ジャギ「俺の名をいってみろ!」 ペルニダ「……」 (33)


BLEACHと北斗の拳のクロスSSです。

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時は世紀末!
世界全土を巻き込んだ戦争によって、地上は荒廃した。
海は枯れ、地は裂け、あらゆる生物が死に絶えたかに見えた。
しかし、人類は死滅していなかった。
生き残った人類は二つの立場に分かれた。

そう、奪われる側と奪う側である。

世は再び暴力が支配するようになっていた。
しかし、そんな世にも救世主が現れた。
胸に七つの傷を持つその男は、世に蔓延る悪党どもを次々に倒してくのであった。
その男の名は、ケンシロウ。
暗殺拳と呼ばれる、北斗神拳の伝承者である。

だがケンシロウを騙り、非道の限りを尽くす男がいた。


その男の名は、ジャギ。
ケンシロウの義兄にして、共に北斗神拳の修業をした男である.
だが伝承者の座を奪われた上に顔に傷を負ったジャギはケンシロウを逆恨みし、
彼の名を地に落とすべく、悪行を繰り返していたのであった。

そして、今日もジャギは手下と共に悪行を働く。

「おいお前! 俺の名をいってみろ!」

民衆に自分の名を呼ばせて、ケンシロウの名前を出し、順調にケンシロウの悪評は広がって行った。
だが、しかし、

「おい! ケンシロウ様のお通りだ! そこをどけ!」

ジャギの一行の前に現れた人物。
それは、全身をコートでスッポリと隠した異様な人物だった。

>>1さ、同時に複数のSS展開してて大丈夫か? 中断してる方の続きを待っているやつだっているんだぞ? ちゃんと全部完結させてくれるんだろうな?

>>4
それはマジですみません。
どっちも展開は考えていますのでしばらくお待ちください。



「なんだてめえはぁ!?」

手下の一人が、コートの人物に詰め寄る。

「……」

だが、コートの人物は一言も言葉を発さなかった。

「おい、ちょうどいい。 お前、あのお方の名をいってみろ!」

手下がジャギを手で指し示しながら言う。

「……」

それでもコートの人物は言葉を発さない。
それにイラついた手下は、ついに持っていた斧を振り上げる。


「てめえ! なめやがって!」

斧がコートの人物に叩きつけられようとした時だった。

「えっ!?」

コートの人物の頭がモコモコと蠢いたと思うと、斧がまるで水あめのように曲がってしまった。

「ななっ!? ぐうっ!?」

そして今度は、斧を持っていた手下自身の顔がへこんでいく。

「ひぐっ! た、たす、ぐぼべっ!」

全身がへこみ、首の骨が折れた手下は絶命した。


「な、なんだぁ!?」

その他の手下も驚く。
だが、ジャギだけはその光景に心当たりがあった。

(これは……まさか北斗神拳!?)

そう、彼が学んでいた北斗神拳である。
北斗神拳は人間の経絡秘孔を突いて内部から破壊する拳法。
今、死んだ手下も、まるで内部から破壊されたようだった。

(ということは!)

そう、つまりこのコートの人物はおそらく北斗神拳の使い手。
つまり……

「ついに現れたなケンシロウ!」

憎きケンシロウが現れた。そうジャギは確信したのである。


「……」

依然として言葉を発しないコートの人物にジャギは近づく。

「この日をどれほど待ったことか……この顔の恨みを晴らす時をな!」

そう言って、ジャギはコートの人物にショットガンを向ける。

「そうだ……ひとつ教えておいてやろう」

そしてジャギはケンシロウが必ず動揺するであろう事実を話す。

「お前、シンと戦ったそうだな?」

南斗聖拳の伝承者であり、ケンシロウの恋人ユリアを連れ去った男、シン。
ケンシロウがシンを倒したという知らせはジャギにも届いていた。
そして、それをジャギが利用しない手は無かった。


南斗聖拳の伝承者であり、ケンシロウの恋人ユリアを連れ去った男、シン。
ケンシロウがシンを倒したという知らせはジャギにも届いていた。
そして、それをジャギが利用しない手は無かった。

「シンの魂を悪魔に売らせたのは、この俺だ!」

そう、シンがユリアを拉致した背後にはジャギが絡んでいた。
シンは、ジャギの甘言に乗せられたのだ。

「ははは、くやしいか! くやしいかケンシロウ!」

高笑いを上げるジャギ、彼としては早くそのコートの下にあるであろう、憎しみに歪んだ顔を見たかった。

「どうしたケンシロウ! 早くそのコートを脱いでかかってくるがいい!」

だが……

「……あれ?」

コートの人物は、依然として言葉を発さないばかりか、微動だにしなかった。


(……なんか反応薄くない?)

ジャギとしてはとっておきの秘密を暴露したというのに、相手の予想外の反応に戸惑ってしまった。

「おい、どうした! 早くそのコートを脱げ! くやしくないのか!? 俺が憎くないのか!?」

ついに、ケンシロウを応援するかのような口調になってしまうジャギ。
だが、それでもコートの人物は微動だにしない。

「……あのさ」

思い切って、ジャギは質問してみることにした。

「ユリアって知ってる?」

その質問に、コートの人物は頭であろう部分を左右に振った。

(やべえ……これケンシロウじゃなかった……)


ジャギの考えていた通り!
この人物は北斗神拳の伝承者、ケンシロウではない!

その正体は……
見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)が擁する精鋭部隊、星十字騎士団(シュテルンリッター)の一員であり!
皇帝ユーハバッハから“C”の聖文字(シュリフト)を授かった滅却師(クインシー)!

ペルニダ・パルンカジャスその人である!

星十字騎士団の一員であり、尚且つユーハバッハの親衛隊のメンバーであるペルニダは、
その名誉ある地位に就いている故に多忙であった!
そして遂に、二年ぶりに休暇を取ることが許されたペルニダは現世へと繰り出したのである!
ペルニダが影の領域(シャッテンベライヒ)から出てたどり着いた場所は、戦争後の世界だった!
ペルニダはひとまず、人気の多い場所を探した!

そして……今に至る!



ケンシロウでないことを確信したジャギの脳内に、とてつもない羞恥心が襲う。

(やべえよ……俺、超恥ずかしいじゃん……何、知らない奴にとっておきの事実暴露してんの……?)

自信満々にシンの行動の真実を話しただけに、これほどまでの反応の無さは悲しかった。

「ジャ、ジャギ様……」
「うるせえ!」

憐みの目で近づいてきた手下を殴る。
だが、そんなジャギにコートの人物、ペルニダはゆっくりと近づいて行った。

「な、なんだよ?」


改めて、ジャギはペルニダを見る。
全身をコートで隠しているが、そのシルエットは異様だった。
なぜなら、頭の部分が大きく、体のシルエットが見えないからだ。
それによく見たら、ペルニダはケンシロウのように筋骨隆々ではなく、どちらかというと小柄であった。

(……よく考えたら、これがケンシロウなわけねえじゃん!)

ジャギは自分の浅はかさを呪った。
しかし、それでもペルニダを見過ごせない理由はあった。

(だが、それならどうやってあいつは北斗神拳を会得したんだ?)


北斗神拳は一子相伝である。
部外者が北斗神拳を学ぶことは不可能に近い。
だが、ペルニダはそれを使っている。
そう考えているうちに、ペルニダはジャギの目の前に来ていた。

(くそ! 考えている暇はねえ!)

「おい! てめえこのショットガンが見えねえのか!? タマは入っているぞ!」

だがその時、

「なっ!?」

さきほどの斧と同じく、ショットガンがベコベコにへこんだ。

「こ、これは!?」

思わずジャギはショットガンを離す。


(ぶ、物質を触れずに曲げた!? やべえ、こいつ拳法使いじゃねえ! 別の何かの力を持っている!)

謎の力を前にしたジャギは、この場を切り抜ける方法を考えた。

「は、ははは、あんた強いな。どうだ? 俺の下につかないか?」
「……」
「もちろん、タダとは言わねえ、まず食糧一週間分をやろう。それと、水も自由に飲んでいい。それでどうだ?」
「……」

ペルニダの無反応さに、ジャギは不安になってくる。

「た、足りないか? じゃあ食糧二週間分……」

その時、

「……」
「う、うわあああっ!?」

ペルニダとジャギたちの横にあった、広大な土地が一気に割れ、下の土が盛り上がってくる。


「な、なんだなんだ!?」

ジャギと手下は、目の前の光景に驚く。

「……」
(ま、まさかこいつの力か!?)

そしてペルニダの横には、地表とは違った水分をふんだんに含んだ土地が出現した。

「……」
「えーと」
「……」
「ど、どういうことかなあ?」

戸惑うジャギに対して、ペルニダはコートから手を出し、大量のジャガイモを差し出す。

「え!?」
「……」

そして、ペルニダは盛り上がった土地の方向に何度も頭を向けた。

「……もしかして、俺たちにそのジャガイモを育てろって言ってるの?」
「……」

ペルニダは頷いた。


「ふざけんな、てめえ調子にのり、げぱんっ!」

堪忍袋の緒が切れた手下の一人が、ペルニダに喰ってかかった瞬間、彼の頭は破裂していた。

「ひ、ひいっ!」

これにはジャギも戦慄する。

(や、やべえ、こいつはケンシロウよりもっと恐ろしい!)

ジャギに素直に従う以外の選択肢はなかった。

「わ、わかった! そのジャガイモを育てよう! それから、あんたに食料もやろう! それでいいかな!?」

その問いに、ペルニダはこくんと頷いた。


それから……

「くそっ! なんで俺たちがこんなことに!」

ジャギが今持っているのは、ショットガンではなく、バケツである。
そう、今彼は必死にジャガイモに水をやっていた。
ようやく、ジャガイモから芽が出て育ってきたのだ。

「ジャギ様、俺はもう我慢できな、ぱきいっ!」
「ひいいっ!」

少しでも反乱の意志を見せると、ペルニダによる容赦ない制裁が加えられた。

「ちゃ、ちゃんとやってます、大丈夫です」
「……」

去っていくペルニダを見て、ジャギは胸をなでおろす。

(こんなんじゃ、ケンシロウに復讐するのもいつになるやら……)


そして時は立ち、ジャギたちが育てたジャガイモは畑を埋め尽くすまでになっていた。

「はあ、はあ、これでいいのかな?」

慣れない農作業を、天性の拳法の才能でやりきったジャギ。
しかし、手下の我慢はもう限界に来ていた。

「ジャギ様、もう我慢できません! あの野郎をやっちゃいましょう!」
「そうだな……後ろから襲えば、さすがに避けられまい」

ジャギはペルニダに闇討ちを仕掛けることに決めた。


ある日。

屋上で佇むペルニダを発見したジャギは、後ろからそっと近づく。

「……」

(よし、気づいていない!)

ジャギは勝利を確信し、ペルニダに拳を放った。

「死ねえ!」
「……」

だがその瞬間、ペルニダの姿が幻の様に消える。

「なにっ!?」
「……」

そして、いつのまにかジャギの背後に立っていた。


「ま、待ってくれ! いや、ほんの冗談だったんだよ……」
「……」

だが、ペルニダは突然その場に寝転んでしまう。

「……へ?」

予想外の行動に驚くジャギだったが、すぐにその顔に笑みを浮かべる。

「……そうか、なんだか知らねえが力尽きやがったな!」

そして、ペルニダにとどめを刺すべく、拳を振り上げる。

「死ねえ!」

だが、その拳が何者かによって掴まれた。

「なっ!?」
「ジャギ……」

その拳を掴んだのは、胸に七つの傷を持つ男。

本物の、ケンシロウだった。


「ケ、ケンシロウ!」
「無抵抗の者を手にかけようとするとは……きさま、そこまで堕ちたか!」

ケンシロウはジャギへの怒りをあらわにする。

「い、いや待ってケンシロウ。これにはわけが……」
「貴様の悪行、見逃すわけにはいかぬ!」

ケンシロウの目がギラリと光る。

「ちょ、ちょっとま……」
「北斗百裂拳!」

そして、ジャギの体に無数の拳が叩き込まれ、

「ひでぶっ!」

ジャギは吹っ飛んで屋上から落ち、

「ごばぁっ!」

地面に墜落する前に破裂した。


「大丈夫か? む、いない!?」

ケンシロウは倒れているペルニダに手を差し伸べようとしたが、既にペルニダの姿は無かった。

「どういうことだ……?」

そして、ケンシロウがビルを降りると、

「こ、これは!」

ケンシロウが見たものは、畑いっぱいのジャガイモだった。

「いったいこれは誰が……」

だが、誰であろうとケンシロウのすることは決まっていた。

「このジャガイモがあれば、民衆を救える!」

そして、ケンシロウはジャガイモを配りに行った……


その頃。

「おおペルニダ、帰って来たのか」

見えざる帝国に返ってきたペルニダを仲間が出迎える。

「どうだった休暇は? なに、人助け?」

ペルニダはこくりと頷く。
親衛隊として、幾多の敵を葬ってきたペルニダも、人助けをしたいときはあるのである。


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