妹「幸せってなーに?」(34)
兄「……なんだろうな?」
妹「ぶー。にいが『分からないことがあったらお兄ちゃんが教えてあげよう』って言ったのにー」
兄「そうなんだけどさ。幸せなんて人それぞれなんだから、簡単には答えられないって」
妹「むー、じゃあじゃあ、にいにとっての幸せってなーに?」
兄「……俺にとっての幸せは、そうだな。いつまでも妹と一緒にいられること、かな?」
妹「ふ、ふーん」
兄「今の答えでよかったか?」
妹「ま、まぁ、にいにしては上出来ね」
学校
妹「どうしたら気持ちが伝わるのかなぁ」
妹友「どうしたの? 妹ちゃん」
妹「好きな人がいるんだけど、どうすればいいかわかんないの」
妹友「好きな人いるの!? だれだれ!?」
妹「そ、それは言えないよ……」
妹友「んー、そっか。でも妹ちゃん恋してるんだー」
妹「えへへ。あ、妹友ちゃんはモブくんと付き合ってるんだよね?」
妹友「うん、そうだよー」
妹「モブくんのどういうところが好きなの?」
妹友「かっこいいし、やさしいの! モブといっしょにいると幸せなんだぁ」
妹「いいなぁー、どうしたら好きな人と両思いになれるかな?」
妹友「せっきょくてきにいっちゃえ! あたしもモブと付き合うときはがんばったもん!」
妹「そうだよね! 私がんばる!」
家
妹「愛ってなーに?」
兄「心がほんわかして、一緒にいたくて、その人のことばかり考えて、ドキドキしてって感じかな」
妹「じゃあ私、にいのこと愛してるー」
兄「兄妹のそういう感情は愛じゃないよ」
妹「それでも好きだもん! 愛してるもん!」
兄「うーん、違うと思うけどなー」
妹「えー」
兄「だってそれなら俺も妹のこと愛してるってことになるし」
妹「ふ、ふーん、そうなんだ」
学校
委員長「相談?」
妹「委員長っていつもいそがしそうだけど、たいへんじゃないの?」
委員長「楽しいよ? 人から頼られるのって最高に気持ちいいのよ」
妹「でもつかれたり、遊べなかったり、いやにならないの?」
委員長「んー、人のために何かするってとっても楽しいのよね。仕事してる時が生きてるって気がするのよ」
妹「生きてる?」
委員長「そうね」
妹「なんだかすごいね」
家
妹「生きるってなーに?」
兄「今日の妹は難しいこと聞くね」
妹「えへへ、かっこいいでしょ?」
兄「うん。でもかっこいいけど突然どうしたの?」
妹「委員長が仕事してると生きてる気がするって言ってたから大人だなぁって思ったの」
兄「その歳でその感覚は……ませてるなぁ」
妹「それでそれで、生きるってなーに?」
兄「……ちょっと難し過ぎる議題かなぁ」
妹「?」
兄「えーっとね、生きていくのは大変なことなんだ」
妹「どういうこと?」
兄「生きていくために必要な食べることだって、お魚さんとか牛さんとかの命をもらってるというか……」
妹「ご飯たべれなくなっちゃう……」
兄「そう思っちゃダメ。いつもありがとうって思いながら残さず食べないと」
妹「……うん! のこさずに食べる!」
兄「そういったものをたくさんもらってるんだから精一杯生きていくんだぞー」
妹「はーい」
学校
妹友「~♪」
妹「なんだか妹友ちゃんうれしそうだね」
妹友「やっぱりわかる?」
妹「うん。すっごく楽しそう」
妹友「実はねー、今日モブの家に泊まりにいくんだー」
妹「そうなんだー! ラブラブなんだね!」
妹友「うん! こっそりお泊りなんだー」
妹「こっそり?」
妹友「今日モブの親が出かけるみたいだからその間にこっそり! だからもりあがったら……きゃー」
妹「?」
妹友「最後までいっちゃうってこと!」
妹「最後まで?」
妹友「えっちよ、えっち」
妹「えっち?」
妹友「もー、妹は何も知らないんだから! この少女マンガ貸してあげるから読んで勉強しなさい!」
妹「はーい」
家
妹「えっちってなーに?」
兄「……おませさんめー」グリグリ
妹「頭ぐりぐりやめてー」
兄「そんな言葉どこで聞いてきたの?」
妹「妹友に教えてもらったの」
兄「ませた友達ばっかりだなぁ」
妹「それでそれで、えっちってなーに?」
兄「愛する二人がすることっていうか……妹にはまだ早いよ」
妹「ぶー、なんでも教えてくれるって言ったのにー!」
兄「もっと大人になってからな」
妹「むー、私大人だもん」
兄「はいはい」
妹「ほ、ほんとはえっちの意味分かってるもん」
妹(えっと、かりてきたマンガには……)
妹「私、にいならいいよ……?」
兄「そ、そういうことは言っちゃいけません!」
妹「ぶー。にいノリ悪いよー!」
兄「ノリとかそういう問題じゃないんだって」
妹「ねーえ、私ってみりょくてき?」
兄「そ、そりゃまぁ可愛い妹だけど」
妹「じゃあじゃあ、私をそういう目で見ることってある?」
兄「あーもー、そんなこと言うやつはこうだー!」
コチョコチョコチョコチョ
妹「きゃー!」
ワーワーギャギャー
母「うるさい! さっさと寝る!」
兄妹「はーい……」
学校
ビッチ「兄おはよーっ」
兄「おうおはよー。あ、そうだビッチ」
ビッチ「ん? どうしたの?」
兄「ちょっと恋愛相談乗ってくれないか?」
ビッチ「兄が恋バナ? 珍しいわね」
兄「いやまぁビッチって経験豊富そうだし」
ビッチ「まぁねー。でも私のは恋愛じゃないよ?」
兄「そうなのか?」
ビッチ「うん。恋ってよくわかんないのよね」
兄「でもB組のチャラ男がビッチと付き合ってるって言ってたけど」
ビッチ「あー、一回ヤったくらいで彼氏気取られても困るのよね。そんなじゃこの学校に何人彼氏いることになるか」
兄「一回ヤったくらいって……」
ビッチ「いやいや、セックスなんてコミュニケーションの一つでしょ?」
兄「……その感性は俺には分からんわ」
ビッチ「兄は真面目だもんねー。で、恋愛相談って?」
兄「……俺さ、真剣に妹が好きっぽいんだわ」
ビッチ「そなの? 恋愛感情でってことよね?」
兄「あぁ、気づかないうちにそうなってたっぽい」
ビッチ「へー、兄ってシスコンだったんだー。っていうよりなんで兄弟もいない私にそんな相談?」
兄「いや、普通は妹のことが好きとか言ったら引くだろうけど、ビッチって性格的にそういうとこで引いたりしないだろ? 口も堅いみたいだし」
ビッチ「下の口は軽いけどねー」
兄「…………このおっさん、逆セクハラだぞそれ」
ビッチ「あっはっはっは、照れながら突っ込んでくれる兄可愛いー! 相変わらず下ネタ耐性ないのねー」
兄「う、うるさいなぁ」
ビッチ「それより妹って法律的にまずいのよね?」
兄「あぁ。結婚できないな……。だからどうするか悩んでる」
ビッチ「妹ちゃんはどんな感じなの?」
兄「慕ってくれてるよ。愛してるとも言ってくれてる」
ビッチ「両想いかー」
兄「妹のは幼少期にある勘違いの感情だろうとは思うんだけどな」
ビッチ「よく分かんないや。とりあえず両想いならいいんじゃない?」
兄「うーん……」
ビッチ「そんなに悩むことなのかなぁ」
兄「そりゃまぁ」
ビッチ「あ、スル勇気がないって言うのなら、度胸つけるためにでも私とヤっとく? ホ代は兄持ちだけど」
兄「いやいや、もっと自分大事にしろよ?」
ビッチ「一応人は選んでるわよ? それにしても純粋に妹を愛してるだけなのは駄目なのに、私みたいに不特定多数とヤるのは法律上問題ないって狂ってるわね」
兄「愛することも性行為も法律上の問題はないぞ?」
ビッチ「そうなの?」
兄「あぁ。結婚ができないってだけだ」
ビッチ「なら問題ないんじゃないの? モラル的な問題なら気にしないでいいでしょ」
兄「まぁ倫理的な問題だとビッチも相当アレだからな」
ビッチ「いいじゃない。誰に迷惑かけてるわけでもないんだし」
兄「そんなこと言ってるといつか刺されるぞ?」
ビッチ「あー、男の逆恨みって怖いわねー」
兄「はぁ……なんというかビッチは……」
ビッチ「なによー」
兄「いや、なんでもない」
ビッチ「ふーん、それならいいけど」
兄「……ちょっと変なこと聞くけどさ、ビッチって今、幸せか?」
ビッチ「うん? 幸せだよ?」
兄「ホントに?」
ビッチ「ホントホント。毎日楽しいよ。自由だし、充実してるし。誰かに縛られるのは好きじゃないけど独りは寂しいし、これが一番楽なのよね」
兄「……そっか」
ビッチ「ま、兄も幸せになるためにがんばりんしゃい。私は応援してるからさ」
兄「ヲター、すごい幸せそうに携帯見てるけど、何かいいことあった?」
ヲタ「あぁ、兄殿ww 可愛いみくたんの画像を見てただけでござるww」
兄「へ?」
ヲタ「これでござるよww」
兄「……あぁ、アニメキャラか。俺にはよく分からないな」
ヲタ「そうでござるかww みくたんが微笑んでくれる、それだけで幸せで頬が緩むのでござるよww はぁはぁ」
兄「リアルにはいないし、触ったりもできないのに?」
ヲタ「それでも好きでござるよwwww 愛してるでござるwwww」
兄「すごい愛情だな。……こんなこと言うとあれだけど、報われない恋愛だぞ?」
ヲタ「それでも好きなものは好きでござるww それに二次元キャラとの結婚を法的に認めてほしいっていう署名活動もあるでござるよwwww これからどうなるかは分からないのでござるww」
兄「すごいなそれ……」
ヲタ「でゅふふww 愛に次元の壁なんてないでござるよ兄殿wwww」
兄「愛に次元の壁なんてない、かぁ」
ヲタ「毎日眺めてるだけで幸せでござるww でゅふふwwww」
兄「根暗女さん」
根暗女「……どうしたの?」
兄「いや、特に用事はないんだけど……」
根暗女「そう」
兄「根暗女さんっていつも一人で本読んでるよね?」
根暗女「うん」
兄「本、好きなんだ?」
根暗女「うん、好き」
兄「面白い?」
根暗女「うん、面白い」
兄「そっか……」
根暗女「うん」
兄「…………」
根暗女「…………どうしたの? やっぱり何か用事?」
兄「あ、いや。……その、根暗女さんって幸せ?」
根暗女「……喧嘩売ってるの? 毎日本ばっかり読んで幸せ逃してるって」
兄「ち、違うって! 人によって幸せって違うんだなぁって思ったから、みんなにとっての幸せが何かを調べてるっていうか……」
根暗女「冗談。兄くんがそういうこと言う人じゃないのは知ってる」
兄「冗談か……びっくりした。根暗女さんも冗談言うんだ」
根暗女「それ失礼」
兄「あ、ごめん」
根暗女「それで、兄くんは何か悩みがあると思う」
兄「まぁ……その、ね?」
根暗女「言いたくないならいい」
兄「助かります」
根暗女「幸せかどうかの答えだけど、私は幸せかどうかなんて分からない」
兄「分からないかぁ……」
根暗女「うん。普通に暮らしているだけで幸せなんだとは思う。でもこの日々を幸せって感じるだけの相対する不幸を知らないから、幸せかもよく分からない」
兄「分からないかぁ……それなら変えたいって思わないの? 例えば幸せになりたいって」
根暗女「幸せが何か分からないから。何をしたいかも分からないし、もっと大人になったらこの選択を後悔するかもしれない。だけど、今はこれで満足してる」
兄「そうなんだ……」
根暗女「私は私の好きに生きてるから」
兄「でもやっぱり幸せになりたいって思ったりするもんだと思うんだけどなぁ……」
根暗女「ねぇ。それじゃあ、兄くんが幸せにしてくれる?」
兄「へ? いやっ、そ、それは……」
根暗女「冗談」
兄「……冗談好きなんだね」
根暗女「面白いことは好き。兄くんが何に悩んでるかは知らないけど、面白くなりそうなら応援する」
兄「面白く、かぁ……」
根暗女「時には悩まないで行動してみて、後で悔やむのも悪くないと思う。一度きりの人生、好きに生きる方が面白いと思う」
兄「なかなか大それたこと言うね」
根暗女「兄くん堅実そうだから、これくらい言った方が行動すると思って。私は何もしないし、責任も取らないけど」
兄「あはは……なんというか、ありがとう根暗女さん」
根暗女「うん、面白くなること期待してる」
家
妹「今日はパパもママもいません」
兄「そうだな」
妹「ひとつ屋根の下にわかい男女が二人きりです」
兄「そうだな」
妹「これはお色気シーンにはってんするところだよね!」
兄「……そうだな」
妹「もー、にいノリわる……い、へ?」
兄「どうしたんだ?」
妹「え、えっと、今『お色気シーンにはってんするところ』って言ったら『そうだな』って……」
兄「……いやか?」
妹「い、いやじゃない!」
兄「……なぁ、妹。ちょっと真面目な話、なんだけどさ」
妹「な、何?」
兄「……俺、妹のことが好きだよ。恋愛対象として」
妹「へ、へ、ふぁ、ふぇ?」
兄「そんな口ぱくぱくしてる妹も可愛いと思ってる」
妹「え、あ。わ、わたしも好き!」
兄「ありがとう。でも兄妹で恋愛はしちゃダメなことなんだ」
妹「どうして? わたし、にいのこと好きだよ? ずっと好きでいるよ?」
兄「先のことなんて分からないよ。しかも一度犯した過ちは一生ついて回るかもしれない」
妹「むずかしい言葉はわからないよ……」
兄「後悔することになるかもしれない」
妹「しないよ!」
兄「あはは、ありがとう。うん、そうだよな。妹、好きだ。俺と付き合ってください」
妹「う、うん! じゃあ……今から私たち、こいびと同士?」
兄「そ、そうなるな」
妹「…………」
兄「…………」
妹「は、はずかしいね」
兄「う、うん。……きょ、今日は早めにご飯食べて寝よっか」
妹「ま、待って!」
兄「へ?」
妹「その……今日はパパもママもいないから……私……にいなら……いいよ?」
兄「う……ごめん、耐えられそうにないや」チュ
妹「んっ……」
時は流れて――
妹「今日で兄と結ばれて何周年だっけ?」
兄「あー、あの頃の妹は純真無垢で可愛かったなぁ……」
妹「何よー。今は可愛くないって言うの?」
兄「ん? 今も可愛いよ」
妹「んふふー」ダキッ
兄「ちょ、何?」
妹「……ねぇ兄、たまに悩んでることあるわよね?」
兄「……そんなことないと思うぞ?」
妹「今さっきもそんな顔してたわよ? 最愛の妹にも話せない?」
兄「んー、なんというか未だにこの選択が正しかったかどうか分からなくなるときがあるんだよ」
妹「……後悔、してるの?」
兄「してるわけないだろ?」
妹「それならよかった。私も大人になって、この恋愛が本来はいけないことだって知って、それでも後悔しなかったわよ?」
兄「父さんと母さんをあんなに怒らせたのに?」
妹「あれは確かにすごかったわね……納得してもらうまで何ヶ月もかかったっけ。あの時は兄、結構病んでたわよねー」
兄「大切な人を怒らせて傷つけて、平気でいられる訳がないだろ……」
妹「ホント、そんなに心が弱いのによく私に告白できたわよね」
兄「妹を好きな気持ちだけは譲れなかったから……」
妹「そんなに大切に思ってくれてるんだ……ありがと」
兄「まぁその……ね。あの時には両親を怒らせること覚悟してたつもりだったんだけどなぁ……」
妹「認めてくれなかったらどうするつもりだったの?」
兄「認めてもらうまで頑張るつもりだったけど……永遠に無理だったら二人で家を飛び出してたかも」
妹「諦めるんじゃなくて、攫ってくれるつもりだったんだ……」
兄「うん。幸せにはなれなかったかもしれないけど……」
妹「それでも私は幸せだったかもしれないわよ? 幸せなんて人それぞれなんだし。本人達が最後に笑って進める道を歩めたらそれでいいんじゃない?」
兄「両親を不幸にすることになるのに?」
妹「それは……確かに少し後悔したかもしれないけど、人間なんて所詮は自分本位の生き物でしょ?」
兄「……そうなのかもな。両親のことを考えたら妹に告白しないことが正解だったんだし」
妹「それは私のことを考えた場合の不正解だよ。人によって正解なんてバラバラなんだから自分本位で大正解なの。大事なのは強い意志だと思うの」
兄「強い意志?」
妹「こうすることが幸せだとか、こうやって生きたいとか、そういう思いが大切だと思うのよね」
兄「うん……」
妹「過去は変えられないんだから、選択を後悔してても意味ないの! だから未来の自分の幸せのために強い意志を持って生きていけばいいのよ」
兄「強い意志か……俺は妹と生きることを選んだんだから、悩んでても何も始まらないよな」
妹「そうそう、どんな選択でも正解なの。だからそんなくよくよ悩まない!」
兄「……あーあ、妹に元気づけられるってかっこ悪いな」
妹「そんなことないと思うけど?」
兄「これからはしっかりやっていくから、よろしくな」
妹「うん! というよりこれまでも兄はちゃんとしてたわよ?」
兄「そう言ってくれると助かる」
妹「……ねぇ、意志確認として昔にした質問、もう一回してもいい?」
兄「ん? いいけど、何?」
妹「ふふ。兄にとっての幸せってなーに?」
兄「……いつまでも妹と一緒にいられること、かな」
おわりです。
ありがとうございました。
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