藤原肇「一に養生二に薬」 (191)
アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
当SSはアイドル名「ことわざ」でタイトルをつけているシリーズです。
以前のお話に戻る場合はSS wikiを通ってください。
http://ss.vip2ch.com/ss/%E3%80%90%E3%83%87%E3%83%AC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%80%91%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%8F%E3%81%96%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
前々回
アナスタシア「親の因果が子に報う」
アナスタシア「親の因果が子に報う」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1427/14276/1427642734.html)
前回
藤居朋「白波」
藤居朋「白波」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1429/14290/1429062316.html)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431925935
─ 前回のお話 ─
・○○プロのアイドルはどこか抜けていた
・それを修復するために、スタッフ一同が一手を投じた
・無事、アイドルたちにプロ意識の芽生えが見え始め、関わった新規アイドルたちは海外遠征へ
─ ○○プロ・事務所 ─
千川ちひろ「はい、お電話ありがとうございます。アイドルプロダクション、○○プロです」
ちひろ「イベント開催の依頼ですね?ただいま依頼の交渉が立て込んでまして、交渉の場を設けられるのが4日後になります。よろしいですか?」
ちひろ「───はい!では4日後の────はい、・・・はい!ではお待ちしております」
ちひろ「・・・ふぅ」
ちひろ(あのディープリーコン襲来から、3日が経ちました)
ちひろ(皆の意識向上が上手くいったのか、仕事の電話が僅かながら増えた気がします)
ちひろ(私の仕事が増えた、とも言えますが・・・コレは嬉しい悲鳴です♪)
ちひろ(さて、と!もう一頑張り・・・)
モバP(以下P)「おはようございます」
ちひろ「あれ、プロデューサーさん?もう動けるんですか?」
ちひろ(プロデューサーさんは伊吹ちゃんを救うために大怪我をしました。その治療に一ヶ月も倒れていたので、筋力が衰えていると思ったのですが)
P「・・・これです。これのおかげでなんとか動けます」
ちひろ(彼が見せてきたのは松葉杖。・・・それで動けるってことは腕周りの筋力は復帰してるってことなのですかね?)
ちひろ(・・・だからと言って、彼を救うためにリストラしたんです。復活しても余裕できるまでは仕事やらせません)
ちひろ「まだプロデューサーさんは退職中なんですから、仕事はさせませんよ?」
P「うっ」
ちひろ「みんなのこと、気になるのは分かりますが・・・、今は自分の体を労わってください」
P「・・・分かりました」ドヨーン
ちひろ(げっそりとした顔をしても、私は助けませんよ?)
P「でも、何かやれる事ないですかね?」
ちひろ「やれること、ですか」
P「寝ててもじっとしていられなくて・・・」
ちひろ「・・・では、アイドルの皆さんからやって欲しいことを聞いてみてはどうでしょうか?」
ちひろ「プロデューサーの立場じゃない今だからこそ、出来ることがあると思います」
ちひろ「例えば・・・部屋掃除を手伝うとか」
P(それならば、一ヶ月も放置してしまったアイドルたちのお詫びにもなるかな・・・)
P「そうですね・・・それなら、出来るかもしれませんね。よし、みんなに聞いてきます!」
ちひろ「あっ、待ってください!」
P「?」
ちひろ「これを、持って行ってください」
P「これって・・・女子寮のマスターキー・・・?」
ちひろ「伊吹ちゃんと話してみてはいかがでしょうか。ずっと寝込んでいるんです」
P「伊吹・・・そうか、俺が撃たれたこと、自分のせいだと・・・」
ちひろ「そうです。伊吹ちゃんのメンタルケア、よろしくお願いします」
ちひろ「彼女も、私達の大事な仲間ですから」
P「はいっ!」
P(伊吹・・・いますぐ行こう)
─ 女子寮 ─
P(女子寮・・・入るのは久しぶりだなぁ・・・)
P(社員用の寝床が1階に用意されているとはいえ、亜季ちゃんと共に侵入したとき以来、尾を引いてよほどの事がない限り入る事を拒んでいた)
P(まぁ、男性である俺が入らないことには越したことないんだけど)
P「ちひろさんに借りた鍵で・・・こっそり入ろう」
P(鍵を貸した本人はメールで『カメラや機材については、わざと故障してもらいました♪』と言っていた)
P「つまり、今なら俺は入り放題・・・」
P(だからと言って物色する気は無い・・・それじゃあ、伊吹のところへ)
─ 女子寮・伊吹の部屋 ─
小松伊吹「・・・・・・」
伊吹(もう・・・寝込んでから何日になるかな・・・)
伊吹(Pが撃たれたその日から、アタシの中でたくさんのものが渦巻くようになった)
伊吹(あの時、Pにもっと早く声をかけられたら・・・そもそも捕まらなければ・・・)
伊吹(頼子ちゃんを見捨ててれば、なんてことまで考えてしまう)
伊吹「ヤダ」
伊吹「・・・アタシ、最低・・・」
伊吹(みんなに迷惑かけて・・・合わせる顔もない)
伊吹(ましてや・・・Pに)
Pipipi...
伊吹(メール・・・差出人は忍ちんこと工藤忍)
伊吹(Cuプロのアタシの友だち・・・でも、今は返事をする気がおきない)
伊吹(4時間前にはCoプロの速水奏が似たような文言を送ってきている)
伊吹(どちらも・・・無事かどうか、という文章)
伊吹(このまま・・・消えてしまいたい。誰にも・・・会いたくない)
コンコン!
伊吹(ノック・・・?)
コンコンッ!
伊吹「・・・ッ、止めて」
伊吹(今は、誰とも会いたくない・・・)
コンコン・・・
伊吹「・・・止めて、止めてっ・・・!」
ガチャ
伊吹「ッッッ・・・!!」
伊吹(鍵・・・開けられ・・・!)
「伊吹」
伊吹「え・・・!?」
伊吹(この何度も聞いたことのある声は・・・)
「どうした、布団に包まっちゃって・・・ミノムシにでもなったのかな」
伊吹(布団から顔を出し、その声の主に顔を向ける・・・)
伊吹「P・・・P、なの?」
伊吹(そこには・・・松葉杖をついた、あの時アタシの前で倒れた男の姿があった)
P「ん、待たせちゃったね」
伊吹「・・・・・・」
P「?」
伊吹「・・・うぅぅぅっ、う゛う゛ぅぅぅぅぅっ!!」
P「どうした!?」
伊吹(よかった・・・よかったぁ・・・)
伊吹「ずっと・・・ずっと、Pが死んじゃったと思ってぇっ・・・!!」
P「・・・・・・そっか」
伊吹「あだし、アタシのせいだって・・・ずっとぉ、ずっとおもってて・・・」
伊吹(アタシのせいで死んだと思ってた人が・・・今目の前にいる)
P「ごめん、一ヶ月も待たせちゃって」
伊吹「ざ、ざいてぇ・・・サイテー・・・うぅっ・・・」
P「ほら、鼻かんで、涙拭いて・・・」
伊吹「う゛ん」
P「もう・・・ちょっとげっそりしてるし・・・」
伊吹「ごヴぇん・・・ごめん・・・」
P「泣くなって、俺だって不注意だったのが悪いんだから」
伊吹「ヴぇも・・・でも・・・」
P「むしろ、俺が悪い。ちゃんとみんなの安全を守るのも、俺たちスタッフの仕事なんだ。伊吹は俺たちの被害者でしか・・・」
伊吹「ちがぁぅ・・・違うっ・・・!」
P「伊吹・・・」
伊吹「Pの・・・Pのせいじゃない・・・っ・・・アタシの・・・アタシの・・・」
P「・・・・・・」
伊吹「・・・うぅ・・・・・・」
P「じゃあ、そうだな・・・おあいこにしよう」
伊吹「おあいこ・・・?」
P「俺も悪い、伊吹も悪い、両方悪いからおあいこにして・・・次に活かそう」
伊吹「・・・・・・」
P「いいね?」
伊吹「うん・・・」
P「よし、伊吹は悲しんでる顔なんて・・・かっこ悪いよ」
伊吹「・・・でも、だからってPは、また加害妄想出してるんじゃないの・・・?」
P「う゛っ・・・!」
伊吹「全部・・・全部自分のせいで終わらせないでよ・・・ヤダよ・・・P・・・」
P「伊吹・・・」
伊吹「なにもかもPのせいにしてたら・・・Pに任せてたら・・・絶対死んじゃうよぉ・・・」
P「・・・・・・」
伊吹「アタシ、もう誰かが・・・Pが怪我するところなんて見たくないよ・・・」
P「ゴメン・・・」
伊吹「うっ・・・うぅぅぅ・・・」
P「ゴメン」
伊吹(彼はアタシのベッドに腰をかけ、背中をさすってくれている。恥ずかしさ半分、どこか安心感半分)
伊吹「・・・もう・・・大丈夫」
P「ん」
伊吹(暖かい手にさすられて20分)
伊吹(体を起こし、Pの横に腰をかけ、アタシは彼の顔をマジマジと見る)
伊吹(うん・・・生きてる・・・生きてた・・・よかった)
伊吹「ほんと・・・ほんと、死んじゃったと思って・・・」
P「みんなから情報はもらえなかったのか?」
伊吹「みんな、目が泳いでて・・・あんまり言ってくれなかったんだ」
P「あはは・・・」
伊吹「それで、柚が狂ったように『まだ起きない』って言ってたのを聞いちゃってね」
P「それで、死んだと思ったと」
伊吹「柚も・・・かなり滅入ってたよ」
P「知ってる。昨日、泊まりにきてずっと離してくれなかった」
伊吹「あはは、姉妹4人はずっとくっついてそうだね」
P「里美も朋もミッチーも、少し口うるさくなった気がする」
伊吹「そうだよ、Pが中心になっちゃってるんだよ・・・みんな」
P「・・・伊吹、お前もか?」
伊吹「かも・・・」
P「・・・こりゃ、慶ちゃんの仕事多くするしかないかなぁ・・・」
伊吹「慶ちゃん?」
P「青木さんの妹さんがマネージャのアルバイトとして入ったんだ」
伊吹「へぇ・・・いつの間に」
P「同い年だから、きっと仲良くなれると思うよ」
伊吹「まぁた19歳?好きだねー」
P「うっせ、なぜか19歳が多いんだよ」
伊吹「これで何人目?アタシに朋に音葉にイヴに櫂に、その慶ちゃん?6人かー」
P「いや、7人いる」
伊吹「?」
P「・・・お前さんが寝てる間に、新しいアイドルが5人も入ってる」
伊吹「ちょ、マジで?その内の1人が19歳?」
P「おう」
伊吹「・・・・・・どんなのがいるの?」
P「ロシア人ハーフ、お魚大好き、マザコン、巴の追っかけ・・・それを束ねる特殊な目の持ち主」
伊吹「こ、濃すぎない?」
P「ん。○○プロのアイドルを倒すために・・・俺が作ったアイドルグループだからね」
伊吹「倒すって・・・みんなはどうなったの?」
P「この5人に勝って、いまは仕事を入念に頑張ってる」
P「もう、俺達は・・・Aランクプロダクションだからな」
伊吹「そっか・・・」
伊吹(アタシが寝てる間に、○○プロはAランクに昇格していた)
P「伊吹も早く戻っておいで。一ヶ月寝かせた体なら、むしろ新鮮な気持ちで出来るはずだ」
伊吹「ん・・・」
P「・・・あんまり乗り気じゃないな」
伊吹「だって・・・ここのところずっと迷惑かけてるし」
P「一ヶ月間、ぽっかり仕事の穴が空いちまったんだ。無理もない」
伊吹「・・・だからだよ、アタシ、みんなに顔見せられるような立場じゃ・・・」
P「俺だってそうだよ。一ヶ月ずっと意識失ってたんだから」
伊吹「・・・・・・」
P「それに、今は仕事をクビになってる」
伊吹「えっ・・・!?」
P「そりゃそうだよ。寝ているだけの人間に与える給与はありません」
伊吹「わ、私は?」
P「お前さんの代わりにハートさんが頑張ってる」
P「それに周りにはインフルエンザにかかってると伝えてるから大丈夫だ」
伊吹「・・・・・・」
P「不服か?」
伊吹「そりゃそうだよ・・・Pと似たような立場だし、アタシ、芽衣子さんと海の3人でずっと頑張ってきたのに」
伊吹「すっぽかしちゃったんだよ・・・」
P「そっか」
伊吹「寝込んでる時も・・・よく2人が心配して、見に来てくれたのに・・・」
伊吹「何度も追い返しちゃった」
伊吹「恩知らずなこと・・・しちゃった・・・」
P「しょうがないよ、伊吹はあの事件の一番の被害者なんだ」
P「事件の負った傷を1日2日で治せるはずがない。それくらいみんな重々理解しているはずさ」
伊吹「でも・・・」
P「なら・・・俺と一緒に新しく入社しよう」
伊吹「え?」
P「今、ここにいる小松伊吹はただの女性です。でもこれから、アイドルというステージで踊り狂うのです」
P「もっとたくさんの人たちを・・・過激に巻き込んでみたくないですか?」
伊吹「P、それって・・・」
P「ん。俺が伊吹をスカウトした時の言葉」
伊吹「・・・ははっ、似合わない。特に敬語」
P「そうかな?・・・そうなのかな」
伊吹「でもその言葉・・・ってことは、改めてスカウトしているの?」
P「当然。いま、○○プロは生まれ変わっている最中なんだ」
P「だからこそ、俺もお前も生まれ変わる、心機一転の姿を見せなくちゃいけないんだ」
伊吹「生まれ変わる・・・」
P「おう、いい機会だと思う」
P「海も芽衣子も・・・いいや、○○プロのメンバー全員が・・・自分たちを見直している最中なんだ」
P「伊吹も・・・今の不安要素を全部振り払って、この流れに乗ってくれ」
伊吹「・・・・・・うん」
P「そもそも、海も芽衣子も簡単に見捨てるような子じゃないさ」
伊吹「・・・ははは、そうだね」
伊吹(ずっと、迷惑かけてきたもんね。いまさら、かぁ・・・)
伊吹「P」
P「ん?」
伊吹「アタシ・・・アイドルやりたい」
伊吹「あのステージに舞い戻りたい」
伊吹「もう一度、みんなと踊り明かしたい」
P「分かった、そのワガママ・・・全部叶えるから」
伊吹「ありがと、プロデューサー」
P「───それじゃあ、みんなに伊吹が復帰したって伝えておくからね」
伊吹「了解。こっちもすぐ体戻して・・・エキサイトダンサーズ復活させるから」
P「その勢いでお願いね」
伊吹「もちろんっ」
P「んじゃ、俺は事務所に戻るから」
伊吹(彼が踵を返したとき、ある事を思い出した)
伊吹「───あっ!!」
P「どったん?」
伊吹(振り向く彼に、私はベッドから飛び出し、駆け寄った)
伊吹「忘れてたことがあったから」
P「忘れてたこと?」
伊吹「とりあえず、もらってみてよっ」
P「なにをだよ」
伊吹「これ、──────んっ」
P「っ!?」
伊吹(・・・あの時、後でと言ってやれなかった事)
伊吹(キス。触れるだけのキス。お姫様が助けに来てくれた王子様にやるような、そんな・・・キス)
伊吹「お礼のキス・・・やるって言ったよね?」
P「い、いらないって言っただろう?////」
伊吹「いいじゃん、Pなら今更でしょー?智香としょっちゅうしてるじゃん」
P「もはやあの子は論外!」
伊吹「それでも事務所のほとんどの子とチューしてるじゃん♪」
P「むぅ・・・////」
伊吹「あ~、耳まで赤くなってる」
P「うっさい!赤くなってるのは伊吹もだろう!?」
伊吹「えっ・・・////」
伊吹(恥ずかしさで彼も私も・・・目線を逸らす)
伊吹「アタシは・・・Pが汗くさいからだし////」
P「ここまで来るのに松葉杖で普段の倍以上の体力使ったんだよ・・・ってか、伊吹も風呂入ってないだろ////」
伊吹「そうだよ・・・ずっと、Pのこと心配で・・・!!!」
P「俺だって、伊吹のこと心配でここまで・・・!!!」
伊吹「・・・・・・」
P「・・・・・・」
伊吹「ぷっ・・・」
P「はははっ・・・」
伊吹(なんだかバカみたい・・・でも、いい具合に心が解れた)
伊吹(やっぱり、Pと一緒にいると・・・安心する)
伊吹(絶対に横にいて、一緒に歩いてくれる・・・そんな感じ)
伊吹(これを恋・・・とは思いたくないけど、どうなんだろうなぁ・・・)
伊吹(ははっ、激戦区に自ら突っ込むなんてバカみたい)
伊吹「あはは・・・朋のこと、笑えなくなっちゃった」
P「朋?なにかあったか?」
伊吹「ううん、こっちの話。それよりもさ・・・もう、いなくなるようなマネはしないでね」
P「当然。俺は死なないよ」
P「じゃあ、今度こそ行くから。身だしなみ、ちゃんとしておいてよー?」
伊吹「分かった、じゃあね」
伊吹(去っていく彼の背中を見て、触れた唇と火照った頬が冷めていくのが・・・たまらなくもどかしかった)
伊吹「う、うぅぅん~~~♪」
伊吹(背伸びをして、自分の背中にこびり付いたストレスを流す)
伊吹「何から始めようかな。あ、そうだ」
Pipipi...
伊吹「あっ、忍ちん?ごめんねー、ずっとインフルかかっちゃっててさ・・・」
伊吹「うんうん・・・!やっと動けるくらいにはなったからさ───ごめんってば!メール無視したのは謝るからさ!」
伊吹(もう一度、作らないとね。自分の居場所を)
─ ○○プロ・事務室 ─
P「ただいま戻りました」
ちひろ「おかえりなさい、伊吹ちゃんの方はどうでしたか?」
P「もう大丈夫です。もうちょっとで戻ってこれますよ」
ちひろ「良かった、内心どうなるかと不安に思ってたんですよ」
P「これからはこんな事が起こらないように細心の注意を払っていきましょう」
ちひろ「そうですよ!私たちにとって、アイドルは子供みたいなものですからね」
P「交通費を多く割くようにしましょうか」
ちひろ「今後の収益から考えて、強気に出てもいいでしょう、では─────」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(ちひろさんと数十分間、新たな体制について議論しあった。今度、社長に直談判しにいこう)
ちひろ「そういえば・・・上の会議室で何人か集まっていますよ?」
P「また女子会議とやらですかね。顔を出しに行ってきますか」
─ ○○プロ・会議室 ─
相原雪乃「これより第92回女子会議を始めますわ」
雪乃「今回の議題はこちらになります」
『スタッフの皆さんの負担を軽減するには?』
雪乃「・・・ですが、もう答えは出ています」
雪乃「それは───私たちがよりアイドルとして躍進することになります」
雪乃「決して心乱れず、ただ私たちを求める方たちのために輝くのですわ」
雪乃「異論がある方はいますか?」
「「ありませーん!!」」
雪乃「Pさんとの恋路は後回し。まず仕事を十分にこなしてから、ですわ」
雪乃「アイドルとして活躍できない者にPさんを得る資格はないと思ってください!」
「「はーい!!」」
雪乃「・・・この心構えこそが、今後の○○プロを安泰へと導くのですわ」
雪乃(詩織ちゃんにリーダーを奪われないためにも、全体の底上げは必至ですわね)
雪乃「では・・・これにて・・・」
コンコン
雪乃「はい、開けても大丈夫ですわ」
P「んーっしょっと、全員は・・・いないか」
雪乃「Pさん?どうかされましたか?」
P「いま仕事させてもらえないんで、アイドルみんなの願い事叶えるっていう作業やってるんです」
雪乃「願い事?」
P「将来、何してください!とかはちょっと無理ですけど、なんでも叶えるつもり。一緒に運動しようとか、ご飯奢れーとか」
雪乃「な、な、なんでも・・・ですか!?」
P「うん。なんでも言ってください、部屋掃除でもいいですよ。他のみんなも何か言ってくれ」
雪乃「で、で、でしたら私とデートを・・・!!!」
「「じー」」
雪乃(し、し、視線が・・・って、はっ!?)
雪乃『Pさんとの恋路は後回し。まず仕事を十分にこなしてから、ですわ』
雪乃(こ、ここで心を乱し、Pさんに狂ってしまっては・・・またディープリーコンにボコボコにされてしまいますわ!)
雪乃(それどころか・・・周りにいるこの人たちにも面目が立たなくなりますわ・・・!)
P「んー、デートかー・・・」
雪乃「い、い、いえ!!冗談ですわ!」
P「え、冗談?」
雪乃「Pさんのお気持ちは大変嬉しいですわ。ですが、我らはプロのアイドルとして新たな一歩を踏み出したばかり」
雪乃「それを無かった事にするわけにはいきません」
P「・・・そっか」
雪乃「皆さんもいいですわね?」
「「はーい」」
雪乃「・・・ということで、私たちからは何もお願いすることはありません」
P「そうか・・・うーむ、仕事がないんだよなぁ・・・」
雪乃「・・・・・・」
P「まぁ、いいか。ごめんなさい、失礼します」
雪乃「・・・・・・」
「雪乃さーん?」
「だいじょうぶー?」
雪乃(無言の悶絶)
「あ、ダメそうですね」
─ ○○プロ・事務室 ─
P(いやー、なんでもって言ったらとんでもない発言来ると思ったんだが・・・)
P(みんなプロ意識持ち始めたおかげか、自分を制御している感じがするな)
P(このまま俺から意識を離して欲しいんだけど・・・上手くいくかなー)
ちひろ「あれ、もう戻ってきたんですか?」
P「何かないかと聞いたんですが、何もないと返されました」
ちひろ「意外・・・、絶対誰かがデートだとか、家に泊めろーだとか言いそうなんですが」
P「これも1つの成長ですよ」
ちひろ「それじゃあ、また仕事がないんですね?」
P「そうなります」
ちひろ「じゃあ、私から1つお願いごとが・・・」
P「なんです!?やりますよ!!」
ちひろ「あら、がっつり来ますね。肇ちゃんと久美子ちゃん、ハートさんのお迎えに行って欲しいんです」
P「お任せください!」
─ スタジオ ─
P(つっても、俺の今の体では車は運転できない。タクシーを予約し、ここまでやってきた)
P(今は、肇の撮影が行なわれている)
「はい、いーよー!もっと自然に!」
藤原肇「はいっ!」
「歯を見せなくていいよ!藤原ちゃんは微笑んでるのが男にクルからねー?」
肇「分かりました!」
「ちょっと背中反らせる?」
肇「こうですか?」
「いいねー、まさしく大和小町だっ!」
P(肇はカメラマンの方と上手く会話のキャッチボールが出来ていて、撮影がスムーズに進んでいる)
P(真面目な性格が功を成している。肇は写真で魅せるこの路線がいいだろう、なんとかどこかのブランドとコラボできないだろうか)
P(そう考察しているところに、もう2人がやってきた)
佐藤心「ちーっす☆どうプロデューサー、肇ちゃんのキュゥトな撮影は?」
松山久美子「お疲れ様、P君。大丈夫なの?」
P「肇はどちらかと静かだからクールって感じだけどなぁ。体は大丈夫、松葉杖あれば移動は可能だよ」
心「無茶すんなよー☆プロデューサーが倒れてからはぁと休みないんだからっ!」
P「すんません・・・頭上がりません」
P(ハートさんは俺が倒れている間、一番奮闘してくれた人だ。皆の気持ちが沈んでいく中、独りで奮起していた)
P(クミちゃんは相変わらず年下メンバーのケアをしてくれてたらしい。特に朋や巴を)
久美子「でも嬉々としてやってたよね、ハートさん」
心「そりゃアイドルとして求められているんだもんっ☆スウィートなはぁとがみんなの為に頑張っちゃうよー」
久美子「私も徐々に顔が知られてきた感じ。ハートさんの10分の1ぐらいだけど」
心「謙遜すんなってー☆クミちゃん先輩のストイックなびゅーてぃふぉーはいずれたくさんの人を魅了するっての☆」
P「2人には、本当にご迷惑かけましたよ、この分は仕事でちゃんと返します」
久美子「期待してるからね」
心「しゅがーはぁとを見つけたプロデューサーなら楽勝っしょ☆」
久美子「あ、肇ちゃん終わったみたいだよ」
肇「Pさん、来てくれてたんですね」
P「ん、リストラ中だから社員じゃないんだけどね」
肇「えっ」
P「まぁ、ちひろさんに頼まれてこっそりと、ね?」
肇「ふふっ、私も内緒にしておきます」
P「これで撮影終わりかな?」
心「あとはチェック入って、って感じかなー」
肇「Pさんはどうしますか?チェック入ります?」
P「いや、遠慮しておくよ。ただでさえ、ここには顔パスで入ってるんだから」
肇「いまさらーな気がしますけど」
久美子「そうだよね、私たちのプロデューサーはP君しかいないから別にチェック入っても・・・」
心「今の発言で新しいプロデューサー雇ってきたら、容赦しないゾ☆」
P「・・・キモに銘じておきます」
P(なんだかんだで、撮影した写真のチェックを俺自らやることになった。ちひろさんに言って、給料は絶対に入れないようにしてもらおう)
P(そうでないと、後ろめたくて・・・なんて苦笑いしてしまう)
─ スタジオ・楽屋 ─
P「みんなお疲れ様。時間通りだよ」
心「ひーっ、腰いったい☆」
久美子「ハートさん、お腹出てますよ?」
心「あ゛ーあとでー」
肇「Pさんはこの後なにもないんですか?」
P「何もない・・・ってかそうだ」
肇「?」
P「みんな、俺にやって欲しいことはないかな?一ヶ月間の寝込みのお詫びも兼ねて、ね」
肇「え、ダメですよ!」
P「ダメっ!?」
肇「そうです。一に養生二に薬、Pさんは病み上がりなんですから無理しちゃダメですよ」
P「う、うぅ・・・」
肇「強いて言うなら・・・」
心「えー、肇ちゃん!プロデューサーが何かやるって言ってんだから甘えちゃおうよー☆」
肇「でも・・・」
心「簡単なのでいいんでしょ?じゃー、いまから飲みにいこうぜ☆」
肇「だ、ダメです!Pさんの今の体にお酒なんていれたら・・・」
心「無礼講無礼講☆」
久美子「私も1杯ぐらいならいいと思うけどな」
肇「クミちゃんさんまで・・・」
久美子「だってP君の性格じゃ人に気を使わせたって余計に毒でしょ?」
P(よくご存知で・・・トホホ)
肇「で、でも・・・」
P「んー・・・そうだなぁ」
肇「Pさん、帰りましょう!」
心「お・さ・け☆」
P「・・・分かった、こうしよう」
P「パーティやろう」
肇「え、今からですか!?」
P「Aランク昇級、伊吹復帰、ディープリーコンへの勝利・・・お祝いすること一杯あるからさ」
久美子「伊吹ちゃん帰ってこれたんだ?」
P「うん。さっき話して・・・不安要素取り除けた」
心「はーっ、それなら酒が旨くなるねっ☆よし飲むぞ、ってか飲め!」
P「飲みますって、1杯だけ」
肇「じゃ、じゃあ、私パーティの準備手伝います!」
P「お、おう!?」
肇「むしろ手伝わせないとPさんには一切動いてもらいませんから」
P「お、おう・・・」
P(なんか、肇・・・雪乃さんとか海に似てきたな・・・)
P(その後、タクシーで途中スーパーに寄り道しながら事務所へと戻ってきたのだった)
─ ○○プロ・キッチン ─
肇「何作るんですか?」
P「ピザとかは注文しちゃうから、サラダとかだな。せっかくサーモンとかも買ってきたんだ」
肇「シーフードサラダですね。それは私がやりますね」
P「んじゃ、俺は・・・おつまみ用のクラッカーでも作るか」
肇「・・・・・・」
P「・・・・・・」
P(黙々と作業が進んでいく)
P(ちょっとだけ、物寂しい。何か聞いてみるか)
P「なぁ、肇」
肇「なんですか?」
P「・・・俺がいない間・・・どうだった?」
肇「どう、と言うと?」
P「・・・その、迷惑だったとか。大変だったとか」
肇「・・・一番は、大変でした」
肇「私たちの心の支えは仲間たちです。見えない仲間たちの手でアイドルそれぞれが形を成していく」
肇「たとえ、1人でも2人でもその手が・・・無くなってしまうと形が崩れていく」
P「・・・その1人2人が」
肇「Pさん、アナタと・・・伊吹さん・・・それにあの事件で体調不良になった人たち」
肇「・・・お願いします、私たちの前からいなくならないでください」
P「・・・・・・」
肇「Pさん、いつも言ってますよね?勝てない戦いはしないって」
肇「私は思うに死ぬことは敗北だと思います」
P「・・・そうだな。負けても雪辱を晴らせばいいさ」
肇「だから、死ぬようなことは無理はしないでください。お願いします」
P「・・・・・・」
P(肇も、俺のせいで辛い思いを)
P(最低だな、俺)
P「分かった。もう死地に突っ込むような真似はしないよ」
肇「ホントですね?」
P(彼女はずいと顔を近づける)
P「も、もちろん」
肇「ホ ン ト で す ね ?」
P「おう。もう・・・しないさ」
P(また、この空間に静けさが帰ってきた)
P(肇は真剣な眼差しで、野菜や魚の処理をしている)
P(そんな彼女に俺は意地悪なことを口走った)
P「・・・肇はちょっとだけ、口うるさくなったな」
肇「っ!!」
P「おわっと!?」
P(彼女は・・・俺に抱き着いてきた。脇の下から手を入れられ、おもわずバンザイのポーズに)
肇「当然じゃないですか・・・!」
P「泣いて・・・」
肇「自分を導いてくれた人が・・・大切な人が死んじゃったらって思ったら・・・!!」
肇「私・・・まだ・・・アナタに・・・!!」
心「ちーっす☆まだおつまみまだー?」
肇「はうっ!?」
心「ってあらら、ハッテン中だったかー☆撤退するから爆発しろ☆」
P(ハートさんがキッチンに入っては一瞬で出て行ってしまった)
P(一方で肇は、思わぬ襲来に体から離れて俯いてしまった)
P「・・・・・・」
肇「・・・・・・」
P(その後、お互いに一言も喋らず・・・料理の支度は終わってしまった)
肇『私・・・まだ・・・アナタに・・・!!』
P(肇がなにを言おうとしていた事ぐらい、分かってるつもり)
P(でも・・・俺に出来ることは・・・)
─ ○○プロ・事務室 ─
肇(はぁ・・・言いそびれちゃった)
肇(好きだと、伝えるチャンスだったのに)
肇(Pさん大好きクラブの面々と一緒に行動している以上、自分の心の拠り所は・・・すでに伝わってると思う)
肇(前に毎日ご飯作るなんてことも伝えたことあるけど、顔と顔を合わせて好きだとは言ったことはない)
肇(伝えたい)
肇(言葉にしたい)
肇(甘えたい)
肇(アナタの瞳に映るもの、全部私にしてみたい)
肇(ネガティブになるまで皆のことを思い続けるアナタの心を私だけのものにしてみたい)
肇(アナタに唇を奪われてから、私の中はアイドルとアナタのことだけで染まっています・・・)
伊吹「え、えっとぉ・・・ただいまっ!」
久美子「おかえりー」
ちひろ「伊吹ちゃん、おかえりなさい」
伊吹「大変お騒がせしました、もう大丈夫だよっ!」
心「おー!じゃあ復活祝いに飲む?呑む?」
伊吹「え゛?」
久美子「未成年にお酒勧めないでください」
心「えー☆」
ちひろ「私たちが相手になりますから」
心「結局いつものメンバーじゃん☆ちっひーまた手を火傷する?」
ちひろ「今日はおつまみ用意されてますからっ!もうその事はひっぱり出さないでください!」
久美子「はははっ、今日はP君も一緒に飲んでくれるんだから」
心「そうだった☆プロデューサー、プロデューサーのもーぜー☆」
P「はいはい」
雪乃「Pさんもお酒飲むのですわね。では私も・・・」
肇「・・・Pさんは、一緒にいてくれなさそうですね」
肇(こういう時だけ、大人はズルいと思ってしまう)
肇(レストランとかで2人っきりでお酒を飲んでみたい)
肇(そして、たとえば帰り際にガラス張りのエレベーターで肩を抱いてもらいたい)
肇(見せつけるかのように、私を『自分のもの』だと主張してくれたら)
肇(『この女は俺の手で作り上げたんだ』と一言呟いてくれれば、どれだけ私の心を満たし、奮わせてくれるだろうか・・・)
肇(そして・・・)
伊吹「肇?」
肇「ほわぁっ!?」
伊吹「うぉ!?どうしたの、ボーっとしてるけど」
肇「い、いえっ!なんでもありません!ちょっとだけ物思いにふけてました」
伊吹「それならいいんだけど・・・」
肇「伊吹さんはどうしたんですか?エキサイトダンサーズの面々には話しましたか?」
伊吹「うん。でも、あの二人とはあとでゆっくり話すつもり」
伊吹「みんなに迷惑かけちゃったしね。先にみんなと顔合わせたかったんだっ」
肇「そうでしたか、では他の方のところに行きましょう!」
伊吹「おっけー」
肇(伊吹さんと共に響子ちゃんや音葉さんと楽しく談笑。そのまま時間は過ぎていってしまいました)
数時間後・・・。
肇「みんな寝ちゃいましたね・・・」
肇(たくさん喋って、たくさん食べて・・・芽衣子さんを除く成年組は事務所で寝てしまいました)
肇(エキサイトダンサーズは女子寮で二次会、未成年のうち・・・私以外は明日仕事があることもあってもう帰ってしまいました)
肇(いまは・・・私だけ)
肇(使い終わった皿やコップを洗ったり、軽い掃除をしている間に時計の針のすべてが天を指していました)
肇(今日は・・・事務所で寝よう)
心「ぐーがーぐーぅ」
ちひろ「すーぅ・・・ふーっ・・・」
肇「みんな、気持ちよく寝ていますね。・・・Pさんは?」
肇(愛しの彼は、器用に事務イスを並べてベッドのようにして寝ていました)
肇(ふふっ、お疲れ様です。ハートさんにたくさん飲まされてましたね)
肇「みんなに、毛布かけてあげようっと・・・なんだか響子ちゃんのポジション奪っちゃってる気もするけど」
心「明後日トップアイドルだからぁ・・・むにゃむにゃ・・・」
ちひろ「りえきがー・・・やすみがー・・・」
久美子「お父さん・・・お母さん・・・」
肇(毛布を持ってきた時・・・みんな、幸せそうな顔をして寝言を言ってました)
肇(きっと、心の重りがなくなったからですね)
肇(やっぱり・・・○○プロにはPさんがいないとダメなんです・・・)
P「・・・・・・」
肇「・・・お疲れ様です、Pさん」
肇(そう呟いて、毛布をかけた時だった)
P「はじめ・・・?」
肇「あ、起こしちゃいました・・・?」
肇(彼が起きてしまった。もしかしたらずっと起きてたのかもしれないけど)
肇(Pさんは重そうに体を起こし、うなだれ体勢で私に話しかける)
P「・・・・・・ごめん」
肇「どうしたんですか?」
P「心配かけて」
肇「・・・そうですよ。もう心配させないでください」
P「ん」
肇(いつもの口癖。たぶん、これは肯定)
P「・・・・・・」
肇「・・・・・・」
P「・・・・・・あー、何言おうとしたか忘れちゃった」
肇「酔ってますか?」
P「ちょっとお酒入れすぎた。胃がちょっとキリキリしてる」
肇「あはは・・・」
P「こういうところも気をつけないとな、お酒は薬にだって毒にだってなるんだ」
肇「一に療養二に薬、ちょっと前に言ったんですけどね?」
P「・・・もう寝る」
肇「ふふっ、じゃあまた明日・・・」
肇(そう言って、踵を返したときだった)
P「・・・肇」
肇「Pさん?」
肇(神妙な面持ちで、呼び止められる)
P「目を閉じて、耳を塞いでくれ」
肇「えっ?えっ!?」
P「お願いだ」
肇「え、えっと・・・こうですか?」
肇(私の感覚から視覚と聴覚が取り除かれた時、なにか柔らかいものが頬に触れた)
肇「えっ!!?ええっ!?」
肇(いまのって・・・キス!?あのPさんからっ!?)
肇(思わず閉じていた視覚と聴覚を解放し、私はPさんに顔を向ける)
P「俺は何もしてないし、何も見ていない」
肇「でもっ!!」
P「・・・ごめん」
肇「・・・・・・」
肇(その言葉で感じ取れたのが・・・Pさんの男性としての甘えだった)
肇(ずっと真面目に、アイドルとして距離を置こうとしていた彼が・・・唯一私だけに見せた彼からの譲歩と謝罪)
肇(傷だらけになって、心を乱して、それでも皆の手を引いてきた人の甘え)
肇(なぜ私にキスしたか分からないし、お酒のせいかもしれない。もしこの立場が響子ちゃんや音葉さんだったら同じくキスされてたかもしれない)
肇(でも・・・言わずにはいられなかった。そっぽを向く彼の背中に向かって)
肇(無視されるのは分かってる。でも喉より奥から漏れていく言の葉たちを遮ることはできなかった)
肇「私は・・・アナタのことが・・・」
「大好きです」
肇(次の日、たまたま目が覚めて一部始終を見ていた雪乃さんにたっぷり絞られましたとさ)
終わり
以上です。今回はここまでです。
読みやすい長さになってると思います。
「一に養生二に薬(いちにようじょうににくすり)」とは、体調が悪いときは養生(栄養を取ったり休んだり)するのが一番。すぐに薬に頼るのはいけないというたとえ。
『一に看病二に薬』や『一に養生二に介抱』などいろんなパターンがあるので自分が一番好きな言葉を糧にするのがいいと思います。
さて、次回は
・梅木音葉「好奇心は猫を殺す」
その次に
・古澤頼子「モナリザの微笑」
・涼宮星花「苦虫を噛み潰したよう」
になります。
それと頼子ちゃん誕生日おめでとう!
ちょっと当SSシリーズだと大変な目に遭ってますが、これからもゲーム本編で正統派Coアイドルでありますように。
ではまた。
チラ裏
・ちょいと同人活動の方と自身が関わっている研究のことで次回の話の投稿は一ヵ月後ぐらいになると思います。
・オマケの方はあずき編→アーニャ編→雅編→5人合流編で分割してちゃんと投稿するので少々お待ちください。
ところがぎっちょん!
とかいうアイドル嫌や・・・
おまけその1
前回のおまけ
・○○プロの収益が良くない
・修正するにはアイドルにプロ意識を
・キーワードから3人のアイドルを探す
─ ○○プロ・事務室 ─
P「はぁ・・・」
ちひろ「まぁた溜め息ついちゃって・・・ダメですよー?」
P「すみません、ずいぶんアホなことやっちゃったんで・・・」
ちひろ「アホなこと?」
P「聞いた大事なことをメモし忘れるという・・・」
ちひろ「あー、それは私にはどうすることもできませんよ?」
P「なんとか思い出してみます」
P(先日、小さな占い師に出会い、アイドル探しの手伝いとして占ってもらった)
P(3つのキーワードを聞いて思わず『これから出会うアイドルがいるんだ!』と喜んだのはいいのだが、メモをするのを忘れるという大失態)
P(覚えている範囲で書き出したんだけど・・・これであってるかなぁ・・・)
『空中お掃除』
『星空布団』
『へこたれない発案者』
P(間違ってないといいけど・・・ちょっと不安)
ちひろ「思い出すのは後にして、先に仕事に行ってください」
P「え、仕事?今日は午後から営業・・・」
ちひろ「なぁにちゃっかり忘れてるんですか。今日は桃井さんのところに行く予定ですよね?」
P「え!?はっ!?」
P(俺は自分の手帳と連絡が書いてあるホワイトボードを見比べる)
P「しまったぁぁぁぁぁっ!!!書く場所1日ズレてるぅぅぅぅ!!!?」
ちひろ「もうおっちょこちょいなんですから・・・」
P「うぅぅ、悪い事は連続で起きますね・・・トホホ」
ちひろ「今から行けばまだ間に合いますから。行ってください」
P「行ってきます・・・」
─ 桃井呉服店 ─
P(新幹線と電車を乗りついで約2時間半。巴の衣装を作ってもらっている桃井さんの所へとやってきた)
P(交通の便がいい所なので、ここに来るのは気持ち的にも楽。ただ、ひとつだけ問題がある)
桃井あずき「あっ、プロデューサーさん♪いらっしゃーい!」
P(この子、娘さんの桃井あずきさんである)
P「こんにちは。今、お母さんかお父さんいますか?」
あずき「2人とも今は裏でお取り込み中だよ、なんか仕事のキャンセルで問題になっちゃってるみたい」
P「そうか、じゃあここで待ってるとするよ」
あずき「プロデューサーさん小腹空いてない?お菓子あるんだけど♪」
P「お気持ちだけ受け取っておくよ」
あずき「そんなこと言わずにまあまあ、どうぞっ♪隣町にある和菓子店から買ってきたんだよ」
P「それでは、ひとつだけ・・・」
P(なんだか、超がつきそうな高級和菓子・・・だと思う)
P「ぁむ」
あずき「えへへ、どうっ?」
P「・・・おっ、美味しい。柔らかいし、味もしつこくなくて・・・すぐに舌に解ける」
あずき「あ、業界人っぽいねっ!!」
P「・・・・・・・」
あずき「私も業界人っぽいセリフ言ってみたいなー」チラッ
P(始まった・・・)
あずき「プロデューサーさんならきっともっと美味しいもの食べられるんだろうなー」チラッ
P「む、むぅ・・・」
P(問題というのは、この桃井あずきさんのアプローチだ)
P(巴を通じてココとは知り合ったのだが、当初彼女は俺らとは手慣れた雰囲気で接していた)
P(おそらくこのお店自体が芸能界からよく依頼があるというのもあり、あずきさんは気にしていなかったのだろう)
P(だが巴がアイドルとして開花し始めてから、彼女もアイドルになりたい!という意思が矢のように突き刺さってくる)
あずき「ねーねー?」
P「ぬ、ぬぅ・・・」
P(俺は彼女の期待の眼差しにあらぬ方向を見るので精一杯だった)
「あ、プロデューサーさん、お待たせしましたね」
P「お疲れ様です。桃井さん」
P(間一髪のところであずきさんのお母さんが登場。助かったぁ・・・)
あずき「むー」
「あずき?どうしたの?」
あずき「ううん、なんでもない」
P(お母さんが来て、彼女はそのイケイケな姿勢を止めた)
P(彼女は顔立ちは良い。でも何か・・・何かイケないアラートが俺の中で鳴っている)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(今日は巴の新しい衣装についての検証だった)
P(こちらからのデザイン案を見てもらい、可能かどうかを桃井さんに判断してもらうという事だった)
「では主人らと共に可能かどうか相談してきますね」
P「お願いします」
P(こういうオーダーメイドは職人さんのお眼鏡に合うかどうかの時が一番緊張する)
P(あ゛ー全否定喰らったらどうしよう・・・)
あずき「プーロデューサーさぁん♪」ムギュ
P「ぬぉ!?あずきさん!?ちょっ、抱きつかないで!?」
P(親の目がなくなった瞬間、後ろから抱きつかれる)
あずき「どう?あずきって結構スタイルいいと思うんだけど?」
P(その言葉が耳に入った瞬間、意識してしまう)
P「やわら・・・じゃなくて、やめっ・・・////」
あずき「いまねー下着つけてないんだよっ?」
P「はっ・・・!?」
P(言われてみれば背中の一部分にちょっとだけ弾力の違うものが・・・)
P「ってわああああああああっっっ!?」
「どうしましたか、プロデューサーさん!?」
P「あっ・・・ええと・・・」
P(大声を出したせいでお母さんがリターン。背中にいたひっつき虫は既に俺からパージ)
P(つまり俺が奇行に走ってたところしか見られていなかった)
P「い、いえ、ええっと・・・足が痺れただけです、はい・・・」
あずき「ちぇー・・・」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(幸い、渡したデザインはどれも好評だった。あとは巴の嗜好に合うかどうか)
「それでは、一週間後以降に巴ちゃんを連れてきてくれませんか?見本の布なら一週間あれば作れますよ」
P「そんなに早いのですか・・・そうですねぇ・・・では来週のΧ日は空いておりますか?」
「はい、その日にちはこちらも大丈夫です」
P「ありがとうございます。では、またその日に。失礼します」
あずき「Χ日・・・よしっ」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(そして、Χ日になった)
村上巴「・・・・・・はぁ」
P「巴が溜め息つくなんて珍しいな」
P(俺の横で一緒になって歩く巴の足取りがどうにも重い)
巴「あずきの目線がなんとも言えん」
P「目線?」
巴「なんっちゅうか・・・敵意に近いものを感じるっちゅうか・・・」
P「敵意・・・?」
P(あずきさんは巴を良く知るファンだ。よく『ともキュービック』のLIVEにもやってくるし、そんな子が敵意を見せるなんてあんまり考えたくないなぁ)
P「まぁ、気のせいだよ。体調悪かったりしたんじゃないかな」
巴「ただでさえ、あずきは苦手じゃがのぅ」
P「ははは・・・彼女にとって巴は妹みたいなもんなんだよ」
巴「むぅ」
P(そんな会話の矢先、桃井呉服店に到着するなり、俺はあずきさんのお母さんにこんな事を言われた)
「なんだかあずきちゃんの様子がおかしいの。部屋に篭ってるようだし、呼んできてくれないかしら」
P「俺が、ですか?」
「先に巴ちゃんの方にとりかかってるから、お願い」
P「分かりました」
巴「・・・P」
P「どったん?」
巴「気ぃつけや」
P「・・・?分かった」
─ あずきの部屋 ─
コンコン
「どうぞー」
P「失礼します、あずきさん?」
P(返事を受けて俺は扉を開け・・・あれ?誰もいない?)
P(首を傾げながら部屋の中へと足を運んだ)
あずき「それぇ!!!」
P「おわぁっ!?」
P(突如、俺は後ろから押され、ベッドへと顔から飛び込んでしまう)
P「あ、あずきさん!?どこから!?」
あずき「えへへ~、扉の裏に隠れてたんだー」
P「なにをする気だ!?」
あずき「・・・枕営業?」
P「・・・は?」
P(齢15歳から放たれた言葉は自分の耳を疑う内容)
P(枕営業?バカを言うんじゃない!)
あずき「だから体をプロデューサーさんに売って、アイドルにしてもらおうかなーっと」
P「・・・そこまでしてアイドルになりたいのか?」
あずき「・・・・・・」
P「キミがいま何をしようとしているのか分かっているのか?」
あずき「・・・・・・そうだよ。あずきはアイドルになりたいんです」
P「なぜだい?」
あずき「・・・・・・」
P(俺は体を起こし、あずきさんの方向を向いた)
P(何事もコミュニケーションが必要だ。まずは会話から始めよう)
P「俺に話してみてくれないか?」
P(彼女はなんだか複雑な表情をしていた)
P「・・・簡単なことでいい。キミのお腹の中で抱えている何かを教えてくれ」
P(俺の言葉に彼女は目じりを細めて、口に出した)
あずき「・・・巴ちゃんってさ凄いよねっ」
P「・・・そうだね。13歳だけど大人びてて本当に頼りになる子だよ」
あずき「最初はさ、顔馴染みの子がアイドルになるんだって応援する気マンマンだったんだよ」
あずき「でもさ、テレビで巴ちゃんの事を見るたびに・・・もしかしたらあそこに立ってたのはあずきだったのかもって思っちゃうんだ・・・」
P「・・・・・・アイドル村上巴の裏側にはたくさんの協力者が心を合わせて、それではじめてキミの見ている村上巴になっているんだ」
P「つまり、キミもアイドル村上巴のひとりのはずなんだよ」
あずき「そうであっても・・・あずきはイヤだよっ・・・」
P「イヤ?」
あずき「だって・・・だってっ!!巴ちゃんはずっと昔から知ってるはずなのに、姉妹みたいなものなのに・・・」
P(その感覚、覚えがある。俺にとっての藤居朋という存在。また海の弟もまた俺と同じ感情を抱いて家族関係が壊れかけた)
P(この子もまた・・・)
あずき「最低。最低。最低」
あずき「巴ちゃんを見るたびに嬉しさと一緒にムカつきとか考えちゃいけない気持ちがあるんだもん・・・!!」
あずき「ヤダ、こんなのヤダ・・・」
P(つまり・・・この子の場合は嫉妬か)
P(近しい人には出来て、自分に出来ないことに対する嫉妬心)
P「だからアイドルになろうと?」
あずき「そうだよ、あずきもアイドルになればこんな気持ちにならないと思う」
P「はぁ」
あずき「・・・だめぇ?」
P「んー」
あずき「だめだめぇ?」
P(前にも思ったが、この子は顔立ちは良いんだ。だけど・・・何かが怖い)
P(多分、この平気で誘惑してくる姿勢がマズいんだと思う)
あずき「プロデューサーさんがあずきをアイドルにしてくれるなら、あずき脱いじゃうよっ?」
P「中学生がそんな事言っちゃいけません」
あずき「高校生だもん!」
P「そうであっても○○プロは枕営業なんてやらせません」
あずき「むー、プロデューサーさんの分からずや!」ムギュ
P「お、おぅい!」
あずき「もっとあずきの体、堪能すればプロデューサーさんだってユウワクできるもんねっ」
P(ムニムニと小さな身長のわりにしっかりとある胸が押し付けられ・・・ってそうじゃない!)
P「バカ」ナデナデ
あずき「えっ、なんで撫でるのっ!?」
P「・・・・・・なんというか不器用すぎ」
あずき「うう、これじゃあ、あずきが変態みたいだよっ・・・」
P「変態じゃなきゃ何なんだよ・・・」
あずき「えっとぉ・・・なんだろ・・・」
P「とりあえず離れなさい」
あずき「ヤダッ!」
P「なんで」
あずき「プロデューサーさんがアイドルにしてくれなきゃ離れないよっ」
P「・・・はぁ」
P(顔だけで判断するなら、逸品なのは確かなんだけどなぁ・・・)
P(美人なだけで売れる時代はもうない。とりあえずこちらの言い分だけは・・・そっと伝えておくか)
P「・・・分かった、検討する」
あずき「ホントっ!?」
P「事務所に戻って上に直談判する」
あずき「え、やったぁっ!!!」
P(この言い方って、ほとんど言い逃れするための処置なんだよね・・・)
あずき「やった♪やったぁ♪プロデューサーさんだーいすき?」ムギュ
P(ま、また柔らかいのが・・・)
あずき「あずきのユウワク大作戦がやっと実ったんだねっ!やったぁ!」
P(ユウワク・・・“大作戦”・・・?)
『へこたれない発案者』
P(もしかして・・・この子が・・・?)
P(いや・・・そんな・・・)
P「ねぇ、あずきさん」
あずき「なにかなっ!?」
P「他に作戦とか考えてたりした?」
あずき「うん、他にはデート大作戦とかっ、それとプレゼント大作戦とかっ!!」
P「・・・・・・」
P(もしかして・・・もしかすると・・・)
あずき「プロデューサーさん?」
P「訂正するよ」
あずき「え、アイドルやらせてくれないの・・・?」
P「そっちじゃない、キミさえ良ければ秘密の企画に参加させてあげる」
あずき「えっ、ええええっ!?」
P「ウチの上層部だけで考えられた作戦だ。これには新人で打たれ強い子じゃないと参加できないんだ」
P「キミの覚悟があるのなら、○○プロの新人アイドルとして参加してみないか?」
あずき「やるやるっ!絶対やるよっ!!」
P「キミの面倒を見るのは俺よりも遥かに厳しい日本トップレベルの人だ、それでも耐えられる?」
あずき「もちろんっ!」
P「・・・・・・分かった。キミを○○プロのアイドルとして迎え入れる」
あずき「やったぁぁぁっ!!プロデューサーさんホントにホントにホントにだぁぁいすきっ!!!!」
P「その・・・な、抱き付くのは良くないと思うんだが」
あずき「そうかな?」
P「今の体勢、結構マズいと思うんだ」
あずき「?」
P(そこら辺は無知なんだ・・・。彼女は俺の太ももの上に跨っている、俗に言う対面座位とか呼ばれる体勢。加えて密着するように抱きつかれているから・・・)
あずき「えへっ、えへへへっ♪」
P(まるで子猫になったかのように甘えてくる。いや、なんかもう・・・俺の頭が沸騰しそう・・・)
あずき「ねーねー、プロデューサーさん」
P「今度はどうしたん?」
あずき「・・・もっと近くで・・・しよ♪」
ゴンッ
P(流石にこれ以上は身が持たないのでおでこにチョップをかましてやった)
P(今後、この子のいき過ぎたアクションを調整するのも、トレーニングのひとつにするかなぁ・・・)
あずき「いたたたっ、プロデューサーさんひっどいよっ!」
P「これからはパートナーだからね、少しラフにさせてもらうよ」
あずき「えっ、パートナー!?えへへーっ?」
P(無鉄砲というか、調子がいいというか、なんというか・・・)
─ 桃井呉服店 ─
あずき「ともえちゃーんっ!」
巴「なんじゃ、あずき。引き篭ってたんじゃなかったんか?」
あずき「そんな事ないよーっ、えへへ♪」
巴「気持ち悪いわっ!」
あずき「えへへーっ♪今のあずきには効かないよーっ」
巴「なんじゃ、ワケが分からんっ!!」
P『あずきさんがウチのアイドルになる事は巴には内緒、ね?』
あずき「ナイショだよっ、さぁさぁ、巴ちゃんの衣装作りしちゃお?」
巴「む・・・むむぅ・・・しゃーない」
あずき(巴ちゃんを驚かせるすっごいアイドルになるよっ!)
P(こうして我が○○プロに鉄砲玉のような勢いを持つ桃井あずきが参入したのであった)
あずき編終わり
以上であずきちゃん参入までのおまけになります。
彼女の大事な部分はやっぱり年相応の色気からもっと上の色気を出そうとする姿勢だと思うので、ちょっとエッチな流れで行いました。
さてお次はアーニャのおまけになります。またしばらくお待ちを。
>>58
「記憶したか?」なら姐御肌なアイドルになりそうですね
─ ○○プロ・社長室 ─
P(あずきが○○プロに参入して2日後。俺は社長から呼び出されていた)
社長「首尾はどうだ?」
P「順調です。いま3人目が入りまして、現在4人目を探しているところであります」
社長「大丈夫なのか?あと一週間だろう?」
P「問題ありません」
社長「その自信は一体どこから来るのやら。まぁ、キミがキミらしくないのは事務所の流れが変わった証拠だろう」
P「だと思います」
社長「だが、約束は果たせよ?」
P「もちろんです」
P(俺の中であの小さな占い師が教えてくれたメッセージは絶対だと、信じ切ってしまってた)
P(あとは星空布団と空中お掃除・・・必ず見つけなくては・・・)
─ P宅 ─
P「うーむ・・・しかし、都心で探してもしょうがないよなぁ・・・」
P(今日は渋谷辺りを歩いてみたがそのキーワードが見合いそうな人はまったく見られなかった)
P(どうしたものかなぁ・・・星空って言うからには、空が綺麗なところに行かない出会えないだろうか)
Pipipipi...
P「電話・・・あれ、母さん?」
P「もしもし、母さん?」
「P?ちょっと聞きたいことあるんだけど」
P「なにさ、お金はちゃんと入れてるだろ?」
「そうじゃないの。あんた、保険入ってる?」
P「えっと、火災保険と自動車保険ぐらいかな」
「生命保険は?」
P「いやまったく」
「なに言ってるのよ、あんた1ヶ月に1回病院送りになってるって聞いたわよ!?」
P「ギクッ・・・」
「朋ちゃんとミッチーちゃん面倒見てるんでしょ?あの子たちが生活に心配しないようにしなさいよ」
P「へ、へい・・・」
「明日、休み?」
P「っと・・・そうだけど」
「それじゃあ、知り合いの保険屋連れてくるから帰ってきなさい」
P「んなっ!?」
「いいからっ!はよっ!」
P(明日は亜季ちゃんにサバゲ誘われてたんだけどなぁ・・・断るか・・・)
─ P実家 ─
P(長々~っと、保険業者からの話を聞かされた。なんだかすごく面倒だった)
P「・・・・・・」ゲッソリ
「ほら、良かったでしょ?」
P「・・・・・・へい」
P(とりあえず損害保険だとか生命保険だとかいろいろ勧められた)
P(いや、正直面倒な上に金がかかる。確かに俺は金があっても使う時間ないけど、うーむ・・・)
「私から言えんのは朋ちゃんとミッチーちゃんを大事にしなさいってことよ」
P「まぁ、それは重々承知してるよ」
P(死亡保険の受け取り人を従妹に指定・・・まぁ、親族だからできるのは分かってるが)
P(でも、今の立場的に里美や柚のことも捨てられない。血の繋がりがあろうとなかろうと、あの子たちは俺の家族だ)
P(・・・どうしようか)
P「なぁ、母さん。例えば、血筋が分かるもんとかある?」
「血筋ねぇ・・・」
P「朋やミッチーがちゃんと親等が近いか確認できるものが欲しいんだ。問題回避も兼ねてね」
「そうねぇ・・・ちょっと待ちなさい」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(そして母親が持ってきたものは・・・古めかしい本だった)
P「なにこれ」
「あんたのばーちゃんが好きで作ったもんよ」
P「すげぇ、何代前の名前が載ってんだ?」
「確か・・・10代ぐらい前までは確認してるはずよ」
P「・・・はーっ、すげぇ・・・あ、俺の名前あった」
「そのうちこの本継いでもらうよ」
P「なんかやだわ」
P「んで、藤居の方が・・・あった、朋」
「あ・・・ちょっとP、見るの止めなさい」
P「え、なんでよ?」
「いいから」
P「なんでさ・・・大原の方は・・・えっ?」
「・・・あちゃー」
P「待って、誰コレ?」
P(俺の眼にはみちるの家族ともう一つの家族が捉えられた)
P「母さん、見た事ないぞ。このアンナって子」
P(もう一つの大原の名を持つ人たち、俺と同じ行に“アンナ”と名の付く子がいた)
「・・・・・・」
P「ずっとイトコはみちると朋だけだったと思ってたよ。誰?」
「・・・・・・」
P「母さん、教えてくれ」
「・・・そうねぇ、どうしよっかなー・・・」
─ 北海道 ─
P(母親の口を割って、なんとかもう1人いた従妹の下へと急いだ)
P(従妹に死亡保険渡しますと言って、もう1人いて問題が発生しましたなんて起こったら死んでも死にきれない)
P(せめて顔を合わせておこう。俺に知らされないくらい問題がある家系なら渡さないと言いきれるんだ)
P(でもそれは言い訳に過ぎず、心の奥底から怖いモノ見たさに・・・大原アンナに会ってみたかった)
P(そして・・・北海道の札幌からちょっと離れて、草原に囲まれた地域にやってきた)
P(ちょっとした住居が並んでいる場所、でも自動車ひとつで困ることはなさそうな地域・・・)
P「ここに従妹がもう一人・・・」
P(俺は玄関にかけられた大原の名前を確認し、インターホンを押した」
「はーい、どなたでしょうか?」
P「初めまして、Pと申します。────の息子です」
「・・・兄さんのっ!?もう着たの、ま、待っててね!!」
─ 大原邸・応接間 ─
P「改めて初めまして。Pと申します」
「初めまして。ホント・・・兄さんにそっくりね」
P「えっと・・・」
「義姉さんからは連絡があったの。P君が来るって」
P「・・・すみません、いきなりのご訪問で」
「いいのいいの。これもすべてクソジジイのせいなんだし」
P「クソジジイって・・・」
「分かってる、分かってるよ。ここに来たのも・・・気になったからでしょ?」
P「はい、家系図見て・・・なぜ大原の血筋でありながら会えなかったのか」
P「私の両親はパーティを好む人です。・・・言い変えれば皆が集まる場が好きです」
P「そんな人がご家族、ご兄弟を呼ばない理由は・・・」
「ウチの家族も皆パーティ好きよ。アーニャちゃんも、ね」
P「アーニャ?」
「おっと、これはあとで説明するね」
「少なくとも、私はアナタの両親とは今も面識があったわ。メールの連絡先を知ってるくらいにはね」
P「・・・・・・」
「でも、どうしても会えなかった理由があるの」
P「それは・・・なぜですか?」
「それは・・・」
ピンポーン
「あ、帰ってきちゃった・・・」
P「・・・もしかしてアンナさんですか?」
「そうみたい。ちょっと待っててね」
P(そう言って、叔母さんは玄関に行ってしまった)
P「・・・・・・」
P(しかし、アーニャとは一体・・・もしかして、アンナのニックネーム?)
P(・・・俺の中でいらぬ考察が飛んでくる。彼女は・・・ハーフ・・・?)
P(その思惑は一瞬にして確信へと変わった)
「ごめんね、連れてきたよ」
アナスタシア(以下アーニャ)「ママ・・・?」
P(白い髪に・・・白い肌、エメラルドの瞳。制服に通学カバン、日本ではよく見られる服装に対し、日本人離れどころか浮世離れすら感じられる)
P(この少女が・・・大原アンナ)
P「えっと・・・初めまして」
アーニャ「・・・初めまして?」
P(少したどたどしくもしっかりとした日本語で返してくる。思考が追いついていないのか首を捻っているのが可愛げだった)
アーニャ「大原アンナと、言います」
P「Pと言います。えっと、アーニャさん・・・?」
アーニャ「はい、アーニャ、です」
P「・・・・・・」
アーニャ「どうか、しましたか?」
「・・・この人はね、アーニャちゃんの従兄なんだよ」
アーニャ「イトコ・・・?」
「私のお兄さんの、息子さん」
アーニャ「・・・・・・」
P「関東からはるばる・・・来ました」
アーニャ「・・・・・・ッ!!」
P(ようやく理解したような・・・そんな顔を一瞬見せて、彼女は突如走り去ってしまった)
P「え・・・?」
「あー・・・やっぱりか・・・」
P「やっぱり、というと?」
「実はね・・・」
・ ・ ・ ・ ・ 。
─ 草原 ─
アーニャ(自転車を走らせて、いつも星を眺めているところに来ました)
アーニャ(今日は望遠鏡はありません。なにもなしに、走り去りました)
アーニャ「・・・・・・」
アーニャ「・・・・・・」
アーニャ「・・・・・・ママ、バカです・・・」
アーニャ(だいぶ日が暮れて・・・星の光が見え始めたこの空)
アーニャ(いつもだったら、ワクワクと安心感があるのに・・・今日はない)
アーニャ(いろんなものが、私の中で渦巻いていました)
・ ・ ・ ・ ・ 。
アーニャ(ボーっとして、しばらくしたら・・・草を踏む音が聞こえました)
P「アーニャ」
アーニャ「ッ!?」
P「ここにいるって聞いてね。車で追いかけて・・・」
アーニャ「подойди поближе!!!」
P「え、えーっと・・・」
アーニャ「貴方ロシア語分からないんですか?ここまで来たのに?」
P「・・・ああ、俺はキミのことなんて昨日の今日まで知らない」
アーニャ「のうのうと、生きてきたんですね。・・・先ほどの言葉は近寄らないで、と言いました」
P「そうか」
アーニャ「帰ってください、もう顔を見せないでください」
P「そうはいかない」
アーニャ「イヤです」
P「俺も、イヤです」
アーニャ「・・・ッ!」
バシン!!!
P「・・・ったぁ・・・」
P(平手打ち。気持ちいいくらいのフルスイングが頬に刺さる)
アーニャ「ママの気持ち、分からないくせに・・・!」
P「ああ、さっき知ったばかりだ」
アーニャ「もう一度言います。もう来ないでください」
P「もう一度言う。そうはいかない」
アーニャ「・・・・・・コイツ・・・!!」ドンッ
P「うぐっ!?」
P(彼女から学生カバンで怯まされ、その隙に体に馬乗りされる)
アーニャ「貴方たちのせいで・・・貴方たちのせいで、ママはっ!!!」
P「っっ、いたっ!!!」
P(彼女が持っていたカバンが何度も何度も俺の顔面に叩きつけられる)
アーニャ「・・・いやっ、いやぁっ!!」
P「あがっ・・・あだっ・・・!!!」
P(痛い、めっちゃ痛い。でも・・・この子が受けた傷はこの程度じゃ済まされない)
数分前・・・。
─ 大原邸・応接間 ─
P「え?絶縁・・・?」
「そう、私は大原家から勘当された身なの」
P「まさか・・・え゛・・・?」
「原因は私がロシアに行ったこと。そしてロシア人の男性と結婚したこと」
P「ロシア?ってことはアンナさんはロシア人とのハーフ?」
「うん。ロシア名はアナスタシア、日本名はアンナ、どちらにしてもアーニャっていうニックネーム」
P「・・・アーニャ」
「じゃあ、順に説明しよっか。キミのお爺ちゃん、私にとってはお父さんなんだけど、お父さんってさ・・・戦争経験者なの」
P「第二次世界大戦時ですかね?」
「うん、当時子供だったお父さんはいろいろな事を目の当たりにしてきたの。大戦の敗北とか、死に物狂いの生活とか」
P「・・・・・・厳しい世の中だったんでしょうね」
「そして、戦争終了間近で、とある国が日本に攻撃し始めました。戦争に参加、という事ね」
P「とある国・・・」
「アメリカと冷戦をしていた国と言えば?」
P「・・・ロシア」
「正解。端から見れば火事場泥棒だけど、国益を常に求めなきゃ国が終わるのが国際状況」
「でもやっぱり当時の日本人からすればチョーむかつく国だったんだよ」
P「・・・・・・」
「そんな事はいざ知らず、私は国際科の大学に行ってね、そこでロシアの文化にハマったんだ」
「いつか絶対にロシアに行くんだ!って思ってたんだけど、ロシア嫌いのクソジジイが猛反発!」
「それでも私は行きたい、意地でも行くんだ!って飛び出して行った結果がいまのこの状況」
「下手にクソジジイと顔を合わせたら何をされるか分かったもんじゃない」
P「だからパーティに来れなかったと」
「義姉さんから何度か呼ばれたけどね。アーニャちゃんを守るために、全部断ってた」
P(確かに下手な環境を作って、鉢合わせになって喧嘩になったら困る)
P「アンナさん・・・いや、アーニャさんのさっきの反応も・・・」
「多分・・・『お母さんを迫害したやつら』とでも思ってるんじゃないかしら」
P「あー・・・あー・・・」
P(言葉に詰まった。通りで俺の母親が教えないわけだ)
「私は後悔してないよ。こんな生活になったのも、歴史的にも家系的にもしゃーないと思ってるし」
「でもね、アーニャちゃんには・・・そんな生活強要したくないのよね」
P「しかし・・・」
「あの子のお兄ちゃんなんだから、何かできないかなー?」
P「お兄ちゃんって・・・」
「ロシアじゃ、イトコなんて区切りはあってないようなモンよ。キミは生まれ付いてのアーニャちゃんの兄です」
P「・・・・・・」
「お願い、P君。自分勝手なことを言ってると思うけど、子供たちにまで私とクソジジイの怨恨を残すわけにはいかないわ」
「今がそのチャンスだと思ってるの。お願い、あの子と仲良くなって頂戴」
P「俺があの子と・・・」
─ 草原 ─
バシンッ!バシンッ!
P(でも・・・どうすればいいんだ?)
P(俺が出来ること・・・)
P(今出来ること・・・)
P(彼女を受け止めること・・・)
アーニャ「消えて・・・消えてください!!」
P「・・・アーニャ」
アーニャ「・・・っ、その名前で・・・呼ばないでください・・・」
P(彼女の手が止まった。チャンスとばかりに俺は少し体を起こした)
P「俺が・・・愚か者なのは分かってる。キミたちがここで住んでいるのも、どんな気持ちでいるかも知ったのは昨日の今日だ」
アーニャ「・・・・・・」
P「知らされなかった、で済む問題じゃない。でも・・・俺は・・・俺はキミの兄貴だ。解消できる問題はすべて解決したい」
アーニャ「貴方が、私の兄だなんてっ・・・!」
P「殴ればいい。気が済むまで、何度だって」
アーニャ「・・・・・・っ!」バシン!
P「・・・ッッ!痛くても・・・キミの痛みには到底及ばないのも・・・分かってる!」
P「好きなだけ殴ればいい。これは兄妹ゲンカだ、誰も咎めはしない」
アーニャ「・・・ムカつきます」
P「そうだろうね、一方的に暴力振るうのは殺意がないとできない」
アーニャ「違います」
P「?」
アーニャ「なぜ、受け入れるのですか?私は、貴方の家系で、産まれてはダメなんです」
P「どうだろう、産まれちゃダメなんて言われても認めてくれる人はいるだろう?お父さんお母さんがさ」
アーニャ「・・・・・・ママ、パパ・・・」
P「俺も認めるよ。キミは・・・アーニャは俺の従妹、それも何も変わらない」
アーニャ「イトコ」
P「親が兄妹でその人らの子供、ただそれだけ。認めない人が1人しかいないのに、全体のように話す必要はない」
アーニャ「認めない人が・・・目の前に現れたら?」
P「俺が守る。キミを認める人が守る。キミが信じてる人が守る」
P「だから・・・俺を信じてくれないか?」
アーニャ「信じる?」
P「俺はキミを否定しない、俺もまたキミと共に歩むべき存在だということを」
アーニャ「・・・・・・」
P「本当だったら・・・十年以上前から俺たちと一緒にいられたはずなんだ」
P「でも、今からでも遅くはない。アーニャ、俺はキミと一緒にいたい」
P「・・・親の因果をここで絶つんだ」
アーニャ「ママと私を・・・認めてくれるんですか?」
P「ああ。もちろんだ」
アーニャ「本当に・・・本当ですか・・・?」
P「ああ」
P(否定する理由が・・・ないからね)
アーニャ「・・・うぅ・・・」
アーニャ「・・・っ、・・・・・・ぁっ」
P(彼女は声を殺して、涙を流した)
P(どんな姿をしていても、ただの学生の女の子でその枷はあまりにも大きかった)
P(今日の暴動が彼女の1人相撲だったとしても、誰も彼女を責めることはできない)
P(俺は何も言わずに背中を撫で、慰めた)
P(少しずつ、心を解していこう・・・ゆっくりゆっくりと)
─ 北海道・大原邸 ─
アーニャ「・・・・・・ただいま」
P「ただいま戻りました」
「おかえりー、仲良しには・・・なってないみたいね」
P「溝が少しだけ埋まっただけです。でも・・・信用は、してくれるみたいです」
アーニャ「・・・裏切らないで、ください」
P「裏切るだけのメリットもないよ。美人な子だしね」
アーニャ「美人、ですか?」
「そうなのよー、私の子じゃないみたい!」
アーニャ「えっ・・・?」
「ちょっとした誇張表現よ!アーニャちゃんは私がお腹痛めて生んだ子、それは間違いないわ」
アーニャ「ふぅ・・・」
P「あははは・・・」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(その後、部屋に戻ったアーニャに呼び出された)
P(アーニャの部屋は天窓が付いていて、いまの時間帯だとちょうど明るい星たちがよく見える時間帯となっている)
P「どうした、アーニャ」
アーニャ「信頼の証に・・・私の、好きなものを教えます」
P「好きなモノ、か」
アーニャ「・・・いっしょに・・・星を見ましょう。さぁ、こっちに・・・」
P(ベッドに2人で横になって、あの天窓を通して満天の星空を見上げる)
P(静かで、優雅で、落ち着いて)
P(隣には、もう敵意は見えない女の子がいて)
P(なんだか、悪くない気分)
アーニャ「どうですか?」
P「キレイだな・・・すごく落ち着く」
アーニャ「・・・私はこのキレイな星空が、大好きです」
アーニャ「毎日、違う世界が・・・この空に描かれています」
P「・・・違う世界、かぁ・・・」
アーニャ「・・・私と貴方の存在も、違う世界のモノだと思ってました」
アーニャ「絶対に混じれない世界、だと」
P「んなことはないよ」
P「・・・さっきみたいに腹を割って話せば、こうやって同じ空を見上げることができる」
P「ちょっと痛い代償受けたけどね」
アーニャ「・・・殴って、ごめんなさい」
P「あれで十何年分のモヤモヤが消えたのなら・・・俺としては作戦成功って所だけどね」
アーニャ「信用・・・していいのですね?」
P「もちろん、兄妹なんだから」
アーニャ「・・・・・・」
P(彼女は目線はそのまま。俺の手首を握ってきた)
アーニャ「・・・・・・」
P「これから、いい思い出作ろうか。今までの恨み節、全部忘れられるような」
アーニャ「はい・・・P君」
P「いまP君って・・・!?」
アーニャ「兄さん、の方がいいですか?」
P「あ、それはこそばゆくなるから止めて」
アーニャ「兄さん♪」
P「あー、あー、聞こえない聞こえない」
アーニャ「兄さん、お兄さん♪」
P「やめい、やめなさーい」
P(地味に彼女は俺の手首を固定してきて、耳を塞がせなかったりしてくる)
アーニャ「ふふっ」
P「・・・やっと笑ったな」
アーニャ「あっ」
P「笑ったらもっと美人・・・俺の従妹とは思えないな」
アーニャ「もぅ・・・P君までダメです」
P(ぷくっと頬を膨らましている。さっきとは打って変わって明るい表情を見せている)
P「美人なのは間違いない」
アーニャ「口説いていますか?」
P「・・・失言した」
アーニャ「では、あえて口説かれておきます」
P「むむ・・・」
P(固定されていた手首は解放され、代わりに手を繋がされた)
アーニャ「ここで・・・貴方を信頼したこと、後悔させないでください」
P「当然だよ。どの星空の下でも誓ってやる」
P(って、星空・・・)
P(俺は体を起こし、少し見渡す)
P「ベッド・・・」
アーニャ「どうか、しましたか?」
P(上に星空、下にベッド・・・星空布団・・・?)
P(まさか・・・)
P「アーニャ、アイドル・・・やってみないか?」
アーニャ「アイドル、ですか?」
P「ああ、歌って踊ったり、自分の好きなことを使って、最大限に人を魅せる職業だ。俺はそのサポートと指示をする仕事をしているんだ」
アーニャ「マネージャー?」
P「プロデューサーの方だな。いま、新たな一石投じるために新たなアイドルを探していた所なんだ」
アーニャ「・・・私がアイドルに、ですか?」
P「大変な道のりになるが、実りある生活は保障する」
アーニャ「・・・分かりました」
P「え゛、そんなすんなり・・・」
アーニャ「私はP君を“信頼しています”。だからアイドルの事も“信頼します”。でも裏切ったら、責任は、P君にあります」
P(そ、そういうことか~ッッ!!!!プレッシャーにプレッシャーを重ねて俺の逃げ場を無くすという・・・)
アーニャ「ふふふっ、ではママに、言ってきます」
P「お、おう・・・」
P(複雑な信頼関係からアーニャが○○プロの仲間になった)
P(彼女との信頼関係はいつ崩れるか分からない。すべては俺にかかっている、失敗は許されない)
P(だけど、俺が『ああ』と頷くだけで声色が良くなる彼女を見ているだけで、来てよかったと心のどこかで喜んでいる自分がいた・・・)
P(・・・あ、みちるのこと言い忘れた)
アーニャ編終わり
以上でアーニャ編終わりです。
アーニャが会話の中にロシア語を入れていないのは意図的です。理由は・・・大方予想できると思います。
次はみやびぃです。あのメンバーで入った理由が謎なみやびぃ、実はPに○○○をしたことがきっかけで・・・
チラ裏:小春ちゃんかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
─ ○○プロ・事務室 ─
P(大原アンナことアーニャが○○プロに入って早5日)
P(俺はかなり焦っていた。約束の日まであと2日ほどしか時間がない)
P(マズい、非常にマズい)
ちひろ「プロデューサーさん、大丈夫ですか?」
P「かなりヤバいです。心身共にヘトヘトですが、休んでる暇はありません」
ちひろ「あと・・・1人なんですよね?」
P「はい、あと1人なんです。用意できた4人に劣らない原石を探してこないと・・・」
ちひろ「候補はあるんですか?」
P「・・・ありません」
ちひろ「あと2日しかありませんよ!?本当に間に合うんですか!?」
P「・・・む、むぅ」
ちひろ「今までで出会った女の子とかにいませんか?例えば・・・どこかの施設の看板娘とか」
P「看板娘・・・」
P(ただ看板娘を捕まえてこいというのなら既に七海ちゃんがいる)
P(だから、今の俺の知ってるだけの人にそのような女性はいない)
P「いませんね・・・」
ちひろ「そうですか・・・うーん・・・あ、そうだ」
P「?」
ちひろ「神社とかで探してみてはどうですか?人が集まる場所ですし、今までとは違う層が見つかるのではないでしょうか?」
P「神社・・・」
P(俺の脳裏ではある事が蘇った。以前、朋が撮影でパワースポット巡りをした際にある神社で可愛い巫女さんを見たことがある)
P(もし・・・彼女がアイドルに興味があるのならば・・・)
P「・・・ちょっと行ってきます」
ちひろ「なにか引っ掛かったようですね。行ってらっしゃいませ」
─ 奈良県・某神社 ─
P(新幹線で3時間、俺は大急ぎで目的地へと向かった。目的はただ1人、その人をスカウトする)
P(あとはこの階段を登れば、もくてk・・・)
?「おわっ、わっ、わっ、わっ、わあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
P「は?」
P(突如として、上から叫び声が聞こえる。見上げたその先には・・・じょ、女性が空を・・・いや落ちている!?)
P「危ないっ!!!!」
P(俺は飛び込んで彼女の下敷きになった)
?「あ、あれ?あれうぇ?」
P「だ、大丈夫ですか・・・?」
?「ご、ごめんなひゃい!!・・・あぅ、噛んじゃった・・・」
P「怪我はないですか・・・?」
?「わ、私なら大丈夫れふっ!!!・・・ま、また噛んじゃった」
P「ぶ、無事ならよかった・・・ごめん、降りてくれないかな・・・」
?「ご、ご、ごめんなさぁいっ!!」
P(ミゾに大きなダメージを受け、神社の外れで休憩することになった・・・)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P「とりあえず道明寺さんが無事でよかった」
道明寺歌鈴「ほんとすみません・・・」
P「あんなところから落ちたら、大怪我じゃ済まないからね。たまたま俺が寄り道しててよかった」
歌鈴「私ドジなんでふ・・・あぅ、またぁ・・・」
P「あははっ、それは前から思ってたよ」
歌鈴「ひどいですっ!」
P(前に朋と来た時にこの子はものすごく印象に残ったのだった。何もないところでコケたり、よく舌を噛んだり)
P(とにかく目立つ子だ。あの時は今の倍以上の自転車操業だったためにスカウトできなかったが、今ならできる、チャンスだ)
P「しかし、よく俺のこと覚えてたね」
歌鈴「ふぇっ!?ええっと、この神社にカメラが入ることなんて・・・珍しかったですから」
P「増してやアイドルな上に若い女の子だったしね」
歌鈴「そうなんれっっ!!!(噛んだ・・・)」
P「落ち着いて」
歌鈴「うぅ・・・えっと・・・朋ちゃんが輝いてたんです。だから一緒にいたPさんも覚えていたというか」
P「それはよかった」
歌鈴「アイドルってすごいですよね、存在感というか」
P(好印象。アイドルに対しても偏見はない)
歌鈴「もうあの日からアイドルにハマっちゃいまして・・・」
P(間違いない、このチャンスは・・・)
歌鈴「先日、Cuプロに合格しちゃったんですっ!!」
P「・・・・・・」
歌鈴「・・・・・・」
P「・・・・・・え?」
歌鈴「え、えっと・・・私もアイドルなれないかなーって2週間前にCuプロに履歴書送ってみたら合格通知もらいまひ・・・あぅ」
P「マジで?」
歌鈴「はひ」
P「マジか」
歌鈴「はいっ、Pさんと朋ちゃんとはライバルになりますが、精一杯頑張ります!」
歌鈴「だからお互いに切磋琢磨、頑張りましょうね!」
P「・・・はははっ、マジカー・・・」
歌鈴「ど、どうかしましたか?」
P「い、意外なライバル登場に驚いてるだけだよー(棒)」
歌鈴「本当ですかっ!?ライバルです、ライバル、うんっ!」
P(な、なんというか・・・この告白する前にフラれた感・・・かなり心がポッキリ逝ってしまってる・・・)
歌鈴「あ、お茶持ってきますね」
P「ダイジョウブ、ダイジョウブ、ちょっと寄ったダケダカラー」
歌鈴「あ、でも」
P「モウデルカラー」
歌鈴「そ、そうですか、では・・・私は境内のお掃除が残っている・・・って、わ、わ、わ、わっわぁぁぁぁぁっ!!!」
P「・・・・・・」
P(彼女は持っていた箒が上手に足に絡まり宙を舞った)
P(空中お掃除・・・、やっぱりこの子だったんだろうなぁ・・・遅かった・・・)
P(俺はトボトボと神社を去った)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P「はあああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・っ」
P(体中からタメ息が出た。全身が使い物にならないくらい脱力感を感じている)
P(今までの行動すべてが無駄骨。いや、あと1人を確保できなければ・・・今まで集めた4人すら無駄になってしまう)
P(七海ちゃんが興味を示し、詩織さんが覚悟し、アーニャが信じ、あずきさんが待ち望んだ、その切符を・・・俺は無様に捨ててしまうことになる)
P(いや・・・ダメだ。まだ諦めちゃダメだ・・・)
P「でも・・・どうすればいいんだ。もう探す場所なんて・・・」
P(・・・一旦、事務所に戻ろう。ダメならダメで、ちひろさんと一緒に考えよう・・・)
─ 都内某所 ─
P(時刻は夕暮れ)
P(また3時間以上使って、俺は東京へと戻ってきた。電車を乗り継いで、今日は帰ろう・・・)
P(・・・・・・)
P(・・・・・・)
P(・・・・・・)
P「ん?」
P(ふと、ある建物が目に入る・・・)
『アクティブランド東京』
P(あれ、なんだっけ・・・この施設・・・)
「お兄さん、今日から屋内プール解禁ですよ!入って行きません?」
P(ふと、呼び子に声をかけられた)
P「ぷ、プール!?」
「そうなんですよ!増設する増設するって早6年、やっと完成ですよ!」
P(そういえば・・・そんなCMがやってたような・・・やってなかったような・・・)
「ぜひ遊んでいってください!今なら水着貸し出してますよ!」
P「いやでも私・・・」
「そーんな暗い顔してるより、運動してスッキリした方がいいですよ!」
P「!」
P(それもそうだな・・・切羽詰った時こそ、頭を冷やす方がいいよな・・・)
P(施設からはチラホラ女性が見える。今日は平日なのだが、学校帰りで来てたりするのだろうか・・・)
P(うまく・・・スカウトできる人材も見つかるかも・・・)
P「じゃあ・・・行ってみようかな」
「はーい、ありがとうございまーす!」
─ プール ─
P「ふぁー・・・」
P(見事なまでに女性しかいねぇ・・・おかげで変な声が出る)
P(男性はお子さんか、彼女と来てる人くらい)
P(夕方なのもあって、人がいっぱいというわけではないのが救いではあるが・・・)
P「そこに男性1人だけって、怖いよなぁ・・・」
P(女性からしても、俺からしてもね。心配ごとはこれだけだろう)
P(貴重品はすべてロッカー、俺には水着と腕に巻くタイプの鍵のみ)
P(盗難には遭わないだろう)
P「しかし、どうやって泳ごう・・・」
P(さすがアミューズメント施設というか、25mプールはない。あるのは波のできるプールや流れるプール・・・あと滑り台とか)
P「運動としての遊泳はできねぇなコレ」
P(呼び込みさん、流石です。まんまと騙されました)
P(俺はとりあえずリフレッシュも兼ねて、流れるプールで浮かんでいるだけにした)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(ひたすらに流れるプールに流される俺。回転寿司ならぬ回転俺。魚雷艇俺、絶賛巡回中。いや何にも面白くない)
P(だが、こんなくだらなさが何故か愛おしい。人間、追い込まれると僅かな自由な時間でさえ快感に変わる)
P(天窓から入る橙色の光がすごく心地よい)
P(あー、このまま溶けないかな・・・)
ゴンッ!!
?「ひゃぁっ!?」
P「おはあわっ!?おわぁっ!?」ブクブクブク
P(前方不注意・・・いや、背負い泳ぎの要領で浮いてたから上方不注意か)
P(ともかく、人にぶつかって、自分で驚いて溺れかけてしまった)
?「大丈夫かなぁ?」
P「ごほっ・・・ごほっ・・・すみません、こちらの不注意です・・・っ」
?「みやびぃは大丈夫だよぉ?エッチな人かと思ったよぉ」
P「え、エッチな人!?」
月宮雅「おっぱいにぶつかって来たんだっ、びっくりしちゃったよぉ」
P「む、胸に!?こ、これは本当にすみませんっ!!!」
P(あちゃー・・・悪いことは連鎖するなぁ本当に・・・)
雅「いい人っぽいからぁ許してあげるっ♪」
P「・・・本当にすみません」
P(相手も気にしない人でよかった・・・)
雅「じーぃ・・・」
P「あの・・・なにか?あ、何かジュースでも奢りましょうか、お詫びも兼ねて」
雅「ほんとぅ?いいのぉ?」
P「私のせいですし、構いませんよ」
雅「やったぁ♪」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(貴重品用のロッカーは更衣室ではなく、エリアの端にある)
P「ちょっと待っててくださいね。サイフはここに・・・」
雅「律儀だねぇ」
P「そうですかね」
雅「逃げちゃえばいいのにぃってみやびぃも思ったもん」
P「まぁ、それはそうですが、相手が事を大きくしたりしない限りは丁寧に対応したいです」
雅「かっこいいねぇ」
P「・・・・・・どうも」
P「用意できました。何がいいですか?」
雅「そうだなぁ・・・あ♪あれがいいなぁ」
P「クレープ・・・ですか」
雅「うん♪」
P「分かりました」
「あら、カップルさん?」
P「いや、ち・・・」
雅「そうですよぉ?」
P(!?)
雅「このダイナミックいちごアイスクレープをひとつお願いしまぁす♪」
P「あ、では私は・・・、モガモガモガッ!!?」
雅「ダァメ♪」
P(注文しようとしたら口を押さえられた、な、なにを考えているのやら・・・)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(俺たちはベンチに腰をかけ、彼女は満足げにクレープに噛り付いた)
雅「ぁむっ!ぅぅ~っん♪おいひぃ」
P「それはよかった」
P(俺も食べたかったとは言えない・・・そんな雰囲気)
P「改めてすみませんでした・・・えっと・・・」
P(俺の困った顔を見て、すぐに反応してくれた)
雅「ん~、名前~?月宮、みやびぃだよぉ?」
P「月宮さんですね、ご迷惑をおかけしました」
雅「ダァメ」
P「!?」
P(お、俺・・・やっぱり許されてない!?)
雅「みやびぃ」
P「え?」
雅「みやびぃって呼んで」
P「え、あ、え?」
P(頭が混乱してきた。え、初対面の人に名前で呼ばせるの?)
P「あ、え~っと、ごほんっ!・・・雅さん」
雅「ダメーッ!みやびぃだよぉ?」
P「・・・・・・みやBee?」
雅「みやびぃ」
P「みやびぃ」
雅「そうそう♪やったぁ!」
P「あ、え~っと、みやびぃはここには何をしにきたんですか?」
雅「え~、ナイショ♪」
P(回避されてしまった。このままだと雅さんの横顔眺めてるだけで別な人に通報されそうなんだけど)
雅「アナタの名前は~?」
P「私ですか?私は・・・」
雅「なぁにか隠してるなぁ?」
P「何も隠してませんよ?」
雅「あ~、わかったぁ♪敬語はダメだよぉ!」
P「む」
雅「みやびぃには敬語はめっ!」
P「・・・わかった、これでいいか?」
雅「おっけぇ♪改めてお名前は?」
P「俺はPって言いま・・・言うんだ」
雅「P君だねぇ?」
P「はい、そうで・・・おう、その通りだよ」
雅「えへへっ、うふふっ」
P「どうしたんだ?」
雅「ナイショ~♪」
P「・・・むぅ・・・」
P(何か掴めない立ち振る舞いをしていて、俺は一向に彼女を把握しきれていない)
P(それが自然の立ち振る舞いならある意味すごい人だけど)
P「・・・・・・やっぱり甘い物いれようかな」
P(実は先ほどからクレープ屋に書かれている“きなこバナナクレープ”が目に止まって仕方ないのだ)
雅「めっ♪」
P「なぜです・・・じゃなかった、なんでだ?」
雅「これがしたかったんだぁ!はい、あ~ん♪」
P(俺の前に彼女の口を付けたクレープが差し出される・・・え、これを食えと?)
P「雅さ・・・みやびぃ、これはちょっと・・・」
雅「あ~ん♪」
P「あの・・・その・・・」
雅「あぁぁん♪」
P「むぅ・・・」
雅「あ~~~~~~ん♪」
P「・・・・・・ぁむ」
P(折れました)
雅「美味しぃ?」
P「甘い、すごく甘い」
雅「えへへ、そうだよねぇ♪」
P(砂糖吐きそう、いや展開とか雰囲気とか・・・あぁ、クラクラしてきた・・・)
雅「ここに・・・あむっ!」
P(そして、その俺が口を付けただろう場所を頬張る・・・いや、この子なにやってんの?)
雅「えへへぇ♪」
P(不可解な行動に俺の頭はむしろ冷える。だが、冷えたことによって・・・今日の失敗がズンっと圧し掛かってきた)
P「・・・・・・」
雅「?」
P(俺・・・こんなところでなにしてるんだろう・・・)
P(リフレッシュと運動したところで、失敗したのには・・・変わらないのにな・・・)
P「はぁ・・・」
P(空にある雲に向かって、溜め息を飛ばした)
雅「みやびぃといるの・・・つまらない?」
P「あ、いや・・・」
P(って、いかんな・・・初対面の女性の前でこんな態度を取っては)
P「・・・ちょっと、嫌なこと思い出してしまいまして」
雅「教えてほしいなぁ?みやびぃに出来ることならぁ、手伝うよぉ?」
P「仕事の話ですよ。ちょっと切羽詰っちゃってるんです」
雅「そっかぁ、だいじょうぶぅ?」
P「・・・多分、大丈夫ですよ」
雅「・・・・・・」
P「みや・・・、・・・みやびぃ?」
雅「大丈夫って顔じゃないよぉ。今の顔、本当にマズいって顔だよぉ」
P(顔に出ちゃってたか・・・)
雅「みやびぃにも出来ることないかなぁ?」
P「・・・ないですよ」
雅「あるよぉ、絶対にあるってぇ!」
P「・・・ないです」
雅「みやびぃなんでも協力するよぉ?」
P(そう言って彼女は俺の二の腕を掴んできた)
P「止めてください!」
雅「きゃっ!」
P(掴んできた手を払ったその時だった)
P(俺の手首に付いていたロッカー用の鍵が彼女の胸部を隠す水着に引っかかり、勢いをその布を剥いだのだった)
P「あ」
雅「き、きゃああああぁぁぁっ!!!!」
P「ご、ごめんなさ」
P(俺は謝罪の言葉を言う暇もなく、宙に体が舞った)
P(・・・いや、舞った?は?なんで、俺は空中にいるんだ?)
P(理解するまで1秒。俺は・・・・・・蹴り飛ばされたのだった・・・)
「ウチの子に何してくれてんのよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
P(体感時間にして約10秒。多々死にかけになった俺ですら見たことない走馬灯を初めて感じ、プールへと叩き落された)
・ ・ ・ ・ ・ 。
─ プール・医務室 ─
P(見事に両鼻から血を噴出した挙句、右肩と右手薬指に擦り傷を負った)
雅「P君、ごめんねぇ・・・ママがずっと見張ってたみたいぃ・・・」
P「・・・こちらこそすみませんでした」
P(なんでも・・・雅さんの“逆ナン”が上手くいくようにと、そして変な輩に絡まれないようにと彼女のママさんは見張ってたらしい)
P(そして、雰囲気は悪くなかったが、服がはだけた時点でコイツ容赦しねぇと判断されたようで・・・)
雅「ダメだよぉ、ママが出ちゃったら逆ナンにならないよぉ」
雅ママ(以下ママ)「でもね、みやびぃ。男は狼なのよ、気をつけなさい」
雅「P君は大丈夫だよぉ」
P(そんな初対面の人を信頼されても・・・というか、懐かしい歌詞が聞こえたような)
ママ「でもみやびぃの肌を見たのよ?」
雅「ママがそんなんだからみやびぃ、彼氏できないんだよぉ」
ママ「・・・できなくていいわよ。ママがいい人探してあげるわ」
雅「うぅ・・・P君は絶対いい人だと思うのにぃ」
ママ「証拠はどこにあるのよ」
雅「P君、マジメだもんっ」
P(というか、逆ナンって・・・俺はそんな目で見られてたのか?この子に)
P(もっといい人いるだろう。女性から言い寄られていまの俺以上に喜ぶ人はたくさんいるだろう)
ママ「マジメって・・・どこ見て言ってるのよ」
雅「お仕事のことで頭いっぱいなんだってぇ」
ママ「ただのワーカーホリックじゃない、お仕事はなにやってるの」
雅「えーっとぉ・・・」
P「プロデューサーやってます」
雅「だって、プロデューサーだよぉ」
ママ「はー、ほらみやびぃ、こんな顔でプロデューサーとか・・・プロデューサー!?」
P「はい、そうなんですが・・・」
ママ(プロデューサー、P君・・・って・・・芸能事務所のプロデューサーじゃない!!)チラッ
P「?」
ママ(濡れて髪型が変わってたから気付かなかった!かなりの玉の輿・・・じゃなくて実力を持ったところの親玉じゃない!!)
雅「ママ?」
ママ「おほほほほっ、みやびぃ!しっかりデートしてきなさい」
雅「え?」
ママ「Pさんごめんなさいね、娘のことになるとつい頭真っ白になってしまって・・・」
P「え、まぁ・・・気持ちは分かります・・・」
ママ「ママは帰っちゃうから。P君と楽しんできてねー、おほほほほほほほ・・・」
ママ(あ、危ない・・・、芸能界の人間よ?下手したらどんなことされるものか・・・みやびぃが見る目あったって事で終わって欲しくなったんだけど・・・)
雅「・・・・・・」
P「・・・・・・」
雅「どうする、P君?」
P「どうするって・・・」
雅「ふて腐れるのもいいけど・・・楽しまないとぉ、ダメだよぉ?」
P「ふて腐れるって」
雅「P君が空見てたときからそう見えてたよぉ?」
P「・・・・・・」
雅「みやびぃはねぇ、そのまま消えていなくなりたいって人をぉ、助けたいなって思うなぁ」
P「・・・・・・」
雅「だからぁ・・・話しかけようとしてぶつかっちゃったんだけどね」
P(それでも・・・俺らの業界だけでなく、現在の社会なんてそんなものだ。一度の失敗の後に次があるとは限らない)
P(俺はまだ恵まれた方だ。失敗しても、社長やちひろさんが何度も手立てを考えてくれた)
P(でも・・・今度ばかりは・・・)
雅「ほら、いこっ」
P「み、みやびぃ?」
雅「デート。いまを楽しまなきゃ、いつまでも暗い顔だぞぉ」
P「・・・・・・」
P(ああ、もう・・・ヤケクソだっ!)
P「わーった、行くから行くから」
雅「やったぁ。じゃあ、まずアレからねぇ」
P「ウォータースライダーか、行こうか」
・ ・ ・ ・ ・ 。
雅「一緒に滑るぅ?みやびぃ後ろから抱きしめて」
P「・・・やりたいの?」
雅「やりたいなぁ」
P「わかった(ヤケクソ)」ギュッ
雅「わぁっ!?えへへぇ、恋人みたい。みやびぃの肌はどう?」
P「ノーコメント」
雅「えーっ、P君の言葉で聞かせて欲しいなぁ」
P「いろいろとくすぐったい」
雅「それはみやびぃのセリフだよぉ?えへへ、じゃあ、いこ?」
・ ・ ・ ・ ・ 。
雅「あははははっ!P君、抱きしめすぎだよぉ!」
P「あ、アレって意外とスピード出るんだな・・・」
雅「心臓の音、すっごく聞こえたよ?」
P「・・・絶叫マシンとか好んで乗らないからなぁ」
雅「ダメダメ、そういうときは~?」
P「・・・みやびぃといたからかな」
雅「えへへっ、分かってるねぇ」
・ ・ ・ ・ ・ 。
雅「次はあれに行こうよ」
P「大波がやってくるってやつかぁ・・・」
雅「もうすぐ来るってぇ」
P「あれなら大丈夫かな」
・ ・ ・ ・ ・ 。
P「溺れかけた・・・」
雅「すごかったねぇ、P君が守ってくれなかったらみやびぃ大変なことになってたよぉ」
P「無事でよかった・・・ケホッ」
P(というか、ずっとみやびぃが背中にひっついてたんだけどね)
・ ・ ・ ・ ・ 。
P(・・・すっげぇ、普通にデートしてるわ)
雅「ねぇねぇ、次あれいこうよぉ」
P「温浴プール?」
─ 温浴プール ─
雅「ねぇ、P君」
P「ん?」
雅「遊ぶのって楽しいよねぇ」
P「そうだね、楽しいさ」
雅「辛くなったら、遊ぶのが一番だよぉ。楽しいこと、嬉しいこと・・・良い顔したら幸せくるんだよぉ」
P「いい顔、ねぇ」
雅「えへへ、P君の傍に行っていい?」
P「・・・いいけど」
雅「・・・・・・」
P「・・・・・・」
雅「さっきと全然違うねぇ」
P「え?」
雅「なーんて言うのかなぁ・・・楽しんで悪いのが飛んでっちゃったのかなぁ」
雅「“P君の空気、変わったって感じするよぉ”」
P(・・・・・・え?)
雅「うん、いまのP君ならすっごく恋人にしたいかなぁ」
P「・・・・・・」
雅「さっきのくらーい顔も、母性くすぐられちゃったかもだけどぉ」
雅「いまの顔・・・すっごくいいよぉ♪」
P(空中お掃除・・・その意味が・・・もし他人の雰囲気を切り替えられる人って意味だったら・・・)
P(みやびぃが・・・・・・)
P(そんな考えが頭の中をぐるぐるし始めた内に・・・楽しかった時間は過ぎ去ってしまった・・・)
─ プール・玄関口 ─
雅「P君、今日はありがとねぇ」
P「えっと、俺からもありがとう・・・。きっちりリフレッシュしたんだ。もうちょっと頑張ってみるよ」
雅「・・・うんうん、そういうかっこいい顔がいいなぁ」
P「ほめ殺しは良くないぞ?男をオトしたいならね」
雅「そう?」
P「男は年をとるたび、ロマンチストになってくるんだ。何も言わずにそっと傍にいてくれる女性の方がぐっと来るよ」
雅「そうなのぉ!?」
P「ふふふっ、男心と女心は違うんだ。片方だけ勉強しちゃダメだよ」
雅「わかったよぉ、みやびぃ頑張る」
P「・・・・・・」
P(このタイミングを逃したら、もう会えないかもしれない・・・いましかない・・・)
雅「どうしたのぉ?」
P「みやびぃ・・・いや、雅さん」
雅「?」
P(俺は彼女の目を見つめ、手を握った)
雅「ど、ど、どうしたのぉ?////急に恥ずかしいなぁ」
P「雅さん・・・俺と・・・」
雅「う、うん・・・////」
P「俺とアイドルやってみませんか!?」
雅「へ?」
<ドンガラガッシャーン!!!!
P「へ?」
雅「あ、ママだぁ」
P(どこからともなくみやびぃのママさんが現れた。もしかして、ずっと見張ってたのか・・・?)
ママ「ちょ、ちょっと!!そこはお付き合いって場面じゃないのっ!?」
P「えーっと?あれ?」
P(そーいえば、そうだよね・・・こんな体勢)
ママ「それにウチの子がアイドルにって・・・あれ、アイドル・・・アイドルぅ!?」
雅「ママどうしたの?」
ママ「やったじゃないみやびぃ!スカウトよ、スカウト!!」
雅「え?え?」
P「えぇっと・・・はい、俺はアイドルのプロデューサーをやってまして」
雅「え、アイドルのぉ?」
P「○○プロって分かる?」
雅「えーっとぉ・・・相原雪乃ちゃんとかぁ、成宮由愛ちゃんとかぁ・・・」
P「そこのプロデューサー」
雅「・・・・・・」
雅「えええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!?!?!?!?!?」
P(俺が何者かを知らずに突っ込んできたみやびぃこと月宮雅。そんな彼女は母親との猪突猛進コントの末、○○プロの一員となったのだった・・・)
雅編終わりぃ
以上でみやびぃ編終わりです
彼女は二人っきりのムードを大事にするセリフが多いのでこんな配役。
ピンキービキニのあの危ないセリフも入れようか迷いましたが、R-18にするわけにいかなかったのであえて外しております。
・・・でもみやびぃもエロいよね、うん。
あとディープリーコン集合のお話を書いて、この回はすべて終了になります。長くなりましたね
おつおつ
みやびぃは可愛いのに何故か不遇…なんでや
>>146
初期Rの私服がバブルを感じた・・・とは一度聞いた事があるのですが、一番は語尾でしょうね・・・
アイドルとしても恋愛対象としても優良物件なのにもっと増えてくれるといいなぁ
P(ついに約束の日がやってきた)
P(無事に素質がありそうな5人のアイドル候補を集め、マスタートレーナーこと青木麗さんに預ける)
P(実に大変なことだったが、事なきを得た)
P(でも・・・ここからが本番。この計画は既にいるアイドルたちに警鐘を鳴らすのが目的。それを達成できるだけの実力がついてくれるか・・・)
─ 埼玉県・某所 ─
P「アーニャ、よく眠れたか?」
アーニャ「・・・枕が変わると、寝れないですね」
アーニャ「それに昨日、テレビつけたら、エッチな番組がつきました」
P「・・・あー・・・見るためのカード挿しっぱなしだったんかな」
アーニャ「P君は、ああいうの好き、ですか?」
P「んー、まぁ・・・エロ本買うくらいには好きだけど・・・」
アーニャ「変態、です」
P「・・・女の子が近い環境だとはいえ、健全に育った男だからな」
アーニャ「今度、捨てに行きます」
P(シリーズものが気になってる朋が怒りそう・・・)
P「・・・はははっ。それにしても・・・緊張はしてないんだね?」
アーニャ「すごく、してます」
P「そうか?顔に出ないんだな」
アーニャ「P君、離れないでください」
P「ん。分かった。早く行こう、キミの仲間が待ってる」
P(一番遠いアーニャには俺のポケットマネーで前日から来てもらっていた。初めて泊まるビジネスホテルに色々苦戦していたようだが)
P(というわけで、なるべく○○プロのメンバーに会わないよう、そして関東圏から移動が楽なところという事で埼玉のレッスン場を借りたのだった)
P(近くには大学があり、寮もいくつかある。交渉した結果、寮からアパートに作り直したところが空いていると聞き、そこを借りた)
P(準備は・・・万端だ)
─ レッスン場 ─
雅「へぇ~、あずきちゃんってぇ、呉服店の娘さんなんだぁ」
あずき「そうだよっ!あずきの和服の似合う姿と可愛さは絶対通用すると思って、プロデューサーさんにお願いしてて・・・やっと叶ったんです」
雅「よかったねぇ、よぉし、みやびぃも負けないようにしないとっ」
あずき「みやびぃさんって何かあったの?」
雅「実はねぇ・・・ママがアイドル目指してたんだってぇ。だからP君見たときにすぐに気づいたんだって」
あずき「ママさんの後を継ぐ感じ?」
雅「そうだねぇ、ママが出来なかったことをやるんだって思うとぉ・・・力が湧いてくるよぉ」
雅「ちょっとだけ、怖いけどねぇ」
あずき「うん、あずきも怖い・・・けど、それ以上にワクワクしてるっ!」
雅「そうだね♪一緒に頑張ろうねぇ」
あずき「うんっ」
ガチャ
P「お待たせ、もう到着してたんだな」
雅「P君、きたぁ♪」
あずき「プロデューサーさん、待ちくたびれたよっ」
P「ごめんごめん、ほら・・・アーニャ入って」
アーニャ「・・・・・・」
P「こぉら、俺の後ろに隠れちゃダメだって」
アーニャ「・・・・・・」フルフル
P「なーんで、人見知り発症してるんだよ」
アーニャ「えっと・・・」
P「俺に対しての強気な姿勢はどこ行ったんだ?」
アーニャ「P君だから・・・」
P「もう・・・」
あずき「え?海外の人!?」
雅「日本語うまいねぇ、もしかしてずっと日本にぃ?」
アーニャ「いや、えっと・・・」
P「この子はロシア人と日本人のハーフなんだ」
あずき「え、本当!?アーニャちゃん・・・でいいの?」
アーニャ「・・・・・・」コクン
あずき「こっちおいで!あずきたちと話そうよっ」
アーニャ「P君・・・」
P「こっち見ちゃダメ、求められてるのはキミだ、アーニャ」
アーニャ「あ・・・う」
P「これからどんどん求められていくんだからな?“仲間”と一緒に頑張っていくことを忘れちゃダメだよ」
アーニャ「・・・うん」
雅「アニャちゃんいらっしゃーい♪」
アーニャ「・・・・・・はい」
あずき「ねぇねぇ、アーニャちゃんっていくつなの!?」
アーニャ「今年で、15になります」
あずき「えっ、あずきと一緒なのっ!?」
雅「身長差があるねぇ」
アーニャ「同い年・・・」
あずき「お、おっぱいには自信あるもんっ!」
アーニャ「・・・・・・」ジー
P(アーニャは自分の体を見た。・・・身長高めのスレンダー気味な身体に対し、あずきは身長は低いが出るとこは出ている・・・)
P(この二人、良い対比になるかも)
P(その後、彼女ら3人は話に花を咲かせていた。アーニャは半ば聞き専だったが、拒否感は薄れていた)
P(みやびぃの雰囲気とあずきのぐいぐい来る感じがうまくマッチして、入れているんだろう)
P(へこたれない発案者、星空布団、空中お掃除・・・この3つのキーワードで集まった3人はかなり相性がよかった)
P(・・・・・・今度、占い師さんのところにお礼しにいこう)
あずき「プロデューサーさん!」
P「どうしたん、あずき」
あずき「・・・・・・あれ、呼び捨てになってる」
アーニャ「・・・・・・!?」
P「もう俺たちは会社のパートナーだからね。ちょっとラフにするよ」
あずき「パートナー・・・かっこいい!」
P「そうか?ストレス溜めるようだったらその人に合わせるけどね」
あずき「ねぇねぇ、もう一回呼んでよ!」
P「あずき」
あずき「もっかい!」
P「あずき」
あずき「うぅぅぅんっ、プロデューサーとアイドルの関係って感じだねっ!あずきの作戦が成功した証って感じ!」
P「そうか」
アーニャ「・・・」プクー
P「どうした、アーニャ」
アーニャ「・・・♪」パーァ
P「???」
雅(あれ、これもしかしてぇ・・・)
雅「P君、みやびぃはどうかな?」
P「前からみやびぃ呼んでた気がするけど」
雅「だよねぇ」チラリ
アーニャ「・・・」ムー
雅(・・・アニャちゃん、もしかしてP君のこと好き?)
雅「ちょっとあずきちゃんいいかなぁ・・・?」
あずき「どうしたの?」
雅「─────」コソコソ
あずき「え、あ、うん。わかった」
P「しかし、残りの二人は・・・」
あずき「プロデューサーさんっ」ムギュ
雅「えぇい♪」ムギュ
P「ヴェ!?なにやってんの!?」
P(左右の腕に柔らかいものがっ!!)
あずき「えへへ、あずきたちを見つけてくれたお礼だよっ!名づけてダブルサンド大作戦!」
雅「P君は幸せモノだねぇ?」
P「や、やめっ」
アーニャ「ダメ、です・・・!」
あずき「わーっ!」
雅「うわぁ~」
P(ちょっと怒った顔のアーニャが二人を引き剥がしてくれた)
アーニャ「アズキ、ミヤビ・・・P君を、困らせたら、ダメです」
アーニャ「P君は・・・、ん?」
雅「・・・・・・」ニヤニヤ
あずき「・・・・・・」ニヤニヤ
アーニャ「なにか、ありました?」
雅「アニャちゃん、P君のこと好きなんだね?」コソコソ
あずき「良いこと聞いちゃったなー」コソコソ
アーニャ「そ、そんなはずは、ありません」
雅「どうみても嫉妬だったけどなぁ?」
あずき「そーいえば、あずきの事が呼んでたときに顔膨らましてたもんねー」
アーニャ「ちが、違います!」
P「アーニャ?」
アーニャ「何でも、ありません!」
あずき「ニヤニヤしちゃうなー」
雅「だよねぇ~、乙女だねぇ♪」
アーニャ「知りません、知りません・・・知りません」
P「あんまり弄りすぎないでくれよ?これからキミたち5人は足を揃えていく仲間なんだから」ナデナデ
アーニャ「・・・・・・ぅ♪」
雅「あー、アニャちゃんってばぁ」
アーニャ「はっ!!み、見なかった、いいですね!?」
あずき「はーい♪」
アーニャ「アズキ、絶対に言っちゃダメ、です!」
あずき「どうしよっかなー」
P「アーニャも俺に隠し事しちゃダメだからね?いけない事を内緒にし続けて、自分から裏切るなんて事はヤメてくれよ?」
アーニャ「あ・・・あわ・・・ど、どどどど・・・っ!!!////」
雅「P君、それ殺し文句すぎるぅ」
P「え?」
あずき「アーニャちゃん、この数分ですごい勢いで階段のぼってるねっ」
アーニャ(どうしましょう、私がP君を好きになっていたなんて・・・どこで?なにが原因で?)
アーニャ(いや・・・意識しすぎです。アズキとミヤビに誘導されていた、それだけです)
あずき「そーいや5人って言ってたけど、あと2人は?」
P「それなんだがな、連絡がないんだが・・・」
ガチャ
七海「遅れたれすよ~、ごめんなさい~っ!」
P「噂をすればなんとやら。七海、待ってたよ」
七海「プロデューサー、やっと会えたれすよ~っ」ギュー
P「こら」
アーニャ(・・・・・・我慢)
七海「間違えて東京一歩手前まで行ってたれすよ・・・、電車の乗り換え・・・大変れす」
P「あ、そうか・・・迎えにいってあげればよかったな」
七海「こっちからも頼めばよかったれすよ」
アーニャ(・・・でも、P君は私の方に来てくれ・・・あっ)
雅「アニャちゃん、素直になったらぁ?」
アーニャ「なんのことですか?」
雅「顔に出てるよぉ?というか眉間にシワ寄ってるよぉ?」
あずき「アイドルがしちゃダメな顔だよっ」
アーニャ「・・・・・・直します」
P「それで七海、詩織は?」
七海「あぁ、詩織さん忘れてきちゃったれすっ!!」
「大丈夫よ」
P(その一言で、ずっと騒がしかった4人がスッと背筋を伸ばした)
詩織「Pさん、お待たせしました」
P「・・・待ってました、詩織」
詩織「もうみんなの事、呼び捨てのようですね」
P「もう隔てる壁はない。押しては返す波のようにコミュニケーションを取るには、敬称はいらないと思ってね」
詩織「分かりました、今後も・・・詩織とお呼びください」
P(彼女は深く頭を下げた。相変わらず大きなキャベリンハットが頭を彩るが、眼差しは隠れずまっすぐと俺の胸を貫いている)
P「頼りにしてるからね」
詩織「やるからには、ですね」
七海「七海も頑張るれす!」
P「おう、・・・そして、これで5人が揃ったぞ」
詩織「この方たちが・・・私の仲間・・・」
七海「お姉さんばっかりれす・・・」
P「あずきとアーニャとは1個しか変わらないぞ?」
七海「そうなんれすか?」
あずき「七海ちゃんっていうの?あずきだよ、よろしくね」
アーニャ「・・・よろしく、です」
七海「よろしくれすよ~♪」
雅「みやびぃだよぉ?よろしくねぇ?」
詩織「よろしくお願いします・・・」
雅「もの静かって感じだねぇ」
詩織「・・・・・・」
七海「詩織さん、もの静かれすって♪」
詩織「え、・・・ああ、いつもこんな感じです」
P「・・・詩織、付いて来れそうか?」
詩織「・・・大丈夫です。七海ちゃんがそばに居てくれてるので・・・」
P「七海だけじゃダメだぞ、この4人とは支えあう仲間なんだ」
詩織「・・・・・・」
七海「詩織さん?」
詩織「・・・そうですね、ほかの3人には、伝えておかないといけない・・・」
3人「?」
P(詩織は自らが抱え持つ問題について、淡々と話し始めた。かつての自暴自棄っぷりは影もなく、まっすぐ3人に伝えた)
アーニャ「・・・・・・」
あずき「え、えっとぉ・・・」
雅「困っちゃうなぁ・・・」
詩織「そうですよね・・・」
七海「詩織さん・・・」
詩織「やっぱり私は・・・」
あずき「プロデューサーさんは良いと思ったの?」
P「当然だよ。彼女の持つ感性は滅多に共有できるものではないからこそ、表現できるステージに立ってもらいたい」
詩織「・・・・・・」
あずき「じゃあ、あずきはプロデューサーさんと・・・えっと、詩織さん?」
詩織「はい、瀬名・・・詩織です」
あずき「うん、詩織さんのこと信じますっ!」
詩織「・・・いいの?」
あずき「だって難しいこと考えても、あずきには何もできないし・・・だったら、楽しんだ方がいいもんっ!」
雅「みやびぃもそう思うなぁ、こうやって話せてるのに何が変なのかが分からないし」
七海「そうれすよ!七海はどんな事があっても側にいるれす!」
詩織「あ・・・・・・」
P(あれ・・・もしかして)
詩織「・・・ありがとう。私も・・・頑張るわ」
詩織「3人は・・・自分のことを名前で呼ぶのね」
あずき「あ」
雅「あ」
七海「あ」
詩織「・・・あ、気にしないで・・・。その方が助かるわ・・・」
P(・・・あの占いで集まったメンバーって・・・自称が分かりやすいメンバーだったりするのかな・・・)
あずき「えっ・・・あはははっ♪まさか自分の呼び方で人を助けられるなんて」
詩織「?」
あずき「ずっと、親にぶりっ子みたいだから直せー!って怒られてたんです。でも人の為ならあずき頑張っちゃおうかなー!」
詩織「・・・ふふっ」
雅「でも、あれ?アーニャちゃんは自分のこと・・・」
アーニャ「・・・・・・っ」
P(確かに。アーニャは自分こと、私って呼んでたはず)
アーニャ「わ、私は・・・」
あずき「自分のこと、アーニャって呼んでみるのはどうかな?」
アーニャ「恥ずかしい、です」
雅「やってみようよぉ」
アーニャ「え、あ・・・」バタタ
P「おおい、アーニャ・・・」
あずき「またプロデューサーさんの後ろに隠れちゃった」
詩織「・・・無理させちゃダメよ・・・」
七海「・・・むー」
P「どうした七海」
七海「アーニャさんってハーフなんれすか?」
P「そうだが、ロシアとの」
アーニャ[首を縦に振る]
七海「じゃあ、ロシア語とか喋ってみるのはどうれすか?」
アーニャ「・・・・・・」
P「と言う意見があるが、アーニャ」
アーニャ「・・・それなら・・・」
アーニャ「・・・ラズリシーチェ、プリスターヴィッツア」
雅「え?」
アーニャ「アー・・・っと、自己紹介させてください、と言いました。日本語の、はじめまして、です」
あずき「なーんだ、えへへよろしくねっ!」
アーニャ「ダー」
詩織「・・・それならアーニャちゃんだって、分かるかも・・・」
P「アーニャ、無理してないか?」
アーニャ「これなら、大丈夫です。・・・ママといつも・・・話してましたから」
アーニャ「会話に・・・混ぜるようにします、シオリも問題ない、ですか?」
詩織「ありがとう、アーニャちゃん・・・」
P(会話していく毎になぜかまとまっていく子達。・・・まるでこれが必然だと言わんばかりに)
P(あの占い師・・・予言師なんじゃないかな・・・)
雅「七海ちゃん、肌モチモチ~」
あずき「ほっぺはもっとモチモチ~」
アーニャ「・・・ナナミがお人形になってます」
七海「わ゛ぁ゛ー!!七海はクマノミさんじゃないれすよぉ!!」
P(・・・クマノミ・・・あ、イソギンチャクか)
あずき「七海ちゃん抱き付きやすいしっ♪ハグハグ大作戦だよっ」
七海「うひゃぁ、くすぐったいれすっ」
あずき「逃がさないよー♪」
雅「みやびぃもハグしちゃおっ」
あずき「ほらほら、アーニャちゃんもっ!」
アーニャ「・・・ナナミ」
七海「はい?」
アーニャ「・・・ワシャワシャ」
七海「うぎゃー、逃げ場がないれすっ!七海は抱き枕でもお人形でもないれすよ~」
あずき「詩織さんも、プロデューサーさんもやろうよっ!」
雅「七海ちゃん、柔らかいよぉ?」
詩織「私は・・・いいから」
P「俺が混じったら色々問題起こるでしょ」
あずき「べっつにいいのにーっ♪ねー、七海ちゃん!」
七海「そうれすよ!七海の心は海よりも広いんれす!!」
雅「じゃあ、次はお化粧しよっかぁ」
七海「でも今はもみくちゃれすよ~!ぎゃー!!」
詩織「七海ちゃん、嬉しそうね・・・」
P「そうか?なんだか困ってるみたいだけど」
詩織「・・・あそこじゃ、ずっと同年代の友達少なかったみたいで・・・」
P「あ・・・そうだったな」
詩織「ホント、幸せそう・・・」
P「喜びの悲鳴・・・ねぇ」
詩織「・・・・・・」
P「・・・・・・詩織」
詩織「・・・はい?」
P「まだ拒んでるね?」
詩織「・・・・・・」
P「あの空間に入るのを、キミは怖がってる」
P「七海は色々あってキミにとって信頼できる人になっている、だが残りの3人は信頼できない。違うか?」
詩織「・・・・・・はい」
P「俺は・・・キミにも、あんな感じになって欲しい」
詩織「・・・そう?」
P「俺はいろんな手を使って、キミに合う子たちを集めてきたんだ。もっとあの子たちとキミの距離を縮めてほしい」
詩織「・・・・・・」
P「いろんな人に手伝ってもらったからこそ、キミに伝わってほしい」
P「それに気にしてないと言ってただろう?」
詩織「・・・お世辞かと」
P「そんなはずはないさ。彼女たちは具合はどうあれ、共に艱難辛苦を乗り越える仲間で、彼女らにとってキミの目の事は些細なことでしかない」
詩織「・・・・・・」
P「現に、七海は髪型を、アーニャは会話を変えただろう?」
詩織「・・・っ!」
P「キミの存在は大きく、彼女らをより高みに。そして彼女らはキミの手を引く」
P「互いに手を取り合って、一歩一歩踏み出していくんだ」
詩織「・・・・・・分かりました」
P「ははっ、重い話になっちゃったね。あの子たちは皆良い子だ、それは保障する」
詩織「・・・穏やかな波のようになって、近づけたら、と」
P「それでいい。いきなり何もかもできるはずがないからな」
P「ゆっくり、皆との絆を深めてくれ」
アーニャ「ナナミの髪、さらさらです」
あずき「ホントだ!ねーねー、ツインテールにしよっか!それともお団子?」
雅「それよりもこの輪っか増やしてダブルリングにしようよぉ」
七海「あーっ、そうしたら詩織さんが分かんなくなるれすよ~!」
P「こぉら、そこらへんにしなさい。もうすぐトレーナーさん来るよ」
4人「はーい」
青木麗(以下マス)「もう来てるがな」
P「・・・これは、お待ちしてました」
マス「これがキミが集めてきたアイドルたちか」
P「はい。付け焼刃ではありますが、各個人自分なりのアイドルへの理解はあります」
マス「ふん、そんなものはいらんぞ。アイドル活動とは芸術作品のようなものだと私は理解している」
マス「下手にモノが入った箱よりも、何も入ってない箱の方がモノが詰め込める。違うか、プロデューサー殿」
P「・・・そのとおりですね」
P(かのシンデレラガールたちも、元は普通の女の子。彩るまでは大変だったようだが、同時に感性に邪魔するものがなかったというわけだ)
アーニャ「・・・P君、この方は?」
P「皆の面倒を見てくれるトレーナーさんだ」
あずき「トレーナーさん?」
マス「一同、整列!!」
雅「え?」
七海「?」
マス「もう一度しか言わないぞ!一同、整列!!」
あずき「は、はい!!」
アーニャ「・・・!」
マス「並んだな」
P「ええ、並びました」
P(左から、アーニャ、七海、詩織、雅、あずき)
マス「必然的なのか、これは」
P「さて、どうでしょうか」
あずき「どうかしたの、プロデューサーさん」
P「この5人がユニットになるのは・・・理解してるか?」
あずき「うん」
P「それで、詩織がリーダーなんだ」
詩織「・・・私が?」
雅「え、そうなんだぁ!ちょっと安心かも」
あずき「うんっ、詩織さんなら大丈夫そう!」
詩織「どこでそんな・・・」
アーニャ「シオリの声を聞いて、皆さん背筋が伸びてました」
七海「七海ははじめっから詩織さんのこと信頼してるれす」
詩織「私には・・・」
P「『私には似合わない』とは言わせないからな」
詩織「あ・・・ぅ・・・」
P「誰だって、初めてなものはたくさんある」
P「それに・・・今からみんな、アイドルに生まれ変わるんだから、な?」
詩織「生まれ変わる・・・」
P(詩織はうやむやになっていた何を決意するかのように、瞳に光が篭った)
詩織「わかりました・・・」
マス「問題は、なさそうだな」
P「ええ、目論見通りです」
マス「よし・・・コホンッ!」
マス「お前たちは今から、今までの自分の殻を脱ぎ捨て、アイドルになってもらう」
マス「これからどんなに苦しくとも、辛くとも、決して仲間と共に輝くことを忘れるな」
マス「一人前の・・・いや、最高のアイドルになるようビシバシしごいてやるからな!覚悟しておけ!!」
5人「はいっ!!!」
P(これがアイドルグループ『ディープリーコン』の旗揚げの瞬間だった)
P(たくさんの辛い経験が重なっていくも、各々の能力が活かされて破格のペースで彼女らは一人前のアイドルの階段を昇る)
P(途中・・・いや、今でも誰かに唆されたのかアーニャの挙動がおかしかったり、あずきの性に対する奔放的な態度が気になるところだったがそれを忘れさせるくらい目覚ましい成長を見せて行った)
P(これなら、○○プロのみんなの目を覚めさせるという目的も達成・・・)
P(いや、それだけじゃない。俺や社長の思惑を超える、最高のアイドルグループに・・・)
数ヶ月後、彼女らが旅立った先。
─ イタリア・パリ ─
あずき「アーニャちゃんアーニャちゃん!もー、ごめんってばぁ」
アーニャ「許しません。ブラット・・・P君にキスする事には、納得しましたが、あそこまでやるとは思ってません、でした」
あずき「あうう、ヤメどき分かんなかったんだったばぁ」
雅「もう、ラブチュッチュッだったもんねぇ♪」
あずき「あぁ、思い出しただけで顔が真っ赤になるよ」
七海「アーニャさん、怒っちゃダメれすよ」
アーニャ「セルディーティ?怒っては、いませんよ?」
詩織「ふふっ・・・」
あずき「詩織さんも何か言ってくださいよっ!」
詩織「・・・帰ったら、受け取りにいく。そうでしょう・・・?」
アーニャ「カニェーシナ。私のファーストキスは・・・P君の元に、預けた事になりましたから」
雅「へへ~♪次はみやびぃもじっくりチューしちゃお♪」
アーニャ「じー」
雅「大丈夫だよぉ、アニャちゃんがP君好きなのは忘れてないからぁ」
七海「七海もプロデューサーのこと、好きれすよ?」
雅「七海ちゃんのは・・・どうなのぉ?」
アーニャ「・・・ナナミには、負けません」
七海「こうなったら切磋琢磨れすよ~!」
あずき「えへへっ、2人とも応援してるよっ!」
アーニャ「アズキが怖い、私だけでしょうか?」
雅「確かに後ろから掻っ攫いそうかもぉ」
あずき「え────っ!!?」
詩織「ふふっ・・・」
詩織(Pさん、もう少しだけ待っててくださいね・・・。海の向こうの世界で光をたくさん蓄えてきますから・・・)
ディープリーコン編終わり
以上です。
アーニャちゃんは初期Rがもし日本語だけを話していたら+αをコンセプトに過去話を描いてました。
あと彼女は何枚もカードがありますが、多く「(プロデューサーと)一緒に」という単語を使っています。これを独占欲と解釈したのでこんな嫉妬深くなってたり。
それとあずきちゃんは以前言ったように2種のエロス、みやびぃはマザコンよりも聞き上手でおだて上手な面を多く出してます。
難しいんですよねぇ、この二人・・・ぜひともSS書く人は挑戦してみてください。フリルドスクエアでもそうでなくてもあずきちゃんをハプニングメイカー以外で描けるならあずきちゃんマスター名乗っていいと思います・・・w
これ以上、この5人で書いてたら一向に元のストーリーに戻らなそうなのでこの辺りで終わります。
ちゃんと○○プロに戻ってくるので安心(?)してくださいね。
次回はプロデューサーがいない中、襲撃してくるNNNプロに対し音葉と美羽が頑張るお話です。
それでは。
よしのんがいればPくんの怪我も減るだろうし、CoPにも負けない
これからはハラハラせず読めるぜ
乙
久々の更新で眠気が一気に醒めた!
このPさんには気持ち程度の不幸を引き起こすわtほたるちゃんと
絶大な幸運を呼び覚ます茄子さんが一緒になればいいと思います…
乙
次回は久しぶりにヤンキープロデューサーが出てくるのか
何とかコイツをP側派に取り込んでCoPに対抗したいトコだけど、
性根が真っ直ぐな分、脳筋で視野狭窄ぽいから
CoPの策略に簡単に引っ掛かって却ってPの足引っ張りそうだからやっぱいいや(笑)
改めて読んでくれてありがとうございます。
>>178
は た し て そ う か な ?
しばらくはCoP自体は敵ではない形になってます多分。
でも頼子ちゃんの様子がおかしいようで・・・?
>>179
あれ、おかしいな・・・未登場のほたるちゃんが既に攻略済みになってますぞ・・・?
それはともかく、どこかで登場はさせたいですね。
>>181
CoPが師匠になっちゃってるんで口出せないんじゃないですかね、あのキャラ。
となるとアスタリスクは・・・出せなくはない・・・?
ことわざシリーズ、まもなく2年になります。
ここまで読んでくれた方にただただ感謝します。完結まで頑張っていくのでよろしくお願いします。
前から思ってたんだけど、html依頼だしてからSS投下するのってダメなんじゃないの?
>>1は常習的にやってるけどそこんところどう思ってるんだろう?
>>185
ガイドラインを見る限りは大丈夫だとは思うんですけどね。
見落としがあるかもしれないので、そのような記述が書かれている文書があれば教えてください。参考にさせて頂きます。
あと、おまけをやる!って宣言した回はおまけが終わるまでHTML化依頼は出してません。
が、やったことがないか、と言ったらウソになりますね。少なくとも1年前の作品らと前回のおまけ2は言われた通り依頼出した後の投下になりますね。
ご意見ありがとうございます。
正直、wikiから追ってるのでおまけ見逃してた。
wikiに更新されない。かつ、おまけやる宣言がないおまけは追うのは難しいですね。
>>187
読んでくれてありがとうございます。
この際なので聞きますが、おまけがあるかどうかの表記はwikiの方で必要だと思う方はいますか?
必要であれば、すぐにでも取り掛かります。
wikiの方を更新してみました。
いかがでしょうか?ミスや意見の方がありましたらおっしゃってくれると助かります
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