アリス「日暮れのとき」 (122)

きんいろモザイクの連作短編SSです
とはいっても夕暮れ時のシーンから始まること以外共通してませんが

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428247047

だいぶ前に書いたシリーズ過去作

アリス「眠る前に」
アリス「眠る前に」 - SSまとめ速報
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アリス「帰り道で」
アリス「帰り道で」 - SSまとめ速報
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アリス「朝日を浴びて」
アリス「朝日を浴びて」 - SSまとめ速報
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も併せてどうぞ

<一番星>


アリス「だいぶ暗くなってきたね」

忍「そうですねー、もうだいぶ遅いですから」

忍「あっちの方はまだ明るいのに、あっちはもう暗くなってます」

忍「不思議ですね」

忍「イギリスの方はどうなってるんでしょうか」

アリス「うーん、イギリスはまだ朝かな」

忍「アリス、小学生が帰っていきますよ」

アリス「ほんとだ」

アリス「日本の小学校はこんなに遅くまでやってるの?」

忍「多分友達と遊んでた帰りだと思います」

忍「暗くなる前に帰らないと怒られちゃいますから」

アリス「そうなんだ」

アリス「だからちょっと急いでたのかな」

忍「はい、アリスも早く帰らなくちゃいけませんね」

アリス「わたし高校生だよ!?」

アリス「……」ムーッ

忍(どうしましょう、アリスがいじけてしまいました)

忍「……そうですよね、私が悪いんです」

忍「アリスはいくら小さいとはいえ、私と同じ高校生」

忍「たとえ小さくたって、もう一人で夜道を歩けるんですよね」

アリス「シノ、フォローになってないよ……」

忍「あっ、アリス、見てください」

アリス「?」

忍「一番星です!」

アリス「ほんとだ!」

忍「綺麗ですね」

アリス「うん、綺麗だね」

忍「一番星は名前が分かりやすくっていいですね」

忍「それ以外は星の名前なんて全然分かりません」

アリス「んーと……シノ、あれは一番星って名前なんじゃなくって」

アリス「一番星はだいたい金星なんだよ」

忍「金星?」

アリス「うん、金星。日本だと宵の明星って言うことも……」

忍「金……」

アリス「シノ、聞いてる?」

忍「やはり、金星には……」ブツブツ

アリス「?」

忍「アリス、金星にはたくさん金髪少女がいるんでしょうか!?」

アリス「は……?」

忍「まさにパラダイスです!今すぐにでも飛んでいきたい気分です!」

忍「そうです、穂乃花ちゃんにも教えてあげましょう!」

アリス「……」

忍「そういえば、イギリスも金髪の人ばかりですよね」

忍「ということは、イギリスは金星にあるのでは……?」

アリス「イギリスは地球だよ!」

アリス「それに、イギリスにも金髪じゃない人はたくさんいるよ」

忍「そうなんですか!?」ガーン

アリス「え、シノ、イギリスで何を見てたの……?」

忍「だって、アリスは金髪ですし、アリスのお母さんだって金髪でしたし」

アリス「うちはそうだけど、街の人とかはそうでもなかったでしょ?」

忍「???」

忍「私の思い出の中だと、イギリスでは皆金髪だったのですが……」

アリス(シノ、意外とイギリスに来た時のこと、良く覚えてない……?)

忍「ということは、金星の方がイギリスよりも金髪少女は多いんですね」

アリス「何が『ということは』なのか分からないよシノ」

アリス「そもそも金星じゃ人が生きてられないよ!」

忍「そうなんですか、アリスは物知りですねー」

忍「金髪少女ばっかりの楽園はないんでしょうか……」

アリス「シノ……」

アリス「ねえ、もしも皆が金髪の国があったらさ」

アリス「シノはそこに行っちゃうの?」

忍「そうですね……」

忍「確かにそんな国は最高ですが」

忍「それでも私はアリスが日本にいる限りは日本にいますよ」

アリス「本当?」

忍「はい」

忍「可愛いアリスとこうして毎日会えるんですから」

忍「それにカレンだって大切な友達です」

忍「そんな金髪少女が私の周りにはいるんですから」

忍「私にとっては、今のこの場所が金髪の国ですよ」

アリス「シノ……!」

アリス「シノ、大好き!」ギュ

忍「アリス……」

アリス「わたし、ずっとシノと一緒にいて、ずっとシノの周りを金星にするよ!」

アリス「今日からシノは金星人だよ!」

忍「アリス……」

忍「私は地球人ですよ」

アリス「そこ!?」

忍「こうしていると、なんだかイギリスに行った時のことを思い出します」

忍「あのときも、アリスは私の腕にこうやって抱きついてきて……」

忍「私もこうやって」ギュ

アリス「シノ……」

アリス「シノ、他にも星が出てきたよ」

忍「それでも一番星が一番明るいんですね」

忍「やっぱり金だからでしょうか」

アリス「うん、そうかも」

忍「それでもアリスの金髪の方が眩しいですよ」

忍「……なんでイギリスでは皆が金髪だって思い違いをしていたのか分かった気がします」

アリス「どうして?」

忍「きっと、アリスの金髪しか目に入っていなかったからですね」


一番星 おわり

<お供え物>


職員室

烏丸「……」シャ

烏丸「大宮さんは41点……」

烏丸「前よりだいぶ良くなったわね」

烏丸「夢に向かって努力してるのね……先生うれしいわぁ」ジーン

久世橋「あ、烏丸先生、中間試験の採点ですか?」

烏丸「はい、明日授業があるクラスの分は今日のうちに採点しちゃおうかなって」

久世橋「凄いです……」

久世橋(やっぱり烏丸先生は教師の鑑です)

烏丸「夕方まで他の仕事があったから、まだ3クラス分くらい残ってますけど」

久世橋「えっ?今日中にそんなに採点するんですか!?」

烏丸「そのうち終わります♪」

久世橋「大変ですね」

烏丸「でも、部活の顧問やってたりする先生はもっと忙しいですし」

久世橋「じゃあ今日は遅くまで?」

烏丸「そうなっちゃうかもしれませんねぇ」

烏丸「久世橋先生はもう帰りですか?」

久世橋「はい、今日は早めに……」

グゥー

烏丸「あらやだ、恥ずかしいわぁ」

久世橋(お腹鳴った……)

久世橋「そ、それじゃ、お先に失礼しますっ」

久世橋(英語の先生は大変だな)テクテク

久世橋(中間試験もあるし、受け持ちが3年生になったら受験の心配もしなくちゃいけないし)

久世橋(そう考えると私は家庭科で気楽ね)

久世橋(最近も調理実習くらいしか心配事はなかったし)

久世橋(そういえば、調理実習で使った材料、ちょっと残ってたような)

久世橋(何か烏丸先生に差し入れでも……)

家庭科室の前

キーンコーンカーンコーン…

久世橋(最終下校時刻のチャイムね)

久世橋(もう生徒たちはいないはずだけど)

カレン「Oh! クゼハシ先生」

久世橋「!」

カレン「何してるデース?」

久世橋「く、九条さん」

カレン「?」

久世橋(びっくりした……)

カレン「もしかして先生、何か作るデス!?」キラキラ

久世橋「え、何でそれを……」

カレン「やっぱり何か作るデスネ」

久世橋「ええ、まあ」

カレン「夕飯?それともおやつデス?」

久世橋「そういうわけではありませんが……」

久世橋「烏丸先生が忙しそうなので、何か差し入れをと思いまして」

カレン「Wow! 面白そうデス!私も手伝いマス!!」

久世橋「もう下校時刻ですよ、さっきチャイム鳴ったでしょう」

カレン「でも、カラスマ先生が空腹で苦しんでいるかと思うと……」

久世橋「別に苦しんではないと思いますけど」

カレン「私、このまま帰るなんてできマセン!」

久世橋「ですが……」

カレン「どうしてもカラスマ先生とクゼハシ先生の力になりたいんデス!」ウルッ

久世橋「うっ……」

久世橋「しょ、しょうがないですね」

カレン「Yeah!」

家庭科室

久世橋(押し切られてしまった……)

カレン「それで、何を作るデス?」

久世橋「小麦粉の余りがあるので、マフィンか何かにしましょうか」

久世橋「それなら時間もそんなにはかからないはずですから」

久世橋「ここにある材料ではプレーンなものしかできませんが」

カレン「私、チョコとか持ってマス」ドサー

久世橋「鞄にぎっしりお菓子が……!?」

カレン「適当に入れるデス!」

久世橋「九条さん、学校にこんなにお菓子持ってきてどうするんですか!?」

カレン「これはお供え物デス」

久世橋「お供え物?」

カレン「はい、お供え物デス」

久世橋「?」

チーン

カレン「できマシタ!」

久世橋「うん、九条さんのも綺麗にできてますよ」

カレン「クゼハシ先生、カラスマ先生に持っていくデスカ?」

久世橋「はい」

久世橋「……と、その前に」

カレン「?」

久世橋「九条さん、手伝ってもらったお礼です」

カレン「……マフィン、カラスマ先生に渡さなくていいんデスカ?」

久世橋「烏丸先生一人でこんなにたくさんは食べきれませんよ」

久世橋「それに、九条さんと一緒に作れて楽しかったですから」

カレン「それじゃ、私も先生にひとつあげるデス!」

久世橋「……結局、同じものを交換しただけになってしまいましたね」ニコ

カレン「フフッ」

久世橋「どうしましたか?」

カレン「クゼハシ先生、私も楽しかったデスヨ」

カレン「それに、先生が笑ったところも見れたデス」

久世橋「そ、それは」カァ

カレン「それじゃいただきマス」パクッ

カレン「んー!おいしいデス!」

カレン「先生は食べないデスカ?」

久世橋「じゃあ……」パク

カレン「……」ジィー

久世橋「美味しいですよ、九条さんの作ったマフィン」

カレン「あっ、また笑ったデス!」

職員室

久世橋「烏丸先生?」

烏丸「……」

久世橋「あれ、寝てる……」

久世橋(マフィンはここに置いておきましょうか)

久世橋(烏丸先生のジャージの上が椅子に掛けてあるから、これを)

久世橋(起こさないようにそーっと……)

久世橋(烏丸先生)

久世橋(頑張ってくださいね)

久世橋(でも、頑張り過ぎないで、なんて)

翌朝

久世橋「おはようございます」

烏丸「おはようございます、久世橋先生」

久世橋「テストの採点、終わりましたか?」

烏丸「はい♪」

烏丸「……そうだ、久世橋先生、ちょっと聞いてください!」

烏丸「昨日テストの採点中に居眠りしちゃったんですけど、起きたらマフィンがいっぱい置いてあったんです!」

烏丸「ちょうどお腹がすいていたので食べきっちゃったんですけど」

久世橋(えっ、あれ全部食べたの!?)

烏丸「他の先生方に聞いても知らないみたいでしたし」

烏丸「誰がどうして、あんなに沢山くれたんでしょう?」

久世橋「……ふふっ」

久世橋「そうですね、もしかしたらお供え物かもしれません」

烏丸「?」


お供え物 おわり

<Who are you?>


綾(あれ、ここは……)

綾(ベッド?)

綾(てことは、ここは保健室?)

綾(それになんか頭痛い……)

綾(どうして私、保健室に?)

~~~~~~~~~~~~~~

5時間目

忍「今日の体育はC組と合同じゃないんですね」

穂乃花「そうみたいだねー」

綾「体育なんて存在ごと地球上から消え去ってしまえばいいんだわ……」ブツブツ

カレン「アヤヤは陽子と一緒じゃないとヤル気出ないデス?」

綾「そっ、そんなことないわ!」///

忍「今日はバスケットボールだそうですよ」

綾「カレンは運動神経良さそうで羨ましいわ」

カレン「大丈夫です!テキトーに投げれば誰かしら倒せマスヨ」

綾「倒すの!?」

忍「穂乃花ちゃんは得意ですか?」

穂乃花「バスケットボールは乗りにくそうだよー」

カレン「あっ、アヤヤ、危ないデス!!」

綾「え?」

バーン

穂乃花「綾ちゃん!!」

忍「大丈夫ですか!?」

カレン「アヤヤ!!生きてるデス!?」

~~~~~~~~~~~~~~

綾(そっか、私ボールが当たって倒れたんだわ)

綾(今何時かしら?)

綾(携帯……は体操着だから置きっぱなしだし)

綾(まだちょっと頭フラフラするわね)

綾(戻ってもさすがに体育は見学させてもらましょう)

綾(6時間目は、えっと、世界史だったかしら)

綾(まあ、授業なら普通に……)

シャ

綾(あれ……?)

綾(夕日が差してるみたいにオレンジ……)

綾(ていうか、もう夕方!?)

綾(私、そんなに長く倒れてたの!?)

綾(今の時間は……もう5時過ぎてるじゃない!)

綾(保健の先生もいないみたいだし……)

綾(みんなはもう先に帰っちゃったかしら)

綾(窓の外もほとんど人はいないわね)

綾(ぱらぱら下校していく生徒がいるくらいで)

綾(知り合いの顔も全然見えないし)

綾(……この距離じゃあまり良く見えないけれど)

綾(そういえば、この間アリスが言ってたわ)

~~~~~~~~~~~~~~

綾「だいぶ遅くなっちゃったわね」

忍「はい、急いで帰りましょう」

アリス「すっかり黄昏時だね」

忍「アリスは難しい言葉を知ってますねー」

アリス「ねえ知ってる?『黄昏』の由来」

アリス「この時間は、だんだん暗くなってきて、人の顔が分かりにくくなってくる」

アリス「だから夕暮れ時のことを、彼は誰、って意味で『誰そ彼』っていうんだよ」

忍「?」

綾「知らなかったわ」

忍「私、アリスが何を言ってるのか全然分かりませんでした」

綾「何だかロマンチックな由来ね」

~~~~~~~~~~~~~~

綾(まさに今のことを言ってるみたい)

綾(遠くに歩いているのが誰なのか、本当に知らない人なのか……)

綾(ここから見ていても私には分からない)

綾(静かね)

綾(時計の音くらいしか聞こえないだなんて)

綾(普段の賑やかな学校からしたら考えられないわ)

綾(なんだか、こうして一人でいると)

綾(私だけが世界の端っこに取り残されてしまったみたい)

綾(なんて……)

綾(あら?)

綾(このハンカチ、私のじゃないわ)

綾(それにちょっと湿ってる?)

綾(枕元に落ちてる……ってことは、誰かが冷やしててくれたのね)

綾(誰かしら?)

綾(多分ここまで運んできてくれたのは、しのかカレンか穂乃花よね)

綾(その中の誰かが?)

綾(洗って返さないと……)

綾(そういえばこのハンカチ、まだ冷たいわ)

綾(それに何だか見覚えが……)

綾(もしかして、これ……)///

綾(……じゃなくて!)

綾(私も着替えて帰らないと)

テッ……テッ……

綾(あ、足音が聞こえる……)

綾(近づいてきているみたいね)


テッ……テッ……

綾(あれ、この足音……)


テッ……テッ……

綾(何となく分かる気がする)

綾(足音が私のもとに向かってることも)

綾(あなたが誰なのかも)

テッ

綾(ドアの向こうで立ち止ったみたいね)

綾(『誰そ彼』だなんて……)

綾(あなたは誰、だなんて聞かなくっても)

綾(分かる気がするわ)

綾(うん、私には分かる)

綾(きっと次の瞬間、ドアが開いて)

綾(2人分の荷物を持ったあなたが)

綾(いつもみたいに笑顔になるって)

綾(そう、誰よりも優しくて眩しい笑顔に……)


Who are you? おわり

<ヘアピンとリボン>


校庭

カレン「ホノカー?」

カレン「Oh, 誰もいないデス」

カレン「まだテニス部は練習してるかと思いマシタガ」

カレン「暗くなり始めてるし、さすがに終わってマスネ」

カレン「校門のところで待ち伏せしてみマショウカ……」

カレン「いや、更衣室の方に行ってみるデス」

女子更衣室

カレン「たのもう!」

穂乃花「!?」ビクッ

カレン「あ、ホノカ、見つけたデス」

穂乃花「なんだカレンちゃんか、びっくりしたよー」

穂乃花「カレンちゃんもまだ学校に残ってたんだね」

カレン「Yes, ちょうどホノカの帰る時間と一緒になったノデ」

穂乃花(あれ?カレンちゃん、なんか甘い良い匂い……)

穂乃花(カレンちゃん、今まで何してたんだろう?)

穂乃花(もしかして……)

~~~~~~~~~~~~~~

???「お嬢様、お茶の時間です」

???「本日は焼きたてのマフィンを用意いたしました」

カレン「たったのこれだけデスカ?」

???「はっ、すぐに追加をお持ちします」

カレン「それじゃ、お茶を淹れてクダサイ」

???「かしこまりました」

~~~~~~~~~~~~~~

穂乃花(こんな感じで優雅なティータイムをしてたとか……?)

穂乃花(さすがカレンちゃん、高貴すぎるよー)

カレン「?」

穂乃花「あっ、私すぐ着替えちゃうから待ってて?」

カレン「OKデス!」

穂乃花「……」ヌギヌギ

カレン「ジィー……」

穂乃花「……って、カレンちゃん!」

カレン「何デス?」

穂乃花「そんなに見られたら恥ずかしいよー」

カレン「問題ありマセン」

穂乃花(何が……?)

カレン「ほうほう」

穂乃花「?」

カレン「ホノカは結構大きいデスネ」

穂乃花「だからそんなに見ないでってば」

カレン「なるほど……見られるのがイヤなんデスネ?」

カレン「じゃあこれならどうデス?」モミ

穂乃花「きゃあ!」

カレン「姉ちゃんホンマええ体してまんなあ」モミモミ

穂乃花(何でそこだけ流暢な日本語なの!?)

カレン「下着も可愛いデスし」モミモミ

穂乃花「ちょっともう、やめてよー」///

カレン「女同士なんだから恥ずかしがらなくて大丈夫デスヨ」

カレン「シノとアリスやアヤとヨーコもこれくらいフツーにしてマス」

穂乃花「えっ!?そ、そうなの?」

カレン「私の想像上ではそうデス」

穂乃花(外国人だとこれくらいのスキンシップはよくあることなのかな……)

穂乃花(それとも、女の子同士だったらこれくらい普通?)

カレン「でも、ホノカはオシャレでいいデスネ」

穂乃花「そうかなあ?」

カレン「髪、いつも編んでるデス?」

穂乃花「うん、でもカレンちゃんだってお団子にしておしゃれだよー」

穂乃花「金髪もすっごく綺麗だし!」

カレン「テニスのとき、長いと邪魔じゃないデスカ?」

穂乃花「うーん、そんなには気にならないかな」

カレン「束ねたりとかはしないデス?」

穂乃花「あんまりしないなー」

カレン「ふーん……」

穂乃花(なんだか髪を見つめられてるよー)

穂乃花「……カレンちゃん、編み込みやってあげようか?」

カレン「Wow! 本当デスカ!?」

穂乃花「じっとしててね」アミアミ

カレン「分かったデス」

穂乃花(カレンちゃんの髪、さらさら……)

穂乃花(綺麗だな……)

カレン「まだデス?」

穂乃花「もうちょっと……」

穂乃花「よしっ!」

カレン「できたデス!?」

穂乃花「あっ、あとちょっとだけ」

カレン「?」

穂乃花「これを……」シュルン

カレン「ホノカのリボン?」

穂乃花「できた!」

カレン「どこかに鏡あるデスカ?」

穂乃花「私、手鏡持ってるよー」

穂乃花「ほら」

カレン「おおー!いい感じデス!」

カレン「でもホノカの髪がほどけちゃいマシタ」

穂乃花「気にしなくていいよー」

カレン「じゃあ、お返しにホノカはお団子にしてあげるデス!」

穂乃花「えっ!?」

カレン「ほら、動いちゃダメデスヨ」

カレン「……っと、こんな感じデスカね」

カレン「可愛いデス!」

穂乃花「そうかな」

カレン「ヘアピンも付けるデス?」

穂乃花「いいの?」

カレン「もちろんデス」

穂乃花(カレンちゃんと同じ髪型……)

穂乃花(ちょっとだけカレンちゃんみたくなれたかな……?)

カレン「~♪」

穂乃花「カレンちゃん、なんか嬉しそうだね」

カレン「分かるデスカ?」

穂乃花「うん、にこにこしてる」

カレン「フフ、これでホノカに近づけたデス?」

穂乃花「えっ?」

カレン「ところでホノカ」

穂乃花「?」

カレン「服、着ないデス?」

穂乃花「え、あっ」///

穂乃花「カレンちゃんの髪結ぶのに夢中だったから……」

穂乃花(恥ずかしいよー……)

カレン「ホノカのドジっ娘なところも、私、好きデスヨ」

カレン「可愛いし、一緒にいて楽しいデス」

穂乃花「カレンちゃん」///

カレン「私、ホノカみたいになれて嬉しいデス」

穂乃花「そう……なの?」

カレン「そうデス!」

穂乃花(私もカレンちゃんの髪型になれたんだから)

穂乃花(カレンちゃんみたいに、真っ直ぐ好きって言えるかな……)

穂乃花「カレンちゃ……」

カレン「ホノカ、そろそろ行くデス!」グイグイ

穂乃花「あ、ちょっと、まだボタン全部止まってな……」

カレン「もう外は暗いデスヨ?」

穂乃花「そんなに引っ張らないでよー」

カレン「カバン持ったデス?」

穂乃花「うん」

カレン「じゃあ行きマショウ!走るデス!」パタパタ

穂乃花「あ、待ってよー」パタパタ

カレン「青春は待ってくれないのデス!」

穂乃花「何それー」アハハ

穂乃花「……カレンちゃん」

カレン「?」

穂乃花「大好きっ!」


ヘアピンとリボン おわり

<分からないこと、分かること>


休日 ゲームセンター

陽子「そろそろ帰るか?」

空太「あと1回……」

陽子「えー、まだやんのか?」

美月「うん」

陽子「何回UFOキャッチャーやれば気が済むんだよ」

陽子「それにもう日が落ちかかってるぞー、夕飯までには帰んないと」

美月「あの大きいの、もう少しで行けそうだから」

陽子「あれと同じ奴、普通サイズは大量に取ったじゃん」

陽子「第一、あれ何のぬいぐるみなの?なんかのキャラ?」

空太「さあ?」

陽子「知らないでやってたのかよ!」

陽子「じゃああと1回だけな」

空太「うん」

陽子(おお……空太の目がいつになくマジだ)

ウイーン……

陽子(引っかかった!これは……)

ボトッ

陽子「だめかー」

帰り道

空太「もう少しだと思ったんだけど」

陽子「いや、充分だろ……ぬいぐるみ、ビニールにぎっしりじゃん」

美月「たったの7個よ」

陽子「いや『たったの』って」

空太「偶数じゃないと二人で分けられないのにな」

陽子「別にそこまでこだわらんでも……」

陽子「空太なんて普段ぬいぐるみで遊んだりしないじゃん」

空太「それはそうだけど」

美月「そういう問題じゃないのよ」

空太「そう、これはいわば宿命」

美月「UFOキャッチャーを前にして景品を取らないわけにはいけないの」

陽子「んー、その感覚は姉ちゃんには分かんないなー」

陽子「てか君ら、なんでそんなUFOキャッチャー上手いの?」

美月「学校の授業でやるのよ」

陽子「そうなの!?」

空太「嘘だよ」

空太「あれ?」

陽子「ん?どうした?」

空太「お姉ちゃん、あれ綾お姉ちゃんじゃない?」

陽子「あ、ほんとだ」

陽子「綾ーっ!」

綾「!?」

綾「よ、よよ陽子!?」///

陽子「偶然だなー、どっかの帰り?」

綾「えええ、ええ、そ、そうよ」

綾「よっ陽子もどこかの帰りかしら?」

陽子「空太と美月とゲーセン行ってた帰り」

空太「ねえ……」ヒソヒソ

美月「そうね……」ヒソヒソ

陽子「ん、何話してんの?」

美月「お姉ちゃん」

空太「俺たち、先帰ってるから」

美月「夕飯までには帰るのよ」

陽子「え、え?何で?」

陽子「行っちゃった……」

陽子「何で?姉ちゃんとは帰りたくないのか?」

綾「……別にそういう訳じゃないと思うわ」

陽子「え、そうなの?」

綾「ええ、多分」

綾「ほら、私たちも帰りましょ」

綾「……その袋は何?」

陽子「ああ、これ?空太と美月がUFOキャッチャーやって」

陽子「それで取ったぬいぐるみ」

綾「すごい量ね」

陽子「そうそう、あいつら妙に上手くてさ」

陽子「ていうか自分で取ったんだから自分で持って帰ってほしいよな」

綾「そ、その、陽子」

陽子「何?」

綾「私、持つわよ」

陽子「え、別にいいよ」

綾「だだだって、えっと、ほら、陽子、両手塞がってるじゃない!」

綾「私手ぶらだから、持つわよ!」グイ

陽子(珍しく綾が強引だな……)

陽子「……じゃあ悪いけどお願い」

陽子「……」

綾「……」///

陽子「綾」

綾「何かしら?」

陽子「顔赤いよ」

綾「そっ、そんなことないわよ」

綾「ほら今夕方だから?」

綾「そう!夕焼けのせい!」

陽子「そうかな」

綾「そうよ」

陽子(……そういうことか)フフン

陽子「綾ー?」

綾「?」

陽子「スキありっ!」キュ

綾「ちょ、よ、陽子」///

陽子「あれ?手つなぎたかったんじゃないの?」

綾「……」カァー

陽子「さっきより顔赤くなってるよ」

綾「だから、これは夕日が……」

陽子「はいはい」

陽子「私は、綾と手つなげて嬉しいよ?」

綾「もう……」///

陽子「まあ、何で空太と美月が2人で帰っちゃったのか分かんないけどさ」

陽子「そのおかげでこうやって綾と帰れるわけだし、よかったかもな」

綾「陽子……」

陽子「?」

綾「相変わらずニブいのね」プイッ

陽子「え?」

綾(なのに手をつなぎたいってことは伝わるのよね)

陽子「……もしかして、手つなぎたいって何で分かったんだろう、って考えてる?」

綾「!」

綾「なな、なんで分かったの!?」///

陽子「そりゃー分かるよ」

陽子「綾のことなら、なんでも」


分からないこと、分かること おわり

<日暮れのとき>


帰り道

カレン「そういえば、知ってマスカ?」

カレン「ちょっと前に新しくIce creamのお店ができたデス」

陽子「へー、そうなんだ」

カレン「みんなで行くデス!」

綾「えっ、今から?」

アリス「ダメだよカレン、A組かなり宿題多いんでしょ?」

カレン「フフ……これを見てもまだそんなことが言えマスカ?」ピラ

忍「これは、えっと……無料券?」

陽子「え、タダ!?」

カレン「そうデス」

綾「これ、期限今日までじゃない」

カレン「パパに貰ったのを今日まですっかり忘れてマシタ」

陽子「よしっ、せっかくだから行こう!」

アリス「まあいっか、そうする?」

忍「はい、行きましょう」

綾「カレン、お店はどこ?」

カレン「確か駅の方だったと思いマス」

1時間後

カレン「着きマシタ!」

陽子「全然駅の方じゃないじゃん!」

綾「ここ、最初にカレンがアイス屋さんのことを言い始めた所から5分もかからないわよね……」

カレン「準備運動デス」

陽子「迷ってただけだろ」

忍「まあまあ、無事に着いたのでよしとしましょう」

アリス「無事か、なあ……?」

綾「素敵なお店ね」

陽子「なんか綾が好きそうな感じだなー」

忍「何にしましょうか」

アリス「こんなに種類あったら迷っちゃうね」

忍「そうですね……それじゃあ私はチョコチップにします」

アリス「じゃあわたしもシノと一緒にするよ!」

忍「お揃いですね」

アリス「うん!」

陽子「何にした?」

アリス「わたしはシノとおそろいのチョコチップだよ」

陽子「へー、それもうまそうだなー」

アリス「ヨーコは?」

陽子「私はバニラ!」

忍「カレンのそれは……緑色なので雑草の味ですかね」

陽子「どんな味だよ!」

カレン「ノンノン、メロンと抹茶デスヨ」

アリス「二種類あったの?どっちも緑だから気づかなかったよ」

忍「そういえば綾ちゃんは?」

陽子「まだ迷ってたみたいだけど」

陽子「溶けちゃうし、先食べてよっか」

カレン「そうデスネ」

アリス「うん、いただきます!」パクッ

忍「どうですか?」

アリス「おいしいよ!シノと同じのにして良かった!」

忍「そうですかー」ニヘー

陽子「しのもアリスのこと見てないで食べたら?」

忍「冷たくっておいしいです」

綾「お待たせ」

陽子「あ、綾。もう皆食べ始めちゃってるよ」

カレン「シノのやつも一口クダサイ!」パクッ

忍「カレン、おいしいですか?」

カレン「Greatデス!お返しに私のをシノにあげるデス」

カレン「シノ、あーん」

忍「あーん」パク

忍「メロンと抹茶が混ざって何だか変な味です」

アリス「……」

綾「……よ、陽子」

陽子「ん、何?」

綾「その、ひひひ一口……」///

陽子「あ、食べ終わっちゃった」

陽子「やっぱダブルとかにしないと少な……って綾!?」

綾「……」

陽子「え?なんか怒ってる?」

カレン「ヨーコももう食べ終わったデスカ?」

陽子「うん」

綾「カレンも食べ終わったのね」

カレン「フフフ……私はまだまだ食べマスヨ」

カレン「もう1つ買ってくるデス」

陽子「腹壊すなよー」

綾(陽子はもう食べないのかしら……)

陽子「綾のもおいしそうだな」

綾「そう?陽子のも美味しそうだったわ」

陽子「うん、すっげーおいしかった、綾にも一口食べさせてあげたかったなー」

綾「!?」///

忍「おいしかったですねー」

アリス「うん!」

忍「あっ、アリス、口の横にアイスがついてますよ」

アリス「ほんと?」

忍「はい、今とってあげますね」

アリス「ありがとうシノ、でもシノのハンカチが汚れちゃうよ」

忍「大丈夫ですよ、こうすれば……」

アリス「ちょ、ちょっと!」グイ

アリス「シノ、なにしてるの!?」

忍「なめて取ろうとしただけですが……」

アリス「え、ちょ、それは……」///

忍「?」

アリス「シ、シノのバカッ!!」

忍「あ、アリス……?」

アリス「わーん!!」タタタ……

忍「そんな……」ヘナヘナ

忍「私……アリスに嫌われ……」

陽子「あれ、しの!?どうした?」

綾「アリスが走っていったみたいだったけど?」

忍「陽子ちゃん、綾ちゃん……」

忍「アリスが……アリスが行ってしまいました……」

忍「このままイギリスに帰ってしまうかもしれません」

陽子「落ち着けって、何があったの?」

綾「わ、私アリスを追いかけるわ!」

綾「あっちに行ったのが見えたから」タタタ

忍「綾ちゃん、出国する前に捕まえてください!!」

陽子(追いかけるなら私が行った方が良かった気もするけど)

陽子(まあアリスの体力なら綾でも追いつけるかな)

カレン「今度はストロベリーとコーヒーのダブルにしたデス!」

カレン「って、シノとヨーコしかいないデス?」

陽子「うん、まあ」

カレン「アリスとアヤは?」

忍「アリス……ううう……」

カレン「ヨーコ、何があったデス?」

陽子「いや、私も全然わかんないんだけど」

陽子「突然アリスがどっか走って行っちゃってさ」

陽子「しのはずっとへたりこんでるし」

陽子「綾はアリスを追いかけて行ったんだけど」

カレン「ふーん?」

陽子「しのとアリスの方は見てなかったからそれ以上の事情は分かんないかな」

カレン「そうデスカ」

忍「カレン……」

忍「私にはもうカレンしかいなくなってしまいました」

カレン「シノ、何があったデス?」

忍「いえ、ただ私はアリスの口に付いたアイスをなめて取ろうとしただけです」

忍「それなのにアリスが怒って、『シノのバカッ!!』だなんて……」

カレン「たったそれだけのことでデスカ?」

忍「はい、全然大したことはしていないのですが」

陽子「公衆の面前でそれは十分大したことだろ」

忍「そんなことはないですよ、実際にさっきカレンとは食べさせ合いっこしましたし」

陽子「それとこれとじゃ全然違うだろ……」

陽子「ていうか、それが原因なんじゃないの?」

忍「?」

陽子「ほら、アリスってけっこうヤキモチ焼きだから」

カレン「じゃあ何で、シノがキスしようとして怒るデス?」

忍「へっ!?」

陽子「?」

忍「キスだなんてそんな」///

忍「私はアリスの口に付いたアイスを口で取ろうとしただけですよ!」

カレン「どう考えてもキスデス」

忍「陽子ちゃん、そんなことありませんよね!?」

陽子「いやー、それは普通に考えてキスかな」

カレン「キスくらいそこまで気にしないデス」

カレン「シノとアリスくらい仲が良ければ、フツーのコミュニケーションデス」

陽子「でも口と口って……」

カレン「……まあ、それは」

忍「つまりアリスは私がキスしようとしたから怒って逃げてしまった、と」

カレン「んー……そうデショウカ」

カレン「アリスがシノを好きじゃないワケないデス」

カレン「キスされること自体がイヤだとは思えマセン」

陽子「つまり?」

カレン「これはアリスのビミョウな乙女心なのデス!」

忍「?」

陽子「?」

忍「どういうことですか?」

カレン「それ以上はよく分かりマセン」

陽子「おい!」

陽子「まあ、好きな人とはえこんなところでキスされるっていうのはどうかと思うな」

カレン「それはそうデス」

忍「……好きな人?」

陽子「え?」

忍「アリスは、私のことが好きなんですか?」

陽子「違うの?」

カレン「てっきりシノとアリスは行き着くところまで行ってるものだと思ってマシタガ」

忍「そんなことありませんよ!」

カレン「それじゃあ、シノはどう思ってるデス?アリスのこと」

忍「それは……」

忍「……」

忍「そういえば、私はアリスに好きだとちゃんと伝えたことがないかもしれません」

忍「もしかしたらアリスはそんな中途半端なところに怒ってしまったんでしょうか」

忍「アリス……」

忍「私のせいでアリスを怒らせてしまいました」

忍「陽子ちゃん、カレン、どうしましょう……」


陽子「どうって、そんなんひとつしかないんじゃないか?」

カレン「ちゃんとアリスに話しに行くデス!」

忍「……そうですよね」

忍「私、アリスを探しに行かないと」

陽子「綾に電話してみよっか?」

忍「お願いします、綾ちゃんがアリスに追いついていればいいのですが……」

忍「やっぱりアリスには子供用携帯を持たせておくべきでした」

陽子「あ、あとコレ」

忍「アリスのかばんですか?」

陽子「うん、置いてっちゃったからさ、ついでに持って行ってよ」

カレン「シノ」

忍「カレン……」

カレン「きっと大丈夫デス」ニコッ

綾「アリス!」ガシッ

アリス「アヤ……」

綾(ようやく捕まえたわ……!)

綾(でも……)

綾「はぁ……はぁ……」

アリス「ふぅ……ふぅ……」

綾(息が切れて喋れない……)

アリス(息が切れて喋れないよ……)

綾「アリス」

アリス「アヤ……」

綾「ねえ、何があったの?」

綾「話せることなら話してみて、力になれるかもしれないわ」

アリス「うん……」

アリス「シノはわたしのこと、何とも思ってないのかな」

綾「えっ?」

アリス「あんなふうに、その」

アリス「キ、キスみたいなこととか……」

アリス「あのねアヤ、さっき、シノがわたしの口にアイスが付いてるって言って」

アリス「それでシノはなめて取ろうとしたんだよ」

綾「そ、それって……」

綾(キス、よね……)

アリス「うん……」

アリス「シノにとってわたしはただの友達で」

アリス「単にイギリス人で金髪だから可愛いって言ってくれるだけなのかな」

綾「そんなことないわよ」

綾「しのだってアリスのこと、きっと大切に思ってる……」

アリス「でも!」

アリス「日本に来てからいつもシノと一緒で、2年生になってからは学校は別々のクラスだけど」

アリス「それでもいつだってシノのことばっかり考えてて」

アリス「シノのこと、どんどん好きになっていくの」

アリス「それなのに、あんな風にキスされたら……」

アリス「アヤだって、ヨーコに軽い気持ちでキスされたりしたらどう思う?」

綾「そ、それは今関係ないでしょ」///

綾「とにかくっ!」

綾「アリスはどうしたいの?」

アリス「それは……」

綾「自分の気持ちに素直になるのが一番だと思うわ」

綾(……それができたら苦労しないんだけどね)

アリス「それは分かってるけど……」

アリス「でもね、わたし、シノと一緒にいるのが怖いの……!」

綾(あれ、携帯が鳴ってるわ)

綾(……何となくだけど、陽子からの気がする)

綾(しのの方は上手くいったのかしら)

綾(……そうよね、きっと上手くいってる)

綾(それで、アリスを迎えに来てくれるはずだわ)

綾(だって、しのだもの)

綾「大丈夫よ」

綾「今私に話してくれたみたいにすれば」

アリス「そうかな……」

綾「私はもう行くけど……」

綾「アリスはここにいて」

アリス「え?」

綾「……空が赤くなってきたわね」

綾「ここからだと、夕日が良く見えるわ」

アリス(もうすぐ日が沈む)

アリス(アヤは行っちゃったけど……)

アリス(どうしてここにいなきゃいけないんだろう?)

忍「アリス!」

アリス「……シノ」

忍「綾ちゃんが居場所を教えてくれました」

忍「アリス、話を……」

アリス「こ、こっち来ないで!」

忍「アリス……」

アリス「どうしてシノはそんな風にしてられるの!?」

アリス「シノはいいかもしれないけれど」

アリス「わたしはシノと一緒にいるだけじゃもう満足できないの!」

アリス「シノの家にホームステイして、シノと同じ学校に行って……」

アリス「イギリスにいた頃はそれだけでも幸せだと思ってたけど」

アリス「でも、今はそうじゃないの!」

アリス「シノとこうやって1メートル離れてるだけでも、シノが恋しくて仕方ないのに……!」

忍「……見てください、アリス」

アリス「?」

忍「ほら、私たちの影がこんなにも伸びて」

アリス「影?」

アリス「あっ……」

忍「私の影とアリスの影が重なって、まるでキスしているようですよ」

アリス「ほんとだ……」

忍「アリス」

忍「私と、キスしましょう」

アリス「でっでも、シノは」

忍「私はアリスが好きです」

忍「それが私の気持ちです」

アリス「ダメだよシノ、そんなこと……」

忍「いいんです」

忍「この先どうなるかなんて」

アリス「シノ……」

忍「アリス、近くに来てください」

アリス「……うん」

忍「アリス」

アリス「シノ……」


「んっ…………」

アリス「……いつの間にか、日が沈みきっちゃったね」

忍「はい、私たちの影も消えてしまいました」

アリス「でも、そのかわり、こうして……」

チュ

アリス「わたしたちがキスすればいいよ」

忍「ふふっ」

アリス「な、なに?」

忍「アリス、さっきと変わり過ぎですよ」

忍「そんなに気持ち良かったですか?」

アリス「それは……」///

アリス「ほ、ほらシノ、帰ろう!」

忍「はい」キュ

アリス(すっかり暗くなった街は少し肌寒くて)

アリス(繋いだシノの手は、交わしたキスと同じ温度だった)

アリス(シノに手を引かれているから、温もりを感じているから、わたしは歩いていける)

アリス(それに、いつかわたしたちが立ち止ったなら)

アリス(きっとまた思い出すはずだから)

アリス(この大切な、日暮れのときを)


日暮れのとき おわり

これでこの連作短編SSは完結です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

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