信勝「信勝の野望」(143)

―――――――――



男「……っ」

男「……あれっ?」ガバッ

男「……ここは?」キョロキョロ…

「おっ、ようやく気がついたのか」

男「……お前は、一体……?」

「お前とは、随分な挨拶だな。せっかく助けてやったのに」クスッ

男「……ここは、何処なんだ。……そして今は、何時代なんだ……?」

「今は天正十年、そしてここは天目山のとある穴蔵、というところか」

男「じゃあ、お前は……!!」

「ああ」



「我が名は武田信勝。武田勝頼が子にして甲斐武田家の当主である」

男「た、武田!?天正十年!?」

信勝「どうした、そんなに驚いて?」クスクス

信勝「武田の当主が年端も行かぬ若造だとは思わなんだか」カラカラ

男「い、いや、まさかこんな可愛い娘が武将だとは思わなかったけど……」

信勝「おだてても何も出てこんぞ?」クスッ

男「い、いや。それよりも何で俺は戦国時代なんかにいるんだよ!?」

男「思い出せ!俺は昨日まで普通に過ごしていた唯の高校生の筈だ!?」

男「それがどうして……」

信勝「まあ、そんなに考えこまずにこれでも飲め」ヒョイッ

男「……サンキュ」パシッ

信勝「ん?その言葉は一体なんだ?」

男「えっ?ありがとうって意味だけど」

信勝「ほう、そうか!妙な身なりをしているが、お主、何処の生まれだ?まさか噂の南蛮とやらの事も知っているのか!?」キラキラ

男「ま、まあ……」

信勝「そうか!じゃあじゃあ、南蛮とはどういう所だ!?やっぱりお主みたいな身なりとか、見た事もない南蛮寺とか!!」ズズイッ

男「わっ、バカ!!距離が近い!!もうちょっと離れて!!」

信勝「……?そうか?」キョトン

男「そうなの!?お前みたいな可愛い娘が相手だとな!!」

信勝「私は特に気にせんが……」

男「気にしろよ!!」

「失礼します!!」

信勝「おう、どうした昌恒?」

男「……誰?」

信勝「ああ、こやつは土屋昌恒。甲斐指折りの猛者よ」

男「この爆乳ねーちゃんがか!?」

昌恒「爆乳言うな!!」ゲシッ!

男「おぐぅ……」プルプル

昌恒「それよりも、殿。どうやら、この穴蔵も織田勢に感付かれた様でございます」

信勝「……そうか」

昌恒「殿におかれましては、某が敵を引き付けます故、その間に落ちのびられますよう」

信勝「……いや、もういい」

昌恒「……は?」

信勝「それよりも、南蛮の話をしてくれまいか?気になって仕方ないのだ」

男「へっ?」

昌恒「と、殿!?」

昌恒「如何なされたのです!?はよう落ちられないと敵に!?」

信勝「……今さら何処に落ちのびよというのだ?」

昌恒「……っ」

信勝「……府中は陥ち、信茂すらも裏切った。これ以上、何処に行けと言うのだ……」

昌恒「そっ、それは……」

信勝「……もう良い」



信勝「……もう、良いのだ……」

信勝「それよりも、南蛮の話を聞かせてくれぬか?もし私を憐れんでくれるなら―――――」

男「……っ!!俺は―――」

パァーンッ!

昌恒「!?銃声!!」

信勝「……もう、そこまで来てるのか」


信勝「…………」パサッ

男「!?いっ、一体何を……?」

信勝「……私はこれから腹を切る。昌恒、その間、頼む」

昌恒「……はっ」

昌恒「――では、おさらばでございま――」ダッ!

男「まっ、待て!!」グイッ!

昌恒「きゃうっ!!」ズデーンッ!

昌恒「き、貴様!?一体、何のつもり―――」

パパパパーンッ!

昌恒「…………」パラパラ…

男「い、今飛び出しても鉄砲の餌食になっちまうだけだ!!」

昌恒「しっ、しかし!!」


信勝「…………」

イタゾーッ、ドンドンウテーッ!!


パパパパーッ!!

昌恒「くそっ!どんどん集まってくる!!」

男「な、何とかしねーと……」

昌恒「何とかって、どんなだ!?」




信勝「……もういい」スチャッ


信勝「昌恒、介錯を頼む」グッ…

昌恒「……はっ」カチャッ…

男「ば、バカ!?止めろ!!」グイッ!

信勝「……何故止める!?」キッ!

男「あ、当たり前だろうが!!ひ、人が自殺しようってのに見逃せるか!!」ググッ…

信勝「……っ」



昌恒「……退け、貴様。もろともに切られたいのか」

男「……っ」

男「ややややれるもんならやややややって見やがれ!!おおおおおれはぜったいに、ののののかないからな!!」

昌恒「――――このっ!!」




男「…………待て!!」

昌恒「どうした!?今更怖じけづいた――――」

男「外の様子が違う!!」

信勝「……なにっ!?」

ワァーッ、ワァーッ!!

ヒケーッヒケーッ!!



昌恒「いっ、一体、何が……?」


カッカッカッ……


昌恒「お、お前は……」


「ご無事でしたか若君!!」ザッ!

「手の者の知らせより、とりあえず手勢のみでまかりこした次第!!」




昌恒「真田幸村!!」




男「……って、また女の子かよ!?」

というところで、今日は終わりです。

この話は、織田信奈の野望の様に、主人公と絡む武将が女の子の場合が多い話となっています。

読んでやっても良いと許して下さる方は是非とも読んで頂ければと思います。

やや更新は不安定ですが、何とか完結したいと思います。

ちなみに、信勝は織田の方ではなく武田の方の信勝です。

最後になりましたが、レスありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

では。

更新します。



――――厩橋城

幸村「ここが我等が城、厩橋城にございます、若君」

昌恒「さっきも申したであろう。もう、若君ではなく殿と呼ぶようにと」

幸村「ぁ、ぁう……」モジモジ//

信勝「まあ、いいではないか。実際、殿とかお舘とか呼ばれるとむず痒くてならん」クスッ

幸村「も、申し訳ありません……」カァ…//

男「なあ、それより何か食わして欲しいんだけど」グウルゥゥゥウ…

昌恒「全く、緊張感のない奴だ」グギュルルルゥゥゥウ…

男「そういうお前もたいした腹の虫じゃねーか」グゥグルルルルル…

昌恒「し、仕方ないだろ!!生理現象だ!!」ギュルルルルルグゥ

幸村「はあ……」

信勝「と、言うわけだ。何か口にさせてもらうとありがたいのだが」クゥクゥクゥクゥ…

幸村「こ、これは失礼を!!では、こちらへ……」

―――――

昌恒「しかし、あの昌幸殿がよく、うんと言ったものだ」

男「へえー、そうなのか?」

昌恒「ああ。昌幸殿と言えば家中一の知謀で知られるがな」

昌恒「逆に言えば陰険、冷酷、血も涙もない様な性格な上に非常に打算的に動く、小ずるい策士だと思っておったのだが」

男「無茶苦茶言うな、おい」

昌恒「その昌幸殿が何故に我等を救おうと思ったのだ?」

幸村「はい、実は、父は初めは助けを出さずに織田方と通じようとしたのです」

昌恒「な、何だと!?」

幸村「……最早、武田に昔日の勢威なく、日の出の織田につくが賢明だと……」
昌恒「そんな……」

信勝「まあ、当たり前だと言えば当たり前だな」

男「随分、落ち着いてられるな」

信勝「まあな。いざとなれば一門であろうが人質がいようが容易く裏切るものだからな」フッ…

幸村「わ、若君……」

男「じゃあ、何でわざわざ俺達を助けに来たんだよ?」

幸村「……兄が父を口説いたのです」

男「……は?」

幸村「兄は貴方の様な奇妙ないでたちの方とともに、この先どうせ報われないだのせいぜい十万石がいいところだの、まあ、無茶苦茶言われまして」

幸村「なら、いっそのこと織田八百万を向こう立ち回った方が、と」

男「俺みたいな格好って……、まさか」

幸村「それで、某が若君を、兄がお舘様をお助けすると言う事に」

昌恒「と言う事は、まさか!!」


ダダダダダッ!!


信勝「父上もご無事だと言う事



「のぶかつうううううういううっっっっっ」ガバッ


信勝「うわぁああああああっ!!」ドサッ

「あああああ、のぶかつうううう、心配したよおおおおお」グリグリグリ

信勝「ちょっ、ちょっと落ち着いて……」

男「……まさか、この人が武田勝頼!?」

昌恒「何でだよ」

男「えっ、違うの?」

信勝「こ、この方は私の義母上」

男「母親って、随分若いなおい」

「わ、若いだなんて……//」テレテレ

信勝「そりゃ、三つしか離れとらんからなぁ」

男「まさか、年下!?」

信勝「何でだよ!?」

昌恒「お方様と殿は腰入れ以来、姉妹の様に仲がよろしいからな」

男「腰入れって、誰にだよ?」

昌恒「そりゃ、大殿に決まっておろうに」

男「腰入れって、勝頼ってロリコンかよ!?」

幸村「ロリコン、とは何ですか?」

男「まあ、幼女趣味ってとこだ」

幸村「なるほど」

「……誰が幼女趣味だ」

男「……誰?このチャビンの冴えないオッサン」

幸村「はい、チャビンとは一体?」

男「禿げチャビンだよ禿げチャビン」

幸村「なるほど」ポンッ

「…………」クスン

昌恒「あわわ」

男「んで、隣のぼーっ、としたデカイのは?」

幸村「あ、それは一応、兄なんですけど……」

男「……ふーん、こいつがねぇ」

信幸「…………ひどい」

男「で、隣の頼りなさそうなのが……」

友「…………よお」

男「……やっぱ、お前か」ハァ…

友「てめェ……」ピクピク

男「すると、このオッサンが」

「……武田四郎勝頼である」

勝頼「……と言っても、国を追われ、民や兵にも捨てられた、落ちぶれた国主でしかないのだがな……」ハハハ…

男「うん、知ってる」

勝頼「」グサッ

男「確か、名将信玄の築いた大国をあっさりと滅ぼしたんだっけ?」

勝頼「……死にたい」

―――――

勝頼「と、言うわけで、改めて信勝に家督を譲り渡すものである」

「お、お待ち下さい!それはいささか性急に!?」

勝頼「いや、元々、余は名代に過ぎぬ。信勝が元服した上は家督を譲るべしと信玄公も遺言なさっている」

「されど……」

勝頼「いや、もう良い。これは信玄公逝去以来の約定である。もし不満あれば、この場を立ち去るがいい」
「…………」

勝頼「……どうやら異論はないようだな」

勝頼「……では、信勝」


信勝「……はっ」


信勝「……今、正式に家督を受け継いだ信勝である。今、我等は未曾有の窮地にあると言えよう」

ザワザワ…

信勝「だが、必ずや織田を打ち倒し、再び甲斐に風林火山の旗を掲げようではないか」

「…………」

信勝「そして、我等の手で天下を治め、皆が笑って暮らせる新しき世にしようではないか!!」

「オオーッ!!」

勝頼「では、信勝。御旗楯無に御誓願を」

信勝「……はい」



信勝「我は誓う!再び甲斐の地に風林火山の旗を立てん事を!!そして、新しき世を築かん事を!!」



信勝「御旗楯無に御照覧あれ!!」


「「「御照覧あれ!!」」」

と、言うわけで、信勝家督継承編でした。

頂いたレスの中に武将の女体化の話がありましたが、最近だとやっぱり恋姫無双の影響が大きいんだと個人的には思います。また、その流れを作ったのは三國無双2なんじゃないのかと思ったり。
三國無双2からのブームでファンサイトが溢れて、その中には武将の女体化をやってるサイトとか薄い本が結構ありまして、その流れの中から恋姫無双⇒武将女体化ブームなのではないかと思ってたりします。

では、最後になりましたがレスありがとうございました。

それでは、また。

――上杉編 序章



――――信勝が家督を継いで一ヶ月

男「はぁっ!」ガンッ!

幸村「まだまだ!!」カンッ

男「くそっ!」

――俺は元の世界に帰る事は出来ずにいた

しかし―――


幸村「ほらっ!」ドスッ!

男「うげっ」ガクッ

幸村「よいしょっ!!」バキィッ!!

男「ぎゃあああっ!!」キュウ


俺は信勝の家臣になり、日々、兵の訓練や剣の稽古に明け暮れていた―――

幸村「あ~あ、もっと頑張って下さいよぉ。これじゃ訓練になりませんよ?」ナデナデ

男「……うるせー」

――幸村の膝枕が気持ちいい

いつの間にか、元の世界に戻れないかもしれないと言う不安も無くなるような充実した日々を送っていた――

昌恒「おう、精が出て――ないようだな、どうやら」ギロッ

幸村「あわわっ、昌恒殿っ」スクッ

男「ぐえっ」ゴチンッ

幸村「ああっ、大丈夫ですか!?」

男「きゅ、急に立ち上がるから……」イツツ…

昌恒「それだけ喋れれば大丈夫だな……」ジロッ

男「……な、なんだよ?」

昌恒「用事があってきたのだが仕方ない。一つ稽古をつけてやるか……」ニタァ…

男「って、何だよそれ!?」

昌恒「なに、試しに作らせた斬馬刀の見本よ。こいつを試しに……」クックックッ…

男「バカ!死んじゃうからやめて!!」

昌恒「問答無用!!」ブオン!

男「ひぃぃっ!!」

――いつもこうだ。幸村が介抱してくれてるとタイミング良く現れちょっかい出してくる

昌恒「逃げるな!!」ブオン!

男「逃げるわ!!」

――のされた後は何時もみたいに乳まくらでもしてくれるのかね?

昌恒「もらったああああ!!」ブンッ!

男「ひいいいいいっ」





男「……あれ?」

昌恒「ゆきむらぁ……」グググッ…

幸村「くうう……」ギリギリ…

昌恒「……お前、少しはやるように……」グググッ…

幸村「うううっ……、そ、それよりも昌恒殿っ」グググッ

昌恒「何だ一体……」グググッ!

信勝「……何やっとるんだお主は」

昌恒「」

信勝「何時まで経ってもこないから様子を見に来たら……」ハァ…

昌恒「あ、あの、これは……」モニョモニョ

信勝「昌恒」

昌恒「……はい」

信勝「後で写経な」

昌恒「」

――大広間

信勝「それでは評定を始めるが、正直」

正直「は~い。それじゃあ、評定をはじめますよぉ~」

男「…………」

正直「え~っと、本日のお題はぁ……」ペラペラ

男「…………」

正直「上杉さんへの援軍について、ですよぉ~」



男「……うぜえ」

正直「え~っと

信勝「えーっ、聞いての通り、現在、上杉は我が武田と同盟関係にある」

正直「いや、あの

信勝「確かに我等にも余力は少ない。しかし、上杉は苦しい中、援軍を送ってくれた」

正直「それ

信勝「今こそ上杉に援軍を送り、あの時の恩を返したいと思うが、どうか?」

正直「……くすん」

モブ「恐れながら申しますが、今の我等は西に織田、東に佐竹、南に北条を控えており申す。援軍などはとてもとても……」

信勝「なら見殺しにせよと?」ギロリ

モブ2「そうは申しませんが、もう少し現実を見て貰わねば、のう?」

モブ3「しかりしかり」

>>33>>34の間抜けてない?

信勝「ならどうせよと言うのだ!?」

モブ4「それは、のう」チラッ

モブ5「まだ御当主はお若い。そんな事では足元を掬われますぞっ」ホッホッホッ


ワハハハハハハッ


信勝「……もう良い」

モブ6「えっ」

モブ7「今、なんと……」

信勝「もう良いと申したのだ!正直!!」

正直「は~い、準備は出来てますよぉ~」

信勝「最早、軍議は究めた!我が手勢のみで援軍に向かう!!」

モブ8「そ、そんな!?」

モブ9「御乱心めされたか!?」

ザワザワザワザワ…

信勝「幸村!そちに先鋒を命じる!」

幸村「はっ!」

信勝「正直!そちは軍奉行だ!」

正直「は~い」

信勝「男!お前は馬廻りとして側を守れ!」

男「お、おう」

信勝「そして、昌恒!そちは大将として腕を振るえ!」

昌恒「はっ!」

信勝「名代には昌幸を命じる。一丸となって国を守るよう」

昌幸「ははーっ!」


信勝「出発は明朝、直ちに準備にかかるよう!!」

信勝「そして昌恒!」

昌恒「はっ」

信勝「後で写経な」

昌恒「」



続く

>>50

すいません。

これで大丈夫なんです……。

越中 天神山 上杉軍の陣――――

「………………」ボソボソ

「よくぞ参られた、武田の援軍を心待ちにしておりましたぞ、と殿は申しております」

信勝「は、はあ……」

「………………」ボソボソ


「陣中にて何のお構いも出来ませぬがご容赦あれ、と殿は申し訳なく思っております」

信勝「う、うむ……」

「あ、申し遅れました。某、上杉景勝が臣、直江兼続申します。以後よろしくお願い致します」

男「良く喋るなぁ……」

信勝「して、現況は如何に?」

景勝「………………」ボソボソ

兼続「はい、今度は我等が続城、魚津を後詰めせんと参ったのですが、如何せん織田の軍勢に阻まれて近づく事も危のうござる」

景勝「…………」ボソボソ

兼続「しかし、魚津の兵も良く戦い今日までしのいでいるのでござるが」

景勝「……」ボソ

兼続「如何せん矢弾も尽き兵糧も少のうござる」

景勝「…………」ボソボソ

兼続「なんとしても兵糧を運び込まねばと思案するばかりでござる、と殿は苦しい胸の内を語られたのでございます」

信勝「は、はぁ……」

景勝「…………」ボソボソボソ

兼続「しかし、世に名高い武田の力があれば、必ずや敵を追い払い魚津を救えるものと思ってござる」

景勝「…………」ボソボソペコリ

兼続「非才の身でありますが、どうかお力添えをよろしくお願いいたします、と殿は心から頭を下げました。ので、某も殿に倣い頭を下げます」ペコリ

信勝「い、いえいえ景勝殿。どうか頭をお上げ下さい。我等もその折は大変お世話になり申した。ならば、互いに助け合うのが道理でございましょう、と思わず頭を下げ―――」

男「…………うつったな」

信勝「うるさいっ」

―――――――――

男「しっかし、なんなんだあの二人は?」

信勝「うーむ、景勝殿はシャイなお方だからなぁ」

信勝「ああやって直江殿が通訳せんと声が小さ過ぎて聞こえなんだ」

男「シャイってレベルかよ!?」

直正「にしてもぉ~」

昌恒「どうした直正?」

直正「お二人とも、とっても仲がよろしいんですねぇ~」

男「確かに、べったり、というか密着だもんなぁ」

幸村「……暑くないのでしょうか?」

男「おいおい」

信勝「暑いどころか、基本的には二人いつも一緒らしいぞ」

男「へえー、そうなのかよ」

信勝「ああ。飯を食う時も、公務の時も、暇でゴロゴロしてる時もらしいぞ」

昌恒「……と言う事は」

信勝「風呂に入る時も、寝る時も一緒。片時も離れんらしい」

幸村「寝る時もって、まさか……」///

信勝「ああ、床も一緒にしてるらしいな。まあ、珠に一人二人増えるらしいが」

昌恒「ひっ、一人二人増えるって……」///

信勝「……一応言っておくが、夜は一人になるなよ」

男「な、何でだよ」

信勝「男は、まあ構わんが、女は

食 わ れ る ぞ 」
昌恒「」

正直「あ、あの~、それってぇ~………」

信勝「……上杉家は見ての通り、レズビアンが多い」
男「分かるかよっ!!」

信勝「……父上がおっしゃるには、だ」

信勝「高坂弾正が御舘の乱の際に、猛烈に景勝殿との同盟を推してきたらしい」

男「そうなのか?」

信勝「ああ、あまりにも熱心なんで調べさせたら」

男「ほう」

信勝「……弾正は景勝殿と直江殿に篭落されたらしい」

男「」

信勝「信玄公以来の逃げ弾正も、謙信公の寵愛を受けた二人の性戯の前にきりきりまいだったらしい」

男「知らねーよ、そんな事実!!」

信勝「まあ、その事で自身の寿命を縮めてたら仕方ないのだかな」ハッハッハッ

男「知るかああああああ!!!!!!!!」

信勝「その点、不幸だったのは景虎殿だな」

男「な、何でだよ」

信勝「景虎殿も幾ら可愛いと言えども所詮、男の娘」

男「」

信勝「弾正亡き後、勝資を篭落したのは良かったが」

男「おい、待てよ。勝資ってのは男か女か!?」

信勝「油ギッシュな親爺だったがな」

男「掘ったのかよ!関東管領食っちゃったのかよ!?」

信勝「叔父の典厩殿も落としたらしいが、何分、上杉家はレズの方が多くてな」
男「聞いてねーよ!!」

信勝「結局は衆寡敵せず、戦いに敗れ前管領と共に行方知れずに……」

男「どんだけ壮絶なんだよ……!!」

信勝「そんな事もあってか、すっかり上杉家はレズビアンの巣窟と化したわけだ」

男「恐ろし過ぎるだろうが!!」

信勝「謙信公はどっちもいけたらしいんだが」

男「聞いてねーよ!」

昌恒「あ~…、だからなんですね」

信勝「何がだ?」

幸村「いや、先程からやたら熱い視線があちこちから……」

ジーッ…、パチッ

正直「あらら、どうしましょ~……」

信勝「無視しろ」

男「俺には刺す様な殺気を孕んだ視線しかないんだが……」

ジーッ…、ギロッ!

信勝「まあ、そういう訳だから各々、注意する様に」

昌恒「……はい」

信勝「実際、ぼーっとしてた奴が食われた例もあるからな」

幸村「はっ、はい」

信勝「特に夜寝てる時は夜這いをかけられかねんから気をつける事。分かったな?」

正直「は~い……」

―――――――――


男「……で」



昌恒「おい、もっと詰めろ」グイグイ

幸村「ちょっ、ちょっと昌恒殿、そんなに押さないで」ギュッギュッ

信勝「お、おい、正直!そんなに押すな!!」ギュッギュッ

正直「あらあら」ムニムニ



男「何で俺の布団の中に全員入ってんだよ……!!」

信勝「うむ、それはだな」

昌恒「軍務も一段落ついたので今のうちに休んでおこうと思ったら」

幸村「なんとびっくり!!」

正直「布団の中から可愛いらしい女の子が~」



男「何でだよ!?」

昌恒「軍務の終えた安心感からカバッと不注意に布団をあけた時に突如現れる熱った体の出来上がった女!!」

男「最早エロスじゃなくてホラーじゃねーか!!」

信勝「いや、とりあえずなかった事にして、布団をかけ直して一目散に立ち去ったと」

男「何で簡単に侵入されてんだよ!?」

正直「それはぁ~、上杉さんのところが、急な用事があるって言ってぇ、門番の人を騙したからなんですよぉ~」プンプン

男「微妙にひでえ!!」

幸村「そういう訳で、男の人と一緒に寝ていれば襲われないんじゃないかと!!」

男「俺はムシコナーズじゃねーんだよ!!」

信勝「まあ、いいじゃないか」ムニッ

男「ぐおっ!?」

昌恒「そうだぞ。珠には役に立って見せろ」

男「好き勝手いいやかがって……!!」

幸村「それじゃ、そういう事で」

男「あっ、おい」

正直「おやすみなさ~い……」アフゥ…

男「マジで寝る気かよ!!」

信勝「…………ンッ」スースー…

男「寝るの早っ」

男「……しかし、本当に寝ちいまいやがんの」


信勝「スースー…」

幸村「……ンッ」ゴロゴロ

正直「…………ムニャムニャ」


男「……こうやって見ると、やっぱみんな女の子なんだよなぁ」



昌恒「グオオオオォー……ッ」ムニャムニャ


男「……一人、豪快なのが混ざっているけど、まあいいか」



男「……俺も寝るか」



男「……おやすみ」

――――――翌朝

男「……おはよう」ポリポリ

幸村「あ、おはようございます」

正直「今、ご飯よそおいますからね~」テキパキ

男「……おい」



男「何でお前らさも当然にここで朝飯食ってんだよ!?」

信勝「あ、醤油取って」

昌恒「はい」スッ

男「聞けよ!?」

信勝「それよりもだ」パクッ

男「俺の話無視!?」

信勝「今日は景勝殿が軍議を開かれる。遅れない様にする事。以上!」

幸村「はーいっ」

男「そういう事は先に言えよ!!」

昌恒「おい、さっさとせんと遅れるぞ?」

男「だったら起こせよ一緒に!!」

正直「はい、ご飯よそおいましたよ~」

男「あ、どもです」

―――上杉軍 本営

景勝「…………ボソボソ」ウトウト

兼続「では、これから軍議を始める、と殿は凛とした声で仰られます」

男「……嘘つけ」ボソッ

正直「まだ半分おねむですね~……」ヒソヒソ

景勝「……ボソ ……ボソ」ウツラウツラ…

兼続「では、早速現況を確認いたしましょう、と殿は澄み渡る声で申されます」

男「もう、ほとんど寝かかっているだろうが……」

兼続「では、現況はと言いますと、魚津城を包囲した柴田勝家を大将とする織田勢から城を後詰めするべく出陣した訳ですが……」チラッ

景勝「…………」コックリコックリ

兼続「えーっ、現在、織田勢は佐久間盛政を中心とした兵をこちらに差し向け我々と対峙していると、殿は深い憂悶を秘めた声で仰られま―――」

景勝「……クカー」

男「寝てるだろうが」

景勝「……ムニャムニャ」ジュルッ

正直「よだれまで垂らしちゃって……」ウフフ…

兼続「」

兼続「……えー、少し気分が優れないので中座させて頂く、繁長、あとは頼むと殿は慌てて仰いましたっ」

繁長「へっ、私!?」

ぴゅーっ!!

信勝「凄い勢いで中座したな……」

昌恒「まあ、完全におねむでしたから……」

繁長「あの、えっと……」

繁長「えー、では不肖ですがこの本庄繁長が我が殿に代わって務めさせていただきます」

信勝「ああ、よろしく頼む」

繁長「はい、では早速ですが、今度の策について意見をば」

昌恒「今度の策とは?」

繁長「はっ、今度は敵の殲滅に非ず、城への弾薬や兵糧入れこそが第一と我等は結論づけました」

信勝「ふむ」

繁長「しかし、城は相変わらず柴田勢に囲まれ目の前には佐久間勢が構えており、このままでは到底兵糧入れなど不可能と」

昌恒「ふむ、確かに」

繁長「そこでまず佐久間勢を攻撃し、それを見た柴田が援軍を差し向け包囲が薄くなったところを」

男「兵糧を運ぶって事か……」

繁長「左様」

正直「でも、そんなに上手く行くんでしょうかぁ~?」

繁長「はい、佐久間盛政という者、勇あれど策なし」

昌恒「つまり、馬鹿って事か」

男「人の事言えんのかよ」

繁長「こちらが軍を動かせば必ず釣られ、ちょっと煽ってやれば興奮して猪突するは必定」

男「すげー見下し方だなおい」

繁長「必ずや突出する佐久間を囲めばそれを見た柴田が援軍を差し向けるはず」

昌恒「その間に兵糧入れを強行……、か」

信勝「……本当にそう上手く行くのだろうか?」

繁長「そっ、それは、昨日寝ずに殿が考えましてござる!!必ずや上手く行くものと!!」

信勝「お主も、負けず劣らず過保護だなぁ」

繁長「んなっ!?///」

男「つーか、お子様はさっさと寝かせろよ……」

――――――

幸村「あ、どうでしたか軍議は?」

昌恒「……何というか」ポリポリ…

男「とりあえず、景勝ちゃんが寝てた」

幸村「へ?」

正直「その後、兼続さんが景勝さんを背負ってね~。まるで本当の姉妹みたい……」ウフフ

幸村「は、はあ……」

信勝「ところで幸村、敵情はどうだ?何か変わった事は」

幸村「はい、それなのですが」

幸村「佐助!才蔵!」

才蔵「はっ」シュタッ

佐助「はーいっ」シュタッ

男「おお、かわい、たっ!」グリッ

信勝「いちいちデレデレするな!!」

男「だ、だからってお前、足の指を……」イタタタタ…

佐助「あ、大丈夫ですか?」

才蔵「この忍薬をお使いを」サッ

男「おお、サンキュー……、?」ソロ…

信勝「……お前、わざとか?」ゴゴゴ…

男「」

信勝「で、その二人は?」ギロッ

幸村「あ、あはは、手の者から選りすぐった十名を直属の兵にしておりまして……」

信勝「ほう」

佐助「その名も真田十勇士!!」

才蔵「十勇士が一忍、霧隠れ才蔵にございます」ザッ

佐助「猿飛佐助でーすっ」キャピッ

才蔵「控えんか馬鹿」ゴチンッ

佐助「あうう……」ヒリヒリ

昌恒「して、敵の陣容は?」

才蔵「はっ。佐久間勢を中心に不破、金森勢が脇を固めてる様にございます」

信勝「……そうか」

正直「……困りましたねえ~」

信勝「ああ、敵は我等より多い。これで上手くいくのか……?」

昌恒「しかし座していれば魚津落城は必定……」

信勝「……何か弱点らしきものはないのか?」

才蔵「はっ……、流石はお家を破った兵、これといったものは……」

信勝「………そうか」

昌恒「……仕方ありますまい。ここは一つ上杉殿のおてなみを見てみるしか……」

信勝「……そうだな」

信勝「……で、お前らさっきからなにやってるんだ……?」ピクピク

男「お前のせいで足が……」イテテ…

正直「あらあら、大丈夫ですか~?」

佐助「ほーら、いたいのいたいのとんでけーっ、て」

男「おー、今のでだいぶましに……」



信勝「真面目にやれっ!!」グリッ!

男「いだああああああああっっっっ!!!!」

――――――



信勝「では、早速だが陣立てを取り決めるぞ」


信勝「まず、中央正面を景勝殿と直江殿の本隊が攻める」

信勝「次に本庄殿が左翼を衝き我々は右翼を衝く手筈になっている」

男「本庄ってキツめの残念ねーちゃん?」

幸村「残念って、何処がです?」

男「主にむね、ぐわああああっ!!」

信勝「……真面目にやれ」ピクピク

昌恒「え~…、しかし深入りは禁物だぞ。あくまで今回は敵本隊の牽制が目的なんだからな」

男「確かに、本気でやりあうと包囲されかれねーもんな……」イテテ…

正直「となると、やはり狙うは敵大将でしょうか~?」

信勝「うむ、そのほうが良いだろう。しかし、あくまでも狙うは不破か金森、間違っても佐久間を狙うなどとは考えるなよ?」

幸村「えーっ!何でですかーっ!?」

信勝「確かに佐久間を釣り出すのは容易かろう。しかし、釣り出したとてあやつの武勇は中々のものだという。討ち取るのに時間がかかっては意味がない」

正直「それにですねえ~、柴田さんとぉ、佐久間さんはとっても仲良しさんなんですよお~」

幸村「……はあ?」

男「つまり、だ。不破と金森は所詮は与力、そこそこ戦えば崩れるだろうが佐久間は別だ。最後の最後まで奮闘しかねねえって事だ」

信勝「……おお」

男「……何だよ?」

昌恒「ちゃんとした事言った……」

男「……お前ら」

男「それに本隊の佐久間が突出すれば左右の不破、金森との連携が崩れるだろ?」

幸村「なるほど!じゃあ、不破か金森を討てばいいんですね!!」

信勝「ま、まあ、そういう事なんだが……」

昌恒「……本当に大丈夫なんだろうか?」

男「まあ、良いんじゃねーの?」

正直「うふふっ」

信勝「では、先鋒は幸村」

幸村「はいっ!」

信勝「と、男」

男「げっ!?俺!?」

信勝「……いいか。引き太鼓が鳴ったらふんじばっても良いから幸村を連れてこい。分かったか?」ニコニコ

男「……へーい」トホホ…

信勝「昌恒、正直は戦況如何でその時に動いて貰う。いいな?」

昌恒「はっ」

正直「わかりました~」

信勝「では、今回の戦いはあくまでも牽制のためのもの。深入りし過ぎないように。では、準備にかかれ!!」

―――――――――

ブオオオォォォーーーッ………!!

ワアアアアァァァァ………ッ!!

信勝「……始まったな」

男「……みてーだな」

正直「景勝ちゃんはちゃんとおめめ覚めてるかしら~?」

昌恒「知るか」

幸村「そ、それよりも出番はまだでございますか!?そ、某はもうっ」ウズウズ

昌恒「落ち着け馬鹿者」

幸村「フーッ、フーッ!!」

男「幸村の目が血走っててやべえ」

ドーン、ドーン!

正直「あらあら、この合図は~」

昌恒「うむ、どうやら出番の様だな」

信勝「と、言う事で幸村っ……って、早!?」

幸村「うわははははっ!!」ダカラッダカラッダカラッダカラッ!!

男「うわ早っ!?」



信勝「などと言っとる場合か!?早く後を追えっ」

男「おっ、おう」ハァッ!

パカラッパカラッパカラッパカラッ……

信勝「だ、大丈夫なんだろうか?」

昌恒「不安だ……」

正直「うふふっ」

―――――――――


幸村「うはははははっ」ドカバキボコッ

幸村「さあさあさあ!次はどいつだ!!」ニタァ…

敵兵「ひぃぃぃ……」ガクブル…

男「おーい、幸村!!」パカッパカッ

幸村「おお、男殿!!如何なされた!?」

男「お前が突っ込みすぎてどうすんだよ!?」ポカッ

幸村「いたっ」

幸村「で、でもぉ、某一人で二十人は討ち取りましたよ?」

男「無双シリーズかよ!?とにかく、みんなと合流

幸村「あ、見て下さいあの旗印!!」

男「聞けよ!!」

幸村「あの桔梗の紋は確か敵大将、金森長近のもの!!」ギラリッ

男「って、おいまさか!?」

幸村「敵将金森長近殿!一槍馳走つかまつるうううぅぅぅっっ!!」

男「つかまつるんじゃねえええええええっっっ!!!」

長近「……うーむ、敵の動き、どう思う?」

敵武将「はっ、様子からするに、恐らくは牽制かと」

長近「しかし、この惨状は何だ。敵は本気なのか、何をやりたいのかいまいち分からん」

ドドドドドド!!

長近「うおっ!?」

敵武将「な、何だ!?」ビクッ

幸村「うおおおおおおおっ!!ながちかどのおおおぉぉ!!」ズドドドドドドッ!!

敵武将「なっ、なに!?六文銭!!」

幸村「うおおおおおっ!!!」


ガギンッ!!

長近「貴様!真田の小倅か!!」

幸村「如何にも!!真田昌幸が子、真田幸村!!金森殿に一槍馳走に参った!!」ババンッ!

長近「ケツの毛も生え揃わぬ小娘が……」チャキッ

幸村「化粧が濃くなってきた婆が言う事かっ!」

長近「私はすっぴんだ!!」

敵武将「と、殿!?」バッ!

長近「さ、下がれ!!こやつ、見た目に反して槍捌きが――――


ギィン!

長近「くっ!?」グラッ

幸村「ほう、流石は信長が精鋭、赤母衣衆の一人……。某の一撃を受け止めてみせるとは……」ニヤリ…

長近「うっ……」ゾクッ…


幸村「しかし、次の一撃はかわせまい!!」ギンッ!

長近「くっ、くそっ!?」

男「完全に悪役じゃねーか!!って、こっちを助けろ!!」

敵武将「うおおおっ」ブンブン

男「ひいいいいいいっ」

幸村「なれば、覚悟!!」ビュンッ!

敵武将「とっ、殿!?」

長近「~~~っ!!?」


ギインッ!


幸村「!?なにっ!!」


「……長近、油断し過ぎ」

敵武将「あ、あなた様は―――――――前田利家様!!」

男「なにっ!?」ゼーゼー…

男「梅鉢の紋!?気をつけろ!そいつは前田利家本人だぞ!?」

幸村「えっ!?でも、ほんのチビッ子ですよ!?」

利家「……チビッ子言うな」クスン


長近「……どういうつもりだ又佐。私は助けなど……」

利家「……お喋りはあと。まずはこいつを何とかしないと……」

長近「うっ……」ゴクッ…

幸村「――――まあいいや」ツィ…

利家「――――……っ」ゾクッ

幸村「ここで二人やっつければ武功も二倍ですよね~」ニィィ…

長近「こ、こやつ、何処までも馬鹿に……」ギリッ…

利家「……怒っちゃダメ。こいつには、その力がある……」

長近「……うっ」

幸村「そんじゃ、いきま―――――


ドーン、ドーン、ドーン!!

利家「!?」

長近「この太鼓は!?」


男「ひ、退け、幸村!!タイムリミットだ!!」ヒョイヒョイ

幸村「で、でもでも!!」

男「でもでもじゃねえ!!」ヒョイ

幸村「あっ、手綱を!?」

カカッカカッカカッカカッ……


敵武将「逃がすか!!」ブウンッ

幸村「ふんっ!」ゲシッ!

敵武将「うぼぁっ!!」ドサッ

長近「退いた、のか……?」

利家「……みたい」

長近「……礼は言わんぞ」

利家「……うん、運が良かっただけ」

長近「……ふん」

敵武将「うごご、ながちかさまぁ……」ピクピク…

利家「……どうするの、これ」ツンツン

長近「……後でツバでもつけてやる」

敵武将「……えっ///」

利家「……えっち///」

長近「何故に!?」

―――――――――

信勝「……結局、作戦は失敗か」

男「……ああ、そうみてーだな」

昌恒「あともう一押しだったが……」

正直「仕方ありませんよお~……」

信勝「……まさか、前田の別道隊が背後をとってくるとは……」

幸村「…………」ショボン

信勝「まあ、それでもそれなり逃がすか成果はあったが……」チラッ

幸村「あうう……」

男「まあまあ、そんなに責めてやんなよ。こいつも反省してるんだし」

幸村「……も、申し訳なく……」

昌恒「まあ、確かに幾分かの功は上げたようだが」

信勝「その為に、こちらの損害が出ては、な」

幸村「は、反省してます……」

男「まあ、これからはやたらに突っ込みすぎないこった」ハハハ

昌恒「お前なあ……」ハァ…

信勝「まあいい、これ以上責めても始まるまい」


信勝「幸村、今度の功は確かに認めよう」

幸村「!?は、はいっ」

信勝「しかし、同時にお前を待つために多くの者が傷ついた、という事も忘れるな」

幸村「……はい」ショボン

正直「まあまあ、このくらいにして……」

男「そうだな、そろそろ飯にしようや」

昌恒「ほら、元気出せ、幸村?」

幸村「……はい」

信勝「やれやれ」クスッ

「失礼します!!」

信勝「おう、どうした」

「はっ、至急お伝えせねばならぬ事が!!」

信勝「……何?」




信勝「上杉軍が引き上げる、だと!?」

―――――――夜

昌恒「……本当に退く事になるとは」

正直「……仕方ありませんよ~」

信勝「……ああ、新発田重家が信長に通じて謀反を起こした以上は仕方あるまい」

男「けどよ……っ!!」

信勝「…………」

昌恒「お前の言う事も分かる。だが、今度の事で一番辛いのは他ならぬ景勝殿だろう……」

男「……それは」

信勝「……それに、上杉が退く以上、我等だけではどうにもならん。分かるな?」

男「分かってる!それくらい!!」

男「……けど、あのままじゃ、結局……」

信勝「…………」

男「何とか出来ねえのかよ……」

昌恒「…………」

正直「…………」

昌恒「……もういいだろう。行くぞ」

男「……待ってくれ」

昌恒「これ以上、何を?」

男「……せめて、この水を手向けに……」

信勝「……丁重にな」

男「……ああ」

男「……すまねえな、魚津のみんな」

男「結局、俺じゃあ歴史は変えられなかった……」

男「……せめて、この水だけでもあの世に――――



幸村「待って下さい!」

幸村「見て下さい敵の前陣を!!」

信勝「佐久間の陣か?それがどうし―――――


ワァーーッワァーーッ!!

ヒケヒケーーッ!!


正直「あらあら、大騒ぎですね~」

昌恒「言ってる場合かっ!?」

ゴオオオオオオッ!!

昌恒「佐久間の陣が燃えている……!?」

信勝「失火か何かじゃないのか!?幸村!!」

幸村「あ、はいっ。佐助、才蔵!!」

才蔵「はっ、これに」

男「あれ、相棒はどうした?」

才蔵「佐助は今、佐久間の陣を探っているところで」

信勝「まあいい。何か分かった事は?」

才蔵「はっ、この火は失火に非ず、何者かの火攻めであると」

信勝「……そうか」

男「こうしちゃいられねえ!!」ダッ!

昌恒「おい、どうするつもりだ!?」

男「決まってるだろ、魚津に突っ込む!!」

昌恒「バカ!?そんな事出来るわけ――――

信勝「……構わん」

昌恒「殿!?」

信勝「どのみち魚津が落ちれば遠からず我等も滅亡よ。ならば、今はこの機に賭けるべきではないか……?」

昌恒「しっ、しかし……」

男「グダグダ言ってる暇はねえ!!行くぞ!!」

昌恒「おい、待て!!戻ってこい!!」

幸村「……行きます!!」

昌恒「お前まで何を言って!?」

信勝「……遅れるなよ!!」

昌恒「と、殿まで!?」

昌恒「おい、正直!殿を止め――――

正直「はーい」ギュグッ!

信勝「ぐえっ」バタッ

正直「引き留めましたよ~」

昌恒「い、生きておられるだろうな?」

正直「それはもう~」ニッコリ

昌恒「……あ、ああ……」

昌恒「な、なら、あと二人も!!」

正直「……ちょっと難しいですね~」

昌恒「なにっ!?」

正直「ほら、もう敵陣に~」

昌恒「何だと!?」

正直「あのぉ、私たちどうします~……?」

昌恒「どうすると……、とりあえず成り行きを見守りながら二人の救出をするしかあるまい……」

正直「……はい」

昌恒「くそ、無事でいろよ二人とも……」

――――――――――


男「………うっ」

幸村「あっ、気がついたんですね!!良かったあ~……」ホッ…

男「えっ、あれっ、幸村?ここどこ?何で縛られてんの?」グイグイ

幸村「……あの、どうやら捕まったみたいなんですよ私たち」

男「な、なに!?」

番兵「おい、出ろ!!こっちだ!!」ゲシッ!

男「っ!何しやがる!?」

番兵「やかましい!!さっさとこい!!」

幸村「や、やめて!乱暴な真似は!!」

番兵「うるせえ!お前も来るんだよ!!」グイッ

幸村「きゃっ」

男「幸村!?」

番兵「おい、こっちだ!」ゲシッゲシッ!

幸村「きゃあっ!!」ドサッ

男「幸村!?てめえら!!」ガッ!

番兵「うるせえ!殿の前だぞ!!」ボグッ!

男「と、殿、だと……」ゲホッ…

敵武将「控えい!この御方を誰と心得る!」

男「誰って、爆乳ねーちゃん?」

「んなっ!?」

幸村「……言えてる」

敵武将「この御方こそは織田家が筆頭家老、柴田勝家様にあらせられるぞ!!頭が高い!!控えおろう!!」

男「何だと!?」

幸村「この人が鬼柴田!?」

勝家「ほう、私を前に怯まずにその視線とは…」ニマニマ

男「うるせえ!とっと離しやがれ!!」グイグイ

幸村「こんな縄さえなければ貴女なんか!!」

勝家「はははっ、そのナリでまだ私に逆らうとは、ますます気に入った!!」

勝家「そうだ、一つ試してやろう」

男「……何だこれ?」

幸村「……小刀?」

勝家「そうだ、今から男のほうだけ、片腕を自由にしてやる。それで一人、選べ」ニコニコ

男「……何?」

勝家「それを使ってそっちの餓鬼を殺ればその方を解放してやる。それとも、私を人質にでもして逃げおおせるか?」ニコニコ

男「なっ!?」

勝家「あと十だけ時間をやる。良く考えておくんだな」ニコニコ

幸村「あう……」

男「…………」



男「……なあ」

勝家「ん?どうした、決心が着いたのか?」ヘラヘラ

男「一人選べって言ったよな……?」

勝家「言ったが、それがどうした?」

男「……もし幸村が残った場合はこいつを助けてくれるんだろうな?」

勝家「ああ、武士に二言はない」

男「――――――そうか」

男「……幸村、姫さんやみんなによろしくな」グッ

幸村「まさか!?やめ――――


ドスッ






シュコン




男「…………あれ?」

勝家「ぶははははははははっっっっ」バンバンッ

男「な、何だこりゃ!?」シュコンシュコン

勝家「やーい、引っかかった引っかかった!!」

男「」

利家「勝家、あんまり遊んじゃだめ」プルプル

長近「『姫さんやみんなによろしくな』キリッ」

利家「ぷぷぷぷぷ」

勝家「がーっはっはっ!!い、未だに、こんなくさい台詞を!!」ヒーヒーッ!

男「」

男「う」

男「うわあああああああああああ、はっずかしいいいいいいいいいいいい」

男「殺せえー、いっそ殺せえ!!」ジタバタ

勝家「誰が殺すかこんな面白いヤツ!!」

長近「た、確かに……」プルプル…

男「うがあああああああああああ」

勝家「しかし、もし貴様がそこの餓鬼か私に手を出そうものなら、即刻首を跳ねる手筈だったのだぞ?」

男「……ソーデスカ」ショボン

勝家「かかるに利家の見込んだ通りの男だった訳だが……」

利家「期待以上」グッ

長近「ぷぷぷっ」

男「うわああああああああああああっ」

勝家「しかし、私も武士だ。約束通り命は助けてやる」

男「…………ハイハイ」

勝家「しかし、このまま帰す訳にはいかん」

幸村「……何っ?」

勝家「貴様らは私の預かりとして、とりあえず上様に目通りしてもらう」

男「何だと!?話が違うじゃねーか!!」

勝家「この戦では随分と武田に手酷くやられたでな。それくらいしても罰は当たるまい」ニヨニヨ

幸村「卑怯者!!」

勝家「おうおう、敗者の戯言は酒よりも腹に染みるわ」ニヤニヤ

幸村「くっ……」

利家「でもあの一言にはかなわない」

長近「ぷっ」

男「うがああああああああっっっっっ」

勝家「よし、餓鬼の方はあっちの部屋に連れていってくれ」

利家「分かった」ヒョイッ

幸村「きゃあっ」

男「てめ、何しやがんだ!?」

利家「食べはしない。ご飯を上げるだけ」

男「……味噌は上州味噌でなっ」

利家「努力する」パタン

勝家「何の心配してんだ何の!?」

勝家「……さて」ジリッ

長近「……なあ」ジリッ

男「な、なんだよ……」

勝家「飢えた女に据えられた男…」ジリジリ…

長近「ここまで来たら、分かるよな……」ペロリッ…

男「いや普通、逆!?っか、なにいややめ―――――――――








アーーーーーーーーーッ…………

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