島村卯月(20)「二十歳に!」神谷奈緒(20)「なったから!」 (39)

プルルルル・プルルルル


凛(19)「もしもし、どうしたの加蓮?」

加蓮(19)『凛…助けて…事務所で…』

凛「へっ!?」

未央(19)『しぶりん、ヘルプ!!このままじゃ私たち…』プツッ!

急に切られた電話。
もしかしたら加蓮と未央が誰かに襲われてるのかもしれない。
折り返しても電話は繋がらず、電源も切れてしまっていた。

不安で焦り、胸の鼓動が早くなる。

私の足取りは早くなる。急がなきゃ。


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事務所


バタン!!

凛「加蓮!未央!大丈夫!?」ハアハア


しかし時すでに遅く、そこには変わり果てた…











奈緒と卯月がいた。

未央の誕生日も過ぎ、アイドルとして、
そして大学生として多忙な日々を過ごしていた12月も終盤の頃、
忘年会と称して卯月と奈緒のお酒解禁兼忘年会を行おうと企画されていた。

そんなことをすっかり忘れていた私は、
不覚にも加蓮からの電話を、何の考えもなしに取ってしまったのだ。

もしその電話を取らなければ、
私の夕方からの時間は、もう少し有意義なものになっていただろう。

加蓮「…助けて」

弱弱しい声で助けを求める加蓮の横には、
赤ら顔の奈緒が、気持ちよさそうに加蓮のうなじを堪能していた。

奈緒(20)「加蓮はほんとに良い匂いがするー。
甘いふわあーっとしたにおいー。世界一だわー。うふふふ」スンスン

加蓮「いやぁ…」

腰に腕を回され、がっちり引き寄せられ、身動きが取れないようだ。

加蓮の顔色もほのかに赤くなっている。まんざらでもないのだろうか。

卯月(20)「いいえ!!」

声を張り上げる卯月も同様に、未央の肩を抱き寄せ、うなじに思いを馳せている。


卯月「未央ちゃんの匂いが一番です!柑橘系のフレッシュな匂いが、たまりません!!」スンスンスンスン

未央「うぅ…もうお嫁にいけないよぅ…」

少し涙目になっている未央、カワイイ。

卯月「大丈夫です!!私が未央ちゃんをお嫁さんに貰いますから!!」

そう高らかに宣言する卯月の目は、焦点を捉えていない。

奈緒「いーや、加蓮の匂いの方が一番だね!」

卯月「いいえ!ここは譲れません!!未央ちゃんがミツボシナンバーワンです!!」

奈緒「何をー!?」

卯月「…それじゃあ…」

奈緒「?」

卯月「私の未央ちゃんの匂いを堪能してから反論してください!!
絶対に未央ちゃんが一番です!!ねっ!未央ちゃん!?」

未央「えっ?…あ、いやぁ、そんなに自分の匂いに自信とか無いんだけど…」

卯月「大丈夫です!私が保証します!!未央ちゃんの匂いはナンバーワンで、オンリーワンなんです!!」

未央「お、おう…」

奈緒「そーいう事ならー仕方ない。あたしの加蓮の匂いを嗅いでから卯月も判断するんだな!
絶対に加蓮が一番だ!!なっ?!」

加蓮「きょ、興味ないかなー、匂いのナンバーワンとか…」

奈緒「きっと加蓮の匂いのする香水を作ったら、もう世界中が大騒ぎだな!!さあじゃあ交換だ!!」

卯月「はい!!私の未央ちゃんの匂いを堪能してください!!」

何だろう、私がいることに誰も気づいていないのだろうか。
加蓮も未央ももうどうにでもなれという状態で遠い目をしている。

そして席替えが行われ、奈緒は未央の、卯月は加蓮のうなじに顔を埋めていた。

この風景、需要がある人には相当価値のある場面なんだろうなと、
もう自分も遠いどこかにいるような感覚で眺めていた。


奈緒「」スンスンスン

卯月「」スンスンスン


二人は一心不乱に匂いを嗅ぎ続けている。

そして、十分堪能したのか、お互い見つめ合い、固い握手を交わした。もう何が何だか理解が追い付かない。

奈緒「うんうん、未央の匂いはなんていうか…いいな!」

卯月「ですよね!でも加蓮ちゃんの匂いも格別ですね!香水にしたいです!!」

奈緒「だろ!?でも未央の匂いも香水にしたらヤバいな!!」

卯月「ヤバいですね!!」

二人はまたしても固い握手を交わし、そしてまた各々のうなじに戻っていった。

もうどうすればいいんだろう。というか、プロデューサーはどうしたんだろう。
ここは大人としてしっかりとセーブさせなければいけないところだろうに。

ふと視線を横にずらす。部屋の隅に人影がある。多分プロデューサーだろう。

しかしそこにあったのは、下町のナポレオンを口に突っ込まれ、固定されているプロデューサーの無残な姿だった。


凛「ちょっ!!プロデューサー!?」

奈緒「あ、りーん。遅いぞー!!」

卯月「凛ちゃーん、早くこっちに来てくださーい!!」

凛「二人とも落ち着いて!プロデューサー!!大丈夫!?」

私はとりあえずプロデューサーの拘束を解き、口から一升瓶を抜き取る。

モバP「…り、凛か…。すまない…」

凛「いや、それはいいけど、とりあえずお水いる?」

P「すまない…もう…駄目だ…」

凛「しっかりして!!今倒れたら、今倒れられたら色々面倒!!」

P「…うぅ…」パタリ

凛「プ、プロデューサー!!やめて!!こんなカオスな状況対処しきれないって!!!」


背筋に寒気がする。
私は怖くなり、振り返らないように少しずつ部屋の外へ出ようとした。

…でも遅かった。何もかもが遅かったのだ。まず、この部屋に入ってしまった時点で私の今日は終わった。


ガシッ!!


両腕を柔らかい感触が包み込む。

右に卯月、左に奈緒。

がっちりと両腕をホールドされ、満面の笑みを浮かべて私を見ている。

二人とも私よりも身長が小さいから、必然的に上目使いがプラスされ、
しかも赤ら顔で、普段見る笑顔よりも破壊力があり、手は上がらないけれど、お手上げ状態だ。


卯月「さ、凛ちゃん?」

奈緒「こっちで一緒に楽しもう?」

もう、色々大変です。

凛「ふ、二人とも、ちょっと落ち着こう、ね?」

奈緒「じゅーぶん落ち着いてるよー。なー?」

卯月「はぁい!島村卯月、じゅーぶん落ち着いてます!」


どうしよう、物凄く駄目な気がしてきた。

ふと目線を加蓮と未央に向けてみると、ソファーでぐったりしている。

凛「二人とも、何時からこの宴会はスタートしたの?」

卯月「えーっとー」

奈緒「うーん、確かなー」

卯月「確か17時からでしたね!」

奈緒「おー、そうだったそうだった。流石卯月。しっかりしてるー♪」

卯月「おねーさんですからー。えへへー」

奈緒「私もおねーさんだぞー?なー、りーんー?」


身長の低い二人が、自分はおねーさんと口を揃えて言っている様が何とも可愛らしくて仕方ない。


卯月「さ、凛ちゃんこっちこっち」

凛「え、っちょ、ちょっとまって!」

奈緒「はやくはやくー♪」


二人に引きずられ、ソファーに強制的に腰掛けさせられる。

勿論両脇は奈緒と卯月だ。両手に華なのだろうけれど、もうなんというか、早く逃げたい。

奈緒「さて…」

卯月「はい!」

凛「え、何?」

奈緒「勿論!!」

卯月「です!!」


阿吽の呼吸としか言いようがないほど同時に私のうなじに顔を突っ込んできた。


奈緒「すーーーーー」

卯月「すーーーーー」


物凄い勢いで深呼吸をし始める二人。
そして凄い勢いで抱きしめられる私。もう両腕が痛いんだか柔らかいんだか分からない。


奈緒「いい匂い、凄くいい匂いがする!!」

卯月「たまりません!!!」


二人とも嬉しそうで何よりだけど、私は物凄く嬉しくない。

卯月「ほら未央ちゃん!この匂いを今すぐ嗅ぐのです!!」

奈緒「加蓮!幸せな気持ちになれるぞ!!」

何それ怖い。

未央「…えっと、まだ二人とも嗅ぎ始めたばかりじゃん?」

加蓮「…ほら、二人ともまだ全然凛の匂いを堪能してないでしょ?
もっとじーっくり堪能してから私たちも堪能するから、っね?」


何が、っね?なの加蓮。嗅ぎ始めたばかりって何、未央?
そんな目で私は二人に訴えかけた。それを察したのか、


未央「…私たちの時も30分ぐらい嗅いでたんだしさ?」

加蓮「それぐらい嗅がないと良さがきっと分からないよ?」

凛「」


二人の忍耐力に感服します。

奈緒「それもそうか!」

卯月「よーし、そうと決まれば頑張ります!!」

凛「が、頑張らなくていいから!!」


聞く耳などない。一心不乱に私のうなじで深呼吸を始める二人。
そして褒めちぎられる私。


奈緒「凛は髪の毛きれーだよなー」

卯月「サラサラで綺麗な群青を含んだ黒髪、綺麗でいいですよねー」

奈緒「毛先までしっかり手入れされててさー」

卯月「ずーっとなでなでしてたいです!」

奈緒「よし、今日はずーっと撫でるぞ!」

卯月「おー!」


そうして私の髪は二人に終始撫でられ続ける。
加蓮も未央も、渇いた笑い声をあげる元気しか残っていなかった。

30分後



凛「」チーン

奈緒「ふー、堪能したー」

卯月「なんだか幸せな気分ですー」

奈緒「だなー」

二人はとても嬉しそうに、更にふわふわした状態でソファーに腰を下ろし、お酒を飲んでいた。

机の上に置かれている無数の空き缶、空き瓶。
かなりの量が消費されている。
明日が休みだからまだいいけれど、この二人、一体どれぐらい飲めるのだろうか。

そして、このカオスからいつ抜け出せるのだろうか。

P「…うぅぅ」

凛「プロデューサー!!」

P「り、凛…水を…」

凛「水!加蓮、水を!!」

加蓮「はい!!」

凛「未央!プロデューサーを起こして!!」

未央「はいさい!!」

P「す、すまない…」ゴクゴク

凛「やっとまともな大人が回復してくれた…」

P「迷惑かけたな。まさか二人がこんなに酒乱になるとは…」

加蓮「普段いじられてるストレスがお酒で発散されてるのかなあ…」

未央「しまむー、頑張りすぎの影響をお酒で晴らすなんて…」

凛「…いや、二人の酔い方が異常なだけじゃないかな」

P「そろそろ止めないと明日に響くしな。ここいらでお開きとするk…」

奈緒「よーし!じゃあこれからはトラプリで仲良く飲むぞー!!」

加蓮「…あっ」


私の直感が告げる、これは今まで以上に面倒なことに巻き込まれると。

卯月「いーえ!これからはニュージェネで仲良く飲むんです!!」

未央「…」


未央も加蓮も察したかのように私を見つめる。私もどうしていいか分からないよ。


P「ほ、ほら!今日はもう遅いから、また次の機会に…」

卯月・奈緒「プロデューサーさんは黙ってる!!」ドン!!

P「はい!!」


下町のナポレオンを持ってそんなこと言われたら黙るしかないだろう。

奈緒「じゃあ凛にどっちと飲みたいか決めてもらおーぜ!」

卯月「いいですとも!凛ちゃんは私たちと飲みたいですよね?」


瞳を輝かせながら笑顔で言われると、その瞳を曇らせてはいけないと本能レベルでストップがかかる。


奈緒「凛はうちらと飲むの嫌か?」


こちらは瞳を潤ませながら覗き込むように言われ、これ以上泣かせてはいけないと、母性を持っていかれる。

これはマズイ、非常にマズイ。
いくら酔った席での一場面だったとしても、
この選択次第でこれからの時間が地獄になることは間違いない。

この二人を納得させる選択をしなければいけない。

それは未央も加蓮も同じことを思っているようだ。


加蓮(…凛、お願い!)

未央(この二人を納得させる妙案を!)

凛「…」


卯月も奈緒も私の答えを待っている。


…私に出せる最善の答えは、これしかない。

凛「…奈緒、卯月、私から提案するね」

卯月「はい!」

奈緒「おう!」


私は未央と加蓮の顔を見る。不安そうな二人。
そして二人ともごめん。私にはこんな選択肢しかなかったよ。


凛「奈緒は加蓮を、卯月は未央を膝の上に乗せて」


未央・加蓮「へえっ!?」

卯月・奈緒「?」

加蓮(ちょ、ちょっと凛!?)

未央(そんなことしてどうすんのさ!?)

凛(もう上手く事を回すにはこれしかないの)


奈緒「かれーん、こっちこっちー」ポンポン


凛(ほら、奈緒が呼んでるよ)

加蓮「っちょ!…っほ、ほら私ちょーっと太っちゃってさあ」

奈緒「ほんとか!?プロフィールの体重を逆サバする加蓮がか!
よかったー。ほら、健康になった加蓮の重さを確かめさせてくれ!!」ポンポン

加蓮「」

卯月「ほら未央ちゃん、私の膝の上もあいてますよー」ポンポン

未央「あ、いやー、ほら!この前スリーサイズ測ったらすこーしお尻のサイズが上がっちゃってさ?
しまむーのお膝には乗らないかなーなんて…」

卯月「…未央ちゃん?」

未央「…はい」

卯月「私も一緒に測りましたよね?」

未央「あっ…」

卯月「私もサイズが上がったの知ってますよね?」ニコニコ

未央「」

卯月「未央ちゃんよりお尻の大きい私はもう駄目ってことですか!!?」

未央「ち、違う違う!!全然しまむーのお尻は小さいから大丈夫だよ!!」

卯月「はい、じゃあ」ポンポン

未央「」

奈緒「よーし、凛。膝の上に二人とも座ったぞー?」

卯月「これからどうするんですか?」

凛「それで、私が奈緒と卯月の間に座ればニュージェネレーションとトライアドプリムス、
両方とも一緒にいられるでしょ?」

卯月・奈緒「おー!!」

未央・加蓮「」

卯月「じゃあじゃあ!」

奈緒「片手は凛と手を繋いじゃってー♪」ギュー!

卯月「繋いじゃってー♪」

凛「はいはい」

卯月「空いた手で未央ちゃんを抱きしめちゃってー♪」ギュー!

未央「し、しまむー?苦しい、苦しいって!?」

奈緒「加蓮をぎゅーっと!」ギュー!

加蓮「も、もうどうにでも…」

奈緒「むふふー」

卯月「えへへー」

凛「はぁ…」
















未央「…なんだこれ…なんだこれーーーーーーー!!!!!」

翌日

事務所



凛「おはよう」

未央「お、おはよー、しぶりん…」

凛「昨日は色々とお疲れ様」

未央「流石に強烈だったね…」

凛「気分転換にトレーニングはいいアイディアだよ、未央」

加蓮「でも奈緒が酔っぱらうとあんな風になるって分かったからには、沢山からかわなきゃ♪」

ガチャ


奈緒「よーっす」

卯月「ぉはょぅございまず…」フラフラ

凛「二人ともおはよう。気分はどう?」

加蓮「二人とも昨日は凄かったよー?」

奈緒「…昨日」

卯月「でしゅか?」

未央「…へっ?」

加蓮「えっ?」

奈緒「いやー、それがさあ。さっき卯月と話してたんだけどさあ」

卯月「はい…」

奈緒「楽しかったことは覚えてるんだけど、一切記憶が無くてさ」ハハハ

凛・加蓮・未央「」

卯月「私も気づいたら家のベッドだったので何が何だか…」

奈緒「っで、お酒を抜くために今日は軽めのトレーニングに来たってわけだ」

卯月「頭がガンガンいってます…」

奈緒「じゃ、また今度飲もうな!よーし、とりあえずサウナで汗でも流すか!」

卯月「はーい…それじゃあみなさんまたあとで…」フラフラ


凛・加蓮・未央「」



















次は絶対二人に迷惑かけてやるんだからーーーーーーーー!!!!!!!!!






ちゃんちゃん♪

久しぶりに台本形式で書いた!

次は凛と加蓮が酔っぱらってるSSを書きたい。
日野茜「お米の飲み物ですか!?」高森藍子「はい♪」本田未央「」
も、書いてみたい。

おやすみなさい。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月20日 (土) 14:34:55   ID: nOBlEAOT

あって、これ「ブスだなー」の人なんか

NW編はよ!はよ!バンバン

2 :  SS好きの774さん   2015年07月17日 (金) 08:17:54   ID: HnIWsYAl

この人の文章すき

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