ギャオス「怪獣王にあたしはなるっス!」(8)

京都駅を舞台にしたイリスとの死闘の熱も冷めぬまま、ガメラは空を覆い尽くすギャオスの群れを相手にしなければならなかった。
世界中から集まったギャオスは数千、ガメラはひとり。

ギャオスとの戦闘とレギオンの侵攻を経験している自衛隊は、陸上航空全兵力をもってガメラの援護を行うが、千をこえるギャオスの超音波メスの一斉掃射に、人間の火力は無効化されてしまう。

イリスとの戦闘で片腕を失い満身創痍のガメラは、それでも大きく息を吸い込み、プラズマ火球をギャオスの群れに打ち込んでゆく。
黒い雲のようなギャオスの群れから、一体、また一体と、プラズマ火球の命中したギャオスの肉片が飛び散るが、ガメラの火球の連射でもギャオスの群れは止まらない。

雷色の超音波メスが雨のように降り注ぎ、ガメラを切り刻む。残った手も両足も、頭部や甲羅もズタズタに切り裂かれてなお、ガメラは火球の連射を止めないが、血液が目に入り、狙いのそれたプラズマ火球は容易に避けられてしまう。
世界中のギャオスを相手に、健闘むなしくガメラはついに力尽きた。

東京を襲った最初のギャオスの時も、宇宙から飛来したレギオンも、人の憎しみを糧としたイリスをも退けた正義の怪獣が、燃え上がる京都の街に崩れ落ちた。

ギャオスの群れは勝ちどきの声を上げる。失意にうちひしがれ、自衛官たちは最後の抵抗を試みんと機銃や戦車に弾を込める。そして崩れた京都駅からガメラを見守る少女たちの胸の中に、ガメラの声が響いた。

声に空を見上げると、炎上する京都からまっ赤な炎が渦を巻き、ハゲタカの旋回をするギャオスの群れを取り囲み、さらにその中心、倒れ込んだガメラへと流れ込む。

まったく身動きしないまま、炎の流れ込んだガメラの甲羅が輝き始め、赤く発熱し、異変を悟ったギャオスたちが飛び去ろうと翼をひるがえした瞬間。
ガメラはまばゆく輝き、炸裂した。

プラズマの塊となったガメラの肉体は、空を埋め尽くしていたギャオスの群れの一体一体に、意思を持つかのように襲いかかる。
ギャオスの断末魔が京都の夜空にこだまし、プラズマの光と煙が消えたあとには、燃え上がっていた街にすら一片の炎さえ見えず、空を埋め尽くしていたギャオスの群れも、一体残らず微塵と化していた。
そして、全身を火の玉に変えたガメラの姿も、もはやそこにはなかった。

ガメラはたしかに人間の味方だった。最後の、最後まで。

……とか、そんなことはまったく関係なく。

ギャオス「怪獣王にあたしはなるっス!」

ガメラ「怪獣王に?」

ギャオス「うっス! ガメラさん。あたしは怪獣王になるっスよ!」

ガメラ「あー……まあ、その心意気は良いと思うよ。うん」

ギャオス「ありがとうございますっス! そこでガメラさん、どうすれば怪獣王になれるっスか?」

ガメラ「うーん、怪獣王はゴジラさんの座右の銘だからなあ……勝手に名乗っちゃいけないだろうし」

ギャオス「そんなのカンケーないっス! 名乗ったもの勝ちっス!」

ガメラ「だからさ、ゴジラさんが先に名のちゃってるんだって」

ギャオス「……まじっスか?」

ガメラ「うん。マジマジ」

ギャオス「そんなのずるいっス! あたしだって怪獣王って呼ばれたいっス!」

ガメラ「それなら力尽くで奪うしかないな……でもギャオス」

ギャオス「何っスか?」

ガメラ「ギャオス、ゴジラさんに勝てると思う?」

ギャオス「ゴジラさんに? ………………」ガタガタブルブル

ガメラ「ほら、そんなんじゃ無理だって」

ギャオス「ああもう! それならどうすれば良いっスか!?」

ガメラ「そりゃあ、強くなるしかないだろ」

ギャオス「強くなるにはどーすれば良いっスか!?」

ガメラ「え……ええっと、強い怪獣に稽古をつけてもらう……とか」

ギャオス「なるほど、ありがとうございますっス! 行ってくるっス!」バササササ

ガメラ「ああ、行っちゃたよ……大丈夫かな」

…………

ギャオス「強い怪獣……とは言ったものの、ガメラさんに強い怪獣の居るところを教えてもらわなかったっス……」

ギャオス「どこにいるんだろ……強い怪獣……」

ギャオス「おっ! いらっしゃったっス!」

バサバサバサ

ギャオス「こんにちはっス!」

バルゴン「……ん?」

ギャオス「ご紹介するっス。この方はバルゴンさん、あたしの先輩っス」

バルゴン「誰かと思えばギャオスか、どうした?」

ギャオス「バルゴンさんは冷却怪獣でして、カメレオンみたいなベロの先の穴から冷却液を吹き出すっス」

バルゴン「おい、ギャオス?」

ギャオス「さらには背中から虹色光線を発射しまっス。コレがまた超強力っス!」

バルゴン「おーい、ギャオス? 来て早々何言ってんだ?」

ギャオス「しかも弱点は水! 細胞がとけてしまうっス。暑い時期、結露でお肌の荒れが怖いって、男の人なのに嘆いてたっス」

バルゴン「おおおい、なんだよいきなり、俺の弱点なんかしゃべって」

ギャオス「じつはバルゴンさんにお願いがあるっス」

バルゴン「お願い?」

ギャオス「はいっス。強い怪獣になるため、稽古をつけてほしいっス」

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