モバP「仇桜の花弁」 (50)

モバマスSSです。

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久しぶりな気がします。

申し訳ありません。

車内

周子「くぁ……」

P「眠いなら寝ててもいいぞ」

周子「んー、寝起きの顔で撮影はしたくないんだけど…」

P「確かにそうだが、眠さ堪えた顔での撮影もアレだと思うぞ」

周子「んー確かに」

P「ま。余裕を持って着く予定だからその時にシャキッとすればいいさ」

周子「そういうことなら…おやすみ」

P「あぁ、おやすみ」

P(…なんだか俺も眠くなってきたなぁ)

周子「……」スー

P「流石に運転中に寝る訳にはいかないけどな」

P「飲み物飲んでれば平気か」ゴクゴク

周子「……ん」

P「しかしよく寝てるなぁ…」

P(夜更かしでもしたのか。周子のことだし)

P「アイドルとしての自覚を持って欲しい気もするけどな」

P(例えば杏とかにも…)



ロケ地

P「おーい着いたぞ」

周子「ん…ありがと」シパシパ

P「まだ寝惚けてるな。熟睡してたししょうがないか」

周子「んー。そうだね。寝起きあんまり良くないし」

P「ちょっと外でも歩くか」

周子「うん。そだねー」

あ、すみません。

古典シリーズです。

周子「んー」ペキポキ

P「景気よく鳴らすな」

周子「あんまり慣らし過ぎるといつか折れそうだよね」

P「どんだけ鳴らす気だよ…」

周子「限界まで?」

P「限界超える前に止めるよ」

周子「まぁ、そもそもそんなに鳴らせないと思うけどね」

P「ベキっとか音がしたら一発で折れてそうだな」

周子「そもそもそんな音は出せないから安心して」

周子「そういや今日の撮影って和服着るんだっけ?」

P「和服と言うか大正っぽい奴?」

周子「どんなの?」

P「こんなの」

周子「…あ、これね」

P「そうそうこれ」

周子「Pさんの趣味?」

P「色味とかは言ったけどそれ以外は先方の希望だ」

周子「ふーん。そっか」

周子「ちなみに男の人ってこういうの好きなのかな」

P「どうなんだろうな」

周子「…男の人に聞いてるんだけど」

P「あぁ、そうか。そうだなぁ…いいと思うぞ」

周子「ふーん。大和撫子に憧れるのかな」

P「そういうのもあるかもな。昔からそうだし」

周子「こうお淑やか―な子が好きなんだね」

P「俺か? そりゃ嫌いじゃないけどな」

周子「好きか嫌いなら好きなんじゃん」

P「その二択ならな」

周子「そっかそっか」

周子「ただ、残念ながらしゅーこちゃんはお淑やかにするのはあんまり得意じゃなかったのでしたー」

P「まぁ見ればなんとなく」

周子「あ、でも猫を被るのは出来るから安心してね」

スタッフ「えーとですね…貸衣装屋に行けばありますよ」

周子「近いんですか?」

スタッフ「そこですね」

P「近っ」

周子「Pさん借りてきなよ。お金なら出すからさ~」

P「そういう問題じゃないんだけどな」

スタッフ「まぁ、仮装ってしたくなりますよね」

P「それは否定しませんけども…」

周子「やってよー」

P「…まぁ、そこまで言うなら」

周子「さっすがー♪」

周子「いい感じじゃん、意外と似合うし」

P「そうか? 俺のことはいいからとりあえず撮影行ってこい」

周子「はーい」

周子「あ」クルッ

P「どうした?」

周子「感想。まだ聞いてないんだけど?」チラ

周子「ハイカラなしゅーこちゃんだよ~」

P「似合ってるよ」

周子「くるしゅうなーい♪」

数十分後

周子「ふぅ…」

P「お疲れ様」

周子「そこまで疲れてないけどね。あ、そう言えばちょっと時間あるから歩いてきてもいいってさ」

P「そうなのか」

周子「折角だしそこの自転車を借りてドライブでもどう?」

P「二人乗り?」

周子「ここはPさんが運転してあたしが後ろに乗ろうかなって」

P「なるほどなぁ」

周子「ほら、なんか雰囲気が出そうじゃん」

P「雰囲気?」

周子「ほら…なんて言うかさ、あー、大丈夫なんでもない」

P「…あぁ、なるほど」

周子「どうしてそうあたしが黙ってから察するのかなぁ」

P「悪い悪い」

周子「ま、Pさんだからね。しょうがない」ヤレヤレ

P「いい天気だな」

周子「そうだねー」

周子「なんか…こう、いいよね~」

P「言いたいことは分かる」

周子「さすがだね」

P「なんだかんだでそれなりに付き合いあるしな」

周子「そうだねぇ。昨日今日の付き合いじゃないし」

P「まさかロケ先でスカウトするとは思わなかったよ」

周子「まさか家出た時にぶつかった人とこうして一緒にいるとは思わなかったね」

P「そう考えてみると結構凄いな」

周子「考えてみなくても凄いよ。ある意味不審者に近い気がする」

P「通報されないようにするさ」

周子「今更努力してもムダな気もするけど」アハハ

P「よっ!」キィィ

周子「がんばれ、がんばれ~」

P「周子軽いしそこまで負担じゃないって」

周子「重い方がお好みでしたか?」

P「いや、軽い方が楽だけど」

周子「だよね」

P「お、なんか良さげな道に出たな」

周子「ほんとだ。Pさんストップ」

P「どうした?」

周子「折角だし、自転車押して歩こうよ。まだ時間あるし」

P「分かった」

P「一つ聞いていいか?」

周子「一つと言わず何個でも」

P「なんで周子が自転車持ってるんだ?」

P「俺が運転してたから俺が持つのかと思ったけど」

周子「んー、なんとなく?」

P「なんとなくか」

周子「うん。学校に行く途中にPさんを見つけたシューコちゃん的なシチュエーション?」

P「そう言う感じか」

周子「あたしばっかり先に行っちゃってもPさんが付いてこれないでしょ?」

P「確かにな」

周子「……」

P「周子?」

周子「このままさ、どっかに逃避行しちゃおっか」

P「は?」

周子「この長い長い下り坂を下ってずーっと行ってみない?」

周子「なんかこのまま進んでいったら知らない所に行けそうじゃん」

P「流石にそれは無理だな」

周子「えー。ケチだね」

P「ケチって言うか何と言うか」

周子「このまま二人でさ、山でもどこでも行っちゃおうよ」

P「また今度な」

周子「いつにしよっか?」

P「そうだな。いつかな」

周子「それって、考えとく。って親が言うのと同じ感じがする…」ハァ

P「ははは」

周子「この長い長い下り坂を~」

P「下ってない少し登ってる」

周子「キミを自転車の後ろに乗せて~」

P「ご機嫌だな」

周子「うん。なんかドタバタしてて楽しい」

P「なんとか間に合ったな」

周子「そだね。ありがと。それじゃ頑張ってくるね」

P「おう」

周子「応援よろしく~」

P「あぁ、分かったって」

夕方

周子「んー、終わったー」

P「お疲れ」

周子「ん。ありがと」

P「やっぱり普段着ない恰好は疲れるか?」

周子「そうだねぇ。でも、ま、和装自体は昔着てたりとかしたしそんなに」

P「そうなのか」

周子「ほら、あたしの家和菓子屋だし」

P「そうだな」

周子「Pさんが見たいなーって言うなら家で着ててもいいけど」

P「いや、周子が家で着てても俺に関係なくないか?」

周子「なんだかんだで結構会ってると思うけど」

P「確かにそうか。そこは任せるよ」

周子「任されておきます」

P「さてと…今日の宿は…」

周子「どんなとこ?」

P「普通の旅館かな」

周子「ふーん」

P「あ、ここだ」

周子「おー、なんかいかにも。って感じだね」

P「そうだな」

旅館

P「俺はここだな」

周子「あたしは隣だね」

P「そうだな。一応、もう自由行動だから明日の予定でも確認しておくか?」

周子「予定って言っても、朝ちょっと撮って帰るだけだよね?」

P「まぁな。明日は八時くらいに下で集合の感じでいいか?」

周子「面倒だからPさんの部屋でいいよ」

P「そうか。それじゃ俺の部屋の前で集合な」

周子「了解」

P「おう。それじゃお疲れさま」

周子「おつかれー」

Pの部屋

P「…ふぅ」

P(俺は慣れない恰好したから肩とかちょっと張ってる気がするな)

P「若くないのかな」

コンコン

P「ん?」

周子「こんばんはー」

P「どうした?」

周子「ん?自由時間だからPさんの部屋に来ただけ」

P「そうか」

周子「ありゃ、てっきり怒られるかなとか思ったけど」

P「別に怒りはしないさ」

周子「そ。それは良かった」

P「どうする?ご飯でも行くか?」

周子「んー。今はまだ平気かな」

P「そうか」

周子「そだ。折角だし何か話そうよ」

P「漠然としてるな」

周子「ノープランだからね。んー…あ、桜が凄く綺麗だね」

P「ん?あぁ、そうだな。ただちょっと散りかけてるな」

周子「まぁ、そこはしょうがないよね。時期が時期だし」

P「そうだな」

周子「そうだねー。折角だしお花見でもする?」

P「花見か。そう言えばしてなかったな」

周子「してないね。皆忙しいし」

P「だな。……ん?」

周子「どうかした?」

P「いやな……」パチ

周子「ひゃっ!?」

周子(え、電気どうして?)

P「あ、悪いな」

周子「え、えっと…なにを?」
周子(まさか…だよね?)

P「ん。よっと」パチ

周子「おー、間接照明みたいだね」

P「行燈だな」

周子「なんかロマンチックだね」

P「そうだな」

周子「……」

P「……」

周子「どうしたの?」

P「ん。その…恥ずかしい話だが少し見惚れていた」

周子「本当に恥ずかしい話だね」カァァ

P「まったくだ」

周子「物憂げな感じが好きなの?」

P「この幻想的な雰囲気に凄い合ってたんだよ」

周子「なるほどねぇ。それじゃ、もう少しおすまししてた方がいい?」

P「大丈夫だよ」

周子「そこはもっと見たいなーとか言われないと張り合いがないんだけどね」

周子「ま。たまにはあたしもこういう顔もするってことを覚えておいてね」

P「あぁ」

周子「女の子は色々な顔を持ってるからね」

周子「すましてたり物憂げだったり笑ってたり怒ってたり」

周子(それに恋してたり…ね)

P「お、これ見てくれ」

周子「ん?あ、くるくる回ってる」

P「なんだっけ。そうだ。走馬灯だ」

周子「走馬灯ってあの死ぬ間際に見るアレ?」

P「そうだな。生憎死にそうになったことはないから見たことないけど」

周子「なるほどね」

P「周子はあるのか?」

周子「実は昔……なんてそんな都合いい話はないけどね」

P「びっくりした」

周子「しかし走馬灯かぁ……」

P「どうした?」

周子「ううん。色々あったなって。Pさんと会ってから」

P「そうだな」

周子「うん。服返しに行ったらカメラの前に立たされるなんて思ってもみなかったよ」

P「懐かしいな」

周子「懐かしいね。そこからあたしの世界はガラリと変わっちゃった。誰かさんのせいでね」

周子「これから先も色々あるのかな」

P「あるだろうな。間違いなく。良いことも良くないことも」

周子「良くないことは起きなくていいかなぁ…」

Pの部屋

周子「んー…真面目な話したら甘い物食べたくなっちゃった」

P「チョコレートならあるけど」

周子「んー」アーン

P「どうした?」

周子「たまに杏にあげるみたいに口に投げ入れてもいいよってこと」

P「…歯並びいいな」

周子「んっ!?」

周子「…ま、まじまじと見ないでよ」カァァ

周子(すっごい恥ずかしくなってきた)

P「まぁ、ほれ」

周子「ん。甘くておいしいね」

周子「こういう仕事するようになってからさ」

P「うん」

周子「なんて言うのかな…ファンの人用の顔とかも何となく作れるようになったんだよね」

P「営業スマイル的な?」

周子「言い方が良くないけどね。シチュエーションにあった表情って言うのかな」

周子「さっきの表情もだけど、物憂げな雰囲気のシチュだったらそういう感じみたいな」

P「なるほど。アイドルとして成長したってことか」

周子「そうとも言うね。成長か…いい言葉だねぇ」

周子「あ、そうそう。だけどさーPさんの前だとまだ上手くそういうの出来ないんだよね」

P「俺の前?撮影にいない方がいいかな?」

周子「あ、そういう意味じゃなくて。撮影してる時あたしが見てるのはカメラだから問題ないよ」

周子「なんて言うかな…あたしがPさんを見る時はそんなにうまく表情を作れてる気がしないなぁって」

P「随分と表情豊かだとは思うけど」

周子「うん。作ってないからね。全部本心」

周子「Pさんは今の私の顔はそんなにはっきりとは見えないでしょ?」

P「うーん。見えなくはないけどな」

周子「うえ。ちょっと恥ずかしいなぁ…」ポリポリ

P「やけに真面目な顔してるから少し気になってさ」

周子「だってほら真面目な話してるじゃん」

P「まぁ確かに」

周子「恋する女の子は皆真面目な顔をするんだよねー」

P「えっ…」

周子「一般論の話。あたしは恋をするってのは相手に白旗をあげるのと一緒かなって思うよ」

P「なるほどな。惚れた弱みとでも言うのか」

周子「そうだね。そんな感じ。Pさんは誰かに白旗あげてたりしないの?」

P「まぁなぁ……」

周子「だろうね」アハハ

Pの部屋

周子「話変わるけどさ」

P「どうした?」

周子「この影絵ってすごいね」

P「それは俺も思ってた」

周子「あ、見てよ。あたし達の影も映ってる」

P「お、ホントだ。月の光か何かかな」

周子「おーい」

P「お、影も手を振ったな」

周子「そりゃあたしだからね」

周子「んーそろそろ目も疲れてきたし電気つけよっか」

P「そうだな」パチ

周子「なんか久しぶりに真面目な話したからお腹空いちゃった」

P「八つ橋でも食べるか?」

周子「いや、それはいいかな。昔も食べてたし…」

P「言ったはいいが持ってないしな八つ橋」

周子「ないんかい」

P「断るって思ってたしな」

周子「まぁ断るけどね」

P「だろ?」

周子「折角だしどこかに買いに行く?」

P「そうだな。まだそこまで遅くないわけだし」

周子「うんうん。それじゃしゅっぱーつ♪」

街中

周子「こう…いざ買い物に出ると目移りするよね」

P「そうだな。なんかこれもいいなぁって思うな」

周子「大福もいいなぁとか思い出してきたよ」

P「いちご大福美味しそうだなぁ…」

周子「むぅ…よし。あたしは団子にするよ」

P「そうか…俺は大福にするよ」

周子「Pさんの裏切り者」ジー

P「裏切ってはないさ」

周子「あははー冗談だって。それじゃどっかでたべよっか」

P「宿じゃないのか?」

周子「んーほら、こう雰囲気の良い所で食べたいじゃん」

P「まぁそんなものか」

周子「風情がないね」ハァ

P「悪かったな」

周子「まぁ今に始まったことじゃないか。お昼に撮影した場所行ってみようよ。夜桜が綺麗かも」

P「確かにそうかもな」

周子「善は急げだよPさん!」

ロケ地

周子「んーあたしの勘は当たってたね」ドヤ

P「確かにこれは綺麗だ」

周子「なんか幻想的だね」

P「そんな中で団子と大福を喰ってるって図は結構シュールだな」

周子「そうかも。中途半端に現実身があるよね」アハハ

P「しかし夜桜か。綺麗だな」

周子「字面からもう綺麗だよね」

P「そうだな」

周子「なんかさ…」

P「うん」

周子「本当はこの桜に乗せて色々言いたいことを言えたらいいんだけど」

周子「どーにもあたしは少女漫画みたいなことは苦手なんだよね」

P「どうしたいきなり」

周子「どうしたんだろうね。ほんとにさ」ヤレヤレ

周子「もしかしたら夜桜に当てられたかもしれない」

P「そうか」

周子「うん。もしかしたらこの綺麗な桜だって今日の夜急に嵐が来て明日にはなくなっちゃうかもしれないじゃん」

P「まぁ、あり得なくはないな」

周子「それとおんなじでさ、上手く言えないけどPさんが明日あたしの横からいなくなっちゃうってこともありえるのかなぁって思ってね」

P「死ぬのか俺」

周子「あたしが死ぬのかもだけどね」

周子「そんなこと考えてたらさ、思ったことは言っておかないと損じゃないかなって思ってさ」

周子(言葉にしなきゃ伝わらないけど…)

周子(言葉にしたら伝わるのかな…?)

P「そんなことがあるのか」

周子「しゅーこちゃんにも色々あるんです」

P「そうか…」

周子「んーと……ありがとね」

周子「こんな世界でやってく自分なんてなかったし想像もつかなかった」

周子「望んだ夢が叶う度にまた新しい夢が思い浮かんできた」

周子「今はとっても輝いていて、そりゃまだ一番じゃないけどいつかは。って気持ちもあるよ。見えないかもだけど」

P「そんなことはないけどな」

周子「バレてるとバレてるで恥ずかしいね…」ポリポリ

周子「ま。以上が言いたかったことかな」

P「そうか。これからもよろしくな」スッ

周子「どうしたの?」

P「いや、こういう時は握手がいいのかなと」

周子「まぁ、悪くはないのかもしれないけどね」ギュ

P「それじゃ帰るか」

周子「そうだね」

夜道

P「……なぁ」

周子「ん?」

P「いつまで握ってるんだ?」

周子「んー、この道が終わるまでかな」

P「結構あるな」

周子「あっという間だよきっと」

周子「なにさ、Pさんはシューコちゃんと手繋ぐのは嫌なの?」

P「いやアイドルと手繋いでたら問題だろ…」

周子「そうかな?もしかしたらあたしが足痛めたのかもしれないじゃん」

周子「痛めてないけど」

P「…まぁ、人もいないからいいか」

周子「そうそう」

P「綺麗な月だな」

周子「だね」

旅館

P「それじゃおやすみ」

周子「うん。おやすみ」

周子「あ、Pさん」

P「ん?」

周子「えっと…明日は八時だよね?」

P「そうだな。寝坊するなよ?」

周子「したら起こして」

P「…考えとく」

周子「それじゃおやすみ」

周子の部屋

周子「……」ピポパ

文香『はい…鷺沢です』

周子「あ、文香さんこんばんはー」

文香『はい。えっと…どうかしましたか?』

周子「んー桜…綺麗だなぁって」

文香『あぁ…そうですね。ちょっと葉桜になってしまって…残念ですけど』

周子「だねぇ。ちょっと話ってか愚痴を聞いて貰おうかなって」

文香『そ、そうでしたか…』

周子「あー、神様、仏様、鷺沢様。あたしは嘘吐きです」

文香『えっと…私はその、そんなに大それた存在じゃ…』

周子「正直なところ、Pさんに本当に言いたかった言葉は感謝だけじゃなかったんだよねぇ」

文香『え……?』

文香(なんの話でしょうか…?)

周子「ん。ちょっと色々あってね。聞くだけでいいから」

文香『は、はぁ…』

周子「でも、言ったとしても結果は見えてるから」

周子「プロデューサーとアイドルを結ばない」

周子「そんな風にPさんは言いそうだし」

文香『言いそうです…ね。誰も傷つけないために…』

周子「でもさ、近くにいれるし今のままでもいいかなってちょっと思ってたんだ」

周子「だけど困ったことに積もってたんだよね」

周子「知らず知らずの内に。いや、知ってたのかも。気づかないフリしてただけで」

文香『なにが…ですか?』

周子「なんだろうね。何かがさ、まるで桜が見る人の心に夢の中に匂いを残すようにしっとりと積もってた」

周子「ま。こんなこと文香さんに言ってもしょうがないんだけどね」

文香『好き…なんですね』

周子「そうは言ってないけどね」

文香『え、えぇっ…!?』

周子「あはは。好きなのは文香さんの方でしょ?」

文香『あ、や、の、ノーコメントです…き、切りますよ?』

周子「ごめんごめん。いきなりこんな話してごめんね」

文香『そっちの方は大丈夫ですが…大丈夫ですか?』

周子「うん。平気平気。すっきりしたから」

文香「それは…良かったです」

文香『あと…私見ですが、周子さんの心に匂いが残っていれば想いも…残っていると思います』

周子「うん?」

文香『周子さんの心に残っているということは、Pさんの心にも残っていると同義だと…思います。

文香『何故なら同じ桜を、景色を見ているのですから…。想いは募りますから』

文香『散ってしまった仇桜の花びらのようにi』

周子「おー、なんかよく分かんないけどすごいね」

文香『屁理屈かもしれませんが…夢があると思います』


周子「あ、そうそう。折角だし聞いておきたかったんだけど」

文香『…はい。なんでしょうか』

周子「Pさんのどこを好きになったの?」

文香『…っ』ゴホゴホ

周子「だ、大丈夫?」

文香『だ、大丈夫じゃありません…! 切ります…』

周子「ごめんって!だから切らないで」

文香『か、からかうのもほどほどにしてください…!』

周子「あ、そうそう電話した本当の理由なんだけどさ」

文香『…はい』

周子「今日あたしさ、大正浪漫の恰好をイメージした衣装で撮影したんだけどね」

文香『はい』

周子「大正浪漫ってどんなんやって聞いてみたかったんだよね」

文香『大正浪漫ですか…』

周子「そそ。文香さんなら知ってるかなぁって」

文香『…大正浪漫とは階段を一段登ったということではないでしょうか』

周子「ふーん?」

文香『考えは違えども、思い思いの分野で上に続く階段を一歩だけ登ったんだと思います』

周子「どういうこと?」

文香『あまり歴史に詳しいわけではありませんが、政治的にも文化的にも進歩が見られた時代だったと思います』

周子「あ、そうなんだ」

文香『えぇ、だからそういうことかと。新しいステージに踏み出す切っ掛け…ですかね』

周子「なんだかアタシ達にも言える気がする…」

文香『今の私達に置き換えると…そうですね、シンデレラになるためのステージに登る一歩という感じですかね』

周子「ふーん。なんだかとてもロマンチックだね」

文香『えぇ…そうですね。とても浪漫的です』

終わりです。
読んで下さった方ありがとうございました。

周子たち三人が出たガチャや劇場487話、周子の特技名が非常にいいセンスだと思いました。

加えてセリフが非常に良かったと思います。また、私もそこまで公式とズレないようで安心したしました。

簡単な解説です。

【巻第一 春歌上】

ちると見てあるべきものを梅の花  うたてにほひのそでにとまれる

意味:花が散るのを眺めて終わってしまうべき。
    梅の花はよけいなことにいつまでも袖に移り香となって残っているということです。

【仇桜】
特技の名前にもありました仇桜についてです。

明日ありと思う心の仇桜。という熟語があります。

『明日も咲いているだろうと思っていた桜も、夜のうちに嵐が吹いて散ってしまうかもしれない』という意味です。

仇桜は徒桜とも書き、散り易い桜を表しています。

その他色々参考にさせて頂いております。

ありがとうございました。

なにかあればどうぞ。

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