勇者「お前、今日から竜騎士な」 (7)

魔王が統べる『魔界』と呼ばれる異次元空間が誕生し、人間国vs人間国から人間界vs魔界の構図へとすり替わって早10年

魔界から大群が押し寄せては人間が迎え撃つ。そのような防戦状態が続いている中、定例世界会議の場で小国の王は提案した

『こちらから魔界に攻め込みませんか?もうそろそろ戦争飽きましたし』

その場にいた全ての者が小国の王に対し怒声を浴びせた



勇者「ふざけんなよ」

僧侶「まあまあ勇者様」

勇者「なんで俺が魔界への行き方を探らなきゃなんないんだよ、めんどくせえ。あのバカ王のせいだ」

僧侶「今日7回目ですね、国王様のことをバカ王って呼ぶのは」

勇者「バカにバカって呼んで何が悪い」

僧侶「確かに国王様はバカですけど、それを口に出すのは失礼ですよ」

勇者「でもバカだろ?」

僧侶「まあ、はい。あの人はバカです」





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僧侶「それにしても、不思議なことですね」

僧侶「神の啓示が本当にあるとは思ってませんでした」

勇者「お前の職業は僧侶だろ。それはダメだと思うぞ」

僧侶「どうなんでしょうかね?こんな考え方をずっと持ってますけどそれなりに出世しましたし」

勇者「あ、そう」

勇者「風呂入ってたら『私は女神です。明日、小国の王に会いに行きなさい』って声が突然聞こえてきて」

僧侶「私は礼拝堂で鬼神様に一日の報告をしていた時ですね」

勇者「え、お前の崇める神って鬼神なの?」

僧侶「ええ、まあはい」

勇者「そ、そうか...(もしかして邪教徒ってやつ?)」

僧侶「国王様にお会いして話を聞いたら驚きましたよね」

勇者「『神の啓示?神に選ばれたってこと?じゃあ君たちにやってもらおうかな。よろしく頼むよ。他国にも同じような人がいるかもね』」

勇者「なんじゃそりゃ!」

勇者「俺は只の兵士だぞ!?そんな大層な任務押し付けんな!」

僧侶「私も只の慰み者だったのに...旅なんてしたこともないし」

勇者「...(この子は一体どういう人生を歩んでいるんだ)」

僧侶「まあ取りあえず!」

僧侶「せっかくの旅なんだし、楽しみましょう!遠距離消滅呪文・小」

魔物A「ひぐっ」

勇者「...そうだな。疾風切り」

魔物B「うえっ」

僧侶「さあ、砂利掃除は終わりました」




村長「ありがとうございます、本当にありがとうございます」

勇者「おう」

村長「今日はどうかこの村にお泊りください。村を挙げて御もてなしいたしますので」

僧侶「それは楽しみですね!生のイケメンも用意してくださいよ?」

勇者「(...本当にこの子はどういう人生を)」



イケメン「ささ、僧侶様。こちらもどうぞ」

僧侶「あーんして下さい」

勇者「良い酒だな」

男「そうでしょうとも、うちの最高傑作だからね」

勇者「へえ、あんたの店のやつか」

男「そうだ。ほら、これと一緒に飲んでみな」

勇者「...ほう、これは合うな」

男「長年研究して作り上げた組み合わせだからな。なかなかのもんだろう」

勇者「ああ。王都の食い物より美味い」

男「それはよかった!腹いっぱい食えよ」

僧侶「鞭かろうそくはありますか?」

イケメン「え、な、何に使うんですか?」

ーー部屋ーー

勇者「おい、そろそろ寝るぞ。電気消せ」

僧侶「はーい」

僧侶「...今回もはずれでしたね」

勇者「そうだな。まあ、あれだな。ちょっと考えが固まってきたかな」

僧侶「!」

勇者「今人間界にいる魔物は全員魔界に帰る方法を失ったものだ」

僧侶「えっと...」

勇者「魔物やそれを操る魔族は魔界から大群で来る。で、帰る。また来る。それを何度も今まで繰り返し行っている」

僧侶「はい」

勇者「けど俺が兵士だったころから倒してきた、大群が帰ってからも人間界に残った魔物。いわゆる野良魔物はどこかしら体に深めの傷があった」

僧侶「深めの傷、ですか...」

勇者「多分戦争で傷ついて撤収に追いつけなかったんだろうな」

僧侶「なるほど。だから大群の魔物と野良の魔物には力に差、というか元気に差があったんですね」

勇者「ああ、野良魔物は簡単に倒せる。元々ボロボロだからな」

勇者「で、ここからが本題」

僧侶「本題?」

勇者「魔族を捕まえよう」

僧侶「...はい?」

勇者「まあ、本題と言うか明日の道中に話すわ。おやすみー」

僧侶「え、気になります!もやもやします!」




村長「勇者様、僧侶様。どうかお気をつけて」

勇者「世話になったな」

男「僧侶様申し訳ありません、イケメンの奴、村のどこにもいなくて...見送りの時間だってのに」

僧侶「残念です...まあ、昨日私が文字通り食べちゃったせいですけど」

男「文字通り?」

勇者「(多分この子の文字通りは本当に文字通りなんだろうな)」

勇者「じゃあな、いつかまた会おう」




ーー草原ーー

勇者「ここを真っ直ぐ行くと確か火山があったな。行ってみるか」

僧侶「ええ、火山ですか...暑いんじゃ」

勇者「ああ、暑いで済めばいいな。熱いだろうな」

僧侶「私直ぐ日焼けしちゃうんですよお」

勇者「黒焦げだろうな、最悪消し炭になるかも」

僧侶「辞めません?というかそろそろ一度小国に帰りましょう。もう旅を始めて1月経ちますし」

勇者「...そうだな、帰るか」

僧侶「やったあ!」

勇者「ただ小国への報告が終わったらここを訪れるからな。火山は人間軍が立ち入ったことのない土地だから調べに行く価値はある」

僧侶「がーん」




ーー村ーー

村長「...あれ、忘れ物ですか?勇者様、僧侶様」

勇者「馬貸して。小国に帰るから」

男「イケメンが見つからないぞ!隣山にもいる気配がなかった!!」

僧侶「だから食べたんですって」




パカラッパカラッ  ヒヒーン

僧侶「馬速い!怖い!」

勇者「ちゃんと捕まってろ」

僧侶「は、はい!そ、そういえば勇者様!」

勇者「なんだ?」

僧侶「き、昨日の、話の続き!魔族を捕まえるって、どういう意味ですか!?」

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