平岡「ふぅ…… 一段落……っと」
平岡(第三飛行少女隊が無事終了した後、ムサニは早くも次のプロジェクトで動いていた)
平岡(大人気山賊漫画ツーピース、オリジナルアニメ限界集落過疎娘のまさかの2ライン体制だ)
平岡(弱小企業がなんて無謀なことを……と思ったが、おかげで俺はデスクに昇進することができた)
平岡「デスク……か 手当てはおいしいがサボりにくくなっかなぁ」
平岡「……休憩すっか」ガタッ
りーちゃん「あっ お疲れ様っす…です! 平岡さん」
平岡「!! ……どうも」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428856643
給湯室
りーちゃん「お茶どうぞ、です」
平岡「サンキュー」ゴクゴク
平岡「……あー ところでお前なんでまだいんの」
りーちゃん「えぇ!? そんな酷い、です! また設定制作やらせてもらえるってことになったじゃないですか!」
平岡「そうだっけか…… ツーピース?」
りーちゃん「過疎娘です! 平岡さんデスクですよね…… なんで知らないんですか……」
平岡「いやさすがにスタッフくらい把握してんだがな…… (こいつの名前あったっけ? つかこいつの名前知らん)」
平岡「そもそも過疎娘ってオリジナルだし設定制作つけるなんて聞いてねーけど」
りーちゃん「木下監督が今回はがっつりこだわってみたいから、って言ってましたよ」
平岡「ああそう…… (監督俺にも言ってくれよ…… いやこれは俺が悪いのか……? コミュニケーションコミュニケーション)」
りーちゃん「それに今回は、本格的に脚本の補佐的なことをやらせてもらう予定だったり……」
平岡「ふーん」
りーちゃん「……」
平岡「……?」
りーちゃん「そ、そういえばおいちゃ…宮森、さんはラインPになったんですよね」
平岡「そうだけど」
りーちゃん「えーと あの若さでラインPってすっごい珍しいんじゃないですか?」
平岡「まーな って後輩に先を越された俺を皮肉ってんのか?」
りーちゃん「!! やっ! 決してそんなつもりじゃあないっす! です!」
平岡「冗談だよ まーあいつ渡辺さんにすげー気に入られてっからな」
りーちゃん「で、でもでも おいちゃん先輩すごく頑張ってたし……」
平岡「分かってる あいつはすげー奴だよ 俺も三女の時はかなり世話になったし……」
平岡「まっ今回の昇進も妥当なんじゃねーの」
りーちゃん「で、ですよね! いやーすごいっす!」
平岡「……」
りーちゃん「……」
平岡「さってそろそろ仕事に戻りますかね んじゃコンゴトモヨロシク」
りーちゃん「! は、はいっす! です! よろしくお願いします!」
りーちゃん(ふぅ…… なんか緊張したっす……)
平岡「一応あいつの名前確認しとかないとな 確か監督にもらったメモがあったはず……」
平岡(にしてもあいつなんかガチガチだったな)
平岡(そういや前に八つ当たりしたんだっけか…… いやでも打ち上げでは普通だったような)
平岡「……」
平岡「っとあったあった えー…… 設定制作:ディーゼルさん!」
平岡「…… 宮森に聞いとくか」
脚本会議
みゃーもり「それじゃ、限界集落過疎娘のテーマや流れについて、監督お願いします!」
木下「うん まずね、"過疎娘"は過疎化が進み、誰もが希望を失った限界集落に突如現れた過疎娘を中心にしたギャグ・コメディなわけだけど……」
木下「見る人にはキャラクターの魅力を全面的にアピールしていきたいと考えてます!」
舞茸「また萌えですか 監督好きですね、萌え」
木下「ちっがーう!! いや萌えは好きだし大事だけど…… そうじゃなくて!」
木下「単なる萌えギャグじゃなくてね、例えばこう、偏屈な老人との心温まるふれあい
を通して云々……」
――
―――
りーちゃん「なるほど お話自体の内容どうこうと言うよりキャラを魅せるお話を、ってことですかね」
木下「そう! 暗く淀んだ集落の中でキャラクターの魅力が光る! みたいな?」
舞茸「となると実際キャラ設定には相当こだわらないとですね 背景やら相関図やら」
木下「そうだね その辺のディテールはディーゼルさん協力よろしく!」
りーちゃん「了解っす!」
平岡(生き生きしてんなぁ)
舞茸「……んで3、4話の脚本だけど、とりあえずプロットをディーゼルさん、書いてみてよ」
みゃーもり(!!)
りーちゃん「え!? 丸々自分が考えていいんですか!?」
舞茸「そのつもりだったろ、どうせ まぁゴリゴリ修正してやるから それと完成までの手伝いもな」
木下「おぉー ディーゼルさん本格参戦だね!」
舞茸「オリジナル作品だし、あまり気負わず、気楽に書いてくればいいから」
木下「そのセリフは僕に言わせてよ……」
りーちゃん「はいっす! 皆さんの足を引っ張らないよう全力で取り組むっす!」
みゃーもり(りーちゃん、脚本家デビューへの大きな一歩、だね!)
平岡「……」
廊下
りーちゃん「ふんふんふふ~んっす♪」
平岡「今井、さん」
りーちゃん「!! へっ? じ、自分っすか?」
平岡「んあ? お前の名前、今井みどりって聞いたんだけど、違ったか?」
りーちゃん「はい! 今井みどりっす、です! 合ってます!」
平岡「んだよびっくりさせんなよ……」
りーちゃん「すみません、急だったので…… (びっくりしたのはこっちっす!)」
平岡「あー さっきの会議だけど、お前設定制作にプロットって……」
りーちゃん「」ビクッ
平岡「さすがにキツイんじゃねーか? 脚本の手伝いもあんだろーし無茶振りなんじゃ」
りーちゃん「だ、大丈夫、です 自分がやりたかったことなので……」
平岡「つってもお前、大学があんだろ」
りーちゃん「分かってます! ちゃんと考えてるし…… 最悪留年も辞さないです!」
平岡「いや気張りすぎだろ……」
りーちゃん「絶対迷惑かけないので! どうかやらせて下さい! お願いします!」
平岡「いややらせるやらせないとかの話じゃなくて…… 大学通いながら一人で全部やんのはキツイだろって話で」
りーちゃん「へ……?」
平岡「脚本関連は無理だけど、設定制作の調べ物とかは言ってくれりゃ手伝うよ そもそも俺の領分でもあるしな」
りーちゃん「えっあっはい…… でも自分が受けた仕事だし……」
平岡「だからそれにこだわって作業が遅れんのを危惧してんだよ」
平岡「とにかくヤバそうだったら早めに相談してくれ 学校も犠牲にしなくていいから」
りーちゃん「は、はぁ……」
平岡「一応言っとくけど学生だから甘やかしてるとかじゃなくて、デスクとしてスケジュール管理に過敏なだけなんで」
りーちゃん「はい! 分かってます」
平岡「んじゃそーいうことで」
りーちゃん「……あの」
平岡「?」
りーちゃん「お気遣い、ありがとうございます」
平岡「……おう」
りーちゃん(また説教されるかと思ったっすけど…… 純粋に心配してくれてたんすね)
りーちゃん(……なんか 変な感じっす……)
みゃーもり部屋
みゃーもり「みんな!! ドーナツとった? いくよ!! 私たちは!!」
「「「「かんぱ~~~い」」」」カッ!!
みゃーもり「」
ずかちゃん「いやー こうして5人で集まるのも久々だねー」
みーちゃん「三女の打ち上げ以来ですかね」
絵麻「みんな仕事で忙しかったもんね 特においちゃん、すごいよ ……おいちゃん?」
ミムジー「っぷっぷ~ ガン無視だったわね! あんなダッサイ掛け声みんなもううんざりなのよ!」
ロロ「違うよ! いつもは締めに使ってたから戸惑っただけだよ! きっと」
ずかちゃん「ちょっとおいちゃん いつまでへこんでんのよ」
ワイワイガヤガヤ
みゃーもり「んー! みんな夢に向かって着実に歩んでってるみたいだね! 順調順調!」ゴクゴク
CG「おいちゃん先輩はまた出世したらしいですね ラインPでしたっけ? さすがです!」
みゃーもり「いやー出世っていったらアレだけど…… 正直分不相応すぎていっぱいいっぱいだよ」ゴクゴクゴク
絵麻「そんなことないよ みんなおいちゃんのことすっごく褒めてるよ」
みゃーもり「絵麻だってあちこちから引っ張りだこでしょ もう作監も任されるんじゃない?」
絵麻「まだ作監は早いよ でも機会があるならやってみたい……かな」
ずかちゃん「ふっふふ 今回は私も景気いいわよ 名有りの役もゲットしたしね!」
みゃーもり「わーー! おめでとうーー!! アニメ絶対見るよ!」
タイヤ「私は大きな変化はないですけど、少しずつ大事な仕事も任されるようになってきた感じです」
タイヤ「三女の時の仕事が、少しは評価されたのかなって」
絵麻「みーちゃんは昔から職人の風格あったもんね」
ずかちゃん「いぶし銀だね~」
みゃーもり「そしてそしてりーちゃんはなんと! ……りーちゃん?」
りーちゃん「……」ポケー
絵麻「りーちゃんどうしたの なんか元気ない……」
りーちゃん「へっ あっ ごめんなさい ちょっとボーっとしてたっす!」
ずかちゃん「大丈夫? 体調悪かった?」
りーちゃん「いやいや! 超元気っす!」
みゃーもり「りーちゃんは脚本のプロットとかを任されたんだけど…… ひょっとしてそれで何か困ってたり?」
りーちゃん「いーや問題ないです! かなり自由にやらせてもらえるし…… やりがいもあるっす」
みーちゃん「りーちゃんいつもは一番元気なのに…… 心配だなぁ」
みゃーもり「もしかして……」
みゃーもり「監督達にエッチなことされた!?」
りーちゃん「え゛」
ずかちゃん「ちょっとそれどういうこと」
みゃーもり「りーちゃんはね、3人のおじさんと同じ部屋で仕事してるの」
みゃーもり「りーちゃん若くてスタイルいいし…… ごめんね配慮が足りなかった」
りーちゃん「いやいやいやいや そんなのあるわけないじゃないですか おいちゃん先輩もう酔ってるんっすか」
絵麻「それじゃなんで落ち込んでるの」
りーちゃん「いや別に落ち込んではないっす ちょっと悩んでるというか……」
みーちゃん「悩みって? 私たちでよければいくらでも聞くし、なんだってしてあげるよ」
ずかちゃん「りーは私たちみんなの妹みたいなもんだしね 悩みがあるならほっとけないよ」
りーちゃん「みーちゃん先輩…… ずか先輩……」
りーちゃん「その…… ちょっと恥ずかしいんですけど……」
みゃーもり「やっぱり! エッチなことされたんだ! スペシャルな!!」
ずかちゃん「おいちゃん 黙って」
りーちゃん「実は少し気になってる人がいるっす///」
「「「「……」」」」
「「「「ええええぇぇぇええええ!!!!」」」」
みーちゃん「誰? どこの人? 大学の人?」
りーちゃん「職場の人っす」
絵麻「は?」
みゃーもり「りーちゃんに近い人と言うと…… やっぱ舞茸さん? 師弟を超えた禁断の愛……なの?」
りーちゃん「いや違うっす! 師匠のことは尊敬してますけど男として見てないです」
絵麻「じゃあ誰なの」
りーちゃん「…… 平岡さんっす……」
みゃーもり・絵麻「「…… え゛」」
ずかちゃん「何々? その人どんな人なの? 三女の打ち上げにいた?」
絵麻「私はそこまで話したことないんだけど、仕事が雑な困った人……らしいよ」
みゃーもり「絵麻、情報が古いよ 平岡さん昔はやさぐれてたけど、今はすっかり丸くなって頼れるデスク様だよ」
みーちゃん「それで、なんでりーちゃんはその人のことが好きになったの?」
りーちゃん「や、好きなのかどうか自分でもよく分からないっすけど……」
りーちゃん「前に理不尽に怒られたことがあったんで、正直最初は苦手だったんっす」
りーちゃん「でもそれで見返してやろうって気になって仕事頑張れたし、それからもなんだかずっと意識しちゃってて……」
りーちゃん「そんで、今の仕事を受けた時、呼び止められて、また小言でも言われるのかなってビクビクしてたんですけど……」
りーちゃん「そしたらキツかったらすぐ相談しろ、って言ってくれて 自分のこと心配してくれたんだなぁって」
りーちゃん「そう思ったら変な気持ちになって、なんだか頭がモヤモヤしてるっす///」
ずかちゃん「おおう…… 恋だね…… 中高生みたいな甘いやつ……」
絵麻「……それはどうだろう まだ決め付けるには早いんじゃ」
みゃーもり「絵麻?」
絵麻「みんなも経験あるでしょ 普段すっごく厳しい人にちょっと褒められたら、涙が出そうになる……みたいな」
みーちゃん「アメと鞭、ですか?」
みゃーもり「それわたしが得意なやつ」
ずかちゃん「人間のクズでも猫に優しいとなんだか許しちゃう……的な?」
絵麻「うん、ちょっと違うけどそれに近いかも これって893の人の常套手段なんだよ 一種の洗脳だよ」
りーちゃん「自分、洗脳されてるっすか……」
絵麻「……かもしれない 急に優しくしてくるなんて、なんだか怪しい」
みゃーもり「いやいや絵麻ってば考えすぎでしょ 平岡さん良い人だし、さすがにそんなちみくさいことは……」
絵麻「わたしはただ、りーちゃんが悪い男の人に騙されて傷付くのが心配で……」
ずかちゃん「わたしは絵麻のことが心配になってきたよ……」
絵麻「とにかく、ちゃんと平岡さんの人となりを見定めた方がいいよ たくさんお話しないと本性は分からないからね」
CG(絵麻先輩は割りと決め付けてかかってましたけどね……)
CG「まぁ確かにそれは一理あるかと まずは仲良くなることを考えたらいいんじゃないかな?」
りーちゃん「そうっすね…… あまり話したことないし…… まず平岡さんについて知ることから始めるっす!」
みゃーもり「よっし! 恋も仕事もわたしは全力で応援するよ! みんな! ドーナツとった!? 行くよ!! ドン……」
ずかちゃん「ところで他のみんなはいい人いないの~?」
みゃーもり「」
とりあえずここまで
もうほぼ完成に近いんだけど書きたいこと書いてたら無駄に糞長くなってしまったっす…
今日の夜にでも続き投下します
うむ公式のキャラクター紹介ではずか先輩ってあったけど作中ではずかちゃん先輩だったかね
少なくともみーちゃんはずかちゃん先輩言ってたわ
あと監督の一人称も俺だったかな…その辺ちょい適当ですまん
んじゃ続き投下します
ムサニ 屋上 夜
平岡「弁当もそろそろ飽きたな……」モグモグ
ガチャッ
りーちゃん「あっお疲れ様です 平岡さんも晩御飯ですか」
平岡「ああ見ての通り お前も今頃飯かよ」
りーちゃん「はいっす!…です! ちょっと熱中しちゃって…… 隣いいですか」
平岡「どーぞ」
りーちゃん「よっと 平岡さんいつもここで食べてるんですか?」
平岡「いやいつもってわけじゃねーよ 外で食ったりもするし、まぁ適当だな」
りーちゃん「そうですか…… あっから揚げ好きなんですか?」
平岡「いや、最近飽きてきたところだ」
りーちゃん「そうですか……」
平岡・りーちゃん「……」
平岡(話題が……)
平岡「……あー お前と宮森って高校の先輩後輩なんだっけ?」
りーちゃん「え? そうですよ 2こ上の先輩です」
平岡「あいつって昔からあんな感じなの?」
りーちゃん「えーっと 高校の時はもっと楽観的な感じだった、です 思いついたら即行動、みたいな」
平岡「ふーん」
りーちゃん「あでも、昔から自分達のリーダーでしたよ なんというか人を引きつける不思議な魅力があるんですよね……」
平岡「あーそれは分かるかもな あいつ無駄に前向きだし、人を立てんのも上手いし、クリエイターは気分いいだろうな」
りーちゃん「そうなんす!あ、です! 宮森先輩がいるとみんな楽しそうに作業してたです」
平岡「へー」
りーちゃん「……あの なんで急に宮森先輩の話、したんですか」
平岡「あぁ? 別に意味はねーけど…… (共通の話題がそれしかねーし)」
りーちゃん「そ、そうですか」
平岡(あ、こいつ変な勘違いしてそうだな……)
平岡「あのな」
りーちゃん「おいちゃん先輩はすごいです 自分の力でどんどん前に進むことができて」
平岡「んあ?」
りーちゃん「それに比べて自分は、おいちゃん先輩に引っ張ってもらわなければ舞台に上がることすらできなかったです」
りーちゃん「今の仕事だって、舞茸さんの力がなければ自分なんかに任されないです……」
平岡(こいつ……)
りーちゃん「自分は、他人に頼ってばかりで……」
平岡「何言ってんだよ お前」
りーちゃん「あ、ごめんなさい つい……」
平岡「コネだろうと媚びだろうと、それ込みでお前の実力だろ」
平岡「それにお前に今の仕事があんのは、掴んだチャンスを生かしてお前が努力してきたからだろうし」
平岡「卑屈になる必要ねぇだろ、別に」
りーちゃん「…… 前と言ってる事が違うっす……」
平岡「だぁああああ!! やっぱお前あの時のことまだ根に持ってんのか! しつけーやつだな……」
りーちゃん「!! ね、根に持ってるとかじゃあ……」
平岡「……悪かったよ あん時はまだ色々上手くいってなくてつい八つ当たりしちまった」
平岡「女がどうこうとか言った気もするけど、とんだ言いがかりだったな 反省してる」
りーちゃん「あわわ…… 別に謝罪の言葉が欲しくて言ったわけじゃあ……」
平岡「んだよ 土下座でもしろってか?」
りーちゃん「やっ!! いいっす! しなくていいっす! です!」
平岡「んじゃまぁ 水に流してくれ」
りーちゃん「はいっす! あ、です!」
平岡「……」
平岡「お前そのしゃべり方だけど……」
りーちゃん「うっ……」
平岡「変にデスデス言ってんのは遠まわしに俺に死ねって呪いでもかけてたりすんのか?」
りーちゃん「へ? まさか! そんなわけないじゃないですか!!」
平岡「んなら普段通りにしゃべってくれ 俺のこと嫌いなのは構わねーけど、露骨に他と差つけられっとやりづれーんだよ」
りーちゃん「なっ!! 嫌いじゃないっす!! 全然嫌いじゃないですよ~!!」
平岡「そうそう それでいい あとお前やたら宮森を神格化してるみたいだけどあいつも――」クドクド
制作室
タロー「おーーーっす大ちゃん! 調子はどう? ちなみに俺は今日も絶好調!!」
平岡「ぼちぼちだよ ったくいつも無駄にテンション高いなお前は……」
タロー「当然! なんたって三女を成功させた俺の未来は輝いてるからね! そろそろ高梨監督のオファーが来ちゃうんじゃないかと」
平岡「来るわけねーだろ その根拠のない自信はどっからくるんだか」
タロー「つーわけで今度飲みに行こーぜい! 仕事の悩み、あるっしょ!?」
平岡「何がつーわけでだよ 仮に悩みがあってもお前には相談しねーよ」
安藤「飲み会、いいですね! たまにはわたしたちも連れてってくださいよ~」
佐藤「確かに、仕事以外でご一緒することはあまりありませんでしたしね」
みゃーもり「それじゃみんな週末にでも飲みに行かない? 矢野さんどうですか?」
矢野「いーんじゃない? 修羅場になる前に羽根伸ばしときたいしね」
タロー「え、矢野さんも来ちゃう流れ……?」
矢野「なーに? タロー?」
タロー「いえ、なんでもありません! まーお子ちゃま達の面倒を見るのも大人の務めだしね、大ちゃん」
平岡「勝手に話進めんなよ…… 俺は忙しいんだけど?」
矢野「ならそこの暇そうなバディに手伝ってもらったら? 飲み会の時間くらい空くでしょ」
平岡「……」
安藤「矢野さんつえー……」
みゃーもり「じゃあお店予約しときますね!!」
佐藤「私が電話します」
タロー「しゃぁーーー!! お仕事頑張っちゃうぜーーー!!」
松亭
\カンパーーーイ!!/カッ
タロー「みんなお疲れー!! かぁーービールがうまい!!」
矢野「タロー あんま騒ぐなよ?」
タロー「わぁかってますよ! ほらディーゼルさんも飲もう飲もう!」
りーちゃん「はいっす! なんかすみません自分まで混ぜてもらっちゃって……」
安藤「いえいえ! 今井さんとも飲んでみたいと思ってたんですよ~」ワイワイ
平岡「……」ゴクゴク
ずかちゃん「おいちゃんお疲れ」
みゃーもり「あ、ずかちゃん ごめんねー大勢で」
ずかちゃん「いえいえ いつもありがとうございます」
ずかちゃん「で、平岡さんってどっち? まさかあのモヒカンの……」
みゃーもり「いやモヒカンじゃないムスっとした方だよ」
ずかちゃん「ふ~ん 見た目はまあまあ……」
タロー「なになに今俺の話してた? あれ? 店員さんどっかで……」
ずかちゃん「えっと…… ごゆっくり~」ニコッ
タロー「ふむ…… ん? ちょっと大ちゃ~ん全然飲んでないじゃないの~」
平岡「うるせーな…… まだ始まったばかりじゃねーか」
タロー「だめだよそんなんじゃあ 今日は潰れるまで飲む約束でしょ、大ちゃん!」
平岡「んな約束してねーよ!」
りーちゃん(タローさんと平岡さん、ホント仲良しっすね……)
りーちゃん(大ちゃん、かぁ……)
矢野「平岡くんあまり強くないんだから無理しちゃだめよ」
平岡「分かってるっつの」
安藤「……そーいえば矢野さんと平岡さんって、専門学校の同期なんですよね?」
矢野「そうだけど?」
安藤「実はお二人は昔、恋人同士だったり……?」ニヤニヤ
りーちゃん(!!)
平岡「はああぁぁ!?」
矢野「ないない全然ない あり得ないから」
みゃーもり「ですよねー……」チラッ
りーちゃん(ふぅ……)
佐藤「では専門学校時代の平岡さんはどういった方だったのでしょうか」
平岡「はぁ?」
タロー「なになに佐藤さん 大ちゃんに興味深々?」
りーちゃん(!!)
佐藤「いえ、平岡さんは専門時代ブイブイ言わせていた、と高梨さんから聞いていたので」
平岡「……タロー?」
タロー「あれー…… そんなこと言ったけなぁ……」
矢野「ふふっ 専門時代の平岡くんはねぇ……」
平岡「おいっ!」
矢野「やる気のかたまりで、行動力も人一倍あって、いっつもみんなの中心にいたっけなぁ」
矢野「こんな作品が作りたいんだって目をキラキラさせて語ってたね」
安藤「キラキラ……」
佐藤「まるで想像できませんね」
みゃーもり「ちょっ、佐藤さん!」ブフッ
平岡「……」プルプル
りーちゃん「そ、それじゃあその…… 学校では結構人気だったり……?」
矢野「そうだねぇ モテモテだったね」
安藤「!! 男にですか!? 女にですか!?」
矢野「どっちも」
安藤「ふおおおおおお!!」
佐藤「なるほど 異性だけでなく同性からも慕われる人徳がおありだったのですね」
りーちゃん(むむむ……)
みゃーもり(りーちゃんかわいい……)
矢野「それが今じゃ見る影もなくなっちゃって…… 月日とは残酷なものだね」
平岡「おまっ……」
タロー「そんなことはぁない!」
りーちゃん「そうっす!! 大ちゃんは今でもキラキラしてるっす!」
「「「「「「!?」」」」」」
安藤「今井さん、今大ちゃんって……」
りーちゃん「はっ!! いやっあのっ 違くて……」
タロー「おいおい大ちゃん! まさかディーゼルさんといい仲だったの!?」
平岡「バッ…… んなわけねーだろうが!」
矢野「平岡くん…… こんな若い子に手を出してたなんて……」
平岡「ちげーつってるだろ!!」
りーちゃん「そうっす! ノリでつい言っちゃっただけで…… 平岡さんすみません!」
平岡「いや謝ることじゃねーけど……」
タロー「まっ大ちゃん呼びしていいのはバディである俺だけだわな しかし大ちゃん満更でもなさそう」
平岡「ねーよ!!」
みゃーもり「まぁまぁ…… ところで私、矢野さんの専門時代のことも知りたいなぁ~なんて」
矢野「私!?」
平岡「あぁ…… 俺のこと散々茶化しやがったが、こいつも相当なサブカル好きでな……」
矢野「ちょっと 余計なことは言わないでよね」
安藤「何ですか何ですか!? もしかしてBL? まさかのコスプレ?」
佐藤「コスプレ…… 仮装して楽しむというあれですか」
りーちゃん(ふぅっ~~~! 焦ったっす!!)
ムサニ
興津「……それで、新人制作への指導要項については今月中にまとめておいてください」
平岡「……」
興津「平岡君、聞いていますか」
平岡「あ すんません 大丈夫です」
興津「……では分担はお二人にお任せしますので お先に失礼します」
平岡・矢野「お疲れ様です」
矢野「ちょっと まさかまだお酒残ってんの?」
平岡「ちげーよ 少しボーっとしてただけだろ」
矢野「もう年なんだから気をつけなね」
平岡「年寄り扱いしてんじゃねー!!」
平岡「……ん」
りーちゃん「あっ 平岡さんこんばんは こないだはお疲れ様でした」
平岡「おう お疲れさん」
平岡・りーちゃん「……」
りーちゃん「えっと……それじゃ仕事頑張ります!」
平岡「ああ」
平岡(なんか調子狂うな……)
りーちゃん(うぅ~こないだの飲み会は失敗したっす…… せっかく普通に話せてたのに……)
りーちゃん(急に馴れ馴れしい奴だって思われたかなぁ……)
木下「ふんふふ~ん あ、ディーゼルさん、から揚げ食べる?」
りーちゃん「……」
木下「……ディーゼルさん?」
りーちゃん「!! あっすみません! いただくっす!///」
木下「う、うん」
木下「ディーゼルさん、なんだかメスの顔してた……」
山田「えぇ!?」
木下「から揚げ好きなのかな?」
円「それメシの顔ですよ、監督」
みゃーもり部屋
みーちゃん「へー ずかちゃん先輩のとこで飲んだんですか」
絵麻「わたしも行きたかったな……」
みゃーもり「ごめん 絵麻忙しそうだったし……」
ずかちゃん「で、例のあの人、ばっちり見てきたよ」
りーちゃん「例のあの人て……」
みーちゃん「ずかちゃん先輩的にはどう評価しましたか」
ずかちゃん「んー 顔はまあまあ 悪い人でもなさそう 後は終始いじられてたなぁ」
みゃーもり「打ち解けてからは結構いじられキャラかも」
ずかちゃん「それよりそわそわしてるりーちゃんがかわいかった」
りーちゃん「ちょっ 何言ってるんですか!」
絵麻「りーちゃん 平岡さんとお話してみた?」
りーちゃん「あっはい ちょくちょく話してるっすよ」
3DCG「どんなこと話してるの?」
りーちゃん「えーと…… 仕事以外だと……基本おいちゃん先輩の話っすね」
みゃーもり「へ??」
りーちゃん「おいちゃん先輩がいかに有能か、実例をあげながら語り合ってるっす」
みゃーもり「ちょっ やめてよー///」
絵麻「……それって平岡さんがおいちゃんに気があるってことなんじゃ」
りーちゃん「え」
絵麻「だって何もないのにわざわざおいちゃんの話なんかしないでしょ」
みゃーもり「なんかって何!?」
りーちゃん「うっ そういえばやけにおいちゃん先輩に詳しい気がするっす……」
絵麻「平岡さん小心者だから、後輩を利用して遠まわしにアピールしてるのかも……」
ずかちゃん「絵麻 毒が出てるよ」
みゃーもり「そんな! 困る困る! 平岡さん根はいい人だけどわたしの好みとは違うし……」
みゃーもり「それに年も離れてるし!」
りーちゃん「それ言ったら自分のが離れてるっすよ……」
高野麻美?「ま、まぁまぁ 話しやすい共通の話題ってだけなんじゃないかな」
ずかちゃん「そうそう それにわたしの見立てじゃあの手の男の人はね~」
ずかちゃん「絵麻みたいな根く……大人しくて黒髪の子がタイプだと思うよ!」
りーちゃん「え」
タイヤ職人(ずかちゃん先輩今根暗って言おうとしたな……)
絵麻「そんなことないと思うけど…… あ、でも平岡さん、わたしには結構優しい……」
みゃーもり「それは制作と作画だし…… まぁ清楚な子が好きって男の人は多いかも」
りーちゃん「わたし、清楚っすかね……」
タイヤ職人「りーちゃんは無邪気な末っ子タイプ、かな でも知的なとこもあるよね」
絵麻「うん りーちゃんにはりーちゃんの魅力があるよ 話しててすごく楽しいとか」
ずかちゃん「それにりーちゃん、こないだの飲み会で大胆アピールしてたしね!」
りーちゃん「へ?」
みゃーもり「りーちゃん何かしてたっけ……」
ずかちゃん「ほら 唐突に平岡さんをあだ名?で呼んだでしょ」
みゃーもり「ああー いつの間に距離縮めてたの!?ってびっくりしちゃったよー」
ずかちゃん「本人も驚いてたし、あれからりーちゃんのことを意識せざるをえなくなってるはず! 高等テクね」
りーちゃん「そ、そうなんですかね…… 普段通りに見えましたけど」
ずかちゃん「内心ドキドキよ~」
みゃーもり「りーちゃんすごい! どこでそんなテク習ったの~」
りーちゃん「やっ 自分はただ平岡さんのこと考えてただけで……」
絵麻「///」
みーちゃん「ずかちゃん先輩もなんでそんな男心分かるんですか?」
ずかちゃん「そりゃ声優だからね」
みーちゃん「それ、関係ありますか?」
ずかちゃん「とにかく! 意識させてしまえばこっちのもの! 後は攻めあるのみだよ!」
りーちゃん「攻め……すか」
ずかちゃん「デートに誘ってみたり? あとりーちゃんなら胸をこう……」
りーちゃん「なっ 無理っす無理っす!!」
みゃーもり「でもでも年下のかわいい女の子に言い寄られたら誰でも悪い気しないよ!」
絵麻「おいちゃんはざっくりしすぎ……」
絵麻「でも、そろそろ勇気を出してみるべきかもね 何事も、一歩踏み出さないと結果は得られないんだし……」
りーちゃん「絵麻先輩……」
藤堂美沙「応援してるよ! 上手くいったら話聞かせてね!」
りーちゃん「……うっす! 頑張るっす!!」
ムサニ
平岡「失礼しまーす っと……」
山田「お、平岡 どうした」
平岡「いえ、今井さんってまだ来てないですかね」
山田「ああディーゼルさんならさっき、おしっこもれちゃう~って」
円「セクハラで訴えられますよー」
山田「で、何か用事か?」
平岡「いや設定制作の資料の件で…… また出直します」
制作室
りーちゃん「あ、平岡さん 山田さんから探してたって……」
平岡「ああ これ こないだ頼まれた資料まとめといたよ」
りーちゃん「あ! ありがとうございます! すみません、お忙しいのに……」
平岡「このくらい訳ねーよ んじゃ確かに渡したから」
りーちゃん「はいっす! ……あのー」
平岡「んー?」
りーちゃん「平岡さん、もうご飯食べました?」
平岡「ちょうど今行こうと思ってたとこだけど」
りーちゃん「今日もお弁当ですかね」
平岡「いや、今日は外に食いにいくつもり」
りーちゃん「じゃ、じゃあわたしもご一緒していいですかっ?」
平岡「は?」
平岡(な、なんだこいつ急に…… 金欠なのか? そうなのか?)
りーちゃん「や、やっぱ駄目っすかね……?」
平岡「いや…… 別に……」
りーちゃん「ホントですか! ありがとうございます!」
平岡「つってもただのファミレスだぞ? うまいもん食いにいくわけじゃ……」
りーちゃん「はい! ファミレス上等っす!」
平岡(何がそんなに嬉しいんだか……)
タロー「うーーっす 大ちゃんお疲れー」
りーちゃん(うっ……)
タロー「大ちゃん今からメシ?」
平岡「お、おう こいつ連れてファミレスにな あ、そうだお前も行くか?」
タロー「お! いいねーいいねー! どうせならちょっといい店に……」
りーちゃん(……)
タロー「! ……っと思ったけど悪い! 大ちゃん! 実は急ぎの仕事が残ってたわー」
りーちゃん(!!)
平岡「あ? そうなのか? 珍しいなお前が仕事優先とか」
タロー「何を言う! わたくし高梨太郎は常に仕事人間ですよ んじゃそゆことでごゆっくり~」ニヤニヤ
平岡「何だあいつ…… じゃあ行くとしますか」
りーちゃん「は、はいっす! よろしくお願いします!」
ファミレス
平岡・りーちゃん「……」モグモグ
平岡「……あーお前最近ほぼ毎日ムサニに来てるみたいだけどちゃんと休んでんのか?」
りーちゃん「へ? も、もちろんです 全然無茶とかはしてないっすよ!」
平岡「そうか 別に家でやっても誰もサボってるなんて思わねーぞ?」
りーちゃん「いやー自分、家では作業捗らないタイプなんで……」
りーちゃん(本当は大ちゃんに会いたいからっすけど)
平岡「ふーん それはちょっと分かるかもな」
平岡「それにまぁお前が会社に来てくれたほうがこっちも助かるわ」
りーちゃん「え!? それってどういう……」
平岡「なんたって監督達の仕事の進みが段違いだからなー 若い女と仕事できてモチベーション上がってんだよ」
りーちゃん「い、いやー さすがにそんなこと……」
平岡「あんだよ 露骨にテンション違って見てておもしれーくらいだよ」フフッ
りーちゃん(あ、ちょっと笑ったっす)
平岡「脚本の方はどうなんだ? もう仕上がってんだろ?」
りーちゃん「あ、はい でも結構直されちゃって…… 自分が考えた、とは言いづらいですね……」
平岡「ふーん そういうもんか」
りーちゃん「舞茸さんああ見えてスパルタですから…… でもすっごく勉強になるっす!」
平岡「タフなんだな、お前」
りーちゃん「脚本家はずっと自分の夢でしたからね 簡単にはへこたれないっす」
平岡「夢か……」
りーちゃん「あ! 平岡さんの夢はなんなんですか? どんなアニメが作りたいんですか?」
平岡「…… 俺は夢なんてとっくに捨てたよ」
りーちゃん「え……」
平岡「俺はお前みたいにタフじゃなかったからな…… ちょっと現実見えただけで諦めて、やさぐれて……」
平岡「後は知っての通り、無駄に年食っちまったよ」
りーちゃん「そ、そんなこと……」
平岡「あー悪い…… 愚痴るつもりはなかったんだけどな それに今はそんなに卑屈にゃなってねーよ」
りーちゃん「……でも、作りたい作品はあったんですよね? 夢はちゃんとあったんですよね?」
平岡「それはそうだけど…… 素面で語るもんでもねーから」
りーちゃん「あっじゃあお酒飲みますか!?」
平岡「飲まねーよ! それに飲んでも語らねーから!」
りーちゃん「そんなぁー…… 知りたいっすよー……」
平岡「いやだからそんな面白い話じゃねーっての」
りーちゃん「だ、だったら……」
りーちゃん「今度のお休みの日に、わたしと二人で出かけませんか!!」
平岡「」
平岡「……は、はぁ?? 何でそういう話になんだよ……」
りーちゃん「い、いや二人なら存分に語れると思うし……」
りーちゃん「それに自分、男の人と二人で出かけたことってなくて……社会勉強っていうか……」
りーちゃん「そう!! 今後の脚本のためにも必要なんです!! ど、どうっすか!?」
平岡「お前……脚本のためとは言え10近く上のおっさん連れて出かけるとか体張りすぎだろ……」
りーちゃん「ひ、平岡さんはおっさんじゃあないですよ!」
平岡「と、とにかくそういうのは大学の友人にでも頼めよ ほら、そろそろ仕事戻るぞ 奢ってやるから」
りーちゃん「あうう……」
平岡(相手は女子大生…… さすがに年の差ありすぎるしな……)
平岡(そもそも俺なんかと出かけても楽しくねーだろ……)
平岡(……)
ムサニ 昼
平岡「――それじゃ監督、次の打ち合わせ、お願いしますね」
木下「うん、わかった」
平岡「じゃ、失礼します」
山田「あ、あー平岡?」
平岡「? なんですか?」
山田「タローが言いふらしてたんだが、お前昨日ディーゼルさんと飯行ったんだって?」
平岡「!!(あの野郎……)」
木下「なになに? 何の話?」
平岡「い、行きましたけど、それが何か?」
山田「いやな、昨日帰ってきたディーゼルさん、えっらいへこんでたから何かあったんじゃないかと思ってな……」
円「目に見えて落ち込んでましたもんねー」
平岡「さぁ…… ただ普通に飯食っただけですよ」
山田「ホントかぁ? お前またブチ切れたんじゃ……」
平岡「しませんよそんなこと!」
木下「ふむ…… なら痴情のもつれ……か 平岡にまさかの六股疑惑発生 私は遊びだったのねー!!」
平岡「!?」
円「平岡、お前というやつは……」
平岡「なっんなわけないでしょーが! 俺はただ、あいつが二人で出かけようって言ってきたから、断っただけで……」
木下・山田・円「「「は?」」」
木下「何それ? どーいうことっ?」
円「嘘だろ…… 俺達のディーゼルさんが平岡なんかに……」
平岡「俺だってわけがわかりませんよ…… 急に言ってきたし」
山田「つーかお前なんで断ってんだよ! 俺なら喜んで行くね! そしてなんでも買ってあげる」
平岡「いやいや年の差的に問題あるでしょ……」
円「年は関係ねぇ! ましてディーゼルさんは大学生なわけだし何も問題ないだろー」
山田「円は今度女子中学生ものの監督やるんだよな」
円「それ今関係ないでしょ」
平岡「円さん、ロリコンだったんですか」
円「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ!」
木下「ま、何にせよディーゼルさんが落ち込んでたと言うのならそれだけ真剣だったってことだよね」
木下「平岡はまじめに話を聞いてあげたの?」
平岡「!! ……いや まともに取り合わなかった、ですね……」
木下「うん、ならね、例え平岡にその気がなかったとしても真剣に向き合ってあげないとね」
木下「円の言うとおり、そもそも恋に年の差は関係ない! それも考えた上で答えを出してあげればディーゼルさんも納得してくれるよ、きっと」
山田「…… 監督が真面目なことを言ってる……」
円「さすが結婚してたことのある人は言うことが違うなー」
木下「俺はいつでも真面目だって言ってるだろ! それに結婚してたって言い方、気になるんだけどっ!」
平岡(年の差は関係なく、俺があいつをどう思ってるのか……か)
平岡(いやだいたいあいつがなんのつもりで誘ってきたのかもはっきりしてないけど……)
山田「俺はたとえ平岡がロリコンでも何も言わねーよ?」
平岡「……俺はロリコンじゃないっすよ」
円「ディーゼルさんは合法だからお前がロリコンでも犯罪にはならないぞー」
平岡「違いますって……」
久乃木「ロ…ロリ…?」
平岡「だから俺はロリコンじゃねぇって言ってるだろ!!」
久乃木「ひっ……!!」
平岡「あっ……」
やまだ・マドカ「「久乃木さんをいじめるんじゃねぇ!!」」
夜
ガチャッ
平岡「失礼します」
りーちゃん「……」ビクッ
平岡「今井さん、ちょっと時間いいですか」
りーちゃん「へ!? え? だだだ大丈夫っす!です!」
平岡「んじゃちょっと屋上に」
りーちゃん「は、はい! すぐに!」
屋上
りーちゃん「……」
平岡「あー昨日言ってたことなんだけど……」
りーちゃん「」ビクッ
平岡「もう別のやつに頼んだりしたか?」
りーちゃん「え!? いや全然!!」
平岡「そっか んじゃ今度の日曜とか空いてねーか? 見たい映画あんだけど、一人で行くのもなんだし……」
りーちゃん「」
平岡「無理にってわけじゃねーから その、よく考えたら俺も暇でな……」
りーちゃん「い、行きます!! 日曜! 大丈夫です!」
平岡「お、おう んじゃ詳細はまた連絡するから 時間とらせて悪かったな」
りーちゃん(や、やった! デートっす! 大ちゃん、気をつかってくれただけかもだけど……)
りーちゃん(でも大きなチャンス、だよね うー今からドキドキするっす……)
日曜
りーちゃん(ついにこの日がやってきたっす……)
りーちゃん(服、これでよかったかな…… 絵麻先輩に清楚なのを借りとくべきだったかも)
りーちゃん(いやでもサイズが合わないかもだし…… それに自分には自分の魅力がある……っす!)
りーちゃん「ってあぁ!! 時間マズイっす~!!」
映画館
タッタッタッ
平岡「……ん 来たか」
りーちゃん「すっすみません~ 自分いっつもギリギリ体質で……」ハァハァ
平岡「いやまだ時間あるし 別に急いでこなくても」
りーちゃん「そういうわけには…… あっそういえば映画、何見るんですか?」
平岡「あー一応ペロ○ェラ4ってアニメ映画を考えてたけど、別になんでもいーよ」
りーちゃん「P4Mっすか!! 自分も見たかったです! それにしましょう!」
平岡「ん じゃあそーすっか」
りーちゃん「~♪」
平岡(休日だからか、ちょっと気合入ってんな…… まぁ、かわいいよな……)
上映中
「うおおおおおお ペロクマァアアアア!! そいや!!」
「お前は俺で、俺はお前だったんだな…… なるほどなー」
「そうだ…… 俺はひとりなんかじゃない!! いくぜ! 相棒!」
りーちゃん(ほほ~ いい話っす 原作を上手いこと再構成してるっすねぇ)
りーちゃん(大ちゃんはどんなこと考えながら見てるんだろ……)チラッ
平岡「……」ウルッ
りーちゃん(真剣そのものっすね…… って涙ぐんでる? なんで?)
喫茶店
りーちゃん「いやー 面白かったですねー!」
平岡「ああ…… 原作が良すぎるから正直期待してなかったが予想以上だったな」
りーちゃん「脚本、すごく良かったっす! 内容知ってても感動できましたし」
平岡「やっぱおまえは話に注目して見てたんだな」
りーちゃん「はいっす 平岡さんもやっぱりカット数とか気にしちゃいます?」
平岡「いや俺はなるだけそういうのは考えないようにしてるな 話に集中してーから」
平岡「でも演出すげーよかったな…… 曲のタイミングとか鳥肌もんだったし」
りーちゃん「なるほど! 前においちゃん先輩達と映画を見たときは、みんな職業病みたくなって――」ワイワイ
居酒屋
りーちゃん「乾杯です! やー遊んだっすね~」
平岡「乾杯 ああ、もうクタクタだ しかし居酒屋で飯食わなくても……」
りーちゃん「すみません…… お酒いっぱい飲みたい気分だったんで」
平岡「別にいーけど」
りーちゃん「今日はすっごく楽しかったです あの、平岡さんはどうでした……?」
平岡「俺も楽しかったよ 誰かとこんな風に遊んだのって何年ぶりだったか」
りーちゃん「それはよかったっす!」
平岡「……」
りーちゃん「……」
りーちゃん「それで、その、平岡さんの夢の話ですけど……」
平岡「……ったく何を期待してんのか知らねーけど、マジで面白い話でもなんでもねーぞ」
りーちゃん「それでも、わたしは知りたいです 平岡さんのやりたかったこと」
平岡「……」
平岡「俺はな、昔からアニメが大好きで、色んなアニメを見てきた」
平岡「そのうち見るだけじゃ物足りなくなって、自分で作りたくなって、その道に進むことに決めた」
平岡「んで実際に学んでみたらすげー奥が深くて、アニメはホントに世界に誇れる文化だなって思ったよ」
平岡「専門時代は同期にも恵まれててな、みんなやる気があって、アイディアもあって、毎日刺激的だった」
平岡「気の合う仲間と作品を作るのはすごく楽しくて、それにそこでは手間をかけた分良い評価がもらえて……」
平岡「その時から俺の夢は、信頼できる仲間と一緒に、世界中に認めて貰える作品を作り上げること、だった」
平岡「カンヌで『ある視点』部門の作品賞、国際批評家連盟賞を取るんだ、なんつって一部からは意識だけは高いなって笑われたりもしたけど」
平岡「あの時のバカな俺は本気で夢は叶うって思ってたよ……」
平岡「実際現実を見てみると、俺には何にもなくて……ってこれは余計だな」
りーちゃん「いえ…… できれば全部話して欲しいです」
平岡「……まぁ後は前にも少し話した通りだよ」
平岡「制作進行として働き始めたら、周りのクリエイターはどいつもこいつも自分のことばかり考えてて」
平岡「そのくせ責任だけは俺になすりつけてきやがって、上司は当てにならねーし……」
平岡「現実にすっかり絶望しちまった俺は、雑な仕事して虚勢だけ張って、ただなんとなく働いてたってわけだ」
平岡「ムサニに来て、宮森やタローのやつに救われなかったら、今も腐ったままだったろうな……」
平岡「そもそも俺に、宮森やタローやお前みたいなへこたれないだけの強さがあれば、誰にも迷惑かけずに済んだんだが」
りーちゃん「そんな…… 平岡さんは弱くなんてないです……」
平岡「…… どうだ? 脚本のいいネタになりそーか?」
りーちゃん「……」
りーちゃん「わたしは、悲しいだけのお話は好みじゃないです」
平岡「……」
りーちゃん「だから、例え途中で挫けても、仲間に支えられて再び立ち上がる……」
りーちゃん「そんな希望のあるお話が書きたいです」
平岡「…… そーかい まっ頑張れよ」
りーちゃん「脚本家になることが夢だ、ってわたし言いましたけど、その後の夢ももちろんあるっす」
平岡「?」
りーちゃん「高校のアニメーション同好会のみんなと、当時作った作品をまた一緒に作り直そう、って夢です」
りーちゃん「でもわたし、欲張りなので…… 新しい夢ができました」
平岡「……新しい夢?」
りーちゃん「はい! わたし、平岡さんの夢のお手伝いがしたいです!!」
平岡「!!」
平岡「俺の夢って…… だからもう俺は自分の身の丈にあった仕事をやってくつもりだし……」
りーちゃん「身の丈ってなんすか! 自分に見切りを付けるのはまだ早いと思うっす!」
平岡「……」
りーちゃん「まだ脚本家見習い……の卵みたいな自分が何言ってるんだって感じっすけど……」
りーちゃん「でも絶対脚本家になって、それで…… 平岡さんの信頼できる仲間の一人になってみせます!」
りーちゃん「だから…… 平岡さんも……」
平岡「……」
平岡「……ったく くせーな」
りーちゃん「なっ!! わたし臭います!? 酒臭いですか!?」
平岡「セリフがだよ…… 聞いてて痒くなるっつーの」
りーちゃん「うっ」
平岡「でも、ありがとな」
りーちゃん「!!」
平岡「俺だって実際はなかなか割り切れなくて、ずっとウジウジしてたんだ」
りーちゃん「平岡さん……」
平岡「……そうだな、このままいってPを目指すか……」
りーちゃん「おっ天から全てを操っていくっすね!?」
平岡「それとも山田さんあたりに頼み込んで演出の勉強でもすっか……」
りーちゃん「それもいいっすね! その時は自分も一緒にお願いするっす!」
平岡「……ふっ ったくお前ってホントお人好しなのな」
りーちゃん「へ?」
平岡「普通、こんないい年した大人がウジウジしてんのなんて見たら、こうはなりたくねーって呆れるもんだけど……」
平岡「それをお手伝いしたい! だもんな…… 変わってるよ、お前」
りーちゃん「……自分はお人好しなんかじゃないし、変わってもないです」
りーちゃん「ただ…… 平岡さんのことが好きだから……」
平岡「!!」
りーちゃん「あっもちろん恋愛的な意味で、です……」
平岡「わかってるよ…… でも俺、お前に酷いこと言った記憶しかねーんだけど……」
りーちゃん「そんなことないっす! 最初は、その、ちょっとびっくりしたっすけど……」
りーちゃん「でもそれからずっと平岡さんのこと見てたし、認めてもらうために頑張れたし」
りーちゃん「優しいところとか、大人の余裕みたいな頼もしいところもあるんだなって分かって……」
りーちゃん「そのどれもが自分にとってすごい魅力的だったっす!!」
平岡「か、痒くなるからやめろって……」
りーちゃん「あっそのちょっと照れ屋さんなところも好きっす!」
平岡「」
りーちゃん「平岡さんは…… わたしのこと、どう思ってますか……?」
平岡「……」
平岡「お前はいつも元気で、一生懸命で……したたかなところもあって……」
平岡「正直すげー魅力的だと思ってた」
りーちゃん「!!」
平岡「でも俺はこんなだし…… お前よりずっと年上のおっさんだから正直眩しくて……」
りーちゃん「年は関係ねぇ!です!」
りーちゃん「それにわたし、おっさんも好きですよ!」
平岡「微妙に矛盾してんぞ……」
平岡「まぁそうだな…… 年の差は関係ないってか……」
平岡「……俺も、お前のこと好きだよ」
りーちゃん「!!」
りーちゃん「それじゃあ…… わたしたち……」
平岡「ああ その、なんつーか、付き合うみたいな……」
りーちゃん「恋人同士っすね!! う、嬉しいっす!! 勇気出してよかったです……」
平岡「ただな、年は関係ねぇって言っても俺はいい年だし…… 今更遊びで付き合うなんて時間はねーからな」
りーちゃん「もちろんっす! 絶対幸せにしてみせるっす!!」
平岡「おい、なんかセリフが逆じゃねーか? 俺が行き遅れた女みてーなことに……」
りーちゃん「ふふん 今時の女は頼もしいんすよ」ニッ
平岡「……そーかい じゃあ俺も負けねーように頑張らないとな 男として」
平岡(こうして、俺達は付き合うことになった)
平岡(年の差なんてつまらないことにこだわって、意地を張ってたが、俺はとっくにあいつのことが好きだったんだと思う)
平岡(俺なんかのことを好きになって支えてくれるやつもいることだし、俺もちゃんと夢に向き合わないとな……)
りーちゃん「あっそうだ わたしたち恋人同士になったんだから、その、大ちゃんって呼んでもいいですか?」
平岡「はぁ?」
りーちゃん「まぁ心の中ではずっと大ちゃんて呼んでたんですけど」
平岡「……好きにしろよ」
りーちゃん「それから大ちゃんにも、わたしのことちゃんと名前で呼んで欲しいっす」
平岡「あぁー…… まぁそうだな」
りーちゃん「……というか わたしの名前ちゃんと覚えてますよね?」
平岡「あ、当たり前だろ みどり……だよな?」
りーちゃん「はいっす! みどりでも、りーちゃんでも、ディーゼルでも…… あーでも特別な呼び名が欲しいところっすね……」
平岡「みーちゃん……とか?」
りーちゃん「それ、同好会の先輩と被ってるんです…… だからわたしりーちゃんってことに」
平岡「なるほどな…… まぁ呼び方は考えとくよ」
りーちゃん「はい! お願いします!」
平岡「それじゃあ…… コンゴトモヨロシク」
おわり
以上です。糞長くなってすまんこっす
SHIROBAKOの旬はとっくに過ぎちゃってるけど、今期アニメが本格化する前にでも平岡とりーちゃんの話を書きたかったので……
ここまで読んでくれた人ありがとうございます
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません