ほむら「美樹さやかを全力で可愛がるわ」 (166)
まどか「ほむらちゃん。お願いがあるんだ」
ほむら「どうしたの、まどか」
まどか「さやかちゃんを全力で可愛がって」
ほむら「……? まどか、一体何を言っているの?」
まどか「安価でそう決まったから。頑張って、ほむらちゃん」
ほむら「待って。まどか! まどかぁああああ!!」
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ほむら「まどか!?」
朝起きればそこは見慣れたほむホーム
……えぇと、記憶を整理しよう
確か私は悪魔になって……
ほむら「そう、私は悪魔になった。円環の理はまどかでなくなる前の記憶を奪いとった以上、今の私に干渉してくる理由なんて……」
或いは、まどかの記憶を取り戻す為に円環の理が何かしら画策している可能性は?
ほむら「……でも、それでなんで私に干渉するの?」
確かに美樹さやかは記憶が書き換えられていってるとはいえ、現時点で記憶を残している以上私にとって脅威にはなりえる
だが、それならば円環の理は何故さやかではなく私に干渉してくるのか
それも全力で可愛がれなんて……狙いがまったく読めない
つまりは
ほむら「本当にただの夢みたいね。……バカらしい」
……バカらしい、けど
ほむら「……まだ登校時間までは時間があるわね」
ほむら「ひさしぶりに昔の映像でも見てみましょうか」
まだ私がワルプルギスの夜と戦っていた頃の映像を呼び出す
「これ以上、まどかを悲しませるくらいなら。いっそ私が、この手で、今すぐ殺してあげるわ。美樹さやか」
ほむら「……思えば、私も随分とひどい事を言ったものね」
あの頃の私はすべてまどかの為に行動していた……そういうつもりにはなっていた
でも、実際のところかなり揺れていた部分もあったのだ
出来る事なら5人みんなで楽しく生きれるそんな幸せな世界の中にいたい
思えばそれを再現しようとしていたのがあの魔女結界であり、私が生み出したこの世界でも骨格になっているのかもしれない
でも
「どうしてかな。ただ何となく分かっちゃうんだよね。あんたが嘘つきだって事」
「あんた、何もかも諦めた目をしてる。いつも空っぽな言葉を喋ってる。今だってそう。あたしの為とか言いながら、ホントは全然別な事を考えてるんでしょ? ごまかし切れるもんじゃないよ、そういうの」
さやかの為というのは全くの嘘というわけではなかった。ただ、それより優先しなければならない事があったというだけで
でも、あの子の発言はもうほぼ諦めていても必死にまどかを救おうと足掻いていた当時の私を怒らせるには充分だった
……まぁ、かなり図星だったのだ
ほむら「……でも、あの子だって全てを知っていてそんな事を言ったわけではないのに」
思えば、私の結界の中であの子に会えたのは、その事への謝罪ができるチャンスではあったのかもしれない
私の記憶が戻りきるのが遅かったことや、さやかが謎キャラになっていた事からタイミングを完全に逸してしまったが
……いや、でも待って
そのチャンスはまだ継続している。さやかがまだ記憶を残しているのならば
つまりは今この瞬間こそがそれができる最後の機会なのではないか
ほむら「……全力で可愛がる、か」
さやかがまだ記憶を残しているうちに
さやかとの今の険悪な関係を何とかできるのならば
あの時の事を謝れるかもしれない
ほむら「やってみる価値はありそうね」
掴みだけ書いてみた
まったり更新予定
--通学路--
さやか「……でさー。まどかが……」
杏子「なんだよそれー……」
ほむら「……いた」
いつも通りの2人。これに私が加わり、途中の道でまどかが加わる
そうやって毎日仲良く4人で登校している
そう、仲良く
「せめて普段は仲良くしましょうね。あまり喧嘩腰でいると、あの子にまで嫌われるわよ」
さやかはこの言葉を律儀に守り、私に対して接している
……さやかなりに思惑はあるのかもしれないが
さやか「あ、ほむらじゃん。おはよー」
杏子「ほむら? 何で声かけないんだよ。おはよー」
さやかは私と友達である事を演技している
思えば魔女結界の中での私との対応もかなり演じていた部分はあったのだろう。さやかに巴マミから助けられた後、直接話すまでその演技に気付く事は出来なかった
……こんな器用な事を出来る子ではなかったはずなのに
円環に導かれた後それなりに苦労をしてきたのか、或いは円環の力か何かで身に着けたのか
まぁ、そこはどうでもよくて
私はさやかを全力で可愛がる。その一手として、さやかには演技をやめてもらう
というわけで
私はさやかに抱き付いた
さやか「……え」
杏子「……? 何やってんのさ。突然」
で、ここで一言
ほむら「さやかは私の嫁になるのだー」
さやか「……!?」
さやかが凍った
さやか「ちょ!? ほむら!? あんた何を……てか離して!」
ほむら「いいじゃない。いつもまどかとやってるわけだし、減るものでもないでしょうに」
さやか「あ、あたしとまどかのは全く別で……助けて! 杏子!」
杏子「……」
あたしには全く状況が呑み込めない
さやかも多分そんな感じだ。ただ、ほむらのこの奇行、何かしら狙いがあるのだと思う
……さやかとほむら。二人の関係にはあたしもいろいろ思うところはある
ここは
杏子「……なんだよさやか。あんたいつの間にほむらとそんなに仲良くなってたんだな」
さやか「……はい!?」
杏子「じゃぁあたしは邪魔か。これからはまどかと二人で登校しようかなー」
さやか「何それ!? 杏子、待ってよ!」
杏子「っとそんな事やってたらまどかが来たぞ。おはようまどかー」
まどか「おはよう杏子ちゃん……さやかちゃん、ほむらちゃん!?」
ほむら「おはようまどか」
さやか「おはようまどか!! ヘルプ! ヘルプミー!!」
まどか「……杏子ちゃん。……これは、どうしたの?」
杏子「あたしにもわからん。まぁでも面白いし、二人で遠巻きに見てようぜ」
さやか「そ、そんな!?」
まどか「……さやかちゃん」
さやか「まどかぁ……」
まどか「……がんばって!」
さやか「えー……」
--授業中 英語--
さやか「……何これ」
状況がさっぱり理解できない
……ほむらは普段は仲良くするように言っていた。だからあたしは常にそういう風に接してきたつもりだけど
……ほむらの仲良くというのは、あたしに抱き付くレベルの話だったという事?
いや、待て。それは仲良くレベル高すぎない?
でも……
さやか「うーん……わからん」
ほむら『さやか。ねぇさやか』
……テレパシー?
さやか『なんだよ。悪魔』
ほむら『あら、いつもみたいに気軽にほむらと呼んでくれればいいのに』
さやか『……普段通り仲良くっていうのはまどかと一緒に話している時だけって話じゃないの? あんたはあたしの敵。気安くテレパシー使ってこないで』
ほむら『つれないわねぇ。折角あなたにとって有益な情報を教えてあげようと思ったのに』
さやか『有益な情報?』
ほむら『私の悪魔の力でね。あの円環の理程ではないしろ少しぐらい先の未来は見る事が出来るの』
さやか『……それで?』
ほむら『あなた。後3秒後に早乙女先生に当てられるわよ』
さやか『おぉい!?』
和子「じゃぁこの問題を、美樹さん」
さやか「は、はい! えぇと……うんと……」
だって、今の今まで悩んでたり、ほむらとテレパシーで会話していたわけで
授業なんて聞いているわけもなく
さやか「……すいません。全然わかりません……」
--授業中 体育 走り高跳び--
さやか「なんであたしがあんな目に……」
杏子「さやか。ほむらが飛ぶぞ」
まどか「ほむらちゃんファイトー!」
ほむら「……」
それはもう見事なもので
県内記録の高さをさらっと超えていった
まどか「ほむらちゃん。すごーい!」
杏子『さやか、あれ魔法使ってないよな』
さやか『そうみたいだね』
ループし続けて、ずっと鍛錬を積み重ねて
さらにそこからあの時までずっと力を磨いてきたんだから
魔法なんて使わなくてもこのぐらいの実力はあるって事なんだろうけど
ほむら「ねぇ、さやか。次はあなたの番よ」
さやか「……わかってるよ」
ほむら『あなた、私の敵なんでしょ? それならそれに恥じないぐらいの力見せてくれないかしら』
さやか「……」
あぁ、うん。理解した
というか、内心そうじゃないかとは思っていたけど
こいつ、あたしで遊んでる!
さやか「……先生。すいません。5cm上げてください」
先生「え? 美樹さん? ……いいけれど」
さやか「どわりゃああ!!」
ギリギリではあったけど
あたしは無事、飛び越えた
さやか「どうだほむら!!」
ほむら「先生、10cm上げてください」
さやか「!?」
杏子「あいつらは何がやりたいんだか……」
まどか「……でも、杏子ちゃん」
杏子「あぁ……」
さやか「あたしとほむらのサドンデス方式ってわけ!? いいじゃん! 受けてあげる!!」
ほむら「ふふ、どこまでやれるか楽しみね」
杏子「……めっちゃ生き生きしてんな。あの二人」
--夜--
さやか「もう、今日のほむらどうかしてんじゃない!? 何であたしにあんなに喧嘩吹っかけてくるのさ!」
杏子「まぁさやかに喧嘩ふっかけるの面白いもんな」
さやか「……おい杏子」
杏子「冗談だよ。しっかし珍しいよな。そんなにあんたがほむらの話をするのってさ」
さやか「……え?」
杏子「あんたいつもほむらとの話避けてたじゃん」
さやか「……そうかな」
杏子「そうだよ。いつもあいつの前では楽しそうにしてるくせに、家に帰ると一切触れない。……でも今日はあいつの話ばっか。それも楽しそうにさ」
さやか「べ、別に楽しくなんか。……てかあいつに散々弄ばれたって話で」
杏子「はいはい。……じゃ、今日も魔獣狩り、いくぞ」
さやか「あ、うん。……でも正直、あたし達二人だと厳しいね」
杏子「マミが修学旅行中だもんな……戦力的にはきつい。ただ、それで何かあったらマミ、修学旅行途中で帰ってきちゃうからな。しっかりやるぞ」
さやか「おう。さやかちゃんの力、見せてやる!」
さやか「で、それでどうしてあんたがいるのさ!」
ほむら「え? マミが抜けてる間ぐらい私も参戦しようかと思って。戦力、きついんじゃない?」
杏子「……まぁ、そうだな」
さやか「杏子!」
杏子「でも、いつもソロ狩りしてるあんたがあたし達とうまく連携できんの? 小さな親切大きなお世話って言葉もあるよ」
ほむら「うまくやって見せるわ」
杏子「自信満々じゃん。……じゃぁいっけどさ」
さやか「うー……」
ほむらは黒い翼を使わないで、悪魔になる前、魔法少女時代に使っていた白い翼と弓で戦っている
本気を出してしまえばあたし達も一緒に巻き込んでしまうから、その辺の気遣いなんだとは思うけど
杏子『おい、さやか。……いくらなんでもこれはおかしいだろ』
杏子『あいつソロ狩りしててあたし達の戦い方なんて知ってるはずがないのに、まるであたし達の次の動きを全て理解しているかのように動いている』
さやか『……何かほむらってちょっと未来が見えたりしてるらしいよ。それであたし達の動きを理解しているのかも』
杏子『そういう事、なのか?』
さやか「……」
まぁ何回もループしてあたし達の動きなんて何度も見てきているわけで
未来なんて見る必要もなくあたし達の動きが手に取るようにわかるのだろう
ほむら「杏子、さやか。ちゃんと戦いに集中して」
杏子「あ、あぁ。さやか。いくぞ」
さやか「……」
喧嘩を売ったり、あたし達を助けたり
ほむらの目的が読めない
ほむら『さやか。あなた私の敵なんでしょう? こんな所で魔獣に殺されて消えたなんて事になったら、まどかはどう思うのかしらね』
さやか『分かってるよそんな事、ちゃんと集中する』
ほむら『……本当に、頼むわよ』
結局さして危険に陥るような事もなく
あたし達はその日の魔獣狩りを終えた
ほむら「今日はこんなところね。……私は帰らせてもらうわ」
杏子「あぁ。本当に助かった。あんたすげぇな。また明日も頼むぜ」
ほむら「えぇ」
さやか「……」
杏子「……なぁ、さやか」
さやか「何、杏子」
杏子「あいつ、ひょっとしてあんたと仲良くしたいんじゃないのか?」
さやか「……え? 別にあたしはいつもほむらとは仲良く」
杏子「表向きだけだよな。本当はさやかはあいつを敵視している」
さやか「……やだなー。そんなわけないじゃん。ほむらは大事な友達だよ」
杏子「……別にいいし、あまり深入りする気もないけどさ」
さやか「……何で、ほむらがあたしと仲良くしたいなんて思うのさ」
杏子「知らないよ。けど、今日のほむらの行動を見てなんとなくそう思ったってだけ。……じゃぁ、あたし達もそろそろ帰るか」
さやか「……うん」
中編に続く!
--数日後 通学路--
ほむら「私の嫁になるのだー」
さやか「……フフフ」
さやかは飛びつくほむらをひらりと躱し
さやか「そう何度もさやかちゃんに同じ手が通用するか! ほむらこそあたしの嫁になるのだぁーー!」
さやかが逆にほむらを抱きしめた
ほむら「え、ちょっと」
さやか「うりうり! このまどかで鍛えたあたしの指テクを堪能するのじゃー!」
ほむら「!!??」
杏子「……本当にあたし達、別登校した方がいいかもな」
まどか「さやかちゃんとほむらちゃんすごい仲良しだよね」
さやか「あ、いやこれはほむらがやってきたからやり返しているだけで」
ほむら「……どうしたの? 自慢の指テクを私に堪能させてくれるんじゃなかったのかしら?」
さやか「この状態でまだ挑発してくるのかよ! ……くっくっく、さやかちゃんを怒らすとどうなるか思い知らせてくれるわー!」
まどか「やっぱり仲いいよね」
杏子「だよなぁ…」
さやか「そういえば、今日の体育ドッジボールだよね」
ほむら「そうね」
さやか「この日をどれだけ待ったことか……今日こそほむらとあたしとの雌雄を決する時が来たのだ」
ほむら「雌雄も何も……あなた私に負けっぱなしじゃない」
さやか「今日勝てば10ポイント!」
ほむら「何よそのルールは……」
さやか「この日の為にあたしと杏子は常に特訓を重ねてチームワークは万全! さらにそこにまどかを加えたさやあんまどトリオに負けはない!」
杏子「誰があんだ誰が。……てか、そのさ。言いにくいから黙ってたんだけど」
まどか「チーム分けは先生が決めるから、わたし達が綺麗に別れない事もあるんじゃないかなって」
さやか「え……あ」
まどか「さやかちゃん……」
杏子「バカ……」
さやか「そ、その時はどっちが多く倒すか競争ってことに!」
杏子「それ、特訓の意味あったか?」
ほむら「……でもそうね。あなた達3人と戦うのもそれなりに面白そう。さやか一人では勝負にもならなかったし」
さやか「……何をー!?」
ほむら「ひょっとすると先生が気を使ってうまくチームを組んでくれる事があるかも」
さやか「……」
さやか『その、流石に魔法使ってチーム分けはやめようね』
ほむら『さぁ、どうしようかしら』
そうテレパシーを飛ばしたほむらは、とても楽しそうに微笑んでいた
さやか『ほむらー』
ほむら『まどかの前以外では気軽にテレパシーしないんじゃかったの?』
さやか『まぁ、うん。それは、そうなんだけど……』
ほむら『……さっきのドッジボールで少し疲れているんだけど……何かしら』
さやか『……ちょっと放課後に屋上来てくれない? 話があるんだ』
ほむら『……決闘?』
さやか『違うよ! とにかく……お願い』
ほむら『……いいわよ、放課後ね』
--放課後 屋上--
ほむら「で、何?」
さやか「……ほむら、覚えてる? あたしがほむらに愛想よくすればいいんじゃないかっていった時の」
ほむら「そんな事、あったかしら?」
さやか「その後、少し落ち着いた方がいいとか、冷静に考えて行動した方がいいとかほむらに逆に説教された」
ほむら「……あぁ、あったわね。そんなことも」
さやか「あの時は怒っちゃったけどさ。今になって思えばあれってほむらはあたしの事を案じて、あたしの悪い所を教えてくれたんだよね」
ほむら「……さぁ。よく覚えてないわ。今みたいに喧嘩したかっただけなのかも」
さやか「最近のあんたの行動だって、あたしをただ怒らせる為にやってるわけじゃないんじゃない?」
ほむら「……話ってそんな事?」
さやか「ううん……違うけど」
ほむら「あなたにしては歯切れが悪いわね。そんなに言いにくい事なの?」
さやか「……あの、さ」
さやか「……まどかの話」
ほむら「……」
さやか「まどかがあんたにとってとても大事な事は分かる。……その、この世界にまどかを引きずり込んだ気持ちだって分からないわけじゃないんだ。あたしもまどかが大切だし、立場が違っていれば、あたしだってそういう道を考えていたかもしれない」
さやか「でも、それってまどかの決意を裏切る事になっちゃうと思うんだ。まどかは未来と過去と、全ての時間で戦う事になるとわかっていて、それでも決断したんだ。ほむらは今、そんなまどかをこの世界に留めてしまっている」
さやか「まどかを円環の理に戻せとは言わない。でも、まどかの記憶を蘇らせて、この世界の事も踏まえた上で、まどかに考える時間を与えて欲しい。それでまどかがここに残ると言うならあたしは何も言わない。でも……円環の理に戻りたいと言うなら、受け入れてあげてほしい」
さやか「勿論すぐに答えを出せとは言わないよ。でも、いつか」
ほむら「答えならもう既に出ているわ」
ほむら「まどかを円環の理に戻す事など認めない。あの子に考える時も与えない。まどかはずっとこの世界に留まるの」
さやか「……」
ほむら「以前私の魔女結界の中で私はまどかと話をした」
ほむら「その時まどかは確かにこう言ったの。誰とだってお別れなんかしたくない。もし他にどうしようもない時だったとしても、そんな勇気わたしにはないって」
さやか「でも、それは記憶を失ったまどかで」
ほむら「そうね。……まどかはどれほどつらい事だとわかっていても、それを選択できてしまう勇気がある。あの子は、あの子にしかできないことがあると知った時、あまりにも優しすぎて強すぎる」
ほむら「もし、まどかの記憶を蘇らせれば、あの子は円環の理に戻る事を選択するでしょうね。……でもそんな事、まどかの幸せを考えるならさせるべきではない」
さやか「……まどかの幸せを考えるなら、まどかに記憶を失ったまままどか自身に選択すらさせないで、ほむらの世界を受け入れさせろって言うの? ……そんなのあんたの幸せの押しつけだよ」
ほむら「不幸の押しつけをするあなたに言われたくはないわね。あなたはまどかが何を選択するか分かった上で、記憶を蘇らせる事を提案しているのだから」
さやか「……それは……」
ほむら「……この世界で幸せに生きる方法を探せばいいじゃない。さやか、あなただって本当はこの世界から離れたくないんじゃない?」
さやか「……!」
ほむら「この世界に留まれば、あなたを大切に思う人達と一緒にいられる。それに……もう、上条君の事を諦めなくてもよくなる」
さやか「……何でそこで恭介が出てくるのさ!」
ほむら「あなたは円環の理に導かれてしまったから上条君の事を諦めなければならなかった。でも、あなたはこうして再び人間としての人生を取り戻した。あなたをまた死なせる事なんて私は絶対にしない。……もう一度やり直せるのよ」
さやか「……恭介には仁美が」
ほむら「奪い取ればいいじゃない。……何なら私が魔法で手伝ってあげてもいいのよ」
さやか「……ほむら。あんたは!」
ほむら「そういう選択肢もあるという話よ。円環の理に戻るなら、あなたはすべてを捨てなければいけない。……わざわざそんな道を選ぶ必要もないでしょう?」
さやか「……もういい」
ほむら「……」
さやか「あんたにこんな話をしたあたしがバカだった。……悪魔であるあんたなんかに」
ほむら「なら、二度とこんな話はしないでほしいものね。……今まで通り、仲良くしましょう?」
中編その2へ続く!
次回更新多分再来週
--廊下--
杏子「手芸って難しいな」
まどか「慣れてくればいろいろ作れるようになるよ。編みぐるみとか」
杏子「編みぐるみかぁ……そういやマミにあげた熊の」
さやか「……」
まどか「……さやかちゃん?」
さやか「……や、やあ杏子、まどか。こんな遅くまでどうしたの?」
杏子「何って手芸部を見学に……さやか、どうかしたのか?」
まどか「……何かあったの?」
さやか「ううん。別に何も」
杏子「……目、赤いぞ」
さやか「え!? ……ちょ、ちょっとあくびしすぎちゃって。いやーお恥ずかしい」
まどか「……ほむらちゃんと、何かあったの?」
さやか「!?」
杏子「……あったんだな」
さやか「じじゃぁあたし用があるから、これで!」
杏子「……さやかはあたしに任せな」
まどか「杏子ちゃん」
杏子「あの様子じゃ多分ほむらも似たようなもんだろ。まどかはほむらを頼む。さやかの来た方向から察するに多分屋上だ。……ほむらを慰められるような奴、あんたしかいない」
まどか「わたしなんかじゃ」
杏子「頼むよまどか。……あんたなら、できる」
まどか「……うん。頑張ってみる」
--屋上--
ほむら「……」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「まどか? 今日は随分遅いのね」
まどか「手芸部に行ってて……」
ほむら「……そういえば、まどかは園芸部と手芸部を掛け持ちしていたんだったわね」
まどか「うん。……手芸、ほむらちゃんも今度やってみる?」
ほむら「お願いできるかしら」
まどか「……ほむらちゃん。さやかちゃんと何があったの?」
ほむら「……別に。少し喧嘩をしただけ」
いつもの喧嘩より内容は深刻ではあるが
まどか「大丈夫?」
ほむら「……何故、そんな事を聞くの?」
まどか「だってほむらちゃん。今にも泣きそうな顔してるよ……」
ほむら「……あなたには、そう見えるのね。……そうね、少し応えてはいるのかも」
少しずつ仲良くなってきたと思っていたのにあんな話をしてくるなんて
私の完全な独りよがりだったのだろうか
ただ私はいたずらにさやかを傷つけていただけだったんだろうか
まどか「……さやかちゃん、前までほむらちゃんと距離をとってた。友達であるかのように演技してた」
まどか「でも、最近はそんな様子はなかったんだよ。さやかちゃん、もう演技じゃなくて本当にほむらちゃんに対してまっすぐに接してて」
ほむら「なら、私が嫌いな時に戻っただけね。険悪な関係、友達ごっこに逆戻り」
まどか「……ほむらちゃん、少し勘違いをしていると思う」
ほむら「……?」
まどか「さやかちゃん、前からずっとほむらちゃんの事大好きだったんだよ。さやかちゃんだって今回の事を機会にほむらちゃんに近づきたかったんだと思う」
ほむら「……そうなの?」
まどか「そうだよ。……さやかちゃん、時々すごく悲しそうな顔でほむらちゃんの事見てたもん。ちゃんとした友達になりたい。でも……多分さやかちゃんの中で何かが引っ掛かって出来なかったんだと思う。それが何かは分からないけど……」
ほむら「何か、ね……」
或いは
さやかは私が敵であることを自分に言い聞かせてきた
だから私と敵対している以上距離を縮めてはいけないと思っていた
でも……私が近づいてきて、さやかとしては本当は受け止めてしまいたいけど、敵である以上それができなくて
今日の事はさやかにとって賭けだったのかもしれない
敵でなくなれば私に対してさやかは何ら後ろ髪ひかれる事なく私に接する事ができる
でも、その結果がこうなってしまった
ほむら「もしそうなら、私はもっとさやかの話に優しく接してあげていれば……というのは、流石にさやかに対して無礼ね」
もうあの件は私の中で答えが出ている
それにもかかわらず、さやかに対して曖昧に接する事はさやかの勇気に対して侮辱になる
ほむら「……それにしても、まどかは本当によくさやかを見ているのね。私は全く気付かなかった」
まどか「……何でだろうね。さやかちゃんの考えてる事は、何かそばにいるだけでなんとなく分かるんだ。ホームステイで3年間離れ離れだったのに」
ほむら「その程度で揺らぐような友情関係ではなかったということよ。あなたとさやかは本当に仲良しで……少し、羨ましいわ」
まどか「……今はほむらちゃんとも仲良しだよ。勿論杏子ちゃんやマミさん、仁美ちゃんや上条君とも。……みんな、こんなわたしに優しくしてくれるもん」
ほむら「……こんな私?」
まどか「……うん。だってわたし、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて。誰の役にも立てないで、迷惑ばかりかけて……こんなわたし、優しくしてくれる価値なんてないのに」
ほむら「……あなたらしいわね」
ほむら「でも、それは間違っている」
まどか「え……?」
ほむら「あなたは常にだれかの支えになっている。私やさやか、勿論杏子やマミに対してだってそうよ。誰の役にも立てない? 迷惑ばかり? 馬鹿にしないで。あなたのおかげで私達がどれだけ救われていたか」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「もう二度とそんな事は言わないで。……あなたの良いところは、しっかりあなた自身で認めてあげなさい。そうでなければ、それはあなたの友達への侮辱になるわ」
まどか「……そうなのかな」
ほむら「そうよ」
まどか「……うん。わかった。ありがとう、ほむらちゃん。……って、本当はほむらちゃんを慰める為に来たのに、わたしが慰められちゃったね」
ほむら「そうでもないわ。……私もいろいろ決心がついた。ありがとう、まどか。……さやかとはもう一度話し合ってみるわ」
--さやかの家--
杏子「さやか。……帰ってきてから部屋の中にずっと引きこもってんじゃん。いい加減鍵開けろよ」
さやか「……やだ」
杏子「さやか。あんたなぁ……」
さやか「……ごめん。ちょっと一人になりたい気分なんだ」
杏子「そうかい」
重症だ。本当にほむらと何の話をしたんだか
杏子「……もう夜も遅い、あたしは行くぞ」
さやか「……行くってどこに」
杏子「決まってるだろ。魔獣狩りだよ」
さやか「……そうだ。あたし達は正義の魔法少女なんだから、戦わないと」
杏子「……一応言っておくがあんたは連れていかないぞ」
さやか「え?」
杏子「えじゃねぇよ。そんな精神状態じゃまともに戦いなんかできるわけないだろ。あたし一人で行く」
さやか「……」
あたしが行かないという事は多分ほむらも来ない
杏子一人に戦わせる事になってしまう
さやか「……大丈夫だよ。悪いなりになんとかする」
杏子「はっきり言わなきゃダメか? 今のあんたじゃ足手まといなんだよ。……元々風見野ではあたし一人で戦ってきたんだ。充分やれるさ」
さやか「でも……」
ほむら『いいから休んでなさい』
さやか『え、ほ……じゃなくて悪魔!』
ほむら『私はマミが抜けている間は一緒に戦うといったはずよ。あなたのいるいないなんて関係ない』
ほむら『……大丈夫よ。最悪の状況になろうと、私には悪魔の力がある。佐倉杏子を殺させたりは絶対しないから』
さやか『……信じるよ』
ほむら『任せなさい』
さやか「……分かった。杏子、気を付けてね」
杏子「……何だ? 急にしおらしくなりやがって……。まぁいっけどさ。じゃぁ行ってくる」
--街中--
杏子「よう、ほむら。さやかがいなくても来るんだな」
ほむら「あなた一人に戦わせてうっかり殺されてしまっては、マミにどういう言い訳をすればいいか分からないから」
杏子「……あと。さやかの件、サンキューな」
ほむら「……何の話かしら」
杏子「あんた、あたしとさやかが会話している時、テレパシーでさやかとコンタクトとってただろ。さやかが急に物わかりがよくなるなんてそれぐらいしかありえない。やるならマミかほむらだが、マミは今修学旅行中。じゃぁあんたしかいないだろ」
ほむら「……想像にお任せするわ」
杏子「ま、精々足手まといにならないようにしてくれよ」
ほむら「……ふふふ」
杏子「な、なんだよ」
ほむら「いえ、あなたと二人で戦った事が随分昔の事のように思えて。まさかまたこんな機会が来るなんて思わなかった」
杏子「……? あたしはあんたと二人で戦った記憶なんてないよ」
ほむら「あなたはそうでしょうね。でも、私にはあるのよ」
杏子「……わっけわかんねぇ」
ほむら「分からなくて結構よ。さぁ、行きましょう」
次回 中編パート3へ続く
何か時間ができたので書いてみた。次回こそ多分再来週
乙
中学生だと学科じゃなくて教科って言うんじゃないかなと思った
>>88
その通りだと俺も思ったけど、The Beginning Storyに『学科』と書かれてあったのでそちらに準拠した
--さやかの家--
杏子「おい、あんたの部屋はあたしの部屋でもあるんだからな。このままじゃあたし寝れねぇだろいい加減開けろ」
さやか「……今、開けた」
杏子「ん?……あ、あぁ……サンキュ」
あたしが扉を開けると、部屋の隅で体育座りをしているさやかが目に映った
杏子「……あんた、何してんの?」
さやか「……体育座り」
杏子「や、それは分かってるけど……何だかなぁ」
扉からさやかの位置まで、さやかの手の届く範囲にはない
こいつ、わざわざ魔法で扉の鍵開けたのか……
杏子「……なぁ。あたしじゃ、相談相手になれないか?」
さやか「……少し、話をしてもいい?」
さやか「あたし、杏子の言う通りほむらの事敵視してるんだ」
杏子「……そもそも、なんで敵なのさ」
さやか「……ごめん。それは言えない」
言ってしまえば杏子をほむらとの戦いに巻き込んでしまう
そうなればあたし達の日常はあっという間に崩壊する
……今は、まだ言えない
杏子「……いいよ。続けな」
さやか「……ありがと」
さやか「でもね、敵だけど……ほむらは本当にいい奴でさ。あたしはあいつに返しきれない程、迷惑をかけて……それでも、あいつは気を使ってあたしをいっぱい助けてくれたんだ」
さやか「あたし、ほむらに謝らなきゃいけない事が沢山あるんだ。正直仲良くだってしたい。でも……ほむらは、敵なんだ」
今のほむらは魔なるもの。摂理を乱し、この世界を蹂躙する存在
そしてあたしは円環の理の一部。ほむらとは戦わなければならない
さやか「だから、ほむらとは仲良く出来ない。……でも、最近のほむらを見ててさ。ひょっとしたら敵なんて事はあたしが勝手に思い込んでいるだけで。本当は話せば分かる……なんて思って」
ほむらがどんな思いでこの世界を作ったのかなんてわかっていたし
歩み寄るのは難しい事も分かっていた
それでも……小さな希望でも、それに縋りたかった
さやか「……どうすればいいのかな。あいつの敵なんかじゃなくなって全部忘れて幸せに生きるべきなのかな。でも、そんな事……あたしがあたしを許せない。……そんなのもうあたしじゃない。そんな想いもあって……」
自分の中でも考えが纏まらない
さやか「……ごめん。意味わかんないよね」
杏子「……あたしも少し話をするぞ」
さやか「え?」
杏子「あたしさ。さやかの家に居候する前は風見野で魔法少女をやっていたんだけどさ。その前に、マミと一緒に戦っていた時期があったんだ」
杏子「でも……あたし、家族の事でマミと大喧嘩をしちゃってさ。それでもう一緒に戦えなくなった」
さやか「家族の事って……」
杏子は家族の為に願いを叶えて、結果家族そのものを壊してしまった
杏子「正直、何度後悔したかわかんないよ。本当はマミとずっと一緒にいたかった。でも……あたし自身もう正義の味方を続ける事は出来ない。あたしにその資格はない。だから、もうマミと一緒にはいられない。そう思った」
さやか「それは……」
それは違う
その資格がないなんて考え方は間違っている
だって杏子は家族の為に願いをかなえたんだから
例え願いが悪い方向にいったとしても、その想いは決して間違いなんかじゃない
杏子「……さやかならまた違う道もあったのかもな。でも、あたしにはそれしかないと思ったんだよ。……少なくともその時はさ」
杏子「……それからしばらくたって。マミはあたしに提案してきたんだよ。見滝原の魔獣が増えてきていて、マミ一人じゃ対処できない。あたしに仲間に加わってほしいって」
杏子「でも、あたしにはマミの傍にいる資格はないと思ってた。だからあたしは……」
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杏子「あたしじゃなくてもさ……誰か他にいい奴がいるよ」
マミ「……あなたじゃなきゃダメなの」
杏子「……あんたがあたしの味方になるってんならさ。あたしと同じようになる?」
マミ「あなたと同じに?」
杏子「そうだよ。ATM強盗したり万引きしたりさ。あたしと同じように好き勝手に。……あんたには出来ないだろ? そんな事。だからあたしは……」
マミ「分かったわ」
杏子「え……?」
マミ「あなたと一緒にいる為なら、私は正義の味方なんてやめてやる」
杏子「……!!??」
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杏子「……多分マミのやつ、あたし以上に悩んでて……あたしを仲間にすると決めた段階でそこまで考えていたんだな」
さやか「……流石マミさんだね」
どちらも選べず悩んでるあたしとは違う
マミさんは自分の信念を曲げ、杏子といられる道を選んだんだ
……思えばあたしにだってそこまで折れてくれた事があったんだよね
それなのにあたしは……
さやか「ほんっとあたし。いろんな人に迷惑かけちゃってるなぁ……」
杏子「……どういう意味だよ?」
さやか「何でもない。それで、杏子はどうしたの?」
杏子「どうもこうもないよ。あたしの為に正義の味方やめられるなんてたまったものじゃない。取り敢えずお互い現状維持で共同戦線を張ろうって話に纏めた」
さやか「……でも、あんた今、盗みとか一切足を洗ってるよね」
杏子「しばらく休業してるってだけさ。……それに……何て言うか、やっぱあいつカッコいいと思ったんだ。あたしが一人でイジイジしてる間にあいつは前に進んでいたんだなって」
杏子「……もう一度、一緒に戦おう。もうあたしにマミといる資格がない事は分かっていたけど、それでも誰かが仲間になるまで、せめてあいつの支えぐらいにはなろう。あたしはそう思ったんだ」
杏子「それで、なんだかよくわからないほむらが表れて、さやかが仲間に加わってあたしがさやかの家に居候する話になって……まぁ、あたし自身現状それなりに満足しててさ。ずるずる共同戦線を維持してて、今に至る」
さやか「……そうだよね。あたしもほむらの敵になるなり、あいつと仲良くなるなり、早く決めないと」
決断を先延ばしにするのはダメだ
あたしとマミさんがかつてそうだったように、取り返しのつかない事になってしまうかもしれない
杏子「……それだけど。マミは別に正義の味方やめてないし、あたしだって今は休業中ってだけでまた盗みを始めるかもしれない。そもそも当初の考え無視してだらだら一緒にいるわけでさ。実はマミもあたしも最終的には何も選んでないんだよ」
さやか「……何がいいたいの?」
杏子「ほむらはあんたの敵。でも、それと同時にほむらと仲良くしたいんだろ。なら、どちらかを選択するなんてせず、まずは両方受け入れてみたらどうなのさ」
さやか「……敵である相手と、仲良くしろってこと? そんな事できないよ」
杏子「敵である事と仲良くするってのって両立できない話か? ……どちらを選んでもさやかは片方を捨てた事を後悔するんじゃねぇの? なら、どっちも無理に捨てる必要ねぇだろ」
杏子「……あたしはさ。もうマミと一緒にいる資格はないと思って、マミと離れる事を選択したんだ、でも、今はマミと一緒にいれて、さやかもいて、まどかやなぎさも仁美も……まぁほむらもいてさ。それなりに幸せなんだよ。何かを選択して今の関係を崩すよりは、今のままでもいっかなって思うぐらいに」
さやか「……でも、あたしは……」
あたしは円環の理の一部
何より、まどかを裏切るわけには……
さやか「……バカだ、あたし」
まどかのせいにして、勝手に選択しなければいけない事にして
まどかがほむらとあたしが険悪な関係でいる事なんて望むわけがないのに
杏子「まぁ、少しそういう事も考えてみなよ。敵対しながら、仲良くする。ひょっとしたらそれで開ける道もあるかもしれないよ」
さやか「……うん。何か自分なりに考えがまとめられそうな気がしてきた」
杏子「そうか。じゃぁ、もう寝るぞ」
さやか「でも、一つ言いたいことが」
杏子「何さ」
さやか「マミさんもかっこいいけど、あんたも結構かっこいいよね」
杏子「早く寝ろ!」
さやか「はーい」
明日もう一度ほむらと話をしよう
お互いに、後悔する事のないように
--ほむらの家--
ほむら「さて、さやかともう一度話はすると言ったけれど……」
まどかの件について、私は歩み寄る事は出来ないしするつもりもない
でも話し合いをする以上、何らかの譲歩は必要だろう
ほむら「……どうしたものかしらね」
「あんたにこんな話をしたあたしがバカだった。……悪魔であるあんたなんかに」
ほむら「……悪魔、か」
或いは私が悪魔でなければ……
ほむら「……」
「あたしの為に何かしようって言うんなら、まずあたしと同じ立場になってみなさいよ」
ほむら「……」
明日一日分の未来を確認する
……魔獣は少なくとも夜までは出現しない
なら
ほむら「……そもそも何のリスクもとらないで、あの子と仲良くなろうと考えていた事からして間違いだったのかもしれないわね」
やろうと思えば私は悪魔の力で一瞬にしてさやかを倒せる
そんな立場にある私がさやかと対等に会話ができるのか
何の意味もないかもしれない
それどころかただいたずらに窮地を招くだけになるかもしれない
ほむら「それでも……これぐらいの覚悟は決めなければ」
中編終了
次回から後編に入ります。あと2回ぐらいで終わる予定
--朝 通学路--
さやか「……うーん。むむむ……」
杏子「ほら、ほむらが来たぞ」
さやか「え! わ、もう!? あ、えぇと……」
ほむら「……おはよう、杏子、さやか」
杏子「おはよーほむら」
さやか「あ、う……お、おはよう……ってあれ?」
さやか「……ねぇほむら。あんた何かした?」
ほむら「どういう意味かしら」
さやか「いや、何て言うか……いつもの威圧感がなくなっているような」
ほむら「それは私に喧嘩を売っているのかしら」
さやか「いや、そういうわけじゃないけど……」
気のせい、かな
杏子『ほら、仲直りするんじゃなかったのか?』
さやか『わ、わかってるよ』
ほむら「……あなたに話があるの。今日また、放課後屋上で会えないかしら」
さやか「え!? ……ほむらが?」
ほむら「……悪い?」
さやか「ううん! 全然! ……あたしも話があったんだ」
ほむら「そうなの?」
さやか「そうよ。……案外同じような話だったり」
ほむら「……ふふ、どうかしら」
杏子「……まったくこいつらは」
まどか「でも、いい雰囲気だね」
杏子「あぁ……ってまどか!?」
まどか「おはよー。ほむらちゃん、杏子ちゃん、さやかちゃん」
ほむら「おはよう、まどか」
さやか「お、おはよー」
杏子「びっくりさせんな!」
まどか「えへへ……」
--授業中--
さやか(とはいえどう切り出そう……いきなりごめんなさいって言うのも変だし……)
さやか(……)
さやか「なんで、こんな時に」
杏子『さやか、ほむら。気付いてるな』
さやか『うん。……でも、昼間から魔獣が襲ってくるなんて。しかも学校を狙って? 今までこんな事なかったのに』
ほむら『……これが、あいつの仕業なら、狙いは非情に分かりやすいけれど。……リスクが高すぎる事ぐらいあいつも分かっているでしょうに』
さやか『ん? あいつ? 』
ほむら『……』
杏子『とにかく。授業はフケるぞ。魔獣を向かい撃つ』
さやか「あいつら。あたし達の方に向かってきてる」
杏子「狙いは学校じゃなく、あたし達みたいだな」
ほむら「さやか、あなたはもう戦えるの?」
さやか「……もう、大丈夫だよ。あたしは前に進める」
ほむら『……ありがとう。杏子』
杏子『……何だよ。あたしは何もしてねぇぞ』
ほむら『あなたが何もしなかったらさやかが立ち直っているはずないじゃない。さやかを励ましてくれたんでしょう?』
杏子『……さやかが勝手に立ち直っただけだ』
ほむら『……そういう事にしておくわ』
さやか「くらえ!」
さやかのスプラッシュスティンガー
大量の剣が魔獣に襲い掛かる
何匹かはさやかの剣を逃れ、態勢を整えるが
杏子の投槍とほむらの矢の餌食となる
ほむら「それにしても……絶好調ね。さやかは」
杏子「いつもこれだといいんだがな。……さやかはマミと一緒で精神面の影響がもろに戦いに出るからなぁ」
ほむら「……さやからしいわ」
器用になったようで、不器用
さやかは円環の理の一部となりいろいろ変わったように見えて、それでもやっぱりさやかなのね
ほむら「……それにしても」
さやかの言うように、魔獣昼間から襲い掛かってくるなんて事は今までなかった
しかもその魔獣が人間を襲うのではなく、魔法少女である私達を狙ってくるなんて
……これはいよいよあいつの仕業である可能性が高い
でも、そうだと考えるなら
ほむら「……本当に、これだけ?」
単純に私の突然の行動に慌てて対応した結果とも考えられるが
それにしたって私が倒せなかった事のリスクを考えれば奇手の一つぐらいは打ってきそうなものだが
さやか「たぁああ!」
さやかの剣が最後の魔獣を貫いた
さやか「ふっふっふ。絶好調さやかちゃんの手にかかればこんなもんよ」
杏子「……おかしい」
さやか「……杏子?」
杏子「何か嫌な予感がする。それが何なのかわからないけど……」
ほむら「……」
こういう状況下での杏子の勘はよく当たる
……相手がどんな手を打っているのかわからないのなら!
ほむら「はぁ!」
ほむらは自らの羽を全方位に放った
攻撃力は皆無だが
さやか「……羽が何個が空中に止まってる? これは……」
杏子「……畜生!」
杏子は魔獣たちの作り上げていた魔法を解除した
魔獣たちの何匹かが幻術で姿を隠していたのだ
魔獣はその姿を現すも、数匹は既にさやかに照準を合わせていた
さやか「……」
手元にあった剣を咄嗟に放ち魔獣を2匹撃墜するが、それが限界
あたしに狙いをつけている魔獣の数はそれ以上。もう止めきれない
さやか(まずったなぁ……)
魔獣の狙いを見るにあたしはソウルジェム直撃コースだ
避けきるのは難しい
……あたしはこのまま何も為せないまま、終わってしまうのか
あっちのまどかになんて言おう。というか、あっちのまどかは人間の頃の記憶を失ってるわけだけど、会話できるのかな
……せめて、この世界を去るなら
さやか(すぐにでも、ほむらと仲直りしとくんだったなぁ……)
後悔がよぎるが、もう遅い
ほむら「さやか!」
羽を放った時点でほむらは全速力でさやかに向かって飛んでいた
魔獣の攻撃のいくつかがほむらに掠るが、ほむらは気にも止めない
ただ一直線にさやかに体当たりをしかけ、弾き飛ばされたさやかは魔獣の狙いから逃れた
だがほむらは
さやか「ほむら!?」
魔獣の攻撃がほむらに直撃する
さやか「え、ほ、ほむら」
大丈夫なはずだ
だってほむらは悪魔なんだから
魔獣の攻撃数発食らった程度でやられるわけがない
わけがない、のに
さやか「なんで、倒れて動かないんだよ。……あんた悪魔なんでしょ! これぐらいどうってことないんじゃないの!?」
そう言いながらももうさやかは気付いていた
朝の時点でほむらから威圧感が消え去っていた理由
今のほむらは悪魔ではなくただの魔法少女なんだ
さやか「ほむら! ねぇほむら!」
杏子「さやか! 落ち着け!!」
さやか「これが落ち着いて……」
杏子「ソウルジェムに攻撃が当たったわけじゃない。今ならまだ間に合う」
さやか「……!」
杏子「残りの魔獣はあたしに任せろ。あんたはほむらに回復魔法をかけるんだ」
さやか「あ……」
そうだ。気が動転してそんな事にも頭が回らなくなってるなんて
杏子「早く!!」
さやか「……分かった!」
自分の進歩のなさにへこみそうになるが、今はそんな事をしている場合じゃない
ほむらを助けないと!
杏子「さぁて。昼間に襲ってくるわ幻術は使うわ、とことんイレギュラーな魔獣だな。少なくともあたしは今まであんたらみたいな奴等は見たことがなかったよ」
杏子「……あたしをブチ切れさせたんだ。どうなるかもう分かってるよなぁ!!」
杏子「……ほむらの様子は、どうだ?」
さやか「まだ意識は戻らないけど、手当をしたしもう大丈夫だと思う……魔獣は?」
杏子「全部倒したよ」
さやか「……そう」
杏子「……ほむらを家に連れて帰ってあげな。あんたら二人で話したい事があったんだろ?」
さやか「……杏子は?」
杏子「学校に戻るよ。まどかにはいろいろ言い訳しないといけないし」
杏子「……頑張れ、さやか」
さやか「……頑張るよ。いろいろごめんね。杏子」
杏子「いーからはやく行け」
さやか「うん!」
次回最終回
ほむら「百江なぎさを人間に戻す事は成功したようね」
元々彼女には魔法少女になった理由はチーズケーキ一つだ
それならマミと一緒にいればいくらでも食べられるし、そもそもチーズケーキ一つと命では全く釣り合わない
無論魔法少女として彼女が手に入れたチーズケーキは格別であったのだろうが
その味を知りさえしなければ、彼女は普通の少女として生活できる
ほむら「次は、美樹さやか」
彼女は魔法少女となる事で、上条恭介への恋愛を断念する事になった
でも、上条恭介の怪我がなく、魔法少女にさえならなければ、上条恭介に告白する事もできたはず
……あのさやかがそこまでできるかどうかという疑問はあるし、結局上条恭介と志筑仁美と結ばれる可能性は高いと思う
それでも真向から挑み、失恋をする事はさやかにとって悪い事ではないはずだ
仁美の告白は一旦なかった事にする。これでやっとさやかと仁美は五分の状況になる
ほむら「さぁ、受け入れなさい、美樹さやか」
さやか「……嫌だ」
ほむら「……さやか?」
さやか「あたしは円環の理の一部なんだ。まどかを決して裏切れない。それに……仁美だってそうだ。仁美の必死の告白をなかった事になんてできない」
ほむら「あなたは……! 自ら不幸になる道を選択するというの!?」
さやか「あたしは今まで魔法少女として生きた道を決して間違えてるなんて思ってないんだ。だからこそ……ほむら、あんたの提案を拒否する」
ほむら「何故、あなたはそこまで……あなた自身の幸せは魔法少女にならなければ掴めるものなのに」
さやか「そうだとしても、あたしはこのままでいたい。ほむら。あんたの改変は認めない!」
ほむら「……」
--ほむらの家--
ほむらは目が覚めた、そこには涙目のさやかが立っており……
さやか「ほむら。よかった……いつまでたっても起きないし。……このまま起きなかったらどうしようかと思ってたよ」
ほむら「……私は今はただの魔法少女よ。あなたがとどめを刺すことだってできたのに。それがあなたにとってのハッピーエンドではなかったの?」
さやか「あたしがほむらを殺して終わらせるなんて、そんな道を選ぶわけないじゃない!!」
そういうとさやかは泣き出してしまった
ほむら「……えぇ、そうね。あなたならそういう選択をするとは思っていた」
本当に、不器用な子
ほむら「はいハンカチ。……ごめんなさい。あなたに失礼な事を言ったわ。……だから泣き止みなさい」
さやか「だってぇ……」
結局さやかが泣き止むまで10数分を要した
さやか「……でも何でほむらは魔法少女になっていたの? 悪魔のままでいればどんな苦難だって簡単に乗り越えられていたはずなのに」
さやか「……ひょっとして、あたしのせい? あたしがあんたに悪魔であるあんたなんかに理解できないなんて言ったから」
ほむら「……私の覚悟のようなものよ。あなたは一切関係ない」
さやか「……ほむらは別に魔法少女に戻る必要なんてなかったんだよ。あたしは確かに前にまどかに同じ立場になってみろっていったけど……多分まどかが同じ立場であったとしても、あたしはまどかを拒絶してた。あんなのはただの言い訳、追いつめられていてただ誰かに怒りをぶつけたかっただけだったんだ……それが、ほむらをこんな事に……」
ほむら「何度言えばいいの。私は私自身の覚悟の問題。あなたは一切関係ないわ」
さやか「そうは言っても……さ」
さやか「……思えば、あんたには苦労をかけっぱなしだったよね。いつもいつもあんたのやろうとしていた事に足を引っ張って……本当に悪かったと思ってる。ずっと謝りたいと思ってた。……ごめん、ほむら。あたしはあんたに取り返しのつかないほどの迷惑をかけてしまった」
ほむら「……それに関しては私にも落ち度はあるわ。……さやか、私はあなたを殺そうとしてしまった。あなたの辛さは分かっていたのに、それを理解していながらあなたに手を出した。……許されない事だとわかっているけど、せめて謝らせて。本当にごめん」
さやか「で、でもあれはあたしのせいで」
ほむら「私のせいでもあるという事。……この事をずっと謝りたかった」
さやか「……あれ? まさか、最近のほむらの態度ってこれが理由だったの? あたしと仲良くなって、それであたしに謝りたいと思っていた……とか」
ほむら「そうよ」
さやか「そんな……別に仲良くならなくても謝る事ぐらいできたのに」
ほむら「それで、あなたはまともに聞いてくれたのかしら?」
さやか「……難しかった、かも」
さやか「でも……そのおかげであたしも随分遠回りになっちゃったけど、やっと謝れたよ」
ほむら「私もよ。……本当随分時間をかけてしまったわね」
さやか「でも、何であんたはあたしを庇ったりしたのさ。あんたにとってあたしは敵でしかないのに」
ほむら「……そうね。いずれあなたは記憶を失うのだろうし……話してしまってもいいかもね」
ほむら「あなたが私を敵だと思っていたようだけど、私は最初からあなたを敵だと思っていなかった。勿論、マミやなぎさ、杏子も。……そもそも魔獣を殲滅したらあなたの敵になってもいいとしか私は言ってなかったわ」
ほむら「……私はみんなの思いを常に裏切ってきた。だから、この世界を作り上げた時に決めたの。絶対にみんなの事を守りきってみせる。この世界はみんなにとって幸せなものにしたい。さやか、当然あなたも例外ではない。何としても守り切る。例え私が窮地に追い込まれたとしても。……今回の場合は、あなたなら私を殺さない。そういう打算めいたものもあったけれど」
さやか「ほむら……」
ほむらはまどかの為にこの世界を改変したと思っていたけれど
それだけならなぎさやあたしをその世界から隔絶させる事もできたはずだ
なのにほむらはそれをしなかった
ほむら「本当はあなたも記憶を失わせて、ただの人間に戻すつもりだった。無論上条恭介の腕も治した上で。そうすればあなたは人間として、本当の幸せをつかむ事は出来たはずなのに……あなたが拒否さえしなければ」
さやか「いやぁ……だってやっぱりまどかは裏切れないし、仁美に悪いし……。……それに、もう一ついい事があった」
ほむら「……何よ」
さやか「記憶があるから、ほむらとこうして話ができる。ほむらはただ一人だけまどかの事を覚えていて、誰も支える人がいなかった。でも、今ならほむらの支えになる事もできるよね。まどかの本当の事を覚えている人がもう一人いるだけで、ほむらの救いにもなるんじゃないかなって」
ほむら「……驚いたわね。あなたは私を敵だと思っていたんじゃなかったの」
さやか「敵だよ。でもそれ以前に……大切な親友でもある」
ほむら「私はあなたの親友になった覚えはないわ」
さやか「……つれないなぁ」
さやか「あたし、考えたんだ」
ほむら「何よ」
さやか「あたしは今までこの世界を前の状態に戻すことを考えていた。まどかの記憶を呼び戻し、円環の理の一部として、まどかを取り戻す事だけを考えていた」
さやか「でも……それはほむらの思いを踏みにじる事になってしまうんだよね。だから、あたしはまどかの事は諦めないけど、それと同時にほむらの想いも決して無駄にはしない。そんな道を選びたい」
ほむら「……聞こえはいいけど……具体的な案はあるの?」
さやか「まだ思いつかない。でもきっと見つけてみせる」
ほむら「……救いようのない馬鹿ね。あなたは」
さやか「そうだよ、あたしは馬鹿なんだ。だからこそ諦めない。絶対成し遂げてみせる」
ほむら「あなたは……」
どこまでも甘くて、それでいて強い意志を持っている
さやかなら……と少し希望を抱いてしまう
ほむら「その希望を何度裏切られたかわからないけれど、ね」
さやか「?」
ほむら「いいわ。やれるだけやってみなさい。……どうせ無理でしょうけど」
さやか「おう、やってやる!」
ほむら「さて……と。……私は私自身に夕方まで魔法少女になるよう魔法をかけたの。それがやっと解けそう。これで、悪魔に戻れる」
さやか「……ほむら?」
ほむら「力を取り戻したらまっさきにやりたい事があったの。私の予知では魔獣の出現はありえなかった。まして昼間に現れるなんて。おまけに今までの魔獣にはない行動原理。そしてステルス機能。こんな事が出来るのはあなたしかいないわよね」
ほむら「ねぇ。イ ン キ ュ ベ ー タ ー !」
QB「やれやれ」
さやか「キュゥべえ!?」
QB「ほむらを倒す為に魔獣を数匹僕の支配下において、特殊な技能や志向性を追加したんだけれどね。失敗に終わってしまったみたいだ」
QB「でも、やっぱり魔獣は魔獣だね。いくらさやかが目立った活躍をしていたとはいえ、ほむらを無視してさやかを攻撃してしまうなんて。もっともそれを暁美ほむらが庇ったのも僕には意味がわからなかったし、それを治療するさやかも理解できないな。さやか、君はほむらに敵対していたのではなかったのかい?」
さやか「……」
ほむら「言いたい事はそれだけのようね」
魔法少女候補の子「……叶えたい願い事かぁ」
QB「何でも叶えてあげるよ」
魔法少女候補の子「それなら……」
QB「キュプイ!?」パァン
魔法少女候補の子「!?」
その瞬間、地球上のインキュベーターの7割が消し炭と化した
QB「何てことをするんだい。暁美ほむら」
ほむら「これでも手加減したのだけれど。足りなくなった分は母星からいくらもつれてくればいいでしょ」
QB「全く……無駄に僕たちを殺さないでくれないかい?」
ほむら「あなたは私の支配下に置かれている事を忘れてしまっては困るわね。……面倒だけど、やろうと思えばあなた達を全て滅ぼして、代替品を作り上げる事ぐらい可能なのよ」
ほむら「……わかるわよね。次はないって」
QB「わかったよ。……まったく、これからも僕たちは君に振り回されそうだ」
さやか「……うわぁ……」
ほむら「元々あいつが悪いんだから。むしろ私は相当慈悲深い対応だったと思ってるわ」
さやか「うーん……でも、そんな力が使えるのなら、魔獣もあっという間に撃破できるんじゃないの?」
ほむら「魔獣は私の支配下に置かれているわけではないし、奴等は世界の歪みから発生しているものだから、そんな簡単に根絶は出来ないのよ。……結局地道に倒していくしかない」
さやか「そういうものなの?」
ほむら「そういうものなのよ。……お互い頑張りましょう。魔獣との戦いは、まだまだ続くわ」
さやか「そっちも頑張らないとなぁ……」
ほむら「それにしても……」
さやか「どうしたのさ、ほむら」
ほむら「いえ……実は今回の行動をとった理由の一つにね。夢の事があったのよ」
さやか「夢?」
ほむら「えぇ。まどかが現われて、『さやかちゃんを全力で可愛がって』って」
さやか「……え? ひょっとしてあたし、可愛がられていたの?」
ほむら「他に何だと思っていたの?」
さやか「えー……」
ほむら「でも、今の円環の理にとって、私とさやかが仲良くなる事になんのメリットもない。だからただの夢だと思っていたのだけど……やっぱり少し気になるわ」
さやか「……それを早く知っていれば……」
ほむら「?」
さやか「円環の理の『利』で考えるからややこしくなるんだよ。人間としての記憶がなくなったってまどかはまどか。まどかの『利』で考えてみれば、答えは簡単」
ほむら「……」
さやか「あたしとほむらが喧嘩するなんて、まどかとしては嫌だったんだよ。記憶を取り戻す事より優先すべきこと。あっちのまどかにとって一番の心配事はあたし達の事だったんだ」
ほむら「……成程。確かにまどかならそうするわね。……こんな簡単な事に気付けないなんて」
ほむら「……でもそれでどうして可愛がってだったの?」
さやか「それが一番うまくいくと思ったんじゃないかなぁ……実際ほら、今のあたしとほむら、親友」
ほむら「もう一回言われたい? あなたは私の親友になった覚えは」
さやか「もう一回言わなくていいよ! いい加減へこむよ!」
ほむら「……でも、そうね。親友になる事もいいかも。まどかがそれを望んでいるわけだし」
さやか「……うーん。まどか第一主義だなぁ」
さやか「でも、一つ言いたい。あたしだってまどか愛では決して負けてない!」
ほむら「あなたがまどかを愛していることは知ってるわよ。私の方が上だけど」
さやか「何をー!」
ほむら「……ほんっと、からかうと面白いわよね。あなた」
さやか「ぐぐぐ……」
ほむら「……これからもいい関係でいましょうね」
さやか「……まぁ、いいけどさ」
ほむら「ふふ」
ほむらの微笑みが、心なしかいつもよりとても嬉しそうに見えた
--数日後--
杏子「よう、マミ」
まどか「マミさん、おかえりなさい!」
なぎさ「なのです! お土産のチーズが欲しいのです!」
さやか「おかえりマミさん」
ほむら「おかえりなさい。巴マミ」
マミ「ただいま、みんな。それにしても……美樹さんと暁美さん。やっと仲良くなれたのね」
さやか「え……いや、ほむらとは前から仲良しですよ」
ほむら「そうだったかしら」
さやか「えー……」
マミ「まぁ、佐倉さんや鹿目さんからメールで聞いていたんだけどね。……それで、ちょっと催しを考えてみたわ」
さやか「……催し?」
マミ「美樹さんと暁美さんの仲直りおめでとう会!!」
あんなぎまど「わー!!」
ほむら「……そんな話聞いてないわ」
さやか「あたしも今知りました」
杏子「まずはゲーセンいって遊んで、それからマミの家でパーティーだ。……当然うまいもん出るんだろうな」
マミ「手作りケーキを用意したわ」
なぎさ「チーズは?」
マミ「もちろんチーズケーキも用意しているわよ」
さやか「じゃぁまずはゲーセンですね。……ふっふっふ。見滝原のダンスクイーンの名は伊達ではない事を見せてやる!」
杏子「自信満々だなぁ。……あたしも少し本気を出してやるか」
なぎさ「なぎさの本気も見せてやるのです!」
杏子「……あんた、ゲーセンとか行った事あるのか?」
なぎさ「馬鹿にしないでほしいのです! ゲームはいつも家でやりこんでいるのです」
ほむら「……」
さやか「ほむら、どうしたのさ」
ほむら「いえ……」
いずれさやかは私が悪魔である事も忘れてしまうだろう
勿論今回の騒動も
それが今は少し……寂しく思える
さやか『忘れないよ!』
ほむら「!?」
さやか『あんたが悪魔だって事も。……そしてあんたが大切な親友だって事もね!』
ほむら『……心を読んだの?』
さやか『別に? ただあんたの目を見てたらそんな事考えてるんだろうなぁと思っただけ』
なぎさ「なぎさも頑張るのです」
まどか「わたしは……その、見学で」
ほむら「まどか。大丈夫よ。結果なんて考えず、ただ楽しめばいいの」
まどか「ほむらちゃん……うん。わたし頑張る!」
ほむら「さて……私も本気で挑もうかしら」
さやか「お、ほむらさん自信満々ですなぁ」
ほむら「えぇ、負けないわよ」
さやかの記憶がどこまでもつか分からないけれど
ほむら「全力で可愛がってあげるわ。美樹さやか」
さやか「上から目線!? ……いいよ、後悔させてやる!」
ほむら「楽しみね」
今はこの時を楽しもう
かけがえのない友人達と共に
以上で終了
ご愛読ありがとうございました!
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