男「今日から一人暮らしか」(131)
男「まぁ俺も社会人だ、大丈夫だろ」
男「よし、ここはおふくろに言われた通り、挨拶がてら引越しそばを送ってきますか」
男「そうと決まれば早速行動だ。とりあえずこの階だけでいいのかな・・・」
ピーンポーン
男(お隣さん、どんな人かな・・・)ワクワクドキドキ
ガチャッ
女「・・・・・・」
男(おぉ、女の人か。俺と同じぐらいの年齢かな?ていうか髪なげぇな。へそぐらいまであんじゃないか?)
男「あの、隣に引っ越してきた男といいます。これ引越しそばなんだけど、よかったら」
女「・・・・・・」
男「あのー、迷惑でしたか?」
女「・・・・・・」ヒョイッ
男「あっ・・・」
女「・・・・・・」フイッ
ガチャッ
男(何だ、挨拶も何もせずにそばだけ持って行きやがった。都会ってのはこんなもんかよ)
おばさん「まぁ、ご丁寧にどうも。今時にしては珍しく礼儀正しい人ね。こんなところでなんだし上がってって」
男「いや、他の人のところにも行かないといけませんし。またの機会に誘ってください」
おばさん「あらぁ、遠慮しなくてもいいのに。ところで、あなたの隣の人にはもう挨拶してきた?」
男「えぇ、まぁ・・・」
おばさん「あそこの人、態度悪いでしょー。いっつも挨拶無視するのよ」
男「あぁ、どうりで・・・」
おばさん「まぁ私はそんなことないからいつでも気軽に話しかけてちょうだい」
男「はい。これからよろしくお願いします」ペコッ
男(やっぱり良い人もいんじゃん。都会も捨てたもんじゃないな)
男「ふぅ・・・、これでひと通り挨拶には行けたな。隣の人以外はみんないい人だったなぁ」
男「さて、引越しの荷物も片付いてないし、これから片付けといきますか」ヨイショ
---数時間後---
男「はぁ、全然終わんねぇよ・・・。もうダメだ。明日やろう、そうしよう」
男「余ったそばでも食うかな。片付けにこれだけ時間がかかるなんて・・・、一人暮らしの自信なくなってきた・・・」
---次の日---
男「うーん、さて片付けも一段落したし、ちょっと買い出しに行こう」
男「これからは一人暮らしするんだし、自炊しないとな。色々と買ってみよう」
男「とりあえず暮らすのに必要なもんと、食料とかを買っとこうかな」
男「ゴミ袋、フライパン、油、調味料、etc・・・」
男「ふぅっ、こんなもんかな。あとは追々買っていけばいいだろ」
男「あとは、帰って初自炊といきますかね。って、ん?あれはお隣さんの」
男「やっぱりここで買い物するんだな。どうしよう、声掛けようかな・・・」
男「いや、ここは仲良くなれるチャンスだ。ひるんではダメだ。あのー」トントン
女「」ビクッ
男(うわっ、こんなにビックリされるとは・・・)
男「あのー、昨日挨拶に行った男です。よくここで買い物されるんですか?」
女「・・・・・・」ジィーッ
男「あの、どうしました?何か顔についてますか?」
女「・・・・・・」ジィーッ
男(メッチャ見てる!髪で顔隠れてるから目線分かんないけど。どうしよう、声掛けられたから怒ったのかな・・・)
男「あの、何か声掛けてすみません。それじゃ」トボトボ
女「・・・・・・」
---自宅にて---
男「ふぅっ、荷物重かった。ってか隣の人、人付き合いとか嫌いなのかな・・・」
男「まぁ、都会だし色んな人がいるだろ。早速飯作ろう・・・」
---二時間後---
男「あんだけ時間かけて、この真っ黒焦げのハンバーグは・・・」ガクリ
男「いや、見た目が悪いだけで味は美味いかもしれん。では」モグモグ
男「うわっ、マズッ!何で焦げてんのに中まで火通ってねぇんだよ」
男「あー、ダメだ。これは食えん。腹減ったけど、今から外出るのも面倒くさいなぁ・・・」
ピーンポーン
男「ん、誰だろこんな時間に。はい、今開けます」
ガチャッ
男「あ、お隣の。どうも」
女「・・・・・・」
男「あの、どうされましたか?」
女「・・・・・・」プルプル
男(何だろう・・・。何か苦情言いに来たのかな。ちょっとうるさくしちゃったし。あれっ、何か持ってる)
男「それ、何ですか?そのタッパーみたいなの」
女「・・・・・・」スイッ
男「え、えっと・・・、これくれるんですか?」
女「・・・・・・」タタタ・・・
男「あっ、ちょっと・・・」
バタン
男「何だろこれ」パカッ
男「うわっ、肉じゃがじゃん。あ、何か紙はってある」
『作りすぎたのでよかったら食べてください。あと、引越しそばありがとうございました』
男「何だ良い人じゃん。照れくさかったのかな」
男「早速食べよう。うん、美味い!料理上手なんだな」
男「このタッパーどうしようかな?洗って明日返せばいいかな」
---次の日---
ピーンポーン ガチャッ
男「おはようございます。朝早くにすみません。これ、昨日の返そうと思いまして」スイッ
女「・・・・・・」ヒョイッ
男「すごく美味しかったです。お料理上手なんですね」
女「・・・・・・」ペコッ
バタン
男(えーっ、今日こそは話せると思ったのに・・・。何なんだよ一体)
男(はぁ、また自信なくなってきたよ。明日から研修なのに大丈夫かな・・・)
---次の日の夜---
男「はぁ、研修ダルい。足が疲れてしんどいわー」
男「仕事するってキツイな。こんな感じで家路につくのか・・・」
男「やっと着いた・・・。飯食ってシャワー浴びたらすぐ寝よ」カチャカチャ
男「あっ」
女「・・・・・・」
男「今帰りですか?僕もなんですよ」
女「・・・・・・」
男「お仕事ですか?それとも学生か何かですか?」
女「・・・・・・」ガサゴソ
男(あっ、何か携帯いじり始めた。さすがに気分悪いなぁ・・・)
女「・・・・・・」カタカタ
男「それじゃあ、おやすみなさい」ペコッ
ガチャッ バタン
女「・・・・・・」ハァッ
---数日後---
男「うーん、やっと週末かぁ。長かったぜ。とりあえず入用なものも出てきたし買い物にでも行くか」
ガチャッ ガチャッ
男「あっ」
女「・・・・・・」
男「あ、あの、買い物ですか?」
女「・・・・・・」
男「もし、買い物でしたらよかったら一緒にどうですか?この前の大型スーパーに行こうと思ってるんですけど・・・」
女「・・・・・・」ガサゴソ
男(また携帯いじり始めた。そんなに俺と会話するの嫌なのかよ)
女「・・・・・・」カタカタ
男「すいません声掛けて。迷惑ですよね。それじゃあ」
男(これから声掛けるのやめよ。さすがに心折れたわ)
女「・・・・・・」タタタ・・・ ギュッギュッ
男「えっ?どうしました?何か用事でもありました?」
女「・・・・・・」カタカタ
女「・・・・・・」カタカタ
男「あの、何もないんでしたら。こっちも暇じゃないんで」イライラ
女「・・・・・・」タタタ・・・ サッ
男「そこに立たれると邪魔なんですけど。って、ん?」
女『すいませんわたしみみにしょうがいをもっているのでうまくはなすことができません』
男「えっ?これってほんと?」
女「・・・・・・」コクコク カタカタ
女『ほんとうはあいさつをかえしたかったんですけどごめんなさい』
男「い、いや、こちらこそすいません。あの時も話そうと思って携帯で打ってたんですね。そうとは知らずに」
女「・・・・・・」カタカタ
女『わたしもかいものにいくのですがよかったらごいっしょしてよろしいですか』
男「うん。じゃあ一緒に行きましょうか」
男「女さんっていうんだ。年齢は俺と一緒じゃん。お仕事してるの?」
女『はい olをやってます 男さんは?』
男「俺は今研修中。もうすぐ社会人ってところかな。ってか今更だけど俺も携帯で打ったほうがいいかな?」
女『いいえ 完全に聞こえないわけではないので大丈夫です あと口元の動きで話してること分かります』
男「そうなんだ。でも大変じゃない?一人暮らしだと」
女『いいえ 何でもできることは一人でやった方がいいんです あとお気遣いはあまりしないでください』
男「ご、ごめん。何か気に障ったかな?」
女『いいえ ただ普通の人のように接してくれれば大丈夫です』
男「うん。次から気をつけるよ。それにしても携帯打つの速いね」
女『これでコミュニケーションをとらないといけないので 自然と速くなります』
男「そっかぁ。あ、今のは違うからね。ただ単純に感想を言っただけで」
女『わかってますよ そんなに過敏にならないでください』
男「ごめん。というか携帯ってすごいね。ただの便利な道具じゃないと改めて感じるよ」
女『紙に書くよりこの方が速いんです 今ではすごく頼っています』
男「そうかぁ。あっ、着いたね。何買うの?」
女『とりあえず今日と明日の分の食材を』
男「そっか。俺も似たようなところかな。そういえばこの前の肉じゃがすごく美味しかったよ」
女『返しに来てくれたときも言ってくれましたね 嬉しいです』
男「お礼を言うのはこっちの方だよ。その日は飯作ったんだけど酷い有様でさ。本当に助かったんだ」
女『そうだったんですか お料理は苦手なんですか?」
男「できると思ったんだけどねぇ。今日も挑戦しようと思ってさ」
女「・・・・・・」ウン
男「ん?どうしたの?」
女『よろしければ夕飯私が作りましょうか? 一人分も二人分も大して手間変わりませんし』
男「えっ?いいの?迷惑じゃない?」
女『構いません むしろ楽しい食事は好きですのでこっちからお願いしたいくらいです』
男「じゃあお言葉に甘えて。買い物は任せていいかな?」
女『はい 何かリクエストとかありますか?』
男「いや、特にないよ。女さんの料理の腕を信じてる」
女『何でもいいが一番困るんです 何かリクエストしてください』
男「じゃ、じゃあ、ハンバーグで」
女『はい じゃあ材料買いに行きましょう』
男(前髪も長いから、顔隠れて表情が見えないなぁ。まぁこれは仲良くなれたんだよな、うん)
---
男「いやぁ、色々買ったね。荷物は持つよ。俺は結局食材に関しては何も買わなかったし」
女『ありがとうございます お優しいんですね』
男「いやいや、こっちこそ食事を作ってくれるなんて。田舎から来てお隣さんがこんなに優しい人でよかったよ」
女『いいえ 男さんこそ引越しの挨拶に来る人なんて最近では珍しいのですごく礼儀正しい方だなと思います』
男「ところでさ、もっと早く耳が悪いこと言ってくれたらよかったのに。そしたら俺だって・・・」
女『すいません やっぱり防犯のこともありますし あまり多くの人に知ってもらうのはどうかなと』
男「でも、肉じゃが持ってきてくれたじゃん。あれは?」
女『やっぱり挨拶に来てくれたのに無視するのも気が引けて』
男「そっか。人付き合いが苦手な訳じゃないんだ」
女「・・・・・・」
男「どうしたの?」
女『人付き合いは苦手なんですが 男さんなら大丈夫かなと思いまして』
男「それは嬉しい言葉だけど、男は狼だからね。俺が言うのもなんだけど気をつけたほうがいいね」
女『それはわかってます 多分男さんよりもずっと』
男「えっ?どういうこと?」
女『いえなんでもありません』
男「そっか。あっ、家に着いたね。じゃあ、7時頃に女さんの家に行けばいいかな?」
女『はい。美味しい料理を作ってお待ちしてます』
男「それじゃあね。またあとで」
女「・・・・・・」ペコリ
ガチャ バタン
男「女さん、いい人だったなぁ。それにしても耳に障害をもってるなんて・・・」
男「何かちょっとウザいなと思った自分が恥ずかしいな。あんまり偏見を持ってないつもりだったんだけど」
男「それにしても楽しみだな夕飯。それまでにまだ片付いてない荷物どうにかするか」ガサガサ
男「zzz・・・。うーん、いつの間にか寝てしまったな・・・。って今何時?」
男「8時過ぎてるし!ヤバい完全に寝過ぎてる」バタバタ
ガチャ バタン
ピーンポーン
男(はぁ、女さん怒ってるかなぁ・・・。せっかく夕飯作ってくれるっていうのに」
ガチャッ
女「・・・・・・」ペコリ
男「本当にゴメン!いつの間にか寝ちゃってて・・・」
女『いえ こっちこそやっぱり迷惑だったんじゃないかと思いまして』
男「そんなことないよ!お隣なんだし、起こしてくれればよかったのに」
女『何回か呼び鈴鳴らしたんですけど 出なかったので』
男「・・・。ゴメン。それで・・・、上がってもいいかな?」
女『どうぞ』
男(シンプルな部屋だな。何か女の子らしくないというか)
女『座って待っててください お料理温めてきますから』
男「色々とゴメン。って後ろ向いてるし聞こえないのか・・・」
女「・・・・・・」グツグツ
男(はぁっ、せっかく仲良くなれたのに・・・。これは挽回しないと)
女「・・・・・・」カチャカチャ
男「うわっ、美味しそう。食べてもいいかな?」
女「・・・・・・」コクッ
男「じゃあいただきます」モグモグ
女「・・・・・・」ジィーッ
男「うん、すごく美味しい!やっぱり料理上手だね」
女「・・・・・・」ニコッ
男(あっ、初めて笑ったの見た気がする。顔見づらいけどちょっと可愛いかも)
女「・・・・・・」モグモグ
男「・・・・・・」モグモグ
男(ってか食事中は携帯使えないから会話ができない。楽しい食事が好きって言ってたけど・・・)
女「・・・・・・」ハッ カタカタ
女『あまり返すことはできませんが話してくれて構いません 聞いてますから』
男「そっかぁ、じゃああんまり返事がいらない話でもしようかな。この前会社でさぁ・・・」
男「ふぅっ、美味しかったぁ。お腹パンパンだよ」
女『それはよかったです 食器洗ってきますね』
男「そのくらい俺がするよ。料理作ってもらったわけだし」
女『いえ お客さんなんですから座っててください』
男「それじゃあ・・・、お願いします」
女「・・・・・・」コクッ
男(どうしよう。帰ったほうがいいのかな・・・。それとももう少し残って話をしても)
女「・・・・・・」チョコン
男「お皿洗いまでありがとうね。俺帰ったほうがいいかな?」
女『いえ 私はいいですよ もう少しお話しませんか?」
男「うん。俺もそうしたいなと思ってたんだ。あのさぁ、あんまり知識ないんだけど、手話とかってするの?」
女『私は手話はしないんです 覚えようと思ったこともありますが少しは聞こえますので』
男「補聴器ってしてるの?」
女『はい ただ周りの雑音も大きくなるのでやっぱり不便ですね』
男「そっかぁ。でも少し聞こえるんならさ、話すことってできないの?」
女「・・・・・・」
男(ヤベっ、何かまずいこと聞いちゃったのかも・・・)
男「ゴメン、今のナシ」
女『話すこと自体はできるんですけど 音量の調節が難しくて普段は話さないようにしてるんです」
男「そうなんだ。答えづらいこと聞いたんならはっきり言ってね」
女『大丈夫です そういうときははっきり言いますね』
男「うん。そうしてくれ」
男(うーん、どこまで踏み込んでいいのか微妙なところだなぁ・・・)
男「じゃあ、そろそろ帰るね。ごちそうさまでした」
女『明日も夕飯食べに来ますか?』
男「いいの?こっちは大歓迎なんだけど・・・」
女『はい 今日は楽しかったのでぜひ』
男「じゃあお願いするよ。明日も今日と同じ時間でいいかな?」
女『待ち合わせの時間ですか? それとも家に来た時間ですか?』
男「少し意地悪だなぁ。7時でお願いします」
女「・・・・・・」ニコッ
男「あっ、笑った。あんまり笑わないけど、そっちの方が可愛いと思うよ」
女「・・・・・・」
男「へ、変なこと言っちゃったね。ゴメン、それじゃまた明日」タタタ・・・
女「・・・・・・」フフッ
---数週間後---
男「あれから結構経ったけど、週末にご飯食べさせてもらうだけで特に進展しないなぁ」
男「目は髪で隠れてるけど、正直可愛いと思うからなぁ・・・。思い切ってデートでも誘ってみようかな・・・」
男「でもがっついてると思われたらなぁ・・・」
ユーガッタメール
男「おっ、女さんからメールだ」
『今日も夕飯食べに来ますか?』
男「よし、これは神からの啓示かな。誘ってみよう」
『行きます。それより、今日ちょっと一緒に出かけませんか?少し遊びたい気分なんですけど』
ユーガッタメール
男「おっ、返信早いなぁ」
『あの、迷惑かけるかもしれないんですけどよろしいですか?』
男「キター、好感触だなこれは」
『全然。俺が一緒に行きたいんです。じゃあ30分後に迎えに行きます』
男「これは良い感じだぞ。おっしゃぁ、希望が湧いてきたぜ」
ピーンポーン ガチャッ
男「急に誘ってごめんね。じゃあ行こうか」
女「・・・・・・」コクッ
男(いつも思うけど地味な服着てるなぁ。もう少し派手な服とかでも似合うと思うんだけど)
---
男「ちょっと服買いたいんだけど、寄ってもいいかな?」
女「・・・・・・」コクッ
男「最近服買ってないからなぁ・・・。こっちとこっち、どっちが似合うと思う?」
女『こっちの方が明るくていいと思います 男さんは快活な印象なので』
男「そっか。ありがとう。やっぱり誰かと一緒に買物をするのは楽しいね」
女『わたしも楽しいです』
男「そっか。今度は女さんの服選んであげるよ。どんなのが好み?」
女『わたしは大丈夫です 服とか困ってませんので』
男「そうかな。いつも見るとき地味な服ばかりだと思うけど、そういうのが好み?」
女「・・・・・・」
男(ヤベっ、何かまずかったかな)
男「い、いや、もっと明るい服も女さんに似合うかなと思ってね・・・。気に障った?」
女『そんなことないです でも私は本当に大丈夫です』
男「そ、そっか。じゃあ飯でも食べに行こうか・・・」
女「・・・・・・」コクッ
---
男「よし、腹いっぱい食べてやろう。何食べようかなぁ」
女「・・・・・・」
ウエイトレス「ご注文はお決まりでしょうか?」
男「俺はこのランチセットを。女さんは?」
女「・・・・・・」
男「・・・女さん?」
女「・・・・・・」
男「女さんってば」チョンチョン
女「・・・・・・」ハッ
男「注文決まった?」
女「・・・・・・」ユビサシ
男「じゃあ、あとこれを」
ウエイトレス「かしこまりました」
男「どうしたの?何か考え事?」
女「・・・・・・」フルフル
男「そっか。何か困ったことがあったら言ってね」
女「・・・・・・」コクッ
---
男「そろそろ日も暮れてきたし、帰ろうか」
女「・・・・・・」コクッ
男(今日はあんまり携帯使って話してくれないなぁ・・・。やっぱり何か気に障ることでもしたのかなぁ)
女「・・・・・・」
ドスッ
チャラ女「痛っ!ちょっとどこ見て歩いてんのよ」
チャラ男「おい、どうした?」
チャラ女「ちょっと待ちなさいってば」ガシッ
女「・・・・・・」ビクッ
チャラ女「何無視して行こうとしてるのよ!アンタのカバンが当たったの!謝りなさいよ!」
女「・・・・・・」ペコペコ
男「あ、あの、すいません」
チャラ女「アンタには言ってないのよ!このオンナに言ってんだから!一言ぐらい謝ったら?そんなこともできないの?」
チャラ男「まぁ、チャラ女の言うとおりだ。おい、一言ぐらい詫び入れるのが筋だろ」
女「・・・・・・」ペコペコ
チャラ女「だ・か・ら、謝れって言ってんのよ。スイマセンの一言も言えないのかよ」ガシッ
女「・・・・・・」ビクッ
男「あの、スイマセン。この人、耳に障害を持ってて。だから話すことができないんです」
女「・・・・・・」ハッ
男「だから、あの、僕から謝るんでどうか勘弁して下さい」
チャラ男「おい、やめとけよ。相手ろう者だぞ。勘弁してやれよ」
チャラ女「ふん。何よ、障害持ってたら偉いのかよ。マジムカツク」
男「ちょっと、その発言はないんじゃないですか。この人に謝ってください」
女「・・・・・・」
チャラ男「おい、こういうのと関わるのってメンドイって。早く行こうぜ」
チャラ女「はぁ、家にでも引きこもってろっての。まったく」
男「おい、謝れって!」ガシッ
チャラ女「何すんのよ。大体元はと言えばそっちが悪いんじゃない」
男「その件については謝りました。それとは別にあなたの発言について謝ってくださいと言ってるんです」
チャラ男「おい、人の女に何してんだよ。あっ!?」ドン
男「くっ、いってぇ、何すんだよテメェ」
女「・・・・・・」ブルブル
男「謝れって言ってんだよ!待てよオマエら!」
チャラ男「あっ、まだやんのかよ。ぶっとばすぞこの野郎!」
えー、何、喧嘩?やだー、こわーい ワイワイガヤガヤ
女「やめてください!!!」
男「えっ?女さん?」
女「・・・・・・」ダダダ・・・
男「あっ、ちょっと女さん・・・」
チャラ女「何だよ、アイツ喋れんじゃん。急に大声出しやがって。だったら最初から謝れっての」
チャラ男「もう行こうぜ。気分悪いわ」
男「女さん・・・」
---
男「・・・、女さん」ガシッ
女「・・・・・・」ビクッ
男「ごめん、ちょっと熱くなっちゃってさ。でも突然帰ることないじゃん」
女「・・・・・・」
男「何か言ってよ。今日は携帯でもあんまり話してくれなかったし。何かあったら言ってって」
女「・・・・・・」ブルブル
男「女さん!」
女「・・・・・・」カタ カタ カタ
女『おとこさんはなにもわかってないです きょうははなしたくありません さようなら』
女「」ダダダ・・・
男(クソッ、何なんだよ。何が悪かったって言うんだよ)
---一週間後---
男「あれから何回もメール送ったけど、一回も返信してくれない」
男「今日は休みだから女さんの家に行ってみよう」
ピーンポーン
男(出てくれないなぁ。ちょっとメールを打ってみるか)
『今女さんの家のチャイムを鳴らしたんだけど、家にいない?」
ユーガッタメール
『帰ってください。私は話すことはありません』
男(相当怒ってるなぁ・・・。よしこうなったら)
『今日は女さんの家の前で開けてくれるのずっと待ってます。きちんと話し合いたいです』
男(これでよし、あとは我慢比べだ)
---数時間後---
男(意外と開けてくれないなぁ。今日1日は覚悟したほうがいいかな)
---また数時間後---
男(くそっ、腹減ったなぁ。でももうすぐ出てきてくれると思う・・・、多分)
---また数時間後---
男(寒くなってきたな・・・。こんなことならもっと着込んでくればよかったなぁ・・・)
---さらに数時間後---
男「zzz・・・、zzz・・・」
ガチャッ
女「・・・・・・」トントン
男「ん、あっ、寝てたのか・・・。あっ、女さん・・・」
女『風邪引くので中に入ってください なんか心苦しいです』
男「でさ、熱くなったのは本当に悪いと思ってんだ。でもさ、何も言わずにどっか行くのはひどくない?」
女『男さんは私があの日何に困っていたかわかりますか?』
男「いや、だから、話せないのを言われて絡まれて」
女『それだけじゃありません その前にもずっと困っていたんです』
男「えっ?それってどういうこと?」
女『私が補聴器をつけてるのは言いましたよね? 人の多い通りなんかでは雑音が多すぎて本来聞くべき言葉をちゃんと聞くことができないんです』
女『食事の時も絡まれた時もほとんど聞こえていませんでした』
男「えっと、それは配慮が足らなかったね。ゴメン。」
女『それに絡まれた時私の耳のことを言いましたよね ああいう風に街で言われるのはすごい迷惑です』
女『私は普通の人として生活したいのに それをああいう言葉で片付けられるとすごく心外です』
女『あんなろう者と中途失聴者と難聴者の区別もつかない人に何か言われても私は何も思いません』
女『それをあんな風に絡んで騒ぎを大きくして あの状況はすごくいたたまれなかったです』
男「それも、ゴメン。でもさ、言ってくれないと分からないじゃん」
女『せっかく誘ってくれたのに迷惑をかけるわけにはいかないと思ったんです』
女『でもあの日分かりました やっぱり普通の人と普通に接することなんて私にはできないんです』
男「ちょ、ちょっと待って。それは違うでしょ。ちゃんと説明すれば次からは気をつけるし」
女『何か私が困るとそのたびに男さんは申し訳なさそうに私を気遣います そんなことしてると男さんの方が絶対に疲れると思います』
男「何で勝手にそんなこと思うの?それは女さんの考えでしょ?俺は絶対にそんなことない」
女『何でそんなこと言い切れるんですか? 少なくとも私の周りにいた人はみんなそうでした』
女『最初は同情しても絶対に私のことを面倒くさがります 普通の人にとっては私は関わりたくない存在なんです』
男「・・・、わかった。そういう経験をしてきたから言えるんだね」
女『わかってくれましたか 今日はもう帰ってください』
男「・・・・・・」
女「・・・・・・」フイッ
女(みんなどうせ離れていくんだ。あの人は違うと思っても結局みんな・・・)
---中学時代---
女母「えっ?突発性難聴?」
医者「はい。この病気は発症して二週間以内に治療をするのが望ましいんですが、娘さんの場合はもう発症して一ヶ月かかっています」
医者「ここから治療を施してもほとんど効果はありません。残念ですが、娘さんの聴力は補聴器なしではほとんど聞こえない状態になるでしょう」
女母「そんな・・・」
医者「ほとんどの場合片耳がある日突然聞こえにくくなるのですが、娘さんの場合両耳を発症しています」
女「・・・・・・」
医者「これから生活の様々な場面で不自由なことが起こるでしょう。しばらくは補聴器の調整をしていかなければなりません」
女母「本当に治らないんでしょうか?」ポロポロ
医者「残念ですが・・・」
女「・・・・・・」
---
担任「えーっ、もう知ってるものもいると思うが、女は耳が聞こえにくくなる病気にかかってしまった。みんなサポートしてやってくれ」
女友「女ちゃん、大丈夫なの?一緒の高校行けるかな?」
女「まだ少しは聞こえるから、補聴器つければ普通の高校に進学できるって」
女友「っ、そ、そうなんだ。声大きいね。もう少し抑えて喋ってくんない?」
女「ご、ごめん。ボリュームの調整難しくって」ボソボソ
女友「えっ、何?」
女「・・・・・・」
---高校時代---
女「・・・・・・」
クラス1「あの子、耳が聴こえないんだって。何か全然人と関わんないじゃん」
クラス2「ってか何で普通の高校にいるわけ?そういう人達が行く学校に行けばいいじゃん」
女「・・・・・・、あっ、女友ちゃん」
女友「えっ?」
クラス1「女友、アイツの知り合い?」
クラス2「えーっ、アンタもそっち系なの?」
女友「いや、私はただ同じ中学だっただけだから・・・」
クラス1「そうだよねー、アンタ普通の子だもんね」
クラス2「まぁいいじゃん。関わんないほうがいいからあーいうの」
女「・・・・・・」
---
女(昔の夢を見てたな・・・。もう忘れたいのに)
女(男さんと出会って、男さんならと思ったけど・・・、やっぱり無理だよね)
ピーンポーン
女(誰だろう、こんな朝から)
ガチャッ
男「おはよう。女さん」
女「・・・・・・」
男「あれから色々考えたんだけど、やっぱり納得いかなかった」
男「俺は君のことを知らないけど、君のことを同情とかそういう目で見てないし、君のことを面倒くさいとも思わない」
男「だから、君のことをもっと知りたいと思う」
男「色々と聞かせてくれないかな。どういう経緯で耳が聞こえなくなったのか、今までどういう状況だったのか、これからどういうことに気をつけていけばいいのか」
男「だから、今日はとことん話すつもりで来たよ。」ニコッ
女『私に構わないでくださいと言ったはずです 帰ってください』
男「それでも俺は構うよ。これは同情でも何でもない。単に君という人間に好意を持ってるから」
女「・・・・・・」
男「やっぱり・・・、信用出来ない?」
女「うっ、ぐすっ、えっぐ、ぐすっ」
男「ちょ、ちょっと泣いてるの?ゴメン、何か変なこと言ったかな?」
女「・・・・・・」カタカタ
女『すいませんなんかわかんないけどなみだが』
男「わっ、えっとどうしよう・・・」
女『とりあえずあがってください』
男「う、うん」
男「それじゃあさ、話してくれないかな。君のこと」
女『私のことを話すと男さんは絶対に引くと思います』
男「だからそんなことないって。まずはさ、障害のことについて話してくれないかな?俺、よく分かんなくって」
女「・・・・・・」ハァッ カタカタ
女『私の病気は突発性難聴という病気です 中学生のときに発症してそれからはずっと補聴器をつけています』
男「それってどういう部類に入るのかな?」
女『私は中途失聴者、あるいは難聴者の部類に入ります』
女『ろう者というのは日本語を獲得する前から耳が聴こえない人たちのことを指します』
女『その人たちは手話を第一言語にしているので私たちとはそもそも違います』
男「そっか、俺の中では違いが分からなかったから。ありがとう」
女「・・・・・・」
男「じゃあさ、昔のこととか聞いてもいいかな?話せる範囲で」
女「・・・・・・」コクッ カタカタ
女『中学生のときに発症してから私の周りの人は最初は随分心配をしてくれました』
女『色々と気を遣ってくれて私の助けになってくれていたんです』
女『それでも私は病気の前と同じように話すことができません』
女『気を抜くと声が大きくなって周りから変な視線で見られたり声を抑えると小さすぎて聞こえなくなる』
女『そんな感じで私は友達の輪に入れずにどんどんみんなが私から離れていきました』
女『親友と思っていた人が私を知らない人のように扱ってきたこともありました』
女『高校になると私はもう誰も信用できなくなっていました』
男「・・・・・・」
女『高校を卒業して就職をしました そのときに家を出ました』
女『その頃にはもう両親ですら信用できなくなっていましたから』
女『就職しても私の状況は相変わらずでした』
女『やっぱり耳が聴こえにくいと色々と支障がでるんです』
女『女の人には陰口を叩かれて 男の人からは声が出せないことをいいことにセクハラをされました』
男「えっ、それって・・・・・・」
女『他の人も見て見ぬふりをしてたんです どうせ声が出せないんだからということで』
男「それは・・・、今でも?」
女『いえ 耐え切れずに一度大声で叫びました』
女『その人はクビになりましたが私の状況は悪化しました』
男「どうして?女さん何も悪くないじゃん」
女『どうせ仕事もできないんだからそれぐらい大目に見ろよとか 会社は全員向こうの味方でした』
女『それからは仕事を押し付けられたり 女性社員から嫌がらせを受けるようになりました』
男「そんな会社辞めちゃえばいいじゃん」
女『簡単に言わないでください ここを辞めても次があるかも分からないんです』
女『それに会社も私のような人を雇うことで国から支援金がもらえるので簡単には辞めさせてもらえません』
耳の聞こえない人って自分の声も聞こえないからまともな会話ができないって知り合いに聞いたことがあるんだけど、本当なの?
女『やっぱり引きましたよね これからは私に構わずに普通の生活を送ってください』
男「何でそんなこと言うの?俺何も言ってないじゃん」
男「全然引かないよ。周りの人がおかしいだけであって、女さんは何も悪くないじゃん」
女「・・・・・・」
>>90
程度による
この話の「女」ぐらいだったら話すことはできるけど
自分が聞こえるぐらいの音量になっちゃうから声が大きくなるし
少し音が濁っちゃうこともある
難聴にも色々と種類があるから
男「・・・、少し思ったことを話してもいいかな?ちょっと不快になるかもしれないけど」
女「・・・・・・」コクッ
男「まずね、女さんは周りの人に恵まれなかっただけだと思う。それで人間不信みたいになったのかな」
男「ずっと辛い思いをしていたと思う。正直少し可哀想だなとは思った」
男「でもね、少しは女さんにも悪いところがあると思う」
女「・・・・・・」
男「女さんは人を避けようとしてるよね。そんなことしたら相手だって近寄りづらいと思う」
男「あとさ、普通の人って何?俺から見たら女さんだって普通の人じゃん」
女『私は耳に障害を持ってるんです 普通の人ではないです』
男「そういうところも悪いと思う。自分は普通じゃない、だから普通の人とは関わっちゃいけないみたいなさ」
男「でもさ、そう思ってるなら何で俺にこのこと教えてくれたの?それはさ、やっぱり普通の生活がしたいと思ってるんじゃない?」
男「髪だってそうだよ。すごい長いよね。それってさ、補聴器隠すためとかなんじゃない?」
女「・・・・・・」ジワッ
男「誰よりも普通の生活がしたいと思ってるのに、自分から普通の生活を避けてるように俺には見える」
男「それは一種の甘えなんじゃないかな?」
男「特別扱いしてほしくない。でも特別扱いしてほしい、みたいなさ」
女「・・・・・・」ポロポロ カタカタ
女『おとこさんになにがわかるんですか』
男「俺には君の苦しみなんて分からない。でもさ、教えてもらった今なら、君のために何ができるか考えることができると思うんだ」
男「だから、今度からは俺にもっと頼ってほしい。君と一緒に考えていきたい」
女「・・・・・・」ヒッグヒッグ
男「俺の気持ちは伝えたよ。今度は女さんの気持ちを聞かせてほしい」
女「・・・・・・」グスッ カタカタ
女『少し考えさせてください』
男「そっか。じゃあ返事を待ってるよ。もう一度言うけど同情とかじゃないからね」
女「・・・・・・」コクッ
ガチャッ バタン
女「・・・・・・」
女(私は甘えてただけなんだろうか?)
---
女「私一人暮らしするから」
女母「そんなことできるわけないでしょ。ただでさえ女の子の一人暮らしは危ないっていうのに」
女父「そうだぞ。今だって色々と不便があるのに、一人暮らししたらもっと・・・」
女「いいの。お父さんやお母さんにこれ以上迷惑はかけられない」
女母「迷惑って何なの?私たちは迷惑だなんて思ったこと一度もないわよ!」
女「どうせいつかそう思うって。今でも重荷に感じてるのわかるし」
女父「何てこと言うんだ!お父さんたちはお前のことを思って」
女「私のためって何?ここにいたら私はずっと甘やかされて、一生普通の人生が送られない」
女「何て言ったって私は出ていくから」
女父「・・・・・・」ポロポロ
女母「・・・・・・」
女(ちゃんと私を心配してくれる人はいたのに・・・)
---数日後---
男「あれから一回も連絡がない・・・。こっちから連絡したら催促したみたいになるし」
男「ちょっと言い過ぎたかなぁ・・・」
ピーンポーン ガチャッ
男「あっ、女さん・・・?」
女「・・・・・・」
男「髪、切ったんだね。すごく似合ってるよ」ニコッ
女「・・・・・・」モジモジ
男「と、とりあえず、上がる?」
女「・・・・・・」コクッ
男「えっと、お茶入れてくるから、ちょっと待ってて」
女「・・・・・・」
男「はい、どうぞ」
女「・・・・・・、ありがとうございます」
男「女さん、今・・・」
女「うまく、話せてますか?久しぶりに声出して話すからちゃんとできてるかどうか分からなくて」
男「うん、大丈夫。ちゃんと伝わってる」
女「・・・私、男さんの話を聞いて色々考えました」
女「最初は正直イラッとしました。私の苦労も知らないでって」
男「・・・、ちょっと言い過ぎたかなとは思っています、はい」
女「いいんです。本当のことだと思いましたから」
女「やっぱりどこかで普通の女の子に憧れていたんだと思います。病気さえなかったら色んなことできたのになって」
女「それで劣等感感じて、人を信じられなくなって・・・」
女「それでも完全には諦めることができずに、男さんに声をかけたりして」
女「私って・・・、惨めですよね・・・」
男「そんなことない。俺も同じ状況になったら分かんないし」
女「でもこれからは堂々としてようと思います。髪も切ったから補聴器だって隠しません」
女「耳悪いのの何が悪いんだ、って感じでいきます」ニコッ
男「うん。それがいい。これからはもっと声聞かせてよ。俺、女さんの声好きだな」
女「人が多いところだとまだ流石に・・・。でも、男さんの前だけなら・・・」モジモジ
男「うん。そっちの方が俺も嬉しいな」ニコッ
女「あの、あんまり優しい言葉をかけないでください。私はそういうのあんまり慣れてないので。それに・・・」
男「それに?」
女「やっぱり・・・、勘違いとか、しちゃうから」カアア
男「なんだ、そういうこと」
女「なんだってなんですか!私は結構思い切って言っt」ガバッ
男「伝わってなかったのかな?」ダキッ
男「好きだよ、女さんのこと」
女「・・・、私・・・、面倒くさいですよ?」ポロポロ
男「話聞いてたらそんな感じだなって分かるよ」
女「・・・、ひどいです」ギュッ
男「そういうとこも含めて好きってことで」
女「・・・、バカですね男さんは・・・」
男「褒め言葉としてもらっておくよ」
女「それはそうと、いい加減離してくれませんか。ちょっと苦しいです」
男「ご、ごめん。痛かった?」
女「いえ、単純に嬉しかったですけど・・・」ボソボソ
男「えっ、何?ごめん、もう一回言って」
女「何でもありません」フイッ
男「ちょっと、こっち向いてよ」
女「・・・・・・」チュッ
男「・・・・・・」
女「・・・、私の、ファーストキス、ですから。大事にしてくださいね」カアア
男「・・・、もう一回、いい?」ニコッ
女「・・・、嫌、です」フイッ
---それからしばらくして---
男「さぁ、今日は買い物に行くよ。前から思ってたんだけど、やっぱりもっと明るい服のほうが女さんに似合うと思うんだ」
女「そうでしょうか・・・。結構気に入ってるんですけど・・・」
男「まぁ、いいじゃん。ものは試しって言うし」
女「まぁ、そう言うなら・・・」
おばさん「あら、こんにちは」
男「あっ、こんにちは。お久しぶりです」
おばさん「あらまぁ、そちら彼女さん?若いっていいわね~」ニヤニヤ
女「・・・・・・、こんにちは。私、男さんの隣に住む、女っていいます」
おばさん「そうなの?何か前見た時と感じが違うわね~。もっと暗い感じだと思ってたのに、大きい声で元気ね」
女「度々挨拶をしてもらったのは覚えています。そのときは無視してすいませんでした」
女「私耳に障害を持っているのでなかなか返せなくて・・・」
おばさん「あらぁ、それならそうと早く言ってくれればよかったのに~。何かあったら言ってね。おばさん助けになるから」
女「はい。ありがとうございます」
おばさん「じゃあ、二人で楽しんできてね~。それじゃまた」
男「・・・、いいの?防犯とか言ってたけど」
女「これからはこういうことから始めようと。悪い人ばかりでもないと思いますし」
男「そうだね。あのおばさんはいい人だと思うよ」
女「・・・、それに、何かあったら男さんが守ってくれますよね?」ニコッ
男「それは・・・、もちろん」
女「今、変な間がありましたけど・・・」
男「そんなことない!絶対守るから」アセアセ
女「信用してますよ。男さん」ニコッ
おわり
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません