てを変えるような出会いは、もうすでにしているのです。

ゆーき……私のゆーき。

…………………………………………………………なのに。


清澄に入学して少し経った頃、

優希「のどちゃん!」タタッ

和「なんでしょうか?」

優希「あの金髪、どこ行ったじょ?」

和「……須賀君ですか?あっちの方を歩いてましたが……」

優希「そうか!じゃあ行ってくるじょ!京太郎~!!」

和「……………………」

ゆーきは須賀君と仲良くなってから、少し変わりました。

私と過ごす時間が減り、一緒にいる時にも須賀君の話題を出す回数と秒数が増えました。

視線を向ける回数も、須賀君の方が多い。

優希との時間は須賀君に奪われていきます。

和(ゆーき……私を嫁だと言ってくれたのは嘘だったのですか……)

私より須賀君のことが――――

和「っ!!」

いえ、そんなはずありません。

ゆーきは私をお嫁さんにしたいとまで言ってくれました。

私が清澄を選んだのはゆーきと一緒にいたいからだと、私の想いにも気付いてくれてるはず……

……でも、

その期待はあっさりと打ち砕かれました。

ある日の放課後、

優希「……のどちゃん」

和「はい?」

優希「私な?その……き、京太郎のことがちょ~~~~っとだけ気になるじょ」

和「!!!」

優希「って……今のなし!やっぱなしだじぇ!」カァァ..

和「…………」

どうしてですか。

初恋がゆーきだったこと、初めは戸惑いました。

女の子を好きになることがマイノリティであると知っていたから。

ですが、ゆーきはそんな私を受け入れてくれたのではないのですか?

それとも、ゆーきにとっては私はただの友達で、お嫁さんにしたいというのはただの冗談?

…………でも私にゆーきを責める資格はないのかもしれません。

元気いっぱいでいつも私を引っ張ってくれるゆーき。

そんなあなたに甘えて、自分の気持ちを口にすることなく、わかり合えたと思い込んでいたのですから。

忘れましょう。涙を堪えましょう。

目を腫らしては、ゆーきに余計な心配をかけてしまいます。

ゆーきとの間にある友達としての絆だけは守りたい。

だから私は前を向きます――――


―――それからしばらく経ち、ゆーきに対する想いが少し落ち着いてきた頃、私たち清澄高校麻雀部に転機が訪れました。

新たな部員がやってきたのです。

宮永咲さん。

今まで出会ったことのないタイプの人でした。

圧倒的な力を持ちながら手を抜き、麻雀を好きではないという彼女。

私は我慢できなかった。彼女の言い分に。

そして、

出会って間もないのに、彼女を見ると心がざわつく自分自身に。

あの時期の私は今考えても感情的すぎました。

声を荒げ、雨の中を飛び出し、退部してくれと告げ、そして『私も楽しませてください』なんて言ってしまいました。

あれほど感情を露わにして言葉をぶつけたのは生まれて初めてでした。

そしてその心地よさと、

『一緒に全国に行こう!!』

宮永さんの言葉に、私の胸は再び熱を持ち始めました……。


それからの日々は楽しかったです。

厳しい練習も、宮永さんとなら耐えられました。

恵『ずいぶん夜更かししてたみたいじゃないか』

恵『わかっているとは思うが…遊びはほどほどにしておきなさい』

お父さんはまだ認めてくれないですけど、いつかきっとわかってくれるはずです。

宮永さんが隣にいてくれれば、私はどこまでも強くなれる。

そう信じられるほど、私は宮永さんのことばかりを考えるようになった。

清澄はインターハイ県予選、そして全国へと駒を進め、それに伴い部員たちの絆は深まりました。

特に宮永さん……いえ、咲さんとはより一層絆を深めることができてとても嬉しかったです。

……そしてインハイが終わったことで、再び日常が戻ってきました。

咲さんはお姉さんと仲直りできたようで、少し前には『家に泊まりに来てくれた』と嬉しそうに話してくれました。

私と2人でいる時も、お姉さんの話が増えました。それだけ仲がいい姉妹だということですね。

咲さんにとってお姉さんと会って話すことは全国を目指す一番の目的。それが達成された今、しばらくは穏やかな生活が続くはず。

私は思いきって咲さんともっと仲良くなれるように頑張ることにしました。

咲さんオススメの本を読んだり、積極的に遊びに誘ったり、お泊まり会をしたり。

でも、前より一緒に過ごす時間は増えたはずなのに、どこか違和感が拭えませんでした。

私を不安にする何かが背後に迫っているような……。

とはいえ、それはあまりにも漠然としていて対処しようがありません。

どことなく嫌な予感はあるものの、私は約束通り咲さんの家へ行きました。お泊まり会です。

いつものように楽しく過ごし、私の抱いていた不安は杞憂だったのかもしれないと思いかけたその時、

照『咲……』

宮永照さん……咲さんのお姉さんが来ました。

話を聞くと、ちょっとケンカをしているようで、東京から急きょ長野まで会いに来たとのこと。

姉妹の絆とはそれほど強固なものなのかと、1人っ子の私としてはビックリしました。


結局お泊まり会はお姉さんを含めて3人で行うことになり、私は咲さんと一緒の部屋で眠り、お姉さんは自分の部屋に行きました。

私と咲さんは横になったまま話をしていました。他愛のない話ですが、とても楽しかったです。

でも咲さんの声には覇気がなく、お姉さんとケンカしていることが気にかかっているようなので、私は眠ったフリをしました。

そうすれば私を気にせずにお姉さんの部屋へ行き、姉妹水入らずで会話ができます。

その方が咲さんの気持ちは晴れるでしょう。明日の午前中に心からめいっぱい遊べるように。

それから数分後、私はトイレに行きたくなったので、咲さんの部屋を出てトイレへ向かいました。

お2人に気を遣わせないよう、音を立てずにドアを閉めて。

途中、お姉さんの部屋の前を通りかかった時、話し声が聞こえてきました。

和(………………)

どんな話をしているのか、とても気になりました。盗み聞きなんていけないことだとわかってもいます。

でも私は、つい聞き耳を立ててしまい、そして聞こえてきた言葉は……

咲『……ねえ、お姉ちゃん』

咲『あのね………和ちゃんは……大切な友達なんだ』

私の名前が出たことにドキリとしました。

咲『私、あんまり友達たくさん作れるタイプじゃないし……』 

咲『うん………だから、和ちゃんと仲良くなれて………嬉しかった』

和(咲さん……)

和(そんな風に思ってくれていたんですね……私も、咲さんと同じ気持ちです)

咲『和ちゃんとは………思ってることを素直に言い合えるんだ』

咲『和ちゃんと出会わなかったら………麻雀部にも入ってないし、お姉ちゃんともこうして話せなかった』

咲『だから………お姉ちゃんと仲直りできたのは、和ちゃんのおかげ。和ちゃんは、私の人生の中で一番の友達………』

阿知賀や高遠原中学の皆さん、ゆーき以外に今まで友達らしい友達のいなかった私にとっては最高に嬉しい一言。

喜びの感情が湧き上がりました。でも同時に盗み聞きしていることを自覚して後ろめたくなった私は、そのままトイレに向かおうとしました。

しかし、

咲『でも………私は……』

和(…………でも?)

咲『………私が好きなのは………ずっと………』

私の足は、耳から入り込んだ声によって生まれた胸の痛みによって止まりました。

和「!…………」

『でも』、『私が好きなのは』、『ずっと』。

この言葉で、先ほどまでの舞い上がった気持ちは消え去りました。

一番の友達であろうと、咲さんが好きなのは私じゃない。少なくとも、友達以上の感情は持ってくれていない。

誰でもわかる虫食いクイズ。

咲さんが好きなのは私ではなく、宮永照さん。


全国を目指そうと指切りしたり、下の名前で呼び合ったり、手を繋いだり。

ゆーきの時のようにならないよう、自分の気持ちをできる限り素直に出してきたのに、

結局、私の気持ちは…………。

和(…………っ!)

ゆっくりと咲さんの部屋の前まで戻り、わざと音が鳴るようにドアを閉める。

これ以上話を続けてほしくなかった。

盗み聞きしておいて勝手な言い分だと思います。

でも……どうしても我慢できませんでした。

和(………………)

私は……私の想いはどうして届かないのですか?

ゆーきの心は須賀君へ。

それは私が自分の気持ちを伝えるのが下手だったから。

いえ、それ以前に女性同士での交際という壁があったのかもしれません。自分にそう言い聞かせました。

でも咲さんの心はお姉さんへ。

女性同士どころか姉妹の2人。それなのに……

…………それでも私を選んではくれません。

私がいけないのでしょうか?

私がマイノリティな服装を好み、エトペンを抱かないと眠れないような子だから?

オカルトを否定する考え方?

女性ばかり好きになること?

和(……わかりません)

私のどこが長所でどこが短所なのか……もう何もかもがわからない。

和(…………あぁ、だからですか……)

そんな自分のことを全然わかっていないような私のことを愛してくれる人なんて、

この世界のどこにもいないのかもしれません――――

~~~~~~~和の記憶・終~~~~~~~


健夜「和ちゃん………」

照(……っ!?あ……そうか、小鍛治プロの記憶の中に戻ってきたんだ)

照(今のが『記憶を視る』ってやつなんだ……)

健夜「……まさかこんなことになるなんて……」

私は原村さんと奥さんに、和ちゃんへ百合教育をしていない記憶を埋めつけた。

そうすれば女性同士の恋愛について触れる機会が少なくなると思ったから。

そのせいか、原村さんは女性プロが多く百合っぽい雰囲気が漂う麻雀という競技すらやめさせようとした。

健夜(…………それでも)

百合というジャンルを知らないままでも、和ちゃんは女性を好きになった。

男性に嫌悪感を抱いた反動というわけでもなく、ただ純粋に女性に惹かれ、恋をした。

そして両想いになったと思えるような出来事を経て、その想いは……打ち砕かれた。

健夜「…………」

その理由、原因……。

和ちゃんの記憶を視たことですべてがわかってしまった。

健夜(……私の……せいだ……)

照(?)

私は和ちゃんの記憶を封じた。

百合が全てだという百合絶対主義者に成長してしまったことと、

そのあまりにも強すぎる能力は、これから生きていく上で枷となるからだ。

そして記憶を封じた結果、和ちゃんは一般的な思考と教養を持つ素敵な女の子になった。

それで安心していた。これなら誰からも愛される、幸せな人生が待っているはずだと。

しかし、それは表面上だけだった。

私の能力による記憶封じは、記憶を脳内から消去することではなく、『その記憶を思い出す経路を塞ぐ』という性質。

つまり脳内に記憶自体は存在する。

それが私によって別の記憶を書き加えられた状態の中でも、和ちゃんの思考に反応し、わずかながら力を発揮したんだと思う。

『本当の和ちゃん』……つまり『封じられた過去の記憶』が、好きな女の子と結ばれたいと願った。

その想いを、和ちゃんの中にあるとてつもない能力―――本来の力の何千分の1かわからないけど―――が無意識のうちに現実に作用した。

だから和ちゃんは片岡優希と出会い、彼女に恋心を抱いた。そして片岡優希が気のある素振りをするような現実を呼んだ。

……でも能力のほとんどを使えない上に、百合に関わらない生活が長引いていたせいで、やがてその願いは力を失い、片岡優希は心変わりをした。


健夜「………………」

女性同士の壁を越えて結ばれたと思っていたところでの失恋は和ちゃんの心に大きな傷を残した。

悲しみの中、自問自答をする日々が続く。

女の子を好きになる自分に対し、否定と肯定を繰り返す。

でも誰もがそうであるように、和ちゃんはこう思った。

『好きな人と通じ合いたい』と。

自分を責めたり、全てが嫌になったりというネガティブな思考の中に紛れた本音。

その想いに、再び和ちゃんの能力が反応した。

そして出会ったのが…………宮永咲。

照(!!)

いくつもの偶然が重なり、麻雀を打つことになった。

失恋で落ち込んでいた和ちゃんを奮い立たせるような言動をする宮永咲。

気付けば和ちゃんは彼女に惹かれていく。

それは宮永咲も同様だった。

子供の頃から、実の姉である宮永照を好きだった彼女は、和ちゃんにだんだんと気持ちが傾いていく。

……和ちゃんの能力によって。

照(…………)

順調に仲を深めていく2人。

このまま進めば間違いなく恋人同士に発展するはずだった。

しかし、インハイで勝ち進んでいくうちに、宮永咲は自分の本当の想いを取り戻していった。

姉への強い想いが、和と結ばれる『はず』の現実に逆らい始めた。

照(…………)

その想いは、和ちゃんの力なら簡単に捻じ曲げられるはずのもの。

しかし能力を自覚していない以上意図的に使うことはできず。

片岡さんに失恋した記憶が、宮永咲と結ばれない可能性を想像させたことによって、

和ちゃんの望む現実は再び姿を消していく。

健夜(……それからの和ちゃんは宮永咲と少し距離をとるようになった。自分の想いを消し、友達として一緒にいられるだけで満足するように)

照(…………原村さん)

健夜(そんな和ちゃんの変化に誰も気付かない。何故なら『傷付いている自分に気付いてほしくない』という願いが能力によって現実化したから)

……和ちゃんの記憶を視終わった私は、涙を流していた。

私が封じた記憶のせいで、本当の自分ではない姿にさせられている和ちゃん。

それでも女性を好きになって、恋をして、幸せになろうとしているのに、報われないこと。

私が記憶を封じたせいで、女性を好きになることに不安を覚え、自信を持てず、

それでも能力の影響で夢を見させられる。けれどやっぱり最後まで信じられないために想いは潰える。


健夜「………………」

……和ちゃんの最後の記憶。

能力の影響によって抱かされた和ちゃんへの恋心を全て忘れ、最初から友達のように接している片岡優希と宮永咲。

その隣で、楽しそうに見えるように、笑っているように思われるように、和ちゃんは振る舞っている。心は傷付きながら。

和ちゃんが本来の記憶を取り戻すまで、これは一生続くだろう。

好きな人と結ばれたいという想いは本質的なもので、願わずにはいられない。

その度に和ちゃんの前に希望が現れる…………まるで絶望を見せるためであるかのように。

この状況を回避したければ、希望を持たない以外に道はない。

そんな辛い想いを、この先ずっと和ちゃんは味わわなくてはいけないのか?

健夜「……絶対に……だめ」

許せるはずがなかった。

和ちゃんを悲しませた私自身を、そして和ちゃんがそんな未来を送ることを。

健夜「…………」

この日、私は和ちゃんの記憶を解除することを決意した――――


私の能力、〔深淵に触れる花びら(リリアルメモリアル)〕による記憶封じは2つのタイプに分かれる。

1つは、数秒だけ記憶を封じ、自動的に解除されるもので私の消耗は少ない。

そして2つ目は、決して解除されない永続的に封印が続くもの。

和ちゃんと恵さんに使用したものは後者。和ちゃんには8割、和ちゃんのご両親に1割の力を使った。

この『使う』とは、記憶の封印を維持させるために、相手に渡さなければならない力のこと。

全ては封印のためなので相手は私の力を利用することはできない。

厄介なのは『封じた記憶を解除できるのは、相手に渡した力よりも今の自分が力を持っていること』が条件であることだ。

和ちゃんの力を封印するために渡した私の力は8割。『渡した』というよりは『奪われた』に近いけど。

ご両親には1割。

つまり私に残った力は1割。自力では和ちゃんの記憶を解除することはできない。

それならば残る方法は1つだけ。私が敗北することによって、強引に脳内の意識を途切れさせ、能力の効果を消滅させる。

これが成功すれば和ちゃんの記憶の封印は解ける。

でも、この方法には問題があった。

それは『私が強すぎる』ということ。

9割の力を失ってもなお、私は和ちゃんを除いて最強の存在だからである。

しかし他に可能性はない。

私はどうにか知恵を絞って、わざと負ける方法を考えた。

こちらから攻撃はせず、相手の攻撃を受け続けようとした。

だけど体と脳に染みついた防衛本能が負けることを拒み、相手の攻撃に反応して勝手に倒してしまった。

健夜(……まいったなぁ)

私が次に試したのは、他の人間の記憶――影響の少ない領域――を永続封印し、自分をさらに弱体化させること。

最終的に負けることが目的のため、何人の記憶を封じようが関係ないからだ。

けれど自分が弱くなればなるほど、防衛本能は過剰になり、むしろ無傷で勝利してしまう。付け入る隙を与えてあげられない。

結局、バランス調整をして、防衛本能が一番鈍い状態でとどめることにした。


健夜(この状態で、あとは攻撃せずに防衛本能を破ってもらうしかないかな)

照(………だから小鍛治プロは防衛本能によるカウンターでしか攻めてこなかったんだ……)

これで自分は最弱化させた。残る問題は、誰なら私を倒せるか。

咏ちゃんたちは強いけど、少なくとも負ける気がしない。

となれば……

健夜(…………新幹線で出会った宮永照…………すごい素質を持ってた)

健夜(他にはリリーブライド……原村さんの記憶を解除して…………ダメだ。それをやると防衛本能が過剰に反応して瞬殺しちゃうかもしれない)

健夜(だったら記憶はそのままにリリーブライドに所属する全員を相手にして……いや、それならリリーフラワーガーデンもまとめて全面戦争にすればいい)

健夜(今はまだ弱いだろうけど、〔リリース(Lilys×Release)〕を教えてある程度まで力を底上げして、それからうちの子たちと戦わせて鍛えれば……)

ようやく見えた可能性。

この時点ではわずか数%だったかもしれない。

それでも私は賭けに出た。

どんな手を使ってでも、私を倒してもらう―――


照(………………)

照(―――このあとは、小鍛治プロが458プロを設立したことや、私たちと戦う時のための作戦などの記憶が流れた)

照(その作戦とは……)

照(龍門渕グループの所有する土地にある地下エリアや庭園、廃校の使用許可をとり戦場を確保。それらのやりとり時に会った龍門渕さんたちの記憶を封じた。ハギヨシさんもそこで記憶操作した)

照(次に小鍛治プロ攻略の要となる小走さんがこちらに寝返るように記憶を操作をする。と言っても元々リリーフラワーガーデン寄りなのを無理矢理458プロに引き抜いて鍛えたみたいだけど…)

照(そして458プロが本気で世界を狙っていると思わせ、458プロによる百合業界の制圧をほのめかして危機感をあおるためにハギヨシさんの記憶を操作して、龍門渕グループから引き抜いたと思わせる演出をし、こちらの戦意を高めてから開戦)

照(458兵との戦いでは、こっちの戦力を地下と地上、または地下でもエリア別にチーム分けをさせ、458プロが本気で潰しに来ていると思わせつつ、人数を調整しながら私たちを鍛える)

照(お父さんや赤土さんは、私たちに加勢できないようにして戦力バランスをとる。ついでにリリーブライドの会長さんの記憶も新たに書き加え、瑞原プロに操られて裏切ったと思わせる)

照(これは小鍛治プロの能力に早い段階で気付くと戦意喪失を招くかもしれないから、ということみたい。ハギヨシさんも同じ理由。あえて瑞原プロのファンだと見せかけた)

照(……そうやって戦っていくうちに、私たちが鍛えられ、ある程度の実力に達した時、幹部たちと戦う場を用意した)

照(咲と東横さんを連れ出したのも、こちらが誘いに乗らざるを得なくするため。それと……〔姉妹の愛(シスターラブ)〕を発動させて私が負けにくいようにするため)

照(チーム分けも、あらかじめモニターでチェックして私たちにとって最善の組み合わせになるようにしてあった)

照(幹部で一番の強者である瑞原プロを弱体化させるために、リリーブライド会長に事前に対抗策をとらせておいたりもした)

照(……結果、私たちは勝利。苦しい戦いを乗り越えたことで、さらに成長することができた)


照(ここまでくれば、残るは小鍛治プロ1人。自分が私たちに負けるだけ。冷静に作戦を遂行する)

照(まず、できるだけ負けやすくなるために、私に〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕を使わせて防御力を0にしたい。でも〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕によって本当の目的がバレたらまずい)

照(ということで、戦闘の直前にあらかじめ設定していた都合のいい記憶を自分に書き加え、本来の自分の記憶を封じた)

照(次に、負けるために必要な条件は、躊躇なく攻めてもらうこと。そのためには記憶操作は防衛本能に任せ、自分からは仕掛けない。必然的にカウンターのみで使用するため、付け入る隙があることに誰かが気付くと踏んだ)

照(そして戦闘が始まった。私たちは強すぎる小鍛治プロを相手にどう戦うか頭を悩ませていたけど、それは私たちを圧倒していた小鍛治プロも同じだった)

照(私たちは短期間とは思えないほど強くなった。でも小鍛治プロを倒せるレベルには達していなかったようで、どうすれば負けられるのか考え続けていたようだ。効果的な作戦の記憶を植え付けたりもした)

照(戦いの間に少しずつ成長していく私たち。そして私の〔連続妄想(コークスクリュー)〕の威力を見た小鍛治プロは、自分の記憶を消して攻撃を受け流す作戦に移行した)

照(この方法以外では防衛本能を黙らせることはできないかららしい)

照(……そして最後の勝負、私も諦めかけたその時、小走さんの攻撃が当たり、続けて私の攻撃で…………)

照(小鍛治プロの目的は達せられた)

照(………………)

照(……そのあとは原村さんが記憶を取り戻し……小鍛治プロの能力を全て消した)

照(それは『二度と記憶を封印されたくない』という自衛行動じゃなくて『もう自分と同じような気持ちになる人を生みたくない』という気持ちの表れだと小鍛治プロは思ったみたい)

照(そして原村さんの呪縛を1つ解いたという安堵感と、これから先は償いの意味も込めてできる限りのことをしよう、という決意が生まれた)

照(…………でも、月が地球に接近し、人類滅亡が間近に迫っているという予想外の展開が訪れてしまった)

照(そんな状況に対し、小鍛治プロは悲しみを抱えながらも、原村さんと世界を救うために、原村さんを倒せる可能性を秘めた方法を考え始めた……――――)

~~~~~~~~~~~~~~~


照「………………」ハッ

照(……今まで使った〔照魔鏡・極(しょうまきょう・きわみ)〕の中で一番長かった)

照(原村さんの記憶を視たことと……多分小鍛治プロが何度も自分の記憶を消しては足してを繰り返してたから長く感じたのかな)フゥ

健夜「………………」

洋榎「……おい宮永。もう終わったんか?」

照「あ、うん」

怜「倒し方、わかったん?」

照「………………うん」

照(直前までの小鍛治プロの記憶を視たおかげで)

咲「ね、ねえ。その……倒すしか方法はないの?説得とか」

照「…………」

健夜「……残念だけど、説得しても間に合わない。それにここで倒さなければ、二度と元の和ちゃんには戻らない。ずっと世界と同化して生きることになる」

咲「そんな……」

久「…………和自身が世界と同化することを望んでるっていうの?」

健夜「…………望んでない。だって、本当の望みは……」

照「……っ……」

久「?」

健夜「…………とにかく倒すしか和ちゃんを救う方法はない。もちろん人類もね」

洋榎「わかりやすくてええわ。ちゅうか、倒せるやり方があるんやな?」

健夜「……うん。宮永照さんが作戦を説明してくれるから」

洋榎「説明も何も、攻撃が当たるなら全員で攻めまくればええんちゃうの?」

照「………それは無理」

洋榎「なんで?」

照「原村さんの能力の有効範囲は宇宙。そして妄想の具現化、現実化」

洋榎「う……」

健夜「……私みたいに能力を奪われたり、あるいは能力の効果を違う概念とカップリングされたら終わり。例えば鷺森さんの『一撃必殺』の意味を『自滅』という意味と結び付けたら……」

灼「倒すどころか、能力を使った私が負ける……」

健夜「うん。それ以外にもなんとでもできちゃう。鷺森さんの指がたどり着く先を『地球の核』にしてしまえば、指と核のカップリング。カップリングの意味を『惑星爆発』と妄想すれば月が衝突する前に人類は滅亡する」

哩「……そぎゃん相手に勝てる方法があるんですか?」

姫子「部長っ!素敵な質問です。愛しい……///」ギュッ

哩「姫子を守るためだからな」チュッ

健夜「…………あくまでも勝てる可能性があるかもしれない方法。というよりも、これ以外では絶対に勝てない」

咏「ふーん。じゃあその作戦でダメなら?」

良子「テールシスターズ(おしまい)?」

健夜「…………そうだね」

雅枝「ふん!わかりやすくてええわ」

憧(……さすが母娘。同じ反応)


ゆみ「とにかく方法があるなら実行するしかない。のんびりしている余裕があるとも思えないしな」

貴子「私もそれ思ったァァッ!先行して特許権抑える気かこの野郎ァァッ!!!」

ゆみ「は?そんなつもりは……」

洋榎「……ふん。ま、どちらにせよやれることだけやる。シンプルや…………けど」

憩「けど?」

洋榎「まさか、うちらが人類を救うことになるなんてなぁ」

怜「…………そのセリフ、これが映画やったら絶対トレーラーで使われるな」

洋榎「……お前、これから大仕事やっちゅうのに呑気やな。下手したら死ぬかもしれへんねやで?」

怜「そうやな…………生命の危機はすでに体験済みやからかもしれんな」

洋榎「ぁ……そうか。お前体弱いんやったな」

怜「けど、呑気なわけちゃうで。私は生きたい。竜華と……みんなと一緒に。せやから絶対勝つ」

竜華「怜……」ギュッ

洋榎「…………そやな」フフッ

恵「………………」

健夜「…………原村さん」

恵「……ああ、今回の件は全て私の責任だ。君を巻き込んでしまったことはすまないと思っている」

健夜「それは違います。私も………いえ、それはあとにします」

恵「迷惑をかけて本当にすまない……だが、お願いだ。和を助けてやってほしい。和は本気で世界を滅ぼすことを願ってはいない」

健夜「…………ええ。わかってます」

健夜(和ちゃんはとても優しい子だから…)

はやり「……どうやら私たちも協力しないとダメみたいだね☆」

咏「そうっすねぃ。一大事っぽいし」

理沙「っ……」コクコク!

良子「イエスですね」

智葉「…………仕方ない」

成香「うぅ……こわいです……」

トシ「さあ、準備はいいかい?待ちくたびれて関節が鳴ったよ」ポキリ

照「………………」チラ

咲・久・智紀・純代・塞・白望・エイスリン・ゆみ・桃子・恵・貴子・界「……………………」

憧・穏乃・灼・晴絵・やえ・小蒔・霞・全裸初美・雅枝・洋榎・怜・竜華・哩・姫子「………………」

健夜・咏・はやり・理沙・良子・智葉・成香・明華・ダヴァン「………………」

透華・一・久美子・憩・豊音・トシ・老婆ズ・親エイ隊たち「………………」

照「………………」

健夜「……宮永さん、説明を」

照「はい。ではこれから最後の戦いに向けた作戦に入ります」

照「この作戦は、ここにいる全員の力が必要です……―――」


人類を救う、負けられない戦い。

その人類の中にはもちろん和も含まれている。

勝者となっても救われないであろう彼女を守り、止めるためにも……絶対に負けられない。

照の説明が終わると、全員の気持ちは一丸となっていた。

今度こそ最後の戦いが今、始まる―――


トシ「……さて。私らが先陣だよ」

エイスリン「トップバッター!」

初美「緊張しますよー」

塞「大丈夫。きっと上手くいくわよ」キュッ

初美「あ、手……」

塞「頑張ろう?」

初美「……は、はい……//」

老婆たち「不安はあるけども……」

憧「できることをやるしかない、ってね」

トシ「その通りさ。それじゃあ……行くよ!!」

最初に動き出したのはトシ、エイスリン、塞、初美、憧、老婆たち。

世界と同化しかけている和相手に、どう立ち向かうのだろうか。

今の和は、空であり地面であり地球。目に見える存在だがそれは概念としてであり、和そのものではなく、地面に妄想をぶつけても効果はない。

塞(見えないんだったら……見えるようにしてもらわないとね!はつみたん!)

初美「〔 初 美 脱 衣 祭 ( は つ み だ つ い ま つ り )〕!!」ラーラララー

ヌグヌグヌグ―――

分身した初美が服を適度に脱いでいく。

上半身のみ下半身のみ。上下はきちんと、足袋だけヌード。

様々な初美が目の前で生まれていく。

その煽情的な姿は視線を奪い、釘付けにする。


襦袢初美(でも……)

緋袴初美(悲しいですが、これだけでは…)

足袋のみ初美(原村さんの視線を引き付け続けるまでいかないですよー。でも…)

全裸初美(っ……!きた!!)ゾワワワワッ!

初美は、全身の内側を見られているような感覚になった。

和が……世界が一瞬だけ初美を見たのだ。

全裸初美《今です!》

そしてその瞬間、全裸初美は合図を送る。

それを受けたのは、

塞《オッケー!》

臼沢塞。幼女好きの百合四天王。

塞《〔 幼 女 領 域 ( よ う じ ょ ・ フ ィ ー ル ド )〕!!》

対象を幼女に変える能力を発動した。

しかしその相手は和ではない。和は今だ世界であり、攻撃や能力が通じる状態ではないからだ。

塞が能力を使用した相手は、


あこ「っ!!」ローリン!

新子憧だ。

ゴォォオオオ....ゴォオォオォオ...

塞「!!」

全裸初美「やりました!」

空が揺れる。地面はそのままに、空と雲だけが激しく揺れ、地球と宇宙とが摩擦しているかのような音が鳴った。

そして、照たちがいるこの場所の空に、とてつもなく大きな存在感が漂った。

それは和がこの場にいるという証明だった。

あこ(っ!これが和……?理由はよくわからないけど、引き付けることに成功したみたいね)

憧は、何故自分が幼女になることで和を引き付けられるのかがわからない。

当然『自分の幼い頃の姿が、和が想いを寄せていた片岡優希とそっくり』だと言うことも。

そして、初美によってわずかながら視線を向けた先に優希と瓜二つの存在を置くことで、和に現実感を与え、世界との間に僅かな隙間を生み、

人としての存在に近付ける狙いがあったことも知らない。


エイスリン《〔 セ ン ジ ュ ナ モ リ ( 千 手 な も り )〕!!》ユッリユッラッラッラッラ..

和の存在を肌で感じ取れるまでになったこの瞬間、エイスリンの夢にその手は届く。

エイスリン「♪♪♪」カキカキカキカキ!

ひたすら和を描き続けることで、人間である原村和の形を蘇らせる。

のど「

ザザ..

のか」

ユララ..

nド「

サーー..

薄っすらと姿を現し始める和。そこに、

ダヴァン「決闘(デュエル)デス!」ビシィッ!

ダヴァンが〔決闘選定者(デュエルマッチメーカー)〕を使い、エイスリンと和の間に『VS』を生み出し、繋がりを深める。

エイスリン「……ッ」カキカキ!

口「」

ザァ...

和「…………」

そして、

ついに和は

姿を現した。

エイスリン(ヤッタ!)

しかし膨大すぎるその力のせいで、エイスリンの強制力は微々たる程度しか効果がない。ダヴァンがVSを消したり、ほんの少しでもエイスリンが描くペースを緩めると、和の存在は世界へと引っ張られ、消失してしまう。

ダヴァン「っ!デュエル!!デュエル!!」ビシビシィッ!

エイスリン(~~~~!)カキカキカキカキ!

和を実体化させ続けるにはエイスリンが和を描き続けなければならない。しかし先の健夜戦でインクは切れかけ。

早くも万事休すか……そう思われたその時、救世主は現れた。


トシ「予備はあるよ」サッ

老婆たち「私たちも持ってるよ」サッ

予備のペンである。

ラーメンだなんだと言いつつもやっぱり教師。教え子がインク切れになった時のためにペンを持参していたのだ。決して箸が壊れた時に使う用ではない。

エイスリン(コレデ……マダカケルヨ!)カキカキカキ!

エイスリンが描き続ける限り、和は人としてこの場に留まる。

つまり……百合妄想士たちの攻撃が届く。

あこ(あとは……)

塞(……任せるよ!)

あこたちが目を向けた先……準備万端で攻撃態勢に入っている者たちがいた。

エイスリンが和を実体化させているのを確認すると、一斉に動き出す。

久「よぉし、行くわよ!」

久《〔 次 元 を 超 え た 出 会 い ( ク ロ ス オ ー バ ー )〕》シュビィン!

久《華恋(アイドルは××××なんてしませんッ!)が舞台で粗相をしそうになった時、雪乃(あいたま)が颯爽と助け…》

作品を跨いだカプ妄想。それは妄想素材の少ないマイナーカプの極地。悪待ちにも似たその妄想は、久の性質に合い、最大限の力を発揮する。


智紀《繋がれた鎖。裏切り。変わってしまった日常…》

絶望とは誰もが持つ感情。

智紀によって増幅されたそれは、辛く悲しくも時には甘美。

幸せしかなければそれは幸せではないとでも言うかのように、物事の裏を激しく突く。

純代《〔 深 堀 さ ん 劇 場 〕!!》

そして純代が描く上質なストーリー。

純愛からスカまでを網羅したからこそ作れるその構成と発想は他の追随を許さない。

穏乃《憧と一緒に山に登って、テントで遊ぶんだ!》

白望《……塞と、いつもみたいにまったりと……過ごす》

やえ《後輩の面倒を見る!慕われる!嬉しくなる!王者!》

ゆみ《早く独り立ちしてモモを養えるようになってみせる!そしていつの日か…》

桃子《先輩と私……次第に距離が縮まり、口と口が触れ合うっす……》

灼《私は卒業と同時に、ハルちゃんと同棲を始めた。穏やかな日差しの中、窓際でたたずむ私にハルちゃんは…》

穏乃たちはこの場の戦いに向かぬ能力のため、それぞれの妄想を練る。

足りない威力は気持ちでカバーするとばかりに気合は十分。

そこに、

透華《一と過ごす日々は私にとって何よりの宝物!》

一《透華とこれからもずっと一緒にいたい。それがボクの願い》

久美子《女子高生百合。大人百合。どちらも最高!》

戦闘タイプではない3人も加わった。

死力を尽くす戦い……見ているだけではいられない。


洋榎《〔 百 合 婚 ジ ャ ン プ ( ユ リ コ ン ジ ャ ン プ )〕》シュウウゥゥ..エェィイイィィ...シャァァァ...

雅枝《〔 生 き が い を 刈 り 取 る 鎌 ( ペ ナ ル テ ィ ー シ ッ ク ル ・ 弐 )〕!!》

関西の独占女王と視聴禁止女王も本領を発揮する。

他者を圧倒する自我は何を言われても『ええやんけ』を主とする。

怜・竜華《〔 園 城 寺 一 族 × 清 水 谷 一 族 ( バ カ ッ プ ル フ ァ ミ リ ー )〕!!!》シュババババ..

哩《私には姫子しか見えない!姫子の全てが!姫子と過ごす時間が愛しい!》
姫子《私はぶちょうしか見えない!ぶちょうがいてくれれば、なんでもできる!!》

2組のカップルはお互いの愛を溢れさせた。

抑えても抑えても止まらないその想いは、幸せの波動。

咏《〔 幻 影 百 合 色 地 獄 絵 図 ( げ ん え い ゆ り い ろ じ ご く え ず )〕》ザ..ザザ..ザザザ...

ロリ舞えど 萌えより強し 猜疑心。

幻想の中で猜疑心を最大に高める咏の能力。

久たちを苦しめた力が今、世界を救うために発動する。


はやり《〔 H A ・ Y A ・ Y A L O V E S O N G ☆ 〕》ハヤヤヤヤヤ..

そして聴こえるアイドルソング。。

久美子の工作によってエイスリンに心奪われたファンが多い中、今なおはやりで妄想している筋金入りのはやリストのため、心を込めて歌う。

良子《シュートスキューアーストマックヒューマンたブラッドフィールドトゥデイジャパニーズマネー(美しい人たちの共演)…》

他者の妨害になるため〔完璧なるCEROの世界(パーフェクトセロ)〕を使えない良子は、

得意分野である外国にまつわるキャラを妄想した。

脳内で繰り広げられるカレン母(きんいろモザイク)とクロエ・ルメール(ガールフレンド(仮))とハル・リドナー(DETH NOTE)、シェリル・ノーム(マクロスF)らの語らいは優雅の一言。

特にくっついているわけではない。だがそこかしこに見え隠れする親密さがあらぬ想像を掻き立てる。

智葉《武藤結月(ちょっとかわいいアイアンメイデン)は舟木碧生を拘束し、その身体を好きにできるという喜びに己の本能をぶつけることにした。どれだけ泣き叫ぼうとも、鞭はしなり、ロウは肌へ落ちることに変わりはなかった…》

成香「あっ、あぅ……や、やめてくださぃ……///」

智葉は成香のスカートを握り、持ち上げながらサディスティックな妄想を練る。

もう少しで下着が見えてしまうギリギリのところをキープすることで、成香の羞恥心を煽り、それを利用してサド度を増す。


晴絵《〔 約 束 さ れ た 貫 通 の 肉 棒 ( エ フ タ ナ リ バ ー )〕!!!》

界《カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…》

一方、こちらではふたなりの波動に満ちていた。

力を振り絞る晴絵とここで全てを出し切ろうとラッシュを繰り出す界。

ふたなりを愛する2人が奏でるメロディーは、男根的でありながら女性的だ。

恵《ゆるゆりゆるゆりゆりゆりゆりゆりゆるゆりゆるゆりゆりゆりゆりゆりゆるゆりゆるゆりゆりゆりゆりゆり…》

ふたなり伴奏に加わったのはリリーブライド会長、原村恵。

百合嫌ーではなく、百合スキーとして思いの丈を込める。

貴子「…………マジの切り札……いくぞコラァァッ!!」

そして久保貴子はここまで温存してきた、本当なら使いたくはなかった能力を使った。

その名も〔人生全てをビンタする(ビンタフルライフ)〕。

貴子の持つ力を過去にまで遡って集めて一気に放つという凶悪なもので、並の敵なら耐えることは不可能だ。

そんな能力を何故貴子は今まで使わなかったのか。その理由もまた、並の人間なら耐えられない代償を負うからなのである。

〔人生全てをビンタする(ビンタフルライフ)〕の代償、それは……

『所有している全ての百合関連商品を、イマイチ価値のわかっていないおばあさんが個人経営している古本屋に売却される運命を背負う』というもの。

レアな限定品もサイン入りも全て『なんとなく』で買い取られてしまう。

挙句の果てに、買いなおそうとした時には足元を見られて割と高めの額を吹っかけられるという運命を背負う。

金銭的にも精神的にも辛いこの能力。それを貴子は解禁した。世界を救うために。


久・智紀・純代「はあああああ!!」

穏乃・白望・やえ・ゆみ・桃子・灼「あああああ!!」

透華・一・久美子「ああああ!!」

洋榎・雅枝「おらあああ!!」

怜・竜華・哩・姫子「~~~~っ!!」

咏・はやり・良子「!!!」

智葉「おおおおお!」

界・晴絵・恵・貴子「くらえええええ!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

26名による同時攻撃は凄まじいエネルギーを発した。

過去地球上でこれほどまでの百合波動が生まれたことはないだろう。

そんな力は、和の元へと…………向かわず、方向を変えた。

何故なら、

煌「皆さん……すばらですっ!」

彼女たちは花田煌の〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕にいたからである。


全ての攻撃は煌へと集まり、肩代わりすることになる。

無論、これは作戦だ。わざと有効範囲内で攻撃をするように指示されたもの。

しかしこれほどの威力では煌といえど耐えられはしない。

このままでは和へ攻撃するどころか、味方である煌を倒して終わってしまう。

総勢26名の力が迫り、もう少しで煌へと到達する直前、

煌(……では、お願いしますよ)チラ

憩「まっかせてー」ニコニコ

煌の視線に応え、荒川憩は笑顔を浮かべた。

笑顔+関西弁+ナース服=荒川憩。

公式通り煌に向かって癒しの力を送る。

ワンテンポ遅れて肩代わりした力が煌を覆う。


煌「ぐぅ……っ!」

それは普段の煌が耐えられる範囲の数倍もの力。

しかし憩が癒し続けることでなんとか踏みとどまる。

明華《♪ARE YOU READY!! I’M LADY!!始めよう やれば出来る きっと絶対私NO.1~》

その癒しに寄り添うように、気持ちを高める歌が続く。

前向きになり、自信を深める歌詞が煌の底力を引き上げる。

理沙「大丈夫!耐える!」

そしてさらに言霊による力が精神力を増幅させた。

煌「っぐぐぐ……」

しかしそれでも煌の表情は険しい。憩たちの力を借りてもなお、限界はどんどんと迫ってくる。

豊音「花田さん!頑張ってー!ちょー応援してるよー!」

そんな煌に聞こえてきたのは励ましの声。

豊音「花田さーん!負けないでー!頑張ってー!!」

顔を真っ赤にさせながら何度も何度も声を出す。

敵も味方も強化してしまうという能力のせいで今まで役に立てず、戦場でゲームボーイアドバンスをするしかなかった自分。

そんな自分がようやく力になれる喜び。

豊音は心の底から煌を応援した。

煌「っ!」

カァアアアッ!!

この瞬間、豊音の能力は本領を発揮した。

敵、つまり和にも向かうはずの豊音の能力を〔スバラの部屋(スバラズルーム)〕が肩代わりしたことで、純粋に煌の能力だけを大幅に引き上げたのである。

無論、煌が受け止めている攻撃に対しても強化は適用されるため、負担は変わらない。

煌の体力と煌に向かっている攻撃の強化。これだけを見たなら意味はないように見える。

だがこの状態で『あること』をすると、その意味合いは大きく変わってくる。


小蒔「はあっ!!」

その『あること』の役割を担うのは神代小蒔。

九面をその身に宿す百合妄想士。

健夜との戦いで九面の力を失っているものの、それでも彼女自身、強い力を持っている。

そんな小蒔が発した裂帛の気合は、その意気込みと使命感によるものだ。

小蒔「…………っ……はぁぁ……」

絶対に失敗できないプレッシャーに、彼女は見事打ち勝った。

煌「…すばらです……」

小蒔「……はい……」

小蒔が行ったのは煌に向かってきた攻撃を『神気』で包んだこと。

予め煌の精神に神気を張っておき、豊音が能力を使用したあとにそれをぐるりと包み込み、塞いだのである。

これにより、煌が肩代わりした久たちによる一斉攻撃は神気を纏い、威力を保ったまま球体の形で留まった。

豊音の能力による強化もあって、その威力は健夜の〔新鋭百合作家爆誕(スーパーノヴァエクスプロージョン)〕の数百倍。


霞「……ありがとう小蒔ちゃん。あとは任せて」ポヨヨン

そして小蒔の前にやってきたのは石戸霞。

小蒔が作り上げた神気の球体に向かって手を伸ばし、念じる。

霞「………………」

彼女の手を通じ、全身から溢れる力が神気に新たな力を加える。

かつて弘世菫が病んだ際、神気を流して悪しき心を体の外へと排出させたように。

ヒュッ..

霞によって押し出された神気の球体は推進力を得た。

ゆっくりと、真っ直ぐに進んでいく。

霞(…………私たちにできるのはここまでよ)

その先にいるのは……

照「…………」

咲「…………」

宮永姉妹。


和「……っ……ぁ……っ……」

和がもがく。空気で感じているのだ。自分が望まない未来への可能性を。

そして無意識化で願望が叶えられていく。

各国の大統領は『女性カップル2人でなくてはならない』と決まり、

『朝まで百合カプ討論』というテレビ番組がレギュラー化決定した。

和「ぃ……ぎ……ぁ……」

信号機の色は増え、ゆるゆりの主要人物の髪の色で統一。全世界で採用される。

そんな風に世界が変わっていく中、

照《『レナ×ファリス(FF5)』…》ギュルルルル..

咲《『スクールランブルの塚本 八雲×天満』…》ギュルルル..

2人は手を繋いでいた。そしてその繋がれた手に〔連続妄想(コークスクリュー)〕の竜巻が宿っていた。

照《『マンガ家さんとアシスタントさんとの足須 沙穂乃×沙穂都』…》

咲《『とある魔術の禁書目録のレイヴィニア=バードウェイ×パトリシア=バードウェイ』…》

本来ならば照以外の人間がしりとりに乱入すればその段階で〔連続妄想(コークスクリュー)〕は効果を失い、消えるはず。

しかし、照と咲が交互にしりとりを続けてもその力は消えないどころか、強力になっていく。


照《『苺×林檎(FLOWERS、沙沙貴姉妹)』…》

咲《『極上ドロップスの国木田 美夜×真夜』…》

それは新たな能力。

〔連続妄想姉妹(コークスクリューシスターズ)〕。

姉妹間でのみ使用でき、さらにセットできるカップリングも姉妹のみという限定された能力だが、

その分だけ威力は並外れており、〔姉妹の愛(シスターラブ)〕の効果によってさらにその威力が大きく引き上げられている。

和「ぁ……ぐ……」

この土壇場で新たな力に目覚めるなど奇跡的……というよりも都合が良すぎると誰もがそう思うだろう。

しかしこれは奇跡ではなく、必然だった。

照《『やはり俺の青春ラブコメは間違っているの雪ノ下 陽乃×雪ノ下 雪乃』…》

咲《『のんのんびよりの越谷 小鞠×夏海』…》

和の能力は百合を支配し、世界を変える。今の世界を変えたり、過去を変えることで現在を変えることになったり、といったもの。

その有効範囲は宇宙まで広がっている。

つまり地球上にいる人間全てが能力の支配下に置かれているため、ロシアがなくなったとしても『最初からそういうものだった』と認識し、疑問を抱かないはずだ。

なのに照たちは記憶を持っていた。ロシアが存在することも覚えている。和の支配下にいるはずなのに。それは何故か。


答えは『照たちに限っては和が力を発揮できていない』からだ。

和の力は何の不純物もなく妄想を信じ、全世界の百合妄想士の思考エネルギーを自分の妄想に利用することで世界を変えるというもの。

そこに不純物……迷いがあってはならない。

その迷いとは『願いが叶わないかもしれない』といったもの。あるいは『思い通りにいかない』と疑う気持ち。

過去に優希に失恋した時に受けた傷とトラウマにより、両想い直前で咲と結ばれる可能性を疑った和。

二度の失恋によって、優希と咲と照に対しては自分の思い通りにいかないという強い想いが心に残った。

よって、照と咲はもちろん、行動を共にしている他の百合妄想士たちも和の能力の影響が少なく、正気を保っていられるというわけだ。

幼女憧によって優希を思い出させたのも、和に現実感を与えてエイスリンや初美の能力が通用するように、という作戦だ。


照《『南 春香×南 千秋(みなみけ)』…》

咲《『Candy boyの櫻井 奏×櫻井 雫』…》

そして迷いが生まれるということは、

照《『クロスアンジュ1話のアンジュ×シルヴィア』…》

咲《『アイドルマスターの双海 亜美×真美』…》

その内容は、大体が願いと正反対のもの。

照《『未確認で進行形の夜ノ森 紅緒×夜ノ森 小紅』…》

咲《『ニセコイの小野寺 春×小咲』…》

照と咲のパワーアップは、和が思い描いてしまった思考の結果なのである。

照《『君が主で執事が俺での久遠寺 森羅×未有』…》

咲《『ユーフェミア×コーネリア(コードギアス)』…》

そして照と咲の存在が和に現実を見せるというのなら。

照《『アマガミの絢辻 縁×詞…』》

咲《『桜trickの園田 優と美月』…》

2人による攻撃は確かなダメージとして和へ通用する。


和(わ、た…………し…………は……)

照《『きんいろモザイクの大宮 忍×勇』…》

姉妹カプだけでしりとりを繋いでいく2人。

繋がれた手に宿る竜巻が蠢いている。

そんな2人の後方から、霞が飛ばした神気の球体が迫る。

照「っ……!」

咲「!」

キュッ

繋いだ手に力を込め、想いを込め、願いを込める。

そして向かってきた球体が2人の間を通った瞬間に、

咲《『宮永 咲…》

照《×宮永 照』……セット!》

ギュルルルルルル!

照・咲「っ!!」

照・咲《〔 連 続 妄 想 姉 妹 ( コ ー ク ス ク リ ュ ー シ ス タ ー ズ )〕!!!!!!!!!》ギュロオオオオオオオオオオォォォォ!!!!

姉妹百合の凝縮された最強の一撃を。

球体を押し出すように。

和へ向けて放った。


ギュルルルルルルルルル!!!!

和「ぁ…………ぁ……」

和へ迫るそれは全員の力の集合体であり、

そして照と咲による姉妹百合。

世界で唯一、和に到達し得るモノ。

咲「……ごめんね和ちゃん」

和「あぁ……ぁあ……」

ギュルルルルルルルルル!!!!

咲「私は…………お姉ちゃんが好き」

ギュルルルルルルルルル!!!!

和「あぁぁ……ぁぁ……」

ギュルルルルルルルルル!!!!

照「…………私も……咲のことが……好き」

和「!!!」

照「妹だけど…………妹だから…………」

照「……ううん、もし妹じゃなかったとしても……咲が好き」

咲「…………お姉ちゃん」

和「っ!あああ……があぁ……」


ギュルルルルルルルルル!!!!

和(これは……私を拒絶する光……そんなの、、嫌……です。誰か……)

和が視線を振る。

その目が捉えたのは、

咲「……和ちゃん……」

和(咲……さん……私の……咲さ………あ…っ!)

照と手を繋いでいる咲の姿。

和「…………………あぁ……」

和(私の……想いは……私……)

ギュルルルルルルルルル!!!!

和が天を仰ぐ。その天は和であるため、自身の内面に目を向けたのと同義。

そこには救いはなく……。

諦めの笑みを浮かべると同時に、照と咲、そしてこの場にいる全員の想いが和の全身を貫いた――――































照「………………」

咲「………………」

和「………………」フラッ..

ドサッ..

咲「!和ちゃ……」

健夜「っ!」タタッ!

恵「和!」タタタ!

健夜「…………」スッ(和を抱き起こす)

恵「……の、和は……!」

和「…………う……ん」

健夜「……大丈夫です。ただ意識を失っているだけです」

恵「そ、そうか……よかった……」

照・咲「…………」ホッ

久「本当にね」フゥ

透華「当然ですわ!原村和は私のライバル!決着がつくまでは健康でいてもらいますわ!」

憧「そうね。あたしも久しぶりに遊びたいし」

穏乃「うんうん!かけっことかね!」

憧「……いや、それはちょっと子供っぽいからなしで…」

穏乃「ええっ!?」

貴子「……高校生が喋り過ぎだァァッ!実際のところ、月はどうなったんだァァッ!?『原村も私らも無事、でも月はぶつかります』じゃ意味ねェぞ!オラァァッ!!」

透華「……あ、そ、そうですわね」

ハギヨシ「ただいま連絡が付きました」

一「ぅわぁ!?いつの間に……」

ハギヨシ「急ぎましたので」

久美子「それにしても早い…」

ハギヨシ「観測センターの情報によりますと、月が地球に接近しているということ自体が初耳だそうです」

洋榎「なんやねんそれ。全部夢やったとでも言うんかい」

健夜「……ううん。和ちゃんが力を失った瞬間に、願いが無効になったんだよ。私たちの『そうあってほしくない』という想いに負けて、受け入れたから」

ゆみ「なるほど。その結果、元通りになったというわけか……つまり小鍛治プロの能力も」

健夜「…………うん、元通りだよ。もう戦うつもりはないけどね」

トシ「それで、これからこの子はどうなるんだい?」

雅枝「力を失ったっちゅうても、それは今だけの話やろ?また同じことになったら…」

健夜「……いえ、そうはなりません。和ちゃんは今回の戦いで『自分の思い通りにならない』ことがあると学びました。心の奥にまで染み込むほど強く……」

健夜「だから世界を変えるほどの力はもうありません」

雅枝「…………そうか……」

照「………………」

咲「………………」

健夜「……宮永さん。2人が責任を感じることはないよ?あなたたちは何も悪くないんだから」

咲「……はい……」


塞「おおっ!?」

照「っ!?」

健夜「な、何か問題が!?」

塞「ロシアもちゃんと戻ってる……そして……ソーニャちゃんっ!ふへへ……///」

健夜「…………」

全裸初美「……ふんっ、浮気者ですよー」プイ

健夜「…………ふふ、あはは」

咏「…………ひとまず、決着ってことかねぃ?」

はやり「うんうん☆残念だけど、458プロの負けだね☆」

健夜「……はい……そして今日をもって458プロは…」

理沙「続く!」

健夜「え?」

はやり「はやー☆賛成!458プロは活動を続けます☆」

健夜「でも……私は自分の目的の為に……」

咏「ま、最初はそうだったかもしれませんけど、なんだかんだ言ってこの面子でつるむの楽しくね?ってことで」

良子「スリー尋ツリーソングさんの言う通りです(三尋木咏さんの言う通りです)」

咏「いや、スリー尋ツリーって…」

理沙「これからもやる!」

健夜「…………みんな……」

雅枝「……ええんちゃうか?強敵が多い方がリリーフラワーガーデンも成長できるわ。っちゅうかうちに来えへんか?」

久美子「そ、それはダメですよ!バランスがあります!」

健夜「………………」

健夜(和ちゃんを私の封印から解放して、458プロもリリーブライドも、リリーフラワーガーデンも他の組織も、全部無事で戦いが終わるなんて……)

健夜(こんな結末、予想してなかった)

健夜(……和ちゃん)

和「ん……ぅ」

健夜(良くも悪くもこの世界は、予想通りにはならないみたい)

健夜(だからこそ…………辛いことがあっても生きてみようと思えるのかもしれない)


未だかつてない規模で行われた458プロとの戦いは、ここに幕を閉じた。

関東関西どころか日本を飛び越え、世界、そして宇宙にまで拡がったこの戦い。これ以上の激闘はこの先ありえないだろう。

しかし彼女たちの戦いは終わらない。

何故なら、この世に百合がある限り、百合妄想士は生き続けるからである――――


◇◇◇◇エピローグ◇◇◇◇

【宮守女子高校 麻雀部 部室】

塞「うん、うん。そうそう。だからね?で、デートとか……どうかな?」

初美『……臼沢さんはデート中でも他の子にハァハァしそうですよー……浮気性ですし』

塞「し、しないって!はつみたんとデートでしょ?はつみたんしか見えないよ!」

初美『へ、へぇ……本当ですかー?』

塞「本当よ!だから……どう?」

初美『……い、いいですよー』

塞「!!」

初美『ちゃんとエスコートしてくださいよー?』

塞「も、もちろん!あ、はつみたん、一応だけど、デートの時は裸はちょっと……」

初美『わ、わかってますよー!服着ていきますー!』

塞「じゃあ待ち合わせ場所と時間はさっき言った通りで」

初美『はいー』

塞「楽しみにしてるわね!」

初美『わ、私も……その……楽しみ……』

塞「え?」

初美『な、なんでもないですよー!それじゃあ切ります』

ツー..ツー..

塞「…………やった」

塞(デート……はつみたんとデート!これは……進展の予感!)ニコォォ..


白望「………………」

塞「やった、やった。ふふっ」

嬉しそうな顔……。

薄墨さんとデートの約束をこぎつけたのがよほど嬉しいみたいだ。

久しぶりに部室で2人きりなのに、話題が薄墨さん一色なのはなんか……。

白望「はぁ……」

私も……そろそろ諦め時かもしれない。

いつまでも叶わぬ恋にすがるのは賢いとは言えないし。

…………この結論、一体何度目なんだろう。

白望(…………でも)

今まで塞が特定の誰かに夢中になるなんてなかったから、

今回の件は踏ん切りを付けるいいチャンスなのかもしれない。

恋心に気付いてすらもらえてない上に、私は塞のストライクゾーンから大きく外れている。

八方塞がりだ。

仲間で友達である私を無自覚で塞ぐなんて罪作りな女だ、とか呟いてみる。

白望(新しい恋か……)

見つかるかな。物理的にも精神的にも出不精で動きたがらない私に。

白望(……いや、変わるいいきっかけか)

失恋を期に動き出すなんてよくある話だ。

多くの人に当てはまる事例ということは、私も多分に漏れないのかもしれない。

白望「はぁ……」

塞「………………ぁ」

白望「……………」

塞「…………ねえ、シロ」

白望「ん?」

塞「……なんかさ、今さらかもしれないんだけど……」

白望「なに?」

塞「…………こないだの戦いの時さ、ありがとね」

白望「え?」

塞「や、私をかばってくれたじゃない?」

白望「……あぁ……」

白望(小鍛治プロと戦ってた時か)

塞「お礼、言ってなかったなって思って」

白望「いや、別に……」

塞「ありがとう」ニコッ

白望「あ……」

ドクン..

塞「あの時のシロ、さ……かっこよかったよ?」クスッ


白望「~~~っ///」バッ!

塞「…………シロ?なんで俯くの?」

白望「……るい」

塞「ちょ!お礼言われるのがだるいってどういうこと!?確かに急にマジな感じはアレだったかもだけど…!」

白望「………………」

どうしてだろう。

人がようやく諦めようと思っていたというのに、

どうしてあんなに素敵な笑顔を見せるんだろう。

いつまで塞は私の心を掴み続けるんだろう。

……なのに、憎み切れないどころか、

もう一度その笑顔を見たいと思ってしまうなんて。

ああ、






本当に、塞は……









ずるい―――


【霧島神境】

初美「ふぅ……つ、ついにデートを許してしまったですよー」

小蒔「わ、大人ですね!すごいです」

霞「よかったわね、初美ちゃん」

初美「うぅ……でもあの人、すぐ他の子に目がいくですよー」

小蒔「……それは悲しいですね」

霞「うふふ。だったら臼沢さんはやめたらどうかしら?初美ちゃん以外に本命がいるかもしれないわよ」

初美「!」

小蒔「霞ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃないですか?」ヒソヒソ

霞「大丈夫よ。見てて」

小蒔「?」

初美「………………そんなわけないですよー」

霞「どうして?」

初美「だ、だって、臼沢さんは私に一番夢中になってるはずですよー」

霞「そうかしら?」

初美「そうですよー!私の体を触りたがりますし!可愛いって言ってくれるですよー!」

霞「あらあら。だったら間違いなく初美ちゃんを大好きなのね」

初美「は、はい!」ニコッ

小蒔「なるほど。手放しで褒めるほど素直になれない乙女心だったのですね」ニコニコ

霞「ええ。初美ちゃんは今まで子供扱いされてきましたから。こう言うとアレだけれど、興奮するほど魅力的に感じてくれてるのが嬉しいのね」

初美「まったく!仕方ないからデートしてあげますかー!エスコートが上手なら付き合うことも考えてあげますよー」ニコニコニコ

霞(うふふ、そんなキラキラした顔して言っても説得力ないわよ?)クス

小蒔「…………」

霞「……小蒔ちゃん?どうしたの?」

小蒔「あ、いえ、照さんのことを思い出しちゃいました」

霞「あ……」

霞(そうよね……あの戦いの最中、原村さんとのやりとりを含めて、自分の想いが届かないことを思い知らされたようなものだものね)

霞「……小蒔ちゃん、その……」

小蒔「私、妹を目指します」

霞「…………はい?」

小蒔「間違ってたんです!今までの私は姫様と呼ばれ、責務を果たすために頑張ってきましたけど、だめだったのです!」

霞「あの……小蒔ちゃん?」

小蒔「照さんは巫女さんに思い入れがないのです!だから私は妹っぽい子になります!」

霞「えーと……」

小蒔「まずはお料理を勉強して、毎日美味しいおべんとを渡します!そして髪型もふたつ結びに挑戦して若返りを図ります!」

霞「…………」

霞(諦めるつもりなんて微塵もないみたい。どこまでも一途な………)


小蒔「あとは…………うーん……思いつきません……妹、難しいです」

霞「勉強を教えてもらうとか?」

小蒔「それです!盲点でした!さすが霞ちゃん!」ニコッ

霞「いいえ」クスッ

小蒔「他には……」ウーン..

霞「……………」

霞(一途、か……)

自分の想いが届くと信じきっているわけではない。

宮永さんの気持ちが別の人に向いていることもわかっている。

でも……それでも小蒔ちゃんは自分の気持ちに正直で、ただ好きな人を追いかけようとしてる。

それを一途と呼ぶか無謀と呼ぶかはわからないけれど……

霞「…………なんて、人のことは言えないわね」クスッ

自分の想いが届かなくても、小蒔ちゃんが笑顔でいられるためならなんでもしてあげたいと思ってしまうのだから―――


【リリーブライド 本社】

久美子「いよいよですね」

恵「ああ」

久美子「『メモリーズオフ ~Lily Side~』。絶対に成功させましょうね」

恵「もちろんだ。ただ、従来のメモオフユーザーの反発が懸念材料だな」

久美子「でもユア・メモリーズオフという前例がありますし、別物として考えてもらえば…」

恵「しかし『そんなもの出すなら普通に新作出してくれよ!』と言う声があがるのは間違いないだろうな」

久美子「……そう、ですよね……」

恵「だがな」

久美子「?」

恵「そういった声はクオリティでねじ伏せればいい」フフッ

久美子「!!」

恵「完成度の高いシナリオに加え、おまけのアペンドストーリーを100以上用意するつもりだ。さらにDLCとして魅力的なサブヒロインを攻略できる。もちろん無料でだ」

久美子「おぉ……」

恵「我々は前に向かって全力で進む!」

久美子「会長……」

恵「リリーブライドの総力を尽くし、メモオフブランドに傷を付けることなく、素晴らしいものを作ってみせる!いいな!?」

久美子「は、はい!頑張ります!」スッ!

久美子は恵の言葉に感激し、素早く恵のスカートへと手を伸ばした。

感激と同時にスカートめくりを仕掛けようとしたのだ。

しかし、

恵「…………」ガシッ!

久美子「!!」

鉄壁。

不屈。

集中。

ひらめき。

恵は隙を見せることなく久美子の腕を掴み、パンチラを防いだ。

いや、それどころかプリーツタッチをも許さなかったのだから、100点満点を超えたと言えるだろう。

久美子(これなら大丈夫。この企画は絶対成功する)クスッ

恵「ん?どうした?」

久美子「いえ、すごい作品が生まれそうな予感がして……今からワクワクが止まりません!」

恵「私もだよ」フフッ

恵(……このプロジェクトを成功させ、みんなが安心して笑って暮らせる世の中を作るぞ)


【大阪 リリーフラワーガーデン本部】

雅枝「……ちゅう感じでリリーブライドは動いとるらしいわ」

洋榎「メモオフの百合版……あかん、めっちゃやりたいわ。絶対作ってほしい」

雅枝「アホ。敵の成功を願ってどうすんねん!」

洋榎「けど、やりたいねんもん」

雅枝「うっさいわ!そんなことより、うちらの新企画に期待せえ」

憩「新企画?何するんです?」

雅枝「……リリーブライドは百合を好きなやつらをターゲットにしとる。けどうちらはちゃうで?」

洋榎「どうちゃうの?」

雅枝「オリジナルや!オリジナルのゲームを作るんや!」

憩「わあ!」

雅枝「それも百合に興味がない一般層を百合好きに変えてまうほどのゲームや!」

洋榎「……確かに魅力的やな。ギャルゲー?」

雅枝「いや、こだわらん。とにかくあっちこっちのジャンルに関わりまくる!そんで魅力的な関西弁の百合キャラを登場させるんや!さりげなーく、でも強烈なインパクトを与えるやつをや!」

憩「めっちゃええと思います!」

洋榎「せやな」

雅枝「その第1弾として出すんは…………ときめき百合リアル!」

洋榎「パクりやないか!!」

雅枝「タイトルが似とるだけや!」

憩「……ほな内容はどんなです?」

雅枝「ときメモや」

洋榎「…………せーの」

洋榎・憩「パクリやないか!!」

雅枝「……ボケただけやんけ。ほんまの話は…」

リリーブライドに負けじと動き出したリリーフラワーガーデン。

西が覇権を握るという野望へ向けて闘志を燃やす。

他愛もない冗談や突飛な発想から生まれる斬新なアイデアがリリーフラワーガーデンの持ち味。

最初は軽いノリで始まった今の企画も、最後には素晴らしい百合ゲームとして形を残すだろう。

何故なら彼女たちは、何よりも百合を愛する実力者なのだから。


【奈良 高鴨家 穏乃の部屋】

憧「///」

穏乃「///」

明かりが消えた穏乃の部屋。

両足を投げ出して座り、壁に寄りかかる憧。

その足の間にはあぐらをかいている穏乃。

憧に体を預け、もたれかかりながら赤い顔で俯いている。

憧(ど、どうしたのしず!?急にこっち来たと思ったら……こんな……//)

穏乃「…………お、重い?」

憧「へ?う、ううん、重くない」

穏乃「そ、そっか。よかった」

憧「……うん……」

穏乃「…………」

憧「……………」

穏乃「……憧、あったかいね」

憧「うぇっ!?そ、そそ、そう!?た、体温は平熱だと思うけどね!?」

憧(って何言ってんのあたし!?テンパりすぎだって!)ドキドキ

穏乃「…………私、もうダメかも」

憧「えっ!?ダメってどういう……」

穏乃「私さ、山が好きで……いっつも1人で山を駆け回ってた」

憧「うん、そうね。昔から変わらない」

穏乃「なんかね、山にいると自然に包まれてる感じがしてね。それが好きだったんだ」

憧「んー……ちょっとわかるかも」

憧(あたし的には虫とか気になるからあくまでもちょっと、だけど)

穏乃「でも……さ。憧と付き合い始めてからは、山よりも……その……憧にこうやって包まれてるのが好きになって……///」

憧「っ……///」ボフッ!

穏乃「……山にいる時よりもっともっと幸せで……だから……私ダメだ……」

憧「な、なんでダメなのよ?」

穏乃「だって……もう憧から離れたくない。ずっと憧とくっついてたい///」

憧「……っ!」キューン!

穏乃「あ、あこに……い、いっぱい触られたいとか……へ、変なこと考えちゃうし……///」

憧「し、し、しし、しずぅぅぅ~…………」ブルブルブル..

穏乃「今だって……い、言えない場所が……す……すっごくなってて…………なんていうか……///」


憧「―――――――」

穏乃「うぅ……///」

憧「ごめん。あたしこそもうダメ」

穏乃「え?」

憧「こんな可愛いしずを前に我慢なんて無理!」ギュッ

穏乃「あっ……///」

憧「しず……」スンスン

穏乃を強く抱きしめ、うなじに鼻を寄せて匂いを嗅ぐ。

その匂いは和菓子よりも甘く感じた。

穏乃「あっ、あっ……そんな……///」

鼻孔を幸福にしたあと、憧は抱きしめた手を少し緩め、穏乃の体を正面に向けた。

憧「しず……大好きだよ」

穏乃「わ、私も……憧だいすき///」

憧「っ……もう我慢できない!い、いただきます……///」

穏乃「あ、味見だけじゃやだよ?ちゃんと……最後まで……食べてね///」

そして2人は甘い口どけから始まる至福の時間を堪能したのだった―――


【阿知賀女子学院 麻雀部 部室】

灼「……お茶、どうぞ」カチャ

やえ「ありがとう……熱っ!ふー、ふー、ふー、ふー……」

灼「……吹きすぎだと思…」

やえ「そんなことない!王者らしく最初は様子見して勝負所でドンと飲むんだ!」

灼「そう」

やえ「ふー……ふー……ふー………………ごく………………ぬるいな」ボソ

灼「王者が逃げ回るから」

やえ「に、逃げてないっ!まったく、口の減らない後輩だ」グゥー..

灼「まったく、お腹の減った先輩だ……お菓子どうぞ」

やえ「気が利くな。いただきます」モグモグ

灼「……それで、今日は何の用ですか?」

やえ「インハイ前に練習に付き合ってやったろう?そのお礼をしてもらいにきた」

灼「…………大分前…」

やえ「う、うるさいな!いいだろ!それにしても、鷺森しかいないとはどういうことだ。取り巻きが1人なんて、王者が風邪引くぞ」

灼「玄と宥さんは家の手伝い。穏乃と憧はデート。ハルちゃんは……――――」


【龍門渕高校 応接間】

晴絵「……どうですか?ラノベ初挑戦なので自信ないですけど、自分なりに頑張って書きました」

界「『めすもっこりっ!~クール少女の裏筋に一筋の光~』……よかったぞ」ニコリ

晴絵「ほ、本当ですか!?やった」ホッ

界「ちゃんと主人公がふたなりである必要性があった。それにタイトルもいい。読者はまさかこの作品がサイコサスペンスだなんて想像もできないだろう。ふたなりを使った心理トリックは見事だ」

晴絵「ありがとうございます」

界「……俺の作品はどうだった?久しぶりに小説を書いたから不安なんだが…」

晴絵「『いきなり3本のち○ぽが生えてきた私が女友達に1本ずつおすそ分けするのは間違ってないわよね?』。このタイトルでもう心を鷲掴みにされました」

界「そ、そうか」ホッ

晴絵「中盤で7本になった時はどうなることかと……ラッキースケベ展開で発射まで達してしまうのも斬新でした」

界「そうだろうそうだろう」ウンウン

晴絵「今すぐ商品として出せるレベルだと思います。龍門渕さんたちも同意見だと思います。感想を聞いてみましょ…」チラ

透華「こ、これは大発見ですわ!デビュー作でこの完成度……!このサークルは大注目ですわっ!!」

ハギヨシ「はい。すでにお嬢様のお気に入りサークルリストへ登録しました」

一「わ、この主従百合いいなぁ……ちょっとバイオレンスだけど、ドキドキする」

透華「は、はじめっ!?一は痛いのも好きですの!?私は一の肌を傷付けたくはないですわっ!」

一「あはは。別に痛いのが好きなんじゃないよ?ただボクを無理矢理手籠めにしようとする透華もまた魅力的だなって思っただけ」クスス

透華「……っ……はじめ……///」

一「……透華に強引に迫られたら……きっと………どんなことでも受け入れちゃうんだろうな……///」

透華「…………///」ゴクリ

一「///」

透華「……は、ハギヨシ」

ハギヨシ「はい。離れの方の準備をしてまいります」タタッ

透華「///」

一「///」

晴絵「…………って、向こうは向こうで盛り上がってますね」

界「そうだな。感想は次の機会にして、俺たちも同人誌を読むか」

晴絵「はい。ハギヨシさんが生徒とふたなり教師本を用意してくれてるみたいなので楽しみなんですよね」

界「おお、それはいいな」

晴絵「はい」ニコリ

晴絵(いつか灼と読み合せしたいな)


【阿知賀女子学院 麻雀部 部室】

灼「―――……っていう感じみたい。だから今日は長野に泊まってくるって」

やえ「ふむ。その集いは興味深いな。私も参加してみたい」

灼「確かに自分好みの同人誌を集めてもらえるのはありがたい」

やえ「ああ……しかし、赤土晴絵が小説を書くとはな」

灼「昔から好きだったみたい。ブログとかで文章書くの楽しいって言ってたし」

やえ「…………私も何か始めてみるかな」

灼「え?」

やえ「この間の戦いを経験して、私も色々思うところがあってな」

灼「……わかるかも」

やえ「……芸能プロダクションでも立ち上げるかな。女性タレントのみの事務所とか。そこで王者らしくふんぞり返る」

灼「なるほど……」

やえ「…………『20カ(ニワカ)プロ』なんてのはどうだ?」

灼「そんな事務所誰も所属したがらないよ。しっかりしてなさそうだし」

やえ「……まぁ……とにかく、何かやってみたいな。王者っぽいことを」

灼「その縛りは条件を狭めそうだけど…」

灼(……私も何か考えてみようかな…………あ)

灼(勉強して教師を目指すのもいいかもしれない。ハルちゃんと同僚……)ポワァァ..


【東京 龍門渕グループ所有マンションの一室】

リリーブライドやリリーフラワーガーデン、界、晴絵、そして灼、やえなど、

新しく何かを始めようという動きが活発になっていたが、ここにいる面々も同様だった。

久、智紀、純代、ゆみ、桃子、エイスリン、煌、豊音、明華、ダヴァン、そしてエイスリン親衛隊(元祖)と新エイ隊、かなりの人数だ。

久「では早速始めますか」

彼女たちの目的、それは同人ゲーム作り。もちろん題材は百合である。ジャンルはギャルゲー。

458プロとの戦いを終え、なんとなしに連絡を取り合っているうちに話が持ち上がり、あれよあれよという間に製作開始と相成ったのだ。

今以上に百合が浸透し、百合業界が華やぐように……目標は大きく、やりがいに満ちている。

図らずもリリーブライドやリリーフラワーガーデンと同時期にゲームを作ることになり、シンクロニシティを感じさせる。

しかし久たちは百合に精通しているとはいえ素人。

傍から見れば大したゲームを作れるとは思えないだろう。しかし、

久「絵はエイスリンちゃんね」

エイスリン「ハーイ♪」

立ち絵、CGを〔センジュナモリ(千手なもり)〕を使えるエイスリンが担当する。

なもり先生を超えるペースで描ける彼女なら、立ち絵のパターンはキャラごとに100以上、CG差分は数千枚、といった離れ業も可能だろう。

久「シナリオは沢村さん、深堀さん、ゆみ、東横さん、花田さん」

智紀「はい」

シリアスかつ鬱をほのかに漂わせ、マイナスの感情を引き出すのに長けた智紀。

純代「わかりました」

〔深堀さん劇場〕に見えるように、奇抜さや少しエッチな展開をはじめとする様々な角度から物語を作れる純代。

ゆみ「やってみよう」

無骨キャラを担当し、全体のバランスや話の構成などを調整する役目も果たすゆみ。

桃子「先輩と頑張るっす」

家庭環境に若干難アリの少女担当の桃子。

そして実際に女の子同士付き合っているからこそ交際後の雰囲気がわかるということで、

全キャラの交際後イベントも監修する。

煌「すばらです!お任せ下さい!」

ポジティブ&ポジティブ。

どんな辛い状況でもくじけぬその性格は楽しい雰囲気を作り上げ、そしてハッピーエンドをより盛り上げてくれる。

久「歌は雀明華さん」

明華「♪LA LA LA~~……バッチリです」

OP、ED、挿入歌、全てを担当。

卓越した表現力と歌唱力で一気に物語へと引き込むだろう。


久「そしてその他諸々のサポートは…」

ダヴァン「お任せくだサイ!」

英語訳や海外の情報、ラーメンの味の表現など、シナリオに関わる所々を手伝うダヴァン。

久「で、応援役が姉帯さん」

豊音「うんっ!ちょー応援するよー!」ワーイ

『応援』という役割で参加するのは、敵味方区別なくパワーアップさせる能力者の豊音。

戦場では最後以外で活躍できなかったが、ゲーム作りではとてつもなく重宝する。

何せ、豊音が応援することで全員の能力が増し、完成度が増すのだから。

久「プログラム他は親衛隊の皆さんでお願いします」

親衛隊たち・親エイ隊「エイ様~!!!」

親衛隊には技術者が多く、かなりの戦力だ。

豊音の応援によって、限界を超えた力を発揮するだろう。

久「その他雑用は私です」

今日全員が集まる場所を借りたり――智紀が透華から空き部屋を使わせてもらうよう頼んだのだが――、

スケジュール管理、そして時には〔無数の絆(フラグメーカー)〕を使って作業を手伝う。

万全の体制だ。

久(初めてのゲーム作り……不安もあるけど……)チラ

ゆみ「まずは大筋のコンセプトを決めるところからか?」

エイスリン「キャラデザ!」

明華「シナリオができなければ歌詞が書けません」

ダヴァン「とんコツ!美味しいデス」ズルズル..

久(この感じ……やっばい!楽しい……!)

智紀「…………」

智紀(竹井さんの期待に応えるように頑張ろう。そしていつかは……)

智紀「…………///」ポッ

彼女たちの作る百合ゲーム。

それはどのようなものになるのだろうか?


【大阪 公園 ベンチ】

怜「……………………」(膝枕る)

竜華「…………………」(膝枕れ)

怜「……………………」

竜華「……なんか静かやなぁ」

怜「せやなぁ」

竜華「こうしてると、こないだの戦いが夢みたいに思えるなぁ」

怜「せやなぁ」

竜華「………いつまでもこうしてのんびりしてたいなぁ」

怜「せやなぁ」

竜華「………………阪神負けたらええのになぁ」

怜「せやなぁ」

竜華「せやなぁなことない!」

怜「っ!」ビクッ

竜華「もう!うちの話全然聞いてへんやん!」

怜「うっ……気持ちようてウトウトしてもうて…」

竜華「むー。それやったらしゃあないかぁ。ならもっかい言うな?こないだの戦いが夢みたいに思えるなぁ……はい!」

怜「『はい!』言われたら喋りにくいわ…………えっと、458プロとの戦いなぁ……まぁ、大変やったな」

竜華「うん」

怜「けど……」

竜華「けど?」

怜「……あの戦いのおかげで、竜華への想いを再確認できたっちゅうか……」

竜華「と、怜ぃ……///」

怜「……って……なんか言うてて恥ずかしなってきた……///」プイ

竜華「やん!照れんともっかい言うて?」ユサユサ

怜「い、嫌や///」

竜華「言うてくれんと……キス、するで?」

怜「………………ええよ///」

竜華「…………んっ///」チュ

怜「っ……ん……は……ぁ///」チュ..

竜華「とき……顔赤い……かわいい……ちゅ」

怜「そん、なん……言わんといてぇや///」

竜華(あかん……可愛すぎて頭ボーっとしてきた……)サワサワ

怜「ゃっ……///」ビクン!


同時刻―――

【福岡 公園 ベンチ】

哩「……………………」(姫子と背中合わせで両腕を組む)

姫子「…………………」(哩と背中合わせで両腕を組む)

哩「穏やかだな」

姫子「はい。とてもいい気持ちです」

哩「……姫子の体温ば感じる」

姫子「私も……部長のぬくもりを感じてます……そいけん……感じてます///」

哩「ひ、ひめこ……っ」

姫子「ぶちょう……///」

哩「そぎゃん可愛いことば言われては……我慢できない!」グイッ

姫子「きゃっ」

哩「ん……ちゅ……れろ……」

姫子「ぁ……ぶちょ……う……舌……ぁ……///」

哩「姫子……姫子っ!」

姫子「ぶちょう……ぶちょう……ぶちょうっ!!」

2組の熱い想いが大阪と福岡でそれぞれ重なり合う。

全く同じ時間であるのは、リリーブライドを始め、それぞれの組織がゲーム作りを始めたことと同様、

シンクロニシティが発生したからであろう。

姫子「ん……はっ……ぁん……///」

哩「ひめこ……ぁあ……ひめこぉぉ……///」

盛り上がる2人。さらにキスは激しさを増し、そして……


【大阪 公園】

婦警「あのね?公園はみんなの場所や。せやからそういった行為をするところちゃうんやで?わかる?」

怜「はい……」

竜華「反省してます……」

婦警「周りにちっさい子もおるのに、胸触ったりスカートに手ェ入れたり……」

怜「すみません……」

竜華「家でします……」


【福岡 公園】

婦警「君ら、新道寺の生徒やんな?有名なのにずいぶん目立つことしとっとんの?」

哩「はい……」

姫子「反省してます……」

婦警「それやったらいい加減腕絡めるのやめなさい」

哩「すみません……」

姫子「家でします……」

このあと、2組のカップルは片方の家へ寄り、どちらも同じことをした。

シンクロニシティは続く―――


【長野 久保家】

貴子「………………」

貴子(私は最後の戦いで〔人生全てをビンタする(ビンタフルライフ)〕を使った。その結果、持ってる全百合グッズを売却される運命を背負ったァァッ)

貴子(……けどそのあとに原村を倒したことで月は地球とぶつかることなく、ロシアもちゃんと存在することになった。つまり元通りだ)

貴子(だったら、私の能力による代償も無効になるかもしれねェ。そう思った…………思ったァァァァァァアァッ!!!!!)

貴子「でもやっぱ売られたァァッ!!母親がクソみてェな古本屋でクソみてェな店主にクソみてェな値段で売りやがったァァッ!!しかもその売った金でてめェのブランドもんのバッグまで買う始末ッ!!天罰下れコラァァッ!!!」

貴子「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

貴子(……しかもクソ腹立つのが店主が買い取ってすぐに他の店に売りやがったことだ。挙句にどこに売ったかをクソ忘れやがったせいでクソ買い直せねェ……クソの連鎖だァァッ!)

貴子(前に使った時と同じじゃねェか。どうあがいても手元に戻らないようになってやがる。悪趣味な能力だァァッ!)

貴子「……だが!!」

貴子(私が持ってた物は買い直せなくても、同じ商品を新しく買うことはできる!出費は痛ェが仕方ねェ、ってことで、こないだ買って全然やってねぇ処女宮をオークションで落札したぜ)ハンッ!

貴子(前に取引した出品者の野郎は、品名にタイトルをそのまま載せやがったせいで配達の子に変な目で見られちまった)

貴子(評価欄に罵詈雑言の嵐を書き込んだことで少しはスーッとしたが……二度とあんな目にあいたくねぇからな。今回は慎重に取引したぜ)

貴子(事前に出品者の評価コメントも確認したし、品名には『雑貨』って書くように指定した。問題はねぇ)

貴子(しかも商品の発送番号をちゃんと載せてくれたおかげで今日届くのもわかる。待ち遠しいぜ)

ピンポーン

貴子「!来やがった!!」

タタタ...

貴子「オラァァッ!!!」ガチャ!!

女性ドライバー「…………お届け物でーす。こちらにハンコお願いしまーす……」

貴子「?はい……」

貴子(なんだ?この冷たい目とやる気のない口調は……殴られてェのか?)ポン

女性ドライバー「失礼しましたー」ガチャ バタン

貴子「……まぁいい。とにかく商品を……………ん?」

貴子「げええええええっ!!?!?!?」

貴子「なんだこれはァァッ!!梱包が透明のビニール袋ァァァッ!!??」

貴子「パッケージ裏のエロCGが物流のやつらに丸見えじゃねェか!!!」

貴子「『品名:雑貨』。うるせェェェ!どうでもいいわ今さらァァッ!!タイトルも内容も大公開状態じゃよぉお!!」

貴子「18禁商品をシースルーにするに至った思考のメカニズムがわからねェェ!!頭のおかしいやつと取引しちまったァァッ!!!」


【岩手 老婆宅】

老婆「そろそろ届く頃かねぇ?」

トシ「そうだね」

老婆「梱包と発送やってくれてありがとうね。孫に頼まれて困ってたのよ」

トシ「お礼はいらないよ。でも麺は欲しいよ」

老婆「ふふふ、そうかい。今用意するわね」

トシ「兵は神速を貴ぶ。急ぐんだよ」

犯人はトシ。

梱包が透明なのはトシなりの親切心。

欲しかった品が届いたとすぐわかる親切設計のつもりだったのだ。

悪気など欠片もなかった。

そして常識も欠片もなかった……。


【東京 臨海女子高校 校門前】

智葉「………………ん?」

成香「…………あ、辻垣内さん」

智葉「……なんでお前が東京にいるんだ?」

成香「そ、その……辻垣内さんにお話があってきました」

智葉「そうか。じゃあな」テクテク

成香「あっ、あっ……ま、まってください」

智葉「……何の用だ?わざわざ休日に学校前で張るなんざ、私の行動を把握しているからできることだ。誰から聞いた」

成香「そ、その……メガンさんに教えてもらいました」

智葉「ちっ……余計なことを……」

成香「それで……お、おはなしが」

智葉「何の話だ?」

成香「だ、大事なお話です」

智葉「……だからそれを言えと言っている」

成香「っ!お、怒ったんですか?」

智葉「怒っていない」

成香「で、でも……言い方が強くて……あっ、ごめんなさい。怒らないでください」

智葉「怒っていないと言っている。用件は何だ。手短に話せ」

成香「わ、やつぎばやで早いです……え、ええと……順番に答えます。まず最初の質問は……あれ?ええと……なんでしたっけ?」

智葉「………………なんでここにいる?」

成香「そうでした……質問を教えてくれてありがとうございます。えへへ」ペコリ

智葉「………………」

成香「……………?」

智葉「…………だから質問に答えろっ!」ギュゥゥ!

成香「ひ、ひたひ!ほっへをふへははいふぇくらはい(ほっぺをつねらないでください)」バタバタ!

智葉「…………早く」スッ

成香「うぅ………ほっぺがふたつとも痛いです……赤くなってるかも……鏡で確認を…」

智葉「赤くなってないから早く答えろ。いい加減にしないと……ふふふ」

成香「ひぅ!わ、わかりました!私は辻垣内さんにお話があって来ました……って、最初に言いました、よね?」

智葉「あん?」

成香「な、なな、なんでもありましぇん」アワワ

智葉「…………で?」

成香「…………い、言いにくいんですけど」

智葉「ああ」


成香「………………い///」

智葉「…………」

成香「……い、いい天気ですねっ///」

智葉「話をそらすな!早く……言え!」グリグリ

成香「ああああ!こめかみが!わ、わかりました!言いますぅ!」

智葉「ああ」グリグリ

成香「わ、私を辻垣内さんの性奴隷にしてくださいッ!!痛い痛い痛い!」

智葉「……………………」パッ

成香「……っ!い、痛かったです……」フゥ

智葉「………今なんて言った?」

成香「…………あ、え、えと……///」

智葉「おい」

成香「…………つ、辻垣内さんの……せ、性奴隷にしてください……って言い……ました///」

智葉「………………」

成香「/////」

智葉「………………」

成香「……わ、私!こないだ辻垣内さんと一緒に行動して!いっぱい意地悪されて……全然優しくしてくれなくて……辻垣内さんって怖い人だなって思ってました」

智葉「……だろうな。お前を利用した悪い人間だからな」

成香「でも帰り際に『バイト代だ』って、お金とお菓子くれました」

智葉「労働の対価だ。お前の時間を使わせてもらったからな。それだけのこと」

成香「あと、つねった部分を撫でてくれました」

智葉「……やりすぎたかもしれないと確認しただけだ。そんなことで私をいい人間だと思ったのか?」

成香「………いえ、違います。むしろ今思い返すとちょっとガッカリです」

智葉「…………は?」

成香「もっと…………もっといぢめてほしい……です……///」

智葉「………………」


成香「帰りの電車で、辻垣内さんにされた意地悪を思い出したら、すごくゾクゾクして……すてきに興奮してきました……///」

智葉「おいおい」

成香「冷たい目で見下ろされたり、恥ずかしい目に合わされて……やめてと言っても……やめてくれません……はぁぁ……///」

成香「でも……想像ではある程度のところまでしか味わえず……ひじょうに悲しいです。だから……」

智葉「…………だから?」

成香「辻垣内さんに性奴隷にしてもらうことを決意しました」

智葉「…………お前も大概ぶっ飛んでるのか」ハァ

成香「……そんな風にしたのは辻垣内さんです……///」

智葉「した覚えはない。大体お前にやったのは相当ソフトというか、お遊び程度だろうが」

成香「えっ……じゃあ……もっと……いぢめてもらえる……///」モジモジ

智葉「……何を勘違いしている。この間のことはもうバイト代を払って終わった。お前とは知り合いという以外に接点はない」

成香「っ……冷たい言葉……うぅ…………おまたがしびれました……っ!」モジモジ

智葉「……校門の前で何を言ってるんだお前は」

成香「お願いします!辻垣内さん!意地悪してください!もっと!もっと!」

智葉「……さっきまで怒らないでくれと言っておいてそれか……」ハァ

成香「………こわいのはこわいので怒らないでほしくはあります。でも私の言葉を無視して怒ってほしいです」

智葉「ふん……理解しがたいことだ」

成香「あぁ……冷たい目……くーるでそそります……///」

智葉「あほらしい。休日にわざわざ学校に来たのは用事があるからで、お前の話に付き合うためではない」テクテク

智葉(何が性奴隷だ。私が性奴隷にしたいのは宮永以外にいない)テクテク

成香「あっ……ま、待ってください…………行ってしまいました」

成香(これはつまり…………放置してくれた、ということですね!)

成香(私のお願いをゴミのように拒絶し、離れていく背中を見せつける。決して届かない想いに焦がれて悶えろめすぶた……そういうことなんですね!)

成香「すごい……!さすが辻垣内さんです……」

成香(一生付いていきます!よろしくいぢめてくださいっ!)ハァァ..


【東京 テレビ局】

咏「…………」カランコロン

咏(収録は終わり。あとは帰るだけだねぃ。どこか寄ってこうかなー)フーム

えり「あ、三尋木プロ」

咏「ん?あ」

えり「おはようございます。お疲れ様です」

咏「おはよ。お疲れ様ー」

咏(えりちゃんだ。スーツ姿、相変わらず決まってるなー。可愛くてカッコいい)ジー

えり「……どうしました?私の格好、変ですか?」

咏「ん?いや、別に?」

咏(やっべ!ガン見しすぎた!変に思われるかも。落ち着け落ち着け)ドキドキドキ...

咏「変かもしれんし、そうじゃないかもねぃ」

えり「またよくわからないことを……」ハァ

咏(落ち着け私!冷静な顔しないと!扇子で熱を冷まそう)パタパタパタ

えり「三尋木プロは仕事終わりですか?」

咏「そそ。今終わったとこ」パタパタ

咏(……ふー。ようやく少し熱が収まってきた)

えり「そうですか。私もです」

咏「へー」

えり「それでは、失礼します。お疲れ様でした」

咏「あ、うん……」

咏「………………」

咏(……一緒に帰りたいなー……でも……たまたま会っただけで誘うとか私らしくないとか思われるかな?)

咏「………………」

咏「………………何してんだ私」

咏(好きな人に会って、ドキドキしてるのがバレねーように冷静を装って)

咏(えりちゃんが思い描いてそうな三尋木咏っつー人物像を崩さないようにして………)

咏(……私、バカじゃね?)クス

思わず浮かぶ笑み。

それは、自分を客観的に見た結果生まれたもの。

久との戦いで自分の能力を受け、猜疑心の渦の中で自分の滑稽さを見せつけられた経験が、今こうして生きたのだ。

咏(そんな風にしてたら、マジで幻で見たように、他の人にえりちゃんをとられるじゃんか)カランコロン!

咏「……っつーかさ」

咏(好きな人ができて、その人の前じゃ冷静さを保てなくなるのって……悪いことじゃなくね?)カランコロン!

咏(ありふれた表現だけど、自分でも気付かない自分と出会うっつーかさ……)カランコロン!


えり「?三尋木プロ?」

咏「…………あ、あのさ」

えり「……はい」

咏「……このあと、暇?」

えり「はい、自宅に帰るつもりでしたので」

咏「だ、だったらさ……」

えり「はい」

咏「……わ」

えり「…………」

咏「私と美味しい物食べに行かにゃい!?」

えり「…………」

咏「…………か///」

咏(噛んだーーーー!!)

えり「……そうですね、行きましょう」ニコリ

咏「あ……う、うんっ!実はさ、すっごい美味しいかはしらんけ…………ううん、すっごい美味しいお店があるんよ。そこ行こ!」カランコロン

咏(ただ食事に誘うだけなのに、手に汗をかいた)

咏(自分を装わずにありのままで接する、それだけなのに)

咏(でも……)

咏(ただ食事に一緒に行けるだけなのに……こんなにも嬉しいとか……!)ニコッ

飄々と振る舞い、えりとのやりとりでは自重をかけずにいた咏。

それは傷付きたくない思いから生まれた自己防衛の一種だったのだろう。

拒まれたくない、嫌われたくない、という誰もが持つ恐怖心。

プロ雀士として鋭い感覚を持ち、さらに百合妄想士である咏は、拒まれた先の展開や気持ち、感情が予想できてしまい、必要以上に怯えていた。

そしてそんな自分の心と向き合う辛さから逃れるため、無意識に道化であるかのような飄々とした態度をとっていた。

そんな咏が、自分の言葉で声をかけた。

食事の誘い。

たったそれだけのこと。

しかしこれは大きな変化だった。

その証拠に、咏の心は今跳ねるように躍動している。

恋なら、ずっと前からしていたはずなのに。


咏「…………」

えり「?どうしました?」

咏「……いや、もういいや。言っちゃえ」

えり「?」

咏「そのスーツ姿、似合ってるよ」

えり「え」

咏「カッコいいし、可愛い///」

えり「っ……///」ボフッ!

咏「……ほ、ほんとに///」

えり「ぁ……ぁりがとう、ございます……///」

咏「う、うん……///」

咏(これから先、どうなるかわっかんねーけど……)

咏(えりちゃんのことが好きな気持ちは変わらねー!それだけは……わかる!)


【東京 マンション】

理沙「お邪魔します!」プム!

良子「失礼します」

はやり「どうぞー☆ゆっくりしてってね☆」

良子「……相変わらずキレイにしてますねー」

はやり「アイドルだからね。さ、座って座って☆」

理沙「おつまみ持ってきた!」プンスコガササ!

良子「ナイスビニールフルパワーですー。いっぱいありますね」

はやり「今日はじゃんじゃん飲もう☆」


2時間後―――

はやり「はやー☆グルグル回る~」フラー

良子「飲みすぎですよ」

はやり「うぃー……あれ?理沙ちゃんはぁ?」

良子「さっきからメールしてますよ」

理沙「」ニコニコプムム

はやり「ずいぶん嬉しそうな顔してるね」

良子「村吉アナと仲良くなったみたいですよ」

はやり「元々仲良くなーい?」

良子「いいですヘアーど、ソーサーに仲良くなったそうです」

はやり「ふーん。咏ちゃんもそうだけど、理沙ちゃんも人当たりよくなったからかな?」

良子「ですね。あの戦いで何か心境の変化があったのダックしれまライン」

はやり「……なるほどねー……良子ちゃんはどう?何か変わったことある?」

良子「……いいえ、別に」

はやり「…………そっか……じゃあ……」ナデナデ..

良子「っ!」ピク


はやり「……やっぱりこれ以上はだめ?」

良子「ぁ、え、と……その……///」

はやり「?」

良子「じ、実は……こないだのバトルでルーズたタイム、幼女の妄想を叩きつけられたのですが……」

はやり「臼沢ちゃんだね」

良子「……それはそれは……過激なもので……///」

はやり「はやー……彼女は突っ切ってるからね☆」

良子「……だからかわかりまラインが、私の中の信念が少し変わったと言いますか……」

はやり「はや?」

良子「は、恥ずかしくてどうしようもなくはありますが!そ、の……はやりさんには……はやりさんなら……その……全てを晒すのも……とか……そんなウィンド(風)に……」

はやり「は、はやー……///」

良子「……だから……///」

はやり「………う、うん……じゃ、じゃあ……こっちの部屋で……///」

良子「あ、その前に……ナイスバスタイム……///」

はやり「…そ、そうだね。なんだったら一緒にとか、どう?///」

良子「っ……///」チャイルドナインリドットスリー(コクリ...)

はやり「……お、オッケー。い、行こう///」

テクテクテク..ガチャ..バタン

理沙「…………」ポチポチ

理沙「…………」ポチポチ

理沙「…………」ポチポチ

理沙「…………」ポチポチ

理沙「送信済み!」プンムー

理沙「…………?」

理沙「誰もいない……」

理沙「………………」

理沙「???」ンー?


【長野 原村家 和の部屋】

和「………………」

健夜「……な、なんか、懐かしいね」

和「……そうですね」

健夜「こ、こんな風に部屋で2人なんていつ以来かな?ひいふうみぃ……」

和「…………ふふっ」

健夜「え?」

和「どうしてそんなに緊張してるんですか?」

健夜「いや、だって……私がしたことは……」

和「何を言ってるんですか?健夜さんは何も悪くありません」

健夜「でも……」

和「私の言葉が信じられませんか?でしたら私の記憶を視てください。嘘をついてないとわかるはずです」

健夜「……ううん、やめとくよ。もうこれからは安易に人の記憶を視たりしないって決めたから」

和「……そうですか」

健夜「うん……」

和「……では改めて言いますが、私は健夜さんに対して何も嫌な感情はありません」

健夜「あ……」

和「それは両親に対してもです」

健夜「…………そっか」

和「私が偏った成長をしてしまったからか『自分が無理矢理に百合教育したせいだ』と思い込んでたみたいですが、決して無理強いはされませんでした。途中からはむしろ私から積極的に百合を求めてましたから」

健夜「…………うん」

和「…………とにかく、私は誰に対しても怒っていませんし、恨んでもいません。ですから普通に接してください」

健夜「……普通に接してるつもり……だけど」

和「嘘です!ちょっと気を遣ってます!」

健夜「それは……罪の意識がまだ……」

和「あの時私を放っておいたら、感情の赴くままに世界をめちゃくちゃにしてたかもしれないんですよね?だったら仕方ないことじゃないですか」

健夜「そうかもしれないけど……」

和「……当時の私はヒステリーになっていたみたいですし」

健夜「…………」

和「それに健夜さんのことですから、記憶を封じる前に私に説明をしようとしてくれたはず。でも私が自分の能力を自覚したら取り返しのつかない事態になる可能性があったということでやむなく黙って記憶操作を執り行ったのでしょう」

健夜「わぁ……」

和「…………なんですか?」

健夜「いや、なんか……大人になったんだな、って……思って」

和「そうでしょうか?もう高校生ですし、普通かと」

健夜「……そっか……」フフ

和「はい」

健夜「………………」

和「…………………」


健夜「…………でも」

和「?」

健夜「……元気そうでよかった」

和「あ………」

健夜「…………」

和「…………ご心配をおかけしたようですね……ってそれも当然ですね。私のせいで大騒ぎになりました」

健夜「そんなこと……」

和「いえ……無意識とはいえ月を地球にぶつけようとした時点で……」

健夜「…………そ、そう、だね……」

和「本当にすみませんでした」ペコリ

健夜「い、いいの!そんな、謝らなくっても……結果的に大丈夫だったんだから!」

和「…………………」

健夜「………………」

和「…………もう」

健夜「……?」

和「心配はいりませんからね」

健夜「え?」

和「私が経験したのは……ただの失恋です」

健夜「…………」

和「全員ではなくとも、大勢の人が経験したこと。これからも経験するであろうことです」

和「私の心が弱かったから、おおごとになってしまいましたが……もう大丈夫です。これだけの人に迷惑をかけておきながら、同じことを繰り返しはしません」

健夜「和ちゃん……」

和「…………ですから……気を遣わず、前みたいに……お姉ちゃんのように接してもらえませんか?」

健夜「!!」

和「…………」

健夜「…………もちろんだよ」フフッ

和「っ……ありがとうございます!」パァァ..

健夜「改めて……よろしくね」

和「はいっ!よろしくお願いします!」ニコリ

健夜「ぁ……」

健夜「……………………」

健夜(そうだ……)

健夜(私はこの笑顔を見るために頑張ってきたんだ)

健夜(私の……本当の願いが今……叶った)

和の笑顔を眺め、穏やかな気持ちになる健夜。

そんな健夜は気付いていない。

和を見つめる健夜もまた、和と同じように笑顔を浮かべていることに……


【長野 山】

照「……………」

咲「あ、この木……」

照「?この木がどうかしたの?」

咲「……前にね、この木にもたれかかって寝てた時、お姉ちゃんと一緒にいた時の夢を見たんだ」

照「夢?」

咲「うん。お姉ちゃんが、嶺上開花(リンシャンカイホウ)の意味を教えてくれて……」

照「あ……」

咲「それから私、自分の名前が好きになったんだ」ニコ

照「…………私ね…」

咲「?」

照「その時のこと、ちょっと後悔してたんだ」

咲「えっ?どうして……」

照「『森の高さを超えた位置にある高い山の上に咲く花……咲もそんな花みたいに強くなって……』ってあの時私は言ったよね?」

咲「ううん、細かいところが全然違うよ?正確に言うと『森林限界を超えた高い山の上、そこに花が咲くこともある。おまえもその花のように―――強く―――』だね」

照「……そ、そんなに違わないのに……どうして流してくれないの?」

咲「お姉ちゃんの言葉はちゃんと覚えてるから。改変されるのはやだ」

照「作者は私なのに……」


咲「……それで?続きは?」

照「あ、うん。えとね、実はその時、他にも言いたいことがあったんだ」

咲「え?」

照「……『その高い山の上に咲く花。その花にはいつだって私が光を照らし続ける。だから自分以外の花が一輪もなくても、咲は1人じゃないよ』って」

咲「……長いね」

照「えっ、あ、う、うん……長い……が最初の感想かぁ……」

咲「違うよ。そのセリフを言ってくれるまでの時間」キュッ

照「あ……」

咲の手が照を包む。

それは優しい抱擁のようで、優しい糾弾にも思える。

咲「お姉ちゃんの最初の言葉で私は自分の名前が好きになった。でも……お姉ちゃんが私を好きどうかはわからなかった」

照「咲……」

咲「……お姉ちゃんが出てっちゃったあと、この時のことを思い出しても、お姉ちゃんの表情がちゃんと思い出せなくて……笑顔だったような気はしてたけど、でも……もしかしたら私のこと嫌いなのかもって思った」

照「……不安にさせちゃったね、ごめん」

咲「ううん……私も悪かったもん」スリスリ

照「そっか」ナデナデ


咲「うん。えへへ……これでもうあの夢を見ても不安にはならないよ。それどころかお姉ちゃんを大好きな気持ちをいっぱい思い出せるよ」

照「あ……」ドクン..

咲「?お姉ちゃん……?」

照「…………さ、咲……」

咲「ぁ……な、なぁに……//」

照「……………私」

咲「う、うん」

照「咲が好き……//」

咲「あ……っ……//」

照「もう……自分でもどうしようもないくらい……す、好き……//」

咲「うん……///」

照「……………さ、咲は?」

咲「……私も……ずっと、ずっと、ずっと…………ずっとお姉ちゃんが好き……大好き///」

照「っ……咲……///」

咲「……お姉ちゃん……///」


照「………………」

咲「………………」

何一つ飾らない告白と、視線が二つ交わされた。

そのあとに訪れたのは無言。

お互いの心に渦巻く感情だけが体中を騒がしく駆け巡っている。

しかしどちらも動かず、ただ見つめ合っていた。

それはまるで時間が止まったかのようであり、

先の会話で出てきた過去へと意識が遡っているかのようだ。

照「………………」

咲「………………」

……やがて風が優しく前髪を撫で、瞬きが景色を刻むと、

2人を阻む空間はなくなった。

照「ん…………」

咲「……ん……」

触れ合う。振れ会う。降れ逢う。

それは唇だけではなく、自分の中にある様々なもの。

『触れる』ではなく『ぶつける』もの。あるいは『なぞる』、または『混ざる』かもしれない。

自分の中にあるもの全てを共有するかのように、2人はただただふれあい続けた……―――。


―――……そんな2人から少し離れた木の陰に、1人の女性が立っていた。

怖々と、でも目を爛々と輝かせて、照たちの様子を窺っている。

A子「………………」

A子(こ、これは……とんでもない場面に出くわしちゃった)

A子(あそこの2人……こ、恋人同士なのかな?そう、だよね。だってあんなに激しくキスを……)

A子(あれ?どことなく顔が似てるけど…………も、もしかしてあの2人……姉妹!?姉妹で……あんな……///)

A子「………………」

A子(……昔から好き合ってた姉妹。でもお互いの想いを上手く伝えられなくて、すれ違って、やっと結ばれた……とかそんな感じ?)

A子(背の高い方がお姉さん?いえ、待って。逆に背の高い方が妹っていうのもいいかも……)ポワァァ..

B子「A子?何やってるの?早く行こう?」

妄想に花咲かせるA子に、連れと思われる女性が声をかける。

その声を聞き、はっとなったA子は連れの元へ走る。





百合妄想士A子「ごめん、今行く!」



こうして、
 
百合妄想士は受け継がれていく。

今までも、

これからも、

ずっと――――





【完】

以上です
読んでくれた人、どうもありがとう

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