P「目が覚めたら女の子になってる!!」 (215)




P「んぅ……?」パチッ


P「ふわぁ……寒っ」ブルッ

P「……うん? あれ?」

P「ここ、どこだ……? は? 公園? え、なんで?」

P「っていうか、声が……んん? なんでスーツ着て……っていうかサイズがぶかぶか……」

P「えっ、ちょ、まさか……!?」ゴソゴソ



P「俺、女の子になってるのか!?」





>>3 女の子になっていたPの年齢は? (3歳以上、20歳以下で)


>>6 女の子になっていたPの体型は?
・普通
・ぽっちゃり
・千早
・むちむちエロボディ
・ロリ
・人外娘




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16

えろぼでぃ




―――公園の公衆トイレ―――



P「見たところ、高校生くらいの女の子といったところだろうか」

P「結構……いや、かなり可愛い顔だと自分では思うが、これって一種のナルシストになるのか?」

P「体型は……ふむ。貴音やあずささんに負けず劣らずのナイスバディ。むちむちでとてもエロイな」ボイン



P「―――っじゃねぇ!!!」



P「なに冷静に観察してるんだ俺!! なんだこれ!? 夢か!? そうなのか!? そうであってくれ!!」

P「ああくそっ、夢の中で夢と気が付いたとき即座に目覚める事ができるなんて特技、持ってなきゃ良かった!!」

P「おかげでこれが夢じゃないってことが悲しいほどにわかったよちくしょう!!」



P「……いや、待て」



P「ちょっと冷静になるんだ俺よ。『えろえろボディの美少女』に転生したんだぞ?」

P「……べつに嘆くことはないんじゃないか? むしろ得してるんじゃないか?」

P「よし、よし。ちょっと冷静になってきたぞ……」





P「スーツはぶかぶかだが、ベルトのおかげで着れないことはないな」

P「問題なのはズボンの丈と、あとは革靴がぶかぶかだから歩きづらいってところか」

P「いや、問題というならむしろ、スーツに何も入ってないことが最大の問題だ」

P「財布も携帯も手帳も入ってないぞ。これ寝てる間にホームレスやら不良やらに盗まれたとかじゃないだろうな」

P「…………お、犯されてないよな? た、たぶん大丈夫なはず……」ペタペタ



P「えっと……とりあえず俺のマンションに帰るか……」フラフラ





―――Pのマンション―――



P「はーい、オートロックなので入れませんね。本当にありがとうございました」

P「そうだった、鍵がないんだったよちくしょう!!」


P「え、なにこれ? 無一文で外に放り出されたってこと? まじで?」

P「オートロックを突破することは、まぁ不可能じゃないが……どうせ部屋の鍵も閉まってるよな、きっと……」

P「本人じゃないから管理人に言っても開けてもらえるか微妙だし、そもそも管理会社の連絡先なんて覚えてない」


P「…………つ……詰んでるっ!!」





P「ああもう、せめて部屋が1階か2階なら気合いで侵入することもできたかもしれないのに……」

P「なんで6階の部屋にしちゃったんだ俺!! ばかっ!! 2年前の俺ばかっ!!」


P「……よし、切り替えていこう」


P「あれだ、もしも俺の部屋が開いていた場合、ここで諦めるのは完全に愚行だよな」

P「『じつは俺の部屋が開いてる説』が一番平和的で素晴らしいパターンなんだから、それに賭けてみるのは悪い選択肢じゃない」

P「俺が知らないうちに公園で寝てたってことは、もしかしたら夢遊病的に自分で部屋を出た可能性がある」

P「となると、鍵がかかっていない……なんならドアが閉まっていない可能性さえ考えられるじゃないか」

P「よし、確かめてみよう!」





・・・・・・



P「はい、余裕できっちり鍵が閉まってますね。やったぁ、防犯ばっちりだぁ」ガチャガチャ

P「どうやって鍵閉めたんだよ!! じゃあ鍵はどこ行ったんだよ!?」

P「サラリーマンのおっさんにすげぇ怪しげな目つきで見られながらオートロックをごり押しで突破したってのに、無駄足かよぅ……」


P「……仕方ない。もう7時頃だし、とりあえず一旦出社しよう」



P「…………」



P「え、出社?」

P「こんな格好で? 朝起きたら女の子になってましたっつって?」

P「あはは、あはははは……」


P「えっ、どうするんだよこれ……」





P「きょ、今日は休むって律子か音無さんにメールするか……?」ゴソゴソ

P「いや、だから携帯がないんだって! 10円さえ持ってないから電話もかけられない! っていうか番号覚えてない!」


P「さすがに無断欠勤はまずいよな?」

P「社会人としてやばいよな……今日は打ち合わせとかはなかったはずだけど、さすがにな……心配させちゃうだろうし」


P「じゃあ……」


P「と、とにかく、行くだけ行ってみるか……765プロ!!」





P「もしも事務所まで電車通勤だったら、俺はもうすべてを諦めてふて寝してただろうな」

P「幸いにも徒歩通勤だから、30分くらい歩けば事務所だ。それだけは本当に助かった」


P「……ただ、いつもより歩幅が狭い上に、革靴がぶかぶかで歩きづらいし痛い」

P「しかもどう考えてもサイズが合ってなさすぎるスーツを着た女子高生(むちむちエロボディ)が早朝に歩いてる……」

P「警察に見つかったら、一発で職質だよな」

P「って、もしそうなったらやばい! こちとら戸籍どころか名前すら無いんだぞ!?」

P「……よ、よし、警察にしょっぴかれたら、記憶喪失で押し切ろう」

P「最悪、俺の名前と住所を出して家宅捜索させれば、なにか事態が進展するかもしれんしな」


P「とにかく今は先のことより、目の前のことに集中だ」

P「どういう手で765プロに接触するか……いくつか手は考えられるが」



>>21 どのようにして765プロに接触する?

1、自分はPの生まれ変わりであると白状してみる
2、自分はPと同棲してた恋人だったが、追い出されて行き場がないと泣きつく
3、自分はPの妹だが、兄が行方不明だと相談する
4、自分はPにスカウトされたアイドル候補生だと切り出す


3




―――765プロ事務所―――



P「よし、妹っていう設定にして、兄である俺は失踪したということにでもしてしまおう!」

P「実際問題、俺以外の人間からすればそういう事態になるだろうしな、これ」

P「事務所のみんなにはかなり心配をかけてしまうだろうが、まぁ仕方のないことだと割り切ろう……」


P「よしっ、では事務所に突入だ……!!」ガチャッ



この時、事務所にいた765プロの人間は?
>>24
>>25


72

雪歩

今日はここまでです。
いろいろ拙いところもあると思いますが、温かい目で見てやってください。
ここまでご協力いただきまして、ありがとうございました。




 ガチャッ


P「お、おはよう……ございます」


千早「……?」

雪歩「へ?」


P(おおう、千早と雪歩か。そういえば昨日、この2人にビジュアルレッスンするぞって言ったんだっけ)

P(音無さんや律子はいないのか? 事務所が開いてるんだから、一旦出社してから出かけてるってところか)



千早「あの、なにか用かしら?」

P「あ、いや、その……兄は今日、出社していますか?」

千早「兄?」

P「はい、765プロでプロデューサーをやっているはずなのですが」

雪歩「ええっ!? プロデューサーの妹さんですかぁ!?」

千早「妹がいるだなんて、聞いたことないけど……」





P(あ、あれ? これひょっとしてやばいか?)

P(もしも音無さんか律子に会って行方不明だって伝えたら、きっと大事になるよな)

P(そしたら確実に実家にも連絡が行って、捜索願とかが出る事件になる)

P(どうしてすぐに俺の失踪が発覚したかというと、妹と名乗る少女の申告だ。それは実家の両親にも伝わるだろう)

P(当然、妹なんて存在しないわけだから、じゃあお前は誰なんだって事になって、ややこしいことに……)


P(つまり事件になるまでは妹だと明かさないほうが良かった……!?)





千早「それで、プロデューサーになにか用かしら?」

P「あ、えっと……昨日の夜から、兄に連絡が取れなくって……いつも電話すれば出てくれる兄なので、なにかあったのかと」

千早「連絡が取れない? そういえば、いつもこれくらいの時間には事務所にいるのに、今日はまだ来ていないわね」

P「もしかして事件にでも巻き込まれたのかもって思ったら、いてもたってもいられなくって、兄のマンションを訪ねたんですけど無人で……それで職場まで顔を出しちゃいました。突然すみません」


雪歩「たしかに、電話しても出てくれないね……電源が切れてるわけでもなさそうだし、なにかあったのかな……?」


千早「よくわからないけれど、プロデューサーは仕事をほったらかしにするような人ではないわ。待っていれば来るはずよ」

雪歩「そう……かな。うん、そうだよねっ!」


P(信頼は嬉しいが、残念ながら俺は……プロデューサーは来ない。いや、来れないんだ)





P「あの、では念のために、兄が来るまでここで待ってても良いですか?」

千早「ええ、どうぞ」

P「ありがとうございます」

千早「ところで、お名前を聞いても良いかしら?」

P「あ、すみません。自己紹介が遅れました。俺……私は―――」


P(しまった、名前なんて考えてなかった……! ええっと……)


>>41
1、赤羽根 P子
2、小野 妹子
3、音無 雛
4、なにか他の名前


1




P「赤羽根 P子と申します。歳は……えっと、16歳です。好きに呼んでくださいね」

千早「私は如月千早。歳は同じく16歳よ。この765プロでアイドルをやっているわ。同い年だし、名前は好きに呼んで」

雪歩「わ、私は、萩原雪歩って言いますぅ……17歳、です。私もここでアイドルをやってて、その……」

P「ええ、お二人ともテレビや雑誌で拝見したことがありますから、よく知っています。こうして直接お会いできて感激です」

雪歩「そ、そんな……私なんて、ぜんぜんダメダメで……」///

千早「ええ、まだまだ目標の地点には程遠いわ」


P(謙遜にも個性って出るんですね)





千早「ところで赤羽根さん、その……ずっと気になっていたのだけれど、貴女のその格好は……」

P「っ」ギクッ

雪歩「それ、男の人のスーツ、だよね……?」

千早「靴も大きすぎるし、それじゃまるで……」


P「これは、えっと……じ、じつは」


>>46
1、入浴中に宿舎が全焼して服が炭になったので、管理人さんの服一式を貰ったんです。
2、…………暴漢に襲われて……それで……
3、兄が大好きすぎて、いつも兄の服を着ているんです!





P「兄が大好きすぎて、いつも兄の服を着ているんです!」


千早「えっ……」

雪歩「え、あ、えっと……!?」///

千早「……」チラッ

雪歩「……」コクッ


千早「そ、そう。それは、なんというか……」

雪歩「兄妹仲が良くって、うん、すごく良いことだと思いますぅ」


P(わぁい、この2人のこんな愛想笑い、始めて見たぁ……)

P(そしておそらく心の距離がすごく開いてしまった気がする)

P(変なキャラ付けをしてしまった手前、もうこれでゴリ押すしかないか)





P「なので兄が大好きすぎて毎日毎朝ラブコールをしているんですけど、今日は出てくれなくって。それでなにかあったのかと思いまして!!」


千早「えっと……たしかにそろそろ出社してもおかしくはない時間なのだけれど」

雪歩「やっぱり電話しても出ないし、ちょっとおかしいよね……」


 ガチャッ


小鳥「ただいま~。ごめんなさい2人とも、お留守番ありが―――あら?」


P「すみません、勝手にお邪魔しています。プロデューサーの妹の、赤羽根P子と申します!」ペコッ

小鳥「プロデューサーさんの妹さん? えっと、初めまして、音無です」

P「兄と連絡が取れなくなり、家にもいなかったので、こちらにお邪魔させていただきました!」

小鳥「連絡が取れない……?」


雪歩「私もさっきから電話をかけてみてるんですけど、ぜんぜん出てくれなくって……携帯の電源は入ってるみたいなんですけど」

千早「それにいつもなら事務所に来ていてもいい時間なのに、まだ来ていないんです」


小鳥「えっ……プロデューサーさんになにかあったのかしら」





P「兄が来るかもしれないので、もうしばらくここで待っていてもいいでしょうか?」

小鳥「ええ、もちろん。……あ、それから赤羽根……P子ちゃんは、ご実家の方から来られたのかしら?」

P「はい! 実家には帰ってませんし、それはさっき電話でも確認しました!」

小鳥「そう……」

P「もしも今日、兄が見つからなかったら、明日にでも捜索願を出そうと思います」


雪歩「捜索願!? ……はぅ」クラッ

千早「雪歩、気をしっかり。明日までプロデューサーがなんの音沙汰もなかった場合の話よ。そんなことありえないわ」

雪歩「う、うん……そうだよね」


P(……。)




小鳥「……ところでP子ちゃん、その格好は……」

P「兄の服に包まれていると幸せなので!!」

小鳥「あ……そ、そうなの……あはは」ササッ


P(わぁい、露骨~)





P(さて、よく考えなくてはならない)

P(俺は今、マンションには帰れない状況だ。それに実家に帰っても、両親の理解を得ることは難しいだろう)

P(そもそも車も電車も使えないので、実家まで帰れないってのが実際だ)


P(ならばホテルにでも泊まりたいところだが、残念ながら金がない。カードもない。免許も保険証もない)

P(実家に連絡されることを防ぐためとはいえ、実家から来たなんて言わなければよかった)

P(最悪、誰かに事情を明かして家に転がり込むことも視野に入れておかないとダメかもな)


P(……最終手段としては、記憶喪失だと言って警察署に行く、だな)





P(さて、プロデューサーが来ないことなんて俺が誰よりもわかってることだし、もうここにいる意味はないな)

P(とりあえず俺が失踪してることは伝えたし、実家に連絡が行くのも防いだし、目的は達したか)

P(これ以上ここにいてボロを出すわけにもいかないし、そろそろ出て行こうかな)


P「すみません、俺……私ちょっと、外を歩いて兄を探してみようと思います」


小鳥「え……でも、入れ違いになってしまうかもしれないわ。ここで待っていたほうが……」

P「その時はその時です。夕方にでも、もう一度ここに寄ってみてもいいですか?」

小鳥「それはもちろんだけど……あ、それじゃあP子ちゃんの連絡先を聞いてもいいかしら?」

P「えっ。あ、その、携帯はここに来る途中で落としちゃいまして」

小鳥「ええ!?」

P「それでは、また夕方に」ペコッ

小鳥「あ、ちょっと……!」


警察に行っても泊めてもら得ないのよね
ソースは夜中の俺




―――公園―――



P「はぁ……」


P(行く当てもないし、ヒマだな……こうして公園のベンチで膝を抱えてるしかないのか)


P(この身体、ちゃんと元に戻るのかな? 一生このまま、なんてことはないよな?)

P(最初は美少女になったって舞い上がってたけど、よくよく考えたら戸籍もないし、住所も学歴もない)

P(もしお金が手に入っても、せいぜいその日暮らしがやっとだ。就職も難しいだろう)

P(あまつさえ10年後とかに姿が戻っても、今更俺の居場所なんてなくなってるだろうし……絶望的だ)

P(いつ元に戻るかなんてわからないから、適当なオッサンを引っかけて結婚してしまうという手も使えない。なにより気持ち悪くてイヤだ)


P「どうすんだよ、これ……死にたい」ジワッ



千早「死にたいだなんて、軽々しく口にするものではないわ」



P「!?」ビクッ





P「ち、千早……!? じゃ、ない。如月さん……」

千早「千早でいいわよ」

P「それに……」


雪歩「えへへ、来ちゃいました」ニコッ


P「萩原さん……」


雪歩「心配になって、追いかけてきちゃいました。赤羽根さん、大丈夫?」スッ

P「あ、えっと……」

雪歩「泣かないで。私たちもいっしょに、プロデューサーを探すから! そしたらきっと見つかるよ」ニコッ

P「……っ!!」ウルッ


千早「どのみちプロデューサーが来ないのでは、約束していたビジュアルレッスンもできないし。それに……」

P「?」

千早「……家族がいなくなる気持ちは、よくわかるもの。だから1人で抱え込まないで。私たちも一緒にいるわ」ニコッ


P「…………うっ……ぐぅ……」ポロポロ

雪歩「大丈夫、大丈夫だから、ね?」ギュッ


千早「……飲み物を買ってくるわ」


休憩です。続きは夜になるかと。

>>53
むちむちエロボディなのでワンチャンありませんか!




雪歩「落ち着いた?」

P「はい……ありがとうございました、萩原さん、如月さん」

千早「赤羽根さんは、プロデューサーの居場所に心当たりはないの?」

P「は、はい。心当たりは当たってみたんですけど、全部空振りで……」


千早「友達の家に泊まっている、とか?」

雪歩「でも、携帯にも出ないし事務所にも連絡がないっていうのは……」

千早「……そうね、あまりにおかしいわ」

雪歩「やっぱり、なにかに巻き込まれちゃってるのかな?」

千早「案外、携帯を落として失くしてしまったので必死になって探している、とかかもしれないけれど」

雪歩「そうだったらいいんだけど……」

千早「希望的観測ね。まさかプロデューサーに限って夜逃げでもないでしょうし、一体なにがあったのかしら?」





千早「探すと言っても、まさかプロデューサーが街中をうろうろしているとも思えないし、どうしようかしら」

雪歩「うぅん……できることは、思いつかないね」

千早「無闇やたらに歩いても仕方ないし、とにかくお昼まで待ってみる?」

雪歩「それがいいかも。もしかしたら本当に携帯を探してるだけとかかもしれないし、見つからなくても普通は事務所に顔を出すよね」

千早「もしも交通事故に遭っていたのだとしても、さすがに昼頃になれば実家や職場に連絡があるわよね」

雪歩「あ、お弟子さんに聞いたことがあるよ。事故で本人が連絡先を言えない場合は、お財布から連絡できるようなものを探すって」

千早「じゃあ名刺が見つかれば、職場に連絡があるかもしれないわね」

雪歩「万が一ってこともあるから、プロデューサーさんのおうちから事務所までの道を探してみようか? 案外マンホールに落ちたりってこともあるし」

千早「近くの病院に聞いてみるのもいいかもしれないわ。あまり良くない想定だけど……」


P(俺は事故なんて起こってないことを知ってるが、2人は知る由もないもんな……)

P(実際やることもないし、2人の言うとおりに動いてみるのも良いかもな。それで2人の心配が少しでも薄まるのなら)

P(それに兄が行方不明なのに、呑気にその辺でお茶して時間潰そうぜってのも不自然だし)





P「では事務所の前に行ってから、兄のマンションまで歩いてみましょうか」

千早「そうね、そうしましょう」

雪歩「うんっ!」


P「よっこいしょっと」スクッ


千早「……」ジー

雪歩「……」ジー


P「え? どうかしましたか?」


千早「いえ、あの、その格好、ちょっと外では注目を浴びてしまうかもしれないと思って」

雪歩「な、何かの事件に巻き込まれちゃったのかなって感じにも見えちゃうような……」


P(……たしかに、この格好の犯罪臭は半端ないな)

P(さっきまでは早朝だったから人通りも少なかったが、これから昼まで外をうろつくのなら危険か)

P(かと言って着替えもないからな……仕方ない、適当に着崩してアレンジしてみるか)





P(ズボンの裾を膝下くらいまでまくって短くして、革靴はスリッパみたいに踏み潰してしまおう)

P(靴下は邪魔だから脱いで……ネクタイも邪魔だな、外すか)

P(それからワイシャツはちゃんとズボンの中にきっちり入れて、ベルトをきつめに……)

P(スーツの上着はもう脱いで、袖を腰に結んじゃえばいいか。そんでシャツの袖もまくって、と)


P「これでよし、と。こんな感じでどうでしょうか?」


千早「…………」

雪歩「…………」


P「え? あの、二人とも?」


千早「あ……ええ、いいんじゃないかしら」

雪歩「は、はい……そうですね、いいと思いますぅ……」


P「……? えっと、それじゃあ、行きましょうか」





P「……」タユン、タユン


千早「……」

雪歩「……」


P「……」プルン、プルルン


千早「……」

雪歩「……」


P「なんだか、さっきから私たち、注目されてますね。いやぁ、さすがアイドルのお二人ですね!」バイン、バイン


千早「そう、かしら……」ギリッ

雪歩「……私、なんて……私なんて……」プルプル


P「んっ……なんか胸が痛いな……なんでだろ?」ポヨン、ポヨン


千早「……くっ!!」ダッ

雪歩「穴掘って埋まってきますぅぅ~~~!!」ダッ


P「えっ、ちょ、如月さん!? 萩原さーん!?」





P(胸が痛かったのは、どうやらノーブラでずっと歩き回っていたため先端が擦れてしまったらしい)

P(しかし当然ブラなんて持ってないので、なるべく腕を組んで、その上に胸を乗っけるようにすることで姑息療法とした)

P(……なぜかさっきから、千早と雪歩からの視線が刺すように痛い)


P「兄のマンションまで歩いてみましたけど、特になにも見当たりませんでしたね」

千早「そうね。特に足を滑らせて落ちそうな場所もなかったし、普通の道路ばかりだったわね」

雪歩「工事現場なんかもありませんでしたし……パトカーとかもなかったです」


P「仕方ありません。兄のことは心配ですけど、だからといって私たちにできることはないみたいです」

P「居ても立ってもいられなくなって事務所から飛び出してしまいましたけど、お二人のおかげで少しは冷静に考えられるようになってきました」

P「私のわがままに付き合ってくれて、本当にありがとうございました」ペコッ


雪歩「ううん、私たちもプロデューサーのことが心配だったから……」ニコッ

千早「お礼なんていいわ。私たちが好きでやったことだもの」


P「如月さん、萩原さん……」


P(本当に良い子たちだ……この子たちをプロデュースできて、俺は幸せ者だな)

P(いや、まさに今日からプロデュースできなくなったわけだが……)


今日はここまでです。お付き合いくださってありがとうございました。




P(……いや、ちょっと待て)ティン


P(ビジュアルレッスン程度なら、今の俺にでもできるんじゃないか?)

P(そもそも本来、今日のビジュアルレッスンだって俺が見てやるつもりだったんだし)

P(どうせしばらく元の姿に戻れないのなら、今できることだけでもやってしまうのが良いんじゃないだろうか?)


P「あ、あの、如月さん、萩原さん……」


千早「?」

雪歩「なぁに、赤羽根さん?」


P「ちょっと、もしよろしければなんですけどー――」





―――公園―――



P「はい、笑ってー」


千早「……」ニゴォ

雪歩「……///」プルプル


P「はい、怒ってー」


千早「……」キッ

雪歩「……うぅ~!」///


P「悲しんでー」


千早「……くっ」

雪歩「うぅぅ~」






P「うーん、やっぱり照れがありますね。それに上手く感情がつかめていない感があります」

千早「やっぱり、私にはこういうのは向かないわ」フイッ

P「そんなことは言ってられませんよ。アイドルとして……いえ、もしも歌手だったとしても、自分を魅力的に見せることは重要ですから」

千早「……でも」

P「如月さんの素敵な歌をもっと多くの人に広めてくれるのは、如月さんのことが好きな人たち……ファンの人たちなんですから!」

千早「私の歌が好きな人、じゃないの?」

P「そういう人もいてくれますけど、でもやっぱり、本当に熱心なファンっていうのは、いつも遠方からライブにも来てくれるような人たちです」

千早「……」

P「雑誌の取材とかで如月さんの意外な一面を見たり、雑誌の写真で普段はあまり見せないような優しい笑顔を見たりすると、この子を応援したいってなるんですよ」

千早「……なんとなく、言いたいことはわかったわ」





P「萩原さんもそうです」

雪歩「ひゃいっ!?」ビクッ

P「萩原さんは清楚で儚いイメージですから、カメラの前でおどおどしちゃう姿もとっても可愛いと思います」

雪歩「そ、そんな、私なんてぜんぜんだめだめで……」

P「だけどそれだけではダメです。もしかしたら、萩原さんのことを暗くてウジウジした女の子だと誤解してしまう人もいるかもしれません」

雪歩「誤解っていうか、その通りというか……うぅ」

P「でも萩原さんは自分を変えたいって想いでアイドルになって、毎日一生懸命レッスンも頑張って……そういう強さも持ってるじゃないですか」

雪歩「……!」///

P「一生懸命頑張ってる子が嫌いな人なんていません。だから、そういう強さを持った萩原さんも、友達の前では朗らかに笑える萩原さんも、たくさん見せていきましょう!」

雪歩「は、はいっ!」





P(なんだろう、いつもより千早と雪歩が素直に話を聞いてくれてる気がする)

P(千早は普段、俺に対して心の壁があるような気がするんだよな。それが今はそこまで無いっていうか……あんまり反発もしてこないし)

P(雪歩なんかは普段、俺が目の前にいるだけで萎縮して、より卑屈になっちゃうもんな。だけど今は、心の距離どころか、物理的な距離もかなり近い)

P(いつもの……男の俺じゃあ、こうもサクサクと話が進んだりはしなかっただろう)


P「ただ笑うっていうのは難しいことですけど、楽しいことを想像すれば簡単です」

千早「楽しいこと?」

P「たとえば如月さんなら、春……天海さんと楽しくおしゃべりしてる時なんかは、とても柔らかい表情になっている気がします」

千早「……どうかしら」///

P「萩原さんなら、菊地さんと喋ってる時でしょうか。カメラを向けられると緊張しちゃいますけど、目を閉じて、その楽しい時間を思い出すんです」

雪歩「楽しい時間を、思い出す……」





P「お二人とも、歯を見せて笑う必要はないですからね。ウソの表情は魅力的ではありません」

P「友達と楽しく喋ってる時に浮かべるような、ちょっとした微笑みでいいんです。それだけで十分魅力的ですから」

P「さぁ、力を抜いて目を伏せて、ゆっくり想像してください」


千早「…………」

雪歩「…………」


P「想像できましたか? さぁ、ゆっくり目を開けて」


千早「……」

雪歩「……」


P「はい、無理せずに、ゆっくり笑ってみてください。目の前に、天海さんや菊地さんがいると思って……はい!」


千早「……」ニコッ

雪歩「……」ニコッ





P「はい、おっけーです! すごく良い笑顔でしたよ! 素晴らしかったです!」

千早「そ、そうかしら……?」

雪歩「自分では、あんまりわからなかったですけど……」

P「自分自身ではそういうものですよ。ですけど、今のような笑顔をいつでも浮かべられるようになったら、きっとファンがいっぱい増えますよ!」

千早「だといいのだけれど。でも、ありがとう赤羽根さん、良い勉強になったわ」

雪歩「うんっ! もしかしたら、プロデューサーよりもわかりやすかったかも……!」

P「そっ、そうですか……? あは、あははは……」





P(今まで俺は、ちょっとビジネスライクっていうか、“プロデューサーとして”接し過ぎていたのかもしれないな)

P(もっと心を開いて打ち解けてくれるように、親身になって、腹を割って話す必要があったのかもしれない)

P(こんな状況に陥って、いろいろと大変な目に遭ってはいるが……このことに気が付けたことだけは、ありがたい収獲だな)


千早「それにしても、さすがはいつもプロデューサーのレッスンの練習台になってあげているだけのことはあるわね」

雪歩「うんうん、プロデューサーが教え上手なのは、私たちの前に赤羽根さんで練習していたからなんだね」

P「そ、そうなんですよ……あはは、世話の焼ける兄でして……」


P(なんか不本意にも、俺の株がどんどん下がっていってるような……)





雪歩「赤羽根さんは、実家に住んでいるんだよね?」

P「え、あ、はい……」

雪歩「もしよかったら、プロデューサーが戻ってきて落ち着いたら、赤羽根さんに会いに行ってもいい……かな?」

P「えっ!?」

雪歩「せっかくこうやって仲良くなれたんだから、お友達になりたいな……なんて」///

P「あ、あぁ~……なるほど、そういう……あはは」



P(おいおいおいどうするんだこれ!! 『プロデューサー』と『赤羽根P子』は両立しないんだぞ!?)

P(でも、ここで雪歩を拒絶するのもなんか違うよな……今までのことが全部パーになりかねない)

P(かといってここで無責任な返事をしようものなら、今後ずっと『プロデューサー』は、妹に会わせろと言われ続けることに……)





P「も、もちろんっ! 私たち、もう友達じゃないですか! あはは……」

雪歩「ほんと? えへへ、ありがとう」///

P「あ、でもですねっ! 私、たま~に実家には帰ってきますけど、それもごく稀にでして……普段はいろんなところをを転々としてるんです!」

雪歩「ええっ!?」

千早「どうしてそんな……なにか特別な職業にでも就いてるの?」

P「あ、うぅ、えっと……じつは……わ、私……!!」


>>91
1、勘当されてるんです!!(千早ルート)
2、女子高生探偵なのです!!(雪歩ルート)
3、ウサミン星人なのです!!


1






P「勘当されてるんです!!」


千早「!?」

雪歩「ええっ!?」

P「昔、いろいろありまして……それっきり、私は赤羽根家の人間じゃないってことになってるんです」

雪歩「え、でも実家に住んでるって……」

P「一応、実家に帰っても叩き出されたりはしないんです。勝手に兄の部屋で寝ても、お風呂を使っても追い出されません。ただ、いない人間として扱われるだけで……」

雪歩「そんな、ひどい……!」

P「なので家に居るのは気まずくって、各地を転々としながら、兄から貰えるお小遣いを消費しつつ……まぁいろいろな方法で、なんとかご飯にありついています」

雪歩「それって虐待じゃないの!? 警察とか……児童相談所? とかに相談しようよ!!」

P「い、いえ、これは私も納得してることですから! それにそもそもの発端は私ですし、今の暮らしの方がよっぽど気が楽ですから!」

雪歩「でも、そんなのって……」

P「なので私の実家に電話したりはしないでくださいね。どうせ、うちにそんな娘はいないって言われるのがオチですし、これは私たちの家の事情ですから」

雪歩「……プロデューサーはそのこと、知ってるんだよね?」

P「兄は、こっそり匿ってくれたり、お小遣いをくれたりします。ですけどそれがバレると大変なことになるので、極力頼らないようにはしてます」

雪歩「うぅ……」

千早「……」





P(なんか思ったより悲壮感のあるエピソードになってしまったな……雪歩が泣きそうになってしまってる)

P(だがこれで、もし俺が元の姿に戻るようなことがあっても、実家に連絡されてバレるリスクは減っただろう)

P(それに突然姿を見せなくなっても違和感はないし、『プロデューサー』が妹の居場所を把握していなくてもおかしくない)


P「ですがあまり心配しないでください! 私は結構元気でやってますから!」ニコッ


千早「……」スタスタ


P「ん? 如月さ―――」



 ギュッ



P「えっ!?」///

千早「行くところがないのなら、私の家に来て。プロデューサーが見つかるまで……いいえ、赤羽根さんが望むなら、いつまでだって泊めてあげる」

P「えええええっ!?」





P「いやいやっ! さすがにそれは悪いですよ!」

千早「じゃあ、今夜はどこに泊まるの?」

P「え、それは……その……」

千早「赤羽根さん、お財布を持っていないんでしょう?」

P「!!」

千早「バッグも持っていないし、ズボンや上着にもお財布は入っていないみたいだし」


P(な、なぜそれを……!? って、スーツを着崩してるときか!)


千早「携帯も落としたって言ってたけど、勘当されていて携帯料金を払う余裕はあるの?」

P「そ、それは……」

千早「さっきから交番へ行こうとするそぶりも見せないし、本当は最初から持っていなかったんじゃないかしら?」

P「ううっ!?」ギクッ





千早「萩原さんと友達になったのなら、私とも友達になってくれるかしら?」

P「それは、ええ、もちろん……」

千早「だったら、友達が困っているのなら助けるのは当然でしょう?」

P「うぐっ……」


雪歩「私のおうちに泊めてあげたいのはやまやまなんだけど、うちはお弟子さんがたくさんいて怖いかもだから……」


千早「私は一人暮らしだし、部屋もそう狭くはないわ。ルームシェアをしていたこともあるし、赤羽根さんがいても迷惑なことなんて一つもないから。ね?」


P「う、ううん……」





P(もしも千早の家でシャワーを浴びている最中に身体が元に戻ったらどうする……!?)

P(だけど、まだ肌寒いこの季節に、こんなエロイ身体をした女子高生が公園で寝るってのもヤバイし……補導されても一発アウトだし……)

P(どっちに転んでもリスクは大きい……ならば)


P「そ、それじゃあ……お願いしても、いいですか……?」


千早「ええ、もちろん」

雪歩「ふふっ」ニコッ





―――ファミレス―――



P「あの……兄が見つかったら、お金はすぐに返しますから……」

千早「これくらい構わないわ」

雪歩「おなか減ってるよね? 遠慮しないでね、赤羽根さん」

P「うぅ……」


P(結局あれからも病院や交番などを訪ねたりしたが、当然ながらプロデューサーの行方につながる情報は得られなかった)

P(まぁ、そりゃそうだ。俺はここにいるわけだしな)

P(そんなわけで、あちこち歩き回っているうちにお昼になってしまったため、俺たち3人はファミレスで食事をしていた)

P(……もちろん財布のない俺は、自分の担当アイドルに奢られる形になるわけで……とても複雑だ)





雪歩「ちょっと小鳥さんに電話してくるね。さっきもしたけど、一応もう一回」

千早「ええ、ありがとう萩原さん」

雪歩「この後、事務所に戻る?」

千早「それでもいいけれど……赤羽根さんはどうしたいかしら?」


P「え……」


千早「私たちは午後から仕事があるから出かけないといけないのだけれど、先に私の家に行く?」

P「えっと……お、私は……」


P(もう昼だし、事務所には他のアイドル達も来てるかもしれないな)

P(というか、律子や音無さんがてんやわんやしてるところに行くのは胃が痛い……)

P(けど今の俺でも事務所でできる仕事なら手伝えなくもないんだよなぁ)

P(ただ、部外者の女の子に仕事を手伝わせてくれるかは微妙だけど)

P(さて、どうするか)



1、事務所にお邪魔してもいいですか?
2、如月さんのおうちに行ってもいいですか?
3、この辺りでふらふらして時間を潰してます。


2

すみません、やらかしました……。
基本いつも↓+2で安価しますので、今回は>>103で行かせていただきます。




P「如月さんのおうちに行ってもいいですか? ……事務所に行ってもご迷惑でしょうから」

千早「そう。それじゃあ、私の家に案内するわね」

雪歩「あっ……でも千早ちゃん、家まで往復してたら時間大丈夫?」

千早「そう、ね……ちょっとギリギリかもしれないわ。かといって住所を教えても、携帯が無いのでは迷ってしまうわよね」

P「あの、じゃあこのファミレスで待ってましょうか……?」

千早「結構かかってしまうかもしれないけれど、大丈夫?」

P「はい、大丈夫です!」

雪歩「千早ちゃん、今日のお仕事って?」

千早「CDショップで手売りと握手会ね」

P「! ……あ、あのっ!」

千早「?」

P「もし、良かったらなんですけど……!」





―――CDショップ―――



千早「応援、ありがとうございます。……はい、これからも頑張ります」ギュッ



P(結構人が集まってくれるもんだな)

P(ビジュアルレッスンや撮影に関してはまだ不器用だが、CDの売上はそこそこになってきた)

P(テレビでも取り上げてもらえるようにもなってきて、これからの活躍に胸が高鳴るな!)


P「あっ、如月千早の握手会イベントはこちらです!」


P(心配だから、無理言って連れてきてもらったが……完全に杞憂だったな)

P(今日みたいに俺が必要以上に世話を焼こうとするから、千早は俺に対して面白くない感情を抱いているのかもな)

P(俺が思っているより、千早はずっとしっかりしている。……もっと千早を信頼してあげないと)





―――千早のマンション―――



千早「さぁ、どうぞ」

P「お、お邪魔します……!」


P(当たり前だが、千早の家に来るのは初めてだな……物が少なくて、すごく片付いてる。わりとイメージ通りだな)


千早「好きにくつろいでちょうだい。飲み物はなにがいいかしら?」

P「えっと、麦茶とかで……」

千早「洗面所はそっちで、トイレはそこよ。この家にあるものは好きに使って」

P「は、はい……ありがとうございます」


P(……千早って意外と世話焼きなんだなぁ)





・・・・・・



千早「―――それで、こんなに小さな女の子が、私のファンだって言ってくれたの」

P「ああ、あの女の子ですか。すごく可愛かったですよね」

千早「ええ、とっても。もっと頑張らなければいけないと、元気をもらったわ……!」///


P(千早はわりと、愛らしい子には目がないよなぁ……。やよいに対してもこんな感じのテンションだし)


千早「……それに引き換え、男性の浅ましさときたら」ボソッ

P「えっ?」

千早「フロアで誘導してくれていた赤羽根さんを見かけた時の、男たちの視線を見た?」

P「い、いいえ……」

千早「誰も彼も、みんな一様に赤羽根さんの胸ばかり見て、鼻の下を伸ばして……! 不潔よ!」

P「そう、だったんですか……? すみません、気が付きませんでした」

千早「赤羽根さんは、もう少しいろいろと自覚をしたほうが良いと思うわ!」

P「き、気をつけます……」


P(珍しく千早が燃えている……っ!!)


今日はここまでです。ここまでご覧いただいて、ありがとうございました。




千早「ところで赤羽根さん、その服のほかに着替えは持っていないのかしら?」

P「え? あ、はい……まぁ」

千早「ずっとその服を着ているつもりなの?」

P「あー……そのですね、そろそろ兄の匂いが薄れてきてしまったので、新しい服を貰おうかと思っていたんですが、兄に会えず……」

千早「そ、そうなの……。そのために実家からここまで?」

P「はい。……あっ、なので兄からもらったお小遣いの残りも電車賃に消えました」

千早「そう……それじゃあ本格的に一文無しというわけなのね」

P「そうなります……」





千早「だけど安心して。当分は私が養ってあげるから」

P「あの、本当にいいんですか……? いくらなんでも、今日出会ったばかりでこんな……」

千早「今日出会ったばかりでも、私たちはもう友達なのでしょう?」

P「うっ……」

千早「どうしても気が咎めると言うのなら、あとでプロデューサーにでも請求するわ。だから、赤羽根さんは遠慮しないで」


P(……まぁ、結局俺が金を払うと考えれば、少しは気が楽かもな)





P「あ、ありがとうございます、如月さん」ペコッ

千早「その丁寧語」

P「え?」

千早「同い年なのにそんなにかしこまられると、かえって話しづらいし距離を感じるわ。無理にとは言わないけれど、もっと砕けた感じで話せないかしら?」

P「う……えっと……あ、ありがと、如月さん……って、こんな感じでいいかな?」

千早「ええ、いいわよ」ニコッ


P(うぅ、照れくさい……! いつもはタメ口&呼び捨てだから、なんかもどかしいし……)





・・・・・・



千早「どうかしら?」

P「お、美味しい! 如月さん、料理もできるんだ!」

千早「以前は自分で栄養管理をしていたこともあるから。最近は適当に買って食べていたけれど、腕が落ちていなくてよかったわ」

P「そうなんだ……」

千早「さ、どんどん食べてちょうだいね。話を聞いていると、赤羽根さんは普段、あまり良いものを食べていないようだから」

P「あ、ありがとう……」

千早「……それでどうしてそんな身体に……」ボソッ

P「へ?」

千早「いえ、なんでもないわ」





千早「それにしても、家に帰るアテも知り合いもお金もなくて、どうするつもりだったの?」

P「それは、まぁ……いざとなったら警察署にでも転がり込もうかと」

千早「警察署……萩原さんが言っていたけれど、交番や警察署に泊めてもらえるかは、警官次第らしいわよ」

P「え?」

千早「ソファや仮眠室を貸してくれて泊まれる場合もあるし、追い出されることもあるらしいわ。1000円までなら貸してもらえたりするらしいけれど」

P「そ、そうだったんだ……」

千早「ただしホームレスが押し寄せたら困るから、原則としてはダメみたいね。まぁ、若い女の子を夜中に放り出す警官は、あまりいないと思うけれど」


P(……もしもの時は暴漢に襲われたとでも言って粘るしかないかなぁ)

P(1000円あれば漫喫に泊まれるが、俺そもそも住所が無いし……)





P「とにかく、本当に助かったよ。ありがとね、如月さん」

千早「いいえ、一番つらいのは赤羽根さんだもの。これくらいはさせてちょうだい」

P「え?」

千早「プロデューサーのこと、心配でしょう……。まだ見つかっていないようだし、明日捜索願が出されるんでしょう?」

P「あ、はい……実家の両親が」

千早「大丈夫、きっとすぐに見つかるわ。だから赤羽根さんは気負わずに、今はゆっくり体を休めて」

P「……ありがとう」


P(ここまで来たら、もう俺の正体なんて言い出すことはできないよな……)

P(いや、そもそも本当のことを言ったって、信じてもらえるわけがないけどさ)


P(だけど千早の心遣いは、本当にうれしい)

P(早く元に戻って、千早と、そして事務所のみんなを安心させてやらなければ)





・・・・・・



P(…………なんとなく、漠然と)

P(自分の身体がどうなっているのかというのは、ぼんやり把握していたつもりだった)

P(だが実際にこの目で、変わり果てた自分の肉体をしっかりと見たことはなかった)



P(……服を脱いで全裸になった姿なら、尚更だ)



P(今、俺は千早の家のお風呂を借りて、シャワーを浴びている)

P(そしてなんというか、とんでもないことをしてしまっているのではないかと、よくわからないドキドキに襲われていた)

P(い、いいのか、これ……!? いや俺の身体だけど! 俺の身体だけど、でもなんかそれは違うっていうか……!)


P「う、うぅ……」///





P(あくまで自分の身体だという意識が働いているためか、こんなにエロイ身体を見ても、ぜんぜん興奮しない)

P(だけど同時に、見覚えのない美少女が鏡に映っているようにも感じて、妙な背徳感も覚えてしまう)

P(もうなるべく鏡は見まいとして体を洗おうとすると、どこに触れても柔らかいむちむちなエロボディの感触が指に伝わる)

P(……なんというか、八方塞がりな状況だった)



P「い、いやっ……!!」



P(なにを恐れる事がある……これは俺の身体だぞ? そうだ、俺の身体っ!!)

P(そう、ならば……たとえばこの凶悪な重量感を誇る二つの山を、思う存分に揉みしだいたって、誰にも文句は言われないのだ!)

P(こんな姿になって、さんざん苦労させられたんだ! これくらいのご褒美は認められて然るべきじゃないのか!?)

P(……よし! 揉む……揉んでやるぞ!!)


P「…………っ」ドキドキ…!!



千早「ごめんなさい、入浴剤を入れ忘れたわ」ガチャッ


P「わひゃあああっ!!?」///



 ズルッ


P「え」

千早「あ」



 ズテーンッ!!





P「痛つつ…………あっ!」

千早「……」

P「うわぁ、ずぶ濡れに……! ごめんなさい、千―――如月さん!!」


P(浴室で足を滑らせた俺と千早は、そのままもつれるようにして転倒した)

P(現在の体勢は、シャワーで髪や服がずぶ濡れになってしまった千早が、全裸の俺の胸に顔をうずめるような形となっている)


千早「……」

P「え、あの……如月さん? 大丈夫?」

千早「……」モミッ

P「ひゃうっ!?」/// ビクッ


P(なぜか俺の胸の谷間から恨めしそうな涙目で睨んでくる千早は、転んだ拍子に手をついていた俺の胸をちょっと揉んだ)





P「あ、あの……?」

千早「くっ……くぅぅ~~~っ!!」ギリッ

P「えっ、なんで怒ってるの!? あ、いや、ずぶ濡れになったら怒るよね、ごめんっ!!」

千早「 べ つ に 怒 っ て な い け ど ? 」


P(すっごい怒ってるーっ!?)


千早「……」ジー

P「き、如月さん……?」///

千早「……」モミッ

P「んんっ!?」/// ビクッ





千早「不思議だわ……なにを食べたらこんなに……まともな食生活ではないはずなのに」モミモミ

P「う、あっ……ちょ、ちょっと如月さん! なにやって……!?」///

千早「! ……ごめんなさい、正気を失っていたわ」

P「い、いや、べつにいいんだけど……」ササッ

千早「すっかりずぶ濡れになってしまったわね。風邪を引くわけにはいかないし……」シュルッ

P「えっ……!?」

千早「せっかくだし、私も一緒に入ってしまうとするわ。女の子同士だし、いいでしょう?」


P(女の子同士じゃないから! ダメだからーっ!!)///


P(しかし俺の心の叫びが千早に届くことはなく、俺はただ彼女から目を逸らすことしかできなかった)

P(見てない! 俺は見てないからな、千早!!)





・・・・・・



千早「ふふっ、さっきからずっと背中を向けて……女の子同士なのに恥ずかしがり過ぎじゃないかしら」チャプ

P「そ、そうでしょうか……」/// チャプ

千早「そんなに立派なものを持っているのだから、むしろ胸を張ったらいいんじゃないかしら? ……くっ!!」

P「どうしてそんな吐き捨てるような声で!?」

千早「……まぁ、それはともかく」


P(千早が急に真剣な声色になったので、俺は思わず振り返りそうになってしまった。……ギリギリ持ちこたえたけど)





千早「これからも、今みたいな生活を続けるつもりなの?」

P「え?」

千早「赤羽根さんの家庭の事情に深入りするつもりはないのだけれど、それでも……たとえばご両親と和解することは、どうしてもできない状況なの?」

P「あ、その……それはちょっと、難しいかな……?」

千早「そう……。私も人のことを言えた立場ではないから、その気持ちはわかるわ」

P「!!」


P(そうだ、千早の家庭は……)


えっ俺金貸しても貰えなかったよ…




千早「無理に話し合えとは言わないわ。なにかきっかけがないと、そういうのって難しいわよね」

P「は、はい……」

千早「だから落ち着くまで、私の家にいるといいわ。私は赤羽根さんを、いつでも歓迎するから」

P「……っ」ウルッ


P(千早はもっと、クールで淡白な子かと思っていた……)

P(歌に対しての姿勢は猛執的でさえあるが、人間関係においては、そこまで熱を入れるようなことはないのだとばかり……)

P(……こんなに温かい子だったんだな)





千早「赤羽根さん、こっちを向いて?」

P「えっ!?」

千早「友達なのだから、目を見てお話しましょう?」

P「あ、う……でも……」

千早「そんなに恥ずかしい?」


P(後々の千早のためを思って振り向かずにいたが、ここで意地でも振り向かなかったら、それはこんなに親切にしてくれている千早に対して失礼だろうか)

P(だ、大丈夫、入浴剤も入れてるからお湯は濁ってるし、大事なところは見えないだろう!)


P「……わ、わかった。うん、そっち向くね……!!」

千早「ええ」クスッ





P「……」クルッ



千早「……」

千早「……!!」

千早「―――ッ!?」



P「えっ……? な、なにその顔?」


千早「……浮いてる」ボソッ


P「え? ……あっ!!」


P(俺の胸が、お湯に浮いてる!!)





千早「このっ、このぉ!!」モミッ

P「わああ!? ちょ、ちょっとやめっ……!?」///

千早「それは私への当てつけかしら!? だから振り返ろうとしなかったのね!!」モミモミ

P「ちがっ、違うから!! ああっ、そこはぁ……!?」///



P(このお風呂での一件で、千早の意外な一面を多く知ることができた)

P(彼女の面倒見の良さと、他人の気持ちを慮る優しさ……)


P(……あと、コンプレックスの根深さも、身をもって痛感した)





・・・・・・



千早「……本当に私の服を貸さなくてもいいの?」

P「は、はい! 私には兄の服があれば十分ですのでっ!!」

千早「下着までプロデューサーのものなのね……」

P「うっ……まぁ」

千早「もしかして私の服では胸がきついとかっていう理由で……」

P「違います! 違いますから!!」


P(その後、風呂から上がった俺たちは、そろそろ眠りにつくことにした)

P(予備の布団はないということで、俺は床にでも寝ると言ったのだが……結局2人とも同じベッドで寝るということで押し切られてしまった)

P(ワイシャツとトランクスしか身に着けていない状況で、女子高生のアイドルと同衾して眠れるのかは甚だ疑問ではあるが……)





千早「それじゃあ、電気を消すわね」

P「うん」


 パチッ


千早「もっとこっちに来ないと、ベッドから落ちてしまうわよ?」

P「あ、えっと……はい」


P(いっそベッドから落ちたほうが、気が楽なような……)


千早「……こうやって誰かと一緒に寝るのは、久しぶり」

P「俺―――私も、すごく久しぶりです」





千早「赤羽根さんは、なにか将来の夢とかはあるの?」

P「えっ? あ、えっと……プ、プロデューサー……とか?」

千早「あら、お兄さんと同じなのね」

P「あ、あはは、身近な職業でしたから……。それに今日、如月さんや萩原さんと触れ合って、2人の役に立ちたいと思いました」

千早「そう……赤羽根さんは教え上手だし、向いているかもしれないわね」

P「ほんとですか?」

千早「ええ。まぁどちらかと言うと、プロデューサーよりもアイドルの方が向いているかもしれないけれど」

P「ええっ!?」

千早「そう驚くことではないでしょう? 萩原さんも音無さんも、同じようなことを言っていたわ」

P「そ、それはないって! 私は裏方人間だから! サポートが性に合ってるっていうか……!」





千早「そうだわ、良いことを思いついた」

P「?」

千早「明日、うちの社長に会ってみる?」

P「えっ!?」

千早「うちのアイドル達はみんな社長にスカウトされたのだけれど、もしかすると赤羽根さんもスカウトされるかもしれないわ」

P「……プロデューサーとして?」

千早「さぁ、それはどうかしら。社長に聞いてみなければね」

P「うぅん……」

千早「律子みたいにアイドルからプロデューサーになった例もあるし、それにアイドル側の気持ちを知っておくのもいい経験かもしれないわよ」

P「それは、たしかにそうだけど……」





千早「高校には通っていないのでしょう? このままアテもなくふらふらしているくらいなら、試してみる価値はあると思うけれど」

P「……」


P(たしかに、いつ元に戻れるかわからない以上、いつまでも千早に寄生しているわけにはいかない)

P(アイドルにせよプロデューサーにせよ、もしも765プロで雇ってもらえるというのなら、それほど都合のいいことはない)

P(兄が失踪しているこの状況なら、高木社長も多少は便宜を図ってくれるかもしれないし……)

P(俺がいなくなって忙しい今、事務員としてくらいなら、どうにか雇ってくれるかもしれん)


P「えっと、それじゃあ……明日、765プロに行ってみてもいい、かな?」

千早「ええ。私からもお願いしてみるわ」

P「……本当にありがとう、如月さん」

千早「いいえ、困ったときはお互い様よ」





千早「さぁ、今日は疲れたでしょう? もう休みましょう」

P「うん……」

千早「おやすみ、赤羽根さん」

P「……おやすみ」



P(本当に眠れるのかという不安に反して、目を閉じると思いのほか強い眠気に襲われた)

P(慣れない身体で歩き回ったこともそうだが、なにより異常な事態に襲われて、心が疲弊してしまっていたのだろう)

P(俺は目を閉じるとすぐに、ぐっすりと深い眠りに落ちていった)





・・・・・・



P(気が付くと、だだっ広い空間を漂っていた)

P(そこは深海だったかもしれないし、あるいは宇宙だったのかもしれない)

P(ただ暗い闇と、そして幽かな浮遊感だけが知覚のすべてだった)



P「……?」



P(近くか、あるいは遠くか……距離感覚もないそんな場所に)

P(ぼんやりと、2人の人間が漂っていることに気が付いた)



P(片方は、眼鏡をかけた男性だった)

P(もう片方は、豊満な体つきの少女だった)



P(どちらかの身体に入らなければならないということを、なぜか無意識のうちに知っていた)


P(そして、選んだのは……)



>>143
1、プロデューサー
2、赤羽根P子



2

まあ面白くなってきたのにこのまま終わらせるのもあれだし?




・・・・・・



P「んぅ……」


千早「目が覚めたかしら、赤羽根さん?」

P「あれ……きさらぎさん……?」ゴシゴシ


P(ああ、そっか。私は如月さんの家に泊めてもらってるんだっけ……)

P(なんか、変な……すごく長い夢を見てたような気が……)


千早「大丈夫? 具合が悪い?」

P「あ、ううん、大丈夫!」

千早「そう。朝ごはんを作ったから、一緒に食べましょう」

P「わぁ、おいしそう! ありがとう如月さん!」パァ

千早「ふふっ」ニコッ





・・・・・・



千早「さぁ、それじゃあ事務所に向かいましょうか」

P「う、うん!」

千早「プロデューサー、見つかってるといいのだけれど……」

P「……そう、だね」


P(お兄ちゃん、どこに行っちゃったんだろう……突然いなくなるなんて、やっぱり事件に巻き込まれてるのかな)



P(……あれ? なんだろ……なにか、大切なことを忘れてるような……)



千早「ところで赤羽根さん」

P「へっ? なに?」

千早「そのワンシャツとトランクス姿のままで外に出るつもり?」

P「……わひゃあっ!?」/// バッ


休憩です。
……おかしい、てっきりここで終わるものかと……

これは分裂+記憶の改変かつまりここにいるのは元Pではなく一人のP子っていう女の子ってことに…
千早エンドとなると(ゴクリ)

ただ戻してもハッピーエンドなんかより女の子としての方が需要ありまくりですから(暴論)

TSの結果男だったという意識が欠落するのって良いよねすごく良いよね

>>155
わかる(わかる)

ホモガキくっさいで

>>158
宿題は終わったかい?




千早「……やっぱりその格好なのね」

P「うーん、さすがに社長に会うのにこれじゃ失礼かな?」

千早「それ以前に、もっといろいろ気にすべきことがあると思うけれど……」

P「?」

千早「赤羽根さんはもう少し、女の子としていろいろと自覚しないとダメよ?」

P「はーい。……あ、ところで如月さん」

千早「なにかしら?」

P「絆創膏、2枚もらえないかな?」





―――765プロ事務所―――



 ガチャッ


千早「おはようございます」

P「お、おはようございます……」


小鳥「あら、赤羽根さん!」


千早「音無さん、プロデューサーは……」

小鳥「……残念だけど、まだ連絡はないわ」

千早「そうですか……」

P「……」





千早「それじゃあ、高木社長はいますか?」

小鳥「ええ、ついさっきいらしたけど……なにか用かしら?」

千早「はい。こんな時ですけど、ちょっと赤羽根さんのことで」

小鳥「……! 社長は奥の部屋にいらっしゃるわ」ニコッ

千早「ありがとうございます」



P「あの、如月さん……やっぱりこんな大変な時に、私のことなんて……」

千早「こんな時だからこそだと思うけれど」

P「え?」

千早「とにかく、行きましょう」





―――社長室―――



千早「失礼します」

P「し、失礼します……!」


社長「おや、如月君と……キミはもしや、赤羽根P子君かね?」


P「は、はいっ……!」ビクッ

社長「音無君から話は聞いているよ。彼のことは非常に心配だが、現在、私のコネを最大限使って捜索しているところだ」

P「あ、ありがとうございます……」

社長「それと今朝、彼のご実家に連絡させてもらった。今日の昼までになんの進展もなかった場合、捜索願を出すとのことだ」

P「捜索願……!」

社長「あまり大事にはしたくないが、彼の無事が最優先だからね。そういう運びとなったわけだよ」





社長「それから彼のご両親にキミの話をしたところ、『一度帰って来るように言ってほしい』とのことだよ」

P「!?」

千早「!」

社長「とても心配している様子だった。なにか複雑な家庭事情があるようだが、これを機に、よく話し合ってみると良いんじゃないかねぇ」

P「……」

社長「身内になにかが起こった時、遠ざけていた親族が急に心配になるということは、得てしてあるものなんだよ。くれぐれも、後悔のないようにね」

P「……は、はい」





社長「さて……それでキミたち、なにか私に用があったのではないのかね?」

千早「はい。じつは赤羽根さんは家を勘当されていて、学校も通えず、お金もなくて、プロデューサーだけを頼りに生きてきたようなんです」

社長「なんと、それは……」

千早「しかしそのプロデューサーが姿を消してしまって頼れる人もいなくなって、今は私の家に居候しています」

社長「ほう。つまり彼が見つかるまでの間、彼女の生活費を援助すればいいということかね?」


P「い、いえっ! その、もしよろしければなんですけど……私もこのプロダクションで、働かせてもらえませんか!?」


社長「!」





P「雑用でも事務仕事の手伝いでも、なんでも構いません! 兄が戻るまででも良いので……お願いしますっ!!」

社長「……ふむ」

千早「社長、私からもお願いします。彼女はプロデューサーのレッスンの練習相手をしていたらしくて、アイドルに必要な様々なことを知っています」

社長「ほほう、そうなのかね?」

千早「それに昨日、私と萩原さんにビジュアルレッスンをしてくれて、とても教え上手だと感じました」

社長「なるほど……」






社長「……じつを言うとだね、キミをひと目見た時から、私はキミに『ティン!』と来ていたのだよ」

P「えっ?」

社長「ただ、この大変な時にスカウトをするというのも不謹慎だと思い、遠慮していたのだがね」

P「!」

千早「じゃあ……!」

社長「よし、良いだろう! 赤羽根P子君……キミをこの765プロダクションの新たな仲間として歓迎しよう!!」

P「ほ、本当ですか!?」///

千早「良かったわね、赤羽根さん」

P「うん! ありがとう、如月さん! ありがとうございます、高木社長!!」

社長「ただし配属は、私の判断に従ってもらうことになる」

P「はい! 掃除でも付き人でもファンレターの検閲でも、なんでもやります!!」

社長「良い心掛けだ! ではキミには……」



>>174
1、プロデューサーとして働いてもらおう!
2、アイドルとして活躍してもらおう!
3、事務仕事を任されてもらおう!


2しかない

2以外ありえないな

休憩です。
ところで私は明日からネット環境のない場所に放り込まれるので、どうにか今日中にこの話を終わらせようと思っています。

秘境にでも逝くのかな?




社長「アイドルとして活躍してもらおう!」

P「ア……イドル……ですか……?」

社長「おや、不満かね?」

P「い、いえそんな! ただ、自分には向いていないのではないかと……」

社長「ふむ……まるで秋月君のようなことを言うねぇ。しかし私の目を、勘を信用してくれはしないかね?」

P「そ、そうですよね、私みたいなのが、すみません……」

社長「いやいや、謙虚であることは美徳だよ。それがあまり過ぎて卑屈になってはいけないがねぇ」





社長「……ところで赤羽根くん、その服装は……」

P「す、すみません! 失礼かとは思ったのですが、これしか服を持っていないもので……!」

社長「そ、それしか持っていない!? それは男物のスーツではないのかね?」

P「はい、兄のスーツです! 兄の臭いがしないものを着ると、肌が荒れるので!!」

社長「……そ、そうかね……仲良きことは、すばらしいことだねぇ……」

千早「社長、声が震えてます……」





・・・・・・



雪歩「ええっ!? それじゃあ赤羽根さん、うちのアイドルになったの!?」

P「はい! 至らない点も多いとは思いますけど、よろしくお願いします!」ペコッ

雪歩「こ、こっちこそよろしくね。私じゃ頼りないと思うけど、なにか困ったことがあったらなんでも言ってね?」

P「ありがとうございます! 頼りにさせていただきますね!」

千早「今はプロデューサーの件で、みんな気が気じゃない状況だから……なるべく事情を知っている私たちがフォローするわね」

雪歩「今日は社長がみんなを集めてお話をするはずだから、その時に自己紹介をしちゃったほうがいいよね?」

千早「ええ。誰か来るたびにいちいち自己紹介していたらきりがないでしょうし、それどころじゃない子もいるから」

P「……それどころじゃない子?」





千早「プロデューサーと特に親密にしていた子ね」

雪歩「親しい人が、いきなり行方不明になっちゃったんじゃ仕方ないよね……」

P「……お兄ちゃん」

雪歩「あっ……そうだよね、一番心配してるのは、赤羽根さんだよね……ごめんなさい」

P「いいえ、私は……兄が帰ってくるまで、この場所を守る責任があると思います。だから、泣き言は言いません」

雪歩「……赤羽根さん」

千早「……」




 ザッ…

   ザザッ…


P「―――っ!?」クラッ


千早「赤羽根さん! 大丈夫!?」

雪歩「どこか悪いの……!?」

P「いえ……。あの、事務所の皆さんが集まるのには、まだ時間がかかりますか?」

千早「ええ、きっとまだしばらくかかると思うけれど……どうかしたの?」

P「最後に……行ってみたい場所があるんです」

雪歩「行ってみたい場所?」

P「もしも兄がいるとすれば、きっとそこしかない……そんな気がするんです!!」





―――公園―――



P「やっぱり……いないかぁ……。そう、だよね……」

千早「プロデューサーは、よくこの公園に来ているの?」

P「ううん……この公園にいるところを見たことはないよ」

雪歩「え?」

P「でも、なんでだろう。もしかしたら、この公園になら、いるかもしれないって思ったんだ。……勘違いだったみたいだけど」

千早「……赤羽根さん」

P「あはは……ごめんね。無駄足だったみたい。……帰ろっか」

千早「……」





千早「昨日は、ちょうどこの場所で赤羽根さんのビジュアルレッスンを受けたのだったわね」

P「そう、ですね。素人が偉そうに指導しちゃって、今思えば恥ずかしいけど……」

雪歩「ううん、そんなことないよ! 赤羽根さんの教え方はすごく上手で、まるでプロデューサーみたいだったよ!」

千早「ええ、本当に。赤羽根さんは将来、プロデューサーになりたいというようなことを言っていたけれど、私はきっとなれると思うわ」

雪歩「うん! 私もそう思うよ!」

P「……ありがとう、如月さん、萩原さん」





P(プロデューサーみたい……お兄ちゃんみたい……)

P(私は、どう在りたいんだろう?)

P(プロデューサーに憧れたのは、お兄ちゃんに憧れたから……だったような気がする)

P(だけどそれでいいのかな? 私は私の道を、自分で選ばなくちゃいけないんじゃないのかな)

P(お兄ちゃんがどうとかは関係なく、如月さんや萩原さん、それから社長の意見に流されるのでもなく)

P(そう考えるのなら、私は……アイドルになりたい! なるべきなんじゃないかって思う!)


P(……だけどどうしてだろう、私はプロデューサーにならなくちゃいけないような気がする)

P(プロデューサーになれって、心の奥底で誰かが叫んでるような気がする……!)



P(私は……私は―――っ!!)




>>195
1、プロデューサーにならなくちゃいけない!!
2、アイドルになりたいっ!!
3、どうすればいいのか、わかんないよ……!!



1だな





P(プロデューサーにならなくちゃいけない!!)



 ザザッ…

  …ザザザッ…


P(そうだ……“俺”は!! プロデューサーにならなくちゃいけないんだっ!!)



P「思い出したっ!!!」


千早「!」ビクッ

雪歩「ひぅ!?」ビクッ


P「そうだ……なんで今まで思い出せなかったんだ……! 私は……俺は……!!」


千早「赤羽根さん……?」

雪歩「だ、大丈夫?」





P「千早、雪歩!!」


千早「!」

雪歩「!」


P「私は絶対にプロデューサーになって、それで必ず、765プロのみんなをトップアイドルにしてみせるからっ!!」


千早「……! ……そう。じゃあまずはアイドルとして活躍して、社長に認めてもらわないとね」

雪歩「そっか……それなら、みんなで一緒に頑張ろうね!」

P「うんっ!」





P(私は……俺は、『プロデューサー』だ! 赤羽根P子じゃない!)

P(もしも今朝の夢に意味があるのなら、もしかすると俺は二度と元の姿に戻ることはできないのかもしれない)

P(まるでその証拠のように、すでに俺の幼い頃の記憶は書き変わってしまっている。赤羽根P子としての記憶しか思い出せない)

P(徐々に記憶が書き変わって、いつか完全に俺が『赤羽根P子』となる日が来てしまうのかもしれない)

P(それに社長が聞かせてくれた、実家の話……あれが真実なら、俺が勝手に作りだした『赤羽根P子』が本当に実現してしまったということだろう)


P(だが、どんな姿になろうとも、俺はプロデューサーとして、あの子たちを支えるんだ! そのことに変わりはない!)





―――765プロ事務所―――



P「赤羽根P子と申します!」

P「アイドルになって日は浅いですけど、とにかく一生懸命頑張ります!」

P「夢は、みんなまとめてトップアイドル!! どうかよろしくお願いしますっ!」





・・・・・・



P(……あれからしばらく経つが、警察の捜索も当然ながら意味をなさず、『プロデューサー』は帰ってこない)

P(それでもアイドル達は、『プロデューサー』の取ってきた仕事を懸命にこなしながら、今でも彼の帰りを待っている)


P(俺の記憶はすでに小学校高学年くらいまで書き変わっており、きっとそのうち完全に『赤羽根P子』となってしまうのだろう)

P(だがそれでも構わない。俺はアイドルとして活躍しながらも、着々とプロデューサーになる準備を進めている)

P(……世間での俺は、ロリ人妻だとか清純卑猥女子だとかとんでもない愛称で呼ばれているらしいが……とにかく一定の成果は出している)


P(それから今でも千早とはルームシェアをさせてもらっていて、持ちつ持たれつ揉まれつつの生活を続けている)

P(事務所の子たちとは親密で良好な関係を築くことができているが、特に千早や雪歩とは親友と呼べるような仲と言えるだろう)


P(そして……)





―――千早のマンション―――



P「ただいまー」


千早「おかえり、P子。久しぶりの実家はどうだった?」

P「うん、まだぎこちないけど……それでも以前に比べたら、ずっと良好って感じだと思う」

千早「そう。それは良かったわ」ニコッ

P「ありがと、千早」ニコッ





千早「さっき、あなたの出たバラエティ番組を見てたのよ」

P「ええっ? な、なんか恥ずかしいよそれ……」

千早「相変わらず、体操服を着せられたり、変な言葉を言わされたり、ああいう扱いなのね」

P「……どこで自分のプロデュースを間違っちゃったのかな」

千早「ある意味では成功していると思うけれど」

P「うぅ……」///





千早「それで、どうなの? 例の件は」

P「うん。まだもうちょっとかかるけど、そう遠くないうちに、プロデューサーとして働けることになると思う」

千早「ほんとに!?」

P「えへへ、本当だよ」

千早「……頑張りが報われて、よかったわね」

P「うん……みんなに支えられて、ここまでたどり着けたよ。だから今度はプロデューサーとして、みんなを導いていけるように頑張るね!」

千早「ふふっ、期待してるわね」

P「任せてよ!」



P(……そうだ、今度こそ……! みんなをトップアイドルにするんだ!!)


P(当然ながら、そのゴールへと至る道には障害もたくさんあることだろう)

P(だが、俺は負けない。俺が“俺”であるうちに、きっとみんなをトップアイドルへと導いてみせる!)





……おしまい。


かなり駆け足になりましたが、これでおしまいになります。
もう少しいろいろとじっくり書きたかったのですが、残念ながら時間切れでした。

ここまでご覧いただいて、またお付き合いいただいて、ありがとうございました!
(もしなにか質問がありましら、お答えします)

それでは、ありがとうございました!!

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