アリス「朝日を浴びて」 (123)

きんいろモザイクの連作短編SSです

とはいっても朝のシーンから始まること以外共通してませんが


よろしければ、

前々作『アリス「眠る前に」』
アリス「眠る前に」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379940814/)

前作『アリス「帰り道で」』
アリス「帰り道で」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382016291/)

も併せてどうぞ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387114982

なお、当方は現在深刻なネタ不足につき、書くペースは遅いかと思います。
こんな話が読みたい、みたいなのがあれば、リクエスト頂ければもしかしたら書くかもしれません。

<日の出>


忍「ん、朝……」

忍「あれ、まだ暗い……?」

忍(夏休みを利用してアリスがイギリスに帰省してから数日が過ぎました)

忍(アリスがいない生活は、なんだか胸にポッカリ穴が開いたようです)

忍「……アリスの気配がないとよく眠れません」

忍「時計時計……まだ5時ですか」

シャッ

忍「外はまだ真っ暗です」

忍「アリスは今頃ぐっすり寝ているのでしょうか」

忍「ちゃんと眠れているでしょうか」

忍「心配です……」

忍「この空の向こうに、アリスはいるんですね……」

忍「あ……」

忍「日が昇ってきました」

忍「綺麗……」

忍「アリスにも見せたかったです」

忍「いえ、アリスもこの日の出を見ているかもしれません」

忍「だって、この空はイギリスにも繋がってるんですから」

忍「そうだ!ここからアリスに呼びかければ伝わるかもしれません」

忍「声は届かなくても、きっと気持ちは届くはずです!」

忍「アリスー!聞こえますかー?」

忍「私はアリスがいなくて寂しいです」

忍「でも、私は平気ですので」

忍「だからイギリスでゆっくり……」

ガチャ

勇「こんな朝早くから何なのよ」

忍「あ、お姉ちゃん」

忍「アリスにメッセージを送ってたんですよ」

忍「きっと気持ちは届くはずですから」

勇「それは分かるわよ、そういうことじゃなくって」

忍「え!?どうしてわかったんですか?まさかお姉ちゃん、超能力の使い手だったり……」

勇「あれだけ大声で騒いでたら誰だって分かるわ……」

忍「あれ?声に出てましたか?」

忍「ごめんなさいお姉ちゃん、私のせいで起こしてしまって」

勇「まったくよ、せっかくの休みだっていうのに」

忍「でもなんだか、アリスも今起きてるような気がして」

勇(そりゃそうなんじゃ……)

忍「もしかしたらアリスも同じように日の出を見ていたんじゃないかな、と思いまして」

勇(時差……については黙ってようかしら、面白そうだし)

忍「アリス……」

勇「……ふふっ」

勇「忍、あんた寝ないの?」

忍「眠いんですけど、寂しくてよく眠れなくて……」

勇「私は二度寝するわよ」ゴソゴソ

忍「あ、そこは私のベッド……」

勇「忍ももう少し寝なさい、クマできてる」

勇「一緒に寝てあげるわ」

忍「お姉ちゃん……」

勇「こんな風にして寝るのなんていつ以来かしら」ナデナデ

忍「……」

勇「もう寝てる……」

勇「何が『よく眠れない』なのかしら」

勇「まあいいわ」ギュ

勇「可愛い妹のためだもの」

9時間後
イギリス

アリス「ん、朝……?」

アリス「あれ、まだ暗い……」

アリス「何時……あ、もう明け方だ……」

アリス「……シノに会いたいな」ボソ

ガラッ

アリス「東はあっちだから、シノはあの空の向こうにいるんだね……」

アリス「あ、日の出だよ!」

アリス「日本とイギリスの時差は9時間」

アリス「もしかして、シノも9時間前にこの日の出を見たのかもしれない」

アリス「そう思うと、なんだか不思議な感じ……」

アリス(シノ、シノは今何をしてるの?)

アリス(こっちは朝日が綺麗だよ)

アリス(日本に帰ったら、早起きして一緒に日本の日の出も見たいな……)


同時刻
日本

忍「……」スヤスヤ

勇「……」スヤスヤ

忍「!」ガバッ

勇「んー、なにー?もう朝ー?」

忍「あ、お姉ちゃん、今アリスからメッセージが届いた気がしました!」

忍「やっぱり朝日に向かって念じれば気持ちは届くんです!」

勇「夢でも見てんの……?」

忍「夢、だったんでしょうか」

勇「第一、時差があるんだから、向こうはまだ夜よ」

忍「時差……そういえばそんなものが……」

勇「日本とイギリスだと、えーと、9時間くらいあるんだっけ?」

忍「ということは、今日本が2時過ぎなので……」

勇「え、今何時って?」

忍「2時過ぎです」

勇「……」

忍「お姉ちゃんのお蔭でぐっすり眠れました」

勇「……それならよかったわ」

勇「私はなんか寝過ぎでダルいけど」


日の出 おわり

投下乙
採用されるか分からないけどリクします
「もしも忍が男だったら」

<花>


通学路

アリス「いい天気だねー」テクテク

忍「そうですね」テクテク

アリス「昨日は雨降ってたのに、今日は雲一つない青空だよ!」

忍「夜中のうちに止んでよかったですね」

アリス「そうだね、シノ」

アリス「あ、みてみてシノ、花が咲いてるよ」

忍「わあ、綺麗ですね」

アリス「何て花なのかな、昨日までは気づかなかったけど」

忍「えい」ブチッ

アリス「え、シノ……」

忍「何か言いましたか?」

アリス「摘んじゃったら可哀そうだよー」

アリス(しかも全然躊躇が無かった……)

忍「でもほら、見てください」

忍「こうやってアリスの髪に挿すと……」スッ

忍「天使みたいです!」

アリス(自分じゃ見えないよ、シノ……)

忍「アリス……」パァァァ

アリス(シノが嬉しそうな手前、ちょっと言いづらいけど)

アリス(ちょっと濡れてるし、早く取りたい……)

アリス「あっ、そうだ!」

アリス「ねえシノ、花占いって知ってる?」

忍「花占いですか?」

アリス「うん、こうやって花びらを一枚ずつ取りながら……」スッ

忍「それくらい私でも知ってますよー」

アリス「えっと、それじゃあ、シノは私のことを……」

忍「私ですか?なんだか照れますね」テレテレ

アリス「好き」プチ

アリス「嫌い」プチ

アリス「好き」プチ

アリス「嫌い」プチ

アリス「好き」プチ




アリス「嫌、い……」プチ

忍「アリス……」

アリス「……」ウルッ

忍「アリス!大丈夫です!」

忍「占いなんて気にしなくても、私はアリスのこと大好きです!」

忍「きっと何かの間違いです!もう1回やれば……」

忍「花がありません……そうです!代わりに私の髪でやりましょう!一本ずつ抜いていってください!」

忍「さあアリス!一思いにどうぞ!後で金髪を植毛すれば大丈夫です!」

アリス「シノ、それはさすがに無理があるよ……」

アリス「……」テクテク

忍(どうしましょう……アリスがへこんでます)

忍(それもこれも私が花を摘んだりしたから……)

忍(なんとかしてアリスを元気づけてあげないといけません)

忍(ええっと、ほかに何か占いになりそうなものは……)

忍(朝のテレビの星占いは見てきませんでしたし、私には占いなんてできませんし……)

忍「あっ」

アリス「?」

忍「これを見てください!」ブチッ

アリス「日々草の花?」

アリス(また躊躇なく千切ってる……)

忍「これを使いましょう」

忍(花びらが5枚!これなら間違いありません!)

忍「えっと、私はアリスのことが、好き……からでいいんでしょうか?」

忍「あれ?えっと、5枚なので、好き、嫌い、えっと?」

アリス「待って!」

アリス「シノ、ありがとう」

忍「へ?」

アリス「占いなんかよりも、シノが私のこと好きでいてくれるって分かったから……」

アリス「その気持ちの方が嬉しいよ」

アリス「その花、なんだか私たちみたい」

アリス「花びら5枚が、仲良く寄り添ってるように見えない?」

忍「……でしたらこの花は大切にしてあげなきゃいけませんね」

忍「押し花にしてあげましょうか」

アリス「さすがシノ、いいアイディアだよ!」

アリス「完成したら本の栞にする?」

忍「アリスの好きなようにして構いませんよ」

アリス「そうだ!」

忍「どうしましたか?」

アリス「これとこれと……」プチプチ

アリス「ほら!これで5つ押し花作ろう!」

アリス「それで、カレンとヨーコとアヤにもあげるの」

忍「素敵ですね」

アリス「この花は私たちの友情のシンボルだよ!」

後日

アリス「ねえねえシノ、あの押し花、できた?」

忍「押し花?」

アリス「あの日々草の……」

忍「あっ、あれですか。どこかに挟んだままだと思うんですが……」

忍「えっと確か……」

忍「……ありました!」

アリス「ホント!?」

忍「教科書に挟んでおいて、そのまま忘れてたんですね」

忍「教科書なんてあまり見ませんから」

アリス「……シノ」

忍「はい?」

アリス「押し花はいいとして、ちゃんと勉強もしなよ……」


花 おわり

<朝練>


更衣室

穂乃花「おはよう」

女子「あ、おはよ、穂乃花」

女子「最近朝練キツいよねー」

穂乃花「そうだね」

女子「てか時間結構ヤバいよ?」

穂乃花「あっ、ほんとだ!急いで着替えなきゃ……」

グラウンド

穂乃花(よかった、間に合って……)

穂乃花「って、カレンちゃん!?」

カレン「ホノカ、遅いデス!罰としてグラウンド100週デス!!」

穂乃花「ええっ、そんな!?」

穂乃花「……って、そうじゃなくて」

穂乃花「なんでカレンちゃんがいるの?」

カレン「朝練あるところにカレンありデスヨ」

穂乃花「?」

カレン「朝練というものに出て見たかったノデ、無理言って参加させてもらいマシタ」

穂乃花「そうなんだー」

顧問「それじゃ、準備体操はじめるぞー」

穂乃花「カレンちゃん、一緒にやる?」

カレン「やるデース!」

穂乃花「カレンちゃん、体やらかいね」グイー

カレン「フツウだと思いマスケド」グイー

穂乃花「イギリスの人はみんな体やらかいの?」

カレン「どうでショー……」

カレン「ああでもアリスは体かたいデスネ」

穂乃花「へー」

カレン「人それぞれデス」

顧問「じゃあ次、サーブ練いくぞー」

カレン「サーブレン?」

穂乃花「えっと、順番にサーブを打っていくの」

穂乃花「で、打ったらサーブレシーブの列に並んで……」

カレン「Oh! とりあえず打てばいいデスネ?」

穂乃花「うん、まあそうかな」

カレン「フフフ……ついに私の本気を見せるときがきたようデスネ」

カレン「行くデース!」バシン

穂乃花「あっ……」

ヒュー……

カレン「あー……」

穂乃花「カレンちゃん、すごいパワーだね……」

カレン「やり過ぎたデス」

穂乃花「どっか行っちゃったね、ボール……」

カレン「探してこないと怒られるデスカ……?」

穂乃花「うん……」

穂乃花「こっちの方に飛んでったと思うんだけど」

カレン「探すの手伝ってもらって悪いデス」

穂乃花「いいのいいの、気にしないで」ニコ

カレン「……ありがとデス」ボソ

穂乃花「なに?」

カレン「何でもないデス、それよりボール見つからないデスネ」

穂乃花「うーん、もっと遠くまで行っちゃったのかな」

カレン「何か見つけたデース」

穂乃花「?」

カレン「何デス?これ」

穂乃花「洗濯板、かな……」

カレン「こんなのも落ちてマシタ」

穂乃花「鍋……?」

穂乃花(何でカレンちゃん、変なものばっかり見つけるんだろう)

カレン「Wow, 向こうにマンガが落ちてマス」

穂乃花「ちゃんとボール探さなきゃダメだよー」

カレン「茂みの奥にあって取りづらいデスネ」

カレン「でももうちょっとで取れるデス」

穂乃花「いや、だからボール……」

カレン「とりゃー!」ザッ

カレン「ふぃー、何とか取れたデス」

カレン「4コマの雑誌みたいデスネ、まんがタイムきららMAXっていうみたいデス」ペラ

穂乃花「ってカレンちゃん!血!膝から血でてるよ!」

カレン「あれ、気が付かなかったデス」

カレン「取るときに木で擦ったみたいデスネ」

穂乃花「大丈夫?痛くない?」

カレン「このくらい平気デス」

穂乃花「保健室行ってちゃんと消毒してもらわないと」

カレン「このくらいならツバつけておけば治りマスヨ」

カレン「でもヒザだと届きマセンネ、ホノカ、お願いしマス」

穂乃花「へ?私!?」

カレン「ホノカしか頼れる人いないデス」キラキラ

穂乃花「じゃ、じゃあ……」ドキドキ

穂乃花「えっと」ペロ

穂乃花「これでいいかな」チョンチョン

カレン「かたじけないデース」

穂乃花(恥ずかしかった……)

カレン「……Oh」

穂乃花「どうかした?」

カレン「指でつけるんだったら自分でもできマシタ……」

穂乃花「あっ!」

カレン「ごめんデス、なんで気づかなかったんデショー……」

穂乃花「ううん、私も気づかなかったし……」

穂乃花「それに、ちゃんとあとで保健室行ったほうがいいよ?」

カレン「平気だと思いマスケド……」

カレン「Oh! ボールありマシタ!」

穂乃花「あ、ほんとだ!よかったね、見つかって」

カレン「ホノカが手伝ってくれたおかげデス」

カレン「ホノカ、お礼がしたいデス」

穂乃花「お礼?そんなのいいよー」

カレン「そうはいかないデス、ボール探しも、傷にツバつけてくれたのもお礼しなくちゃデス」

穂乃花「大したことじゃないのに」

カレン「ちょっとこっち向いて下サイ」

穂乃花「ん?」

チュ

穂乃花「!」

穂乃花「も、もう!早く練習に戻らないと……」///

カレン「えー、もうちょっと2人でいたいデース」

穂乃花「だめだよ、ワガママ言っちゃ」

カレン「ぶー」

カレン「ホノカは放課後も練習だから、あんまり一緒にいられないデス」

穂乃花「じゃあ……」

チュ

カレン「……」///

穂乃花「これでガマンして?」

カレン「しょうがないデスネ……」

カレン「続きは後ほど、ってことで、楽しみにしてるデスヨ」

穂乃花「続きって……」///

カレン「ホノカ、何想像してるデース?」ニヤニヤ

穂乃花「カレンちゃんってば……」

カレン「ホノカ!」ギュ

カレン「朝練、ホノカと一緒にできてよかったデス」

穂乃花「うん、私も楽しかったよ」

穂乃花(テニスの練習はほとんどできなかったけど……)

カレン「今日は一緒に帰るデスカ?」

穂乃花「え?私今日も部活あるよ?」

カレン「終わるまで待ってマス」

穂乃花「いいの?」

カレン「もちろんデース!」

カレン「ホノカのためなら、いくらでも待つデスヨ」

穂乃花「……ふふ」

カレン「何かおかしいデース?」

穂乃花「ううん、私のこと待っててくれるんだったら」

穂乃花「そのときはちゃんと、私からもお礼しなきゃなって」

穂乃花「ね!」


朝練 おわり

<夢のつづき>


私、アリスに隠していたことがあるんです

アリス「えっ?」

でも、こんなことを言ったらアリスに嫌われてしまうかもしれません

アリス「そんなことないよ!何があっても私はシノが大好きだよ!」

本当ですか?

アリス「本当だよ」

驚かないで聞いてください

アリス「うん」

実は……実は私……

アリス「なになに?」

本当は、男だったんです!

アリス「え……シノが……男の子?」

はい、そうなんです

アリス「嘘、でしょ?」

嘘じゃありません、その証拠に……

アリス「!」ガバッ

アリス「あれ?」

アリス「……夢?」

アリス(そ、そうだよね。シノが男の子だなんて、あるわけないよね)

忍「」スゥースゥー

アリス(変な夢だったな)

ピピピピピピ

アリス「あれ、もう朝だったんだ」ピッ

アリス「シノ!朝だよ!」

アリス「起きて!」

忍「はわー、アリス、おはようござ……い……」

忍「……」

アリス「ダメだよ二度寝しちゃ!」

忍「うーん……」

忍「アリス、今日は早起きですね」

アリス「そんなことないんだけど……」

忍「ぱぱっと着替えちゃいましょうか」

アリス(あ、シノがパジャマを……)

アリス(……まさかとは思うけど)ジィー

忍「?」

忍「アリス、どうかしましたか?」

アリス「へ?ナ、ナンデモナイヨ」

忍「そんなに見られたら恥ずかしいです~」

アリス「うん、ごめんね」

アリス(なんとなく気になるよ……)チラチラ

忍(アリス、今日はどうしたんでしょう?)

アリス(なんでだろう、あんなのただの夢なのに)

忍「……?」

忍「アリス、さっきからずっと私の方見てますね」

アリス「えっ」

忍「どこかおかしいですか?」

アリス「えっと、そ、そんなことないよ!シノは今日もすっごくかわいいよ!」

忍「そんなことないですよ~」エヘヘ

アリス(そうだよね、こんなにかわいいのに男の子のはずはないよ)

忍「あ、でもけっこう寝グセついてますね」

忍「アリスはこれを教えてくれようとしてたんですか?」

アリス「う、うん、そうかも……」

忍「なかなか直りません……」

忍「シャワー浴びてきた方がいいかもしれないです」

アリス「うん、その方がいいよ、今日は時間も余裕あるし」

忍「あれっ、アリス、寝汗すごいですよ?」

アリス「あ、ほんとだ」

忍「怖い夢でも見たんですか?」

アリス「う、ううん全然!」

忍「アリスもシャワー浴びた方が良さそうですね」

アリス「そうだね、じゃあシノ、先にいいよ」

忍「いえっ、アリス、一緒に入りましょう!」

アリス「えっ!?」

忍「そっちの方が早く済みます!」

アリス「そ、それはダメ!!」

忍「やっぱりダメですか……」ショボン

忍「アリスは恥ずかしがり屋さんですねー」

アリス(ちょっと恥ずかしいのはいつもだけど)

忍「じゃあ、できるだけ急ぐのでお先に……」

アリス「ゆっくりでいいよー」

アリス(もしもシノが男の子だったら、なんて思うと)

アリス(一緒にお風呂なんて入れないよ……)

バタン

アリス「あ、シノ、おかえり」

忍「シャワー空きましたよ、アリス」

アリス「!?」

忍「あ、この格好ですか?」

忍「着替えを持ってくのをすっかり忘れてました」

アリス(シノがバスタオル1枚で……)

忍「お母さんにそんな恰好で歩き回るな、って怒られちゃいましたよ」

アリス(確かめるとしたら、今しか……)ジィー

忍「?」

忍「まだ寝ぐせついてますか?」

アリス「そうじゃないけど……」

アリス「シノ、ごめん!」モミ

忍「ひゃあ!ア、アリス、どうしたんですか?」

アリス(あ、ある……)モミモミ

忍「アリス、何で私の胸触ってるんですか!?」

アリス(やっぱりあれはただの夢だったんだね、よかった……)モミモミ

忍「何とか言ってくださいー!」

アリス「シノ、これはね、ちょっと、その、事情が……」カアアア

忍「恥ずかしかったです……」カアアア

アリス「ごめんね、シノ」

忍「私、もうお嫁に行けません……」

アリス「だったら私のところに来ればいいよ!」

忍「え、本当ですか!嬉しいです!」

忍「……ってことはまさか、アリスって男の子だったんですか!?」

アリス「もうシノ、そんなことあるわけないでしょ!」

アリス(……なんてね)

アリス「!」ガバッ

アリス「あれ、夢……?」

忍「アリス!?」

アリス「あれ、シノ、起きてたの?」

忍「ア、アリス、見てしまいましたか!?」

アリス「?」

アリス「あ、シノ、もう着替えてるんだ」

忍「いえ、そうですよね……いずれ言わなければいけなかったんですから」

アリス「え?シ、シノ、何言って……?」

忍「こんなことを言ったらアリスに嫌われてしまうかもしれませんが……」

アリス(なんか聞き覚えが……)

忍「アリス、驚かないで聞いてください」

アリス「シ、シノ、ちょっと待っ……」

忍「実は私―」


夢のつづき おわり

special thanks >>15

<アサガオ>


夏休み
猪熊家 陽子の部屋

陽子「晴れてるなー」

陽子「今日も暑くなりそうだ」

ガチャ

美月「お姉ちゃん」

陽子「あれ?美月、空太、もう起きてたの?」

空太「今の小学生はラジオ体操に参加するため朝4時に目が覚めるように改造されてるんだよ」

陽子「マジ!?」

美月「麻酔ナシで6時間に及ぶ手術を皆受けたのよ」

陽子「そんな……君たち、それほど過酷な運命を背負っていたのか……」

美月「嘘よ」

陽子「え」

空太「カレンさんが来てるよ」

陽子「へ、カレンが?」

美月「今にも死にそうな顔をしながら」

空太「這うようにしてここまでたどり着いたみたい」

陽子「何!?だったら早く言ってよ!!」

玄関

カレン「おはようデース」ニコニコ

陽子「え?あ、あれ?」

陽子(元気そうじゃん……)

陽子「って、また嘘かぁっ!!」

カレン「何がデス?」

陽子「いや、まあ、こっちの話」

カレン「ヨーコはこんな朝早くから元気デスネ」

陽子「まー、それが私の取り柄だし?」

陽子「で、こんな朝早くから何か用?」

カレン「夏休みにダラけないように、朝みんなの家を回ってるデス」

カレン「昨日はアヤの家にいったデスし、それ以外はだいたいシノとアリスのところに行ってマス」

陽子「カレンがヒマなだけじゃないの?」

カレン「Oh, 一瞬でバレマシタ!」

陽子「まあいいけどね、私もヒマだったし」

陽子「何かする?」

カレン「眠いので2度寝するデスー」

陽子「おい!」

陽子「天気いいから散歩にでも行こうよ」

カレン「えー、外は暑いデス」

陽子「人ん家まで来ておいて何をいまさら……」

陽子「行くぞー!」

カレン「あ、ちょっと待つデース!」

陽子「今日も日差しが強いなー」テクテク

カレン「そうデスネ」テクテク

カレン「アヤは日焼けするから全然外に出てないって言ってマシタ」

陽子「あー、やっぱ綾はそんな感じか」

陽子「昔っからそうなんだよな」

カレン「でも宿題だいぶ終わったらしいデス」

陽子「マジ!?まだ7月なのに」

カレン「ヨーコは宿題進んでマスカ?」

陽子「あははは、やってるわけないじゃん!」

カレン「だと思いマシタ!私と一緒デース!!」

陽子「……今度綾に教えてもらおうか」

カレン「そデスネ」

陽子「まあでも綾はいつも通りにしてるんだ」

カレン「まあフツーに元気そうデスヨ」

陽子「しのとアリスは?」

カレン「何時に行っても寝てマス」

陽子「……」

陽子「あ、朝顔が咲いてる」

カレン「アサガオ、デスカ?」

陽子「ほら、あれ」

カレン「Wow, Morning glory のことデスカ」

陽子「モーニング……何?」

カレン「Morning glory デス」

陽子「へー、英語ではそういうのか」

陽子「小学校のときに育てるんだよ、みんな」

カレン「そうなんデスカ」

陽子「懐かしいなあ、しのなんて夏休み前に枯らしちゃって」

カレン「何でアサガオっていうデスカ?」

陽子「花が昼には閉じちゃうからな、それで朝なんだよ」

カレン「そっちじゃなくて『顔』の方デス」

カレン「顔に見えるデス?」

陽子「んー、リアルに顔に見えたら結構怖いと思うぞー」

カレン「でも、笑ってる顔に見えなくもないデス」

陽子「あー、そうかもな」

カレン「朝から元気で笑ってるなんて、まるでヨーコみたいデス」

陽子「そうか?」

カレン「そうデス!前にヨーコはコンビニみたいって言いマシタけど」

陽子(それまだ覚えてたのか……)

カレン「本当はアサガオみたいデスネ」

陽子「……昼過ぎても私はそんな変わらんけどな」

カレン「Oh! 確かにそうデス!」

カレン「じゃあヨーコは……」

カレン「一日中顔?」

陽子「何だよそれ……」

陽子「結構歩いたな」

カレン「そうデスネ」

カレン「私はそろそろ帰るデス」

陽子「そう?でもまだ昼前だけど」

カレン「もうくたくたデス」

カレン「でも、久しぶりにヨーコに会って楽しかったデス」ニコッ

陽子(……朝に突然現れて、笑顔が綺麗で)

陽子「カレンのが朝顔に似てるんじゃないかな」

カレン「?」

カレン「そーデスカ?」

陽子「私よりカレンのが綺麗だし?」

カレン「……フフフ」

陽子「何その笑いは?」

カレン「ヨーコもキレーデスヨ?」

陽子「あはは、カレンまで嘘つくのー?」

カレン「嘘じゃないデス」

カレン「ヨーコの笑った顔はキレイだと思いマス」

カレン「それに、優しいところも、いつもみんなのこと気にしてくれるところも」

カレン「ヨーコのいいところならいっぱい知ってるデス!」

陽子「……」///

カレン「それじゃ、私はもう行くデス!bye!」

陽子「……うん、また家来てよ、朝早くてもいいからさ」

カレン「絶対来るデース!!」


アサガオ おわり

<朝日を浴びて>


ピピピピピ

忍「んー……」ピッ

忍(もう朝ですか……)

忍「……」

アリス「スゥ……スゥ……」

忍「アリスはまだ寝てるみたいですね」

忍「あれ?今日は日曜なのにどうして目覚ましが……」

忍「はっ!!」

忍(そうでした、今日は大切な日だったんでした)

忍(アリスもあんなに楽しみにしていましたし……)

忍(もう朝にしては何となく暗いような気がしますが)

忍(……カーテンが閉まってるからですよね)

忍「外の天気は……」シャッ

忍「そ、そんな……」

忍「こんなに曇って、いまにも雨になりそうです……」

アリス「スゥ……スゥ……」

忍「アリスー!!」

アリス「……ふぇ?」

アリス「あ、シノ、おはよう!」

アリス「今日は……」

忍「アリス!ダメです!!」

アリス「へ?何が?」

忍「今日は1日こうしていましょう!」ガバッ

アリス「ちょ、ちょっとシノ」

忍「1日中2人でお布団をかぶっていれば外を見なくて済みます!」

布団の中

アリス「ねえ、どうしたの?シノ」

忍「アリス……」ギュ

アリス「今日は、その……行くんでしょ?」

忍「はい、ですが……」

アリス「?」

忍「……やっぱり今日はこうしていましょう」

アリス「どうして?」

アリス「もしかして……私とじゃ、嫌なの?」

忍「そんなことありません」

忍「私はアリスのことが大好きですから」

忍「こうしているとアリスのいい香りがします」

アリス「シノ、恥ずかしいよ」

忍「アリスの肌はスベスベですねー」ナデナデ

アリス「も、もうシノってば……」

忍「可愛いです」チュ

アリス「……」///

忍「ですから今日はこうして……」

チュ

アリス「んっ……」

アリス「シノ、ダメだよ、朝からこんな……」

忍「嫌でしたか?」

アリス「嫌じゃ……ないけど」///

アリス「むしろ、気持ちよかったっていうか……」///

忍「じゃあもう一度……」

アリス「でも何で今日はお布団かぶってないといけないの?」

忍「それは……」

忍「そ、そんなこと聞く子にはこうです!」

チュ

アリス「んむっ……」

アリス「シノ、ちゃんと教えてよ」

忍「ですが……」

アリス「……教えてくれないシノにはこうだよ!」サワサワ

忍「ひゃっ……」

忍「ちょっとアリス、そんなところ触らないでください~」

ガチャ

忍「!」ビクッ

勇「忍?アリス?そろそろ……」

勇「……お邪魔だった?」

忍「もう、お姉ちゃん!ノックくらいしてください!」

勇「したわよ?」

忍「えっ……」

勇「早く支度しないと遅れるわよ」

勇「お父さんが車で送ってくれるっていうから、早くしなさい」パタン

アリス「あ……」

アリス「雨、降ってるね……」

忍「はい……」

アリス「シノはこれを私に見せたくなかったんだね」

アリス「私がショック受けちゃうと思って……」

忍「だって昨日も……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アリス「ねえシノ!明日は晴れるかな?」

忍「私には分かりません」

アリス「晴れだといいなあ……ううん、絶対いい天気になるよね!」

忍「アリスはいい子にしてますから、きっと晴れますよ」

アリス「……シノ、また私のこと子ども扱いしてる」

忍「アリスの願いなら神様も叶えてくれますよ」ナデナデ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

忍「アリス、あんなに楽しみにしてたのにこんな天気だなんて……」

忍「ひどすぎます!」

アリス「大丈夫だよ、シノ」

忍「アリス……」

アリス「雨だとお庭には出られないって言ってたけど、それでも私は楽しみだよ」

アリス「ほら、早く着替えて出かけよう?」

教会

忍「素敵ですね……」

アリス「うん」

忍「なんだかイギリスのアリスの家を思い出します」

アリス「そうかな?全然違うけど」

忍「またアリスの家に行きたいです」

アリス「じゃあ、次の夏休みは一緒に行こうよ!」

アリス「それにあっちには、由緒のある教会がいっぱいあるよ」

忍「本当ですか!?」

勇「……ほら、雨の中つっ立ってないで、さっさと中入って」

勇「じゃあ忍はこっちで、アリスはそっちの部屋で着替えて」

アリス「しばしのお別れだね、シノ……」

忍「またすぐに会えますよ、アリス」

勇(15分ぐらいのことなのに何言ってんのかしら)

忍(今日は午後からこの教会でお姉ちゃんの撮影があるそうです)

忍(もちろんお姉ちゃんだけじゃなく、他のモデル仲間の方も来るそうですが)

忍(お姉ちゃんが無理を言って、午前中だけ教会を私とアリスで使わせて貰えるようにしてもらったそうです)

忍(その分朝早くから出かけなければならなかったのですが……)

忍「……このドレスを、私が」

忍「真っ白で、綺麗……」

忍(アリスと二人で、これを着て教会に並んで……)

忍(夢のようです)

トントン

忍「着替えられましたかー?」

アリス「うん、入っていいよ」

ガチャ

忍「どうですか?ちゃんと着れましたか?」

アリス「うん、ぴったりだよ!」

忍「!!」

忍「眩しすぎます……!」

忍「天使が!ここに金髪の天使が!!」

アリス「シノ落ち着いて!」

アリス「……シノも、すっごく可愛いよ」

忍「ありがとうございます♪」

忍「アリスのドレスと私のは、ちょっとデザインが違うんですね」

アリス「あ、ほんとだ」

アリス「シノのは大人っぽくて可愛いよ」

忍「アリスもすごく似合ってます」

アリス「あれ?そういえばイサミは?」

忍「お姉ちゃんなら、さっき着替え終わってから会いましたけど」

忍「しばらく外にいるからアリスと二人でいなさい、って言ってました」



勇「私ってばなんて妹思いなのかしら」

勇「ふふ、この恩は高くつくわよ」

勇「あとでいっぱい写真撮らせて貰わなくっちゃ」

聖堂 祭壇の前

忍「静かですね」

アリス「そうだね」

アリス「カレンとヨーコとアヤも呼んであげればよかったかな」

忍「そうですね、でも」

忍「こうしてアリスと二人きりなのも、私は嬉しいです」

忍「こうして可愛いアリスの姿を独り占めできますから」

アリス「私は神社で白無垢着て、っていうのもよかったな~」

忍「えー、そうですか?」

アリス「シノはきっとそっちの方が似合うよ!」

忍「そんなことないですよー」

忍「それじゃ、アリス」

アリス「うん」キュ

忍「私、大宮忍は、アリスとの永遠の愛を誓います」

アリス「私、アリス・カータレットはシノとの永遠の愛を誓います」

忍「次は……」

アリス「えっと、誓いのキス、かな」

忍「はい、アリス、目を閉じてください」

アリス「うん」

チュ

アリス「これで私たち、ずっと一緒だね!」

忍「はい、ずっと一緒ですよ、アリス」

忍「本当だったらこのドアから庭に出られるのですが……」ギィィ……

アリス「あっ!」

アリス「ねえねえシノ、雨あがってるよ!」

忍「わあ、ほんとですね!外に出られそうです」

アリス「うん、あ、シノ、水たまり気を付けてね」

忍「はい」

アリス「雨に濡れたお庭も綺麗だね」

忍「でもまだ雲がかかってて、ちょっと暗いです……」

忍「……あっ」

忍(雲の切れ間から陽が差してきて)

忍(なんだか幻想的……)

忍「綺麗ですね……」

アリス「うん……」

アリス「まるで神様が私たちを祝福してくれてるみたい」

忍「そうですね、アリス」

アリス「あっちの陽の当たってるところに行ってみようよ」

勇「あ、ようやく出てきたわね」

アリス「イサミ!」

勇「ドレス、よく似合ってるわよ」

忍「そうですか?」テレテレ

勇「アリスは」

忍「お、お姉ちゃん!?ひどいです!」

アリス「だからやっぱりシノは白無垢の方が……」

勇「まあ、ちょうど良かったわ」

勇「ほら、写真撮るから並んで?」

忍「今日誓ったことは、二人だけのひみつですよ」

アリス「どうして?」

忍「だって、そのほうがロマンチックじゃないですか」

アリス「うん、そうかも!」

勇「はーい撮るわよー、二人ともこっち向いて」

パシャ

忍「でも、今日のこと、絶対忘れませんよ」

アリス「私も忘れないよ、シノ」

忍「アリスと私はずっと一緒ですからね」

忍(きっとこれから毎朝、この柔らかな日差しを思い出して)

忍(そして何度でも誓います)

忍(朝日を浴びて交わしたひみつを……)


朝日を浴びて おわり

この話は、原先生の画集の表紙
http://i.imgur.com/jR2hRxx.png
をイメージして書きました
最後の勇が撮った写真がこの絵だと思っていただければ

これでこの連作短編SSは完結です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

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