兄「人口精霊が誕生した」 (21)
妹「人口精霊?何のこと?」
兄「簡単に言えば、空想の知人かな」
妹「要するに兄さんの頭がおかしくなったってこと?」
兄「現実と空想の区別が付かなくなったらそうだね」
妹「今のとこは大丈夫ってこと?」
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兄「そういうこと」
妹「今以上におかしくなったらどうするの?」
兄「そう言うなって...」
兄「色々と良いことも多いんだぞ?」
妹「例えば?」
兄「話し相手が出来る」
妹「他には?」
兄「仲が良ければ、色々アドバイスがもらえる」
妹「他には?」
兄「想像力が豊かになる」
妹「・・・なんか悲しくなってきたよ...」
妹「でも、たしかに良いことはあるんだね」
兄「だろ?」
妹「逆に悪いことは?」
兄「最初に言った、現実と空想の区別が付かなくなる可能性がある」
兄「統合失調症のことだよ」
妹「それになるとどうなるの?」
兄「質問で返すけど、寝てる時に夢を見たことはある?」
妹「何言ってるの?当たり前でしょ?」
兄「逆に起きてる時に夢を見たことはある?」
妹「あるわけないでしょ?」
兄「それが起きる病気だよ」
妹「・・・やばいじゃん」
兄「そう、現実と空想の区別が付かないとそうなるんだよ」
妹「本当に大丈夫なの?」
兄「そうなる可能性は当然0%ではないよ」
兄「勿論、人口精霊が誕生した時点で、その病気のリスクが上がることに繫がるんだけどね」
妹「結構怖いんだけど...」
妹「そういえば、なんで人口精霊は誕生したの?」
兄「なんでだろうね...」
妹「勝手に誕生したってこと?」
兄「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」
妹「どういうこと?」
兄「精霊の姿は俺が知ってる人の姿なんだけどさ」
兄「その人のことを四六時中、ずっと考えてたら自然と現れたんだよ」
兄「つまり、結果として意図せず人口精霊は誕生したけど、その原因は俺にあったってこと」
妹「随分とこじらせてたんだね...」
兄「そう言うなって...」
妹「ところで、他に何か危ないことはあるの?」
兄「さっき言った病気が最たる例だけど、その応用みたいなものもあるよ?」
妹「応用って...」
兄「人口精霊に身体がのっとられること」
妹「・・・のっとられるの?」
兄「この病気は解離性同一性障害...多重人格って一度は聞いたことがあるんじゃない?」
妹「あるよ」
兄「そうなる可能性もあるんだよ」
妹「・・・なんか良いことと、悪いことの天秤が釣り合ってないんだけど...」
兄「最悪の事態が重なったら、その通りだよ」
兄「人口精霊がきっかけで現実と空想の区別が付かなくなることから始まり」
兄「その結果、想像したくないものまで見えるようになってしまう」
兄「もし、その時に人口精霊と仲が悪く、消えてしまえなどと考えてしまえば」
兄「人口精霊がそれに反抗して主人格を乗っ取ってやろうと考えるかもしれない」
兄「悪いことを考えれば、きりがないんだよ」
妹「兄さんはどうやってそうならないようするの?」
兄「さっきも言ったけど、病気になる可能性は0%ではない」
兄「俺に出来るのは受け入れることだけだよ」
妹「受け入れる?」
兄「そう、最悪の状況を受け入れるってこと」
妹「・・・兄さんは病気になっても良いって考えてるの?」
兄「そういうこと」
妹「兄さんが兄さんでなくなるんだよ?」
兄「また質問で返して悪いんだけど、俺が妹の人口精霊だったらどうする?」
妹「気持ち悪い」
兄「またそう言う...」
妹「だけど、もし、そうなら話相手くらいにならなってあげるよ」
兄「俺が妹に対して最悪な状況を作り出しても同じことを言える?」
妹「・・・それは...」
兄「これに関しては最初から人口精霊と一生を過ごすという覚悟が必要なんだよ」
兄「それがないと、必ずどこかで関係に歪が生じる」
兄「例え、人口精霊が最悪な状況を作り出したとしても」
兄「それを受け入れる覚悟がなければ、結果はさらに悪い方向へ進んでいくんだよ」
妹「・・・兄さんにとって人口精霊はそんなに大事な人なの?」
兄「そういうこと」
妹「どんな人か教えてよ...」
兄「それは...勿論、いm......」
妹「あ、れ...頭が...痛...!」ズキッ
妹「......」
妹「・・・あれ?」キョトン
妹「兄さんは...?」オロオロ
妹「兄さん..どこに行ったの...?」グスッ
「ここにいるよ」
妹「兄さん!」
妹「どこへ行ったのか心配したんだから!」
妹「心配させないでよね!」
「どこにも行かないよ」
「これからもずっと一緒にいるんだから」
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